(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】ダイアフラムを有する複座弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/44 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
F16K1/44 B
(21)【出願番号】P 2020502630
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2018068641
(87)【国際公開番号】W WO2019020361
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】102017007028.8
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513050121
【氏名又は名称】ゲーエーアー トゥーヘンハーゲン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】ブルメスター イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ピープロウ ヨルク
(72)【発明者】
【氏名】テグトマイヤー ステファニー
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特表平7-503522(JP,A)
【文献】特表2001-515571(JP,A)
【文献】独国実用新案第202006004174(DE,U1)
【文献】米国特許第4605035(US,A)
【文献】特表2015-520343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
B65D 90/54-90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複座弁であって、
第1の接続部(3)と、第2の接続部(4)と、前記第1の接続部(3)と前記第2の接続部(4)との間に配置されて通路壁(18)を有している通路(17)とを有するハウジング(1)を備え、
前記ハウジング(1)の弁内部空間(2)に配置された第1の弁体(6)および第2の弁体(7)を備え、
前記第1の弁体(6)に接続された中空ロッド(8)を備え、
前記第2の弁体(7)に接続され、前記中空ロッド(8)を通るように配置された弁ロッド(9)を備え、
第1の弁座(31)および第2の弁座(34)を備え、
少なくとも一方の弁体(6、7)を動かすように構成された駆動部(16)を備え、
前記駆動部(16)に面するハウジング開口部(11)を備え、
当該複座弁の閉位置において前記通路(17)内に形成され、前記第2の弁体(7)によってシールされる漏れ空間(19)を備え、
前記中空ロッド(8)は、前記漏れ空間(19)とハウジング部分(13)との間の連通を生じさせる漏れチャネル(20)を有し、
或る断面を有する洗浄ギャップ(39)を、前記第2の弁体(7)と前記通路壁(18)との間に形成でき、前記漏れチャネル(20)は、前記断面よりも大きいチャネル断面を有する、複座弁であり、
前記ハウジング開口部(11)は、前記ハウジング部分(13)を前記弁内部空間(2)から隔てるダイアフラム(10)によってシールされ、当該複座弁の閉位置において前記第1の弁体(6)の部位(33)を少なくとも部分的に受け入れる開口部輪郭(30)が、前記通路(17)に形成され、前記部位(33)は、当該複座弁の開位置において前記第2の弁体(7)を少なくとも部分的に受け入れる前記第1の弁体(6)の切り欠き(36)を境界付けている、ことを特徴とする複座弁。
【請求項2】
第1のギャップ断面を有する第1の絞りギャップ(38)を、前記第1の弁体(6)と前記通路壁(18)との間に形成でき、前記洗浄ギャップ(39)は、第2のギャップ断面を有する第2の絞りギャップとして設計され、前記漏れチャネル(20)は、前記第1および第2のギャップ断面のうちの大きい方よりも大きいチャネル断面を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の複座弁。
