(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】スライス食品搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65B 35/24 20060101AFI20220513BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B65B35/24
B26D7/18 D
(21)【出願番号】P 2018133969
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503049427
【氏名又は名称】匠技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】今浦 博士
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-217354(JP,A)
【文献】実開昭55-021918(JP,U)
【文献】特表2010-534600(JP,A)
【文献】特開2015-171944(JP,A)
【文献】米国特許第03169630(US,A)
【文献】実開平05-095497(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 35/24
B26D 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品原木をスライスしてスライス食品を作製するスライサーと、当該スライス食品を、複数の凹部が形成されたパッケージの当該凹部に収容した後、当該凹部を密封する包装機との間に設置され、前記スライサーで作製されたスライス食品を前記包装機まで搬送するスライス食品搬送装置であって、
前記スライサーから落下したスライス食品を載置し搬送する第1の搬送手段と、
前記第1の搬送手段から移載されたスライス食品を搬送すると共に、搬送方向と直交する幅方向の位置を、前記パッケージの凹部の位置に合わせて調節する第2の搬送手段と、を備え、
当該第2の搬送手段は、所定の間隔を隔てて配置された一対のプーリに平ベルトを
捲回し
、かつ搬入側の端部近傍を中心として水平面内で旋回できる第1のコンベアで構成され、
当該第1のコンベアの平ベルトは、搬送方向に対して直交する方向に2分割され、
搬入側の前記プーリは、前記平ベルトに合わせて2分割され、かつ当該2分割されたプーリの間に、第1のモータの回転力を前記2分割されたそれぞれのプーリに伝達する歯車が配置されていることを特徴とするスライス食品搬送装置。
【請求項2】
前記スライサーによって、複数の食品原木が同時にスライスされて複数のスライス食品が作製される場合、前記第2の搬送手段は、それぞれのスライス食品を搬送する複数の第1のコンベアで構成される、請求項1に記載のスライス食品搬送装置。
【請求項3】
前記第2の搬送手段の搬送方向下流側に設置され、当該第2の搬送手段から移載されたスライス食品の搬送方向の位置を調節する第3の搬送手段を更に備え
当該第3の搬送手段は、所定の間隔を隔てて配置された一対のプーリに平ベルトを捲回した第2のコンベアで構成され、当該第2のコンベアは、前記第1のコンベアのそれぞれに対応して複数設置されている、請求項2に記載のスライス食品搬送装置。
【請求項4】
前記複数の第2のコンベアの上方に設置され、前記複数の第1のコンベアから移載されたスライス食品の画像を撮影するカメラと、
前記第1のコンベアを水平面内で旋回させる第
2のモータと、
前記カメラで撮影した画像からスライス食品の画像を取り出して、当該スライス食品の幅方向の位置データを算出すると共に、算出された位置データに基づいて、前記第
2のモータを駆動して前記スライス食品の幅方向の位置を調節するコントローラと、を備えた、請求項3に記載のスライス食品搬送装置。
【請求項5】
前記第3の搬送手段は省略され、前記第2の搬送手段の搬送方向下流側に近接して
第4の搬送手段が設置され、当該第4の搬送手段が、前記第2の搬送手段からスライス食品を受け取り、かつ前記カメラは前記第4の搬送手段の上方に設置され、
更に、前記複数の第1のコンベアの上方に設置され、当該第1のコンベアで搬送されるそれぞれのスライス食品の通過を検知するセンサを備え、
前記コントローラは、前記複数のセンサの検知信号に基づいて、前記複数の第1のコンベアで搬送されるそれぞれのスライス食品が、略同時刻に搬出側端部に到達するよう前記第1のコンベアを駆動する、請求項
4に記載のスライス食品搬送装置。
【請求項6】
前記第1のモータおよび第2のモータは、上部に前記一対のプーリが取り付けられた筐体内に収容され、
