(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】振動計のセンサー信号のノイズを予測および低減する方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/84 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
G01F1/84
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021111706
(22)【出願日】2021-07-05
(62)【分割の表示】P 2020511166の分割
【原出願日】2017-09-21
【審査請求日】2021-07-20
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レンシング, マシュー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン, クリストファー ジョージ
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/069749(WO,A1)
【文献】特表2009-500643(JP,A)
【文献】特表平10-508383(JP,A)
【文献】特表2009-509167(JP,A)
【文献】国際公開第2017/019012(WO,A1)
【文献】米国特許第05804741(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動計のセンサー信号のノイズを予測および低減する方法であって、
2つ以上の成分を有する入力信号に応答する出力信号を前記振動計のセンサーアセンブリの非線形モデルから決定することと、
前記出力信号の1つ以上の成分
であって、相互変調歪み信号を含む前記1つ以上の成分を減衰させるようにフィルターを調整することと
を含む方法。
【請求項2】
前記出力信号の前記1つ以上の成分を減衰させるように前記フィルターを調整することが、前記フィルターの振幅特性の1つ以上の阻止帯域の周波数を、前記出力信号の前記1つ以上の成分の周波数が実質的に中心にあるように調整することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記出力信号の前記1つ以上の成分を減衰させるように前記フィルターを調整することが、前記1つ以上の成分を所望の振幅に低減するために少なくとも1つの阻止帯域の減衰を調整することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記出力信号の前記1つ以上の成分を減衰させるように前記フィルターを調整することが、前記フィルターのタップ数を減らすことを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記センサーアセンブリの前記非線形モデルが、前記センサーアセンブリの変換器の非線形モデルを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記センサーアセンブリの前記非線形モデルが、前記センサーアセンブリのゲイン位置モデルである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記入力信号の
2つ以上
の成分が、互いから間隔を空けた
2つ以上の階調を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
2つ以上の成分を有する前記入力信号に応答して非線形モデルからの前記出力信号を決定することが、前記出力信号の相互変調歪み信号と高調波信号
とを決定することを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
下記の実施形態は、振動計のセンサー信号のノイズに関し、より具体的には、振動計のノイズの予測と低減に関する。
【背景技術】
【0002】
コリオリ質量流量計、液体密度計、気体密度計、液体粘度計、気体/液体比重計、気体/液体相対密度計、気体分子量計などの振動計が一般に知られており、流体の特性の測定に使用される。一般に、計器はセンサーアセンブリと電子部品で構成される。センサーアセンブリ内の材料は、流れていても静止していてもよい。センサーのタイプごとに固有の特性があり、最適なパフォーマンスを実現するために計器が原因となる必要がある。例えば、一部のセンサーには、特定の変位レベルで振動する管装置が必要な場合がある。他のセンサーアセンブリタイプには、特別な補償アルゴリズムが必要な場合がある。
【0003】
計器エレクトロニクスは、他の機能を実行する中でも、通常、使用されている特定のセンサーの記憶されたセンサー校正値を含む。例えば、計器エレクトロニクスは、基準剛性測定値を含む場合がある。基準剛性測定値またはベースライン剛性測定値は、基準条件下工場で測定されたとき、または最後に校正されたときの特定のセンサーアセンブリのセンサー形状の基本的な測定性能を表す。振動計が顧客サイトに設置された後に測定された剛性と基準センサー剛性との間の変化は、他の原因に加えて、センサーアセンブリの導管に対するコーティング、侵食、腐食、または損傷によるセンサーアセンブリの物理的変化を表す場合がある。計器検証または正常性チェックテストは、これらの変化を検出できる。
【0004】
計器検証テストは、通常、センサーアセンブリのドライバに印加される多階調(マルチトーン)駆動信号とも呼ばれ得る多成分駆動信号を用いて実行される。多階調駆動信号は通常、センサーアセンブリの共振周波数にある共振成分または駆動階調(トーン)と、駆動階調から間隔を空けた複数の非共振階調(トーン)またはテスト階調(トーン)で構成される。これは、複数のテスト階調が順番に繰り返されるアプローチとは異なる。連続階調(トーン)アプローチが使用される場合、システムのあらゆる時間変動(温度依存効果、流量の変化など)が、センサーアセンブリの周波数応答特性を乱す可能性がある。サンプリングされたデータが同時に取得されるため、多階調駆動信号は有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多階調駆動信号の各テスト階調は、センサーアセンブリの周波数応答関数の入力である。センサーアセンブリの出力の階調(トーン)または成分を対応するテスト階調と比較して、センサーアセンブリの周波数応答を決定する。センサーアセンブリにコーティング、侵食、腐食、または損傷が発生すると、センサーアセンブリの周波数応答が変化するであろう。しかし、多階調アプローチは相互変調歪みを誘導する可能性がある。より具体的には、多階調駆動信号の階調(トーン)は、階調の1つまたはその近辺の周波数にある相互変調信号を誘導する可能性がある。これらの相互変調歪み信号は特徴付けられていないため、センサーアセンブリにどんな根本的な変更もなく、センサーアセンブリの周波数応答を変化させることができる。すなわち、相互変調歪み信号はセンサー信号のノイズである。したがって、振動計のノイズを予測して低減する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
振動計のノイズを予測および低減するように構成された振動計が提供される。一実施形態によれば、振動計は、センサーアセンブリと、センサーアセンブリと通信する計器エレ
クトロニクスとを備える。計器エレクトロニクスは、駆動信号をセンサーアセンブリに供給し、1つ以上の成分を有するセンサー信号をセンサーアセンブリから受信し、センサー信号と駆動信号のうちの1つに適用されて1つ以上の成分を補償する信号を生成する。
【0007】
振動計のセンサー信号のノイズを低減する方法が提供される。一実施形態によれば、本方法は、駆動信号を振動計のセンサーアセンブリに供給することと、1つ以上の成分を含むセンサー信号を駆動信号に応答してセンサーアセンブリから受信することと、駆動信号とセンサー信号のうちの少なくとも1つに適用されて1つ以上の成分を補償する信号を生成することとを含む。
【0008】
振動計のセンサー信号のノイズを予測および低減する方法が提供される。一実施形態によれば、本方法は、2つ以上の成分を有する入力信号に応答する出力信号を振動計のセンサーアセンブリの非線形モデルから決定することと、出力信号の1つ以上の成分を減衰させるようにフィルターを調整することとを含む。
[態様]
一態様によれば、振動計(5、1600)内のノイズを予測および低減するように構成された振動計(5、1600)は、センサーアセンブリ(10、1610)と、センサーアセンブリ(10、1610)と通信する計器エレクトロニクス(20、1620)とを備える。計器エレクトロニクス(20、1620)は、駆動信号をセンサーアセンブリ(10、1610)に供給し、1つ以上の成分を有するセンサー信号をセンサーアセンブリ(10、1610)から受信し、センサー信号と駆動信号のうちの1つに適用されて1つ以上の成分を補償する信号を生成する。
【0009】
好ましくは、センサー信号と駆動信号のうちの1つに適用される信号を生成するように構成される計器エレクトロニクス(20、1620)は、センサーアセンブリ(10、1610)のシステムモデルに基づいて信号を生成することを含む。
【0010】
好ましくは、センサーアセンブリ(10、1610)のシステムモデルは、センサーアセンブリ(10、1610)内の変換器の非線形モデルを含む。
【0011】
好ましくは、駆動信号に適用される信号を生成するように構成される計器エレクトロニクス(20、1620)は、センサー信号の1つ以上の成分が形成されるのを実質的に防止するセンサーアセンブリ(10、1610)の動きを誘導する信号を生成することを含む。
