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特許7072183カード充填器、カード供給装置、カードの勾配制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】カード充填器、カード供給装置、カードの勾配制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/14 20060101AFI20220513BHJP
   B65H 7/02 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B65H1/14 322A
B65H7/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019153302
(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公開番号】P2021031233
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】320010516
【氏名又は名称】VOSTEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 泰州
(72)【発明者】
【氏名】川上 孝司
(72)【発明者】
【氏名】梨和 淳
(72)【発明者】
【氏名】小猿 伊吹
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-125811(JP,A)
【文献】特開平11-011692(JP,A)
【文献】特開2017-200843(JP,A)
【文献】特開2000-095380(JP,A)
【文献】特開平04-201929(JP,A)
【文献】実開昭59-130829(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
B65H 7/00-7/20
B65H 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のカードが積層された状態で充填され、充填されたカードの最上位のカードから順に取り出される仕組みとなされたカード充填器であって、
充填されたカードを下支えする底板と、
前記底板の傾きを変える底板変位器と、
最上位のカードの傾きを感知する勾配感知器と、
を具備してなり、
最上位のカードの傾きが許容範囲内に収まるように、前記勾配感知器によって感知された最上位のカードの傾きに応じた制御命令を前記底板変位器に与える一次制御を行う制御装置を具備してなり、
前記底板が支柱によって揺動可能な状態で支持されてなり、
前記底板変位器が、上下方向に伸縮可能となされたロッドの先端を前記底板の下面に当接させ、前記ロッドを伸縮させることによって前記底板の傾きを変える仕組みとなされたことを特徴とするカード充填器。
【請求項2】
請求項1に記載のカード充填器において、
前記制御装置が、更に、最上位のカードの傾斜に与えるカード一枚あたりの影響度を推定し、推定された影響度と取り出されたカードの枚数とによって予測される最上位のカードの傾き推移に応じた補正命令を前記底板変位器に与える二次制御を行うカード充填器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカード充填器において、
前記勾配感知器が、最上位のカードの縦断勾配を最上位のカードの傾きとして感知する仕組みとなされたカード充填器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のカード充填器において、
前記勾配感知器が、最上位のカードの横断勾配を最上位のカードの傾きとして感知する仕組みとなされたカード充填器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載されたカード充填器と、
前記カード充填器に充填されたカードを最上位のものから順に取り出すカード取り出し機と、
前記カード取り出し機によって取り出されたカードを順次移送する搬送機と、
を具備してなることを特徴とするカード供給装置。
【請求項6】
請求項5に記載のカード供給装置において、
前記カード取り出し機が、最上位のカードを取り出す際に、カードの短辺に沿う方向に向かって取り出す仕組みとなされ、
且つ、前記搬送機が、隣り合うカードの長辺同士を隣接させた状態でカードを順次移送する仕組みとなされたカード供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のカードを積層させた状態で充填するためのカード充填器、前記カード充填機を備えたカード供給装置、及び前記カード充填器におけるカードの勾配制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「カード社会」と称される昨今では、クレジットカード、プリペイドカード、会員カード、定期券、免許証などの各種カードを一個人が複数枚所持することが普通となっており、カードの生産枚数も年々増加している。