かつ当該筐体は、支柱を介して基台に取り付けられ、前記第
2のモータによって、前記支柱を中心に旋回できるように構成されている、請求項
4に記載のスライス食品搬送装置。
【請求項7】
前記第1のコンベアの一対のプーリは、左右に配置された長尺の一対のフレームによって回転可能に支持されており、
かつ当該一対のフレームは、鉛直方向に折り曲げることができるように構成されている、請求項1ないし
6のいずれかに記載のスライス食品搬送装置。
【請求項8】
前記スライス食品は、ハム原木をスライスしたスライスハムである、請求項1ないし
7のいずれかに記載のスライス食品搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライス食品を包装用パッケージに収容する際に用いる搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スライスされたハムを包装用パッケージに形成された凹部に投入してスライスハムの商品を生産する場合、1~2mのハム原木を一定の厚さでスライスし、それを所定枚数重ねた後、コンベアに送り出す。コンベアに送り出された一塊のスライスハムは、包装機まで搬送された後、パッケージの凹部に投入され、更にカバーフィルムで密閉されて商品の形態となる。
【0003】
上述の工程によってスライスハム商品を生産する場合、生産性を高めるために、複数本(例えば3本)のハム原木を1つの切断刃で切断している。その際、スライスされたハム間のピッチと、パッケージに形成された凹部のピッチが異なり、またスライスの状態によってハムが落下する位置が微妙にずれるため、コンベアに載置されたスライスハムを、そのまま包装機に搬送した場合、スライスハムがパッケージの凹部にうまく投入できないという問題がある。
【0004】
上述の問題を解決するため、従来の搬送装置では、ハム原木が切断された後、スライスハムの位置を搬送方向と直交する幅方向にずらして、パッケージの凹部に正確に投入されるようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の搬送装置では、搬送方向と直交する幅方向のずれを調節する手段として、5本の丸ベルトを一対のベルトプーリに捲回したコンベアを用い、下流側のプーリを幅方向に移動させていた。
【0007】
しかし、このような構成を採用した場合、ベルトをプーリに形成された溝に対して斜めに掛ける必要があり、斜めになる部分でベルトとプーリが摺れて粉が発生する。食品を扱う装置において異物(粉)の混入は、商品の品質に悪影響を及ぼすため、避けなければならない。
【0008】
また、食品を扱う装置の性質上、コンベアを分解して頻繁に洗浄する必要があるが、丸ベルトを用いた場合、分解や洗浄に手間がかかるため、保守上好ましくない。
【0009】
更に、スライス食品が搬送の途中でベルト間に落ち込み、プーリに巻き込まれるという事態も発生する。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、食品への異物の混入を防止でき、分解や洗浄が容易で、プーリへの巻き込みを防止できるスライス食品用搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明に係るスライス食品搬送装置は、食品原木をスライスしてスライス食品を作製するスライサーと、当該スライス食品を、複数の凹部が形成されたパッケージの当該凹部に収容した後、当該凹部を密封する包装機との間に設置され、前記スライサーで作製されたスライス食品を前記包装機まで搬送するスライス食品搬送装置であって、
前記スライサーから落下したスライス食品を載置し搬送する第1の搬送手段と、
前記第1の搬送手段から移載されたスライス食品を搬送すると共に、搬送方向と直交する幅方向の位置を、前記パッケージの凹部の位置に合わせて調節する第2の搬送手段と、を備え、
当該第2の搬送手段は、所定の間隔を隔てて配置された一対のプーリに平ベルトを
捲回し、かつ搬入側の端部近傍を中心として水平面内で旋回できる第1のコンベアで構成され、
当該第1のコンベアの平ベルトは、搬送方向に対して直交する方向に2分割され、
搬入側の前記プーリは、前記平ベルトに合わせて2分割され、かつ当該2分割されたプーリの間に、第1のモータの回転力を前記2分割されたそれぞれのプーリに伝達する歯車が配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るスライス食品用搬送装置において、前記スライサーによって、複数の食品原木が同時にスライスされて複数のスライス食品が作製される場合、前記第2の搬送手段は、それぞれのスライス食品を搬送する複数の第1のコンベアで構成されることが好ましい。
