(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】半導体ナノ粒子および光源装置
(51)【国際特許分類】
C09K 11/62 20060101AFI20220513BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20220513BHJP
C09K 11/64 20060101ALI20220513BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
C09K11/62 ZNM
H01L33/50
C09K11/64
C09K11/08 G
(21)【出願番号】P 2018119334
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091340
【氏名又は名称】高橋 敬四郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】風間 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田村 渉
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康之
(72)【発明者】
【氏名】村松 淳司
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 澄志
(72)【発明者】
【氏名】中谷 昌史
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/125435(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaInNを含むコア、および、該コアを被覆する、AlInNを含むシェル、を備え、
吸収する光の波長のうち最長となる波長を吸収端波長とし、発光波長のうち光強度が最大となる波長を発光ピーク波長としたとき、該発光ピーク波長が該吸収端波長よりも94nm以上長い、半導体ナノ粒子。
【請求項2】
前記コアの体積は、該コアおよび前記シェルの全体の体積の1/20以下であり、
前記シェルの厚みは、前記コアの粒径よりも大きく、かつ、16.4nmよりも小さい、請求項1記載の半導体ナノ粒子。
【請求項3】
前記コアの組成はGa
1-xIn
xN(0.00≦x≦0.72)であり、前記シェルの組成はAl
1-yIn
yN(0.18≦y≦0.78)である請求項1または2記載の半導体ナノ粒子。
【請求項4】
前記吸収端波長が500nm以下であり、前記発光ピーク波長が610nm~650nmである請求項1~3
のいずれか1項記載の半導体ナノ粒子。
【請求項5】
第1の波長の光を出射する光源と、
前記光源から出射された第1の波長の光を吸収して、該第1の波長とは異なる第2の波長の光を放出する波長変換部材と、
前記波長変換部材が放出する第2の波長の光は吸収せずに、前記光源が出射する第1の波長の光を吸収して、該第1および第2の波長とは異なる第3の波長の光を放出する
請求項1記載の半導体ナノ粒子と、
を備える光源装置。
【請求項6】
前記波長変換部材は、粉粒状の形態を有し、
前記波長変換部材および前記半導体ナノ粒子は、混合粉粒体を構成する、請求項5記載
の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物系の半導体材料から構成される半導体ナノ粒子、および、当該半導体ナノ粒子を利用した光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数nm~十数nm程度にまで小さくされた物質は、バルク状態とは異なる物性を示すようになる。このような現象・効果は、キャリア閉じ込め効果や量子サイズ効果などと呼ばれ、また、このような効果が発現する物質は、量子ドットなどと呼ばれる。量子ドットは、サイズ(全体的な大きさ)を変化させることで、そのバンドギャップ(光吸収波長や発光波長)を調整することができる。
【0003】
半導体材料を含む量子ドット(半導体ナノ粒子)の用途として、蛍光体がある。高エネルギーの光や粒子線を受けて所定波長の蛍光を発することが可能である。半導体ナノ粒子を均等に分布させ、蛍光を発生させることにより、面光源を得ることができる。半導体ナノ粒子には、コア(核)をシェルが被覆する、コア・シェル構造を有するものがある(たとえば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-148028号公報