【0012】
好ましくは、センサー信号に適用される信号を生成するように構成される計器エレクトロニクス(20、1620)は、センサー信号の1つ以上の成分をキャンセルする信号を生成することを含む。
【0013】
好ましくは、1つ以上の成分は、相互変調歪み信号と高調波信号のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
好ましくは、駆動信号は、駆動階調と、センサーアセンブリを検証するための1つ以上のテスト階調とを含む多階調駆動信号を含む。
【0015】
好ましくは、計器エレクトロニクス(1620)は、センサー信号と駆動信号のうちの1つに適用されて1つ以上の成分を補償する信号を生成するように構成された補償信号生成器(1623)を備える。
【0016】
一態様によれば、振動計のセンサー信号のノイズを低減する方法は、駆動信号を振動計
のセンサーアセンブリに供給することと、1つ以上の成分を含むセンサー信号を駆動信号に応答してセンサーアセンブリから受信することと、駆動信号とセンサー信号のうちの少なくとも1つに適用されて1つ以上の成分を補償する信号を生成することとを含む。
【0017】
好ましくは、センサー信号と駆動信号のうちの1つに適用される信号を生成することは、センサーアセンブリのシステムモデルに基づいて信号を生成することを含む。
【0018】
好ましくは、センサーアセンブリのシステムモデルは、センサーアセンブリ内の変換器の非線形モデルを含む。
【0019】
好ましくは、駆動信号に適用される信号を生成することは、センサー信号の1つ以上の成分が形成されるのを実質的に防止するセンサーアセンブリの動きを誘導する信号を生成することを含む。
【0020】
好ましくは、センサー信号に適用される信号を生成することは、センサー信号の1つ以上の成分をキャンセルする信号を生成することを含む。
【0021】
好ましくは、1つ以上の成分は、相互変調歪み信号と高調波信号のうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
好ましくは、駆動信号は、駆動階調と、センサーアセンブリを検証するための1つ以上のテスト階調とを含む多階調駆動信号を含む。
【0023】
好ましくは、センサー信号と駆動信号のうちの少なくとも1つに適用されて1つ以上の成分を補償する信号は、振動計の計器エレクトロニクス内の補償信号生成器により生成される。
【0024】
一態様によれば、振動計のセンサー信号のノイズを予測および低減する方法は、2つ以上の成分を有する入力信号に応答する出力信号を振動計のセンサーアセンブリの非線形モデルから決定することと、出力信号の1つ以上の成分を減衰させるようにフィルターを調整することとを含む。
【0025】
好ましくは、出力信号の1つ以上の成分を減衰させるようにフィルターを調整することは、フィルターの振幅特性の1つ以上の阻止帯域の周波数を出力信号の1つ以上の成分の周波数が実質的に中心にあるように調整することを含む。
【0026】
好ましくは、出力信号の1つ以上の成分を減衰させるようにフィルターを調整することは、1つ以上の成分を所望の振幅に低減するように少なくとも1つの阻止帯域の減衰を調整することを含む。
【0027】
好ましくは、出力信号の1つ以上の成分を減衰させるようにフィルターを調整することは、フィルターのタップ数を減らすことを含む。
【0028】
好ましくは、センサーアセンブリの非線形モデルは、センサーアセンブリの変換器の非線形モデルを含む。
【0029】
好ましくは、センサーアセンブリの非線形モデルは、センサーアセンブリのゲイン位置モデルである。
【0030】
好ましくは、入力信号の1つ以上の成分は、互いから間隔を空けた1つ以上の階調を含
む。
【0031】
好ましくは、2つ以上の成分を有する入力信号に応答して出力信号を非線形モデルから決定することは、出力信号の相互変調歪み信号と高調波信号のうちの少なくとも1つを決定することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
同じ参照番号は、すべての図面で同じ要素を表す。図面は必ずしも縮尺通りではないことを理解されたい。
【
図1】相互変調歪み信号干渉を防止するために周波数間隔を使用する振動計5を示す図である。
【
図2】多階調駆動信号の相互変調歪み信号を示すグラフ200である。
【
図4】相互変調歪み信号を誘導する可能性がある階調の周波数間隔を示すグラフ400である。
【
図5】相互変調歪み信号を誘導する可能性がある階調の周波数間隔を示すグラフ500である。
【
図6】相互変調歪み信号を誘導する可能性がある周波数間隔を示すグラフ600である。
【
図7】振動計のノイズを予測および低減するための変換器の非線形モデルのゲインのグラフ700である。
【
図8】振動計のノイズを予測および低減するための変換器の4次多項式表現のグラフ800である。
【
図9】4次多項式モデルPを使用することから得られた歪みモデルのグラフ900である。
【
図10】
図9に示す基本相互変調歪み信号群930aおよび入力信号プロット940の詳細図を示すグラフ1000である。
【
図11a】曲線データを引き出すための種々の次数の多項式フィッティング1100aを示す図である。
【
図11b】曲線データを引き出すための種々の次数の多項式フィッティング1100bを示す図である。
【
図11c】曲線データを引き出すための種々の次数の多項式フィッティング1100cを示す図である。
【
図11d】曲線データを引き出すための種々の次数の多項式フィッティング1100dを示す図である。
【
図12】限定された係合範囲を有する4次多項式変換器ゲインプロット1140cのグラフ1200を示す図である。
【
図13a】振動計のノイズの低減を示すグラフ1300aである。
【
図13b】振動計のノイズの低減を示すグラフ1300bである。
【
図13c】振動計のノイズの低減を示すグラフ1300cである。
【
図13d】振動計のノイズの低減を示すグラフ1300dである。
【
図14a】振動計のノイズの低減を示すフィルターを示すグラフ1400aである。
【
図14b】振動計のノイズの低減を示すフィルターを示すグラフ1400bである。
【
図14c】振動計のノイズの低減を示すフィルターを示すグラフ1400cである。
【
図14d】振動計のノイズの低減を示すフィルターを示すグラフ1400dである。
【
図15】振動計のノイズを予測および低減する方法1500を示す図である。
【
図16】振動計のノイズを予測および低減するように構成された振動計1600のブロック図である。
【
図17】振動計のノイズを予測および低減する方法1700を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1から17および以下の説明は、振動計のノイズを予測および低減する実施形態の最良の形態を作成および使用する方法を当業者に教示するための具体例を図示する。発明の原理を教示する目的で、いくつかの従来の態様は簡略化または省略されている。当業者は、本説明の範囲内に入るこれらの例からの変形を理解するであろう。当業者は、以下に説明する特徴を種々の方法で組み合わせて、振動計のノイズを予測および低減する複数の変形を形成できることを理解するであろう。その結果、以下に説明する実施形態は、以下に説明する具体例に限定されず、特許請求の範囲およびそれらの均等物のみにより限定される。
【0034】
ノイズは、補償信号を生成することで低減できる。補償信号は、振動計のセンサーアセンブリに供給される駆動信号に適用される逆重み付け信号であり得る。補償信号は、センサーアセンブリにより供給されるセンサー信号に適用されるキャンセル信号であってもよい。逆重み付け信号はセンサー信号のノイズが形成されるのを防止することができる一方で、キャンセル信号はセンサー信号のノイズを減衰させることができる。補償信号は、センサーアセンブリのシステムモデルを用いて生成できる。例えば、システムモデルは、センサーアセンブリ内のピックオフセンサーなど、センサーアセンブリ内の変換器の非線形モデルであってもよい。システムモデルは、分析的に、または変換器のデータを引き出すなど経験的データを使用することで決定できる。非線形モデルを使用して、ノイズを減衰させるフィルターを設計および選択(in situなど)することもできる。
【0035】
図1は、相互変調歪み信号干渉を防止するために周波数間隔を使用する振動計5を示す。
図1に示すように、振動計5は、センサーアセンブリ10および計器エレクトロニクス20を備える。センサーアセンブリ10は、プロセス材料の質量流量および密度に応答する。計器エレクトロニクス20は、リード線100を介してセンサーアセンブリ10に接続され、経路26を介して密度、質量流量、および温度情報、ならびに他の情報を提供する。
【0036】
センサーアセンブリ10は、一対のマニホールド150および150’、フランジネック110および110’を有するフランジ103および103’、一対の平行導管130および130’、駆動機構180、測温抵抗体(RTD)190、および一対のピックオフセンサー170lおよび170rを含む。導管130および130’は、2つの本質的に真っ直ぐな入口脚131、131’および出口脚134、134’を有し、これらは導管取付ブロック120および120’で互いに向けて収束する。導管130、130’は、それらの長さに沿って2つの対称的な位置で曲がり、それらの長さ全体にわたって本質的に平行である。ブレースバー140および140’は、各導管130、130’がその周りに振動する軸WおよびW’を規定する役割を果たす。導管130、130’の脚131、131’および134、134’は、導管取付ブロック120および120’にしっかりと取り付けられ、これらのブロックは、同様にマニホールド150および150’にしっかりと取り付けられる。これにより、センサーアセンブリ10を通る連続する閉じた材料経路が提供される。
