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▶ エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】ファンプリジンTTS
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4409 20060101AFI20220512BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220512BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220512BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220512BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
A61K31/4409
A61K9/70 401
A61K47/32
A61K47/34
A61P25/28
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020501354
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2018068952
(87)【国際公開番号】W WO2019012047
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】102017115701.8
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ローゼマリー・カイケルト
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-110539(JP,A)
【文献】特開平04-273820(JP,A)
【文献】国際公開第2013/081102(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/107476(WO,A1)
【文献】Journal of Controlled Release,2017年,Vol.252,pp.83-94
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分不透過性の支持層、感圧接着剤貯蔵層、および場合により、取り外し可能な保護層を含む、ファンプリジンの皮膚投与のための経皮治療システムであって、該感圧接着剤層は、ファンプリジンおよび少なくとも1種のマトリックスポリマーを含有し、該マトリックスポリマーは、遊離カルボン酸基および遊離カルボキシレート基を含有せず、該マトリックスポリマー中のファンプリジンの含量は0.5~4重量%であることを特徴とする、前記経皮治療システム。
【請求項2】
活性成分不透過性の支持層は、複合材料から構築され、表面にアルミニウムが蒸着されたフィルムを含むことを特徴とする、請求項に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
マトリックスポリマーは、直鎖状の、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマーまたはスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
マトリックスポリマーは、アクリル酸2-エチルヘキシル、酢酸ビニルおよびアクリル酸2-ヒドロキシエチルの、自己架橋のまたは非自己架橋のアクリレートコポリマーを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
マトリックスポリマーは、ポリイソブチレン、またはポリブチレンおよびポリイソブチレンを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
マトリックスポリマーは、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコールを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
マトリックスポリマーは、ポリシロキサンを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
少なくとも24時間の適用時間のために設計されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
およそ5~50mg、好ましくは7~25mgのファンプリジンの1日用量を送達するように設計されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
