(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】異物分離除去装置
(51)【国際特許分類】
B04C 5/02 20060101AFI20220513BHJP
B04C 5/04 20060101ALI20220513BHJP
B04C 5/12 20060101ALI20220513BHJP
B04C 5/14 20060101ALI20220513BHJP
B04C 9/00 20060101ALI20220513BHJP
B01D 35/027 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B04C5/02
B04C5/04
B04C5/12 Z
B04C5/14
B04C9/00
B01D35/02 F
(21)【出願番号】P 2019080129
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2020-09-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会名 TOYO Innovation Fair 2019 開催日 2019年3月7日~8日
(73)【特許権者】
【識別番号】397002360
【氏名又は名称】ヤマホ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515036268
【氏名又は名称】株式会社グローイング
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】今川 良成
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 秀一
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-087738(JP,A)
【文献】特開平10-137520(JP,A)
【文献】特開平04-087647(JP,A)
【文献】特開2011-025150(JP,A)
【文献】特公昭41-001498(JP,B1)
【文献】特開平05-023619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04C 1/00 - 11/00
B01D 35/00 - 35/04
B01D 35/10 - 35/30
B01D 33/327
B23Q 11/00 - 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未処理液体を通してその未処理液体に混入している異物を分離除去する異物分離除去装置であって、
上端にフランジ(21a)を備えた円筒状部(21)と、その円筒状部(21)の下端に連なる下すぼみの漏斗状部(22)と、前記円筒状部(21)にその円筒状部(21)を径方向に貫通して形成された入口(23)と、前記漏斗状部(22)の下端に設けられた管継手接続口(24)とを有し、内部がサイクロン分離室(25)として構成され、前記入口(23)は、前記未処理液体を外部から前記円筒状部(21)の内側に接線方向に流入させて下方に向かう旋回流を生じさせるように構成され、かつ、前記管継手接続口(24)が前記漏斗状部(22)の軸心に対して所定角度屈曲しているサイクロン筒体(2)と、
前記未処理液体の導入口(31)を下端の中心部に、異物流出口(32)を下部の前記導入口(31)を避けた位置に、異物が除去された液体の出口(33)を天井面(34)の上部に、上端が前記出口(33)に開口した前記天井面(34)と同心の垂下した円筒状の流出管(35)を前記天井面(34)の中心部にそれぞれ備えた外筒(3)と、
管継手のニップル(4)とを有し、
前記サイクロン筒体(2)が前記上端のフランジ(21a)と前記外筒(3)の天井面(34)との間を液密にシールして前記外筒(3)の内部に組み込まれ、前記外筒(3)の内周面と前記サイクロン筒体(2)との間に前記導入口(31)から流入した未処理液体をサイクロン筒体(2)の前記入口(23)に誘導する環状通路(26)が形成され、
前記サイクロン筒体(2)の前記管継手接続口(24)と前記外筒(3)の前記異物流出口(32)が前記ニップル(4)を介して接続された異物分離除去装置
において、
前記外筒(3)を、前記導入口(31)と前記異物流出口(32)を有する本体部(3a)と、その本体部(3a)の上部に着脱自在にねじ結合させるキャップ(3b)とで構成し、前記キャップ(3b)に前記出口(33)、天井面(34)
を設けるとともに前記流出管(35)
を一体形成したことを特徴とする異物分離除去装置。
