(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】開封容易な多層紙袋
(51)【国際特許分類】
B65D 75/62 20060101AFI20220513BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20220513BHJP
B65D 30/10 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B65D75/62 B
B65D33/00 C
B65D30/10 D
(21)【出願番号】P 2017217229
(22)【出願日】2017-11-10
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591034512
【氏名又は名称】石川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】前島 孝敏
(72)【発明者】
【氏名】段 孝彰
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-080202(JP,A)
【文献】実開昭60-148246(JP,U)
【文献】特開平11-029152(JP,A)
【文献】特開2005-255202(JP,A)
【文献】実開平04-062633(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0033903(US,A1)
【文献】実開平05-068845(JP,U)
【文献】特開2017-056982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/62
B65D 30/00-33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦に折り潰した紙状筒の一方の開口端部から内方に離れた位置に、該開口端部と平行な折り目を付け、開口端の両角を前記折り目まで折り込み、その状態で形成した上紙又は下紙の一方を前記折り目に沿い展開して、両側及びそれらの中心部に三角折込み部及び開口部を有する展開面を形成し、展開面の前記上紙及び下紙に、これらを前記開口部側に折り畳んで前記開口部を封鎖し、且つ折り目と平行な折れ筋を付けて、前記上紙の端辺を折れ筋と平行に所定幅を有して前記開口部側に折り畳んで折曲げ片を形成し、その状態の前記上紙を折れ筋に沿い前記開口部側に折り畳んで前記折曲げ片を不貼り状態で前記下紙上に貼り合わせて前記開口部を塞ぎ、更に、前記上紙及び下紙全面の周囲を、
中央部に釣り針状にミシン目を刻設したアウターパッチ(力紙)で接着被覆したことを特徴とする開封容易な袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米、麦、コーンスターチ、デンプンなどの食品に由来する粉粒体、飼料、プラスチック樹脂、セメント、石灰、カーボンブラックなどの粉粒体を収納するための多層紙袋における開封に際して、微粉の発生を抑制し、且つ、少ない材料で、開封性を良好ならしめる構成を提供するものであり、より詳しくは、多層紙袋の開封に際し、従来用いられてきた開封テープ及びそれとともに用いられるアウターパッチを用いることなく、簡単な構成でコストを低減し得ると共に、従来の開封テープを使用した際の開封時にもたらされる微粉発生に伴う製品への混入の虞がなく、開封容易な多層紙袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上述した粉粒体を充填した紙袋の開封性を容易ならしめる着想については、様々な提案がなされているが、共通しているのは、紙袋の開封に際して、開封部に外貼りするアウターパッチの任意の箇所に細長のプラスチックテープを貼着した開封テープを用いていることである。
【0003】
例えば、本出願人の出願に係る特開2004-307008号公報(特許文献1)には、平坦に折り潰した紙状筒の一方の開口端の両角に三角折り込み部を形成すると共に、その状態で紙状筒の折り潰しにより形成した上紙及び下紙の一方を開いて展開面を形成し、この展開の中心部開口を覆うために上紙及び下紙に折れ筋を付けて、展開面の両三角折り込み部を渡り中心部開口を覆うと共に折れ筋を外方にはみ出し、且つ引き剥がし片付のインナーパッチを、展開面に易剥離性接着剤にて貼り合わせて開封側開口部とし、上記折れ筋に沿い上紙及び下紙を折り畳んで貼り合わせ、その上に開封テープ付のアウターパッチ(力紙)を貼り付け、この開封テープを引き裂いて紙袋の開封を行うようにした開封容易な袋が開示されている。
