(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】移動体システム
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/28 20060101AFI20220513BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20220513BHJP
H01Q 17/00 20060101ALI20220513BHJP
H01Q 19/15 20060101ALI20220513BHJP
H01Q 19/10 20060101ALI20220513BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
H01Q1/28
H01Q1/52
H01Q17/00
H01Q19/15
H01Q19/10
B64C39/02
(21)【出願番号】P 2021131839
(22)【出願日】2021-08-13
【審査請求日】2021-08-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520445521
【氏名又は名称】株式会社ダックビル
(73)【特許権者】
【識別番号】500489015
【氏名又は名称】建装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230115118
【氏名又は名称】西村 義隆
(72)【発明者】
【氏名】野口 高志
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-117268(JP,A)
【文献】特開2006-180141(JP,A)
【文献】米国特許第06249256(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00- 1/52
H01Q 5/00- 11/20
H01Q 15/00- 19/32
B64C 39/00- 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作される無人移動体と、
前記無人移動体が遠隔操作されるための操作信号を電波として受信するためのアンテナと、
前記無人移動体の外側から放射される電磁波を遮断する遮断板とを備え、
前記遮断板は、
四角錐台の底面を前側、四角錐台の上面を後側とし、四角錐台の底面から中をくりぬかれた鋳型状又は略四角錐台の底面を前側、略四角錐台の上面を後側とし、略四角錐台の底面から中をくりぬかれた鋳型状により構成され、前記アンテナを含まない領域と、前記アンテナを含む領域とを区切るように前記無人移動体に固定された移動体システム。
【請求項2】
遠隔操作される無人移動体と、
前記無人移動体が遠隔操作されるための操作信号を電波として受信するためのアンテナと、
前記無人移動体の外側から放射される電磁波を遮断する遮断板と
、
前記遮断板と前記アンテナの間に設置され、前記遮断板により区切られたアンテナを含む領域側から到達する前記操作信号を反射させるための反射板とを備え、
前記遮断板は、前記アンテナを含まない領域と、前記アンテナを含む領域とを区切るように前記無人移動体に固定された移動体システム。
【請求項3】
前記遮断板は、平面状若しくは略平面状又は曲面状若しくは略曲面状により構成される
請求項2に記載の移動体システム。
【請求項4】
前記遮断板は、前記アンテナの上下方向の長さよりも上下方向に長く構成される
請求項2に記載の移動体システム。
【請求項5】
前記遮断板は、前記アンテナを含まない領域の面に、前記操作信号と同じ周波数帯域の電磁波を吸収させるための吸収面を有する請求項1
から請求項4のいずれか一項に記載の移動体システム。
【請求項6】
前記反射板は、回転楕円面もしくは楕円柱面またはこれらに類似する曲面の一部を含む曲面で形成される請求項
2に記載の移動体システム。
【請求項7】
前記アンテナは、前記反射板のいずれか一方の焦点近傍に配置される請求項
2又は請求項
6に記載の移動体システム。
【請求項8】
前記遮断板は、前記遮断板により区切られた前記アンテナを含まない領域側から放射される電磁波を遮断し、前記遮断板により区切られた前記アンテナを含む領域側から到達する前記操作信号を反射させる請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の移動体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、妨害波の影響を抑える構造を有する移動体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンなどの無人移動体が、撮影、運搬、測量など、様々な場面で活用されている。一方で、無人移動体は妨害となる電磁波の影響を受けやすく、無人移動体を操作するための電波が途切れれば、その場に着陸等をして停止するなど、本来の目的を遂げることができない。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1のように、無人移動体と円滑に通信するための方法が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、指向性の方向が互いに異なる3本以上のアンテナを設置して干渉波の影響が小さいアンテナを用いて無人移動体と通信する方法が示されている。
