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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】制御装置および制御装置の保守方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20220512BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20220512BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20220512BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
H01L23/40 E
H01L25/04 C
H05K7/20 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020547491
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2018034415
(87)【国際公開番号】W WO2020059010
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藍 天
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-079440(JP,U)
【文献】特開2013-089784(JP,A)
【文献】特開2009-026871(JP,A)
【文献】国際公開第2016/162991(WO,A1)
【文献】特開2002-076221(JP,A)
【文献】特開2008-004869(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138341(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/40
H01L 25/07
H01L 25/18
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子が搭載される基板と、
前記半導体素子の上面に接触されるヒートシンクと、
前記ヒートシンクに形成された2つの雌ネジ部と、
前記半導体素子の下面と前記基板との間に設けられる固定部材と、
前記固定部材の前記雌ネジ部に対応する位置に形成されたネジ挿通孔と、
前記固定部材に形成され、前記半導体素子の被係合部に係合される係合部と、
前記ネジ挿通孔に挿通され、前記雌ネジ部に螺合されるネジと、
を備え
2つの前記雌ネジ部は、特定距離を空けて前記ヒートシンクに設けられており、
前記半導体素子は、2つのネジ止め部を有し、
前記ネジ止め部同士の離間距離が前記特定距離よりも短くなっている、
制御装置。
【請求項2】
前記ネジ止め部は、前記半導体素子に形成されたネジ止め用の切欠部または穴であり、
前記被係合部が前記ネジ止め部であり、前記係合部が前記固定部材の上面から上方に突出される上面突起部である請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記被係合部が前記半導体素子の側面であり、前記係合部が前記固定部材の周縁から上方に突出される周縁壁部である請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記固定部材の上面から前記周縁壁部の上端までの寸法が、前記半導体素子の厚み寸法よりも小さい請求項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記固定部材が可撓性を有する材質で形成され、前記ネジが前記雌ネジ部に螺合されたときに、前記周縁壁部の上端が前記ヒートシンクの下面に接触される請求項3または請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記固定部材の下面から下方に突出される下面突起部を備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記固定部材の周縁から上方に突出され、前記半導体素子の前記被係合部に係合される周縁壁部と、
前記固定部材の下面から下方に突出される下面突起部と、
を備え、
少なくとも2つの前記固定部材が積み重ねられたときに、前記下面突起部が前記周縁壁部の内面側に接触される請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
