IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オプシチェストボ エス オグラニチェンノイ オトヴェツトヴェンノスチュ ギロバイクの特許一覧

特許7072262シングルトラック二輪車用ジャイロスタビライザー
<>
  • 特許-シングルトラック二輪車用ジャイロスタビライザー 図1
  • 特許-シングルトラック二輪車用ジャイロスタビライザー 図2
  • 特許-シングルトラック二輪車用ジャイロスタビライザー 図3A
  • 特許-シングルトラック二輪車用ジャイロスタビライザー 図3B
  • 特許-シングルトラック二輪車用ジャイロスタビライザー 図4
  • 特許-シングルトラック二輪車用ジャイロスタビライザー 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】シングルトラック二輪車用ジャイロスタビライザー
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/02 20060101AFI20220513BHJP
【FI】
G01C19/02 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019521698
(86)(22)【出願日】2017-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 RU2017000764
(87)【国際公開番号】W WO2018074949
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】2016140803
(32)【優先日】2016-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】519141988
【氏名又は名称】オプシチェストボ エス オグラニチェンノイ オトヴェツトヴェンノスチュ ギロバイク
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】クルィラトフ アレクセイ ヴァレリエヴィチ
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-082903(JP,A)
【文献】特表2013-522108(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0187641(US,A1)
【文献】特開2012-240466(JP,A)
【文献】特開2012-201254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルトラック二輪車用ジンバルにおけるジャイロスコープの形態であるジャイロスタビライザーであって、
車両フレームと連結する2方向軸スイベル継手を有し、この継手の軸が車両の長軸に沿って向けられている前記ジンバルの外側リングと、
前記外側リングと連結する2方向軸スイベル継手を有する前記ジンバルの内側リングと、
前記ジンバルの内側リングと連結する2方向軸スイベル継手を有する前記ジャイロスコープのローターシャフトと、を有し、
更に、3つのスイベル継手の全ての軸は相互に垂直であり、前記ジャイロスタビライザーは、車両フレームと連結するスイベル継手の軸まわりの前記外側リングの回転に対するロック手段を有し、
前記ジャイロスタビライザーは、後輪の振り子に位置され、前記外側リングと連結するスイベル継手の軸まわりの前記内側リングの回転に対するロック手段を有し、
各ロック手段は、サーボモータの形態からなり、少なくとも速度と許容車両傾斜角度を制御するマイクロコントローラからのコマンドによって、対応するリングの強制回転を可能にし、
追加負荷が前記ローターシャフトと連結するスイベル継手の軸上の前記内側リングに取り付けられることを特徴とする、ジャイロスタビライザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、輸送機械工業分野、特に、主にモーターサイクルであるジャイロ安定化二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
既知のジャイロスコープ安定化車両のジャイロスタビライザー(米国特許第8918239(B2)号明細書)は、単一フレームで長さ方向に取り付けられた少なくとも2つの非フリー(2自由度を有する)ジャイロスコープを含む。各ジャイロスコープはローターを有し、ローターの軸はリングに回転自在に連結され、リングはフレームに回転自在に連結されている。この二輪車の安定性は、フレームでのこれら2つの非フリージャイロスコープの回転により発生したジャイロ効果によって確保される。車両速度、ジャイロスコープローターの速度及び前輪の傾斜角度は、電子センサーにより制御される。このジャイロカーの欠点は、フレームをコーナーの内側に傾けるために、電子装置が(複数の)ジャイロスコープの回転速度を減少させ、即ち、高速コーナリングでの車両の安定性を低下させることである。
【0003】
