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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】仰向け姿勢移動具
(51)【国際特許分類】
   B25H 5/00 20060101AFI20220513BHJP
【FI】
B25H5/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021160581
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2021-09-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509200657
【氏名又は名称】小川 祐樹
(74)【代理人】
【識別番号】100155158
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 仁
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐樹
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0015630(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0242094(US,A1)
【文献】米国特許第04850603(US,A)
【文献】米国特許第04792147(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が仰向け姿勢の状態で移動するための仰向け姿勢移動具であって、
板状体と複数のボールキャスタとを有し、前記板状体の一方側の板面に前記複数のボールキャスタを当該板状体が板面と平行な方向に移動可能に固定したボール式移動部と、
前記板状体の他方側の板面を背中側にして前記ボール式移動部を背負うために前記板状体に取り付けられた背負い帯と、を備え、
前記板状体は、複数の板状体からなり、
前記ボール式移動部は、各板状体に1又は複数のボールキャスタが固定され、当該ボールキャスタが固定された複数の板状体が関節部を介して折り曲げ可能に接続された構成となっており、
前記複数の板状体は、背負われた状態において上下方向に少なくとも3段の板状体を含み、
前記関節部は、前記少なくとも3段の板状体のそれぞれについて当該板状体とこれに隣接する板状体との間のうち少なくとも2つの板状体間に設けられていることを特徴とする仰向け姿勢移動具。
【請求項2】
人が仰向け姿勢の状態で移動するための仰向け姿勢移動具であって、
板状体と複数のボールキャスタとを有し、前記板状体の一方側の板面に前記複数のボールキャスタを当該板状体が板面と平行な方向に移動可能に固定したボール式移動部と、
前記板状体の他方側の板面を背中側にして前記ボール式移動部を背負うために前記板状体に取り付けられた背負い帯と、を備え、
前記板状体は、複数の板状体からなり、
前記ボール式移動部は、各板状体に1又は複数のボールキャスタが固定され、当該ボールキャスタが固定された複数の板状体が関節部を介して折り曲げ可能に接続された構成となっており、
前記複数の板状体は、背負われた状態において上下方向に連なる3段の板状体を含み、
前記関節部は、上段と中段の前記板状体の間、及び中段と下段の前記板状体の間にそれぞれ設けられていることを特徴とする仰向け姿勢移動具。
【請求項3】
人が仰向け姿勢の状態で移動するための仰向け姿勢移動具であって、
板状体と複数のボールキャスタとを有し、前記板状体の一方側の板面に前記複数のボールキャスタを当該板状体が板面と平行な方向に移動可能に固定したボール式移動部と、
前記板状体の他方側の板面を背中側にして前記ボール式移動部を背負うために前記板状体に取り付けられた背負い帯と、を備え、
前記板状体は、複数の板状体からなり、
前記ボール式移動部は、各板状体に1又は複数のボールキャスタが固定され、当該ボールキャスタが固定された複数の板状体が関節部を介して折り曲げ可能に接続された構成となっており、
前記ボール式移動部は、背負われた状態において前記ボールキャスタが背骨の位置を避けて背骨を挟んだ両側にそれぞれ背骨に沿って配置された構成となっていることを特徴とする仰向け姿勢移動具。
【請求項4】
請求項3において、
