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特許7072082電力供給システム、制御装置、および電力供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】電力供給システム、制御装置、および電力供給方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20220512BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20220512BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220512BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J3/46
H02M7/48 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020557478
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2018043975
(87)【国際公開番号】W WO2020110256
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 廣次
(72)【発明者】
【氏名】河内 駿介
(72)【発明者】
【氏名】松井 照久
(72)【発明者】
【氏名】坂内 容子
(72)【発明者】
【氏名】橘高 大悟
【審査官】原 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-041825(JP,A)
【文献】特開2015-033312(JP,A)
【文献】特開平7-241037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0380940(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
13/00
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に設けられた複数の送電線にそれぞれ接続され、電圧指令値で制御された電圧を出力する電圧制御モードまたは電流指令値で制御された電流を出力する電流制御モードで運転可能な複数のインバータ電源と、
前記複数のインバータ電源の出力状態を個別に検知する複数の検知器と、
各検知器の検知結果に基づいて、前記複数のインバータ電源を個別に制御する複数の制御装置と、を備え、
各制御装置は、
前記検知結果に基づいて、制御対象のインバータ電源の出力状態を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記電圧指令値を前記電圧制御モードで運転可能な最小限の値に変更するか、または前記電流指令値を前記電流制御モードで運転可能な最大限の値に変更する設定変更部と、
前記設定変更部で変更された前記電圧指令値または前記電流指令値を前記制御対象のインバータ電源へ出力する指令部と、
を有する、電力供給システム。
【請求項2】
前記検知器は、前記制御対象のインバータ電源の出力電圧を検知し、
前記判定部は、前記出力電圧が予め設定された第1しきい値以下であるか否かを判定し、
前記出力電圧が前記第1しきい値以下である場合、前記設定変更部は、前記電圧制御モードで運転中の前記インバータ電源に対して前記電圧指令値を前記最小限の値に変更し、前記電流制御モードで運転中の前記インバータ電源に対して前記電流指令値を前記最大限の値に変更する、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記検知器は、前記電圧制御モードで運転中のインバータ電源の出力電流を検知し、
前記判定部は、前記出力電流の増加率が予め設定された第1所定値以上であるか否かを判定し、
前記増加率が前記第1所定値以上である場合、前記設定変更部は、前記インバータ電源に対して前記電圧指令値を前記最小限の値に変更する、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記検知器は、前記電流制御モードで運転中のインバータ電源の出力電圧を検知し、
前記判定部は、前記出力電圧が予め設定された第1しきい値以下であるか否かを判定し、
