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特許7072002アビバクタムナトリウムの結晶形Cの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】アビバクタムナトリウムの結晶形Cの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/08 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
C07D471/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019563686
(86)(22)【出願日】2018-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2018053052
(87)【国際公開番号】W WO2018146134
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-13
(31)【優先権主張番号】17155178.1
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】305008042
【氏名又は名称】サンド・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ベルナー,ベロニカ
(72)【発明者】
【氏名】レヒナー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】スタッグル,ブリギッテ
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517027(JP,A)
【文献】特表2013-507346(JP,A)
【文献】特表2016-510062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定して、(6.5±0.2)°、(14.4±0.2)°、(15.5±0.2)°、(18.0±0.2)°及び(19.3±0.2)°の2θ角に反射を含む粉末X線回折図を有する多形Cのアビバクタムナトリウムの製造方法であって、
(i)アビバクタム又はその塩、及び溶媒を含み、混合物の重量に基づいて2重量%未満の含水量を有する混合物を用意するステップ、
(ii)(i)で用意した前記混合物の温度を少なくとも55℃に上昇させ、ステップ(i)に比して圧力を増加させるステップ
を含み、
(i)で用意したアビバクタムの形態がアビバクタムナトリウムではない場合、ステップ(i)及び/又は(ii)の前記混合物にナトリウム源を添加し、
これにより多形Cのアビバクタムナトリウムを得る、方法。
【請求項2】
(i)の前記混合物が、該混合物の重量に基づいて1.5重量%未満の含水量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒が、各々少なくとも4個の炭素原子を有するアルキル鎖を有する、アルコール、エステル、エーテル、ケトン、カーボネート、及びその混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒が、C-Cアルコール、C-Cエステル、C-C環状エーテル、直鎖状又は環状ケトン、カーボネート、及びその混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、イソブタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、1,4-ジオキサン、THF、メチル-THF、酢酸エチル、酢酸イソブチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びジエチルカーボネートからなる群から選択される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
(ii)において前記圧力を、少なくとも5mbar上昇させる、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
(ii)において前記温度を、少なくとも59℃に上昇させる、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
(ii)において前記温度を、55℃~180℃の範囲の温度に上昇させる、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
(i)で用意した前記混合物が、結晶形、非晶形又はその混合物アビバクタム又はその塩を含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
(i)で用意した前記混合物が、溶媒、及び
室温で0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定して、
(8.5±0.2)°、(16.4±0.2)°、(17.1±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有する結晶形“A”のアビバクタムナトリウム
(13.0±0.2)°、(16.5±0.2)°、(17.2±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有する結晶形“B”のアビバクタムナトリウム
(16.2±0.2)°、(17.4±0.2)°、(17.8±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有する結晶形“D”のアビバクタムナトリウム、又は
(13.7±0.2)°、(15.0±0.2)°及び(15.4±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有する結晶形“E”のアビバクタムナトリウム、或いは
れらの混合物
を含む混合物である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
(i)で用意した前記アビバクタム又はその塩が、アビバクタムの塩であり、
アニオンが、式(X)
【化1】
の化合物であり、
カチオンがMであり、ここで、MがNRR’R”R”’であり、R、R’、R”及びR”’が各々独立して水素及び1~6個の炭素原子を有するアルキル基から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(i)が、
結晶形“B”及び/又は“D”のアビバクタムナトリウム、及び少なくとも2重量%を超える含水量を有する溶媒を含む混合物を用意し、
前記混合物をインキュベートし、
その後、前記混合物の含水量を、該混合物の重量に基づいて、0.9重量%未満に減少させる、
請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(i)が、
アビバクタムの遊離酸、及び少なくとも2重量%を超える含水量を有する溶媒を含む混合物を用意し、
適当なナトリウム源を添加し、
任意に、前記混合物をインキュベートし、
その後、前記混合物の含水量を、該混合物の重量に基づいて、0.9重量%未満に減少させる、
請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(i)が、
アニオンが式(X)、
【化2】
の化合物であり、
カチオンがMであり、ここでMがNRR’R”R”’であり、R、R’、R”及びR”’が各々独立して水素及び1~6個の炭素原子を有するアルキル基から選択されアビバクタムの塩、及び少なくとも2重量%を超える含水量を有する溶媒を含む混合物を用意し、
適当なナトリウム源を添加し、
任意に、前記混合物をインキュベートし、
その後、前記混合物の含水量を、該混合物の重量に基づいて、0.9重量%未満に減少させる、
請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ナトリウム源が、1つ以上のアルカリ性ナトリウム塩を含、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アビバクタムナトリウムの結晶形Cの製造方法に関する。本発明は、そのような方法により製造したアビバクタムナトリウムの結晶形C、及び前記結晶を1つ以上の抗菌剤と組み合わせて含み、少なくとも1つの抗菌剤がβ-ラクタム系抗生物質である医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
IUPAC名[(2S,5R)-2-カルバモイル-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-6-イル]硫酸水素塩の式(I)を有するアビバクタムは、それ自体臨床的に適切な用量で抗菌活性を持たないと報告されている非β-ラクタム系β-ラクマターゼ阻害剤である。
【0003】
【化1】
【0004】
しかしながら、アビバクタムは、β-ラクタム系抗生物質をβ-ラクマターゼ酵素による分解から保護し、したがってβ-ラクタム系抗生物質の抗菌活性を維持する。したがって、アビバクタムは、細菌性感染の治療のためにβ-ラクタム系抗生物質と組み合わせると有用である。