【請求項2】
前記サイクロン筒体(2)の前記入口(23)が、複数設置され、その入口(23)が前記サイクロン分離室(25)の周囲に周方向に定ピッチで配置された請求項1に記載の異物分離除去装置。
【請求項3】
異物の混入している未処理液体を受け入れるタンク(41)と、そのタンク(41)内の液体をストレーナ(42)経由で汲み上げて送り出すポンプ(43)と、そのポンプ(43)の出力口を前記外筒(3)の導入口(31)に配管で繋いだ請求項1
または2に記載の異物分離除去装置(1)と、その異物分離除去装置(1)の出口(33)から送り出された異物除去後の液体の逆流を阻止する逆止弁(
45)と、その逆止弁(
45)を通過した液体を供給先に届ける配管を組み合わせ、前記異物分離除去装置(1)の異物流出口(32)が前記タンク(41)又はドレンポット(46)に接続された異物分離除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体に混入した異物を、フィルタを用いずに遠心力で分離して除去するサイクロン方式の異物分離除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
異物が混入している液体の代表的なものとして、各種の機械油や洗浄液が知られている。切削用クーラント、電解液、研磨液、潤滑油などの機械油には、金属の切屑や金属粉、砥石から脱落した砥粒などの異物が含まれている。
【0003】
機械部品や各種機器のパーツなどの浄化に利用した洗浄液にも、砂や、ガラス粉、金属粉などの異物が含まれている。
【0004】
液体中に混入しているその異物の除去は、濾過装置に液体を通して液体中の異物を濾過装置内のフィルタで漉し取る方法が一般的に採用されているが、フィルタを使用した濾過装置は、経時使用によるフィルタの目詰まりが避けられない。
【0005】
その目詰まりが生じると濾過の効率が低下する。このため、管理や目詰まりしたフィルタの交換、洗浄が必須となる。
【0006】
フィルタは、使い捨てタイプのものも存在するが、使い捨てタイプのフィルタの使用はコストや環境面で好ましくない。
【0007】
ここで、下記特許文献1や特許文献2には、フィルタを使用せずに液体中の異物を分離除去する装置が示されている。
【0008】
特許文献1に記載されたハイドロサイクロン分離機は、円筒形部とその円筒形部の下側に連なった下すぼみテーパの円錐形部を含む分離室を持ち、その分離室の円筒形部に未処理液体(異物の混入した処理対象液体)の入口が、前記円筒形部の上端の中央部に異物分離後の液体の出口がそれぞれ設けられ、前記入口は分離室に流入した未処理液体が旋回流となって下方に向かうように構成されている。
【0009】
このハイドロサイクロン分離機は、分離室に流入した未処理液体が旋回流となって下方に向かうことで液体よりも比重の大きな異物が遠心力で分離されて分離室の下方に向かい、異物の除去された液体は上向きに反転して出口から流れ出るようになっている。
【0010】
特許文献2に記載された機械油中の金属ダスト分離除去装置は、円筒状部位とその円筒状部位の下部に連なる漏斗状部位を備えたサイクロン分離室の前記円筒状部位に設ける未処理液体の入口(吹出口)を、直角三角形が倒立し、その直角三角形の直交する2辺の一方が前記円筒状部位の内周面に、他方が前記円筒状部位の天井面にそれぞれ平行に沿う形状の口にしている。
【0011】
また、サイクロン分離室の下部に、分離した金属ダストを貯める金属ダスト回収部を設けており、その他の箇所は、前記特許文献1のハイドロサイクロン分離機にほぼ同様の構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特公昭61-36988号公報
【文献】特許第4753898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記特許文献1は、未処理液体を流入させるオリフィスの含まれた入口を対角位置の2箇所に設けることを同文献の
図2に示している。
【0014】
しかしながら、特許文献1のハイドロサイクロン分離機は、分離室の円筒形部に未処理液体を流し入れる供給管を円筒形部の外周に接続する必要があり、設置スペースを多く必要とする。分離室の円筒形部に入口を複数設けるものは特に、それぞれの入口に未処理液体を流し入れる供給管を接続する必要があり、供給管を途中で2つに分岐するか、ポンプを含む供給系を2系統設けることが不可避となって異物分離除去システムの構成がより複雑になる。
【0015】
