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特許7072063車両に取り付けたタイヤのアクアプレーン状態を信号で通知する方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】車両に取り付けたタイヤのアクアプレーン状態を信号で通知する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20220512BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20220512BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B60W30/02 300
B60C19/00 H
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020527104
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 IT2018050250
(87)【国際公開番号】W WO2019123501
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】102017000148612
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598164186
【氏名又は名称】ピレリ・タイヤ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ロッカ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】アルテサニ,パオロ ジューリオ アルド
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-032355(JP,A)
【文献】国際公開第2009/008502(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0245454(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0199201(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0282548(US,A1)
【文献】特表2004-515402(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0052856(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
B60W 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けたタイヤ(1)のアクアプレーン状態を信号で通知する方法であって、
-前記タイヤ(1)を転動面(5)上で転動させるように前記車両を動作させ、前記転動面(5)は水の層(6)を含むことと、
-前記転動面(5)上での前記タイヤ(1)の転動により、前記タイヤ(1)のクラウン領域の一部分(4)が受ける半径方向加速度を表す加速度信号を取得し、前記加速度信号は、前記タイヤ(1)と前記水の層(6)との間の相互作用を表す少なくとも1つの部分を含むことと、
-前記相互作用を表す前記部分での前記半径方向加速度の一次導関数の傾向線を求めるために、前記加速度信号を処理することと、
-前記相互作用を表す前記部分での前記一次導関数の第1の極大点と第2の極大点との比較に基づいて、前記タイヤのアクアプレーン状態を表す少なくとも1つの第1のパラメータを求めることと、
-前記少なくとも1つの第1のパラメータに応じて、前記アクアプレーン状態の通知信号(SN)を生成することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記加速度信号を処理することは、フィルタ処理した加速度信号を生成するように、所定の周波数よりも低い周波数で、前記加速度信号をフィルタ処理することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加速度信号を処理することは、
-前記加速度信号の調和分解から、高調波のうちの所定の閾値よりも低い次数の部分を選択することと、
-高調波の前記選択した部分の調和合成によって、フィルタ処理した加速度信号を生成することと、
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記加速度信号を処理することは、前記一次導関数の前記傾向線を求めるように、前記フィルタ処理した加速度信号の傾きを計算することを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1のパラメータを1つ又は複数の所定の閾値(TR1,…TRn)と比較することと、前記少なくとも1つの第1のパラメータと前記1つ又は複数の所定の閾値(TR1,…Trn)との間の前記比較に基づいて、前記通知信号(SN)を生成することと、をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1のパラメータを求めることは、前記相互作用を表す前記部分において、前記一次導関数の前記傾向線の絶対極小点の位置を特定することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1のパラメータを求めることは、前記相互作用を表す前記部分において、前記一次導関数の前記絶対極小点の前記位置のすぐ前に位置する2つの極大点として、前記第1および第2の極大点を特定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
