(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】幼児用歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 5/00 20060101AFI20220513BHJP
【FI】
A46B5/00 D
A46B5/00 B
(21)【出願番号】P 2017096949
(22)【出願日】2017-05-16
【審査請求日】2020-04-02
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】592111894
【氏名又は名称】ヤマトエスロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167092
【氏名又は名称】鷹津 俊一
(72)【発明者】
【氏名】岡山 保一
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】長馬 望
【審判官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-064031(JP,A)
【文献】実開昭58-019643(JP,U)
【文献】実開昭62-193426(JP,U)
【文献】国際公開第2016/035678(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0313371(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0235889(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0016651(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幼児が口にくわえるヘッド部を長手方向の先端側に有し、かつ、柱状のハンドル部を基端側に有する幼児用歯ブラシであって、
前記ヘッド部と
前記ハンドル部との中間に緩衝部が設けられ、
前記ヘッド部の前記緩衝部側端と、前記ハンドル部の前記緩衝部側端とを一体に覆う弾性体を備え、
前記緩衝部は、前記ハンドル部の中心軸線と直交する回転中心線を有し、
前記ヘッド部は、
前記長手方向の基端向きに突出し且つ前記ハンドル部の一部と重なり合って前記緩衝部を部分的に構成する回転板部を有するとともに、前記ハンドル部に対し前記回転中心線周りを回転可能であり、
前記ヘッド部の先端から前記緩衝部
の最基端側端である前記回転板部の基端側端までの長さであるヘッド長さは27mm以上、かつ、37mm未満であり、
前記弾性体は、前記各緩衝部側端を前記中心軸線の径方向の内向きに締め付けることにより前記ヘッド部及び前記ハンドル部に固定されるとともに、前記ヘッド部の回転により変形し、該変形状態において弾性により前記ヘッド部を前記回転の反対向きに付勢する
ことを特徴とする幼児用歯ブラシ。
【請求項2】
幼児が口にくわえるヘッド部を長手方向の先端側に有し、かつ、柱状のハンドル部を基端側に有する幼児用歯ブラシであって、
前記ヘッド部と前記ハンドル部との中間に緩衝部が設けられ、
前記ヘッド部の前記緩衝部側端と、前記ハンドル部の前記緩衝部側端とを一体に覆う弾性体を備え、
前記緩衝部は、前記先端から50mm以内の位置に配置されるとともに前記ハンドル部の中心軸線と直交する回転中心線を有し、
前記ヘッド部は、前記ハンドル部に対し前記回転中心線周りを回転可能であるとともに、前記基端向きに突出し且つ前記ヘッド部と一体に回転する第1の当接部材が設けられ、
前記ハンドル部は、前記ハンドル部側で、前記第1の当接部材の回転円上に固定される第2の当接部材が設けられ、該第2の当接部材
が前記第1の当接部材と当接し、前記ハンドル部の、刷毛の植毛される植毛面の裏向きの回転を制止
し、
前記ヘッド部の先端から前記緩衝部の最基端側端である前記第1の当接部材の基端側端までの長さであるヘッド長さは27mm以上、かつ、37mm未満であり、
前記弾性体は、前記各緩衝部側端を前記中心軸線の径方向の内向きに締め付けることにより前記ヘッド部及び前記ハンドル部に固定されるとともに、前記ヘッド部の回転により変形し、該変形状態において弾性により前記ヘッド部を前記回転の反対向きに付勢する
ことを特徴とす
る幼児用歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯ブラシに関し、詳細には衝撃力を緩衝する歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の歯を清掃するための刷毛が植毛されるヘッド部と、前記使用者の手指によって把持される柱状のハンドル部とを有する歯ブラシがある。
【0003】
従来の歯ブラシには、前記ヘッド部が、前記ハンドル部の中心軸線と直交する回転軸周りを回転可能となるように前記ハンドル部に対して軸着するものがある(特許文献1)。
【0004】
こうした従来の歯ブラシは、前記ヘッド部の先端側に前記刷毛が植毛され、かつ、前記ヘッド部が、前記回転軸を挟んで前記先端側の反対側に押圧操作部を有する。使用者は、前記ハンドル部を親指以外の手指で把持したまま、親指で押圧操作部を押圧することにより前記ヘッド部の先端側を前記刷毛の植毛面の表向きに回転させることができる。