【0004】
しかしながら、この開封容易な袋は、アウターパッチの中心部に線状に一体化されている開封テープにより切断し、上紙及び下紙を剥がしてインナーパッチを裸出し、さらに、インナーパッチを引き剥がし片により剥がすという複数の動作が必要になるばかりでなく、密封性を確保するために、別途インナーパッチを設ける必要があるという煩雑さがある。
【0005】
また、特開平9-142490号公報(特許文献2)には、紙筒の少なくとも一方の端部を、これら端縁と平行の第1折線を中心に開披して両側に三角折畳部を有する開披部を形成し、前記第1折線の両側の対称位置に該線と平行する第2折線を設け、これら第2折線に沿ってその外側の部分を内側に折り曲げ、該折曲部を重ね合わせ、貼着閉鎖した底部を形成するに際し、前記折曲げ部同士を剥離可能に貼着した六角底袋の底構造において、前記開披部の中央に長辺が両三角折畳部に跨り、かつ短辺が両第2折線を超える寸法の内底紙を一方の第2折線の外側に沿って線状に接着した六角底袋の底構造が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された発明においても、袋を開封するには、開封ひもを添接した底当紙(特許文献1における開封テープと同義)を切り裂かなければならないものであり、開封時における微粉の発生は避けられない。
【0007】
かくのごとく、上記特許文献1及び特許文献2に開示された発明は、いずれも、袋の開封作用において、開封テープを開封開始部として用いることによって、開封テープが付設されたアウターパッチを引き裂いて開口部を形成させるものであり、この際に微細な破片が発生し、これが袋内に充填された内容物に混入する事態を招く虞が憂慮されている。
【0008】
本発明においては、かかる事態を回避するために、先行技術における開封テープを用いることなく、袋の開封を容易ならしめる方法、なかんずく、袋の内容物を小出しにしたい場合の方法を模索しており、その結果、開封テープが付設されたアウターパッチに代えて、開封テープを引き裂くことによってもたらされる微粉の発生を回避するために、開封テープを用いずに、開封の際にアウターパッチ自体が引き裂かれる構成を模索した結果、開封テープに代えて、中央部に釣り針状のミシン目が刻設されたアウターパッチを用いることによって、開封時に微粉の発生を伴わずに、袋の内容物を小出しに出来、スムーズな袋の開封操作が行われることを確認するに至り、本件出願に至ったものである。
【0009】
かかる観点から、開封のために、アウターパッチに直接ミシン目を刻設したものを用いて、このミシン目を紙袋の開封に用いる先行技術を探索したところ、特開2003-276740号公報(特許文献3)がミシン目を利用した開封技術という点で近似技術として検索された。
【0010】
特許文献3には、重ね合わせた複数枚の原紙のそれぞれの側縁が接着されて複数枚の筒状体が形成され、該筒状体の両端の開口部が封止される紙袋であって、前記筒状体の最外層の前記原紙に、筒状体の両端の前記封止部位の近傍に、それぞれ封止部位に沿ってミシン目を周方向に形成し、前記最外層の原紙の裏面に前記両端側のミシン目に跨るようにしたカットテープを貼り付けてなる紙袋が記載されている。
【0011】
しかしながら、この紙袋は、製造業者から、例えば食品工場等への納品先への搬送中に紙袋全体の最外層が付着している紙袋の胴部の最外層を剥離して清潔な製品を提供するための手段であって、紙袋の内容物を排出するための開口部形成のためにミシン目を刻設したアウターパッチが使用されているものではない。しかも、紙袋の最外層は、ミシン目とカットテープが併用されて、初めて剥離除去されるものであり、ミシン目だけで最外層の除去が出来るものではないし本発明とはミシン目の使用目的が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2004-307008号公報
【文献】特開平9-142490号公報
【文献】特開2003-276740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述したように、上記特許文献1ないし3に開示された発明は、いずれも紙袋の内容物を排出するための開口部の構成に論及しているが、そこに開示された構成では、簡単な構成でコストを低減し得ると共に、従来の開封テープを使用した際の開封時にもたらされる微粉発生に伴う製品への混入の虞がなく、開封容易な多層紙袋を提供することが出来ない。