【0005】
WO 2011/042560 A1は、アビバクタムナトリウムの結晶形に関する。例えば、WO 2011/042560 A1は、無水形態B及びD、及び水和形態A及びEを開示している。加えて、この明細書(3ページ,6-7行目)によれば、“形態C”と称される第5形態が形態Aとの混合物としてのみ観察された。具体的には、WO 2011/042560 A1は、「形態Cは純粋な形で単離されず、1つ以上の他の形態、特に形態Aとの混合物で得られる」ことを明白に述べている(12ページ,5-7行目)。しかしながら、この明細書は、そのような混合物をどのように製造するか、又は前記形態Cをどのように得るかの教示を与えていない。
【0006】
更に、WO 2014/135930 A1は、粉末X線回折により特徴づけられるアビバクタムナトリウムの結晶形を開示している。6ページに記載されているピークリスト及びこの出願明細書の図1に示されている対応の粉末X線回折図によれば、この固体はWO 2011/042560 A1に記載されている少なくとも形態B及び形態Dを含む混合物に帰属し、形態Cは存在していない。
【0007】
PCT/EP2016/068925は、アビバクタムナトリウムの結晶形C、特に多形的に純粋な又は本質的に多形的に純粋な形態の結晶形C、及びその製造のための工業的に適用可能な、信頼できるロバストな方法、及びその医薬組成物に関する。この文献は、アビバクタムナトリウムの多形的に純粋な形態Cの信頼できる製造及び単離のための最初の開示に相当する。無水形Cは多形的に安定であり、すなわち周囲条件下で、及び固体医薬剤形のような医薬組成物の製造において起こる条件下で、他の結晶形態に変換しない。加えて、結晶形Cは、湿度に対して物理的に安定であり、温度ストレスに対して非常に安定である。
【0008】
加えて、EP 16185913.7は、遊離酸の形態のアビバクタム及びその製造方法に関する。アビバクタム遊離酸は、例えばその低い吸湿性、及び湿度及び温度ストレスに対する安定性のため、医薬目的のために非常に有用である。この文献は、更に、アビバクタム遊離酸及びその製造方法がアビバクタムの精製のために有用であることを立証している。
【0009】
水和形は、温度ストレス下、或いは酸性又は塩基性条件下でしばしば加水分解される傾向にあることは当業者に周知である。水和物は脱水傾向にもある。例えば、水和物は乾燥条件及び/又は高温に曝されると結合水を簡単に放出する。例えば、WO 2011/042560 A1は、アビバクタムナトリウム二水和物形態Eは水を失い、長い保存中より高い温度で加水分解する傾向にあることを述べている(17ページ,1-2行目)。この明細書には、形態Eは約70%の相対湿度を超えて特に安定であり(15ページ,25行目)、この水和形が湿度の存在下でのみ安定であることを示していることが言及されている。加えて、形態Eは約60℃を超える温度で一水和物形態Aに脱水すること、更なる温度ストレスで形態Aは無水形Bに脱水することが知見された。このような物理的形態の変換は医薬加工として重要であり、ミリングは通常熱の発生を伴う。よって、医薬目的ではアビバクタムナトリウムの無水形が水和物よりも好ましい。
【0010】
適切な物性の他に、固体形の製造可能性により、医薬品の製造のための実現可能な候補者であるかどうかが決まる。WO 2011/042560 A1(16ページ,30-31行目)によれば、無水形Dは非常に小さな結晶としてしか得られず、濾過が難しく且つゆっくりであり、よって形態Dを生成することが困難となる。したがって、単離に関する制限のために、形態Dを工業的規模で生成することができない。加えて、製造方法のロバスト性及び信頼性が物理的形態の選択のための主要な基準である。WO 2011/042560 A1(17ページ,8-14行目)は、例えば無水形Bを種晶の非存在下で製造することは難しく、非常に狭い水活性でしか得られないことを述べている。明細書に開示されている種晶作成(16ページ,22-26行目)は容易ではなく、まして工業的に適用できないようである。したがって、無水形Bの信頼できる工業的製造は非常に困難であると見られる。
【0011】
医薬目的ではアビバクタムナトリウムの無水形が好ましいので、医薬組成物の製剤化及び保存中にアビバクタムナトリウムの他の物理的形態に変換せず、湿度に対して物理的に安定であり且つ温度ストレスに対して非常に安定である無水形Cは医薬品の製造のために特に適格である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2011/042560号
【文献】国際公開第2014/139530号
【文献】国際出願番号第PCT/EP2016/068925号
【文献】欧州特許出願番号第16185913.7号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記にてらして、アビバクタムナトリウムの多形的に純粋な結晶形Cを製造することができる効率的方法が要望されている。したがって、本発明の1つの目的は、アビバクタムナトリウムの結晶形Cを製造するための改善された方法、特に工業的規模で効率的に使用することができる、すなわち費用対効果が高く、大量の有機溶媒及び/又は危険な試薬の使用を伴わない方法を提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、使用する出発物質に関して高い寛容性を示すアビバクタムナトリウムの結晶形Cを製造するための改善方法、すなわち異なる結晶形のような別の出発物質を使用することができ、アビバクタムナトリウムの結晶形Cを常に且つ確実に提供する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
驚くことに、本発明により提供される方法が、上記した要件すべてを満たし、アビバクタムナトリウムの結晶形Cを効率的で費用対効果の高い方法で製造し得る産業上利用可能な方法に相当することを知見した。
【0016】
特に、本発明により提供される方法により、アビバクタムの遊離酸及びその各種塩、例えばそのテトラブチルアンモニウム又はナトリウム塩を含む各種出発物質を使用することができる。
【0017】
更に、本発明の方法は、多形的に純粋な、又は本質的に多形的に純粋なアビバクタムナトリウムの結晶形Cを得るために使用され得る。
【0018】
よって、本発明は、20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定して、(6.5±0.2)°、(14.4±0.2)°、(15.5±0.2)°、(18.0±0.2)°及び(19.3±0.2)°の2θ角に反射を含む粉末X線回折図を有する多形Cのアビバクタムナトリウムの製造方法であって、
(i)アビバクタム又はその塩、及び溶媒を含み、混合物の重量に基づいて2重量%未満の含水量を有する混合物を用意し、
(ii)(i)で用意した前記混合物の温度を少なくとも55℃に上昇させ、正圧を与える
ことを含み、(i)で用意したアビバクタムの形態がアビバクタムナトリウムではない場合、ステップ(i)及び/又は(ii)の前記混合物にナトリウム源を添加し、これにより多形Cのアビバクタムナトリウムを得る、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の各種態様を、本発明を限定することなく実施形態により更に詳細に以下に説明する。本発明の各態様を1つの実施形態により、又は2つ以上の実施形態を組み合わせることにより説明し得る。
【0020】
本発明は、20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定して、(6.5±0.2)°、(14.4±0.2)°、(15.5±0.2)°、(18.0±0.2)°及び(19.3±0.2)°の2θ角に反射を含む粉末X線回折図を有する多形Cのアビバクタムナトリウムの製造方法に関し、その方法は、
(i)アビバクタム又はその塩、及び溶媒を含み、混合物の重量に基づいて2重量%未満の含水量を有する混合物を用意し、
(ii)(i)で用意した前記混合物の温度を少なくとも55℃に上昇させ、正圧を与えることを含み、
(i)で用意したアビバクタムの形態がアビバクタムナトリウムではない場合、ステップ(i)及び/又は(ii)の前記混合物にナトリウム源を添加して、多形Cのアビバクタムナトリウムを得る。
【0021】
この方法の少なくともステップ(ii)をクローズドシステム中で、例えば規定の反応容積を有する密閉可能な容器中で実施する。好ましい実施形態では、ステップ(ii)を密閉反応容器中で実施する。本明細書中で使用されている用語「密閉反応容器」は、本発明の一連のステップを実施するのに適した容器を指す。具体的には、密閉反応容器により、反応条件、特にステップ(ii)における温度及び圧力を厳しくコントロールすることができる。にもかかわらず、密閉反応容器は、例えば所望の正圧を得るためにステップ(ii)において不活性ガスを添加することにより、及び/又は所要によりナトリウム源を添加することにより、物質をコントロール下で添加又は除去するための追加の入口及び/又は出口を含み得る。物質を添加又は除去するために穴をあけることができる隔膜を用いて反応容器を密閉させてもよい。
【0022】