直流を交流に変換するインバータとしての前記半導体素子で変換された交流を前記基板の外部に導出する配線が接続されるコネクタと、
前記固定部材の前記コネクタに対応する位置に開口された開口部と、
を備える請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記基板を収容する電装箱と、
前記電装箱に形成され、前記ヒートシンクが取り付けられる取付部と、
を備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
半導体素子の下面と基板との間に固定部材を設けるステップと、
前記固定部材に形成された係合部を前記半導体素子の被係合部に係合するステップと、
前記半導体素子を前記基板に搭載するステップと、
2つの雌ネジ部が形成されたヒートシンクに前記半導体素子の上面を接触させるステップと、
前記固定部材の前記雌ネジ部に対応する位置に形成されたネジ挿通孔にネジを挿通するステップと、
前記ネジを前記雌ネジ部に螺合するステップと、
を含み、
2つの前記雌ネジ部は、特定距離を空けて前記ヒートシンクに設けられており、
前記半導体素子は、2つのネジ止め部を有し、
前記ネジ止め部同士の離間距離が前記特定距離よりも短くなっている、
制御装置の保守方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御装置および制御装置の保守方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源回路またはインバータ装置などの制御装置では、基板に搭載される半導体素子から発生する熱をアルミ板等で成形されたヒートシンクにより放熱させている。このような制御装置では、基板のネジ用穴に通されたヒートシンク固定用ネジを、半導体素子の両端間に設けられた切り欠きまたはネジ穴を介してヒートシンクの取り付け穴に螺合させている。このヒートシンクの取り付け穴同士の離間寸法は、半導体素子の切り欠きまたはネジ穴同士の離間寸法に対応している。そして、半導体素子がヒートシンク固定用ネジによりヒートシンクに固定され、両者間で良好な熱伝達が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/162991号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
故障などの要因により基板を交換することがある。半導体素子は年を追って小型化される傾向があり、新型の半導体素子は切り欠きまたはネジ穴同士の離間寸法が小さくなる。そのため、半導体素子が更新される場合には、これに対応した取り付け穴間の寸法を持つヒートシンクに変更しなければならない。ところが、ヒートシンクは一般に電装箱などの構造部材に固定される部材であるため、その取外作業に手間がかかる。また、ヒートシンクを新造しなければならずコストが嵩む。そこで、ヒートシンクを交換せずに基板の交換が行えるようにしたいという要望がある。また、同じヒートシンクに異なる寸法の半導体素子を取り付けることができればヒートシンクの種類を削減することもできる。
【0005】
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたもので、ヒートシンクを交換することなく異なる半導体素子を搭載した基板を取り付けることができる制御装置および制御装置の保守方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る制御装置は、半導体素子と、前記半導体素子が搭載される基板と、前記半導体素子の上面に接触されるヒートシンクと、前記ヒートシンクに形成された2つの雌ネジ部と、前記半導体素子の下面と前記基板との間に設けられる固定部材と、前記固定部材の前記雌ネジ部に対応する位置に形成されたネジ挿通孔と、前記固定部材に形成され、前記半導体素子の被係合部に係合される係合部と、前記ネジ挿通孔に挿通され、前記雌ネジ部に螺合されるネジと、を備え、2つの前記雌ネジ部は、特定距離を空けて前記ヒートシンクに設けられており、前記半導体素子は、2つのネジ止め部を有し、前記ネジ止め部同士の離間距離が前記特定距離よりも短くなっている
【0008】
本発明の実施形態に係る制御装置において、前記ネジ止め部は、前記半導体素子に形成されたネジ止め用の切欠部または穴であり、前記被係合部が前記ネジ止め部であり、前記係合部が前記固定部材の上面から上方に突出される上面突起部である。