【0005】
そのため前記従来の歯ブラシは、使用者が前記押圧の度合いを加減することにより、前記回転軸を中心として前記ヘッド部が前記ハンドル部に対して折れ曲がる角度を調整することができる。その結果、使用者は歯の必要な部分を刷毛によって擦ることができ、歯磨きの効果を高めることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の従来の歯ブラシは、前記ヘッド部が前記回転軸のすぐ前記基端側に前記押圧操作部を有し、前記回転軸を中心に折れ曲がる。そのため、前記ヘッド部の先端から前記回転軸までが長く、歯磨きの際に前記回転軸は使用者の口腔の外に位置する。
【0008】
ところで、使用者が3歳前後の幼児の場合、使用者は歯ブラシのヘッド部を口にくわえたまま歩き回りがちなことが知られている。こうした使用者が障害物などにつまずいて倒れる時は、歯ブラシのハンドル部が床や地面にぶつかり易い。そのため、3歳前後の幼児のための歯ブラシは、前記のような転倒時でも、前記ヘッド部が使用者の喉を突いて傷つけてしまわないような構造でなければならない。
【0009】
前記従来の歯ブラシを幼児が使用するとき、前記回転軸は前記幼児の口腔の外に位置する。そのためこの歯ブラシは、前記幼児がヘッド部を口にくわえたまま転倒し、前記幼児の口腔内に前記ヘッド部が変形しないままに残る状態でハンドル部が前記ヘッド部を押す。
【0010】
そのため、前記従来の歯ブラシにおいては、前記幼児の転倒時に前記ハンドル部によって押された先端が前記幼児の喉を直撃する虞が大きい。このように、従来の歯ブラシによっては、転倒による幼児の喉突き事故の軽減が容易ではない。
【0011】
本発明はこのような問題に鑑み、転倒による幼児の喉突き事故を容易に低減することが可能な歯ブラシの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は幼児が口にくわえるヘッド部を長手方向の先端側に有し、かつ、柱状のハンドル部を基端側に有する幼児用歯ブラシであって、前記ヘッド部とハンドル部との中間に緩衝部が設けられ、該緩衝部は、前記ヘッド部が刷毛の植毛される植毛面と直交する方向に変位するように折れ曲がるとともに、前記基端側から前記ヘッド部に向けて作用する衝撃力を緩衝することを特徴とする幼児用歯ブラシを提供するものである。
【0013】
すなわち、本発明の幼児用歯ブラシは、ヘッド部をくわえた幼児が転倒して前記基端側から衝撃力を受ける際に、前記ヘッド部と前記ハンドル部との中間が折れ曲がる。そのため、幼児用歯ブラシは口腔内で折れ曲がることにより、前記衝撃力を口腔内で緩衝し、前記幼児の喉まで直接に伝えることがない。
【0014】
このように衝撃力が直接に伝わらないため、転倒により、幼児が幼児用歯ブラシの先端によって喉を傷つけてしまう虞は少ない。
【0015】
その一方で、前記緩衝部が刷毛の植毛される植毛面と直交する方向に折れ曲がるため、幼児が通常に歯を磨くときの力は、前記植毛面の面方向に分散しない。
【0016】
また、前記ヘッド部が、前記ハンドル部に対して、前記植毛面の裏向きに曲がらないように制止する制止手段を有してもよい。
【0017】
幼児用歯ブラシは、幼児が自分で歯磨きを行った後に、大人がこの幼児の磨き足りない部分を磨くような仕上げ磨きを行うことがある。また、最初から大人が幼児の歯を磨くこともある。
【0018】
そこで、前記幼児又は前記大人(以下、幼児用歯ブラシを使用する幼児及び大人を総称して「使用者」という。)が前記刷毛によって歯を強く擦るときでも、前記緩衝部は、このときの歯を擦る力によって前記裏向きに折れ曲がることがない。そのため使用者は、手指に力を入れて歯を擦るときでも、そのまま歯磨きを続けることができる。このように、幼児用歯ブラシによっては、歯磨きを中断させることなく、かつ、喉を傷つけてしまう虞が少ない。
【0019】
さらに、前記ヘッド部が変位する場合に、前記ヘッド部を元の位置に復原するように付勢する付勢手段を有してもよい。
【0020】
すなわち、前記幼児が前記先端を口腔内の部位にぶつけるとき、幼児用歯ブラシは、前記緩衝部がいったん折れ曲がった後に、前記ヘッド部を元の位置に復原することができる。そのため前記幼児は、転倒しないまでも前記先端を口腔内の部位にぶつけるときに、前記ヘッド部の位置を手指などによって戻すことをせず、そのまま歯磨きを続けることができる。このように、幼児用歯ブラシによっては、歯磨きを中断させることなく、かつ、喉を傷つけてしまう虞が少ない。
【0021】
本発明は幼児が口にくわえるヘッド部を長手方向の先端側に有し、かつ、柱状のハンドル部を基端側に有する幼児用歯ブラシであって、前記ヘッド部とハンドル部との中間に緩衝部が設けられ、前記緩衝部は、前記ハンドル部の中心軸線と直交する回転中心線を有し、前記ヘッド部は、前記ハンドル部に対し前記回転中心線周りを回転可能であることを特徴とする幼児用歯ブラシを提供するものである。また、幼児が口にくわえるヘッド部を長手方向の先端側に有し、かつ、柱状のハンドル部を基端側に有する幼児用歯ブラシであって、前記ヘッド部と前記ハンドル部との中間に緩衝部が設けられ、前記ヘッド部の前記緩衝部側端と、前記ハンドル部の前記緩衝部側端とを一体に覆う弾性体を備え、前記緩衝部は、前記ハンドル部の中心軸線と直交する回転中心線を有し、前記ヘッド部は、前記長手方向の基端向きに突出し且つ前記ハンドル部の一部と重なり合って前記緩衝部を部分的に構成する回転板部を有するとともに、前記ハンドル部に対し前記回転中心線周りを回転可能であり、前記ヘッド部の先端から前記緩衝部の最基端側端である前記回転板部の基端側端までの長さであるヘッド長さは27mm以上、かつ、37mm未満であり、前記弾性体は、前記各緩衝部側端を前記中心軸線の径方向の内向きに締め付けることにより前記ヘッド部及び前記ハンドル部に固定されるとともに、前記ヘッド部の回転により変形し、該変形状態において弾性により前記ヘッド部を前記回転の反対向きに付勢してもよい。
