(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】アクチュエータ、入力装置、およびコントロールシステム
(51)【国際特許分類】
H02K 7/06 20060101AFI20220513BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20220513BHJP
H02K 11/215 20160101ALI20220513BHJP
【FI】
H02K7/06 Z
H02K7/116
H02K11/215
(21)【出願番号】P 2018011498
(22)【出願日】2018-01-26
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】浅川 新六
(72)【発明者】
【氏名】五明 正人
(72)【発明者】
【氏名】武田 正
(72)【発明者】
【氏名】須江 猛
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-199713(JP,A)
【文献】特開2009-213694(JP,A)
【文献】登録実用新案第3084433(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00- 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口した窓部が設けられた支持体と、
前記支持体に保持される第1モータ、および、前記第1モータの回転に基づき前記支持体に対して第1方向へ移動する第1スライダを備えた第1移動機構と、
前記支持体に保持される第2モータ、および、前記第2モータの回転に基づき前記支持体に対して前記第1方向と直交する第2方向へ移動する第2スライダを備えた第2移動機構と、
前記第1スライダに対して前記第1方向へ相対移動不能且つ前記第2方向へ相対移動可能に係合すると共に、前記第2スライダに対して前記第2方向へ相対移動不能且つ前記第1方向へ相対移動可能に係合する操作体と、を有
し、
前記第1スライダは、前記第2方向に延在する第1の長孔を備え、
前記第2スライダは、前記第1方向に延在する第2の長孔を備え、
前記操作体は、前記第1の長孔と前記第2の長孔に挿入される被駆動部と、前記被駆動部とは反対側から前記窓部を貫通して前記窓部から突出する出力部とを備え、
前記出力部は、前記窓部の開口範囲内で移動可能であることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1移動機構は、前記第1モータの回転に基づいて回転する第1ピニオン、および、前記第1スライダに形成されて前記第1方向に延在する第1ラック部を備え、
前記第2移動機構は、第2モータの回転に基づいて回転する第2ピニオン、および、前記第2スライダに形成されて前記第2方向に延在する第2ラック部を備えることを特徴とする請求項
1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記第1モータの出力軸と前記第1ピニオンとの間の回転伝達経路と、前記第2モータの出力軸と前記第2ピニオンとの間の回転伝達経路のいずれか一方には、第1の傘歯車、および、前記第1の傘歯車と直交する軸線回りに回転する第2の傘歯車が設けられていることを特徴とする請求項
2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記第1スライダの前記第1方向の位置、および、前記第2スライダの前記第2方向の位置を検出するセンサ部と、
前記センサ部の出力に基づいて前記第1モータおよび前記第2モータを制御する制御部
と、を有することを特徴とする請求項1から
3の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記センサ部は、
前記支持体に設けられた第1ホール素子、および、前記第1スライダに設けられた第1磁石を備えた第1センサと、
前記支持体に設けられた第2ホール素子、および、前記第2スライダに設けられた第2磁石を備えた第2センサと、を備えることを特徴とする請求項
4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
請求項
4または5に記載のアクチュエータ、および、前記操作体に対する操作を検出する第1操作検出部を備えた入力装置であって、
前記制御部は、前記第1操作検出部の出力、もしくは、上位装置からの制御命令に基づいて前記第1モータおよび前記第2モータを制御することを特徴とする入力装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の入力装置と、前記入力装置と通信を行うコントロールユニットと、を有するコントロールシステムであって、
前記コントロールユニットは、前記入力装置から供給された前記操作体の操作に関する信号に基づいてコントロール対象の制御を行うと共に、前記入力装置に対して前記操作体の動きを制御する制御信号を供給することを特徴とするコントロールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種振動を発生させるアクチュエータ、ならびにこれを用いた入力装置およびコントロールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気駆動機構によって振動を発生させる機器として、磁石を備えた支持体と、磁石と対向するコイルを備えた可動体とを有し、可動体と支持体との間に弾性部材が配置されたアクチュエータが提案されている(特許文献1参照)。また、特許文献1に記載のアクチュエータでは、Z方向に板厚方向を向けたホルダにおいて、Z方向に直交するX方向で離間する位置に2つの第1コイルが設けられている一方、Z方向およびX方向に対して直交するY方向で離間する位置に2つの第2コイルを設けられている。また、支持体には、第1コイルに対してZ方向の両側に第1磁石が配置され、第2コイルに対してZ方向の両側に第2磁石が配置されている。従って、第1コイルおよび第1磁石は、可動体をX方向に振動させる第1磁気駆動機構を構成し、第2コイルおよび第2磁石は、可動体をY方向に振動させる第2磁気駆動機構を構成している。それゆえ、アクチュエータによって、X方向の振動やY方向の振動を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のアクチュエータは、長円形状の空芯コイルと、平面形状の磁石とを空芯コイルの長辺部分と磁石とを対向させるように配置して1軸方向のリニアアクチュエータとして用いることのできる磁気駆動回路を構成し、このような磁気駆動回路を複数用いることによって、直交する2方向の動きを発生させている。特許文献1の磁気駆動回路は、大型の磁石を用いて構成される。従って、直交する2方向の動きを発生させる2軸のアクチュエータを構成する場合、大型の磁石を複数用いるため、部品コストが高いという問題がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、直交する2方向の動きを発生させるアクチュエータを低コストで提供することにある。