また、前記入口が例えば2箇所あるとしてその2箇所の入口に供給管を途中で分岐させて接続したり、ポンプを含む供給系を2箇所設けて各供給系を個別に接続したりする構造は、コスト面で不利になるし、2箇所の入口に未処理液を平均的に分配することにも気を配る必要がある。
【0016】
さらに、前記供給管を前記円筒形部の外周に接線方向を向く状態に配置して入口に接続する必要があるので、異物分離除去システムの設置スペースも増加する。
【0017】
特許文献2の金属ダスト分離除去装置は、サイクロン分離室の円筒状部位に設ける未処理液体の入口(吹出口)の形状が簡素化され、さらに、その入口の形状を工夫したことで
、分離室内での乱流の発生が抑制されて乱流に起因した導入液体の旋回速度の低下、それによる遠心分離作用の悪化が抑えられるものになっている。
【0018】
しかしながらこの特許文献2の金属ダスト分離除去装置も、供給管を円筒状部位の外周に接線方向を向く状態に配置して入口に接続するため、円筒状部位に設ける入口が複数になると、特許文献1の装置と同様の問題が生じる。
【0019】
また、特許文献2の金属ダスト分離除去装置は、サイクロン分離室の下部に金属ダスト回収部を設けて分離した金属ダストをそこに貯めるようにしているので、金属ダスト回収部が満杯になったときに装置の運転を一旦止めて金属ダスト回収部内の金属ダストを廃棄する必要があり、メンテナンスの手間が増え、装置の連続運転も望めない。
【0020】
この発明は、未処理液体の供給管を接続する導入口が下部の1箇所に集約されて設置スペースの増加が回避され、さらに、前記導入口から流入した前記未処理液体がサイクロン分離室に効果的に流し込まれる異物分離除去装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の課題を解決するため、この発明においては、未処理液体を通してその未処理液体に混入している異物を分離除去する異物分離除去装置であって、
上端にフランジを備えた円筒状部と、その円筒状部の下端に連なる下すぼみの漏斗状部と、前記円筒状部にその円筒状部を径方向に貫通して形成された入口と、前記漏斗状部の下端に設けられた管継手接続口とを有し、内部がサイクロン分離室として構成され、前記入口は、前記未処理液体を外部から円筒状部の内側に接線方向に流入させて下方に向かう旋回流を生じさせるように構成され、かつ、前記管継手接続口が前記漏斗状部の軸心に対して所定角度屈曲しているサイクロン筒体と、
前記未処理液体の導入口を下端の中心部に、異物流出口を下部の前記導入口を避けた位置に、異物が除去された液体の出口を天井面の上部に、上端が前記出口に開口した前記天井面と同心の垂下した円筒状の流出管を前記天井面の中心部にそれぞれ備えた外筒と、
管継手のニップルとを有し、
前記サイクロン筒体が前記上端のフランジと前記外筒の天井面との間を液密にシールして前記外筒の内部に組み込まれ、前記外筒の内周面と前記サイクロン筒体との間に前記導入口から流入した未処理液体を前記サイクロン筒体の前記入口に誘導する環状通路が形成され、
前記サイクロン筒体の前記管継手接続口と前記外筒の前記異物流出口が前記ニップルを介して接続された異物分離除去装置を提供する。
【0022】
サイクロン筒体の入口は、サイクロン筒体の内部において下方に向かう旋回流を生じさせ得るものであればよく、その入口の端面視形状は特に問わない。
【0023】
その入口は、少なくとも2個をサイクロン分離室の周囲に周方向に定ピッチで配置すると外筒設置の効果が最大限に引き出されて好ましい。その入口の数は、1個、3個、或いは4個にすることも可能である。
【0024】
前記ニップルは、一端側、又は他端側をサイクロン筒体や外筒に固定する。
【0025】
前記外筒は、前記導入口と前記異物流出口を有する本体部と、その本体部の上部に着脱自在にねじ結合させるキャップとで構成し、そのキャップに前記出口、天井面及び流出管を設けた構造にすると好ましい。
【発明の効果】
【0026】
この発明の異物分離除去装置は、サイクロン筒体を外筒の内部に挿入し、そのサイクロン筒体と外筒の内周面との間に、外筒の下端中心に設けた導入口から流入した未処理液体をサイクロン分離室の入口に誘導する環状通路を形成した。
【0027】
これにより、装置の設置スペースの増加が回避され、さらに、未処理液体の供給管を接続する導入口を装置の下部の1箇所に集約してサイクロン分離室に複数の入口を設けることも可能になった。
【0028】
また、そのため、異物分離除去システムの構成が複雑になることがなく、サイクロン分離室に複数の入口を設ける場合のコストアップや未処理液体の供給管をサイクロン筒体の外周に複数接続することに起因した異物分離除去システムの設置スペースの増加の問題も解消された。
【0029】