【請求項3】
前記中空ロッド(8)は、滑り軸受ブッシュ(14)に取り付けられ、前記中空ロッド(8)の外側の輪郭と前記滑り軸受ブッシュ(14)の内側の輪郭との間の積極的な係合を生み出すことで、リフト軸を中心とする回転を防止する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の複座弁。
【請求項4】
前記ダイアフラム(10)の内縁が、前記中空ロッド(8)と前記中空ロッド(8)にねじ込まれた保持要素(24)との間に保持され、ロックナット(25)が前記保持要素(24)を固定する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の複座弁。
【請求項5】
前記第1の弁座(31)は、前記開口部輪郭(30)に形成されている、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の複座弁。
【請求項6】
前記第1の弁体(31)および前記第1の弁座(31)と協働するシール(32)が、軸方向のシールとなるように設計されている、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の複座弁。
【請求項7】
前記チャネル断面は、前記第1および第2のギャップ断面のうちの大きい方のサイズの少なくとも3倍である、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の複座弁。
【請求項8】
前記第2の弁体(7)を前記第1の弁体(6)に対して中心に位置させる案内手段(29)が設けられ、軸方向において前記第2の弁体(7)と前記ダイアフラム(10)との間に配置される、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の複座弁。
【請求項9】
前記案内手段(29)は、前記弁ロッド(9)に固定され、前記漏れチャネル(20)内に支持の様相で配置されている、ことを特徴とする請求項8に記載の複座弁。
【請求項10】
前記案内手段(29)は、前記漏れチャネル(20)の最小チャネル断面に少なくとも相当する貫流面積を有する漏れ通路(45)を備える、ことを特徴とする請求項8または9に記載の複座弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の冒頭部分に記載のダイアフラムを有する複座弁に関する。
【背景技術】
【0002】
複座弁は、プロセス産業における流体制御のための重要な構成部品である。この場合に、プロセス産業は、とくには、飲料技術、食品技術、製薬、および生化学を意味する。上述の分野に関係するプロセスは、プロセス構成部品の内部、したがって弁の内部の衛生に関して、高い基準を設定する。
【0003】
複座弁は、第1の接続部と第2の接続部との間に二重にシールされた通路を備える。したがって、複座弁は、多くの衛生プロセスに求められている。2つのシールは、2つの弁座と協働し、これらのシールの間に漏れ空間が形成される。例えば、シールが破損した場合に、流体がこの漏れ空間に集められ、この流体が通路を直接通過することがなく、媒体が環境に接触することがない。二重シールにより、一方のシールを部分的に開いて、他方のシールが依然として使用されている間に一方のシールおよび関連の弁座を洗浄することができる。優れた洗浄性および確実な媒体の分離により、複座弁の内部に優れた衛生状態がもたらされる。
【0004】
1つの設計において、複座弁は、容器の出口の弁として使用され、この点でタンク底部弁と呼ばれる。
【0005】
タンク底部弁の場合、漏れ空間の圧力を高めることなく空にすることが困難である。必要とされる設計ゆえに、漏れ空間は、弁体を動かす弁ロッドのうち、中空ロッドとして設計された一方の弁ロッドを介して空にされる。使用される洗浄剤の弁内部空間への逆流を防止しながら漏れ空間を空にすることは、一方の閉鎖部材を動かす中空ロッドが、大きな流れの断面を有していなければ不可能である。これは、中空ロッドの外径が大きくなることにつながる。
【0006】
