(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】背負い鞄の接続金具
(51)【国際特許分類】
A45F 3/04 20060101AFI20220513BHJP
A45F 3/02 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
A45F3/04 400J
A45F3/02 410
(21)【出願番号】P 2021144664
(22)【出願日】2021-09-06
【審査請求日】2021-09-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504233018
【氏名又は名称】株式会社榮伸
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】武田 信隆
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000180(JP,A)
【文献】登録実用新案第3106718(JP,U)
【文献】特開2010-106574(JP,A)
【文献】特開2015-031088(JP,A)
【文献】実公昭35-031404(JP,Y1)
【文献】特許第5914741(JP,B1)
【文献】特許第3172903(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3205606(JP,U)
【文献】登録実用新案第3107694(JP,U)
【文献】実公平02-038738(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/00-3/04
A45C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背負い鞄本体(1)の背板(2)の上端部の中央部に取付られた左右一対の第1金具(3)と、
各第1金具(3)の上縁に軸支され、肩紐(4)の端部が取付られる一対の第2金具(5)と、
両金具(3,5)の軸支部(6)に取付られて、第2金具(5)を前記背板(2)側に付勢する付勢バネ(7)と、
を具備
し、
前記第1金具(3)は、前記背板(2)に取付られる取付部(3a)と、
その上端部を前記背板(2)から斜め上方に離反させる離反部(3b)と、
を有し、
前記第1金具(3)の離反部(3b)の縁部に、第2金具(5)との前記軸支部(6)が形成され、その軸支部(6)が前記背板(3)側に突出し、
前記付勢バネ(7)が捩じりバネからなり、
その捩じりバネの一方の係止爪(7a)が、前記第1金具(3)に係止され、他方の係止爪(7a)が第2金具(5)に係止された背負い鞄の接続金具。
【請求項2】
請求項1に記載の背負い鞄の接続金具において、
背負い鞄本体(1)の背板(2)の上端の中央部には基部金具(8)が固定されており、
前記基部金具(8)に各前記第1金具(3)の下端部が軸支され、
前記基部金具(8)内に揺動バネ(9)が設けられており、
前記第1金具(3)を介して、前記第2金具(5)が、前記背板(2)に平行で且つ、前記背板(2)の側方から前記中央部に向けて付勢されている背負い鞄の接続金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背負い鞄(ランドセルやリックサック等)の肩紐の端部を取り付ける接続金具に関する。
【背景技術】
【0002】
背負い鞄(ランドセルやリックサック等、以降、ランドセルを例として説明する。)は、一対の肩紐が取付金具を介して、ランドセルの背板の上部に固定されている。
特許文献1の
図1には、その取付金具の一例が示されている。その取付金具は、ランドセルの背板の上端に設けた基部金具の内部に一対の揺動金具がばねを介して、背板の幅方向(左右方向)に揺動自在に取り付けられている。
また、本願の
図8に記載の取付金具の他の従来例であり、その取付金具は、上側の第1金具11と下側の第2金具12との二部材からなり、それらが軸支部10によって連結されているものが存在した。
さらに、特許文献2の取付金具は、本願の
図9(A)(B)に示す如く、軸支部10に加えて、上側の第2金具12の軸支部10(詳細な図を省略)の上方に、立ち上げ部と、樹脂板または金属板かさなる弾性部を形成し、肩紐を一定角度の範囲で前後に揺動し、肩紐をランドセル本体の外周に巻き付け、搬送の便に供するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3106718号公報
