(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】砂鋳型造型用添加剤、砂鋳型造型用組成物、砂鋳型の製造方法、及び砂鋳型
(51)【国際特許分類】
B22C 1/02 20060101AFI20220513BHJP
【FI】
B22C1/02 Z
(21)【出願番号】P 2021048156
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】善甫 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 知裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 春馬
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-241927(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107573005(CN,A)
【文献】特公昭47-026562(JP,B1)
【文献】特開2017-217660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00- 3/02
B22C 5/00- 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性界面活性剤(A)100質量部に対し、下記の無機アルカリ金属化合物(B)を0.01~2.00質量部の割合で含有
し、
前記イオン性界面活性剤(A)が、下記のアルキルスルホン酸金属塩(A1)、下記のアルキル硫酸金属塩(A2)及び下記のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)を含むものであることを特徴とする砂鋳型造型用添加剤。
アルキルスルホン酸金属塩(A1):アルキル基の炭素数が8~22であるアルキルスルホン酸金属塩
アルキル硫酸金属塩(A2):アルキル基の炭素数が8~22であるアルキル硫酸金属塩
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3):アルキル基の炭素数が8~16であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩
無機アルカリ金属化合物(B):塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一つ
【請求項2】
前記アルキルスルホン酸金属塩(A1)、前記アルキル硫酸金属塩(A2)及び前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)の含有割合の合計を100質量部とした場合に、前記アルキルスルホン酸金属塩(A1)を50~98質量部、前記アルキル硫酸金属塩(A2)を1~40質量部、及び前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)を1~40質量部の割合で含むものである
請求項1に記載の砂鋳型造型用添加剤。
【請求項3】
更に、下記のリチウム化合物(C)を含有する
請求項1又は2に記載の砂鋳型造型用添加剤。
リチウム化合物(C):ケイ酸リチウム、硫酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも一つ
【請求項4】
イオン性界面活性剤(A)100質量部に対し、下記の無機アルカリ金属化合物(B)を0.01~2.00質量部の割合で含有し、
更に、下記のリチウム化合物(C)を含有することを特徴とする砂鋳型造型用添加剤。
無機アルカリ金属化合物(B):塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一つ
リチウム化合物(C):ケイ酸リチウム、硫酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも一つ
【請求項5】
前記リチウム化合物(C)が、ケイ酸リチウムと、硫酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも一つと、を含むものである
請求項3又は4に記載の砂鋳型造型用添加剤。
【請求項6】
前記イオン性界面活性剤(A)100質量部に対し、前記リチウム化合物(C)を10~2000質量部の割合で含有する
請求項3から5のいずれか一項に記載の砂鋳型造型用添加剤。
【請求項7】
前記リチウム化合物(C)は少なくともケイ酸リチウムを含むものであり、
前記ケイ酸リチウムは、モル比(SiO
2/Li
2O)が3.0以上5.0以下である請求項
3から6のいずれか一項に記載の砂鋳型造型用添加剤。
【請求項8】
イオン性界面活性剤(A)100質量部に対し、下記の無機アルカリ金属化合物(B)を0.01~2.00質量部の割合で含有する砂鋳型造型用添加剤と、砂と、下記のケイ酸化合物(D)とを含有することを特徴とする砂鋳型造型用組成物。
無機アルカリ金属化合物(B):塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一つ
