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▶ マパル ファブリック フュール プラツィジョンズベルクゼウグ ドクトル.クレス カーゲーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】金属穴開け工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20220512BHJP
   B23B 51/06 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
B23B51/00 S
B23B51/00 T
B23B51/06 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019518511
(86)(22)【出願日】2017-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2017075418
(87)【国際公開番号】W WO2018065550
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】01349/16
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(31)【優先権主張番号】102017201684.1
(32)【優先日】2017-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597099025
【氏名又は名称】マパル ファブリック フュール プラツィジョンズベルクゼウグ ドクトル.クレス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレンツァー,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】フリードリ,パウル
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-224213(JP,A)
【文献】特表2010-536596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0001741(US,A1)
【文献】実公昭49-006765(JP,Y1)
【文献】実開昭59-148206(JP,U)
【文献】特開2002-200510(JP,A)
【文献】特開2004-188509(JP,A)
【文献】特開2005-246577(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0145341(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0268518(US,A1)
【文献】特開2012-161912(JP,A)
【文献】特表2013-507261(JP,A)
【文献】特公平07-008447(JP,B2)
【文献】特開平11-235613(JP,A)
【文献】特開2003-191211(JP,A)
【文献】特開2016-172305(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103282148(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第0775560(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0308086(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00-51/14
B28D 1/00-7/04
E21B 1/00-49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属穴開け工具(1)であって、
中心軸(M)と、
周面(9)と、
前面(7)と反対端(E)と、
第1逃げ面(5/1、5/2)のそれぞれに関連し、前記前面(7)の領域に配置された少なくとも2つの主切れ刃(3/1、3/2)と、
を備え、
前記第1逃げ面(5/1、5/2)は、前記反対端(E)の方向に第1逃げ角で前記少なくとも2つの主切れ刃(3/1、3/2)から下降するとともに、前記周面(9)から前記前面(7)を越えて延長され、
前記少なくとも2つの主切れ刃(3/1、3/2)は、前記中心軸(M)と同心となるように配置され、前記反対端(E)の方向に開き、180°未満の第1円錐角(α)を有する仮想の第1円錐面上に位置し、
前記金属穴開け工具(1)は、つのエッジ(21/1、21/2、21/3、21/4)、つの側面(17/1、17/2、17/3、17/4)及び仮想ベース面を有する芯出し部(19)を備え、
前記芯出し部(19)の前記エッジ(21/1、21/2、21/3、21/4)のうち少なくとも2つは、前記中心軸(M)と同心となるように配置され、前記反対端(E)の方向に開く第2円錐角(β)を有する仮想の第2円錐面上に位置し、
前記2つの主切れ刃(3/1、3/2)は、屈曲部又は屈曲領域を経由して前記芯出し部(19)の2つの対向するエッジ(21/2、21/4)に移行し、
2つの第1逃げ面(5/1、5/2)は、屈曲部又は屈曲領域を経由して前記芯出し部(19)の2つの対向する側面(17/1、17/2)に移行し、
前記芯出し部(19)の前記仮想ベース面は四角形であり、
前記第2円錐角(β)は前記第1円錐角(α)より小さく、
前記仮想の第2円錐面は、前記反対端(E)から見ると、前記前面(7)から突出している金属穴開け工具(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の穴開け工具(1)であって、
前記仮想ベース面は、正多角形及び/又は点対称の多角形であり、前記多角形の中点及び/又は対称中心が、芯出し部の高さのベースポイントである穴開け工具(1)。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
前記芯出し部(19)は、前記中心軸(M)と同軸に配置され、前記芯出し部(19)の先端が、前記中心軸(M)上に位置する穴開け工具(1)。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
前記芯出し部(19)の前記仮想ベース面は、正方形として具現化されている穴開け工具(1)。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