【0022】
すなわち、本発明の幼児用歯ブラシは、前記緩衝部における回転中心線の周りを前記ハンドル部が回転するため、前記幼児の転倒によって前記ハンドル部が衝撃力を受けるときでも、前記先端が前記幼児の喉を突くことを避けることが可能である。
【0023】
また、前記緩衝部は、前記先端から50mm以内の位置に配置されてもよい。
【0024】
国内において、歯ブラシによる喉突き事故の多くを3歳前後の幼児が起こし、また、3歳児の口腔内における上顎切歯部から最深部までの長さが52mm程度であることが知られている。そこで、前記緩衝部が前記先端から50mm以内の位置に配置されていることにより、転倒時に前記先端が幼児の喉の奥に達する場合に、前記緩衝部は前記幼児の口腔内で折れ曲がる。
【0025】
すなわち、幼児用歯ブラシは、使用する前記幼児の口腔内で前記緩衝部が折れ曲がるため、折れ曲がった先の前記ヘッド部の全体が幼児の口腔内に位置する。そのため、前記ハンドル部が口腔の外から押されるときでも、幼児用歯ブラシは口腔内で折れ曲がるため、口腔外から伝わった衝撃力を口腔内で緩衝し、前記幼児の喉まで直接に伝えることがない。
【0026】
また、前記ヘッド部と一体に回転する第1の当接部材が設けられ、前記ハンドル部側で、前記第1の当接部材の回転円上に固定される第2の当接部材が設けられ、該第2の当接部材は前記第1の当接部材と当接し、前記ハンドル部の、刷毛の植毛される植毛面の裏向きの回転を制止してもよい。さらに、幼児が口にくわえるヘッド部を長手方向の先端側に有し、かつ、柱状のハンドル部を基端側に有する幼児用歯ブラシであって、前記ヘッド部と前記ハンドル部との中間に緩衝部が設けられ、前記ヘッド部の前記緩衝部側端と、前記ハンドル部の前記緩衝部側端とを一体に覆う弾性体を備え、前記緩衝部は、前記先端から50mm以内の位置に配置されるとともに前記ハンドル部の中心軸線と直交する回転中心線を有し、前記ヘッド部は、前記ハンドル部に対し前記回転中心線周りを回転可能であるとともに、前記基端向きに突出し且つ前記ヘッド部と一体に回転する第1の当接部材が設けられ、前記ハンドル部は、前記ハンドル部側で、前記第1の当接部材の回転円上に固定される第2の当接部材が設けられ、該第2の当接部材が前記第1の当接部材と当接し、前記ハンドル部の、刷毛の植毛される植毛面の裏向きの回転を制止し、前記ヘッド部の先端から前記緩衝部の最基端側端である前記第1の当接部材の基端側端までの長さであるヘッド長さは27mm以上、かつ、37mm未満であり、前記弾性体は、前記各緩衝部側端を前記中心軸線の径方向の内向きに締め付けることにより前記ヘッド部及び前記ハンドル部に固定されるとともに、前記ヘッド部の回転により変形し、該変形状態において弾性により前記ヘッド部を前記回転の反対向きに付勢してもよい。
【0027】
すなわち、使用者が前記毛先によって歯を強く擦るときでも、前記ヘッド部は、前記各当接部材どうしの当接によって前記裏向きの回転が制止され、このときの歯を擦る力によって回転することがない。そのため前記使用者は、手指に力を入れて歯を擦るときでも、前記ヘッド部を回転させることなく、そのまま歯磨きを続けることができる。
【0028】
さらに、前記ヘッド部の前記緩衝部側端と、前記ハンドル部の前記緩衝部側端とを一体に覆う弾性体を備え、該弾性体は、前記各緩衝部側端を前記中心軸線の径方向の内向きに締め付けることにより前記ヘッド部及び前記ハンドル部に固定されるとともに、前記ヘッド部の回転により変形し、該変形状態において弾性により前記ヘッド部を前記植毛面の裏向きに付勢してもよい。
【0029】
すなわち、前記幼児が転倒しないまでも前記先端を口腔内の部位にぶつけるとき、幼児用歯ブラシは、前記緩衝部がいったん折れ曲がった後に、前記ヘッド部を元の姿勢に復原することができる。そのため前記幼児は、前記先端を口腔内の部位にぶつけた後でも、前記ヘッド部の位置を手指などによって戻すことをせずに、そのまま歯磨きを続けることができる。
【0030】
また、前記弾性体は、前記ヘッド部、前記ハンドル部又は前記ヘッド部及び前記ハンドル部と共に一体に金型成形されてもよい。
【0031】
すなわち、前記弾性体を成形後に、前記ヘッド部及び前記ハンドル部のそれぞれに固定するステップを省くことができるため、製造に係る工程を短くすることが可能となる。
【0032】
また、前記緩衝部は、前記ヘッド部及び前記ハンドル部のうちの一方が前記回転中心線上の支軸を有し、前記ヘッド部は前記支軸を介して前記ハンドル部に軸着されてもよい。
【0033】
すなわち、前記ヘッド部が前記ハンドル部に軸着される構造のため、幼児用歯ブラシは、前記ヘッド部と前記ハンドル部とを別々に製作した上で、これらを組立てて得ることができる。そのため、前記ヘッド部と前記ハンドル部との材質や色を異なるものとすることができる。
