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特許7072066モータコントローラのIGBT駆動回路及びモータコントローラ
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  • 特許-モータコントローラのIGBT駆動回路及びモータコントローラ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】モータコントローラのIGBT駆動回路及びモータコントローラ
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/082 20060101AFI20220512BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20220512BHJP
   H03K 17/567 20060101ALI20220512BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20220512BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20220512BHJP
   H02H 7/20 20060101ALI20220512BHJP
   H03K 17/00 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
H03K17/082
H03K17/08 Z
H03K17/567
H02M1/08 A
H02M1/00 H
H02M1/00 R
H02M1/00 E
H02H7/20 D
H03K17/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020531656
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 CN2019076670
(87)【国際公開番号】W WO2019170035
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】201810189533.7
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511268454
【氏名又は名称】ジン-ジン エレクトリック テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】グー,ドンピン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,フーシァン
(72)【発明者】
【氏名】ドン,レンジュン
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222869(JP,A)
【文献】特開2016-127737(JP,A)
【文献】国際公開第2012/153458(WO,A1)
【文献】特開2013-165536(JP,A)
【文献】特開2017-158387(JP,A)
【文献】特表2014-513912(JP,A)
【文献】特開2017-127166(JP,A)
【文献】特開平01-259754(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106487287(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106655914(CN,A)
【文献】特開2017-189008(JP,A)
【文献】特開2016-135072(JP,A)
【文献】特表2015-509303(JP,A)
【文献】特開2008-017650(JP,A)
【文献】特開2009-284747(JP,A)
【文献】特開2015-211502(JP,A)
【文献】特開2016-141304(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008333(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030381(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/082
H03K 17/08
H03K 17/567
H02M 1/08
H02M 1/00
H02H 7/20
H03K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータコントローラのIGBT駆動回路であって、モータコントローラ駆動板に設けられた機能安全回路と、前記機能安全回路にそれぞれ接続された検出フィードバック回路及びパルス幅変調(PWM)バッファ回路とを含み、