-前記タイヤと前記水の層との間の前記相互作用を表す前記少なくとも1つの部分における前記半径方向加速度の平均を表す少なくとも1つの第2のパラメータを求めるために、前記加速度信号を処理することと、
-前記少なくとも1つの第2のパラメータに応じて、前記アクアプレーン状態の前記通知信号(SN)を生成することと、
をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
タイヤを装備した車両を制御する方法であって、
-請求項1~8のいずれか一項に記載の方法に従って生成されたアクアプレーン状態の通信信号(SN)を受け取ることと、
-前記通知信号(SN)に基づいて、少なくとも1つの車両制御システムを作動させることと、
を含む方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの車両制御システムは、前記車両の横滑り防止システム及び/又は前記車両のトラクションコントロールシステムを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
車両に取り付けたタイヤ(1)のアクアプレーン状態を信号で通知するシステムであって、
-前記タイヤ(1)のクラウン領域の一部分に固定された検出装置(3)であって、前記タイヤ(1)が転動面(5)上を転動するときに、クラウン領域の前記部分が受ける半径方向加速度を測定するのに適した加速度計を含む検出装置(3)と、
-前記半径方向加速度を表す加速度信号を処理して、
a)前記加速度信号のうちの前記タイヤ(1)と前記転動面(5)にある水の層(6)との間の相互作用を表す部分と、
b)前記半径方向加速度の一次導関数の傾向線と、
c)前記相互作用を表す前記部分での前記一次導関数の第1の極大点と第2の極大点との比較に基づいて、前記タイヤ(1)のアクアプレーン状態を表す少なくとも1つの第1のパラメータと、
を求めるようにプログラムを組み込まれた少なくとも1つの処理モジュールと、
-前記少なくとも1つの第1のパラメータに応じて、前記アクアプレーン状態の通知信号(SN)を生成するのに適した少なくとも1つの通知モジュールと、
を含むシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの処理モジュールは、フィルタ処理した加速度信号を生成するために、所定の周波数よりも低い周波数で、前記加速度信号をフィルタ処理するようにさらにプログラムを組み込まれる、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの処理モジュールは、
-前記加速度信号の調和分解から、高調波のうちの、高調波の所定の閾値よりも低い次数の部分を選択することと、
-高調波の前記選択した部分の調和合成を通じて、フィルタ処理した加速度信号を生成することと、
のために、前記加速度信号を処理するようにさらにプログラムを組み込まれる、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの処理モジュールは、前記一次導関数の前記傾向線を求めるために、前記フィルタ処理した加速度信号の傾きを計算するようにさらにプログラムを組み込まれる、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの処理モジュールは、前記少なくとも1つの第1のパラメータを1つ又は複数の所定の閾値(TR1,…TRn)と比較するようにさらにプログラムを組み込まれ、前記少なくとも1つの通知モジュールは、前記少なくとも1つの第1のパラメータと前記1つ又は複数の所定の閾値(TR1,…TRn)との間の比較に基づいて、前記通知信号(SN)を生成するのに適する、請求項11~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの処理モジュールは、前記相互作用を表す前記部分において、前記一次導関数の前記傾向線の絶対極小点の位置を特定することで、前記少なくとも1つの第1のパラメータを求めるようにさらにプログラムを組み込まれる、請求項11~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの処理モジュールは、前記相互作用を表す前記部分において、前記一次導関数の前記絶対極小点の前記位置のすぐ前に位置する2つの極大点として、前記第1および前記第2の極大点を特定することで、前記少なくとも1つの第1のパラメータを求めるようにプログラムを組み込まれる、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの処理モジュールは、前記タイヤと前記水の層との間の前記相互作用を表す前記少なくとも1つの部分における前記半径方向加速度の平均を表す少なくとも1つの第2のパラメータを求めるようにさらにプログラムを組み込まれ、前記少なくとも1つの通知モジュールは、前記少なくとも1つの第2のパラメータに応じて、前記アクアプレーン状態の前記通知信号(SN)を生成するのにさらに適する、請求項11~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
タイヤを装備した車両であって、
-請求項11~18のいずれか一項に記載の1つ又は複数の前記タイヤのアクアプレーン状態を信号で通知するシステムと、
-少なくとも1つの車両制御システムと、
-アクアプレーン状態に関する前記通知信号(SN)を受け取るのに適した少なくとも1つの受信モジュールと、
