IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウニフェルジテイト・ヘントの特許一覧 ▶ アシュカン・モハマド・ハッサン・ジョシュガニの特許一覧

<>
  • 特許-ヒトの関節のための保護装具 図1
  • 特許-ヒトの関節のための保護装具 図2
  • 特許-ヒトの関節のための保護装具 図3
  • 特許-ヒトの関節のための保護装具 図4
  • 特許-ヒトの関節のための保護装具 図5
  • 特許-ヒトの関節のための保護装具 図6
  • 特許-ヒトの関節のための保護装具 図7
  • 特許-ヒトの関節のための保護装具 図8
  • 特許-ヒトの関節のための保護装具 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】ヒトの関節のための保護装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20220513BHJP
   A41D 19/015 20060101ALI20220513BHJP
   A41D 13/08 20060101ALI20220513BHJP
   A61F 13/10 20060101ALI20220513BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20220513BHJP
   A41D 20/00 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
A61F5/02 N
A41D19/015 510Z
A41D13/08 107
A61F13/10 B
A61F13/10 D
A61F5/01 N
A41D20/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019546880
(86)(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018054541
(87)【国際公開番号】W WO2018154062
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】17157653.1
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500454769
【氏名又は名称】ウニフェルジテイト・ヘント
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Gent
(73)【特許権者】
【識別番号】519305409
【氏名又は名称】アシュカン・モハマド・ハッサン・ジョシュガニ
【氏名又は名称原語表記】Ashkan Mohammad Hassan JOSHGHANI
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】アシュカン・モハマド・ハッサン・ジョシュガニ
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-177941(JP,A)
【文献】米国特許第05512039(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0124464(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01-5/02,13/10
A41D 13/08,19/015
A63B 71/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの指の近位指節間関節および遠位指節間関節を保護するための保護装具(1)であって、
前記ヒトの指の周りに装着するように適合された可撓性シース(3)であって、前記ヒトの指の掌面を被覆するための掌側、前記ヒトの指の背面を被覆するための背側、ならびに前記ヒトの指の尺骨および橈骨面をそれぞれ被覆するための2つの側面(L)を備える、可撓性シース(3)と、
前記可撓性シース(3)の中で一体化されているか、またはそれに固定されている、前記ヒトの指の前記近位指節間関節および前記遠位指節間関節の各々の両方の側面の各々にそれぞれ対応する、少なくとも4つの運動抑制要素(4)と、を備え、
各運動抑制要素(4)は、前記可撓性シース(3)が前記ヒトの指の周りに装着されたときに、第2の指骨に対する、第1の指骨の横方向および/または回転偏位運動を抑制するように適合されており、前記第1および第2の指骨は、前記運動抑制要素が対応する前記指節間関節によって互いに対して関節接合されており、
各運動抑制要素(4)は、前記可撓性シースが前記ヒトの指の周りに装着されたときに、前記指節間関節に対応する場所において、前記可撓性シース(3)の側面(L)を被覆し、
各運動抑制要素(4)は、前記可撓性シース(3)の長手方向(5)における前記運動抑制要素(4)の伸長に抵抗するように適合されており、
前記少なくとも1つの運動抑制要素(4)は、前記可撓性シースが前記ヒトの指の周りに装着されたときに、前記指節間関節(2)の屈曲を可能にするように、背-手掌方向において屈曲可能であり、
前記遠位指節間関節に対応する前記運動抑制要素、および前記近位指節間関節に対応する前記運動抑制要素は、前記可撓性シース上で異なる係合点を有する、異なる、かつ別個の要素であ
各運動抑制要素(4)は、前記第1の指骨のシャフトの位置に対応する第1の領域(6)において、前記可撓性シース(3)に固定され、前記運動抑制要素(4)は、可撓性シース(3)が前記ヒトの指の周りに装着されたときに、前記第2の指骨のシャフトの位置に対応する第2の領域(7)において、前記可撓性シース(3)に固定され、
各運動抑制要素(4)は、前記可撓性シースに締結されているか、またはその中で一体化された少なくとも2つの細長い要素(11、12)を備え、前記少なくとも2つの細長い要素(11、12)は、前記ヒトの指に装着されたときに、前記指節間関節(2)の回転軸が前記可撓性シース(3)と交差するところに十字形を形成するように交差し、
前記少なくとも2つの細長い要素のうちの第1の細長い要素(11)は、前記第1の指骨の前記シャフトの位置に対応する前記可撓性シース(3)の前側上の位置から、前記第2の指骨の前記シャフトの位置に対応する前記可撓性シースの前記背側上の位置に延在し、前記2つの細長い要素のうちの第2の細長い要素(12)は、前記可撓性シース(3)が前記ヒトの指に装着されたときに、前記第1の指骨の前記シャフトの前記位置に対応する前記可撓性シース(3)の前記背側上の位置から、前記第2の指骨の前記シャフトの前記位置に対応する前記可撓性シースの前記前側上の位置に延在する、保護装具。
【請求項2】
前記可撓性シースは、前記可撓性シースが前記ヒトの指の周りに装着されたときに、前記ヒトの指上に圧縮力を与えるように、ぴったりと合った様式で前記ヒトの指を包むための構造である、請求項1に記載の保護装具。
【請求項3】
前記運動抑制要素(4)のうちの2つは、前記近位指節間関節の反対の横方向の場所において、前記可撓性シース(3)の各側面(L)をそれぞれ被覆し、前記運動抑制要素(4)のうちの2つは、前記可撓性シース(3)が前記ヒトの指の周りに装着されたときに、前記遠位指節間関節の反対の横方向の場所において、前記可撓性シース(3)の各側面(L)をそれぞれ被覆する、請求項1または2に記載の保護装具。
【請求項4】
前記可撓性シース(3)は、前記ヒトの指の周りに装着されたときに、それぞれ前記第1の指骨および前記第2の指骨の前記シャフトの周りの人体上に圧縮力を与えるための少なくとも2つの管状弾性構造体(8)を備え、前記運動抑制要素(4)は、前記少なくとも2つの管状弾性構造体(8)に固定される、請求項1~3のいずれか1つに記載の保護装具。
【請求項5】
前記少なくとも2つの細長い要素によって形成された前記十字形は、10°~40°の範囲の前記細長い要素のうちの2つの間の角度を有する、請求項1~4のいずれか1つに記載の保護装具。
【請求項6】
前記第1の指骨の前記シャフトの前記位置に対応する前記可撓性シース(3)の前記側面上の位置から、前記第2の指骨の前記シャフトの前記位置に対応する前記可撓性シースの当該側面上の位置に延在する、第3の細長い要素(13)をさらに備える、請求項に記載の保護装具。
【請求項7】
前記可撓性シース(3)は、前記可撓性シース(3)が前記ヒトの指に装着されたときに、前記近位および/または遠位指節間関節(2)の背面を露出させるための少なくとも1つの開口部を備える、請求項1~のいずれか1つに記載の保護装具。
【請求項8】
前記可撓性シース(3)は、前記可撓性シースが前記ヒトの指に装着されたときに、前記ヒトの指の指先を露出させるための開口部を備える、請求項1~のいずれか1つに記載の保護装具。
【請求項9】
前記保護装具は、前記ヒトの手の複数の対応するヒトの指の周りに装着するための複数の可撓性シース(3)を備える、ヒトの手に装着するための手袋(20)であり、前記少なくとも4つの運動抑制要素(4)のうちの少なくとも1つは、前記可撓性シースの各々の中で一体化されているか、またはそれに固定されており、その中で、前記可撓性シースのベース(21)は、前記手袋(20)が装着されたときに、前記ヒトの手の近位指骨の少なくとも近位部分を被覆する結合布(22)を形成するように一緒に接合される、請求項1~のいずれか1つに記載の保護装具。
