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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】損傷部品の補修方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/342 20140101AFI20220512BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20220512BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20220512BHJP
【FI】
B23K26/342
B23K26/08 D
B23K26/08 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021153326
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2021-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】目澤 雄平
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0230212(US,A1)
【文献】特開2011-256795(JP,A)
【文献】特開2006-231409(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0111248(US,A1)
【文献】特開昭63-194884(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0351281(US,A1)
【文献】特開2016-112570(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0290234(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0173624(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が損傷した物品を補修する方法であって、
回転工具を用いた除去加工、及びレーザヘッドを用いた付加加工の双方を実行することができる一つの工作機械を用いて、
損傷領域を含む補修領域を前記回転工具を用いた除去加工により除去して凹状に形成する除去工程と、
前記レーザヘッドから加工面に対してレーザ光を照射するとともに、レーザ光の照射位置に対して設定された所定位置に粉末材料を供給して、該粉末材料を溶融しながら積層する付加加工により、凹状に形成された前記補修領域内を肉盛りする肉盛り工程とを実行し
前記除去工程では、前記補修領域を、所定の水平な第1軸方向に沿った溝状の凹部に形成し、且つ少なくとも、前記第1軸方向の両縁部を所定の曲率を有する凹曲面に形成するとともに、前記凹曲面を形成する際には、前記凹曲面の曲率中心を中心として、前記回転工具に対して前記物品を揺動させながら除去加工を行い
前記肉盛り工程では、前記レーザヘッドから鉛直方向にレーザ光を照射するとともに、少なくとも前記凹曲面に前記付加加工を施す際には、前記レーザヘッドと加工面との距離が一定となるように、前記凹曲面の曲率中心を中心として、前記レーザヘッドに対して前記物品を揺動させながら前記付加加工を行い、更に、前記第1軸に沿った両側面と底面との接続部に前記付加加工を施す際には、前記レーザヘッドを溝内側に傾斜させるようにしたことを特徴とする損傷物品の補修方法。
【請求項2】
前記除去工程では、前記補修領域の両凹曲面間を平面に形成し、
前記肉盛り工程では、前記平面に前記付加加工を施す際には、前記レーザヘッドと前記物品とを、前記平面に沿って相対的に移動させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の損傷物品の補修方法。
【請求項3】
前記肉盛り工程では、前記レーザヘッドと前記物品とを前記第1軸と直交する第2軸方向に所定ピッチで相対的に移動させ、且つ前記レーザ光を、前記物品に対して、前記第1軸を含む鉛直平面内で相対的に走査させることによって前記付加加工を施すようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の損傷物品の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が損傷した物品の損傷部分を補修する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面が損傷した物品の損傷部分を補修する方法として、従来、例えば、特開2007-192220号公報に開示された補修方法が知られている。
【0003】