前記検出フィードバック回路は、モータコントローラのIGBTモジュールを検出し、IGBTモジュールの短絡故障、過温度故障、母線電圧の過電圧故障、又は駆動電圧の不足電圧故障が検出されると、故障信号を前記機能安全回路に送信し、
前記機能安全回路は、予め設定された故障処理規則及び受信した故障信号に従って判断した後、IGBTモジュールをオフする制御信号を前記PWMバッファ回路に出力し、
前記PWMバッファ回路は、前記制御信号に従って、IGBTモジュールを駆動するPWM信号を発生させ、IGBTモジュールのオン・オフを制御することでIGBTモジュールを保護するためのものであり、
絶縁駆動電源回路をさらに含み、前記絶縁駆動電源回路は、前記PWMバッファ回路から出力されたPWM信号を受信して、PWM信号に対して絶縁を行い、
前記絶縁駆動電源回路は、絶縁トランスと絶縁駆動オプトカプラとを含み、
前記絶縁トランスは、入力端がモータコントローラ駆動板の給電電源に接続され、出力端が絶縁駆動オプトカプラに接続され、
前記絶縁駆動オプトカプラは、入力端が前記PWMバッファ回路に接続され、出力端がIGBTモジュールに接続され、PWM信号を絶縁処理した後にIGBTモジュールに出力し、
前記絶縁駆動オプトカプラは、IGBTモジュールのエミッタとコレクタとの間の電圧を検出するためのものでもあり、IGBTモジュールに短絡故障又は駆動電圧の不足電圧故障が発生していることが検出されると、短絡故障信号又は駆動電圧の不足電圧故障信号を前記機能安全回路にフィードバックし、
前記検出フィードバック回路は、温度検出フィードバック回路と、母線電圧検出フィードバック回路と、電源電圧検出フィードバック回路とを含み、
前記温度検出フィードバック回路は、IGBTモジュールの温度値を検出し、温度値が予め設定された温度閾値を超えると、IGBTモジュールに過温度故障が生じていると確定し、過温度故障信号を前記機能安全回路にフィードバックして、前記機能安全回路により、IGBTモジュールをオフにするように制御させ、
前記母線電圧検出フィードバック回路は、IGBTモジュールの母線電圧値を検出し、母線電圧の過電圧故障が生じていると確定すると、母線電圧の過電圧故障信号を前記機能安全回路にフィードバックして、前記機能安全回路により、IGBTモジュールをオフにするように制御させ、
電源電圧検出フィードバック回路は、モータコントローラ駆動板の給電電源の電圧値を検出し、給電電圧の不足電圧故障が生じていると確定すると、給電電圧の不足電圧故障信号を前記機能安全回路にフィードバックして、前記機能安全回路により、IGBTモジュールをオフにするように制御させる
ことを特徴とするモータコントローラのIGBT駆動回路。
【請求項2】
前記機能安全回路は、モータコントローラ制御板からのアクティブな短絡信号を受信し、該アクティブな短絡信号に従って前記PWMバッファ回路を制御してPWM信号を発生させることで、IGBTモジュールをオンにするように制御することを特徴とする請求項1に記載のモータコントローラのIGBT駆動回路。
【請求項3】
前記機能安全回路は、モータコントローラ制御板からのPWMイネーブル信号を受信し、PWMイネーブル信号に従って、PWMバッファ回路により、PWM信号を出力させたり、PWM信号の出力を停止させたりすることを特徴とする請求項1に記載のモータコントローラのIGBT駆動回路。
【請求項4】
冗長バッファ回路をさらに含み、前記冗長バッファ回路は、IGBTモジュールの故障発生時の各故障信号を受信し、受信された各故障信号をバッファしてからモータコントローラ制御板に送信して、モータコントローラ制御板による判断に供することを特徴とする請求項1に記載のモータコントローラのIGBT駆動回路。
【請求項5】
プッシュプル増幅回路をさらに含み、プッシュプル増幅回路は、絶縁電源駆動回路及びIGBTモジュールに接続され、受信されたPWM信号を増幅してからIGBTモジュールに出力するためのものであることを特徴とする請求項に記載のモータコントローラのIGBT駆動回路。
【請求項6】
前記絶縁駆動オプトカプラは、フライバックコントローラを備えた絶縁駆動オプトカプラであり、
前記モータコントローラ駆動板の給電電源は、15Vの電圧を出力するSepic電源である