【請求項10】
前記手袋は、前記ヒトの手の手首を包むためのリストバンド(23)を備え、前記結合布(22)は、前記ヒトの手の尺骨側に沿って延在して、前記尺骨側(24)において前記リストバンド(23)に結合し、前記結合布は、前記手袋(20)が装着されたときに、前記ヒトの手の橈骨側に沿って、前記ヒトの手の母指のベースの周りに延在して、前記橈骨側(25)において前記リストバンド(23)に結合する、請求項に記載の保護装具。
【請求項11】
前記手袋は、ストラップ(27)と前記可撓性シース(3)の前記ベース(21)との間に開口部(28)を残して、前記手袋(20)が装着されたときに、前記ヒトの手の中手指節関節の背面を露出させるように、前記ヒトの手の背側にわたって、前記結合布の前記橈骨側(25)を前記結合布の前記尺骨側(24)に結合するストラップ(27)を備える、請求項10に記載の保護装具。
【請求項12】
前記複数の可撓性シース(3)のうちの1つは、前記ヒトの手の母指の周りに装着するように適合されており、前記複数の可撓性シース(3)のうちの別のものは、前記ヒトの手の人差し指の周りに装着するように適合されており、前記結合布(22)は、前記母指の周りに装着するための前記可撓性シースを、前記人差し指の周りに装着するための前記可撓性シースに結合する、ガセットを備え、そのため、前記ガセットは、前記手袋(20)が着用されたときに、前記母指が完全に延伸されたときの張り詰めた状態に伸張される、請求項11のいずれか1つに記載の保護装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の指節間関節を保護するための人工補装具、ブレース、および類似の保護用具の分野に関する。より具体的には、本発明は、第1の骨を第2の骨に対して関節接合するためのヒトの関節、例えば、肘、膝、足首、または指関節などのヒト蝶番関節を保護するための保護装具に関する。
【背景技術】
【0002】
人体において、側副靱帯損傷、例えば、橈骨および尺骨側副靱帯損傷は、例えば、指の関節の正常な運動範囲とは一致しない強制的な横方向の偏位および/または回転移動に起因して生じ得る。例えば、母指の尺骨側副靱帯損傷は、特に一般的であり、例えば、不意の強制的な橈骨偏位によって引き起こされ得るスキーヤーまたはゲームキーパー母指と称されることがある。
【0003】
手に対する損傷は、運動選手の間では一般的であり、その理由は、手は、スポーツ活動の間に衝撃を頻繁に吸収するからである。これらのスポーツ関連損傷は、支持している靭帯、腱、および/または骨に対する損傷を含み得る。
【0004】
いくつかのスポーツでは、手首および指の損傷が著しくより頻繁に起こり、例えば、ブラジリアン柔術、柔道、および武道会道などの、練習着、例えば、着物が用いられるレスリングまたは格闘技である。この種の格闘技を実践する際、損傷は、間違った握りから容易に生じ得る。手の損傷の高い危険性を伴う他のスポーツ活動としては、例えば、クライミング、バスケットボール、およびアメリカンフットボールが挙げられ得る。
【0005】
そのような損傷は、2つの主要なカテゴリ:衝撃的(急性的)および過度的(慢性的)に分類され得る。それにもかかわらず、手の損傷の大部分は、損傷した組織の種類に依存し、例えば、特に裂けたまたは断裂した靭帯の場合には、治癒に長い時間が必要となり得る。
【0006】
さらに、運動選手は、多くの場合、適切な回復時間を尊重しない傾向を有し得、損傷を被ったにもかかわらず練習を続行することがある。そのような心情は、靭帯および腱における治癒した瘢痕組織の質の低下、例えば、組織強度および組織剛性の脆弱性と共に、急性的損傷が慢性的損傷に進行し得る決定的な理由のうちの1つであり得る。
【0007】
靭帯への損傷が繰り返されることは、関節の不適切な運動を引き起こし、かつ骨関節炎(OA)への進行において致命的な役割を果たす。OAは、指の恒久的な障害をもたらす、関節縁における軟骨の損失、および反応性新生骨形成で特徴付けられる。
【0008】
関節を保護する、例えば、スポーツテープを使用することによって外傷性指損傷に対する保護を提供することは、当技術分野において既知である。アスレチックテーピングは、損傷を防止するための手段として、または損傷後のリハビリテーションの間に採用することができる。しかしながら、これは、そのようなテーピングは、例えば、特に頻繁に必要な場合には、高価となり得、そのようなテーピングの適用は、時間を浪費し得、例えば、そのテーピング使用に熟達していない人々によるテープの間違った適用は、運動選手を負傷にさらす可能性があるという不利点を有する。さらに、不利にテーピングすることは、一時的な補助を提供するのみであり、例えば、活動および運動に起因して、テープの剛性が低下し得る。また、テーピングは、例えば、前述した不利点を補償しようと努力してあまりにも強固に適用されると、テープにより引き起こされる血流制限に起因するリスクをももたらし得る。
【発明の概要】
【0009】
少なくとも1つのヒトの関節の損傷に対する良好で有効な保護を提供することが、本発明の実施形態の対象である。
【0010】
上記の目的は、本発明による方法および装具により達成される。
【0011】
従来技術で既知である、例えば、上述のような保護テープの不利点が克服され得ることが、本発明の実施形態の利点である。
【0012】
第1の態様では、本発明は、第1の骨を第2の骨に対して関節接合するためのヒトの関節、例えば、指関節などのヒト蝶番関節を保護するための保護装具に関する。特に、本発明の第1の態様の実施形態に従う保護装具は、ヒトの指の近位指節間関節および遠位指節間関節を保護するための保護装具である。
【0013】
保護装具は、ヒトの指の周り、例えば、ヒトの関節の周りに装着するように適合された可撓性シースを備える。
【0014】
可撓性シースは、ヒトの指の掌面を被覆するための掌側と、ヒトの指の背面を被覆するための背側と、ヒトの指の尺骨面および橈骨面をそれぞれ被覆するための2つの側面と、を備える。
【0015】
保護装具はまた、可撓性シースに一体化または固定された少なくとも4つの運動抑制要素も備える。少なくとも4つの運動抑制要素は、ヒトの指の近位指節間関節および遠位指節間関節の各々の両方の側面の各々にそれぞれ対応する。
【0016】
少なくとも4つの運動抑制要素の各々は、可撓性シースがヒトの指の周りに装着されたときに、指節間関節により互いに対して関節接合された第2の指骨に対する、第1の指骨の横方向および/または回転偏位運動(すなわち、運動抑制要素が対応する近位または遠位指節間関節に直接結合されている任意の指骨対の横方向および/または回転偏位運動)を抑制するように適合される。このため、各運動抑制要素は、可撓性シースが装着されたときに、第2の骨に対する第1の骨の横方向および/または回転偏位運動を抑制するように、例えば、第1の骨を第2の骨に対して関節接合するヒトの関節を保護するように適合される。
【0017】
少なくとも4つの運動抑制要素の各々は、可撓性シースがヒトの指の周りに装着されたときに、指節間関節に対応する場所(すなわち、運動抑制要素が対応するその遠位または近位指節間関節)において可撓性シースの側面を被覆する。
【0018】
運動抑制要素の各々は、可撓性シースの長手方向における運動抑制要素の伸長に抵抗するように適合される。
【0019】
運動抑制要素の各々は、背-手掌方向に屈曲可能であり、可撓性シースがヒトの指の周りに装着されたときに、指節間関節の屈曲を可能にする。
【0020】
遠位指節間関節に対応する(少なくとも4つの運動抑制要素のうちの)2つの運動抑制要素の各々、および、近位指節間関節に対応する(少なくとも4つの運動抑制要素のうちの)2つの運動抑制要素の各々は、可撓性シース上で異なる係合点を有する、異なる、かつ別個の要素であり、例えば、その結果、遠位関節に対応する前者の運動抑制要素、および、近位関節に対応する後者の運動抑制要素は、可撓性シース上でのいかなる共通の係合点も共有しない。例えば、遠位指節間関節に対応する運動抑制要素は、近位指節間関節に対応する運動抑制要素と共に連続的な構造体を形成しない。例えば、遠位指節間関節に対応する運動抑制要素は、近位指節間関節に対応する運動抑制要素も可撓性シースにも固定される点において、可撓性シースに固定されない。
【0021】
可撓性シースは、ぴったりと合った仕方でヒトの指を包むための構造体とすることができる。可撓性シースは、可撓性シースがヒトの指の周りに装着されたときに、ヒトの指に圧縮力を与えるように適合され得る。
【0022】
例えば、指への圧縮力は、装着時に可撓性シースと指との間の摩擦を有利に増大させることができ、その結果、運動抑制要素は、使用中、それらの対応する関節とそのまま整合し続け、その結果、運動抑制要素は、それらのうちの少なくとも2つの端部領域において十分そのまま静止し続けて横方向および/または回転偏位運動を抑制する。
【0023】