この補修方法は、ガスタービンエンジンのタービンブレードを補修する方法に関し、タービンブレードの表面に生じた穴などを補修するものである。ガスタービンエンジンは、その作動中に、高温のガスによって、タービンブレードなどの表面が腐食され、この腐食によって穴が頻繁に生じるという環境下にあり、また、この高温ガス、高温ガス中の微粒子、及び燃焼による煤などによってタービンブレードなどが摩耗するという環境下にある。そこで、損傷したタービンブレードなどを補修する方法が提案されている。
【0004】
具体的には、まず、タービンブレードに生じた欠陥部分(穴や摩耗が生じた部分)を含む所定の領域(補修領域)を周知の切断装置により切断して除去した後、除去した補修領域内に、レーザクラッディング手法により、ブレードと同じ材質の充填材を充填して肉盛りする加工を行う。そして、この後、肉盛りした部分を機械加工により整形して元の形状を復元する。
【0005】
尚、上記特開2007-192220号公報には、除去加工及び肉盛り加工について、あまり詳しく説明されていないが、従来、この除去加工及び肉盛り加工には、以下のような態様が採られていた。
【0006】
例えば、図13に示すように、直方体形状をした部品W’の上面に所定深さの欠損部N’が生じている場合に、まず、フライス盤などの工作機械を用い、図14に示すように、欠損部N’を含む補修領域R’をエンドミルなどの回転工具により加工して、所定深さの凹部H’を形成する除去加工を行う。この場合、凹部H’には、鉛直面である周壁Pw’が形成される。尚、図13(a)は補修対象の部品W’を示した平面図であり、図13(b)は、その矢示F-F方向の断面図である。また、図14(a)は、凹部H’が形成された補修対象部品W’を示した平面図であり、図14(b)は、その矢示G-G方向の断面図である。
【0007】
次に、除去加工を施した補修対象部品W’の凹部H’に、付加加工装置を用いて肉盛り加工を行う。付加加工装置は、例えば、基材上に設定された焦点位置に集光されるようにレーザ光を照射するとともに、前記焦点位置に粉末材料(補修材料)をキャリアガスとともに吐出する加工ヘッドAhを備え、前記焦点位置において、吐出した粉末材料及び前記基材をレーザ光のエネルギーにより溶融させて、これらを一体化する装置である。
【0008】
そして、この加工ヘッドAhと補修対象部品W’とを、三次元空間内で所定の経路で相対的に移動させることにより、順次、溶融された粉末材料が冷却固化され、これにより粉末材料に由来した堆積層が形成される。斯くして、加工ヘッドAhを、凹部H’に対応して設定された積層経路で相対的に移動させるとともに、この積層経路に沿った移動を、補修対象部品W’から徐々に遠ざかる方向に位置決めしながら繰り返して実行することにより、図15に示すように、凹部H’内が粉末材料に由来した堆積層L’で埋め込まれ、更に基材から上方に突出するように肉盛りされる。尚、当然のことながら、粉末材料は基材である補修対象部品W’と同じ材質の物が使用される。
【0009】
次に、補修対象部品W’の表面から上方に突出するように肉盛りされた部分を、上記フライス盤などの工作機械により除去加工して、補修部分を元の形状に復元する整形工程を実行する(図16参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2007-192220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記従来の補修方法では、除去加工により欠損部N’を除去することによって形成される凹部H’の内周壁Pw’が鉛直面となっているため、続く付加加工装置によるレーザクラッディング手法を用いた肉盛り加工において、当該内周壁Pw’と補修材とを強固に結合できないという問題があった。
【0012】
即ち、前記肉盛り工程において、前記加工ヘッドAhから照射されるレーザ光の照射方向(光軸)は鉛直方向に設定され、凹部H’の内周壁Pw’と平行になっているため、この内周壁Pw’と接する部分において補修材を積層する際には、当該内周壁Pw’へのレーザ光の照射量が、凹部H’の底面に対する照射量よりも格段に低下することになる。このため、内周壁Pw’を十分に溶融させることができず、結果、内周壁Pw’部分の基材と補修材との融合が不十分となり、両者の結合強度が不十分となるのである。
【0013】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、従来に比べ、補修対象物品である基材に対して、補修材をより強固に結合させることができる補修方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、
表面が損傷した物品を補修する方法であって、
損傷領域を含む補修領域を除去加工により除去して凹状に形成する除去工程と、
レーザヘッドから加工面に対してレーザ光を照射するとともに、レーザ光の照射位置に対して設定された所定位置に粉末材料を供給して、該粉末材料を溶融しながら積層する付加加工により、凹状に形成された前記補修領域内を肉盛りする肉盛り工程とを含む補修方法において、