【文献】特開2016-145328号公報
【文献】特開2016-135863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、新規な構造を有する半導体ナノ粒子を得ることにある。また、本発明の他の目的は、光取り出し効率が高く、色味の調整が容易な光源装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主な観点によれば、GaInNを含むコア、および、該コアを被覆する、AlInNを含むシェル、を備え、吸収する光の波長のうち最長となる波長を吸収端波長とし、発光波長のうち光強度が最大となる波長を発光ピーク波長としたとき、該発光ピーク波長が該吸収端波長よりも94nm以上長い、半導体ナノ粒子、が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によれば、第1の波長の光を出射する光源と、前記光源から出射された第1の波長の光を吸収して、該第1の波長とは異なる第2の波長の光を放出する波長変換部材と、前記波長変換部材が放出する第2の波長の光は吸収せずに、前記光源が出射する第1の波長の光を吸収して、該第1および第2の波長とは異なる第3の波長の光を放出する段落[0006]記載の半導体ナノ粒子と、を備える光源装置、が提供される。
【発明の効果】
【0008】
新規な構造の半導体ナノ粒子を得ることができる。また、光取り出し効率が高く、色味の調整が容易な光源装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1aおよび
図1bは、半導体ナノ粒子を利用した光源装置を概略的に示すダイアグラムである。
【
図2】
図2aは、ZnOS混晶系、GaInN混晶系、AlInN混晶系の格子定数とエネルギーギャップの関係を示すグラフであり、
図2bは、ZnO
xS
1-x混晶系、Ga
1-xIn
xN混晶系、Al
1-xIn
xN混晶系の組成xに対する格子定数の変化を示すグラフである。
【
図3】
図3a~
図3dは、製造過程における実施例による半導体ナノ粒子を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4aおよび
図4bは、製造した半導体ナノ粒子の光学特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1aおよび
図1bは、半導体ナノ粒子を利用した光源装置10を概略的に示すダイアグラムである。光源装置10は、主に、LED光源12と、波長変換部材(蛍光体)としての半導体ナノ粒子30を含む波長変換フィルム14と、を含む。
【0011】
LED光源12には、たとえば、窒化物半導体を含む半導体発光素子が用いられる。LED光源12は、青色光(たとえば波長450nm)を出射する。
【0012】
図1aに示すように、波長変換フィルム14は、たとえば、透光性を有する樹脂フィルム中に、粉粒状の波長変換部材が一様に分散する構成である。波長変換部材は、光源12から出射される青色光を吸収して緑色光(たとえば波長500nm~570nm、具体的には波長532nm)を放出する第1の波長変換部材20、および、当該青色光を吸収して赤色光(たとえば波長610nm~650nm、具体的には波長630nm)を放出する第2の波長変換部材30、が混合する形態を有する。
【0013】
第1の波長変換部材20には、たとえば、コアをCdSeとし、シェルをZnSとした半導体ナノ粒子(CdSe/ZnS粒子)を用いることができる。また、第2の波長変換部材30には、コアをGaInNとし、シェルをAlInNとした半導体ナノ粒子(GaInN/AlInN粒子)を用いることができる。
【0014】
なお、
図1bに示すように、波長変換フィルム14は、第1の波長変換部材20が分散するフィルム14Aと、第2の波長変換部材30が分散するフィルム14Bと、が積層する多層フィルムであってもかまわない。
【0015】
光源装置10からは、光源12による青色光、第1の波長変換部材20による緑色光、および、第2の波長変換部材30による赤色光、が出射される。それらの合成光は、白色光となる。
【0016】
