(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】側面照射型LED発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20220513BHJP
H01L 33/54 20100101ALI20220513BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20220513BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/54
F21S2/00 100
(21)【出願番号】P 2017213652
(22)【出願日】2017-11-06
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100128071
【氏名又は名称】志村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】飯野 高史
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-339650(JP,A)
【文献】特開2011-192703(JP,A)
【文献】特開2015-133455(JP,A)
【文献】特開2014-154644(JP,A)
【文献】特開2001-210871(JP,A)
【文献】特開2013-110179(JP,A)
【文献】特開2015-109418(JP,A)
【文献】特開2013-251393(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047815(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0077299(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0308822(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0095723(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
F21S 2/00
F21K 9/00 - 9/90
F21V 1/00 - 15/04
F21Y 105/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、該ベース基板上に配置される複数の発光素子と、この複数の発光素子の上方に配置される反射板とを備えた側面照射型LED発光装置において、
前記複数の発光素子は、前記ベース基板の中央部に配置される少なくとも一以上の第1発光素子と、この第1発光素子の周囲に配置される複数の第2発光素子とを有し、
前記第1発光素子が赤色系発光素子を含み、前記第2発光素子が青色系及び緑色系の少なくとも一方の発光素子を含み、
前記第2発光素子が蛍光材を含有する前記ベース基板上にリング状に配置された蛍光樹脂体によって封止され、且つ前記
リング状に配置された蛍光樹脂体が前記ベース基板と前記反射板とに挟まれることによって、前記第1発光素子が配置される発光領域を前記蛍光樹脂体
以外の樹脂等で覆われない空間であって、ベース基板と反射板が何も介さずに密閉される空間とする側面照射型LED発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記蛍光樹脂体には、前記第2発光素子による発光を白色系発光に波長変換する蛍光材が含有されている側面照射型LED発光装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記ベース基板が金属材料によって形成され、その上面に前記第1発光素子及び第2発光素子が配置される側面照射型LED発光装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記ベース基板上に開口部を有するマウント基板が載置され、このマウント基板の中央部に前記第1発光素子が配置され、前記マウント基板の中央部の外周に沿って開口する前記開口部を介して露出するベース基板上に前記第2発光素子が配置される側面照射型LED発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の有色発光素子によって構成される側面照射型LED発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なLED発光装置にあっては、実装用の基板に複数の発光素子を配置することによって明度や輝度を高めたものや、赤緑青(RGB)からなる有色発光素子を用い、この有色発光素子の個数や配列等を設定することで演色効果を持たせたものがある。また、発光の指向性に関しては、正面照射型と側面照射型とがあり、正面照射型は広範囲を明るく照らす直接照明として使用され、側面照射型は限定した範囲を間接的に照らす間接照明として使用されている。
【0003】
このようなLED発光装置にあっては、特許文献1に開示されているように、RGBからなる3原色の有色発光素子を色別にグループ化することによって、様々な発光効果を得ることができる。
【0004】
また、RGBからなる3原色の有色発光素子は、単色同士の組み合わせ以外にも、蛍光材を含有した蛍光樹脂体によって封止することで演色性に富んだ発光効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、RGBからなる有色発光素子はそれぞれの材質やその構造によって発光波長が異なり、それに伴って発光時における温度特性も異なっている。このため、有色発光素子の組み合わせや配列の仕方によって、特定の有色発光素子の発光効率や耐久性に影響を及ぼす場合がある。
【0007】
また、演色性を持たせるために、有色発光素子を蛍光材が含有された蛍光樹脂体で封止することによって波長変換をさせる場合があるが、蛍光材が励起される際に生じる熱によって、特定の有色発光素子の発光効率の低下を引き起こすおそれがあった。このように、一部の有色発光素子の発光効率の低下によって、全体としての演色効果の低下やバラツキが生じることとなる。有色発光素子の中でも、特に赤色系の発光素子は、他の青色系又は緑色系の発光素子に比べて熱の影響を受けやすい。