【0003】
この種のカードには、印刷の他、エンボス加工やデボス加工などによる凹凸で表した文字や図形などの情報、或いは、ICチップなどの情報記録媒体が付帯されている。これらの情報や情報記録媒体は正確にカードに付帯されていなければならないため、この種のカードを製造するにあたっては、これらの情報や情報記録媒体が正確に付帯されているか否かを検査する検査工程が必要となる。
【0004】
現在、この検査工程はCCDカメラ等の撮像手段を用いた画像診断によって実行されることが多く、前記撮像手段にカードを順次移送するための装置を併用することによって係る検査工程の自動化が実現されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000‐95380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に開示された装置(カード状物搬送機)では、容器に積み重ねて収納されたカードを最上位のカードから順に移送する仕組みを採用している。積み重ねたカードを最上位のカードから繰り出す仕組みには、最下位のカードから繰り出す仕組みと比較して、カードに擦り傷等の損傷が生じ難くなる利点がある。
【0007】
しかしながら、カードには凹凸で表した情報やICチップなどの情報記録媒体が付帯されているため、その表面が必ずしも平坦になっていない。そのため、一のカードの上に他のカードを積み重ねると、他のカードにおいて僅かな傾きが生じる。この僅かな傾きは複数枚のカードを積み重ねることによって積算されていくため、多数のカードを容器に積み重ねて収納すると最上位のカードにおいて相当な傾きが生じることになる。そして、この最上位のカードに生じた傾きによってカードの取り出しが阻害される場合があった。
【0008】
本発明は、前記技術的課題に鑑みて完成されたものであり、積層された状態で充填されたカードの最上位のカードに生じた傾きを好適に是正することができる新規なカード充填器、前記カード充填機を備えたカード供給装置、及び前記カード充填器におけるカードの勾配制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題を解決する本発明のカード充填器は、複数枚のカードが積層された状態で充填され、充填されたカードの最上位のカードから順に取り出される仕組みとなされたカード充填器であって、充填されたカードを下支えする底板と、前記底板の傾きを変える底板変位器と、最上位のカードの傾きを感知する勾配感知器と、を具備してなり、最上位のカードの傾きが許容範囲内に収まるように、前記勾配感知器によって感知された最上位のカードの傾きに応じた制御命令を前記底板変位器に与える一次制御を行う制御装置を具備してなることを特徴とする(以下、「本発明充填器」と称する。)。
【0010】
前記本発明充填器においては、前記制御装置が、更に、最上位のカードの傾斜に与えるカード一枚あたりの影響度を推定し、推定された影響度と取り出されたカードの枚数とによって予測される最上位のカードの傾き推移に応じた補正命令を前記底板変位器に与える二次制御を行うものが好ましい態様となる。
【0011】
前記本発明充填器においては、前記勾配感知器が、最上位のカードの縦断勾配を最上位のカードの傾きとして感知する仕組みとなされたものが好ましい態様となる。
【0012】
前記本発明充填器においては、前記勾配感知器が、最上位のカードの横断勾配を最上位のカードの傾きとして感知する仕組みとなされたものが好ましい態様となる。
【0013】
前記技術的課題を解決する本発明のカード供給装置は、前記本発明充填器と、前記本発明充填器に充填されたカードを最上位のものから順に取り出すカード取り出し機と、前記カード取り出し機によって取り出されたカードを順次移送する搬送機と、を具備してなることを特徴とする(以下、「本発明供給装置」と称する。)。
【0014】
前記本発明供給装置においては、前記カード取り出し機が、最上位のカードを取り出す際に、カードの短辺に沿う方向に向かって取り出す仕組みとなされ、且つ、前記搬送機が、隣り合うカードの長辺同士を隣接させた状態でカードを順次移送する仕組みとなされたものが好ましい態様となる。
【0015】
前記技術的課題を解決する本発明のカードの勾配制御方法は、複数枚のカードが積層された状態で充填され、充填されたカードの最上位のカードから順に取り出される仕組みとなされたカード充填器におけるカードの勾配制御方法であって、最上位のカードの傾きが許容範囲内に収まるように、最上位のカードの傾きに応じて充填されたカードを下支えする底板の傾きを変えることを特徴とする(以下、「本発明制御方法」と称する。)。