光取り出し効率の向上ないし合成光の色味調整の容易性の観点から、第2の波長変換部材30は、第1の波長変換部材20による緑色光は吸収せずに、光源12による青色光(波長500nm以下)のみを吸収することが好ましい。一般化して言えば、第2の波長変換部材30の発光波長は、光吸収波長よりも十分に長いことが好ましく、具体的には94nm以上長いことが望ましい。つまり、第2の波長変換部材30が吸収する光のエネルギーは、第2波長変換部材20が放出する光(赤色光)のエネルギーよりも350meV以上高い(緑色光よりも波長が短い)ことが望ましい。
【0017】
本発明者らは、このような条件を有する波長変換部材30、具体的には、コアをGaInNとし、シェルをAlInNとした半導体ナノ粒子(GaInN/AlInN粒子)について検討を行った。以下、実施例によるGaInN/AlInN粒子の構造や製造方法などについて説明する。
【0018】
図2aは、ZnOS混晶系、GaInN混晶系、AlInN混晶系の格子定数とエネルギーギャップの関係を示すグラフである。「混晶系」は、両端物質と中間の混晶を含む系を表す用語である。横軸がnm(ナノメータ)を単位とする格子定数を示し、縦軸がeV(エレクトロンボルト)を単位とするエネルギーギャップを示す。発光波長を決定するエネルギーギャップは、ZnO:3.2eV、ZnS:3.8eV、AlN:6.2eV、GaN:3.4eV、InN:0.64eVである。
【0019】
六方晶系の結晶をc軸方向に結晶成長する場合、成長面内の格子定数としてa軸方向の格子定数を用いる。ZnO、ZnSの格子定数はa軸0.324nm、0.382nmであり、AlN、GaN、InNの格子定数はa軸0.311nm、0.320nm、0.355nmである。
【0020】
化合物を対とする場合、格子定数の1番近い組み合わせでも、ZnOの0.324nmとGaNの0.320nmであり、1%を超える格子不整が存在する。格子不整合は、結晶格子を歪ませ、発光効率や信頼性を低下させる原因となりうる。
【0021】
図2bは、ZnO
xS
1-x混晶系、Ga
1-xIn
xN混晶系、Al
1-xIn
xN混晶系の組成xに対する格子定数(a軸方向)の変化を概略的に示すグラフである。横軸が組成xを示し、縦軸が格子定数を示す。ZnOSとAlGaInNは同じ六方晶系のウルツ鉱結晶構造を持つ。混晶を形成すると両端物質の中間の格子定数を調整でき、格子整合を実現できる。
【0022】
格子定数、エネルギーギャップ、組成は一定の関係にあり、
図2bは、基本的に
図2aと同じ内容を示す。着目するパラメータに従って、グラフを使い分ける。例えば、格子整合する組成は、
図2bにおいて、縦軸(格子定数)が同一となる組成である。好ましい格子整合の整合範囲は、小さい方の格子定数を基準(100%)として、格子定数の差が1.0%以内であろう。
【0023】
ZnOxS1-xとGa1-xInxN(Al1-xInxN)とが格子整合可能な範囲を実線で囲って示す。Ga1-xInxN(0.15≦x≦1.0),Al1-yInyN(0.3≦y≦1.0),ZnOzS1-z(0.47≦z≦1.0)の組成範囲において、ZnOSとGaInN(AlInN)の格子整合が可能である。
【0024】
ZnOSを下地結晶とし、その上に格子整合するAlGaInNを成長する場合、界面における歪みを低減できる。歪みを低減することにより、結晶欠陥を防止し、良質な半導体ナノ粒子を実現できよう。
【0025】
製造しやすいZnOSを用いて母材(基材)粒子を形成し、その上に格子整合するAlGaInN結晶をヘテロエピタキシャル成長させると、信頼性の高い半導体ナノ粒子を製造できる。さらにその上に他のAlGaInN結晶を積層成長することも可能である。
【0026】
なお、Ga1-xInxNをコアとし、Al1-xInxNをシェルとする半導体ナノ粒子を形成する場合であって、コアから可視光、特に赤色光を放出させようとした場合において、コア(Ga1-xInxN)とシェル(Al1-xInxN)とが格子整合可能な範囲を破線で囲って示す。Ga1-xInxN(0.00≦x≦0.72),Al1-yInyN(0.18≦y≦0.78)の組成範囲において、コア(GaInN)とシェル(AlInN)との格子整合が可能である。
【0027】
図3a~
図3dを参照して、実施例による半導体ナノ粒子の製造方法の一例を説明する。1粒の半導体ナノ粒子を示すが、以下に説明する液相合成によれば、多数の半導体ナノ粒子が同時に製造される。
【0028】
実施例による半導体ナノ粒子は、コア(GaInN)を成長させるための基材粒子(ZnOS)を作製する工程(
