(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20220513BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20220513BHJP
B60R 11/02 20060101ALN20220513BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
B60R11/02 C
(21)【出願番号】P 2017177351
(22)【出願日】2017-09-15
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】畑迫 裕之
(72)【発明者】
【氏名】米山 秀和
(72)【発明者】
【氏名】春日 孝文
(72)【発明者】
【氏名】植木 貴久
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-516136(JP,A)
【文献】特開2012-007840(JP,A)
【文献】特開2016-057470(JP,A)
【文献】特開2000-002366(JP,A)
【文献】特開2014-190425(JP,A)
【文献】特開2015-075534(JP,A)
【文献】特開2015-082104(JP,A)
【文献】特開2010-230157(JP,A)
【文献】実開平06-062261(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0139410(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0034734(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
G02B 7/00
G02B 7/182
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と、前記駆動部の駆動力によって移動する可動部材と、を有し、
前記可動部材は、本体部と、被支持部材を一方の側から支持する支持部と、
前記被支持部材に当接して該被支持部材を前記支持部に向けて付勢する弾性部材と、を備え、
前記支持部は、前記本体部よりも剛性の高い材料で形成され、前記本体部に部分的に埋め込まれて固定されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記可動部材の移動方向において前記被支持部材に対向する位置で該被支持部材を支持することを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記可動部材の移動方向と交差する方向に延びる支持本体部と、前記支持本体部の端部から前記可動部材の移動方向に延びる延在部と、を有し、
前記延在部は、少なくとも上面の一部が前記本体部に覆われていることを特徴とする、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記支持本体部は、前記延在部が延びる方向において前記延在部と反対側の部分が前記本体部で覆われていることを特徴とする、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記可動部材の移動を案内するガイドシャフトを備え、
前記本体部には、前記ガイドシャフトが貫通するガイド孔が形成され、
前記延在部は、前記支持本体部が延びる方向から見て、前記本体部内において前記ガイド孔をと重ならない位置に配置されていることを特徴とする、請求項3または4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記支持本体部の端部には、切り欠き部が形成され、前記ガイド孔は、前記本体部の内部において前記切り欠き部が形成された位置に少なくとも一部が重なるように配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記延在部は、前記切り欠き部によって分割され、前記支持本体部の端部から延びる一対の延在部であり、
前記一対の延在部は、前記本体部内で前記ガイド孔に対して側方で少なくとも一部が重なるように配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記支持部は、前記支持本体部の両側部から前記可動部材の移動方向に延びる一対のアーム部を備え、
前記アーム部は、前記本体部に部分的に埋め込まれていることを特徴とする、請求項3から7のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記一対のアーム部は、前記支持本体部との間で前記本体部の一部を抱え込むように前記支持本体部に対して斜めに延びていることを特徴とする、請求項8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記本体部は樹脂からなり、前記支持部は金属からなることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記支持部は、インサート成形により前記本体部と一体に形成されていることを特徴とする、請求項
10に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記可動部材は、前記弾性部材を保持する弾性部材固定部を有し、
前記弾性部材は、板ばねであることを特徴とする、請求項
1から11のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記弾性部材は、前記弾性部材固定部に取り付けられた固定板部と、前記固定板部の端部から延び、弾性変形可能な弾性変形板部と、を有し、
前記弾性変形板部は、前記固定板部の端部から延びる第1の弾性部と、前記第1の弾性部の端部から延びる第2の弾性部と、を有し、
前記第2の弾性部には、前記被支持部材に当接する当接部が形成されていることを特徴とする、請求項1
2に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記当接部は、前記第2の弾性部の先端部が前記被支持部材と反対側を向くように前記第2の弾性部を折り曲げた折り曲げ部であることを特徴とする、請求項1
3に記載の駆動装置。
【請求項15】
前記弾性部材固定部は、前記本体部から突出する突出部と、前記突出部に設けられた規制部と、を有し、
前記規制部は、前記突出部との間に前記固定板部が挿入される隙間を形成するとともに、前記固定板部の前記隙間への挿入方向と交差する方向への移動を規制することを特徴とする、請求項1
