(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】鉛筆芯
(51)【国際特許分類】
C09D 13/00 20060101AFI20220512BHJP
C09C 1/46 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
C09D13/00
C09C1/46
(21)【出願番号】P 2019547148
(86)(22)【出願日】2018-04-09
(86)【国際出願番号】 FR2018050882
(87)【国際公開番号】W WO2018189467
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-01-21
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501436665
【氏名又は名称】ソシエテ ビック
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE BIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グーレック,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】クラプティエン,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ルフェーブル,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】デブラウワー,クリステル
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-014666(JP,A)
【文献】特開平08-183924(JP,A)
【文献】特開平05-039449(JP,A)
【文献】特表2012-533636(JP,A)
【文献】特開2010-163541(JP,A)
【文献】特開2015-160887(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0015858(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2003-0078423(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 13/00
C09C 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーベース、押出可能、非膨張、非焼成であり、黒鉛を含む鉛筆芯において、黒鉛の総重量のうち、25~100
%が膨張黒鉛からなることを特徴とする鉛筆芯。
【請求項2】
黒鉛の総重量のうち、50~100%が膨張黒鉛からなることを特徴とする請求項1記載の鉛筆芯。
【請求項3】
前記黒鉛の総重量の100%が前記膨張黒鉛からなることを特徴とする、ポリマーベースである、請求項1に記載の鉛筆芯。
【請求項4】
ポリマーベースであり、前記膨張黒鉛が粉末状であることを特徴とする、請求項1
~3のいずれか1項に記載の鉛筆芯。
【請求項5】
ポリマーベースであり、芯の総重量に対して、以下を含むことを特徴とする、請求項1~
4のいずれかに記載の鉛筆芯。
40~60
重量%の黒鉛、
15~40
重量%のポリマー、
5~15
重量%の無色又は白色のミネラル充填材、
5~20
重量%のカーボンブラック、
0~16
重量%の添加剤。
【請求項6】
前記ポリマーがポリオレフィン、スチレンポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択され
ることを特徴とする、請求項1から
5のいずれかに記載の鉛筆芯。
【請求項7】
前記ポリマーがポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の鉛筆芯。
【請求項8】
無色又は白色のミネラル充填材が、粘土、タルク、ボロナイトライド、シリカ、炭酸カルシウム、雲母、ステアタイト粉末、及びそれらの混合物からなる群から選択され
ることを特徴とする、請求項
5~7のいずれか1項に記載の鉛筆芯。
【請求項9】
無色又は白色のミネラル充填材が粘土である請求項5~8のいずれか1項に記載の鉛筆芯。
【請求項10】
ミネラル充填材がモントモリロナイト、ベントナイト、カオリン及びそれらの混合物
からなる群から選択される粘土であることを特徴とする、請求項
8又は9に記載の鉛筆芯。
【請求項11】
