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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】植物親和性材料およびその利用
(51)【国際特許分類】
   A01G 2/38 20180101AFI20220513BHJP
【FI】
A01G2/38
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017003695
(22)【出願日】2017-01-12
(65)【公開番号】P2018110557
(43)【公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(73)【特許権者】
【識別番号】509090601
【氏名又は名称】株式会社ソフセラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】石丸 恵
(72)【発明者】
【氏名】古薗 勉
(72)【発明者】
【氏名】河邉 カーロ和重
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-506413(JP,A)
【文献】特開2008-050348(JP,A)
【文献】特開2014-132840(JP,A)
【文献】特開2005-143332(JP,A)
【文献】特開2016-193798(JP,A)
【文献】特開平10-130112(JP,A)
【文献】特開2012-034704(JP,A)
【文献】特開平07-060884(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103283498(CN,A)
【文献】国際公開第2016/092552(WO,A1)
【文献】特開2003-310256(JP,A)
【文献】特開2015-012831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 2/00 - 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸カルシウムを含み、
前記リン酸カルシウムが、基材表面に付着してなり、
前記基材を構成する材料は、生体吸収性高分子であることを特徴とする、台木と穂木との間に挟んで用いるための植物親和性材料。
【請求項2】
前記リン酸カルシウムがハイドロキシアパタイトであることを特徴とする、請求項1に記載の植物親和性材料。
【請求項3】
前記ハイドロキシアパタイトが焼結体であることを特徴とする、請求項2に記載の植物親和性材料。
【請求項4】
前記ハイドロキシアパタイトがナノ粒子であることを特徴とする、請求項2または3に記載の植物親和性材料。
【請求項5】
前記植物親和性材料は、シート状であることを特徴とする、請求項1に記載の植物親和性材料。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の植物親和性材料を用いることを特徴とする、植物組織の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物親和性材料に関する。また本発明は当該植物親和性材料を用いた植物組織の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接ぎ木、芽接ぎ、および挿し木は、植物の繁殖技術または育種技術として用いられており、これら繁殖技術または育種技術において、接着剤または接着部材等を用いることで、接ぎ木、芽接ぎおよび挿し木の作業の効率化が図られてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、芽接ぎ、接ぎ木による植物の繁殖および成長に寄与し、接ぎ木等の部位組織同士を確実に癒合および癒着させる安価な植物生体用接着剤が開示されている。
【0004】
具体的に、特許文献1には、(i)蒟蒻粉末と、煮豆からなる混合物と、納豆菌と、を加えた混合物を発酵させた第1基材;及び、(ii)蒟蒻粉末と、銀杏、スイセン属、チョウセンアサガオ属、ヒガンバナ属、アジサイ属、じゃがいもの中から選択されたアルカロイド類が含入する少なくとも1種、またはそれらの混合物と、納豆菌と、フェノール化合物(p-クレゾール又はm-クレゾール、またはその混合物)と、煮大豆と、豆と、水と、グルタチオンと、を加えた混合物である第2基材;を混合して発酵させ、アルコール水溶液濃度が40~60v/v%で抽出して成る植物生体用接着剤が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、台木と穂木との活着を阻害しにくい接木用粘着テープ、当該接木用粘着テープを用いた接木用粘着部材、および、接木用粘着部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-192496号公報(2013年9月30日公開)