3または1
4に記載の駆動装置。
【請求項16】
前記弾性部材固定部は、前記突出部に設けられた係止部を有し、
前記係止部は、前記隙間に挿入された前記固定板部と係合して前記固定板部の前記隙間への挿入方向と反対方向への移動を規制することを特徴とする、請求項1
5に記載の駆動装置。
【請求項17】
前記弾性部材固定部は、前記本体部から突出する突出部を有し、
前記突出部には、前記弾性変形板部との干渉を回避する逃げ部が形成されていることを特徴とする、請求項1
3から1
6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項18】
前記駆動部によって回転駆動されるリードスクリューを有し、
前記可動部材は、前記駆動部の駆動力を前記本体部に伝達する駆動力伝達部と、前記本体部とは別体に設けられた予圧付与部と、を備え、
前記駆動力伝達部は、前記リードスクリューに螺合する第1のねじ部を備え、前記リードスクリューの回転に伴って前記本体部を前記リードスクリューの軸線方向に移動させ、
前記予圧付与部は、前記リードスクリューに螺合する第2のねじ部を備え、前記第1のねじ部と前記第2のねじ部との間に予圧を付与することを特徴とする、請求項1から1
7のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項19】
前記駆動力伝達部は、前記第1のねじ部を備え、前記本体部とは別体に設けられた第1のナット部材を有し、
前記予圧付与部は、前記第2のねじ部を備えた第2のナット部材と、前記第1のナット部材と前記第2のナット部材との間に設けられた付勢部材と、を有し、
前記本体部には、前記第1のナット部材と前記第2のナット部材が配置されるナット配置部が形成され、
前記第1のナット部材と前記第2のナット部材は、前記本体部に対する回転が規制された状態で前記ナット配置部に配置されていることを特徴とする、請求項1
8に記載の駆動装置。
【請求項20】
前記ナット配置部には、前記駆動部の駆動力を前記第1のナット部材から受ける駆動力受け部が形成され、
前記第1のナット部材は、前記駆動力受け部を介して前記付勢部材から予圧を付与されていることを特徴とする、請求項
19に記載の駆動装置。
【請求項21】
前記付勢部材は、コイルばねであり、
前記リードスクリューは、前記コイルばねの内部を貫通しており、
前記付勢部材は、前記駆動力受け部と前記第2のナット部材との間に配置されていることを特徴とする、請求項2
0に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部材の駆動力によって可動部材を移動させる駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示素子からの表示光を反射部材(凹面鏡)によって反射させて車両のフロントガラスに投影し、投影された表示像(虚像)を車両の運転者に視認させるヘッドアップディスプレイ装置が知られている。このようなヘッドアップディスプレイ装置では、一般に、反射部材による表示光の反射角度を調整するために、凹面鏡を保持するミラーホルダを所定の回転軸を中心として回動させる駆動装置が用いられている。
【0003】
特許文献1には、ミラーホルダから回転軸の径方向外側に向けて部分的に突出する突出片に駆動力を伝達することで、ミラーホルダを回動させる駆動装置が記載されている。この駆動装置は、ステッピングモータと、ステッピングモータによって回転駆動されるリードスクリュー(送りねじ)と、リードスクリューと平行に配置されたガイドシャフトと、リードスクリューおよびガイドシャフトを支持するフレームと、リードスクリューに螺合するナットを備え、ガイドシャフトが貫通するガイド孔が形成されたスライダであって、リードスクリューの回転に伴ってリードスクリューの軸線方向に沿って往復移動するスライダと、を有し、スライダが、被支持部材であるミラーホルダの突出片を支持する支持部を備えている。こうして、ミラーホルダの突出片を支持するスライダが往復移動することで、ミラーホルダを回動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の駆動装置では、支持部は、スライダの基部に一体形成された一対の樹脂壁から構成されているため、支持強度が十分ではない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、被支持部材を支持する支持部の強度を向上させる駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の駆動装置は、駆動部と、駆動部の駆動力によって移動する可動部材と、を有し、可動部材は、本体部と、被支持部材を一方の側から支持する支持部と、被支持部材に当接して被支持部材を支持部に向けて付勢する弾性部材と、を備え、支持部は、本体部よりも剛性の高い材料で形成され、本体部に部分的に埋め込まれて固定されている。
【0008】
本発明に係る駆動装置によれば、被支持部材を支持する支持部の強度を向上させることができる。また、弾性部材によって被支持部材が支持部材に押し付けられた状態で支持されるため、支持部材を基準として被支持部材の位置を決めることができる。
【0009】
本発明の一態様では、支持部は、可動部材の移動方向において被支持部材に対向する位置で被支持部材を支持していることが好ましい。
【0010】
本発明では、支持部は、可動部材の移動方向と交差する方向に延びる支持本体部と、支持本体部の端部から可動部材の移動方向に延びる延在部と、を有し、延在部は、少なくとも上面の一部が本体部で覆われていることが好ましい。また、支持本体部は、延在部が延びる方向において延在部と反対側の部分が本体部で覆われていることが好ましい。これにより、支持部の本体部からの抜け強度を向上することができる。
【0011】
また、本発明の駆動装置は、可動部材の移動を案内するガイドシャフトを備え、本体部には、ガイドシャフトが貫通するガイド孔が形成され、延在部は、支持本体部が延びる方向から見て、本体部内においてガイド孔をと重ならない位置に配置されていることが好ましい。この場合、支持本体部の端部には、切り欠き部が形成され、ガイド孔は、本体部の内部において切り欠き部が形成された位置に少なくとも一部が重なるように配置されていることが好ましい。さらに、延在部は、切り欠き部によって分割され、支持本体部の端部から延びる一対の延在部であり、一対の延在部は、本体部内でガイド孔に対して側方で少なくとも一部が重なるように配置されていることが好ましい。これにより、限られたスペースにおいても、延在部を有効に配置することができる。