ケイ酸化合物(D):ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムから選ばれる少なくとも一つ
【請求項9】
前記イオン性界面活性剤(A)が、下記のアルキルスルホン酸金属塩(A1)、下記のアルキル硫酸金属塩(A2)及び下記のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)から選ばれる少なくとも1種を含むものである請求項8に記載の砂鋳型造型用組成物。
アルキルスルホン酸金属塩(A1):アルキル基の炭素数が8~22であるアルキルスルホン酸金属塩
アルキル硫酸金属塩(A2):アルキル基の炭素数が8~22であるアルキル硫酸金属塩
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3):アルキル基の炭素数が8~16であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩
【請求項10】
前記イオン性界面活性剤(A)が、前記アルキルスルホン酸金属塩(A1)、前記アルキル硫酸金属塩(A2)及び前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)を含むものである請求項9に記載の砂鋳型造型用組成物。
【請求項11】
前記イオン性界面活性剤(A)は、前記アルキルスルホン酸金属塩(A1)、前記アルキル硫酸金属塩(A2)及び前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)の含有割合の合計を100質量部とした場合に、前記アルキルスルホン酸金属塩(A1)を50~98質量部、前記アルキル硫酸金属塩(A2)を1~40質量部、及び前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)を1~40質量部の割合で含むものである請求項10に記載の砂鋳型造型用組成物。
【請求項12】
前記砂鋳型造型用添加剤が、更に、下記のリチウム化合物(C)を含有する請求項8から11のいずれか一項に記載の砂鋳型造型用組成物。
リチウム化合物(C):ケイ酸リチウム、硫酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも一つ
【請求項13】
前記リチウム化合物(C)が、ケイ酸リチウムと、硫酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも一つと、を含むものである請求項12に記載の砂鋳型造型用組成物。
【請求項14】
前記砂鋳型造型用添加剤は、前記イオン性界面活性剤(A)100質量部に対し、前記リチウム化合物(C)を10~2000質量部の割合で含有する請求項12又は13に記載の砂鋳型造型用組成物。
【請求項15】
前記リチウム化合物(C)は少なくともケイ酸リチウムを含むものであり、
前記ケイ酸リチウムは、モル比(SiO
2
/Li
2
O)が3.0以上5.0以下である請求項12から14のいずれか一項に記載の砂鋳型造型用組成物。
【請求項16】
前記ケイ酸化合物(D)100質量部に対し、前記砂鋳型造型用添加剤を2~100質量部の割合で含有する
請求項8から15のいずれか一項に記載の砂鋳型造型用組成物。
【請求項17】
請求項8から16のいずれか一項に記載の砂鋳型造型用組成物を成型する工程Aを含むことを特徴とする砂鋳型の製造方法。
【請求項18】
前記工程Aが
請求項8から16のいずれか一項に記載の砂鋳型造型用組成物を攪拌して発泡させる工程A1と、発泡させた前記砂鋳型造型用組成物を鋳型造型用空間に充填する工程A2と、充填された前記砂鋳型造型用組成物を固化させる工程A3とを含む工程である
請求項17に記載の砂鋳型の製造方法。
【請求項19】
請求項8から16のいずれか一項に記載の砂鋳型造型用組成物を調製する工程B1であって、前記砂鋳型造型用添加剤に、前記ケイ酸化合物(D)を加え、撹拌して発泡させ、次いで前記砂を加え
る工程B1と、
調製された前記砂鋳型造型用組成物を鋳型造型用空間に充填する工程B2と、
充填された前記砂鋳型造型用組成物を固化させる工程B3と
を含むことを特徴とする砂鋳型の製造方法。
【請求項20】
請求項8から16のいずれか一項に記載の砂鋳型造型用
組成物を含有することを特徴とする砂鋳型
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂鋳型造型用添加剤、砂鋳型造型用組成物、砂鋳型の製造方法、及び砂鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空部を有する鋳物の製造には崩壊性の砂鋳型が用いられている。また、内部構造が複雑な中空部を有する鋳物を製造する場合、鋳型の材料である組成物に高い充填性が求められるため、発泡剤を用いて組成物を発泡させて流動性を高めることが知られている。
【0003】