前記出力電圧が前記第1しきい値以下である場合、前記設定変更部は、前記インバータ電源の制御モードを前記電流制御モードから前記電圧制御モードに切り替えて前記電圧指令値を前記最小限の値に設定する、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記電圧指令値が前記最小限の値に変更された後に前記出力電圧が予め設定された第2しきい値以上になった場合、前記設定変更部は、前記電流指令値を変更前の値に戻す、請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記インバータ電源の制御モードが前記電流制御モードから前記電圧制御モードに切り替わった後に前記検知器で検知された前記インバータ電源の出力電流の減少率が予め設定された第2所定値以上になった場合、前記設定変更部は、前記インバータ電源の制御モードを前記電圧制御モードから前記電流制御モードに戻し、かつ、前記電圧制御モードのまま運転していたインバータ電源の電圧設定値を変更前の値に戻す、請求項4に記載の電力供給システム。
【請求項7】
電力系統に設けられた複数の送電線にそれぞれ接続され、電圧指令値で制御された電圧を出力する電圧制御モードまたは電流指令値で制御された電流を出力する電流制御モードで運転可能なインバータ電源を、当該インバータ電源の出力状態の検知結果に基づいて制御する制御装置であって、
前記検知結果に基づいて、前記インバータ電源の出力状態を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記電圧指令値を前記電圧制御モードで運転可能な最小限の値に変更するか、または前記電流指令値を前記電流制御モードで運転可能な最大限の値に変更する設定変更部と、
前記設定変更部で変更された前記電圧指令値または前記電流指令値を前記インバータ電源へ出力する指令部と、
を備える、制御装置。
【請求項8】
電力系統に設けられた複数の送電線にそれぞれ接続され、電圧指令値で制御された電圧を出力する電圧制御モードまたは電流指令値で制御された電流を出力する電流制御モードで運転可能な複数のインバータ電源の出力状態を個別に検知し、
前記出力状態の検知結果に基づいて、制御対象のインバータ電源の出力状態を判定し、
前記出力状態の判定結果に基づいて、前記電圧指令値を前記電圧制御モードで運転可能な最小限の値に変更するか、または前記電流指令値を前記電流制御モードで運転可能な最大限の値に変更し、
変更後の前記電圧指令値または前記電流指令値を前記複数のインバータ電源へ出力する、
電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力供給システム、制御装置、および電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電や風力発電に代表される再生可能エネルギー電源は、電力変換器(インバータ)により交流の電力系統に接続されることが多く、こうした電源はインバータ電源と呼ばれる。また、再生可能エネルギー電源の出力変動を抑制するために設置される蓄電池などもインバータ電源に含まれる。
【0003】
上記電力系統において短絡等の事故が発生すると、インバータ電源に設けられている半導体素子は、定格を超えた電流により短時間で破壊する可能性がある。そのため、インバータ電源を備える電力供給システムには、インバータ電源の過電流保護機能が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2500877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力系統で事故が発生すると、電力系統側でも、保護システムが過電流などを検出して事故区間の送電線や配電線を解列することによって、事故に対処している。
【0006】
しかし、インバータ電源の過電流保護機能によって、系統事故時に事故点に流れる事故電流が制限されると、事故電流の大きさが電力系統の保護システムの事故検出レベルを下回るおそれがある。この問題に対処するために、系統保護システムの電流検出レベルを下げると負荷や変圧器の突入電流に起因する誤検出が生じる可能性がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、系統事故発生時に、事故検出に必要な電流を系統側に供給可能な電力供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る電力供給システムは、電力系統に設けられた複数の送電線にそれぞれ接続され、電圧指令値で制御された電圧を出力する電圧制御モードまたは電流指令値で制御された電流を出力する電流制御モードで運転可能な複数のインバータ電源と、複数のインバータ電源の出力状態を個別に検知する複数の検知器と、各検知器の検知結果に基づいて、複数のインバータ電源を個別に制御する複数の制御装置と、を備える。各制御装置は、検知結果に基づいて、制御対象のインバータ電源の出力状態を判定する判定部と、判定部の判定結果に基づいて、電圧指令値を電圧制御モードで運転可能な最小限の値に変更するか、または電流指令値を電流制御モードで運転可能な最大限の値に変更する設定変更部と、設定変更部で変更された電圧指令値または電流指令値を制御対象のインバータ電源へ出力する指令部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態によれば、系統事故発生時に、事故検出に必要な電流を系統側に供給可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る電力供給システムの構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態における電流制御モードのインバータ電源の制御フローである。