【0012】
また、支持部は、支持本体部の両側部から可動部材の移動方向に延びる一対のアーム部を備え、アーム部は、本体部に部分的に埋め込まれていることが好ましい。さらに、一対のアーム部は、支持本体部との間で本体部の一部を抱え込むように支持本体部に対して斜めに延びていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の一態様では、本体部が樹脂からなり、支持部が金属からなっていてもよく、この場合、支持部が、インサート成形により本体部と一体に形成されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の一態様では、可動部材は、弾性部材を保持する弾性部材固定部を有し、弾性部材は板ばねであることが好ましい。これにより、弾性部材を容易に固定することができる。
【0016】
また、弾性部材は、弾性部材固定部に取り付けられた固定板部と、固定板部の端部から延び、弾性変形可能な弾性変形板部と、を有し、弾性変形板部は、固定板部の端部から延びる第1の弾性部と、第1の弾性部の端部から延びる第2の弾性部と、を有し、第2の弾性部には、被支持部材に当接する当接部が形成されていることが好ましい。これにより、弾性変形板部の弾性を確保することができる。
【0017】
また、当接部は、第2の弾性部の先端部が被支持部材と反対側を向くように前記第2の弾性部を折り曲げた折り曲げ部であることが好ましい。これにより、被支持部材を安定して付勢することができる。
【0018】
また、弾性部材固定部は、本体部から突出する突出部と、突出部に設けられた規制部と、有し、規制部は、突出部との間に固定板部が挿入される隙間を形成するとともに、固定板部の隙間への挿入方向と交差する方向への移動を規制することが好ましい。これにより、弾性部材の位置がずれることを抑制することができる。
【0019】
また、弾性部材固定部は、突出部に設けられた係止部を有し、係止部は、隙間に挿入された固定板部と係合して固定板部の隙間への挿入方向と反対方向への移動を規制することが好ましい。これにより、弾性部材の位置がずれることを抑制することができる。
【0020】
また、弾性部材固定部は、本体部から突出する突出部を有し、突出部には、弾性変形板部との干渉を回避する逃げ部が形成されていることが好ましい。これにより、弾性変形板部の可動範囲を広げることができる。
【0021】
また、本発明の駆動装置は、駆動部によって回転駆動されるリードスクリューを有し、可動部材は、駆動部の駆動力を本体部に伝達する駆動力伝達部と、本体部とは別体に設けられた予圧付与部と、を備え、駆動力伝達部は、リードスクリューに螺合する第1のねじ部を備え、リードスクリューの回転に伴って本体部をリードスクリューの軸線方向に移動させ、予圧付与部は、リードスクリューに螺合する第2のねじ部を備え、第1のねじ部と第2のねじ部との間に予圧を付与することが好ましい。これにより、リードスクリューと各ねじ部とのクリアランス(バックラッシュ)を吸収して、可動部材の移動方向(リードスクリューの軸線方向)へのガタツキを抑制することができる。
【0022】
また、駆動力伝達部は、第1のねじ部を備え、本体部とは別体に設けられた第1のナット部材を有し、予圧付与部は、第2のねじ部を備えた第2のナット部材と、第1のナット部材と第2のナット部材との間に設けられた付勢部材と、を有し、本体部には、第1のナット部材と第2のナット部材が配置されるナット配置部が形成され、第1のナット部材と第2のナット部材は、本体部に対する回転が規制された状態でナット配置部に配置されていることが好ましい。この場合、ナット配置部には、駆動部の駆動力を第1のナット部材から受ける駆動力受け部が形成され、第1のナット部材は、駆動力受け部を介して付勢部材から予圧を付与されていることが好ましい。これにより、第1のナット部材と第2のナット部材のどちらも本体部内に配置することができ、装置の省スペース化を図ることができる。
【0023】
また、付勢部材はコイルばねであり、リードスクリューは、コイルばねの内部を貫通しており、付勢部材は、駆動力受け部と第2のナット部材との間に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の駆動装置では、被支持部材を支持する支持部の強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示すヘッドアップディスプレイ装置の表示装置の概略断面図である。
【
図3】本実施形態の駆動装置を示す概略斜視図である。
【
図4】本実施形態の駆動装置を示す概略側面図である。
【
図5】本実施形態の可動部材を拡大して示す概略斜視図である。
【
図6】本実施形態の弾性部材を示す概略斜視図である。
【
図7】本実施形態の弾性部材固定部を示す概略斜視図である。
【
図8】
図7に示す弾性部材固定部を別の方向から見た概略斜視図である。
【
図9】本実施形態の支持部材を示す概略斜視図である。
【
図12】本実施形態の駆動装置を
図4とは反対側から見た概略側面図である。
【
図13】本実施形態のナットユニットの動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
まず、
図1および
図2を参照して、本発明が適用される車両用のヘッドアップディスプレイ装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の概略構成図である。
図2は、本実施形態のヘッドアップディスプレイ装置における表示装置の概略断面図である。
【0028】
ヘッドアップディスプレイ装置1000は、
図1に示すように、車両100のインストルメントパネル101の内部に設けられた表示装置102を有し、表示装置12が投射する表示光Lを投影部材であるフロントガラス103で車両100の運転者104の方向に反射させ、虚像(表示像)Vの表示を行うものである。換言すると、ヘッドアップディスプレイ装置は、表示装置102の後述する液晶表示器110から発せられる表示光Lをフロントガラス103に照射(投射)し、この照射によって得られた虚像Vを運転者104に視認させるものである。これにより、運転者104は、虚像Vを風景と重畳させて観察することができる。
【0029】
表示装置102は、
図2に示すように、液晶表示器110と、第1の反射器120と、第2の反射器130と、ハウジング140とを有している。
【0030】