(ii)において混合物の温度を少なくとも55℃に上昇させ、正圧を与えるときに、(i)において用意した混合物が該混合物の重量に基づいて2重量%未満の含水量を有していることが必須である。好ましくは、(i)において用意した混合物は、該混合物の重量に基づいて1.8重量%未満、より好ましくは1.6重量%未満、より好ましくは1.5重量%未満、より好ましくは1.4重量%未満、より好ましくは1.3重量%未満、より好ましくは1.2重量%未満、より好ましくは1.1重量%未満、より好ましくは1.0重量%未満、より好ましくは0.9重量%、より好ましくは0.8重量%未満、より好ましくは0.7重量%未満、より好ましくは0.6重量%未満、より好ましくは0.55重量%未満の含水量を有し得る。各種実施形態では、(i)において用意した混合物は、該混合物の重量に基づいて0.01重量%~2.0重量%未満、好ましくは0.1重量%~1.5重量%、より好ましく0.2重量%~0.9重量%、更により好ましくは0.3重量%~0.6重量%の範囲の含水量を有し得る。典型的には、混合物を固体形態のアビバクタム又はその塩と溶媒を混合することにより用意する。よって、混合物の含水量は通常、対応する含水量を有する溶媒を選択することにより与えられる。
【0023】
ステップ(ii)では、ステップ(i)において用意した混合物に正圧を与えることも必須である。本明細書中で使用されている用語「正圧を与える」は、ステップ(i)において混合物を用意したときの圧力に比して当業界で適当な手段によるステップ(ii)の圧力の増加に関する。正圧を与えるために幾つかの方法があり、これらは単独で、又は組み合わせて使用され得る。例えば、ステップ(i)において用意した混合物の温度を上昇させた結果としての溶媒の蒸気圧により、例えば温度を溶媒の沸点を超えて上昇させたときに、正圧が与えられ得る。正圧は不活性ガスを用いる加圧によっても与えられ得る。また、所要による密閉反応容器へのナトリウム源の添加は正圧に寄与し得る。正圧は上記した方法の組合せによっても与えられ得る。
【0024】
よって、好ましい実施形態では、ステップ(ii)において不活性ガスを添加する。好ましくは、不活性ガスを反応容積に、例えば密閉反応容器に添加する。より好ましい実施形態では、不活性ガスはステップ(ii)において、例えば密閉反応容器に正圧を与えるのに十分な量である。上に詳記したように、これは密閉反応容器の追加入り口を介してなされ得る。適当な不活性ガス、例えば窒素及び希ガスからなる群から選択される不活性ガスを使用し得る。
【0025】
通常、ステップ(i)において混合物は任意の圧力、例えば0.1bar~5barの範囲の圧力で用意され得る。1つの実施形態では、ステップ(i)において混合物を用意したときの圧力は約1.00barの標準大気圧であり得る。しかしながら、他の実施形態では、圧力はより低くても、より高くてもよく、例えば約0.70、0.80、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.20、又は1.30barであり得る。ステップ(ii)で与えられる正圧に関して、正圧はステップ(i)において混合物を用意したときの圧力に比して正、すなわちより高い。
【0026】
好ましい実施形態では、(ii)における正圧は、少なくとも5mbar、好ましくは少なくとも8mbar、より好ましくは少なくとも10mbar、更により好ましくは少なくとも15mbar、更により好ましくは少なくとも20mbarの正圧である。(ii)における正圧は、少なくとも50mbar、60mbar、70mbar、80mbar、90mbar、100mbar、200mbar、300mbar、400mbar、又は500mbarの正圧でもあり得る。
【0027】
特定の実施形態では、(ii)における絶対圧は210bar以下、好ましくは12bar以下、より好ましくは8bar以下、更により好ましくは5bar以下である。例えば、ステップ(i)において混合物を用意したときの圧力は約1.013bar、又は0.95bar~1.05barの範囲であり、ステップ(ii)における絶対圧は約1.1bar、1.5bar、2.0bar、5bar、7.0bar、11.0barであり得る。
【0028】
先の説明から明らかなように、用語「正圧」又は「過圧」は、反応混合物と系の環境の間の圧力差を指さず、ステップ(i)とステップ(ii)の間の反応混合物の圧力差、すなわちステップ(ii)における圧力がステップ(i)に比して高いことを指す。換言すると、ステップ(ii)における混合物の絶対圧をステップ(i)に比して増加させる。説明すると、ステップ(i)における混合物の絶対圧が例えば1.00barならば、ステップ(ii)において正圧又は過圧を与えると、ステップ(ii)における混合物の絶対圧は1.00barを超える値、例えば1.005bar、1.1bar、又は2barとなる。前記圧力増加は不活性ガスを用いる加圧により達成され得るが、他の適当な手段又はその組合せによっても達成され得る。例えば、前記圧力増加は、ステップ(ii)における密閉反応容器中の混合物の温度をステップ(i)に比して上昇させることにより達成され得る。このことは、例えば実施例2に例示されている。前記圧力増加は加圧以外の他の手段により、例えばステップ(ii)における密閉反応容器中の混合物の温度をステップ(i)に比して上昇させることにより達成させるとき、不活性ガスを用いる加圧は任意である。
【0029】
各種実施形態では、ステップ(ii)において混合物の圧力をステップ(i)における圧力に比して少なくとも5mbar、好ましくは少なくとも8mbar、より好ましくは少なくとも10mbar、更により好ましくは少なくとも15mbar、更により好ましくは少なくとも20mbar増加させる。他の実施形態では、圧力を少なくとも50mbar、60mbar、70mbar、80mbar、90mbar、100mbar、200mbar、300mbar、400mbar、又は500mbar増加させ得る。
【0030】
好ましい実施形態では、溶媒は、各々少なくとも4個の炭素原子のアルキル鎖を有する、アルコール、エステル、エーテル、ケトン、カーボネート、及びその混合物からなる群から選択される。これらの化合物はすべて直鎖状、分枝状又は環状であり得る。例えば、第1級、第2級又は第3級アルコールを使用し得る。上述したように、溶媒は、混合物中に上で特定した含水量を得るためには典型的には2重量%未満、又はそれ以下の含水量を有する。
【0031】
より好ましい実施形態では、溶媒は、4~10個の炭素原子、好ましくは4~8個の炭素原子、より好ましくは4~6個の炭素原子を有する。
【0032】
更により好ましい実施形態では、溶媒は、C-Cアルコール、C-Cエステル、C-C環状エーテル、直鎖状又は環状ケトン、カーボネート、及びその混合物からなる群から選択される。
【0033】
特に好ましい実施形態では、溶媒は、イソブタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、1,4-ジオキサン、THF、メチル-THF、酢酸エチル、酢酸イソブチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルカーボネート、及びその混合物からなる群から選択される。
【0034】
別の特に好ましい実施形態では、溶媒は、イソブタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、1,4-ジオキサン、メチルイソブチルケトン及び酢酸エチルからなる群から選択される。
【0035】
ステップ(ii)においてステップ(i)で用意した混合物の温度を少なくとも55℃に上昇させることが必須である。ステップ(i)における混合物の用意に関して、これは55℃未満の温度で、好ましくはほぼ室温で行い得る。ステップ(ii)において温度を上昇させるとき、温度を連続的に上昇させること、すなわち温度を少なくとも55℃に上昇させている過程で温度の相対的低下を避けることが好ましい。
【0036】
好ましくは、(ii)において、温度を少なくとも59℃、より好ましくは少なくとも63℃、更により好ましくは少なくとも66℃、更により好ましくは少なくとも70℃、最も好ましくは少なくとも73℃に上昇させる。温度を約75℃、90℃、110℃、120℃、又は126℃の温度に上昇させてもよい。しかしながら、(ii)における温度が溶媒の分解温度未満であることがかなり好ましい。
【0037】
各種実施形態では、(ii)において、温度を55℃~180℃、好ましくは59℃~150℃、より好ましくは63℃~140℃、更により好ましくは66℃~135℃、更により好ましくは70℃~130℃、最も好ましくは73℃~126℃の範囲の温度に上昇させる。
【0038】
具体的実施形態では、温度を(ii)において少なくとも66℃に上昇させ、正圧は少なくとも5mbarの正圧である。別の具体的実施形態では、温度を(ii)において少なくとも70℃に上昇させ、正圧は少なくとも5mbarの正圧である。
【0039】