【0016】
前記本発明制御方法においては、更に、最上位のカードの傾斜に与えるカード一枚あたりの影響度を推定し、推定された影響度と取り出されたカードの枚数とによって予測される最上位のカードの傾きの推移に応じて、前記底板の傾きを順次変えることが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、積層させた状態で充填した複数枚のカードの最上位のカードに生じる傾きを好適に是正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明充填器を備えた本発明装置を示す斜視図である。
図2図2は、前記本発明充填器を示す斜視図である。
図3図3は、前記本発明充填器の制御装置を示すブロック図である。
図4図4は、前記制御装置による第一制御の制御手順を示すフローチャートである。
図5図5(a)、(b)は、前記本発明充填器における第一制御の実行例を示す斜視図である。
図6図6(a)~(c)は、前記本発明充填機における第一制御の他の実行例を示す斜視図である。
図7図7は、前記制御装置による第二制御の制御手順を示すフローチャートである。
図8図8(a)は、カードの傾斜を、縦断勾配の一軸にて決定する場合を示す斜視図であり、図8(b)は、カードの傾斜を、横断勾配の一軸にて決定する場合を示す斜視図であり、図8(c)は、カードの傾斜を、縦断勾配及び横断勾配の二軸にて決定する場合を示す斜視図である。
図9図9は、移送されるカードの並びを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<本発明供給装置(10)>
図1に、本発明供給装置10の一実施形態を示す。前記本発明供給装置10は、「本発明充填器(1)」と、「カード取り出し機(2)」と、「搬送機(3)」と、を具備する。
【0021】
[本発明充填器1]
図1図2に示すように、前記本発明充填器1は、「底板(11)」と、「底板変位器(12)」と、「勾配感知器(13)」と、を具備してなり、更に、「制御装置(14)」を具備する。前記本発明充填器1は、複数枚のカードCが積層された状態で充填され、充填されたカードCの最上位のカードC1から順に取り出される仕組みとなされる。
【0022】
‐底板11‐
前記底板11は、前記本発明充填器1に充填されたカードCを下支えする役割を担う。図2に示すように、本実施形態における前記底板11は、支柱111によって揺動可能な状態で支持されており、前記底板11の上面にカードCを積載することによってカードCを下支えする仕組みとなされている。
【0023】
‐底板変位器12‐
前記底板変位器12は、前記底板11の傾きを変える役割を担う。本実施形態においては、前記底板変位器12として油圧シリンダを用い、上下方向に伸縮可能となされたロッド121の先端を前記底板11の下面に当接させ、前記ロッド121を伸縮させることによって、前記底板11の傾きを変える仕組みを構築している。なお、本実施形態において、前記底板11と前記底板変位器12は、一体のユニットとなされており、係るユニットは、底板昇降機15の駆動によって上下動可能となされている(図1参照)。
【0024】
‐勾配感知器13‐
前記勾配感知器13は、充填されたカードCの最上位のカードC1の傾きを感知する役割を担う。本実施形態においては、前記勾配感知器13として一対の接触式変位センサ(13R、13L)を用い、最上位のカードC1の表面に両方のセンサ(13R、13L)が共に接触しなかった場合に最上位のカードC1に傾きが生じていると感知する仕組みを構築した。
【0025】
‐制御装置14‐
前記制御装置14は、前記勾配感知器13によって感知された最上位のカードC1の傾きに応じた制御命令を前記底板変位器12に与える役割を担う。図3に示すように、本実施形態においては、前記制御装置14として、「演算手段(141)」と、「制御手段(142)」と、「記憶手段143」と、を具備するものを用いた。この制御装置14において、前記演算手段141は、前記勾配感知器13によって感知された最上位のカードC1に関する情報に基づいて、最上位のカードC1における傾きの有無やその傾きが仰角であるか俯角であるかなどを判断する役割を担う。又、前記制御手段142は、前記演算手段141の判断に基づいて決定した命令を底板変位器12や底板昇降機15に与える役割を担う。更に、前記記憶手段143は、充填されたカードCの枚数や送り出されたカードCの枚数などを記憶する役割を担う。
【0026】
[カード取り出し機2]
前記カード取り出し機2は、前記本発明充填器1に充填されたカードCを最上位のカードC1から順に取り出す役割を担う。本実施形態においては、前記カード取り出し機2として、吸着コンベア21によって最上位のカードC1を順次吸着して前記本発明充填器1から取り出し、取り出したカードCを前記吸着コンベア21に吸着させたまま送り方向に向かって順に送り出す仕組みのものを用いた(図1参照)。