砂鋳型はアルカリ珪酸塩を粘結剤の主成分として用いられることが多いが、発泡させた組成物を用いた砂鋳型では一般的に耐湿性に劣り、吸湿によって強度が低下する。そのため、特定のリチウム塩や、アルカリ珪酸塩とイオン交換又はゲル化するイオン性化合物を耐湿剤として添加することにより、耐湿性を向上した組成物が提案されている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-217660号公報
【文献】特開2016-215221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、組成物に上述の耐湿剤を添加した場合、砂鋳型の耐湿性は向上するものの、組成物が発泡し難くなり流動性が低下する場合があった。そこで本発明は、発泡性に優れた砂鋳型造型用組成物が得られると共に、耐湿性に優れた砂鋳型が得られる砂鋳型造型用添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのための手段として、本発明は以下の手段を採る。
[1]イオン性界面活性剤(A)100質量部に対し、下記の無機アルカリ金属化合物(B)を0.01~2.00質量部の割合で含有し、
前記イオン性界面活性剤(A)が、下記のアルキルスルホン酸金属塩(A1)、下記のアルキル硫酸金属塩(A2)及び下記のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)を含むものであることを特徴とする砂鋳型造型用添加剤。
アルキルスルホン酸金属塩(A1):アルキル基の炭素数が8~22であるアルキルスルホン酸金属塩
アルキル硫酸金属塩(A2):アルキル基の炭素数が8~22であるアルキル硫酸金属塩
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3):アルキル基の炭素数が8~16であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩
無機アルカリ金属化合物(B):塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一つ
[2]前記アルキルスルホン酸金属塩(A1)、前記アルキル硫酸金属塩(A2)及び前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)の含有割合の合計を100質量部とした場合に、前記アルキルスルホン酸金属塩(A1)を50~98質量部、前記アルキル硫酸金属塩(A2)を1~40質量部、及び前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)を1~40質量部の割合で含むものである[1]に記載の砂鋳型造型用添加剤。
[3]更に、下記のリチウム化合物(C)を含有する[1]又は[2]に記載の砂鋳型造型用添加剤。
リチウム化合物(C):ケイ酸リチウム、硫酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも一つ
[4]イオン性界面活性剤(A)100質量部に対し、下記の無機アルカリ金属化合物(B)を0.01~2.00質量部の割合で含有し、
更に、下記のリチウム化合物(C)を含有することを特徴とする砂鋳型造型用添加剤。
無機アルカリ金属化合物(B):塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一つ
リチウム化合物(C):ケイ酸リチウム、硫酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも一つ
[5]前記リチウム化合物(C)が、ケイ酸リチウムと、硫酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも一つと、を含むものである[3]又は[4]に記載の砂鋳型造型用添加剤。
[6]前記イオン性界面活性剤(A)100質量部に対し、前記リチウム化合物(C)を10~2000質量部の割合で含有する[3]から[5]のいずれかに記載の砂鋳型造型用添加剤。
[7]前記リチウム化合物(C)は少なくともケイ酸リチウムを含むものであり、
前記ケイ酸リチウムは、モル比(SiO2/Li2O)が3.0以上5.0以下である[3]から[6]のいずれかに記載の砂鋳型造型用添加剤。
[8]イオン性界面活性剤(A)100質量部に対し、下記の無機アルカリ金属化合物(B)を0.01~2.00質量部の割合で含有する砂鋳型造型用添加剤と、砂と、下記のケイ酸化合物(D)とを含有することを特徴とする砂鋳型造型用組成物。
無機アルカリ金属化合物(B):塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一つ
ケイ酸化合物(D):ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムから選ばれる少なくとも一つ
[9]前記イオン性界面活性剤(A)が、下記のアルキルスルホン酸金属塩(A1)、下記のアルキル硫酸金属塩(A2)及び下記のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)から選ばれる少なくとも1種を含むものである[8]に記載の砂鋳型造型用組成物。
