(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】帆立貝雌雄判定方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20220513BHJP
A01K 61/54 20170101ALI20220513BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220513BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20220513BHJP
C12Q 1/6879 20180101ALN20220513BHJP
【FI】
C12N15/12
A01K61/54 ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6879 Z
(21)【出願番号】P 2020158349
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】201910985380.1
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515223167
【氏名又は名称】中国海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】張玲玲
(72)【発明者】
【氏名】郭振義
(72)【発明者】
【氏名】李亜娟
(72)【発明者】
【氏名】劉亮潔
(72)【発明者】
【氏名】王師
(72)【発明者】
【氏名】陸維
(72)【発明者】
【氏名】包振民
【審査官】玉井 真人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102634514(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105087815(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帆立貝のゲノムDNA中のヌクレオチド配列がSEQ ID NO:1若しくはSEQ ID NO:4である帆立貝雌特異的マーカーの有無を検出すること、を特徴とする帆立貝雌雄判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖水産動物の性別鑑定技術に関し、具体的には帆立貝雌特異的マーカー及ひ
その応用に関する。
【背景技術】
【0002】
帆立貝は、蝦夷スカラップ、スカラップ科、スカラップに属し、重要な経済上の貝類であ
る。その全世界年間生産高は15億ドルを超える。中国は、1982年から帆立貝の人工
繁殖を開始した。現状では、我が国の帆立貝の人工繁殖技術はもう非常に成熟しているが
、しかしながら、帆立貝の性別鑑定、性別制御の技術は依然として比較的に欠乏している
。帆立貝の性別鑑定と性別制御に関する研究は、繁殖技術の進歩を促進するのに役立ち、
帆立養殖産業の発展にとって非常に重要である。
【0003】
現在、帆立貝の性別は3種類の方法によって同定することができる。それぞれ表現型観察
法、組織断片法及び性別分化遺伝子に基づいて発現する貝類性別鑑定方法である。表現型
観察法の局限性は比較的に大きく、ただ生産された季節が明らかな二形性の帆立貝の性別
の同定に適用される。組織観察法は、煩雑な操作を要し、且つ生殖腺が休止期の帆立貝の
性別鑑定成功確率は低い。性別分化遺伝子に基づいて帆立貝の性別に同定の方法は、性別
差異遺伝子を分析する発現量によって性別を判定することであり、鑑定のサンプルに対す
る要求が高く、操作が複雑であり、鑑定結果は不安定である。
【0004】
DNA分子は性別同定する重要なツールであり、魚、エビ、カメなどの種において幅広く
応用されている。従来の遺伝子表現や形態学方法に比べ、組織や発育段階の制限を受けず
、検出手段は、簡単で快速で、結果が正確である。帆立貝の性別特異分子マーカーを開発
して、検出手段が簡単で素早く、結果が正確である鑑定方法を発展させる。帆立貝の優良
品種の育成の展開を有利なことにするだけでなく、貝類性別判定メカニズムに対する研究
も重要な意味を有する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、従来の技術における欠陥を解決するために、帆立貝雌特異的マーカーの有無を検出する帆立貝雌雄判定方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:4、又はSEQ ID NO:1及
びSEQ ID NO:4の相補配列である帆立貝雌特異的マーカーの組み合わせを提供する。
【0007】
本発明は、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:4であるマーカーを検出す
る帆立貝雌雄判定用製品をさらに提供する。
【0008】
前記製品は、PCR増幅検出キット又はPCR増幅シーケンシングキットであることが好ましい
。
【0009】
本発明は、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:4であるマーカーを検出す
る帆立貝雌雄判定方法をさらに提供する。
【0010】
SEQ ID NO:1に示される配列に対して設計されるプライマーは、その上流プライマーの配
列はSEQ ID NO:2であり、下流プライマーの配列はSEQ ID NO:3である。
【0011】
SEQ ID NO:4に示される配列に対して設計されるプライマーは、その上流プライマーの
配列はSEQ ID NO:5であり、下流プライマーの配列はSEQ ID NO:6である。
【0012】
本発明により提供される帆立貝雌特異的分子マーカーの組み合わせは、常規のPCR増幅に
より帆立貝性腺以外の組織に対して雌雄判別を行えることができ、正確率(certified)は1
00%に達する。従来の遺伝子表現や形態学方法に比べ、簡単で、快速で、便利で、結果が
正確である。帆立貝の性的制御・繁殖、飼育の発展に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は帆立貝雌性特異的プライマーFSP1による帆立貝集団遺伝における雌雄判別の結果模式図を示す(個体番号1~12は雌性個体で、いずれも593bpの特異的バンドを増幅できた。個体番号13~24は雄性個体で、いずれもバンドを増幅できなかった。ただしMは2000bpの DNA ladder)。
【
図2】
図2は帆立貝雌性特異的プライマーFSP2による帆立貝集団遺伝における雌雄判別の結果模式図を示す(個体番号1~12は雌性個体で、いずれも477bpの特異的バンドを増幅できた。個体番号13~24は雄性個体で、いずれもバンドを増幅できなかった。ただしMは100bpのDNA ladder)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施例の帆立貝雌雄判別方法は3つの工程を含む。
1)取得した雌性特異的配列をテンプレートとして雌性特異的プライマーを設計した。