通常、高温及び/又は正圧は適当な時間維持され得る。好ましくは、アビバクタムナトリウムの形態Cの形成が完了するまで高温及び正圧を維持する。正確な時間は、温度及び圧力条件、並びに/又は混合物中の出発物質の濃度に依存する。具体的実施形態では、(ii)において高温及び正圧を少なくとも2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、11分間、12分間、13分間、14分間、15分間、16分間、17分間、18分間、19分間、又は20分間維持する。高温及び正圧を数時間、又は最高24時間又はそれ以上維持し得るが、(ii)において高温及び正圧を180分以下、好ましくは120分以下、より好ましくは60分以下、更により好ましくは50分以下、更により好ましくは45分以下、最も好ましくは40分以下維持することが好ましい。経済的理由で、高温及び正圧を最小時間維持することが推奨される。
【0040】
具体的実施形態では、(ii)において高温及び正圧を2~50分間、好ましくは5~45分間、より好ましくは10~40分間、更により好ましくは15~40分間、最も好ましくは20~40分間維持する。
【0041】
アビバクタム出発物質に関して、本発明の方法は高い順応性を有する。一方で、アビバクタムをその遊離酸の形態で使用することが可能である。他方、アビバクタムを塩の形態で、例えばアビバクタムナトリウム、又はアビバクタムテトラブチルアンモニウムのような非ナトリウム塩のすべての形態で使用することも可能である。本発明の一般的概念はアビバクタムのすべての形態に適用可能であるが、アビバクタムの非ナトリウム形態を使用する場合、混合物に適当なナトリウム源を添加する必要があることは自明である。
【0042】
ステップ(i)では、アビバクタム又はその塩を適当な物理的形態、例えば結晶形、非晶形、又はその混合物で用意し得る。好ましい実施形態では、アビバクタム又はその塩を結晶形で用意する。
【0043】
本発明の1つの態様では、(i)において用意する混合物は、溶媒及びアビバクタムナトリウム、好ましくは結晶形のアビバクタムナトリウムを含む混合物である。アビバクタムがすでにそのナトリウム塩の形態で存在するなら、この態様ではナトリウム源を添加する必要がない。例えば、WO 2011/042560 A1に開示されているアビバクタムナトリウムの多形を使用し得る。よって、(i)の混合物中に用意したアビバクタムの形態はアビバクタムナトリウムの結晶形“A”、“B”、“D”若しくは“E”のいずれか、又はその組合せである。例えば、(i)で用意する混合物は結晶質アビバクタムナトリウムを溶媒中に含む懸濁液であり得る。この態様の好ましい実施形態では、ステップ(i)は、アビバクタムの結晶形“A”及び溶媒を含み、混合物の重量に基づいて0.9重量%未満、好ましくは0.7重量%未満の含水量を有する懸濁液を用意する。
【0044】
本発明の別の態様では、(i)において用意する混合物は、溶媒及びアビバクタムの非ナトリウム化合物、例えばアビバクタムテトラブチルアンモニウム又はアビバクタム遊離酸を含む混合物である。この場合、またアビバクタムの他の非ナトリウム塩の場合、ステップ(i)及び/又は(ii)、好ましくはステップ(ii)の混合物に適当なナトリウム源を添加する必要がある。好ましい実施形態では、ステップ(ii)の混合物が少なくとも55℃、好ましくは少なくとも70℃の高温及び正圧に達したときに、該混合物にナトリウム源を添加する。ナトリウム源の添加により、混合物の水濃度を該混合物の重量に基づいて2重量%を超えて、好ましくは1.5重量%を超えて、より好ましくは1.3重量%を超えて、更により好ましくは0.7重量%を超えて増加させてはならない。ナトリウム塩の添加は1回分の添加により、又は少量ずつの添加により、例えば所定期間にわたって、好ましくは2~40分間の範囲、例えば約5分間、10分間、15分間、20分間、又は30分間の期間にわたって滴下することにより実施し得る。ナトリウム源を完全に添加した後、高温及び正圧を少なくとも約5分間、例えば約5~40分間維持することが好ましい。
【0045】
ナトリウム源に関して、ナトリウム源は好ましくは1つ以上のアルカリ性ナトリウム塩を含む。好ましい実施形態では、アルカリ性ナトリウム塩はナトリウム2-エチルヘキサノエートである。更により好ましい実施形態では、ナトリウム源は2-エチルヘキサノエートをTHF中に含む溶液である。好ましい実施形態では、アビバクタムの遊離酸、又は上に規定したアビバクタムの塩、好ましくはテトラブチルアンモニウム塩対ナトリウム源のモル比は、1:0.9~1:3、好ましくは1:1~1:2の範囲であり、より好ましくはモル比は約1:2である。別の好ましい実施形態では、アビバクタムの遊離酸、又は上に規定したアビバクタムの塩、好ましくはテトラブチルアンモニウム塩対ナトリウム源の重量比は、1:0.9~1:3、好ましくは1:1~1:2の範囲であり、より好ましくは重量比は約1:2である。
【0046】
この態様の好ましい実施形態では、(i)において用意するアビバクタム又はその塩はアビバクタムの塩であり、そのアニオンが式(X)
【0047】
【化2】
の化合物であり、そのカチオンがMであり、ここでMはNRR’R”R”’であり、R、R’、R”及びR”’は各々独立して水素及び1~6個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。好ましくは、カチオンMはテトラブチルアンモニウムである。
【0048】
本発明のこの態様の特に好ましい実施形態では、(i)において用意する混合物は、アビバクタムテトラブチルアンモニウム及び溶媒を含む溶液、又はアビバクタム遊離酸及び溶媒を含む懸濁液である。この実施形態では、ナトリウム源、例えばナトリウム2-エチルヘキサノエートの溶液をステップ(ii)の混合物に、好ましくは混合物が少なくとも55℃、好ましくは少なくとも70℃の高温に達したときに添加することが好ましい。ナトリウム源を好ましくは約2~30分間かけて、好ましくは約5~10分間かけて滴下し、(ii)において高温及び正圧を全部で約10~50分間維持することも好ましい。ナトリウム源の添加により、混合物の含水量が該混合物の重量に基づいて2.0重量%を超えないことが好ましく、1.5重量%を超えないことがより好ましく、1.3重量%を超えないことがもっとより好ましく、0.7重量%を超えないことが更により好ましい。例えば、(i)で用意した混合物のナトリウム源及び溶媒の含水量はそれに応じて選択され得る。
【0049】
この態様の別の好ましい実施形態では、(i)において用意するアビバクタム又はその塩はアビバクタム遊離酸である。好ましくは、アビバクタムの遊離酸は、0.15419nmの波長を有するCuKα1,2線を用いて測定して、(9.6±0.2)°、(11.1±0.2)°及び(17.4±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有することを特徴とする結晶形である。
【0050】
本発明の上記態様の幾つかの場合には、例えばアビバクタム形Cの純度及び収率を改善するためには、混合物の含水量を該混合物の全重量に基づいて2重量%未満の値、又は上に規定したより低い値に減らす前に、アビバクタム又はその塩を(i)において通常使用されているのと同一タイプであるが、少なくとも2重量%の含水量を有する溶媒を用いる前処理ステップを(i)に含めることが有用であり得る。
【0051】
よって、1つの実施形態では、ステップ(i)は、
結晶形“B”及び/又は“D”のアビバクタムナトリウム、及び少なくとも2重量%、好ましくは5重量%を超える含水量を有する溶媒を含む混合物、好ましくは懸濁液を用意し、
混合物を好ましくは少なくとも6時間、より好ましくは少なくとも8時間、更により好ましくは少なくとも12時間、最も好ましくは少なくとも20時間インキュベートし、
その後、混合物の含水量を該混合物の重量に基づいて0.9重量%未満、好ましくは0.7重量%未満に減らす。
【0052】
別の実施形態では、ステップ(i)は、
アビバクタムの遊離酸、及び少なくとも2重量%、好ましくは5重量%を超える含水量を有する溶媒を含む混合物、好ましくは懸濁液を用意し、
適当なナトリウム源を添加し、
任意に、混合物をインキュベートし、
その後、混合物の含水量を該混合物の重量に基づいて0.9重量%未満、好ましくは0.7重量%未満に減らす。
【0053】
この実施形態でも、先の実施形態に開示されている前処理を含む。しかしなから、出発物質がアビバクタムの遊離酸の場合、適当なナトリウム源の添加を含めなければならない。この場合、混合物の含水量を減らす前のインキュベーションステップは任意である。インキュベーションステップを含めるならば、インキュベーションは0.5分間、1分間、又は2分間と短くてよい。例えば、インキュベーションは5分間、12時間、又は24時間であり得る。
【0054】
別の実施形態では、ステップ(i)は、
アニオンが式(X)
【0055】
【化3】
の化合物であり、カチオンがMであり、ここでMはNRR’R”R”’であり、R、R’、R”及びR”’は各々独立して水素及び1~6個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるアビバクタムの塩、及び少なくとも2重量%、好ましくは5重量%を超える含水量を有する溶媒を含む混合物、好ましくは溶液を用意し、
適当なナトリウム源を添加し、
任意に、混合物をインキュベートし、
その後、混合物の含水量を該混合物の重量に基づいて0.9重量%未満、好ましくは0.7重量%未満に減らす。
【0056】