アルキルスルホン酸金属塩(A1):アルキル基の炭素数が8~22であるアルキルスルホン酸金属塩
アルキル硫酸金属塩(A2):アルキル基の炭素数が8~22であるアルキル硫酸金属塩
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3):アルキル基の炭素数が8~16であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩
[10]前記イオン性界面活性剤(A)が、前記アルキルスルホン酸金属塩(A1)、前記アルキル硫酸金属塩(A2)及び前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)を含むものである[9]に記載の砂鋳型造型用組成物。
[11]前記イオン性界面活性剤(A)は、前記アルキルスルホン酸金属塩(A1)、前記アルキル硫酸金属塩(A2)及び前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)の含有割合の合計を100質量部とした場合に、前記アルキルスルホン酸金属塩(A1)を50~98質量部、前記アルキル硫酸金属塩(A2)を1~40質量部、及び前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)を1~40質量部の割合で含むものである[10]に記載の砂鋳型造型用組成物。
[12]前記砂鋳型造型用添加剤が、更に、下記のリチウム化合物(C)を含有する[8]から[11]のいずれかに記載の砂鋳型造型用組成物。
リチウム化合物(C):ケイ酸リチウム、硫酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも一つ
[13]前記リチウム化合物(C)が、ケイ酸リチウムと、硫酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも一つと、を含むものである[12]に記載の砂鋳型造型用組成物。
[14]前記砂鋳型造型用添加剤は、前記イオン性界面活性剤(A)100質量部に対し、前記リチウム化合物(C)を10~2000質量部の割合で含有する[12]又は[13]に記載の砂鋳型造型用組成物。
[15]前記リチウム化合物(C)は少なくともケイ酸リチウムを含むものであり、
前記ケイ酸リチウムは、モル比(SiO
2
/Li
2
O)が3.0以上5.0以下である[12]から[14]のいずれかに記載の砂鋳型造型用組成物。
[16]前記ケイ酸化合物(D)100質量部に対し、前記砂鋳型造型用添加剤を2~100質量部の割合で含有する[8]から[15]のいずれかに記載の砂鋳型造型用組成物。
[17][8]から「16」のいずれかに記載の砂鋳型造型用組成物を成型する工程Aを含むことを特徴とする砂鋳型の製造方法。
[18]前記工程Aが[8]から[16]のいずれかに記載の砂鋳型造型用組成物を攪拌して発泡させる工程A1と、発泡させた前記砂鋳型造型用組成物を鋳型造型用空間に充填する工程A2と、充填された前記砂鋳型造型用組成物を固化させる工程A3とを含む工程である[17]に記載の砂鋳型の製造方法。
[19][8]から[16]のいずれかに記載の砂鋳型造型用組成物を調製する工程B1であって、前記砂鋳型造型用添加剤に、前記ケイ酸化合物(D)を加え、撹拌して発泡させ、次いで前記砂を加える工程B1と、
調製された前記砂鋳型造型用組成物を鋳型造型用空間に充填する工程B2と、
充填された前記砂鋳型造型用組成物を固化させる工程B3と
を含むことを特徴とする砂鋳型の製造方法。
[20][8]から[16]のいずれかに記載の砂鋳型造型用組成物を含有することを特徴とする砂鋳型。
【0007】
なお、本明細書において「○○~△△」で示した数値範囲はその上限及び下限を含む範囲を表す。つまり、「○○~△△」は「○○以上、△△以下」を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発泡性に優れた砂鋳型造型用組成物及び耐湿性に優れた砂鋳型が得られる砂鋳型造型用添加剤を提供することができる。また、発泡性に優れた砂鋳型造型用組成物、耐湿性に優れた砂鋳型、及び耐湿性に優れた砂鋳型の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<砂鋳型造型用添加剤>
砂鋳型造型用添加剤は、イオン性界面活性剤(A)及び無機アルカリ金属化合物(B)を含有する。砂鋳型造型用添加剤は、更にリチウム化合物(C)を含有することが好ましい。
【0010】
砂鋳型造型用添加剤は、粘結剤であるケイ酸化合物(D)と共に砂に混合されることで砂鋳型の材料である砂鋳型造型用組成物を構成する。
【0011】
<イオン性界面活性剤(A)>
イオン性界面活性剤(A)としては、周知のイオン性界面活性剤が使用可能であり、1種又は2種以上を用いることができる。砂鋳型造型用添加剤は、イオン性界面活性剤(A)として、アルキルスルホン酸金属塩(A1)、アルキル硫酸金属塩(A2)、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。砂鋳型造型用添加剤は、発泡性の向上の観点から、(A1)から(A3)の少なくとも2種を含むことがより好ましく、(A1)から(A3)の3種全てを含むことが最も好ましい。