【0008】
特に、反射板を用いた側面照射型LED発光装置にあっては、複数の有色発光素子がベース基板と反射板とで挟まれた空間内に配置されるため、蛍光樹脂体に含まれる蛍光材の熱の影響によって特定の有色発光素子の発光効率の低下を引き起こす要因となっていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、各色の複数の有色発光素子によって構成される側面照射型LED発光装置において、波長変換する際の熱の影響を特定の有色発光素子に及ぼすことなく、所定の発光色によって効率よく側面方向に発光させることのできる側面照射型LED発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の側面照射型LED発光装置は、ベース基板と、該ベース基板上に配置される複数の発光素子と、この複数の発光素子の上方に配置される反射板とを備えた側面照射型LED発光装置において、前記複数の発光素子は、前記ベース基板の中央部に配置される少なくとも一以上の第1発光素子と、この第1発光素子の周囲に配置される複数の第2発光素子とを有し、前記第1発光素子が赤色系発光素子を含み、前記第2発光素子が青色系及び緑色系の少なくとも一方の発光素子を含み、前記第2発光素子が蛍光材を含有する前記ベース基板上にリング状に配置された蛍光樹脂体によって封止され、且つ前記リング状に配置された蛍光樹脂体が前記ベース基板と前記反射板とに挟まれることによって、前記第1発光素子が配置される発光領域を前記蛍光樹脂体以外の樹脂等で覆われない空間であって、ベース基板と反射板が何も介さずに密閉される空間とする側面照射型LED発光装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の側面照射型LED発光装置によれば、赤色系発光素子をベース基板の中央部に配置し、その周囲に蛍光材を含む蛍光樹脂体で封止された青色系又は緑色系の発光素子を囲うように配置することで、熱の影響を受けやすい赤色系発光素子を前記蛍光材が励起する際に発する熱から有効に保護することができる。これによって、赤色系発光素子の発光効率を低下させることなく前記蛍光樹脂体を通して明るい白色系の発光を得ることができる。また、前記赤色系発光素子がベース基板、反射板及び蛍光樹脂体によって囲われた空間内に配置されているため、蛍光材が発する熱や外部の温度変化等による影響を軽減し、熱による性能劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の側面照射型LED発光装置の断面図である。
【
図2】各色の有色発光素子の配置構成を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【
図3】第1実施形態の側面照射型LED発光装置の拡大断面図である。
【
図4】第2実施形態の側面照射型LED発光装置の断面図である。
【
図5】第2実施形態の側面照射型LED発光装置の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至
図3は、本発明の第1実施形態の側面照射型LED発光装置11を示したものである。側面照射型LED発光装置11は、ベース基板12と、このベース基板12上に配置される複数の有色発光素子と、この複数の有色発光素子の上方に配置される反射板17とを備えている。前記ベース基板12上には、中央部に開口部19を有したマウント基板14が配置され、前記開口部19からベース基板12の上面12aが露出している。この露出したベース基板12の上面12aに複数の有色発光素子からなる発光部13が形成されている。
【0014】
前記発光部13を構成する複数の有色発光素子は、ベース基板12の中央部に配置される少なくとも一以上の第1発光素子15と、この第1発光素子15の周囲に配置される複数の第2発光素子16とを有し、第1発光素子15が赤色系発光素子を含み、第2発光素子16が青色系及び緑色系の少なくとも一方の発光素子を含み、第2発光素子16が蛍光材24を含有する蛍光樹脂体18によって封止されると共に、蛍光樹脂体18が第1発光素子15を取り囲むようにベース基板12上に配置され、且つ蛍光樹脂体18がベース基板12と反射板17とに挟まれた構成となっている。
【0015】
前記ベース基板12は、アルミニウム等の金属材料によって形成され、その上面12aに第1発光素子15及び第2発光素子16が所定の間隔に配置されている。このベース基板12は、照明用途や照明規模等に応じて、十数mm~数十mm四方の矩形状に形成され、マウント基板14及び発光部13が設けられる上面12aを除く側面12b及び下面12cが金属面となって露出している。前記側面12b及び下面12cは放熱面となるため、通常は金属面が露出した状態で使用される。
【0016】
前記マウント基板14は、ガラスエポキシ樹脂製の板状部材であり、ベース基板12とほぼ同一サイズに形成されている。このマウント基板14の中央には、発光部13の形成領域となる円形の開口部19が設けられ、この開口部19を通してベース基板12の上面12aの一部が露出している。前記開口部19の周囲には金メッキ等によって一対の電極部23が設けられる。この一対の電極部23は、第1発光素子15及び第2発光素子16に外部から電力を供給するためのアノード端子及びカソード端子となっている。
【0017】
図2に示したように、前記発光部13は、第1発光素子15によって構成される第1発光領域21と、第2発光素子16によって構成される第2発光領域22とからなっている。第1発光素子15は赤色系発光素子によって構成され、第2発光素子16は、青色系又は緑色系発光素子によって構成されている。第1発光領域21は、ベース基板12の上面12aの中央部を発光領域をとし、第2発光領域22は、第1発光領域21を囲うリング状の外周部を発光領域としている。また、第2発光領域22は、第2発光素子16による発光を白色系発光に波長変換するための蛍光材24が含有された蛍光樹脂体18によって封止されている。一方、第1発光領域21は、前記リング状の蛍光樹脂体18で囲われた密閉空間部となっている。