ことを特徴とする請求項に記載のモータコントローラのIGBT駆動回路。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載のモータコントローラのIGBT駆動回路を含むことを特徴とするモータコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータコントローラに関し、特に、モータコントローラのIGBT駆動回路及びモータコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車分野において、特に制御システムにおける電気及び電子機器の広範な使用により、いくつかの新たな安全面での問題が現れ、危険な事故が頻発している。そのため、各大手自動車会社は、機能安全性に益々注意を向けており、国際標準化組織(ISO)も、専ら自動車の電気及び電子システムに関する機能安全国際規格であるISO26262を検討及び策定するようになった。この規格は、自動車の電気及び電子システムの自動車安全ライフサイクル全体及びその管理プロセスに関し、自動車企業及びその部品企業に高い要求を課している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、中国では、車両用の駆動モータシステムの機能安全設計に関する研究は、まだ少なくて、モータコントローラが車両全体の動力のコアコンポーネントであるため、モータコントローラの機能安全性を改善できる技術開発が急務となっている。
【0004】
本発明は、モータコントローラのIGBT駆動回路及びその駆動回路を用いたモータコントローラを提供しており、モータコントローラの機能安全性及び安定性を向上し、迅速な保護動作を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、モータコントローラのIGBT駆動回路が提供されており、前記モータコントローラのIGBT駆動回路は、モータコントローラ駆動板に設けられた機能安全回路と、前記機能安全回路にそれぞれ接続された検出フィードバック回路及びパルス幅変調(PWM)バッファ回路とを含む。
【0006】
前記検出フィードバック回路は、モータコントローラのIGBTモジュールを検出し、IGBTモジュールの所定故障が検出されると、所定故障信号を前記機能安全回路に送信するものである。
【0007】
前記機能安全回路は、予め設定された故障処理規則及び受信した所定故障信号に従って判断した後、対応する制御信号を前記PWMバッファ回路に出力するものである。
【0008】
前記PWMバッファ回路は、対応する制御信号に従って、IGBTモジュールを駆動するPWM信号を発生させ、IGBTモジュールのオン・オフを制御することでIGBTモジュールを保護するためのものである。
【0009】
また、絶縁駆動電源回路をさらに含み、前記絶縁駆動電源回路は、前記PWMバッファ回路から出力されたPWM信号を受信して、PWM信号に対して絶縁を行うようにしてもよい。
【0010】
また、前記絶縁駆動電源回路は、絶縁トランスと絶縁駆動オプトカプラとを含み、前記絶縁トランスは、入力端がモータコントローラ駆動板の給電電源に接続され、出力端が絶縁駆動オプトカプラに接続され、前記絶縁駆動オプトカプラは、入力端が前記PWMバッファ回路に接続され、出力端がIGBTモジュールに接続され、PWM信号を絶縁処理した後にIGBTモジュールに出力し、前記絶縁駆動オプトカプラは、IGBTモジュールのエミッタとコレクタとの間の電圧を検出するためのものでもあり、IGBTモジュールに短絡故障又は駆動電圧の不足電圧故障が発生していることが検出されると、短絡故障信号又は駆動電圧の不足電圧故障信号を前記機能安全回路にフィードバックするようにしてもよい。
【0011】
また、前記検出フィードバック回路は、温度検出フィードバック回路と、母線電圧検出フィードバック回路と、電源電圧検出フィードバック回路とを含み、温度検出フィードバック回路は、IGBTモジュールの温度値を検出し、温度値が予め設定された温度閾値を超えると、IGBTモジュールに過温度故障が生じていると確定し、過温度故障信号を前記機能安全回路にフィードバックして、前記機能安全回路により、IGBTモジュールをオフにするように制御させ、母線電圧検出フィードバック回路は、IGBTモジュールの母線電圧値を検出し、母線電圧の過電圧故障が生じていると確定すると、母線電圧の過電圧故障信号を前記機能安全回路にフィードバックして、前記機能安全回路により、IGBTモジュールをオフにするように制御させ、電源電圧検出フィードバック回路は、モータコントローラ駆動板の給電電源の電圧値を検出し、給電電圧の不足電圧故障が生じていると確定すると、給電電圧の不足電圧故障信号を前記機能安全回路にフィードバックして、前記機能安全回路により、IGBTモジュールをオフにするように制御させるようにしてもよい。
【0012】
また、前記機能安全回路は、モータコントローラ制御板からのアクティブな短絡信号を受信し、アクティブな短絡信号に従って前記PWMバッファ回路を制御してPWM信号を発生させることで、IGBTモジュールをオンにするように制御してもよい。
【0013】
また、前記機能安全回路は、モータコントローラ制御板からのPWMイネーブル信号を受信し、PWMイネーブル信号に従って、PWMバッファ回路により、PWM信号を出力させたり、PWM信号の出力を停止させたりするようにしてもよい。
【0014】
また、冗長バッファ回路をさらに含み、前記冗長バッファ回路は、IGBTモジュールの故障発生時の各故障信号を受信し、受信された各故障信号をバッファしてからモータコントローラ制御板に送信して、モータコントローラ制御板による判断に供するようにしてもよい。
