(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】2足ロボットのモータドライブシステム及びインテリジェント温度保護方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/02 20160101AFI20220513BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20220513BHJP
H02P 29/60 20160101ALI20220513BHJP
H02P 27/08 20060101ALI20220513BHJP
H02P 21/22 20160101ALI20220513BHJP
【FI】
H02P29/02
B25J19/06
H02P29/60
H02P27/08
H02P21/22
(21)【出願番号】P 2021546446
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 CN2020115411
(87)【国際公開番号】W WO2021047679
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】202010160736.0
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521162399
【氏名又は名称】之江実験室
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】▲華▼ ▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】孔 令雨
(72)【発明者】
【氏名】成 利波
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ 安桓
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 丹
(72)【発明者】
【氏名】朱 世▲強▼
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-211380(JP,A)
【文献】特開平05-111891(JP,A)
【文献】特開平09-282020(JP,A)
【文献】特開2011-254684(JP,A)
【文献】特開2008-136312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0373047(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0025199(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第101087125(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103490385(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
H02P 21/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2足ロボットのモータドライブシステムのインテリジェント温度保護方法であって、
前記モータドライブシステムは電気的に接続されるモータ及びモータドライブ装置を備え、前記モータにはそれぞれモータ回転子の位置及び温度をセンシングするための位置センサ及び温度センサが嵌め込まれ、前記モータドライブ装置はその内部に設置されるパワードライブモジュール、検出モジュール、温度指示モジュール、温度収集モジュール、プロセッサモジュールを備え、
前記検出モジュールはそれぞれモータ回転子位置、三相モータ電流及び母線電圧を検出してプロセッサモジュールに送信するための位置検出モジュール、電流検出モジュール及び母線電圧検出モジュールを備え、
前記温度収集モジュールはモータの内部、パワートランジスタの表面及び母線電解コンデンサの表面に取り付けられる各温度センサの信号を収集して、信号処理を行ってから前記プロセッサモジュールに送信することに用いられ、
前記温度指示モジュールはモータドライブシステムに部品の温度が所定の温度閾値を超えることが存在するかどうかを指示するために用いられ、