記2つの主切れ刃(3/1、3/2)に隣接する前記2つのエッジ(21/2、21/4)は、前記第2円錐面上に位置する穴開け工具(1)。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
各第2逃げ面(25/1、25/2、25/3)は、前記少なくとも2つの主切れ刃(3/1、3/2、3/3)と反対側の前記第1逃げ面(5/1、5/2、5/3)の端に隣接し、前記端から前記反対端(E)の方に第2の逃げ角で下降する穴開け工具(1)。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
前記第1円錐角(α)は、120°≦α<180°である穴開け工具(1)。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
前記第2円錐角(β)は、β<180°、β<αである穴開け工具(1)。
【請求項9】
請求項乃至のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
前記芯出し部(19)の相互に対で対向する側面(17/1、17/2;17/3、17/4)は、前記反対端(E)に開く角度(γ)を形成し、60°≦γ≦150°が適用される穴開け工具(1)。
【請求項10】
請求項乃至9のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
前記関連する主切れ刃(3/1、3/2)に移行する少なくとも前記2つのエッジ(21/2、21/4)は、チゼルエッジを介して相互に接続されている穴開け工具(1)。
【請求項11】
請求項乃至10のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
前記芯出し部(19)の前記側面(17/1、17/2)のうち少なくとも1つには、ギャッシュ(29)が設けられている穴開け工具(1)。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
仮想の直径線(D1)に沿って測られる前記芯出し部(19)の前記仮想ベース面の幅は、前記穴開け工具(1)の直径より小さ穴開け工具(1)。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
副切れ刃(33)は、前記穴開け工具(1)の前記周面(9)の前記領域において前記少なくとも2つの主切れ刃(3/1、3/2)のそれぞれと関連付けられている穴開け工具(1)。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
前記主切れ刃(3/1、3/2、3/3)のうち少なくとも2つの角ピッチは、非対称である穴開け工具(1)。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
ドリル本体に対するインサート品として具現化されている穴開け工具(1)。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の穴開け工具(1)であって、
少なくとも1つの冷却剤及び/又は潤滑剤供給源が設けられている穴開け工具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属穴開け工具に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で説明する種類の金属穴開け工具は周知である。金属穴開け工具は切り屑除去加工により金属のワークに穴を形成するために使用される。このような工具は、前面の領域に配置される少なくとも2つの主切れ刃に加えて、中心軸、周面、前面及び反対端を有する。主切れ刃は金属穴開け工具の周面から出て中心軸方向に向かって実質的に内側に延びている。中心軸と交差するチゼルエッジは、通常、少なくとも2つの主切れ刃の間に設けられている。少なくとも金属穴開け工具が長すぎることなく、従ってその本来の安定性が過度に低い場合、これによって平坦で中心軸に対して垂直に広がる表面に穴を開ける場合にドリルの十分なセルフセンタリングを可能にすることは確かである。しかしながら、このような工具はチゼルエッジの延長部に沿って続く振り子運動を伴う傾向があり、その結果、ワークを加工する場合に振動が発生する。この振動は工具の回転運動と重なって、工具の有効寿命を短くする原因となる。さらに、そのような振動によって、円筒穴を形成することができないおそれがある。最終的には、工具の案内面にも振り子運動によって大きな負荷がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで言及するタイプの金属穴開け工具の場合、3つの主切れ刃と、よって3つのチゼルエッジセグメントをも有するが、振り子運動を少なくとも部分的に抑制できる限りにおいて工具の案内が改善される。しかしながら、ワークを加工する場合にかなり大きな押圧力を加える必要がある。
【0004】
従って、本発明の目的は上記の欠点を回避する金属穴開け工具を提供することである。
【0005】
本目的を達成するために、請求項1に述べる特徴を有する金属穴開け工具(以降において、略して「穴開け工具」とも呼ぶ)を提示する。上記穴開け工具は、中心軸、周面、前面と反対端、前記工具の前記周面から出る関連する逃げ面を有する前記前面の領域に配置された少なくとも2つの主切れ刃を有する。前記少なくとも2つの主切れ刃は、前記中心軸と同心となるように配置された仮想の第1円錐面上に配置され、前記円錐面は前記反対端の方向に開き、前記金属穴開け工具の頂角を表す第1円錐角を有する。前記第1円錐角は最大180°であり得る。従って、前記主切れ刃が、前記中心軸が直交する仮想平面上に位置することも可能である。本発明に係る前記工具は、少なくとも3つのエッジ、少なくとも3つの側面及び仮想ベース面を有する芯出し部を特徴とし、また、前記エッジの少なくとも2つが、前記中心軸と同心になり、また前記反対端の方向に開く第2円錐角を有するように配置された仮想の第2円錐面上に位置することを特徴とする。第2円錐角は、前記主切れ刃によってお互いに形成された前記の角度よりも小さく、その結果、前記仮想の第2円錐面は、前記反対端から見ると、前記前面の向かい側に突出する。これにより、ワークの加工中に前記工具がワークに最初に侵入し、それによって前記工具を案内するセンタリングポイントとして作用する、前記金属穴開け工具の前記前面の中央隆起部をもたらす。ワークの加工中、前記芯出し部は形成された掘削穴内の前記金属穴開け工具を安定化させる。前記第2円錐角を鋭角にすればするほど、前記工具が前記ワークの中央に良好に配置されることが判明している。しかしながら、そのような芯出し部はより破損しやすいことも判明している。
