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特許7072186マイクロホン装置及びマイクロホン装置用ケース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】マイクロホン装置及びマイクロホン装置用ケース
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20220513BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20220513BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
H04R1/00 328A
H04R1/40 320A
H04R1/02 108
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018020647
(22)【出願日】2018-02-08
(65)【公開番号】P2019140475
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友亮
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-333270(JP,A)
【文献】特開平02-291799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0174777(US,A1)
【文献】特開平05-091579(JP,A)
【文献】特開2006-254376(JP,A)
【文献】国際公開第2004/021031(WO,A1)
【文献】特開2014-236261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H04R 1/40
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に回路基板を有するケースと、
前記ケースから離間しており、球体の表面に複数の集音部が所定間隔で配置されたマイクロホンカプセルと、
前記ケースの前記マイクロホンカプセルに対向する対向面と、前記マイクロホンカプセルとを連結しており、前記マイクロホンカプセルを支える複数の支柱と、
前記複数の支柱の間に配置され、前記対向面から前記マイクロホンカプセルに向かって突出している突出部と、を備え、
前記突出部は、前記対向面に連結された根元から先端に向かって直径が小さくなるように形成されている、
マイクロホン装置。
【請求項2】
前記突出部は、前記ケースの前記対向面の中央に円錐状に形成されている、
請求項1に記載のマイクロホン装置。
【請求項3】
前記突出部の前記対向面からの突出高さは、前記対向面と前記マイクロホンカプセルの間の距離の1/2以下の大きさである、
請求項1又は2に記載のマイクロホン装置。
【請求項4】
前記複数の支柱は、前記突出部の周囲に周方向において等間隔で4つ設けられており、
前記複数の支柱の各々の内部には、前記回路基板と前記集音部とを繋ぐ信号線が配線されている、
請求項3に記載のマイクロホン装置。
【請求項5】
前記球体の直径は、筒状の前記ケースの直径よりも小さく、
前記複数の支柱の各々は、それぞれ前記球体の表面において隣接する集音部の間の部分で固定されている、
請求項4に記載のマイクロホン装置。
【請求項6】
前記突出部は、金属部材を介して前記回路基板と熱伝導可能に接続されており、前記回路基板が発生した熱を外部に放出する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項7】
前記突出部は、
前記対向面から前記マイクロホンカプセルへ向かって延びている軸部と、
前記軸部と直交するように、軸方向に沿って所定間隔で配置された複数のフィンと、を有する、
請求項6に記載のマイクロホン装置。
【請求項8】
スタンドに固定される固定部を有し、前記ケースを覆うように保持している保持部材と、
前記保持部材が前記スタンドに固定された状態で、前記ケースを周方向に回転させて前記マイクロホンカプセルの位置を調整するための位置調整部材と、
を更に備える、
請求項1から7のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項9】
内部に回路基板を有する筐体部と、
前記筐体部の長手方向の一端面から突出している突出部と、を備え、
前記突出部は、前記一端面に連結された根元から先端に向かって直径が小さくなるように形成されており、
前記一端面における前記突出部の周囲に、前記筐体部から離れて位置するマイクロホンカプセルを支持する複数の支柱が固定されている、
マイクロホン装置用ケース。
【請求項10】
前記突出部は、前記筐体部の前記一端面の中央に円錐状に形成されている、
請求項9に記載のマイクロホン装置用ケース。
【請求項11】
前記突出部は、金属部材を介して前記回路基板と熱伝導可能に接続されており、前記回路基板が発生した熱を外部に放出する、
請求項9又は10項に記載のマイクロホン装置用ケース。
【請求項12】
前記突出部は、