これらの用途に合わせた複座弁の例が、特許文献1および特許文献2に示されている。
【0007】
特許文献1は、漏れ空間から漏れを流すチャネルのサイズの定め方に関する。この文献は、漏れ空間を拡大してリザーバ(制御可能な通気を備えても、備えなくてもよい)を形成する中空ロッドを提案している。これは、洗浄性の改善を目的としている。
【0008】
特許文献2は、洗浄が容易であり、中空ロッドが一方のシールの下方かつハウジングダクトの上方に狭窄部を備えているタンク底部弁を提案している。したがって、従属的に駆動される閉鎖部品は、おおむね圧力補償されるように設計されている。
【0009】
弁の衛生状態を、弁の内部から外部へのハウジングを通る弁ロッド/中空ロッドの動きをシールするダイアフラムによって改善することができる。ダイアフラムの中央の穴が、中空ロッドに固定され、ダイアフラムの外縁が、ハウジングによって保持される。
【0010】
単座弁のダイアフラムシールが、特許文献3に示されている。この特許文献3において、ダイアフラムをダイアフラムの外縁において保持する手段が、改善されている。単座弁を超えて、複座弁は、連結要素とハウジングとの間にダイアフラムシールをすでに備えている。ダイアフラムシールを有する複座弁の設計における過去数十年の支配的な考え方の方向は、特許文献4および特許文献5に例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第93/16307号公報
【文献】国際公開第2004/063609号公報
【文献】国際公開第2013/170931号公報
【文献】独国実用新案第20 2006 004 174号明細書
【文献】欧州特許第2 734 757号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それ故に、本発明の目的は、タンク底部弁として使用可能であるダイアフラムを有する複座弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1の特徴を有する複座弁によって達成される。別途請求項2から10は、前記複座弁の好都合な発展を特定している。
【0014】
複座弁は、第1の接続部と、第2の接続部と、第1の接続部と第2の接続部との間に配置された通路壁を有している通路とを有するハウジングを備える。弁は、ハウジングの弁内部空間に配置された第1の弁体および第2の弁体を備え、第1の弁体(6)に接続された中空ロッドを備え、同様に第2の弁体に接続され、中空ロッドを通るように配置された弁ロッドを備える。第1の弁座および第2の弁座は、少なくとも一方の弁体を動かすように構成された駆動部を備える。ハウジング開口部は、駆動部に面する。第2の弁体によってシールされる漏れ空間は、複座弁の閉位置において通路内に形成される。中空ロッドは、ダイアフラムの手段によって弁内部空間から分離される漏れ空間とハウジング部分との間の連通を生じさせる漏れチャネルを有する。或る断面を有する洗浄ギャップは、第2の弁体と通路壁との間に形成される。漏れチャネルは、断面よりも大きいチャネル断面を有する。
【0015】
前記複座弁は、タンク底部弁としての使用に適している、なぜなら漏れ空間からの排出が中空ロッドを通じて生じ、前記中空ロッドは、ダイアフラムを貫通するからである。断面状態は、漏れ空間および漏れチャネル内に過度の負荷の高まりを防止する。
【0016】
しかしながら、ダイアフラムは、達成されることができるリフトおよび開弁を通過する流体のための決定的な要素である。
【0017】
本発明によれば、複座弁の閉位置において第1の弁体の部位を少なくとも部分的に受け入れる開口部輪郭が、通路に形成され、部位は、複座弁の開位置において第2の弁体を少なくとも部分的に受け入れる第1の弁体の切り欠きを境界付けている。
【0018】
弁体が、一方から他に移動するとき、開口部輪郭と協働する、なぜなら大きな貫流断面が、弁体の小さなリフト量で達成されるからである。
【0019】
弁体構成およびダイアフラムとの間における協働の別途利点は、先行技術と比較して弁体との間で必要とされる小さなリフト量および短距離ゆえに、固体片を含む流体も、複座弁と、通路のために必要とされるより小さな量の空間と、弁体と、駆動部を通じて流れることができるという点である。さらに、ダイアフラム自体は、小さなリフト量ゆえに小さな機会的応力を受ける。