【0009】
本発明の実施形態に係る制御装置において、前記被係合部が前記半導体素子の側面であり、前記係合部が前記固定部材の周縁から上方に突出される周縁壁部である。
【0010】
本発明の実施形態に係る制御装置において、前記固定部材の上面から前記周縁壁部の上端までの寸法が、前記半導体素子の厚み寸法よりも小さい。
【0011】
本発明の実施形態に係る制御装置において、前記固定部材が可撓性を有する材質で形成され、前記ネジが前記雌ネジ部に螺合されたときに、前記周縁壁部の上端が前記ヒートシンクの下面に接触される。
【0012】
本発明の実施形態に係る制御装置は、前記固定部材の下面から下方に突出される下面突起部を備える。
【0013】
本発明の実施形態に係る制御装置は、前記固定部材の周縁から上方に突出され、前記半導体素子の前記被係合部に係合される周縁壁部と、前記固定部材の下面から下方に突出される下面突起部と、を備え、少なくとも2つの前記固定部材が積み重ねられたときに、前記下面突起部が前記周縁壁部の内面側に接触される。
【0014】
本発明の実施形態に係る制御装置は、直流を交流に変換するインバータとしての前記半導体素子で変換された交流を前記基板の外部に導出する配線が接続されるコネクタと、前記固定部材の前記コネクタに対応する位置に開口された開口部と、を備える。
【0015】
本発明の実施形態に係る制御装置は、前記基板を収容する電装箱と、前記電装箱に形成され、前記ヒートシンクが取り付けられる取付部と、を備える。
【0016】
本発明の実施形態に係る制御装置の保守方法は、半導体素子の下面と基板との間に固定部材を設けるステップと、前記固定部材に形成された係合部を前記半導体素子の被係合部に係合するステップと、前記半導体素子を前記基板に搭載するステップと、2つの雌ネジ部が形成されたヒートシンクに前記半導体素子の上面を接触させるステップと、前記固定部材の前記雌ネジ部に対応する位置に形成されたネジ挿通孔にネジを挿通するステップと、
前記ネジを前記雌ネジ部に螺合するステップと、を含み、2つの前記雌ネジ部は、特定距離を空けて前記ヒートシンクに設けられており、前記半導体素子は、2つのネジ止め部を有し、前記ネジ止め部同士の離間距離が前記特定距離よりも短くなっている
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】空気調和機の室外機の外観を示す斜視図。
図2】室外機を示す分解斜視図。
図3】半導体素子を用いた制御装置を示すブロック図。
図4】ヒートシンクと固定部材と基板を示す断面図。
図5図4のV-V断面図。
図6】固定部材を示す平面図。
図7】固定部材を示す底面図。
図8】固定部材を示す斜視図。
図9】固定部材を示す側面図。
図10】ネジ止め前の半導体素子と固定部材を示す拡大断面図。
図11】ネジ止め後の半導体素子と固定部材を示す拡大断面図。
図12】固定部材を積み重ねた状態を示す断面図。
図13】制御装置の保守方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、制御装置および制御装置の保守方法の実施形態について詳細に説明する。なお、図4図5図10および図11の紙面上側を制御装置の上側として説明する。
【0019】
本実施形態の制御装置として、空気調和機の圧縮機を駆動するインバータ装置を含む室外制御器を例にとって説明する。図1の符号1は、空気調和機の室外機である。空気調和機は、室外に設置される室外機1と室内に設置される室内機(図示略)とで構成される。室外機1と室内機とは、冷媒を循環させる冷媒配管を介して接続されている。そして、室外機1と室内機との間で冷媒を循環させることで冷凍サイクルが構成される。
【0020】
図1に示すように、室外機1は、縦長の箱状を成す筐体2を備える。この筐体2には、側面と背面の一部に開口部3が形成されている。また、筐体2の正面側には、上下2つの吹出口4が開口され、これらの吹出口4に網目状のファンガード5が設けられている。
【0021】
図2に示すように、筐体2の内部は、仕切板6により熱交換室7と機械室8とに分けられている。熱交換室7には、熱交換器9が設けられるとともに、この熱交換器9の前方に上下2つの送風機10が設けられている。この送風機10は、それぞれが、筐体2の正面側の2つのファンガード5に対応する位置に設けられている。
【0022】