-前記通知信号(SN)に基づいて、前記少なくとも1つの車両制御システムを作動させるように構成された少なくとも1つの作動モジュールと、
を含む車両。
【請求項20】
前記少なくとも1つの車両制御システムは、前記車両の横滑り防止システム及び/又は前記車両のトラクションコントロールシステムを含む、請求項19に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、車両に取り付けたタイヤのアクアプレーン状態を信号で通知する方法及びシステムに関する。本発明はまた、車両を制御する方法に関する。本発明はまた、アクアプレーン状態を信号で通知するシステムを含む車両に関する。
【背景技術】
【0002】
技術情勢
これに関連して、アクアプレーンとは、タイヤと地面(又は、より一般的には、タイヤの転動面)との間に水の層があるために、タイヤが方向性を失い、そのため、タイヤが取り付けられた車両の運転者が、車両自体の軌道を変えようとした場合でさえ、タイヤが、車両の軌道を変えることなく、慣性によって実質的に決まる方向に引き続き従う状態を意味する。
【0003】
アクアプレーン状態は、接地領域でのトレッドのチャネル及び/又は溝の中の水の排水及び放出が不十分になったときに発生し、そのため、タイヤが密着性をなくす。
【0004】
したがって、接地領域でタイヤが地面から離れ、その結果、方向性とタイヤ自体によるトラクションとがなくなる。
【0005】
より具体的には、かなりの水の層が存在する場合に、タイヤは、タイヤと転動面との間の通常の相互作用の状態と比較して変形する傾向がある。
【0006】
この変形により、特に、接地領域の面積が小さくなり、その結果、タイヤと転動面との間の密着性が低下する。
【0007】
アクアプレーン現象は、きわめて危険なことがあり、その理由は、そのような状態では、運転者は、車両の制御を実質的にできなくなり、運転者は、もはや道路をたどって進むこと、障害物を避けることなどができない。
【0008】
文献、国際公開第2010/046871号、米国特許第5502433号、米国特許第5723768号、米国特許出願公開第2008/0245455号、米国特許出願公開第2008/0245456号、米国特許出願公開第2016/0264109号は、タイヤのアクアプレーン状態を検出する方法/システムに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の概要
本出願人は、水の層が薄い(例えば、1~3mm)場合に、アクアプレーン現象の発生を検出するのは困難であることを検証した。これらの状態では、乾燥面でのタイヤの走行状態と比較した、タイヤが受ける変形は、センサがタイヤのクラウン部分に配置された場合でも認知できない。したがって、前述の文献に記載された方法では、アクアプレーン現象の発生の検出に限界があり、これらの方法は、十分に先行して車両制御システム(例えば、安定性制御システム)を調整する、又は作動させることができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
しかし、本出願人は、水の層が薄い場合でさえ、タイヤのクラウン部分に配置された加速度測定センサが発した信号の特定の解析を用いて、アクアプレーン現象の発生を検出するのが可能であることを発見した。
【0011】
第1の態様によれば、本発明は、車両に取り付けたタイヤのアクアプレーン状態を信号で通知する方法に関する。
【0012】
第2の態様によれば、本発明は、タイヤを装備した車両を制御する方法に関する。
【0013】
第3の態様によれば、本発明は、車両に取り付けたタイヤのアクアプレーン状態を信号で通知するシステムに関する。
【0014】
第4の態様によれば、本発明は、タイヤを装備した車両に関する。
【0015】
本発明において、タイヤの「アクアプレーン状態」とは、タイヤが通過する水の層が存在するために、タイヤが少なくとも部分的に密着性をなくす状態を意味する。アクアプレーン状態は、部分的であることもあるし、又は全体的(又はフルアクアプレーン)であることもあり、後者の場合、タイヤは方向性を完全に失い、一方、最初の場合に、タイヤは、接地領域の少なくとも一部を転動面と接触した状態に維持し、したがって、少なくとも一部において、転動面自体と相互作用する能力を維持する。
【0016】
本発明は、前述の態様の1つ又は複数において、以下の好ましい特徴の1つ又は複数を提供することができる。
【0017】
車両は、タイヤを転動面上で転動させるように動作し、前記転動面は水の層を含む。
【0018】
好ましくは、前記転動面上での前記タイヤの転動により、前記タイヤのクラウン領域の一部分が受ける半径方向加速度を表す加速度信号を取得すると規定される。加速度信号は、前記タイヤと前記水の層との間の相互作用を表す少なくとも1つの部分を含む。
【0019】
好ましくは、前記相互作用を表す前記部分での前記半径方向加速度の一次導関数の傾向線(trend)を求めるために、前記加速度信号を処理すると規定される。
【0020】
好ましくは、前記相互作用を表す前記部分での前記一次導関数の第1の極大点と第2の極大点との間の比較に基づいて、前記タイヤのアクアプレーン状態を表す少なくとも1つの第1のパラメータを求めると規定される。
【0021】
好ましくは、前記少なくとも1つの第1のパラメータに応じて、前記アクアプレーン状態の通知信号を生成すると規定される。
【0022】
好ましくは、前記タイヤのクラウン領域の一部分に固定された検出装置が設けられる。検出装置は、前記タイヤが転動面上を転動するときに、クラウン領域の前記部分が受ける半径方向加速度を測定するのに適した加速度計を含む。
【0023】
好ましくは、前記半径方向加速度を表す加速度信号を処理するようにプログラムを組み込まれた少なくとも1つの処理モジュールが設けられる。