【0020】
排出中に洗浄流体に過剰の負荷の高まりの危険性は、さらに1つの発展において減少する。前記発展によれば、第1のギャップ断面を有する第1の絞りギャップは、第一の弁体と通路壁との間で形成されることができ、洗浄ギャップは、第2のギャップ断面を有する第2の絞りギャップとして設計される。漏れチャネルは、第1および第2のギャップ断面のうち大きい方よりも大きいチャネル断面を有する。絞りギャップの貫流断面は、洗浄ギャップ内のものよりも小さく、それ故に、第1および/または第2のギャップ断面は、顕著にチャネル断面よりも小さい。例えば、3分の1や4分の1ぐらいの大きさである。絞りギャップは同様に、弁座およびシールの領域内で、洗浄効果を高める。
【0021】
1つの進展において、第1のギャップ断面を有する第1の絞りギャップは、第1の弁体と通路壁との間に形成され、洗浄ギャップは、第2のギャップ断面を有する第2の絞りギャップとして設計される。漏れチャネルは、第1および第2のギャップ断面のうちの大きい方よりも大きいチャネル断面を有する。これにより、過剰に高められる負荷が効果的に防止され、実際に閉まったままである関連する弁体が押し出され、また座の領域において洗浄効果が改善される。
【0022】
別の進展において、中空ロッドは、滑り軸受ブッシュに取り付けられ、中空ロッドの外側の輪郭と滑り軸受ブッシュの内側の輪郭との間で積極的な係合が生み出され、リフト軸を中心とする回転を防止する。これにより、ダイアフラムのねじりの荷重が減少され、耐用年数が増えることに加えて、固定手段に作用される力が減少されることで衛生状態も改善される、なぜなら固定点におけるダイアフラムの滑りが減少するからである。
【0023】
別の進展によれば、ダイアフラムの内縁が、中空ロッドと中空ロッドにねじ込まれた保持要素との間に保持され、ロックナットの手段によって、保持要素が固定される。これにより、衛生的であり、費用対効果が高いダイアフラムの確実な固定が生み出される。
【0024】
別の進展によれば、第1の弁座は、開口部輪郭に形成されている。これにより、省スペース設計および改善されたリフト比に対する貫流が生み出される。その結果、弁を通過する流体の流量比を、所与のリフトにおいて増加させることができる。
【0025】
別の進展によれば、第1の弁体および第1の弁座と協働するシールが、軸方向のシールとなるように設計されているから、複座弁の切り換え漏れが減少し、衛生状態が改善される。
【0026】
別の進展によれば、チャネル断面は、第1および第2のギャップ断面のうちの大きい方のサイズの少なくとも3倍であるから、複座弁の切り替え状態に好ましくなく影響する過剰の負荷の高まりの危険性が、確実に減少する。
【0027】
環状のダイアフラムの中心開口部は、より小さく設計されることができ、より大きい量のリフトが、中心開口部の領域内で弁ロッドを案内することなく、ダイアフラムの固定された外径によって達成されることができる。これにより、もう1つの進展において、第2の弁体を第1の弁体に対して中心に位置させ、軸方向において第2の弁体とダイアフラムとの間に配置される案内手段によって、好都合に達成される。
【0028】
別の進展によれば、案内手段は、弁ロッドに固定され、漏れチャネル内に支持の様相で配置されている。これにより、装置を安価で製造でき、容易に取り付けおよび洗浄することができる。
【0029】
後の2つの進展はまた、案内手段が、漏れチャネルの最小チャネル断面に少なくとも相当する貫流面積を有する漏れ通路を備えるから、改善されることができる。
【0030】
これにより、漏れの良い排出を生み出し、それ故に、確実に上記記載の過剰の負荷の高まりを防止する。
【0031】
本発明は、後続の典型的な実施形態およびその進展に基づいてさらに詳しく説明され、効果、有利な点がより深い分析で説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】閉状態においてダイアフラムシールされた複座弁を通過するリフト軸に沿う部位