送風機10は、ファンモータ11と、このファンモータ11の回転軸に取り付けられたプロペラ型のファン12から成る。ファンモータ11を駆動させることで、ファン12が回転される。そして、筐体2の開口部3から空気が流れ込み、この空気と熱交換器9の内部を流れる冷媒との間で熱交換が行われ、熱交換後の空気がファンガード5の取り付けられた吹出口4から吹き出されるようになっている。
【0023】
機械室8には、ガス状の冷媒を圧縮する圧縮機13と、液冷媒を貯めるアキュムレータ14と、冷媒配管の冷媒の流れを切り換える四方弁15とが設けられている。さらに、機械室8には、電装箱16が設けられている。この電装箱16には、ファンモータ11および圧縮機13などの各種機器に電力を供給するとともに制御を行うためのインバータ装置を含む室外制御器である制御装置17が収容されている。なお、インバータ装置は、直流を交流に変換する装置である。
【0024】
図4および図5に示すように、電装箱16の筐体26の内部には、制御装置17を構成するプリント回路基板18(以下、基板18という。)が収容されている。この基板18には、電子部品である半導体素子21が搭載されている。なお、基板18には、複数の半導体素子21、さらには様々な電気・電子部品が搭載されている。これらの部品によりファンモータ11および圧縮機13を制御する制御回路が構成されている。
【0025】
次に、制御装置17の回路構成を図3に示すブロック図を参照して説明する。制御装置17の回路には、発熱素子として、力率改善回路を構成するスイッチング素子IGBTである第1半導体素子21Aと、圧縮機13に接続される三相インバータ(IPM)である第2半導体素子21Bと、一方のファンモータ11に接続される三相インバータ(IPM)である第3半導体素子21Cと、他方のファンモータ11に接続される三相インバータ(IPM)である第4半導体素子21Dと、交流電源22に接続される全波整流回路である第5半導体素子21Eと、同じく交流電源22に接続される全波整流回路である第6半導体素子21Fが設けられる。以下、第1半導体素子21Aないし第6半導体素子21Fを総称して半導体素子21と呼ぶ場合がある。
【0026】
第1半導体素子21Aは、IGBTの単一素子のみがパッケージに収納される。第2半導体素子21Bないし第4半導体素子21D(IPM)は、インバータを構成する6つのIGBTなどのスイッチング素子と、これを駆動する回路が1つのパッケージに収納される。
【0027】
なお、これらの半導体素子21の中で、最も発熱量の大きい素子は、圧縮機13を駆動するための大電流をPWM(Pulse Width Modulation)でスイッチングする第2半導体素子21Bである。
【0028】
また、第1半導体素子21Aと第2半導体素子21Bと第3半導体素子21Cと第4半導体素子21Dとのそれぞれに接続され、各素子の動作を制御する制御部23が設けられている。この制御部23により各素子のスイッチングが制御されて、圧縮機13および2つのファンモータ11が可変速駆動される。なお、制御部23は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路からなり、これらの回路および素子も基板18に搭載されている。
【0029】
第5半導体素子21Eおよび第6半導体素子21Fは、インダクタ20を介して交流電源22に接続される。さらに、第6半導体素子21Fで整流された直流がコンデンサ19を介して、第2半導体素子21Bと第3半導体素子21Cと第4半導体素子21Dに供給される。
【0030】
また、第1半導体素子21Aは、交流電源22の正弦波の半波の特定タイミングで1回若しくは複数回ON/OFFすることで、交流電源22からの電流を正弦波に近づけて力率を向上させる力率改善回路(高力率回路)を構成する。この第1半導体素子21Aは、正の半波と負の半波の両方でON/OFFする必要があるため、その入力側に設けられた第5半導体素子21Eの全波整流回路によって交流電源22からの入力を整流している。
【0031】
図4および図5に示すように、電装箱16の筐体26は、板金を用いて形成されている。この電装箱16には、実装される半導体素子21を冷却するためのヒートシンク24が設けられる。ヒートシンク24は、板金などの部材で形成される電装箱16の筐体26に形成された取付部27に取り付けられている。
【0032】
