(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】香り見本容器及びそれを用いた香り見本
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20220513BHJP
G09F 5/00 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B65D83/00 F
G09F5/00 G
(21)【出願番号】P 2017226566
(22)【出願日】2017-11-27
【審査請求日】2020-09-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000133157
【氏名又は名称】株式会社TANAX
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 一平
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-011158(JP,A)
【文献】特開2008-254699(JP,A)
【文献】実開昭53-017911(JP,U)
【文献】実開昭56-166039(JP,U)
【文献】特開2008-162617(JP,A)
【文献】米国特許第04147278(US,A)
【文献】登録実用新案第3140434(JP,U)
【文献】特開2009-297098(JP,A)
【文献】特開2004-121272(JP,A)
【文献】特開平07-289624(JP,A)
【文献】実開昭59-061097(JP,U)
【文献】特開2009-208781(JP,A)
【文献】実開昭57-187527(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00-40/30
B65B 1/00-3/36
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
B65D 83/00
B65D 83/08-85/28
B65D 85/575
G09F 1/00-5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 芳香体を収容する芳香体収容部と、
b) 一端が前記芳香体収容部の内部に挿入された筒状の送気管と、前記送気管の他端に接続された弾性変形可能な中空の変形部とを有し、該変形部の内部空間が該送気管と連通しているポンプと、
c) 前記芳香体収容部に設けられた排気口と、
を有し、
前記芳香体収容部が本体と蓋とに分かれておらず、且つ縦に二分割可能に構成されており、
前記送気管が、前記二分割された芳香体収容部の一方の部分と他方の部分との間に挟持されていることを特徴とする香り見本容器。
【請求項2】
請求項
1に記載の香り見本容器と、
前記芳香体収容部に収容された、前記排気口を通過しない大きさの芳香体と、
を有することを特徴とする香り見本。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店頭において柔軟剤やシャンプー等の芳香性商品の香りを買い物客に嗅がせるための香り見本に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、柔軟剤、シャンプー、又は芳香剤等の香りを発する商品の売り場では、買い物客に商品の香りを試しに嗅がせるためのテスター(香り見本)が広く設置されている。こうした香り見本としては、例えば特許文献1に記載のように、中空のプラスチック容器に商品の香りを保持させた粒状の芳香体を収容し、容器に形成された孔に買い物客が鼻を近づけることで香りを嗅げるようにしたものや、特許文献2に記載のように、キャップによって開閉可能な容器に芳香体を収容し、買い物客がキャップを開けて香りを嗅げるようにしたものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の香り見本は、いずれも芳香体から自然に放出される香りをユーザ(買い物客)に嗅がせるものであるため、ユーザが十分に香りを感じられない場合があった。このような場合、ユーザが香りを強く感じられるように芳香体に含まれる芳香成分の濃度を高めることが考えられるが、その場合、売り場に香りが充満して買い物客に不快感を与えたり、売り場に配置された複数の香り見本から放出される香り同士が混ざり合って判別が困難となったりする場合がある。なお、上記特許文献2に記載の香り見本のようにキャップを備えたものとした場合でも、ユーザが使用後に蓋を適切に閉めなかった場合には同様の問題が発生する。
【0005】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、ユーザが香りを十分に感じることができ、且つ不所望の香りの放出を抑えることができる香り見本容器及びこれを用いた香り見本を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明に係る香り見本容器は、
a) 芳香体を収容する芳香体収容部と、
b) 一端が前記芳香体収容部の内部に挿入された筒状の送気管と、前記送気管の他端に接続された弾性変形可能な中空の変形部とを有し、該変形部の内部空間が該送気管と連通しているポンプと、
c) 前記芳香体収容部に設けられた排気口と、
を有することを特徴としている。
【0007】
前記本発明に係る香り見本容器は、
前記芳香体収容部が、上面が開放された有底の筒状体から成る本体部と、前記本体部の上部に取り付けられる蓋部とを有するものであって、