液晶表示器110は、光源111と、液晶表示素子(表示素子)112とを有している。光源111は、配線基板Rに実装された発光ダイオードからなる。液晶表示素子112は、光源111からの照明光を透過して表示光Lを形成するように光源111の前方(真上)に位置する薄膜トランジスタ(TFT)型の液晶表示素子である。液晶表示素子112は、図示しない素子駆動回路からの駆動信号に基づいて、背後(直下)に配置された光源111から発せられる光により、表示すべき情報(例えば、車両の速度やエンジン回転数)を数値等で発光表示するものである。なお、表示すべき情報は、車両の速度やエンジン回転数に限定されず、表示形態としても、数値表示に限定されず、あらゆる形態を採用することができる。液晶表示器110は、可視波長域の光からなる表示光Lを出力するものであり、例えば赤色光(主に発光波長域610~640nm)を発する光源111を用いることができる。
【0031】
このような液晶表示器110は、表示光Lの出射側の面が第1の反射器120の後述するコールドミラー121に対向するようにハウジング140内に設けられ、表示光Lの光軸がコールドミラー121に交わるような位置や向きで固定保持されている。
【0032】
第1の反射器120は、コールドミラー121と、コールドミラー121をハウジング140に固定するための取付部材122とを有している。コールドミラー121は、液晶表示器110から発せられた表示光Lを第2の反射器130(凹面鏡131)に向けて反射させるものである。コールドミラー121は、ほぼ矩形状のガラス基板121aと、ガラス基板121aの片面(第2の反射器130の後述する凹面鏡131に対向する面)に蒸着等によって形成された、膜厚が異なる多層の干渉膜からなる第1の反射層121bとを有している。また、取付部材122は、例えば黒色の合成樹脂材料からなり、ハウジング140に固定されている。
【0033】
なお、コールドミラー121は、液晶表示器110の発光波長域を含む可視波長域(450~750nm)の光を高い反射率(例えば80%以上)で反射し、可視波長域以外の光を低い反射率で反射するものである。この場合、コールドミラー121としては、可視波長域以外の光、特に赤外波長域の光(赤外線あるいは太陽光の熱線)を低い反射率(例えば15%以下)で反射するものが適用される。なお、第1の反射層121bで反射されない光は、コールドミラー121を透過するようになっている。本実施形態では、コールドミラー121は、液晶表示器110と同様に、ハウジング140の後述する透光性カバー144から直接見えない位置に配置され、太陽光等の外部からの光(外光)が直接当たらないようになっている。
【0034】
第2の反射器130は、凹面鏡131と、凹面鏡131を保持するミラーホルダ132とを有している。凹面鏡131は、ポリカーボネートからなる樹脂基板の凹面に蒸着された第2の反射層131aを有し、コールドミラー121(つまり液晶表示素子112)からの表示光Lを拡大しつつ、ハウジング140の透光性カバー144を通じてフロントガラス103に向けて反射させるものである。凹面鏡131は、第2の反射層131aがコールドミラー121とハウジング140の透光性カバー144とに対向するように配置され、透光性カバー144から見える位置に配置されている。
【0035】
ミラーホルダ132は、合成樹脂材料からなり、ハウジング140に設けられた軸受部に軸支された、表示光Lの光軸に直交する回転軸Aを有している。すなわち、ミラーホルダ132とこれに保持された凹面鏡131は、回転軸Aを中心として回動可能であり、これにより、ミラーホルダ132の角度位置、すなわち表示光Lの投射方向を調整することができる。ミラーホルダ132には、回転軸Aの径方向外側に向けて部分的に突出する突出片132aが形成されている。この突出片132aが駆動装置1からの駆動力により移動することで、ミラーホルダ132を回動させることができる。駆動装置1の詳細については後述する。
【0036】
ハウジング140は、例えばアルミダイカストで形成され、いずれも断面がほぼU字形状の上側ケース体141と下側ケース体142とを有している。上側ケース体141と下側ケース体142とは内部空間143を形成し、この内部空間143に、液晶表示器110、第1の反射器120、および第2の反射器130が収納されている。
【0037】
上側ケース体141には、凹面鏡131に対向する位置に開口部141aが形成され、この開口部141aを塞ぐように透光性カバー144が配置されている。透光性カバー144は、透光性の合成樹脂材料(例えばアクリル樹脂)からなり、凹面鏡131で反射された表示光Lが透過(通過)する光透過性部材としての機能を有している。つまり、凹面鏡131によって反射された表示光Lは、ハウジング140に設けられた透光性カバー144を通じてフロントガラス103に投影され、これにより虚像Vの表示が行われる。
【0038】
次に、
図3および
図4を参照して、本実施形態の駆動装置について説明する。
図3は、本実施形態の駆動装置を示す概略斜視図であり、
図4は、本実施形態の駆動装置を示す概略側面図であり、ミラーホルダの突出片を支持した状態を示している。なお、以下の説明では、リードスクリュー4(シャフト19)の軸線Lが延在している方向のうち、リードスクリュー4が突出している一方側を出力側L1とし、リードスクリュー4が突出している側とは反対側(他方側)を反出力側L2とする。また、軸線L方向に対して、フレーム2の支持部2c,2bが延在する方向をX方向とし、X方向と軸線L方向に対して直交する方向をY方向とする。
【0039】
駆動装置1は、外周面に螺旋溝が形成されたリードスクリュー4と、リードスクリュー4を軸線L周りに回転駆動するための駆動部3と、螺旋溝に係合して軸線L方向に移動する可動部材6と、駆動部3等を支持するフレーム2を備えている。フレーム2には、リードスクリュー4に対して軸線L方向に沿って平行に配置されたガイドシャフト5が固定されている。駆動部3は、ステッピングモータ等のモータであり、モータケースを構成するステータ14とステータ14の内部に配置されたロータ(図示せず)から概ね構成されている。ロータは、シャフト19とシャフト19に固定された永久磁石(図示せず)を備えている。
【0040】
ステータ14は、フレーム2の軸線L方向の反出力側L2の支持部2bに溶接などにより固定されている。この支持部2bには、給電基板70を保持する基板ホルダ60がボルトによって固定されている。
【0041】
ステータ14の側面には給電部となる端子ピン82が設けられており、給電基板70と電気的に接続されている。端子ピン82には、ステータ14の駆動コイルの端末部分(図示せず)が巻き付けられており、端子ピン82と給電基板70をはんだ付けすることで、給電基板80と駆動コイルとの電気的な接続を行うことができる。