この実施形態でも、先の実施形態で開示されている前処理を含める。この場合出発物質がアビバクタムの非ナトリウム塩なら、適当なナトリウム源の添加を含める必要がある。好ましくは、カチオンMはテトラブチルアンモニウムである。この場合、含水量を減らす前のインキュベーションステップは任意である。インキュベーションステップを含める場合、インキュベーションは0.5分間、1分間、又は2分間と短くてもよい。例えば、インキュベーションは5分間、12時間、又は24時間であり得る。
【0057】
前処理ステップ及び/又は混合物の含水量の低減に関する以下の説明は、これらの特徴の1つ以上を含む上に列挙した対応する実施形態に等しく当てはまる。
【0058】
(i)において通常使用されているのと同一タイプであるが、少なくとも2重量%(例えば、5重量%を超える)の含水量を有する溶媒を用いるアビバクタム又はその塩の前処理ステップに関して、少なくとも2重量%の含水量を有する溶媒が2重量%~12重量%、より好ましくは3重量%~10重量%、更により好ましくは5重量%~8重量%の範囲の含水量を有していることが好ましい。好ましくは、(i)において通常使用されているのと同一タイプであるが、少なくとも2重量%の含水量を有する溶媒を用いるアビバクタム又はその塩の前処理ステップはほぼ室温で実施される。本明細書中で使用されている表現「同一タイプの溶媒」は、該溶媒が同一の化合物であり、そのそれぞれの含水量の点でのみ異なることを意味する。
【0059】
混合物の含水量の低減に関して、含水量を当業者に既知の方法を用いて、例えば適当に低減させた含水量を有する溶媒の添加、逆浸透膜のような膜技術、又はモレキュラーシーブのような乾燥剤を用いる化学吸着又は脱着を用いて低減させ得る。好ましくは、含水量を、適当に低減させた含水量を有する溶媒を添加することにより、好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の含水量を有する溶媒を添加することにより、最も好ましくは乾燥溶媒を添加することにより低減させる。好ましくは、適当に低減させた含水量を有する溶媒は、少なくとも2重量%の含水量を有する溶媒と同様に(i)において通常使用されるのと同一タイプの溶媒である。適当に低減させた含水量を有する溶媒をステップ(ii)において混合物の全重量に基づいて2重量%未満、好ましくは0.9重量%未満、より好ましくは0.7重量%未満の混合物の最終含水量を与えるのに十分な量添加する。
【0060】
混合物の含水量を希釈により低減させるこの方法に代えて、他の有用な方法を使用し得る。例えば、インキュベーション中少なくとも2重量%の含水量を有する溶媒を用いて形成された沈殿を混合物から分離し、再懸濁溶媒の重量に基づいて2重量%未満、好ましくは0.9重量%未満、より好ましくは0.7重量%未満の含水量を有する溶媒中に再懸濁させ得る。
【0061】
通常、(i)において用意した混合物中のアビバクタム又はその塩の濃度が3g/L~50g/L、好ましくは5g/L~30g/Lの範囲であることが好ましい。好ましい実施形態では、濃度は約10g/L、15g/L、又は30g/である。
【0062】
非常に好ましい実施形態では、本発明の方法は、多形的に純粋な、又は本質的に多形的に純粋な、すなわち他の物理的形態、特にWO 2011/042560 A1に記載されているアビバクタムナトリウムの形態A、B、D及びEを含まないか又は本質的に含まないアビバクタムナトリウムの結晶形Cを生成する。
【0063】
本発明の方法の先の説明から明らかなように、多形Cのアビバクタムナトリウムは溶媒中の懸濁液の形態で得られることが好ましい。したがって、本発明の方法は、ステップ(ii)の後に実施される更なるステップをも含み得る。好ましい実施形態では、方法は、更なるステップ:
(iii)ステップ(ii)で得た混合物を冷却する
を含む。
【0064】
好ましくは、混合物を25℃未満の温度、好ましくは10~20℃の範囲の温度に冷却する。
【0065】
ステップ(ii)又は(iii)の後、方法は、更なるステップ:
(iv)(ii)又は(iii)で得た混合物からアビバクタムの多形Cを単離する
をも含み得る。
【0066】
好ましくは、(iv)における単離は濾過を含む。具体的実施形態では、濾過は、63%未満の相対湿度を有する気体雰囲気下での濾過を含む。濾過は圧力フリット/ストレーナーの使用を含み得る。
【0067】
加えて、(iv)における単離は更に、濾過後、例えば真空乾燥オーブン中での乾燥を含み得る。
【0068】
通常、本発明の方法の1つ以上のステップを攪拌下で実施し得る。好ましくは、ステップ(i)、ステップ(ii)、前処理ステップ、含水量の低減、ナトリウム源の添加及び/又は混合物の高温及び正圧での維持の1つ以上を攪拌下で実施し得る。
【0069】
本発明は、本発明の方法に従って得た、好ましくは多形的に純粋な、又は本質的に多形的に純粋なアビバクタムナトリウムの結晶形Cにも関する。本発明は、更に、本発明の方法に従って得たアビバクタムナトリウムの結晶形Cを含む医薬組成物、及び該組成物の医薬及び/又はPCT/EP2016/068925に詳記されている治療方法における使用に関する。
【0070】
<定義>
別段の指示がない限り、本明細書中で使用されている用語は以下の意味を有する:
本明細書中で使用されている用語「アビバクタム」は、本明細書中の式(I)に従う化学構造により表され得る[(2S,5R)-2-カルバモイル-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-6-イル]硫酸水素塩、又はその塩を指す。
【0071】
本明細書中で使用されている用語「室温」は、15~35℃、好ましくは20~30℃の範囲の温度、例えば約25℃の温度を指す。
【0072】
粉末X線回折に関して、本明細書中で使用されている用語「反射」は、長距離位置秩序に規則正しい反復パターンで分布している固体物質中の原子の平行平面により散乱されるX線からの建設的干渉によりある回折角(フラッグ角)で生ずるX線回折図中のピークを意味する。そのような固体物質は結晶質物質として分類され、非晶質物質は長距離秩序を欠き、短距離秩序のみを示し、よって広い散乱が生ずる固体物質として規定される。文献によれば、長距離秩序は例えば約10~1020原子に広がり、短距離秩序は数原子にしか広がらない(“Fundamentals of Powder Diffraction and Structural Characterization of Materials”,Vitalij K.Pecharsky and Peter Y.Zavalij,Kluwer Academic Publishers,2003,p.3を参照されたい)。
【0073】
アビバクタムナトリウムの結晶形Cに関連して、本明細書中で使用されている用語「本質的に多形的に純粋な」は、そのように生成されたアビバクタムの形態がアビバクタムナトリウムの他の物理的形態をアビバクタムの重量に基づいて約20%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、更により好ましくは約3%未満、最も好ましくは約1重量%未満しか含んでいないことを意味する。
【0074】
本明細書中で使用されている用語「物理的形態」は、物質の結晶相又は非晶相を指す。
【0075】
本明細書中で使用されている用語「形態C」又は「結晶形C」は、PCT/EP2016/068925に開示されているアビバクタムナトリウムの結晶形を指す。形態Cは、固体を特徴づけるための製薬業界で周知の分析方法により特徴づけられ得る。前記方法には、粉末X線回折(PXRD)、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)及び水分収着重量測定(GMS)が含まれるが、これらに限定されない。形態Cは上記した方法の1つにより、又はこれらの2つ以上を組み合わせることにより特徴づけられ得る。アビバクタムナトリウムの結晶形Cは、室温で0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定して、(6.5±0.2)°、(14.4±0.2)°、(15.5±0.2)°、(18.0±0.2)°及び(19.3±0.2)°の2θ角に反射を含む粉末X線回折図を有することにより特徴づけられる。或いは又はこれに加えて、アビバクタムナトリウムの結晶形Cは、室温でダイアモンドATRセルを用いて測定して、(3459±2)cm-1、(1690±2)cm-1、(1287±2)cm-1、(1247±2)cm-1及び(690±2)cm-1の波長にピークを含むフーリエ変換赤外スペクトルを有することにより特徴づけられる。
【0076】
本明細書中で使用されている用語「形態A」又は「結晶形A」は、0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定して、(8.5±0.2)°、(15.3±0.2)°及び(16.4±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有することにより特徴づけられるWO 2011/042560 A1に開示されているアビバクタムナトリウムの結晶質一水和物を指す。
【0077】