シースは、管状構造体であり得る。特に、シースは、関節の両側面上での部材の横断面周縁全体の周りにヒトの指の少なくとも一部を包囲し得、例えば、その周縁全体の周りの第1の指骨の周りに部材を包囲し得、その周縁全体の周りの第2の指骨の周りに部材を包囲し得、第1の指骨および第2の指骨をそれぞれ包囲するための両方の包囲部分が結合され得る。しかしながら、シースは、必ずしもその表面領域全体にわたって連続的である必要はなく、例えば、孔を含んでもよく、その限りにおいて、例えば、関節の両側面で指に圧縮力を与えるように、連続的かつ閉じた経路が部材全体の周りに形成される。例えば、可撓性シースは、ヒトの指の周りに装着されたときに、第1の指骨および第2の指骨のそれぞれのシャフトの周りの人体上に圧縮力を与えるための少なくとも2つの管状弾性構造体を備え、またはそれらから構成されてもよく、運動抑制要素は、その少なくとも2つの管状弾性構造体に固定され得、このため、第1の指骨および第2の指骨のそれぞれを包囲するための包囲部分間の結合を形成し得る。しかしながら、好ましくは、シースはまた、身体上に保護装具を適用し、装着時にその保護装具を身体の解剖学上の特徴に整合させることを支援し、かつ、装着時の快適性を増加させるために、そのような管状弾性構造体を結合する可撓性布をも含むこともできる。
【0024】
偏位運動は、例えば、関節の自然な運動範囲によっては支持されていない横方向または回転偏位運動を意味し得、例えば、横方向における第2の指骨に対する第1の指骨の変位を引き起こし、例えば、関節の蝶番軸に対して平行である実質的な構成要素を有し、かつ/または、関節の蝶番軸に対して垂直である実質的な構成要素を有する回転軸に沿って第2の骨に対する第1の骨の回転を引き起こす。
【0025】
本発明の実施形態の利点は、横方向偏位および/または回転偏位に起因するヒトの関節の側副靱帯損傷に対する保護が、関節の自然な運動範囲を実質的に妨げることまたは制限することなく、提供されることである。
【0026】
本発明による実施形態では、保護装具は、可撓性シースがヒトの関節の周りに装着されたときに、ヒトの関節の横方向の反対の場所において、可撓性シースの各側面をそれぞれ被覆する運動抑制要素のうちの2つを備えることができる。このため、可撓性シースがヒトの指の周りに装着されたときに、運動抑制要素のうちの2つは、近位指節間ヒト関節の横方向の反対の場所において可撓性シースの各側面をそれぞれ被覆することができ、運動抑制要素のうちの(別の)2つは、遠位指節間ヒト関節の横方向の反対の場所において可撓性シースの各側面をそれぞれ被覆することができる。
【0027】
本発明による実施形態では、可撓性シースがヒトの指の周りに装着されたときに、各運動抑制要素は、例えば、運動抑制要素の第1の端部において、第1の指骨のシャフトの位置に対応する第1の領域の可撓性シースに固定され得、運動抑制要素は、例えば、運動抑制要素の第2の端部において、第2の指骨のシャフトの位置に対応する第2の領域の可撓性シースに固定され得る。
【0028】
本発明による実施形態では、可撓性シースは、ヒトの指の周りに装着されたときに、ヒトの指に圧縮力を与えるように適合され得る。
【0029】
本発明による実施形態では、可撓性シースは、第1の指骨および第2の指骨のそれぞれのシャフトの周りの人体上に圧縮力を与えるための少なくとも2つの管状弾性構造体を備え得、ヒトの指の周りに装着されたときに、運動抑制要素は、少なくとも2つの管状弾性構造体に固定され得る。
【0030】
本発明の実施形態の利点は、内部の解剖学上の構造体を支持するための骨の中央部に圧縮力を与えることができることである。本発明の実施形態の利点は、管状弾性構造体が、把持を向上させるように骨の中央部にわたって提供され得ることである。本発明の実施形態の利点は、管状弾性構造体が、ヒトの関節に対して整合された位置に運動抑制要素をしっかりと保持するように提供され得ることである。さらに、本発明の実施形態に従う骨のシャフトの周りに管状弾性構造体を設ける利点は、管状構造体、および/またはその管状構造体により固定された運動抑制要素の長手方向変位が、例えば、骨のシャフトにおけるヒトの部材の狭い交差部分に起因して、妨げられることである。
【0031】
本発明による実施形態では、各運動抑制要素は、可撓性シースに締結または一体化された少なくとも2つの細長い要素を含み得、その少なくとも2つの細長い要素は、ヒトの関節に装着されたときに、指節間関節の回転軸が可撓性シースと交差するところに十字形を形成するように、例えば、関節の継ぎ目運動が生じる運動面に対して垂直である虚軸が関節の枢動点を通って突き出る点において十字形を形成するように、交差する。基準となる「十字形」がどこに作製されるかは、必ずしも2つの交差する要素に限定される必要はなく、このことはまた、実質的に同じ点で交差する、3つなどの任意の要素数をも意味し得る。
【0032】
本発明の実施形態では、少なくとも2つの細長い要素により形成された十字形は、10°~40°の範囲内、例えば、15°~35°の範囲内、例えば、20°~30°の範囲内の、細長い要素のうちの2つの間の角度を有してもよい。本発明の実施形態が、10°、15°、20°、30°、および35°から選択された下限、ならびに、15°、20°、30°、35°、および40°から選択された(選択された下限よりも大きい)上限により形成された任意の範囲に関連し得ることは、当業者には明らかであろう。
【0033】
本発明の実施形態では、十字形は、2つの細長い要素のそれぞれの2つの部分間に鋭角を有してもよく、これらの部分は、十字形の中心から前側に延在する。
【0034】
本発明の実施形態では、十字形は、2つの細長い要素のそれぞれの2つの部分間に鈍角を有してもよく、これらの部分は、十字形の中心から前側に延在する。
【0035】
本発明の実施形態の利点は、複数の細長い要素を交差させることによって、運動抑制要素のわずかな交差部分が、ヒトの関節の回転軸近くに設けられ得、例えば、関節が曲げられたときに、回転軸近くの材料を折り畳むことによって、制限された屈曲を防止するように、回転軸近くにおいて運動抑制装具の良好な曲げを可能にする。さらに、本発明の実施形態の利点は、運動抑制装具が、例えば、細長い要素の取り付け点に対応する可撓性シースと係合する領域は、ヒトの部材の周縁の周りに離間され得、横方向および/または回転偏位に対して良好な保護を可能にすることができる。
【0036】
本発明による実施形態では、可撓性シースがヒトの指に装着されたときに、2つの細長い要素のうちの第1の細長い要素は、第1の指骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの前側上の位置から、第2の指骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの背側上の位置に延在し得、2つの細長い要素のうちの第2の細長い要素は、第1の指骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの背側上の位置から、第2の指骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの前側上の位置に延在し得る。
【0037】
本発明の実施形態の利点は、ヒトの関節に対して横方向の十字形のプーリーシステムを形成することによって、横方向および/または回転偏位に起因する副次的な損傷に対して良好な保護を提供することができることである。
【0038】
本発明による実施形態では、第3の細長い要素は、第1の指骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの側面上の位置から、第2の指骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースのその側面上の位置に延在し得る。
【0039】
本発明による実施形態では、第1、第2、および/または第3の細長い要素は、伸張耐性材料で構成されたねじ、ワイヤ、糸、細片、またはバンドを備えてもよい。
【0040】
本発明による実施形態では、第1、第2、および/または第3の細長い要素は、可撓性シースと一緒に編み込まれ得るか、またはその中に縫い込まれ得る。
【0041】
本発明の実施形態では、可撓性シースがヒトの指に装着されたときに、可撓性シースは、近位および/または遠位指節間関節の背面、例えば、指関節を露出するための少なくとも1つの開口部を備え得る。例えば、可撓性シースは、可撓性シースがヒトの指に装着されたときに、関節の背面を露出するための少なくとも1つの開口部を有し得る。
【0042】
本発明の実施形態の利点は、関節の実質的に妨げられない屈曲、および良好な運動範囲が可能となり得ることである。
【0043】
本発明による実施形態では、保護装具は、整形外科ブレースであってもよい。
【0044】
本発明の実施形態の利点は、側副靱帯損傷から回復する場合、さらなる悪影響を及ぼす横方向および/または回転偏位から関節を保護しながら、関節の運動が、良好な運動範囲内で可能になり得ることである。
【0045】
本発明の実施形態の利点は、横方向および/または回転偏位に起因するヒトの指の側副靱帯損傷に対する保護が、指の自然な運動範囲を実質的に妨げることまたは制限することなく、提供されることである。
【0046】
本発明による実施形態では、可撓性シースがヒトの指の周りに装着されたときに、該または各運動抑制要素は、第1の指骨のシャフトの位置に対応する第1の領域で可撓性シースに固定され得、また、該または各運動抑制要素は、第2の指骨のシャフトの位置に対応する第2の領域で可撓性シースに固定され得る。
【0047】