多発性硬化症の処置に使用するための、請求項1~のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の経皮治療システムを製造する方法であって、次の工程:
- マトリックスポリマー、ファンプリジンおよび少なくとも1種の薬学的に許容される溶媒を含む溶液を、取り外し可能な保護層に適用する工程;
- 該溶液を乾燥して、感圧接着剤貯蔵層を形成する工程;および
- 活性成分不透過性の支持層を該感圧接着剤貯蔵層に適用する工程
を特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分不透過性の支持層、感圧接着剤貯蔵層、および場合により、取り外し可能な保護層を含む、ファンプリジンの投与のための経皮治療システム、およびこれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンプリジン(4-アミノピリジン)は、神経細胞中の多くのカリウムチャネルを可逆的に阻害する。この活性成分は、神経の活動電位を遮断し、それ故、患者の多発性硬化症(MS)の神経症状を抑えることができる;特に、ファンプリジンでの処置によって、歩く能力の混乱を改善することができる。
【0003】
多発性硬化症は、脳、脊髄、または視神経を冒す可能性のある中枢神経系の慢性炎症性疾患である。この疾患の原因は自己免疫反応であると考えられている。身体の炎症細胞および免疫細胞が、身体それ自体の構造を誤って攻撃する。これにより、神経線維の被覆層(髄鞘)が崩壊し、神経線維自体に損傷が起こり、その結果、冒された線維の中で神経刺激が効果的に転送されなくなる。被覆層は、その正常な機能において、電気ケーブルの絶縁層と同じように神経軸索を包囲し、神経パルスが所望の部位に適切な速度で確実に到達するために必須である。被覆層が損傷を受けると、これがもはや不可能となる。
【0004】
ファンプリジンは、とりわけ、米国、オーストラリアおよびドイツにおいて、多発性硬化症の処置のための薬物として承認されている。この薬物は、Fampyra(登録商標)の商標名で、錠剤形態で販売されており、一般に、1日2回、用量10mgで服用しなければならない。この投与形態の不利点は、患者がその錠剤を規則的間隔で服用しなければならず、体内で活性成分の均一なレベルを維持するのが困難である点である。
【0005】
近年、経皮治療システム(TTS)は、従来の投与形態と比較して利点があるため、多くの疾患の処置のための投与形態として広く普及してきた。その利点は、とりわけ、活性成分の正確で一定な送達という点にあり、この点は、血漿中の活性成分の一定濃度を実現するために必要である。さらに、初回通過効果を回避することができ、患者が錠剤を規則正しく服用しなくてもよいため、コンプライアンスが向上し得る。軟膏剤またはクリーム剤のような他の局所適用システムと比較した際の経皮治療システムの利点は、的確な領域に適用することができ、このため正確な用量で適用することができ、皮膚の他の領域に軟膏剤を偶発的に塗りつけて汚すリスクがないという事実にある。さらに、軟膏剤または錠剤は、一般に活性成分を遅延放出することができないため、規則正しく適用しなければならない。
【0006】
今となっては数年間、経皮治療システムにおける活性成分の使用には問題がなく、したがって、この適用形態は多種多様な活性成分に利用することができると考えられてきた。しかし近年、これは誤った考えであることが判明した。なぜなら、皮膚を介する活性成分の分子輸送が制約要因となるためである。角質層の外皮層を介する輸送は多くの活性成分にとって緩慢すぎ、それ故、有効な送達を実現することが不可能であり、このため、血漿中の活性成分の有効濃度を実現することが不可能である。したがって、市場レベルでは、経皮治療システムによる活性成分の送達は、少数の極めて強力な活性成分に限られている。この点の概要は、例えば非特許文献1に見ることができる。
【0007】
特許文献1は、活性成分として4-アミノピリジンを含有する経皮治療システムについて記載している。その経皮治療システムは、感圧接着剤貯蔵層に5~20重量%のファンプリジンを含有し、そのマトリックスポリマーは、活性成分に対するカルボキシレート基の0.13の最小含量を有するべきである。例えば、ヒドロキシ基を有するマトリックスポリマーとは対照的に、活性成分の安定性の向上がカルボキシル基によってもたらされるはずである。さらに、ヒドロキシ基を含有するマトリックスポリマーには、経時で送達速度に大きな変動が認められた。
【0008】
上記の教示の問題は、送達システム中の活性成分濃度が極めて高い(5~20重量%)ことにある。この原因はマトリックスポリマー中のカルボキシル基にあり、事実、カルボキシル基は、一方ではマトリックスポリマー中の活性成分の溶解性を高めることを可能にする(アミン単位との塩形成による)が、他方では、活性成分の皮膚への十分な送達を妨げ、このため、TTSは依然としてかなりの量の活性成分を含有していても、薬学的に活性な送達レベルに届かないということになる。