取付部27は、ヒートシンク24を筐体26の内部から外部へ突出させる開口部となっている。この取付部27の縁部には、ヒートシンク24を筐体26に保持させるための保持片28が設けられる。なお、取付部27の長さおよび幅寸法は、ヒートシンク24の長さおよび幅寸法と一致するように形成される。つまり、ヒートシンク24と保持片28との間には隙間が無ないように図示しないネジなどの締結部材で水密に固定され、外部から水滴が筐体26の内部に浸入しないようになっている。
【0033】
各種電気、電子部品が半田付けされている基板18は、筐体26の所定の部分に固定されている。基板18に搭載される半導体素子21は、半導体チップを収容するパッケージ29を備える。このパッケージ29の側面から突出される複数の端子30が基板18に半田付けされる。なお、パッケージ29の形状は、平面視で長方形の平板状を成す(図6参照)。パッケージ29の4つの側面のうち長手方向の2つの側面に端子30が設けられ、短手方向の2つの側面31には、半導体素子21をネジによってヒートシンク24に固定するための切欠部32が形成されている。
【0034】
本実施形態では、半導体素子21の下面と基板18の上面との間に固定部材50が設けられる。半導体素子21は、固定部材50を介して、2本のネジ33によりヒートシンク24に取り付けられる。このため、前述の半導体素子21に設けられたネジ止め用の切欠部32は、ネジ止めには使用されない。それぞれのネジ33には、ネジ頭を固定部材50の下面に掛止させるためのワッシャ34が設けられている。なお、固定部材50は、合成樹脂などの可撓性を有する材質で形成された部材である。このようにすれば、固定部材50の製造性を向上させることができる。
【0035】
ヒートシンク24の基部35の下面は、ネジ33によって固定された半導体素子21の上面に密接に接触する。ヒートシンク24には、筐体26の外部側に突出した複数枚のフィン25が設けられる。このヒートシンク24は、熱伝達率の高いアルミニウムなどの金属で形成された部材である。半導体素子21から発生する熱は、ヒートシンク24により外部に放出され、半導体素子21の温度上昇を防止する。なお、フィン25の形状および寸法は、室外機1を構成する他の構成部材36、例えば室外機1の背面側の筐体2に干渉しない突出寸法になっている。つまり、室外機1の構成に応じてフィン25の形状および突出寸法が設定される。
【0036】
図5に示すようにヒートシンク24には、特定距離L1を空けて設けられた2つの雌ネジ部37が形成される。これらの雌ネジ部37に前述のネジ33が螺合される。また、雌ネジ部37は、ヒートシンク24の基部35を上下方向に貫通している。なお、ヒートシンク24の雌ネジ部37が外部に貫通していることから、筐体26内に雨水を入り込まないようにするためにネジ33によって確実に封鎖しておく必要がある。
【0037】
2つの雌ネジ部37は、1つの半導体素子21ごと設けられる。つまり、複数の半導体素子21が設けられる場合には、半導体素子21の数の2倍の雌ネジ部37がヒートシンク24に形成される。
【0038】
基板18には、ネジ33のネジ頭およびワッシャ34よりも大きい開口寸法を有する2つの大口孔38が貫通されている。これらの大口孔38は、ヒートシンク24の雌ネジ部37のそれぞれに対応する位置に設けられる。
【0039】
基板18の上面には、半導体素子21の他に、抵抗器などの微小な電子部品39が設けられる。また、基板18の下面には、インバータ装置としての半導体素子21で変換された交流を出力するためのコネクタ40が設けられる。このコネクタ40は、半導体素子21の取付位置に対応して設けられる。コネクタ40には、半導体素子21で変換された交流を基板18の外部に導出するための配線41の端子42が接続される。なお、複数の半導体素子21を基板18上に搭載している場合、そのすべての半導体素子21の位置にコネクタ40が設けられる訳ではなく、コネクタ40が設けられない半導体素子21もある。
【0040】
図6から図9に示すように、固定部材50は、平面視で四角形(長方形)の平板状を成す。固定部材50には、特定距離L2を空けて設けられた少なくとも2つのネジ挿通孔51が形成されている。なお、固定部材50の2つのネジ挿通孔51同士の間の特定距離L2は、ヒートシンク24の2つの雌ネジ部37同士の間の特定距離L1と同一距離となっている(図5参照)。つまり、ネジ挿通孔51は、雌ネジ部37に対応する位置に設けられる。ネジ33は、固定部材50の下面側からネジ挿通孔51に挿通され、ヒートシンク24の雌ネジ部37に螺合される。
【0041】