さらに、サイクロン分離室の入口が複数あるものは、導入口から流入した未処理液体が前記環状通路を通ってサイクロン分離室の各入口に平均的に流れ、これにより前記入口からサイクロン分離室に流入する未処理液体の旋回が速度の低下などを招かずに行われ、高速旋回による異物の遠心分離が安定して効率よくなされるようになった。
【0030】
なお、この発明の異物分離除去装置は、前記サイクロン筒体の下端の管継手接続口をサイクロン筒体の漏斗状部の軸心に対して所定角度屈曲させたことによって、前記異物流出口と、外筒の下端中心の導入口を共に装置の下部に設けることが可能になっている。
【0031】
また、前記サイクロン筒体と前記外筒を独立させ、サイクロン筒体の下端の管継手接続口と外筒の下部の異物流出口を前記ニップルで繋いだことで、製造、組み立ての困難も克服された。
【0032】
このほか、前記外筒を、前記本体部と、その本体部着脱自在に結合させるキャップとで構成した異物分離除去装置は、万一、過大な異物が流入して内部の通路や入口などに詰まったときなどに、キャップを外して装置の機能を修復させることができ、メンテナンス性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】この発明の異物分離除去装置の一例を示す断面図である。
【
図2】
図1の異物分離除去装置に採用したサイクロン筒体の正面図である。
【
図5】
図1の異物分離除去装置の外観を示す斜視図である。
【
図6】この発明の異物分離除去装置を採用した異物分離除去システムの一例の概要を示す部分破断側面図である。
【
図7】この発明の異物分離除去装置を採用した異物分離除去システムの他の例の概要を示す部分破断側面図である。
【
図8】この発明の異物分離除去装置を採用した異物分離除去システムのさらに他の例の概要を示す部分破断側面図である。
【
図9】この発明の異物分離除去装置を採用した異物分離除去システムのさらに他の例の概要を示す部分破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の異物分離除去装置の実施の形態を添付図面の
図1~
図5に基づいて、また、その異物分離除去装置を用いた分離除去システムの実施の形態を添付図面の
図6~
図9に基づいて説明する。
【0035】
図1に示すように、例示した異物分離除去装置1は、サイクロン筒体2と、外筒3と、管継手のニップル4と、パッキン5及び計3個のOリング6、7、8を組み合わせて構成されている。サイクロン筒体2と、外筒3と、ニップル4は、金属製である。
【0036】
サイクロン筒体2は、円筒状部21と、その円筒状部21の下端に連なる下すぼみの漏斗状部22と、円筒状部21にその円筒状部21を径方向に貫通して形成された入口23と、漏斗状部22の下端に設けられた管継手接続口24を有しており、内部がサイクロン分離室25として構成されたものになっている。
【0037】
円筒状部21は上端にフランジ21aを備えている。また、フランジ21aの下部に、径方向に張り出した2個が一対の係止突起21bを備えている。係止突起21bは、周方向に180°変位した中心対称位置にある。
【0038】
前記入口23は、未処理液体を外部から円筒状部21の内側に接線方向に流入させて下方に向かう旋回流を生じさせるように構成されている。
【0039】
その入口23を後述する外筒3の流出管35の下端よりも上側に配置したことによって、入口23から円筒状部21の内部に流入した液体は円筒状部21の内周面に沿って旋回しながら否応なしに下方に向かう。
【0040】
図示の入口23は、縦長の口にしており、また、
図2~
図4に示すように、対向する2側面23a、23bのうち、一方の側面23aが平面視(
図3、
図4)において円筒状部21の内周面21cに対する接線上にあって内周面21cに平行に沿い、他方の側面23bは、円筒状部21の下側に向かうに従って側面23a側に近づく向きに傾斜した面にしている。
【0041】
このように構成した入口23は、サイクロン分離室25に導入される未処理液体が円筒状部21の内周面に案内されるため、その未処理液体の流れを、下方に向かう旋回流となすことができる。
【0042】
その入口23の上端と下端は、対向する側面23a、23bを繋ぐ図示の半円の面がコーナの応力集中などを回避できて好ましいが、円筒状部21の軸心に対して直角な平面であっても構わない。
【0043】
その入口23は、未処理液体を円筒状部21の内側に接線方向に流入させ得るものであればよく、形状は特に問わない。楕円、円、側面23a、23bが平行な長孔などでもよいし、前記特許文献2がサイクロン分離室の円筒状部位に設けている直角三角形を倒立させた形状(三角形の直角な2辺の一方が円筒状部21の内周面に平行に沿い、他方が円筒状部21の軸心と直角をなす形状)の口であってもよい。