前記プロセッサモジュールは2足ロボットの中央コントローラーから送信された制御信号と、前記検出モジュール及び温度収集モジュールの信号とを受信して、受信された信号を処理してから得られたPWM信号をパワードライブモジュールに出力し、前記プロセッサモジュールはモータドライブシステムにおける部品の温度が所定の温度閾値を超えることが存在するかどうかによって前記温度指示モジュールを開閉し、システムにおける部品の温度が第1温度閾値を超えることが存在する場合、前記プロセッサモジュールは出力パワーを制限し、システムにおける部品の温度が第2温度閾値を超えることが存在する場合、前記プロセッサモジュールは温度故障信号を2足ロボットの中央コントローラーに出力し、
前記パワードライブモジュールはプロセッサモジュールから出力されたモータ制御信号を受信し、それをパワー信号に変換することにより、モータをドライブすることに用いられ、
前記インテリジェント温度保護方法は、
モータ運転過程において、モータ、各パワートランジスタ、各母線電解コンデンサの温度を読み取って、測定温度T
1、T
2、T
3を取得し、T
1がモータの現在の温度を示し、T
2が各パワートランジスタの温度の最大値を示し、T
3が各母線電解コンデンサの温度の最大値を示すステップS1と、
それぞれT
1とモータの第1温度閾値T
1m-1及びモータの第2温度閾値T
1m-2とを、T
2とパワートランジスタの第1温度閾値T
2m-1及びパワートランジスタの第2温度閾値T
2m-2とを、T
3と電解コンデンサの第1温度閾値T
3m-1及び電解コンデンサの第2温度閾値T
3m-2とを比較し、システムにおいて各部品の温度が第1温度閾値、第2温度閾値を超えるかどうかを判断し、T
1m-1<T
1<T
1m-2又はT
2m-1<T
2<T
2m-2又はT
3m-1<T
3<T
3m-2の場合、システムにおける部品の温度が第1温度閾値を超えることが存在すると判断し、且つ青/赤2色LED指示灯に青色を表示させ、T
1>T
1m-2又はT
2>T
2m-2又はT
3>T
3m-2の場合、システムにおける部品の温度が第2温度閾値を超えることが存在すると判断し、且つ青/赤2色LED指示灯に赤色を表示させ、他の場合、システムが通常の動作状態にあると判断し、青/赤2色LED指示灯をオフし、
T
1m-1<T
1m-2<T
1-max、T
2m-1<T
2m-2<T
2-max、T
3m-1<T
3m-2<T
3-maxであり、T
1-max、T
2-max、T
3-maxがそれぞれモータの最大動作温度、パワートランジスタの最大動作温度、電解コンデンサの最大動作温度であるステップS2と、
システムにおける部品の温度が第1温度閾値を超えることが存在する場合、モータの最大出力パワーP
max-newを次の式のように制限し、
【数1】
P
1=P
max-K
1×(T
1-T
1m-1)、P
2=P
max-K
2×(T
2-T
2m-1)、P
3=P
max-K
3×(T
3-T
3m-1)であり、K
1、K
2、K
3が定数係数であり、P
maxがモータドライブシステムの元の最大出力パワーであり、T
e-minが現在の2足ロボットの関節運動を維持する最小トルクであり、nが現在の回転速度であるステップS3と、を含み、
システムにおける部品の温度が第2温度閾値を超えることが存在する場合、温度故障信号を2足ロボットの中央コントローラーに出力し、現在のタスクを停止させることを特徴とする2足ロボットのモータドライブシステムのインテリジェント温度保護方法。
【請求項2】
前記パワードライブモジュールはパワートランジスタドライブ回路と、MOS又はIGBTパワートランジスタからなる三相フルブリッジ回路とを備えることを特徴とする請求項1に記載の2足ロボットのモータドライブシステムのインテリジェント温度保護方法。
【請求項3】
前記モータ回転子位置の検出はモータに嵌め込まれる位置センサの信号を収集することにより実施され、前記母線電圧の検出は抵抗を利用して母線電圧を分圧することにより実施されることを特徴とする請求項1に記載の2足ロボットのモータドライブシステムのインテリジェント温度保護方法。
【請求項4】
前記プロセッサモジュールはSTM32又はDSPを用いることを特徴とする請求項1に記載の2足ロボットのモータドライブシステムのインテリジェント温度保護方法。
【請求項5】
前記温度センサは熱抵抗を用いることを特徴とする請求項1に記載の2足ロボットのモータドライブシステムのインテリジェント温度保護方法。
【請求項6】