【0024】
好ましくは、前記少なくとも1つの処理モジュールは、前記加速度信号のうちの前記タイヤと前記転動面にある水の層との間の相互作用を表す部分を求めるために、前記加速度信号を処理するようにプログラムを組み込まれる。
【0025】
好ましくは、前記少なくとも1つの処理モジュールは、前記半径方向加速度の一次導関数の傾向線を求めるために、前記加速度信号を処理するようにプログラムを組み込まれる。
【0026】
好ましくは、前記少なくとも1つの処理モジュールは、前記相互作用を表す前記部分での前記一次導関数の第1の極大点と第2の極大点との間の比較に基づいて、前記タイヤのアクアプレーン状態を表す少なくとも1つの第1のパラメータを求めるために、前記加速度信号を処理するようにプログラムを組み込まれる。
【0027】
好ましくは、前記少なくとも1つの第1のパラメータに応じて、前記アクアプレーン状態の通知信号を生成するのに適した少なくとも1つの通知モジュールが設けられる。
【0028】
好ましくは、前記加速度信号の処理は、フィルタ処理した加速度信号を生成するために、所定の周波数よりも低い周波数で、前記加速度信号をフィルタ処理することを含むことができる。
【0029】
或いは、前記加速度信号の処理は、前記加速度信号の調和分解から、高調波のうちの、高調波の所定の閾値よりも低い次数の部分を選択することを含むことができる。
【0030】
前記加速度信号の処理はまた、高調波の前記選択した部分の調和合成を通じて、フィルタ処理した加速度信号を生成することを含むことができる。
【0031】
好ましくは、前記加速度信号の処理は、前記一次導関数の前記傾向線を求めるために、前記フィルタ処理した加速度信号の傾きを計算することを含むことができる。
【0032】
好ましくは、前記少なくとも1つの第1のパラメータを1つ又は複数の所定の閾値と比較し、前記少なくとも1つの第1のパラメータと前記1つ又は複数の所定の閾値との間の比較に基づいて、前記通知信号を生成するとさらに規定することができる。
【0033】
好ましくは、前記少なくとも1つの第1のパラメータを求めることは、タイヤと水の層との間の相互作用を表す前記部分において、前記一次導関数の前記傾向線の絶対極小点の位置を特定することを含む。
【0034】
好ましくは、前記少なくとも1つの第1のパラメータを求めることは、タイヤと水の層との間の相互作用を表す前記部分において、前記一次導関数の前記絶対極小点の前記位置のすぐ前に位置する2つの極大点として、前記第1及び前記第2の極大点を特定することを含む。
【0035】
好ましくは、前記タイヤと前記水の層との間の相互作用を表す前記少なくとも1つの部分における前記半径方向加速度の平均を表す少なくとも1つの第2のパラメータを求めるために、前記加速度信号を処理するとさらに規定される。
【0036】
前記アクアプレーン状態に関する前記通知信号は、前記少なくとも1つの第2のパラメータに応じて生成することができる。
【0037】
好ましくは、前記少なくとも1つの処理モジュールは、フィルタ処理した加速度信号を生成するために、所定の周波数よりも低い周波数で、前記加速度信号をフィルタ処理するようにさらにプログラムを組み込むことができる。
【0038】
或いは、前記少なくとも1つの処理モジュールは、
-前記加速度信号の調和分解から、高調波のうちの、高調波の所定の閾値よりも低い次数の部分を選択することと、
-高調波の前記選択した部分の調和合成を通じて、フィルタ処理した加速度信号を生成することと、
のために、前記加速度信号を処理するようにさらにプログラムを組み込むことができる。
【0039】
好ましくは、前記少なくとも1つの処理モジュールは、前記一次導関数の前記傾向線を求めるために、前記フィルタ処理した加速度信号の傾きを計算するようにさらにプログラムを組み込むことができる。
【0040】
好ましくは、前記少なくとも1つの処理モジュールは、前記少なくとも1つの第1のパラメータを1つ又は複数の所定の閾値と比較するようにさらにプログラムを組み込むことができる。
【0041】
好ましくは、前記少なくとも1つの通知モジュールは、前記少なくとも1つの第1のパラメータと前記1つ又は複数の所定の閾値との間の比較に基づいて、前記通知信号を生成するのに適する。
【0042】
好ましくは、前記少なくとも1つの処理モジュールは、タイヤと水の層との間の相互作用を表す前記部分において、前記一次導関数の前記傾向線の絶対極小点の位置を特定することで、前記少なくとも1つの第1のパラメータを求めるようにさらにプログラムを組み込むことができる。
【0043】
好ましくは、前記少なくとも1つの処理モジュールは、タイヤと水の層との間の相互作用を表す前記部分において、前記一次導関数の前記絶対極小点の前記位置のすぐ前に位置する2つの極大点として、前記第1及び前記第2の極大点を特定することで、前記少なくとも1つの第1のパラメータを求めるようにプログラムを組み込まれる。
【0044】
好ましくは、前記少なくとも1つの処理モジュールは、前記タイヤと前記水の層との間の相互作用を表す前記少なくとも1つの部分における前記半径方向加速度の平均を表す少なくとも1つの第2のパラメータを求めるようにさらにプログラムを組み込まれる。
【0045】
好ましくは、前記少なくとも1つの通知モジュールは、前記少なくとも1つの第2のパラメータに応じて、前記アクアプレーン状態の前記通知信号を生成するのにさらに適する。
【0046】
好ましくは、タイヤを装備した車両を制御する方法は、上記に説明したものに従って生成されたアクアプレーン状態の通知を受け取ることを含む。
【0047】
好ましくは、通知信号に基づいて、少なくとも1つの車両制御システムを作動させると規定される。