本明細書中で使用されている用語「形態B」又は「結晶形B」は、0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定して、(13.0±0.2)°、(16.5±0.2)°、(17.2±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有することにより特徴づけられるWO 2011/042560 A1に開示されているアビバクタムナトリウムの結晶形を指す。
【0078】
本明細書中で使用されている用語「形態D」又は「結晶形D」は、0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定して、(16.2±0.2)°、(17.4±0.2)°、(17.8±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有することにより特徴づけられるWO 2011/042560 A1に開示されているアビバクタムナトリウムの結晶形を指す。
【0079】
本明細書中で使用されている用語「形態E」又は「結晶形E」は、0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定して、(13.7±0.2)°、(15.0±0.2)°及び(15.4±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有することにより特徴づけられるWO 2011/042560 A1に開示されているアビバクタムナトリウムの結晶形を指す。
【0080】
本明細書中で使用されている用語「アビバクタムの結晶質遊離酸」は、0.15419nmの波長を有するCuKα1,2線を用いて測定して、(9.6±0.2)°、(11.1±0.2)°及び(17.4±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有することにより特徴づけられる。
【0081】
本明細書中で使用されている用語「約」は、指示されている値又は範囲の5%以内、より典型的には1%以内、最も典型的には0.5%以内を意味する。
【0082】
アビバクタムに関連して、本明細書中で使用されている用語「単離されている」は、それが形成されている反応混合物から物理的に分離されているアビバクタムに相当する。
【0083】
本明細書中で使用されている用語「攪拌」は、溶液又は懸濁液の別の巨視的成分に対して外側から誘導される前記溶液又は懸濁液の巨視的成分の動きに関する。本明細書中で使用されている用語「機械的攪拌」は、溶液の別の巨視的成分に対してデバイスを介して外側から誘導される溶液又は懸濁液の巨視的成分の動き、例えば振とう又はかき混ぜ又は音波処理に関する。本明細書中で使用されている用語「かき混ぜ」は、溶液又は懸濁液の別の巨視的成分に対してかき混ぜデバイスを介して外側から誘導される前記溶液又は懸濁液の巨視的成分の動きに関する。
【0084】
本明細書中で使用されている用語「含水量」及び「水濃度」は互換可能に使用され、物質、例えば懸濁液又は溶液のような溶媒又は混合物中に含まれる水の量を指す。含水量は、当業界で既知の方法、例えばカール・フィッシャー(KF)滴定により決定され得る。典型的には、含水量は重量/全重量%として規定される。
【0085】
本明細書中で使用されている用語「懸濁液」は、固相及び液相を含有する混合物を含む。しかしながら、固相に相当する化合物の全量の少なくとも一部は液相中に溶解形態で存在し得る。例えば、固相を形成する化合物の全重量に基づいて約1%、10%、30%又は50重量%が液相中に溶解し得る。
【0086】
本発明を更に、それぞれの従属関係及び参照により示す以下の実施形態及び実施形態の組合せにより説明する。
【0087】
1.20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定して、(6.5±0.2)°、(14.4±0.2)°、(15.5±0.2)°、(18.0±0.2)°及び(19.3±0.2)°の2θ角に反射を含む粉末X線回折図を有する多形Cのアビバクタムナトリウムの製造方法であって、
(i)アビバクタム又はその塩、及び溶媒を含み、混合物の重量に基づいて2重量%未満の含水量を有する混合物を用意するステップ、
(ii)(i)で用意した前記混合物の温度を少なくとも55℃に上昇させ、正圧を与えるステップ
を含み、(i)で用意したアビバクタムの形態がアビバクタムナトリウムではない場合、ステップ(i)及び/又は(ii)の前記混合物にナトリウム源を添加し、これにより多形Cのアビバクタムナトリウムを得る、方法。
【0088】
2.(ii)を密閉反応容器中で実施する、実施形態1に従う方法。
【0089】
3.(i)における前記混合物が該混合物の重量に基づいて1.5重量%未満、好ましくは1.3重量%未満、より好ましくは0.7重量%未満、最も好ましくは0.6重量%未満の含水量を有する、実施形態1又は2に従う方法。
【0090】
4.前記溶媒が、各々少なくとも4個の炭素原子のアルキル鎖を有する、アルコールエステル、エーテル、ケトン、カーボネート、及びその混合物からなる群から選択される、実施形態1~3のいずれかに従う方法。
【0091】
5.前記溶媒が、4~10個の炭素原子、好ましくは4~8個の炭素原子、より好ましくは4~6個の炭素原子を有する、実施形態1~4のいずれかに従う方法。
【0092】
6.前記溶媒をC-Cアルコール、C-Cエステル、C-C環状エーテル、直鎖状又は環状ケトン、カーボネート、及びその混合物からなる群から選択する、実施形態1~5のいずれかに従う方法。
【0093】
7.前記溶媒がイソブタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、1,4-ジオキサン、THF、メチル-THF、酢酸エチル、酢酸イソブチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルカーボネートからなる群から選択される、実施形態1~6のいずれかに従う方法。
【0094】
8.前記溶媒がイソブタノール、n-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、1,4-ジオキサン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルからなる群から選択される、実施形態1~7のいずれかに従う方法。
【0095】
9.(ii)における前記正圧が少なくとも5mbar、好ましくは少なくとも8mbar、より好ましくは少なくとも10mbar、更により好ましくは少なくとも15mbar、更により好ましくは少なくとも20mbarの正圧である、実施形態1~8のいずれかに従う方法。
【0096】
10.前記正圧を不活性ガスを用いる加圧、使用した溶媒の蒸気圧、又はその混合により発生させる、実施形態1~9のいずれかに従う方法。
【0097】
11.(ii)における前記絶対圧が210bar以下、好ましくは12bar以下、より好ましくは8bar以下、更により好ましくは5bar以下である、実施形態1~10のいずれかに従う方法。
【0098】
12.(ii)において前記密閉反応容器に不活性ガスを添加する、実施形態2~11のいずれかに従う方法。
【0099】
13.前記不活性ガスが窒素及び希ガスからなる群から選択される、実施形態1~12に従う方法。
【0100】
14.前記不活性ガスが密閉反応容器に正圧を与えるのに十分な量である、実施形態12又は13に従う方法。
【0101】
15.(ii)において前記温度を連続的に上昇させる、実施形態1~14のいずれかに従う方法。
【0102】
16.(ii)において前記温度を少なくとも59℃、好ましくは少なくとも63℃、より好ましくは少なくとも66℃、更により好ましくは少なくとも70℃、最も好ましくは少なくとも73℃に上昇させる、実施形態1~15のいずれかに従う方法。
【0103】
17.(ii)において前記温度が溶媒の分解温度以下である、実施形態1~16のいずれかに従う方法。
【0104】
18.(ii)において前記温度を55℃~180℃、好ましくは59℃~150℃、より好ましくは63℃~140℃、更により好ましく66℃~135℃、更により好ましくは70℃~130℃、最も好ましくは73℃~126℃の範囲の温度に上昇させる、実施形態1~17のいずれかに従う方法。
【0105】
19.(ii)において前記温度を少なくとも66℃に上昇させ、正圧が少なくとも5mbarの正圧であり、好ましくは(ii)において温度を少なくとも70℃に上昇させ、正圧が少なくとも5mbarの正圧である、実施形態1~18のいずれかに従う方法。
【0106】
20.(ii)において高温及び正圧を少なくとも2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、11分間、12分間、13分間、14分間、15分間、16分間、17分間、18分間、19分間、又は20分間維持する、実施形態1~19のいずれかに従う方法。
【0107】
21.(ii)において高温及び正圧を180分以内、好ましくは120分以内、より好ましくは60分以内、更により好ましくは50分以内、更により好ましくは45分以内、最も好ましくは40分以内維持する、実施形態1~20のいずれかに従う方法。
【0108】
22.(ii)において高温及び正圧を2~50分間、好ましくは5~45分間、より好ましくは10~40分間、更により好ましくは15~40分間、最も好ましくは20~40分間維持する、実施形態1~21のいずれかに従う方法。