図3】第1実施形態における電圧制御モードのインバータ電源の制御フローである。
図4】第2実施形態における電圧制御モードのインバータ電源の制御フローである。
図5】第3実施形態における電流制御モードのインバータ電源の制御フローである。
図6】第4実施形態における電流制御モードのインバータ電源の制御フローである。
図7】第4実施形態における電圧制御モードのインバータ電源の制御フローである。
図8】第5実施形態におけるインバータ電源の制御モード切替に関する制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電力供給システムの構成を示すブロック図である。図1に示す電力供給システムは、インバータ電源10a~10dと、変圧器20a~20dと、検知器30a~30dと、制御装置40a~40dと、を備える。本実施形態に係る電力供給システム1は、例えば、離島などに設置される小規模な電力系統、いわゆるオフグリッドシステムに接続される。図1に示す電力系統には、送電線100a~100fおよび負荷200a~200cが設けられている。電力供給システム1の電力は、送電線100a~100fを介して負荷200a~200cに供給される。なお、送電線100a~100fと負荷200a~200cとの間には、電源系統の事故電流を検出するための保護リレー(不図示)が設けられている。
【0013】
インバータ電源10a~10dは、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーで生成された直流電力を出力する直流電源(不図示)や、直流電源の直流電力を交流電力に変換する電力変換器(不図示)等を有する。この電力変換器は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子を有する。インバータ電源10a~10dに設けられた半導体素子がスイッチング動作することによって、直流電力が交流電力に変換される。
【0014】
また、インバータ電源10a~10dは、電圧制御モードまたは電流制御モードで運転可能である。本実施形態では、インバータ電源10aが、制御装置40aから入力される電圧指令値で制御された電圧を出力する電圧制御モードで運転する。また、インバータ電源10b~10dが、制御装置40b~40dからそれぞれ入力される電流指令値で制御された電流を出力する電流制御モードで運転する。
【0015】
変圧器20a~20dは、インバータ電源10a~10dからそれぞれ出力された交流電力の電圧をそれぞれ変圧する。変圧後の交流電力は、送電線100a~100dにそれぞれ供給される。
【0016】
検知器30a~30dは、インバータ電源10a~10dの出力状態を個別に検知する。検知器30a~30dは、インバータ電源10a~10dの出力電圧(換言すると自端電圧)や出力電流等を検知して、検知結果を制御装置40a~40dに出力する。
【0017】
制御装置40a~40dの各々は、判定部41と、設定変更部42と、指令部43と、を有する。判定部41は、検知器30a~30dのいずれかの検知結果に基づいて、制御対象のインバータ電源の出力状態を判定する。設定変更部42は、判定部41の判定結果に基づいて、制御対象のインバータ電源の電圧指令値または電流指令値を変更する。指令部43は、設定変更部42で変更された電圧指令値または電流指令値を制御対象のインバータ電源へ出力する。なお、制御装置40a~40dにおいて、判定部41、設定変更部42、および指令部43は、ハードウェアとして構成されてもよいし、ソフトウェアとして構成されていてもよい。
【0018】
以下、本実施形態に係る電力供給システム1の動作について説明する。
【0019】
平常時、すなわち電力系統で事故が発生していない時には、制御装置40aは、電力系統の電圧と周波数を確立するためにインバータ電源10aを電圧制御モードで制御する。これにより、インバータ電源10aは電圧源として動作する。制御装置40aの制御動作と同時に、制御装置40b~40dは、インバータ電源10b~10dを電流制御モードで制御する。インバータ電源10a~10dから出力された交流電力は、変圧器20a~20dおよび送電線100a~100fを介して負荷200a~200cへそれぞれ供給される。
【0020】