【0006】
しかし、無人移動体を操作するための電波は、市中を飛び回る妨害となる電波だけでなく、金属やモーターなどから発せられる電磁波の影響も受けやすく、安全に無人移動体を制御するためには、妨害となる電磁波を吸収ないし反射させるなど、軽減する措置が必要である。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたもので、妨害となる電磁波を軽減し、安全に制御可能な移動体システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る移動体システムは、遠隔操作される無人移動体と、無人移動体が遠隔操作されるための操作信号を電波として受信するためのアンテナと、無人移動体の外側から放射される電磁波を遮断する遮断板とを備え、遮断板は、アンテナを含まない領域と、アンテナを含む領域とを区切るように無人移動体に固定された移動体システムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、妨害となる電磁波を吸収ないし反射させることなどにより軽減し、移動体システムを制御するための送信機からの電波を受け止めやすくすることで、安全に移動体システムを操作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】移動体システムを前側から見た斜視図である。
【
図2】移動体システムを後側から見た斜視図である。
【
図3】移動体システムのアンテナ部、遮断板、反射板を拡大して前側から見た斜視図である。
【
図4】移動体システムのアンテナ部、遮断板、反射板を拡大して後側から見た斜視図である。
【
図5】移動体システムのアンテナ部、遮断板、反射板を拡大したもので、遮断板の形状をトレー状、反射板の形状を回転楕円面及び楕円柱面の組合せとして構成して前側から見た斜視図である。
【
図6】移動体システムのアンテナ部、遮断板、反射板を拡大したもので、遮断板の形状をトレー状、反射板の形状を回転楕円面及び楕円柱面の組合せとして構成して後側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本開示の必須の構成要素であるとは限らない。
【0012】
(全体構成)
本実施形態の移動体システム1は、飛行体、マルチコプターなどの無人移動体(以下、便宜的に「ドローン」と示す)2を用いて構成される。ドローン2に取り付けられた遮断板3によって、ドローン2の前方から受ける妨害波となる電磁波(以下、「妨害波」と示す)を吸収ないし反射し、妨害派の影響を軽減する。さらに、ドローン2に取り付けられた反射板4によって、ドローン2の後方から受けるドローン2を操作するための電波(以下、「操作信号」と示す)を増幅し、受け止めやすくする。
【0013】
図1に示すように、移動体システム1は、ドローン2と、遮断板3A、3B(以下まとめて「遮断板3」と示す)とを備える。
【0014】
また、
図2は、
図1のドローン2を後側から見た図であるが、遮断板3A,3Bの裏側には、反射板4A、4B(以下まとめて「反射板4」と示す)とを備える。ただし、反射板4は必須の構成要素ではなく、また、遮断板3が反射板4の役割を兼ね備えてもよい。なお、遮断板3及び反射板4はアンテナの本数と同数設置されることが望ましい。
【0015】
(ドローン2の構成)
ドローン2は、本体21と、4つの回転翼22A、22B、22C、22Dと(以下まとめて「回転翼22」と示す)、アンテナ23A、23Bと(以下まとめて「アンテナ23」と示す)、カメラ24と、を備える。ただし、回転翼22、アンテナ23の数はあくまで一例であり、これに限られるものではない。また、ドローン2を着地させるための脚部などを備えていてもよいし、脚部とアンテナが一体となって構成されていてもよい。また、カメラ24は必須の構成要素ではなく、備えなくともよい。
【0016】
本体21は、回転翼22と同数のアームを有する。本実施形態の例のように、回転翼22が4つ存在する場合には、平面形状が十字状のように形成される。ただし、このような形状に限定されなくともよい。本体21が有する4つのアームの先端には、それぞれ回転翼22A、22B、22C、22Dが取り付けられる。
【0017】
本体21において、回転翼22が取り付けられている側を上側という。また、本体21の上側とは反対側を下側という。
【0018】
本体21において、アームの下側、つまり回転翼22A、22Bのアームを挟んだ反対側には、アンテナ23A、23Bが取り付けられる。
【0019】