【0012】
<アルキルスルホン酸金属塩(A1)>
アルキルスルホン酸金属塩(A1)としては、アルキル基の炭素数が8~22であるアルキルスルホン酸金属塩を使用可能であり、1種又は2種以上を用いることができる。アルキル基の炭素数は、8~18がより好ましい。アルキルスルホン酸金属塩(A1)の金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられるが、ナトリウム塩が好ましい。アルキルスルホン酸金属塩(A1)の具体例としては、例えば、ノナンスルホン酸ナトリウム、デカンスルホン酸カルシウム、ドデカンスルホン酸ナトリウム、トリデカンスルホン酸カリウム、テトラデカンスルホン酸リチウム、ペンタデカンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデカンスルホン酸カルシウム、ヘプタデカンスルホン酸リチウム、オクタデカンスルホン酸カルシウム、イコサンスルホン酸カリウム、ドコサンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。また、アルキルスルホン酸金属塩(A1)のアルキル基は、直鎖及び分岐鎖のいずれでもよい。
【0013】
<アルキル硫酸金属塩(A2)>
アルキル硫酸金属塩(A2)としては、アルキル基の炭素数が8~22であるアルキル硫酸金属塩を使用可能であり、1種又は2種以上を用いることができる。アルキル基の炭素数は8~18がより好ましい。アルキル硫酸金属塩(A2)の金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられるが、ナトリウム塩が好ましい。アルキル硫酸金属塩(A2)の具体例としては、オクチル硫酸ナトリウム、ノニル硫酸カルシウム、デシル硫酸リチウム、ウンデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム、トリデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸カルシウム、ペンタデシル硫酸リチウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、ヘプタデシル硫酸カルシウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、イコサ硫酸ナトリウム、ドコサ硫酸ナトリウム等が挙げられる。また、アルキル硫酸金属塩(A2)のアルキル基は、直鎖及び分岐鎖のいずれでもよい。
【0014】
<ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)>
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)としては、アルキル基の炭素数が8~16であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩を使用可能であり、1種又は2種以上を用いることができる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)のアルキレンオキサイド付加物の構造とモル数は特に限定されない。
【0015】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)としては、例えば下記式1で示す化合物を使用可能である。
R1-O-(CnH2nO)m-SO3X・・・式1
(R1は炭素数8~16のアルキル基であり、nは2~4の整数であり、mは1~10であり、Xはアルカリ金属又はアルカリ土類金属である)
式1中で、R1の炭素数は10~14が好ましく、また、R1は直鎖及び分岐鎖のいずれでもよい。式1中で、nは2又は3が好ましく、2がより好ましい。また式1中で、mはポリオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、2~6が好ましく、3~4がより好ましい。また式1中のXの例としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム等が挙げられるが、ナトリウムが好ましい。
【0016】
<無機アルカリ金属化合物(B)>
無機アルカリ金属化合物(B)は、塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一つである。
【0017】
<リチウム化合物(C)>
リチウム化合物(C)は、ケイ酸リチウム、硫酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも一つである。砂鋳型造型用添加剤は、耐湿性の観点から、ケイ酸リチウムを含有することが好ましく、ケイ酸リチウムと、硫酸リチウム及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも一つと、を含有することがより好ましい。
【0018】
