(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】横引き収納式スクリーン装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/54 20060101AFI20220513BHJP
E06B 9/58 20060101ALI20220513BHJP
E06B 9/52 20060101ALI20220513BHJP
E06B 9/02 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
E06B9/54
E06B9/58 A
E06B9/52 H
E06B9/02 F
(21)【出願番号】P 2018220256
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390020101
【氏名又は名称】セイキ住工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】守谷 将人
(72)【発明者】
【氏名】澤口 直人
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-141250(JP,A)
【文献】実開昭60-004197(JP,U)
【文献】特表2013-506592(JP,A)
【文献】特開2017-048562(JP,A)
【文献】特開2010-281099(JP,A)
【文献】特開2010-070977(JP,A)
【文献】特開2012-041801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/02
9/08
9/40 - 9/50
9/52 - 9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンを横引きで巻き取り可能にした巻取軸を備え、該スクリーンの上下両側端に沿って、可撓性の帯状体の一側に多数の係合子を列設したファスナー状部材を、その係合子を列設した一側をそれぞれ外側に向けて取り付け、該係合子をスクリーン枠における上下枠に保持させたインナーレールのスリットに摺動自在に係合させて、該スクリーンの上下端を、上記スクリーン枠に保持させると共に該スクリーン枠の上下枠に沿って開閉操作可能にした横引き収納式スクリーン装置において、
上記ファスナー状部材における帯状体は、その曲げに対する弾性復帰力が、該帯状体と連結しているスクリーンの曲げに対する弾性復帰力よりも大きなものとして構成され、
上記スクリーン枠の上下枠におけるインナーレールのスリットの少なくとも一方を、それに係合させる上記ファスナー状部材が、相対する上下のインナーレール間を平面的に繋ぐ本来のスクリーン張設面に対して傾斜させて係合され、且つ該ファスナー状部材が該スリットによりインナーレールに対し自立するものとして保持されている、
ことを特徴とする横引き収納式スクリーン装置。
【請求項2】
請求項1に記載の横引き収納式スクリーン装置において、
上記スクリーン枠におけるインナーレールに、スリットを本来のスクリーン張設面に対して傾斜させて開設しようとする方向に対し直交するスリット開設面を設け、該スリット開設面に上記スリットを開設しようとする方向のスリットを開設することにより、上記ファスナー状部材を該スリットの開設方向に対して傾斜させて係合保持可能にしている、
ことを特徴とする横引き収納式スクリーン装置。
【請求項3】
請求項1に記載の横引き収納式スクリーン装置において、
上記スクリーン枠におけるインナーレールの任意部位に、本来のスクリーン張設面に対して傾斜させたスリットを開設することにより、上記ファスナー状部材を該スリットの開設方向に対して傾斜させて係合保持可能にしている、
ことを特徴とする横引き収納式スクリーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横引き収納式スクリーンの展張時における弛みを可及的に抑制できるようにしたスクリーン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、横引きでスクリーンを巻取軸に巻き取るようにし、しかもそのスクリーンの上下端に沿って、可撓性の帯状体の一側に多数の係合子(ムシ部)を列設したファスナー状部材を取り付け、その係合子をスクリーン枠における上下枠に保持させたインナーレールのスリットに摺動自在に係合させて、該スクリーンの上下端を保持させると共に、該スクリーンの上下端を通して虫類が浸入するのも抑制できるようにした収納式スクリーン装置は、多数の特許文献にも開示され、極めて一般的に知られている。
【0003】