【0027】
[搬送機3]
前記搬送機3は、前記カード取り出し機2によって取り出されたカードCを順次移送する役割を担う。本実施形態においては、前記搬送機3としてローラーコンベアを用いた(図1参照)。
【0028】
<本発明制御方法>
前記構成を有する本発明供給装置10及び前記本発明充填器1は、前記本発明充填器1に充填されたカードCにおける最上位のカードC1の傾きを許容範囲内に収める本発明制御方法を実行するために構築されたものである。そして、前記本発明供給装置10では、前記本発明制御方法を実行するにあたり「一次制御」を行う。
【0029】
‐一次制御‐
前記一次制御では、前記本発明充填器1に充填されたカードCにおける最上位のカードC1の傾きに応じて、カードCを下支えする前記底板11の傾きを変える。本実施形態においては、前記一次制御につき、図4のフローチャートに示す制御手順にて実行した。
【0030】
このフローチャートに示す制御手順では、まず、本発明供給装置10の稼働開始後(S1)、前記制御装置14が前記本発明充填器1に所定枚数のカードCが充填されていることを確認し(S2)、前記制御手段142を通じて前記底板昇降機15に前記底板11の上昇を命令する(S3)。前記底板11の上昇により最上位のカードC1が前記勾配感知器13に接触すれば(S4)、前記制御手段142を通じて前記底板昇降機15に前記底板11の上昇停止が命令される(S5)。
【0031】
前記底板11の上昇停止後、前記制御装置14は最上位のカードC1が水平か否かを判断する(S6)。本実施形態においては、前記勾配感知器13における一対の接触式変位センサ(13L、13R)が共に最上位のカードC1に接触している場合(図2参照)に最上位のカードC1が水平であると判断し、前記接触式変位センサ(13L、13R)のいずれか一方のみが接触している場合は最上位のカードC1が水平でないと判断した。
【0032】
最上位のカードC1が水平でないと判断した場合、前記制御装置14は最上位のカードC1の傾きが仰角か俯角かを判断する(S7)。本実施形態においては、図5(a)に示すように、前記勾配感知器13における図中左側の接触式変位センサ13Lのみが最上位のカードC1に接触している場合に最上位のカードC1が仰角であると判断し、図6(a)に示すように、前記勾配感知器13における図中右側の接触式変位センサ13Rのみが最上位のカードC1に接触している場合は最上位のカードC1が俯角であると判断した。
【0033】
最上位のカードC1の傾きが仰角の場合、前記制御装置14は、前記制御手段142を通じて前記底板変位器12の上昇(前記ロッド121の伸長)を命令し(S8)、前記底板11の傾きを変える。最上位のカードC1が接触式変位センサ13Rに接触するまで前記底板変位器12の上昇を続ければ、図5(b)に示すように最上位のカードC1が水平になる。
【0034】
一方、最上位のカードC1の傾きが俯角の場合、前記制御装置14は、まず、図6(b)に示すように、前記制御手段142を通じて前記底板変位器12の下降(前記ロッド121の短縮)を命令し(S9)、前記底板11の傾きを変える。この工程によって、最上位のカードC1と前記勾配感知器13との接触が解かれるため、前記制御装置14は前記制御手段142を通じて前記底板昇降機15に前記底板11の上昇を命令する(S3)。その後、S4以降のステップを繰り返せば、図6(c)に示すように最上位のカードC1が水平になる。
【0035】
即ち、本発明(前記本発明充填器1、本発明供給装置10、並びに前記本発明制御方法)によれば、カードCの表面が平坦でなく、積み重ねた際に最上位のカードC1に傾きが生じる場合にあっても、係る傾きを好適に是正することができる。これより、カードCの取り出しが円滑になる。
【0036】
なお、前記一次制御によって最上位のカードC1を水平にした後、前記カード取り出し機2によって前記本発明充填器1からカードCが順次取り出されれば、取り出されたカードCの枚数に応じて最上位のカードC1の傾きは変位していく。この点については、カードCが所定枚数取り出されるごとに、例えば、図4のフローチャートにおけるS4以降のステップを繰り返すことによって最上位のカードC1の水平性を維持することができる。
【0037】
但し、最上位のカードC1の傾きの変位を感知し、感知された結果をフィードバックして前記底板11の傾きを変える前記一次制御では、用いられる勾配感知器13の性能などによって制御動作の遅れが生じ、単位時間当たりのカードCの取り出し枚数が制限される場合がある。
【0038】
この点に鑑みて、本発明においては、前記一次制御に加えて、カードCの取り出し枚数に応じて前記底板11の傾きを順次変える「二次制御」を行うことが好ましい。以下、係る二次制御について説明する。
【0039】
‐二次制御‐