【文献】特開2015-12831号公報(2015年1月22日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来技術は、台木と穂木との活着率が十分でなく、活着までに時間がかかるという問題点がある。
【0008】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、台木と穂木との活着を効率的に行うことができる植物親和性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために発明者らは鋭意検討した結果、リン酸カルシウムを含む植物親和性材料を用いることで、植物細胞の接着、および台木と穂木との活着を効率的に行うことができることを見出し、本発明に想到するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の〔1〕~〔7〕に記載の発明を含む。
〔1〕リン酸カルシウムを含むことを特徴とする、植物親和性材料。
〔2〕前記リン酸カルシウムがハイドロキシアパタイトであることを特徴とする、〔1〕に記載の植物親和性材料。
〔3〕前記ハイドロキシアパタイトが焼結体であることを特徴とする、〔2〕に記載の植物親和性材料。
〔4〕前記ハイドロキシアパタイトがナノ粒子であることを特徴とする、〔2〕または〔3〕に記載の植物親和性材料。
〔5〕前記リン酸カルシウムが、基材表面に付着してなることを特徴とする、〔1〕~〔4〕の何れかに記載の植物親和性材料。
〔6〕前記植物親和性材料は、シート状であることを特徴とする、〔5〕に記載の植物親和性材料。
〔7〕〔1〕~〔6〕の何れかに記載の植物親和性材料を用いることを特徴とする、植物組織の接合方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、台木と穂木との活着を効率的に行うことができる植物親和性材料を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る植物親和性材料の走査型電子顕微鏡にて得られた像であり、(b)は、(a)の選択範囲を拡大した像である。
図2】(a)~(e)は、それぞれ、本発明の一実施例の植物親和性材料とトマト懸濁細胞との、培養開始から3日目、7日目、8日目、9日目および10日目の実体顕微鏡にて得られた像である。
図3】(a)~(d)は、本発明の一実施例の植物親和性材料とトマト懸濁細胞との、培養開始から10日目の走査型電子顕微鏡にて得られた像である。
図4】(a)は、本発明の比較例の材料とトマト懸濁細胞との、培養開始から10日目の実体顕微鏡にて得られた像であり、(b)および(c)は、本発明の比較例の材料とトマト懸濁細胞との、培養開始から10日目の走査型電子顕微鏡にて得られた像である。
図5】本発明の一実施形態に係る植物親和性材料を、植物組織の接合方法に用いている像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0014】
〔1.植物親和性材料〕
本明細書における「植物親和性材料」とは、植物細胞と親和性を有し、植物細胞と複合体を形成でき、かつ、植物細胞と植物細胞との接着を補助する材料のことを意図する。それ故に、植物親和性材料は、植物の繁殖技術または育種技術に適用される。植物細胞と植物細胞との接着を補助するとき、互いに接着する植物細胞は、同種の植物に由来するものであってもよいし、異種の植物に由来するものであってもよい。
【0015】
植物細胞は、特に限定されるものではなく、いずれの植物の器官または植物の組織に由来するものであってもよい。植物の器官としては、例えば、根、茎、または葉等が挙げられ、植物の組織としては、例えば、分裂組織、表皮組織、柔組織または機械組織等を挙げることができる。
【0016】
植物の種類は、特に限定されるものではなく、公知の植物(例えば、トマト、ナス、タバコ、ブロッコリー等)であればよい。
【0017】
植物親和性材料の形状は、植物細胞と植物細胞との接着を補助することができる限りにおいて、特に限定されるものではないが、シート状、粒子状、球状、膜状、または偏平状等が挙げることができる。植物細胞と植物細胞との接着をより効果的に補助するという観点から特にシート状であることが好ましい。
【0018】
本発明の一実施形態における植物親和性材料は、リン酸カルシウムを含むことを特徴としている。
【0019】
リン酸カルシウムとしては、特に限定されないが、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、またはリン酸八カルシウム等を挙げることができる。植物細胞との親和性がより優れている点で、これらの中では、ハイドロキシアパタイトが好ましい。なお、ここでいうリン酸三カルシウムは、リン酸三カルシウム前駆体を含む意味で用いる。
【0020】