【0006】
このような工具はチゼルエッジ又はチゼルエッジセグメントが省かれ、前記芯出し部に置き換えられるという事実により、前記金属穴開け工具の中心に近い領域において、従来のチゼルエッジの場合よりも良好な穴開け特性が達成される。前記金属穴開け工具はワークを加工する場合、最小限のねじり振動と軸方向振動のみを示すという点で、穴開け特性が改善される。びびりの傾向も大きく低減される。これにより、高いレベルの滑らかな加工がもたらされ、その結果、形成された堀削穴の真円度や表面品質が大幅に改善される。本明細書に記載の本発明に係る前記工具を用いてより厳しい穴公差に適合することも可能である。さらに、ここで得られる前記穴開け特性により穴の円筒度が改善される。ここで設けられる前記芯出し部によって、ワークの加工中において送り速度をより大きくできることも判明している。前記工具の案内が改善されることにより、前記工具の案内面も不要となり、加工されるワーク内の前記工具の詰まりも防止される。芯出しの改善により、ワークの発熱の低減にもつながる。こうして、前記工具とワークの両方に対する摩耗も大幅に低減することができる。
【0007】
ここで提案される前記穴開け工具において、特にチゼルエッジの代わりに、つまりチゼルエッジに置き換わり、前記芯出し部が設けられている。具体的には、ここで提案される前記穴開け工具は、チゼルエッジがなく、従って特に好ましくはチゼルエッジが不要である。その代わり、チゼルエッジは前記芯出し部に置き換えられる。前記穴開け工具を用いて10μmの真円度を達成することができる一方、チゼルエッジを用いる従来の穴開け工具は、通常、50μmの三角形状の振れを生じさせる。
【0008】
前記ベース面は、具体的には、好ましくは仮想の幾何学的構造としてのみ存在する仮想のベース面であり、換言すると前記穴開け工具の材質に隠される。というのは、前記芯出し部は、好ましくは、前記穴開け工具の少なくとも1つの付加部、具体的には前記主切れ刃と前記第1逃げ面を有する前記穴開け工具の一部と一体であるからである。
【0009】
好ましくは、前記仮想ベース面は、正多角形であると同時に、当該多角形の中心は前記芯出し部の高さのベースポイント、具体的には前記芯出し部の先端である。
【0010】
特に好ましくは、前記ベース面は正多角形であり、前記ベース面は中点を有し、前記芯出し部の前記先端から出る又は前記先端で交わる前記芯出し部の全てのエッジは長さが同じで、一方では前記ベース面の前記中点と他方では前記先端との間の接続部が前記ベース面に垂直であり、その結果、前記先端からの垂線の前記ベースポイントは前記ベース面の中点と同一であり、つまり、前記ベースポイントは前記ベース面の内部に位置する。前記ベース面は、正多角形でないこともあり得るが、少なくとも点対称性を有する多角形である。その場合は当該多角形の対称の中心は前記芯出し部のベース中心点と一致する。この場合、前記エッジは異なる長さを有し得る。
【0011】
本発明の展開形態によると、前記芯出し部は前記中心軸と同軸で配置される。前記芯出し部の前記先端は好ましくは前記中心軸上に位置する。
【0012】
前記芯出し部を前に記載した実施形態のうちの1つに従って設計すると、ワークの加工中に前記穴開け工具の振動運動の発生がない又は顕著に減少した発生のみの最良のセルフセンタリングをもたらす。センタリングポイントという形の前記芯出し部は、前記穴開けの全工程中にテールセンターの機能を果たす。これにより、非常に円滑な作業、高安定性、最小のねじり振動と軸方向振動及びびびりがない作業をもたらす。こうして形成された前記堀削穴は、真円度の精度が向上し、そのためn角形穴の形成を回避できる。特に、前記堀削穴はこうして良好な真円度を有する。これにより、厳しい穴公差と工程の信頼性の向上がもたらされる。さらに、穴開け作業中に送り速度をより大きくすることが可能になる。前記穴開け工具は、詰まりを生じず、また前記芯出し部という形の安定したテールセンターにより、前記穴開け工具のガイド面取りは軽減され、そのため、ガイド面取りは長期間、元の形を保つ。前記ガイド面取りへの圧力は、案内を損なうことなく大きく低減される。また、ワークへの加熱が少ない結果にもなる。
【0013】
これらの利点は、前記芯出し部が前記中心軸と同軸に配置された場合、具体的には前記芯出し部の前記先端が前記中心軸上に位置する場合に特に実現される。
【0014】
前記芯出し部が正方形のベース面及び特に4つの好適な同じ側面を有することは可能である。この場合、すでに記載した利点は、非常に特別な形で実現される。前記ベース面は正三角形の形状も有し得、その場合、3つの側面全てもまた、特に、お互いにかつ前記ベース面と同一となる、すなわち同じ大きさの正三角形となるように好適に具現化されている。
【0015】
好適な実施態様例において、前記穴開け工具は3つの主切れ刃を有し、前記芯出し部は3つのエッジと3つの同じ側面並びに前記側面と同じで正三角形として具現化されているベース面を有する。
【0016】
別の好適な実施態様例において、前記穴開け工具は2つの主切れ刃を有し、前記芯出し部は4つの好適な同じ側面を有する正方形のベース面を有する。
【0017】
前記穴開け工具の前記主切れ刃のそれぞれは、好ましくは、前記前面から離れて前記反対端に向かって開く、すなわち幅が大きくなる縦溝を伴っている。具体的には、前記縦溝の断面は前記前面から前記反対端の方に向かって見ると大きくなる。これにより、縦溝内の切り屑の除去が促進される。
【0018】
好適な穴開け工具において、穴開け工具は3つの主切れ刃を有するように設けられている。この場合、前記芯出し部は3つのエッジと3つの側面から成る。前記工具の前記主切れ刃は、屈曲部又は屈曲領域を経由して前記芯出し部の前記3つのエッジに移行する。さらに、前記3つの主切れ刃の前記逃げ面は、屈曲部又は屈曲領域を経由して前記芯出し部の前記側面に移行し、本実施態様例において前記芯出し部は三角形の仮想ベース面を有する。前記エッジと側面の形状は、前記芯出し部が、前記端面上の前記穴開け工具の送り方向に、前記前面上方に立ち上がる、すなわち突出するように選択される。
【0019】
前記芯出し部の前記対応領域への前記主切れ刃及び前記逃げ面の移行は、このように屈曲部によって、すなわち多かれ少なかれ急峻に生じ得る。しかしながら、前記主切れ刃とエッジあるいは逃げ面と前記芯出し部の側面間の移行部に屈曲領域を設けることも可能であり、それによって、前記屈曲領域の曲率半径の選択により、加工されるワークの様々な材料に適合し得る多かれ少なかれ滑らかな移行をもたらす。