図3a)、基材粒子の表面にコアを成長する工程(
図3b)、基材粒子を除去する工程(
図3c)、および、コアを被覆するシェル(AlInN)を形成する工程(
図3d)、により製造される。なお、半導体ナノ粒子は、基材粒子を利用せず、コア(およびシェル)を直接合成する方法で製造してもかまわない。
【0029】
最初に、
図3aに示すように、基材粒子32を合成する。実施例において、基材粒子32は、ウルツ鉱型のZnO
0.78S
0.22からなり、いびつな塊状の形状を有する。また、基材粒子32の平均粒径は約4nmであり、格子定数は約0.337nmである。
【0030】
反応溶媒であるオレイルアミン(10mL)に、酢酸亜鉛(2.0mmol)および硫黄(0.4mmol)を投入・混合し、窒素雰囲気下において、当該混合溶液を温度130℃で1時間保持し、引き続き、温度250℃で1時間保持する。これにより、基材粒子32が合成される。その後、基材粒子を分散させるトルエンと、基材粒子から不要な原料を除去するエタノールと、を交互に用いた遠心分離処理(4000rpm、10分間)を繰り返して、基材粒子を精製する。
【0031】
次に、
図3bに示すように、基材粒子32の表面にコア粒子34を成長する。コア粒子34の組成はウルツ鉱型のGa
0.5In
0.5Nであり、平均粒径は約2.0nmであり、格子定数は約0.337nmである。
【0032】
反応溶媒であるベンゼン(6mL)に、GaI3(0.2mmol),InI3(0.2mmol),NaNH2(2.0mmol)および基材粒子(10mg)を投入・混合し、当該混合溶液を温度300℃で1時間保持する。これにより、コア粒子34が成長する。その後、基材およびコアからなる粒子体を分散させるトルエンと、当該粒子体から不要な原料を除去するエタノールと、を交互に用いた遠心分離処理を繰り返して、粒子体を精製する。
【0033】
次に、
図3cに示すように、基材32およびコア34からなる粒子体から、基材32を除去し、コア34を残す。基材は、ウエットエッチングにより除去することができる。エッチャントには、配合比が塩酸(36容量%):純水=1:100である希塩酸を用いることができる。
【0034】
次に、
図3dに示すように、コア34を被覆するシェル36を形成する。シェル36の組成はAl
0.4In
0.6Nであり、平均的な厚みは約4.0nmであり、格子定数は0.337nmである。
【0035】
反応溶媒であるベンゼン(6mL)に、AlI3(0.14mmol),InI3(0.2mmol),NaNH2(2.0mmol)およびコア粒子(10mg)を投入・混合し、当該混合溶液を温度350℃で1時間保持する。これにより、コアを被覆する薄膜なAlInNが成長する。その後、コアおよびAlInN薄膜からなる粒子体を分散させるトルエンと、当該粒子体から不要な原料を除去するエタノールと、を交互に用いた遠心分離処理を繰り返して、粒子体を精製する。
【0036】
再度、反応溶媒であるベンゼン(6mL)に、AlI3(0.14mmol),InI3(0.2mmol),NaNH2(2.0mmol)およびコアおよびAlInN薄膜からなる粒子体(10mg)を投入・混合し、当該混合溶液を温度350℃で1時間保持する。その後、トルエンとエタノールとを用いた遠心分離処理を繰り返す。以上の工程を、3回程度繰り返すと、厚膜なAlInN、つまりシェル(平均的な厚み:約4.0nm)が形成される。
【0037】
シェルの厚みは、AlInN薄膜を成長する工程の繰り返し回数を調整することにより、制御することができる。たとえば、当該工程一回当たり、シェルの平均的な厚みは1.2~1.5nm程度増加するとなる。ただし、繰り返すたびに増加する厚みは減少するであろう。なお、0.5nm程度の薄いシェルを作製する場合、1回で、かつ材料濃度を下げて行う。例えば、InI3 0.1mmol、AlI3 0.07mmolとし、他の条件をそのままとして反応を行えばよい。
【0038】
なお、たとえば平均的な厚みが1.0nm以上の、比較的厚膜なAlInN膜は、コア(GaInN)と格子整合する場合に成膜することができる。GaInN粒子(コア)とそれを被膜するAlInN膜(シェル)とが格子整合していなければ、厚膜なAlInN膜を成膜することは困難であろう。
【0039】
以上により、半導体ナノ粒子30が製造される。本発明者らは、コアの粒径Dが約2.0nmであってシェルの厚みTが約4.0nmである実施例によるサンプル30Eと、コアの粒径Dが約2.0nmであってシェルの厚みTが約0.5nmである比較例によるサンプル30Rと、を作製し、それらの光学特性を測定した。