前記二次制御では、最上位のカードC1の傾斜に与えるカードC一枚あたりの影響度を推定し、推定された影響度と取り出されたカードCの枚数とによって予測される最上位のカードC1の傾きの推移に応じて、前記底板11の傾きを順次変える。本実施形態においては、前記二次制御につき、図7のフローチャートに示す制御手順にて実行した。
【0040】
このフローチャートに示す制御手順では、まず、本発明供給装置10の稼働開始後(S1)、前記一次制御の実行によって最上位のカードC1の傾きを水平にした後(S6)、前記制御装置14が前記底板11の傾斜角を認定する(S10)。
【0041】
次いで、前記制御装置14は、認定された前記底板11の傾斜角と、前記本発明充填器1に充填されているカードCの枚数とから、最上位のカードC1の傾斜に与えるカードC一枚あたりの影響度を推定する(S11)。本実施形態においては、前記制御装置14における演算手段141にて、前記底板11の傾斜角を充填されているカードCの枚数で割ることによって影響度(カードC一枚あたりの傾斜角)を算出した。又、前記本発明充填器1に充填されているカードCの枚数については、前記本発明充填器1にカードCを充填した際に、作業者が手作業にて前記制御装置14に充填したカードCの枚数を打ち込み、これを前記記憶手段143に記憶させた。
【0042】
最後に、前記制御装置14は、推定されたカードC一枚あたりの影響度に基づいて、前記底板11の操作を決定し(S12)、決定された操作を、前記制御手段142を通じて前記底板変位器12に命令する(S13)する。本実施形態においては、前記カード取り出し機2によってカードCが一枚取り出されるたびに、カードC一枚あたりの傾斜角分、前記底板11の傾きを水平方向に向かって戻す旨の命令を前記底板変位器12に与えた。
【0043】
即ち、前記一次制御に加えて前記二次制御を実行すれば、カードCの取り出しに応じて変化する最上位のカードC1の傾きの変化に迅速に対応することができる。
【0044】
ところで、本発明における「カード(C)」には、クレジットカード、プリペイドカード、会員カード、定期券、免許証などの各種機能を伴ったものに限られず、単なる矩形の厚紙や金属プレートも含まれる。又、折り畳まれたて矩形をなす箱のようなものも本発明における「カード(C)」に含まれる。即ち、本発明における「カード(C)」とは、ある程度の厚み(例えば、0.5~5mm程度)を有する矩形の平面状のものを意味する。
【0045】
本実施形態においては、説明の便宜上、最上位のカードC1が水平でなければ傾きが生じていると判断しているが、本発明においては、最上位のカードC1の傾きにつき必ずしも厳密な水平であることを要求しておらず、前記カード取り出し機2の取り出し能力等に応じた許容範囲を設定することが好ましい。最上位のカードC1の傾きの許容範囲としては、例えば、0±15度(より好ましくは、0±5度)のように任意に設定することができる。
【0046】
又、本発明においては、前記底板11の傾きを変える仕組みや最上位のカードC1の傾きを感知するための手段(前記勾配感知器13の種類)、或いは前記制御装置14による制御手順についても特に限定されない。
【0047】
更に、本実施形態では、図8(a)に示すように、最上位のカードC1の縦断勾配(X)の一軸を最上位のカードC1の傾きとして感知する仕組みを採用しているが、図8(b)に示すように、最上位のカードC1の横断勾配(Y)の一軸を最上位のカードC1の傾きとして感知する仕組みとしても良い。又、図8(c)に示すように、最上位のカードC1の縦断勾配(X)及び横断勾配(Y)の二軸を最上位のカードC1の傾きとして感知する仕組みとしても良い。
【0048】
但し、最上位のカードC1の長辺に沿う方向の勾配である縦断勾配(X)を最上位のカードC1の傾きとして感知する仕組みを採用すれば、図9に示すように、前記カード取り出し機2によってカードCを順に短辺に沿う方向に向かって取り出す仕組みとし、前記搬送機3によって隣り合うカードCの長辺同士を隣接させた状態でカードCを順次移送する供給システムを構築し易くなる。このような供給システムは、カードCの移送ラインを短尺化することができ、その結果、本発明供給装置10の設置スペースが確保し易く、設備設計を容易にする利点が生じる。
【0049】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、カードを自動的に供給する手段として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0051】
1 本発明充填器(カード充填器)
11 底板
12 底板変位器
13 勾配感知器
14 制御装置
15 底板昇降機
2 カード取り出し機
3 搬送機
10 本発明供給装置(カード供給装置)
C カード
C1 最上位のカード

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9