前記除去工程では、補修領域を、所定の水平な第1軸方向に沿った溝状の凹部に形成するとともに、少なくとも、前記第1軸方向の両縁部を所定の曲率を有する凹曲面に形成し、
前記肉盛り工程では、前記レーザヘッドから鉛直方向にレーザ光を照射するとともに、少なくとも前記凹曲面に前記付加加工を施す際には、前記レーザヘッドと加工面との距離が一定となるように、前記凹曲面の曲率中心を中心として、前記レーザヘッドに対して前記物品を揺動させながら前記付加加工を行うようにした損傷物品の補修方法に係る。
【0015】
本発明に係る補修方法によれば、まず、除去装置を用いた除去工程を実施し、損傷領域を含む補修領域を除去加工により除去して、水平な第1軸方向に沿った溝状の凹部を形成するとともに、少なくとも、前記第1軸方向の両縁部を所定の曲率を有する凹曲面に形成する。尚、適用可能な前記除去加工装置としては、エンドミルなどの回転工具を用いた加工が可能なフライス盤やマシニングセンタなどを例示することができる。
【0016】
また、前記補修領域が前記第1軸と直交する水平な第2軸方向において、前記回転工具の直径よりも広い幅を有する場合には、工具主軸を前記第2軸方向に所定ピッチで相対的に移動させながら、前記第1軸方向に相対的に移動させることによって前記凹部を形成する。また、前記凹曲面を加工する際には、工具を保持して回転させる工具主軸と補修対象物品とを、前記第1軸と直交する水平な旋回中心軸を中心として、相対的に旋回させることによって、前記凹曲面を形成することができる。
【0017】
次に、レーザヘッドを備えた付加加工装置を用いて、前記補修領域としての凹部に対して、付加加工を行う。具体的には、前記レーザヘッドから前記凹部内の底面(加工面)に対してレーザ光を照射するとともに、レーザ光の照射位置に対して設定された所定位置に、補修対象物品と同じ材質の粉末材料を供給して、当該粉末材料をレーザ光のエネルギにより溶融しながら、前記レーザヘッドと補修対象物品とを、前記第1軸を含む垂直面内で相対的に移動させることにより、溶融した粉末材料を冷却,固化させて、これにより粉末材料に由来した層を順次上方に積層して、当該凹部内を粉末材料に由来した物質で肉盛りする。
【0018】
尚、前記凹部が前記第2軸方向に広い幅を有する場合には、前記レーザヘッドを前記第2軸方向に所定ピッチで相対的に移動させながら、前記第1軸方向に相対的に移動させることにより前記凹部内に付加加工を行う。
【0019】
また、前記凹曲面に対して付加加工を施す際には、前記レーザヘッドと加工面との距離が一定となるように、前記凹曲面の曲率中心を中心として、前記レーザヘッドに対して前記補修対象物品を揺動させながら前記付加加工を行う。
【0020】
このようにして、補修対象物品を揺動させることにより、レーザヘッドから照射されるレーザ光を、常に、加工面に対して垂直に照射することができ、これにより、当該加工面に十分な照射量のレーザ光を照射することができる。斯くして、十分な照射量のレーザ光が照射されることで、凹曲面表層の基材を十分に溶融させることができるとともに、溶融した基材と粉末材料に由来する補修材とを十分に融合させることができ、これにより、両者を十分に強い強度で結合することができる。
【0021】
このように、本発明によれば、補修領域の全周縁を垂直な側壁になるように除去加工していた従来に比べて、補修領域内において、補修対象物品と補修材とをより強い強度で結合することができるとともに、補修材層間においてもこれらをより強い強度で結合することができる。
【0022】
一方、前記凹部を形成する前記第2軸方向と直交する2つの側面(第1軸に沿った両側面)は垂直になっており、この側面と接する部分において、前記補修材料を積層する際には、依然として、十分な照射量のレーザ光の照射することができず、このため、当該側面と粉末材料に由来する補修材とを十分に融合させることができない虞がある。そこで、この垂直な側面に接する部分に補修材料を積層する際には、前記レーザヘッドを凹部の内側に傾斜させるのが好ましい。このようにすれば、当該側面に対して十分な照射量のレーザ光の照射することができ、当該側面と粉末材料に由来する補修材とを十分に融合させることができる。
【0023】
また、前記除去工程では、前記補修領域の両凹曲面間を平面に形成し、前記肉盛り工程では、前記平面に前記付加加工を施す際には、前記レーザヘッドと前記物品とを、前記平面に沿って相対的に移動させるようにしても良い。
【0024】
また、本発明は、表面が損傷した物品を補修する方法であって、
損傷領域を含む補修領域を除去加工により除去して凹状に形成する除去工程と、
レーザヘッドから加工面に対してレーザ光を照射するとともに、レーザ光の照射位置に対して設定された所定位置に粉末材料を供給して、該粉末材料を溶融しながら積層する付加加工によって、凹状に形成された前記補修領域内を肉盛りする肉盛り工程とを実施する補修方法において、