前記温度指示モジュールは青/赤2色LED指示灯を用いて実施され、システムに存在する部品の温度値が第1温度閾値を超える場合、青/赤2色LED指示灯は青色を表示し、第2温度閾値を超える場合、青/赤2色LED指示灯は赤色を表示することを特徴とする請求項1に記載の2足ロボットのモータドライブシステムのインテリジェント温度保護方法。
【請求項7】
前記モータが表面実装型永久磁石同期モータである場合、前記ステップS3におけるモータの最大出力パワーを制限することは、所定のi
q
*を制限することにより実施され、
所定のi
q
*を制限する計算式は、以下のとおりであり、
【数2】
i
q-new
*がパワー制限した後の所定の横軸電流であり、i
q
*が速度調整器から出力された元の横軸電流であり、n
pがモータの極対数であり、nがモータの現在の回転速度であり、Ψ
fが永久磁石の鎖交磁束であることを特徴とする請求項1に記載の2足ロボットのモータドライブシステムのインテリジェント温度保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ制御技術分野に属し、具体的に2足ロボットのモータドライブシステム及びインテリジェント温度保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2足ロボットは直立歩行やそれに関連する動作を実現することができ、動作が柔軟且つ自在で安定するという利点を有し、人間の生活環境に良く適応でき、人間のために多くの問題を解決することが期待される。現在、電池は2足ロボットの主流のエネルギー形式であるが、航続時間が短いという問題がある。モータドライブシステムは電気ドライブ型2足ロボットの重要な構成部分であり、1つの2足ロボットには30個以上のモータ及びドライブ装置が存在することができ、従って、モータドライブシステムの軽量化設計により2足ロボットの重量を軽減し、2足ロボットの柔軟性及び航続力を更に向上させることができる。
【0003】
モータドライブシステムの軽量化設計を実現するために、2足ロボットのモータを設計する際にパワー密度をできる限り高くする必要があり、モータドライブ装置も軽量化設計を必要としている。モータパワー密度の向上に伴い、モータの発熱量が増加することとなり、それによりモータの温度が上昇し、モータの通常動作に影響してしまう。放熱装置はモータドライブ装置の不可欠な部分であり、軽量化設計を実現するために、モータドライブ装置の放熱装置はできる限り小さく設計される可能性があり、それにより放熱効果が低下し、ドライブ装置の内部部品の耐用年数及び信頼性に影響してしまう。従って、モータドライブシステムの軽量化設計とシステムの信頼性との間に矛盾が存在し、モータドライブシステムの重量を軽減すると、システムが過熱しやすくなり、それによりシステムの信頼性に影響してしまう。
【0004】
従って、2足ロボットの高パワー密度の軽量化モータドライブシステムを設計するとき、システムの信頼性を確保するようにシステムのキー部品に対して温度検出を行う必要がある。中国特許番号CN205882676Uには、モータドライブ回路におけるパワートランジスタの温度を検出して、温度閾値を超えてからモータのドライブを停止させる。このような方法はモータドライブシステムの信頼性をある程度向上できるが、2足ロボットの通常走行に影響し、ひいては2足ロボットを転倒して損傷させてしまう。中国特許番号CN105517902Aには、無人航空機のモータの温度を検出してパワーを動的に調整することにより、無人航空機モータの信頼性を向上させる。このような方法はモータの信頼性を向上できるが、モータドライブ装置の信頼性を確保できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の欠点に対して、本発明はインテリジェント温度保護機能を持つ2足ロボットのモータドライブシステム及び制御方法を提供し、具体的な技術案は以下のとおりである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
2足ロボットのモータドライブシステムであって、
前記モータドライブシステムは電気的に接続されるモータ及びモータドライブ装置を備え、前記モータにはそれぞれモータ回転子の位置及び温度をセンシングするための位置センサ及び温度センサが嵌め込まれ、前記モータドライブ装置はその内部に設置されるパワードライブモジュール、検出モジュール、温度指示モジュール、温度収集モジュール、プロセッサモジュールを備え、