【0009】
活性成分の含量の高さは、経皮治療システムにおける不利点に関連する。これらの不利点は、製造に必要な活性成分がより多いという事実、および使用済みの貼付剤は、まだ相対的に多量の活性成分を含有しているが廃棄しなければならないという事実にある。さらに、医薬の安全性という理由からも、経皮治療システム中の活性成分の含量の高さは回避されようとしている。したがって、活性成分の含量の低い経皮治療システムがあれば、より経済的に、より環境に優しく、より安全になるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】JP2015110539
【非特許文献】
【0011】
【文献】Wiedersberg et al.、J.Controlled Release、190(2014)、150~156頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、ファンプリジンを送達する経皮治療システムであって、活性成分の含量が低く、ファンプリジンが、意図した送達時間の間に可能な限り十分にTTSから放出される、ファンプリジンを送達する経皮治療システムを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、本発明により、活性成分不透過性の支持層、感圧接着剤貯蔵層、および場合により、取り外し可能な保護層を含む、経皮治療システムであって、該感圧接着剤貯蔵層は、ファンプリジンおよび少なくとも1つのマトリックスポリマーを含有し、該マトリックスポリマーは、遊離カルボン酸基および/または遊離カルボキシレート基を含有せず、該マトリックスポリマー中のファンプリジンの含量は、<5重量%である(ポリマーマトリックス中の活性成分の割合として特定され;活性成分は主に溶解した形態で存在する)、経皮治療システムによって対処される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
重量%で表わされるファンプリジンの値は、遊離塩基ファンプリジンに関する。
【0015】
塩基ファンプリジンの飽和濃度は、遊離カルボン酸基および/または遊離カルボキシレート基を含まないマトリックスポリマー中では、従来技術で使用されるマトリックスポリマー中より低い。したがって、遊離カルボン酸基および/または遊離カルボキシレート基を含むマトリックスポリマーを使用した場合の熱力学的活性と同様な熱力学的活性は、活性成分の含量が低くても実現することができる。
【0016】
同時に、驚くべきことに、本発明による経皮治療システムは、高い固有の粘着性を有するポリマーとなるマトリックスポリマー、特にカルボキシル基を伴うポリアクリレートを使用していなくても、良好から十分な接着力を有することが判明した。ファンプリジンには固有の粘着性がないため、この解明はなおさら驚くべきことである。
【0017】
好ましい実施形態では、経皮治療システムは、マトリックスポリマー中に0.5~4重量%のファンプリジンを含有する。
【0018】
従来技術と比較して含量が低いにもかかわらず、所望の1日用量はそれでも実現することができる。従来技術と比較しての利点は、TTSの製造のための活性成分の必要量の低下、その結果としての製造コストの低下、廃棄の単純化、および安全性の向上から生じる。
【0019】
活性成分不透過性の支持層は、複合材料から構築され、表面にアルミニウムが蒸着されたフィルムを含む。フィルムは、活性成分不透過性の材料を主材料にしたものが好都合であり、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンまたはポリプロピレンのようなポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド(ナイロン)またはポリウレタンを、適切な材料として挙げることができる。
【0020】
マトリックスポリマーに関しては、本発明の経皮治療システムは、遊離カルボン酸基および/または遊離カルボキシレート基を何ら含有しないという事実以外に、関連する制限は一切受けない。本発明の内容において、「遊離カルボン酸基および/または遊離カルボキシレート基」という表現は、非結合形態および非錯体形態で存在する-COH-基および-CO -基を意味する。エステルの形態に結合している、または錯体を形成している金属、特にチタンのような遷移金属に配位している-CO-基は、遊離カルボン酸基および/または遊離カルボキシレート基とは考えられないが、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンのような非配位性金属イオンとのカルボン酸塩は、本記載の範囲内では遊離カルボキシレート基と考えられる。
【0021】
好ましい実施形態では、貯蔵層のマトリックスポリマーは、直鎖状の、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマーまたはスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーを含む。
