(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220512BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220512BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220512BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220512BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20220512BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220512BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B27/00 L
C09J7/38
C09J201/00
C09J133/00
C09J7/22
H05B33/14 A
H05B33/02
(21)【出願番号】P 2021527443
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2020018697
(87)【国際公開番号】W WO2020261775
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2019121134
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】仲野 武史
(72)【発明者】
【氏名】設樂 浩司
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/204154(WO,A1)
【文献】特開2016-080830(JP,A)
【文献】特開2003-017822(JP,A)
【文献】国際公開第2018/096858(WO,A1)
【文献】特開2018-027996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 7/00-7/40
C09J 201/00
C09J 133/00
H01L 51/50
H05B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)をこの順に有する、
5層の積層体であって、
該樹脂フィルム(2)と該粘着剤層(2)が直接に積層されてなり、
該樹脂フィルム(1)は、厚みが20μm~80μmのセパレータであり、
該粘着剤層(1)は、厚みが5μm~30μmのアクリル系粘着剤であり、
該樹脂フィルム(2)は、厚みが20μm~80μmのポリイミド系樹脂から構成されるプラスチックフィルムであり、
該粘着剤層(2)は、厚みが3μm~24μmのアクリル系粘着剤であり、
該樹脂フィルム(3)は、厚みが40μm~80μmのポリエステル系樹脂から構成されるプラスチックフィルムであり、
該樹脂フィルム(2)の、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)が、0.1以下であり、
50mm×150mmのサイズに切り出したサンプルを温度23℃、湿度50%RHの環境下で24時間放置した後に測定した長辺カール値が、2.20mm以下である、
積層体。
【請求項2】
温度23℃、湿度50%RHの環境下で、50mm×50mmの樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)からなる積層体を、150mm×75mmの粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)からなる積層体(SPV)の中心部に貼り付けた状態において、3インチの巻き芯に沿わせて固定した際の、SPV浮き値が、7.0mm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記樹脂フィルム(2)の、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)と歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)との差(tanδ(0.7%)-tanδ(0.1%))が、0.05以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記樹脂フィルム(2)の、温度23℃におけるヤング率が、6.0×10
7Pa以上である、請求項1から3までのいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記粘着剤層(1)の、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下における、引張速度300mm/分、180度ピールでの、ガラスに対する粘着力(1)が、前記粘着剤層(2)の、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下における、引張速度300mm/分、180度ピールでの、ガラスに対する粘着力(2)よりも大きい、請求項1から4までのいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記粘着力(1)が1N/25mm以上である、請求項1から5までのいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記粘着力(2)が1N/25mm未満である、請求項1から6までのいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
全光線透過率が20%以上である、請求項1から
7までのいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
ヘイズが20%以下である、請求項1から
8までのいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
フォルダブル部材への貼り付け用である、請求項1から
9までのいずれかに記載の積層体。
【請求項11】
前記フォルダブル部材がOLEDである、請求項
10に記載の積層体。
【請求項12】
ローラブル部材への貼り付け用である、請求項1から
9までのいずれかに記載の積層体。
【請求項13】
前記ローラブル部材がOLEDである、請求項
12に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層体に関する。好ましくは、本発明は、フォルダブル部材やローラブル部材への貼り付け用として好適な積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着フィルムは、様々な形状の部材の補強や表面保護等に用いられている。
【0003】
例えば、半導体素子の基板(例えば、TFT基板など)に集積回路(IC)やフレキシブルプリント回路基板(FPC)を接合する場合、通常、異方性導電フィルム(ACF)によって熱圧着を行う。このような熱圧着を行う際に、予め、半導体素子の基板の裏側に粘着フィルムを貼り合せて補強しておく場合がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、近年開発が進みつつあるフレキシブルデバイスやローラブルデバイスの製造方法としては、一般的には、ガラス等の支持基板上に、剥離層とフレキシブルあるいはローラブルなフィルム基板を形成し、そのフィルム基板上にTFT基板、さらにその上に、有機EL層を形成する。そして、支持基板を剥離し、フレキシブルデバイスやローラブルデバイスを製造する。ところが、フレキシブル表示層やローラブル表示層は非常に薄いため、取扱い等によってデバイスに不具合が生じる。このため、裏側に粘着フィルムを貼り合せて補強しておく場合がある(例えば、特許文献2)。
【0005】
半導体素子の基板やフレキシブルデバイスやローラブルデバイスは、繰り返し屈曲される場合があり、基板の裏側に貼り合せた粘着フィルムの屈曲特性が悪いと、屈曲後の回復性が悪化したり、最悪の場合には、繰り返し屈曲によって破断してしまったりする場合がある。特に、可動屈曲部に粘着フィルムを貼り合わせた場合、屈曲が頻繁に繰り返されるため、可動屈曲部上において、粘着フィルムに折れ跡(いわゆる「クセ」)が付いた状態になってしまう。
【0006】
上記のような折れ痕を抑制する手段として、粘着フィルムの基材に耐屈曲性に優れた材料を用いることが考えられる。例えば、応力印加/引張によっても変形が起きにくい高弾性な性質と、塑性変形が起こりにくく変形により生じた歪を緩和しないための低tanδの両立が、折れ痕の抑制や形状復元性に効果を発揮し得ると考えられる。このため、屈曲が頻繁に繰り返されるような粘着フィルムの基材には、高弾性で低tanδの材料を用いることが効果的であると考えられる。ところが、このような材料は、高弾性で低tanδであるがゆえに、搬送時や積層保管時の擦れなどによってキズがつきやすいという問題がある。このようなキズは、被着体に貼り合わせた後の検査性低下や表示層の外観不良などに繋がり得る。
【0007】
耐屈曲性に優れた基材を有する粘着フィルムの傷つきを防止するために、基材の背面に保護フィルム(SPV)を貼り合わせる方法が考えられる。しかしながら、粘着フィルムが有する基材の剛性のために、SPVが有する粘着剤の粘着力が適切でないと、搬送時やハンドリング時に浮きが生じるという問題がある。また、保護フィルムのコシが小さいと、剛性の高い粘着フィルムの製造時に生じる微小なカールなどを調整することが困難になるという問題があり、反面、保護フィルムのコシが強いと、浮きが生じやすくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5600039号公報
【文献】特許第6376271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、カールの抑制効果に優れ、保護フィルムの浮きが生じにくい、粘着フィルムの基材の背面に保護フィルムが貼り合わせられた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態による積層体は、
樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)をこの順に有する、5層以上の積層体であって、
該樹脂フィルム(2)と該粘着剤層(2)が直接に積層されてなり、
50mm×150mmのサイズに切り出したサンプルを温度23℃、湿度50%RHの環境下で24時間放置した後に測定した長辺カール値が、2.20mm以下である。
【0011】
一つの実施形態においては、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、50mm×50mmの樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)からなる積層体を、150mm×75mmの粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)からなる積層体(SPV)の中心部に貼り付けた状態において、3インチの巻き芯に沿わせて固定した際の、SPV浮き値が、7.0mm以下である。
【0012】
一つの実施形態においては、上記樹脂フィルム(2)の、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)が、0.1以下である。
【0013】
一つの実施形態においては、上記樹脂フィルム(2)の、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)と歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)との差(tanδ(0.7%)-tanδ(0.1%))が、0.05以下である。
【0014】
一つの実施形態においては、上記樹脂フィルム(2)の、温度23℃におけるヤング率が、6.0×107Pa以上である。
【0015】
一つの実施形態においては、上記粘着剤層(1)の、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下における、引張速度300mm/分、180度ピールでの、ガラスに対する粘着力(1)が、上記粘着剤層(2)の、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下における、引張速度300mm/分、180度ピールでの、ガラスに対する粘着力(2)よりも大きい。
【0016】
一つの実施形態においては、上記粘着力(1)が1N/25mm以上である。
【0017】
一つの実施形態においては、上記粘着力(2)が1N/25mm未満である。
【0018】
一つの実施形態においては、上記粘着剤層(1)がアクリル系粘着剤を含む。
【0019】
一つの実施形態においては、上記粘着剤層(2)がアクリル系粘着剤を含む。
【0020】
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による積層体は、全光線透過率が20%以上である。
【0021】
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による積層体は、ヘイズが20%以下である。
【0022】
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による積層体は、フォルダブル部材への貼り付け用である。
【0023】
一つの実施形態においては、上記フォルダブル部材がOLEDである。
【0024】
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による積層体は、ローラブル部材への貼り付け用である。
【0025】
一つの実施形態においては、上記ローラブル部材がOLEDである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、カールの抑制効果に優れ、保護フィルムの浮きが生じにくい、粘着フィルムの基材の背面に保護フィルムが貼り合わせられた積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の積層体の一つの実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書中で「重量」との表現がある場合は、重さを示すSI系単位として慣用されている「質量」と読み替えてもよい。
【0029】
本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。
【0030】
≪≪1.積層体≫≫
本発明の実施形態による積層体は、樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)をこの順に有する、5層以上の積層体であって、該樹脂フィルム(2)と該粘着剤層(2)が直接に積層されてなる。
【0031】
本発明の実施形態による積層体は、樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)をこの順に有し、該樹脂フィルム(2)と該粘着剤層(2)が直接に積層されてなる限り、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の層を有していてもよい。
【0032】
本発明の実施形態による積層体の積層数は、上記の他の層の数により、好ましくは5層~10層であり、より好ましくは5層~8層であり、さらに好ましくは5層~7層であり、特に好ましくは5層~6層であり、最も好ましくは5層である。
【0033】
本発明の積層体の一つの実施形態は、
図1に示すように、積層体100において、樹脂フィルム(1)10、粘着剤層(1)20、樹脂フィルム(2)30、粘着剤層(2)40、樹脂フィルム(3)50がこの順に直接に積層されてなる。
【0034】
図1に示す本発明の積層体の一つの実施形態において、樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)の積層体部分は、表面保護フィルムや補強用フィルムとなり得る。この場合、樹脂フィルム(1)はセパレータとなり得る。
【0035】
図1に示す本発明の積層体の一つの実施形態において、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)の積層体部分は、キャリアシートとなり得る。キャリアシートは表面保護フィルムとしても扱われ得る。
【0036】
本発明の実施形態による積層体において、樹脂フィルム(1)は、その少なくとも一方の面に離型層を有していてもよい。
【0037】
