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  • 特許-ドローンの安全飛行装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】ドローンの安全飛行装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 7/00 20060101AFI20220513BHJP
   B64F 3/00 20060101ALI20220513BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B61B7/00 A
B64F3/00
B64C39/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020063461
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160529
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2020-04-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592158969
【氏名又は名称】西武建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516163796
【氏名又は名称】有限会社エム・エイ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】二村 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】川前 勝三郎
(72)【発明者】
【氏名】井戸田 和也
(72)【発明者】
【氏名】栗城 友花
(72)【発明者】
【氏名】伊尾木 浩二
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-052429(JP,A)
【文献】特開2020-011592(JP,A)
【文献】特開2019-156221(JP,A)
【文献】特開2020-015488(JP,A)
【文献】特開2019-137251(JP,A)
【文献】特開2018-095394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 7/00
B64F 3/00-3/02
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローンが移動可能に装着され、前記ドローンの移動軌跡を規制する上下方向に配設されるガイドラインと、このガイドラインの上部を支持し、所定の建築物の屋上に配置される、移動可能なロッド状のライン上部支持手段と、前記ガイドラインの下部を支持する移動可能なライン下部支持手段とを備え、
前記ライン下部支持手段に所定重量の錘が組み込まれ、前記ライン上部支持手段若しくはライン下部支持手段の何れか一方に、前記ガイドラインが巻回されて、このガイドラインの巻き取りおよび送り出しを行なうラインドラムと、前記ガイドラインを直線状に保持する張力調整手段が設けられ
前記ライン上部支持手段は、前記建築物の屋上の作業者により保持されることを特徴とするドローンの安全飛行装置。
【請求項2】
前記ライン下部支持手段の上部に、前記ドローンが発着させられる発着台が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドローンの安全飛行装置。
【請求項3】
前記発着台が、衝撃緩和材によって形成されていることを特徴とする請求項2に記載のドローンの安全飛行装置。
【請求項4】
前記発着台に前記ガイドラインが貫通して配置され、前記発着台と前記ガイドラインが、このガイドラインに摩擦抵抗を付与するように当接させられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のドローンの安全飛行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローンの移動軌跡を規制して、設定された飛行領域以外の領域への飛行を防止するためのドローンの安全飛行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔操作や自動制御によって飛行するドローンが普及し、このドローンにカメラを搭載して、人間が近づくことが困難な箇所を空撮することが行なわれている。
【0003】
ところで、何らかの原因で、ドローンを設定した領域以外の領域に飛行させてしまうことが想定される。
【0004】
このような事象が生じると、ドローンの紛失や構造物との接触や衝突による破損等を招くおそれがあり、その対策が要望されている。
【0005】
そして、このような要望への対応を目的とした従来の技術が、例えば、特許文献1において提案されている。
【0006】
この技術は、所定間隔をおいて設置された一対の固定構造物間にワイヤ等のガイドラインを張設しておき、このガイドラインにドローンを移動可能に連結したものである。
【0007】