【0037】
穴102および102’を有するフランジ103および103’が、入口端104および出口端104’を介して、測定されているプロセス材料を運ぶプロセスライン(図示せず)に接続されると、材料は、フランジ103内のオリフィス101を通って計器の入口端104に入り、マニホールド150を通って表面121を有する導管取付ブロック12
0に導かれる。マニホールド150内で、材料は分割され、導管130、130’ を通
って送られる。導管130、130’を出ると、プロセス材料は、表面121’およびマニホールド150’を有するブロック120’内で単一の流れに再結合され、その後、穴102’を有するフランジ103’により、プロセスライン(図示せず)に接続された出口端104’に送られる。
【0038】
導管130、130’は、それぞれ曲げ軸W-WおよびW’-W’の周りに実質的に同じ質量分布、慣性モーメントおよびヤング率を有するように選択され、導管取付ブロック120、120’に適切に取り付けられる。これらの曲げ軸はブレースバー140、140’を通る。導管のヤング率は温度とともに変化し、この変化が流量と密度の計算に影響するため、RTD190は導管130’に取り付けられ、導管130’の温度を連続的に測定する。導管130’の温度、したがって、それを通過する所与の電流に対してRTD190の両端に発生する電圧は、導管130’を通過する材料の温度により左右される。RTD190の両端に発生する温度依存電圧は、計器エレクトロニクス20により周知の方法で使用され、導管温度の変化による導管130、130’の弾性率の変化を補償する。RTD190は、リード線195により計器エレクトロニクス20に接続されている。
【0039】
両方の導管130、130’は、駆動機構180により、それぞれの曲げ軸WおよびW’の周りの反対方向に、および流量計の第1の位相外れ曲げモードと呼ばれるところで駆動される。この駆動機構180は、導管130’に取り付けられた磁石および導管130に取り付けられ、両方の導管130、130’を振動させるために交流電流が流れる対向コイルなど、多くの周知の構成のいずれかを備えてもよい。適切な駆動信号は、計器エレクトロニクス20によりリード線185を介して駆動機構180に印加される。
【0040】
計器エレクトロニクス20は、リード線195上のRTD温度信号と、それぞれ左右のセンサー信号165l、165rを運ぶリード線100上に発生する左右のセンサー信号を受信する。計器エレクトロニクス20は、リード線185上に発生する駆動信号を生成して、機構180を駆動し、導管130、130’を振動させる。計器エレクトロニクス20は、左右のセンサー信号およびRTD信号を処理して、センサーアセンブリ10を通過する材料の質量流量および密度を計算する。この情報は、他の情報とともに、計器エレクトロニクス20により経路26を介して信号として適用される。
【0041】
相互変調歪み信号
図2は、多階調駆動信号の相互変調歪み信号を示すグラフ200を示す。
図2に示すように、グラフ200は、周波数軸210と大きさ軸220を含む。周波数軸は、ヘルツ(Hz)単位であり、0から30の範囲である。大きさ軸220は、フルスケール比であり、0から1の範囲である。グラフ200はまた、20Hzが対称中心にある2つの信号230を含む。
図2に示すように、グラフ200は、偶数次相互変調歪み信号240aと奇数次相互変調歪み信号240bで構成される相互変調歪み信号240を含む。
【0042】
2つの信号230は、20Hzが対称中心にあり、約0.9の大きさを有するものとして示されている。2つの信号230は、例えば、
図1を参照して上で説明した多階調駆動信号を使用するセンサーアセンブリ10に供給されてもよい。より具体的には、多階調駆動信号は、駆動機構180に供給される2つの信号230で構成されてもよい。
【0043】
相互変調歪み信号240は、リード線100上のセンサー信号内にあり得、計器エレクトロニクス20またはセンサーアセンブリ10により引き起こされ得る。例えば、相互変調歪み信号240は、多階調駆動信号が計器エレクトロニクス20内の増幅器に近い、または飽和状態にあるために生成され得る。相互変調歪み信号240はまた、ピックオフセンサー170l、170rおよび駆動機構180、またはセンサーアセンブリ10内の他
のデバイスまたは構造などの非線形性によるものであってもよい。相互変調歪み信号240の周波数は、2つの信号230の周波数間の差の倍数である。理解できるように、より多くの入力信号が追加されると、相互変調歪み信号の数が増加する。これにより、1つ以上の相互変調歪み信号が入力信号と同じ周波数を持つ可能性がある。
【0044】
図3は、相互変調歪みを示すグラフ300を示す。
図3に示すように、グラフ300は、周波数軸310と大きさ軸320を含む。周波数軸310は、ヘルツ(Hz)単位であり、95Hzから105Hzの範囲である。大きさ軸320は、フルスケール比であり、0から1の範囲である。グラフ300は、「駆動階調」としてラベル付けされ、多階調駆動信号の共振成分であり得る第1の信号330を含む。第1の信号330は、100Hzの周波数を有する。
【0045】
また、多階調駆動信号の非共振成分(例えば、センサーアセンブリの共振周波数ではない)であり得るテスト階調340が示されている。テスト階調340は、第2から第5の信号340a-340dで構成される。グラフ300はまた、相互変調歪み信号350を含む。明確に記載する目的のために、可能な相互変調歪み信号のすべてが示されていない。その代わりに、
図3に示す相互変調歪み信号350は、第1の信号330と第3の信号340bから生成される。相互変調歪み信号350の1つは、第4の信号340cと同じ周波数を有する干渉信号350aである。テスト階調340は、振動計5のリード線185上に発生する駆動信号などの駆動信号に導入することができる。したがって、リード線185上に発生する駆動信号は、第1の信号330と第2から第5の信号340a-340dで構成されてもよい。
【0046】
第2から第5の信号340a-340dの大きさは、センサーアセンブリ10を特徴付けるために測定および使用され得る。例えば、第2から第5の信号340a-340dの1つに対応する出力の大きさ比は、その周波数のセンサーアセンブリ10の応答を特徴付けることができる。異なる周波数で4つのテスト階調を利用することで、ある周波数範囲でセンサーアセンブリ10の周波数応答を近似できる。しかし、第4の信号340cと同じ周波数である干渉信号350aはテスト階調340の1つではなく、周波数応答の入力として測定されないため、センサーアセンブリ10の周波数応答は不正確であり、したがって、侵食、腐食、堆積物などを正確に検出できない場合がある。
【0047】
干渉信号350aの周波数は、第1の信号330と第3の信号340bとの間の周波数間隔を変えることにより変えることができる。より具体的には、干渉信号350aの周波数は、第1の信号330の周波数と第3の信号340bの周波数との間の差の倍数であってもよい。したがって、第3の信号340bの周波数を増加または減少させると、干渉信号350aの周波数が増加または減少する。これは、干渉信号350aを第4の信号340cから遠ざけ、それにより、干渉信号350aがセンサーアセンブリ10の周波数応答を特徴付けることに含まれるのを防止する。
【0048】
しかし、単に干渉信号350aを第4の信号340cから遠ざけるだけでは、干渉信号350aがセンサーアセンブリ10の周波数応答を特徴付けることに含まれるのを防止することができない。例えば、干渉信号350aの周波数が第4の信号340cの周波数と異なっていても、干渉信号350aはまだ復調ウィンドウ内にある可能性があり、したがって、センサーアセンブリからの応答信号に干渉成分を誘導する可能性がある。
【0049】
周波数間隔
図4は、相互変調歪み信号を誘導する可能性がある階調の周波数間隔を示すグラフ400を示す。
図4に示すように、グラフ400は、周波数軸410と大きさ軸420を含む。周波数軸410は、ヘルツ(Hz)単位であり、92Hzから108Hzの範囲である
。大きさ軸420は、フルスケール比であり、0から1の範囲である。グラフ400は、センサーアセンブリの駆動階調またはセンサーアセンブリの共振周波数での共振信号であり得る第1の信号430を含む。また、多階調駆動信号の非共振成分であるテスト階調であり得る第2の信号440、および相互変調歪み信号450が示されている。また、
図4には、第1の信号430に関連する第1の復調ウィンドウ460aと、第2の信号440に関連する第2の復調ウィンドウ460bが示されている。
【0050】
第1および第2の復調ウィンドウ460a、460bは、第1および第2の信号430、440を通過させる第1および第2の信号430、440の周波数近辺の周波数範囲であってもよい。例えば、第1および第2の復調ウィンドウ460a、460bは、約1Hzの幅であってもよい。したがって、第1の信号430の復調ウィンドウは、約99.5Hzから約100.5Hzの範囲であってもよい。第2の信号440の復調ウィンドウは、約101.5Hzから約102.5Hzの範囲であってもよい。相互変調歪み信号450は、98Hzおよび104Hzの周波数にあり、これらは第1および第2の復調ウィンドウ460a、460b内にない。その結果、相互変調歪み信号450は、センサーアセンブリ10の周波数応答の決定に含まれない。