【0015】
また、プッシュプル増幅回路をさらに含み、プッシュプル増幅回路は、絶縁電源駆動回路及びIGBTモジュールに接続され、受信されたPWM信号を増幅してからIGBTモジュールに出力するためのものであってもよい。
【0016】
また、前記絶縁駆動オプトカプラは、フライバックコントローラを備えた絶縁駆動オプトカプラであり、前記モータコントローラ駆動板の給電電源は、15Vの電圧を出力するセピック(SEPIC:Single Ended Primary Inductor Converter)電源(以下、「Sepic電源」と記載する)であってもよい。
【0017】
本発明のもう1つの態様によれば、上記モータコントローラのIGBT駆動回路を含むモータコントローラが提供されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有益な効果は、以下の通りになる。本発明によるモータコントローラのIGBT駆動回路は、モータコントローラ駆動板に機能安全回路が設けられ、IGBT故障信号をまとめて論理処理し、その信号を出力してPWMバッファ回路を制御し、IGBTモジュール及びモータコントローラの様々な保護機能を遂行させ、モータコントローラがIGBTを完全に保護できるようにし、駆動板におけるこのようなハードウェアロジック回路を介して故障信号を処理し、関連する動作を行ってIGBTモジュールを保護することができる。これにより、本発明は、ソフトウェアによる保護と比較して保護時間が大幅に短縮されるため、保護がタイムリーであり、動作が迅速である。このようなモータコントローラのIGBT駆動回路を適用することで、モータコントローラ全体の可用性及び安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例によるモータコントローラのIGBT駆動回路のブロック図である。
図2】本発明の一実施例によるモータコントローラのIGBT駆動回路の論理図である。
図3】本発明の一実施例によるモータコントローラのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
モータコントローラは、車両全体の動力のコアコンポーネントとして、多くの部品からなり、そのうち、駆動回路が主要な部品になっており、車両用の駆動モータシステムの機能安全設計上の重要な要素でもある。本発明の実施例では、IGBTモジュールの故障発生が検出されたときにIGBTモジュール及びモータコントローラの安全を迅速に保障できるモータコントローラのIGBT駆動回路が提供されている。
【0021】
図1は、本発明の一実施例によるモータコントローラのIGBT駆動回路のブロック図である。図1に示すように、本発明の一実施例によるモータコントローラのIGBT駆動回路100は、モータコントローラ駆動板に設けられた機能安全回路102と、該機能安全回路102に夫々接続された検出フィードバック回路101及びパルス幅変調(PWM)バッファ回路103とを含んでいる。
【0022】
検出フィードバック回路101は、モータコントローラのIGBTモジュールを検出し、IGBTモジュールの所定故障が検出されると、所定故障信号を機能安全回路102に送信する。上記所定故障信号には、短絡故障、過温度故障、母線電圧の過電圧故障、又は駆動電圧の不足電圧故障が含まれる。
【0023】
機能安全回路102は、予め設定された故障処理規則及び受信した所定故障信号に従って判断した後、対応する制御信号をPWMバッファ回路103に出力する。
【0024】
PWMバッファ回路103は、対応する制御信号に従って、IGBTモジュールを駆動するPWM信号を発生させ、IGBTモジュールのオン・オフを制御することでIGBTモジュールを保護するためのものである。PWMバッファ回路103は、PWM駆動信号を出力して、IGBTモジュールを直接駆動する。IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)は、即ち絶縁ゲート型バイポーラトランジスタである。
【0025】
本発明の一実施例によるモータコントローラのIGBT駆動回路100の機能安全回路102は、IGBT故障信号をまとめて論理処理し、その信号を出力してPWMバッファ回路103を制御し、IGBTモジュール及びモータコントローラへの様々な保護機能を実現し、モータコントローラの安全性を向上させるもので、実際のニーズを満たしている。また、ソフトウェア制御によって保護機能を実現する技術と比べるために実験を行ったところ、本実施例によるモータコントローラのIGBT駆動回路100の故障応答及び処理時間が数十マイクロ秒から1マイクロ秒未満に短縮できた。
【0026】