リン酸カルシウムの形状は、植物細胞と植物細胞との接着を補助することができる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば、粒子状、ロッド状、繊維状または板状を挙げることができる。
【0021】
粒子状のリン酸カルシウムの粒子径は、当該リン酸カルシウムが植物細胞に付着できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、10nm~1000nmであることが好ましく、15nm~700nmであることがより好ましく、20nm~500nmであることがさらに好ましい。粒子状のリン酸カルシウムの粒子径を上記範囲にすることにより、植物細胞と植物細胞との接着をより効率的に補助することができる。
【0022】
植物親和性材料は、植物細胞と植物細胞との接着を補助することができる限りにおいて、さらにその他の成分を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の一実施形態における植物親和性材料は、リン酸カルシウムとしてハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))を含んでいてもよい。
【0024】
ハイドロキシアパタイトの製造方法は、ハイドロキシアパタイトを製造できる工程を包含していればよく、特に限定されない。例えば、pHをアルカリ性(例えば、pH12.0)に調節したCa(NO水溶液に対して、pHをアルカリ性(例えば、pH12.0)に調節した(NHHPO水溶液を、高温(例えば、80℃)にて徐々に添加すればよい。
【0025】
ハイドロキシアパタイトの粒子径としては特に限定されないが、10nm~1000nmが好ましく、15nm~700nmがさらに好ましく、20nm~500nmが最も好ましい。またハイドロキシアパタイトの粒子径の変動係数は、20%以下であることが好ましく、18%以下であることがさらに好ましく、15%以下であることが最も好ましい。なおハイドロキシアパタイトの粒子径および変動係数は、動的光散乱法または電子顕微鏡を用いて、少なくとも100個以上のハイドロキシアパタイトについて粒子径を測定し、当該測定結果に基づいて計算すればよい。なお本明細書中、「変動係数」は、標準偏差÷平均粒子径×100(%)で計算することができる粒子間の粒子径のバラツキを示す値である。
【0026】
上記のような微細でかつ粒子径が均一なハイドロキシアパタイトを製造する方法については、特に限定されるものではないが、例えば、特開2002-137910号公報に記載された方法を利用することができる。つまり、界面活性剤/水/オイル系エマルジョン相にカルシウム溶液およびリン酸溶液を可溶化して混合させ、界面活性剤の曇点以上で反応させることによって、ハイドロキシアパタイトを製造することができる。また、このとき上記界面活性剤の官能基および親水性/疎水性比の割合を変えることによって、ハイドロキシアパタイトの粒子径を制御することができる。
【0027】
上記ハイドロキシアパタイトを製造する原理を簡単に説明すれば、以下の通りである。界面活性剤/水/オイル系エマルジョン相にカルシウム溶液およびリン酸溶液を混合し、反応させてハイドロキシアパタイ卜微粒子を合成する方法においては、界面活性剤のミセルの中でハイドロキシアパタイトの核が成長し、結晶成長する。このとき反応温度を界面活性剤の曇点以上に設定することにより、ミセルの熱力学的安定性を制御することができる。すなわち界面活性剤の曇点以上に反応温度を上げることによって、界面活性剤のミセルを形成する能力を下げることができる。その結果、ミセルという枠の中で制限を受けていたハイドロキシアパタイトの結晶成長の駆動力が、ミセルの枠を維持しようとする駆動力よりも大きくなる。そして、そのメカニズムを利用して結晶の形態(例えば、形や大きさなど)を制御することができる。
【0028】
界面活性剤によってミセルを作る場合には、界面活性剤の官能基(親水性部位)および当該界面活性剤の親水性/疎水性比が重要であり、これらが異なれば、ミセルの安定性、および曇点も異なる。また界面活性剤の曇点は、界面活性剤の種類によって異なる。したがって、界面活性剤の種類を適宜変更することにより、ミセルの安定性および雲点を変更することが可能となり、これによって、ハイドロキシアパタイト微粒子の粒子径を制御することができる。
【0029】