【0109】
23.(i)で用意する混合物が、結晶形、非晶形又はその混合物、好ましくは結晶形のアビバクタム又はその塩を含む、実施形態1~22のいずれかに従う方法。
【0110】
24.(i)で用意する前記アビバクタム又はその塩がアビバクタムナトリウムである、実施形態1~23に従う方法。
【0111】
25.(i)で用意する混合物が、溶媒、及び室温で0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定して、(8.5±0.2)°、(16.4±0.2)°、(17.1±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有する結晶形“A”、(13.0±0.2)°、(16.5±0.2)°、(17.2±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有する結晶形“B”、(16.2±0.2)°、(17.4±0.2)°、(17.8±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有する結晶形“D”、又は(13.7±0.2)°、(15.0±0.2)°及び(15.4±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有する結晶形“E”、又はその混合物、好ましくは結晶形“A”のアビバクタムナトリウムを含む混合物である、実施形態1~24のいずれかに従う方法。
【0112】
26.(i)で用意するアビバクタム又はその塩がアビタクタムの塩であり、そのアニオンが式(X)
【0113】
【化4】
の化合物であり、そのカチオンがMであり、ここでMはNRR’R”R”’であり、R、R’、R”及びR”’は各々独立して水素及び1~6個の炭素原子を有するアルキル基から選択される、実施形態1~23のいずれか1項に従う方法。
【0114】
27.前記ナトリウム源をステップ(ii)の混合物に添加する、実施形態1~26に従う方法。
【0115】
28.ステップ(ii)の混合物が少なくとも55℃、好ましくは少なくとも70℃の高温に達したときに、該混合物にナトリウム源を添加する、実施形態26又は27に従う方法。
【0116】
29.前記ナトリウム源を滴下する、実施形態26~28のいずれかに従う方法。
【0117】
30.前記ナトリウム源を約2分間~30分間にわたって、好ましくは約5分間~10分間にわたって添加し、(ii)における高温及び正圧を全部で約10~50分間維持する、実施形態26~29のいずれかに従う方法。
【0118】
31.ステップ(i)が、
結晶形“B”及び/又は“D”のアビバクタムナトリウム、及び少なくとも2重量%、好ましくは5重量%を超える含水量を有する溶媒を含む混合物を用意し、
前記混合物をインキュベートし、
その後、前記混合物の含水量を該混合物の重量に基づいて0.9重量%未満、好ましくは0.7重量%未満に減らす、
実施形態1~25のいずれかに従う方法。
【0119】
32.ステップ(i)が、
アビバクタムの遊離酸、及び少なくとも2重量%、好ましくは5重量%を超える含水量を有する溶媒を含む混合物を用意し、
適当なナトリウム源を添加し、
任意に、前記混合物をインキュベートし、
その後、前記混合物の含水量を該混合物の重量に基づいて0.9重量%未満、好ましくは0.7重量%未満に減らす、
実施形態1~23のいずれか1項に従う方法。
【0120】
33.前記アビバクタムの遊離酸が、0.15419nmの波長を有するCuKα1,2線を用いて測定して、(9.6±0.2)°、(11.1±0.2)°及び(17.4±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有することを特徴とする結晶形である、実施形態1~32に従う方法。
【0121】
34.ステップ(i)が、
アニオンが式(X)
【0122】
【化5】
の化合物であり、カチオンがMであり、ここでMはNRR’R”R”’であり、R、R’、R”及びR”’は各々独立して水素及び1~6個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるアビバクタムの塩、及び少なくとも2重量%、好ましくは5重量%を超える含水量を有する溶媒を含む混合物を用意し、
適当なナトリウム源を添加し、
任意に、前記混合物をインキュベートし、
その後、前記混合物の含水量を該混合物の重量に基づいて0.9重量%未満、好ましくは0.7重量%未満に減らす、
実施形態1~23のいずれか1項に従う方法。
【0123】
35.前記カチオンMがテトラブチルアンモニウムである、実施形態26~30、又は34のいずれかに従う方法。
【0124】
36.少なくとも2重量%の含水量を有する前記溶媒が、実施形態4~8のいずれか1つに規定されている、実施形態31~35のいずれかに従う方法。
【0125】
37.前記混合物の含水量を適当に減らした含水量を有する溶媒を添加することにより、好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の含水量を有する溶媒を添加することにより、最も好ましくは乾燥溶媒を添加することにより減らす、実施形態31~36のいずれか1項に従う方法。
【0126】
38.前記ナトリウム源が1つ以上のアルカリ性ナトリウム塩を含む、実施形態31~37のいずれかに従う方法。
【0127】
39.前記の1つ以上のアルカリ性ナトリウム塩がナトリウム2-エチルヘキサノエートであり、好ましくは前記ナトリウム源がナトリウム2-エチルヘキサノエートの溶液である、実施形態1~38に従う方法。
【0128】
40.アビバクタムの遊離酸又はアビバクタムの塩対ナトリウム源のモル比が1:0.9~1:3、好ましくは1:1~1:2の範囲であり、より好ましくは前記モル比が約1:2である、実施形態1~39のいずれかに従う方法。
【0129】
41.(i)で用意した前記混合物中のアビバクタム又はその塩の濃度が3g/L~50g/L、好ましくは5g/L~30g/Lの範囲である、実施形態1~40のいずれかに従う方法。
【0130】
42.更に、ステップ:
(iii)(ii)で得た前記混合物を冷却する
を含む、実施形態1~41のいずれか1項に従う方法。
【0131】
43.前記混合物を25℃未満の温度、好ましくは10~20℃の範囲の温度に冷却する、実施形態1~42に従う方法。
【0132】
44.更に、ステップ(ii)又は(iii)の後に、ステップ:
(iv)(ii)又は(iii)で得た前記混合物からアビバクタムの多形Cを単離することを含む、実施形態1~43のいずれかに従う方法。
【0133】
45.(iv)での単離が濾過を含む、実施形態1~44に従う方法。
【0134】
46.濾過が63%未満の相対湿度を有する気体雰囲気下での濾過を含む、実施形態1~45に従う方法。
【0135】
47.濾過が圧力フリット/ストレーナーの使用を含む、実施形態45又は46のいずれかに従う方法。
【0136】
48.(iv)における単離が更に濾過後、例えば真空乾燥オーブンを用いる乾燥を含む、実施形態45~47のいずれかに従う方法。
【0137】
以下の実施例は本発明を例示し、添付されている特許請求の範囲に記載されている本発明を限定することを意図しない。
【実施例
【0138】
[実施例1:アビバクタムナトリウム(AVIB.Na)-多形Cの合成手順]
【0139】
【化6】
【0140】
表1に、AVIB.Naの形態Aの形態Cへの変換のための各種試験条件をリストする。すべての条件下で、本質的に純粋なAVIB.Naの形態Cを得た。
【0141】
以下の手順は、エントリー1にリストした反応を詳細に記載する。
【0142】
マグネチックスターラーを備えたオートクレーブにおいて、AVIB.Naの一水和物(多形A,100mg,0.33mmol)を乾燥iBuOH(10mL,10g/L)中に懸濁させた。オートクレーブを密閉し、EasyMax反応器(Mettler Toledo:EasyMax 102 Advanced Synthesis Workstation)中に置き、混合物を30分間加熱した(外部加熱(Tj)=130℃;最高内部反応温度(Tr)=126℃,最大過圧:1.0bar)。次いで、懸濁液を室温まで急冷し、白色固体を濾過により集め、少量の乾燥iBuOHで洗浄し、高真空下で乾燥して、純粋なAVIB.Na-多形Cを収率73%で得た。形態Cの形成を、20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定して、(6.5±0.2)°、(14.4±0.2)°、(15.5±0.2)°、(18.0±0.2)°及び(19.3±0.2)°の2θ角に反射を含む粉末X線回折(PXRD)を有することにより確認する。
【0143】
【表1】
【0144】
[実施例2:AVIB.Na-多形Cの合成のためのオートクレーブフリー手順]