【0051】
図5は、相互変調歪み信号を誘導する可能性がある階調の周波数間隔を示すグラフ500を示す。
図5に示すように、グラフ500は、周波数軸510と大きさ軸520を含む。周波数軸510は、ヘルツ(Hz)単位であり、92Hzから108Hzの範囲である。大きさ軸520はフルスケール比であり、0から1までの範囲である。グラフ500は、駆動階調またはセンサーアセンブリの共振周波数での信号であり得る第1の信号530を含む。また、第2の信号540a、第3の信号540b、第4の信号540c、および第5の信号540dで構成され、多階調駆動信号の非共振正弦成分であり得るテスト階調540が示されている。グラフ500は相互変調歪み信号550も含む。第1の信号530に関連する復調ウィンドウ560およびテスト階調540も示されている。復調ウィンドウ560は、第1から第5の信号530、540a-540dにそれぞれ関連する第1から第5の復調ウィンドウ560a-560eを含む。
【0052】
第1の信号530および第2から第5の信号540a-540dは、リード線185上の多階調駆動信号を含んでもよい。第1の信号530は、100Hzであるとして示されるセンサーアセンブリの共振周波数であってもよい。第2、第3、第4、および第5の信号540a-540dは、それぞれ95Hz、97Hz、102Hz、および103.5Hzであるように示されている。第2から第5の信号540a-540dは、周波数間隔を空けて、第1の信号530から、そして互いにオフセットされている。
図5に示すように、相互変調歪み信号550が第1から第5の復調ウィンドウ560a-560e内にないことを保証するために、周波数間隔を選択してもよい。より具体的には、相互変調歪み信号550のすべての周波数は、第1の信号530および第2から第5の信号540a-540dの種々の周波数間隔について決定され得る。理解できるように、他の周波数間隔は、復調ウィンドウ560内にない相互変調歪み信号550をもたらしてもよい。
【0053】
さらに、センサーアセンブリ10は、本明細書ではセンサーアセンブリ10の周波数応答帯域幅と呼ばれる、センサーアセンブリ10が軽く減衰する、ある周波数範囲を有してもよい。より具体的には、センサーアセンブリ10は、センサーアセンブリ10の応答が駆動階調周波数から急速に減少する駆動階調周波数近辺で非常に軽く減衰してもよい。周波数間隔が大きすぎる場合、第1の信号530は周波数応答帯域幅内の中心にあり、1つ以上のテスト階調540は周波数応答帯域幅外にある可能性がある。これにより、センサーアセンブリ10の周波数応答を特徴付けるには不十分な信号対雑音比を持つ成分を有するセンサー信号が得られる可能性がある。
【0054】
この信号対雑音比の問題を回避するために、テスト階調540の周波数は、センサーアセンブリ10の周波数応答帯域幅内にあるように、第1の信号530の周波数に近くてもよい。したがって、
図5の実施形態では、第2の信号540aおよび第5の信号540dであるテスト階調540の最低周波数と最高周波数との間の周波数間隔を最小化することが望ましい場合がある。この最小化の一例は、
図6を参照して以下に説明する。
【0055】
図6は、相互変調歪み信号を誘導する可能性がある周波数間隔を示すグラフ600を示す。
図6に示すように、グラフ600は、周波数軸610と大きさ軸620を含む。周波数軸610は、ヘルツ(Hz)単位であり、92Hzから108Hzの範囲である。大きさ軸620はフルスケール比であり、0から1までの範囲である。グラフ600は、駆動階調またはセンサーアセンブリの共振周波数での信号であり得る第1の信号630を含む。また、第2の信号640a、第3の信号640b、第4の信号640c、および第5の信号640dで構成されるテスト階調640が示されている。テスト階調640は、非共振周波数の正弦成分であってもよい。グラフ600は、相互変調歪み信号650も含む。第1の信号630に関連する復調ウィンドウ660およびテスト階調640も示されている。復調ウィンドウ660は、第1の信号630に関連する第1から第5の復調ウィンドウ660a-660eおよび第2の信号640aから第5の信号640dを含む。
【0056】
理解できるように、第2および第5の信号640a、640dは、
図5を参照して上で説明した第2および第5の信号540a、540dよりも互いに近い。第2および第5の信号640a、640dは、センサーアセンブリの周波数応答帯域幅内にあってもよい。その結果、テスト階調640に対応するセンサー信号内の信号は、許容可能な信号対雑音比を有してもよい。さらに、相互変調歪み信号650のいくつかは、復調ウィンドウ660b-660eに隣接する。より具体的には、相互変調歪み信号650のいくつかは、復調ウィンドウ660b-660e外であるが接している。したがって、相互変調歪み信号650は、復調ウィンドウ660b-660eを通過せず、テスト階調640に対応するセンサー信号の成分が通過することを可能にする。
【0057】
したがって、相互変調歪み信号650がテスト階調640に対応する信号と干渉するのを防止することにより、センサーアセンブリ10の周波数応答の特徴付けをより正確にすることができる。第2の信号640aと第5の信号640dとの間のより近い周波数間隔から生じる十分な信号対雑音比のため、周波数応答の特徴付けもより正確であり得る。
【0058】
システムモデル
相互変調歪みの上記説明は、相互変調歪み信号が既知であると仮定している。この仮定は、同様に、センサーアセンブリのシステムモデルが十分に特徴付けられているという仮定に依存する場合がある。システムモデルが、例えば非線形モデルを利用することで、入力に対する応答をより正確に予測する場合、より正確で最適化されたテスト階調間隔が得られる場合がある。この非線形モデルにより、振動計の駆動信号またはセンサー信号に追加される補償信号を使用するシステムなど、フィルタリングに必ずしも依存しないノイズ低減システムだけでなく、より効率的なフィルター設計が可能になる。
【0059】
変換器の非線形モデル
変換器のより正確なシステムモデルは、線形モデルではなく、非線形モデルの場合がある。非線形モデルの一例は、多項式モデルである場合がある。例えば、変換器は、次の関係:
【0060】
【0061】
(ここで:
k(x)は変換器の位置に対する変換器のゲインであり、
【0062】
【0063】
は速度である。)
を持つ速度変換器としてモデル化できる。
【0064】
理解できるように、ゲインk(x)は定数ではなく、例えばコイル内の磁石の位置に対して変化する。ゲインk(x)は任意の適切な式にすることができるが、例示の目的で例示の式を以下に説明する。
【0065】
図7は、振動計のノイズを予測および低減するための変換器の非線形モデルのゲインのグラフ700を示す。
図7に示すように、グラフ700は、動きの範囲のフルスケール比により示される位置軸710を含む。より具体的には、この例では、コイル内の中心にある磁石はゼロの位置にある。磁石が、中心から、動きの範囲のフルスケール比の4分の1にあるコイルの第1端に向けて変位すると、変換器の位置は-0.25にある。磁石が、動きの範囲のフルスケール比の4分の1にあるコイルの第2端に向けて変位すると、変換器の位置は0.25にある。しかし、変換器の位置の任意の適切な尺度、ならびに歪みゲージ、光学変換器などの他のタイプの変換器を使用してもよい。グラフ700はまた、例えばボルトなどの測定ユニットのフルスケール比でも示されるゲイン軸720を含む。例えば、変換器のフルスケール出力が5.00ボルトであると.95フルスケールでは、変換器は4.75ボルトの出力を有する。グラフ700はまた、放物線曲線k(x)として示される変換器モデルプロット730を含む。
【0066】
【0067】
【0068】
により決定される。
【0069】
相互変調歪みの影響を観察するために、システムへの入力が2つの異なる周波数(ω1
、ω2)および振幅(A1、A2)の2つの正弦波または階調である場合を考える。
【0070】
【0071】
上記式[2]および[3]を式[1]に代入すると、次の式[4]:
【0072】
【0073】
が得られる。
【0074】
三角関数の恒等式を用いて単純化すると、8つの異なる周波数で特定の振幅の正弦波が生成される。理解できるように、これは、変換器のシステムモデルが非線形変換器であっても、相互変調歪み信号(振幅、位相および周波数)を予測する正確な解決策である。すなわち、非線形変換器により引き起こされる相互変調歪みは、非線形モデルを用いて予測できる。この結果は、以下の説明が示すように、一般化された入力と多項式非線形システムモデルを用いて繰り返すことができる。
【0075】
多項式の高次項を展開すると、入力信号(またはその微分/積分)がより高いべき乗に引き上げられる。多項信号が目的であるため、入力はいくつかの項(サインとコサインであるが、この時点では任意の項として扱うことができる)の合計になる。したがって、(x0+x1+x2+…xn)kの閉形式展開が必要になる場合がある。これは、二項展開(a
+b)kの一般化である。二項展開は、合計してkになるaとbのべき乗のすべての組合
せ:ak,ak-1b,ak-2b2,…abk-1,bkで構成されるk+1項を生成する。多項展開は、合計してkになるx0,x1,…xnのべき乗のすべての組合せで構成される。多項
展開は、再帰アルゴリズムを用いて簡単に実施できる。例えば、第1項x0を取得でき、