なお上記方法において用いる界面活性剤の種類は特に限定されず、例えば、特開平5-17111号公報に開示された公知の陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤を用いることができる。より具体的には、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどを用いることが好ましい。また、陽イオン界面活性剤としては、ステアリルアミン塩酸塩、ラリウルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩などを用いることが好ましい。また、陰イオン界面活性剤としては、ラリウルアルコール硫酸エステルナトリウム、オレイルアルコール硫酸エステルナトリウムなどの高級アルコール硫酸エステル塩類、ラリウル硫酸ナトリウム、ラリウル硫酸アンモニウムなどのアルキル硫酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類などを用いることが好ましい。また、両性界面活性剤としては、アルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型、アミンオキサイド型の両性界面活性剤を用いることが好ましい。上記界面活性剤は、1種類、または2種類以上の組み合わせにて使用することが可能である。このなかで、曇点および溶解性の点から、ペンタエチレングリコールドデシルエーテルを使用することが最も好ましい。
【0030】
また上記方法において利用可能なオイル相としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ドデカン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、クロロベンゼン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ブタノールなどのアルコール類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などを挙げることができる。
【0031】
これらのオイル相は、使用する界面活性剤に応じて、水の溶解度を小さくするとともに、上記界面活性剤のいずれかを溶解するように、1種もしくは2種を選択すればよい。水の溶解度および界面活性剤の溶解性の点から、上記オイル相としては、ドデカンを使用することが最も好ましい。この他反応温度、反応時間、原料の添加量等は、ハイドロキシアパタイトの組成に応じて適宜最適な条件を選択の上、採用すればよい。ただし反応温度の上限は、水溶液の反応であるから溶液が沸騰しない温度であれることが好ましく、具体的には90℃以下が好ましい。
【0032】
また、本工程には製造したハイドロキシアパタイトを水等で洗浄する工程、遠心分離、ろ過等でハイドロキシアパタイトを回収する工程が含まれていてもよい。
【0033】
本実施の一実施形態の植物親和性材料では、ハイドロキシアパタイトの焼結体を用いていてもよい。
【0034】
ハイドロキシアパタイトの焼結体の形状は特に限定されないが、例えば、球子状またはロッド状であってもよい。
【0035】
ハイドロキシアパタイトの焼結体の形状が粒子状である場合、当該粒子の平均粒子径は、10nm~1000nmであることが好ましく、15nm~700nmであることがより好ましく、20nm~500nmであることがさらに好ましい。当該粒子の平均粒子径を上記範囲にすることにより、植物細胞と植物細胞との接着をより効率的に補助することができる。
【0036】
ハイドロキシアパタイトの焼結体の形状が粒子である場合、当該粒子の粒子径の変動係数は、10%~50%であることが好ましく、10%~40%であることがより好ましく、10%~20%であることがさらに好ましい。当該粒子の粒子径の変動係数を上記範囲にすることにより、植物細胞と植物細胞との接着をより効率的に補助することができる。
【0037】
ハイドロキシアパタイトの焼結体は、アモルファスな(低結晶性の)ハイドロキシアパタイトを焼結させることにより得られる。具体的には、例えば、後述する方法で焼結させることにより、焼結されたハイドロキシアパタイトの粒子を得ることができる。また、ハイドロキシアパタイトの焼結体は、結晶性の高い、高結晶性ハイドロキシアパタイトを含む(または、結晶性の高い、高結晶性ハイドロキシアパタイトである)ことが好ましい。結晶性の度合いは、X線回折法(XRD)により測定することができる。具体的には、各結晶面を示すピークの半値幅が狭ければ狭いほど結晶性が高い。例えば、「高結晶性」とは、d=2.814での半値幅が0.8以下(好ましくは、0.7以下)場合で有りえ、「低結晶性」とはd=2.814での半値幅が0.8超える場合で有り得る。
【0038】
ハイドロキシアパタイトの焼結体は、アモルファスなハイドロキシアパタイトを焼結させることによって得ることができる。アモルファスなハイドロキシアパタイトは、湿式法、乾式法、加水分解法または水熱法等の公知の製造方法によって、人工的に製造されたものであってもよく、また、骨、歯等から得られる天然由来のものであってもよい。
【0039】
アモルファスなハイドロキシアパタイトを焼結する際の温度は特に限定されないが、例えば、100℃~2000℃であることが好ましく、200℃~2000℃であることが更に好ましく、300℃~2000℃であることが更に好ましく、400℃~2000℃であることが更に好ましく、500℃~2000℃であることが更に好ましく、500℃~1800℃であることが更に好ましく、500℃~1500℃であることが更に好ましく、500℃~1250℃であることが更に好ましく、500℃~1200℃であることが最も好ましい。