前記一端面に連結された根元から先端に向かって延びている軸部と、
前記軸部と直交するように、軸方向に沿って所定間隔で配置された複数のフィンと、を有する、
請求項11に記載のマイクロホン装置用ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、360°全方位から集音できるマイクロホン装置と、当該マイクロホン装置用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、臨場感のある音を集音するために、例えば、球体の表面に所定間隔で複数の集音部が配置されたマイクロホンカプセルを有するマイクロホン装置が提案されている。このマイクロホン装置は、信号処理を行う回路基板が設けられたマイクロホン装置用ケース(以下、単にケースと呼ぶ)を有する。マイクロホンカプセルは、前記ケースから離間して支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-163091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のマイクロホン装置では、マイクロホンカプセルの背面側のケースで反射した音波が、集音部に入射してしまう恐れがある。また、ケースとマイクロホンカプセルの間で、音波の反射が繰り返されて定在波が発生する恐れがある。この結果、臨場感のある音を適切に集音できない。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、球体状のマイクロホンカプセルの集音部に対して音波が適切に入射されるマイクロホン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、内部に回路基板を有するケースと、前記ケースから離間しており、球体の表面に複数の集音部が所定間隔で配置されたマイクロホンカプセルと、前記ケースの前記マイクロホンカプセルに対向する対向面と、前記マイクロホンカプセルとを連結しており、前記マイクロホンカプセルを支える複数の支柱と、前記複数の支柱の間に配置され、前記対向面から前記マイクロホンカプセルに向かって突出している突出部と、を備え、前記突出部は、前記対向面に連結された根元から先端に向かって直径が小さくなるように形成されている、マイクロホン装置を提供する。
【0007】
また、前記突出部は、前記ケースの前記対向面の中央に円錐状に形成されていることとしてもよい。
【0008】
また、前記突出部の前記対向面からの突出高さは、前記対向面と前記マイクロホンカプセルの間の距離の1/2以下の大きさであることとしてもよい。
【0009】
また、前記複数の支柱は、前記突出部の周囲に周方向において等間隔で4つ設けられており、前記複数の支柱の各々の内部には、前記回路基板と前記集音部とを繋ぐ信号線が配線されていることとしてもよい。
【0010】
また、前記球体の直径は、筒状の前記ケースの直径よりも小さく、前記複数の支柱の各々は、それぞれ前記球体の表面において隣接する集音部の間の部分で固定されていることとしてもよい。
【0011】
また、前記突出部は、金属部材を介して前記回路基板と熱伝導可能に接続されており、前記回路基板が発生した熱を外部に放出することとしてもよい。
【0012】
また、前記突出部は、前記対向面から前記マイクロホンカプセルへ向かって延びている軸部と、前記軸部と直交するように、軸方向に沿って所定間隔で配置された複数のフィンと、を有することとしてもよい。
【0013】
また、前記マイクロホン装置は、スタンドに固定される固定部を有し、前記ケースを覆うように保持している保持部材と、前記保持部材が前記スタンドに固定された状態で、前記ケースを周方向に回転させて前記マイクロホンカプセルの位置を調整するための位置調整部材と、を更に備えることとしてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、内部に回路基板を有する筐体部と、前記筐体部の長手方向の一端面から突出している突出部と、を備え、前記突出部は、前記一端面に連結された根元から先端に向かって直径が小さくなるように形成されている、マイクロホン装置用ケースを提供する。
【0015】
また、前記マイクロホン装置用ケースにおいて、前記突出部は、前記筐体部の前記一端面の中央に円錐状に形成されていることとしてもよい。
【0016】
また、前記マイクロホン装置用ケースにおいて、前記突出部は、金属部材を介して前記回路基板と熱伝導可能に接続されており、前記回路基板が発生した熱を外部に放出することとしてもよい。
【0017】
また、前記マイクロホン装置用ケースにおいて、前記突出部は、前記一端面に連結された根元から先端に向かって延びている軸部と、前記軸部と直交するように、軸方向に沿って所定間隔で配置された複数のフィンと、を有することとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、球体状のマイクロホンカプセルの集音部に対して音波が適切に入射されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係るマイクロホン装置1の使用状態の一例を示す斜視図である。