【0018】
前記第1発光領域21及び第2発光領域22からなる発光部13は、全体として数十個単位の発光素子で構成され、それぞれがワイヤ(図示せず)を介して相互に電気的に接続され、一対の電極部23に引き出されている。
【0019】
前記第2発光素子16は、一般照明用として白色系の発光色を出すために、主に窒化ガリウム系化合物半導体が用いられる。その構造は、サファイアガラスからなるサブストレートと、このサブストレートの上にn型半導体、p型半導体を拡散成長させた拡散層とからなっている。前記n型半導体及びp型半導体はそれぞれn型電極,p型電極を備えており、電流を流すことでPN接合部16a(
図3参照)を中心として青色光又は緑色光として発せられる。この第2発光素子16は、蛍光材24が含有された蛍光樹脂体18で封止することによって、白色系の発光に波長変換される。
【0020】
図3に示したように、前記蛍光樹脂体18は、第2発光素子16の発光色に適合するシリコーン樹脂が使用され、リング状の第2発光領域22の幅に沿い、第2発光素子16及びワイヤ(図示せず)を封入する高さにドーム状に形成されている。このようなドーム状に形成することによって、発光面を広くすることができると共に、円弧状に傾斜した面から反射板17で反射される光量を多くすることができる。これによって、側面側からの発光量を増加することができる。この蛍光樹脂体18は、透明な樹脂基材、例えば、エポキシ樹脂あるいはシリコーン樹脂基材に、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)や、色素粒子の原料となる染料等からなる蛍光材24を適量混入することによって形成することができる。
【0021】
前記第1発光素子15は、アルミニウムガリウムヒ素あるいはガリウムヒ素リン系の半導体が用いられ、PN構造は前記第2発光素子と同様である。この第1発光素子15と第2発光素子16との組み合わせによって、暖色系の白色発光色となる。
【0022】
前記第2発光素子16のPN接合部16aを中心として発せられる光は、蛍光樹脂体18内の蛍光材24によって励起され、白色系の発光となる。一方、第1発光素子15のPN接合部15aから発せられる光は、蛍光樹脂体18によって隔離された密閉空間内に置かれているので、この密閉空間内での発光効率が低下することなくそのままの赤色光で発光させることができる。この赤色発光は、反射板17によって第1発光領域21で拡散された後、外周を取り囲む蛍光樹脂体18を透過する。この透過の際に第2発光領域22で波長変換された白色発光と混色することで、様々な演色効果を得ることができる。
【0023】
また、第1発光素子15と第2発光素子16とは、定常発光時における温度に差があるため、両者を混在させると相互間の発光色が変動したり、発光素子の劣化等が生じたりするおそれがある。この点に関して、本願発明では第2発光素子16からなる第2発光領域22が蛍光樹脂体18によって封止されているため、第1発光素子15から発せられる赤色系の発光による影響が及ばない。これによって、第1発光領域21及び第2発光領域22のそれぞれにおける発光色や発光輝度を一定に保持した状態で、第1発光領域21から発せられる赤色系発光と、第2発光領域22から発せられる白色系発光とを混色させることができる。
【0024】
図4及び
図5は第2実施形態の側面照射型LED発光装置31を示したものである。この側面照射型LED発光装置31は、ベース基板12の上に配置されるマウント基板14の開口部19が第2発光領域22の幅に沿ってリング状に形成されている。前記第1発光領域21の第1発光素子15は、マウント基板14上に配置される。一方、第2発光領域の第2発光素子16は、第1実施形態と同様に前記開口部19から露出するベース基板12の上面12aに直接配置される。
【0025】
前記第2発光素子16は前述したように、サブストレートが硬質性のサファイアでできているため強度があり、薄く形成できるが、第1発光素子15はサブストレートの硬度が第2発光素子16に比べて低いため、一定の厚みが必要となる。そのため、第1発光素子15をマウント基板14に配置することで、第1発光素子15のPN接合部15aの高さを第2発光素子16の上面よりも高く設定することができる。これによって、第2発光素子16と重ならないようにして蛍光樹脂体18を透過させることができ、第1実施形態とは微妙に異なった色調による白色系の発光効果を得ることができる。
【0026】
また、第1発光領域21と第2発光領域22とにおいて、第1発光素子15と第2発光素子16の配置をマウント基板14上とベース基板12上とで分けることによって、相互間の熱伝導による発光色の変動や素子の劣化等を有効に防止することができる。
【0027】
上記第1及び第2実施形態では、第2発光素子16を青色系発光素子で構成したが、この青色系発光素子と近い色温度や発熱量等の光学的及び電気的特性を有する緑色系発光素子に置き換えることも可能であり、また、青色系発光素子と緑色系発光素子とを混在させることも可能である。
【0028】
以上説明したように、本発明の側面照射型LED発光装置にあっては、赤色系の第1発光素子をベース基板の中央部に配置し、その周囲を蛍光樹脂体によって封止された青色系又は緑色系からなる第2発光素子で囲うことで、第1発光素子の発光効率の低下を防止することができる。これによって、前記第1発光素子から発せられる赤色光が前記蛍光樹脂体を透過することで、暖色系の白色発光として側面を明るく照射することができる。
【符号の説明】
【0029】
11 側面照射型LED発光装置
12 ベース基板
13 発光部
14 マウント基板
15 第1発光素子
15a PN接合部
16 第2発光素子
16a PN接合部
17 反射板
18 蛍光樹脂体
19 開口部
21 第1発光領域
22 第2発光領域
23 電極部
24 蛍光材
31 側面照射型LED発光装置