【0040】
焼結温度の下限値としては、500℃以上が好ましい。焼結温度が500℃よりも低いと、アモルファスなハイドロキシアパタイトの焼結が十分でない場合がある。それ故に、焼結温度が500℃以上である方が、より高い効果を得ることができる。
【0041】
一方、焼結温度の上限値としては、1800℃以下が好ましく、1500℃以下が更に好ましく、1250℃以下が更に好ましく、1200℃以下が最も好ましい。焼結温度が1800℃よりも高いと、ハイドロキシアパタイトが分解する場合がある。それ故に、焼結温度が1800℃以下である方が、より高い効果を得ることができる。
【0042】
アモルファスなハイドロキシアパタイトを焼結する際の時間としては、特に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。なお、焼結によって、ハイドロキシアパタイトの焼結体の粒子同士が融着してしまう場合もあるが、このような場合には、焼結後の粒子を粉砕して使用することが可能である。
【0043】
ハイドロキシアパタイトの焼結体の製造方法は特に限定されないが、例えば、混合工程と焼結工程とを含む分散焼成(焼結)法であることが好ましい。分散焼成法によって得られるハイドロキシアパタイトの焼結体の粒子の粒子径には、未焼結のハイドロキシアパタイトの製造工程で得られる、ハイドロキシアパタイトの粒子径がそのまま反映される。それ故に、分散焼成法であれば、ハイドロキシアパタイトの焼結体の粒子の平均粒子径を、上述した範囲の平均粒子径に調製し易い。
【0044】
ハイドロキシアパタイトの焼結体の製造方法は、上述した工程以外に、一次粒子生成工程、および/または、除去工程を含んでいてもよい。これらの工程は、例えば、一次粒子生成工程、混合工程、焼結工程、除去工程の順で行われ得る。
【0045】
本実施の一実施形態の植物親和性材料では、ハイドロキシアパタイトのナノ粒子を用いていてもよい。
【0046】
ハイドロキシアパタイトのナノ粒子は、未焼成体(アモルファスなハイドロキシアパタイト)であっても焼成体であってもよい。ハイドロキシアパタイトのナノ粒子が焼成体であれば、多孔質のナノ粒子を作製することが容易となり、その結果、当該ナノ粒子の表面上に様々な物質を効果的に設けることが可能となる。
【0047】
ハイドロキシアパタイトのナノ粒子の粒子径は特に限定されないが、10nm~1000nmであることが好ましく、15nm~700nmであることがより好ましく、20nm~600nmであることが更に好ましく、20nm~500nmであることが最も好ましい。上記構成であれば、後述する基材表面上に、均一にハイドロキシアパタイトのナノ粒子を付着させることができる。なお、上記ナノ粒子の粒子径は、例えば、動的光散乱法または電子顕微鏡によって測定することが可能である。
【0048】
〔基材〕
本発明の一実施形態における植物親和性材料では、リン酸カルシウムが、基材表面に付着していてもよい。なお、本発明の一実施形態における植物親和性材料では、リン酸カルシウムが、基材表面の全体に付着していてもよいし、基材表面の一部に付着していてもよい。
【0049】
上記基材を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、生体吸収性高分子等を挙げることができる。
【0050】
上記基材を構成する生体吸収性高分子としては特に限定されないが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリヒドロキシブチレート、ポリカーボネート、ポリアミド、セルロース、キチン、キトサン、デンプン、ポリグルタミン酸、ポリジオキサノン、シアノアクリレート重合体、ポリカプロラクトン、合成ポリペプチド、ヒアルロン酸、ポリリンゴ酸、ポリコハク酸ブチレン、およびこれらの組み合わせからなる共重合体からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。これらの中では、ポリ乳酸を用いることが好ましい。また、ポリ乳酸とその他の生体吸収性高分子とを併用して、基材を形成することが、更に好ましい。
【0051】
ポリ乳酸と併用する生体吸収性高分子としては特に限定されないが、例えば、上述したポリ乳酸以外の生体吸収性高分子を1つ併用してもよいし、複数併用してもよい。
【0052】
ポリ乳酸と併用する生体吸収性高分子としては、例えば、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトンまたはポリエチレングリコール、およびこれらの組み合わせからなる共重合体が好ましい。
【0053】
基材を形成する生体吸収性高分子の形状は特に限定されず、適宜所望の形状をとることが可能である。例えば、上記生体吸収性高分子の形状としては、粒子状、繊維状、膜状、または不織布であることが好ましい。なお、本明細書中において「不織布」とは、織る工程を経ずに形成された布状の繊維を意図する。これらの形状の中では、不織布であることが最も好ましい。