前記送気管の一端が該蓋部に設けられた開口から前記本体部に挿入されていると共に、
前記排気口が前記蓋部に設けられているものとすることができる。
【0008】
また、前記本発明に係る香り見本容器は、
前記芳香体収容部が、縦に二分割可能に構成されており、
前記送気管が、前記二分割された芳香体収容部の一方の部分と他方の部分との間に挟持されるものとしてもよい。
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る香り見本は、
前記いずれかの香り見本容器と、
前記芳香体収容部に収容された、前記排気口を通過しない大きさの芳香体と、
を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明に係る香り見本容器及びそれを用いた香り見本によれば、ユーザがポンプの変形部を押圧することによって送気管から芳香体収容部内の芳香体に空気が吹き付けられ、これにより芳香体から放散された芳香成分を含む空気が排気口から外部に噴出する。これにより、芳香成分を高濃度で含む気体を必要なときだけ噴射することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る香り見本を示す側面図。
【
図2】前記香り見本を構成する香り見本容器の断面図であり、(a)は香り見本容器を組み立てた状態を示し、(b)は香り見本容器を分解した状態を示す。
【
図4】本発明の第2の実施形態における香り見本容器を示す斜視図。
【
図7】本発明におけるポンプの別の例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明を行う。
図1は本発明の第1の実施形態に係る香り見本の側面図であり、
図2は本実施形態に係る容器の断面図、
図3は前記香り見本の組み立て手順を説明する模式図である。
【0013】
本実施形態に係る香り見本は、香り見本容器10と、その内部に収容された粒状の芳香体20とを含んでおり、香り見本容器10は、更に、芳香体収容部30と、その上部に取り付けられたポンプ40とを備えている。
【0014】
ポンプ40は軟質の樹脂から成り、中空の変形部41と筒状の送気管42とを備えている。変形部41は下方に突出したすり鉢状の底面41aと、円形の上面41bと、底面41a及び上面41bを繋ぐ蛇腹状の周面41cとを備えている。送気管42は、変形部41の底面中央から下方に延びており、その先端は芳香体収容部30の内底面の近傍に位置している。なお、送気管42の内部空間と変形部41の内部空間は常時連通した状態となっている。
【0015】
芳香体収容部30は、本体31と蓋32を備えている。本体31は透明な硬質樹脂から成る有底円筒形の部材であり、蓋32は本体の上部に設けられた開口を閉鎖する硬質樹脂製の部材である。なお、本体31の外周面の上部には第1のネジ山33が形成されており、蓋32の内周面には第1のネジ山33と対応する第2のネジ山34が形成されている。蓋32の周面には蓋の内外を連通する貫通孔37(本発明における「排気口」に相当)を備えたノズル38が設けられている。また、蓋32の上面にはポンプ40の変形部41の底面形状に対応したすり鉢状の凹部35が形成されており、凹部35の中央にはポンプ40の送気管42を挿通するための円形の開口である送気管挿通口36が設けられている。
【0016】
本実施形態における芳香体20は、セルロースやセラミック等から成る直径数ミリ(例えば2~4mm)の多孔質の粒状体に、芳香性物質を保持させたものである。なお、芳香体収容部30のノズル38から芳香体20がこぼれ出すことがないよう、芳香体20としては、その直径がノズル38の貫通孔37の直径よりも大きいものを使用する。
【0017】
本実施形態に係る香り見本を組み立てる際には、
図3に示すように、予め蓋32にポンプ40を取り付けておき、この蓋32を、芳香体20を収容した本体31の上部に螺合させる。なお、蓋32にポンプ40を取り付ける際には、ポンプ40の送気管42を蓋32の上面に設けられた送気管挿通口36に上方から挿通し、変形部41の底面を蓋32の上面に設けられたすり鉢状の凹部35に嵌め込んで固定する。このとき、ポンプ40は、接着剤や粘着材によって蓋32に固定してもよく、あるいは嵌合によって蓋32に固定するようにしてもよい。
【0018】
ポンプ40の送気管42の長さは、香り見本を組み立てた状態でその先端(下端)が本体31の内底面近傍に位置するように設定されている。そのため、上記のように香り見本容器を組み立てると、送気管42の先端が芳香体20中に埋まった状態となる(
図1参照)。
【0019】
以上のようにして組み立てられた香り見本は、柔軟剤、芳香剤、シャンプー、又はボディソープ等の芳香性の商品の売り場に配置される。この香り見本を買い物客(ユーザ)が手にとってポンプ40を操作すると(すなわち変形部41を押し潰すと)、変形部41内の空気が送気管42の先端から噴出し、本体31に収容された芳香体20に吹き付けられる。これにより芳香体20に含まれる芳香成分が放出され、この芳香成分を含んだ空気がノズル38から外部に噴出される。なお、上述の通り、送気管42の先端は容器の底付近に位置しているため、上記のように送気管42の先端から空気を噴出すると芳香体収容部30内に下から上に向かう空気の流れが形成され、これにより芳香体収容部30に収容された芳香体20の全体からまんべんなく芳香成分を放散させることができる。なお、ユーザが変形部41から手を離すと、押し潰されていた変形部41が復元するのに伴ってノズル38から外気が吸引され、変形部41内が再び空気で満たされる。
【0020】