回転翼22は、上下方向に沿った回転軸を有し、上下方向に直交する水平面内で回転する。なお、水平面とは、基本的には、地面に平行な面である。
【0020】
2つのアンテナ23A、23Bは、棒状に成形することで形成され、その両端が本体21の下側に接続される。また、2つのアンテナ23A、23Bは、間隔を空けて対向配置される。以下、2つのアンテナ23A、23Bの配列方向を左右方向、水平面内で左右方向と直行する方向を前後方向という。なお、アンテナの形状及び配置は一例であって、これに限られなくともよい。
【0021】
カメラ24は、2つのアンテナ23A、23Bの間に位置するように本体21の前面に取り付けられ、動画または静止画を撮影する。
【0022】
本体21には、図示を省略するが、回転翼22を駆動する駆動回路、ドローン2の飛行制御に必要な複数のセンサ、ドローン2の飛行やカメラ24を遠隔操作するための通信装置及び制御装置、電源などが内蔵される。なお、これらドローン2各部の構成は公知のものであるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0023】
(遮断板3の構成)
遮断板3は、ドローン2に取り付けて使用され、ドローン2の外側から発せられる電磁波がアンテナ23に到達するのを軽減する。
【0024】
一般的な形状のドローン2においては、前部にカメラ24が設置される。そして、ドローン2のカメラ24を用いて建物など構造物の撮影をするとき、ドローン2は前を向いた状態で撮影を行うが、ドローン2は、撮影対象である構造物の金属などから発せられる電磁波の影響を受けやすい。
【0025】
したがって、遮断板3は、アンテナ23の前側に設置するのが望ましい。例えば、アンテナ23A、23Bのそれぞれの前側に、アームに固定させて遮断板3A、3Bとして設置してもよい。このとき、遮断板3は、ドローン2の前側から発せられる電磁波がアンテナ23に到達するのを軽減する。
【0026】
遮断板3の形状は、例えば、四角形の板のような平面状又は略平面状により構成してもよいし、四角形の板を湾曲させた曲面状又は略曲面状により構成してよい。また、遮断板3の形状は、例えば、四角形の板に前面に対して外側に向けて縁をつけたような形状、すなわち、四角錐台を横に倒して、面積の大きな四角錐台の底面を前側、面積の小さな四角錐台の上面を後側とし、四角錐台の底面から中をくりぬかれた鋳型状により構成してもよいし、略四角錐台を横に倒して、面積の大きな略四角錐台の底面を前側、面積の小さな略四角錐台の上面を後側とし、略四角錐台の底面から中をくりぬかれた鋳型状により構成してもよい。外側に向けて縁をつける事はこれにより、遮断板3は、ドローン2の前側から発せられる電磁波を分散させて反射させることが可能となることから、望ましい。
【0027】
遮断板3の大きさは、アンテナ23を覆い、かつ風の抵抗を最小限に抑える程度が望ましい。すなわち、遮断板3の上下方向の長さは、アンテナ23の上下方向の長さよりも長く構成されることが望ましい。また、遮断板3の左右方向の長さは、アンテナ23の上下方向の長さよりも長く構成されることが望ましい。
【0028】
遮断板3の大きさは、例えば、アンテナの上下方向の長さに対して、上下方向をアンテナの長さの1.6倍程度、左右方向をアンテナの長さの1.2倍程度とした長方形にするとよい。例えば、一般的なドローンでは、アンテナ23の長さが10cm程度のものが多いが、この場合、遮断板3は、上下方向16cm×左右方向12cm程度の大きさで構成されることが望ましい。これにより、遮断板3による空気抵抗の影響を軽減しつつ、遮断板3によるドローン2の前面から発せられる電磁波を軽減する効果を得ることが可能となる。
【0029】
遮断板3の材質は、ドローンの飛行に影響がない程度に軽量なアルミニウムを用いて構成されることが望ましい。
【0030】
さらに、遮断板3のアンテナを含まない領域の面、すなわち一般的な形状のドローン2における前面には、電磁波を吸収する吸収面を有することが望ましい。具体的には、遮断板3の吸収面は、電波吸収シートを貼付されることにより構成されることが望ましい。遮断板3に貼付する電波吸収シートは、カルボニル鉄とゴム状の基材を混合し、反射波の位相差によりドローンで使用される周波数帯に特化して吸収するタイプのものを使用してもよい。なお、電波吸収シートは一般に市販されているものを用いてもよい。
【0031】
遮断板3の吸収面を構成する電波吸収シートは、ドローン2を制御するための無線通信に用いられる電磁波の周波数帯に特化して吸収するものを用いるとよい。すなわち、操作信号と同じ周波数帯域の電磁波を吸収するものを用いるとよい。なお、ドローンを制御するための無線通信には、2.4GHz、5.7GHzなどの帯域が用いられ、法改正によりこれら以外の帯域が用いられることもあるが、電波吸収シートは、ドローンを制御するための無線通信、特に制御対象とするドローン2で用いられる無線通信の電磁波の周波数帯域を吸収するものがよい。
【0032】
(反射板4の構成)