第1項x0の許可されたべき乗中ループできる。第1項x0の各許可されたべき乗について、再帰アルゴリズムは、第2項x1のすべての許可された値(0からkから第1項x0について選択されたべき乗を引いた値)中ループできる。この再帰アルゴリズムは、全べき乗がkに達するまで続く。展開の係数は、例えば、式
【0076】
【0077】
(ここで、k0+k1+…km=nである。)を用いて計算することもできる。
【0078】
システムモデルへの入力は、以下の式[5]:
【0079】
【0080】
で表される正弦波の合計として一般化できる。
【0081】
上記のように、システムの非線形性は、入力空間/出力空間の多項式、またはこの空間のいくつかの積分/微分でモデル化される(例えば、加速度を測定している可能性があるが、システムは位置に関して非線形である)。「非線形空間」を
【0082】
【0083】
で表すと、システム応答は次の式[6]:
【0084】
【0085】
(ここで、
【0086】
【0087】
は「非線形空間」を表し、
【0088】
【0089】
は非線形多項式:
【0090】
【0091】
(ここで、kは多項式の次数である。)である。)と記載される。
【0092】
上記式[7]では、
【0093】
【0094】
項は、その項がサインとコサインである標準の多項展開である。より具体的には、上記式[5]に示すように、x(t)は、正弦項の合計であると仮定されるため、
【0095】
【0096】
は、
【0097】
【0098】
のサインとコサインの多項展開である正弦項の合計でもある。
【0099】
上記式[6]と[7]を組み合わせると、次の式:
【0100】
【0101】
が得られる。
【0102】
上記式[8]は、以下に説明するように、いくつかの異なる計算レベルで繰り返すことができる。
【0103】
各多項式項について、
【0104】
【0105】
の全展開を計算する。x、したがって
【0106】
【0107】
も正弦項の合計であると仮定されていることを思い出されたい。したがって、
【0108】
【0109】
は、その項がサインとコサインである標準の多項展開である。展開項は、上記多項項手法を用いて計算される。この
【0110】
【0111】
の展開を考えると、各展開項にxを掛けて、元の展開よりも多くの項が生成される。これにより、
【0112】
【0113】
のすべての項が得られる。この時点で、N個の項が合計され、各項は、多数のサインとコサインの積である。
【0114】
ここで、各展開項が評価される第2のループを使用できる。上記の多項係数(すなわち、
【0115】
【0116】
の展開パターンのみに基づく各項の乗数)は、各項に対して計算される。次いで、これに多項式係数Pkとその項に寄与するサインとコサインの振幅を掛ける。これは、この特定の展開項に関連するスカラーを形成する。展開の残りは、いくつかのサインとコサインの積である。これは、種々の周波数でサインまたはコサインの合計に変換される。これらの正弦波に関する情報(すなわち、周波数、振幅、およびサイン/コサイン)が保持され、次の展開項についてループが繰り返される。
【0117】
上記の手順がすべての展開項(「内部ループ」など)についてもすべての多項式係数(すなわち「外部ループ」)についても完了すると、特定の周波数で特定の振幅を有する多数のサインとコサインが得られる。結果が照合され、負の周波数の正弦波が正の周波数の等価物に変換され、同様の周波数のサインとコサインが合計される。これらのサインとコサインの振幅と周波数が返され、システムの全出力が形成される。
【0118】
上記のように任意の適切な非線形システムを使用できるが、4次多項式モデルを例として用いて以下に説明するように、非線形システムからの出力信号の決定方法に関係なく、非線形システムを使用して振動計のノイズを予測および低減できる。
【0119】
図8は、振動計のノイズを予測および低減するための変換器の4次多項式表現のグラフ800を示す。
図8に示すように、グラフ800は、位置軸810および変換器ゲイン軸820を含む。
図8に示す位置軸810は、フルスケール範囲のパーセンテージ単位であり、-100パーセントから100パーセントの範囲である。変換器ゲイン軸820も、例えばボルトのフルスケール比で示されている。変換器ゲイン軸820は、0.965から1.005の範囲である。グラフ800は、多項式が4次多項式である多項曲線として示される変換器モデルプロット830も含む。より具体的には、変換器は、Pk値がベクトルP=[-1x10
-10 -1x10
-2 -1x10
-6 -1x10
-5 1]として表
される4次多項式としてモデル化される。式[5]-[8]を参照して上で説明したように、5つの正弦信号で構成される多階調信号を多項式P=[-1x10
-10 -1x10
-2 -1x10
-6 -1x10
-5 1]と組み合わせると、相互変調歪み信号を含む歪み
モデルまたは歪み信号を取得できる。
【0120】
相互変調歪み信号の予測
図9は、4次多項式モデルPを用いて得られた歪みモデルのグラフ900を示す。グラフ900は、ヘルツ(Hz)単位の周波数軸910と、例えばゲインは出力と入力の比率から決定されるためdBスケールの振幅軸920とを含む。グラフ900は、相互変調歪み信号プロット930および入力信号プロット940を含む。相互変調歪み信号プロット930は、5つの階調信号の周波数近辺の周波数軸910にある基本相互変調歪み信号群930aを含む。認識できないが、入力信号プロット940の階調に対応する階調で構成される出力信号には、入力信号プロット940の階調に重なる階調が含まれる。この出力信号の階調の大きさは、入力信号プロット940の階調の大きさよりわずかに小さい。
【0121】
図10は、
図9に示す基本相互変調歪み信号群930aおよび入力信号プロット940の詳細図を示すグラフ1000を示す。
図10に示すグラフ1000は、5つの階調信号の周波数が中心にある75Hzから85Hzの範囲の周波数軸1010と、
図9に示すグラフ900の振幅軸920と同じ-200dBから100dBの範囲のdBスケールの振幅軸1020を含む。基本相互変調歪み信号群930aは、この組合せから生じる相互変調信号で構成される。出力信号の階調は認識できないが、出力信号の階調は、入力信号プロット940の階調の約0.3%から0.5%の振幅内で、0.2%未満程度の位相である。出力信号の階調の周波数は、入力信号プロット940の階調の周波数と同じである。
【0122】
見て分かるように、基本相互変調歪み信号群930aは、互いに均等に間隔を空けた個々の階調を含む。これは、等間隔の信号を持つ入力信号プロット940の階調による。さらに、基本相互変調歪み信号群930aのいくつかの階調は、入力信号プロット940の階調のかなりの割合にある。例えば、基本相互変調歪み信号群930aのいくつかの階調は、入力信号プロット940の階調の30dB内にある。
【0123】
非線形モデルフィッティング
図11a-11dは、曲線データを引き出すための種々の次数の多項式フィッティンググラフ1100a-1100dを示す。特に、
図11aに示すグラフ1100aは2次多項式フィッティングであり、
図11bのグラフ1100bは3次多項式フィッティングであり、
図11cのグラフ1100cは4次多項式フィッティングであり、グラフ1100dは5次多項式フィッティングである。理解できるように、式[6]-[8]を参照して上で説明したように多階調入力信号を多項式と組み合わせる計算負荷は、多項式の次数に相関する。すなわち、次数が高いほど、計算負荷が大きい。
【0124】
図11a-11dに示すグラフ1100a-1100dは、0インチから0.2インチの範囲の係合軸1110a-1110dを含む。係合は、コイル内に含まれる磁石の長さである。例えば、0.1インチの磁石がコイル内にあると、係合は0.1インチである。グラフ1100a-1100dはまた、約0.2から約1.2の範囲を有するゲイン軸1120a-1120dを含む。グラフ1100a-1100dは、ドットとして示される引き曲線データ1130a-1130dを含む。グラフ1100a-1100d内と同じである引き曲線データ1130は、磁石がコイル内に挿入されるときに実際の変換器の出力を測定することで取得できる。グラフ1100a-1100dの変換器ゲインプロット1140a-1140dは、引き曲線データ1130に近接する線として示される。
【0125】
引き曲線データ1130は、所与の係合の値の範囲を表す一連のドットペアとして示される。例えば、0.1インチの係合の場合、引き曲線データは、約1.18と約1.22にある2つのドットを示す。したがって、変換器ゲインプロット1140a-1140dが、所与の係合でのドットペアにより規定される範囲内にある場合、変換器ゲインプロット1140a-1140dは、その係合で引き曲線データ1130にフィッティングすることができる。
【0126】
図1100a-1100dに見て分かるように、変換器ゲインプロット1140a-1140dは、多項式の次数に従って変化する。各変換器ゲインプロット1140a-1140dが引き曲線データ1130にどれだけ近いかに関して変換器ゲインプロット1140a-1140dを互いに比較することにより、比較的低い多項式次数を選択できる。
図1100a-1100dに示す例では、最低次数は4次多項式である場合がある。4次多項式変換器ゲインプロット1140cは、5次多項式変換器ゲインプロット1140dが引き曲線データ1130により良くフィッティングするように見えるが、4次多項式変換器ゲインプロット1140cは、まだ引き曲線データ1130のすべてのドットペア内にあることに留意することにより選択でき、したがって、引き曲線データ1130にフィッティングすると見なすことができる。したがって、4次多項式変換器ゲインプロット1140cを使用することは、計算リソースの最適な使用であり得る。