前記複数の板状体は、背負われた状態において背骨を挟んだ両側にそれぞれ独立に配置された板状体から構成されていることを特徴とする仰向け姿勢移動具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記板状体に取り付けられた前記ボール式移動部の下端部を腰に固定するためのベルト部を有することを特徴とする仰向け姿勢移動具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仰向け姿勢で地面や床面を移動可能な仰向け姿勢移動具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車の下や建築中の建物の基礎下に潜って仰向け姿勢で作業を行う場合に、例えばキャスタ付きの寝板(例えば特許文献1を参照)を用いて行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-16255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の寝板を用いる場合、キャスタや体を支える板部材の分だけ高い位置で仰向け姿勢となるため、地面や床面から作業面までの高さが低い場合に、下に潜るのが困難であったり、潜れても作業をする空間を確保するのが困難であったりすることがある。また、寝板は比較的大きくて重い物であり持ち運びが困難である。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、作業面が低い場所での利用に好適で且つ持ち運びが容易な仰向け姿勢移動具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の仰向け姿勢移動具は、人が仰向け姿勢の状態で移動するための仰向け姿勢移動具であって、板状体と複数のボールキャスタとを有し、前記板状体の一方側の板面に前記複数のボールキャスタを当該板状体が板面と平行な方向に移動可能に固定したボール式移動部と、前記板状体の他方側の板面を背中側にして前記ボール式移動部を背負うために前記板状体に取り付けられた背負い帯と、を備える。
【0006】
〔発明2〕 さらに、発明2の仰向け姿勢移動具は、発明1の仰向け姿勢移動具において、前記板状体は、複数の板状体からなり、前記ボール式移動部は、各板状体に1又は複数のボールキャスタが固定され、当該ボールキャスタが固定された複数の板状体が関節部を介して折り曲げ可能に接続された構成となっている。
〔発明3〕 さらに、発明3の仰向け姿勢移動具は、発明1又は2の仰向け姿勢移動具において、前記ボール式移動部は、背負われた状態において前記ボールキャスタが背骨を挟んだ両側にそれぞれ背骨に沿って配置された構成となっている。
【0007】
〔発明4〕 さらに、発明4の仰向け姿勢移動具は、発明1乃至3のいずれか1の仰向け姿勢移動具において、前記板状体に取り付けられた前記ボール式移動部の下端部を腰に固定するためのベルト部を有する。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、発明1の仰向け姿勢移動具によれば、ボールキャスタによってボール式移動部を構成したので、車輪タイプのキャスタを有する従来の寝板と比較して、装着して仰向け姿勢となったときの高さを低く構成することができる。これにより、従来の寝板と比較して、作業面が低い場所に潜りこみやすく且つ低い場所での作業空間の確保が容易となる。また、背負い帯によって、ボール式移動部を背負うことが出来る構成としたので、従来の寝板と比較して、持ち運びが容易である。
【0009】
さらに、発明2の仰向け姿勢移動具によれば、関節部を介してボールキャスタの固定された板状体を折り曲げることができるので、仰向け姿勢で移動中に段差を乗り越え易くすることができる。
さらに、発明3の仰向け姿勢移動具によれば、背骨の位置を避けるようにボールキャスタを配置するようにしたので、接地によって最も荷重がかかるボールキャスタからの負荷が背骨にかかるのを避けることができる。