反射板4は、ドローン2に取り付けて使用され、遮断板3により区切られたアンテナ23を含む領域側から発せられる操作信号を増幅する。一般的なドローン2の形状では、前述の通り、遮断板3により、ドローン2の前側と後側を区切るのが望ましいから、この場合、反射板4は、ドローン2の後側から発せられる操作信号を増幅する。
【0033】
反射板4は、アンテナ23の前側であり、かつ、遮断板3の後側に設置されるとよい。すなわち、反射板4は、遮断板3とアンテナ23との間に設置され、遮断板とアンテナとを区切るように設置されるとよい。例えば、アンテナ23A、23Bのそれぞれの前側であり、かつ遮断板3A、3Bの後側に、アームに固定させて反射板4A、4Bとして設置してもよい。また、遮断板3A、3Bに固定させて反射板4A、4Bとして設置してもよいし、アームと遮断板3A、3Bの両方に固定させて設置してもよい。
【0034】
反射板4は、例えば、アンテナ23を覆う程度の大きさの平面状又は略平面状の壁を構成するように形成してもよい。反射板4の大きさは、例えば、四角形の面で構成され、上下方向、左右方向ともに、それぞれ、アンテナ23の長さよりも長くすることが望ましい。また、反射板4は、例えば、四角形の面で構成され、反射板4と同様に、アンテナ23の長さが10cm程度であれば、上下方向16cm×左右方向12cm程度の大きさで構成するとよい。これにより、反射板4による空気抵抗の影響を軽減しつつ、反射板4による操作信号を増幅する効果を得ることが可能となる。
【0035】
反射板4は、アンテナ23に操作信号を集中させるために、曲面で構成することが望ましい。具体的には、反射板4は、アンテナ23に向いた面を反射面としたとき、反射面が内側に湾曲する凹面であり、回転楕円面もしくは楕円柱面または略回転楕円面もしくは略楕円柱面などこれらに類似する曲面の一部を含む曲面としてよい。回転楕円面は、楕円の長軸あるいは短軸を中心に楕円を回転させて形成される曲面であり、楕円柱面は、楕円をその長軸および短軸と交差する方向にスライドさせた軌跡によって形成される曲面である。回転楕円面もしくは楕円柱面またはこれらに類似する曲面の一部を含む曲面は、楕円曲線またはそれに類似する曲線の一部を含む。
【0036】
アンテナ23は、反射板4の一方の焦点近傍に配置されるとよい。ここで、反射板4の焦点とは、反射板4を規定する楕円において焦点となる位置であり、回転楕円面の場合には、軸線を含む平面で切断したときの楕円曲線の焦点の集まりを示し、楕円柱面の場合には、楕円柱面の軸線に垂直な平面で切断したときの楕円曲線の焦点の集まりを示し、反射板4が回転楕円面または楕円柱面の場合には、これらの面を近似した回転楕円面または楕円柱面の焦点を示す。また、焦点近傍とは、焦点および焦点の周囲の領域を含む。
【0037】
反射板4の材質は操作信号を反射集中させる事ができ、かつドローンの飛行に影響がない程度に軽量なアルミを使用する事が望ましい。
【0038】
図3に、遮断板3,反射板4,アンテナ23を拡大して前側から見た図を示す。
図3にはアームを示していないが、ドローン2のアームなどに固定されて設置される。ドローン2のアームに固定される場合、これらの上側にアームが設置される。
【0039】
なお、遮断板3は、
図1に示すようにアームの長辺と垂直方向に設置してもよいし、ドローン2の前面、すなわちカメラ24と平行な方向に設置してもよい。なお、遮断板3を、ドローン2の前面と水平な方向に設置した方が、よりドローン前面方向から受ける電磁波を軽減する効果が期待できる。
【0040】
図4に、遮断板3,反射板4,アンテナ23を拡大して後側から見た図を示す。
図4は、
図3を後側から見た図である。
【0041】
図5に、遮断板3、反射板4、アンテナ23を拡大し、かつ、遮断板3をトレー状として構成し、反射板4を回転楕円面及び楕円柱面の組合せとして構成した具体例を示す。これは、前側から見た図であり、ドローン2のアームなどに固定されて設置される。
【0042】
図6に、遮断板3、反射板4、アンテナ23を拡大し、かつ、遮断板3をトレー状として構成し、反射板4を回転楕円面及び楕円柱面の組合せとして構成した具体例を示す。これは、
図5を後側から見た図である。
【0043】
(効果)
以上詳述した第1実施形態による効果を以下に示す。
まず、前提として、無人移動体の活用場面の一つに、建造物の撮影がある。無人移動体を用いて様々な角度から建造物を撮影することにより、例えば、橋梁、オフィスビル、共同住宅など建造物の三次元図面を生成することができる。しかし、建造物からは、さまざまな妨害波となる電磁波が発せられることが多い。例えば、橋梁などでは、鉄などの金属が露出していることにより磁場が乱れ、妨害波として無人移動体に到達する。また、共同住宅等からは、無線LAN(Local Area Network)の電波が発せられ、妨害波として無人移動体に到達する。さらに、オフィスビルや共同住宅にはエレベータや室外機が設置されていることも多く、これらのモーターから発せられる電磁波が妨害波として無人移動体に到達する。
【0044】