【文献】特開2004-237072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
肩紐の取付金具を、
図8に示す如く、第1金具11と第2金具12との軸支部10を介して、回動自在に形成すると、肩紐の付根が前後に動き、ランドセルを背負い易くなる。
その反面、
図9(A)に示す如く、第2金具12が背中から離反して傾斜し、ランドセルと児童の背中とに隙間αが生じやすく、ランドセルや収納物の自重により、ランドセルが下がりやすくなる。この場合、児童の歩行とともに、ランドセルが上下動しやすくなり、その上下動にともない、その衝撃が児童の肩と腰に加わり、疲れともに、ランドセルが重く感じる。
隙間αを極力なくすには、
図9(B)に示す如く、肩紐の長さを短くすることにより、隙間αをなくすことができる。
この場合、第2金具12は、上方へ向く。すると、児童の肩と肩紐の頂部との間に隙間βが生じる。この場合も、ランドセルが上下動してしまうため、その衝撃が児童の肩に加わり、ランドセルが重く感じる。
【0005】
そこで、本発明は、このような軸支部を有する背負い鞄(ランドセル)の接続金具において、鞄の背板と人物の背中との間、人物の肩と肩紐の間とが常に密着し、背負い易い接続金具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、背負い鞄本体1の背板2の上端部の中央部に取付られた左右一対の第1金具3と、
各第1金具3の上縁に軸支され、肩紐4の端部が取付られる一対の第2金具5と、
両金具3,5の軸支部6に取付られて、第2金具5を前記背板2側に付勢する付勢バネ7と、
を具備し、
前記第1金具3は、前記背板2に取付られる取付部3aと、
その上端部を前記背板2から斜め上方に離反させる離反部3bと、
を有し、
前記第1金具3の離反部3bの縁部に、第2金具5との前記軸支部6が形成され、その軸支部6が前記背板3側に突出し、
前記付勢バネ7が捩じりバネからなり、
その捩じりバネの一方の係止爪7aが、前記第1金具3に係止され、他方の係止爪7aが第2金具5に係止された背負い鞄の接続金具である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の背負い鞄の接続金具において、
背負い鞄本体1の背板2の上端の中央部には基部金具8が固定されており、
前記基部金具8に各前記第1金具3の下端部が軸支され、
前記基部金具8内に揺動バネ9が設けられており、
前記第1金具3を介して、前記第2金具5が、前記背板2に平行で且つ、前記背板2の側方から前記中央部に向けて付勢されている背負い鞄の接続金具である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、背負い鞄本体1の背板2の上端部の中央部に左右一対取付られた第1金具3と、
各第1金具3の上縁に軸支され、肩紐4の端部が取付られる一対の第2金具5と、
両金具3,5の軸支部6に取付られて、第2金具5を前記背板2側に付勢する付勢バネ7と、を具備し、この付勢バネ7より、次の作用を生じさせる。
背負い鞄(ランドセル)を人物が背負うと、付勢バネ7の付勢力により、肩紐4の上端部4aを人物の肩の方向に引っ張り、それが肩に密着する。それと共に、背負い鞄本体1の背板2が人物の背中に密着する。
これらの密着により、ランドセル本体1及び内容物の重力が、人物の肩および背中に隙間なく確実に支持され、軽量感を生じさせる。それと共に、付勢バネ7の付勢力により、人物の歩行に伴う肩紐4の衝撃が吸収される。
【0010】
さらに、第1金具3の離反部3bの縁部に、第2金具5との軸支部6が形成され、それが前記背板3側に突出したものである。
軸支部6が背板側に突出するので、人物の頭に軸支部6が衝接することがない。
また、髪の毛が軸支部6に絡まることがない。
また、付勢バネ7が捩じりバネからなるため、バネを軸支部6に収納することができ、体裁がよい。
【0011】
請求項2に記載の発明は、基部金具8に各第1金具3の下端部が軸支され、その第1金具3を介して第2金具5が揺動バネ9により背板2に平行で且つ、背板2の側方から背板2の上端の中央部に向けて付勢されたものである。