【0013】
本発明に係るスライス食品用搬送装置は、前記第2の搬送手段の搬送方向下流側に設置され、当該第2の搬送手段から移載されたスライス食品の搬送方向の位置を調節する第3の搬送手段を更に備え、
当該第3の搬送手段は、所定の間隔を隔てて配置された一対のプーリに平ベルトを捲回した第2のコンベアで構成され、当該第2のコンベアは、前記第1のコンベアのそれぞれに対応して複数設置されていることが好ましい。
【0014】
また前記複数の第2のコンベアの上方に設置され、前記複数の第1のコンベアから移載されたスライス食品の画像を撮影するカメラと、
前記第1のコンベアを水平面内で旋回させる第1のモータと、
前記カメラで撮影した画像からスライス食品の画像を取り出して、当該スライス食品の幅方向の位置データを算出すると共に、算出された位置データに基づいて、前記第1のモータを駆動して前記スライス食品の幅方向の位置を調節するコントローラと、を備えることが好ましい。
【0015】
もしくは、本発明に係るスライス食品用搬送装置は、前記第3の搬送手段は省略され、前記第2の搬送手段の搬送方向下流側に近接して設置された前記第4の搬送手段が、前記第2の搬送手段からスライス食品を受け取り、かつ前記カメラは前記第4の搬送手段の上方に設置され、
更に、前記複数の第1のコンベアの上方に設置され、当該第1のコンベアで搬送されるそれぞれのスライス食品の通過を検知するセンサを備え、
前記コントローラは、前記複数のセンサの検知信号に基づいて、前記複数の第1のコンベアで搬送されるそれぞれのスライス食品が、略同時刻に搬出側端部に到達するよう前記第1のコンベアを駆動することが好ましい。
【0017】
また前記第1のモータおよび第2のモータは、上部に前記一対のプーリが取り付けられた筐体内に収容され、かつ当該筐体は、支柱を介して基台に取り付けられ、前記第1のモータによって、前記支柱を中心に旋回できるように構成されていることが好ましい。
【0018】
また前記第1のコンベアの一対のプーリは、左右に配置された長尺の一対のフレームによって回転可能に支持されており、かつ当該一対のフレームは、鉛直方向に折り曲げることができるように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るスライス食品搬送装置は、食品の搬送装置として致命的な異物の混入を防止でき、また分解や洗浄が容易であるため保守性に優れ、更には、スライス食品のプーリへの巻き込みを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るスライス食品搬送装置の平面図である。
【
図2】第2の搬送手段を構成するコンベアの正面図である。
【
図4】実施の形態1に係るスライス食品搬送装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施の形態2に係るスライス食品搬送装置の平面図である。
【
図6】実施の形態2に係るスライス食品搬送装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図7】スライス食品搬送装置の機能を説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係るスライス食品搬送装置について、図面を参照して説明する。
【0022】
(実施の形態1)
<スライス食品搬送装置の機能>
本発明の実施の形態に係るスライス食品搬送装置の具体的な構成について説明する前に、
図7を参照して、スライス食品搬送装置の機能について説明する。
【0023】
図7はスライス食品搬送装置の概略構成を示す平面図である。
図7に示すように、スライス食品搬送装置10は、紙面に向って右端に設置されたスライサー5と、図では省略しているが、紙面の左端に設置された包装機との間に配置され、スライサー5で作製されたスライス食品Sを包装機まで搬送する。図中、矢印はスライス食品の搬送方向を示している。
【0024】
スライス食品搬送装置10は、スライサー5の下方に設置された第1の搬送手段1と、その下流に配置された第2、第3および第4の搬送手段2、3、4で構成されている。
【0025】
第2の搬送手段2は、搬送方向と直交する幅方向におけるスライス食品の位置を調節するために用いられ、第3の搬送手段3は、搬送方向におけるスライス食品の位置を調節するために用いられる。また第4の搬送手段4は、位置が調節されたスライス食品を、その状態を保持したまま包装機まで搬送するために用いられる。