【0020】
前記芯出し部の領域に3つの主切れ刃と3つのエッジを有する本実施態様例において、好ましくは3つのエッジの全ては前記仮想の第1円錐面上に位置する。
【0021】
2つの主切れ刃を有する前記穴開け工具の好適な実施態様例において、前記芯出し部は4つのエッジと4つの側面を有するように設けられている。その場合、前記2つの主切れ刃は、屈曲部又は屈曲領域を経由して前記芯出し部の2つの対向するエッジに移行し、前記主切れ刃の前記2つの逃げ面は2つの対向する側面に移行する。前記芯出し部は、こうして、対で互いに対向して位置し、前記逃げ面が移行する2つの側面及びその2つの側面間に対で配置される2つの付加の側面を有する。前記芯出し部の前記ベース面は正方形であるが、四角形あるいは平行四辺形でも具現化されているベース面を設けることも可能である。
【0022】
本明細書に記載の実施態様例において、前記芯出し部の前記エッジのうち少なくとも2つ、具体的には前記2つの主切れ刃に隣接する前記対向するエッジは前記第2円錐面上に位置するように設けられている。その他の2つのエッジは前記第2円錐面に対してスプリングバックし得る。しかしながら、好ましくは、4つのエッジ全てが前記第2円錐面上に位置し、それにより加工されるワークの材料に一様に食い付く。
【0023】
別の好適な実施態様例において、各第2逃げ面は前記主切れ刃と反対側の前記第1逃げ面の端に隣接し、前記第1逃げ面の反対側の前記主切れ刃から前記工具の前記反対端の方に、第2逃げ角で下降するように設けられている。この種類の構造は、3つ刃及び両刃穴開け工具の両方で可能であり、また多数の主切れ刃から成る工具でも可能である。
【0024】
前記穴開け工具がこのように構成される場合、特に2つの主切れ刃を有する前記穴開け工具の場合、上記で述べたように、前記芯出し部の2つの側面が、連続する前記第1逃げ面を形成することは可能である。前記芯出し部の2つの側面は互いに対向して配置される。これらの側面間に位置する前記芯出し部のその他の2つの側面は、前記第1逃げ面とは異なる逃げ角で傾斜する前記第2逃げ面の領域によって形成される。
【0025】
従って、対で互いに対向して位置する2つの側面が、前記芯出し部の前記4つの側面のうちその他の2つとは別の角度を互いに形成することは可能である。
【0026】
前記穴開け工具の好適な実施態様例において、前記第1円錐角αに対して以下の仕様が設定されている。前記角度αは、好ましくは120°≦α≦180°の範囲内に、特に120°≦α<180°の範囲内に、より具体的には130°≦α≦150°の範囲内にある。
【0027】
前述したように、前記第1円錐角は、前記主切れ刃の領域において前記穴開け工具の頂角を形成する。前記第1円錐角は、加工されるワークの材料に応じて選択され得る。実際、ここに示す前記の角度は特に適切であることが証明されている。
【0028】
従って、前記穴開け工具の好適な実施態様例において、前記第2円錐角βに対して、前記主切れ刃により形成された前記角度より小さいという前提条件が適用されるように設けられている。従って、前記中心軸が直交する仮想平面上に前記主切れ刃が位置する場合、前記第2円錐角βは、180°未満、あるいは前記第1円錐角αより小さい。最終的に、前記第2円錐角βは、80°≦β≦150°の範囲内に、特に90°≦β≦140°の範囲内にあるように好適に選択される。
【0029】
加工されるワークの材料が柔らかければ柔らかいほど、選択され得る前記第2円錐角βはますます鋭角になる。
【0030】
前記第2円錐角βは、前記芯出し部の領域において前記穴開け工具の頂角を形成する。
【0031】
3つの主切れ刃を有する穴開け工具の好適な実施態様例は、前記芯出し部の前記3つの側面が前記工具の前記中心軸と角度δを形成することを特徴とする。好ましくは、3つの側面の全ては、前記中心軸に対して同じ角度δで傾斜している。前記角度δは、25°≦δ≦65°の範囲内に、好ましくは35°≦δ≦55°の範囲内にある。
【0032】
2つの主切れ刃を有する別の好適な実施態様例は、前記芯出し部が、前記反対端で開く角度γを形成する対で互いに対向して位置する2つの側面を有し、前記角度γに対して、60°≦γ≦150°、特に80°≦γ≦120°が適用されることを特徴とする。好ましくは、前記芯出し部の前記対向する側面の全ては、互いに同じ角度γを形成する。
【0033】
好適な実施態様例において、全てのエッジが前記中心軸の領域で交差するのではなく、むしろ、前記芯出し部の先端に、前記芯出し部の(前記2つの主切れ刃に移行する)前記エッジの間に配置されるチゼルエッジが備え付けられるように設けられている。本実施態様例は、このように、2つの主切れ刃から成る穴開け工具において実施される。そのような構成によって、前記中心軸上に位置する前記芯出し部の先端は、それほど傷付きやすくなく、従ってワークの加工中にそれほど容易には破損しないようにすることができる。
【0034】
本明細書に記載の前記芯出し部は、従来の穴開け工具に設けられているチゼルエッジの欠点を回避する機能を果たす。前記芯出し部により得られる利点を損なわないあるいは断念までしないために、上記のチゼルエッジの長さは、非常に小さく、好ましくは、前記穴開け工具の直径の6%未満に過ぎないように、特に2%未満であるように設けられている。
【0035】
前記穴開け工具の別の実施態様例において、前記芯出し部の前記仮想ベース面の周囲の直径は前記穴開け工具の直径より小さく、具体的には多くても3%乃至14%、特に好ましくは前記穴開け工具の直径の5%乃至12%を構成するように設けられている。前記芯出し部の前記仮想ベース面の周囲の直径が、加工されるワークの材料硬度に応じて選択される場合、有利であることが証明されている。好ましくは、加工されるワークの材料が硬くなればなるほど、前記芯出し部の前記仮想ベース面の周囲の直径が小さくなるように設けられている。
【0036】
穴開け工具の別の好適な実施態様例において、前記芯出し部の前記側面のうち少なくとも1つはギャッシュを備えるように設けられている。この構成は、前記芯出し部の前記関連するエッジのすくい面を小さくし、そうして切り屑除去を向上することを特徴とする。前記芯出し部の移行はギャッシュによって形成され、ギャッシュは、好ましくは、前記直径線に対して垂直に測定される前記芯出し部の幅を定義する中心からの距離を有する。前記直径線の方向に測定される前記芯出し部の長さは、前記主切れ刃の前記第1逃げ面が前記芯出し部の側面に移行する領域によって定義される。