リチウム化合物(C)として用いられるケイ酸リチウムのLi2OとSiO2とのモル比は特に限定されないが、モル比(SiO2/Li2O)は3.0以上、5.0以下であることが好ましく、3.5以上、4.5以下であることがより好ましい。
【0019】
<砂鋳型造型用添加剤の配合割合>
砂鋳型造型用添加剤は、イオン性界面活性剤(A)100質量部に対し、無機アルカリ金属化合物(B)を0.01~2.00質量部の割合で含有する。無機アルカリ金属化合物(B)の配合割合が0.01~2.00質量部の範囲内であれば、優れた発泡性及び耐湿性を実現できる。
【0020】
また、砂鋳型造型用添加剤は任意の量のリチウム化合物(C)を含有することができるが、耐湿性の観点から、イオン性界面活性剤(A)100質量部に対して、リチウム化合物(C)は10~2000質量部の含有割合であることが好ましい。
【0021】
砂鋳型造型用添加剤は、イオン性界面活性剤(A)として、アルキルスルホン酸金属塩(A1)、アルキル硫酸金属塩(A2)、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)を任意の割合で含有することができるが、アルキルスルホン酸金属塩(A1)、アルキル硫酸金属塩(A2)、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)の含有割合の合計を100質量部とした場合に、アルキルスルホン酸金属塩(A1)を50~98質量部、アルキル硫酸金属塩(A2)を1~40質量部、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)を1~40質量部の割合で含むことが好ましい。
【0022】
<砂鋳型造型用組成物>
砂鋳型造型用組成物は、砂鋳型造型用添加剤と、砂と、粘結剤であるケイ酸化合物(D)とを含有する。ケイ酸化合物(D)は、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムから選ばれる少なくとも一つである。
【0023】
砂鋳型造型用組成物の砂は、特に限定されず、従来公知の骨材である砂粒を用いることができる。例えば、硅砂、アルミナ砂、オリビン砂、クロマイト砂、ジルコン砂、ムライト砂等の砂が挙げられ、更には各種の人工砂(いわゆる人工骨材)、また再生砂を用いてもよい。
【0024】
砂の粒度は特に限定されないが、粒度指数(AFS)が3~300が好ましく、AFS20~200がより好ましい。粒度指数が3以上である場合、砂鋳型造型用組成物は流動性に優れ砂鋳型を造型する際の充填性が向上する。一方、粒度指数が300以下であることにより砂鋳型として通気性が良好に保たれる。
【0025】
砂の形状は特に限定されるものではなく、いかなる形状であってもよいが、流動性に優れるため砂鋳型の造型時に高い充填性を発揮し、得られる砂鋳型が優れた通気性を有する観点から、球状が好ましい。
【0026】
なお、水分量を調整するために、砂の種類に応じて砂鋳型造型用組成物に水を添加しても良い。
【0027】
<砂鋳型造型用組成物の配合割合>
砂鋳型造型用組成物は、任意の割合で砂とケイ酸化合物(D)と砂鋳型造型用添加剤とを含有できるが、ケイ酸化合物(D)100質量部に対して、砂鋳型造型用添加剤を2~100質量部の割合で含有することが好ましく、5~70質量部の割合で含有することがより好ましい。また、砂鋳型造型用組成物は、ケイ酸化合物(D)100質量部に対して、砂を1000~100000質量部の割合で含有することが好ましく、4000~70000質量部の割合で含有することがより好ましく、7000~30000質量部の割合で含有することがさらに好ましい。
【0028】
<その他の添加物>
砂鋳型造型用組成物には、その他にも従来公知の添加物を目的に応じて添加することができる。そのような添加物として、例えば、砂鋳型の製造の際に砂鋳型造型用組成物の固化を促進する硬化剤が挙げられる。
【0029】
<砂鋳型>
砂鋳型は、砂鋳型造型用組成物を成型してなるものであり、砂鋳型造型用添加剤と、ケイ酸化合物(D)と、砂とを含有する。
【0030】
<砂鋳型の製造方法>
砂鋳型造型用組成物は上述した各材料を混合することにより製造されるが、その混合の順番や方法は特に限定されるものではない。例えば、砂鋳型造型用添加剤とケイ酸化合物(D)とを混合した後に、砂に添加してもよいし、同時に全ての材料を混合しても良い。砂に砂鋳型造型用添加剤及びケイ酸化合物(D)を添加して混合・攪拌する際の混練装置としては、特に限定されることなく従来公知の混練装置を用いることができ、バッチ方式の混練装置であってもよいし、連続方式の混練装置であってもよい。
【0031】
砂鋳型造型用組成物の成型は、手込めによる造型であっても、造型機による造型であってもよい。造型機としては、特に限定されることなく従来公知の造型機が用いることができる。その具体例として、例えばジョルト造型機、ジョルトスクイズ造型機、ブロースクイズ造型機、静圧造型機、中子造型機等が挙げられる。
【0032】
金型への砂鋳型造型用組成物の充填は、発泡状態の砂鋳型造型用組成物(以下、発泡組成物ともいう)を加熱した造型用金型内の鋳型造型用空間へ圧入することが好ましく、射出により充填することがより好ましい。