【
図2】開状態おいてダイアフラムシールされた複座弁を通過するリフト軸に沿う部位
【
図3】第1の弁体の洗浄位置において通路の詳細の断面図
【
図4】第2の弁体の洗浄位置において通路の詳細の断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に、閉鎖の切り換え状態にあり、すなわち閉位置にあるタンク底部弁として設計された複座弁が、部分断面にて示されている。弁内部空間2を有するハウジング1が、第1の接続部3および第2の接続部4を備えている。第1の接続部3を、パイプラインに接続できるように設計することができ、図示の例では、第2の接続部4は、容器に接続できるタンクアダプタ5を備える。閉位置において、第1の接続部3と第2の接続部4との間の流体の流れが防止される。
【0034】
第1の弁体6および第2の弁体7が、複座弁の内部および複座弁を通る流体の流れに影響を与えるために、弁内部空間2に移動可能に配置されている。
【0035】
中空ロッド8が、第1の弁体6に接続される一方で、弁ロッド9が、第2の弁体7に接続され、中空ロッド8を通過するように配置される。中空ロッド8および中空ロッド8内を移動することができる弁ロッド9が一緒に、ハウジング開口部11をシールするダイアフラム10を貫通している。ハウジング部分13のキャビティ12が、ダイアフラム10の作用によって弁内部空間2から分離されている。汚染物質がロッドに付着し、切り換え動作の最中にシールを通過するいわゆるシャトル効果が、ダイアフラム10によって防止される。中空ロッド8および弁ロッド9は、キャビティ12およびハウジング部分13を通過している。これらのロッドの各々は、複数の相互接続されたロッド部分で構成されてよい。しかしながら、弁内部空間2内に仕切りが存在しないことが、衛生に関して好都合である。中空ロッド8は、滑り軸受ブッシュ14に取り付けられている。領域を互いに分離するためのシールを、滑り軸受ブッシュ14の一方側、すなわち流体の方向においてハウジング部分13の内部に面する側に設けることができる。駆動部16を支えるランタン15を、ハウジング部分13に固定することができる。駆動部16は、中空ロッド8および弁ロッド9の長手方向の移動を生み出すように構成される。駆動部16の機能として、少なくとも、第1の弁体6および第2の弁体7を動かすことによって複座弁の閉位置および開位置を生み出すことができる。好ましくは、駆動部16は、第1の弁体6および第2の弁体7のうちの少なくとも一方を座洗浄位置へともたらすように設計される。駆動部16を、例えば空気圧などの圧力媒体によって動作するように設計することができる。
【0036】
通路壁18を備える通路17が、第1の接続部3と第2の接続部4との間のハウジング1に形成されている。このタンク底部弁が開いているとき、流体は、前記通路17を通って流れる。しかしながら、閉位置においては、通路壁18ならびに第1の弁体6および第2の弁体7が、漏れ空間を、通路17内に形成されて第2の弁体7によって封じられるように境界付ける。複座弁の切り換え時、洗浄時、またはシール不良の場合に流体が漏れの形態で流出する漏れチャネル20が、中空ロッド8と弁ロッド9との間の中空ロッド8内に形成される。前記流体は、漏れ空間19から漏れチャネル20を通って流出し、中空ロッド8の内側をダイアフラム10を通って流れ、ハウジング部分13および出口ノズル21を通って流れ出る。
【0037】
ダイアフラム10が漏れを生じると、漏れは、キャビティ12に進入する。ダイアフラム10の外縁を保持する固定手段が、漏れた流体を固定領域からキャビティ12へと導く漏れ通路22を備えることができる。ダイアフラム10が漏れを生じており、交換が必要であることが確実に示されるように、出口パイプ23が、キャビティ12に連通している。
【0038】
図2は、第1の接続部3と第2の接続部4との間の自由な流体の接続が確立される開位置の複座弁を、部分断面にて示している。自由な流体の接続は、第1の弁体6および第2の弁体7が弁内部空間2へと引き込まれ、通路17を開くことで生み出される。
【0039】