【0037】
別の好適な実施態様例において、前記少なくとも2つの主切れ刃のそれぞれは副切れ刃に移行し、案内面は、好ましくは前記周面の領域においてそれぞれ前記副切れ刃に関連付けられ、その結果、前記穴開け工具を形成された堀削穴に最適に案内し、そうして切れ刃の負担を軽減するように設けられている。
【0038】
前記穴開け工具の別の好適な実施態様例において、前記少なくとも2つの主切れ刃の角ピッチは非対称であるように設けられている。その結果、ワークを加工する時に前記穴開け工具がびびる傾向を低減させる。
【0039】
前記少なくとも2つの主切れ刃のそれぞれは、前記穴開け工具のウェブ上に配置あるいは形成され、前記主切れ刃に関連付けられている前記ウェブは、前記主切れ刃の前記角ピッチが非対称である場合、周方向から見た場合に好ましくは大きさが異なる。具体的には、より大きいピッチ角(このより大きいピッチ角は少なくとも1つの他のピッチ角より大きい)の領域に配置される少なくとも1つの第1ウェブは、前記穴開け工具の少なくとも1つの他の第2ウェブよりも大きいように具現化され、前記第1ウェブは、好ましくは、より大きいピッチ角の領域において、第1ガイド面取り部に加えて第2ガイド面取り部に関連付けられている。前記第1ウェブは、従って、好ましくは、前記周方向において好適にお互いに離間した2つのガイド面取り部を有する。前記第1ウェブが少なくとも1つの他のウェブより大きいという事実は、具体的には、より大きいピッチ角の領域に配置された前記第1ウェブは、少なくとも1つの他の第2ウェブと比較して前記周方向に広げられることを意味する。
【0040】
別の好適な実施態様例において、前記穴開け工具は、ドリル本体に対するインサート品として具現化されるように設けられている。これにより、モジュラー式工具システムを実現することが可能になる。従って、このインサート品を様々なアプリケーションに適合させ、前記切れ刃が摩耗した場合に交換することは容易であり、特に費用対効果が高い。従って、摩耗によって工具全体を処分する必要はない。
【0041】
最終的に、少なくとも1つの冷却剤及び/又は潤滑剤供給源を設けることを特徴とする実施態様例が好ましい。ワークの加工中、冷却及び/又は潤滑されるのは、具体的には、ワークに食い付く前記穴開け工具の領域であり、そうして一方では前記工具の摩耗と他方ではワーク及び前記工具両方への負荷、具体的にはワーク及び前記工具の熱負荷が低減される。
【0042】
前記冷却剤及び/又は潤滑剤供給源は、好ましくは内部の冷却剤/潤滑剤供給源として具現化されている。具体的には、前記穴開け工具は、好ましくは、前記前面の開口部つながる少なくとも1つの内部冷却剤/潤滑剤流路を有し、それによりワークの加工中、前記少なくとも1つの内部冷却剤/潤滑剤流路を経由して冷却剤/潤滑剤を前記主切れ刃に供給することができる。前記少なくとも1つの冷却剤/潤滑剤流路は、好ましくは、前記穴開け工具の逃げ面、具体的には第1逃げ面及び/又は前記第1逃げ面に隣接する第2逃げ面につながる。
【0043】
全般的に見て、本明細書に記載の前記芯出し部は、ワークの加工中、前記工具の最適な芯出しに影響を及ぼす。従って、工具鋼製のベース本体を有するモジュール式穴開け工具の切削インサート品又はドリルヘッドに関して本明細書に記載する種類の工具は、特に有益である。すなわちそのようなベース本体は、同等の固体カーバイド又は全セラミックの工具より実質的に安定性が低い。従って、前記工具の有効なセルフセンタリングは特に重要でありまた有益である。
【0044】
本明細書に記載の種類の芯出し部を有する工具は、カーバイド、切削セラミック又は多結晶ダイヤモンド(PCD)等の超硬切削材料を使用する場合、特に有益である。何故なら、そのような切削材料は優れた耐圧性と耐摩耗性を有するからである。その結果、前記芯出し部のエッジの鋭さは長期間保持される。
【0045】
前記穴開け工具は、好ましくは、少なくとも前記主切れ刃の領域及び前記芯出し部の領域において、固体カーバイドを有し、あるいは固体カーバイドから成る。あるいは、前記穴開け工具は、少なくとも前記主切れ刃と前記芯出し部の領域において、固体セラミックを有することも可能である。好ましくは、前記穴開け工具は固体セラミック製である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明について図面を参照して以下においてより詳細に説明する。
図1】金属穴開け工具の第1実施態様例の概略正面図を示している。
図2】第1実施態様例の概略側面図(Y視)を示している。
図3】第1実施態様例の第2の概略側面図(X視)を示している。
図4】金属穴開け工具の第2実施態様例の概略正面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1の概略図において、2つの主切れ刃3/1及び3/2から成る金属穴開け工具1の第1実施態様例を示している。第1逃げ面、すなわち第1の第1逃げ面5/1及び第2の第1逃げ面5/2は、主切れ刃3/1及び3/2に隣接し、主切れ刃3/1及び3/2から出て画像面に下降する。
【0048】
図1は、金属穴開け工具1(下記において、略して穴開け工具又は工具と呼ぶ)の前面7の平面図を示している。穴開け工具1の反対端(図示せず)は図1の画像面から離れている。
【0049】
第1逃げ面5/1及び5/2は、穴開け工具1の周面9から内側に延びている。主切れ刃3/1及び3/2が異なる形状の主切れ刃部を有することが可能である。
【0050】
本明細書に示す実施態様例において、主切れ刃3/1及び3/2は同一であり、外側の第1の及び隣接する内側の第2の主切れ刃部を有する。これについては主切れ刃3/1を参照して説明する。第1の主切れ刃部11/1は、例えば、周面9から出て、本図で水平方向に走る仮想直径線D1と平行に延びている。当該主切れ刃部11/1は、本図で、屈曲部13/1を経由して第2の主切れ刃部15/1に移行し、鋭角で直径線D1の方向に下降する。主切れ刃部11/1及び15/1は、本図で、例として模写されている。第1の主切れ刃部11/1が、周面9の起点から凹状に湾曲して、すなわち円弧状に直径線D1に接近して、次に再び屈曲部13まで円弧状に立ち上がることも十分可能である。
【0051】
第2の主切れ刃3/2は、第1の主切れ刃3/1と点対称になるように具現化されている。
【0052】
第2の主切れ刃部15/1は、工具1の中心軸M(図1の画像面に垂直で、仮想第1直径線D1と鉛直の仮想第2直径線D2の交点に位置する)に到達しない。