そのため、第2金具5は、その下端に接続された第1金具3の軸支回りの左右の揺動の動きと、それに直交する第2金具5自体の前後方向の動きと、が重複されたものとして挙動する。
そのため、肩紐4は揺動バネ9と付勢バネ7との二つのバネにより、人物の両肩の曲面に沿って移動すると共に、その曲面に密着する。
そして、その動きが付勢バネ7で人物の肩の方向に引っ張られて、密着状態を常に保持する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の背負い鞄の接続金具の要部斜視図、およびその内部を示す斜視図。
【
図2】同接続金具の左右一対の各部品の内、右側の部品の正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)及び左側面図(D)、並びにその軸支部6の内部構造を説明する背面図(E)、側面図(F)。
【
図3】同金具の付勢バネ7の位置を示す透視説明図、並びにその分解斜視図。
【
図6】同作用の詳細を示す説明図であって、(A)はカバン本体1の重力が肩紐に加わった静止状態を示し、(B)は 歩行中の第2金具5の回動状態を示す。
【
図7】接続金具の他の例を示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)及び左側面図(D)、並びにその第2金具5の回動状態の説明図(E)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1(A)は、本発明の背負い鞄(以降、ランドセルを例にとって説明する。)の接続金具の要部斜視図であり、
図1(B)は、その接続金具の内部構造を示す斜視図である。
図2(A)は、
図1において、本発明の接続金具を形成する右側の部品の正面図であり、同図(B)はその右側面図であり、同図(C)はその背面図であり、同図(D)はその左側面図である。
同図(E)は左側の部品の前後の揺動動作を示す背面図であり、同図(F)は同図(E)の側面図である。
図3(A)は、接続金具の付勢バネ7の位置を示す透視説明図であり、
図3(B)は、その分解斜視図である。
図4は、接続金具の要部正面図である。
【0014】
図1(A)、
図4に示す如く、ランドセル本体1の背板2の上端部の中央部には、基部金具8が固定されている。
本発明の背負い鞄の接続金具は、その基部金具8に、
図1(B)に示す如く、その内部に左右一対の第1金具3が、基部金具8の中心線の両側に左右対称に配置されている。その第1金具3の上端には軸支部6が設けられ、その軸支部6に第2金具5がとりつけられる。そして、その第2金具5に肩紐4の端部が取付られる。
右側の接続金具は、
図2(A)~(D)のように形成されており、左側の接続金具は、
図2(A)~(D)に鏡面対称に表れる。
図2(E)、(F)は左側の接続金具を例として記載した動作説明図であり、
図2(E)は、
図2(C)と鏡面対称の関係にある。
夫々の両金具3,5の軸支部6は、各金具の背板2側に配置される。それと共に、その軸支部6は背板2から離反する方向へ傾斜した傾斜面の中央に存在する。即ち、第1金具3の上部及び、第2金具5の下部が傾斜し、それらの中央位置に軸支部6が存在する。
各第2金具5の軸支部6内に一対ずつの捩じりバネが内装されて、第2金具5を背板2側に容易に回動できるように付勢している。即ち、軸支部6内には、
図2(E)、
図2(F)に示す如く、第2金具5を前記背板2側に付勢する付勢バネ7が配置されている。
この付勢ばね7は、
図2(E)、(F)に示す如く、第1金具3に対して、第2金具5を実線の状態から鎖線の状態に回動するように付勢する。
【0015】
この接続金具は、
図3(B)の如く、第1金具3の上端部に設けた筒状部3cと、第2金具5の下端の両端部に設けた一対の筒状部5cとが、それらの平面方向に互いに嵌着し、それらの間に、
図3(B)に示す如く、軸7bが挿通され、軸支部6が形成されている。そして左右一対のねじりバネからなる付勢バネ7が、
図3(A)(B)に示す如く、軸7bの外周に挿入され、それらが第2金具5の筒状部5cに内装される。
この付勢バネ7のコイルの両端は、
図3(B)に示す如く、それぞれ半径方向の外側に突出すると共に、その突出端部がL字状に曲折形成されて係止爪7aを構成する。そして、その付勢バネ7が第2金具5の筒状部5cに内装されたとき、