さらに、発明4の仰向け姿勢移動具によれば、ベルト部によってボール式移動部の下端部を腰に固定できるので、移動中や作業中などに仰向け姿勢移動具が身体から外れるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る仰向け姿勢移動具1の一構成例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図2】仰向け姿勢移動具1を構成するボールキャスタ21の一例を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図3】(a)~(c)は、左上移動片部20La、左中移動片部20Lb及び左下移動片部20Lc並びに右上移動片部20Ra、右中移動片部20Rb及び右下移動片部20Rcの構成を示す図である。
図4】(a)は、左上クッション部24Laの内側に、左上移動片部20Laを配置する方法の一例を示す図であり、(b)は、配置後に縫い合わせた状態を示す図である。
図5】(a)は、接地状態のボール式移動部2の一部を左側面側から見た部分側面図であり、(b)はボール式移動部2の上部が関節部25aを介して折れ曲がった状態を示す部分側面図である。
図6】仰向け姿勢移動具1を装着した使用者200が移動可能な方向を示す図である。
図7】(a)は、仰向け姿勢移動具1を装着した使用者200が作業面300の下に潜り込んで作業をしている状態を示す図であり、(b)は、段差400を乗り越えるために仰向け姿勢移動具1の上部を折り曲げている状態を示す図である。
図8】変形例に係る仰向け姿勢移動具1Aを装着した使用者200を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔構成〕
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1乃至図7は、本実施の形態を示す図である。
まず、本実施の形態の構成を説明する。
図1は、本実施の形態に係る仰向け姿勢移動具1の一構成例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。図2は、仰向け姿勢移動具1を構成するボールキャスタ21の一例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。図3(a)~(c)は、左上移動片部20La、左中移動片部20Lb及び左下移動片部20Lc並びに右上移動片部20Ra、右中移動片部20Rb及び右下移動片部20Rcの構成を示す図である。
【0012】
仰向け姿勢移動具1は、人の背中に装着して使用するものであり、車の下や建築物の基礎下などの作業面が低い場所に仰向け姿勢の状態で潜るためのものである。そして、作業面にある作業対象物(保護カバー等を取り外した部位も含む)に対して作業を行うためのものである。
以下、図1(a)に示す矢印の方向に従って構成を説明する。
仰向け姿勢移動具1は、図1(a)及び(b)、図2(a)及び(b)並びに図3(a)~(c)に示すように、ボール式移動部2と、装着部3とを備える。
【0013】
ボール式移動部2は、左移動部20Lと、右移動部20Rと、クッション部24とを備える。
クッション部24は、正面視矩形横長のクッション性を有する部材を用いて構成された、上クッション部24a、中クッション部24b及び下クッション部24cを備える。
上クッション部24a及び下クッション部24cは、同じ形状及び同じ寸法に構成されている。また、中クッション部24bは、上クッション部24a及び下クッション部24cと左右方向の幅(以下、「横幅」という)が同じ寸法で且つ上下方向の幅(以下、「縦幅」という)が長い(図1の例では2倍程度長い)寸法に構成されている。
【0014】
左移動部20Lは、左上移動片部20La、左中移動片部20Lb及び左下移動片部20Lcと、左上クッション部24La、左中クッション部24Lb及び左下クッション部24Lcとを備える。ここで、左上クッション部24La、左中クッション部24Lb及び左下クッション部24Lcは、上クッション部24a、中クッション部24b及び下クッション部24cの左端部をそれぞれ内側に折り畳んで縫い合わせることで構成されている。
【0015】
右移動部20Rは、右上移動片部20Ra、右中移動片部20Rb及び右下移動片部20Rcと、右上クッション部24Ra、右中クッション部24Rb及び右下クッション部24Rcとを備える。ここで、右上クッション部24Ra、右中クッション部24Rb及び右下クッション部24Rcは、上クッション部24a、中クッション部24b及び下クッション部24cの右端部をそれぞれ内側に折り畳んで縫い合わせることで構成されている。
【0016】