また、初期位置でのスイベル軸が互いに平行である2つのジャイロスコープを備えた別の車両がある(独国特許出願公開第102013200020(A1)号明細書)。この場合、車両の長軸に対して垂直である軸まわりの強制回転の供給のもとで各ジャイロスコープは車両フレームに回転自在に取り付けられる。ジャイロスコープは異なる方向で回転し、ジャイロ効果は正常な状況で同等になる。専用電気モーター(サーボモータ)は、特殊アルゴリズムに従ってマイクロコントローラの信号によって回転し、その後、ジャイロ効果により、横滑り(ヨー)の場合、即ち、垂直軸まわりの車両回転が制御できない場合には、車両を安定した位置に戻し始める。この技術的解決手段は、ただ一つの課題、即ち、シングルトラック(single-track)二輪車(モーターサイクル)の十分な高速での横滑りの防止を解決することを目的とする。その他のあり得る場合、例えば、車両の傾いた状態でのカーブ曲がりや低速走行は想定されていない。
【0004】
ジンバルのジャイロスコープの形態であるシングルトラック二輪車用ジャイロスタビライザー(露国特許第2546036(C1)号明細書,国際特許分類B60P1/36,公開日2003年2月10日)がプロトタイプとして選択された。ジンバルの外側リングは、車両フレームと連結する2方向軸スイベル継手(two-way axial swivel connection)を有し、この継手の軸は車両の長軸に沿って向けられ、ジンバルの内側リングは、外側リングと連結する2方向軸スイベル継手を有し、ジャイロスコープのローターシャフトは、ジンバルの内側リングと連結する2方向軸スイベル継手を有し、3つ全てのスイベル継手の軸は相互に垂直であり、シンバルの外側リングは運転者用支持体として機能し、ジャイロスタビライザーは、車両フレームと連結するスイベル継手の軸まわりの外側リングの回転をロックする。高速での二輪車のコーナリングは、ステアリングせずに曲がる方向に傾けることにより行われる。ジャイロスタビライザーは運転者のフットレストと足の横方向の向きを維持し、足及び体の反応を使って車両の安定性を運転者が制御することを可能にする。外側リングがフレームに対して垂直に固定されるとき、運転者の関与なしで車両全体の安定性が確保される。本願発明の説明に記載したように、ステアリングと速度は運転者のスキルにのみ依存するが、多くの面で必要なスキル、例えば、ジャイロ安定化プラットフォームに立ちながらコーナリングの時に高速で車両を傾けることは特殊であることを考慮しなければならない。また、運転者の反応は電子装置の速度に対して明らかに劣っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第8918239号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013200020号明細書
【文献】露国特許第2546036号明細書
【文献】メルキンD.R. 走行安定性論入門:大学向け教材 第3版・改訂増補版 モスクワ:出版会社ナウカ・物理学数学書籍中央編集部1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の目的は、最も多い走行モードに適用可能であり、事故に繋がるかもしれない運転者の行動を調整又は制限するシングルトラック二輪車用ジャイロスタビライザーの創造である。また、発明者らは、ジャイロスタビライザーを設計変更と改良を最小限に抑えながら既存モーターサイクルのモデル及び新しく開発されたモデルの両方に取り付けることができるようにするとの課題も設定した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、シングルトラック二輪車、好ましくは、モーターサイクル用ジンバルのジャイロスコープの形態であるジャイロスタビライザーにより解決され、そのジンバルの外側リングは車両フレームと連結する2方向軸スイベル継手を有し、この継手の軸は車両の長軸に沿って向けられ、ジンバルの内側リングは外側リングと連結する2方向軸スイベル継手を有し、ジャイロスコープのローターシャフトはジンバルの内側リングと連結する2方向軸スイベル継手を有し、更に、3つ全てのスイベル継手の軸は相互に垂直であり、一方、ジャイロスタビライザーは車両フレームと連結するスイベル継手の軸まわりの外側リングの回転に対するロック手段を有する。
【0008】
本提案によれば、ジャイロスタビライザーは、後輪の振り子(pendulum)に位置し、外側リングとのスイベル継手の軸まわりの内側リングの回転のロック手段を有し、各ロック手段は、速度と許容車両傾斜角度を制御するマイクロコントローラのコマンドによって、対応するリングの強制回転を可能にするサーボモータの形態であり、追加負荷はローターシャフトと連結するスイベル継手の軸上の内側リングに取り付けられる。
【0009】
本願発明は、図面により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ジャイロスタビライザー装置の断面図である。
図2】ジャイロスタビライザーを備えた車両(モーターサイクル)の振り子の組立図である。
図3】ジャイロスタビライザーの取り付け前(A)と取り付け後(B)の車両の概略図である。
図4】上がり勾配時の本願発明のジャイロスタビライザー(A)とジャイロスタビライザーのプロトタイプ(B)の比較図である。