添加剤が滑り剤、機械動作剤、カップリング剤、分散剤、潤滑剤、可塑剤及びそれらの混合
物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項
5から
10のいずれかに記載の鉛筆芯。
【請求項12】
添加剤がステアリン酸塩、アミド、ワックス、脂肪酸、グリセロール及びその誘導体、ポリプロピレンにグラフトされたシロキサン、ポリプロピレンにグラフトされた無水マレイン酸、フタレート、アジペート、ベンゾエート、セバケート及び/又はクエン酸塩可塑剤、並びにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5~11のいずれか1項に記載の鉛筆芯。
【請求項13】
押出成形されていることを特徴とする、請求項1から
12のいずれかに記載の鉛筆芯。
【請求項14】
請求項1から
13のいずれかに記載の芯を含む鉛筆。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張黒鉛を含む、焼成されていないポリマーベースの鉛筆芯に関する。
【背景技術】
【0002】
天然黒鉛は、例えば国際公開第2016/097553号のような、押出可能なポリマーベースの(すなわち、合成及び非焼成)鉛筆芯で日常的に使用されている。天然黒鉛の種類の選択と、黒鉛と芯のポリマーの重量比は、鉛筆で得られたマークの黒さに影響を与え、消去の有効性に影響を与えることが知られている。ただし、欠点は機械的特性にも影響することである。さらに、このタイプの芯ポリマー、可塑剤及び添加剤は、消去作用を妨げる。実際、これらの材料は、紙の表面上で消去中に消しゴムが黒鉛と直接接触し、黒鉛が除去されるのを防ぐ。したがって、消しゴムは黒鉛及びプラスチック誘導体の両方を除去する必要があるが、これは完全には実現されない。したがって、一般的に、消去すると用紙に暗いマーク/影が残る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、驚くべきことに、特定のタイプの黒鉛、膨張黒鉛が、プラスチック材料の存在にもかかわらず、機械的性質に悪影響を与えずに、合成、すなわちポリマーベースの鉛筆芯によって残されたマークの消去作用を改善することを可能にしたことを観察した。実際、天然黒鉛と膨張黒鉛の違いは、膨張黒鉛の場合、2つの黒鉛ラメラ間の中間層がはるかに大きいことである。したがって、本発明者らは、この特定の特徴が、微粒子が紙の繊維に押し込まれるのを防ぐと思われるナノフィラーとして作用すると考えている。そうすると消去はより効果的である。消去の有効性の改善は、例えば、国際公開第2016/097553号による実施例(比較例1)と天然黒鉛の代わりに膨張黒鉛を用いた実施例(実施例1)との比較により明らかである。
【0004】
JP57-014666出願によれば、その機械的特性を改善するために、焼成黒鉛中の天然黒鉛との混合物で膨張黒鉛を使用することが知られている。
【0005】
ただし、このタイプの芯には、プロセスの最後、つまり最終芯にプラスチック材料が含まれていない。実際、組成物中に最初に存在する合成樹脂は、材料の機械加工にのみ使用される:圧縮紡糸法(JP57-014666出願では誤って押出法と呼ばれている)により、芯を糸の形に成形するのに役立つ。その後、製造プロセス中の焼成工程で完全に消失するまで、それらは徐々に除去される。したがって、このタイプの芯は、本発明によるポリマーベースの芯と同じ技術的問題、すなわち、紙上で消去されるマークに黒鉛のみが存在するため、消去困難の問題に遭遇しない。
【0006】
特許出願US2012/0037035は、特定の物理的性質を有する花弁状黒鉛を記載している。しかしながら実施例によれば、そのような黒鉛は天然起源のものであり、膨張黒鉛ではない。
【0007】
さらに、鉛筆芯にそのまま使用するのではなく、この黒鉛と接触し、さらに複合体を形成するような方法で接着するナノ粒子と組み合わせて使用する(段落0013)。
【0008】
さらに、実施例によれば、そのような黒鉛を含む鉛筆の芯は焼成された芯である。
【0009】
最後に、この特定の黒鉛と、それが微粒子とともに形成する複合材料を使用する目的は、消去性能を改善することではなく、反対にそれを含む鉛筆芯で描かれた線の色を強化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、ポリマーベース、押出可能、非膨張、非焼成であり、黒鉛を含む鉛筆芯において、総黒鉛重量に対し、重量25~100%、有利には50~100%の黒鉛を特徴とし、膨張黒鉛で構成されている。