本発明の実施形態による積層体において、樹脂フィルム(1)は、その少なくとも一方の面に帯電防止層を有していてもよい。
【0038】
本発明の実施形態による積層体において、樹脂フィルム(2)は、その少なくとも一方の面に帯電防止層を有していてもよい。
【0039】
本発明の実施形態による積層体において、樹脂フィルム(3)は、その少なくとも一方の面に帯電防止層を有していてもよい。
【0040】
本発明の実施形態による積層体において、粘着剤層(1)は、導電成分を含んでいてもよい。
【0041】
本発明の実施形態による積層体において、粘着剤層(2)は、導電成分を含んでいてもよい。
【0042】
本発明の実施形態による積層体は、本発明の効果を発現させ得る点で、50mm×150mmのサイズに切り出したサンプルを温度23℃、湿度50%RHの環境下で24時間放置した後に測定した長辺カール値が、好ましくは2.20mm以下であり、より好ましくは2.00mm以下であり、さらに好ましくは1.80mm以下であり、さらに好ましくは1.60mm以下であり、さらに好ましくは1.40mm以下であり、さらに好ましくは1.20mm以下であり、さらに好ましくは1.00mm以下であり、さらに好ましくは0.80mm以下であり、さらに好ましくは0.60mm以下であり、特に好ましくは0.40mm以下であり、最も好ましくは0.20mm以下である。
【0043】
本発明の実施形態による積層体は、本発明の効果をより発現させ得る点で、50mm×150mmのサイズに切り出したサンプルを温度23℃、湿度50%RHの環境下で24時間放置した後、さらに温度80℃の環境下で1時間放置し、温度23℃、湿度50%RHの環境に戻して1時間放置した後に測定した長辺カール値が、好ましくは3.10mm以下であり、より好ましくは2.70mm以下であり、さらに好ましくは2.50mm以下であり、さらに好ましくは2.30mm以下であり、さらに好ましくは2.00mm以下であり、さらに好ましくは1.70mm以下であり、さらに好ましくは1.50mm以下であり、さらに好ましくは1.30mm以下であり、さらに好ましくは1.00mm以下であり、さらに好ましくは0.70mm以下であり、特に好ましくは0.50mm以下であり、最も好ましくは0.30mm以下である。
【0044】
本発明の実施形態による積層体は、本発明の効果をより発現させ得る点で、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、50mm×50mmの樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)からなる積層体を、150mm×75mmの粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)からなる積層体(SPV)の中心部に貼り付けた状態において、3インチの巻き芯に沿わせて固定した際の、SPV浮き値が、好ましくは7.0mm以下であり、より好ましくは5.0mm以下であり、さらに好ましくは4.0mm以下であり、特に好ましくは3.0mm以下であり、最も好ましくは2.5mm以下である。
【0045】
本発明の実施形態による積層体は、樹脂フィルム(2)の、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)が、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.09以下であり、さらに好ましくは0.08以下であり、特に好ましくは0.07以下であり、最も好ましくは0.06以下である。樹脂フィルム(2)の、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)が、上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。
【0046】
樹脂フィルム(2)の、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)は、樹脂フィルム(2)を大きく屈曲させた際の損失正接を示す指標である。本発明を完成させるに至っては、この値が上記範囲内にあれば本発明の効果がより発現し得ることを、種々の実験データに基づいて見出した。粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)の測定方法については、後に詳述する。
【0047】
本発明の実施形態による積層体は、樹脂フィルム(2)の、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)が、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.08以下であり、さらに好ましくは0.06以下であり、特に好ましくは0.05以下であり、最も好ましくは0.04以下である。樹脂フィルム(2)の、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)が、上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。
【0048】
樹脂フィルム(2)の、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)は、樹脂フィルム(2)を小さく屈曲させた際の損失正接を示す指標である。本発明を完成させるに至っては、この値が上記範囲内にあれば本発明の効果がより発現し得ることを、種々の実験データに基づいて見出した。粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)の測定方法については、後に詳述する。
【0049】
本発明の実施形態による積層体は、樹脂フィルム(2)の、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)と歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)との差(tanδ(0.7%)-tanδ(0.1%))が、好ましくは0.05以下であり、より好ましくは0.04以下であり、さらに好ましくは0.03以下であり、特に好ましくは0.02以下であり、最も好ましくは0.01以下である。樹脂フィルム(2)の、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)と歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)との差(tanδ(0.7%)-tanδ(0.1%))が、上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。
【0050】
樹脂フィルム(2)の、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)と歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)との差(tanδ(0.7%)-tanδ(0.1%))は、樹脂フィルム(2)を大きく屈曲させた際の損失正接と樹脂フィルム(2)を小さく屈曲させた際の損失正接の差を示す指標である。本発明を完成させるに至っては、この値が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得ることを、種々の実験データに基づいて見出した。
【0051】
本発明の実施形態による積層体は、樹脂フィルム(2)の、温度23℃におけるヤング率が、好ましくは6.0×107Pa以上であり、より好ましくは1.0×108Pa~1.0×1011Paであり、さらに好ましくは1.0×109Pa~1.0×1010Paであり、特に好ましくは1.5×109Pa~9.0×109Paであり、最も好ましくは2.0×109Pa~8.0×109Paである。樹脂フィルム(2)の、温度23℃におけるヤング率が、上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。
【0052】
本発明の実施形態による積層体は、粘着剤層(1)の、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下における、引張速度300mm/分、180度ピールでの、ガラスに対する粘着力(1)が、好ましくは、粘着剤層(2)の、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下における、引張速度300mm/分、180度ピールでの、ガラスに対する粘着力(2)よりも大きい。すなわち、好ましくは、粘着力(1)>粘着力(2)である。粘着力(1)>粘着力(2)であることにより、本発明の効果がより発現し得る。上記粘着力の測定方法については後述する。
【0053】
本発明の実施形態による積層体は、本発明の効果をより発現させ得る点で、粘着剤層(1)の、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下における、引張速度300mm/分、180度ピールでの、ガラスに対する粘着力(1)が、好ましくは1N/25mm以上であり、より好ましくは2N/25mm~40N/25mmであり、さらに好ましくは5N/25mm~30N/25mmであり、特に好ましくは8N/25mm~25N/25mmであり、最も好ましくは8N/25mm~20N/25mmである。
【0054】
本発明の実施形態による積層体は、本発明の効果をより発現させ得る点で、粘着剤層(2)の、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下における、引張速度300mm/分、180度ピールでの、ガラスに対する粘着力(2)が、好ましくは1N/25mm未満であり、より好ましくは0.02N/25mm~0.50N/25mmであり、さらに好ましくは0.02N/25mm~0.10N/25mmであり、特に好ましくは0.03N/25mm~0.08N/25mmであり、最も好ましくは0.04N/25mm~0.08N/25mmである。
【0055】
本発明の実施形態による積層体は、全光線透過率が、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%~100%であり、さらに好ましくは50%~100%であり、特に好ましくは83%~100%であり、最も好ましくは85%~100%である。上記全光線透過率の測定方法については後述する。
【0056】
本発明の実施形態による積層体は、ヘイズが、好ましくは20%以下であり、より好ましくは0%~20%であり、さらに好ましくは0%~15%であり、特に好ましくは0%~12%であり、最も好ましくは0%~10%である。上記ヘイズの測定方法については後述する。
【0057】
本発明の実施形態による積層体は、各種用途に採用し得る。本発明の効果をより効果的に活用できる点で、本発明の実施形態による積層体は、フォルダブル部材やローラブル部材への貼り付け用であることが好ましい。この場合、フォルダブル部材やローラブル部材の代表的な例は、OLEDである。
【0058】
≪1-1.樹脂フィルム(1)≫
樹脂フィルム(1)は、代表的には、セパレータとして用いられる。
【0059】
樹脂フィルム(1)の厚みとしては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは1μm~300μmであり、より好ましくは10μm~200μmであり、さらに好ましくは20μm~150μmであり、さらに好ましくは35μm~100μmであり、特に好ましくは50μm~80μmであり、最も好ましくは55μm~80μmである。樹脂フィルム(1)の厚みが上記範囲に比べて小さすぎると、カールの抑制効果が低下するおそれがある。樹脂フィルム(1)の厚みが上記範囲に比べて大きすぎると、屈曲時に保護フィルムの浮きが起こりやすくなるおそれがある。
【0060】
樹脂フィルム(1)は、樹脂基材フィルム(1a)を含む。
【0061】
樹脂基材フィルム(1a)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂から構成されるプラスチックフィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα-オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂から構成されるプラスチックフィルム;ポリ塩化ビニル(PVC)から構成されるプラスチックフィルム;酢酸ビニル系樹脂から構成されるプラスチックフィルム;ポリカーボネート(PC)から構成されるプラスチックフィルム;ポリフェニレンスルフィド(PPS)から構成されるプラスチックフィルム;ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂から構成されるプラスチックフィルム;ポリイミド系樹脂から構成されるプラスチックフィルム;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から構成されるプラスチックフィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂から構成されるプラスチックフィルム;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン-フッ化ビニリデン共重合体などのフッ素系樹脂などから構成されるプラスチックフィルム;などが挙げられる。
【0062】
樹脂基材フィルム(1a)は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。樹脂基材フィルム(1a)は、延伸されたものであってもよい。
【0063】
樹脂基材フィルム(1a)は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理、下塗り剤によるコーティング処理などが挙げられる。
【0064】
樹脂基材フィルム(1a)には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれていてもよい。
【0065】
樹脂フィルム(1)は、粘着剤層(1)からの剥離性を高めるため、離型層(1b)を有していてもよい。樹脂フィルム(1)が離型層(1b)を有する場合、離型層(1b)の側が、粘着剤層(1)に直接に積層されてなる。
【0066】
離型層(1b)の形成材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な形成材料を採用し得る。このような形成材料としては、例えば、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキル系離型剤、脂肪酸アミド系離型剤などが挙げられる。これらのなかでも、シリコーン系離型剤が好ましい。離型層(1b)は、塗布層として形成することができる。
【0067】
離型層(1b)の厚みとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、好ましくは10nm~2000nmであり、より好ましくは10nm~1500nmであり、さらに好ましくは10nm~1000nmであり、特に好ましくは10nm~500nmである。
【0068】
離型層(1b)は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。
【0069】
シリコーン系離型層としては、例えば、付加反応型シリコーン樹脂が挙げられる。付加反応型シリコーン樹脂としては、具体的には、例えば、信越化学工業製のKS-774、KS-775、KS-778、KS-779H、KS-847H、KS-847T;東芝シリコーン製のTPR-6700、TPR-6710、TPR-6721;東レ・ダウ・コーニング製のSD7220、SD7226;などが挙げられる。シリコーン系離型層の塗布量(乾燥後)は、好ましくは0.01g/m2~2g/m2であり、より好ましくは0.01g/m2~1g/m2であり、さらに好ましくは0.01g/m2~0.5g/m2である。
【0070】
離型層(1b)の形成は、例えば、上記の形成材料を、任意の適切な層上に、リバースグラビアコート、バーコート、ダイコート等、従来公知の塗布方式により塗布した後に、通常、120~200℃程度で熱処理を施すことにより硬化させることにより行うことができる。また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
【0071】
樹脂フィルム(1)は、帯電防止層(1c)を有していてもよい。
【0072】
帯電防止層(1c)の厚みとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、好ましくは1nm~1000nmであり、より好ましくは5nm~900nmであり、さらに好ましくは7.5nm~800nmであり、特に好ましくは10nm~700nmである。