ダイアフラム10は、中央開口部を境界付ける内縁を備え、この内縁が中空ロッド8に固定される。この固定作用は、保持要素24によって生み出される。この保持要素は、中空ロッド8にねじ込まれ、ロックナット25によって固定される。保持要素は、内縁を中空ロッド8の段部に押し付ける。このようにして、ダイアフラム10の確実な固定が、簡単で、摩耗が少なく、衛生的なやり方で確保される。この非積極的な固定作用を、耐摩耗性および衛生を改善するために、積極的な係合によって補完することができる。ダイアフラム10は、
図1に示されるように複座弁の閉状態においてしわおよび折り目のないドームの形状を有するように、成形され、内縁および外縁における保持の軸方向における位置が選択される。結果として、ダイアフラム10からの液体の排出が保証され、選択された設計により、残留物を含む水たまりの形成が防止される。
【0040】
複座弁の信頼できる機能、とりわけ信頼できる閉鎖、ならびに構成要素の長寿命が、図示の複座弁の有利な特性である。これらの目標を達成するために、中空ロッド8および弁ロッド9は、それらの動きにおいて確実に案内され、これにより、前記コンポーネント間の正確な整列が生み出される。これは、機能および寿命の両方に有益な効果をもたらす。
【0041】
中空ロッド8は、駆動部16に最も近い取り付け点である滑り軸受ブッシュ14に取り付けられている。滑り軸受ブシュ14は、中空ロッド8の外側の輪郭に積極的に係合する内側の輪郭を有することができ、これにより、リフト軸を中心とする回転が防止される。これを、例えば、内側の輪郭および外側の輪郭が回転に関して非対称な形状を有することで達成することができる。そのような手段は、内側の輪郭に割り当てられた平坦面と協働する外側の輪郭の一部としての平坦な支持面26である。積極的な係合によって中空ロッド8の回転を防止することにより、ダイアフラム10への機械的応力が軽減される。ダイアフラム10の内側および外側固定点をお互いに対してねじることによって機械的応力を発生させるねじりが、ほとんど防止される。
【0042】
滑り軸受27が、滑り軸受ブッシュ14の一方側、すなわち駆動部16から遠ざかる方を向いた側において、出口ノズル21の向こう側に配置され、この滑り軸受は、中空ロッド8の第2の取り付け点を提供する。シールを、滑り軸受27の一方側、すなわち出口ノズル21に面する側に設け、これらの領域を互いに分離して、滑り軸受27を清浄に保つことができる。
【0043】
弁ロッド9は、第1の地点において、出口ノズル21の一方側、すなわち駆動部16に面する側に配置された弁ロッド軸受28によって取り付けられる。
【0044】
案内手段29が、軸方向、すなわちリフト軸に沿った第2の弁体7とダイアフラム10との間の高さに位置している。この案内手段29は、弁ロッド9および第2の弁体7が中空ロッド8および第1の弁体6に対する空間的関係に向けられるように、弁ロッド9を案内して取り付ける。これにより、第2の弁体7が第1の弁体6に対してさらに中心に配置される。弁ロッド軸受28と案内手段29との間の軸方向の距離が大きくなり、必要な空間がダイアフラム10から遠ざかることは、有利であり、ダイアフラムの中央開口部の直径が小さくなることを意味する。この直径が、単に漏れチャネル20のサイズおよび中空ロッド8の壁の厚さのみによって決定される。この地点に案内および取り付けが存在しないことで、直径が小さくなる。したがって、リフトはダイアフラム10の外径および中央開口部の直径に依存するため、小さなダイアフラム10またはより大きなリフト量が可能である。案内手段29は、漏れを通過させることができるように設計される。
【0045】
通路17の詳細が、
図3および
図4の拡大図に示されている。
図3が、不完全なリフト位置にある第1の弁体6を示している一方で、第2の弁体7は閉位置にある。反対に、
図4においては、第1の弁体6が閉位置にあり、第2の弁体7が不完全なリフト位置にある。不完全なリフト位置は、複座弁の洗浄に使用され、とくには弁座の洗浄に使用される。
【0046】