【0026】
図7を参照して、スライス食品が作製されてから、包装機に配置されたパッケージの凹部に投入されるまでの流れを簡単に説明する。以下、一例としてスライスハムを作製する場合について説明する。
【0027】
スライサー5は、円板状の切断刃51を備えている。1~2mの柱状のハム原木Rを3本用意し、軸52を中心に一定速度で回転する切断刃51に対してハム原木Rを一定速度で搬送すると、ハム原木Rが先端から順次所定の厚さでスライスされ、円形のスライスハムSが作製される。
【0028】
ハム原木Rは、図示しない個別の送り手段によって、左側に送り出される。またハム原木Rは、紙面に向って右側が上、左側が下になるように傾斜しており、切断刃51によってスライスされたハムSは、第1の搬送手段1上に落下する。第1の搬送手段1を停止させた状態で、切断刃51によるスライスを繰り返すことにより、複数枚のスライスハムが重なった一塊のスライスハムSが作製される。
【0029】
第1の搬送手段1上に落下したスライスハムSは、第1の搬送手段1を駆動することにより第2の搬送手段2に移載される。第1の搬送手段1と第2の搬送手段2の搬送速度は等しく、かつ隣接して設置され、搬送面の高さがほぼ等しいため、スライスハムSの円滑な移載が可能である。
【0030】
第2の搬送手段2および第3の搬送手段3は、このようにして作製された一塊のスライスハムSの搬送方向および搬送方向と直交する幅方向の位置を調節するために用いられる。図示しないが、搬送方向下流側に設置された包装機には、スライスハム収納用の凹部が搬送方向および幅方向に一定のピッチで形成されたパッケ-ジが装着されており、スライサー5で作製され、搬送装置10で搬送された一塊のスライスハムSがそれぞれの凹部に投入され、その後、カバーフィルムで密閉される。
【0031】
第2の搬送手段2および第3の搬送手段3によって搬送方向および幅方向の位置が調節されたスライスハムSは、第4の搬送手段4に移載され、調節された位置を保持したまま包装機まで搬送され、パッケージの凹部に投入される。
【0032】
第2の搬送手段2は3台のコンベア20で構成され、各コンベア20は幅方向の位置を独立して調節できるように構成されている。
【0033】
第3の搬送手段3は、第2の搬送手段2によって幅方向の位置が調節されたスライスハムSを受け取り、搬送方向のスライスハムSの位置を調節する。第3の搬送手段3は、3台のコンベア30で構成され、各コンベア30は搬送方向の位置を独立して調節できるように構成されている。
【0034】
ここで、スライスハムSの位置を、搬送方向をX軸、搬送方向と直交する幅方向をY軸としたX-Y平面上の座標で表す。
図7に示した、第1の搬送手段1から第2の搬送手段2に引き渡されたときのスライスハムSの中心O
1、O
2、O
3のY座標をY
21、Y
22、Y
23、第2の搬送手段2から第3の搬送手段3に引き渡されたときのスライスハムSの中心O
1、O
2、O
3のY座標をY
31、Y
32、Y
33とする。
【0035】
第2の搬送手段2を用いた、搬送方向と直交する幅方向(Y軸方向)の位置調節について説明する。第3の搬送手段3に載置されたスライスハムSのY座標Y31、Y32、Y33は、下流側に設置された包装機に装着されているパッケージの凹部の中心座標と一致しており、それぞれピッチP2だけ離れて配置されている。
【0036】
これに対して、第2の搬送手段2に載置されたスライスハムSのY座標Y21、Y22、Y23間のピッチP1は、スライスハムSがスライサー5から第1の搬送手段1に落下したときのピッチを保持している。
【0037】
ピッチP1は、スライサー5において単一の切断刃51を用いて3本のハム原木Rを切断する制約上、ピッチP2より小さい。このため、スライスハムSを第2の搬送手段2で搬送している間に、スライスハム間のピッチをP1からP2に拡げると共に、それぞれのY座標を、パッケージの凹部のY座標であるY31、Y32、Y33と一致させる必要がある。
【0038】
前述したように、従来の搬送装置では、第2の搬送手段2として、5本の丸ベルトを一対のプーリに捲回したコンベアを用い、下流側のプーリを幅方向に移動させることによって、スライスハムSのY座標をパッケージの凹部のY座標であるY31、Y32、Y33と一致させていた。しかし、従来の搬送装置では、食品へ異物(粉)が混入するという問題があり、またコンベアの分解や洗浄が煩雑になるという問題があった。
【0039】
これに対し、本実施の形態では、後述するように、平ベルトを一対のプーリに捲回したコンベアを用い、かつこのコンベアを、搬入側端部近傍を中心として、水平面内で旋回できる構成を採用することによって、上述した従来の問題点の解決を図っている。