【0073】
帯電防止層(1c)は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。
【0074】
帯電防止層(1c)としては、帯電防止効果を奏することができる層であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な帯電防止層を採用し得る。このような帯電防止層としては、好ましくは、導電性ポリマーを含む導電コート液を任意の適切な基材層上にコーティングして形成される帯電防止層である。具体的には、例えば、導電性ポリマーを含む導電コート液を樹脂基材フィルム(1a)上にコーティングして形成される帯電防止層である。具体的なコーティングの方法としては、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法などが挙げられる。
【0075】
導電性ポリマーとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な導電性ポリマーを採用し得る。このような導電性ポリマーとしては、例えば、π共役系導電性ポリマーにポリアニオンがドープされた導電性ポリマーなどが挙げられる。π共役系導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンなどの鎖状導電性ポリマーが挙げられる。ポリアニオンとしては、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリメタクリルカルボン酸などが挙げられる。導電性ポリマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0076】
樹脂フィルム(1)の一つの実施形態は、樹脂基材フィルム(1a)と離型層(1b)をこの順に含む。代表的には、この実施形態は、樹脂基材フィルム(1a)と離型層(1b)とからなる。
【0077】
樹脂フィルム(1)の一つの実施形態は、樹脂基材フィルム(1a)と帯電防止層(1c)と離型層(1b)をこの順に含む。代表的には、この実施形態は、樹脂基材フィルム(1a)と帯電防止層(1c)と離型層(1b)とからなる。
【0078】
樹脂フィルム(1)の別の一つの実施形態は、帯電防止層(1c)と樹脂基材フィルム(1a)と帯電防止層(1c)と離型層(1b)をこの順に含む。代表的には、この実施形態は、帯電防止層(1c)と樹脂基材フィルム(1a)と帯電防止層(1c)と離型層(1b)とからなる。
【0079】
≪1-2.粘着剤層(1)≫
粘着剤層(1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な粘着剤層を採用し得る。粘着剤層(1)は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。
【0080】
粘着剤層(1)の厚みは、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.5μm~150μmであり、より好ましくは1μm~100μmであり、さらに好ましくは3μm~80μmであり、特に好ましくは5μm~50μmであり、最も好ましくは5μm~30μmである。
【0081】
粘着剤層(1)は、好ましくは、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される。粘着剤層(1)は、本発明の効果をより発現させ得る点で、より好ましくは、アクリル系粘着剤である。
【0082】
粘着剤層(1)は、任意の適切な方法によって形成し得る。このような方法としては、例えば、粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物、ウレタン系粘着剤組成物、ゴム系粘着剤組成物、シリコーン系粘着剤組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種)を任意の適切な基材(例えば、樹脂フィルム(2))上に塗布し、必要に応じて加熱・乾燥を行い、必要に応じて硬化させて、該基材上において粘着剤層を形成する方法が挙げられる。このような塗布の方法としては、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター、ロールブラッシュコーターなどの方法が挙げられる。
【0083】
粘着剤層(1)は、導電成分を含んでいてもよい。導電成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0084】
<1-2-1.アクリル系粘着剤>
アクリル系粘着剤は、アクリル系粘着剤組成物(1)から形成される。
【0085】
アクリル系粘着剤組成物(1)は、アクリル系ポリマーを含む。
【0086】
アクリル系ポリマーは、アクリル系粘着剤の分野においていわゆるベースポリマーと称され得るものである。アクリル系ポリマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0087】
アクリル系粘着剤組成物(1)中のアクリル系ポリマーの含有割合は、固形分換算で、好ましくは60重量%~99.9重量%であり、より好ましくは65重量%~99.9重量%であり、さらに好ましくは70重量%~99.9重量%であり、特に好ましくは75重量%~99.9重量%であり、最も好ましくは80重量%~99.9重量%である。
【0088】
アクリル系ポリマーとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なアクリル系ポリマーを採用し得る。
【0089】
アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは30万~250万であり、より好ましくは35万~200万であり、さらに好ましくは40万~180万であり、特に好ましくは50万~150万である。
【0090】
アクリル系粘着剤組成物(1)は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤を用いることにより、アクリル系粘着剤の凝集力を向上でき、本発明の効果をより発現させ得る。架橋剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0091】
架橋剤としては、多官能イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、多官能イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1種(c成分)である。
【0092】
多官能イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2-エチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられる。多官能イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートHL」)、商品名「コロネートHX」(日本ポリウレタン工業株式会社)、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学株式会社製、商品名「タケネート110N」)などの市販品も挙げられる。
【0093】
エポキシ系架橋剤(多官能エポキシ化合物)としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。エポキシ系架橋剤としては、商品名「テトラッドC」(三菱ガス化学株式会社製)などの市販品も挙げられる。
【0094】
アクリル系粘着剤組成物(1)中の架橋剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有量を採用し得る。このような含有量としては、例えば、本発明の効果をより発現させ得る点で、アクリル系ポリマーの固形分(100重量部)に対して、好ましくは30重量部以下であり、より好ましくは0.05重量部~20重量部であり、さらに好ましくは0.1重量部~18重量部であり、特に好ましくは0.5重量部~15重量部であり、最も好ましくは0.5重量部~10重量部である。
【0095】
アクリル系粘着剤組成物(1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有し得る。このような他の成分としては、例えば、アクリル系ポリマー以外のポリマー成分、架橋促進剤、架橋触媒、シランカップリング剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、着色剤(顔料や染料など)、箔状物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤、導電剤、安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0096】
〔1-2-1-1.アクリル系ポリマーの好ましい実施形態(1)〕
アクリル系ポリマーの好ましい実施形態(1)としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、(a成分)アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(b成分)OH基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種、を含む組成物(A)から重合によって形成されるアクリル系ポリマー(A)である。
【0097】
アクリル系ポリマー(A)としては、本発明の効果をより一層発現させ得る点で、好ましくは、(a成分)として、アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(b成分)として、OH基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含まずに(メタ)アクリル酸を含む、組成物(A)から重合によって形成されるアクリル系ポリマー(A)であり、より好ましくは、(a成分)として、アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(b成分)として、OH基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含まずにアクリル酸を含む、組成物(A)から重合によって形成されるアクリル系ポリマー(A)である。
【0098】
(a成分)、(b成分)は、それぞれ、独立に、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0099】
アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a成分)としては、例えば、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルであり、より好ましくは、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルである。
【0100】
OH基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種(b成分)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどのOH基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸であり、より好ましくは、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸である。
【0101】
組成物(A)は、(a)成分および(b)成分以外の、共重合性モノマーを含んでいてもよい。共重合性モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような共重合性モノマーとしては、例えば、アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、これらの酸無水物(例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー)などのカルボキシル基含有モノマー(ただし、(メタ)アクリル酸を除く);(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;N-ビニル-2-ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルオキサゾールなどの複素環含有ビニル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン類やジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル;などが挙げられる。
【0102】
共重合性モノマーとしては、多官能性モノマーも採用し得る。多官能性モノマーとは、1分子中に2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーをいう。エチレン性不飽和基としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なエチレン性不飽和基を採用し得る。このようなエチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、アリルエーテル基(アリルオキシ基)などのラジカル重合性官能基が挙げられる。多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。このような多官能性モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0103】
共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルも採用し得る。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0104】
アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a成分)の含有量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、好ましくは30重量%以上であり、より好ましくは35重量%~99重量%であり、さらに好ましくは40重量%~98重量%であり、特に好ましくは50重量%~95重量%である。
【0105】
OH基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種(b成分)の含有量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは1重量%~30重量%であり、さらに好ましくは2重量%~20重量%であり、特に好ましくは3重量%~15重量%である。
【0106】
組成物(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有し得る。このような他の成分としては、例えば、重合開始剤、連鎖移動剤、溶剤などが挙げられる。これらの他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有量を採用し得る。
【0107】
重合開始剤は、重合反応の種類に応じて、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などを採用し得る。重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0108】
熱重合開始剤は、好ましくは、アクリル系ポリマーを溶液重合によって得る際に採用され得る。このような熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。これらの熱重合開始剤の中でも、特開2002-69411号公報に開示されたアゾ系開始剤が特に好ましい。このようなアゾ系重合開始剤は、重合開始剤の分解物が加熱発生ガス(アウトガス)の発生原因となる部分としてアクリル系ポリマー中に残留しにくい点で好ましい。アゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと称する場合がある)、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(以下、AMBNと称する場合がある)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリアン酸などが挙げられる。
【0109】
光重合開始剤は、好ましくは、アクリル系ポリマーを活性エネルギー線重合によって得る際に採用され得る。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等などが挙げられる。