【0127】
図12は、限定された係合範囲を有する4次多項式変換器ゲインプロット1140cのグラフ1200を示す。グラフ1200は、係合軸1210および変換器ゲイン軸1220を含む。グラフ1200はまた、引き曲線データ1230を有し、これは、上記の
図11cに示す引き曲線データ1130と同じである。しかし、グラフ1200は、短縮された変換器ゲインプロット1240、すなわち、係合範囲に限定された4次多項式変換器ゲインプロット1140cを含む。図のように、係合範囲は、約-0.02インチから約0.02インチである。短縮された変換器ゲインプロット1240は、全駆動振幅部(破線として示される)と計器検証振幅部(実線として示される)を含む。計器検証振幅部は、全駆動振幅部の係合範囲よりも小さな係合範囲を有する。
【0128】
システムモデルを使用するフィルター設計
図13a-13dは、振動計のノイズの低減を示すグラフ1300a-1300dを示す。
図13a-13dに示すように、グラフ1300a-1300dは、周波数軸1310a-1310dを含む。
図13aでは、周波数軸1310aは70Hzから90Hzの範囲である。
図13b-13dでは、周波数軸1310b-1310dは、第2の階調または
図13aの左から2番目の階調に対して規格化され、したがって、第2の階調に対するHz単位である。グラフ1300a-1300dにはdBスケールの振幅軸1320a-1320dも含まれる。
図13a、13bおよび13dでは、振幅軸1320a、1320b、および1320dは、-160dBから0dBの範囲である。
図13cでは、振幅軸1320cは、-200dBから0dBの範囲である。グラフ1300a-1300dにはプロットも含まれており、より詳細に以下に説明する。
【0129】
図13aに示すグラフ1300aは、5つの階調で構成される入力信号1330aを含む。5つの階調は、約77Hz、79Hz、80Hz、82Hz、および83Hzにある。80Hzにある階調は、例えば、
図1に示す振動計5の導管130、130’の共振周波数などの振動センサーの共振周波数と同じ周波数を有する駆動階調であり得る。この場合、共振周波数は80Hzであるが、任意の適切な共振周波数および/または駆動階調を使用してもよい。他の4つの階調は、駆動階調と混合されたテスト階調であってもよい。
【0130】
図13bに示すグラフ1300bは、79Hzにあるテスト階調に対して間隔を空けた階調を有する復調信号1330bを含む。より具体的には、
図13bに示す出力信号1330bは、79Hzにあるテスト階調に対応する復調階調を含み、したがって、0Hzで約-20dBの振幅ならびに、この復調階調から間隔を空けた他の復調階調を有する。これらの他の復調階調は、79Hzの復調階調から約0.5Hz、1.5Hz、および3Hzだけ間隔を空けている。
【0131】
図13cに示すグラフ1300cは、フィルターの振幅特性プロット1330cを含む。フィルターの振幅特性プロット1330cは、0Hzで0dB減衰(
図13aの79H
zに対応する)を有する。振幅特性プロット1330cは、0Hzから0.5Hzの範囲で0dBから-100dBに減少する。したがって、振幅特性プロット1330cにより特徴付けられるフィルターは、79Hzから0.5Hzだけ間隔を空け、または少なくとも100dBだけ大きい入力信号1330aの階調を減衰させる。
図13bに示す出力信号1330bの例示の減衰を、13dを参照して以下に説明する。
【0132】
図13dに示すグラフ1300dは、減衰出力信号1330dを含む。減衰出力信号1330dは、出力信号1330bが振幅特性プロット1330cにより特徴付けられるフィルターにより減衰されるため、出力信号1330bの出力階調よりも小さな階調を含む。見て分かるように、0.5Hzの階調は約-100dBだけ減衰する。この階調は、0Hzの周波数に最も近く、振幅特性プロット1330cの通過帯域に近接している。これは、入力信号1330aの階調の周波数を知っている間に設計されているフィルターによる。しかし、理解できるように、-20dBの0Hzの階調と約80dBの0.5Hzの階調との間の振幅差は許容できない場合がある。
【0133】
図13cに示す振幅特性プロット1330cにより特徴付けられるフィルターの場合、フィルター設計は、例えば、10Hzのサンプリング周波数で動作する0.5Hz離れた階調の100dB減衰を得るために122タップを必要とする場合がある。このフィルターは、12.2秒の時間枠でデータを統合し、リアルタイム処理を行うときに6秒超の効果的な遅延を課すことができる。よりきれいな出力のためには、さらにより多くのフィルター減衰が必要であり、さらに多くのフィルタータップを要することとなり許容できない場合がある。
【0134】
図14a-14dは、振動計のノイズの低減を示すフィルターを示すグラフ1400a-1400dを示す。グラフ1400aおよび1400bは、
図13aおよび
図13bに示すグラフ1300aおよび1300bと類似するが、さらに相互変調歪み信号を含む。理解できるように、グラフ1400cのフィルターはグラフ1300cのフィルターと異なる。
【0135】
図14a-14dに示すように、グラフ1400a-1400dは、周波数軸1410a-1410dを含む。
図14aでは、周波数軸1410aは、60Hzから80Hzの範囲である。
図14b-14dでは、周波数軸1410b-1410dは、第2の階調、または
図14aの左から2番目の階調に対して規格化され、したがって、第2の階調に対するHzの単位である。グラフ1400a-1400dには、dBスケールの振幅軸1420a-1420dも含まれている。
図14a、14bおよび14dでは、振幅軸1420a、1420bおよび1420dは、-160dBから0dBの範囲である。
図14cでは、振幅軸1420cは、-200dBから0dBの範囲である。グラフ1400a-1400dにはプロットも含まれており、より詳細に以下に説明する。
【0136】
図14aに示すグラフ1400aは、5つの階調で構成される入力信号1430aを含む。5つの階調は、約68.5Hz、70Hz、70.5Hz、71.5Hzおよび73Hzにある。70.5Hzにある階調は、例えば、
図1に示す振動計5の導管130、130’などの導管の共振周波数と同じ周波数を有する駆動階調であり得る。この場合、共振周波数は80Hzであるが、任意の適切な共振周波数および/または駆動階調を使用してもよい。他の4つの階調は、駆動階調と混合されたテスト階調であってもよい。
【0137】
図14bに示すグラフ1400bは、70Hzにあるテスト階調に関連する復調階調を有する復調信号1430bを含む。より具体的には、
図14bに示す復調信号1430bは、70Hzにあるテスト階調に対応する復調階調を含み、したがって、約-18dBの振幅ならびに、この復調階調から間隔を空けた他の復調階調を有する。これらの他の復調
階調は、70Hzの復調階調から約0.5Hz、1.5Hz、および3Hzだけ間隔を空けている。
【0138】
図14cに示すグラフ1400cは、フィルターの振幅特性プロット1430cを含む。フィルターの振幅特性プロット1430cは、0Hzで0dBの減衰(
図14aの79Hzに対応する。)を有する。振幅特性プロット1430cは、0Hzから0.5Hzの範囲で0dBから約-125dBに減少する。これは、
図13cに示す振幅特性プロット1330cよりも深い。したがって、振幅特性プロット1430cにより特徴付けられるフィルターは、階調の周波数に応じて、0.5Hz以上で70Hzから間隔を空けた階調を減衰させる場合がある。
図14bに示す復調信号1430bの例示の減衰を、
図14dを参照して以下に説明する。
【0139】
図14dに示すグラフ1400dは、振幅特性プロット1430cにより特徴付けられるフィルターにより復調信号1430bが減衰されるため、復調信号1430bの出力階調よりも小さな振幅を持った階調を有する減衰信号1430dを含む。見て分かるように、ほとんどの階調は約-118に減衰する。これは、0Hzの階調よりも約100dB小さい。これは、復調信号1430bの階調の予測を用いて設計されたフィルターによる。
【0140】
理解できるように、
図13cに示す振幅特性プロット1330cと対照的に、
図14cに示す振幅特性プロット1430cは、高減衰の領域(「谷」)および低減衰の領域(「丘」)を含む。谷は、復調信号1430bの階調の周波数に対応する周波数が中心にある。より具体的には、振幅特性プロット1430cの谷は、0.5Hz、1.5Hzおよび3Hzが中心にある。これは、谷がそのように中心にあることを保証するように設計されているフィルターによる。振幅特性プロット1430cにより特徴付けられるフィルターは、58タップ(5.8秒のデータ、2.9秒の遅延)を有する
図13a-13dを参照して説明したフィルターと比較して低次フィルターである。したがって、フィルタリングされる階調の周波数と振幅を知ることにより、フィルターの計算効率を向上させることができる。この概念は、以下の説明が示すように、入力信号の階調の相互変調歪みから生じると予測された階調に適用できる。
【0141】
駆動信号またはセンサー信号に適用される信号の生成に加えて、
図11a-11dを参照して説明したように、曲線データを引き出すために多項式モデルをフィッティングする必要がない方法で、摂動を含む予測応答信号を使用して、変換器モデル、より一般的にはセンサーアセンブリのシステムモデルを推定することができる。高調波を使用して決定される例示のシステムモデルを以下に説明する。