【0011】
したがって、本発明による芯は、合成芯とも呼ばれるポリマーベースの黒鉛芯のカテゴリーに属し、よって焼成されていない。故に、その製造方法では焼成工程は使用されない。
【0012】
本発明の意味において、「ポリマーベースの鉛筆芯」は、少なくとも1つのポリマーを含む任意の鉛筆芯を意味すると理解される。したがって、このポリマーは、製造方法中に芯を製造するためのマトリックスとして機能し、最終製品の機械的特性、筆記品質、及び消去品質も管理する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
有利な実施形態では、本発明による芯は、芯の全重量合計に対し、15重量%から40重量%、有利には20重量%から35重量%、又はより有利には25重量%から32重量%のポリマーを含む。
【0014】
別の有利な実施形態では、芯のポリマーは、ポリオレフィン、スチレンポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される。 ポリオレフィンとスチレンポリマーの混合物が使用される場合、当業者に知られている相溶化剤(例えば、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン、デュポンからのフサボンド)を加えることができる。
【0015】
芯がポリオレフィンを含む場合、それは本発明の文脈において「ポリオレフィンベースの芯」と呼ばれる。
【0016】
したがって、本発明の意味において、「ポリオレフィンベースの鉛筆芯」は、少なくとも1つのポリオレフィンを含む任意の鉛筆芯を意味すると理解される。有利には、本発明によるポリオレフィンベースの芯では、ポリオレフィンが芯の主要ポリマーである。さらにより有利には、ポリオレフィンベースの芯は他のポリマーを含まない。有利には、ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン及びそれらの混合物、特に、ポリプロピレン、特にポリプロピレンホモポリマーからなる群から選択することができる。
【0017】
芯がスチレンポリマーを含む場合、それは、本発明の文脈において「スチレンポリマーベースの芯」と呼ばれる。
【0018】
したがって、本発明の意味において、「スチレンポリマーベースの芯」は、少なくとも1つのスチレンポリマーを含む任意の鉛筆芯を意味すると理解される。有利には、本発明によるスチレンポリマーベースの芯では、スチレンポリマーが芯の主要なポリマーである。さらに有利には、スチレンポリマーベースの芯は他のポリマーを含まない。有利には、スチレンポリマーは、ポリスチレン(PS)、スチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)及びそれらの混合物からなる群から選択され、特にアクリロニトリル-ブタジエンスチレン共重合体(ABS)及びポリスチレン(PS)からなる群から選択される 。
【0019】
さらに別の有利な実施形態では、芯のポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
本発明による芯は、押出可能であり、すなわち、押出により得ることができる。有利には、それは押し出される。本発明による芯は、その組成中に膨張黒鉛が存在するにもかかわらず、膨張していない。実際、その製造方法では膨張剤は使用されていない。さらに、使用されるポリマーは膨張しない。
【0021】
本発明による芯は、鉛筆芯、すなわち、鉛筆、特に木材又は合成木材材料でコーティングされた鉛筆に使用されることが意図され、任意に、特に特許出願WO01/43987に記載されるような中間保護層を含む。
【0022】
したがって、本発明による鉛筆芯は、黒鉛の総重量に対し、前記黒鉛の25重量%から100重量%、有利には50重量%から100重量%が膨張黒鉛からなる黒鉛を含む。
【0023】
有利な実施形態では、前記黒鉛の100重量%が膨張黒鉛からなる。
【0024】
膨張黒鉛は、天然又は合成黒鉛から、黒鉛の層状構造への酸の挿入、特に硫酸の挿入など、当業者に周知の方法によって製造することができる。このようにして得られた黒鉛は、膨張黒鉛と呼ばれる。その後、非常に高い温度で熱衝撃にさらされる。挿入要素が各黒鉛微結晶を蒸発させて膨張させる。
【0025】
膨張黒鉛は、グラフテックインターナショナル社からTG-679 グラフォイルという名前で、Imerys社からTIMREX(登録商標)BNB90という名前で、Graphit Kropfmuhl GmbH社からSC 20 OSという名前で、又はSC 5 O QUINDAO KROPFMUEHL GRAPHITE社のQKGという名前でも市販されている。