【0110】
ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α-ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0111】
〔1-2-1-2.アクリル系ポリマーの好ましい実施形態(2)〕
アクリル系ポリマーの好ましい実施形態(2)としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルをモノマー成分として含む組成物(B)から重合によって形成されるアクリル系ポリマーであり、より好ましくは、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー成分として含む組成物(B)から重合によって形成されるアクリル系ポリマー(B)である。
【0112】
分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル(以下、「環含有(メタ)アクリル酸エステル」と称する場合がある)の環状構造(環)は、芳香族性環、非芳香族性環のいずれであってもよい。芳香族性環としては、例えば、芳香族性炭素環(例えば、ベンゼン環等の単環炭素環や、ナフタレン環等の縮合炭素環など)、各種の芳香族性複素環などが挙げられる。非芳香族性環としては、例えば、非芳香族性脂肪族環(非芳香族性脂環式環)(例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等のシクロアルカン環;シクロヘキセン環等のシクロアルケン環;など)、非芳香族性橋かけ環(例えば、ピナン、ピネン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン等の二環式炭化水素環;アダマンタン等の三環以上の脂肪族炭化水素環(橋かけ式炭化水素環)など)、非芳香族性複素環(例えば、エポキシ環、オキソラン環、オキセタン環など)、などが挙げられる。
【0113】
三環以上の脂肪族炭化水素環(三環以上の橋かけ式炭化水素環)としては、例えば、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、トリシクロペンタニル基、トリシクロペンテニル基などが挙げられる。
【0114】
すなわち、環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸イソボルニル等の二環式の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等の三環以上の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の(メタ)アクリル酸アリールオキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールアルキルエステル等の芳香族性環を有する(メタ)アクリル酸エステル;などが挙げられる。これらの中でも、環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、非芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステルであり、より好ましくは、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)、アクリル酸ジシクロペンタニル(DCPA)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)であり、さらに好ましくはアクリル酸ジシクロペンタニル(DCPA)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)である。
【0115】
環含有(メタ)アクリル酸エステルは、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0116】
環含有(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、アクリル系ポリマー(B)を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは20重量%~90重量%であり、さらに好ましくは30重量%~80重量%であり、特に好ましくは40重量%~70重量%である。
【0117】
直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等のアルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル(MMA)、(メタ)アクリル酸ラウリルが好ましい。
【0118】
直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0119】
直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、アクリル系ポリマー(B)を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは20重量%~90重量%であり、さらに好ましくは25重量%~80重量%であり、特に好ましくは30重量%~70重量%であり、最も好ましくは30重量%~60重量%である。
【0120】
組成物(B)は、環含有(メタ)アクリル酸エステル、直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の、共重合性モノマーを含んでいてもよい。共重合性モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、ビニルアルコール、アリルアルコール等のヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等のアミノ基含有モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート等のリン酸基含有モノマー;2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有モノマー;などが挙げられる。
【0121】
共重合性モノマーとしては、多官能性モノマーも採用し得る。多官能性モノマーとは、1分子中に2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーをいう。エチレン性不飽和基としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なエチレン性不飽和基を採用し得る。このようなエチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、アリルエーテル基(アリルオキシ基)などのラジカル重合性官能基が挙げられる。多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。このような多官能性モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0122】
組成物(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有し得る。このような他の成分としては、例えば、重合開始剤、連鎖移動剤、溶剤などが挙げられる。これらの他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有量を採用し得る。
【0123】
重合開始剤は、重合反応の種類に応じて、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などを採用し得る。重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0124】
熱重合開始剤、光重合開始剤(光開始剤)としては、〔1-2-1-1.アクリル系ポリマーの好ましい実施形態(1)〕の項における説明を援用し得る。
【0125】
<1-2-2.ウレタン系粘着剤>
ウレタン系粘着剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、特開2017-039859号公報などに記載の公知のウレタン系粘着剤など、任意の適切なウレタン系粘着剤を採用し得る。このようなウレタン系粘着剤としては、例えば、ウレタン系粘着剤組成物から形成されるウレタン系粘着剤であって、該ウレタン系粘着剤組成物が、ウレタンプレポリマーおよびポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種と架橋剤とを含むものである。ウレタン系粘着剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。ウレタン系粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な成分を含有し得る。
【0126】
<1-2-3.ゴム系粘着剤>
ゴム系粘着剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、特開2015-074771号公報などに記載の公知のゴム系粘着剤など、任意の適切なゴム系粘着剤を採用し得る。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。ゴム系粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な成分を含有し得る。
【0127】
<1-2-4.シリコーン系粘着剤>
シリコーン系粘着剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、特開2014-047280号公報などに記載の公知のシリコーン系粘着剤など、任意の適切なシリコーン系粘着剤を採用し得る。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。シリコーン系粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な成分を含有し得る。
【0128】
<1-2-5.導電成分>
粘着剤層(1)は導電成分を含んでいてもよい。代表的には、粘着剤層(1)の材料となる粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物、ウレタン系粘着剤組成物、ゴム系粘着剤組成物、シリコーン系粘着剤組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種)は、導電成分を含んでいてもよい。
【0129】
導電成分としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な導電成分を採用し得る。このような導電成分としては、好ましくは、イオン性液体、イオン伝導ポリマー、イオン伝導フィラー、電気伝導ポリマーから選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0130】
粘着剤組成物が導電成分を含んでいる場合において、ベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー、ポリオール、ウレタンプレポリマー、ゴム系ポリマー、シリコーン系ポリマー)と導電成分との割合としては、導電成分が、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.01重量部~10重量部であり、より好ましくは0.05重量部~9.0重量部であり、さらに好ましくは0.075重量部~8.0重量部であり、特に好ましくは0.1重量部~7.0重量部である。
【0131】
イオン性液体としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なイオン性液体を採用し得る。ここで、イオン性液体とは、25℃で液状を呈する溶融塩(イオン性化合物)を意味する。イオン性液体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0132】
このようなイオン性液体としては、好ましくは、フルオロ有機アニオンとオニウムカチオンから構成されるイオン性液体である。
【0133】
イオン性液体を構成し得るオニウムカチオンとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なオニウムカチオンを採用し得る。このようなオニウムカチオンとしては、好ましくは、窒素含有オニウムカチオン、硫黄含有オニウムカチオン、リン含有オニウムカチオンから選ばれる少なくとも1種である。
【0134】
イオン性液体を構成し得るオニウムカチオンとしては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、一般式(1)~(5)で表される構造を有するカチオンから選ばれる少なくとも1種である。
【化1】
【0135】
一般式(1)において、Raは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、RbおよびRcは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。ただし、窒素原子が2重結合を含む場合、Rcはない。
【0136】
一般式(2)において、Rdは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、Re、Rf、およびRgは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0137】
一般式(3)において、Rhは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、Ri、Rj、およびRkは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0138】
一般式(4)において、Zは、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子を表し、Rl、Rm、Rn、およびRoは、同一または異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。ただしZが硫黄原子の場合、Roはない。
【0139】
一般式(5)において、Xは、Li原子、Na原子、またはK原子を表す。
【0140】
一般式(1)で表されるカチオンとしては、例えば、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオンなどが挙げられる。
【0141】
一般式(1)で表されるカチオンの具体例としては、例えば、1-エチルピリジニウムカチオン、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-へキシルピリジニウムカチオン、1-エチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-へキシル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオン等のピリジニウムカチオン;1-エチル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-へキシルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘプチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-へキシルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-へプチルピロリジニウムカチオン等のピロリジニウムカチオン;1-メチル-1-エチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘキシルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-へプチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ヘキシルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-へプチルピペリジニウムカチオン、1-プロピル-1-ブチルピペリジニウムカチオン等のピペリジニウムカチオン;などが挙げられ、より好ましくは、1-へキシルピリジニウムカチオン、1-エチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムカチオンである。
【0142】