【0048】
好ましくは、車両は、上記に説明したものに従って、1つ又は複数の前記タイヤのアクアプレーン状態を信号で通知するシステムを含む。
【0049】
好ましくは、車両は、少なくとも1つの車両制御システムを含む。
【0050】
好ましくは、車両は、アクアプレーン状態に関する前記通知信号を受け取るのに適した少なくとも1つの受信モジュールを含む。
【0051】
好ましくは、車両は、前記通知信号に基づいて、車両制御システムを作動させるように構成された少なくとも1つの作動モジュールを含む。
【0052】
好ましくは、前記少なくとも1つの車両制御システムは、前記車両の横滑り防止システム及び/又は前記車両のトラクションコントロールシステムを含む。
【0053】
本発明のいくつかの非限定的な例の詳細な説明から、さらなる特徴及び利点がより明らかになるであろう。
【0054】
この説明は、添付図に関連して下記に提示され、これらの添付図も一例に過ぎず、したがって、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図面の簡単な説明
図1】水の層を含む転動面上を転動しているタイヤを概略的に示している。
図2】本発明による、アクアプレーン状態を信号で通知するシステムの実現形態の簡略化したブロック図を示している。
図3】実質的に乾燥した転動面上を転動するタイヤに対する半径方向加速度及びその一次導関数の傾向線の例を示している。
図4】部分的なアクアプレーン状態において、水の層を含む転動面上を転動するタイヤに対する半径方向加速度及びその一次導関数の傾向線の、次第に速度を上げたいくつかの例の1つを示している。
図5】部分的なアクアプレーン状態において、水の層を含む転動面上を転動するタイヤに対する半径方向加速度及びその一次導関数の傾向線の、次第に速度を上げたいくつかの例の1つを示している。
図6】部分的なアクアプレーン状態において、水の層を含む転動面上を転動するタイヤに対する半径方向加速度及びその一次導関数の傾向線の、次第に速度を上げたいくつかの例の1つを示している。
図7】部分的なアクアプレーン状態において、水の層を含む転動面上を転動するタイヤに対する半径方向加速度及びその一次導関数の傾向線の、次第に速度を上げたいくつかの例の1つを示している。
図8】部分的なアクアプレーン状態において、水の層を含む転動面上を転動するタイヤに対する半径方向加速度及びその一次導関数の傾向線の、次第に速度を上げたいくつかの例の1つを示している。
図9】部分的なアクアプレーン状態において、水の層を含む転動面上を転動するタイヤに対する半径方向加速度及びその一次導関数の傾向線の、次第に速度を上げたいくつかの例の1つを示している。
図10】完全なアクアプレーン状態において、転動面上を転動するタイヤに対する半径方向加速度の傾向線の第1の例を示している。
図11】完全なアクアプレーン状態において、転動面上を転動するタイヤに対する半径方向加速度の傾向線の第2の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0056】
発明の例の詳細な説明
図1を参照すると、数字1は、車両ホイール用のタイヤを全体として示している。
【0057】
タイヤ1は、リム(図示せず)に取り付けられ、次に、ハブ2に取り付けられる。タイヤ1は、ハブ2を用いて車両(図示せず)に取り付けられて、車両自体の移動を可能にする。検出装置3は、タイヤ1の内面のクラウン領域の一部分に固定され、タイヤ1の転動時に、検出装置3が固定されたタイヤ1のクラウン部分が受ける半径方向加速度を測定するのに適した加速度計を含む。検出装置3は、加速度計が測定した加速度測定生データを含む信号を生成することができる。
【0058】
特に、検出装置3は、典型的には、(例えば、シアノアクリレート系の構造用接着剤によって、又は感圧接着剤によって)タイヤ1の内面に接着された固定装置を用いて、タイヤ1のライナに固定することができる。例えば、固定装置は、同じ出願人の名による国際公開第2015/019283号及び国際公開第2015/019288号に記載されている通りに作製することができる。好ましくは、検出装置3は、実質的に、タイヤ1の赤道面に固定することができる。タイヤ1の内面のより横方向の位置に、及び/又はタイヤ1の内周に沿った様々な角度位置にさらなる検出装置を配置することができる。
【0059】
車両の移動中に、転動面5(例えば、地面)上を転動するタイヤ1は、転動面5自体に実質的に平行な長手方向に沿って移動する。
【0060】
タイヤ1は、いわゆる接地領域4で転動面5と接触している。
【0061】
転動面5にある水の層6は、タイヤ1と転動面5との間に挟まれている。
【0062】
図1に概略的に示すように、水の層6が存在するために、タイヤ1は、地面との密着性が低下する(すなわち、転動面との接触面積が縮小する)ことがあり、アクアプレーン現象の兆候が現れることがある。特に、タイヤ1の下の水の層6の割り込み部はタイヤ1を変形させ、接地領域4の接触面積を小さくする。
【0063】
タイヤ1と水の層6との間の相互作用は、タイヤ1を少なくとも部分的に持ち上げるので、接地領域4のうちの転動面と接触する部分が小さくなり(部分アクアプレーン状態)、密着性が部分的に低下する。さらにより危険な状態では、水の層6は、タイヤ1の下に完全に割り込み、したがって、タイヤ1は、転動面5との直接接触が全くない状態で(完全アクアプレーン状態)、水の層6上に「浮遊」し、結果として、密着性が全体的になくなる。これらの状態において、車両は、ハンドルの方向性能力、及び/又はトラクタホイールのトラクション能力、及び/又は制動能力を完全に失うことがある。
【0064】