【0053】
逃げ面5/1及び5/2は点対称である。そのため以下の第1の第1逃げ面5/1に関する説明は第2の第1逃げ面5/2にも当てはまる。
【0054】
第1の第1逃げ面5/1は、周面9から中心軸Mの方向に向かって、図1に示す補助線H1まで延びている。補助線H1の領域から、第1の第1逃げ面5/1は、芯出し部19の第1エッジ21/1と第2エッジ21/2の左右により区画される芯出し部19の第1側面17/1を形成するよう観察者の方向に立ち上がっている。第1の第1逃げ面5/1は、先細になって点になり、その先端は中心軸M上に位置する。第1側面17/1と対応する向かい側の第2の第1逃げ面5/2の第2側面17/2は、同一に構成され、第1逃げ面5/1及び5/2から同じ角度で延び、穴開け工具1の中心軸Mまで立ち上がる。ここで第2側面17/2は第3エッジ21/3と第4エッジ21/4により区画される。本図で、第3側面17/3と第4側面17/4は2つの対向する第1と第2側面17/1と17/2との間に位置する。2つの対向する第3及び第4側面17/3及び17/4は、第1側面17/1と第2側面17/2とともに、図1の画像面から及び前面7から観察者の方向に延びている芯出し部19を形成する。
【0055】
補助線H1及びH2は、芯出し部19の第1逃げ面5/1と第1側面17/1との間及び第1逃げ面5/2と第2側面17/2との間の移行領域の屈曲部を示している。しかしながら、ここで、第1逃げ面5/1、5/2が上記側面17/1、17/2に移行する円弧状の移行部を実現することも可能である。
【0056】
なお、第1実施態様例における芯出し部19の4つのエッジ21/1、21/2、21/3及び21/4のうち少なくとも2つ、具体的には、関連付けられた主切れ刃に移行するエッジは、仮想の第2円錐面上にある。
【0057】
図1において、第1チップスペース23/1を第1の主切れ刃3/1の上方に見ることができる。それに応じて、第2チップスペース23/2を第2の主切れ刃3/2の下方に見ることができる。チップスペース23/1及び23/2は主切れ刃3/1及び3/2によって除去された切り屑を搬出する機能を果たす。
【0058】
第1の第1逃げ面5/1の下方には、それと関連付けられた第1の第2逃げ面25/1を図1において見ることができる。それに応じて、第2の第2逃げ面25/2が第2の第1逃げ面5/2の上方に設けられている。第2逃げ面25/1、25/2は、主切れ刃3/1、3/2の反対側の第1逃げ面5/1、5/2の端に隣接する。第2逃げ面25/1、25/2は、第1逃げ面5/1、5/2よりも傾斜が大きい。第1逃げ面5/1と第2逃げ面25/1並びに5/2と25/2は、線で示される屈曲部27/1、27/2を経由して、それぞれお互いに一体化する。第2逃げ面25/1及び25/2は、これらの屈曲部から前面7と反対側の工具1の端(図示せず)の方向に延びている。屈曲部の代わりに、円弧状の移行領域を設けることも可能である。この図に示す実施態様例において、チップスペース23/1及び23/2は、第2の主切れ刃部15/1及び15/2を区画していない、あるいはその全体の長さにわたって区画していない。むしろ、各ギャッシュ29/1、29/2がここに設けられている。ギャッシュは周知なため、本明細書ではこれ以上説明しない。
【0059】
第2の主切れ刃部15/1と15/2は、芯出し部19の第2エッジ21/2と第4エッジ21/4を経由してお互いに移行する。従来のチゼルエッジが省略されて、代わりに、図1の画像面から突出する、ここで述べる芯出し部19のエッジ21/2と21/4が、中心軸Mの方に面する第2の主切れ刃部15/1と15/2の端と相互に接続することが、ここで極めて重要である。
【0060】
いずれにせよ,ここで述べる芯出し部19のエッジ21/2と21/4は、工具1により加工されるワークに食い付く刃を形成する。これらの刃から除去された切り屑は、芯出し部19の関連付けられた第3及び第4側面17/3及び17/4上を通って、ギャッシュ29の領域、そしてそこからチップスペース23/1及び23/2の領域へ移動する。これらのエッジ21/2、21/4は、負のすくい角によって特徴付けられる。これらのエッジ21/2、21/4によるワークの加工は、スクレイピングと呼ばれることが多い。その結果として、正のすくい角がある主切れ刃3/1又は3/2の領域における場合のように、ここでは積極的な切り屑除去は行われない。
【0061】
これとともに、工具1は、また、第1エッジ21/1と第3エッジ21/3によってスクレイピング方式でも加工される。スクレイピングによる加工は、このように、4つの全てのエッジ21/1、21/2、21/3及び21/4により行われる。
【0062】
一般的に、スクレイピングは、好ましくは芯出し部19の全てのエッジ、すなわち具体的には、ここで示した実施態様例の4つの全てのエッジ21/1、21/2、21/3及び21/4によって、あるいは3つのエッジ21/1、21/2及び21/3の全てによってのいずれかで行われる。
【0063】
芯出し部19は、その全てのエッジによりワークとスクレイピング食い付きをするという事実に基づいて、芯出し部19は、穴あけ加工の全体にわたって穴開け工具1を安定化させるテールセンターの機能を果たすことができ、従って平滑度、安定性のレベルを高め、ねじれ振動と軸方向振動を最小にすることに寄与する。特に、芯出し部19は、このようにセンタリングポイントとして作用することができる。
【0064】
図1を参照して説明した芯出し部19は、図1の画像面から前面7を越えて立ち上がる。芯出し部19は、実質的に長方形の仮想ベース面を有する。正方形又は平行四辺形の形状のベース面を有する芯出し部19を実現することも可能である。
【0065】
図2による概略図は、図1で模写される穴開け工具1の第1実施態様例の側面図、すなわち図1においてその方向が示されるY視を示している。
【0066】
同じ及び機能上、類似の部品には同じ参照符号が付けられている。そのため、その関連で、図1に関する説明を参照されたい。
【0067】
ここで中心線Mの上方に示されている第1図において、図2の概略図は第1の主切れ刃3/1並びに第1の主切れ刃部11/1と第2の主切れ刃部15/1の一部に関連付けられた、第1すくい面31/1の第1チップスペース23/1を区画する第1すくい面31/1を示している。第2の主切れ刃部15/1の残りの部分に関するすくい面を形成するギャッシュ29/1も見ることができる。第1の主切れ刃3/1により除去された切り屑は、こうして、第1すくい面31/1及びギャッシュ29/1から第1チップスペース23/1の中に案内される。この構成は、第2の主切れ刃3/2に対しても点対称で設けられている。