【0026】
本発明による膨張黒鉛の比表面積(BET法)は、有利には18m2/gより大きく、特に≧20m2/gである。
【0027】
本発明による膨張黒鉛の硫黄含有量は、膨張黒鉛の総重量に対して、有利には400ppmより大きく、特に≧500ppmである。
【0028】
有利な実施形態では、本発明による鉛筆芯は、芯の総重量に対して40重量%~60重量%、有利には44重量%~50重量%の黒鉛を含み、そのうち25重量%~100重量%、有利には50重量%から100重量%、さらにより有利には100重量%の前記黒鉛が、黒鉛の総重量に対して、膨張黒鉛からなる。
【0029】
したがって、有利には、本発明による鉛筆芯は、10重量%~60重量%、有利には11重量%~60重量%、より有利には20重量%~60重量%、さらにより有利には22重量%~50重量% が芯の総重量に対して、膨張黒鉛である。
【0030】
黒鉛の残りが存在する場合、膨張せず天然黒鉛であり得る。
【0031】
黒鉛は、膨張しているか膨張していないかにかかわらず、粉末状にすることができる。
【0032】
特に、黒鉛は、膨張又は非膨張に関わらず、レーザー粒度分布、例えばSympatec Heliosブランドのレーザー粒度分布計(回折)で測定した体積で、D50が4~40μm、有利には15 ~40μm、より有利には15~25μmの間である(粒度分布の体積測定-Fraunhofer法 ISO 13320)。
【0033】
黒鉛は、優れた機械的特性、特に曲げに対する耐性、及び書き込み中の柔らかさをリードに与えると同時に、黒さの一部をもたらすことを可能にする。
【0034】
膨張黒鉛は、さらに消去特性を上昇させることを可能にする。
【0035】
有利には、本発明の黒鉛、特に膨張黒鉛は、微粒子、特に特許出願US2012/0037035に記載されるような微粒子との組み合わせでは使用されず、さらにより詳細には、そのような微粒子との複合体を形成しない。
【0036】
さらにより有利には、それは特許出願US2012/0037035に記載されるような特有の物理的特性を持った花弁状の黒鉛ではない。
【0037】
ポリマー及び黒鉛について加えると、本発明の鉛筆芯は黒鉛の全重量に対して、特に重量5~15%、有利には重量6~10%の無色又は白色のミネラル充填材をさらに含むことができる。
【0038】
有利な実施形態において、無色又は白色のミネラル充填材は粘土、タルク、ボロナイトライド、シリカ、炭酸カルシウム、雲母、ステアタイト粉末、及びそれらの混合物を含む群から選択される。有利には、粘土、シリカ、タルク、及びそれらの混合物から選択される。より有利には、それは層状の無色又は白色のミネラル充填材であり、より詳細には粘土、ボロナイトライド、雲母、タルク及びそれらの混合物を含む群から選択される。特に有利には、それはモントモリロナイト、ベントナイト、カオリン及びそれらの混合物を含むグループから特に選択される粘土である。より詳細には、それは、カオリン、特に、例えばSOKA社によりBLANKALITE77という名前で市販されている、2~5μmの、マイクロメトリックス社のSEDIGRAPH(商標)装置を用いて沈降により重量を測定された粒子径D50を持つカオリンである。
【0039】
シリカ及びタルクの目的は、曲げに対する耐性及び破壊に対する耐性のような黒鉛に機械的特性を与えることである。層状のミネラル充填材は書いている間の柔軟性に寄与し、及び黒鉛シートの形態において紙の上で裂ける構造を維持するという目的を持つ。
【0040】
本発明の鉛筆芯は更にカーボンブラックを、黒鉛の総重量に対して特に重量5~20%、有利には重量5~15%含むことができる。
【0041】
使用されるカーボンブラックは特にポリオレフィンワックス又はポリオレフィンをコート又はミックスしたカーボンブラックであり、特にポリオレフィンワックスをコート又はミックスしたカーボンブラックである(例えば、マスターミックス、顔料製剤又はカーボンブラックをワックス又はポリオレフィン、特にワックス内に分散した形態)。
【0042】
カーボンブラックは芯に黒さを与えることができるが、ポリオレフィンワックス又はポリオレフィンは消去のし易さを改善することができる、というのも、ポリオレフィンワックス又はポリオレフィンはカーボンブラック粉末が、その上に本発明による黒鉛を含む鉛筆によるマークがされている支持体の上を貫通することを防ぐからである。したがって、ポリオレフィンまたはポリオレフィンワックスとの混合又はコーティングは、本発明による鉛の組成物への添加の前に行われる。