【0042】
給電基板70にはスイッチユニット50が取り付けられている。スイッチユニット50は、可動部材6の移動方向(軸線L方向)の原点位置を検出する押圧式のスイッチである。スイッチユニット50と給電基板70との電気的な接続は、スイッチユニット50の端子ピン52a,52bと給電基板70とをはんだ付けすることで行われる。
【0043】
フレーム2は、板状のフレーム本体2aと、フレーム本体2aの長手方向の両端が折り曲げられて形成された一対の支持部2b,2cとを有し、フレーム本体2aに形成された穴2gを利用してハウジング140に固定されている。駆動部3は、軸線L方向の反出力側L2の支持部2bに固定されている。
【0044】
リードスクリュー4は、駆動部3のシャフト19と一体に形成されており、シャフト19の一部(ステータ14から軸線L方向の出力側L1に突出している部分)の外周面に螺旋溝を形成することで構成されている。したがって、リードスクリュー4は、駆動部3によって回転駆動されるものである。リードスクリュー4は、フレーム本体2aと略平行に配置され、軸線L方向の出力側L1の先端が、フレーム2の軸線L方向の出力側L1の支持部2cに設けられた軸受7aによって回転可能に支持されている。また、シャフト19の軸線L方向の反出力側L2の端部は、駆動部3に取り付けられた軸受7bによって回転可能に支持され、その先端は、板ばねからなる付勢部材7cによって軸線L方向の出力側L1に付勢されている。ガイドシャフト5は、リードスクリュー4と平行に配置され、その両端がフレーム2の支持部2b,2cにそれぞれ固定されている。本実施形態では、ガイドシャフト5とリードスクリュー4がX方向で重なるよう配置されている。
【0045】
可動部材6は、リードスクリュー4に噛み合って軸線L方向に移動するナットユニット40と、ナットユニット40と一体に軸線L方向に移動する本体部9と、本体部9の上方に設けられ、被支持材であるミラーホルダ132の突出片132aを支持する支持部10とを備えている。本体部9には、ガイドシャフト5が貫通するガイド孔8と、ナットユニット40が配置されるナット配置部11が形成されている。可動部材6は、駆動部3によるリードスクリュー4の回転に伴い、ナットユニット40が軸線L方向に往復移動することで、ガイドシャフト5にガイドされた状態で軸線L方向に往復移動する。これにより、突出片132aが軸線L方向に往復移動することで、回転軸A(
図2参照)を中心としてミラーホルダ132を所定の角度に回動させることができる。
【0046】
(支持部)
支持部10は、ミラーホルダ132の突出片132aを軸線L方向の反出力側L2に付勢する弾性支持部20と、軸線L方向の反出力側L2で弾性支持部20に対向して設けられ、弾性支持部20によって付勢される突出片132aを支持する固定支持部30とを有している。このような構成によれば、突出片132aは、弾性支持部20によって常に固定支持部30に押し付けられた状態で支持されることになる。そのため、固定支持部30を基準として常に突出片132aの位置を決めることができ、例えば移動や振動があっても、突出片132aの位置をずれにくくすることができる。それと同時に、弾性支持部20の付勢力により、車両が振動した場合にも突出片132aがガタつくのを抑制することができ、表示像にブレが発生することを抑制することができる。こうして、本実施形態の支持部10は、ミラーホルダ132の突出片132aの位置決め精度を向上させることができる。
【0047】
弾性支持部20は、ミラーホルダ132の突出片132aに当接して突出片132aを固定支持部30に向けて付勢する弾性部材21と、弾性部材21を固定する弾性部材固定部22とを有している。弾性部材固定部22は、ポリアセタールなどの合成樹脂材料からなり、本体部9と一体に設けられている。なお、弾性部材固定部22は、本体部9と別体として形成された後、接着などの方法で本体部9に固定されていてもよい。
【0048】
固定支持部30は、ステンレスなどの金属からなり、樹脂からなる本体部9よりも剛性の高い材料で形成されている。固定支持部30は、インサート成形により本体部9と一体に形成されている。したがって、固定支持部30は、本体部9に部分的に埋め込まれて固定されている。このような構成により、固定支持部30が樹脂で本体部9と一体に形成される場合に比べて、固定支持部30の強度を向上させることができる。その結果、ヘッドアップディスプレイ装置1000全体として共振周波数を高くすることができ、車両の振動による共振の発生を抑制し、表示像にブレが発生することを抑制することができる。
【0049】
(弾性支持部)
図5から
図8を参照して、本実施形態の弾性支持部の詳細な構成について説明する。
図5は、本実施形態の可動部材を拡大して示す概略斜視図である。なお、簡単のために、
図5では、ナットユニットの図示は省略している。
図6は、本実施形態の弾性部材を示す概略斜視図である。
図7は、本実施形態の弾性部材固定部を示す概略斜視図であり、
図8は、
図7に示す弾性部材固定部を別の方向から見た概略斜視図である。なお、簡単のために、
図7および
図8では、固定支持部の図示を省略している。
【0050】
弾性部材21は、
図6に示すように、弾性部材固定部22に取り付けられて固定される固定板部23と、固定板部23の端部から延び、弾性変形可能な弾性変形板部24とを有している。本実施形態における弾性部材21は、比較的広い幅(Y方向の長さ)を有する板ばねである。固定板部23には、弾性部材固定部22の第2の係止部26bと係止する第1の係止部23aが形成されており、本実施形態における第1の係止部23aは、X方向に長い開口部である。弾性変形板部24は、固定板部23の端部から延びる第1の弾性部24aと、第1の弾性部24aの端部から軸線L方向の反出力側L2へ斜めに延びる第2の弾性部24bとから構成されている。第1の弾性部24aは、固定板部23の延長線上(固定板部23が延在するX方向)に延び、第2の弾性部24bは、第1の弾性部24aに対して鋭角に延びている。固定板部23と第1の弾性部24aとの間には第1の支点部25aが形成されている。第1の支点部25aは、
図5に示すように、弾性部材21と弾性部材固定部22の上端との接触部として規定されている。換言すると、第1の支点部25aは、弾性部材21の弾性部材固定部22に保持されている領域と弾性部材固定部22に保持されていない領域との境界部として規定されている。第1の弾性部24aは、この第1の支点部25aを支点として、固定板部23に対して弾性変形可能である。また、第1の弾性部24aと第2の弾性部24bとの間には、弾性変形板部24の折り曲げ部である第2の支点部25bが形成され、これを支点として、第2の弾性部24bは、第1の弾性部24aに対して弾性変形可能である。