一般式(2)で表されるカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0143】
一般式(2)で表されるカチオンの具体例としては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-へキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムカチオンであり、より好ましくは、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-へキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオンである。
【0144】
一般式(3)で表されるカチオンとしては、例えば、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。
【0145】
一般式(3)で表されるカチオンの具体例としては、例えば、1-メチルピラゾリウムカチオン、3-メチルピラゾリウムカチオン、1-エチル-2-メチルピラゾリニウムカチオン、1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン等のピラゾリウムカチオン;1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリニウムカチオン、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリニウムカチオン、1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリニウムカチオン等のピラゾリニウムカチオン;などが挙げられる。
【0146】
一般式(4)で表されるカチオンとしては、例えば、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、上記アルキル基の一部がアルケニル基やアルコキシル基、さらにはエポキシ基に置換されたものなどが挙げられる。
【0147】
一般式(4)で表されるカチオンの具体例としては、例えば、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオンなどの非対称のテトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-プロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ブチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ノニルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N,N-ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-ブチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-ブチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-ブチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-ペンチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N,N-ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-エチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-ブチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N,N-ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジブチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジブチル-N-メチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N-メチル-N-エチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオンなどが挙げられ、より好ましくは、トリメチルプロピルアンモニウムカチオンである。
【0148】
イオン性液体を構成し得るフルオロ有機アニオンとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なフルオロ有機アニオンを採用し得る。このようなフルオロ有機アニオンは、完全にフッ素化(パーフルオロ化)されていてもよいし、部分的にフッ素化されていてもよい。
【0149】
このようなフルオロ有機アニオンとしては、例えば、パーフルオロアルキルスルホネート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドであり、より具体的には、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである。
【0150】
イオン性液体の具体例としては、上記カチオン成分と上記アニオン成分の組み合わせから適宜選択して用いられ得る。このようなイオン性液体の具体例としては、例えば、1-ヘキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムペンタフルオロエタンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムヘプタフルオロプロパンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムノナフルオロブタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘプタフルオロプロパンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドである。
【0151】
イオン性液体は、市販のものを使用してもよいが、下記のようにして合成することも可能である。イオン性液体の合成方法としては、目的とするイオン性液体が得られれば特に限定されないが、一般的には、文献「イオン性液体-開発の最前線と未来-」((株)シーエムシー出版発行)に記載されているような、ハロゲン化物法、水酸化物法、酸エステル法、錯形成法、および中和法などが用いられる。
【0152】
下記にハロゲン化物法、水酸化物法、酸エステル法、錯形成法、および中和法について、窒素含有オニウム塩を例にその合成方法について示すが、その他の硫黄含有オニウム塩、リン含有オニウム塩など、その他のイオン性液体についても同様の手法により得ることができる。
【0153】
ハロゲン化物法は、反応式(1)~(3)に示すような反応によって行われる方法である。まず3級アミンとハロゲン化アルキルと反応させてハロゲン化物を得る(反応式(1)、ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が用いられる)。
【0154】
得られたハロゲン化物を目的とするイオン性液体のアニオン構造(A-)を有する酸(HA)あるいは塩(MA、Mはアンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウムなど目的とするアニオンと塩を形成するカチオン)と反応させて目的とするイオン性液体(R4NA)が得られる。
【0155】
【0156】
水酸化物法は、反応式(4)~(8)に示すような反応によって行われる方法である。まずハロゲン化物(R4NX)をイオン交換膜法電解(反応式(4))、OH型イオン交換樹脂法(反応式(5))または酸化銀(Ag2O)との反応(反応式(6))で水酸化物(R4NOH)を得る(ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が用いられる)。
【0157】
得られた水酸化物について上記ハロゲン化法と同様に反応式(7)~(8)の反応を用いることにより、目的とするイオン性液体(R4NA)が得られる。
【0158】
【0159】
酸エステル法は、反応式(9)~(11)に示すような反応によって行われる方法である。まず3級アミン(R3N)を酸エステルと反応させて酸エステル物を得る(反応式(9)、酸エステルとしては、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、炭酸などの無機酸のエステルやメタンスルホン酸、メチルホスホン酸、ギ酸などの有機酸のエステルなどが用いられる)。
【0160】
得られた酸エステル物について上記ハロゲン化法と同様に反応式(10)~(11)の反応を用いることにより、目的とするイオン性液体(R4NA)が得られる。また、酸エステルとしてメチルトリフルオロメタンスルホネート、メチルトリフルオロアセテートなどを用いることにより、直接イオン性液体を得ることもできる。
【0161】
【0162】
中和法は、反応式(12)に示すような反応によって行われる方法である。3級アミンとCF3COOH,CF3SO3H,(CF3SO2)2NH、(CF3SO2)3CH、(C2F5SO2)2NHなどの有機酸とを反応させることにより得ることができる。
【0163】
【0164】
上記の反応式(1)~(12)に記載のRは、水素または炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0165】
イオン伝導ポリマーとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なイオン伝導ポリマーを採用し得る。このようなイオン伝導ポリマーとしては、例えば、4級アンモニウム塩基を有するモノマーを重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体;ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンイミン、アリルアミン系重合体等の導電性ポリマー;などが挙げられる。イオン伝導ポリマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0166】
イオン伝導フィラーとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なイオン伝導フィラーを採用し得る。このようなイオン伝導フィラーとしては、例えば、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)などが挙げられる。イオン伝導フィラーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0167】
電気伝導ポリマーとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な電気伝導ポリマーを採用し得る。このような電気伝導ポリマーとしては、例えば、(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)などが挙げられる。
【0168】
<1-2-6.他の成分>
粘着剤層(1)の材料となる粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物、ウレタン系粘着剤組成物、ゴム系粘着剤組成物、シリコーン系粘着剤組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種)は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有し得る。このような他の成分としては、例えば、他のポリマー成分、架橋促進剤、架橋触媒、シランカップリング剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、着色剤(顔料や染料など)、箔状物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤、導電剤、安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0169】
≪1-3.樹脂フィルム(2)≫
樹脂フィルム(2)の厚みとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは20μm~500μmであり、より好ましくは20μm~300μmであり、さらに好ましくは20μm~200μmであり、特に好ましくは20μm~100μmであり、最も好ましくは20μm~80μmである。
【0170】
樹脂フィルム(2)は、樹脂基材フィルム(2a)を含む。
【0171】
樹脂基材フィルム(2a)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂から構成されるプラスチックフィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα-オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂から構成されるプラスチックフィルム;ポリ塩化ビニル(PVC)から構成されるプラスチックフィルム;酢酸ビニル系樹脂から構成されるプラスチックフィルム;ポリカーボネート(PC)から構成されるプラスチックフィルム;ポリフェニレンスルフィド(PPS)から構成されるプラスチックフィルム;ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂から構成されるプラスチックフィルム;ポリイミド系樹脂から構成されるプラスチックフィルム;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から構成されるプラスチックフィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂から構成されるプラスチックフィルム;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン-フッ化ビニリデン共重合体などのフッ素系樹脂などから構成されるプラスチックフィルム;などが挙げられる。
【0172】
樹脂基材フィルム(2a)は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。樹脂基材フィルム(2a)は、延伸されたものであってもよい。
【0173】
樹脂基材フィルム(2a)は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理、下塗り剤によるコーティング処理などが挙げられる。
【0174】
樹脂基材フィルム(2a)には、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、任意の適切な添加剤が含まれていてもよい。
【0175】
樹脂フィルム(2)は、導電層(2b)を有していてもよい。導電層(2b)は、粘着剤層(1)と樹脂基材フィルム(2a)の間に配置され得る。
【0176】
導電層(2b)は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。
【0177】
導電層(2b)は、任意の適切な基材上に形成することによって設けることができる。このような基材としては、好ましくは、樹脂基材フィルム(2a)である。
【0178】
導電層(2b)は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法、あるいはこれらの組合せ法などの任意の適切な薄膜形成法により、任意の適切な基材(好ましくは、樹脂基材フィルム(2a))上に導電膜を形成する。これらの薄膜形成法の中でも、導電膜の形成速度や大面積膜の形成性、生産性などの点から、真空蒸着法やスパッタリング法が好ましい。
【0179】
導電膜を形成するための材料としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、錫、これらの合金等からなる金属系材料;酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化カドミウム、これらの混合物等からなる金属酸化物系材料;ヨウ化銅等からなる他の金属化合物;などが用いられる。
【0180】
導電層(2b)の厚みとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、例えば、金属系材料から形成される場合、好ましくは30Å~600Åであり、金属酸化物系材料から形成される場合、好ましくは80Å~5000Åである。
【0181】
導電層(2b)の表面抵抗値は、好ましくは1.0×1010Ω/□以下であり、より好ましくは1.0×109Ω/□以下であり、さらに好ましくは1.0×108Ω/□以下であり、特に好ましくは1.0×107Ω/□以下である。