【0034】
一方で、前記緩衝部は、前記回転中心線周りに折れ曲がることのできるヒンジ部を有し、前記ヘッド部及び前記ハンドル部は前記ヒンジ部と共に一体に成形され、前記ヘッド部は前記ヒンジ部の弾性変形を伴って回転してもよい。
【0035】
すなわち、前記ヘッド部、前記ハンドル部及び前記ヒンジ部が一体に成形されるため、これらを一度に製作することができる。その結果、製造に係る工程を短くすることができる。
【発明の効果】
【0036】
このように本発明の幼児用歯ブラシでは、転倒による幼児の喉突き事故を容易に低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】(a)本発明の第1の実施形態を示す幼児用歯ブラシの正面図である。(b)同じく幼児用歯ブラシの緩衝部が折れ曲がった状態を示す正面図である。
【
図2】(a)本発明の第1の実施形態を示す幼児用歯ブラシの平面図である。(b)同じく幼児用歯ブラシの底面図である。
【
図3】(a)本発明の第1の実施形態を示す幼児用歯ブラシの緩衝部近傍を拡大した正面図である。(b)同じく幼児用歯ブラシの緩衝部が折れ曲がった状態における緩衝部近傍を拡大した正面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態を示す幼児用歯ブラシの緩衝部近傍を拡大した底面図である。
【
図5】(a)本発明の第1の実施形態を示す幼児用歯ブラシの説明図である。(b)幼児の口腔の状態を示す説明図である。
【
図6】(a)本発明の第2の実施形態を示す幼児用歯ブラシの正面図である。(b)同じく幼児用歯ブラシのヘッド部及び緩衝部の正面断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態を示す幼児用歯ブラシの緩衝部が折れ曲がった状態におけるヘッド部及び緩衝部の正面断面図である。
【
図8】(a)本発明の第3の実施形態を示す幼児用歯ブラシの正面断面図である。(b)同じく幼児用歯ブラシの緩衝部が折れ曲がった状態を示す正面断面図である。
【
図9】(a)本発明の第3の実施形態を示す幼児用歯ブラシの平面図である。(b)同じく幼児用歯ブラシの底面図である。
【
図10】(a)本発明の第3の実施形態を示す幼児用歯ブラシの緩衝部近傍を拡大した正面断面図である。(b)同じく幼児用歯ブラシの緩衝部が折れ曲がった状態における緩衝部近傍を拡大した正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1~
図5は本発明の第1の実施形態を例示している。図において1が幼児用歯ブラシであり、符号Lを付した矢印は、この幼児用歯ブラシ1の長手方向を表わす。
【0039】
幼児用歯ブラシ1は、
図1(a)(b)及び
図2(a)(b)が示すように、図示しない幼児Cが口にくわえるヘッド部2を長手方向Lの先端3側に有し、かつ、柱状のハンドル部4を基端5側に有する。また、幼児用歯ブラシ1には、ヘッド部2とハンドル部4との中間に緩衝部6が設けられる。ヘッド部2の長手方向Lの中心軸線と、ハンドル部4の長手方向Lの中心軸線とは、いずれも幼児用歯ブラシ1の長手方向Lの中心軸線Caと略一致する。
【0040】
幼児用歯ブラシ1は、幼児Cが歯磨きのために手指でハンドル部4を把持し、ヘッド部2が幼児Cの口腔M内に挿入される。また、幼児Cが自分で歯磨きを行った後に、図示しない大人Aが、幼児用歯ブラシ1を用いて幼児Cの磨き足りない部分を磨くような「仕上げ磨き」を行うこともある。こういった仕上げ磨きに際しては、大人Aが手指でハンドル部4を把持し、ヘッド部2を幼児Cの口腔M内に挿入する。あるいは、最初から大人Aが幼児用歯ブラシ1を用いて幼児Cの歯を磨く場合も同様である。
【0041】
ヘッド部2は、ポリプロピレン、ポリスチレン等の汎用樹脂又は飽和ポリエステル樹脂等のエンジニアリングプラスチックの成形品であり、緩衝部6から先端3にかけて長手方向Lに延設される。先端3側には、束ねられたフィラメント状の刷毛7が植毛面2aに植毛されている。幼児C又は大人Aである使用者A,C(以下、幼児用歯ブラシ1を使用する幼児C及び大人Aを総称して単に「使用者A,C」という。)は、ハンドル部4を操作し、ヘッド部2を介して刷毛7を幼児Cの歯Tに押し付けて歯磨きを行う。
【0042】
植毛面2aと直交する方向における植毛面2aの表向きを図中の符号Fを付した矢印が表し、同じく裏向きを図中の符号Bを付した矢印が表す。
【0043】
ヘッド部2は、植毛面2aよりも長手方向Lの基端5側の部分において、
図3(a)が示す正面視の高さH1と
図4が示す底面視の幅W1とを有する。また、ヘッド部2は、長手方向Lの基端5向きに突出するとともに、H1よりも低い高さH2と、W1よりも狭い幅W2とを有する回転板部2bを有する。
図4の底面視において、回転板部2bの幅方向の中心線は中心軸線Caと一致する。また、回転板部2bは、
図3(a)(b)が示すような裏向きBに面する制止面2dを有する。
【0044】
さらに、ヘッド部2は、回転板部2bから
図4の上下方向のそれぞれに突出する一対の回転軸部2c,2cを有する。各回転軸部2c,2cは、中心軸線Caと直交する回転軸線Cbを中心線とする円柱状を形成する。
【0045】