【0040】
次に、第3の搬送手段3を用いた、搬送方向(X軸)における位置調節について説明する。前述したように、スライサー5の切断刃51が前方に傾斜していることから、
図7に示すように、切断された3つのスライスハムSが第1の搬送手段1上に落下する位置が異なってくる。したがって、第4の搬送手段4に移載するまでにスライスハムSの搬送方向の位置を揃える必要がある。
【0041】
本実施の形態では、そのための手段として第2の搬送手段2と第4の搬送手段4との間に、搬送方向の位置を調節する第3の搬送手段3を設置している。
【0042】
具体的に説明すると、スライスハムSは、スライサー5からの落下点によってX軸方向に位置ずれが生じ、この位置ずれが第3の搬送手段3まで引き継がれる。第3の搬送手段3では、図示しない位置検出手段を用いて、搬送方向(X軸)におけるスライスハムSの位置ずれを検出し、各コンベア30に載置されたスライスハムSの先端部が搬送方向の所定の位置に到達したときに第3の搬送手段3を停止する。
【0043】
その後、各コンベア30を同一の搬送速度で駆動すれば、スライスハムSは搬送方向(X軸)の位置が揃った状態で第4の搬送手段4に移載され、包装機まで搬送される。
【0044】
なお、上述した第3の搬送手段3を用いてスライス食品の搬送方向の位置ずれを調節する手法は前述の特許文献1にも記載されており、従来から採用された手法である。
【0045】
以下、本発明の実施の形態1に係るスライス食品搬送装置10の構成と動作について、
図1~
図4を参照して説明する。
【0046】
<スライス食品搬送装置の構成と動作>
図1は、スライス食品搬送装置10を構成する第2および第3の搬送手段2、3を上方から見た図、
図2は、第2の搬送手段2を構成するコンベア20を正面から見た図、
図3は同コンベア20の一部断面側面図、
図4はスライス食品搬送装置10の制御系のブロック図である。
【0047】
図1に示すように、本実施の形態では、3つのスライスハムSを同時に作製・搬送する形態を採用しており、それぞれのスライスハムSを搬送するコンベア20が、第1の搬送手段1の下流側に並列に設置されている。若干の隙間を隔てて並置された3台のコンベア20は、同一の構成を備えている。
【0048】
コンベア20の下流側には第3の搬送手段3を構成する3台のコンベア30が並置されており、それぞれのコンベア30は、コンベア20で搬送されたスライスハムSを受け取った後、搬送方向の位置を調節する。
【0049】
図2は、紙面に向って上側に配置されたコンベア20を正面から見た図であり、コンベア20は、所定の間隔を隔てて配置された一対のプーリ21および22に平ベルト23が捲回されて構成されている。
【0050】
一対のプーリ21および22は、スライスハムSの搬入側および搬出側に配置され、かつ前後にサブフレーム241、242が取り付けられた一対の長尺のメインフレーム24によって回転可能な状態で支持されている。また一対のメインフレーム24は、2組の取付板261および262を介して筐体25に取り付けられている。
【0051】
直方体状の筐体25は、円柱状の支柱27を介して基台200に取り付けられており、
図2に示すように、支柱27の軸Oを中心に水平面内で旋回できるように構成されている。
【0052】
図3に示すように、筐体25の内部空間には、メインフレーム24および筐体25を支柱27の軸回りに旋回させるモータと回転伝達機構、プーリ21を回転させて平ベルト23を駆動するモータと回転伝達機構が収容されている。なお、図にはボルト、ナット等の締結用部材や軸受が記載されているが、それぞれの機能は周知であるため、説明を省略する。
【0053】
図3に示すように、支柱27の上端には、複数の歯車で構成されたギアボックス28が取り付けられており、筐体25の下方奥に収容されたモータ(図示せず、
図4の旋回用モータ82)の回転を筐体25に伝達し、筐体25を支柱27の軸回りに旋回させる。モータ82の制御については、後に
図4を参照して説明する。
【0054】
一方、筐体25の上方奥に収容されたモータ(図示せず、
図4の駆動用駆動用モータ81)の回転は、タイミングベルト291、プーリ292、293、タイミングベルト294を介して、取付板264に支持されたプーリ295に伝達され、更に、歯車296および297を介してドライブプーリ21に伝達される。駆動用モータ81の制御については、後に
図4を参照して説明する。
【0055】
図1および