前記除去工程では、前記補修領域を凹球面に形成し、
前記肉盛り工程では、前記物品に、前記凹球面の中心軸回りに回転する動作と、前記凹球面の曲率中心を中心として揺動する動作との複合動作を行わせて、前記レーザヘッドから照射されるレーザ光の照射位置が、前記凹球面上で螺旋軌跡を描くようにした損傷物品の補修方法に係る。
【0025】
この補修方法では、前記除去工程において、前記補修領域が凹球面形状に形成される。そして、前記肉盛り工程では、前記物品に、前記凹球面の中心軸回りに回転する動作と、前記凹球面の曲率中心を中心として揺動する動作との複合動作を行わせて、前記レーザヘッドから照射されるレーザ光の照射位置が、前記凹球面上で螺旋軌跡を描くようにする。これにより、レーザヘッドから照射されるレーザ光を、常に、加工面に対して垂直に照射することができ、当該加工面に十分な照射量のレーザ光を照射することができる。そして、このようにして、十分な照射量のレーザ光が照射されることで、凹曲面表層の基材を十分に溶融させることができるとともに、溶融した基材と粉末材料に由来する補修材とを十分に融合させることができ、これにより、両者を十分に強い強度で結合することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、補修対象物品を揺動させることにより、レーザヘッドから照射されるレーザ光を、常に、加工面に対して垂直に照射することができ、これにより、当該加工面に十分な照射量のレーザ光を照射することができる。そして、十分な照射量のレーザ光を照射することで、凹曲面表層の基材を十分に溶融させることができるとともに、溶融した基材と粉末材料に由来する補修材とを十分に融合させることができ、これにより、両者を十分に強い強度で結合することができる。斯くして、本発明によれば、補修領域の全周縁を垂直な側壁になるように除去加工していた従来に比べて、補修領域内において、補修対象物品と補修材とをより強い強度で結合することができるとともに、補修材層間においてもこれらをより強い強度で結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施の形態に係る工作機械を示した斜視図である。
図2】本実施形態に係る工作機械の揺動テーブル機構を示した側面図である。
図3】本実施形態に係る工作機械を用いた除去加工について説明するための説明図である。
図4】本実施形態に係る除去加工について説明するための説明図である。
図5】本実施形態に係る除去加工について説明するための説明図であり、図4における矢視D-D方向の断面図である。
図6】本実施形態に係る除去加工について説明するための説明図であり、図4における矢視E-E方向の断面図である。
図7】本実施形態に係る工作機械を用いた付加加工について説明するための説明図である。
図8】本実施形態に係る付加加工について説明するための説明図である。
図9】本実施形態に係る付加加工について説明するための説明図である。
図10】本発明に係る他の実施形態を説明するための説明図である。
図11】本発明に係る他の実施形態を説明するための説明図である。
図12】本発明に係る他の実施形態を説明するための説明図である。
図13】(a)は補修対象物品の一例を示した平面図であり、(b)はその矢視F-F方向の断面図である。
図14】従来の補修方法を説明するための説明図であり、(a)は除去加工後の補修対象物品を示した平面図であり、(b)はその矢視G-G方向の断面図である。
図15】従来の補修方法における肉盛り工程を説明するための説明図である。
図16】従来の補修方法における整形工程を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚、本例では、一例として、図4図6に示した補修対象物品Wの欠損部Nを補修するものとし、図4図6では欠損部Nを一点鎖線で示し、この欠損部Nを含む補修領域Rを実線で示している。
【0029】
[工作機械の概略構成]
まず、本発明の一具体例に係る補修方法を実施するための工作機械の概略構成について説明する。図1に示すように、本例の工作機械1は、ベッド2と、ベッド2に配設される第1サドル7及び揺動テーブル機構20、前記第1サドル7に配設される第2サドル8、この第2サドル8に配設される主軸頭9などから構成される。
【0030】
前記ベッド2は、平面視矩形状に形成された基部3と、この基部3の図示左右両側部に相互に対峙するようにそれぞれ立設された2つの側壁4,5と、基部3の奥側の前記側壁4,5間に、これらに連結するように立設された後部壁6とからなる。
【0031】
前記第1サドル7は、平面から視た形状が矩形をした枠体であり、前記ベッド2の側壁4,5上に、これらに掛け渡されるように配設され、側壁4,5の上面にそれぞれ配設されたY軸案内機構30,31によって、水平な前後方向である矢示Y軸方向に移動可能となっており、同じく側壁4,5の上面に配設されたY軸駆動機構32,33により駆動されて、前記Y軸方向に移動する。