左上移動片部20Laは、正面視矩形の板状体22Laと、板状体22Laの正面側の板面にそれぞれ長手方向(上下方向)に沿って間隔を空けて固定された2つのボールキャスタ21とを備える。左下移動片部20Lcは、板状体22Laと同じ寸法の板状体22Lcと、板状体22Lcの正面側の板面にそれぞれ長手方向に沿って間隔を空けて固定された2つのボールキャスタ21とを備える。
右上移動片部20Raは、正面視矩形の板状体22Raと、板状体22Raの正面側の板面にそれぞれ長手方向に沿って間隔を空けて固定された2つのボールキャスタ21とを備える。右下移動片部20Rcは、板状体22Raと同じ寸法の板状体22Rcと、板状体22Rcの正面側の板面にそれぞれ長手方向に沿って間隔を空けて固定された2つのボールキャスタ21とを備える。
【0017】
左中移動片部20Lbは、正面視矩形で且つ左上移動片部20La及び左下移動片部20Lcよりも縦方向に長尺(図1の例では2倍程度長尺)な板状体22Lbと、板状体22Lbの正面側の板面に長手方向に沿ってそれぞれ等間隔に固定された4つのボールキャスタ21とを備える。
右中移動片部20Rbは、右上移動片部20Ra及び右下移動片部20Rcよりも縦方向に長尺(図1の例では2倍程度長尺)な板状体22Rbと、板状体22Rbの正面側の板面に長手方向に沿ってそれぞれ等間隔に固定された4つのボールキャスタ21とを備える。
【0018】
ここで、ボールキャスタ21は、正面視で外形が略正方形の板状のベース部21aと、ベース部21aの中央部にドーム状に立設し且つ上部に開口部を有するボール受け部21bと、ボール受け部21bの開口部から一部が露出するように且つ転動自在にボール受け部21bに支持された真球のボール21cと、ベース部21aの四隅にそれぞれ設けられた固定用の4つのボルト穴21dとを備える。
なお、ボールキャスタ21は、比較的重量の大きい人体(特に上半身)を支持することを考慮して、ボール受け部21bの内側で複数の小球からなるボールベアリングによってボール21cを転動自在に支持する構成としてもよいし、バネ等の弾性部材によってボール21cを正面側及び背面側に進退可能に弾性支持する構成としてもよい。
【0019】
そして、左移動部20Lは、左上移動片部20Laを左上クッション部24Laの内側に、左中移動片部20Lbを左中クッション部24Lbの内側に、左下移動片部20Lcを左下クッション部24Lcの内側に、それぞれ各ボールキャスタ21のボール21c側の一部を露出した状態で全体を包み込んだ構成となっている。
同様に、右移動部20Rは、右上移動片部20Raを右上クッション部24Raの内側に、右中移動片部20Rbを右中クッション部24Rbの内側に、右下移動片部20Rcを右下クッション部24Rcの内側に、それぞれ各ボールキャスタ21のボール21c側の一部を露出した状態で包み込んだ構成となっている。
【0020】
ここで、図4(a)は、左上クッション部24Laの内側に、左上移動片部20Laを配置する方法の一例を示す図であり、(b)は、配置後に縫い合わせた状態を示す図である。
図4(a)に示すように、上クッション部24aの左端部を内側に折り畳んで形成される左上クッション部24Laの正面側には、ボールキャスタ21のボール21c側の一部を露出するための2つのキャスタ用穴24hが設けられている。
すなわち、折り畳んだ内側に左上移動片部20Laを挿入するとともに、2つのボールキャスタ21のボール21c側の一部がキャスタ用穴24hから露出するように左上移動片部20Laを配置する。図4に示す例では、ボール受け部21bの大部分と、ボール21cのボール受け部21bからの露出部分の全体とがキャスタ用穴24hから外部に露出している。
【0021】
左上移動片部20Laを内側に配置後は、図4(b)に示すように、折り返した部分の左上移動片部20Laの周囲を上クッション部24aに縫い合わせることで左上移動片部20Laの位置を固定する。なお、糸を用いた縫い付けによる固定に限らず接着剤を用いて固定してもよいし、糸による縫い付けと接着剤とを併用してより強固に固定してもよい。なお、他の移動片部についても同様の方法で左右のクッション部に包み込む構成となっている。
【0022】