図3に示すように、平ベルト23は左右に2分割されており、左側の平ベルト23aはドライブプーリ21aによって回転駆動され、右側の平ベルト23bはドライブプーリ21bによって回転駆動される。歯車297は、ドライブプーリ21aおよび21bと同軸であるため、歯車297が回転すると、ドライブプーリ21aおよび21bが同一速度で回転し、平ベルト23aおよび23bに載置されたスライスハムSが第1の搬送手段1側から第3の搬送手段3側に搬送される。
【0056】
平ベルト23を2分割すると共に、ドライブプーリ21aと21bとの間に回転駆動用の歯車297を配置した場合、搬送部分の形状が左右対称になるため、搬送途中でスライスハムSが横方向にずれることがない。このため、
図1の矢印Cで示すように、平ベルト23の幅を、スライスハムSが中心から若干ずれる場合を考慮した上で、最小限の値に設定できる。
【0057】
また丸ベルトを使用した場合、ベルトの隙間からハムの端部が垂れ下がってベルトに巻き込まれる恐れがあるが、平ベルト23を2分割し、かつ適度の幅の平ベルトを用いれば、ハムの端部がベルトから垂れ下がることもない。
【0058】
次に、
図4を参照して、コンベア20の制御系について説明する。コンベア20の制御系は、コントローラ6、カメラ7およびモータ81~86で構成されており、各部材の間は信号伝達用および電力供給用のケーブルで接続されている。
【0059】
図2に示す3台のコンベア20の筐体25内には、回転駆動用のモータと旋回用のモータがそれぞれ収容されており、これらのモータの駆動は、コントローラ6によって制御される。モータ81と82が搬送方向に対して右側のコンベアの筐体内、モータ83と84が中央のコンベアの筐体内、モータ85と86が左側のコンベアの筐体内にそれぞれ収容されている。
【0060】
第3の搬送手段3の搬入側端部近傍の上方には、コンベア20からコンベア30に移載されたスライスハムSの画像を撮影するカメラ7が設置されている。
図1の2点鎖線で囲んだ領域7Rは、カメラ7の撮影エリアを示している。カメラ7で撮影されたスライスハムSの画像データはコントローラ6に入力される。
【0061】
図4に示すように、コントローラ6は、画像認識部61、制御部62、記憶部63、入力部64および表示部65で構成され、一般的なパーソナルコンピュータによって実現されている。
【0062】
画像認識部61および制御部62の機能は、記憶部63に記憶されたソフトウェアによって実現される。画像認識部61は、カメラ7で撮影した画像からスライスハムSの画像を取り出し、円の中心の幅方向の位置データを算出する。更に、算出した位置データと、予め記憶部63に記憶された位置データ、具体的には、前述の3つのスライスハムSの中心の位置データ(Y31、Y32、Y33)とを比較し、その差分を算出する。
【0063】
制御部62は、画像認識部61で算出した差分の位置データに基づいて各コンベア20の旋回用モータ82、84、86を制御し、コンベア20で搬送され、第3の搬送手段3に引き渡される際のスライスハムSの幅方向の位置が(Y31、Y32、Y33)になるように、それぞれのコンベア20を旋回させる。
【0064】
入力部64はキーボードやマウスで構成され、基準となる位置データ等を入力するのに用いられる。また表示部65は液晶ディスプレイ等で構成され、カメラ7で撮影したスライスハムの画像や算出された位置データを表示するのに用いられる。
【0065】
次に、上述した図面に基づいて、本実施の形態に係るスライス食品搬送装置10の動作を説明する。
【0066】
図1において、矢印で示す位置AはスライスハムSがコンベア20からコンベア30に引き渡される位置、位置Bはコンベア30上でスライスハムSを停止させる位置を示す。また参考として、位置Cに搬送途中のスライスハムSを示す。
【0067】
スライサー5によるスライス動作が繰り返され、第1の搬送手段1上に所定枚数重なった状態で載置されたスライスハムSは、第1の搬送手段1とコンベア20を同一速度で駆動することにより、コンベア20に移載される(
図7参照)。
【0068】
3台のコンベア20は、スライスハムSを下流側に搬送し、コンベア30に移載する。1回目の搬送については、カメラ7の画像を用いた位置の調節ができないため、コンベア20からコンベア30に引き渡されるスライスハムSの位置を、作業者が調節する必要がある。
【0069】
具体的には、作業者がコントローラ6の入力部64からデータを入力して旋回用モータ82、84、86を回転させ、コンベア20からコンベア30への引き渡し位置AにおけるスライスハムSの幅方向(Y軸)の位置が、記憶部63に記憶された位置(Y31、Y32、Y33)となるように調節する。
【0070】