【0044】
その入口23は、例示の装置では、2個を円筒状部21の外周の中心対称位置に配置しているが、周方向に定ピッチで3~4個配置することも可能であり、その入口23が1個のものも考えられる。
【0045】
漏斗状部22の下端の管継手接続口24は、漏斗状部22の軸心Cに対して所定の屈曲角αで屈曲している。屈曲角αは、図示のサイクロン筒体2については135°にしたが、後述する外筒3の導入口31の大きさやサイクロン筒体2の長さ次第では、その屈曲角αはより大きくすることが可能である。
【0046】
サイクロン分離室25内で分離された異物の排出性を考えると、その屈曲角αは、大きいほど好ましい。
【0047】
外筒3は、
図1に示した未処理液体の導入口31を下端の中心部に、異物流出口32を下部の導入口31を避けた位置に、異物が除去された液体の出口33を天井面34の上部にそれぞれ備えている。導入口31が下端にあることで、未処理液体の供給管を装置の外周に接続せずに済むものになっている。
【0048】
また、上端が出口33に開口した流出管35を天井面34の中心部に備えている。その流出管35は、天井面34の中心と同心の管であり、天井面34から垂下して円筒状部21の長手中心部よりも下側まで延びている。
【0049】
外筒3は、導入口31と異物流出口32を有する本体部3aと、その本体部3aの上部にねじ結合させるキャップ3bとで構成されており、前記出口33、天井面34及び流出管35は、キャップ3bに設けられている。既に述べた通り、本体部3aと着脱自在のキャップ3bとで構成した図示の外筒3を備える例示の異物分離除去装置1は、メンテナンス性に優れる。
【0050】
本体部3aの上端には、2箇所の係止溝36が周方向に180°変位して設けられており、その係止溝36にサイクロン筒体2の上端の係止突起21bが挿入されてサイクロン筒体2が位置決めされ、同時に本体部3aによる回り止がなされて回転不可に保持される。
【0051】
係止突起21bを係止溝36に落とし込んでサイクロン筒体2を外筒3の本体部3aの内部に挿入したら、本体部3aにキャップ3bを取り付けてサイクロン筒体2を外筒3で保持する。
【0052】
このとき、サイクロン筒体2の上端のフランジ21aと外筒3の天井面34との間にパッキン5を介在してサイクロン筒体2と外筒3との間を液密にシールする。また、外筒3の本体部3aとキャップ3bのねじ結合部の界面もOリング6で液密にシールする。
【0053】
この後、外筒3の異物流出口32にニップル4を挿入し、そのニップル4の一端を、サイクロン筒体2の管継手接続口24にねじ込む。ニップル4は、一端を管継手接続口24に挿入し、他端を異物流出口32にねじ込んで固定しても構わない。要は、サイクロン筒体2と外筒3のどちらかに固定すればよい。
【0054】
どちらに固定するにしても、管継手接続口24とニップル4との間及び異物流出口32とニップル4との間は、Oリング7、8で共に液密にシールし、そのニップル4経由で管継手接続口24を異物流出口32に繋ぐ。
【0055】
以上のようにして組み立てられた異物分離除去装置1は、外筒3の内周面とサイクロン筒体2との間に環状通路26が形成される。そして、導入口31から外筒3の内部に入り込んだ未処理液体が環状通路26を通ってサイクロン筒体2の入口23に誘導され、入口23からサイクロン分離室25に流入する。
【0056】
サイクロン分離室25に流入した未処理液体は、円筒状部21の内面に沿って旋回しながら下方に移動し、漏斗状部22の内径が下側ほど小さくなることから、下に向かうに従って旋回流の流速が増し、遠心分離作用で未処理液体に含まれた比重が液体よりも大きい金属ダストなどの異物がサイクロン分離室25の内面に沿って少量のドレン液と共に異物流出口32に向けて流れ下る。
【0057】
また、異物の除去された液体は、上向きに反転し、流出管35を通って出口33から供給先に向けて送り出される。
【0058】
この発明の異物分離除去装置1を用いた異物分離除去システムの概要を、
図6~
図9に示す。
【0059】
図6の異物分離除去システム40は、未処理液体Aを受け入れるタンク41と、そのタンク41内の未処理液体Aをストレーナ42に通して汲み上げて送り出すモータ駆動のポンプ43と、そのポンプ43の出力口を外筒3の導入口31に配管44で繋いだ異物分離除去装置1と、その装置の外筒3の出口33から送り出された異物除去後の液体の逆流を阻止する逆止弁45と、その逆止弁45を通過した液体を供給先に届ける配管(図示せず)を組み合わせたものになっている。
【0060】