送電線100a~100fなどにおいて地絡や短絡といった系統事故が発生すると、制御装置40b~40dは、図2に示すフローチャートに基づいて、電流制御モードのインバータ電源10b~10dを制御する。
【0021】
図2は、系統事故の発生時に電流制御モードで運転中のインバータ電源の制御フローである。送電線100a~100fまたはこれらの連結箇所で短絡等の事故が発生すると、インバータ電源10b~10dの出力電圧は低下する。
【0022】
本実施形態では、まず、制御装置40b~40dの判定部41が、検知器30b~30dでそれぞれ検知された出力電圧が第1しきい値以下であるか否かを判定する(ステップS11)。第1しきい値は、例えば、インバータ電源10a~10dにそれぞれ設けられている電圧低下保護リレー、いわゆるUV(Under Voltage)リレーが作動する整定値よりも大きく、平常運転時の正常電圧値よりも小さい値に予め設定されている。判定部41は、判定結果を設定変更部42へ出力する。
【0023】
インバータ電源10b~10dの出力電圧が第1しきい値以下である場合、設定変更部42は、各インバータ電源の電流指令値を電流制御モードで運転可能な最大限の値に設定する(ステップS12)。最大限の値は、例えば、インバータ電源10a~10dにそれぞれ設けられている過電流保護リレー、いわゆるOC(Over Current)リレーが作動する整定値を超えない上限値である。
【0024】
続いて、指令部43が、設定変更部42で設定された電流指令値を電流制御モードで運転中のインバータ電源10b~10dに出力する(ステップS13)。これにより、インバータ電源10b~10dは、電流制御モードのまま運転を継続する。
【0025】
一方、上述した系統事故の発生時に、制御装置40aは、図3に示すフローチャートに基づいて、電圧制御モードのインバータ電源10aを制御する。
【0026】
図3は、系統事故の発生時に電圧制御モードで運転中のインバータ電源の制御フローである。上述した系統事故が発生すると、インバータ電源10aの出力電圧も低下する。そこで、本実施形態では、まず、制御装置40aの判定部41が、検知器30aで検知されるインバータ電源10aの出力電圧が、上記ステップS11で説明した第1しきい値以下であるか否かを判定する(ステップS21)。
【0027】
インバータ電源10aの出力電圧が第1しきい値以下である場合、設定変更部42は、電圧指令値を電圧制御モードで運転可能な最小限の値に変更する(ステップS22)。最小限の値は、例えば、インバータ電源10aに設けられた電圧低下保護リレー(UVリレー)の整定値以下とならない下限値に予め設定される。
【0028】
続いて、指令部43が、設定変更部42で設定された電圧指令値をインバータ電源10aに出力する(ステップS23)。これにより、インバータ電源10aは、電圧制御モードを維持したまま電圧指令値に基づいて出力電圧を下げるように動作する。
【0029】
以上説明した本実施形態によれば、電力系統で事故が発生したとき、電流制御モードで運転中のインバータ電源10b~10dは、運転可能な範囲で最大限の出力電流を出力する。同時に、電圧制御モードで運転中のインバータ電源10aは、出力電圧を最小限に制限することにより過電流未満に抑制された電流を出力する。これにより、電圧制御モードで運転中のインバータ電源10aだけではなく電流制御モードで運転中のインバータ電源10b~10dからも事故電流が供給されるので、事故検出に十分な事故電流を電力系統に供給できる。
【0030】
また、仮に、電圧制御モードのインバータ電源10aの出力電流が、過電流保護レベルに達してインバータ電源10aが停止したとしても、電流制御モードで運転している残りのインバータ電源10b~10dから十分な事故電流が供給される。そのため、電力系統側で事故電流を検出ができない事態を回避できる。
【0031】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態に係る電力供システムの構成および平常時の動作内容は、上述した第1実施形態と同様である。そのため第1実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0032】
本実施形態では、系統事故の発生時に電圧制御モードで運転中のインバータ電源10aの制御フローが第1実施形態と異なる。以下、この制御フローについて図4を参照して説明する。
【0033】
図4は、第2実施形態における電圧制御モードのインバータ電源の制御フローである。電力系統で事故が発生すると、電圧制御モードで運転中のインバータ電源10aの出力電流は急激に増加する。
【0034】
本実施形態では、検知器30aは、インバータ電源10aの出力電流を検知して検知結果を制御装置40aへ出力する。制御装置40aでは、出力電流の単位時間当たりの増加率が算出され、判定部41が、その電流増加率が第1所定値以上であるか否かを判定する(ステップS31)。第1所定値は、例えば、系統事故の発生時のみに起こる急峻な電流増加を捉えられる増加率である。