本発明による実施形態では、可撓性シースは、ヒトの指の周りに装着されたときに、第1の指骨および第2の指骨のそれぞれのシャフトの周りにあるヒトの指に圧縮力を与えるための少なくとも2つの管状弾性構造体を備えてもよく、該または各運動抑制要素は、その少なくとも2つの管状弾性構造体に固定されてもよく、例えば、第1および第2の端部は、少なくとも2つの管状構造体の対応する管状弾性構造体に固定されてもよい。
【0048】
本発明の実施形態の利点は、圧縮力が、指の内部の解剖学上の構造体を支持するための指骨の中央部分に与えられ得ることである。本発明の実施形態の利点は、把持を向上させるために、管状弾性構造体を指骨の中央部分にわたって設けることができることである。本発明の実施形態の利点は、管状弾性構造体が、ヒトの指に対して整合された位置に運動抑制要素をしっかりと保持されるように設けられることである。本発明の実施形態に従って、指骨のシャフトの周りに管状弾性構造体を設けるさらなる利点は、管状構造体、および/または、管状構造体により固定された運動抑制要素の、指の中心軸に沿った長手方向の変位が、例えば、指骨のシャフトにおける指の狭い交差部分に起因して、妨げられることである。
【0049】
本発明による実施形態では、該または各運動抑制要素は、可撓性シースに締結または一体化された少なくとも2つの細長い要素を備えてもよく、その少なくとも2つの細長い要素は、ヒトの指に装着されたときに、指節間関節の回転軸が可撓性シースと交差する十字形を形成するように、交差する。
【0050】
本発明の実施形態の利点は、複数の細長い要素を交差させることによって、運動抑制装具のわずかな交差部分が、指節間関節の回転軸近くに設けられ得、例えば、指が曲げられたときに、回転軸近くで材料を折り畳むことに起因する制限された屈曲を防止するように、回転軸近くで運動抑制装具の良好な曲げを可能にする。さらなる利点は、運動抑制装具の、例えば、細長い要素の取り付け点に対応する可撓性シースとの係合領域が、指の周縁の周りに離間され得、横方向および/または回転偏位に対して良好な保護を可能にすることである。
【0051】
本発明による実施形態では、可撓性シースがヒトの指に装着されたときに、2つの細長い要素のうちの第1の細長い要素は、第1の指骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの掌側上の位置から、第2の指骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの背側上の位置に延在し得、2つの細長い要素のうちの第2の細長い要素は、第1の指骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの背側上の位置から、第2の指骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの掌側上の位置に延在し得る。
【0052】
本発明の実施形態の利点は、指の関節に対して横方向の十字形のプーリーシステムを形成することによって、横方向偏位に起因する副次的な損傷に対する良好な保護を提供することができることであり、例えば、背側横方向から手掌-横方向までの範囲の横方向偏位の場合である。
【0053】
本発明による実施形態では、装具は、第1の指骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの側面上の位置から、第2の指骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの側面上の位置まで延在する第3の細長い要素を備え得る。
【0054】
本発明による実施形態では、可撓性シースがヒトの指に装着されたときに、可撓性シースは、ヒトの指の指先を露出するための開口部を備え得、例えば、可撓性シースがヒトの指に装着されたときに、可撓性シースは、ヒトの指の指先を露出するための開口部を有し得る。
【0055】
本発明の実施形態の利点は、保護装具が指を被覆している、例えば、指先を被覆しないままに指を包み込んでいるときに、良好な触感および良好な把持が可能になることである。
【0056】
本発明の実施形態では、可撓性シースがヒトの指に装着されたときに、可撓性シースは、ヒトの指の指節間関節の背面を露出するための少なくとも1つの開口部を備え得る。例えば、可撓性シースがヒトの指に装着されたときに、可撓性シースは、ヒトの指の指節間関節の背面を露出するための少なくとも1つの開口部を有し得る。
【0057】
本発明の実施形態の利点は、指の実質的に妨げられない屈曲、および良好な運動範囲が可能となり得ることである。
【0058】
本発明の実施形態では、保護装具は、ヒトの手に装着するための手袋、例えば、武道もしくは格闘技で使用されるための、またはクライミングで使用されるための手袋などのスポーツ手袋であり得る。手袋は、ヒトの手の複数の対応するヒトの指に装着するための複数の可撓性シースを備えることができ、少なくとも4つの運動抑制要素のうちの少なくとも1つは、可撓性シースの各々に一体化され、または可撓性シースの各々に固定され、可撓性シースのベースは、例えば、手袋が装着されたときに、該ヒトの手の近位指骨の少なくとも近位部分を被覆する結合布を形成するように、可撓性シースの中で一緒に接合される。特に、手袋は、前述したように、本発明の実施形態に従う複数の保護装具、例えば、それぞれに4つの対応する指のための4つのそのような保護装具を備え得る。
【0059】
本発明の実施形態の利点は、単一の手の複数の指が、側副靱帯損傷に対して容易に保護され得ることである。
【0060】
本発明による実施形態では、手袋は、ヒトの手の手首を包むためのリストバンドをさらに備えることができ、結合布は、手袋が装着されたときに、ヒトの手の尺骨側に沿ってさらに延在し得、尺骨側においてリストバンドに結合する。
【0061】
本発明による実施形態では、結合布は、手袋が装着されたときに、ヒトの手の橈骨側に沿って、ヒトの手の母指のベースの周りに延在し得、橈骨側においてリストバンドに結合する。
【0062】
本発明による実施形態では、手袋は、ヒトの手の背側にわたって結合布の橈骨側を結合布の尺骨側に結合するストラップをさらに備えることができ、例えば、ストラップと、可撓性シースのベースとの間に開口部を残し、手袋が装着されたときに、ヒトの手の中手指節関節の背面を露出することができる。
【0063】
本発明の実施形態の利点は、装着されている手袋は、手の掌および/または中手指節関節を被覆しないままで適所にしっかりと保持され得、実質的に妨げられない手の運動を広い範囲にわたって可能にすることである。
【0064】
本発明による実施形態では、複数の可撓性シースのうちの1つは、ヒトの手の母指の周りに装着するように適合され得、複数の可撓性シースのうちの別のものは、ヒトの手の人差し指の周りに装着するように適合され得、結合布は、母指の周りに装着するための可撓性シースを、人差し指の周りに装着するための可撓性シースに結合するガセットを備えることができ、その結果、このガセットは、手袋が装着されたときに、母指が完全に延伸されたときの張り詰めた状態に伸張される。
【0065】
本発明の実施形態の利点は、母指の過剰拡大に起因する損傷に対する保護を提供することができることである。
【0066】
本発明による実施形態では、可撓性シースおよび/または結合布は、例えば、ネオプレン、エラステイン、ゴム、ポリエステル、ビニル、ビロード、ビニル、および/または綿を含む伸縮自在の布などの、編まれた、組まれた、織られた、かつ/または織られていない伸縮自在の布を含み得る。
【0067】
第2の態様では、本発明は、第1の骨を第2の骨に対して関節接合するためのヒトの関節、例えば、肘、膝、足首、または指関節などのヒト蝶番関節を保護するための保護装具に関する。この保護装具は、ヒトの関節の周りに装着するように適合された可撓性シースを備える。また、保護装具は、可撓性シースに一体化または固定された少なくとも1つの運動抑制要素も備える。該または各少なくとも1つの運動抑制要素は、可撓性シースがヒトの関節の周りに装着されたときに、第2の骨に対して第1の骨の横方向および/または回転偏位運動を抑制するように適合される。該または各少なくとも1つの運動抑制要素は、可撓性シースがヒトの関節の周りに装着されたときに、ヒトの関節に対応する場所において可撓性シースの側面を被覆する。該または各少なくとも1つの運動抑制要素は、可撓性シースの長手方向における運動抑制要素の伸長に抵抗するように適合される。該または各少なくとも1つの運動抑制要素は、ヒトの関節の屈曲を可能にする方向において屈曲可能である。可撓性シースは、第1の骨および第2の骨のそれぞれのシャフトの周りの人体に圧縮力を与えるための少なくとも2つの管状弾性構造体を備え、ヒトの関節の周りに装着されたときに、運動抑制要素は、少なくとも2つの管状弾性構造体に固定される。
【0068】
本発明の実施形態の利点は、内部の解剖学上の構造体を支持するための骨の中央部に圧縮力を与えることができることである。本発明の実施形態の利点は、管状弾性構造体が、把持を向上するように骨の中央部にわたって提供され得ることである。本発明の実施形態の利点は、管状弾性構造体が、ヒトの関節に対して整合された位置に運動抑制要素をしっかりと保持するように提供され得ることである。さらに、本発明の実施形態に従って骨のシャフトの周りに管状弾性構造体を設ける利点は、管状構造体、および/またはその管状構造体により固定された運動抑制要素の長手方向変位が、例えば、骨のシャフトにおけるヒトの部材の狭い交差部分に起因して、妨げられることである。