ハンドル部4は、ポリプロピレン、ポリスチレン等の汎用樹脂又は飽和ポリエステル樹脂等のエンジニアリングプラスチックの成形品であり、緩衝部6から基端5にかけて長手方向Lに延設される。
図1(a)(b)及び
図2(a)(b)が示すように、長手方向Lの緩衝部6寄りに、中心軸線Caから離れる向きへ膨出する膨出部4aを有する。使用者A,Cは、ハンドル部4を手指によって把持する際、膨出部4aに手指の一部を引っ掛けることができる。
【0046】
また、ハンドル部4は、ヘッド部2が回転する前の
図3(a)の状態において回転板部2bの裏向きB側に位置するように長手方向Lの先端3向きに延びるように形成されるストッパー部4bを有する。さらに、
図4の底面視において、長手方向Lの先端3向きに開口するコ字状のブラケット部4cを有する。ブラケット部4cは、ストッパー部4bから
図3(a)(b)の下向きに突出するように形成される。ストッパー部4bは、
図3(a)(b)の下向きに面する制止面4dを有する。
【0047】
ブラケット部4cは、
図4の上下方向に相対する一対の支持板を有する。該各一対の支持板には、それぞれ
図4の上下方向の貫通孔4eが貫通する。各貫通孔4eは、円形の横断面を有する。また、ブラケット部4cは、
図3が示す正面視の高さH3と
図4が示す底面視の幅W3とを有する。底面視において、ブラケット部4cの幅方向の中心線は中心軸線Caと一致する。
【0048】
図3(a)に示すブラケット部4cの高さH3は、回転板部2bの高さH2よりも若干大きい。また、ブラケット部4cの前記一対の支持版は、
図4が示す幅W4の間隔を空けて配置される。このとき、前記間隔の幅W4は回転板部2bの厚さを示す幅W2よりも若干大きい。
【0049】
ブラケット部4cには、各貫通孔4e,4eに各回転軸部2c,2cが遊嵌するように回転板部2bが装着される。このとき、回転板部2bとストッパー部4bとは、互いの制止面2d,4dどうしが相対して当接するように配置される。また、各貫通孔4e,4eの中心軸線は、各回転軸部2c,2cの回転軸線Cbと一致する。
【0050】
各貫通孔4e,4eの断面と各回転軸部2c,2cの断面とが共に円形のため、ヘッド部2は、ハンドル部4に対して回転軸線Cb周りを回転することができる。
図3(b)は、
図3(a)の状態からヘッド部2が回転軸線Cb周りを表向きFに回転した後の状態を示す。
【0051】
しかし、
図3(a)又は
図3(b)の状態からヘッド部2を裏向きBに回転させようとする力が加わるときでも、各制止面2d,4dにおいて、ハンドル部4のストッパー部4bがヘッド部2の回転板部2bに当接することにより、ヘッド部2は、
図3(a)の状態よりも裏向きBに回転することが制止される。その結果、ヘッド部2は
図1(b)が示すように表向きFにのみ回転することができる。
【0052】
例えば幼児用歯ブラシ1は、
図3(a)の状態からヘッド部2が回転軸線Cb周りを裏向きBに回転し始めた後、ヘッド部2の回転面におけるヘッド部2とハンドル部4との交差角度θ1が0となった時に
図3(a)の状態に至る。
【0053】
このときヘッド部2の回転に伴い、回転板部2bの制止面2dは
図3(a)(b)の回転円Tに沿った軌跡を描きながら次第にストッパー部4bの制止面4dに近付き、最終的にストッパー部4bの制止面4dに当接する。これによって、ヘッド部2は
図3(a)の状態よりも裏向きBに回転することができない。
【0054】
なお、本実施形態において第1の当接部とは、制止面2dを有する回転板部2bの別称である。また、第2の当接部とは、制止面4dを有するストッパー部4bの別称である。
【0055】
また、本実施形態において緩衝部6とは、上で述べたように各回転軸部2c,2cが各貫通孔4e,4eに遊嵌する状態において、回転板部2bとブラケット部4cとの組み合わせを称するために用いる名称である。
【0056】
刷毛7は、一本一本の毛先が表向きFを向くように植毛されている。
【0057】
以上のように、回転軸部2cとブラケット部4cとが組み合わされた緩衝部6は、
図1(b)が示すように、ヘッド部2が表向きFに変位するように回転軸線Cbを中心に折れ曲がる。
【0058】
また、回転板部2bが回転軸線Cb周りを回転し、
図3(a)(b)に示す回転板部2b(第1の当接部材)の制止面2dの回転円T上にストッパー部4b(第2の当接部材)の制止面4dが位置するとともに、各制止面2d,4dが互いに向き合って当接するため、ストッパー部4bは、回転板部2bを表向きFに制止する。このように、幼児用歯ブラシ1においては、ヘッド部2が裏向きBに曲がらないように制止される。
【0059】
なお、緩衝部6においては、上で述べたようなブラケット部4cを貫通孔4eが貫通する構造に限られず、ブラケット部4cが回転軸線Cb周りを回転可能なように回転板部2bを軸支すればよく、例えば、貫通しない凹部に回転軸部2cの先端が係着していてもよい。
【0060】
また、ヘッド部2が回転板部2bを有し、かつ、ハンドル部4がブラケット部4cを有する構造に限られず、ヘッド部2がハンドル部4に対して回転軸線Cb周りを回転可能なように軸着されていればよく、例えば、ヘッド部2がブラケット部を有し、ハンドル部4が回転板部を有していてもよい。このとき、緩衝部6とはヘッド部2側のブラケット部と、ハンドル4側の回転板部とを総称する。
【0061】