【0054】
上記基材の形状も特に限定されず、適宜所望の形状をとることが可能である。上記基材の形状としては、例えば、シート状、球状、膜状、または偏平状等が挙げることができる。特に、シート状であることが好ましい。なお、本発明の一実施形態における植物親和性材料が基材を含む場合には、当該植物親和性材料の形状を、基材の形状と略同じ形状に設定することが可能である。
【0055】
リン酸カルシウムを基材表面に付着させる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、リン酸カルシウムが適当な溶媒に溶解した溶液を作製した後、当該溶液中に基材を分散させればよい。
【0056】
上記溶媒としては特に限定されず、例えば、水系溶媒または有機溶媒を用いることが可能である。更に具体的に、水系溶媒としては、水、エタノール、またはメタノールなどを用いることが好ましく、有機溶媒としては、アセトン、またはトルエンなどを用いることが好ましい。
【0057】
リン酸カルシウムおよび基材を含む溶液は、超音波処理にかけられることが好ましい。超音波処理を行うことによって、上記基材の表面全体にわたって、より厚さが均一な、リン酸カルシウムからなる表層を形成することが可能となる。なお、上記超音波処理の具体的な条件は特に限定されない。また、超音波をかける装置も、適宜市販の装置を用いることが可能である。
【0058】
上記超音波処理のあと、リン酸カルシウムによってコーティングされた基材を分離・洗浄した後、当該基材を乾燥させる工程を含むことが好ましい。
【0059】
上記基材を分離する工程は特に限定されないが、例えば、遠心分離、またはフィルター濾過によって上記基材を分離することが好ましい。また、上記基材は、溶媒を用いて洗浄することができる。上記溶媒としては特に限定されないが、例えば、水系溶媒または有機溶媒を用いることが好ましい。更に具体的には、水系溶媒としては、水、エタノール、またはメタノールなどを用いることが好ましく、有機溶媒としては、アセトン、またはトルエンなどを用いることが好ましい。
【0060】
洗浄された後の基材は、乾燥させることが好ましい。乾燥方法としては特に限定されず、例えば、室温にて乾燥させることも可能であり、所望の温度をかけることによって乾燥させることも可能である。
【0061】
上記リン酸カルシウムが付着している基材表面の位置は、植物組織を接合できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば、リン酸カルシウムが基材表面の一部を覆うように付着していてもよく、リン酸カルシウムが基材表面の全体を覆うように付着していてもよい。
【0062】
本実施の一実施形態の植物親和性材料がシート状である場合、当該シートの広さ、および、厚さは、特に限定されず、所望のサイズおよび厚さに設定可能である。例えば、シートの広さは、活着させようとする、台木の断面の面積、および、穂木の断面の面積に合わせて設定すればよい。一方、シートの厚さは、植物細胞と植物細胞との接着をより効率的に補助するという観点から、10~500μmが好ましく、10~350μmがより好ましく、10~250μmがより好ましく、50~150μmがより好ましい。
【0063】
〔2.植物組織の接合方法〕
本発明の一実施形態における植物組織の接合方法は、上記植物親和性材料を用いることが好ましい。
【0064】
本発明の一実施形態における植物組織の接合方法は、特に限定されるものではないが、(i)第1の植物を切断して第1の植物組織が露出した第1の切断面を形成する工程と、(ii)第2の植物を切断して第2の植物組織が露出した第2の切断面を形成する工程と、(iii)前記第1の切断面と前記第2の切断面との間に植物親和性材料を配置させる工程と、(iv)前記第1の植物組織および前記第2の植物組織同士を固定する工程と、を含んでいることが好ましい。
【0065】
以下に、工程(i)~工程(iv)の各々について説明する。
【0066】
上述したように、本発明の一実施形態における植物組織の接合方法は、(i)第1の植物を切断して第1の植物組織が露出した第1の切断面を形成する工程と、(ii)第2の植物を切断して第2の植物組織が露出した第2の切断面を形成する工程と、を含んでいることが好ましい。
【0067】
工程(i)および工程(ii)において、接合させる植物組織としては、特に限定されるものではなく、分裂組織、表皮組織、柔組織、機械組織等同士を接合させることができる。このとき、第1の植物組織と第2の植物組織とは、同じ種類の組織であってもよいし、異なる種類の組織であってもよい。
【0068】
本発明の一実施形態における植物組織の接合方法は、同じ植物組織同士の接合にも異なる植物組織同士の接合にも用いることができる。また、同じ種類の植物の接合、異なる種類の植物の接合、同株同士の接合、および異なる株との接合にも用いることができる。つまり、第1の植物と第2の植物とは、同じ種類の植物であってもよいし、異なる種類の植物であってもよい。