図6の異物分離除去システムは、異物分離除去装置1によって処理対象の液体から分離された金属ダストなどの異物が常時少量のドレン液を伴ってタンク41に戻される。
【0061】
これに対し、
図7の異物分離除去システム40は、装置1の異物流出口32にドレンポット46を接続しているため、ドレンポット46が流入したドレン液によって満杯になったら、以後は異物のみがドレンポット46に取り込まれる。
【0062】
異物分離除去装置1に通した異物除去後の液体は、目的の供給先に送り込まれる。その液体の供給先は、供給する液体が例えばクーラント液の場合、マシニングセンターなどの切削を主体とする加工機である。また、供給する液体が研磨液である場合には、研磨盤や研削盤であり、供給する液体が各種治具などの洗浄に利用する洗浄液である場合には、洗浄機である。
【0063】
図6~
図9の異物分離除去システム40は、クーラント液や研磨液などの機械加工油に混入した切屑や研磨粉などの異物、或いは治具などの洗浄によって洗浄液中に取り込まれた異物のうち、サイズ(粒径)の大きなものは、事前に回収するのがよい。
【0064】
この発明の異物分離除去装置とは別の異物分離除去装置(図示せず)を使用済み液体の戻り経路(これも図示せず)に設け、その異物分離除去装置が備えた金属フィルタなどで大きな異物を漉し取って小さな異物が残存している液体をタンク41に戻す。
【0065】
そして、戻された液体をポンプ43で汲み上げてこの発明の異物分離除去装置1に送り、そこで液体中の残存異物を分離回収して異物分離後の液体を目的の供給先に向けて送り出す。この方法によれば、機械油や洗浄液を循環させて連続的に使用することができる。
【0066】
また、この発明の異物分離除去装置1では、サイクロン分離室25において分離除去された金属ダストなどの異物が前記外筒3の異物流出口32から排出される。その異物は、タンク41に取り込む場合には少量のドレン液を伴ってタンク41に流れる。
【0067】
そのドレン液を伴った異物を、タンク41に戻す
図6の異物分離除去システム40は、タンク41内の液体をポンプ43が汲み上げる液体汲み上げ部41aと、ドレン液を伴った異物を流し入れる異物回収部41bとの間に仕切り壁41cを設けるとよい。
【0068】
仕切り壁41cは、液体の通過が阻止される板材と、液体の通過を許容するメッシュの
濾材のどちらであってもよい。板材の仕切り壁41cがあるものは、異物回収部41bに流入したドレン液中の異物は異物回収部41b内において自重で沈下し、異物回収部41b内の上澄み液が仕切り壁41cを乗り越えて液体汲み上げ部41aに流れる。また、濾材の仕切り壁41cがあるものは、濾材の網目よりも大きな異物が仕切り壁41cに漉し取られて液体汲み上げ部41aに流れない。
【0069】
このため、異物分離除去装置1で分離除去した異物をドレン液と一緒にタンク41に戻しても、分離除去した異物がポンプ43の吸入側のストレーナ42を目詰まりさせることがない。異物回収部41b内に沈下した異物は、すくい取る、
図8のように、スクレーパ48などで掻き出す、
図9のように、チップコンベヤ49で排出するなどの方法で除去するようにしておく。
図8の異物分離除去システム40は、板材仕の切り壁41cを用いている。
【0070】
また、
図9の異物分離除去システム40は、チップコンベヤ49がメッシュのドラムフィルタ49aを備えており、そのドラムフィルタ49aに漉されてドラムフィルタ49a
の内部に流入した異物除去後の液体はドラムの片端又は両端に設けられた排出口(図示せず)から外部に流出し、液体汲み上げ部41aなどに戻される。
【0071】
なお、この発明の異物分離除去装置の試作品を用いた性能評価試験では、クーラント液中に混入している平均粒径が20μm以上の異物(金属ダスト)を、フィルタを使用せずに分離除去することができた。
【符号の説明】
【0072】
1 異物分離除去装置
2 サイクロン筒体
3 外筒
3a 本体部
3b キャップ
4 ニップル
5 パッキン
6、7、8 Oリング
21 円筒状部
21a フランジ
21b 係止突起
21c 内周面
22 漏斗状部
23 入口
23a,23b 側面
24 管継手接続口
25 サイクロン分離室
26 環状通路
31 導入口
32 異物流出口
33 出口
34 天井面
35 流出管
36 係止溝
40 異物分離除去システム
41 タンク
41a 液体汲み上げ部
41b 異物回収部
41c 仕切り壁
42 ストレーナ
43 ポンプ
44 配管
45 逆止弁
46 ドレンポット
48 スクレーパ
49 チップコンベヤ
49a ドラムフィルタ
α 管継手接続口の屈曲角
A 未処理液体
C 漏斗状部の軸心