図2】マイクロホン装置1を前方から見た図である。
図3】マイクロホン装置1を左側から見た図である。
図4】マイクロホン装置1を上方から見た図である。
図5】マイクロホン装置1を下側から見た図である。
図6】信号線の配線を説明するための図である。
図7】ケース10の構成を説明するための図である。
図8】ケース10の長手方向一端側の端面の構成を説明するための図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係るマイクロホン装置1の使用状態の一例を示す斜視図である。
図10】マイクロホン装置1を前方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
(マイクロホン装置の構成)
本発明の第1の実施形態に係るマイクロホン装置の構成について、図1図8を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、第1の実施形態に係るマイクロホン装置1の使用状態の一例を示す斜視図である。図2は、マイクロホン装置1を前方から見た図である。図3は、マイクロホン装置1を左側から見た図である。図4は、マイクロホン装置1を上方から見た図である。図5は、マイクロホン装置1を下側から見た図である。図6は、信号線の配線を説明するための図である。図7は、ケース10の構成を説明するための図である。図8は、ケース10の長手方向一端側の端面の構成を説明するための図である。なお、図2図5では、便宜上、図1に示すスタンド90の台座が省略されている。
【0022】
マイクロホン装置1は、図1に示すように所謂アンビソニックスマイクロホン装置であり、360°全方位から集音できる構成となっている。このため、マイクロホン装置1は、臨場感のある音を集音できる。マイクロホン装置1は、多様な態様で設置されて使用される。例えば、マイクロホン装置1は、図1に示すようにスタンド90を介して固定された状態、又は天井に固定された状態で、360°全方位から集音する。マイクロホン装置1は、図1等に示すように、ケース10と、マイクロホンカプセル20と、支柱30と、突出部40と、ホルダー50と、ロック部材60とを有する。
【0023】
ケース10は、図7に示すように、筒状に形成された筐体部10aを有する。筐体部10aの内部には、マイクロホンカプセル20からの電気信号の信号処理等を行う回路基板70(図7)が設けられている。回路基板70は、デジタル変換回路やネットワークオーディオ出力回路を含み、さらに従来のマイクロホンより出力数が多い。そのため複雑な計算処理を要し、回路基板70は大型となり、電力密度が高くなる。したがって、回路基板70からの発熱量が多くなる。
【0024】
マイクロホンカプセル20は、図6に示すように、複数の集音部22を含む。マイクロホンカプセル20は、一例として球体の形状を成しており、球体の表面に複数の集音部22が所定間隔で配置されている。ここでは、32個の集音部22が、いわゆる高次アンビソニックスマイクロホンの原理に基づき、定められた位置に配置されている。32個の集音部22は、それぞれ所定方向から入射された音波を受けて電気信号を出力する。32個の集音部22が出力した電気信号は、32チャンネルの信号線75(図6)を介してケース10内の回路基板70に送られ、回路基板70において信号処理が行われる。
【0025】
マイクロホンカプセル20は、図6に示すように集音部22同士の間隔を狭めることで、小型化されている。球体であるマイクロホンカプセル20の直径は、例えば50(mm)であり、筒状のケース10の直径よりも小さい。通常、アンビソニックスマイクロホンにおいては、球体の半径が大きい程、信号処理を行った際に低い周波数で空間エイリアシングが発生することになり、有効な周波数範囲が狭くなってしまうことが知られている。これに対して、本実施形態のように球体のマイクロホンカプセル20を小型化することで、より高い周波数まで空間エイリアシングの発生を抑制することできるので、有効周波数範囲を広げることが可能となる。この結果、マイクロホン装置1をアンビソニックスマイクロホンとしてより高性能化できる。
【0026】
マイクロホンカプセル20は、360°全方位から各集音部22に音波が入射できるように、図2に示すようにケース10から離間した状態で配置されている。マイクロホンカプセル20とケース10の間の距離は、例えばマイクロホンカプセル20の直径よりも大きい。また、マイクロホンカプセル20には、マイクロホン装置1の前方を示すマーク部M(図1及び図6参照)が設けられている。
【0027】
支柱30は、図1に示すように複数設けられており、マイクロホンカプセル20を支えている。複数の支柱30は、それぞれ、ケース10の筐体部10aの長手方向一端側の一端面12と、マイクロホンカプセル20とを連結している。すなわち、各支柱30の長手方向の一端側は、ケース10の一端面12に固定されており、各支柱30の長手方向の他端側は、マイクロホンカプセル20の球体の表面において隣接する集音部22の間の部分で固定されている。なお、ケース10の一端面12は、マイクロホンカプセル20に対向する対向面に該当する。
【0028】