【0032】
また、前記第2サドル8は、前記第1サドル7の枠内を貫通するように配設され、当該第1サドル7の矢示X軸に沿った両辺上にそれぞれ設けられたX軸案内機構35,36によって、前記Y軸と直交する水平なX軸方向に移動可能となっており、同じく第1サドル7に配設されたX軸駆動機構37により駆動されて、前記X軸方向に移動する。
【0033】
また、前記主軸頭9は、前記第2サドル8に配設されたZ軸案内機構(図示せず)によって、前記X軸及びY軸と直交する矢示Z軸方向に移動可能に前記第2サドル8に保持されており、その両側に設けられたZ軸駆動機構40,41により駆動されて、前記Z軸方向に移動する。尚、この主軸頭9には、その下端から下方に延出するように主軸10が設けられており、この主軸10の下端に工具Tが装着される。また、主軸10はその軸中心に回転可能に前記主軸頭9に保持されており、図示しない主軸モータによって軸中心に回転される。
【0034】
前記揺動テーブル機構20は、左側方から視た形状がL字形状を有するテーブルベース21と、このテーブルベース21の水平部22に設けられるテーブル24とを備えている。テーブルベース21は、その垂直部23が前記ベッド2の後部壁6に、前記Y軸と平行な回転軸Aを中心として、矢示B軸方向に回転可能に保持され、図示しない旋回駆動機構により駆動されて前記B軸方向に旋回する。
【0035】
また、前記テーブルベース21の水平部22上には、テーブル24が配設され、このテーブル24は、その上面と直交する前記Z軸と平行な回転軸Aを中心として、矢示C軸方向に回転可能に前記水平部22に保持されており、図示しない回転駆動機構により駆動されて前記C軸方向に回転する。
【0036】
尚、前記X軸駆動機構37、Y軸駆動機構32,33及びZ軸駆動機構40,41、旋回駆動機構(図示せず)、回転駆動機構(図示せず)及び主軸モータ(図示せず)は、それぞれ図示しない数値制御装置によってその作動が制御される。
【0037】
斯くして、この工作機械1では、数値制御装置(図示せず)による制御の下で、主軸10に装着された工具と、テーブル24上に載置,固定されたワークとが、X軸駆動機構37、Y軸駆動機構32,33及びZ軸駆動機構40,41によって、直交3軸の送り軸である前記X軸、Y軸及びZ軸方向に移動する。また、前記テーブル24は、前記旋回駆動機構(図示せず)により駆動されて、回転送り軸であるB軸方向に旋回し、また、前記回転駆動機構(図示せず)により駆動されて、回転送り軸であるC軸方向に回転する。
【0038】
そして、前記X軸駆動機構37、Y軸駆動機構32,33、Z軸駆動機構40,41、旋回駆動機構(図示せず)及び回転駆動機構(図示せず)により、主軸10に装着された工具Tと、テーブル24上に載置,固定されたワークWとを、相対的に前記X軸、Y軸、Z軸、B軸及びC軸方向に移動させることによって、テーブル24上のワークWが工具Tによって加工される。
【0039】
[損傷物品の補修方法]
次に、上記工作機械1を用いた本実施形態の補修方法について、図3図9に基づいて説明する。
まず、工作機械1の主軸10に、前記工具Tとして、回転工具である工具Tを装着するとともに、前記ワークWとして、表面に欠損部Nを有する補修対象物品Wを工作機械1のテーブル24上に載置し、固定する。尚、本例では、工具Tとしてボールエンドミルを用いるがこれに限定されるものではない。また、本例では、欠損部Nの長手方向が前記X軸に沿うように、テーブル24上に固定するが、これに限られるものではない。
【0040】
次に、補修対象物品Wに対して、その欠損部Nが完全に含まれる補修領域Rを設定し、設定した補修領域Rを、前記工具Tを用いて除去する除去加工を行う(除去工程)。具体的には、前記旋回駆動機構(図示せず)により、前記回転軸Aを中心として、前記テーブル24を前記B軸方向に揺動させながら、前記Y軸駆動機構32,33、及びZ軸駆動機構40,41を駆動して、主軸10を前記Y軸方向及びZ軸方向に移動させて、工具Tにより、補修領域Rを加工する(図3及び図5参照)。尚、補修領域Rは、X軸に沿った溝状の領域であり、その底面は、前記回転軸Aを中心とした所定の曲率半径の円弧状の凹曲面に設定されている。
【0041】
この除去加工のより具体的な態様は、様々な態様を採り得るが、その一例を挙げると、まず、前記補修領域Rの凹曲面の曲率中心が前記回転軸Aとほぼ一致するような前記テーブル24上の位置に、前記補修対象物品Wを載置し、固定する。
【0042】
次に、前記主軸10を回転させた状態で、補修対象物品Wと工具Tとが干渉しないようにして、以下のように主軸10を位置決めするとともに、テーブル24をB軸プラス方向に揺動させる。即ち、
1)前記主軸10を、前記X軸方向において、その軸線が前記回転軸Aと重なる位置に位置決めする(図3図5参照)。
2)前記主軸10を、前記Z軸方向において、工具Tの下端が補修領域Rの底面と接する位置に位置決めする(図5参照)。