【0043】
ポリオレフィンワックスはポリオレフィンよりも有利である、というのも紙上での柔らかさがポリオレフィンよりもポリオレフィンワックスを混ぜる又はコートしたカーボンブラックのほうが良いからである。さらに、混合物中の分散ひいては均一性及び黒さはポリオレフィンワックスをコート又は混合して使用するほうが優れている。
【0044】
有利には、ポリオレフィンはポリプロピレン又はポリエチレン又はそれらの混合物であり、有利にはそれはポリエチレン、例えば、低濃度のポリエチレンである。
【0045】
一実施形態では、ポリオレフィンワックス又はポリオレフィンでコート又は混合されたカーボンブラックにおけるカーボンブラック含量は、ポリオレフィンワックス又はポリオレフィンでコート又は混合されたカーボンブラックの総重量に対して重量25~65%、有利には重量30~60%である。
【0046】
特に有利な一実施形態では、本発明における黒鉛に使用されるカーボンブラックは、ポリオレフィンワックスでコートされたカーボンブラックである。有利には、この場合、ポリオレフィンワックスでコートされたカーボンブラックにおけるカーボンブラックの含量は、ポリオレフィンワックスでコート又は混合されたカーボンブラックの総重量に対して重量40~65%である。
【0047】
有利には、ポリオレフィンワックスはポリプロピレンワックス又はポリエチレンワックス又はそれらの混合物である。有利には、ポリエチレンワックス、例えば低濃度ポリエチレンワックスである。
【0048】
有利には、ポリオレフィンワックスでコートされたカーボンブラックは、SunChemical社のSunfast(登録商標)PE Flush Black L47-9000という名前で市販されている。
【0049】
最終的には、本発明の鉛筆芯は添加剤を含むことができ、黒鉛の全重量に対して特に重量0~16%、有利には重量5~15%である。
【0050】
この添加剤は鉛筆芯の分野の当業者がよく知る添加剤から選択されることができ、特に滑り剤、機械動作剤、カップリング剤、分散剤、潤滑剤、可塑剤及びそれらの混合物を含むグループから、有利にはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛及びそれらの混合物のようなステアリン酸塩、アミド、特にエチレンビステスアルアミドのようなステアラミド、ワックス、脂肪、グリセロール及びその誘導体、グリセロールベヘネート、グリセロールジベヘネート、グリセロールステアレート、及び/又はポリグリセロールジイソステアレート、特にグリセロールべへネート、ポリプロピレンに移植されたシロキサン、ポリプロピレンに移植された無水マレイン酸、フタレート、アジペート、ベンゾエート、セバケート及び/又はクエン酸塩可塑剤、及びそれらの混合物を含むグループから、より有利にはカルシウムステアレート、エチレンビスステアラミド、フタレート、及びそれらの混合物を含むグループから選択されることができる。
【0051】
有利には、本発明における芯は、黒鉛の全重量に対して特に重量2~10%、有利には重量3~9%、カルシウムステアレートを含む。カルシウムステアレートは紙上での柔らかさと滑り特性を与える。
【0052】
別の有利な一実施形態では、本発明の芯はアミドを含むことができ、特にエチレンビスステアラミドのようなステアラミドを、芯の総重量に対して、有利には重量0.5~3%、有利には重量1~2.5%含むことができる。アミドは組成物における充填材の分散を助けることができ、及び滑り品質に対してわずかにプラスの効果をもたらす。
【0053】
本発明の芯はまたベンジルフタレートのようなフタレートを含むことができ、特にC7-C9アルキルベンジルフタレートを、芯の総重量に対して、有利には重量0~4%、より有利には重量1~3%含むことができる。フタレートは可塑剤である。
【0054】
よって、より有利な一実施形態では、重量比で本発明の鉛筆芯は芯の総重量に対して、以下の%含む。
-黒鉛を40~60%、有利には44~50%、
-ポリマーを15~40%、有利には20~35%、
-無色又は白色のミネラル充填材を5~15%、有利には6~10%、
-カーボンブラック、特にポリオレフィン又はポリオレフィンワックスをコート又は混合したカーボンブラックを5~20%、有利には5~15%、
-添加剤を0~16%、有利には5~15%。
【0055】
別の有利な一実施形態では、本発明の鉛筆芯はパーム油を含まない。
【0056】