支柱30は、図1に示すように突出部40の周囲に周方向において90度間隔で4つ設けられている。このように支柱30を等間隔で複数配置することで、マイクロホンカプセル20を安定して支持することができる。なお、支柱30が4つ設けられていることとしたが、これに限定されない。例えば、支柱30は、2つ又は5つ以上であってもよい。ただし、球体に32個のマイクロホンを近接して配置する構成では、4つの支柱30を設けることが最適である。
【0029】
複数の支柱30は、音波の伝播経路上の障害物となることを抑制するために、細くなっている。例えば、図2に示すように、複数の支柱30の直径は、それぞれ突出部40の直径よりも小さい。また、支柱30の直径を小さくすることで、小型化したマイクロホンカプセル20に支柱30を固定しやすくなる。
【0030】
複数の支柱30の各々の内部は、空洞となっている。そして、支柱30の空洞内には、ケース10内の回路基板と集音部22とを繋ぐ信号線75(図6)が配線されている。例えば、図6に示すように32個の集音部22に対応する32チャンネル分の信号線75が4等分されて、各支柱30内に配線されている。このように32チャンネル分の信号線75を4等分して配線することで、支柱30の直径が小さくても32チャンネル分の信号線75を適切に配線することができる。なお、図6では、各支柱30に対して1本の信号線75が示されているが、実際には複数本が配線されている。
【0031】
突出部40は、図1に示すように、ケース10からマイクロホンカプセル20に向かって突出した部分である。具体的には、突出部40は、複数の支柱30の間に配置され、ケース10の一端面12からマイクロホンカプセル20に向かって突出している。突出部40は、一端面12に連結された根元から先端に向かって直径が小さくなるように(すなわちテーパ状に)、形成されている。
【0032】
ここでは、突出部40は、図7に示すように、筐体部10aの長手方向の一端面12の中央に円錐状に形成されている。突出部40が上記の形状を成していることで、突出部40は到来する音波を拡散させる。例えば、図2の矢印で示すように、突出部40は、一端面12で反射して到来する音波を、マイクロホンカプセル20へ向かわない方向へ拡散させる。また、突出部40が一端面12から突出するように形成されていることで、一端面12における平坦な領域が小さくなる。これにより、一端面12での音波の反射が抑制される。この結果、一端面12で反射された音波がマイクロホンカプセル20の集音部22に入射される事象が、発生し難くなる。また、突出部40が音波を拡散することで、ケース10(例えば、一端面12)とマイクロホンカプセル20の間で音波が反射を繰り返して定在波が発生する事象も、生じ難くなる。さらに、突出部40を設けることで、ケース10を回折した音波が集音部22に届く事象が、発生し難くなる。
【0033】
なお、上記では、突出部40が円錐状に形成されていることとしたが、これに限定されない。例えば、突出部40が、ドーム状(半球状)に形成されたり、角錐状に形成されたりしてもよい。このような形状の際にも、突出部40に到来する音波を、マイクロホンカプセル20へ向かわないように拡散させることが可能となる。また、定在波の発生を抑制することが可能となる。
【0034】
突出部40の先端部41は、突出部40の他の部分よりもテーパの角度が急峻に形成されている。また、突出部40の先端部41は、図2に示すように、マイクロホンカプセル20までは至っていない。ここでは、突出部40の一端面12からの突出高さは、一端面12とマイクロホンカプセル20の間の距離の1/2以下の大きさである。これにより、突出部40の先端部41がマイクロホンカプセル20に近過ぎることに起因して集音部22に悪影響が発生することを防止できる。
【0035】
突出部40は、図7に示すように、金属部材72を介してケース10内の回路基板70と熱伝導可能に接続されており、回路基板70が発生した熱を外部に放出する。すなわち、突出部40は、回路基板70のヒートシンクとしての機能も有する。上述したように、回路基板70は、デジタル変換回路やネットワークオーディオ出力回路を含むため、計算処理に伴い大型で電力密度が高くなる。そのため、回路基板70からの発熱量が多くなる。このため、突出部40がヒートシンクの機能を有することで、回路基板70の冷却効率を高めることができる。なお、マイクロホン装置1は、集音を行う機器の性質上、冷却ファンを設けることができないため、突出部40がヒートシンクの機能を有することで静音な放熱機構を実現できる。
【0036】
突出部40は、図2に示すように、軸部42と、フィン44とを有する。
軸部42は、一端面12からマイクロホンカプセル20へ向かって真っ直ぐ(軸方向)に延びている。すなわち、軸部42は、突出部40の一端面12に連結された根元から先端に向かって延びている。軸部42の直径は、突出部40の根元から先端へ向かうにつれて、小さくなっている。
【0037】
フィン44は、軸部42と直交するように、軸方向に沿って所定間隔で複数配置されている。複数のフィン44は、図7に示すように、それぞれ円板状に形成されている。このような形状のフィン44を複数設けることで、突出部40の表面積が大きくなるので、突出部40による放熱効果を高められる。