図5】コーナリングでの本願発明のジャイロスタビライザー(A)とジャイロスタビライザーのプロトタイプ(B)の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ジャイロスタビライザー1はジンバルのジャイロスコープ2によって表され、ジンバルの外側リング3は車両5のフレーム(振り子)4と連結する2方向軸スイベル継手を有し、この継手の軸は車両5の長軸に沿って向けられ、ジンバルの内側リング6は外側リング3と連結する2方向軸スイベル継手を有し、ジャイロスコープ2のローターシャフトはジンバルの内側リング6と連結する2方向軸スイベル継手を有し、3つ全てのスイベル継手の軸は相互に垂直である。各リング3及び6は、例えばタッチセンサ制御装置10を備えたマイクロコントローラ9に接続されたサーボモータ7及び8に接続される。追加負荷11は、ローターシャフトと連結する2方向軸スイベル継手の軸上の内側リング6に取り付けられる。ジャイロスコープ2の駆動装置は電気モーター12を組み込む。
【0012】
ジャイロスタビライザーは、以下のように作動する。
ジャイロスコープ2はイグニッションキーを回した後にのみ始動される。フライホイール(ジャイロスコープ)2はその直径と重量によって約6~10秒間回転し、フライホールの回転は車両(モーターサイクル)5の大きさと重量に依存する。この段階ではジンバルのリング3及び6はロックされていない。次いで、運転手(操縦士)はモーターサイクル5のフットレスト(footpeg)を除去して、それを直立位置にする。同時に、サーボモータ7はリング3を水平位置に設定し、この位置に固定(ロックする。従って、ジャイロスタビライザー1は一つの不安定な座標(長さ方向垂直面のモーターサイクルの位置)がある(2自由度を有する)非フリー状態に入る。トムソン・テツ・チェタエフの第一定理によると、ジャイロ安定化は不安定な座標数が偶数ではなければ行えないため、システムの第2座標(リング6の回転角度)も不安定ではなければならない(例えば、メルキンD.R. 走行安定性論入門:大学向け教材 第3版・改訂増補版 モスクワ:出版会社ナウカ・物理学数学書籍中央編集部1987, 180~182頁(Merkin D.R. Introduction to road holding theory: Textbook for higher schools. - 3rd ed., revised and amended - M.: Science. Editor-in-charge of phys.- math. lit., 1987, pp.180-182))。従って、サーボモータ8は負荷11が頂部に位置されるようにリング6を回して、リング6はこの位置に保持される。ジャイロスコープ2が設計値まで回される時に、長さ方向の位置に車両5のジャイロ安定化が発生する。このモードでは車両5の速度範囲は0から約10km/hまで変化することができる。
【0013】
他の動作モードでは(プロトタイプと違って)リング3のロックが完全に解消されない。坂道を上ったり下ったりする際、あるいは、凸凹や泥の多い路面を走る際、マイクロコントローラ9からの信号により各リング3及び6の継続的な位置調整が行われる。例えば、坂道を上る時(図4A)、サーボモータはリング3の水平の位置及びリング6の対応する位置を維持する。プロトタイプスキームオペレーションでは(図4B)ジャイロ効果が低下している。ジャイロスコープのリングは必要に応じて、類似の解決手段(独国特許出願公開第102013200020(A1)号明細書)と同様であるジャイロ安定化によって横滑り(ヨー)を防止できるように設定することができる。また、マイクロコントローラ9からのコマンドにより(異なるセンサーから受信されたデータに従って)ジャイロスタビライザー1は、車両5の性能、道路や天気の状態等に応じてコーナリングの時の車両5の傾斜角度の最大限の可能性を固定(制限)できる。マイクロコントローラ9の個々のパラメータのプレセットや追加機能の有効化/無効化は、タッチセンサ制御ユニット10を用いて行うことができる。
【0014】
ジャイロスタビライザーの後輪の振り子4への配置は、主に、チーフデザイナーやメーカーマネジメントによって認可されるデザインジオメトリー、既存の車両(モーターサイクル)5のフレームを変更せずにスタビライザーが取り付けられる唯一の場所であるという要因によるものである。予備的な概算によれば、モーターサイクル5のベースは、ジャイロスタビライザー1のグレードアップされた振り子4への取り付け後に、20cm延長されるだろう(図3)。ステアリングに影響を与えるもう一つの要因は、ジャイロスタビライザー1が中心に位置してなく、モーターサイクル5の後軸にかなり近くに位置していることである。ジャイロスタビライザー1は、フレーム又はエンジンに取り付けられた振り子4に影響を与えるが、前輪が曲がりや方向を決めるので、前輪への安定化程度を軽減すべきだが、これはジャイロスタビライザーの軸間中心から後輪への移動により実現可能で、かつジャイロスタビライザー1による長軸又は指定の旋回の維持に障壁を設けない。この要素を実現した場合、車両5は低速でも安定化すると同時に、それまで実現できなかった操作性も得る(図5)。
【0015】
(産業上の利用可能性)
本願発明の実現は、当該技術分野における当業者にとって明確な課題である。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5