実際の応用において、機能安全回路102とPWMバッファ回路103は、CPLD(Complex Programmable Logic Device:複合プログラマブルロジックデバイス)、DSP(Digital Signal Processing:デジタル信号処理)又はCPUによって実現可能である。さらに、CPLD、DSP又はCPUは、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter:ユニバーサル非同期レシーバートランスミッター)インタフェースを介してモータコントローラ制御板上のCPUと通信し、モータコントローラ全体の可用性及び安全性を向上させることができる。通常UARTと呼ばれるユニバーサル非同期トランシーバートランスミッターは、非同期トランシーバートランスミッターの1つであり、送信するデータをシリアル通信とパラレル通信との間で変換する。
【0027】
図2は、本発明の一実施例によるモータコントローラのIGBT駆動回路の論理図である。図2に示すように、モータコントローラのIGBT駆動回路100は、検出フィードバック回路と、機能安全回路と、PWMバッファ回路と、絶縁駆動電源回路とを含んでいる。
【0028】
絶縁駆動電源回路は、PWMバッファ回路から出力されたPWM信号(即ち、図2におけるPWM1又はPWM2)を受信して、PWM信号に対して絶縁を行う。
【0029】
図2に示すように、絶縁駆動電源回路は、絶縁トランスと絶縁駆動オプトカプラとを含む。絶縁トランスは、入力端がモータコントローラ駆動板の給電電源に接続され、出力端が絶縁駆動オプトカプラに接続されており、電源電圧を検出することにより、絶縁トランス一次電圧値、及び駆動電圧の一次側に不足電圧故障が発生しているかどうかを知ることができる。
【0030】
さらに、図2には、上下二つのスイッチチューブが模式的に示されており、この2つのスイッチチューブが1つのIGBTハーフブリッジ回路を表している。一般的に、モータコントローラは、3相フルブリッジユニットを形成するために3つのIGBTハーフブリッジ回路を必要とする。図2では、駆動回路について、ハーフブリッジIGBTの一部のみを示しており、X3(U、V、W)は、3相IGBTモジュールを模式的に示している。
【0031】
絶縁駆動オプトカプラは、PWMバッファ回路、絶縁トランス、及びIGBTモジュールに接続される。具体的に、絶縁駆動オプトカプラは、入力端がPWMバッファ回路に接続され、出力端がIGBTモジュールに接続されることで、PWM信号を絶縁処理した後にIGBTモジュールに出力する。
【0032】
絶縁駆動オプトカプラは、IGBTモジュールのエミッタとコレクタとの間の電圧を検出するためのものでもあり、IGBTモジュールに短絡故障又は駆動電圧の不足電圧故障が発生していることが検出されると、短絡故障信号又は駆動電圧の不足電圧故障信号を機能安全回路にフィードバックする。
【0033】
即ち、絶縁駆動オプトカプラは、VCEを介して、例えばIGBT短絡故障信号(F_DST_TOP又はF_DST_BOT)及び絶縁トランスの2次側不足電圧故障信号(F_UVLO_TOP又はF_UVLO_BOT)等の重要な故障信号を検出する。ここでいうTOP及びBOTは、それぞれ上チューブ及び下チューブを表す。短絡故障が発生すると、瞬時に極めて大きな電流が発生し、制御板の過電流保護が機能する前に、直ちにIGBTを損壊してしまう。本実施例においては、ハードウェア回路によって駆動回路(即ちPWMバッファ回路)を制御して瞬時に保護を加えるようにしているので、故障処理の適時性が保証される。
【0034】
短絡中には、IGBTモジュールの電流が急激に増加し、一定の数値に達すると非飽和化現象が発生する。IGBTモジュールにおいて過電流の原因で非飽和化現象が発生する場合、迅速にIGBTモジュールをオフすると(電流の低下速度が速すぎると)、IGBTモジュールのオフ時にコレクタとエミッタとの間に電圧スパイク(CE間電圧スパイクと略称する)が発生する。そして、このCE間電圧スパイクが定格電圧を超えると、それに起因してIGBTモジュールは、CE電圧と電流の動作点がその安全動作領域を超え、損壊してしまう。そこで、VCE検出により、IGBTモジュールに短絡故障が発生しているかどうかを確定することができる。
【0035】
本実施例による絶縁駆動オプトカプラは、フライバックコントローラを備えた絶縁駆動オプトカプラである。フライバックコントローラを備えた駆動オプトカプラを用いることで、絶縁駆動電源の設計が簡素化され、駆動板のサイズ及び体積が減少する。モータコントローラ駆動板の給電電源は、15Vの電圧を出力するSepic電源である。Sepic電源は、絶縁トランスの入力端に接続され、IGBTモジュールに電力を供給する。
【0036】
図2に示すように、本実施例による検出フィードバック回路は、温度検出フィードバック回路と、母線電圧検出フィードバック回路と、電源電圧検出フィードバック回路とを含む。
【0037】