さらに、ハンドル部4が先端3向きのストッパー部4bを有する構造に限られず、ヘッド部2側の第1の当接部材とハンドル部4側の第2の当接部材とが、第1の当接部材の回転円上において当接することによりハンドル部2の裏向きBの回転を制止すればよく、例えば、ヘッド部2側から基端5向き突出する凸状部(第1の当接部材)が、ハンドル4側の凹状部(第2の当接部材)に当接可能な構造でもよい。
【0062】
図5(a)は、幼児用歯ブラシ1の長手方向Lにおける全長をL1と表し、先端3から緩衝部6の基端5側端までのヘッド長さをL2と表すことを示す。また、緩衝部6が回転軸線Cbを中心に折れ曲がり、ヘッド部2が表向きFに変位する様子を示す。
【0063】
また、
図5(b)は、平成14年3月に社団法人日本家族計画協会が発表した「乳幼児の事故に関する調査報告 乳幼児の口腔容積調査報告」(以下、単に「調査報告」という。)から引用した図であり、幼児Cの口腔M内における上顎切歯部Maの位置と、最深部Mbとの位置を示す。調査報告は、口腔Mの深さDを上顎切歯部Maと最深部Mbとの距離によって示し、この深さDが、シミュレーションの結果、3歳児の平均が52.1mmであることを示している。
【0064】
ところで、幼児用歯ブラシ1は、ヘッド長さL2が50mmよりも短く設定されている。そのため、口腔Mの深さDが52.1mmの幼児Cが幼児用歯ブラシ1のヘッド部2を口腔M内でくわえたまま転倒し、ハンドル部4が床や地面から押されることによって先端3が幼児Cの喉の奥に達するとき、緩衝部6は口腔M内に位置し、かつ、ヘッド部2が回転軸線Cbを中心に回転するように口腔M内で折れ曲がることによって床や地面からの衝撃を緩衝する。
【0065】
これにより、一部が口腔Mの外に位置するハンドル部4から伝わる衝撃力は、口腔M内で緩衝されて幼児Cの喉に直接に伝わることがない。そのため、幼児用歯ブラシ1によっては、先端3が幼児Cの喉を傷つける虞が小さい。
【0066】
また、ヘッド長さL2が27mm以上、かつ、37mm未満に設定されていてもよい。幼児用歯ブラシ1では、一般に全長L1が125mm前後のため、ヘッド長さL2が27mm~37mmの範囲内であることによって、ヘッド部2とハンドル部4との長手方向Lにおける長さの割合を、幼児Cが歯磨きをし易い割合に収めることができる。その結果、幼児用歯ブラシ1は、幼児Cがハンドル部4を手指で把持し易く、不自然な持ち方による事故を低減することを可能とする。
【0067】
さらに、ヘッド部2は表向きFにのみ回転することができる。そのため、幼児用歯ブラシ1によっては、使用者A,Cが手指に力を入れて歯を擦るときでも、ヘッド部2が裏向きBに回転しまうことがなく、歯磨きを中断することなく続けることができる。
【0068】
すなわち、刷毛7は、毛先が表向きFを向くように植毛面2aに植毛されるため、歯に当たるときに裏向きBの反力を生じさせる。そのため、刷毛7を介してヘッド部2がこの反力を裏向きBに受けるときでも、ヘッド部2が裏向きBに回転しないため、使用者A,Cは前記反力に抗ってハンドル部4からの力を加え続けることができる。
【0069】
図6(a)(b)及び
図7においては、本発明の第2の実施形態を例示し、11が幼児用歯ブラシである。幼児用歯ブラシ11は、緩衝部16が折れ曲がり、ヘッド部12が表向きFに変位した後に、ヘッド部12を元の位置に復原するように付勢する付勢手段を有する。
【0070】
ヘッド部12は、緩衝部16側端に、
図6(b)が示すような長手方向Lにおいて先端13に近付くほど縮径するとともに、中心軸線が幼児用歯ブラシ11の中心軸線Caと略一致する円錐台形状の締付部12eを有する。また、ハンドル部14は、緩衝部16側端に、中心軸線が幼児用歯ブラシ11の中心軸線Caと略一致する円柱形状の締付部14fを有する。
【0071】
各締付部12e,14fは、中心軸線が幼児用歯ブラシ11の中心軸線Caと略一致する円筒形状の弾性体18によって覆われる。弾性体部18はゴムの成形品であり、周方向W及び長手方向Lを含む何れの方向にも弾性変形可能である。なお、他の構成は第1の実施形態と共通する。
【0072】
弾性体部18は、先端13側の内壁18aと基端15側の内壁18bとが、それぞれ、ヘッド部12における締付部12eの周面及びハンドル部14における締付部14fの周面よりも径小となるように形成される。その上で、各締付部12e,14fは、それぞれに対応する内壁18a,18bを中心軸線Ca側から径外方向へ押し広げつつ弾性体部18の内側に嵌入される。その結果、弾性体部18は周方向Wに弾性変形して、各内壁18a,18bが対応する前記各周面を径方向の内向きに締め付け、ヘッド部12及びハンドル部14に固定される。
【0073】
このとき、回転板部2bは弾性体部18の内側でブラケット部14cに装着される。
【0074】
図7は、緩衝部16が折れ曲がり、ヘッド部12が回転軸線Cb周りを表向きFに回転し、図の下向きに変位した状態を示す。この回転により、弾性体部18の裏向きBに位置する周壁である裏側周壁18cは、各締付部12e,14fによって長手方向Lに引っ張られて弾性変形する。
【0075】
そのため、緩衝部16が折れ曲がった後に、弾性体部18は元の形状に復原しようとして、裏側周壁18cが各締付部12e,14fのそれぞれの裏向きB側部分を互いに近付ける向きに引っ張ることによって、ハンドル部12を裏向きBに付勢する。
【0076】