3)テーブル24をB軸プラス方向に揺動させて、工具Tと補修対象物品Wとが干渉しない角度に振り上げる(図5の一点鎖線で示した左側の図を参照)。
4)前記主軸10を、前記Y軸方向において、前記工具Tの外周面が前記補修領域の仮想の内周面と接触する位置、本例では、Y軸プラス方向側に位置決めする(図6参照)。
【0043】
次に、前記テーブル24をB軸マイナス方向に所定の切削送り速度で、工具Tと補修対象物品Wとが非接触となる角度まで揺動させて、補修対象物品Wの補修領域Rを切削加工する(図5の一点鎖線で示した右側の図を参照)。ついで、主軸10をY軸マイナス方向に所定ピッチ(工具Tの直径のより小さい間隔)で移動させた後、前記テーブル24をB軸プラス方向に前記切削送り速度で、工具Tと補修対象物品Wとが非接触となる角度まで揺動させて、補修対象物品Wの補修領域Rを切削加工する(図5及び図6参照)。以後、主軸10をY軸マイナス方向に所定ピッチで移動させながら、前記テーブル24を前記B軸方向に前記切削送り速度で揺動させる動作を繰り返して、設定された補修領域Rを工具Tによって除去加工した後、前記主軸10を原位置に復帰させるとともに、テーブル24を水平位置に戻す。
【0044】
次に、前記主軸10に、前記工具Tとしてのレーザ加工ヘッドTを装着して、上述した除去加工により除去した補修領域R内に、補修材を埋め込むことによって肉盛りする肉盛り工程を実施する。尚、前記レーザ加工ヘッドTは、その下端部から、鉛直下方に向けてレーザ光を照射するとともに、このレーザ光の照射位置(焦点位置)に対して設定された所定位置に、補修対象物品Wと同じ材質の粉末材料(補修材料)をキャリアガスとともに供給するように構成されており、供給した粉末材料及び基材をレーザ光のエネルギにより溶融しながら両者を融合させ、粉末材料に由来した堆積層を形成する付加加工を行う。
【0045】
具体的には、前記旋回駆動機構(図示せず)により、前記回転軸Aを中心として、前記テーブル24を前記B軸方向に揺動させながら、前記Y軸駆動機構32,33、及びZ軸駆動機構40,41を駆動して、主軸10を前記Y軸方向及びZ軸方向に移動させて、レーザ加工ヘッドTにより、前記補修領域Rに付加加工を行う。この付加加工のより具体的な態様も、様々な態様を採り得るが、以下に、その一例を挙げる。
【0046】
まず、主軸10の回転を停止させた状態で、補修対象物品Wとレーザ加工ヘッドTとが干渉しないようにして、以下のように主軸10を位置決めするとともに、テーブル24をB軸プラス方向に揺動させる。即ち、
1)前記主軸10を、前記X軸方向において、その軸線が前記回転軸Aと重なる位置に位置決めする(図7図8参照)。
2)前記主軸10を、前記Z軸方向において、レーザ加工ヘッドTの下端が補修領域Rの底面より上方に位置し、レーザ光の照射位置(焦点位置)が補修領域Rの底面上に位置するように位置決めする(図8参照)。
3)テーブル24をB軸プラス方向に揺動させて、レーザ加工ヘッドTと補修対象物品Wとが干渉しない角度に振り上げる(図8の一点鎖線で示した左側の図を参照)。
4)前記主軸10を、前記Y軸方向において、前記レーザ加工ヘッドTの外面が前記補修領域Rの内周面から所定距離だけ内側に離れた位置、本例では、Y軸プラス方向側に位置決めする(図9参照)。
【0047】
次に、レーザ加工ヘッドTからレーザ光を照射するとともに、前記粉末材料を供給した状態で、前記テーブル24をB軸マイナス方向に所定の送り速度で、レーザ加工ヘッドTと補修対象物品Wとが非接触となる角度まで揺動させる(図8の一点鎖線で示した右側の図を参照)。これにより、供給された粉末材料とレーザ光が照射される基材(最初は補修対象物品W)とが、レーザ光のエネルギにより溶融されることによって融合され、レーザ加工ヘッドTと補修対象物品Wとの相対移動によって溶融物が冷却、固化されて、粉末材料に由来した堆積層(補修材層)が形成される。尚、このとき、堆積層は、その両端部の高さ位置が、補修対象物品Wの上面よりも高くなるように形成される。
【0048】
次に、主軸10をY軸マイナス方向に所定ピッチ(例えば、前記堆積層の幅より少し狭い間隔)で移動させた後、前記テーブル24をB軸プラス方向に前記送り速度で、レーザ加工ヘッドTと補修対象物品Wとが非接触となる角度まで揺動させることにより、同じく粉末材料に由来した堆積層(補修材層)を形成する。
【0049】
以後、主軸10をY軸マイナス方向に所定ピッチで移動させて、前記テーブル24を矢示B軸方向に前記送り速度で揺動させる動作を繰り返すことにより、即ち、ジグザク状の軌跡を描くように、レーザ加工ヘッドTと補修対象物品Wとを相対移動させることにより、前記補修領域Rの底面全域に、第1層となる堆積層を形成する。
【0050】