温度検出フィードバック回路、即ち、図2における温度検出フィードバック回路は、NTC1、NTC2、NTC3の3つの出力信号線に接続されている。即ち、3相IGBTモジュールの対応するスイッチチューブに接続されており、IGBTモジュールの温度値を検出し、温度値が予め設定された温度閾値を超えると、IGBTモジュールに過温度故障が生じていると確定し、過温度故障信号(/F_ IGBT_OT)を機能安全回路にフィードバックして、機能安全回路によりIGBTモジュールをオフするように制御させる。実際の応用において機能安全回路は、対応する制御信号(例えば、/Force_Upper_ON、/Force_Lower_ON、/PWM_Buffer)を、予め設定された温度故障処理規則と制御信号との間の対応関係に従ってPWMバッファ回路に出力し、PWMバッファ回路を制御することでPWMパルスを制御し、3相ブリッジIGBTモジュールにおける3つの上チューブの全オン、3つの下チューブの全オン、IGBTチューブの全オフ、又はIGBTチューブの通常オン・オフ等の操作を実現することができる。
【0038】
母線電圧検出フィードバック回路は、IGBTモジュールの母線電圧値を検出し、母線電圧の過電圧故障が生じている(例えば、現在母線電圧値が予め設定された母線電圧閾値を超えている)と確定すると、母線電圧の過電圧故障信号(/F_HV_OV)を機能安全回路にフィードバックして、機能安全回路によりIGBTモジュールをオフするように制御する。
【0039】
電源電圧検出フィードバック回路は、モータコントローラ駆動板の給電電源(図2におけるSepic電源を参照)の電圧値を検出し、給電電圧の不足電圧故障が発生している(例えば、現在電源電圧値が予め設定された母線電圧閾値を超えている)と確定すると、給電電圧の不足電圧故障信号(/F_GD_15V)を機能安全回路にフィードバックして、機能安全回路によりIGBTモジュールをオフするように制御する。
【0040】
本発明の一実施例において、機能安全回路は、受信された短絡故障信号に従って、IGBTモジュールをオフして保護するようにIGBTモジュールを制御できることに加えて、モータコントローラ制御板からのアクティブな短絡信号(/F_SHORT)をも受信する。そして、アクティブな短絡信号に従って、PWM信号を発生させるようにPWMバッファ回路を制御することで、IGBTモジュールの対応するスイッチチューブのオン・オフを制御し、アクティブな放電機能を実現する。さらに、アクティブな短絡機能は、一般に、制御板がPWM信号を直接送信してIGBTモジュールの上チューブ又は下チューブを短絡させることによって実現されるが、本実施例において、制御板は、PWM信号を直接送信してモータの短絡機能を実現してもよく、制御板は、短絡信号(/F_SHORT)を介して、駆動板の機能安全ロジック回路によりモータの短絡機能を実現させてもよく、冗長性が実現される。
【0041】
さらに、機能安全回路は、モータコントローラ制御板からのPWMイネーブル信号をも受信し、PWMイネーブル信号に従って、PWMバッファ回路により、PWM信号を出力させたり、PWM信号の出力を停止させたりする。図2に示すように、PWMイネーブル信号(/PWM_EN_CB)は、制御板からのもので、この信号が機能安全回路の入力信号の1つであり、PWMイネーブル信号(/PWM_EN_CB)が有効で、且つ他に故障信号入力がない場合、駆動板は、PWM出力をイネーブルし、PWMイネーブル信号(/PWM_EN_CB)が無効の場合、機能安全回路への故障入力があるかどうかに関係なく、駆動板の機能安全回路は、PWM信号の出力を停止する。
【0042】
図2に示すように、当該モータコントローラのIGBT駆動回路は、冗長バッファ回路をさらに含む。冗長バッファ回路は、IGBTモジュールの故障発生時の各故障信号を受信し、受信された各故障信号をバッファしてからモータコントローラ制御板に送信して、モータコントローラ制御板による判断に供する。冗長バッファ回路の機能は、受信された各故障信号をバッファしてから制御板に送信することだけである。
【0043】
これは、故障信号が2つの経路を経由することに相当する。1つの経路は、駆動板の機能安全回路に入力して判断を行うのであり、もう1つの経路は、冗長バッファ回路を経由して制御板に送って判断を行うのである。これによっても、モータコントローラの機能安全を保証するために冗長性が提供されている。
【0044】
図2に示すように、モータコントローラのIGBT駆動回路は、プッシュプル増幅回路をさらに含む。プッシュプル増幅回路は、絶縁電源駆動回路及びIGBTモジュールに接続され、受信されたPWM信号を増幅してからIGBTモジュールに出力するためのものである。
【0045】