【0068】
左側の第2の第1逃げ面5/2に隣接する第2の主切れ刃3/2は、中心線Mの下方に見ることができる。第2の第1逃げ面5/2は、屈曲部27/2を経由して第2の第2逃げ面25/2に移行する。
【0069】
本実施態様例において、第1及び第2の主切れ刃3/1及び3/2は、中心軸Mが直交する平面に対して、前面7の反対側の端Eの方向において左側に下降することが図2から分かる。2つの主切れ刃3/1、3/2は、反対端Eの方向に開く第1円錐角αを有する仮想の第1円錐面上に位置する。より明確にするために、第1円錐角αは、図1で模写される第2の主切れ刃部15/1及び15/2よりも中心軸Mから遠い距離に位置する第1の主切れ刃部11/1及び11/2に対して接する補助線によってここに示されている。
【0070】
ここに示されていない実施態様例において、2つの主切れ刃3/1及び3/2は、中心軸Mが直交する仮想平面上に位置することもでき、その場合、第1円錐角αは180°であることに特に留意されたい。
【0071】
前面7と反対側の端Eから見た場合、中心軸Mと同軸に位置する芯出し部19は、前面7から、すなわち矢印Vにより示される前進方向に突出することが図2から分かる。穴開け工具1は、ワークに堀削穴を形成する場合加工されるワーク(図示せず)に対してこの方向に移動する。原則として、ワークに堀削穴を形成するために、中心軸Mの方に見た場合静止しているドリルに対してワークを回転するようにセットし移動させることは可能である。しかしながら、ここでは、ドリルはワークに対して中心軸Mの周りに回転し、矢印Vの方向、すなわち前進方向に移動し、そして芯出し部19は前面7からこの方向に突出することを前提とする。
【0072】
主切れ刃3/1及び3/2のそれぞれは、副切れ刃33/1及び33/2によって周面9の領域内で外側に隣接する、そして、案内面35/1及び35/2は副切れ刃33/1及び33/2と関連付けられているが、第2の副切れ刃33/2の第2案内面35/2のみ見ることができる。案内面35/1、35/2は、副切れ刃33/1、33/2に隣接する平面又はいわゆる円形研削面取り部により形成され得る。穴開け工具1は、ワークの加工中これらの面によって支持される。ここで言及される種類の案内面は周知であるので、ここではこれ以上説明しない。
【0073】
図3は、第2側面図(図1の情報に従ってX視とも呼ばれる)における穴開け工具1の第1実施態様例の概略図を示している。
【0074】
図3において、前端(すなわち前面7を有する端)を拡大している。同じ及び機能上、類似の要素には同じ参照符号が付けられている。そのため、その関連で、前述の説明を参照されたい。
【0075】
第1逃げ面5/2及び屈曲部27/2を経由して第1逃げ面5/2に隣接する第2逃げ面25/2とともに、第2の主切れ刃3/2を中心線Mの下方に見ることができる。
【0076】
中心線Mの上方に、外側の第1の主切れ刃部11/1とともに第1の主切れ刃3/1を見ることができる。ここで、用語「外側」は、当該第1の主切れ刃部11/1が、第2の主切れ刃部15/1より中心軸Mから遠い距離に配置されていることを示している。
【0077】
図3に従った説明により、第1チップスペース23/1を区画する第1すくい面31/1が第1の主切れ刃部11/1と隣接することが分かる。ギャッシュ29/1は、その側壁が少なくとも一部の領域で第2の主切れ刃部15/1に対するすくい面を形成するが、中心線Mの上方で当該第2の主切れ刃部15/1に近接する。
【0078】
図3の拡大図から、芯出し部19が前面7を超えて突出し、その結果、本明細書で示す工具1が使用される場合、穴開け工具1によりワークに堀削穴を形成する場合にまず芯出し部19がワークに食い付くことが明白に分かる。
【0079】
図3に従った図(すなわち図1に示すX視)は、第3エッジ21/3及び第2エッジ21/2を区画する芯出し部19の第3側面17/3を示している。第2側面17/2及び補助線H2は第3エッジ21/3の下方に見ることができる。
【0080】
第1逃げ面5/1及び5/2が、補助線H1、H2により示される屈曲部又は屈曲領域を経由して芯出し部19の第1及び第2側面17/1及び17/2に続くことは、図1を参照して説明した。図3に従った図により、第2の第1逃げ面5/2が第2側面17/2に続くことが分かる。第4側面17/4は、芯出し部19の観察者とは反対側に設置されている。
【0081】
中心軸Mの上方で、第1の主切れ刃3/1は、第2の主切れ刃部15/1を経由して、第1の主切れ刃部11/1から芯出し部19の第2エッジ21/2に続いている。図1の平面図から、第2エッジ21/2が中心軸Mを越えて第4エッジ21/4に続くことが分かる。
【0082】
第2の主切れ刃3/2の連続を形成する反対側の第4エッジ21/4とともに、第2エッジ21/2は、前記仮想の第2円錐面の第2円錐角βに対応する角度を形成する。
【0083】
図2に模写される第1円錐角αと図3に示す第2円錐角βは、大きさが異なる、すなわち第1円錐角αは第2円錐角βより大きいことは図3の概略図より明白である。その結果、図3において、芯出し部19は、より小さい第2円錐角βで前面7を超えて右側に立ち上がり、センタリングポイントを形成する。図1乃至図3に示す工具1の第1実施態様例の説明を要約し補足する。
【0084】
第1円錐角αは120°≦α≦180°の範囲で、特に120°≦α<180°の範囲で、好ましくは130°≦α≦150°の範囲で選択される。
【0085】
第2円錐角βは主切れ刃により形成される角度よりも小さい。つまり、主切れ刃3/1及び3/2が仮想平面内に位置する場合、180°より小さい、あるいは主切れ刃3/1及び3/2が開き角<180°で仮想円錐面上に位置する場合、第1円錐角αより小さい。さらに、第2円錐角は、80°≦β≦150°の範囲内、好ましくは90°≦β≦140°の範囲内にあるように設けられている。
【0086】
4つのエッジ21/1乃至21/4を有する芯出し部19を有する本明細書に示された実施態様例について、エッジ17/1乃至17/4の間に位置する側面は、お互いに対向する対で配置される。第1及び第2側面17/1及び17/2は、第1逃げ面5/1及び5/2に関連付けられているが、工具1の端の方向に前面7と反対側に開く角度をそれらの間に形成する。この開き角はγと呼ばれ、60°≦γ≦150°の範囲内、特には80°≦γ≦120°の範囲内にある。好ましくは、対で互いに対向する両側の側面17/1、17/2、17/3及び17/4は、その間に当該角度γを形成する。そして、具体的には、2つの側面対のそれぞれはその間に同じ角度を形成するように設けられている。