アクアプレーン現象の発現は、所与のタイヤに対して、水の層6の厚さ及び/又はタイヤ1の回転速度に依存し得る。
【0065】
検出装置3に含まれる加速度計は、接地領域4の形成と、接地領域4自体内でのタイヤ1と水の層6との間の相互作用との両方の結果として、タイヤ1が受ける変形を測定することを可能にする。言い換えると、加速度計が検出した加速度測定データを含む、検出装置3が発する信号は、接地領域4を表す部分と、接地領域内で、タイヤ1と水の層6との間の相互作用を表す部分とを含む。
【0066】
図2を参照すると、検出装置3は、タイヤのアクアプレーン状態を信号で通知するシステム10内に含まれる。
【0067】
システム10は、検出装置3に動作可能に接続された処理モジュール7を含む。処理モジュール7は、タイヤの内部に配置することができるし、又は車両に配置することもでき、検出装置3が生成した信号を無線送信によって受け取ることができ、この信号は、処理に必要な加速度測定データを含む。或いは、加速度測定データを含む信号の処理の第1の部分は、タイヤ内に配置され、好ましくは検出装置3と一体化された第1の処理モジュールで行うことができ、精緻化の第2の部分は、車両に配置された第2の処理モジュールによって行うことができ、第2の処理モジュールは、信号処理の第2の部分に必要でありかつ第1の処理モジュールによって処理されたデータを、無線送信によって受け取ることができる。
【0068】
処理モジュール7は、検出装置3が取り付けられたタイヤのアクアプレーン状態を表す1つ又は複数のパラメータを求めるために、検出装置3が検出した加速度測定データを含む信号を処理するようにプログラムを組み込まれている。特に、処理モジュール7は、加速度測定信号の一次導関数の傾向線を取得するために、加速度測定信号に対して傾き演算を行うようにプログラムを組み込まれている。
【0069】
より詳細には、処理モジュール7は、低周波数フィルタ処理された加速度測定信号に対してこの傾き演算を行うようにプログラムを組み込めることが好ましい。
【0070】
特に、低周波数フィルタ処理を用いて、及び/又は加速度測定信号の低次高調波の解析によって、タイヤ(又はタイヤライナ)のいわゆる「マクロ変形」、すなわち、接地領域のまわりの領域でタイヤの圧縮によって引き起こされる変形と、その変形が、水の層をタイヤが通過することでどのように変化するかとを観測することが可能である。言い換えると、低周波数フィルタ処理は、フィルタ処理された加速度測定信号を取得することを可能にし、このフィルタ処理された加速度測定信号では、タイヤと水の層との間の相互作用の結果としてタイヤが受ける変形を表す信号部分が明瞭に認識可能になる。
【0071】
実施形態では、処理モジュール7は、前もって設定された周波数(例えば、700Hz未満)で調整されたローパスフィルタを用いて、加速度測定信号をフィルタ処理するようにプログラムを組み込むことができる。好ましい代替の実施形態では、処理モジュール7は、加速度測定生信号の(例えば、フーリエ変換によって行われる)調和分解と、それに続く、所定の閾値よりも低い次数の高調波だけの再合成とを用いて、フィルタ処理された加速度測定信号を取得するようにプログラムを組み込まれる。例えば、半径方向加速度測定信号の調和分解は、通常、高調波のうちの第1高調波にごく近い部分に対する絶対極大点を含むので、上記の閾値は、第1高調波から、絶対極大点に対応する高調波の次の次数であるが、絶対極大点に対応する高調波から遠くない高調波(例えば、絶対極大点に対応する高調波に対して10~50%のオフセットを有する高調波、又は絶対極大点の高さに対して10~50%の高さに対応する高調波)までの高調波の部分を含むように定めることができる。
【0072】
起こる可能性のあるタイヤのアクアプレーン状態を表す1つ又は複数のパラメータを求めるために、処理モジュールは、1つ又は複数の閾値TR1…TRnを使用することができる。
【0073】
システム10はまた、処理モジュール7に接続された通知モジュール8を含む。通知モジュール8は、処理モジュール7が求めた1つ又は複数のパラメータを受け取り、このパラメータ又はこれらのパラメータに応じて、アクアプレーン状態の通知信号SNを生成するのに適する。この通知信号SNは、車両の運転者に送られて、アクアプレーン現象の出現により車両自体がなり得る、可能性のある任意の危険状態についての警告を提示することができる。
【0074】
それに加えて、又はそれに代えて、通知信号SNは、車両がアクアプレーン状態にきわめて近い状態になるのを防止するために、自動車両制御システム(図示せず)に送られて、自動運転支援アクチュエータを作動させることができる。例えば、この制御システムは、横滑り防止システム(横滑り防止又はESC、横滑り防止プログラム又はESPなど)を含むことができ、通知信号SNの制御により作動することで、車両の速度を遅くすることができる。別の例では、制御システムは、トラクションコントロールシステムを含むことができ、通知信号SNの制御により作動することで、エンジン出力及び/又はトラクタホイールハブに加えられるトラクショントルクを小さくすることができる。
【0075】
実現可能な実施形態では、検出装置3は、タイヤのライナに固定され、一方、処理モジュール7及び通知モジュール8は、車両に取り付けられた制御ユニットに実装される。
【0076】
検出装置3は、タイヤの半径方向に沿って加速度を測定できる加速度計と、加速度計が測定した半径方向加速度データを受け取る/管理することができ、所与のサンプリング周波数(通常は2kHzを超える)に応じて、半径方向加速度データを配列できるファームウェアモジュール又はハードウェアモジュール(例えば、特定用途向け集積回路又はASIC)と、バッテリ(及び/又は他の発電システム)と、約1GHzと10GHzとの間の周波数帯域で(例えば、工業、科学、及び医療帯域若しくはISM、又は超広帯域ベース送信若しくはUWBによって)動作する無線送信機とを含む。