【0182】
導電膜を任意の適切な基材(好ましくは、樹脂基材フィルム(2a))上に形成する際には、該基材(好ましくは、樹脂基材フィルム(2a))の表面に、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理、アンダーコート処理等の、任意の適切な前処理を施して、導電膜と該基材(好ましくは、樹脂基材フィルム(2a))の密着性を高めることもできる。
【0183】
樹脂フィルム(2)は、帯電防止層(2c)を有していてもよい。帯電防止層(2c)は、粘着剤層(1)と樹脂基材フィルム(2a)の間、および/または、樹脂基材フィルム(2a)と粘着剤層(2)の間に配置され得る。
【0184】
帯電防止層(2c)は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。
【0185】
帯電防止層(2c)の厚みとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、好ましくは1nm~1000nmであり、より好ましくは5nm~900nmであり、さらに好ましくは7.5nm~800nmであり、特に好ましくは10nm~700nmである。
【0186】
帯電防止層(2c)の表面抵抗値は、好ましくは1.0×1010Ω/□以下であり、より好ましくは8.0×109Ω/□以下であり、さらに好ましくは5.0×109Ω/□以下であり、特に好ましくは1.0×109Ω/□以下である。
【0187】
帯電防止層(2c)としては、帯電防止効果を奏することができる層であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な帯電防止層を採用し得る。このような帯電防止層としては、好ましくは、導電性ポリマーを含む導電コート液を任意の適切な基材層上にコーティングして形成される帯電防止層である。具体的には、例えば、導電性ポリマーを含む導電コート液を樹脂基材フィルム(2a)上にコーティングして形成される帯電防止層である。コーティング後は、必要に応じて乾燥させ、必要に応じて硬化処理(熱処理、紫外線処理など)を行う。具体的なコーティングの方法としては、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法などが挙げられる。
【0188】
導電性ポリマーを含む導電コート液としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な導電コート液を採用し得る。このような導電コート液は、好ましくは、導電性ポリマーとバインダと架橋剤と溶剤を含む。この溶剤は、帯電防止層(2c)を形成する過程で加熱等によって揮発や蒸発等により実質的になくなるので、帯電防止層(2c)は、好ましくは、導電性ポリマーとバインダと架橋剤を含む。
【0189】
溶剤としては、例えば、有機溶剤、水、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル類;n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等の脂肪族または脂環族アルコール類;アルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル)、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;などが挙げられる。溶剤として、好ましくは、水または水を主成分とする混合溶媒(例えば、水とエタノールとの混合溶媒)である。
【0190】
帯電防止層(2c)中の導電性ポリマーの含有割合は、好ましくは3重量%~80重量%であり、より好ましくは5重量%~60重量%である。
【0191】
導電性ポリマーとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な導電性ポリマーを採用し得る。このような導電性ポリマーとしては、例えば、π共役系導電性ポリマーにポリアニオンがドープされた導電性ポリマーなどが挙げられる。π共役系導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンなどの鎖状導電性ポリマーが挙げられる。ポリアニオンとしては、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリメタクリルカルボン酸などが挙げられる。
【0192】
導電性ポリマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0193】
帯電防止層(2c)中のバインダの含有割合は、好ましくは50重量%~95重量%であり、より好ましくは60重量%~90重量%である。
【0194】
導電コート液に含まれ得るバインダとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なバインダを採用し得る。バインダは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このようなバインダとしては、好ましくは、樹脂であり、より好ましくは、ポリエステル樹脂である。バインダに占めるポリエステル樹脂の割合は、好ましくは90重量%~100重量%であり、より好ましくは98重量%~100重量%である。
【0195】
ポリエステル樹脂は、ポリエステルを主成分(好ましくは50重量%を超え、より好ましくは75重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは実質的に100重量%を占める成分)として含むことが好ましい。
【0196】
ポリエステルとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリエステルを採用し得る。このようなポリエステルとしては、好ましくは、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸(例えば、ジカルボン酸化合物)およびその誘導体(例えば、多価カルボン酸の無水物、エステル化物、ハロゲン化物等)から選択される1種または2種以上の化合物(多価カルボン酸成分)と、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコール(例えば、ジオール)から選択される1種または2種以上の化合物(多価アルコール成分)とが縮合した構造を有することが好ましい。
【0197】
多価カルボン酸成分としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な多価カルボン酸を採用し得る。このような多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、ジフルオロマロン酸、アルキルマロン酸、コハク酸、テトラフルオロコハク酸、アルキルコハク酸、(±)-リンゴ酸、meso-酒石酸、イタコン酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、メチルフマル酸、アセチレンジカルボン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、メチルグルタル酸、グルタコン酸、アジピン酸、ジチオアジピン酸、メチルアジピン酸、ジメチルアジピン酸、テトラメチルアジピン酸、メチレンアジピン酸、ムコン酸、ガラクタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、パーフルオロスベリン酸、3,3,6,6-テトラメチルスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、パーフルオロセバシン酸、ブラシル酸、ドデシルジカルボン酸、トリデシルジカルボン酸、テトラデシルジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸類;シクロアルキルジカルボン酸(例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸)、1,4-(2-ノルボルネン)ジカルボン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸(ハイミック酸)、アダマンタンジカルボン酸、スピロヘプタンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸類;フタル酸、イソフタル酸、ジチオイソフタル酸、メチルイソフタル酸、ジメチルイソフタル酸、クロロイソフタル酸、ジクロロイソフタル酸、テレフタル酸、メチルテレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、クロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキソフルオレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニレンジカルボン酸、ジメチルビフェニレンジカルボン酸、4,4”-p-テレフェニレンジカルボン酸、4,4”-p-クワレルフェニルジカルボン酸、ビベンジルジカルボン酸、アゾベンゼンジカルボン酸、ホモフタル酸、フェニレン二酢酸、フェニレンジプロピオン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジプロピオン酸、ビフェニル二酢酸、ビフェニルジプロピオン酸、3,3'-[4,4’-(メチレンジ-p-ビフェニレン)]ジプロピオン酸、4,4’-ビベンジル二酢酸、3,3’(4,4’-ビベンジル)ジプロピオン酸、オキシジ-p-フェニレン二酢酸などの芳香族ジカルボン酸類;上記のいずれかの多価カルボン酸の酸無水物;上記のいずれかの多価カルボン酸のエステル(例えば、アルキルエステル、モノエステル、ジエステル等);上記のいずれかの多価カルボン酸に対応する酸ハロゲン化物(例えば、ジカルボン酸クロリド);などが挙げられる。
【0198】
多価カルボン酸成分としては、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類およびその酸無水物;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ハイミック酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸類およびその酸無水物;これらのジカルボン酸類の低級アルキルエステル(例えば、炭素原子数1~3のモノアルコールとのエステル);などが挙げられる。
【0199】
多価アルコール成分としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な多価アルコールを採用し得る。このような多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、キシリレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA等のジオール類;これらのジオール類のアルキレンオキサイド付加物(例えば、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等);などが挙げられる。
【0200】
ポリエステル樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として、好ましくは5×103~1.5×105であり、より好ましくは1×104~6×104である。
【0201】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃~120℃であり、より好ましくは10℃~80℃である。
【0202】
ポリエステル樹脂としては、例えば、市販の東洋紡社製の商品名「バイロナール」などを用いることができる。
【0203】
導電コート液は、本発明の効果を損なわない範囲で、バインダとして、ポリエステル樹脂以外の樹脂(例えば、アクリル樹脂、アクリルレタン樹脂、アクリルスチレン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、ポリシラザン樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂)をさらに含有し得る。
【0204】
導電コート液に含まれ得る架橋剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な架橋剤を採用し得る。架橋剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような架橋剤としては、好ましくは、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。なかでも好ましくは、メラミン系架橋剤である。
【0205】
帯電防止層(2c)中の架橋剤の含有割合は、好ましくは1重量%~30重量%であり、より好ましくは2重量%~20重量%である。
【0206】
帯電防止層(2c)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。
【0207】
≪1-4.粘着剤層(2)≫
粘着剤層(2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な粘着剤層を採用し得る。粘着剤層(2)は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。
【0208】
粘着剤層(2)の厚みは、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.5μm~150μmであり、より好ましくは1μm~100μmであり、さらに好ましくは2μm~80μmであり、さらに好ましくは3μm~50μmであり、さらに好ましくは5μm~24μmであり、さらに好ましくは8μm~22μmであり、特に好ましくは10μm~20μmであり、最も好ましくは12μm~18μmである。粘着剤層(2)の厚みが上記範囲にあれば、カール抑制効果をより発現し得る。
【0209】
粘着剤層(2)は、任意の適切な方法によって形成し得る。このような方法としては、例えば、粘着剤層(2)を構成する粘着剤を形成する粘着剤組成物を任意の適切な基材(例えば、樹脂フィルム(3))上に塗布し、必要に応じて加熱・乾燥を行い、必要に応じて硬化させて、該基材上において粘着剤層を形成する方法が挙げられる。このような塗布の方法としては、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター、ロールブラッシュコーターなどの方法が挙げられる。
【0210】
<1-4-1.アクリル系粘着剤>
粘着剤層(2)は、好ましくは、アクリル系粘着剤(2)から構成される。
【0211】
アクリル系粘着剤(2)は、アクリル系粘着剤組成物(2)から形成される。
【0212】
アクリル系粘着剤組成物(2)は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、アクリル系ポリマー(C)を含む。
【0213】
アクリル系ポリマー(C)は、アクリル系粘着剤の分野においていわゆるベースポリマーと称され得るものである。アクリル系ポリマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0214】
アクリル系粘着剤組成物(2)中のアクリル系ポリマー(C)の含有割合は、固形分換算で、好ましくは60重量%~99.9重量%であり、より好ましくは65重量%~99.9重量%であり、さらに好ましくは70重量%~99.9重量%であり、特に好ましくは75重量%~99.9重量%であり、最も好ましくは80重量%~99.9重量%である。
【0215】
アクリル系ポリマー(C)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なアクリル系ポリマーを採用し得る。
【0216】
アクリル系ポリマー(C)の重量平均分子量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは30万~250万であり、より好ましくは35万~200万であり、さらに好ましくは40万~180万であり、特に好ましくは50万~150万である。
【0217】
アクリル系粘着剤組成物(2)は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤を用いることにより、アクリル系粘着剤の凝集力を向上でき、本発明の効果をより発現させ得る。架橋剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0218】
架橋剤としては、<1-2-1.アクリル系粘着剤>の項における説明を援用し得る。