半導体素子21の切欠部32は、半導体素子21の短手方向の側面31を半円形状に切り欠いた形状をしている。2つの切欠部32同士の離間距離L3は、特定距離L1,L2よりも短い。切欠部32の本来の用途は、切欠部32にネジ33を挿通してヒートシンク24に半導体素子21を固定することである。本来、ヒートシンク24の雌ネジ部37同士の特定距離L1は、切欠部32同士の離間距離L3と一致している。
【0042】
しかしながら、半導体素子21は年々小型化されるので、新型の半導体素子21の切欠部32同士の離間距離L3は、旧型の半導体素子21の切欠部32同士の離間距離L3よりも小さくなる。つまり、新型の半導体素子21の切欠部32同士の離間距離L3が、ヒートシンク24の雌ネジ部37同士の特定距離L1と一致しなくなる。そして、長年の使用により基板18または旧型の半導体素子21が故障し、室外機1の修理が必要となったときには、既に旧型の半導体素子21の入手が困難になっている場合がある。その場合には、新型の半導体素子21を用いて基板18を新造することになる。
【0043】
ここで、旧型の半導体素子21に合うヒートシンク24には、新型の半導体素子21の切欠部32に雌ネジ部37の位置が合わず、取り付けできないという問題が生じる。なお、新型の半導体素子21に合わせて基板18を新造することは容易であるが、ヒートシンク24の新造には手間がかかる。特に、ヒートシンク24は、電装箱16の筐体26に固定され、この筐体26は、室外機1の筐体2に固定されており、元のヒートシンク24を取り外して、新たなヒートシンク24を取り付ける場合には、室外機1の数多くの部品を分解、組み立てが必要で手間と時間のかかる作業となる。さらにヒートシンク24と電装箱16の筐体26との間は水密にする必要があり、両者の接合面にコーキング等を施す場合には非常に面倒な作業が発生する。
【0044】
そこで、本実施形態では、固定部材50を用いることで、旧型の半導体素子21に合わせて製造されたヒートシンク24に、小型の新型の半導体素子21を取り付けるようにしている。このようにすれば、ヒートシンク24を交換せずに新型の半導体素子21が搭載された基板18と交換することができる。なお、固定部材50は、合成樹脂で形成されるので、新型の半導体素子21のサイズの形状に合わせて容易に新造することができる。
【0045】
図6および図9に示すように、固定部材50は、全体として枠形状で、その上面から上方に突出される2つの上面突起部52を備える。これらの上面突起部52は、平面視で一部に切り欠きを有する円柱形状を成す。それぞれの上面突起部52は、半導体素子21のパッケージ29の切欠部32に係合される。つまり、切欠部32は、係合部としての上面突起部52が係合される被係合部となっている。
【0046】
このようにすれば、固定部材50の上面突起部52が半導体素子21の切欠部32に係合されるので、半導体素子21の位置決めをすることができる。半導体素子21が横方向(図6の紙面左右方向)および縦方向(図6の紙面上下方向)にぐらつかないようになる。
【0047】
なお、上面突起部52の円柱形状は、上方に行くに従って窄まる形状を成しても良い。このようにすれば、半導体素子21を上方から固定部材50に載置するときに、切欠部32に上面突起部52を係合させ易くなる。
【0048】
ネジ挿通孔51にネジ33が挿通されたときに、ネジ33と半導体素子21の切欠部32との間に隙間が設けられる。つまり、ネジ33と半導体素子21の切欠部32とが係合されないようになる。このようにすれば、ネジ33(雌ネジ部37)の位置に影響を受けずに、半導体素子21の位置決めを行うことができる。
【0049】
固定部材50は、周縁から上方に突出される2つの周縁壁部53を備える。これらの周縁壁部53は、半導体素子21の端子30が設けられていない2つの側面31に対応して設けられる。それぞれの周縁壁部53は、平面視でU字形状を成し、その端部が半導体素子21のパッケージ29の側面31に係合される。つまり、本実施形態の半導体素子21の側面31は、係合部としての周縁壁部53が係合される被係合部となっている。
【0050】
このようにすれば、固定部材50の周縁壁部53が半導体素子21の側面31に係合されるので、半導体素子21の位置決めをすることができる。半導体素子21が横方向(図6の紙面左右方向)にぐらつかないようになる。周縁壁部53により半導体素子21がぐらつかないように固定することができる。なお、周縁壁部53の突出寸法は、上面突起部52の突出寸法よりも大きくなっている。
【0051】