この状態において、作業者の指示によって駆動用モータ81、83、85を起動してコンベア20を駆動し、スライスハムSを搬送してコンベア30に引き渡す。コンベア30に引き渡されたスライスハムSは、
図1に示す位置まで搬送される。このときスライスハムSの幅方向(Y軸)の位置は、上述した位置(Y
31、Y
32、Y
33)となっている。
【0071】
コンベア30によって
図1に示す位置まで搬送されたスライスハムSは、カメラ7によって撮影され、画像データがコントローラ6に送られる。コントローラ6の画像認識部61は、受信した画像データからスライスハムSの画像を抽出すると共に、スライスハムSの中心の位置データ(X座標およY座標)を算出する。更に、算出された位置データのうちY座標を、記憶部55に記憶された位置データ(Y
31、Y
32、Y
33)と比較し、差分データを算出する。
【0072】
幅方向(Y軸)の位置調節については、コントローラ6の制御部62は、画像認識部61によって算出された位置データに基づいて各コンベア20の旋回用モータ82、84、86を駆動し、コンベア20からコンベア30に引き渡されるスライスハムSの幅方向の位置が(Y31、Y32、Y33)となるように調節する。
【0073】
前述したように、スライサー5でスライスされたハムSが第1の搬送手段1上に落下する位置は、切断刃で切断される状態によって若干ずれるが、搬送の都度、ずれの程度に応じて幅方向(Y軸)の位置が修整される。、
【0074】
一方、搬送方向(X軸)の位置調節については、制御部62は、記憶部63からスライスハムSの停止位置のデータ(位置BのX座標)を読み出すと共に、算出した搬送方向の位置データ(X座標)との差分を算出し、スライスハムSが矢印で示す位置Bまで搬送されたときに、駆動用モータ81、83、85を停止する。
【0075】
この処理により、3台のコンベア30に載置されたスライスハムSは、搬送方向に対して同じ位置Bで停止する。その後、3台のコンベア30および第4の搬送装置4を同一の搬送速度で駆動することにより、第4の搬送手段4への移載が行われる。
【0076】
上述した処理により、包装機においてスライスハムSがパッケージの凹部に投入される際には、搬送方向(X軸)および幅方向(Y軸)の位置が凹部の位置と一致しているため、スライスハムを確実に凹部に投入することができる。
【0077】
次に、コンベア20を洗浄する場合について説明する。
図2に示したように、一対のメインフレーム24は、取付板261および262を介して筐体25に取り付けられている。またメインフレーム24の中央部は、取付板262の上部に固定された一対の係合板263の上部に形成された溝に、メインフレーム24の側面に設けられたピン243を係合させることで支持されている。
【0078】
メインフレーム24の搬出側端部に取り付けられたサブフレーム241は、
図2に2点鎖線で示すように、軸244を中心に回動し、鉛直方向に折り曲げることができ、更に、サブプレート241と一体化した係合板245には2つの溝が形成されている。サブプレート241を水平に保持した状態で、下の溝を取付板261の側面に形成されたピン265に係合させ、上の溝にピン246を係合させることにより、サブフレーム241とメインフレーム24は筐体25に強固に支持される。
【0079】
前述したように、平ベルト23とプーリ21、22は、スライスハムSを搬送する都度、洗浄する必要がある。その際には、サブフレーム241を反時計回りに回転させて、ピン246、265との係合を解除した後、メインフレーム24を持ち上げて係合板263とピン243の係合を解除する。
【0080】
プーリ21と同軸の歯車297は、取付板264に支持された歯車296と噛み合っているだけであるため、メインフレーム24を持ち上げると、歯車同志の噛み合いが解除され、メインフレーム24は、平ベルト23と共に筐体25から取り外すことができる。
【0081】
この状態では、平ベルト23は緩んだ状態であるため、簡単にメインフレーム24から取り外すことができ、メインフレーム24とベルト23を別々に洗浄できる。洗浄を終えたメインフレーム24とベルト23は、上述したのと逆の手順で筐体25に取り付けられる。
【0082】
上述したように、本実施の形態に係るスライス食品搬送装置を用いれば、スライスされた食品を包装機に装着されたパッケージの凹部に確実に投入でき、しかも、搬送中にベルトの粉がスライス食品に付着することもない。また、スライス食品が分割された平ベルトの隙間から垂れ下がる可能性も皆無に近い。
【0083】
更に、スライス食品と接する平ベルト、プーリおよびフレームを簡単に筐体から取り外して洗浄できるため、搬送装置の保守作業が楽になる。
【0084】