したがって、建造物を撮影する上で、妨害波の影響を軽減しなければ、そもそも撮影が実現しないこともある。一方で、無人移動体は、安全上の観点から、必ず目視できる位置から操作を行う。よって、無人移動体は、通常、対象とする建造物、操作信号が発せられる送信機の間に位置し、かつ、撮影を行う観点から、カメラの撮影方向、すなわち無人移動体の前側が建造物の方向を向く関係にある。
【0045】
以上のような観点から、無人移動体の一方向(通常は前側)から到達してくる妨害波を軽減し、無人移動体の後側から到達してくる操作信号は増幅することが望ましい。
【0046】
本実施形態の発明によれば、遮断板3により、ドローン2の前側から到達してくる妨害波を反射及び/又は吸収することにより、妨害波を軽減することができる。これにより、アンテナ23に妨害波が到達することを軽減し、誤った操作信号を受信することを防止することが可能となる。
【0047】
また、遮断板3の形状を四角錐台の底面から中をくりぬかれた鋳型状により構成したとき、外側からドローン2に到達する妨害波を分散して反射させることができることから、ドローン2に到達する妨害波を軽減するより高い効果が期待できる。
【0048】
また、ドローン2の後側から到達してくる操作信号を反射板4により増幅することにより、操作信号を確実に捉え、誤作動が生じることを防止することが可能となる。
【0049】
特に、反射板4を、回転楕円面もしくは楕円柱面または略回転楕円面もしくは略楕円柱面などこれらに類似する曲面の一部を含む曲面としたとき、アンテナ23に操作信号を集中させることが可能となる。
【0050】
すなわち、本実施形態の発明によれば、遮断板3及び反射板4により、妨害波の影響を軽減し、操作信号を確実に受信することで、特に妨害波が発生し得る環境にある建造物の近くにおいても、ドローン2を確実に操作することが可能となる。
【0051】
さらに、本実施形態の発明は、ドローン2を用いて撮影を行うことに限らず、例えばドローンを用いて配送を行う場合にも、建造物に向かってドローン2が移動するため、本実施形態の発明により、ドローン2は確実に操作信号を受信し、建造物に到達できないという問題を解決することができる。本実施形態の発明は、さまざまな場面で利用することが期待でき、妨害波がある方向に向かってドローン2が操作される場面において有効に活用することが可能となる。
【0052】
(他の実施形態)
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様をとることができる。
【0053】
本開示では、遮断板3はアンテナ23のぞれぞれに対して設けられているが、例えば、アンテナ23A、23Bの前側に設置されるように、アンテナ23Aが取り付けられたアームとアンテナ23Bが取り付けられたアームに固定して1枚の遮断板3を用いてもよい。また、アンテナ23が複数あるときに、2本以上のアンテナ23の前側に設置されるように遮断板3を設けてもよい。
【0054】
本開示では、反射板4は、アンテナ23のぞれぞれに対して設けられているが、例えば、アンテナ23A、23Bの前側に設置されるように、アンテナ23Aが取り付けられたアームとアンテナ23Bが取り付けられたアームに固定して、または、遮断板3A、遮断板3Bに固定して、1枚の反射板4を用いてもよい。また、アンテナ23が複数あるときに、2本以上のアンテナ23の前側に設置されるように反射板4を設けてもよい。
【0055】
本開示では、遮断板3と反射板4をそれぞれ設置したが、遮断板3と反射板4は一体として構成し、設置してもよい。例えば、アンテナ23の前に遮断板3を設置し、遮断板3の前側から放射される電磁波を遮断するための壁として構成してもよい。また、遮断板3のアンテナ23が設置される側の面は、既に述べた反射板4のような回転楕円面もしくは楕円柱面またはこれらの類似する曲面の一部を含む曲面で構成され、操作信号を反射させるようにし、遮断板3を反射板4と一体として構成してもよい。
また、反射板4のアンテナが設置されるのと反対側の面(前側の面)には、妨害波を吸収するような吸収面を構成してもよいし、妨害波を反射又は吸収させるように構成してもよい。このような構成により、反射板4を遮断板3と一体として構成してもよい。さらに、遮断板3と反射板4は片方のみが設置されてもよい。
【0056】
1…移動体システム、2…ドローン、21…本体、22,22A,22B,22C,22D…回転翼、23,23A,23B…アンテナ、24…カメラ、3,3A,3B…遮断板、4,4A,4B…反射板
【要約】
【課題】妨害となる電磁波を軽減し、安全に制御可能な移動体システムを提供する。
【解決手段】移動体システムは、遠隔操作される無人移動体と、無人移動体が遠隔操作されるための操作信号を電波として受信するためのアンテナと、アンテナを含まない領域と、アンテナを含む領域とを区切るようにすることで、無人移動体の外側から放射される電磁波を遮断する遮断板とを備える。これにより、妨害となる電磁波を軽減し、安全に制御可能な移動体システムを実現する。
【選択図】
図1