【0069】
第3の態様では、本発明は、第1の骨を第2の骨に対して関節接合するためのヒトの関節、例えば、肘、膝、足首、または指関節などのヒト蝶番関節を保護するための保護装具に関する。保護装具は、ヒトの関節の周りに装着するように適合された可撓性シースを備える。また、保護装具は、可撓性シースに一体化または固定された少なくとも1つの運動抑制要素も備える。該または各少なくとも1つの運動抑制要素は、可撓性シースがヒトの関節の周りに装着されたときに、第2の骨に対して第1の骨の横方向および/または回転偏位運動を抑制するように適合される。該または各少なくとも1つの運動抑制要素は、可撓性シースがヒトの関節の周りに装着されたときに、ヒトの関節に対応する場所において可撓性シースの側面を被覆する。該または各少なくとも1つの運動抑制要素は、可撓性シースの長手方向における運動抑制要素の伸長に抵抗するように適合される。該または各少なくとも1つの運動抑制要素は、ヒトの関節の屈曲を可能にする方向において屈曲可能である。該または各運動抑制要素は、可撓性シースに締結または一体化された少なくとも3つの細長い要素を備え得、その少なくとも3つの細長い要素は、ヒトの関節に装着されたときに、ヒトの関節の回転軸が可撓性シースと交差する十字形を形成するように、例えば、関節の関節接合運動が生じる運動平面に対して垂直である虚軸が関節の枢動点を通って突き出る点において十字形を形成するように、交差する。可撓性シースがヒトの関節に装着されたときに、少なくとも3つの細長い要素のうちの第1の細長い要素は、第1の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの前側上の位置から、第2の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの背側上の位置に延在し、少なくとも3つの細長い要素のうちの第2の細長い要素は、第1の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの背側上の位置から、第2の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの前側上の位置に延在する。第3の細長い要素(少なくとも3つの細長い要素のうちの)は、第1の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの側面上の位置から、第2の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースのその側面上の位置に延在する。
【0070】
本発明の実施形態の利点は、複数の細長い要素を交差させることによって、運動抑制要素のわずかな交差部分が、ヒトの関節の回転軸近くに設けられ得、例えば、関節が曲げられたときに、回転軸近くで材料を折り畳むことに起因する制限された屈曲を防止するように、回転軸近くで運動抑制装具の良好な曲げを可能にする。さらに、本発明の実施形態の利点は、運動抑制装具が、例えば、細長い要素の取り付け点に対応する可撓性シースと係合する領域は、ヒトの部材の周縁の周りに離間され得、横方向および/または回転偏位に対して良好な保護を可能にすることができる。
【0071】
本発明の実施形態の利点は、ヒトの関節に対して横方向の十字形のプーリーシステムを形成することによって、横方向および/または回転偏位に起因する副次的な損傷に対する良好な保護を提供することができることである。
【0072】
可撓性シースは、第1の骨および第2の骨のそれぞれのシャフトの周りの人体上に圧縮力を与えるための少なくとも2つの管状弾性構造体を備え得、ヒトの関節の周りに装着されたときに、運動抑制要素は、少なくとも2つの管状弾性構造体に固定される。
【0073】
本発明の第1、第2、および/または第3の態様の実施形態では、可撓性シースは、関節、例えば、関節を備えるヒトの部材の少なくとも一部を、ぴったりと合った仕方で包むための構造体であり得る。シースは、管状構造体であり得る。特に、シースは、関節の両側面上での部材の横断面周縁全体の周りに関節を含むヒトの部材の少なくとも一部を包囲し得、例えば、その周縁全体の周りの第1の骨の周りに部材を包囲し得、その周縁全体の周りの第2の骨の周りに部材を包囲し得、第1の骨および第2の骨をそれぞれ包囲するための両方の包囲部分が結合される。しかしながら、シースは、必ずしもその表面領域全体にわたって連続的である必要はなく、例えば、孔を備えてもよく、その限りにおいて、例えば、関節の両側面で部材に圧縮力を与えるように、連続的かつ閉じた経路が部材全体の周りに形成される。例えば、可撓性シースは、ヒトの関節の周りに装着されたときに、第1の骨および第2の骨のそれぞれのシャフトの周りの人体上に圧縮力を与えるための少なくとも2つの管状弾性構造体を備えてもよく、またはそれらから構成されてもよく、運動抑制要素は、その少なくとも2つの管状弾性構造体に固定され得、このため、第1の骨および第2の骨のそれぞれを包囲するための包囲部分間の結合を形成する。しかしながら、好ましくは、シースはまた、身体上に保護装具を適用し、装着時にその保護装具を身体の解剖学的構造上の特徴に整合させることを支援し、かつ、装着時の快適性を増加させるために、そのような管状弾性構造体を結合する可撓性布を備えることもできる。
【0074】
本発明の第1、第2、および/または第3の態様の実施形態では、保護装具は、可撓性シースがヒトの関節の周りに装着されたときに、ヒトの関節の横方向と反対の場所において、可撓性シースの各側面をそれぞれ被覆する運動抑制要素のうちの2つを備えることができる。
【0075】
本発明の第1、第2、および/または第3の態様の実施形態では、第1、第2、および/または第3の細長い要素は、伸張耐性材料で構成されたねじ、ワイヤ、糸、細片、またはバンドを含んでもよい。
【0076】
本発明の第1、第2、および/または第3の態様の実施形態では、第1、第2、および/または第3の細長い要素は、可撓性シースと一緒に織り込まれるか、またはその中に縫い込まれ得る。
【0077】
本発明の第1、第2、および/または第3の態様の実施形態では、可撓性シースがヒトの関節に装着されたときに、可撓性シースは、ヒトの関節の背面、例えば指関節、またはヒトの関節の前面、例えば膝蓋骨を露出するための少なくとも1つの開口部を備え得る。例えば、可撓性シースがヒトの関節に装着されたときに、可撓性シースは、ヒトの関節の背面、またはヒトの関節の前面を露出するための少なくとも1つの開口部を有し得る。
【0078】
本発明の実施形態の利点は、関節の実質的に妨げられない屈曲、および良好な運動範囲が可能となり得ることである。
【0079】
本発明の第1、第2、および/または第3の態様の実施形態では、保護装具は、整形外科ブレースであり得る。
【0080】
本発明の実施形態の利点は、さらなる悪影響を及ぼす横方向および/または回転偏位から関節を保護しながら、関節の運動が、側副靱帯損傷から回復するときに良好な運動範囲内で可能になり得ることである。
【0081】
発明の特定の、かつ好ましい態様は、添付の独立請求項および従属請求項に記載されている。従属請求項からの特徴は、独立請求項の特徴と組み合わせられ、必要に応じて、他の従属請求項の特徴と組み合わせられ得、また特許請求の範囲に明示的に記載されたものだけでない場合がある。
【0082】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載された実施形態から明らかになり、それらを参照して説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】本発明の実施形態に従う保護装具の第1の例示的な実施形態を示す。
図2】本発明の実施形態に従う保護装具の第1の例示的な実施形態を示す。
図3】本発明の実施形態に従う保護装具の第2の例示的な実施形態を示す。
図4】本発明の実施形態に従う保護手袋の例示的な実施形態の背側図を示す。
図5】本発明の実施形態に従う保護手袋の例示的な実施形態の、骨構造の解剖学上の重ね合わせを有する背側図を示す。
図6】本発明の実施形態に従う手袋を示す。
図7】本発明の例示的な実施形態に従う手袋の手掌図を示す。
図8】本発明の実施形態の態様を例解するための指の解剖学上の表示を示す。
図9】本発明の別の例示的な実施形態に従う手袋の手掌図を示す。
【0084】
それらの図面は、単に概略的であり、かつ非限定的である。図面において、いくつかの要素の大きさは、誇張されている場合があり、例解目的のため、一定の縮尺では描かれていない。
【0085】
特許請求の範囲の中のいかなる引用符号も、範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【0086】
異なる図面において、同じ引用符号は、同じかまたは類似の要素を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0087】