【0038】
ホルダー50は、図1に示すように、ケース10を保持する保持部材である。ホルダー50は、薄肉の円筒状に形成されており、ケース10の外周面を覆うように設けられている。ホルダー50は、ケース10及びマイクロホンカプセル20が共に周方向に回転できるようにケース10を保持している。また、ホルダー50は、図2に示すように、スタンド90に固定される固定部52を有する。
【0039】
ロック部材60は、周方向(図7に示す矢印方向)において一方向に回転するとホルダー50とケース10をロック状態にし、周方向において前記一方向とは逆方向に回転するとロック状態を解除する。ホルダー50に対するケース10のロック状態が解除されると、使用者は、天井に固定された状態のホルダー50に対して、ケース10を周方向に回転させてマイクロホンカプセル20の位置を調整できる。これにより、ホルダー50が天井に固定された後でも、使用者は、位置調整部材であるロック部材60のロック状態を解除することで、例えばより集音しやすい向き(又は突出部40によって音波を拡散させやすい向き)にマイクロホンカプセル20を調整できる。
【0040】
なお、ケース10の長手方向他端側には、他端面14から突出するように複数のフィン17が設けられている。フィン17も、前述した突出部40のフィン44と同様に、放熱を行う機能を有する。例えば、フィン17は、ケース10内の回路基板70と金属部材(不図示)で熱伝導可能に接続されており、回路基板70の放熱を行ってもよい。
【0041】
(第1の実施形態における効果)
上述した第1の実施形態のマイクロホン装置1では、ケース10から離間しているマイクロホンカプセル20を支持する複数の支柱30の間に、ケース10の一端面12からマイクロホンカプセル20へ向かって突出している突出部40が設けられている。そして、突出部40は、一端面12に連結された根元から先端に向かって直径が小さくなるように形成されている。
【0042】
上記の構成によれば、突出部40は、一端面12で反射して到来する音波を、マイクロホンカプセル20へ向かわない方向へ拡散させる。また、突出部40が一端面12から突出するように形成されていることで、一端面12における平坦な領域が小さくなる。これにより、一端面12での音波の反射が抑制される。この結果、一端面12で反射された音波が、マイクロホンカプセル20の集音部22に入射される事象が、発生し難くなる。また、突出部40が音波を拡散させることで、ケース10とマイクロホンカプセル20の間で音波が反射を繰り返して定在波が発生する事象も、生じ難くなる。この結果、集音部22が360°全方位から適切に集音できるので、マイクロホン装置1がアンビソニックスマイクロホンとして有効に機能する。
【0043】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係るマイクロホン装置1の構成について、図9及び図10を参照しながら説明する。
【0044】
図9は、第2の実施形態に係るマイクロホン装置1の使用状態の一例を示す斜視図である。図10は、マイクロホン装置1を前方から見た図である。
第2の実施形態では、マイクロホン装置1の突出部140の構成が第1の実施形態の突出部40の構成と異なり、マイクロホン装置1の他の構成は、第1の実施形態と同様である。このため、第2の実施形態のマイクロホン装置1の突出部140以外の構成については、説明を省略する。
【0045】
第2の実施形態の突出部140は、図9及び図10に示すように、ケース10の一端面12に連結された根元から先端に向かって直径が小さくなるように(テーパ状)形成されている。一方で、第2の実施形態では、突出部140に第1の実施形態で説明した放熱用のフィン44(図2参照)が設けられておらず、突出部140は円錐体の形状となっている。このため、突出部140の形状が簡素化され、突出部140を形成しやすくなる。なお、第2の実施形態では、ケース10の他端面14側に配置されるフィンで放熱を行ってもよい。また、突出部140の形状は、円錐体の形状に限定されず、例えばドーム形状や角錐体の形状であってもよい。
【0046】
第2の実施形態でも、突出部140が、一端面12に連結された根元から先端に向かって直径が小さくなるように形成されている。このため、突出部140は、一端面12で反射して到来する音波を、マイクロホンカプセル20へ向かわない方向へ拡散させる。また、突出部40が一端面12から突出するように形成されていることで、一端面12における平坦な領域が小さくなる。これにより、一端面12での音波の反射が抑制される。
【0047】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0048】
1 マイクロホン装置
10 ケース
10a 筐体部
12 一端面
20 マイクロホンカプセル
22 集音部
30 支柱
40 突出部
42 軸部
44 フィン
50 ホルダー
60 ロック部材
70 回路基板
75 信号線
90 スタンド
140 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10