また、左上クッション部24La、右上クッション部24Ra及びこれらに挟まれた上クッション部24aの中央部分の下端と、左中クッション部24Lb、右中クッション部24Rb及びこれらに挟まれた中クッション部24bの中央部分の上端とは、柔軟性を有する素材から構成された関節部25aを介して連結されている。同様に、左中クッション部24Lb、右中クッション部24Rb及びこれらに挟まれた中クッション部24bの中央部分の下端と、左下クッション部24Lc、右下クッション部24Rc及びこれらに挟まれた下クッション部24cの中央部分の上端とは、柔軟性を有する素材から構成された関節部25bを介して連結されている。
【0023】
すなわち、左上クッション部24Laと、右上クッション部24Raと、これらに挟まれた上クッション部24aの中央部分とは、左中クッション部24Lb、右中クッション部24Rb及びこれらに挟まれた中クッション部24bの中央部分に対して、関節部25aを介して折れ曲がり可能に構成されている。同様に、左下クッション部24Lcと、右下クッション部24Rcと、これらに挟まれた下クッション部24cの中央部分とは、左中クッション部24Lb、右中クッション部24Rb及びこれらに挟まれた中クッション部24bの中央部分に対して、関節部25bを介して折れ曲がり可能に構成されている。
【0024】
ここで、図5(a)は、接地状態のボール式移動部2の一部を左側面側から見た部分側面図であり、(b)は、左上移動片部20Laを含むボール式移動部2の上部が関節部25aを介して折れ曲がった状態を示す部分側面図である。
図5(a)及び(b)に示すように、ボール式移動部2は、関節部25aが柔軟性を有する部材から構成されており、関節部25aを折り曲げることで関節部25aよりも上部側の部位を折り曲げることができる。このことは、ボール式移動部2の関節部25bよりも下部側についても同様で、図示省略するが、関節部25bを折り曲げることで下部側の部位を折り曲げることができる。
【0025】
装着部3は、図1(a)及び(b)に示すように、左ショルダーハーネス30Lと、右ショルダーハーネス30Rと、ベルト部31とを備える。
左ショルダーハーネス30Lは、強靭な素材の帯状体をクッション材で覆った構成となっており、一端部が左移動部20Lの上端に例えば縫い付けにより取り付けられ、他端部が左中移動片部20Lbの背面の下部に例えば縫い付けにより取り付けられている。右ショルダーハーネス30Rは、強靭な素材の帯状体をクッション材で覆った構成となっており、一端部が右移動部20Rの上端に縫い付けにより取り付けられ、他端部が右中移動片部20Rbの背面の下部に例えば縫い付けにより取り付けられている。
【0026】
なお、左ショルダーハーネス30L及び右ショルダーハーネス30Rをそれぞれ2本に分離し、肩や脇などにかかる一方の部分をクッション材で覆い、身体にかからない他方の部分を帯状体のままにして帯状体側に長さ調節の機能を設ける構成としてもよい。
ベルト部31は、一端部が左下クッション部24Lcの正面側の左端部に例えば縫い付けにより取り付けられ他端部が自由端となる左ベルト部31aと、一端部が右下クッション部24Rcの正面側の右端部に例えば縫い付けにより取り付けられ他端部が自由端となる右ベルト部31bとを備える。加えて、左ベルト部31aの自由端に雄部が取り付けられ、右ベルト部31bの自由端に雌部が取り付けられ、雄部及び雌部を介して左ベルト部31a及び右ベルト部31bの自由端を着脱自在に連結する連結部31cを備える。
【0027】
なお、左ベルト部31a及び右ベルト部31bのいずれか一方を2本に分離して、長さ調節の機能を設ける構成としてもよい。
〔動作〕
次に、仰向け姿勢移動具1の動作を説明する。
図6は、仰向け姿勢移動具1を装着した使用者200が移動可能な方向を示す図である。
使用者は、まず、仰向け姿勢移動具1のボール式移動部2の背面側(ボールキャスタ21の無い側)を背中側に向けた状態で左ショルダーハーネス30L及び右ショルダーハーネス30Rに腕を通して両肩にかけることで、仰向け姿勢移動具1を背中に背負う。続いて、左ベルト部31a及び右ベルト部31bを連結部31cを介して連結することで、左ショルダーハーネス30L及び右ショルダーハーネス30R並びにベルト部31によって、仰向け姿勢移動具1を上半身の背中側に固定する。
【0028】
この状態では、ボール式移動部2の左移動部20L及び右移動部20Rが背骨を挟んだ左側及び右側に配置され、背骨に沿って複数のボールキャスタ21が直線状に配置される。
続いて、仰向け姿勢移動具1を装着した状態で、例えば、お尻を地面100につけて膝を立てた姿勢となり、この姿勢から背中側を地面100に近づけながらボール式移動部2の左移動部20L及び右移動部20Rのボールキャスタ21を接地させて仰向けに寝る。