【0219】
アクリル系粘着剤組成物(2)中の架橋剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有量を採用し得る。このような含有量としては、例えば、本発明の効果をより発現させ得る点で、アクリル系ポリマー(C)の固形分(100重量部)に対して、好ましくは0.05重量部~20重量部であり、より好ましくは0.1重量部~18重量部であり、さらに好ましくは0.5重量部~15重量部であり、特に好ましくは0.5重量部~10重量部である。
【0220】
アクリル系粘着剤組成物(2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有し得る。このような他の成分としては、例えば、アクリル系ポリマー以外のポリマー成分、架橋促進剤、架橋触媒、シランカップリング剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、着色剤(顔料や染料など)、箔状物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤、導電剤、安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0221】
アクリル系ポリマー(C)としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、(a成分)アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(b成分)OH基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種、を含む組成物(C)から重合によって形成されるアクリル系ポリマー(C)である。(a成分)、(b成分)は、それぞれ、独立に、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0222】
アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a成分)としては、例えば、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルであり、より好ましくは、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルである。
【0223】
OH基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種(b成分)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどのOH基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸であり、より好ましくは、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸である。
【0224】
組成物(C)は、(a)成分および(b)成分以外の、共重合性モノマーを含んでいてもよい。共重合性モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような共重合性モノマーとしては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、これらの酸無水物(例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー)などのカルボキシル基含有モノマー(ただし、(メタ)アクリル酸を除く);(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;N-ビニル-2-ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルオキサゾールなどの複素環含有ビニル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン類やジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル;などが挙げられる。
【0225】
共重合性モノマーとしては、多官能性モノマーも採用し得る。多官能性モノマーとは、1分子中に2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーをいう。エチレン性不飽和基としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なエチレン性不飽和基を採用し得る。このようなエチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、アリルエーテル基(アリルオキシ基)などのラジカル重合性官能基が挙げられる。多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。このような多官能性モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0226】
共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルも採用し得る。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0227】
アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a成分)の含有量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、アクリル系ポリマー(C)を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、好ましくは30重量%以上であり、より好ましくは50重量%~99重量%であり、さらに好ましくは70重量%~98重量%であり、特に好ましくは90重量%~98重量%である。
【0228】
OH基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種(b成分)の含有量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、アクリル系ポリマー(C)を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは1重量%~30重量%であり、さらに好ましくは2重量%~20重量%であり、特に好ましくは3重量%~10重量%であり、最も好ましくは3重量%~6重量%である。
【0229】
組成物(C)は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有し得る。このような他の成分としては、例えば、重合開始剤、連鎖移動剤、溶剤などが挙げられる。これらの他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有量を採用し得る。
【0230】
重合開始剤は、重合反応の種類に応じて、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などを採用し得る。重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0231】
熱重合開始剤、光重合開始剤(光開始剤)としては、〔1-2-1-1.アクリル系ポリマーの好ましい実施形態(1)〕の項における説明を援用し得る。
【0232】
<1-4-2.導電成分>
粘着剤層(2)は導電成分を含んでいてもよい。導電成分については、<1-2-5.導電成分>の項における説明を援用し得る。
【0233】
<1-4-3.他の成分>
粘着剤層(2)の材料となる粘着剤組成物(好ましくは、アクリル系粘着剤組成物)は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有し得る。このような他の成分としては、例えば、他のポリマー成分、架橋促進剤、架橋触媒、シランカップリング剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、着色剤(顔料や染料など)、箔状物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤、導電剤、安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0234】
≪1-5.樹脂フィルム(3)≫
樹脂フィルム(3)の厚みは、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは10μm~300μmであり、より好ましくは20μm~200μmであり、さらに好ましくは30μm~150μmであり、さらに好ましくは35μm~100μmであり、さらに好ましくは40μm~80μmであり、特に好ましくは45μm~80μmであり、最も好ましくは50μm~80μmである。樹脂フィルム(3)の厚みが上記範囲にあれば、カール抑制効果をより発現し得る。樹脂フィルム(3)の厚みが上記範囲から外れると、カールの抑制効果が低下するおそれがあり、また、屈曲時に保護フィルムの浮きが起こりやすくなるおそれがある。
【0235】
樹脂フィルム(3)は、樹脂基材フィルム(3a)を含む。
【0236】
樹脂基材フィルム(3a)としては、≪1-3.樹脂フィルム(2)≫の項における樹脂基材フィルム(2a)についての説明を援用し得る。
【0237】
樹脂フィルム(3)は、導電層(3b)を有していてもよい。導電層(3b)は、粘着剤層(2)と樹脂基材フィルム(3a)の間に配置され得る。
【0238】
導電層(3b)は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。
【0239】
導電層(3b)としては、≪1-3.樹脂フィルム(2)≫の項における導電層(2b)についての説明を援用し得る。
【0240】
樹脂フィルム(3)は、帯電防止層(3c)を有していてもよい。帯電防止層(3c)は、粘着剤層(2)と樹脂基材フィルム(3a)の間、および/または、樹脂基材フィルム(3a)の粘着剤層(2)の反対側に配置され得る。
【0241】
帯電防止層(3c)は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。
【0242】
帯電防止層(3c)の厚みとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、好ましくは1nm~1000nmであり、より好ましくは5nm~900nmであり、さらに好ましくは7.5nm~800nmであり、特に好ましくは10nm~700nmである。
【0243】
帯電防止層(3c)としては、≪1-3.樹脂フィルム(2)≫の項における帯電防止層(2c)についての説明を援用し得る。
【0244】
帯電防止層(3c)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。
【0245】
≪≪2.積層体の製造方法≫≫
本発明の実施形態による積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法によって製造し得る。
【0246】
本発明の実施形態による積層体の製造方法の代表例として、本発明の実施形態による積層体が、樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)をこの順に有して、これらの構成要素からなる積層体である場合について説明する。
【0247】
本発明の実施形態による積層体の製造方法の一つの実施形態は、樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)をこの順に有して、これらの構成要素からなる積層体(I)と、粘着剤層(2)と樹脂フィルム(3)をこの順に有して、これらの構成要素からなる積層体(II)とを、それぞれ製造し、その後、積層体(I)の樹脂フィルム(2)の面と、積層体(II)の粘着剤層(2)の面とを貼り付ける。
【0248】
積層体(I)は、例えば、粘着剤層(1)を構成する粘着剤を形成する粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物、ウレタン系粘着剤組成物、ゴム系粘着剤組成物、シリコーン系粘着剤組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種)を樹脂フィルム(2)上に塗布し、必要に応じて加熱・乾燥を行い、必要に応じて硬化させて、該樹脂フィルム(2)上に該粘着剤層(1)を形成し、その後、該粘着剤層(1)の該樹脂フィルム(2)とは反対側の面に樹脂フィルム(1)(離型層(1b)を有しているときはその側)を貼り付けて製造し得る。
【0249】
積層体(II)は、例えば、粘着剤層(2)を構成する粘着剤を形成する粘着剤組成物を(好ましくは、アクリル系粘着剤組成物)を樹脂フィルム(3)上に塗布し、必要に応じて加熱・乾燥を行い、必要に応じて硬化させて、該樹脂フィルム(3)上に該粘着剤層(2)を形成する。なお、積層体(I)と積層体(II)を貼り付けるまでの間は、粘着剤層(2)の露出面を保護するために、任意の適切なセパレータ(例えば、樹脂フィルム(1)と同様のフィルム)を貼り付けておいてもよい。
【実施例】
【0250】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。なお、「部」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量部」を意味し、「%」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量%」を意味する。
【0251】
<重量平均分子量の測定>
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定した。具体的には、GPC測定装置として、商品名「HLC-8120GPC」(東ソー株式会社製)を用いて、下記の条件にて測定し、標準ポリスチレン換算値により算出した。
(分子量測定条件)
・サンプル濃度:0.2重量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:10μL
・カラム:商品名「TSKguardcolumn SuperHZ-H(1本)+TSKgel SuperHZM-H(2本)」(東ソー株式会社製)
・リファレンスカラム:商品名「TSKgel SuperH-RC(1本)」(東ソー株式会社製)
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流量:0.6mL/min
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度(測定温度):40℃
【0252】
<tanδ>
粘弾性測定装置「RSA-G2」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)にて、引張りモードで、サンプルサイズ幅5mm×距離15mm、Axial force 100gにて測定を行った。歪み掃引(Oscilation amplitude)モードにて、周波数は1Hz、測定温度は90℃、浸漬時間60秒、歪みの測定域を0.01%から1.0%までに設定し、その間の歪みでの測定を行った。各歪みでのtanδの値をグラフ化し、0.1%の歪みと0.7%の歪みのtanδをグラフから求めた。厚みについては、粘着フィルムに対して貯蔵弾性率・損失弾性率とも基材の剛性が大きく、粘着剤に関しては影響が無視できるものとして、粘着剤の厚みを除いた基材の厚みのみを入力して測定を行った。
tanδは下記の式にて求めた。
tanδ=損失弾性率/貯蔵弾性率
【0253】
<カール評価(温度23℃、湿度50%RH)>
樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)からなる積層体、および、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)からなる積層体をそれぞれ準備し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で24時間放置した。次いで、樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)からなる積層体を、上記二種の積層体をラミネーターにて貼り合わせて作製した。作製した積層体を50mm×150mmのサイズに切り出し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で24時間放置した後の長辺カール値をステンレス直定規にて測定した。樹脂フィルム(1)を上にしてサンプルを平らな実験台に置き、実験台からの四隅の高さを測定して平均した。