前記検出モジュールはそれぞれモータ回転子位置、三相モータ電流及び母線電圧を検出してプロセッサモジュールに送信するための位置検出モジュール、電流検出モジュール及び母線電圧検出モジュールを備え、
前記温度収集モジュールはモータの内部、パワートランジスタの表面及び母線電解コンデンサの表面に取り付けられる各温度センサの信号を収集して、信号処理を行ってから前記プロセッサモジュールに送信することに用いられ、
前記温度指示モジュールはモータドライブシステムに部品の温度が所定の温度閾値を超えることが存在するかどうかを指示するために用いられ
前記プロセッサモジュールは2足ロボットの中央コントローラーから送信された制御信号と、前記検出モジュール及び温度収集モジュールの信号とを受信して、受信された信号を処理してから得られたPWM信号をパワードライブモジュールに出力し、前記プロセッサモジュールはモータドライブシステムにおける部品の温度が所定の温度閾値を超えることが存在するかどうかによって前記温度指示モジュールを開閉し、システムにおける部品の温度が第1温度閾値を超えることが存在する場合、前記プロセッサモジュールは出力パワーを制限し、システムにおける部品の温度が第2温度閾値を超えることが存在する場合、前記プロセッサモジュールは温度故障信号を2足ロボットの中央コントローラーに出力し、
前記パワードライブモジュールはプロセッサモジュールから出力されたモータ制御信号を受信し、それをパワー信号に変換することにより、モータをドライブすることに用いられる2足ロボットのモータドライブシステム。
【0007】
更に、前記パワードライブモジュールはパワートランジスタドライブ回路と、MOS又はIGBTパワートランジスタからなる三相フルブリッジ回路とを備える。
【0008】
更に、前記モータ回転子位置の検出はモータに嵌め込まれる位置センサの信号を収集することにより実施され、前記母線電圧の検出は抵抗を利用して母線電圧を分圧することにより実施される。
【0009】
更に、前記プロセッサモジュールはSTM32又はDSPを用いる。
【0010】
更に、前記温度センサは熱抵抗を用いる。
【0011】
更に、前記温度指示モジュールは青/赤2色LED指示灯を用いて実施され、システムに存在する部品の温度値が第1温度閾値を超える場合、青/赤2色LED指示灯は青色を表示し、第2温度閾値を超える場合、青/赤2色LED指示灯は赤色を表示する。
【0012】
2足ロボットのモータドライブシステムのインテリジェント温度保護方法において、該方法はモータドライブシステムにより実現され、前記方法は、
モータ運転過程において、モータ、各パワートランジスタ、各母線電解コンデンサの温度を読み取って、測定温度T
1、T
2、T
3を取得し、T
1がモータの現在の温度を示し、T
2が各パワートランジスタの温度の最大値を示し、T
3が各母線電解コンデンサの温度の最大値を示すステップS1と、
それぞれT
1とモータの第1温度閾値T
1m-1及びモータの第2温度閾値T
1m-2とを、T
2とパワートランジスタの第1温度閾値T
2m-1及びパワートランジスタの第2温度閾値T
2m-2とを、T
3と電解コンデンサの第1温度閾値T
3m-1及び電解コンデンサの第2温度閾値T
3m-2とを比較し、システムにおいて各部品の温度が第1温度閾値、第2温度閾値を超えるかどうかを判断し、T
1m-1<T
1<T
1m-2又はT
2m-1<T
2<T
2m-2又はT
3m-1<T
3<T
3m-2の場合、システムにおける部品の温度が第1温度閾値を超えることが存在すると判断し、且つ青/赤2色LED指示灯に青色を表示させ、T
1>T
1m-2又はT
2>T
2m-2又はT
3>T
3m-2の場合、システムにおける部品の温度が第2温度閾値を超えることが存在すると判断し、且つ青/赤2色LED指示灯に赤色を表示させ、他の場合、システムが通常の動作状態にあると判断し、青/赤2色LED指示灯をオフし、
T
1m-1<T
1m-2<T
1-max、T
2m-1<T
2m-2<T
2-max、T
3m-1<T
3m-2<T
3-maxであり、T
1-max、T
2-max、T
3-maxがそれぞれモータの最大動作温度、パワートランジスタの最大動作温度、電解コンデンサの最大動作温度であるステップS2と、
システムにおける部品の温度が第1温度閾値を超えることが存在する場合、モータの最大出力パワーP
max-newを以下の式のように制限し、
【数1】
P
1=P
max-K
1×(T
1-T
1m-1)、P
2=P
max-K
2×(T
2-T