複座弁の閉位置において第1のシール32と密封の様相で協働する第1の弁座31を備える開口部輪郭30が、通路17に形成されている。第1のシール32は、軸方向、半径方向、および半軸方向であってよい。しかしながら、好都合には、第1のシール32は、軸方向シールとして設計され、第1の弁体6の部位33に配置される。開口部輪郭30は、複座弁の閉位置において第1の部位33を少なくとも部分的に受け入れるように形作られている。第1の弁体6の部位33は、閉位置において通路17に入り込む。第1のシール32の軸方向の設計は、この設計を容易にする。部位33が開口部輪郭30に受け入れられ、あるいは開口部輪郭30へと入り込む場合、複座弁の開位置において、第1の弁体6の所与のリフトで、通路17と第1の弁体6との間の大きな貫流面積が好都合に生み出される。リフトは、ダイアフラム10の外径および内径に強く依存する。したがって、図示の開口部輪郭30の実施形態は、小さなダイアフラム10で大きな液体流量を有する複座弁を製造することを可能にし、あるいは所与の液体流量においてダイアフラム10のサイズを小さくすることを可能にする。
【0047】
複座弁の閉位置において第2のシール35と密封の様相で協働する第2の弁座34が、通路壁18に形成されている。第2のシール35は、半径方向にシールを達成するように設計され、第2の弁体7の溝に収容されている。第2のシール35の半径方向の設計は、複座弁の切り換え状態の変化の最中のいわゆる切り換え漏れに対して、強い低減効果を有する。切り換え漏れは、切り換えの最中に漏れ空間19に望まれずに進入する流体を指し、そのような流体が漏れ空間19において残留物を形成する可能性がある。ここに示した実施形態は、そのような切り換え漏れが実質的に存在せず、結果として残留物はほとんど形成されない。これにより、洗浄が簡単になり、弁の衛生状態が改善される。
【0048】
半径方向において部位33によって境界付けられて囲まれた切り欠き36が、第1の弁体6のうちの第2の弁体7に面する側に形成されている。切り欠き36に面する部位33の内壁は、少なくとも部分的に第3の弁座37として形成される。寸法は、第2の弁体7を完全に、または少なくとも部分的に切り欠き36に受け入れることができるように選択される。寸法はさらに、第2の弁体7が切り欠き36に受け入れられたときに第2のシール35が密封の様相で第3の弁座37と協働するように選択され、したがって費用効果において好都合な様相で、第2のシール35が開位置において弁体6および7を互いにシールし、閉位置において第2の弁体7および第2の弁座34を互いにシールするのに充分である。この位置が、
図2に示されており、複座弁の開位置において好都合に実現される。第2の弁体7を受け入れるための切り欠き36の図示の実施形態は、小さなダイアフラム10で大きな液体流量を有する複座弁を製造し、あるいは所与の液体流量においてダイアフラム10のサイズを小さくする効果を増幅する。案内手段29の上述の配置は、第1の弁体6に対して第2の弁体7を確実に中心に位置させ、したがって、切り欠き36への第2の弁体7の移動が、衝突または詰まりを生じることなく確実な様相で生じる。これにより、切り欠き36と第2の弁体7との間のすき間の寸法を好都合に狭くすることができる。
【0049】
図3は、不完全に開いた位置にある第1の弁体6を示している。この位置において、第1のシール32は第1の弁座31から離れており、したがって、両方の構成要素はもはや密封の様相では協働していない。同時に、第2の弁体7は、第2のシール35が第2の弁座34と密封の様相で協働する位置にある。この位置において、第1の弁座31および第1のシール32を、洗浄剤の作用により、とくには第1の弁座31および第1のシール32を流れる洗浄剤によって、洗浄することができる。この洗浄剤は、漏れチャネル20を通って運び去られる。漏れチャネル20が過負荷にならず、洗浄剤が流れの方向における漏れチャネル20の手前に蓄積することがなく、かつ漏れチャネルと第1の弁座31の領域との間で圧力が高まることがないように、第1のギャップ断面を有する第1の絞りギャップ38が、通路壁18と第1の弁体6との間に好都合に形成されてよく、図示の不完全に開いた第1の洗浄位置において好都合に形成される。
【0050】
第2の洗浄位置が、