次に、主軸10を、レーザ加工ヘッドTの下端が前記第1層より所定距離だけ上方に位置するように、Z軸プラス方向に移動させた状態で、上記と同様にして、レーザ加工ヘッドTと補修対象物品Wとがジグザク状の軌跡を描くように相対移動させることにより、前記第1層上の全面に第2層となる堆積層(補修材層)を形成する。そして、以後同様にして、補修領域R内の全域に、その上面より高い位置まで補修材層を順次積層して肉盛りした後、前記主軸10を原位置に復帰させるとともに、テーブル24を水平位置に戻す。
【0051】
そして、この肉盛り工程後、主軸10に、エンドミルやフライスなどの平面切削工具を装着して、補修対象物品Wの上面から上方に突出した部分を前記平面切削工具により切削して除去する。以上により、補修対象物品Wの欠損部Nが補修される。
【0052】
このように、本例によれば、除去加工において、補修領域RのX軸に沿った底面の両側を加工する際に、テーブル24を、回転軸Aを中心としてB軸方向に揺動させて、当該両側を所定の曲率半径の円弧状の凹曲面に加工するとともに、付加加工において、この凹曲面に補修材を積層する際には、同様に、テーブル24を、前記回転軸Aを中心として揺動させながら付加加工を行うようにしているので、レーザ加工ヘッドTから照射されるレーザ光を、常に、加工面に対して垂直に照射することができ、これにより、当該加工面に十分な照射量のレーザ光を照射することができる。
【0053】
そして、十分な照射量のレーザ光が照射されることで、凹曲面表層の基材を十分に溶融させることができるとともに、溶融した基材と粉末材料に由来する補修材とを十分に融合させることができ、これにより、両者を十分に強い強度で結合することができる。
【0054】
斯くして、本例の補修方法によれば、補修領域Rの全周縁を垂直な側壁になるように除去加工していた従来に比べて、補修領域内において、補修対象物品Wと補修材とをより強い強度で結合することができるとともに、補修材層間においてもこれらをより強い強度で結合することができる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、上例の態様に限定されるものではない。
【0056】
例えば、上例では、補修領域Rの前記Y軸と直交する両側面(X軸に沿った両側面)は垂直になっており、この側面と接する部分において、前記補修材を積層する際には、依然として、十分な照射量のレーザ光の照射することができず、このため、当該側面と補修材とを十分に融合させることができない虞がある。
【0057】
そこで、付加加工において、この垂直な両側面に接する部分に補修材を積層する際には、前記レーザ加工ヘッドTを、図10に示すように、前記Y軸を含む垂直面内において、補修領域Rの内側に傾斜させるのが好ましい。このようにすれば、当該側面に対して十分な照射量のレーザ光の照射することができるので、当該側面(基材)と補修材とを十分に融合させることができ、両者を十分に強い強度で結合することができる。斯くして、この態様によれば、補修領域内全体において、補修対象物品Wと補修材とをより強い強度で結合することができるとともに、補修材層間においても、これらをより強い強度で結合することができる。
【0058】
また、上例では、前記補修領域Rを、X軸に沿った溝状の領域とし、その底面を、前記回転軸Aを中心とした所定の曲率半径の円弧状の凹曲面に設定したが、これに限られるものでは無い。例えば、図11に示すように、前記補修領域Rの底面を、前記回転軸Aを含む垂直面を境としたX軸方向の両凹曲面部R,R間に平面部Rを形成した態様としても良い。
【0059】
この場合、例えば、前記テーブル24上にX軸方向に移動可能な送り装置を設け、この送り装置上に補修対象物品Wを載置、固定して、上記除去工程及び肉盛り工程を行うようにした態様を採ることができる。除去工程では、上例と同様に除去加工の1)-4)の動作を行った後、前記テーブル24をB軸マイナス方向に所定の切削送り速度で揺動させてテーブル24の上面を水平にすることで、前記凹曲面部Rを形成し、ついで、テーブル24の揺動を停止させた状態で、前記送り装置により補修対象物品WをX軸マイナス方向に移動させることで、平面部Rを形成し、この後、再度、テーブル24をB軸マイナス方向に所定の切削送り速度で工具Tと補修対象物品Wとが非接触となる角度まで揺動させることで、前記凹曲面部Rを形成する。
【0060】
次に、主軸10をY軸マイナス方向に所定ピッチで移動させた後、前記テーブル24をB軸プラス方向に前記切削送り速度で揺動させて、テーブル24の上面を水平にすることで、前記凹曲面部Rを形成し、ついで、テーブル24の揺動を停止させた状態で、前記送り装置により補修対象物品WをX軸プラス方向に移動させることで、平面部Rを形成し、この後、再度、テーブル24をB軸プラス方向に所定の切削送り速度で工具Tと補修対象物品Wとが非接触となる角度まで揺動させることで、前記凹曲面部Rを形成する。以後、主軸10をY軸マイナス方向に所定ピッチで移動させながら、前記テーブル24のB軸方向の揺動及び前記送り装置のX軸方向への移動を繰り返して、補修領域Rを工具Tによって除去加工する。
【0061】