【0142】
高調波を使用するシステムモデルの決定
便宜上、サインとコサインを示す複素数表記は次のように使用できる。
Acosωt → A
Bcosωt → jB
この表記は、解を生成する際に高調波の位相を説明するためのものである。別の表記法の便利さは、べき乗された正弦波の展開の係数に記号Rを使用することである。k(測定空間と非線形空間との間の微分または積分の数)に応じて、cosp+1ωtまたはcos
ωt・sinpωtのいずれかを展開できる。いずれの場合でも、項、
Rkpf
を使用して、展開のべき乗pの係数を周波数f・ωの項に示すことができる。例えば、三角関数の恒等式の単純なアプリケーションは、
cosωt・cos2ωt=cos2ωt=0.75cosωt+0.25cos3ωtを
示すだろう。したがって、この場合、R021=0.75およびR023=0.25である
。別の例として、cosωt・sin2ωt=0.25cosωt-0.25cos3ω
tを考える。この場合、R121=0.25およびR123=-0.25である。Rを定義する目的で、kが偶数または奇数の場合にのみ重要であることに留意されたい。すなわち、R0pf=R2pf=R-4pfおよびR1pf=R3pf=R-5pfである。pの偶数値は基底周波数の奇数倍のみを生成し、pの奇数値は偶数倍のみを生成する。これは、以下の展開を簡略化するために利用できる。
【0143】
kが測定空間から非線形空間への微分(正)または積分(負)の数として示される場合、非線形空間の振幅は、skAωk(ここで、Aは元の信号の振幅であり、skは適切な符
号である。(閉形式が、例えばsk=1-2mod[ceil(k/2),2]として計算できる))と記載される。例えば、元の加速度信号がAcosωtの場合、その位置は
【0144】
【0145】
である。簡略表記では、これは振幅s-2Aω-2=-Aω-2のコサインである。別の例として、Acosωtの位置は、-Asinωtの速度か、または簡略表記では振幅がs1A
ω1=-Aωのサインになる。追加の表記には、y=Pnxn+Pn-1xn-1+…+P1x+P0として表される非線形多項式が含まれ、階調入力Acosωtに対するシステム応答は
、H0+H1cosωt+H2cos2ωt+…Hncosnωtと記載される。正弦成分は、Hの係数の虚数値を介して組み込むことができる。
【0146】
純粋な階調入力Acosωtに対して非線形システムの出力を計算するための行列式を記載できる。4次非線形多項式の式が展開される。このシステムは、入力測定(積分に対して負のk)からの特定の空間kで非線形である。式のセットは、
【0147】
【0148】
と記載できる。
【0149】
Aは、システムの非線形ダイナミクスに関係なく、「真」の根本的な動きを表す。根本的なシステムからの測定値がない場合、Aは直接分からない。
【0150】
この問題に対処するために、意味のある単位で測定値を提供できる。すなわち、例えば、ユーザーは、正しい結果を与えるために、実際の物理的な単位に合わせて測定値を調整する必要がある場合がある(本質的には、真の振幅を仮定するように強制する)。しかし、より具体的には、数学では係数P0=1を仮定する。P0は、非線形多項式のy切片を表
す。したがって、提供された測定値が「静止」(位置0)で正しいと仮定される。これを
見る別の方法は、ユーザーの測定値が微小に小さな振幅で「真」の値に近づく必要があるということである。
【0151】
この仮定により、システムは解けるようになる。手順は、例えば、
1.変数の中間セットPrAr+1を解く
2.P0=1の場合、P0Aのソリューションからバックアウトする
3.Aの計算値を[9]に代入して係数Prを解くか、またはAの既知の値をステップ1からの解に単に適用してPrを計算する
であってもよい。
【0152】
以下に説明するように、どのように決定されたとしても非線形モデルを使用して、振動計のノイズを補償できる。
【0153】
補償信号
上で説明したように、変換器は、以下に再現される式[2]の場合のように、非線形変換器としてモデル化できる。
【0154】
【0155】
センサーアセンブリから受信したセンサー信号を測定し、上記式[10]の逆数に掛けることができる。より具体的には、上記式[10]を例として用いて、次の関係:
【0156】
【0157】
(「逆重み付け」と呼ぶことができる。)を確立できる。
【0158】
逆重み付けでは、変換器モデルの逆数に変換器モデルを掛けたものが恒等式である。したがって、中への動きが、駆動信号の階調の相互変調歪みから生じる応答信号の成分または階調など、摂動のない外への動きに等しくなるように変換器モデルの応答が線形化される。すなわち、応答信号は、駆動信号の駆動階調およびテスト階調に対応する階調で構成される。この逆重み付け概念を用いて、センサーアセンブリに供給される駆動信号の階調に対応する階調で構成される応答信号など、所望の応答を取得することで逆重み付け信号を決定し、変換器モデルで所望の応答を割って逆重み付け信号を取得し、この逆重み付け信号をセンサーアセンブリに供給することができる。したがって、応答信号は、駆動信号の階調の相互変調歪みから生じる階調を含まない場合がある。センサーアセンブリに供給されるこの逆重み付け信号は、補償信号である。
【0159】
センサー信号に適用される信号は、キャンセル信号であってもよい。逆重み付け信号の生成と同様の方法で、変換器モデルを使用して、摂動のない駆動信号の駆動階調およびテスト階調に対応する階調で構成される応答信号を決定できる。この応答信号を使用して、駆動信号の駆動階調およびテスト階調に対応する階調ならびに駆動信号の階調の相互変調歪みにより生成された階調を含む非線形変換器モデルにより生成された階調を除去できる。したがって、キャンセル信号は、駆動信号の階調の相互変調歪みにより生成された階調
で構成される。このキャンセル信号は、計器エレクトロニクス20などのエレクトロニクスにより生成され、センサー信号に適用されて、センサーアセンブリに適用される駆動信号の階調の相互変調歪みから生じる成分または階調をキャンセルすることができる。
【0160】
図15は、振動計のノイズを予測および低減する方法1500を示す。本方法1500は、ステップ1510で駆動信号を振動計のセンサーアセンブリに供給することで開始する。駆動信号は、
図3および13aを参照して上で説明したテスト階調などのテスト階調を含み得るが、任意の適切な駆動信号が供給されてもよい。ステップ1520では、本方法1500は、駆動信号に応答してセンサーアセンブリからセンサー信号を受信する。センサー信号は、1つ以上の成分を含む。1つ以上の成分は、駆動信号のテスト階調に対応する階調ならびにセンサーアセンブリ10により誘導される相互変調歪み信号、高調波などのノイズを含む場合がある。例えば、相互変調歪み信号は、センサーアセンブリ10のピックオフセンサー170l、170rなどの変換器により誘導されてもよい。ステップ1530では、本方法1500は、駆動信号とセンサー信号のうちの少なくとも1つに適用されて1つ以上の成分を補償する信号を生成する。本方法1500は、任意のシステムにより実施できる。例示のシステムを以下に説明する。
【0161】
図16は、振動計のノイズを予測および低減するように構成された振動計1600のブロック図を示す。振動計1600は、センサーアセンブリ1610と計器エレクトロニクス1620を含む。
図16に示すように、センサーアセンブリ1610は、計器エレクトロニクス1620に通信可能に結合される。計器エレクトロニクス1620は、駆動信号をセンサーアセンブリ1610に供給する駆動回路1622を含む。センサーアセンブリ1610は、計器エレクトロニクスに通信可能に結合され、センサー信号を計器エレクトロニクス1620に供給する。補償信号生成器1623は、駆動回路1622およびセンサーアセンブリ1610に通信可能に結合される。補償信号生成器1623は、計器エレクトロニクス1620の他の構成要素とは異なるものとして示されているが、補償信号生成器1623は、例えば、駆動回路1622の一部であってもよい。復調フィルター1624は、センサーアセンブリ1610からセンサー信号を受信し、復調ウィンドウ内または復調フィルター1624のウィンドウ内にある信号を通過させる。復調フィルター1624を通過した信号は、FRF推定ユニット1625に供給される。ノッチフィルター1626は、共振成分を駆動回路1622と、流体の流体特性を決定できる流量および密度測定モジュール1627とに渡すセンサー信号も受信する。
【0162】
センサーアセンブリ1610は、
図1を参照して前述のセンサーアセンブリ10を表すモデルであってもよい。あるいは、センサーアセンブリ1610は、駆動回路1622から電気駆動信号を受信する実際のセンサーアセンブリであってもよい。いずれの場合でも、センサーアセンブリ1610は、計器エレクトロニクス1620から多階調駆動信号を受信し、センサー信号を計器エレクトロニクス1620に供給し、センサーアセンブリ1610を特徴付ける。したがって、多階調駆動信号はセンサーアセンブリ1610の周波数応答への入力であり、センサー信号はセンサーアセンブリ1610の周波数応答の出力である。入力と出力を比較することで、センサーアセンブリ1610の周波数応答を特徴付けることができる。さらに、分析的解法は、例えば、曲線をセンサーアセンブリ1610の特徴付けにフィッティングすることで定式化できる。
【0163】