【0035】
電流増加率が第1所定値以上である場合、制御装置40aは、第1実施形態と同様に動作する。すなわち、設定変更部42が、電圧指令値を電圧制御モードで運転可能な最小限の値に変更し(ステップS32)、その後、指令部43が、変更後の電圧指令値をインバータ電源10aに出力する(ステップS33)。
【0036】
以上説明した本実施形態によれば、電圧制御モードで動作しているインバータ電源10aは、自身の出力電流から系統事故の発生を検知することが可能となる。系統事故の発生が検知されると、第1実施形態と同様に、電流制御モードで運転中のインバータ電源10b~10dは、運転可能な範囲で最大限の出力電流を出力する。これにより、事故検出に十分な事故電流を電力系統に供給できる。
【0037】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態に係る電力供システムの構成および平常時の動作内容は、上述した第1実施形態と同様である。そのため第1実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0038】
本実施形態では、系統事故の発生時に電流制御モードで運転中のインバータ電源10b~10dの制御フローが第1実施形態と異なる。以下、この制御フローについて図5を参照して説明する。
【0039】
図5は、本実施形態における電流制御モードのインバータ電源の制御フローである。本実施形態では、検知器30b~30dが、インバータ電源10b~10dの出力電圧を検知して検知結果を制御装置40b~40dにそれぞれ出力する。
【0040】
制御装置40b~40dでは、まず、判定部41が、検知器30b~30dでそれぞれ検知された出力電圧が第1実施形態で説明した第1しきい値以下であるか否かを判定する(ステップS41)。
【0041】
出力電圧が第1しきい値以下である場合、制御装置40b~40dの設定変更部42は、インバータ電源10b~10dの制御モードを、電流制御モードから電圧制御モードへ切り替える(ステップS42)。同時に、設定変更部42は、電圧指令値を電圧制御モードで運転可能な最小限の値に設定する。
【0042】
続いて、指令部43が、設定変更部42により設定された電圧指令値をインバータ電源10b~10dへそれぞれ出力する。これにより、インバータ電源10b~10dの制御モードは、電流制御モードから電圧制御モードに切り替わり、最小限の出力電圧で運転される。
【0043】
一方、系統事故の発生時に電圧制御モードで運転していたインバータ電源10aについては、制御装置40aは、第1実施形態で説明した制御フロー(図3参照)または第2実施形態で説明した制御フロー(図4)に基づいた動作を行う。
【0044】
以上説明した本実施形態によれば、系統事故の発生時に電流制御モードで運転中のインバータ電源10b~10dは、電圧制御モードへ移行するので、複数のインバータ電源が電圧制御モードとなる。これにより、電圧制御モードで運転しているインバータ電源10aに加えてインバータ電源10b~10dからも事故電流が供給されるので、事故検出に十分な電流を供給することが可能となる。
【0045】
また、仮に、電圧制御モードで動作しているインバータ電源の出力電流を、過電流の検出レベルに抑制できなくて当該インバータ電源が停止したとしても、残りの電圧制御モードで運転している複数のインバータ電源から十分な事故電流が供給される。これにより、事故検出ができないリスクを低減できる。
【0046】
(第4実施形態)
第4実施形態について、図6および図7を用いて説明する。本実施形態に係る電力供システムの構成および平常時の動作内容は、上述した第1実施形態と同様である。そのため第1実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0047】
図6は、系統事故除去時における電流制御モードのインバータ電源の制御フローである。第1実施形態で説明したように、系統事故が発生すると電流制御モードのインバータ電源10b~10dは、最大限の値に変更された電流指令値で運転する。その後、電力系統側で事故が除去されると、インバータ電源10b~10dの出力電圧は上昇し始める。
【0048】
そこで、本実施形態では、まず、制御装置40b~40dの判定部41が、検知器30b~30dでそれぞれ検知されたインバータ電源10b~10dの出力電圧が第2しきい値以上であるか否かを判定する(ステップS51)。第2しきい値は、出力電圧が正常電圧範囲内であると判定できる値であり、例えばインバータ電源10b~10dの定格電圧の-5%に予め設定される。
【0049】