(実施の形態2)
実施の形態1では、スライスハムSの搬送方向における位置の調節は第3の搬送手段3を用いて行った。これに対し、本実施の形態では、コンベア20を駆動するモータの特性を活用し、スライスハムの幅方向の位置調節に加えて搬送方向の位置調節を行わせることによって、第3の搬送手段3を省略している。
【0085】
図5および
図6に、本実施の形態における第2の搬送手段2の構成と制御系の構成を示す。本実施の形態では、コンベア20の搬入側端部から所定の距離離れた位置Dの上方に光電センサ71~73を設置している。光電センサ71、72、73は、コンベア20に載置されたスライスハムSが光電センサ71~73の下を通過したときに、反射光によってスライスハムSの通過を検知するもので、検知信号はコントローラ6に入力される。
【0086】
また本実施の形態では、コンベア20の下流側に第4の搬送手段4が設置されており、その上方にカメラ7が設置されている。カメラ7の撮影画像を用いたスライスハムSの幅方向の位置調節については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
図5に示すように、各コンベア20におけるスライスハムSの搬送方向の位置(X座標)は若干相違している。最初に、中央の光電センサ72がスライスハムSの通過を検知し、次に、左側の光電センサ73が、最後に、右側の光電センサ71がスライスハムSの通過を検知する。
【0088】
コンベア20の搬出側端部Aと、光電センサ71~73が設置された位置Dの間の距離は既知である。従って、各コンベア20の駆動用モータ81、83、85の回転速度を調節することによって、スライスハムSの先端がコンベア20の搬出側端部に到達する時刻を略一致させることができる。
【0089】
コントローラ6の制御部62は、光電センサ71~73の検知信号を受信した時刻に基づいて、搬出側端部への到達時刻が同一となる駆動用モータ81、83および85の回転速度を算出し、モータ81、83および85に制御信号を送信する。
【0090】
3台のコンベア20で搬送されるスライスハムSが第4の搬送手段4への引渡し位置Aに到達した後、3台のコンベア20および第4の搬送手段4の搬送速度を同一にすれば、3つのスライスハムSの先端が揃った(すなわちX座標が一致した)状態で、コンベア20から第4の搬送手段4への移載が行われる。
【0091】
上述したように、本実施の形態では、搬送方向(X軸)および幅方向(Y軸)におけるスライスハムSの位置の調節を、コンベア20だけで実現しているため、第3の搬送手段が不要となる。更に、コンベア20の搬送速度は、光電センサ71~73の検知信号に基づいて簡単に算出できるため、搬送装置10のコストダウンに貢献する。
【0092】
なお、上述した各実施の形態では、3本のハム原木を同時にスライスするスライサーに対応して、第2の搬送手段を3台のコンベアで構成したが、コンベアの数は3台に限定されない。それ以上の数のハム原木を同時にスライスする場合は、第2の搬送手段を原木の数に対応した数のコンベアで構成すればよい。
【0093】
また、上述した実施の形態において、第3および第4の搬送手段に載置されたスライス食品の位置データを取得する手段としてカメラを用いたが、これに限定されない。例えば、線状に配列された光電センサをコンベアと第2の搬送手段の間に配置し、スライス食品によって光が遮られた位置によってスライス食品の位置データを取得するようにしてもよい。
【0094】
更に、上述した実施の形態では、円形のスライスハムを搬送する場合について説明したが、本発明に係る搬送装置は、円形のスライスハムに限定されず、楕円形や四角形のスライス食品の搬送にも適用できることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0095】
R ハム原木
S スライスハム
1 第1の搬送手段
2 第2の搬送手段
3 第3の搬送手段
4 第4の搬送手段
5 スライサー
6 コントローラ
7 カメラ
10 スライス食品搬送装置
20、30 コンベア
21、22、292、293、295 プーリ
23、23a、23b24 平ベルト
24 メインフレーム
25 筐体
26 支柱
28 ギアボックス
51 回転刃
52 軸
61 画像認識部
62 制御部
63 記憶部
64 入力部
65 表示部
71、72、73 光電センサ
81、83、85 駆動用モータ
82、84、86 旋回用モータ
241、242 サブフレーム
243、265 ピン
244 軸
245、263 係合板
261、262 取付板
291、294 タイミングベルト
296、297 歯車