しかしながら、上述したようなスクリーン装置において、スクリーンの導出端に取り付けてその開閉に供する可動框をスムーズに操作可能にするためには、スクリーンの上下端のファスナー状部材と上下枠のインナーレールとの間に引張力が作用することがなく、それらの間に余裕を持たせておくことが必要であり、しかしこの余裕をもたせると必然的にスクリーンに弛みが生じることになる。そのため、一定形状のパネル枠内にスクリーンを張設したものと比較すると、スクリーンに張りがない点で見劣りする可能性がある。
【0004】
また、特に巻取り収納式のスクリーン装置において用いるスクリーンは、それを巻き取りやすくすることが望まれることから、上記パネル枠等に張設するスクリーンよりも柔軟性が付与されたものを用いることが多く、そのため、スクリーンを設計寸法に裁断しようとしても、その裁断寸法にバラツキが生じやすく、このバラツキによるスクリーンの弛みを無くすことも考慮する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、上述したように、横引きで巻取軸に巻き取るスクリーンの上下側端に沿って多数の係合子を列設したファスナー状部材を取り付け、該係合子をスクリーン枠における上下枠内のインナーレールのスリットに摺動自在に係合させて、該スクリーンの上下端を上記スクリーン枠に保持させると共に、該スクリーン枠に沿って開閉操作可能にしたスクリーン装置において、上記ファスナー状部材及び上記インナーレールの構造等の僅かな改善のみによって、上記スクリーンの展張時における弛みを可及的に抑制できるようにしたスクリーン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明によれば、スクリーンを横引きで巻き取り可能にした巻取軸を備え、該スクリーンの上下両側端に沿って、可撓性の帯状体の一側に多数の係合子を列設したファスナー状部材を、その係合子を列設した一側をそれぞれ外側に向けて取り付け、該係合子をスクリーン枠における上下枠に保持させたインナーレールのスリットに摺動自在に係合させて、該スクリーンの上下端を、上記スクリーン枠に保持させると共に該スクリーン枠の上下枠に沿って開閉操作可能にした横引き収納式スクリーン装置において、上記ファスナー状部材における帯状体は、その曲げに対する弾性復帰力が、該帯状体と連結しているスクリーンの曲げに対する弾性復帰力よりも大きなものとして構成され、上記スクリーン枠の上下枠におけるインナーレールのスリットの少なくとも一方を、それに係合させる上記ファスナー状部材が、相対する上下のインナーレール間を平面的に繋ぐ本来のスクリーン張設面に対して傾斜させて係合され、且つ該ファスナー状部材が該スリットによりインナーレールに対し自立するものとして保持されていることを特徴とする横引き収納式スクリーン装置が提供される。
【0007】
本発明に係る横引き収納式スクリーン装置の好ましい実施形態においては、上記スクリーン枠におけるインナーレールに、スリットを本来のスクリーン張設面に対して傾斜させて開設しようとする方向に対し直交するスリット開設面を設け、該スリット開設面に上記スリットを開設しようとする方向のスリットを開設することにより、上記ファスナー状部材を該スリットの開設方向に対して傾斜させて係合保持可能にしているものとして構成される。
【0008】
また、本発明に係る横引き収納式スクリーン装置の他の好ましい実施形態においては、上記スクリーン枠におけるインナーレールの任意部位に、本来のスクリーン張設面に対して傾斜させたスリットを開設することにより、上記ファスナー状部材を該スリットの開設方向に対して傾斜させて係合保持可能にしているものとして構成される。
【0009】
上記構成を有する横引き収納式スクリーン装置においては、ファスナー状部材における帯状体の曲げに対する弾性復帰力が、該帯状体と連結しているスクリーンの曲げに対する弾性復帰力よりも大きいことを前提とし、スクリーン枠の上下枠、又は少なくともそれらの一方におけるインナーレールのスリットに係合させるファスナー状部材を、本来のスクリーン張設面に対して傾斜させて係合するものとして構成される。
【0010】
いずれにしても、ファスナー状部材を本来のスクリーン張設面に対して傾斜させ、且つ該ファスナー状部材を該スリット外においてインナーレールに沿わせることなく、自立するものとして保持するため、ファスナー状部材の帯状体の屈曲に伴う弾性復帰力により、スクリーン長に応じてスクリーンに部分的な緊張度のバラツキが生じるかも知れないが、帯状体の屈曲による緊張度の部分的な差異により裁断の誤差を吸収させて、比較的容易にスクリーンの展張時における弛みを可及的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上に詳述した本発明の横引き収納式スクリーン装置によれば、横引きで巻取軸に巻き取るスクリーンの上下側端に沿ってファスナー状部材を取り付け、