駆動回路1622は、共振成分の周波数を追跡し、センサーアセンブリ1610に供給される駆動信号の駆動階調の周波数を調整するフィードバック回路で構成されてもよい。駆動回路1622は、駆動階調およびテスト階調を含む多階調駆動信号であり得る駆動信号を生成または供給する信号生成器、増幅器なども含んでもよい。
【0164】
補償信号生成器1623は、逆重み付け信号を生成しセンサーアセンブリ1610に供
給するか、またはセンサーアセンブリ1610により供給されるセンサー信号に対するキャンセル信号を生成しセンサーアセンブリ1610に供給するように構成される。補償信号生成器1623は、変換器モデルなどのシステムモデルを使用する適切な手段を用いて、逆重み付け信号およびキャンセル信号を生成できる。例えば、上で説明したように、変換器モデルは、多項式として定義される入力と出力の関係を持つことができる。
【0165】
センサーアセンブリ1610に印加される逆重み付け信号は、所望の出力を決定することにより生成される。例えば、所望の出力は、例えば
図6に示すテスト階調640に対応する成分のみで構成されるセンサーアセンブリ1610からのセンサー信号であってもよい。すなわち、所望の出力は、
図6に示す相互変調歪み信号650を含まないセンサー信号である。
【0166】
補償信号生成器1623は、所望の出力にシステムモデルの逆数を掛けることにより、逆重み付け信号を生成できる。例えば、上記式[11]に示す関係では、[1-x2(t
)]は、システムモデルである。システムモデルの逆数は、
【0167】
【0168】
項として示される。次いで、逆重み付け信号がセンサーアセンブリ1610に印加され、所望の出力またはセンサー信号が取得される。
【0169】
補償信号生成器1623は、センサーアセンブリ1610により供給されたセンサー信号に適用されるキャンセル信号を生成できる。例えば、上で説明したように、補償信号生成器1623は、システムモデルを用いて応答信号を決定できる。例えば、上記式[9]を参照すると、変換器の非線形モデルを使用して、例えば第1の信号630およびテスト階調640ならびに相互変調歪み階調650に対応する階調などの1つ以上の成分を含む出力信号またはセンサー信号を決定できる。駆動階調である第1の信号630に対応する階調、およびテスト階調640をこの出力から除去して、相互変調歪み階調650のみを残すことができる。これは、センサーアセンブリ1610により供給されるセンサー信号に適用されるキャンセル信号である。キャンセル信号は補償信号である。
【0170】
上記では、補償信号を使用して相互変調歪み信号がセンサーアセンブリ1610により供給されるセンサー信号に存在するのを防止することを説明しているが、センサー信号には、例えば、駆動信号および駆動信号のテスト階調の周波数ドリフトのため存在するいくつかの相互変調歪み信号がまだあるであろう。したがって、
図16に示すように、振動計1600でフィルタリングを依然として使用できる。
【0171】
復調フィルター1624は、復調ウィンドウ内にある信号を通過させる。例えば、
図6を参照すると、復調フィルター1624は、復調ウィンドウ660b-660e内にある信号を通過させる。なお
図6を参照すると、相互変調歪み信号650は復調ウィンドウ660b-660e内にないため、復調フィルター1624を通過しない。その結果、計器エレクトロニクス1620は、第2から第5の信号640a-640dでセンサーアセンブリ1610を正確に検証できる。
【0172】
相互変調歪み信号650は、計器検証中にテスト階調640が使用される場合にのみ存在する可能性があるため、振動計1600の製造作業中に復調フィルター1624および
ノッチフィルター1626は使用されない場合がある。より具体的には、動作中に振動計1600は、センサーアセンブリ1610の共振周波数の周波数を有する正弦信号で構成される単一成分信号のみを供給してもよい。
【0173】
図17は、振動計のセンサー信号のノイズを予測および低減する方法1700を示す。
図17に示すように、本方法1700は、ステップ1710で振動計のセンサーアセンブリの非線形モデルからの出力信号を決定する。出力信号は、2つ以上の成分を有する入力信号に応答してもよい。本方法1700は、ステップ1720では、出力信号の1つ以上の成分を減衰させるようにフィルターを調整する。
【0174】
非線形モデルからの出力信号の1つ以上の成分は、相互変調歪み信号および/または高調波で構成されてもよい。例えば、出力信号は、
図14cに示すものと同様の階調を含んでもよい。すなわち、フィルターへの入力信号1430aは、非線形モデルからの出力である。非線形モデルは、任意の適切なモードであり、任意の適切な手段を用いて決定できる。例えば、非線形モデルは、
図7に示すゲイン位置モデルなどの、センサーアセンブリ内の変換器のゲイン位置モデルであってもよい。理解できるように、1つ以上の成分は、
図14aに示す、非線形モデルからの出力およびフィルターへの入力であり得る入力信号1430aのように、互いから間隔を空けた階調で構成されてもよい。
【0175】
ステップ1720では、フィルターの振幅特性の1つ以上の阻止帯域の周波数を、出力信号内の1つ以上の成分の周波数が実質的に中心にあるように調整することにより、フィルターを調整できる。例えば、
図14cに示すフィルターを参照すると、振幅特性プロット1430cの谷および丘である阻止帯域の周波数は、
図14bに示す、非線形モデルの出力および振幅特性プロット1430cにより特徴付けられるフィルターへの入力である復調信号1430bの周波数がほぼ中心にある。
【0176】
さらに、少なくとも1つの阻止帯域の減衰を調整して、1つ以上の成分のうちの1つを所望の振幅に低減できる。例えば、再び
図14cを参照すると、振幅特性プロット1430cの各阻止帯域の振幅は、フィルターの出力の振幅が所望の振幅になるように調整される。
図14dに示すように、復調信号に約+10dBから-118dBの範囲の階調が含まれていても、フィルターの出力である減衰信号1430dの所望の振幅は一般に約-118dBである。
【0177】
フィルターの調整には、フィルターのタップ数を減らすことが含まれる。例えば、
図13cに示す振幅特性プロット1330cにより特徴付けられるフィルターでは122タップが必要になる場合がある。
図14cに示す振幅特性プロット1430cにより特徴付けられるフィルターには58のタップがある。その結果、58のタップフィルターは、より少ないコンピューティングリソースを利用し、それにより、上記の計器エレクトロニクス20などの計器エレクトロニクスの動作を改善する。
【0178】
上で説明した実施形態は、振動計5、1600のノイズを決定および低減できる振動計5、1600および方法1500を提供する。ノイズは、センサーアセンブリ10、1610、または振動計5、1600のピックオフセンサー170l、170rなどのセンサーにより引き起こされる相互変調歪み信号、高調波などのセンサー信号の成分であり得る。ノイズは、ピックオフセンサーの170l、170rの非線形変換器モデルなどのシステムモデルを用いて予測できる。ノイズを予測することにより、ノイズを減らすことができる。
【0179】
例えば、システムモデルを使用することにより、補償信号を生成できる。補償信号は、センサー信号のノイズの形成を防止するか、ノイズをキャンセルすることができる。した
がって、ノッチフィルター1626などのフィルターが必要ない場合がある。追加的または代替的に、予測ノイズを使用することにより、フィルターを設計または選択できる。例えば、階調などの成分がある場所に、フィルターの阻止帯域周波数を中心とできる。したがって、フィルター設計は、計算効率のよりよい、および/またはノイズを所望の振幅に減衰または低減する低次フィルターにすることができる。したがって、計器エレクトロニクス20、1620の動作は、複雑なフィルターの必要性を低減または排除することにより改善される。
【0180】
さらに、振動計5、1600の動作は、ノイズを所望のレベルまで低減または減衰させることにより改善され、それにより計器検証の技術的プロセスが改善される。例えば、ノイズを低減すると、ノイズが計器検証の実行に使用されるセンサー信号の成分と干渉するのを最小化するか、防止することができる。その結果、センサーアセンブリ10内の導管130、130’の剛性、質量、残留柔軟性などのより正確な測定値を提供することにより、計器検証の技術的プロセスが改善される。計器エレクトロニクス20の動作は、計器エレクトロニクスで使用されるフィルターのタップ数を減らすことでも改善できる。上で説明したように、タップ数は、相互変調歪み信号などの非線形モデルからの出力信号の成分を決定すること、および成分の周波数が中心にあるようにフィルターの阻止帯域を調整することにより低減できる。
【0181】
上記実施形態の詳細な説明は、本説明の範囲内にあると発明者により考えられたすべての実施形態の網羅的な説明ではない。実際、当業者は、上記実施形態の特定の要素を種々組み合わせまたは排除してさらなる実施形態を作成することができ、このようなさらなる実施形態は本説明の範囲および教示内に入ることを認識するであろう。当業者には、上記実施形態を全体的または部分的に組み合わせて、本説明の範囲および教示内で追加の実施形態を作成できることも明らかであろう。
【0182】
したがって、本明細書では特定の実施形態を例示の目的で説明しているが、当業者が認識するように、本説明の範囲内で種々の同等の修正が可能である。本明細書で提供される教示は、振動計のノイズを予測および低減する他の実施形態に適用できる。したがって、上で説明した実施形態の範囲は、以下の特許請求の範囲から決定されるべきである。