2m-1)、P
3=P
max-K
3×(T
3-T
3m-1)であり、K
1、K
2、K
3が定数係数であり、P
maxがモータドライブシステムの元の最大出力パワーであり、T
e-minが現在の2足ロボットの関節運動を維持する最小トルクであり、nが現在の回転速度であるステップS3と、を含み、
システムにおける部品の温度が第2温度閾値を超えることが存在する場合、温度故障信号を2足ロボットの中央コントローラーに出力し、現在のタスクを停止させる。
【0013】
更に、前記モータが表面実装型永久磁石同期モータである場合、前記ステップS3におけるモータの最大出力パワーを制限することは、所定のi
q
*を制限することにより実施され、
所定のi
q
*を制限する計算式は、以下のとおりであり、
【数2】
i
q-new
*がパワー制限した後の所定の横軸電流であり、i
q
*が速度調整器から出力された元の横軸電流であり、n
pがモータの極対数であり、nがモータの現在の回転速度であり、Ψ
fが永久磁石の鎖交磁束である2足ロボットのモータドライブシステムのインテリジェント温度保護方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0015】
本発明に係るモータドライブシステム及び制御方法によれば、キー部品(モータ、パワートランジスタ、母線電解コンデンサ等)に対して温度検出を行うことができ、温度が一定の温度閾値に達した後、モータの最大出力パワーを制御して、キー部品の温度の更なる増加を抑制し、温度が第2温度閾値を超えた後、温度故障情報を2足ロボットの中央コントローラーに送信して、2足ロボットに現在のタスクを直ちに停止させ、それによりモータドライブシステムが過熱により損傷されないように確保する。本発明の方法によれば、2足ロボットの軽量化されたモータドライブシステムの信頼性を向上させることに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本発明の2足ロボットのモータドライブシステムのブロック構成図である。
【
図2】
図2は本発明の2足ロボットのモータドライブシステムのインテリジェント温度保護方法のフローチャートである。
【
図3】
図3は本発明の一実施例の永久磁石同期モータの最大パワーを制限する制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら好適な実施例によって本発明を詳しく説明する。本発明の目的及び効果はより明らかになるであろう。理解されるように、ここで説明される具体的な実施例は本発明を解釈するためのものであって、本発明を制限するためのものではない。
【0018】
本発明に係る2足ロボットのモータドライブシステムのブロック構成図はを
図1に示す。この2足ロボットのモータドライブシステムはモータ及びモータドライブ装置を備え、一定の減速比を有する減速装置と接続することができる。前記モータにはモータ回転子位置及びモータ温度を検出する位置センサ及び温度センサが嵌め込まれる。前記モータドライブ装置はケーブルによって前記モータに接続され、前記モータを制御し、モータ内の位置センサ及び温度センサのデータを受信することに用いられる。前記減速機はよく使用されるハーモニック減速機装置を用いてもよい。
【0019】
前記モータドライブ装置はケーシングと、放熱器と、前記ケーシングの内部に取り付けられる制御ボードとを備え、該制御ボードはパワードライブモジュール、位置・電流・母線電圧検出モジュール、温度指示モジュール、温度収集モジュール、プロセッサモジュール等を備える。
【0020】
前記パワードライブモジュールはプロセッサモジュールから出力されたモータ制御信号を受信してそれをパワー信号に変換することにより、サーボモータをドライブすることに用いられる。
【0021】
一実施形態として、パワードライブモジュールはパワートランジスタドライブ回路と、MOS又はIGBTパワートランジスタからなる三相フルブリッジ回路とを備える。
【0022】
前記位置・電流・母線電圧検出モジュールはモータ回転子位置、三相モータ電流及び母線電圧を検出して、プロセッサモジュールに送信して演算処理を行うことに用いられる。
【0023】
サーボモータアルゴリズムを実現するために、モータ回転子位置並びに三相モータ電流及び母線電圧を検出する必要がある。前記モータ回転子位置の検出はモータに嵌め込まれる位置センサの信号を収集することにより実施され、前記モータ電流は電流検出モジュールにより検出され、前記母線電圧の検出は抵抗を利用して母線電圧を分圧することにより実施される。