図7および図8に示すように、固定部材50は、その下面から下方に突出される4つの下面突起部54を備える。それぞれの下面突起部54は、固定部材50の下面の四隅に設けられる。これらの下面突起部54は、基板18の上面に接触する。このようにすれば、固定部材50の下面と基板18の上面との間に空間が設けられるので、基板18に設けられた微小な電子部品39に固定部材50が干渉しないようになる(図5参照)。
【0052】
固定部材50の下面には、ネジ33のネジ頭およびワッシャ34が掛止される2つの座金用面55が設けられる。これらの座金用面55は、固定部材50の下面の他の部分よりも高い位置に設けられる。このようにすれば、ネジ33のネジ頭が基板18に設けられた微小な電子部品39に干渉しないようになる。
【0053】
図6に示すように、固定部材50の中央部には、平面視で四角形(長方形)を成す開口部56が開口されている。この開口部56は、コネクタ40に対応する位置に設けられる。このようにすれば、高電圧が加わるコネクタ40に固定部材50が干渉しないようにできる。また、一般汎用樹脂材を用いて固定部材50を形成できる。すなわち、高電圧部分と距離をすことができるので、高耐トラッキング材を使用しないで済み、固定部材50を低コストで製造することができる。
【0054】
図10に示すように、固定部材50をネジ33でヒートシンク24に止める前において、固定部材50の上面から周縁壁部53の上端までの突出寸法T1が、半導体素子21の厚み寸法T2よりも小さくなっている。つまり、周縁壁部53の突出寸法T1と半導体素子21の厚み寸法T2との間に差分D(マイナス誤差)を設けて固定部材50が形成される。このようにすれば、半導体素子21の上面をヒートシンク24の下面に密着させることができる。
【0055】
図11に示すように、固定部材50をネジ33でヒートシンク24に止めた後において、周縁壁部53の上端がヒートシンク24の下面に接触する。つまり、ネジ33がヒートシンク24の雌ネジ部37に螺合されたときに、その締め付け力により、固定部材50に反りが発生し、周縁壁部53の上端がヒートシンク24の下面に接触する。なお、ネジ33が締め付けられても、周縁壁部53の上端がヒートシンク24の下面に接触されるので、固定部材50に加わる負荷を抑えることができる。
【0056】
図12に示すように、固定部材50が部品として搬送される場合には、複数個の固定部材50が積み重ねられた状態で梱包される。ここで、固定部材50は、上下に複数の固定部材50が積み重ねられたときに、その下面突起部54が、下段の周縁壁部53の内面側に当接する位置に設けられている。このようにすれば、搬送中に、固定部材50同士が横方向(図12の紙面左右方向)に互いにぐらつかないようになる。
【0057】
図5に示すように、本実施形態では、固定部材50のネジ挿通孔51がヒートシンク24の雌ネジ部37に対応するので、新型の半導体素子21の形状に関わらず、この半導体素子21をヒートシンク24に固定させることができる。
【0058】
また、ヒートシンク24の複数箇所に形成された雌ネジ部37は、ネジ33が螺着されることで閉塞される。そのため、これらの雌ネジ部37から水滴が筐体26の内部に浸入しないようになっている。さらに、取り付けられる半導体素子21に応じた数のみの雌ネジ部37がヒートシンク24に形成される。そのため、全ての雌ネジ部37がネジ33により閉塞されるようになる。
【0059】
また、ヒートシンク24を新造する場合には、フィン25の形状および寸法を他の構成部材36に干渉しないようにしなければならず、その製作に手間がかかる。本実施形態では、ヒートシンク24を電装箱16の取付部27に取り付けたままの状態で、基板18の交換を行うことができるので、ヒートシンク24を新造しなくても済む。つまり、古いヒートシンク24を流用することができる。
【0060】
また、固定部材50は、基板18に固定されないので、固定部材50の寸法管理を厳密に行う必要がない。そのため、固定部材50の製造性を向上させることができる。
【0061】
次に、制御装置17の保守方法について図13のフローチャート(手順図)を用いて説明する。なお、図4から11を適宜参照する。なお、図13中のステップS11~S13が基板18の製造方法で、S14以降が制御装置17の交換方法となっており、これらを合わせて制御装置17の保守方法として説明する。
【0062】