その係合子をスクリーン枠における上下枠内のインナーレールのスリットに摺動自在に係合させて、該スクリーンの上下端を上記スクリーン枠に開閉操作可能に保持させるスクリーン装置において、上記ファスナー状部材及び上記インナーレールの構造等の僅かな改善のみによって、上記スクリーンの展張時における弛みを可及的に抑制できるようにしたスクリーン装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る横引き収納式スクリーン装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る横引き収納式スクリーン装置の第1実施例を示す要部縦断面図である。
【
図3】上記第1実施例においてスクリーンの縦長さが若干長い場合の変形例を示す要部断面図である。
【
図4】本発明の第1実施例において、スクリーンの上下両側端に取り付けたファスナー状部材における帯状体の曲げに対する弾性復帰力についての説明図である。
【
図5】本発明の第2実施例において用いられるインナーレールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係る横引き収納式スクリーン装置の外観を示し、また、
図2~
図4はその第1実施例の具体的構成を示している。
この横引き収納式スクリーン装置の基本的な構成は既知のもので、
図1に示すように、スクリーン枠1は、一対の縦枠2,3と上下枠4,5とを備え、その一方の縦枠2が内部にスクリーン6を巻き取るための巻取軸を備えた巻取りボックスとして構成され、他方の縦枠3が、スクリーン6の展張状態において該スクリーン6の一端に取り付けられた操作框8が当接する受け枠として構成され、また、上記上下枠4,5は、それらの一端が巻取りボックスを構成する縦枠2の上下端に連結され、それらの他端が他方の縦枠3の上下端に連結されている。上記巻取りボックス内に備えるスクリーン6の巻取機構は、巻取軸内に設けたスプリングの付勢力でスクリーン6を該巻取軸に巻取り収納するようにした既知のものである。
【0014】
上記スクリーン6は、
図2に示すように、その上下両側端に沿って、可撓性ある帯状体11の一側に多数の係合子12を列設したファスナー状部材10を、その係合子12を列設した一側をそれぞれ外側に向けて取り付け、該係合子12をスクリーン枠1における上下枠4,5内に保持させたインナーレール14のスリット15内に摺動自在に係合保持させて、該スクリーン6の上下端を、上記スクリーン枠1に保持させると共に、該スクリーン枠1の上下枠4,5に沿う摺動によって開閉操作可能にしたものである。
【0015】
上記スクリーン装置において用いられるファスナー状部材10としては、通常、被服等に多用されているファスナー状部材の半体等が利用され、具体的には、布状或いは組紐状で可撓性のある帯状体11の一側に多数の係合子(ムシ部)12が列設されたものが用いられるが、本発明においては、一般的にその帯状体11の曲げに対する弾性復帰力が、防虫網等のスクリーン6自体の曲げに対する弾性復帰力よりも大きいことに着目して、それをスクリーンの弛みの抑制に利用しようとするものである。
【0016】
また、上記帯状体11の曲げに対する弾性復帰力をスクリーン6の緊張のために利用することから、上記ファスナー状部材10をスリット15外においてインナーレール14等に沿わせてスクリーン6に直接的に引張力を付与したりすることなく、少なくとも、
図4に示すように、帯状体11を上記スリット15によりインナーレール14に対して自立するものとして保持させ、その帯状体の屈曲に伴う弾性復帰力が作用していることが必要である。
【0017】
そのために、本発明において用いる帯状体11の曲げに対する弾性復帰力が、該帯状体11と連結しているスクリーン6の曲げに対する弾性復帰力よりも大きいことが必要であるが、これは、既知のスクリーン装置において用いているファスナー状部材のものと格別相違するものではなく、しかしながら、本発明では、その弾性復帰力を以下に説明するインナーレール14に対するファスナー状部材10の係合保持構成との関連によって、スクリーン6の展張時における弛み等を可及的に抑制するのに利用できるようにしている点に大きな特徴がある。
【0018】
一方、上記スクリーン枠1の上下枠4,5内には、それぞれインナーレール14,14を配設し、該上下のインナーレール14,14における上記スクリーン6と連結可能な範囲にあるスリット開設面14aに、該スクリーン6の上下端の係合子12を摺動自在に係合させるスリット15を設け、該スリット15に対して前記ファスナー状部材10の係合子12を摺動自在に係合保持させることによって、上記スクリーン6の上下端を上記スクリーン枠1に保持させると共に、該スクリーン枠1の上下枠4,5に沿う摺動によって開閉操作可能に構成している。