【0033】
発泡組成物の鋳型造型用空間への充填方法としては、シリンダ内におけるピストンによる直接加圧、シリンダ内に圧縮空気を供給することによる充填、スクリュー等による圧送、流し込みなどがあるが、充填スピードや発泡組成物への均一加圧による充填安定性から、ピストンによる直接加圧及び圧縮空気による充填が好ましい。
【0034】
金型の鋳型造型用空間に充填した発泡組成物を固化させる方法は特に限定されないが、発泡組成物の水分を蒸発させることにより行われることが好ましい。発泡組成物の水分の蒸発は、例えば金型から発泡組成物への伝熱、鋳型造型用空間への高温の空気の流動、又はこの両者の併用によって行われる。
【0035】
具体的には、以下の(1)から(5)の工程を含む方法によって砂鋳型を製造することが好ましい。
(1)砂鋳型造型用添加剤と、ケイ酸化合物(D)と、水と、砂とを混合して砂鋳型造型用組成物を生成する工程
(2)砂鋳型造型用組成物を攪拌して発泡させることにより、発泡状態の砂鋳型造型用組成物(発泡組成物)を生成する工程
(3)発泡組成物を金型内の鋳型造型用空間に充填する工程
(4)鋳型造型用空間内の発泡組成物から水分を蒸発させて発泡組成物を固化させる工程
(5)固化した発泡組成物(砂鋳型)を鋳型造型用空間から取り出す工程
【0036】
または、以下の(6)から(10)の工程を含む方法によって砂鋳型を製造することが好ましい。
(6)砂鋳型造型用添加剤とケイ酸化合物(D)と水との混合物を発泡させた泡状物を生成する工程
(7)泡状物と砂とを混合して攪拌することにより、発泡状態の砂鋳型造型用組成物(発泡組成物)を生成する工程
(8)発泡組成物を金型内の鋳型造型用空間に充填する工程
(9)鋳型造型用空間内の発泡組成物から水分を蒸発させて発泡組成物を固化させる工程
(10)固化した発泡組成物(砂鋳型)を鋳型造型用空間から取り出す工程
なお、(6)の工程において砂鋳型造型用添加剤と水との混合物を発泡させ、(7)の工程においてケイ酸化合物(D)と砂とを混合してもよい。
【0037】
(6)の工程において、泡状物を生成する方法は特に限定されない。例えば、液体中に気体を供給して流体せん断等により均一に混合分散する方法や、加圧下で気体を飽和状態まで溶解させ、急激に減圧することにより気泡を析出させる方法を用いることができる。
【0038】
なお、鋳型造型用空間への発泡組成物の充填性を向上するため、鋳型造型用空間に充填する際の発泡組成物(発泡状態の砂鋳型造型用組成物)の粘度は0.5~3.58Pa・sであることが好ましく、0.89~1.12Pa・sがより好ましい。
【0039】
上述の特定の工程中又は工程間において、中間産物を密閉容器等に一時的に(例えば、一週間)保管することも可能である。例えば(1)の工程において、砂鋳型造型用添加剤とケイ酸化合物(D)と水との混合物を一時的に保管し、その後に砂と混合することにより砂鋳型造型用組成物を生成してもよい。また、(2)の工程で得られた発泡組成物を一時的に保管し、(3)の工程を実施する前に再度発泡状態になるまで砂鋳型造型用組成物を攪拌してもよい。また(6)の工程において、砂鋳型造型用添加剤とケイ酸化合物(D)と水との混合物を発泡させる前に一時的に保管し、その後に発泡させて泡状物を生成しても良い。
【実施例】
【0040】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0041】
<調製例1>
アルキル基の炭素数が14~18であるアルキルスルホン酸ナトリウム(A1-1)94.80質量部と、アルキル基の炭素数が8~10であるアルキル硫酸ナトリウム(A2-1)2.20質量部と、アルキル基の炭素数が12~14であり、エチレンオキサイドの付加モル数が3~4モルであるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(A3-1)3.00質量部と、塩化ナトリウム(B-1)0.100質量部と、モル比(SiO2/Li2O)が4.5であるケイ酸リチウム(C-1)275質量部と、硫酸リチウム(C-2)150質量部と、を均一に混合し、砂鋳型造型用添加剤(H-1)を調製した。
【0042】
<調製例2~21>
調製例1の砂鋳型造型用添加剤(H-1)と同様にして、下記表1に示す組成の調製例2~21の各砂鋳型造型用添加剤(H-2~H15、h-1~h-6)を調製した。
【0043】
【0044】
表1に記載の各成分は以下の通りである。
[アルキルスルホン酸金属塩(A1)]
A1-1:アルキル基の炭素数が14~18であるアルキルスルホン酸ナトリウム
A1-2:アルキル基の炭素数が8~14であるアルキルスルホン酸ナトリウム
[アルキル硫酸金属塩(A2)]
A2-1:アルキル基の炭素数が8~10であるアルキル硫酸ナトリウム
A2-2:アルキル基の炭素数が10~14であるアルキル硫酸ナトリウム
A2-3:アルキル基の炭素数が14~18であるアルキル硫酸ナトリウム
[ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(A3)]