【0077】
処理モジュール7及び通知モジュール8が実装された車載制御ユニットは、無線通信を通じて検出装置3によって送られたデータを受信することができる(したがって、検出装置3の送信機と同じ規格及び同じ周波数帯域に従って動作することができる)受信機を含む。処理モジュール7及び通知モジュール8は、CPUに接続されたメモリに格納されたソフトウェアモジュールとして実装される。閾値TR1…TRnも適切な構成で同じメモリに格納することができる。
【0078】
本出願人は、様々な車両のタイヤに検出装置を固定して一連の試験を実施した。これらの検出装置は、タイヤのクラウン領域のうちのそのような検出装置が取り付けられた部分が転動時に受ける半径方向加速度を測定するように構成された加速度計を含む。タイヤに固定された装置は、車両上に配置された制御ユニットと無線接続され、処理モジュールは、検出装置からの加速度測定生データを受け取り、処理することができる。FFT(高速フーリエ変換)による調和分解と、次の、FFTの絶対極大点の高さに対して20%の高さに対応するポジションに位置する高調波よりも低い次数の高調波だけの再合成とを用いて、加速度測定生信号に対してフィルタ処理演算を行うように、制御ユニットの処理モジュールにプログラムを組み込んだ。半径方向加速度の一次導関数の傾向線を取得するために、フィルタ処理された加速度測定信号に対して傾き演算を行うように、制御ユニットの処理モジュールにさらにプログラムを組み込んだ。
【0079】
図3~9は、出願人によって製造され、アルファロメオ159車に取り付けられたタイヤP Zero(商標)235/40 ZR19を用いて得られたいくつかの試験結果を示している。特に、図は、ホイール半回転での半径方向加速度(連続曲線)とその一次導関数(破線曲線)との傾向線を示している。縦座標に示す値は、半径方向加速度に関して得られたものに数的に対応し、一方、一次導関数に関しては、縦座標に示す値は、1000で除した値に対応する(そのため、両方の曲線は、同じグラフ上に示すことができる)。
【0080】
より詳細には、図3は、タイヤのトレッドが水を完全に排出できて、すべての接地領域がアスファルト上にある状態を維持するように、3mmの水の層上を低速でホイール半回転したときの半径方向加速度及びその一次導関数の傾向線を示し、図4~9は、半径方向加速度及び加速度の一次導関数の傾向線を示し、各図は、3mmの水の層上を順次速度を上げて(図4-40km/h、図5-50km/h、図6-60km/h、図7-70km/h、図8-80km/h、図9-85km/h)ホイール半回転したときのものである。
【0081】
各図において、「X」記号は、半径方向加速度曲線及び一次導関数曲線との両方で、接地領域の始点及び終点を示している。これらの点は、半径方向加速度曲線の絶対極小点を特定するために、制御ユニットの処理モジュールにプログラムを組み込むことで得られた。
【0082】
各図において、「○」記号は、アクアプレーン状態を表す第1のパラメータの導出に係わる一次導関数の傾向線の極値を示している。これらの点は、一次導関数曲線に関して、a)絶対極小点(接地領域からの出口点のすぐ前)と、b)絶対極小点のすぐ前の第1の極大点と、第1の極大点のすぐ前であるが、接地領域の始点内の第2の極大点とを特定するために、制御ユニットの処理モジュールにプログラムを組み込むことで得られた。
【0083】
一次導関数の各傾向線に対して、第1の極大点及び第2の極大点の高さを求めるように制御ユニットの処理モジュールにプログラムを組み込んだ。
【0084】
乾燥面での動作に対応する図3から分かるように、半径方向加速度の一次導関数曲線は、接地領域に対応する部分内に1つの極大点しか有さない。
【0085】
図4~9では、その代わりとして、半径方向加速度曲線に関して、水の層との相互作用により、タイヤが受ける変形に対応する部分を認識することができる。相応して、速度が速くなるにつれて、(図にA、Bで示す)相対高さが変化する2つの極大点が、一次導関数の曲線上に出現する。特に、速度が速くなるにつれて、第2の極大点は、図8及び図9で第1の極大点高さを超えるまで、その大きさを増大させる。
【0086】
これらの観察に基づいて、本出願人は、曲線のうちの接地領域に対応する部分にある、半径方向加速度の一次導関数の極大点の高さを比較することで、タイヤの部分アクアプレーン状態、すなわち、完全に乾燥した面上を移動する状態からの大きな隔たり、又は小さな隔たり、及び/又は完全なアクアプレーン状態で移動する状態からの大きな隔たり、又は小さな隔たりを表すパラメータを得ることが可能であると分かった。
【0087】
特に、一次導関数の第1及び第2の極大点の高さ間の比率に基づく第1のパラメータP1を規定した。「低アクアプレーン」のレベルが、パラメータP1の低い値に対応することを保証するために、第2の極大点の高さAが、第1の極大点の高さBよりも小さい場合に、第1のパラメータP1は、比率A/Bである。完全なアクアプレーン状態の達成は、漸近的な状態に相当し、タイヤは、漸近的な状態を越えて、水の層上で完全に「浮遊」するので、第2の極大点の高さAが第1の極大点の高さB以上である場合に、パラメータP1は、(N-B/A)になり、この場合に、Nは、1を超える任意の固定数であり、第1のパラメータP1が獲得可能な最大値を表す(実質的に、完全なアクアプレーン状態の達成に相当する)。
【0088】
要約すると、制御ユニットの処理モジュールは、以下の通りに第1のパラメータP1を計算するようにプログラムを組み込まれ、