このように、本実施形態に係る香り見本によれば、ポンプ40から送り出された空気を芳香体20に吹き付けることによって、芳香体20から芳香成分を効果的に放出させることができる。そのため、ユーザが香りを強く感じられるように、ビーズに多量の香気成分を含有させたり、芳香を放出するための開口を大きくしたりする必要がない。その結果、香り見本が発する香りが売り場に充満して買い物客に不快感を与えたり、複数の香り見本が発する香り同士が混ざり合って判別できなくなったりするのを防止することができる。
【0021】
なお、上記実施例では、送気管42の先端を芳香体収容部30の内底面の近傍に位置させるようにしたが、送気管42の先端位置はこれに限定されるものではない。但し、芳香体20全体から効率よく芳香成分を放出させるためには、少なくとも送気管42の先端を芳香体収容部30の高さ方向の中央よりも下方に位置させることが望ましい。
【0022】
続いて、本発明の第2の実施形態に係る香り見本について
図4~
図6を参照しつつ説明する。
図4は本実施形態における香り見本容器の斜視図であり、
図5は前記香り見本容器の分解図である。また、
図6は本実施形態における香り見本の組み立て手順を説明する図である。
【0023】
本実施形態における香り見本容器50は、第1の実施形態のものと同様に、芳香体収容部60と芳香体収容部60に空気を送り込むためのポンプ80とを備えている。但し、芳香体収容部60は本体と蓋とに分かれておらず、代わりに縦方向に二分割できる構成となっている。なお、ポンプ80の形状は第1の実施形態のものとほぼ同じである。
【0024】
芳香体収容部60は、有底の円筒形状を有しており、上面にポンプ80の変形部81を嵌め込むためのポンプ取付用開口(図示略)を有している。また、芳香体収容部60の側面の上部には芳香体収容部60の内外を連通させる貫通孔61(本発明における「排気口」に相当)を備えたノズル62が設けられている。更に、芳香体収容部60の内部には、ポンプ80の送気管82を支持するための送気管支持部63が高さ方向に等間隔で3箇所設けられている。送気管支持部63は芳香体収容部60の内周面から水平方向に延びる板状の部材であり、その中心には送気管82を嵌め込むための円形の孔(図示略)が形成されている。なお、送気管支持部63は、芳香体収容部60の内部における空気の流通を妨げることがないよう、いずれもその面積が芳香体収容部60の水平方向の断面積よりも小さくなっている。
【0025】
芳香体収容部60は、ポンプ取付用開口の中心軸とノズル62の貫通孔61の中心軸とを含む平面で二つの部材に分割可能に構成されており、これら二つの部材は、前記平面を挟んでほぼ対称な形状を有している。但し、一方の部材(以下、第1部材64とよぶ)の上部には水平方向に延びる二つの小突起66a、66bが設けられており、他方の部材(以下、第2部材65とよぶ)には小突起66a、66bを嵌め込むための二つの凹部67a、67bが設けられている。更に、第1部材64の底面板(芳香体収容部60の底面を形成する半円形の部材。以下同じ。)68の側面からは半円形の板状突起69が水平方向に突出しており、第2部材65の底面板70には板状突起69を嵌め込むための半円形凹部71が形成されている。なお、芳香体収容部60内に設けられた送気管支持部63も、前記平面によって、それぞれ第1部材側の部分63aと第2部材側の部分63bとに二分される。
【0026】
本実施形態に係る香り見本を組み立てる際には、
図6に示すように、水平に寝かせた第1部材64に芳香体90を収容し、送気管支持部63の第1部材側の部分63aの上にポンプ80の送気管82を載せ、更にその上に第2部材65を被せる。このとき、第1部材64の小突起66a、66b及び板状突起69を、それぞれ第2部材の凹部67a、67b及び半円凹部71に嵌合させることで第1部材64と第2部材65を互いに固定する。なお、ポンプ80は、その送気管82が送気管支持部63の第1部材側の部分63aと、第2部材側の部分63bとで挟持されることで芳香体収容部60に固定される。
【0027】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。例えば、本発明に係る香り見本容器におけるポンプは、上述のような蛇腹状の変形部を備えたものに限定されるものではなく、弾性体から成り、ユーザが変形部を押圧することによって排気を行い、押圧解除後の形状復帰に伴って吸気を行うものであればいかなるものであってもよい。例えば、
図7に示すような平滑な袋状の変形部101を備えたポンプ100を用いることができる。また、上記実施形態では芳香体収容部を円筒形としたが、これに限らず、例えば角筒状などとすることもできる。
【0028】
更に、本発明に係る香り見本における芳香体は、芳香体収容部の排気口を通過しない大きさのものであれば、
図1及び
図3に示すような粒状のもののほか、繊維状、ゲル状など、いかなる形態のものを用いてもよい。また、繊維状の芳香体としては、例えば、ガーゼ、コットン、布帛、又は紙等に芳香性の液体を染みこませたものを用いることができる。また、ゲル状の芳香体としては、例えば、芳香性の液体を凝固剤で固めたものや、高吸水性ポリマーに芳香性の液体を吸収させたものなどを用いることができる。なお、ゲル状の芳香体は一つの塊の状態で芳香体収容部に収容するほか、複数の粒状の状態で芳香体収容部に収容するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10、50…香り見本容器
40、80…ポンプ
41、81…変形部
42、82…送気管
20、90…芳香体
30、60…芳香体収容部
31…本体
32…蓋
37、61…貫通孔
38、62…ノズル
63…送気管支持部
64…第1部材
65…第2部材