【0051】
さらに、弾性変形板部24の第2の弾性部24bは、その先端側が固定板部23側を向くように折り曲げられている。この折り曲げ部は、ミラーホルダ132の突出片132aに当接する突出片当接部25cとして機能する。また、突出片当接部25cは、折り曲げられて湾曲面を構成しているため、突出片132aを支持する際の引っかかりを抑制することができる。なお、突出片当接部25cは、突出片132aに対して引っ掛かりがなく、突出片132aがスムースに移動できるような形状であればよく、湾曲面の代わりに、面取りされた形状であってもよい。さらに、折り曲げられた先端は、弾性変形板部24が大きく弾性変形したときに弾性部材固定部22に当接する固定部当接部25dとして機能する。固定部当接部25dは、例えば、車両の衝突などに起因して弾性変形板部24に大きな衝撃が作用した場合にも、弾性部材固定部22に当接することで、弾性変形板部24の過度な変形、すなわち塑性変形を抑制することができる。なお、第2の弾性部24bの形状は、図示した例に限定されず、例えば、円弧形状やS字形状であってもよい。
【0052】
弾性部材固定部22は、
図7および
図8に示すように、本体部9からX方向に突出する突出部26と、突出部26の突出方向(X方向)の先端かつ幅方向(Y方向)の両端に設けられた一対の規制部27とを有している。突出部26と本体部9との間には、突出部26と本体部9とを接続する補強リブ26aが設けられている。補強リブ26aは、弾性部材固定部22に対して負荷がかかったときに強度的に最も弱い部分を補強するために設けられている。すなわち、弾性部材固定部22には反出力側L2から出力側L1に向かって軸線L方向に負荷がかかるが、その場合、強度的に最も弱く、最も破断しやすい部分は、突出部26の反出力側L2の付け根部分である。補強リブ26aは、この部分に設けられ、負荷がかかる方向(軸線L方向)に延びる板状に形成されている。一対の規制部27は、突出部26の軸線L方向の出力側L1の面に形成され、その面との間に、弾性部材21の厚みとほぼ同じ間隔を有し、弾性部材21が挿入される隙間Gを形成している。各規制部27は、突出部26の出力側L1の面から軸線L方向に突出する側方規制部27aと、側方規制部27aからY方向に沿って内側に延びる後方規制部27bとを有している。側方規制部27aは、隙間Gに挿入された弾性部材21の固定板部23のY方向の移動を規制し、後方規制部27bは、固定板部23の軸線L方向の移動を規制する。こうして、弾性部材21は、隙間Gに挿入された固定板部23の挿入方向と交差する方向(Y方向および軸線L方向)への移動が規制されて、弾性部材固定部22に取り付けられることになる。
【0053】
さらに、突出部26の軸線L方向の出力側L1の面には、固定板部23に形成された第1の係止部23aと係止する第2の係止部26bが形成されている。第2の係止部26bは、いわゆるスナップフィット形状を有し、X方向の上側に、突出部26の軸線L方向の出力側L1の面に対して傾斜する案内面26dを有し、X方向の下側に、突出部26の軸線L方向の出力側L1の面にほぼ垂直な係止面26eを有している。固定板部23が隙間Gに挿入されて第1の係止部(開口部)23aが係止面26eに係止されることにより、固定板部23のX方向への移動も規制することができ、固定板部23の抜け止めも行うことができる。なお、固定板部23が隙間Gに挿入されて固定されたときに、弾性部材21の弾性部材固定部22に保持されている領域と弾性部材固定部22に保持されていない領域との境界部が、上述した第1の支点部25aとなる。
【0054】
突出部26の軸線L方向の反出力側L2の面には、X方向の先端に段差部26cが形成されている。段差部26cは、弾性変形板部24の第2の弾性部24bの幅よりも広い幅(Y方向の長さ)を有している。これにより、段差部26cは、弾性変形板部24の第2の弾性部24bとの干渉を回避する逃げ部として機能することができ、弾性変形板部24の可動範囲を広げることができる。換言すると、段差部26cは、突出部26の第2の弾性部24bに対向する角部に位置しており、弾性変形板部24が撓んだときに第2の弾性部24bがその角部に当たらないようになっている。また、段差部26cのX方向の下側には、弾性変形板部24の固定部当接部25dが当接することができる受け面26fが形成されており、すなわち、固定部当接部25dが段差部26cに当たらないようになっている。これにより、弾性変形板部24の回動範囲を稼ぐことができる。
【0055】
図示した例では、弾性部材21は、弾性部材固定部22の軸線L方向の出力側L1の面に取り付けられているが、軸線L方向の反出力側L2の面に取り付けられていてもよく、その取り付け方法も、図示したようなスナップフィット方式に限定されず、例えば、ネジや接着材等を用いることができる。また、弾性部材21としては、ミラーホルダ132の突出片132aを固定支持部30に向けて付勢するようになっていればよく、板ばねに限定されるものではない。例えば、コイルばねなどの他のばね部材であってもよく、あるいは、ゴムなどの弾性を有する材料から構成されたものであってもよい。
【0056】
(固定支持部)
次に、
図5に加えて、
図9から
図11を参照して、本実施形態の固定支持部の詳細な構成について説明する。
図9は、本実施形態の固定支持部を示す概略斜視図である。
図10および
図11はそれぞれ、
図5に示す可動部材の透視側面図および透視上面図である。
【0057】
固定支持部30は、
図9に示すように、支持本体部31と、一対の延在部32,33と、一対のアーム部34,35と有している。支持本体部31は、X方向に延び、一対の延在部32,33は、支持本体部31の端部から軸線L方向(可動部材6の移動方向)に延び、一対のアーム部34,35は、支持本体部31のY方向の両端部から概ね軸線L方向に延びている。
【0058】
支持本体部31には、軸線L方向の出力側L1に対向する弾性支持部20に向かって突出する支持突起31aが形成されている。この支持突起31aによって、弾性支持部20によって付勢されるミラーホルダ132の突出片132aを支持することができる。また、支持突起31aは、半球状に形成されている。これにより、可動部材6の移動によりミラーホルダ132の突出片132aの傾きが大きく変化する場合にも、突出片132aを同じように支持することができる。ただし、支持突起31aは、先端が曲面であればよく、図示した形状に限定されるものではない。