また、付加加工では、上例と同様に、付加加工の1)-4)の動作を行った後、レーザ加工ヘッドTからレーザ光を照射するとともに、前記粉末材料を供給した状態で、前記テーブル24をB軸マイナス方向に所定の送り速度で揺動させて、テーブル24の上面を水平にすることで、前記凹曲面部R上に補修材層を積層し、ついで、テーブル24の揺動を停止させた状態で、前記送り装置により補修対象物品WをX軸マイナス方向に移動させることで、前記平面部R上に補修材層を積層し、この後、再度、テーブル24をB軸マイナス方向に所定の送り速度で、レーザ加工ヘッドTと補修対象物品Wとが非接触となる角度まで揺動させることで、前記凹曲面部R上に補修材層を積層する。
【0062】
次に、主軸10をY軸マイナス方向に所定ピッチで移動させた後、前記テーブル24をB軸プラス方向に前記送り速度で揺動させて、テーブル24の上面を水平にすることで、前記凹曲面部R上に補修材層を積層し、ついで、テーブル24の揺動を停止させた状態で、前記送り装置により補修対象物品WをX軸プラス方向に移動させることで、前記平面部R上に補修材層を積層し、この後、再度、テーブル24をB軸プラス方向に所定の送り速度で、レーザ加工ヘッドTと補修対象物品Wとが非接触となる角度まで揺動させることで、前記凹曲面部R上に補修材層を積層する。この後、主軸10をY軸マイナス方向に所定ピッチで移動させながら、前記テーブル24のB軸方向の揺動及び前記送り装置のX軸方向への移動を繰り返して、補修領域Rに第1層となる補修材層を形成する。
【0063】
この後、主軸10を、レーザ加工ヘッドTの下端が前記第1層より所定距離だけ上方に位置するように、Z軸プラス方向に移動させた状態で、上記と同様にして、レーザ加工ヘッドTと補修対象物品Wとがジグザク状の軌跡を描くように相対移動させることにより、第1層上の全面に第2層となる補修材層を形成する。そして、以後同様にして、補修領域R内の全域に、その上面より高い位置まで補修材層を順次上方に積層して肉盛りする。
【0064】
この態様によれば、補修領域RがX軸方向に広い場合に、好適に対応することができる。
【0065】
また、前記補修領域Rを溝状の形状に設定したが、これに限られるものでは無く、補修領域Rを凹球面形状に設定しても良い。
【0066】
この場合、上記除去工程では、前記テーブル24に、B軸回りの揺動動作、及びC軸回りの回転動作の複合動作を行わせるとともに、主軸10をZ軸方向に移動させることにより、補修対象物品Wと工具Tとを、その相対的な移動奇跡が、例えば中心から外周方向に向けて螺旋を描くように、或いは、外周から中心に向けて螺旋を描くように、相対移動させることによって、前記補修領域Rを凹球面形状に加工することができる。
【0067】
また、付加加工では、同様に、前記テーブル24に、B軸回りの揺動動作、及びC軸回りの回転動作の複合動作を行わせるとともに、主軸10をZ軸方向に移動させることにより、補修対象物品Wとレーザ加工ヘッドTとを、その相対的な移動軌跡が、例えば中心から外周方向に向けて螺旋を描くように、或いは、外周から中心に向けて螺旋を描くように、相対移動させることによって、凹球面形状の補修領域R内を補修材で埋め込むことができる。
【0068】
この態様によっても、レーザ加工ヘッドTら照射されるレーザ光を、常に、加工面に対して垂直に照射することができ、当該加工面に十分な照射量のレーザ光を照射することができる。そして、このようにして、十分な照射量のレーザ光が照射されることで、凹曲面表層の基材を十分に溶融させることができるとともに、溶融した基材と粉末材料に由来する補修材とを十分に融合させることができ、これにより、両者を十分に強い強度で結合することができる。
【0069】
繰り返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 工作機械
2 ベッド
10 主軸
20 揺動テーブル機構
24 テーブル
回転軸
N 欠損部
R 補修領域
工具
レーザ加工ヘッド
W 補修対象物品(ワーク)

【要約】      (修正有)
【課題】従来に比べ、補修対象物品である基材に対して、補修材をより強固に結合させることができる補修方法を提供する。
【解決手段】補修領域Rを除去加工により除去して凹状に形成する除去工程と、レーザヘッドTからレーザ光を照射するとともに、レーザ光の照射位置に対して設定された位置に粉末材料を供給して、粉末材料を溶融しながら積層する付加加工により、凹状に形成された補修領域R内を肉盛りする工程とを実行する。除去工程では、補修領域Rを、水平な第1軸方向に沿った溝状の凹部に形成し、少なくとも、第1軸方向の両縁部を所定の曲率を有する凹曲面に形成する。肉盛り工程では、レーザヘッドTから鉛直方向にレーザ光を照射し、少なくとも凹曲面に付加加工を施す際には、レーザヘッドTと加工面との距離が一定となるように、凹曲面の曲率中心Aを中心に、レーザヘッドTに対して物品Wを揺動させる。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16