そして、ドローンの移動軌跡をガイドラインに沿った軌跡に規制して、ドローンの、設定外の領域への飛行を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-218142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した従来の技術においては、ドローンの移動軌跡を規制するガイドラインを、一対の固定構造物間に張設する構成としたことにより、移動軌跡が固定されて変更が困難であるという不具合や、設置作業が煩雑であるといった不具合がある。
【0010】
本発明は、前述した従来技術における不具合を解消すべくなされたもので、簡便な作業で設置することができ、ドローンの規制された移動軌跡を容易に変更できるドローンの安全飛行装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のドローンの安全飛行装置は、ドローンが移動可能に装着され、前記ドローンの移動軌跡を規制するガイドラインと、このガイドラインの上部を支持するライン上部支持手段と、前記ガイドラインの下部を支持するライン下部支持手段とを備え、前記ライン上部支持手段が、作業者に保持されて、作業者による位置調整可能な構成となされていることを特徴とする。
【0012】
このように構成されたドローンの安全飛行装置は、ライン上部支持手段が、たとえば、建築物の上部において作業者により保持され、ライン下部支持手段が、たとえば、建築物の近傍の地上に設置される。
【0013】
そして、ライン上部支持手段からガイドラインを垂下してその下端部をライン下部支持手段に固定する。
これによって、ガイドラインがライン上部支持手段とライン下部支持手段との間に張設されて、このガイドラインによりドローンの移動軌跡を形成することができる。
【0014】
このように、本発明では、ライン上部支持手段を、たとえば、建築物の上部に搬入するとともにその下方にライン下部支持手段を配置し、その後、ライン上部支持手段から垂下したガイドラインをライン下部支持手段に固定するといった簡便な作業によってドローンの移動軌跡を形成することができる。
【0015】
移動軌跡を変更する際には、作業者により、ライン上部支持手段およびライン下部支持手段を水平方向へ移動させることにより、容易かつ簡便に変更することができる。
【0016】
また、ライン下部支持手段を固定した状態で、作業者によってライン上部支持手段の位置変更を行なうことにより、ライン下部支持手段を固定点として、ガイドラインを微少な角度で揺動させることができる。
これによって、ドローンの移動軌跡を微少な範囲内で変更することができる。
【0017】
一方、ドローンは、ガイドラインに、このガイドラインの張設前若しくは張設後に装着されるが、装着方法は、ドローンとガイドラインとの連結構造により異なる。
【0018】
前記ライン上部支持手段若しくはライン下部支持手段の何れか一方に、前記ガイドラインが巻回されて、このガイドラインの巻き取りおよび送り出しを行なうラインドラムを設けておくことができる。
【0019】
このような構成とすることにより、設置する建築物等の高さに合わせてガイドラインを適切な長さに容易に調整することができる。
これによって、ガイドラインの曲がりを効果的に抑制して、直線的な移動軌跡を容易に確保することができる。
【0020】
また、前記ガイドラインに、このガイドラインを直線状に保持する張力調整手段を連設しておくことができる。
【0021】
このような構成とすることにより、ガイドラインに張力を負荷し、あるいは、負荷する張力の大きさを調整して、ガイドラインの直線性、すなわち、ドローンの移動軌跡の直線性をより効果的に実現することができる。
【0022】
そして、張力調整手段は、ガイドラインが巻回されたラインドラムに連設することにより、このラインドラムを介してガイドラインに張力を負荷することも可能である。
【0023】
ライン下部支持手段は、作業者によって移動可能な重量として、移動軌跡の変更を容易にする。
ただし、風圧等による不用意な移動を防止する重量以上とする。
【0024】
また、ライン下部支持手段の上部に、ドローンが発着させられる発着台を設けることができる。
そして、発着台を衝撃緩和材によって形成することにより、ドローンの発着時における衝撃を緩和して、ドローンや他の構成部材の損傷等を防止することができる。
【0025】
さらに、ガイドラインを発着台に貫通させて配置し、これらを、ガイドラインに摩擦抵抗を付与するように当接させておくことが好ましい。
【0026】
このような構成とすることにより、ガイドラインの下部の固定をより効果的に行ない、ガイドラインの直線性を高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡便な作業で設置することができ、ドローンの規制された移動軌跡を容易に変更できるドローンの安全飛行装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態が適用された建築物を示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態を示す拡大縦断面図である。
図3】本発明の一実施形態が適用された建築物を示す正面図である。
図4】本発明の他の実施形態を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の第1の実施形態について、図1ないし図4を参照して説明する。