【0022】
さらなる適切なマトリックスポリマーは、特に、チタンに結合しているアクリル酸が架橋点を形成する、アクリル酸2-エチルヘキシル、酢酸ビニル、アクリル酸およびチタンキレートエステルの自己架橋アクリレートコポリマーの形態、またはアクリル酸2-エチルヘキシル、酢酸ビニルおよびアクリル酸2-ヒドロキシエチルの非自己架橋アクリレートコポリマーの形態の、アクリレートポリマーである。
【0023】
同様にマトリックスポリマーとして好都合に使用することができるポリマーは、ポリイソブチレンであり、これは、単独でも、ポリブチレンと組み合わせても、使用することができる。
【0024】
ポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコールのような極性ビニルポリマーもまた、マトリックスポリマーとして使用可能である。
【0025】
最後に、ポリシロキサンのような非有機ポリマーもまた、マトリックスポリマーとして使用することができる。上記のポリマーの混合物をマトリックスポリマーとして使用することも可能であるが、これは、ポリマー成分の実質的な分裂がないように、ポリマーが互いに十分に適合性があるという条件を前提とする。しかしながら、異なるポリマーを材料とする貯蔵層の製造に必要な処理労力がより大きいという点に基づくと、TTSが貯蔵層として含有するポリマーは1種類のみであれば、好ましい。
【0026】
マトリックスポリマーは、貯蔵層の中で最も大きい割合を占める。したがって、貯蔵層は一般に、マトリックスポリマーの割合を、70~99重量%、好ましくは75~97重量%、特に際立って好ましくは80~95重量%の範囲で含有する。
【0027】
上記の構成要素の他に、貯蔵層は、従来の添加剤も含有してもよい。候補となる添加剤の種類は、使用するポリマーおよび活性成分に依存する。添加剤は、その機能によって、可塑剤、粘着性付与剤、安定化剤、担体、拡散および浸透を調節する添加剤、または充填剤に分けることができる。この点において利用可能な生理学的に安全な物質は、当業者に知られている。貯蔵層は、皮膚との継続的な接触が確保されるような固有の粘着性を有する。
【0028】
適切な可塑剤の例としては、ジカルボン酸のジエステル、例えばアジピン酸ジ-n-ブチル、およびトリグリセリド、特に中鎖(即ちC~C14)トリグリセリド、例えばヤシ油カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリドがある。
【0029】
上記の添加剤に関して、これらは、マトリックスポリマーと同様に、遊離カルボン酸基および/または遊離カルボキシル基を有するべきではないことに留意すべきである。なぜなら、経皮治療システムからファンプリジンを可能な限り最大十分に放出させるという目的に反することになるためである。添加剤は、カルボン酸基および/またはカルボキシル基を含まないのが好ましい。
【0030】
取り外し可能な保護層は、貯蔵層と接触しており、使用前に取り外されるが、例えば、支持層の製造に使用されるものと同じ材料を含み、但し、例えばシリコーン処理によって、取り外し可能に作製される。他の取り外し可能な保護層としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、処理紙、セロハン、ポリ塩化ビニルなどがある。保護層が適用される前に、本発明による積層体が、治療に適切な形式(貼付剤)に分割される場合、保護層の形式は、その助けによって貼付剤から保護層を容易に取り外すことができる突出端部を有していてもよい。
【0031】
経皮治療システムに意図されている適用時間は、好ましくは少なくとも12時間であり、より好ましくは少なくとも24時間であり、より一層好ましくは少なくとも48時間である。活性成分の量は、所望の適用時間に応じて調整しなければならない。
【0032】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、送達されるファンプリジンの1日用量が、およそ5~50mgの範囲、好ましくは7~25mgの範囲で実現されるように設計される。この目的のために、TTSは、適切なサイズ、例えば5~20cmの範囲で作製される。
【0033】
本発明による経皮治療システムは、多発性硬化症に罹患している患者の処置に適している。したがって、本発明のさらなる態様は、多発性硬化症の処置に使用するための上記の経皮治療システムに関する。
【0034】
最後に、本発明は、本発明による経皮治療システムを製造する方法に関する。
【0035】
上記の経皮治療システムを製造する方法は、少なくとも次の工程:
- マトリックスポリマー、ファンプリジンおよび少なくとも1種の薬学的に許容される溶媒を含む溶液を、取り外し可能な保護層に適用する工程;