【0069】
工程(i)および工程(ii)において、第1の植物および第2の植物を切断する方法は、植物組織が露出した切断面が破壊されず、植物組織同士を接合できる方法であればよく、メスまたはカッター等を適宜用いて第1の植物および第2の植物を切断してもよい。
【0070】
植物組織が露出した切断面は、植物組織を接合しやすいように、適宜所望の形態に形成すればよい。接ぎ木の場合は、切断面に配置される維管束を多くすれば活着効率を上げることができるため、台木となる植物を斜めに切断して切断面(換言すれば、斜めの切断面)を形成することが好ましい。また、台木を穂木に十分にはめ込むことができ、活着効率を上げることができるため、穂木の切断面に縦に切れ目を入れることが好ましい。
【0071】
上述したように、本発明の一実施形態における植物組織の接合方法は、(iii)前記第1の切断面と前記第2の切断面との間に植物親和性材料を配置させる工程を含んでいることが好ましい。
【0072】
工程(iii)において、植物親和性材料を配置する方法は、特に限定されるものではない。植物親和性材料の形状がシート状である場合、第1の切断面および/または第2の切断面に付着させてもよいし、第1の切断面および/または第2の切断面を覆うように、第1の植物および/または第2の植物に巻きつけてもよい。
【0073】
上述したように、本発明の一実施形態における植物組織の接合方法は、(iv)第1の植物組織および第2の植物組織同士を固定する工程を含んでいることが好ましい。
【0074】
工程(iv)において、第1の植物組織および第2の植物組織同士を固定する方法は、接合部分から水分の蒸発を防ぐことができ、かつ、接合部分が活着するまで、接合部分を固定できることができる限りにおいて、特に限定されるものではないが、パラフィルム、または、公知の接ぎ木用固定用部材等を接合部分に巻きつける方法が好ましい。水分の蒸発を十分防ぐことができ、かつ、植物組織への影響が小さいことから、パラフィルムが好ましい。
【0075】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0076】
〔1.ハイドロキシアパタイト粒子の作製〕
アンモニア水にてpHを12.0に調節したCa(NO水溶液(42mM、800mL)を、コンデンサーおよび半月状攪拌翼が設置された1Lフラスコに注ぎ込み、80℃に保持した。
【0077】
アンモニア水にてpHを12.0に調節した(NHHPO水溶液(100mM、200mL)を、上記フラスコに35℃にて速やかに混合し、24時間反応させた。これによって、低結晶性ハイドロキシアパタイト粒子分散液を作製した。低結晶性ハイドロキシアパタイト粒子分散液中の低結晶性ハイドロキシアパタイト粒子1.0gに対して、ポリアクリル酸1.0gを100mLの純水に溶解させ、アンモニア水(28.0%)を用いてポリアクリル酸のpHが5.0になるように調製した(溶液A)。その後、低結晶性ハイドロキシアパタイト粒子分散液を撹拌しながら、ペリスタポンプを用いて溶液Aを1分間10mLの割合で滴下した。さらに、5分間そのまま撹拌させた(溶液B)。同様に、低結晶性ハイドロキシアパタイト粒子1.0gに対して、硝酸カルシウム3.7gを370mLの純水に溶解させた(溶液C)。溶液Bを撹拌しながら、ペリスタポンプを用いて溶液Cを1分間10mLの割合で滴下した。その後、アスピレータを用いて溶液Bと溶液Cとの混合液を吸引濾過し、吸引濾過したサンプルを1時間減圧乾燥した。乾燥させたサンプルを乳鉢で粉砕し、るつぼに入れ電気炉にて800℃で1時間焼成した。炉冷後、焼成したハイドロキシアパタイト粒子を乳鉢で粉砕した。
【0078】
純水800mLに硝酸アンモニウム8.0gを溶解させ、窒素雰囲気下で30分間撹拌し、洗浄溶液を作製した。焼成したハイドロキシアパタイト粒子に洗浄溶液を加え、超音波照射を行うことで沈殿した反応物を十分に分散させた後、8,500rpmで3分間遠心分離した。上澄み液を捨てて硝酸アンモニウム水溶液を加え、以下、この精製を上澄み液のpHが中性になるまで4回繰り返した。さらに取り出したサンプルを、純水を用いて同様の方法で精製した。最後に、サンプルを1時間減圧乾燥させ、乳鉢で粉砕し回収することで、高結晶性ハイドロキシアパタイト粒子を得た。
【0079】
〔2.ハイドロキシアパタイトシートの作製〕
ポリ乳酸不織布膜(生分解性シート)(ユニチカ製、商品名:テラマックス、厚さ100μm(実測値)、目付20g/m、引裂強力3N)をアンモニア水溶液(pH12.0)に30分間浸漬することによって、ポリ乳酸不織布膜の表面にカルボキシル基を導入した。上記処理後のポリ乳酸不織布膜を、水およびエタノールにて洗浄した。
【0080】
作製した高結晶性ハイドロキシアパタイト粒子を、2重量%の濃度にてエタノール中に分散させた。