マグネチックスターラーを備え、圧力計に接続させたガラス容器において、AVIB.Naの一水和物(多形A,100mg,0.33mmol)を乾燥iBuOH(10mL,10g/L)中に懸濁させた。バイアルを密閉し、EasyMax反応器中に置き、混合物を30分間加熱した(Tj=78℃;最高Tr=75℃;8mbaの過圧を測定した)。次いで、懸濁液を室温まで急冷し、白色固体を濾過により集め、少量の乾燥iBuOHで洗浄し、高真空下で乾燥して、純粋なAVIB.Na-多形Cを得た。形態Cの形成を、(6.5±0.2)°、(14.4±0.2)°、(15.5±0.2)°、(18.0±0.2)°及び(19.3±0.2)°の2θ角に反射を含む粉末X線回折(PXRD)を有することにより確認する。
【0145】
[実施例3:AVIB.Na-多形Cの合成のためのスケールアップ手順]
メカニカルアンカースターラーを有するオートクレーブにおいて、AVIB.Na一水和物(多形A;36.3g,0.119mol)を乾燥iBuOH(1.2L,30g/L)中に懸濁させた。オートクレーブを密閉し、混合物を攪拌下で30分間加熱した(Tj=130℃;最高Tr=119℃,最高過圧:0.5bar)。反応混合物を45分以内に20℃に冷却した後、オートクレーブを開け、白色懸濁液を圧力フィルターに移した。オートクレーブを乾燥iBuOH(200mL)で濯いだ。AVIB.Naの純粋な多形C(33.3g)を得た(純度:98.3%+0.5% iBuOH;収率:96%)。形態Cの形成を、(6.5±0.2)°、(14.4±0.2)°、(15.5±0.2)°、(18.0±0.2)°及び(19.3±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有することにより確認する。
【0146】
[実施例4:多形B/DからのAVIB.Naの多形Cの製造
【0147】
【化7】
【0148】
マグネチックスターラーを備えたオートクレーブにおいて、AVIB.Na(多形D,200mg,0.70mmol)をiBuOH(6.25wt% HO,2mL,100g/L)中に懸濁させ、反応物を室温、大気圧下で24時間攪拌した。次いで、懸濁液に乾燥iBuOH(20mL)を添加し、水濃度をKF電量計を用いて測定した(0.6wt%未満のHO)。オートクレーブを密閉し、反応物を攪拌下で30分間加熱した(Tj=130℃;最高Tr=126℃,最大過圧:1.0bar)。次いで、懸濁液を室温まで急冷し、白色固体を濾過により集め、少量の乾燥iBuOHで洗浄し、高真空下で乾燥して、AVIB.Naの多形Cを収率59%で得た。形態Cの形成を、(6.5±0.2)°、(14.4±0.2)°、(15.5±0.2)°、(18.0±0.2)°及び(19.3±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有することにより確認する。
【0149】
[実施例5:AVIB遊離酸からのAVIB.Naの多形Cの製造]
【0150】
【化8】
【0151】
マグネチックスターラーを備えたオートクレーブにアビバクタム遊離酸(AVIB.free(例えば、EP16185913.7に開示されている手順に従って製造);200mg,0.75mmol,1.0当量)及びiBuOH(6.25wt% HO,2mL,100g/L)を充填した後、新たに調製したナトリウム2-エチルヘキサノエートの溶液(SHE,1.0mL,1.7mmol,1.7M,2.3当量)を反応物に滴下し、懸濁液を室温、大気圧下で5分間攪拌した。次いで、乾燥iBuOH(36mL)を添加し、水濃度をKF電量計により測定した(0.6wt%未満のHO)。オートクレーブを密閉し、Nガスを用いて5.5barの過圧を発生させた。反応物を攪拌下で30分間加熱した(Tj=78℃;最高Tr=75℃,最大過圧:6.0bar)。次いで、懸濁液を室温まで急冷し、白色固体を濾過により集め、少量の乾燥iBuOHで洗浄し、高真空下で乾燥して、AVIB.Naの多形Cを54%の収率で得た。形態Cの形成を、(6.5±0.2)°、(14.4±0.2)°、(15.5±0.2)°、(18.0±0.2)°及び(19.3±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有することにより確認する。
【0152】
[実施例6:AVIB.TBAからのAVIB.Naの多形Cの製造]
<オプション1:オートクレーブ手順>
【0153】
【化9】
【0154】
マグネチックスターラーを備えた50mLオートクレーブにアビバクタムテトラブチルアンモニウム塩(AVIB.TBA;400mg,0.79mmol,1.0当量)及びiBuOH(6.25wt% HO,2mL,200g/L)を充填した後、新たに調製したSEH溶液(1.0mL,1.7mmol,1.7M,2.1当量)を溶液に滴下し、生じた懸濁液を室温、大気圧下で5分間攪拌した。次いで、乾燥iBuOH(36mL)を添加し、水濃度をKF電量計により測定した(0.6wt%未満のHO)。オートクレーブを密閉し、5.5barの過圧をNガスを用いて発生させた。反応物を攪拌下で30分間加熱した(Tj=78℃;最高Tr=75℃,最大過圧:6.0bar)。次いで、懸濁液を室温まで急冷し、白色固体を濾過により集め、少量の乾燥iBuOHで洗浄し、高真空下で乾燥して、AVIB.Naの多形Cを49%の収率で得た。形態Cの形成を、(6.5±0.2)°、(14.4±0.2)°、(15.5±0.2)°、(18.0±0.2)°及び(19.3±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有することにより確認する。
【0155】
<オプション2:オートクレーブフリー手順>
【0156】
【化10】
【0157】
マグネチックスターラーを備えたガラス容器において、アビバクタムのテトラブチルアンモニウム塩(AVIB.TBA,394mg,0.78mmol,1.0当量))を乾燥iBuOH(10mL,40g/L)中に溶解した、反応容器を隔膜で密閉し、EasyMax反応器中に置き、混合物を78℃(Tj)に加熱し、8分間攪拌した後、新たに調製したSEH溶液(1.0mL,1.7mmol,1.7M,2.1当量)を隔膜(圧力リリーフ弁は接続しなかった)を介して6分間かけて滴下した。白色懸濁液が直ちに形成され、混合物をこの温度で30分間保持した(Tj=78℃;最高Tr=75℃)後、室温まで急冷した。白色固体を濾過により集め、少量の乾燥iBuOHで洗浄し、高真空下で乾燥して、純粋なAVIB.Naの多形Cを54%の収率で得た。形態Cの形成を、(6.5±0.2)°、(14.4±0.2)°、(15.5±0.2)°、(18.0±0.2)°及び(19.3±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有することにより確認する。
【0158】
<オプション3:スケールアップ反応>
この実験のために、ナトリウム2-エチルヘキサノエート溶液を2-エチルヘキサン酸(44.3mL)、NaOH(22.1g)及びTHF(100mL)から調製した。
【0159】
メカニカルアンカースターラー、入口温度センサー及び滴下漏斗を備えた10L Schmizo反応器において、AVIB.TBA(133.2g,262.8mmol,1.0当量)を攪拌(180rpm)しながら乾燥iBuOH(6.70L,≧99%)中に溶解させた。反応器をきつく密閉し(隔膜)、滴下漏斗にナトリウム2-エチルヘキサノエートを充填し、また密閉した。反応物を80℃に加熱し(=Tj)、攪拌をこの温度で45分間続けた(Tr=74℃)。次いで、ナトリウム2-エチルヘキサノエートをTHF中に含む溶液を反応混合物に30分間かけて滴下し、攪拌を更に20分間続けた。生じた懸濁液を1.75時間かけて10℃に冷却し(=Tr;Tj=0℃)、白色固体を濾過により集め、乾燥iBuOH(2×150mL)で洗浄し、真空下で乾燥して、38.2 gの純粋なAVIB.Naの多形C(51%)を得た。形態Cの形成を、(6.5±0.2)°、(14.4±0.2)°、(15.5±0.2)°、(18.0±0.2)°及び(19.3±0.2)°の2θ角に反射を含むPXRDを有することにより確認する。
【0160】
[実施例7:一般的手順]
<SEH溶液の調製(別の記載がない限り)>:
マグネチックスターラーを備えた50mLフラスコにNaOH(1.45mL、50wt%,27.6mmol,1.0当量)及びTHF(10mL)を充填し、0℃に冷却した。混合物に2-エチルヘキサン酸(4.85mL,30.9mmol,1.1当量)を滴下し、溶液を室温まで加温し、攪拌を5時間続けた、
【0161】
<PXRD>:
粉末X線回折(PXRD)を、透過幾何学でθ/θ結合ゴニオメーター、集光ミラーを有するCu-Kα1,2線(波長0.15419nm)、及びソリッドステートPIXcel検出器を備えたPANalytical X’Pert PRO回折計を用いて実施した。回折図を、45kVの管電圧及び40mAの管電流で周囲条件下、2°~40° 2θの角度範囲で40s/ステップ(255チャネル)で0.013° 2θのステップサイズを適用して記録した。2θ値の典型的な精度は±0.2° 2θの範囲である。よって、多くのX線回折計を用いて標準条件下で、例えば6.5° 2θに表れる実質的に純粋な形Cの回折ピークは6.3~6.7° 2θに表れ得る。
【0162】
<含水量>:
含水量を、Metrohm 703 Tiスタンドスターラー(スピード:4)及び隔膜を備えたMetrohm 831 KF電量計を用いて測定した。ハイドラナール・クロマットAK試薬を用いるときには、60秒の抽出時間を調節した。