2)合成した雌性特異的プライマーによってそれぞれ雌雄の帆立貝ゲノムDNAを増幅して、
その増幅効率と正確性を検証して、増幅系とアニール温度を最適化させた。
3)工程2)における増幅物に対してアガロース電泳を行って、電泳の結果をゲルイメージ
ング装置により画像化し撮影して、バンドを増幅して帆立貝の雌雄を判別した。
以下、実施例と図面により本発明をさらに説明する。
【0015】
実施例1:帆立貝雌雄特異的分子マーカーの選別
標準的フェノール-クロロホルム法を使用して雌性の帆立貝閉殻筋のゲノムDNAを抽出した
。Pabio-Sequelシークエンサーによりシーケンシングした(深度は100×)。Falconを使
用して配列アセンブリを行って、雌性帆立貝のゲノムを取得した。ソフトウェアmauveに
より雌雄の帆立貝ゲノムを比較することにより、2段の雌性個体だけに存在したが雄性個
体に存在しなかった配列は発見された。該配列はSEQ ID NO:1とSEQ ID NO:4に示した。
【0016】
実施例2:帆立貝雌雄判定
【0017】
受検サンプルの取得
雌雄各20個の帆立貝を取得した。雌雄は表現型観察法によって鑑定するとした。取得する
時は性腺が成熟期にあったので、当該時における雌雄の性腺色ははっきり区別できた。オ
レンジ色は雌性個体、白色は雄性個体。
【0018】
DNAの抽出
標準的フェノール-クロロホルム法を使用して帆立貝の閉殻筋のゲノムDNAを抽出して、ア
ガロースゲル電泳と核酸定量装置により提出したDNAを品質検出した。
【0019】
プライマーの合成
取得した雌性特異的断片に従って雌性特異的プライマーを設計して増幅した。具体的なプ
ライマー配列は下記表のとおりであった。
【0020】
【0021】
PCR増幅
上記プライマーをそれぞれPCR増幅で採集したサンプルに応用した。
反応系:DNAテンプレート50ng、5×HF buffer 4μL;dNTP(10mM)0.6μL;上流プライマー
(2μM)1μL;下流プライマー(2μM)1μL;Phusion酵素0.2μL;滅菌水は20μLに補充。
PCR反応プロセス:1、98℃ 30s;2、98℃ 10s;3、60℃ 15s;4、72℃ 1min(ただし2)
~4)は30回循環);5、72℃ 5min;6、4℃にて保存。
【0022】
増幅結果の検出及び雌雄判別
1.5%のアガロースゲルを調製して電泳検出を行った。特異的バンドを増幅できたのは雌
性個体であり、特異的バンドを増幅できなかったのは雄性個体であった。FSP1プライマー
で増幅した特異的バンドの長度は593bp(
図1に示す)であり、FSP2プライマーで増幅した
特異的バンドの長度は477bp(
図2に示す)であった。FSP1とFSP2プライマーは併用すると
した。帆立貝雌雄判別の正確率は100%に達した。
【0023】
以上、実施例により本発明を説明したが、本発明は上記実施例に限定されない。本発明に
基づいて行われる全ての変更または変形は、いずれも本発明の保護の範囲に含まれる。
[配列表]
SEQUENCE LISTING
<110> 中国海洋大学
<120> 帆立貝雌特異的分子マーカーの組み合わせ及びその応用
<160> 6
<170> SIPOSequenceListing 1.0
<210> 1
<211> 593
<212> DNA
<213> 人工配列(Artificial Sequence)
<400> 1
gacacaagtc atcttcacct atggagctaa ggtcgtcatc ctcccccacc atttgtcggt 60
tcctttctga aaaaaacccc gcccggtttt aaaagttttc aaaaaaaata caacaaatac 120
agaaaaaaaa tcaaaaataa atatgaagat aatgcatgat ttttgtttca tttttttttt 180
ttttattgat ttttttcatt tcatagacat atacatattg gacatacatc aacatattat 240
acaagtaatt tcaaacacac atcaaataca tacatatatc cacatctgtg ctcctgtctc 300
cacaccgtct caccttcaat tcatataagc cttagtacat aattaggccc acattcctat 360
actcaaaagt atgcttaagc acatatacat acaacatata cacacaagat acacacatat 420
atacacatac atacgcacaa cacgcataca tacatactcc acacacactg catatacata 480
catgcatcat tcatacatac atgtacatac atctgcacac atccacgcct atacacatac 540
tgtacaatgc atcacatgta tgcataataa tgcagcatac atatatcgag cgg 593
<210> 2
<211> 21
<212> DNA
<213> 人工配列(Artificial Sequence)
<400> 2
gacacaagtc atcttcacct a 21
<210> 3
<211> 20
<212> DNA
<213> 人工配列(Artificial Sequence)
<400> 3
ccgctcgata tatgtatgct 20
<210> 4
<211> 477
<212> DNA
<213> 人工配列(Artificial Sequence)
<400> 4
gctgtctgtc cgtgaacaat ccttgttatc gctatttctt gagtactggc aggatatttc 60
tcaaatgtca catgtagtct ggttcccctt agtccctaga tgtgcccatt caattttgag 120
tctgatcggg aaaacaaaat ggccgatagg cagccatctt ggattttgac agtttaagat 180
tgttatcgct atctcttgag aagtactgga aggatgtttc tcaaacttca catgtaggtt 240
ccccttagtc cctagttgtg tccatttaat tttgattctg atcgggaaaa caaaatggcc 300
gactggaggc catcttggat tttatcagtt gaagtttgtt atcgctatgt cacagaaagt 360
tcttcttaga tctttcttag aattcatatg aagaattttc ttgttatcaa attgttaaag 420
ggaaatttaa agaataaaga acggaaaagt agagaaaaga tcagtcctac atggaac 477
<210> 5
<211> 20
<212> DNA
<213> 人工配列(Artificial Sequence)
<400> 5
gctgtctgtc cgtgaacaat 20
<210> 6
<211> 21
<212> DNA
<213> 人工配列(Artificial Sequence)
<400> 6
gttccatgta ggactgatct t 21