【0040】
図4aおよび
図4bは、それぞれサンプル30E,30Rの光吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示すグラフである。グラフの横軸はサンプルに照射する光の波長ないしサンプルから放出される光の波長をナノメートルの単位で示す。グラフの縦軸は、サンプルの吸光度ないし発光強度を任意単位で示す。
【0041】
なお、吸収する光の波長のうち最長となる波長、より具体的には、光吸収スペクトルにおける光吸収端付近の立ち上がり曲線において、一番傾きが大きいところで接線を引き、その接線と横軸との交点を、光吸収端波長WLaと定義する。また、発光強度が最大となる波長を、発光ピーク波長WLpと定義する。
【0042】
図4aに示すように、実施例によるGaInN/AlInN粒子30E(D=2.0nm,T=4.0nm)は、吸収端波長WLaが約520nmとなり、発光ピーク波長WLpが約630nmとなる。発光ピーク波長WLpと吸収端波長WLaとの差分(WLp-WLa)は、約110nm(エネルギーとしては410meV)以上となる。
【0043】
図4bに示すように、比較例によるGaInN/AlInN粒子30R(D=2.0nm,T=0.5nm)は、吸収端波長WLaと発光ピーク波長WLpとが、ほぼ同じ波長であり、約630nmとなる。発光ピーク波長WLpと吸収端波長WLaとの差分(WLp-WLa)は、極めて小さくなる。
【0044】
図4aおよび
図4bから、半導体ナノ粒子の光吸収端波長は、シェルの厚みに依存していると推察される。また、発光ピーク波長は、コアの粒径に依存していると推察される。
【0045】
本発明者らの検討によれば、シェルによる光吸収作用を支配的にし、コアによる光吸収作用を無視できるほど小さくするためには、コアの体積は、ナノ粒子全体(コアおよびシェルを含む全体)の体積の1/20以下であることが好ましい。これにより、GaInN/AlInN粒子の光吸収端波長は、シェル(AlInN)の厚みを調整することで制御することができる。
【0046】
また、コアによる発光作用を支配的にし、シェルによる発光作用を無視できるほど小さくするためには、シェルの厚みTは、コアの粒径Dよりも大きく、かつ、シェルを構成する材料のボーア半径aex0の2倍よりも小さいこと(D<T<2aex0)が好ましい。なお、シェル(Al1-xInxN)のボーア半径aex0がもっとも大きくなる組成は、x=1(InN)のときであり、そのときのボーア半径aex0は、約8.2nmである(つまり2aex0は16.4nmである)。これにより、GaInN/AlInN粒子の発光ピーク波長は、コア(GaInN)の粒径を調整することで制御することができる。
【0047】
再度、
図1aないし
図1bを参照する。GaInN/AlInN粒子(第2の波長変換部材30)において、コアの粒径に対して、シェルの膜厚を相対的に厚くすることにより、発光ピーク波長と光吸収端波長との差異を大きくすることができる。具体的には、発光ピーク波長と光吸収端波長との差分が94nm(エネルギーとしては350meV)以上、より好ましくは110nm(エネルギーとしては410meV)以上となるように、コアの粒径ないしシェルの厚みを設定する。このようなGaInN/AlInN粒子を、第2の波長変換部材30に用いることにより、他の波長変換部材(特に第1の波長変換部材20)から放出される光(緑色光)を吸収せず、光源12の光(青色光)のみを吸収して発光する(赤色光を放出する)波長変換部材を実現することができる。
【0048】
以上、実施例に沿って、本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。実施例で示した格子整合の範囲は一例であり、格子整合するよう組成を調整すれば、その層構成を自由に選択することが可能である。また、各種部材・材料は、製造条件や半導体ナノ粒子の用途などに応じて、適宜変更してもかまわない。その他種々変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0049】
10…光源装置、12…LED光源、14…波長変換フィルム、20…第1の波長変換部材、30…半導体ナノ粒子(第2の波長変換部材)、32…基材粒子(ZnOS)、34…コア(GaInN)、36…シェル(AlInN)。