【0024】
前記温度指示モジュールは青/赤2色LED指示灯を用いて実現され、モータドライブシステムに部品の温度が第1温度閾値又は第2温度閾値を超えることが存在するかどうかを指示することに用いられる。
【0025】
前記温度収集回路はモータドライブシステムの各温度センサの信号を収集して、信号増幅、フィルタリング等の処理を行うことに用いられる。前記温度センサはモータの内部、パワートランジスタの表面及び母線電解コンデンサの表面に取り付けられる。
【0026】
温度のサンプリング精度を向上させるために、前記温度センサは白金熱抵抗を用いて、ホイートストーンブリッジと高精度の計装アンプAD620とからなるアンプ回路によって信号を処理し、最終的にプロセッサのADCインターフェースに入力する。
【0027】
前記プロセッサモジュールは2足ロボットの中央コントローラーから送信された制御信号を受信し、位置、電流、母線電圧、各部品の温度等の信号を収集して、モータ制御アルゴリズムを実行し、PWM信号をドライブモジュールに出力することにより、モータ制御を実現する。一実施形態として、プロセッサモジュールは主周波数が168MHzであり、多くのインターフェースを有するSTM32F407VGチップを採用する。
【0028】
本発明は2足ロボットのモータドライブシステムのインテリジェント温度保護方法を提供し、その制御アルゴリズムの流れは
図2に示され、具体的なステップは以下のとおりである。
【0029】
ステップ1:モータ運転過程において、キー部品(モータ、各パワートランジスタ、各母線電解コンデンサ)の温度を読み取る。測定温度T1、T2、T3を取得し、T1がモータの現在の温度を示し、T2が各パワートランジスタの温度の最大値を示し、T3が各母線電解コンデンサの温度の最大値を示す。
【0030】
ステップ2:それぞれT1とモータの第1温度閾値T1m-1及びモータの第2温度閾値T1m-2とを、T2とパワートランジスタの第1温度閾値T2m-1及びパワートランジスタの第2温度閾値T2m-2とを、T3と電解コンデンサの第1温度閾値T3m-1及び電解コンデンサの第2温度閾値T3m-2とを比較し、システムにおける各部品の温度が第1、第2温度閾値を超えるかどうかを判断し、T1m-1<T1<T1m-2又はT2m-1<T2<T2m-2又はT3m-1<T3<T3m-2の場合、システムにおける部品の温度が第1温度閾値を超えることが存在すると判断し、且つ青/赤2色LED指示灯に青色を表示させ、T1>T1m-2又はT2>T2m-2又はT3>T3m-2の場合、システムにおける部品の温度が第2温度閾値を超えることが存在すると判断し、且つ青/赤2色LED指示灯に赤色を表示させ、他の場合、システムが通常の動作状態にあると判断し、青/赤2色LED指示灯をオフし、
T1m-1<T1m-2<T1-max、T2m-1<T2m-2<T2-max、T3m-1<T3m-2<T3-maxであり、式中、T1-max、T2-max、T3-maxがそれぞれモータの最大動作温度、パワートランジスタの最大動作温度、電解コンデンサの最大動作温度である。
【0031】
ステップ3:システムにおける部品の温度が第1温度閾値を超えることが存在する場合、モータの最大出力パワーP
max-newを以下の式のように制限し、
【数3】
P
1=P
max-K
1×(T
1-T
1m-1)、P
2=P
max-K
2×(T
2-T
2m-1)、P
3=P
max-K
3×(T
3-T
3m-1)であり、K
1、K
2、K
3が定数係数であり、P
maxがモータドライブシステムの元の最大出力パワーであり、T
e-minが現在の2足ロボットの関節運動を維持する最小トルクであり、nが現在の回転速度であり、
システムにおける部品の温度が第2温度閾値を超えることが存在する場合、温度故障信号を2足ロボットの中央コントローラーに出力して、2足ロボットに現在のタスクを直ちに停止させる。
【0032】
ステップ3におけるモータの最大出力パワーの調整はモータ電流を制限することにより実現される。
【0033】
一実施形態として、2足ロボットのサーボモータは表面実装型永久磁石同期モータを用いて、位置制御方式を用いる。永久磁石同期モータの最大パワーを制限する制御ブロック図は
図3に示され、id=0に基づくベクトル制御アルゴリズムを用いて、位置サーボ制御を実現する。全体構造はカレントループ、速度ループ及び位置ループからなる。