これにより、幼児Cが転倒しないまでも、歯磨き中に幼児用歯ブラシ11の先端13を歯や上顎のような口腔M内の部位にぶつけるとき、緩衝部16は、いったん折れ曲がった後に元の姿勢に復原することができる。そのため使用者A,Cは、先端13をぶつけた時でも、ヘッド部12の位置を手指などによって都度戻すことをせずにそのまま歯磨きを続けることができる。
【0077】
なお、ヘッド部12の締付部12eは円錐台形状に限られることなく、弾性体部18の先端13側の内壁18aが密着する形状であればよく、例えば角錐台状や柱状でもよい。また、ハンドル部14の締付部14fは円柱状に限られることなく、弾性体18の基端15側の内壁18bが密着する形状であればよく、例えば角柱状や錐台状でもよい。
【0078】
さらに、弾性体部18は円筒形状に限られることなく、内壁18a,18bが各締付部12e,14fの周面に密着する形状であればよく、例えば角筒状でもよい。また、弾性体部18の材質はゴムに限られることなく、周方向W及び長手方向Lの両方に弾性変形可能であればよく、例えば合成樹脂でもよい。
【0079】
図6(a)(b)及び
図7を用いて、第2の実施形態における変形例を説明する。
【0080】
変形例において、弾性体部18は、予めヘッド部12及びハンドル部14と別々に成形された上でその内側に各締付部12e,14fが嵌入されるのではなく、ヘッド部12及びハンドル部14と共に2色成形によって成形される。すなわち、インジェクション成形の金型内に、回転板部2bがブラケット部14cに装着された状態のヘッド部12及びハンドル部14を挿入し、これらのヘッド部12及びハンドル部14の周りに合成樹脂などの弾性材料を注入して、ヘッド部12及びハンドル部14と一体に金型成形する。なお、他の構成は、上で述べた第2の実施形態の例と共通する。
【0081】
変形例における弾性体部18の形状は、ヘッド部12及びハンドル部14と別々に成形される場合と同様である。すなわち、弾性体部18は筒状であり、内壁18a,18bが各締付部12e,14fの周面に密着する形状である。
【0082】
また、変形例における弾性体部18は、周方向W及び長手方向Lを含む何れの方向にも弾性変形可能である。そして、2色成形により周方向Wに引っ張られて成形されるため、収縮力によって各内壁18a,18bが前記各周面を径方向の内向きに締め付け、ヘッド部12及びハンドル部14に固定される。
【0083】
この2色成形によって、前記のようにハンドル部14にヘッド部12を弾性体部18の内側で装着するのではなく、予め装着した上でこれらを弾性体部18によって覆うことができる。また、ヘッド部12及びハンドル部14と弾性体部18との固定を、弾性体部18の成形と同時に行うことができる。これらにより、製造に係る工程を短くすることが可能になる。
【0084】
変形例における裏側周壁18cは、ヘッド部12が回転する場合に各締付部12e,14fによって長手方向Lに引っ張られて弾性変形する。これらにより、変形例において弾性体部18は、ヘッド部12及びハンドル部14と別々に成形される場合と同様に、ハンドル部12を裏向きBに付勢する。
【0085】
図8(a)(b)、
図9(a)(b)及び
図10(a)(b)において、本発明の第3の実施形態を例示する。各図において21が幼児用歯ブラシであり、幼児用歯ブラシ21は、ヘッド部22及びハンドル部24に挟まれる位置に緩衝部26を有する。ヘッド部22と緩衝部26との境界と、ハンドル部24と緩衝部26との境界をそれぞれ仮想線で表す。
【0086】
緩衝部26は、ヘッド部22とハンドル部24とに挟まれた直方体形状のヒンジ部26aにより構成される。ヒンジ部26aは、
図8(a)(b)及び
図10(a)(b)が示すように表向きFに開口し、正面視において逆V字状のV字溝26bを有する。また、ヒンジ部26aはV字溝26bの最深部の裏向きBの側に、これらの図の上下方向に括れたネック領域26cを有する。さらにヒンジ部26aは、ネック領域26cを、平面視及び底面視を示す
図9(a)(b)において図の上下方向に通過する回転軸線Cbを有する。
【0087】
ヒンジ部26aは、ヘッド部22及びハンドル部24と共に一体に成形されるポリプロピレン、飽和ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂の成形品である。ヒンジ部26aはネック領域26cにおいて括れているため、回転軸線Cbを中心に容易に折れ曲がって弾性変形することができる。
【0088】
ヒンジ部26aは、ネック領域26cから突出するストッパー部26dを有する。ストッパー部26dは、ヘッド部22が回転していない状態において、
図8(a)及び
図10(a)が示すようにネック領域26cから長手方向Lの基端25側へ延びるように設けられる。ストッパー部26dは、
図10(a)(b)が示すような、表向きFに面する第1の制止面26eを有する。
【0089】
ヒンジ部26aは、ネック領域26cよりも基端25側において、裏向きBに面する第2の制止面26fを有する。
図10(a)のようにヘッド部22が回転していない状態において、各制止面26e,26fは向き合って当接している。V字溝26b、第2の制止面26f及び底面によって挟まれる略五角柱状の部分を、ハンドル側領域26gと呼ぶ。また、 ヘッド部22側の略三角柱状の部分をヘッド側領域26hと呼ぶ。緩衝部26の先端23側端にヘッド側領域26hが位置し、同じく基端25側端にハンドル側領域26gが位置する。なお、他の構成は第2の実施形態と共通する。