【0029】
この仰向け姿勢の状態で、お尻、頭、腕が地面100につかないようにして、足で地面100を蹴ることで、図6に示すように、仰向け姿勢の状態で上下左右斜め方向と全方向(図6中の矢印以外の方向も含む)に移動することが可能である。なお、仰向け姿勢で潜る場所の手前までは、仰向け姿勢移動具1を背負った状態で歩いて移動することができる。
次に、仰向け姿勢移動具1の具体的な使用例について説明する。
図7(a)は、仰向け姿勢移動具1を装着した使用者200が作業面300の下に潜り込んで作業をしている状態を示す図であり、図7(b)は、段差400を乗り越えるために仰向け姿勢移動具1の上部を折り曲げている状態を示す図である。
【0030】
図7(a)に示すように、使用者200は、仰向け姿勢移動具1を背負った状態で仰向け姿勢となり、足や手などで地面100を押して接地した状態のボールキャスタ21を転動させることで車の下や建築物の基礎下などの作業面300の下に潜り込む。そして、作業面300の作業対象物(不図示)に対して仰向け姿勢の状態で作業を行う。このとき、ボールキャスタ21に転動力を与えて所望の方向に移動することで作業位置を調整することができる。
【0031】
一方、図7(b)に示すように、作業面300の下側のボールキャスタ21の進行方向の地面100に段差400がある場合は、そのまま真っすぐに進むと段差400にボールキャスタ21のボール21cがぶつかって移動が止まってしまう。このようなとき、使用者200は、頭を少し上に上げて移動することで関節部25aより上の部分が上方に折れ曲がって段差400の斜面に折れ曲がった部分のボール21cを接地することができ段差400を乗り越え易くすることができる。
【0032】
〔実施の形態の効果〕
次に、本実施の形態の効果を説明する。
本実施の形態では、仰向け姿勢移動具1を、ボール式移動部2と、装着部3とを備え、ボール式移動部2が、左移動部20Lと、右移動部20Rと、クッション部24とを備える構成とした。加えて、左移動部20Lが、板状体22La、22Lb及び22Lcの一方の板面に2つ又は4つのボールキャスタ21を固定した構成の左上移動片部20La、左中移動片部20Lb及び左下移動片部20Lcを備える構成とした。さらに、右移動部20Rが、板状体22Ra、22Rb及び22Rcの一方の板面に2つ又は4つのボールキャスタ21を固定した構成の右上移動片部20Ra、右中移動片部20Rb及び右下移動片部20Rcを備える構成とした。なおさらに、装着部3が、左ショルダーハーネス30Lと、右ショルダーハーネス30Rと、ベルト部31とを備える構成とし、ボール式移動部2を背中に背負えることができるとともにベルト部31により腰回りに固定できる構成とした。
【0033】
このような構成であれば、車輪タイプのキャスタを有する従来の寝板と比較して、装着して仰向け姿勢となったときの高さを低く構成することができる。これにより、従来の寝板と比較して、作業面が低い場所に潜りこみやすく且つ低い場所での作業空間の確保が容易となる。また、左及び右ショルダーハーネス30L及び30Rによって、ボール式移動部を背負うことが出来る構成としたので、従来の寝板と比較して、持ち運びが容易である。さらに、ベルト部31によってボール式移動部2の下端部を腰に固定できるので、移動中などに仰向け姿勢移動具1が身体から外れるのを防ぐことができる。また、背骨の位置を避けるようにボールキャスタ21を配置するようにしたので、接地によって最も荷重がかかるボールキャスタ21からの負荷が背骨にかかるのを避けることができる。
【0034】
また、本実施の形態では、左上移動片部20La、左中移動片部20Lb及び左下移動片部20Lc並びに右上移動片部20Ra、右中移動片部20Rb及び右下移動片部20Rcを、クッション部24の左右端部を折り畳んで形成した左上クッション部24La、左中クッション部24Lb及び左下クッション部24Lc並びに右上クッション部24Ra、右中クッション部24Rb及び右下クッション部24Rcの内側に、それぞれ各ボールキャスタ21のボール21c側の一部を露出した状態で全体を包み込んだ構成とした。
【0035】
このような構成であれば、背負ったときに背中に当たる部分がクッション性を有するクッション部となるので仰向け姿勢となってボール式移動部2に体重がかかったときに背中にかかる負担を軽減することができる。