本発明の特別な実施形態では、鉛筆芯は2~3.9mmの直径を持ち、有利には、直径2~2.3mm(細い芯)又は直径3~3.8mm(太い芯)又は直径3.4~3.8mm(とても太い芯)である。
【0057】
有利には、本発明の鉛筆芯は六角形、丸又は三角の断面、有利には丸又は六角形の断面である。
【0058】
本発明の鉛筆芯は当業者がよく知る方法によって製造されることができる。
【0059】
例えば、全ての構成物が一緒に混合され、そして得られた混合物は適温にて押し出される。次に得られた芯は冷やされる。ゆえに芯はか焼されていない。
【0060】
よって、本発明の芯は、良い機械的特性、特に折り曲げ耐性及び/又は衝撃耐性を持ちながら、消去において改善された消去を示す。
【0061】
発明はまた、本発明における芯を含む鉛筆、特に木又は合成材木材料でコートされた、例えば特許出願WO01/43987及びWO2016/097554で記載されるように、中間保護層を選択的に含む鉛筆に関する。
【0062】
有利には、鉛筆は芯、合成材木材料、及び選択的に中間保護層の共有押し出し成形により得られる。
【0063】
特に、合成材木材料はスチレンポリマーに基づき、そして中間保護層は接着層の役割を果たし、有利にはEVA及びポリスチレンの混合物を含むことができる。
【0064】
有利には、合成材木材料は天然木と同じ密度になるまで膨張される。
【0065】
本発明の特別な実施形態では、本発明の鉛筆は特に同心円状に、合成材木材料を覆う、追加の装飾層、有利にはニスを含む。有利には、装飾層は、合成木材材料の材料と適合する材料で作られている。
【0066】
有利には、本発明の鉛筆は六角形、丸、又は三角の断面、有利には丸又は六角形の断面を持つ。
【0067】
有利には、本発明の鉛筆は、鉛筆の尖っていないほうの先端に消しゴムのような消去する手段を持つ。
【実施例】
【0068】
本発明は、限定しない指示として与えられる以下の実施例の記述を読むことによって、より良く理解されることができるであろう。
【0069】
実施例1
以下の表は本発明の鉛筆芯の組成物の例の集合であり、消去における消去の改善及び鉛筆として使用されるのに十分な機械的特性の特徴を得ることを可能にしている。
【0070】
【0071】
これらの組成物から、3ゾーンで170度Cに熱せられる、直径2.3mmの丸い金型、引き抜き作業台を持つ実験室の単スクリュー押し出し機を用いて芯は製造される。
【0072】
実施例2:3点湾曲強度試験
実施例1において製造されたNo.1からNo.4の芯の3点湾曲強度を2016年のNF EN ISO 178―Plastiques Determination des Proprietes en Flexion(プラスチック-湾曲特性の決定)に基づいて行った。ただし、注入されたダンベル型の標本の代わりに押し出された条片が用いられる。湾曲強度を、グラファイトが非膨張であること以外は組成物No.1を有する比較例で得られた結果と比較した(比較例1)。
【0073】
得られた結果は以下の表2にまとめられている。
【0074】
【0075】
本発明による鉛筆芯及び比較例1の3点湾曲強度は同様であった。よって膨張黒鉛は芯における3点湾曲強度に悪い影響を与えない。
【0076】
実施例3
芯に対する紙上での消去の有効性は、No.1及びNo.2についてテストされ、比較例1のリードと比較された。テスト結果は以下のとおりである。
【0077】
装置
-筆記具HUTT HST 10又は同等のものが以下の条件で使用された。
・筆記スピード:4.5m/分
・筆記角度:70°
・他のパラメータ:以下の表3に示す。
-ISO用紙:AURORA ISO-14145
-X-Riteのスペクトロアイ装置又は同等のもの
-鉛筆削り
【0078】
【0079】
サンプル:参考文献につき1~3個
【0080】
操作手順:
適切な支持に基づいて筆記具を用意し、必要であれば芯を尖らせる。
前記の表に指示されたパラメータに基づく摩擦を生む(スクリプトメーター装置の位置3~8のみが使われる)。
適切な支持に基づいて消しゴムを用意する。
事前に作成した摩擦の半分から始めて消去を実行する。
摩擦及び消去の黒さの密度を、DIN 16536 NBに基づいて、スペクトロアイ(黒さに対して最低2回測定)を使用して測定し、対応するデルタを計算又は消去された線の割合を表現する:消去の有効性%=(1-消去された黒度/摩擦黒度)×100。
【0081】
得られた結果は以下の表4にまとめられている。
【0082】
【0083】
消去の有効性は、比較例1と比較すると、本発明の例においてより良くなっており、芯No.1に対して最適な効果が得られた。