まず、ステップS11において、製造者は、保守用の新しい基板18を製造するときに、固定部材50を新しい基板18に仮固定として取り付ける。例えば、新しい基板18の下方側から所定の治具のピンを大口孔38に挿入し、この治具のピンを固定部材50のネジ挿通孔51に挿通させる。このようにすれば、治具のピンにより固定部材50が位置決めされる。
【0063】
次のステップS12において、製造者は、固定部材50の上面に新型の半導体素子21を載置する。ここで、固定部材50の係合部としての上面突起部52を半導体素子21の被係合部としての切欠部32に係合する。さらに、固定部材50の係合部としての周縁壁部53を半導体素子21の被係合部としての側面31に係合する。
【0064】
次のステップS13において、製造者は、半導体素子21を新しい基板18に搭載する。つまり、半導体素子21の端子30を基板18に半田付けする。この半田付けの後に、所定の治具を新しい基板18から取り外す。
【0065】
次のステップS14において、作業者は、室外機1のメンテナンス作業を開始する。ここで、作業者は、電装箱16から古い基板18を取り外す。古い基板18には、固定部材50が設けられておらず、半導体素子21は、切欠部32を介してヒートシンク24に直接ネジ止めされている。そこで、まず、半導体素子21を固定しているネジ33を取り外す。その後、古い基板18を取り外す。なお、ヒートシンク24は電装箱16に取り付けられた状態のまま維持される。
【0066】
次のステップS15において、作業者は、保守用の新しい基板18を電装箱16の内部に収容する。つまり、新しい基板18を電装箱16に取り付ける。
【0067】
次のステップS16において、作業者は、新しい基板18を電装箱16に取り付けることで、ヒートシンク24の下面に半導体素子21の上面を接触させる。
【0068】
次のステップS17において、作業者は、新しい基板18の下方側から大口孔38を介してネジ33を挿入する。そして、ネジ33を固定部材50のネジ挿通孔51に挿通する。
【0069】
次のステップS18において、作業者は、ネジ挿通孔51に挿通されたネジ33をヒートシンク24の雌ネジ部37に螺合する。そして、室外機1のメンテナンス作業を終了する。
【0070】
なお、本実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
【0071】
なお、本実施形態では、ヒートシンク24に2つの雌ネジ部37が形成され、固定部材50に2つのネジ挿通孔51が形成されているが、その他の態様であっても良い。例えば、ヒートシンク24に2つの雌ネジ部37がある場合に、固定部材50に形成されるネジ挿通孔51が1つであっても良い。そして、固定部材50の1つのネジ挿通孔51にネジ33を挿通して半導体素子21の一端を固定し、半導体素子21の他端の切欠部32にネジ33を挿通してこの他端を固定しても良い。つまり、固定部材50には、少なくとも1つのネジ挿通孔51が半導体素子21の切欠部32から離れて設けられていれば良い。
【0072】
また、半導体素子21によっては、側面31の切欠部32の代わりに長手方向の両端部にネジ止め用の穴を設けている場合もある。この場合は、ネジ止め用の穴を被係合部として用いればよい。なお、半導体素子21の両端部のネジ止め用の穴を被係合部として用いる場合は、これらの穴はネジ止めに使用されない。
【0073】
以上説明した実施形態によれば、半導体素子の下面と基板との間に設けられる固定部材を備えることにより、ヒートシンクを交換することなく異なる半導体素子を搭載した基板を取り付けることができる。さらに、本実施形態によれば、補修部品に限らず、製造段階において、同じヒートシンクに異なる寸法の半導体素子を搭載した基板を併用することも可能となる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1…室外機、2…筐体、3…開口部、16…電装箱、17…制御装置、18…基板(プリント回路基板)、21(21A~21F)…半導体素子、23…制御部、24…ヒートシンク、25…フィン、26…電装箱の筐体、27…取付部、28…保持片、29…パッケージ、30…端子、31…側面(被係合部)、32…切欠部(被係合部)、33…ネジ、37…雌ネジ部、40…コネクタ、50…固定部材、51…ネジ挿通孔、52…上面突起部、53…周縁壁部、54…下面突起部、55…座金用面、56…開口部、D…差分、L1,L2…特定距離、L3…離間距離、T1…突出寸法、T2…厚み寸法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13