【0254】
<カール評価(温度80℃)>
上記<カール評価(温度23℃、湿度50%RH)>と同様の手順で樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)からなる積層体を作製し、50mm×150mmのサイズに切り出したサンプルを温度23℃、湿度50%RHの環境下で24時間放置した後、さらに温度80℃の環境下で1時間放置し、温度23℃、湿度50%RHの環境に戻して1時間放置した後に測定した長辺カール値をステンレス直定規にて測定した。樹脂フィルム(1)を上にしてサンプルを平らな実験台に置き、実験台からの四隅の高さを測定して平均した。
【0255】
<SPV浮き評価>
樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)からなる積層体、および、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)からなる積層体をそれぞれ準備し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で24時間放置した。次いで、50mm×50mmの樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)からなる積層体を150mm×75mmの粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)からなる積層体(SPV)の中心部に貼り付けた状態において、樹脂フィルム(1)が外側になるように3インチの巻き芯に沿わせて固定した際のSPV浮き値を、ステンレス直定規にて測定した。四辺の浮き値を測定して平均した。
【0256】
<SPV剥離評価>
樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)からなる積層体、および、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)からなる積層体をそれぞれ準備し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で24時間放置した。次いで、50mm×50mmの樹脂フィルム(1)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)からなる積層体を、150mm×75mmの粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)からなる積層体の中心部に貼り付けた状態のサンプルを準備し、樹脂フィルム(1)を剥離して粘着剤層(1)をガラス板(松浪硝子工業株式会社製、商品名:マイクロスライドガラスS)に、2.0kgローラー1往復により貼り付けた。次いで、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)を剥離し、その際に、粘着剤層(1)とガラス板が剥がれないかを確認した。
下記の基準で剥離評価を行った。
○:上記した操作時に粘着剤層(1)がガラス板から剥がれず、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)からなる積層体が剥離できた。
×:上記した操作時に粘着剤層(1)がガラス板から剥がれ、粘着剤層(2)、粘着剤層(1)、樹脂フィルム(2)からなる積層体が樹脂フィルム(3)からなる積層体に貼りついた状態であった。
【0257】
<ヘイズ、全光線透過率の測定>
ヘイズメーターHM-150((株)村上色彩技術研究所製)を使用し、JIS-K-7136に準拠し、ヘイズ(%)=(Td/Tt)×100(Td:拡散透過率、Tt:全光線透過率)により算出した。測定は、樹脂フィルム(1)、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(2)、粘着剤層(2)、樹脂フィルム(3)の積層体を用いて行い、光源側に樹脂フィルム(3)がくるようにサンプルを配置して測定した。なお、全光線透過率は、JIS-K-7316に準拠して測定した。
【0258】
<樹脂フィルム(2)のヤング率>
サンプル片を幅10mmに短冊状に切り出し、25℃の温度環境下で万能引張圧縮試験機(テンシロン)にて、上記短冊状のサンプル片をチャック間距離100mmにて長手方向に引っ張って測定し、得られたS-S(Strain-Strength)カーブよりヤング率を求めた。測定条件としては、引張速度が200mm/min、チャック間が50mmであった。S-Sカーブからヤング率を求める方法は、S-Sカーブのグラフを作成し、変位1mm~2mmの範囲においてグラフに接線(一次式)を引き、接線の傾斜から求めた。
【0259】
<粘着力(1)の測定>
樹脂フィルム(1)/粘着剤層(1)/樹脂フィルム(2)からなる積層体(I)を幅25mm、長さ150mmに切断して評価用サンプルを作製した。温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下において、作製した評価用サンプルから樹脂フィルム(1)を剥離し、ガラス板(松浪硝子工業株式会社製、商品名:マイクロスライドガラスS)に、2.0kgローラー1往復により貼り付けた。温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で30分間養生した後、万能引張試験機を用い、剥離角度180度、剥離速度300mm/分で剥離し、粘着力(1)を測定した。
【0260】
<粘着力(2)の測定>
セパレータ/粘着剤層(2)/樹脂フィルム(3)からなるセパレータ付きの積層体(II)を幅25mm、長さ150mmに切断して評価用サンプルを作製した。別途、<粘着力(1)の測定>の項目で説明した、積層体(I)から樹脂フィルム(1)を剥離した後にガラス板に張り付けた被着体を準備しておき、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下において、上記評価用サンプルからセパレータを剥離し、上記被着体に、2.0kgローラー1往復により貼り付けた。温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で30分間養生した後、万能引張試験機を用い、剥離角度180度、剥離速度300mm/分で剥離し、粘着力(2)を測定した。
【0261】
〔製造例1〕
セパレータとして、表面にシリコーン離型層が設けられた厚み25μm、50μm、75μmのPETフィルムを準備した。
【0262】
〔製造例2〕:粘着剤組成物Aの調製
モノマー成分としてのアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA):63重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP):15重量部、メタクリル酸メチル(MMA):9重量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA):13重量部、重合開始剤としての2,2’-アゾビスイソブチロニトリル:0.2重量部、および、重合溶媒としての酢酸エチル:233重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌して窒素置換を行った。このようにして重合系内の酸素を除去した後、60℃に昇温し、7時間反応させ、重量平均分子量(Mw)が120万のアクリル系ポリマーAの溶液である、粘着剤組成物Aを調製した。
【0263】
〔製造例3〕:粘着剤Aにより構成された粘着剤層Aの調製
製造例1で準備したセパレータのいずれかの離型層面に、製造例2で調製した粘着剤組成物Aを、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分間乾燥、エージングさせた。このようにして、粘着剤組成物Aから形成された粘着剤Aにより構成された厚み25μmの粘着剤層Aをセパレータ上に形成した。
【0264】
〔製造例4〕:粘着剤組成物Bの調製
<アクリルオリゴマーBの調製>
モノマー成分としてメタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA):60重量部およびメタクリル酸メチル(MMA):40重量部、連鎖移動剤としてα-チオグリセロール:3.5重量部、重合溶媒としてトルエン:100重量部を混合し、窒素雰囲気下にて70℃で1時間撹拌した。次に、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):0.2重量部を投入し、70℃で2時間反応させた後、80℃に昇温して2時間反応させた。その後、反応液を130℃に加熱して、トルエン、連鎖移動剤、および未反応モノマーを乾燥除去して、固形状のアクリルオリゴマーBを得た。アクリルオリゴマーBの重量平均分子量(Mw)は5100、ガラス転移温度(Tg)は130℃であった。
<プレポリマー組成物Bの調製>
プレポリマー形成用モノマー成分として、ラウリルアクリレート(LA):35重量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA):49重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA):7重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP):9重量部、および、光重合開始剤としてBASF製「イルガキュア184」:0.015重量部を配合し、紫外線を照射して重合を行い、プレポリマー組成物B(重合率=約10%)を得た。
<粘着剤組成物Bの調製>
上記のプレポリマー組成物B:100重量部に、後添加成分として、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA):0.07重量部、アクリルオリゴマーB:3重量部、および、シランカップリング剤(信越化学製、「KBM403」):0.3重量部を添加した後、これらを均一に混合して、粘着剤組成物Bを調製した。
【0265】
〔製造例5〕:粘着剤Bにより構成された粘着剤層Bの調製
製造例1で準備したセパレータのいずれかの離型層面に、製造例4で調製した粘着剤組成物Bを、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布して塗布層を形成した。この塗布層上に、カバーシートとして片面がシリコーン剥離処理された厚み75μmのPETフィルム(三菱ケミカル製、「ダイアホイルMRF75」)を貼り合わせた。この積層体に、カバーシート側から、ランプ直下の照射面における照射強度が5mW/cm2になるように位置調節したブラックライトにより、紫外線を照射して光硬化を行い、カバーシートを外し、粘着剤組成物Bから形成された粘着剤Bにより構成された厚み25μmの粘着剤層Bをセパレータ上に形成した。
【0266】
〔製造例6〕粘着剤組成物Cの製造
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、ブチルアクリレート(日本触媒社製):95重量部、アクリル酸(東亜合成社製):5重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業社製):0.2重量部、酢酸エチル:156重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を63℃付近に保って10時間重合反応を行い、重量平均分子量70万のアクリル系ポリマーCの溶液(40重量%)を調製した。調製したアクリル系ポリマーCの溶液に、アクリル系ポリマーCの溶液の固形分100重量部に対して、架橋剤としてTETRAD-C(三菱瓦斯化学社製)を固形分換算で6重量部を加えて、全体の固形分が20重量%となるように酢酸エチルで希釈し、ディスパーで攪拌し、粘着剤組成物Cを得た。
【0267】
〔製造例7〕:粘着剤Cにより構成された粘着剤層Cの調製
製造例1で準備したセパレータのいずれかの離型層面に、製造例6で調製した粘着剤組成物Cを、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分間乾燥、エージングさせた。このようにして、粘着剤組成物Cから形成された粘着剤Cにより構成された厚み25μmの粘着剤層Cをセパレータ上に形成した。
【0268】
〔製造例8〕粘着剤組成物Dの製造
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに2-エチルヘキシルアクリレート(日本触媒社製):100重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(東亜合成社製):4重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業社製):0.2重量部、酢酸エチル:156重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って8時間重合反応を行い、重量平均分子量55万のアクリル系ポリマーDの溶液(40重量%)を調製した。アクリル系ポリマーDの溶液に、アクリル系ポリマーDの溶液の固形分100重量部に対して、架橋剤としてコロネートHX(東ソー社製)を固形分換算で4重量部、架橋触媒としてエンビライザーOL-1(東京ファインケミカル社製)を固形分換算で0.01重量部を加えて、全体の固形分が25重量%となるように酢酸エチルで希釈し、ディスパーで攪拌し、粘着剤組成物Dを得た。
【0269】
〔製造例9〕粘着剤組成物Eの製造
多官能ポリオールとして、プレミノールS3011(旭硝子株式会社製、Mn=10000)を固形分換算で100重量部、架橋剤としてコロネートHX(日本ポリウレタン工業社製)を固形分換算で18重量部、架橋触媒としてナーセム第2鉄(日本化学産業社製)を固形分換算で0.04重量部、劣化防止剤としてIrganox1010(BASF社製)を固形分換算で0.5重量部を加えて、全体の固形分が35重量%となるように酢酸エチルで希釈し、ディスパーで攪拌し、ウレタン系樹脂を含む粘着剤組成物Eを得た。
【0270】
〔実施例1〕
<積層体(1-a)の製造>
樹脂フィルム(2)として、厚み50μmのポリイミド系基材(商品名「ユーピレックス-50S」、宇部興産株式会社製)を用意した。この樹脂フィルム(2)の一方の面に、製造例3で得られた粘着剤層A(セパレータとしてLT25Eを使用)を貼り合わせた。セパレータは、そのまま粘着剤層A上に残し、該粘着剤層Aの表面(粘着剤層面)の保護に使用した。得られた構造体を80℃のラミネータ(0.3MPa、速度0.5m/分)に1回通過させた後、50℃のオーブン中で1日間エージングした。このようにして、セパレータ(LT25E)/粘着剤層A/樹脂フィルム(2)(ユーピレックス-50S)の構成の積層体(1-a)を得た。
<積層体(1-b)の製造>
製造例6で得られた粘着剤組成物Cを、樹脂フィルム(3)としてポリエステル樹脂からなる「ルミラーS10」(厚み50μm、東レ社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが5μmとなるよう塗布し、乾燥温度130℃、乾燥時間30秒の条件でキュアーして乾燥した。このようにして、樹脂フィルム(3)(厚み50μm)上に粘着剤層C(厚み5μm)を作製した。次いで、粘着剤層Cの表面に、一方の面にシリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、セパレータ/粘着剤層C/樹脂フィルム(3)の構成の積層体(1-b)を得た。
<積層体(1)の製造>
得られた積層体(1-b)からセパレータを剥離し、露出した粘着剤層Cに、積層体(1-a)の樹脂フィルム(2)側を貼り付け、セパレータ(LT25E)(厚み25μm)/粘着剤層A(厚み25μm)/樹脂フィルム(2)(ユーピレックス-50S)(厚み50μm)/粘着剤層C(厚み5μm)/樹脂フィルム(3)(厚み50μm)の構成の積層体(1)を得た。
結果を表1に示した。
【0271】
〔実施例2~14〕
表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示した。
【0272】
〔比較例1、2〕
表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示した。
【0273】
【産業上の利用可能性】
【0274】
本発明の積層体は、光学部材や電子部材の製造工程などに好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0275】
樹脂フィルム(1) 10
粘着剤層(1) 20
樹脂フィルム(2) 30
粘着剤層(2) 40
樹脂フィルム(3) 50
積層体 100