図3(A)に示す如く、付勢バネ7の一方の係止爪7aが第1金具3に係止し、他方の係止爪7aが第2金具5に係止する。
このようにしてなる第1金具3および第2金具5は、軸支部6を介して、
図1、
図2に示す如く、背板2側に段付きに接続される。そして、第2金具5を上方に付勢する。即ち、第2金具5を第1金具3に対してランドセル本体1の背板2側に付勢する。
【0016】
その第1金具3は、前述の通り、その基部金具8の基部本体8aの中央部に対して左右対称に一対配置され、第1金具3は、基部金具8の中央側に、揺動バネ9により付勢されている。
各第1金具3は、その下端の取付部3aが基部金具8に軸支され、その上端部が広がり離反部3bを形成する。その離反部3bの縁部には、第2金具5との軸支部6が形成されている。
基部金具8は基部本体8aと蓋板8bとからなり、その内部に各第1金具3の下端部が軸孔3aを介して左右方向に揺動自在に軸支される。
【0017】
(作用)
図5は、
図4の接続金具の第1金具3の左右動作および、第2金具5の前後動作の説明図である。また、
図6(A)は、接続金具の作用を示し、下方にランドセルが下がった時の静止状態を示し、同図(B)は歩行等の反作用に基づく第2金具5の前後動の変化状態を示す。
先ず、本接続金具の第1金具3は、
図5に示す如く、揺動バネ9によって左右方向に揺動自在に軸支されて、且つ一対の第1金具3が基部金具8の中心側(背板2の中心側でもある)に付勢されている。
このようなランドセルを背負った児童が、歩行したり、走ったりすると、左右の揺動に加えて、
図6(B)に示すように、第2金具5は第1金具3の上端に設けた軸支部6を軸に児童の背中側に、実線と鎖線の状態との間を前後に移動する。これにより、ランドセル等の加重を柔らかく受け止め、肩に加わる衝撃を効果的に吸収する。
【0018】
図6(A)に示す如く、ランドセルの背板2と児童の背中との間、肩紐4と児童の肩との間が常に密着する。
即ち、付勢バネ7の付勢力により、肩紐4を引き上げ、その上端部を肩に密着させるとともに、背板2を背中に密着させる。
そして、教科書やランドセル本体の自重が肩紐に加わる。その衝撃力は、児童の移動方向に動き、付勢バネ7によって吸収される。つまり、ランドセルは児童の移動方向である前側に緩やかに動き、次いで、付勢バネ7により、後ろ側に戻って衝撃力を吸収する。
肩紐4に加わる動きは、付勢バネ7による前後方向の動きに加え、揺動バネ9による左右方向の動きの複合からなる。そして、両ばねの作用により、衝撃を効果的に吸収する。
【0019】
上記実施例では、右側の接続金具は、
図2(A)~(D)のように形成されている。
同図において、第1金具3の上部及び第2金具5の下部が、くの字状に傾斜し、それらの中央位置に軸支部6が形成されている。
第2金具は、上記実施例の形状に限られるものではない。
例えば、
図7(B)(D)に記載のごとく、第2金具5の下端の傾斜部分を直線状とすることが可能である。また、同図のように、第2金具5の中心に設けられた肩紐4を通す肩紐挿通部5aは、縁部5bを切除した形状であってもよい。
このように第2金具5を形成することで、第1金具3の筒状部3cと第2金具5の縁部5b間で生じうる干渉を防止することができ、軸支部6の回動を滑らかにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、ランドセルやリックサックのような背負い鞄の荷重を吸収する接続金具として利用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 背負い鞄本体(ランドセル本体)
2 背板
3 第1金具
3a 軸孔
3b 離反部
3c 筒状部
4 肩紐
5 第2金具
5a 肩紐挿通部
5b 縁部
5c 筒状部
6 軸支部
【0022】
7 付勢バネ
7a 係止爪
7b 軸
8 基部金具
8a 基部本体
8b 蓋板
9 揺動バネ
【0023】
10 軸支部
11 第1金具
12 第2金具
【要約】
【課題】 肩紐4の上端が取り付けられる背負い鞄の接続金具において、その金具が第1金具3と第2金具5とを軸支部6で接続したものにおいて、鞄本体の自重等を吸収して、児童に大きな負荷を与えない取付金具の提供。
【解決手段】 第1金具3と第2金具5との軸支部6に付勢バネ7を設け、それにより、第2金具5を背板2側に付勢する。
【選択図】
図3