A<Bならば、P1=A/Bであり、
A≧Bならば、P1=N-B/Aである。
【0089】
こうして計算されたパラメータP1は、部分アクアプレーン状態、すなわち、接地領域の少なくとも一部が、なお転動面と接触する(且つ転動面上に存在する水の層と接触しない)アクアプレーン状態の「レベル」にそれぞれが対応する1つ又は複数の閾値TR1…TRNと比較することができる。
【0090】
数量及び閾値TR1…TRN間の相互間隔は、必要に応じて規定することができる。本出願人は、閾値の数量を3以上、好ましくは10以下に規定するのが有益であると考える。これらの閾値は、互いの間は等間隔でよいし、又は、好ましくは等間隔でなくてもよい。
【0091】
なお、第1のパラメータP1の上記の数式は、本発明を限定するものとみなすべきではない。半径方向加速度の一次導関数の2つの極大点の比較に基づく、例えば、極大点の高さ間の比率及び/又は差に基づく他の数式を同等に規定することができる。
【0092】
図1及び図2に戻って、タイヤ1に固定された検出装置3によって検出された半径方向加速度信号の処理から、完全なアクアプレーン状態を検出することもできる。説明したように、この完全なアクアプレーン状態は、水の層6上でのタイヤ1の「浮遊」に相当する。
【0093】
図10及び図11は、上記の試験中に検出された生の半径方向加速度曲線の2つの例を示しており、使用車両は水の層に投入され、タイヤは完全なアクアプレーン状態にある。特に、図11は、図10に示す対応する試験よりも高速で実施された試験に対応する。図10及び図11に示すように、接地領域の半径方向加速度は、タイヤの圧縮のために、乾燥面を移動する状態での又は部分アクアプレーン状態での半径方向加速度が通常とる実質的なヌル値にならない。したがって、これは、タイヤが水の層との相互作用の結果としてそれ自体変形しながら、接地領域の通常の形成とは異なる形で、水の層上で引き続き回転する状態に対応する。
【0094】
相互作用領域でゼロを越えさえする加速度曲線を有する図11で見て分かる結果は、相互作用領域のタイヤ面の逆湾曲を引き起こす、水の層とのそのように強い相互作用による変形によって説明することができる。
【0095】
本出願人は、これらの観察に基づいて、タイヤのアクアプレーン状態を表す第2のパラメータP2を考案した。特に、図10及び図11に示すように、第2のパラメータP2は、水の層との相互作用を表す信号部分で半径方向加速度が取る平均値ΔACCRとすることができる。好ましくは、ガウス曲線に従って、中心を起点として係数が小さくなる加重平均などの、相互作用を表す信号部分の中心を起点として重みが小さくなる加重平均が実施される。この加重平均は、水の層が存在することで最も影響を受ける部分である相互作用領域の最内部の加速度値を大きくすることを可能にする。次いで、値P2=ΔACCR(又はその絶対値)は、半径方向加速度が、乾燥面上で動作する場合に取るヌル値から値P2を区別するために、前もって設定された閾値と比較することができる(図3に示すように)。好ましい実施形態では、パラメータP2は、接地領域の外で得られた平均角速度ωに対して正規化することができる。例えば、P2値を(「変形部分の半径」という物理的意味を有するパラメータである)ΔACCR/ω2として定めることが可能である。角速度に対して正規化することは、タイヤの回転速度に依存しない閾値と比較できるパラメータP2を取得することを可能にする。
【0096】
パラメータP2を求め、完全なアクアプレーン状態を確定するために、システム10の処理モジュール7の適切なプログラムを実行して、タイヤのアクアプレーン状態を示すことができる(図2)。
【0097】
したがって、パラメータP1、P2の適切な組み合わせから、タイヤが転動中に水の層を横断するときに、タイヤが到達するアクアプレーン状態のレベルに関する目安を得ることが可能である。
【0098】
例えば、P1及びP2パラメータの両方が実質的にヌル(すなわち、モジュールにおいてそれぞれの閾値よりも小さい)の場合に、タイヤは、実質的に乾燥した面を転動している、又はタイヤのトレッドは、転動面上の実質的にすべての水を効果的に排出するように機能していると結論づけることができる。パラメータP1がゼロとは異なる(すなわち、モジュールにおいて、閾値よりも大きい)場合に、パラメータP2が取る値にかかわらず、タイヤは、パラメータP1が取る値が大きいほど、高いレベルの部分アクアプレーン状態で転動していると結論づけることができる。パラメータP1がゼロである、又はパラメータP1が実質的にヌルである(すなわち、モジュールにおいて、閾値よりも小さい)が、P2が取る値がゼロとは実質的に異なる(すなわち、モジュールにおいて、閾値よりも大きい)場合に、タイヤは、完全なアクアプレーン状態で転動していると結論づけることができる。
【0099】
パラメータP1、P2が取る値に応じて、通知モジュール8で最も適切な通知信号SNを選択して(図2)、車両運転者に警告を出す、及び/又は自動車両制御システムを作動させることができる。
【0100】
最後に、アクアプレーン状態を信号で通知するシステムは、単なる説明目的で、様々な機能を明らかにするためだけに、複数のモジュールに細分化して説明されたが、この細分化は、必ずしも信号による通知用システム自体のハードウェア構造を反映するとは限らない。特に、図2に示す様々なモジュールの少なくとも一部(例えば、処理モジュール7及び通知モジュール8)は、実際上、同じハードウェア装置に実装されたソフトウェアルーチンとすることができるし、又はさらに細分化されたハードウェア装置とすることもできることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11