【0090】
ヘッド部22は、ヒンジ部26aのネック領域26cが弾性変形により折れ曲がり、
図8(b)及び
図10(b)が示すように、回転軸線Cb周りを表向きFに回転することができる。
【0091】
ヘッド部22を裏向きBに回転させようとする力が加わるときでも、制止面26e,26fどうしが当接し、ストッパー部26dは、ヘッド部22の裏向きBの回転を制止する。
【0092】
例えば、
図10(b)の状態からヘッド部22が裏向きBに回転を始めると、第1の制止面26eは、回転軸線Cbを中心とする回転円Tに沿って第2の制止面26fに近付く。そして、それぞれの制止面26e,26f間の二面角θ2が0となって
図10(a)の状態に至った時、これらの制止面26e,26fどうしは当接する。そのため、ヘッド部222はこれ以上裏向きBに回転することができない。
【0093】
なお、本実施形態において第1の当接部材とは、第1の制止面26eを有するストッパー部26dの別称である。また、第2の当接部材とは、第2の制止面26fを有するハンドル側領域26gの別称である。
【0094】
弾性体部28は、周方向W及び長手方向Lを含む何れの方向にも弾性変形可能である。弾性体部28は、ヘッド部22、ハンドル部24及び緩衝部26と共に2色成形によって成形される。また、
図10(a)が示す通り弾性体部28は筒状であり、ヘッド部22側の内壁28aがヘッド部22の締付部22eの周面に密着し、かつ、ハンドル部24側の内壁28bがハンドル部24の締付部24fの周面に密着する。
【0095】
弾性体部28は、2色成形により周方向Wに引っ張られて成形されるため、収縮力によって各内壁28a,28bが前記各周面を径方向の内向きに締め付け、ヘッド部22及びハンドル部24に固定される。弾性体部28の裏向きBに位置する周壁である裏側周壁28cは、前記の各締付箇所によって長手方向Lに引っ張られて弾性変形する。
【0096】
そのため、
図10(b)が示す様にネック領域26cが折れ曲がった後に、弾性体部28は元の形状に復原しようとして、裏側周壁28cがハンドル部22を裏向きBに付勢する。
【0097】
幼児用歯ブラシ21は、ヘッド部22、ハンドル部24及び緩衝部26が一体に成形されるため、これらを一回で成形することができる。その上、弾性体部28を2色成形により一度に一体化することができる。これらにより、ヘッド部22、ハンドル部24及び弾性体部28を別個に成形すること及びこれらを組み立てることの必要がないため、幼児用歯ブラシ21の製造に要する工程を短くすることができる。
【0098】
なお、ヒンジ部26aの形状は、表向きFに開口し、回転軸線Cbを中心に折れ曲がるネック領域26cを有し、かつ、ネック領域26cから突出するストッパー部26dを有していれば、直方体形状に限られず、例えば、長手方向Lに中心線を有する円柱形状や、三角柱形状、三角柱又は直方体以外の角柱形状、錐台形状等でもよい。
【0099】
また、ヒンジ部26aの表向きFの開口は逆V字状に限られない。この開口部分において、ハンドル部22が
図8(b)及び
図10(b)のように折れ曲がるために必要な空間を確保できれば、例えば逆U字状、半円状などでもよい。
【0100】
さらに、ストッパー部26dはネック領域26cから長手方向Lの基端25側へ延びる構造に限られない。例えば、ネック領域26cから先端23側へ延び、ヒンジ部26aのヘッド側領域26hに当接するような構成でもよい。このとき、第1の当接部材とはヘッド側領域26hの別称であり、また、第2の当接部材とは先端23側へ延びるストッパー部の別称である。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0102】
例えば、ヘッド部2,12,22が回転しない状態において、ヘッド部2,12,22の中心軸線と、ハンドル部4,14,24の中心軸線とが幼児用歯ブラシ1,11,21の中心軸線Caと略一致する必要はなく、緩衝部6,16,26を中心にヘッド部2,12,22が表向きFに回転する構造であれば、予めヘッド部2,12,22の中心軸線が中心軸線Caに対して傾いていてもよい。
【0103】
また、ハンドル部4,14,24は、使用者A,Cが手指によって容易に把持することのできる長さと太さとを有していれば、膨出部4a,14a,24aを有してなくともよい。
【0104】
さらに、弾性体部18,28は、裏側周壁18c,28cが引っ張られることによってハンドル部12,22を裏向きBに付勢する構造であれば、各図のようにハンドル部14,24側端が膨出部14a,24aの手前に位置するものに限られず、例えば、ハンドル部14,24の略全体を覆うほどの長さを有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、衝撃力を緩衝可能な幼児用歯ブラシに利用できる。
【符号の説明】
【0106】
1,11,21 幼児用歯ブラシ
2,12,22 ヘッド部
2b,12b 回転板部
2c,12c 回転軸部
3,13,23 先端
4,14,24 ハンドル部
4a,14a,24a 膨出部
4c,14c ブラケット部
5,15,25 基端
6,16,26 緩衝部
26a ヒンジ部
7,17,27 刷毛
18,28 弾性体部