インバータ電源10b~10dの出力電圧が第2しきい値以上である場合、設定変更部42は、電流指令値を変更前の値である通常値に戻す(ステップS52)。続いて、指令部43が、通常値をインバータ電源10b~10dへ出力する。これにより、インバータ電源10b~10dは、通常の電流制御モードの運転に戻る。
【0050】
一方、事故発生時に電圧指令値を最小限の値に変更して運転しているインバータ電源10aについては、制御装置40aが図7に示す制御フローに基づいて制御する。
【0051】
図7は、系統事故除去時における電圧制御モードのインバータ電源の制御フローである。電力系統側で事故が除去されると、インバータ電源10aの出力電流の減少率が変化する。そこで、本実施形態では、検知器30aがインバータ電源10aの出力電流を検知し、その出力電流の単位時間当たりの減少率が制御装置40aで算出される。続いて、判定部41が、出力電流の減少率が、予め設定された第2所定値以上であるか否かを判定する(ステップS61)。第2所定値は、例えば事故除去時のみに発生するような急峻な電流減少を捉えられた電流減少率である。
【0052】
出力電流の減少率が第2所定値以上である場合、設定変更部42は、電圧指令値を変更前の値である通常値に戻す(ステップS62)。続いて、指令部43が、通常値をインバータ電源10aへ出力する(ステップS63)。これにより、インバータ電源10aは、通常の電圧制御モードの運転に戻る。
【0053】
以上説明した本実施形態によれば、上述した第1実施形態および第2実施形態と同様に、系統事故の発生時に事故検出に必要な電流を系統側に供給できる。さらに、本実施形態では、事故除去後に、速やかにインバータ電源を通常の動作へ戻すことができる。
【0054】
(第5実施形態)
第5実施形態について、図8を用いて説明する。本実施形態に係る電力供システムの構成および平常時の動作内容は、上述した第1実施形態と同様である。そのため第1実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0055】
図8は、系統事故除去時におけるインバータ電源の制御モード切替に関する制御フローである。第3実施形態で説明したように、系統事故が発生するとインバータ電源10b~10dの制御モードは、電流制御モードから電圧制御モードに切り替わる。その後、電力系統側で事故が除去されると、インバータ電源10b~10dの出力電流の減少率が変化する。
【0056】
そこで、本実施形態では、検知器30b~30dがインバータ電源10b~10dの出力電流を検知し、その出力電流の単位時間当たりの減少率が制御装置40b~40dでそれぞれ算出される。続いて、各制御装置の判定部41が、出力電流の減少率が、第4実施形態で説明した第2所定値以上であるか否かを判定する(ステップS71)。
【0057】
出力電流の減少率が第2所定値以上である場合、設定変更部42は、インバータ電源10b~10dの制御モードを電圧制御モードから電流制御モードへ戻す(ステップS72)。このとき、電流制御モードの電流指令値は、制御モード切替前の値に設定される。続いて、指令部43が、電流指令値をインバータ電源10b~10dに出力する(ステップS73)。これにより、インバータ電源10b~10dは、通常の電流制御モードの運転に戻る。
【0058】
一方、事故発生時に電圧指令値を最小限の値に設定されているインバータ電源10aについては、制御装置40aが、第4実施形態で説明した制御フロー(図7参照)に基づいた動作を行う。これにより、インバータ電源10aは、通常の電圧制御モードの動作に戻る。
【0059】
以上説明した本実施形態によれば、上述した第3実施形態と同様に、系統事故の発生時に事故検出に必要な電流を系統側に供給できる。さらに、本実施形態では、第4実施形態と同様に、事故除去後に、速やかにインバータ電源を通常の動作へ戻すことができる。
【0060】
なお、本実施形態または上述した第4実施形態では、各制御装置が、制御対象のインバータ電源の出力電圧や出力電流の減少率に基づいて、通常の動作へ戻すか否かを判定しているが、判定方法はこれに限定されない。例えば、各制御装置は、電流指令値または電圧指令値を変更してから所定時間が経過したときに、制御対象のインバータ電源を通常の動作へ戻してもよい。また、各制御装置は、系統側に設けられた保護リレーが電流経路の切り替え動作を行ったこと検知することによって、制御対象のインバータ電源を通常の動作へ戻してもよい。
【0061】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法、プログラム、及びシステムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法、プログラム、及びシステムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8