【0087】
図4は、金属穴開け工具1(ここでは、略して穴開け工具1と呼ぶ)に関する第2実施形態の前面7の概略平面図を示している。図1乃至図3は2つの主切れ刃3/1、3/2を有する穴開け工具1を示すのに対して、図4は、3つの主切れ刃3/1、3/2及び3/3を有する穴開け工具1を正面図で示している。3つの主切れ刃3/1、3/2及び3/3の全ては、関連する逃げ面、すくい面等とともに、同一であるので、以下において第1の主切れ刃3/1について説明する。図4において、その他の2つの主切れ刃は、3/2及び3/3で表す。主切れ刃に関連付けられている対応する要素は、対応する数値符号が付される。例えば、5/1は、第1の主切れ刃3/1の第1逃げ面を表し、5/2は、第2の主切れ刃3/2の第1逃げ面を表し、そして5/3は、第3の主切れ刃3/3の第1逃げ面を表す。
【0088】
主切れ刃3/1、3/2及び3/3は、穴開け工具1の周面9から、ここで示すように周面から直線あるいは凹形の線に沿って延び、それぞれ、ここに第1の主切れ刃部11/1、11/2、11/3を形成する。屈曲部13/1を経由して、第1の主切れ刃部11/1は第2の主切れ刃部15/1に続き、最終的に芯出し部19に至る。これによりここに三角形のベース面を有することとなる。
【0089】
第1の主切れ刃3/1は、エッジのうちの1つ(ここでは、芯出し部19の第1エッジ21/1)に続いている。第1実施態様例において、第1エッジ21/1は、図4の画像面から観察者の方に立ち上がるように、第2の主切れ刃部15/1の端が位置する平面から湾曲してあるいは円弧状に延びている。
【0090】
それに応じて、第2の主切れ刃3/2は第2エッジ21/2に続き、第3の主切れ刃3/3は芯出し部19の第3エッジ21/3に続いている。
【0091】
逃げ面は主切れ刃3/1、3/2及び3/3に隣接する。穴開け工具1の第2実施形態では、先行する図に従う実施態様例と同様に構成される。第1逃げ面5/1は第1の主切れ刃3/1に隣接し、そして第1の主切れ刃3/1から図4の画像面に、すなわち前面7の反対側の端(図示せず)の方向に下降する。
【0092】
ここで、また、第1逃げ面5/1から屈曲部27/1を経由して続く第2逃げ面25/1があり、次に、屈曲部27/1から図4の画像面に下降する。ここで、第2逃げ面25/1は第1逃げ面5/1よりも傾斜が大きい。
【0093】
第1逃げ面5/1は、周面9から出て芯出し部19まで延びている。第1逃げ面5/1は、屈曲部を経由して芯出し部19の第1側面17/1に移行することは補助線H1により示されている。屈曲部を設けずに、むしろ第1逃げ面5/1と第1側面17/1との間の移行部において観察者の方に向かって上向きに曲げられる領域を設けることも可能である。
【0094】
同じことが芯出し部19の他の側面17/2及び17/3に当てはまる。全体として、芯出し部19は、側面17/1、17/2及び17/3をエッジ21/1、21/2及び21/3の間に設けることで、3つのエッジ21/1、21/2及び21/3により、ここに形成される。
【0095】
図4に従ってここに示される実施態様例において、主切れ刃3/1乃至3/3は、前面7と反対側の端Eの方向に開く第1円錐角αを有する仮想の第1円錐面上に少なくとも一部配置されるように設けられている。
【0096】
しかしながら、中心軸Mが直交する仮想平面上に3つの主切れ刃3/1、3/2及び3/3が位置する実施態様例(図示せず)を実現することも可能である。
【0097】
芯出し部19の領域において、3つのエッジ21/1乃至21/3の全ては、前面7と反対側の端Eの方向に開く第2円錐角βを有する仮想の第2円錐面上に位置するように設けられている。第1実施形態に関連する前述の説明は角度α及びβに関して同様に当てはまる。
【0098】
穴開け工具1に関するセンタリングポイントとして作用する芯出し部19の先端は、小さい第2円錐角βの場合、非常に傷付きやすく破損する恐れがあることが分かった。この場合、芯出し部19の先端をある程度平らにし、そして好ましくは、ここに、主切れ刃3/1、3/2及び3/3のうち少なくとも2つに移行する芯出し部19のエッジ21/1、21/2及び21/3の間に配置される非常に短いチゼルエッジを設けることが可能である。なお、ここで、チゼルエッジは、工具直径の6%未満、特に2%未満を占めるに過ぎない。
【0099】
ここで言及する種類の穴開け工具1において、好ましくは、芯出し部19のベース面の周囲の直径は、穴開け工具1の直径よりも実質的に小さく設けられている。周囲の直径をドリル径の2%乃至15%の範囲内、特に5%乃至12%の範囲内に選択することが特に適切であると証明されている。
【0100】
実際のところは,直径線に沿って延びている溝が施された、前面7の領域に設けられているドリル本体を有する工具も存在する。切れ刃と上記の工具のその他の特徴を有するインサート部が当該工具に形成される。換言すると、ここに記載された特徴を有する穴開け工具1をドリル本体に対するインサート品として非常にうまく構成することが可能である。
【0101】
最終的に,図1乃至図3に従う第1実施態様例と図4に従う第2実施態様例の両方に、少なくとも1つの冷却剤及び/又は潤滑剤供給源を設けることも可能である。冷却剤及び/又は潤滑剤は、工具1が使用される場合に圧力下で供給される。その場合において、切れ刃を潤滑、冷却するために、ワークの加工中に切れ刃に冷却剤/潤滑剤を供給する開口部が好適に設けられている(ここでは前面内に)。冷却剤/潤滑剤の供給によって利用できる冷却剤/潤滑剤が出てくる3つの開口部37/1乃至37/3が、図4において事例のために設けられている。
【0102】
そのような開口部37/1、37/2及び37/3は図1乃至図3の実施形態においても設けることができる。しかしながら、それらは図1乃至図3に示されていない。
【0103】
芯出し部19は、好ましくは中心軸Mと同軸になるように配置される。具体的には、芯出し部19の先端は、好ましくは中心軸M上に位置するように配置される。
【0104】
穴開け工具1の実施態様例は、芯出し部19が、好ましくは4つの同一の側面を有する正方形のベース面を有することが好ましい。
【0105】
図4に示す第2実施形態において、芯出し部19は、正三角形のベースを有し、好ましくは同様に正三角形である3つの同じ(好ましくは、ベース面と同じ大きさの)側面を有することが好ましい。
図1
図2
図3
図4