本発明は、特定の実施形態について、特定の図面を参照しながら説明されているが、本発明は、それらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載された図面は、単に概略的であり、かつ非限定的である。図面において、いくつかの要素の大きさは、誇張されている場合があり、例解目的のため、一定の縮尺では描かれていない。寸法および相対的な寸法は、本発明の実行に向けた実際の縮小には一致しない。
【0088】
さらに、説明の中、および特許請求の範囲の中の第1、第2などの用語は、同様の要素間を区別するために使用されており、必ずしも、一時的に、空間的に、ランク付けする際の、または任意の他の方法における順番を説明するために使用されているわけではない。そのように使用された用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本明細書に説明または例解された順番ではない他の順番で動作可能であることを理解されたい。
【0089】
さらに、説明の中、および特許請求の範囲の中の上、下などの用語は、説明の目的で使用されており、必ずしも相対的な位置を記述するために使用されているわけではない。そのように使用された用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本明細書に説明または例解された順番ではない他の配向で動作可能であることを理解されたい。
【0090】
特許請求の範囲で使用されている用語「備える」は、その後に列挙された手段に限定されているものと解釈してはならず、その用語は、他の要素または工程を除外しないことに留意されたい。したがって、その用語は、言及された通りに記述された特徴、整数、工程、または構成要素の存在を規定されているものと解釈されるべきであるが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、もしくは構成要素、またはこれらの群の存在または追加を排除しない。したがって、表現「手段AおよびBを備える装具」の範囲は、構成要素AおよびBのみで構成される装具に限定されるべきではない。それは、本発明に関して、本装具の関連した構成要素のみが、AおよびBであることを意味する。
【0091】
本明細書全体を通じた「1つの実施形態」または「一実施形態」への参照は、その実施形態と関連して記載されたある特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つに包含することを意味する。したがって、本明細書全体を通じて様々な箇所での「1つの実施形態では」または「一実施形態では」という慣用句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態に言及しているとは限らないが、その可能性もあり得る。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な仕方で組み合わされ得、本開示から当業者には明らかであろう。
【0092】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明では、本発明の様々な特徴は、本発明を簡素化し、1つ以上の様々な発明の態様の理解を支援するため、その発明の単一の実施形態、図面、または説明において、一緒にグループ化されることがある。しかしながら、この開示の方法は、特許請求された発明が、各請求項において明示的に列挙された特徴よりも多くの特徴を必要とするという意図を反映しているものと解釈してはならない。そうではなく、それ以降の請求項が反映するように、発明の態様は、先に開示された単一の実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴を含む。したがって、詳細な説明の後の特許請求の範囲は、これにより、本発明の別個の実施形態として独立する各請求項と共に、この詳細な説明の中に明示的に組み込まれる。
【0093】
さらに、本明細書に記載されたいくつかの実施形態は、いくつかの、ただし他の実施形態に含む他の特徴ではない特徴を含むが、当業者には理解されるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内にあることを意味し、異なる実施形態を形成することになる。例えば、以下の特許請求の範囲では、いずれかの特許請求された実施形態が、任意の組み合わせで使用することができる。
【0094】
本明細書に提供された説明では、数多くの特定の詳細が記述されている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの特定の詳細がなくても実施され得ることが理解される。他の例では、周知の方法、構造、および技術は、この説明の理解を不明瞭にさせないように、詳細には示していない。
【0095】
第1、第2、および第3の態様では、本発明は、ヒトの関節、例えば、第1の骨を第2の骨に対して、例えば、第2の骨に相対的に関節接合するためのヒトの関節を保護するための保護装具に関する。
【0096】
保護装具は、ヒトの関節の周りに装着するように適合された可撓性シース、および、可撓性シースに一体化または固定された少なくとも1つの運動抑制要素を備える。
【0097】
各運動抑制要素は、可撓性シースが、ヒトの関節の周りに、例えば、ヒトの指の周りに装着されたときに、第2の骨、例えば、第2の指骨に対する第1の骨、例えば、第1の指骨の横方向および/または回転偏位運動を抑制するように適合されている。各運動抑制要素は、可撓性シースがヒトの関節の周りに、例えば、指の周りに装着されたときに、関節に対応する場所において可撓性シースの側面を被覆する。各運動抑制要素は、可撓性シースの長手方向における運動抑制要素の伸長に抵抗するように適合されている。各運動抑制要素は、ヒトの関節の屈曲を可能にする方向において屈曲可能である。
【0098】
本発明の第1、第2、および第3の態様の実施形態は、上述の特徴を共有するが、第1、第2、および第3の態様の実施形態は、以下に説明するように、追加の特徴において互いに対して異なる。また、本発明の実施形態は、第1の態様、第2の態様、および/または第3の態様の特徴の組み合わせにも関連し得る。
【0099】
特に、本発明の第1の態様の実施形態に従う保護装具は、ヒトの指の近位指節間関節および遠位指節間関節を保護するように適合されている。運動抑制要素のうちの4つは、ヒトの指の近位指節間関節および遠位指節間関節の各々の両側面の各々とそれぞれ対応する。遠位指節間関節に対応する運動抑制要素、および、近位指節間関節に対応する運動抑制要素は、可撓性シース上で異なる係合点を有する、異なる、かつ別個の要素である。
【0100】
係合点に対する基準は、運動抑制要素が可撓性シースに接合される、例えば、運動抑制要素が可撓性シースに貼り付けられる明確に異なる点を参照することができるが、これは、必ずしも本発明に従う各実施形態に対する場合ではない。例えば、運動抑制要素は、例えば、可撓性シースの材料特性または組成物の連続的または不連続的変化によって可撓性シースと一緒に一体化して形成されてもよい。それにもかかわらず、係合点は、可撓性シースの特性が運動抑制要素の特性に変化する、例えば、可撓性材料がより剛性のある材料に変化する点または離散領域とは依然として識別され得る。例えば、実施形態は、必ずしもそれに限定されず、可撓性シースおよび運動抑制要素は、編むこと、組むこと、織ること、またはそれ以外の場合では、糸、繊維、または他の細長い構成要素構造体から布を構成することによって一体化して形成されてもよく、その中では、そのような細長い構成要素構造体の材料特性が、例えば、糸または繊維のコーティングなどの樹脂または熱可塑性材料を追加することによって、局所的に変化し得、運動抑制要素を実現するためのその場所において布の好適な特性を獲得してもよい。
【0101】
本発明の第2の態様の実施形態に従う保護装具は、必ずしもヒトの指のための保護装具に限定されないが、第1の骨および第2の骨のそれぞれのシャフトの周りの人体上に圧縮力を与えるための少なくとも2つの管状弾性構造体を備え、ヒトの関節の周りに装着されたときに、運動抑制要素は、その少なくとも2つの管状弾性構造体に固定される。
【0102】
本発明の第3の態様の実施形態に従う保護装具では、それは、必ずしも、ヒトの指のための保護装具、および/または、少なくとも2つの管状弾性構造体を備える保護装具に限定されないが、該または各運動抑制要素は、可撓性シースに締結または一体化された少なくとも3つの細長い要素を備え、その少なくとも3つの細長い要素は、ヒトの関節に装着されたときに、ヒトの関節の回転軸が可撓性シースを交差する十字形(すなわち、実質的に単一の共通の中心において3つすべてを交差させる)を形成するように、例えば、関節の関節接合運動が生じる運動平面に対して垂直である虚軸が、関節の枢動点を通って突き出る点において十字形を形成するように、交差する。可撓性シースがヒトの関節に装着されたときに、少なくとも3つの細長い要素のうちの第1の細長い要素は、第1の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの前側上の位置から、第2の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの背側上の位置に延在し、少なくとも3つの細長い要素のうちの第2の細長い要素は、第1の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの背側上の位置から、第2の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの前側上の位置に延在する。第3の細長い要素(少なくとも3つの細長い要素のうちの)は、第1の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの側面上の位置から、第2の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースのその側面上の位置に延在する。