A3-1:アルキル基の炭素数が12~14であり、エチレンオキサイドの付加モル数が3~4モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム
A3-2:アルキル基の炭素数が10~12であり、エチレンオキサイドの付加モル数が3~4モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム
【0045】
[無機アルカリ金属化合物(B)]
B-1:塩化ナトリウム
B-2:硫酸ナトリウム
b-1:塩化カリウム
b-2:塩化カルシウム
b-3:硫酸カリウム
b-4:硫酸カルシウム
【0046】
[リチウム化合物(C)]
C-1:ケイ酸リチウム(モル比(SiO2/Li2O)4.5)
C-2:硫酸リチウム
C-3:水酸化リチウム
【0047】
<実施例1>
砂鋳型造型用添加剤(H-1)42.0質量部と、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸化合物(D))100質量部と、水450質量部と、砂(キンセイマテック社製人工砂「GREEN BEADS AFS:90」)15000質量部との割合で合計2000gになるよう混合した。そして、混合物を卓上ミキサーで発泡状態になるまで攪拌することにより、発泡状態の砂鋳型造型用組成物(N-1)を得た。
【0048】
<実施例2~15、比較例1~6>
実施例1の砂鋳型造型用組成物(N-1)と同様にして、下記表2に示す組成の実施例2~15及び比較例1~6の各砂鋳型造型用組成物(N-2~N-15、n-1~n-6)を得た。
【0049】
【0050】
砂鋳型造型用組成物(N-1~N-15、n-1~n-6)について、下記の試験方法により発泡性(流動性)及び耐湿性(曲げ強度)を評価した。結果を下記表3に示す。
【0051】
<発泡性(流動性)試験>
中央に直径6mmの貫通孔を有する円板(板厚4mm)で下端を塞がれた内径42mmの円筒容器に発泡状態の砂鋳型造型用組成物を投入し、その上に重量1kg、直径40mmの円柱状のおもりを配置した。円筒容器内の砂鋳型造型用組成物がおもりの自重で加圧されて貫通孔より排出される間に、おもりが下方に50mm移動するのに要した時間を計測し、下記数式にて砂鋳型造型用組成物の粘度を算出した。算出された粘度を用いて、発泡性を評価した。
式:μ=πD4Ppt/128L1L2S
μ:粘度[Pa・s]
D:貫通孔の直径[m]
Pp:おもりの加圧力[Pa]
t:おもりが50mm移動するのに要した時間[s]
L1:おもりの移動距離[m]
L2:円板の板厚(貫通孔の長さ)[m]
S:おもりの底部の面積と円筒容器内の中空領域の断面積(中心軸に垂直な円形断面の面積)との平均値[m2]
(発泡性の評価基準)
4:0.89~1.12[Pa・s]
3:1.13~1.34[Pa・s]
2:1.35~3.58[Pa・s]
1:3.59~[Pa・s]
【0052】
<耐湿性試験(曲げ強度)>
発泡状態の砂鋳型造型用組成物を鋳型製造機(造型機、新東工業株式会社製)にて250℃に加熱した金型に射出した。金型は曲げ強度試験片作製用の金型であり、容量約80cm3のキャビティを有しており、ゲート速度1m/sec、シリンダ面圧0.4MPaで射出した。この加熱された金型に充填された砂鋳型造型用組成物を2分間放置して、金型の熱により水分を蒸発させ、砂鋳型造型用組成物を固化させた。固化完了後、金型から鋳型を取り出した。得られた鋳型により10mm×10mm×70mmの曲げ強度試験片を作製した。
曲げ強度試験片を、温度20℃湿度60%で1時間保管した後、又は温度35℃湿度75%の恒温恒湿槽内で168時間保管した後に、曲げ強度(MPa)を測定した。曲げ強度の測定はJACT試験法SM-1、曲げ強さ試験法に準拠して行った。
測定された曲げ強度を用いて、耐湿性を評価した。
(耐湿性の評価基準)
5:3.51~4.00MPa
4:3.26~3.50MPa
3:3.01~3.25MPa
2:2.50~3.00MPa
1:2.49MPa未満
【0053】
【0054】
実施例1から15は、優れた発泡性(流動性)を有すると共に、優れた耐湿性を有する砂鋳型を得ることができた。これに対して比較例1は、イオン性界面活性剤(A)に対する無機アルカリ金属化合物(B)の含有割合が少なすぎるため、発泡性及び耐湿性が劣っていた。比較例2は、イオン性界面活性剤(A)に対する無機アルカリ金属化合物(B)の含有割合が多すぎるため、発泡性及び耐湿性が劣っていた。比較例3から6は、無機アルカリ金属化合物(B)として塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムのいずれも含有しないため、発泡性及び耐湿性が劣っていた。
【要約】
【課題】
発泡性に優れた砂鋳型造型用組成物、及び耐湿性に優れた砂鋳型を得ることができる砂鋳型造型用添加剤を提供する。
【解決手段】
砂鋳型造型用添加剤は、イオン性界面活性剤(A)100質量部に対し、無機アルカリ金属化合物(B)を0.01~2.00質量部の割合で含有する。無機アルカリ金属化合物(B)は、塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一つである。
【選択図】なし