- 溶液を乾燥して、感圧接着剤貯蔵層を形成する工程;および
- 活性成分不透過性の支持層を感圧接着剤貯蔵層に適用する工程
を必要とする。
【0036】
薬学的に許容される溶媒は、医薬としての適用に使用される従来の溶媒、およびそのような溶媒の混合物を含む。
【0037】
上記の経皮治療システムを製造する方法の利点に関しては、経皮治療システムの説明を参照されたい。
【0038】
本発明は、以下に、実施例に基づいて、さらに詳細に説明される。
【実施例1】
【0039】
種々のポリマー中のファンプリジンの飽和濃度Cの決定
種々のポリマーマトリックス中のファンプリジンの飽和濃度Cを、Liuが記載した方法によって決定した(Liu,P.、Gargiulo,P.、Wong,J.、およびNovartis(1997)、A Novel Method for Measuring Solubility of a Drug in an Adhesive、Pharmaceutical Research 14、317頁)。
【0040】
専門家に「サンドイッチ」法として知られているこの方法において、飽和濃度を次のように決定した:
【0041】
次の層順序:保護フィルム-活性成分(溶解および不溶解)を含むドナー層-活性成分透過性膜-活性成分を含まないアクセプター層-保護フィルム、を有する積層体を構築した。2つの保護フィルムを同一材料で作製し;ドナー層およびアクセプター層のマトリックス材料は、同様に同一とした。
【0042】
ドナー層は、ポリマーの有機溶媒溶液に活性成分を溶解することによって製造した。活性成分の濃度は、不溶解残留物をポリマーマトリックス中に識別することができるほど十分に高く、ドナー層中の飽和濃度Cを確実に上回るように選択しなければならない。この溶液を保護フィルムに適用し、プロセス溶媒を蒸発させた。次いで、ドナー層の接着面を膜で覆った。再生セルロースで作製された透析チューブ(ZelluTrans、Roth製、折り径46mm)を長手方向のサイズにカットしたものを膜として使用した。アクセプター層は、活性成分を含まずに、ドナー層と同様に製造し、膜を反対側に適用した。
【0043】
次いで、このようにして製造した積層体を室温で7日間保管し、その間に活性成分は膜を通ってアクセプター層に拡散した。次にドナー層中の活性成分の濃度を決定した。この目的のため、標準面積の打抜き型を使用して、およそ1cmの一定分量を打ち抜いた。次いで膜を取り外し、膜のない穴の開いたブランクを秤量し、その重量を記録した(m)。次いで、穴の開いたブランクを有機溶媒に入れて、マトリックスを除去した。支持層を取り外し、洗浄し、乾燥し、その重量(m)を決定した。2つの測定値から、アクセプター層のポリマーの割合の重量mが、次のように得られた:
=m-m
【0044】
次に、溶液中のファンプリジンの濃度を、HPLC法を使用して計算し、ドナー層中のその濃度を計算した。この試験手法に基づいて決定された様々なポリマーマトリックス中のファンプリジンの飽和濃度を表1にまとめている:
【0045】
【表1】
【0046】
表1から、中性ポリマー中のファンプリジンの飽和濃度Cは、およそ3%であるが、およそ3倍高い飽和濃度が酸性ポリマー中で決定されたことが明らかである。ファンプリジンの特に低いCがポリシロキサン中で測定された。
【実施例2】
【0047】
ファンプリジンTTSの製造
様々なベースポリマーを材料にした経皮治療システムを製造した:
【0048】
a)ポリイソブチレン(PIB)を用いたTTS
ポリイソブチレン溶液の製造
Oppanol B 10およびOppanol B 100の各50gを、トルエン250gに数日間撹拌しながら溶解した。28.6%の固体を含む溶液350gを得た。
【0049】
サンプル1、2および3の製造
ファンプリジン塩基0.6g、0.9gおよび1.2gを、製造したポリイソブチレン溶液各100gの中に散乱させ、数時間後に固体を完全に溶解させた。この3種の溶液を、シリコーン処理した100μmのPETフィルム(Mitsubishi RN 100)に、Eriksonドクターブレードを使用して適用した。トルエンが蒸発すると、単位面積当たりの重量はおよそ90g/mであった。サンプル1中のファンプリジンの濃度は2%であり、サンプル2中のファンプリジンの濃度はおよそ3%であり、サンプル3中のファンプリジンの濃度はおよそ4%であった。
【0050】
b)スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)を用いたTTS
スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー溶液の製造
スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー95gおよびアビエチルアルコール5gを、トルエン250gに、数日間撹拌しながら溶解した。28.6%の固体を含む溶液350gを得た。スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーは感圧接着剤ではないため、粘着力を高める樹脂としてアビエチルアルコールを添加した。