【0103】
以下の説明では、本発明の実施形態の特徴、例えば、必須および/または任意選択的な特徴が、さらに詳細に記載されている。記載された特徴の組み合わせが、上述したような特定の態様の識別可能な特徴と明確には相反または矛盾しない場合、記載された特徴は、例えば、本発明の異なる態様の間の類似性に起因して、同様に、本発明の第1、第2、および第3の態様の実施形態に関連し得ることが、理解されるであろう。
【0104】
図1および図2を参照すると、本発明の実施形態に従う保護装具1の例示的な実施形態が示されている。保護装具1は、例えば、整形外科ブレースであり得る。
【0105】
図1および図2は、ヒトの関節2、例えば、ヒトの指の関節2を保護するための保護装具1を示す。図1および図2に例解されるように、保護装具は、複数のヒトの関節2、例えば、指の複数の関節を保護するように適合され得る。保護装具1は、ヒトの指を保護するように適合され得る。
【0106】
しかしながら、本発明の実施形態は、それに限定されず、第1の骨を第2の骨に対して関節接合する、例えば、肘、膝、足指関節、または足首などの人体の蝶番関節を保護するための人体の他の関節と同様に関連し得る。
【0107】
保護装具1は、ヒトの関節2の周りに装着するように適合された可撓性シース3を備える。
【0108】
例えば、可撓性シース3は、ヒトの指の第1の指骨をヒトの指の第2の指骨に結合する指節間関節の周りに装着するように適合され得、第2の指骨は、第1の指骨に隣接している。可撓性シース3は、ヒトの指の2つの指節間関節の周りに装着するように適合され得る。このため、可撓性シース3は、ヒトの指の掌面を被覆するための掌側、ヒトの指の背面を被覆するための背側、ならびに、ヒトの指の尺骨面および橈骨面をそれぞれ被覆するための2つの側面を備え得る。掌側、背側、および2つの側面は、可撓性シースの表面形態を意味し得、必ずしもこれらの側面の明確な構造的分離および/または輪郭を意味しない。例えば、可撓性シースは、実質的に管状の形状を有し得、装着時における指の対応する側面を被覆するための管状構造体の周縁の周りの各象限は、それぞれの側面と称され得る。
【0109】
可撓性シースおよび/または結合布は、編まれた、組まれた、織られた、かつ/または織られていない伸縮自在の布を含み得る。
【0110】
可撓性シース3は、可撓性シースがヒトの関節に装着されたときに、ヒトの関節の背面を露出するための少なくとも1つの開口部14を有し得る。
【0111】
さらに、本発明の実施形態に従う、指を保護するための保護装具1の可撓性シース3は、可撓性シース3がヒトの指に装着されたときに、ヒトの指の指先を露出するための開口部を有し得る。
【0112】
保護装具1は、可撓性シース3に一体化または固定された少なくとも1つの運動抑制要素4をさらに備える。例えば、その少なくとも1つの運動抑制要素は、シースに織り込まれ、縫い込まれ、または接着され得、かつ/または、例えば、ステープル、針、釘リベット、ねじ、ボタン、および/または同様の締結具により、所定の結合点においてシースに固定され得る。
【0113】
運動抑制要素は、可撓性シースに貼付または接合された明らかに異なる構造体であり得るが、これは、必ずしも本発明に従う各実施形態に対する場合とは限らない。例えば、運動抑制要素は、例えば、可撓性シースの材料特性または組成物の連続的または不連続的変化によって可撓性シースと一緒に一体化して形成されてもよい。それにもかかわらず、可撓性シースの特性が運動抑制要素の特性に変化することは、可撓性シースおよび運動抑制要素により表される特徴の明瞭な識別を依然として可能にする。例えば、可撓性材料は、運動抑制要素が与えられ、より剛性の高い材料に変化することができる。例えば、実施形態は、必ずしもそれに限定されず、可撓性シースおよび運動抑制要素は、編むこと、組むこと、織ること、またはそれ以外の場合では、糸、繊維、または他の細長い構成要素構造体から布を構成することによって一体化して形成されてもよく、その中では、そのような細長い構成要素構造体の材料特性が、例えば、糸または繊維のコーティングなどの樹脂または熱可塑性材料を追加することによって、局所的に変化し得、運動抑制要素を実現するためのその場所に布の好適な特性を獲得し得る。
【0114】
少なくとも1つの運動抑制要素4は、可撓性シース3がヒトの関節2の周りに装着されたときに、第2の骨に対して第1の骨の横方向および/または回転偏位運動を抑制するように適合されている。例えば、少なくとも1つの運動抑制要素4は、可撓性シース3がヒトの指の周りに装着されたときに、第2の指骨に対して第1の指骨の横方向および/または回転偏位運動を抑制するように適合され得、そこでは、第1および第2の指骨が、指節間関節により結合されている。
【0115】
少なくとも1つの運動抑制要素4は、可撓性シースがヒトの関節の周りに装着されたときに、ヒトの関節2に対応する場所において可撓性シース3の側面Lを被覆する。例えば、各運動抑制要素4は、可撓性シースがヒトの指の周りに装着されたときに、指節間関節に対応する場所において可撓性シースの側面Lのうちの1つを被覆し得る。
【0116】
少なくとも1つの運動抑制要素4は、可撓性シース3の長手方向5における運動抑制要素4の伸長に抵抗するように適合されている。
【0117】
少なくとも1つの運動抑制要素4は、ヒトの関節2の屈曲を可能にする方向において屈曲可能である。
【0118】
例えば、少なくとも1つの運動抑制要素4は、本発明の実施形態に従う、ヒトの指の指節間関節を保護するための保護装具において、可撓性シースがヒトの指の周りに装着されたときに、指節間関節の屈曲を可能にするように背-手掌方向に屈曲可能であり得る。
【0119】
保護装具1は、可撓性シースがヒトの関節2の周りに装着されたときに、ヒトの関節2の横方向の反対の場所において、可撓性シースの各側面Lをそれぞれ被覆する運動抑制要素4のうちの2つを備え得る。
【0120】
保護装具1は、ヒトの指の近位指節間関節および遠位指節間関節の各々の両側面Lの各々のそれぞれに対する運動抑制要素4のうちの4つを備え得る。このため、それぞれ4つの運動抑制要素4は、可撓性シース3に一体化または固定され得、そこでは、これらの4つの運動抑制要素は、それぞれ、ヒトの指の近位指節間関節の橈骨側に対応する場所における可撓性シース3の第1の側面、近位指節間関節の尺骨側に対応する場所における可撓性シース3の第2の側面、ヒトの指の遠位指節間関節の橈骨側に対応する場所における可撓性シース3の第1の側面、および、遠位指節間関節の尺骨側に対応する場所における可撓性シース3の第2の側面を被覆する。
【0121】
本発明の第1の態様の実施形態では、遠位指節間関節に対応する運動抑制要素、および、近位指節間関節に対応する運動抑制要素は、可撓性シース上に異なる係合点を有する、異なる、かつ別個の要素である。
【0122】
実施形態の利点は、各指節間関節に対して異なる点で可撓性シースと係合する別個の運動抑制要素を提供することによって、各関節で強制される運動抑制が、独立に制御され得ることである。可撓性シース3がヒトの関節の周りに装着されたときに、運動抑制要素4は、第1の骨のシャフトの位置に対応する第1の領域6において可撓性シース3に固定され得、運動抑制要素4は、第2の骨のシャフトの位置に対応する第2の領域7において可撓性シースに固定され得る。
【0123】
可撓性シース3は、可撓性シースがヒトの関節の周りに、例えば、第1の領域6および第2の領域7のそれぞれの周りに装着されたときに、第1の骨および第2の骨のそれぞれのシャフトの周りの人体上に圧縮力を与えるための少なくとも2つの管状弾性構造体8を備え得る。運動抑制要素4は、少なくとも2つの管状弾性構造体、例えば、第1の領域6における運動抑制要素4の第1の端部での第1の管状弾性構造体、および、第2の領域7における運動抑制要素4の第2の端部での第2の管状弾性構造体に固定され得る。
【0124】
しかしながら、可撓性シースはまた、一体形成された圧縮構造体、例えば、圧縮手袋であってもよい。例えば、可撓性シースは、その(または各)指骨の中央の周りに装着されたときに、より圧縮性があるように適合されてもよい。このため、管状弾性構造体により提供された同じ効果は、明らかに異なる管状構造体がなくても一体化して形成された可撓性シースによって達成され得る。
【0125】