図4に示されている。この位置においては、第1の弁座31と第1のシール32とが、互いに密封の様相で接触している。第2のシール35は、洗浄ギャップ39が第2の弁体7と通路壁18との間に形成されるように、第2の弁体7を途中まで持ち上げることによって第2の弁座34から離され、わずかに開かれている。この場合も、洗浄ギャップ39は、洗浄ギャップ39と漏れチャネル20との間の洗浄剤の蓄積および過度の圧力の高まりが防止されるように寸法付けられている。
【0051】
好都合には、洗浄ギャップ39は、第2のギャップ断面を有する第2の絞りギャップとして設計される。絞りギャップとしてのギャップの実施形態は、流体の貫流に適し、ギャップの断面に対応する面積の点で、洗浄ギャップの実施形態とは異なる。洗浄ギャップの場合、前記断面は、漏れチャネル20のチャネル断面よりも小さい。しかしながら、絞りギャップの場合、断面は、チャネル断面よりも大幅に小さい。絞りギャップの断面は、チャネル断面の3分の1であり、多くの場合に4分の1以下である。絞りギャップは、関連する弁座に動的な洗浄効果を生じさせる目的で、洗浄剤の流速により大きな影響を有する。第1の絞りギャップ38および洗浄ギャップ39に関して、「形成できる」は、ギャップが第1の弁体6および/または第2の弁体7の少なくとも1つのリフト位置において存在するが、通常は弁体6および7のすべてのリフト位置に存在するわけではないことを意味する。
【0052】
漏れチャネル20のチャネル断面、好ましくは漏れチャネル20の全範囲における最小チャネル断面を、第1および第2のギャップ断面のうちの大きい方よりも大きくなるように選択することで、洗浄剤の蓄積が確実に防止される。
【0053】
【0054】
案内手段29は、案内手段29が組み込まれたときに弁ロッド9が通過する中央開口部を有するリング40を備える。リング40の外周に、半径方向に延びる少なくとも1つの歯41が設けられている。支持面42が、リング40から遠ざかる方を向いた歯41の半径方向外側に設けられ、この支持面が漏れチャネル20の壁に摺動可能に接触する結果として、案内手段29、したがって間接的に弁ロッド9が、摺動可能な様相で中空ロッド8内に支持される。
【0055】
少なくとも1つのタブ43が、リング40に軸方向に取り付けられている。タブ43は、弾性変形可能であり、弁ロッド9の例えば溝などの切り欠きと係合する突起44を備える。このようにして、案内手段29を、簡単かつ費用効果の高いやり方で弁ロッド9に好都合に固定することができる。
【0056】
案内手段29は、中空ロッド8の内側の漏れチャネル20に設置され、洗浄剤は、前記漏れチャネル20を通って流れるように意図されているため、案内手段29は、漏れ通路45を備える。漏れ通路45は、リング40と歯41との間の中間空間に広がっている。加えて、リング40の内周に分布するノッチ46または複数のノッチ46を、リング40の内側に設けることができる。ノッチ46および歯の中間空間の個々の開口面積の合計が、漏れ通路45の貫流面積に等しい。この貫流面積は、少なくとも漏れチャネル20の最小チャネル断面に対応するように寸法付けられている。これにより、流出する洗浄剤の蓄積が防止され、漏れチャネル20内の圧力の高まりが防止される。漏れ通路を、穴、切り欠き、アンダーカット、などで構成してもよい。これに代え、あるいはこれに加えて、案内手段29の製造は、鋳造手順を含むことができる。
【符号の説明】
【0057】
1 ハウジング
2 弁内部空間
3 第1の接続部
4 第2の接続部
5 タンクアダプタ
6 第1の弁体
7 第2の弁体
8 中空ロッド
9 弁ロッド
10 ダイアフラム
11 ハウジング開口部
12 キャビティ
13 ハウジング部分
14 滑り軸受ブッシュ
15 ランタン
16 駆動部
17 通路
18 通路壁
19 漏れ空間
20 漏れチャネル
21 出口ノズル
22 漏れ通路
23 出口パイプ
24 保持要素
25 ロックナット
26 受面
27 滑り軸受
28 弁ロッド軸受
29 案内手段
30 開口部輪郭
31 第1の弁座
32 第1のシール
33 部位
34 第2の弁座
35 第2のシール
36 切り欠き
37 第3の弁座
38 第1の絞りギャップ
39 洗浄ギャップ
40 リング
41 歯
42 支持面
43 タブ
44 突起
45 漏れ通路
46 ノッチ
H リフト軸