【0019】
また、上記スクリーン枠1の上下枠4,5におけるインナーレール14のスリット15に係合させる上記ファスナー状部材10を本来のスクリーン張設面に対して傾斜させて係合させ、ファスナー状部材10における帯状体11の屈曲に伴う弾性復帰力を利用するためには、ファスナー状部材10をインナーレール14のスリット15に係合保持させる際に、ファスナー状部材10における帯状体11が該スリット15によりインナーレール14に対して自立するものとして保持されていることが必要である。
【0020】
上述のような横引き収納式スクリーン装置においては、通常、スクリーン枠1の上下枠4,5におけるインナーレール14が、互いに相対向する位置に配設され、それらに設けた相対向する位置のスリットに、スクリーンの両端に設けたファスナー状部材の係合子を係合させているが、本発明においては、その構成を、以下に説明する実施例のように、上下枠4,5内のインナーレール14におけるスリット15に対し、スクリーン6の上下端のファスナー状部材10を、相対する上下のインナーレールのスリット間を平面的に繋ぐ本来のスクリーン張設面に対して傾斜させて係合保持させるものとしている。
【0021】
これを更に具体的に説明すると、
図2に示す第1実施例においては、相対する上下のインナーレール14,14間を平面的に繋ぐ本来のスクリーン張設面に対して平行するところの、該インナレール14の側面をスリット開設面14aとして、そこに本来のスクリーン張設面と直交する方向に向けたスリット15を開設している。
【0022】
この場合に、そのスリット15に係合子12を係合させた帯状体11及びスクリーン6は、上下枠4,5間に平面状に張設することはできず、部分的に屈曲或いは湾曲させることになるが、予めスクリーン6自体の上下方向長さを調整し、上記ファスナー状部材10における帯状体11の曲げに対する弾性復帰力が、該帯状体11と連結しているスクリーン6を上下枠4,5間に適度の緊張状態で張設できるように設定しておけば、上記帯状体11の曲げに対する弾性復帰力を有効に利用して、スクリーン6の弛みを可及的に抑制してその張設を行うことができる。
【0023】
このようにしてスクリーン6の張設を行うと、前述した既存のスクリーン装置の製造段階における、スクリーン6を上下枠4,5間に張設するための一定長の該スクリーンの裁断に際し、スクリーン6の長さに若干の誤差やバラツキがあった場合の不都合に比して、上述した帯状体11の屈曲に伴う弾性復帰力により、スクリーン6に部分的な緊張度のバラツキが生じるかも知れないが、帯状体11の屈曲による緊張度の部分的な差異により裁断の誤差を吸収させて、比較的容易にスクリーンの展張時における弛みを可及的に抑制することができる。
図3は、
図2の状態に張設されたスクリーン6に比して、スクリーン6の縦長さが若干長い部位においてスクリーン6が帯状体11の屈曲により緩く屈曲している状態を模式的に示すものである。
【0024】
なお、上述した本発明の第1実施例では、相対する上下のインナーレール間を平面的に繋ぐ本来のスクリーン張設面に対して平行するところの、インナレール14の側面側のスリット開設面14aに、本来のスクリーン張設面と直交する方向に向けたスリット15を開設した構成を例示しているが、上記スリット開設面14aは本来のスクリーン張設面に対して任意角度に設定することができ、例えば、
図5の第2実施例におけるインナーレール24のように、傾斜したスリット開設面24aに、それと直交する方向にファスナー状部材を係合させるスリット15を開設することもできる。
【0025】
また、上記本来のスクリーン張設面に対して傾斜させたスリット15は、スクリーン枠1におけるインナーレール14の任意部位に、所期の方向に開設することにより、上記ファスナー状部材10を該スリット15の開設方向に対して傾斜させて係合保持するものとして構成することもできる。
【0026】
なお、本発明に基づくスクリーン6の弛みの抑制は、スクリーン枠1の上下の対向する枠4,5におけるインナーレール14とそれに係合させるファスナー状部材10について適用するのが望ましいが、上述したように、少なくとも上下の枠4,5の一方に適用することによっても、スクリーン6の弛みの抑制効果を期待することができるのは勿論である。
【0027】
このように、本発明に基づくスクリーンの緊張力は、ファスナー状部材10によって保持されているスクリーン6の全幅に対して均等になるわけはなく、帯状体の湾曲程度はスクリーンの幅方向に変動することになるにしても、全般的にスクリーンが引っ張られることになれば、スクリーンの弛みや皺が目立たないものになる。
【符号の説明】
【0028】
1 スクリーン枠
4,5 上下枠
6 スクリーン
10 ファスナー状部材
11 帯状体
12 係合子
14 インナーレール
14a スリット開設面
15 スリット