そのような圧縮手袋構造体は、当技術分野において既知である。例えば、浮腫および/または炎症の治療のためのものである。本発明の実施形態は、そのような当技術分野において既知である圧縮構造体を備え得るが、そのような圧縮構造体は、必ずしも同様に構成される必要はない。例えば、先行技術において、例えば、浮腫および/または炎症治療などの医療分野において既知の用途の場合、様々な、例えば、より高い圧縮力が、本発明の実施形態に従う用途の場合よりも必要とされる場合がある。本発明の実施形態に従って、圧縮力は、十分な摩擦が手袋構造体と身体との間で確実に生成することができるように指および/または手に与えられ得、すなわち、その結果、運動抑制要素が実質的に静止し続け、例えば、指に対して十分整合し続け、関節を保護するように関節の反対側におけるそれらの端部間で十分な抑制力を生成することができる。指へのさらに十分快適な圧縮力を達成するため、既知の圧縮手袋構造体の最適化、例えば、その構造体の設計パラメータの最適化が、発明努力の発揮を必要とせずに当業者の能力の範囲内で十分存在する活動として考えられる。
【0126】
運動抑制要素4、例えば、各運動抑制要素4は、可撓性シース3内に締結または一体化された少なくとも2つの細長い要素11、12を備え得る。図1に示すように、その少なくとも2つの細長い要素は、ヒトの関節に装着されたときに、ヒトの関節の回転軸が可撓性シースを交差する十字形を形成するように交差し得る。
【0127】
基準となる「十字形」がどこに作られるかは、必ずしも2つの交差する要素に限定される必要はないが、これはまた、実質的に同じ点で交差する、3つなどの任意の要素数をも意味し得る。
【0128】
本発明の実施形態では、少なくとも2つの細長い要素により形成された十字形は、10°~40°の範囲内、例えば、15°~35°の範囲内、例えば、20°~30°の範囲内にある、細長い要素のうちの2つの間の角度を有してもよい。記述された端点の任意の対の間の他の範囲もまた、考慮されている。
【0129】
本発明の実施形態では、十字形は、2つの細長い要素のそれぞれの2つの部分の間に鋭角を有してもよく、これらの部分は、十字形の中心から前側に延在する。本発明の実施形態では、十字形は、2つの細長い要素のそれぞれの2つの部分間に鈍角を有してもよく、これらの部分は、十字形の中心から前側に延在する。
【0130】
例えば、図8を参照すると、細長い要素は、可撓性シースが装着されたときに、側副靱帯80に対して平行である、または実質的に平行であるように構成され得る。このため、運動抑制要素は、側副靱帯の機能と似ている可能性がある。
【0131】
代替的に、細長い要素は、可撓性シースが装着されたときに、側副靱帯80に対して垂直である、または実質的に垂直であるように構成され得る。例えば、運動抑制要素は、指関節までの短い距離において、例えば、指骨のシャフトの中央点から実質的に離れて、可撓性シースと係合し得る。このため、厳しく引っ張られたときに、より大きな衝撃力が、細長い要素により吸収され得る。
【0132】
例えば、細長い要素が、近位および遠位指節間関節の両方を被覆する、指の周りの連続的なバンドを形成することができた場合、準最適な保護しか達成し得ない。1つの螺旋が、指関節の回転点を、指骨にわたって、次の指関節の反対側面の回転点に結合し得る。第1の指関節における半径をR、および第2の指関節の半径をRと考え、ここで、R<Rとし、さらに、(中央の)指骨の長さをLとする。そのような仮想連続バンドの経路は、次式のように表すことができ、
なお、
zは、指の長手方向軸に沿う座標であり、yは、背-手掌方向の座標である。
【0133】
このモデルを使用すると、螺旋が垂直方向yとなす角度を見積もることができる。例えば、R=5.7/2π、R=5/2π、L=3という代表的な値の場合には、第1の指関節(近位指骨と中央指骨との間)においては、46.5度の角度が得られ、第2の指関節(中央指骨と遠位指骨との間)においては、50.2度の角度が得られる。このため、そのような連続バンドを使用すると、その角度は、約45度~約50度の範囲内の角度を伴って、固定され、かつ、指の幾何学的形状に依存する。しかしながら、そのような角度は、最適ではない可能性がある。
【0134】
本発明の実施形態に従うと、細長い要素は、2ミリメートル~10ミリメートルの範囲内、例えば、3ミリメートル~5ミリメートルの範囲内、例えば、3ミリメートルの、長手方向に計測された距離にある結合点において固定され得る。例えば、結合点は、3ミリメートル~8ミリメートルの範囲内、例えば、4ミリメートル~6ミリメートルの範囲内、例えば、5ミリメートルの、背-手掌方向に計測された距離であり得る。
【0135】
例えば、回転点の左および右に対する結合3ミリメートル、ただし、この点の上および下5ミリメートルの場合、31度の角度を得ることができる。
【0136】
可撓性シースがヒトの関節に装着されたときに、少なくとも2つの細長い要素のうちの第1の細長い要素11は、第1の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの前側上の位置から、第2の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの背側上の位置に延在し得、少なくとも2つの細長い要素のうちの第2の細長い要素12は、第1の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの背側上の位置から、第2の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースの前側上の位置に延在し得る。
【0137】
図3に示すように、装具、例えば、その少なくとも1つの運動抑制要素4は、第1の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シース3の側面上の位置から、第2の骨のシャフトの位置に対応する可撓性シースのその側面上の位置に延在する第3の細長い要素13をさらに備え得る。
【0138】
図8を参照すると、第3の細長い要素は、側副靱帯80のおおよそ水平の配向に近づき得ることが理解され得る。
【0139】
さらに、本発明の実施形態では、少なくとも1つの運動抑制要素は、複数の細長い要素、例えば、水平整合(例えば、長手方向軸に対して平行である)から、長手方向および背手掌方向間の45°まで、または長手方向に対してほぼ80°、例えば背手掌方向に対してほぼ垂直方向までの範囲にわたる複数の異なる配向に配向された、例えば5つ以上、例えば10個以上などの3つ超の細長い要素を備え得る。複数の細長い要素は、明らかに異なる細長い要素としてもよく、または、例えば、合成布内に異なる方向に配向された撚り線として一緒に一体化されてもよい。
【0140】
細長い要素11、12、13は、伸張抵抗材料で構成されたねじ、ワイヤ、糸、細片、および/またはバンドを含んでもよい。
【0141】
細長い要素11、12、13は、可撓性シースと一緒に織り込まれ得るか、またはその中に縫い込まれてもよい。
【0142】
図4図7を参照すると、本発明の実施形態に従う保護装具は、ヒトの手に装着するための手袋20であってもよい。手袋20は、例えば、上述したように、ヒトの手の複数の対応するヒトの指の周りに装着するための複数の可撓性シース3を備えてもよい。少なくとも1つの運動抑制要素4のうちの少なくとも1つは、可撓性シース3の各々の中に一体化され、または可撓性シース3の各々に固定されている。可撓性シース3の各々は、少なくとも1つの運動抑制要素4のうちの少なくとも1つを備えてもよい。
【0143】
可撓性シースのベース21は、手袋が装着されたときにヒトの手の近位指骨の少なくとも近位部分を被覆する結合布22を形成するように、一緒に接合され得る。
【0144】
手袋20は、ヒトの手の手首を包むためのリストバンド23を備えることができ、その中では、結合布22は、手袋が装着されたときに、ヒトの手の尺骨側24に沿って延在して、尺骨側においてリストバンド23に結合する。
【0145】
結合布はまた、ヒトの手の橈骨側25に沿って、ヒトの手の母指のベースの周りにも延在し得、手袋が装着されたときに橈骨側においてリストバンド23に結合する。さらに、母指サポート26は、例えば、手根中手関節を支持するために、例えば、手袋20が装着されたときに手根中手関節に圧縮力を与える弾性構造体を、母指のベースの周りに提供され得る。
【0146】
手袋20は、手袋が装着されたときに、ヒトの手の背側にわたって結合布22の橈骨側25を結合布の尺骨側24に結合するストラップ27を備え得る。開口部28は、手袋が装着されたときにヒトの手の中手指節関節の背面を露出するように、ストラップ27と、可撓性シースのベース21との間に形成され得る。
【0147】
さらに、例えば、図6に示すように、ストラップ27、または別のストラップはまた、手袋が装着されたときに、ヒトの手の掌側にわたって結合布の橈骨側を結合布の尺骨側にも結合し得る。
【0148】
複数の可撓性シースのうちの1つの可撓性シースは、ヒトの手の母指の周りに装着するように適合され得、複数の可撓性シースのうちの別の可撓性シースは、ヒトの手の人差し指の周りに装着するように適合され得る。
【0149】
図9を参照すると、結合布は、母指の周りに装着するための可撓性シースを、人差し指の周りに装着するための可撓性シースに結合するガセット29を備えることができ、その結果、このガセット29は、手袋が装着されたときに、母指が完全に延伸されたときの張り詰めた状態に伸張される。
【0150】
結合布22は、組まれた、編まれた、織られた、かつ/または織られていない伸縮自在の布を含み得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9