【0081】
洗浄したポリ乳酸不織布膜を、上記高結晶性ハイドロキシアパタイト粒子を分散させたエタノール中に浸漬し、室温にて5分間の超音波照射(超音波照射器:株式会社エヌエヌディ製のUS-2、出力:120W、周波数:38kHz)を行った。室温にて30分間放置した後、上記ポリ乳酸不織布膜をエタノールにて洗浄し、室温にて乾燥させ、厚さ100μmのハイドロキシアパタイトシート(以下「HApシート」という。)を作製した。
【0082】
図1(a)は、作製したHApシートの走査型電子顕微鏡にて得られた像であり、図1(b)は、図1(a)の選択範囲を拡大した像である。図1(a)および図1(b)に示すように、生分解性シートに含まれている繊維に、ハイドロキシアパタイトが付着していることがわかる。
〔3.植物細胞と植物親和性材料との接着性試験〕
栽培期間7~10日のトマト(品種:マイクロトム(Micro-Tom)、カリフォルニア大学デービス校から分譲)の子葉を用いて、カルス由来細胞を採取し、MS液体培地で調製し、トマト懸濁細胞を得た。さらに、2cm×2cmのHApシートを加えて培養した。
【0083】
図2(a)~図2(e)は、それぞれ、HApシートとトマト懸濁細胞との、培養開始から3日目、7日目、8日目、9日目および10日目の実体顕微鏡にて得られた像である。また、図3(a)~図3(d)は、HApシートとトマト懸濁細胞との培養開始から10日目の走査型電子顕微鏡にて得られた像である。
【0084】
図2(a)に示すように、培養開始から3日目において、トマト懸濁細胞がHApシートに接着し始める様子が確認できた。また、図2(e)に示すように、培養開始から10日目において、トマト懸濁細胞がHApシートに接着している様子が確認できた。さらに、培養開始から10日目において、HApシートとトマト懸濁細胞との培養状態を走査型電子顕微鏡で確認したところ、HApシートと細胞との接着が確認できた(図3(a)~図3(d)参照)。
【0085】
また、上記調製したトマト懸濁細胞をMS液体培地中に懸濁し、2cm×2cmの生分解性シートを加えて培養した。
【0086】
図4(a)は、生分解性シートとトマト懸濁細胞との、培養開始から10日目の実体顕微鏡にて得られた像であり、図4(b)および図4(c)は、本発明の比較例の材料とトマト懸濁細胞との、培養開始から10日目の走査型電子顕微鏡にて得られた像である。
【0087】
図4(a)に示すように、培養開始から10日経っても、トマト懸濁細胞と生分解性シートとが接着している様子は確認できなかった。図4(b)および図4(c)に示すように、走査型電子顕微鏡にて得られた像であっても、トマト懸濁細胞と生分解性シートとが接着している様子は確認できなかった。
〔4.接ぎ木試験〕
栽培期間20~25日のトマト(品種:マイクロトム(Micro-Tom)、カリフォルニア大学デービス校から分譲)の茎をメスで切断し、茎の切断上部および茎の切断下部をそれぞれ、穂木および台木とした。その後、穂木の切断面を斜めに切断し、台木の切断面に縦に切れ目を入れた。上記穂木の切断面に1cm×1cmのHApシートを付着させ、余分なシート部分を切除し、上記HApシートを付着させた穂木を、上記台木の切れ目にはめ込んだ(図5参照)。台木と穂木とのはめ込み部分が完全に覆われるように、台木および穂木をパラフィルム(Bemis Flexible Packaging社製)で巻いて固定し、HApシート処理区とした。上記シートを挟んでから毎日、HApシート処理区において、台木と穂木とが活着しているかどうかを観察した。
【0088】
また、穂木の切断面に生分解性シートのみを付着させた以外は、HApシート処理区と同様にして、HAp未コート処理区とした。その後、上記シートを挟んでから、6日目において、HAp未コート処理区において、台木と穂木とが活着しているかどうかを観察した。
【0089】
HApシート処理区およびHAp未コート処理区の活着率を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示すように、HApシート処理区の活着率は85%(接ぎ木を12本行ったうち、10本が活着した)、HAp未コート処理区の活着率は50%(接ぎ木を12本行ったうち、6本が活着した)となり、トマトの台木と穂木との間にハイドロキシアパタイトをコーティングした生分解性シートを挟むことによって、高い活着率を得ることができた。
【0092】
また、HApシート処理区は、台木と穂木との間にHApシートを挟んでから、平均5~6日で、台木と穂木との活着が確認されたが、HAp未コート処理区は、台木と穂木との間に生分解性シートを挟んでから、平均8~9日で、台木と穂木との活着が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明に係る植物親和性材料は、例えば、植物基礎研究分野および農業分野に好適に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5