【0014】
そこで、本発明の目的は、少ない部品数で構成され得る簡易な構造でありながら、粉粒体の漏れの完全な阻止や必要な強度を保ち、且つ、開封に際して、微細な紙粉などの発生を伴う虞がある開封テープを用いることなく、アウタ-パッチに刻設された釣り針状のミシン目を引き裂くだけで袋の一部開封を容易且つ完全に行うことが出来る開封機構を有する袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、平坦に折り潰した紙状筒の一方の開口端部から内方に離れた位置に、該開口端部と平行な折り目を付け、開口端の両角を前記折り目まで折り込み、その状態で形成した上紙又は下紙の一方を前記折り目に沿い展開して、両側及びそれらの中心部に三角折込み部及び開口部を有する展開面を形成し、展開面の前記上紙及び下紙に、これらを前記開口部側に折り畳んで前記開口部を封鎖し、且つ折り目と平行な折れ筋を付けて、前記上紙の端辺を折れ筋と平行に所定幅を有して前記開口部側に折り畳んで折曲げ片を形成し、その状態の前記上紙を折れ筋に沿い前記開口部側に折り畳んで前記折曲げ片を不貼り状態で前記下紙上に貼り合わせて前記開口部を塞ぎ、更に、前記上紙及び下紙全面の周囲を、中央部に釣り針状にミシン目を刻設したアウターパッチ(力紙)で接着被覆したことを特徴とする開封容易な袋が提供される。
【0021】
本発明による作用は次の通りである。
すなわち、本発明の最大の特徴は、従来より紙袋の開封手段として使用されてきた、開封テープを使用することなく、それに代えて、袋の開口部を封鎖するアウターパッチの中央部に釣り針状のミシン目を刻設することによって、袋の内容物を小出しにしたい場合に適している。
【0022】
また、上記上紙の折り畳みは、1回折り畳みでも目的を達成できるが、輸送時の激しい振動にも堪え得るために2回折り畳みにしておいてもよい。
【0027】
本発明において用いられるアウターパッチの紙力強度は、一定の坪量を有する従来から開封テープに用いられているものが、特に制限なく用いることが出来るが、本発明において、最も好ましいアウターパッチとして用いられるものは、アウターパッチを構成する繊維質が、ミシン目と同じ方向に抄紙されているものを使用することである。
【0028】
つまり、アウターパッチは、楮やミツマタなどの繊維質を含む原材料を抄紙して得られるものであるが、その抄紙工程において、繊維質を一定方向に抄紙したものが、ミシン目の引き裂き時に微粉の発生が抑制され、且つ、操作がスムーズに行われるので、最も好ましいものとして挙げることが出来る。
【0029】
アウターパッチにミシン目を刻設するには、ダイキャストの技術が応用されるのが一般的である。この場合、一方のカレンダーロールの表面に突設されたミシン目に対応して、他方のカレンダーロールの表面には、凹説されたミシン目が形成されており、ロール間に配設されたアウターパッチは、カレンダーロールの回転に伴って、ミシン目が刻設される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の開封容易な袋によれば、アウターパッチの中央部に釣り針状のミシン目を刻設することにより、内容物を小出しにしたい場合に適しており、材料費を節減しつつ、開封時に微粉の発生を伴うことなく容易に行うことが出来る。
【0031】
また、本発明の開封容易な袋によれば、上記の効果に加えて、内容物である粉粒体の漏れの完全な阻止を確実にする効果がある。
【0032】
また、本発明の開封容易な袋によれば、上記の効果に加えて、特定のアウターパッチを使用することにより、よりスムーズな袋の開封操作が達成できる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0037】
本発明において、最も重要な特徴は、上記の構成からなる袋の内容物を小出しにしたい場合に、従来の開封テープに代えて釣り針状のミシン目を刻設したアウターパッチを使用することにある。
【0038】
従来使用されてきた開封テープに代えて、釣り針状のミシン目を刻設したアウターパッチを使用する目的と効果については前述したとおりであり、特に、袋の内容物を小出しにしたい場合に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の開封容易な袋は、簡易な構造のために費用の低減を図ることが出来、且つ、開封時に微粉の発生を伴わずに、内容物である粉粒体の漏れの完全な阻止や必要な強度に対し充分に満足した上で、開封を容易且つ完全に行いたいような場合に、利用可能性が極めて高くなる。