【0034】
システムの最も外側のループは位置ループであり、所定の位置θ*は2足ロボットの中央コントローラーからのものであり、ある関節の角度を制御することに用いられ、フィードバック位置θはエンコーダデータによって計算して取得したものであり、位置調整器を通過した後、所定の回転速度n*を出力する。システムの中間のループは速度ループであり、所定の回転速度n*は位置ループの出力からのものであり、フィードバック回転速度nはエンコーダデータによって計算して取得したものであり、速度調整器を通過した後、所定の横軸電流iq
*を出力する。モータの最大出力パワーの制御を実現するために、速度ループから出力された所定の横軸電流iq
*に対して最大リミティングを行って、iq-new
*を取得する。システムの最も内側のループはカレントループであり、d軸及びq軸の2つのカレントループを含み、所定の横軸電流iq
*は最大出力パワーのリミティング出力からのものであり、直軸電流id
*=0であり、電流のフィードバックは測定された相電流iA、iBをClark変換及びPark変換を通じて、現在のid、iqを取得する。電流調整器を通過した後、横軸/直軸電圧を出力して、座標変換、SVPWM及びインバータを通過した後、モータに出力する。永久磁石同期モータの位置-回転速度-電流の3つの閉ループの制御は本技術分野でよく使用される構造形式であり、Clark及びPark座標変換、位置、回転速度、電流調整器、SVPWM等のアルゴリズムはいずれも当業者がよく知られるものであるため、ここで詳細な説明は省略する。
【0035】
モータの最大出力パワーの制御を実現するために、所定のiq*を制限することにより実現されてもよく、具体的な方法は以下のとおりである。
【0036】
所定のi
q
*を制限する計算式は、以下のとおりであり、
【数4】
i
q-new
*がパワー制限した後の所定の横軸電流であり、i
q
*が速度調整器から出力された元の横軸電流であり、n
pがモータの極対数であり、nがモータの現在の回転速度であり、Ψ
fが永久磁石の鎖交磁束である。
【0037】
具体的な導出公式については、
モータトルクの計算式は、以下のとおりである。
【数5】
Ψ
d、Ψ
qの計算式は、以下のとおりである。
【数6】
従って、以下の計算式が得られる。
【数7】
【0038】
表面実装型永磁モータPMSMに対して、L
d=L
qである。よって、モータトルクの方程式は次の式に簡素化され
【数8】
従って、モータ出力パワーの計算式は以下のとおりである。
【数9】
Ψ
d、Ψ
qがそれぞれd、q軸の鎖交磁束であり、i
d、i
qがそれぞれd、q軸の電流であり、L
d、L
qがそれぞれd、q軸のインダクタンスである。
【0039】
i
d、i
qの計算式は以下のとおりである。
【数10】
i
α、i
βの計算式は以下のとおりである。
【数11】
i
A、i
BがそれぞれA、B二相電流である。
【0040】
以上、本発明では、2足ロボットのモータドライブシステムにおける各キー部品(モータ、パワートランジスタ、母線電解コンデンサ等)に対して温度検出を行い、第1温度閾値を超える場合、この時のモータドライブシステムの温度がより高いと説明され、モータの最大出力パワーを制御することにより、2足ロボットの基本動作に影響せずにキー部品温度の更なる増加を抑制することができる。第2温度閾値を超える場合、この時のモータドライブシステムの温度が部品の最大動作温度に接近すると説明され、温度故障情報を2足ロボットの中央コントローラーに送信することにより、現在のタスクを停止し、それによりモータドライブシステムが熱故障により損傷されないように確保し、2足ロボットがモータドライブシステムの故障により異常動作してひいては損傷されないように確保する。このような方法に基づき、2足ロボットのモータドライブシステムは設計時に更に軽量化設計を行うことができ、それにより2足ロボットの柔軟性及び航続力を更に向上させることが期待される。
【0041】
当業者であれば理解されるように、以上の説明は本発明の好適な実施例であって、本発明を制限するためのものではない。上記実施例を参照して本発明を詳しく説明したが、当業者であれば、依然として上記各実施例に記載される技術案を修正したり、その一部の技術的特徴に対して等価置換を行ったりすることができる。本発明の趣旨や原則内に行った修正や等価置換等はいずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。