また、本実施の形態では、左上クッション部24La、右上クッション部24Ra及びこれらに挟まれた上クッション部24aの中央部分を、左中クッション部24Lb、右中クッション部24Rb及びこれらに挟まれた中クッション部24bの中央部分に対して、関節部25aを介して折れ曲がり可能に構成した。加えて、左下クッション部24Lc、右下クッション部24Rc及びこれらに挟まれた下クッション部24cの中央部分を、左中クッション部24Lb、右中クッション部24Rb及びこれらに挟まれた中クッション部24bの中央部分に対して、関節部25bを介して折れ曲がり可能に構成した。
【0036】
このような構成であれば、仰向け姿勢で頭を上げたり又は腰を上げたりすることで、関節部25a又は25bを介してボール式移動部2の上側又は下側を折り曲げることができる。これにより、仰向け姿勢で移動中に段差を乗り越え易くすることができる。
〔対応関係〕
上記実施の形態において、左ショルダーハーネス30L及び右ショルダーハーネス30Rは、背負い帯に対応している。
〔変形例〕
なお、上記実施の形態において、例えば、図8に示す仰向け姿勢移動具1Aに示すように、仰向け状態のときに頭を支持する頭支持部4を設ける構成としてもよい。頭支持部4は、伸縮自在な構成として不使用時に短くすることができる構成としてもよい。このような構成であれば、作業中に頭支持部4によって頭を支持することができるので、首の疲れを低減することができる。
【0037】
また、上記実施の形態及びその変形例において、複数の板状体を関節部を介して連結する構成としたが、この構成に限らない。例えば、複数の板状体を関節部を介さず連結する構成、1枚の板状体にボールキャスタを複数設ける構成、板状体を左右に分けずに1枚の横長の板状体を複数枚関節部を介して連結する構成とするなど他の構成としてもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例において、ボールキャスタ21の数を、左側8個、右側8個の計16個を配置する構成としたが、この構成に限らない。例えば、1枚の板状体から構成する場合は、4隅に1つずつ配置するなど、ボール式移動部2が板面と平行な方向に移動できる範囲であれば、板状体の構成に合わせて他の数を配置する構成としてもよい。
【0038】
また、上記実施の形態及びその変形例において、背骨を挟んで左右に一列ずつボールキャスタ21を配置する構成としたが、この構成に限らず、背骨の位置を避けた配置であれば、左右二列ずつなど他の配置構成としてもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例において、関節部25a及び25bを柔らかい素材から構成したが、この構成に限らず、例えば蝶番などで機械的に構成するなど他の構成としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1,1A…仰向け姿勢移動具、 2…ボール式移動部、 3…装着部、 4…頭支持部、 20L…左移動部、 20R…右移動部、 20La,20Lb,20Lc…左上,左中,左下移動片部、 20Ra,20Rb,20Rc…右上,右中,右下移動片部、 21…ボールキャスタ、 21a…ベース部、 21b…ボール受け部、 21c…ボール、 21d…ボルト穴、 22La,22Lb,22Lc,22Ra,22Rb,22Rc…板状体、 24…クッション部、 24a,24b,24c…上,中,下クッション部、 24La,24Lb,24Lc…左上,左中,左下クッション部、 24Ra,24Rb,24Rc…右上,右中,右下クッション部、 24h…キャスタ用穴、 25a,25b…関節部
【要約】
【課題】作業面が低い場所での利用に好適で且つ持ち運びが容易な仰向け姿勢移動具を提供する。
【解決手段】仰向け姿勢移動具1は、複数の板状体22La,22Lb,22Lc,22Ra,22Rb,22Rcの各板状体の一方の板面に、2つ又は4つのボールキャスタ21を、板状体が板面と平行な方向に移動可能に固定した構成の左移動部20L及び右移動部20Rを有するボール式移動部2と、各板状体の他方側の板面を背中側にしてボール式移動部2を背負うために板状体に取り付けられた左ショルダーハーネス30L及び右ショルダーハーネス30Rとを備える。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8