【0059】
支持本体部31は、各延在部32,33の少なくとも上面32a,33aが本体部9で覆われて保持されている。これにより、本体部9に対する固定支持部30のX方向の抜け止めを確実にすることができる。
【0060】
さらに、支持本体部31は、軸線L方向の反出力側L2の下端部(軸線L方向において延在部32,33と反対側の部分)31bが本体部9の保持固定部9aで覆われて保持されている。これにより、X方向の抜け止めだけでなく、軸線L方向への固定支持部30の抜け止めも確実にすることができる。
【0061】
なお、本体部9には、可動部材6の移動を案内するためのガイドシャフト5が嵌るガイド孔8が形成されている。一対の延在部32,33は、このガイド孔8と重ならないように本体部9内に配置されている。支持本体部31には、切り欠き部31cが形成され、切り欠き部31cとガイド孔8とが軸線L方向で重なるように配置されており、一対の延在部32,33は、この切り欠き部31cによってY方向に2つに分割された支持本体部31の下端部からそれぞれ軸線L方向に延びている。また、一対の延在部32,33は、本体部9内のガイド孔8のY方向の両側で、ガイド孔8と平行に配置されているとともに、X方向において一部がガイド孔8と重なって配置されている。こうして、限られたスペースにおいても、延在部32,33を有効に配置して固定支持部30の抜け止め効果を有効に発揮させることができる。なお、延在部は1つであってもよい。
【0062】
本実施形態では、軸線L方向において、延在部32,33の先端は、弾性支持部20の突出部26の反出力側L2の面まで到達しており、Y方向において、延在部32,33の幅(Y方向の一方の端部から他方の端部までの長さ)は、支持本体部31と同じである。また、X方向において、延在部32,33の下面はガイド孔8の下端まで到達している。このような延在部32,33の配置により、本体部9との接触面積を大きくすることができ、固定支持部30をより強固に保持することができる。その結果、固定支持部30の抜け止めをより確実にすることができる。
【0063】
一対のアーム部34,35は、その一部が本体部9に埋め込まれている。これにより、固定支持部30の本体部9との接触面積をさらに大きくすることができ、固定支持部30をさらに強固に保持することができる。また、例えば一対のアーム部34,35が設けられていないと、支持本体部31に軸線L方向の応力が過度に作用した場合に、支持本体部31の基端部(本体部9から露出した根元部分)31dに応力が集中して基端部31dが破断する可能性がある。これに対し、本実施形態では、一対のアーム部34,35が本体部9に部分的に埋め込まれていることで、本体部9の上面に沿った固定支持部30の断面積を増やすことができる。その結果、支持本体部31に作用する応力を分散させることができ、上述の応力に対する耐久性を向上させることができる。
【0064】
なお、一対のアーム部34,35は、支持本体部31から離れるにつれて互いの間隔が狭くなるように軸線L方向に対して斜めに延びている。これにより、本体部9のサイズに制約がある場合にも、一対のアーム部34,35の外側で樹脂が薄くなる部分が形成されることを抑制することができる。さらに、一対のアーム部34,35が斜めに延びていることで、一対のアーム部34,35と支持本体部31とが樹脂を抱え込む部分(
図11の斜線で示す部分)が形成されるため、固定支持部30と本体部9との一体化をより強固にすることができる。ただし、一対のアーム部34,35の形状は、図示した形状に限定されるものではなく、例えば、本体部9のY方向のサイズに余裕があり、一対のアーム部34,35の外側に十分な厚みの樹脂を確保できる場合には、軸線L方向に平行に延びていてもよい。
【0065】
本実施形態では、固定支持部30は金属からなり、樹脂からなる本体部9にインサート成形により固定されているが、固定支持部30の材料や固定方法は、これらに限定されるものではない。固定支持部30の材料は、本体部9よりも剛性の高いものであれば樹脂であってもよく、その固定方法も、例えば、圧入による方法を用いることができる。
【0066】
(ナットユニット)
次に、
図12を参照して、本実施形態の駆動装置1に用いられるナットユニット40の詳細な構成について説明する。
図12(a)は、本実施形態の駆動装置を
図4とは反対側から見た概略側面図であり、
図12(b)は、
図12(a)の円Bで囲まれた領域の拡大側面図である。
図13は、本実施形態のナットユニットの動作を説明するための模式図である。
【0067】
ナットユニット40は、第1のナット部材41と、コイルばね42と、第2のナット部材43とを有し、本体部9に形成された溝状のナット配置部11内に配置されている。第1のナット部材41と第2のナット部材43はリードスクリュー4に螺合し、コイルばね42の内部をリードスクリュー4が貫通している。
【0068】
第1のナット部材41は、外形が矩形状のフランジ部41aと、フランジ部41aから軸線L方向に延びる筒部41bとを有し、フランジ部41aと筒部41bの内側に、リードスクリュー4に螺合するねじ部が形成されている。第2のナット部材43も、外形が矩形状のフランジ部43aと、フランジ部43aから軸線L方向に延びる筒部43bとを有し、フランジ部43aと筒部43bの内側に、リードスクリュー4に螺合するねじ部が形成されている。第1のナット部材41と第2のナット部材43は、筒部41a,43a同士が互いに対向するようにナット配置部11内に配置されている。第1のナット部材41のフランジ部41aは、ナット配置部11の内面11aから突出する一対の対向リブ12a,12bに当接している。なお、ナット配置部11の内面11aには、第1のナット部材41の軸線L方向の反出力側L2に、もう一対の対向リブ13a,13bが形成されているが、これは、ナットユニット40(第1のナット部材41)と可動部材6との位置決めを容易にするために設けられている。
【0069】
コイルばね42は、圧縮された状態で、一対の対向リブ12a,12bと第2のナット部材43との間に配置されている。したがって、コイルばね42は、一方の端部では、一対の対向リブ12a,12bに当接し、一対の対向リブ12a,12bを軸線L方向の反出力側L2に付勢して第1のナット部材41のフランジ部41aに当接させている。また、コイルばね42は、他方の端部では、第2のナット部材43のフランジ部43aに当接し、第2のナット部材43のフランジ部43aを軸線L方向の出力側L1に付勢している。なお、本実施形態では、もう一対の対向リブ13a,13bが設けられていることで、ナットユニット40をナット配置部11に配置する際に一対の対向リブ12a,12bと第2のナット部材43との距離が近くなりすぎることを抑制することができる。そのため、コイルばね42が過度に圧縮したり、コイルばね42が第1のナット部材41の筒部41bから外れたりすることを抑制することができる。