図1において、符号1は、本実施形態のドローンの安全飛行装置(以下、安全飛行装置と略称する)を示す。
【0030】
本実施形態の安全飛行装置1は、ドローン2を上下に貫通して設けられ、このドローン2の移動軌跡を規制するガイドライン3と、このガイドライン3を高所位置から吊り下げるライン上部支持手段4と、このライン上部支持手段4の下方に配置されて、ガイドライン3の下部を支持するライン下部支持手段5を備えている。
【0031】
前記ライン上部支持手段4はロッド状に形成されており、撮像対象物である建築物Bの屋上へ配置されるとともに、作業者Mに保持されるようになっている。
【0032】
前記ライン下部支持手段5は、図2に詳述するように、内部に、所定重量の錘6が組み込まれているとともに、上部に、ドローン2が発着させられる発着台7が設けられている。
【0033】
この発着台7は衝撃緩和材によって形成されているとともに、その中心部を貫通してガイドライン3が配置されている。
【0034】
これによって、ドローン2は、作業開始前や作業終了時、あるいは、不用意な飛行停止時に、その自重により発着台7上に位置させられ、作業時には発着台7から上方へ移動させられる。
【0035】
そして、ドローン2の発着時若しくは落下時の衝撃力が発着台7によって吸収されるようになっている。
【0036】
前記ライン下部支持手段5の内部には、ガイドライン3が巻回されて、このガイドライン3の巻き取りおよび送り出しを行なうラインドラム8が設けられている。
【0037】
このラインドラム8によるガイドライン3の巻き取りおよび送り出しにより、ガイドライン3が建築物Bの高さに調整されるようになっている。
【0038】
また、ラインドラム8には、摩擦クラッチ等の摩擦付与機構からなる張力調整手段9が連設されている。
【0039】
この張力調整手段9は、ラインドラム8の回転に摩擦による抵抗を与えることにより、ラインドラム8から引き出されるガイドライン3に所定の張力を付与するようになっている。
これによって、ガイドライン3が直線状に保持される。
【0040】
また、ガイドライン3は発着台7を貫通してライン下部支持手段5の内部へ引き込まれて、前記ラインドラム8に巻回されている。
【0041】
さらに、発着台7は、ガイドライン3の貫通部においてこのガイドラインに摩擦抵抗を付与するように当接させられており、これによって、ガイドライン3の下部の固定が確実に行なわれるようになっている。
【0042】
このように構成された安全飛行装置1は、ライン上部支持手段4を、建築物Bの上部において作業者により保持し、ライン下部支持手段を、建築物Bの近傍の地上に設置する。
【0043】
ついで、ライン上部支持手段4からドローン2が装着されたガイドライン3を垂下し、その下端部を、発着台7を貫通させた後に、ライン下部支持手段5に設けられているラインドラム8に巻回固定する。
あるいは、ラインドラム8から引き出されたガイドライン3の先端を、作業者Mに保持されているライン上部支持手段4へ固定する。
【0044】
このような作業により、ガイドライン3が建築物Bの高さに合わせた長さに調整され、かつ、張力調整手段9によって適切な張力がガイドライン3へ付与される。
【0045】
したがって、ガイドライン3がライン上部支持手段4とライン下部支持手段5との間に敷設されて、このガイドライン3によって、建築物Bの外面に沿ってドローン2の移動軌跡が形成される。
【0046】
このように、本発明では、ライン上部支持手段4を建築物Bの上部に搬入するとともにその下方にライン下部支持手段5を配置し、その後、ライン上部支持手段4から垂下したガイドライン3をライン下部支持手段5に固定するといった簡便な作業によってドローン2の移動軌跡を形成することができる。
【0047】
移動軌跡を変更する際には、作業者Mにより、ライン上部支持手段4およびライン下部支持手段5を水平方向へ移動させることにより、容易かつ簡便に変更することができる。
図3は、ライン上部支持手段4およびライン下部支持手段5を、図1に示す位置から、作業者Mを中心として約90度回転させ、移動軌跡の位置を変更した例を示している。
【0048】
また、ライン下部支持手段5を固定した状態で、作業者Mによってライン上部支持手段4の位置変更を行なうことにより、ライン下部支持手段5を固定点として、ガイドライン3を微少な角度で揺動させることができる。
これによって、ドローン2の移動軌跡を微少な範囲内で変更することができる。
【0049】
なお、前記各実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等、あるいは、適用する対象物は一例であって必要に応じ適宜変更可能である。
【0050】
たとえば、図4に示すように、張力調整手段10にばね秤等を用い、この張力調整手段10を、ガイドライン3の下端部とライン下部支持手段5との間に介装した構成とすることができる。
このような構成とした場合、ライン下部支持手段5が浮き上がらないようにしながら、ガイドライン3を適切な張力に調整することが容易となる。
【符号の説明】
【0051】
1 (ドローンの)安全飛行装置
2 ドローン
3 ガイドライン
4 ライン上部支持手段
5 ライン下部支持手段
6 錘
7 発着台
8 ラインドラム
9 張力調整手段
10 張力調整手段
B 建築物
M 作業者
図1
図2
図3
図4