【0051】
サンプル4、5および6の製造
ファンプリジン塩基0.8g、1.2gおよび1.5gを、製造したスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー溶液各100gの中に散乱させ、数時間後に固体を完全に溶解させた。この3種の溶液を、シリコーン処理した100μmのPETフィルム(Mitsubishi RN 100)に、Eriksonドクターブレードを使用して適用した。トルエンが蒸発すると、単位面積当たりの重量はおよそ90g/mであった。サンプル4中のファンプリジンの濃度は2.7%であり、サンプル5中のファンプリジンの濃度はおよそ4%であり、サンプル6中のファンプリジンの濃度はおよそ5%であった。
【0052】
c)ポリアクリレートを用いたTTS
医療用感圧接着剤として使用することができるポリアクリレートは、有機溶媒溶液として、市販品を調達することができる。サンプル7~9については、Henkelから入手した次の商品:Durotak 87-4287(アクリル酸2-エチルヘキシルと、酢酸ビニルと、アクリル酸2-ヒドロキシエチルとの天然アクリレートコポリマーの酢酸エチル溶液(固体含有量39%))、およびDurotak 387-2051(アクリル酸2-エチルヘキシルと、アクリル酸ブチルと、酢酸ビニルと、アクリル酸との酸性アクリレートコポリマーの酢酸エチル/n-ヘプタン溶液(固体含有量51.5%))を、参照サンプルとして使用した。
【0053】
中性ポリアクリレートのTTSサンプル7、8および9
ファンプリジン塩基0.8g、1.3gおよび1.6gを、Durotak 87 4287各100gの中に散乱させ、数時間後に固体を完全に溶解させた。この3種の溶液を、シリコーン処理した100μmのPETフィルム(Mitsubishi RN 100)に、Eriksonドクターブレードを使用して適用した。トルエンが蒸発すると、単位面積当たりの重量はおよそ135g/mであった。サンプル7中のファンプリジンの濃度は2%であり、サンプル8中のファンプリジンの濃度はおよそ3.3%であり、サンプル9中のファンプリジンの濃度はおよそ3.95%であった。
【0054】
酸性ポリアクリレートのTTS(参照)サンプル10、11および12
ファンプリジン塩基4g、6gおよび7gを、Durotak 387 2051各100gの中に散乱させ、数時間後に固体を完全に溶解させた。この3種の溶液を、シリコーン処理した100μmのPETフィルム(Mitsubishi RN 100)に、Eriksonドクターブレードを使用して適用した。溶媒が蒸発すると、単位面積当たりの重量はおよそ90g/mであった。サンプル10中のファンプリジンの濃度は7.2%であり、サンプル11中のファンプリジンの濃度はおよそ10.4%であり、サンプル12中のファンプリジンの濃度はおよそ12%であった。
【0055】
d)ポリシロキサンのTTS
ポリシロキサンのトルエン溶液の製造
ファンプリジン塩基は、芳香族炭化水素に十分に可溶性であるが、n-ヘプタンにはそうではない。トルエンポリシロキサン溶液は、市販では入手できないため、Dow Chemicalsから入手したBIO PSA 4201(h-ヘプタン中ポリシロキサン)を出発材料として使用した。溶媒を蒸発させ、およそ75%の固体を含む溶液が得られるような量のトルエンで、ゴム様ポリマー残留物を溶解した。
【0056】
サンプル13、14および15の製造
ファンプリジン塩基0.25g、0.5gおよび1gを、製造したトルエンポリシロキサン溶液各100gの中に散乱させ、数時間後に固体を完全に溶解させた。この3種の溶液を、シリコーン処理した100μmのPETフィルム(Mitsubishi RN 100)に、Eriksonドクターブレードを使用して適用した。トルエンが蒸発すると、単位面積当たりの重量はおよそ90g/mであった。サンプル13中のファンプリジンの濃度は0.33%であり、サンプル14中のファンプリジンの濃度はおよそ0.66%であり、サンプル15中のファンプリジンの濃度はおよそ1.3%であった。
【0057】
活性成分は、サンプル14および15の中で結晶化した。
【0058】
透過の結果
透過実験を、Franzセル内でヒト皮膚を用いてサンプル1~15について実施した。試験パラメーターは表2にまとめている。
【0059】
【表2】
【0060】
透過試験、ファンプリジンの絶対含量、および活性成分利用率の結果が表3に明記されている。
【0061】
【表3】
【0062】
表3に見ることができるように、中性ポリマーのTTSを作用面積<40cmで1~2TTS/日使用すると、ファンプリジンが、経口1日用量に相当する1日用量で、経皮的に利用可能になる。サンプル3および9が特に適切である。