図2に示すようなモータコントローラIGBT駆動回路は、機能安全設計に基づくものであり、絶縁駆動オプトカプラは、駆動電圧の2次側の不足電圧(/F_UVLO_X)及び短絡故障信号フィードバック(/F_DST_X)を有する。ここで、Xは、上チューブTOP又は下チューブBOTのいずれかを表す。例えば、不足電圧(F_UVLO_TOP)は、上チューブに接続された絶縁トランスの2次側不足電圧故障信号を表す。母線電圧検出フィードバック回路は、母線電圧の過電圧信号フィードバック(/F_HV_OV)を有し、電源電圧検出フィードバック回路は、+15Vの不足電圧信号フィードバック(/F_GD_15V)を有し、温度検出フィードバック回路は、IGBT温度サンプリング及び過温度故障信号フィードバック(/F_IGBT_OT)を有し、短絡信号(/F_SHORT)及びPWMイネーブル信号(/PWM_EN_CB)は、モータコントローラの制御板からのものである。
【0046】
機能安全回路は、入力された異なる故障状況及び制御板からのコマンド信号に従って、PWMバッファ回路を制御することでPWMパルスを制御し、3相ブリッジIGBTモジュールにおける3つの上チューブの全オン、3つの下チューブの全オン、IGBTチューブの全オフ、IGBTチューブの通常オン・オフ等を実現する。
【0047】
モータコントローラ制御板は、PWMイネーブル信号(/PWM_EN_CB)に従って、駆動板によるPWM出力をイネーブルしたり、PWM出力を停止したりし、制御板のアクティブな短絡信号(/F_SHORT)は、制御戦略に従ってモータの短絡機能を実現することができる。例えば、モータの逆起電力が高すぎて母線電圧の過電圧信号(/F_HV_OV)が発生した場合、機能安全回路は、IGBTモジュールの下アームを短絡させてモータの逆起電力を解消することにより、モータコントローラを保護する。また、絶縁駆動オプトカプラがIGBTモジュールの上アームにおける短絡故障又は上アームにおける駆動の不足電圧故障を検出した場合、機能安全回路は、IGBTモジュールの下アームを短絡させてIGBTモジュールを保護する。さらに、絶縁駆動オプトカプラがIGBTモジュールの下アームにおける短絡故障又は下アームにおける駆動の不足電圧故障を検出した場合には、機能安全回路は、IGBTモジュールの上アームを短絡させてIGBTモジュールを保護する。さらにまた、駆動板上のSepic電源出力電圧に+15Vの不足電圧信号(/F_GD_15V)が発生した場合には、機能安全回路は、IGBTモジュールを保護するために全てのIGBTチューブをオフにする。そして、IGBT過温度故障信号(/F_IGBT_OT)が発生した場合には、機能安全回路は、IGBTモジュールを保護するために全てのIGBTチューブをオフにする。
【0048】
このことから、IGBT駆動回路が統合された駆動板には、全体としての占有スペースが小さく、IGBT保護が完全で、動作が迅速であるという利点を持つことが分かる。完全なIGBT保護とは、IGBT保護機能が全面的であること、例えば、駆動電源の2次側の不足電圧保護(/F_UVLO_TOP/BOT)、駆動電圧の1次側の不足電圧保護(/F_GD_15V)、IGBT短絡保護(/F_DST_TOP/BOT)、母線電圧の過電圧保護(/F_HV_OV)、IGBT過温度保護(/F_IGBT_OT)等であることを意味する。
【0049】
本発明による機能安全に基づくモータコントローラIGBT駆動回路は、Sepic電源と、高周波絶縁トランスと、フライバックコントローラを備えた絶縁駆動オプトカプラ及びプッシュプル増幅回路と、故障信号採取部と、機能安全回路と、PWMバッファ回路とを含んでいる。ここで、Sepic電源は、駆動板の低電圧側に電力を供給し、絶縁トランスと、フライバックコントローラを備えた絶縁駆動オプトカプラ及びプッシュプル増幅回路とは、絶縁駆動電源の発生、駆動信号の増幅、及び信号のフィードバックの検出等の作業に用いられ、故障信号採取部は、IGBT温度、母線電圧を採取するためのものであり、機能安全回路は、故障信号をまとめて論理処理するためのものであり、その出力信号により、PWMバッファ回路を制御して、IGBTモジュール及びモータコントローラの様々な保護機能を遂行させ、IGBTを全面的に保護しており、その動作が迅速で、応答が速い。
【0050】
図3は、本発明の一実施例によるモータコントローラのブロック図である。図3に示すように、本実施例によるモータコントローラ300は、制御板301と、駆動板302と、IGBTモジュール303とを含み、そのうち、駆動板302には、前記実施例によるモータコントローラのIGBT駆動回路が設けられており、この駆動回路は、IGBTモジュール303の故障発生を検出したときにモータコントローラの安全を迅速に保障し、モータコントローラ全体の可用性及び安全性を向上させている。
【0051】
上述したのは、あくまでも本発明の具体的な実施形態であり、本発明の上記教示の下で、当業者は、上記実施例に基づいて他の改良又は変形を行うことができる。当業者であれば、上記の具体的な記載は本発明の目的をより良く解釈するためのものであり、本発明の保護範囲は請求項の保護範囲に基づくものであることが理解されるべきである。
図1
図2
図3