【0070】
第1のナット部材41は、フランジ部41aがナット配置部11の内面11aに当接することで本体部9に対する回転が規制されている。換言すると、ナット配置部11の内面11aは、第1のナット部材41のフランジ部41aと当接して第1のナット部材41の回転を規制する規制部として機能する。さらに、第1のナット部材41は、上述したように、一対の対向リブ12a,12bを介してコイルばね42から軸線L方向の反出力側L2に向けて付勢力(予圧)を付与され、フランジ部41aが一対の対向リブ12a,12bと常に当接している。このため、第1のナット部材41は、駆動部3の駆動力を本体部3に伝達する駆動力伝達部として機能し、一対の対向リブ12a,12bは、駆動部3の駆動力を第1のナット部材41から受ける駆動力受け部として機能する。その結果、リードスクリュー4の回転に伴って本体部9を軸線L方向に往復移動させることができる。
【0071】
第2のナット部材43は、フランジ部43aがナット配置部11の内面11aに当接することで本体部9に対する回転が規制されている。換言すると、ナット配置部11の内面11aは、第2のナット部材43のフランジ部43aと当接して第2のナット部材43の回転を規制する規制部として機能する。一方で、第2のナット部材43は、軸線L方向に関しては、本体部9には支持されておらず、上述したように、コイルばね42から軸線L方向の出力側L1に向けて付勢力(予圧)を付与されている。こうして、第2のナット部材43は、コイルばね42と共に予圧付与部として機能し、
図13に示すように、第1のナット部材41のねじ部と第2のナット部材43のねじ部との間に互いに離間する方向に予圧Fを付与することができる。
【0072】
このような予圧Fによって、第1のナット部材41によって可動部材3が移動する際に、第1のナット部材41のねじ部を常にリードスクリュー4の反出力側フランク面4aに当接させることができる。さらに、第2のナット部材43のねじ部をリードスクリュー4の出力側フランク面4bに当接させることができる。その結果、リードスクリュー4と各ナット部材(ねじ部)とのクリアランス(バックラッシュ)を吸収して、可動部材6の移動方向(軸線L方向)へのガタツキを抑制することができる。
【0073】
なお、上述したように、コイルばね42は、一方の端部で可動部材6(一対の対向リブ12a,12b)に当接し、他方の端部で第2のナット部材43に当接しており、可動部材6は、第1のナット部材41のフランジ部41aに当接している。そのため、可動部材6が軸線L方向の出力側L1に移動する場合には、第1のナット部材41の推力がフランジ部41aを介して可動部材6に駆動力として伝達され、可動部材6が軸線L方向の反出力側L2に移動する場合には、コイルばね42の付勢力によって、駆動力は第1のナット部材41を通じて可動部材6に伝達される。こうして、可動部材6は軸線L方向の出力側L1と反出力側L2のどちらにも移動することができ、その場合にも、上述したように、1つのコイルばね42で可動部材6のガタツキを常に抑制することができる。
【0074】
ところで、本実施形態では、ナットユニット40を収容するナット配置部11は、本体部9とフレーム本体2aとが対向する方向(X方向)にではなく、それと交差する方向(Y方向)に開口している。このことは、ナットユニット40をナット配置部11内に配置する際の作業性を向上させることができる点で特に好ましい。すなわち、ナット配置部11がフレーム本体2aに対向する方向に開口していると、フレーム本体2aによってナット配置部11内を目視で確認することができず、ナットユニット40を適正な配置でナット配置部11内に収容することが困難になる。これに対し、本実施形態では、ナットユニット40をナット配置部11内に収容する際に、フレーム本体2aが邪魔になることがないため、目視で確認しながらナットユニット40を適正な位置に配置することができ、組み立て時の歩留まりの低下を抑制することができる。
【0075】
本実施形態では、上述したように、ガイドシャフト5とリードスクリュー4がX方向で重なるよう配置されている。支持部10は、ガイドシャフト5とリードスクリュー4にX方向で重なるよう設けられている。したがって、可動部材6の移動を安定させることができる。また、本実施形態では、本体部9の下部に、本体部9の回転を規制する一対のストッパ9b,9c(
図4および
図8参照)が設けられているが、ガイドシャフト5から各ストッパ9b,9cまでの距離をほぼ等しくすることができる。そのため、可動部材6の回転方向のガタツキを極力抑制することができ、可動部材6の移動を安定させることができる。
【0076】
本実施形態では、第1のナット部材41と第2のナット部材43は共に、本体部9とは別体として設けられているが、第1のナット部材41は、本体部9と一体に移動するようになっていれば、必ずしも本体部9と別体である必要はない。すなわち、第1のナット部材41は、接着剤などの固定手段により、本体部9に物理的に固定されていてもよく、あるいは、第1のナット部材41と本体部9とが一体的に形成され、本体部9自体がリードスクリュー4に螺合する雌ねじ部を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 駆動装置、 2 フレーム、 2a フレーム本体、 2b,2c 支持部
3 駆動部、 4 リードスクリュー、 5 ガイドシャフト、 6 可動部材
8 ガイド孔、 9 本体部、 10 支持部、 11 ナット配置部、
11a 内面、 12a,12b 対向リブ、 20 弾性支持部、 21 弾性部材
22 弾性部材固定部、 23 固定板部、 24 弾性変形板部
24a 第1の弾性部、 24b 第2の弾性部、 25a 第1の支点部
25c 突出片当接部、 26 突出部、 26a 補強リブ
26b 第2の係止部、 26c 段差部、 27 規制部、 30 固定支持部
31 支持本体部、 31c 切り欠き部、 32,33 延在部
32a,33a (延在部の)上面、 34,35 アーム部
40 ナットユニット、 41 第1のナット部材、 41a フランジ部
42b 筒部、 42 コイルばね、 43 第2のナット部材
43a フランジ部、 43b 筒部、 132a (ミラーホルダの)突出片
G 隙間