【0006】
本発明の他の課題は、直交する2方向の動きを発生させるアクチュエータを用いた入力装置およびコントロールシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、開口した窓部が設けられた支持体と、前記支持体に保持される第1モータ、および、前記第1モータの回転に基づき前記支持体に対して第1方向へ移動する第1スライダを備えた第1移動機構と、前記支持体に保持される第2モータ、および、前記第2モータの回転に基づき前記支持体に対して前記第1方向と直交する第2方向へ移動する第2スライダを備えた第2移動機構と、前記第1スライダに対して前記第1方向へ相対移動不能且つ前記第2方向へ相対移動可能に係合すると共に、前記第2スライダに対して前記第2方向へ相対移動不能且つ前記第1方向へ相対移動可能に係合する操作体と、を有し、前記第1スライダは、前記第2方向に延在する第1の長孔を備え、前記第2スライダは、前記第1方向に延在する第2の長孔を備え、前記操作体は、前記第1の長孔と前記第2の長孔に挿入される被駆動部と、前記被駆動部とは反対側から前記窓部を貫通して前記窓部から突出する出力部とを備え、前記出力部は、前記窓部の開口範囲内で移動可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明では、第1モータの回転を第1スライダの直進運動に変換し、第2モータの回転を第2スライダの直進運動に変換し、これら2つのスライダを直交する2方向に移動させることによって、操作体を平面内で任意の方向へ移動させることができる。従って、操作体に触れた操作者に対して、第1方向の振動と第2方向の振動を組み合わせた振動を体感させることができる。このように、モータを用いた2組の移動機構を用いて2軸のアクチ
ュエータを構成する場合には、空芯コイルと磁石を用いた1軸のリニアアクチュエータを2組用いる場合と比較して部品コストを低くすることができる。従って、直交する2方向の動きを発生させるアクチュエータを低コストで提供することができる。また、このようにすると、被駆動部は、第1スライダに対しては第2方向へ自由に相対移動し、且つ、第2スライダに対しては第1方向へ自由に相対移動する。従って、第1スライダと第2スライダを独立して移動させて、操作体を平面内の任意の方向へ移動させることができる。
【0010】
本発明において、前記第1移動機構は、前記第1モータの回転に基づいて回転する第1ピニオン、および、前記第1スライダに形成されて前記第1方向に延在する第1ラック部を備え、前記第2移動機構は、第2モータの回転に基づいて回転する第2ピニオン、および、前記第2スライダに形成されて前記第2方向に延在する第2ラック部を備えることが好ましい。このようにすると、モータの回転を直進運動に変換させて、1軸方向の移動機構として用いることができる。
【0011】
この場合に、前記第1モータの出力軸と前記第1ピニオンとの間の回転伝達経路と、前記第2モータの出力軸と前記第2ピニオンとの間の回転伝達経路のいずれか一方には、第1の傘歯車、および、前記第1の傘歯車と直交する軸線回りに回転する第2の傘歯車が設けられていることが好ましい。このようにすると、第1モータと第2モータを平行に配置した状態で、第1スライダと第2スライダを直交する方向へ移動させることができる。従って、第1モータと第2モータを90°傾けて配置する必要がないので、第1モータと第2モータを配置するスペースの平面サイズを小さくすることができる。従って、アクチュエータの平面サイズを小さくすることができる。
【0012】
本発明において、前記第1スライダの前記第1方向の位置、および、前記第2スライダの前記第2方向の位置を検出するセンサ部と、前記センサ部の出力に基づいて前記第1モータおよび前記第2モータを制御する制御部と、を有することが好ましい。このようにすると、第1スライダの実際の駆動量を第1センサで検出し、第2スライダの実際の駆動量を第2センサで検出できるので、操作体の現在位置を検出することができる。また、現在位置に基づいてフィードバック制御を行うことができるので、操作体の動きを精度良く制御することができる。
【0013】
この場合に、前記センサ部は、前記支持体に設けられた第1ホール素子、および、前記第1スライダに設けられた第1磁石を備えた第1センサと、前記支持体に設けられた第2ホール素子、および、前記第2スライダに設けられた第2磁石を備えた第2センサと、を備える態様を採用することができる。
【0014】
次に、本発明は、上記のアクチュエータ、および、前記操作体に対する操作を検出する第1操作検出部を備えた入力装置であって、前記制御部は、前記第1操作検出部の出力、もしくは、上位装置からの制御命令に基づいて前記第1モータおよび前記第2モータを制御することを特徴とする。このようにすると、入力装置において、操作体に対する操作の態様に応じた動きを操作体に行わせることができる。従って、操作の態様に応じた振動を
操作者に体感させることができる。
【0015】
また、本発明は、上記の入力装置と、前記入力装置と通信を行うコントロールユニットと、を有するコントロールシステムであって、前記コントロールユニットは、前記入力装置から供給された前記操作体の操作に関する信号に基づいてコントロール対象の制御を行うと共に、前記入力装置に対して前記操作体の動きを制御する制御信号を供給することを特徴とする。このようにすると、コントロールユニットとは異なる場所に設置した入力装置で操作入力を行うことができ、その際、操作の態様に応じた振動を操作者に体感させることができる。従って、コントロールユニットを見ずに、手指で感じた振動によって操作の内容を認識することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、第1モータの回転を第1スライダの直進運動に変換し、第2モータの回転を第2スライダの直進運動に変換し、これら2つのスライダを直交する2方向に移動させることによって、操作体を平面内で任意の方向へ移動させることができる。従って、操作体に触れた操作者に対して、第1方向の振動と第2方向の振動を組み合わせた振動を体感させることができる。このように、モータを用いた2組の移動機構を用いて2軸のアクチュエータを構成する場合には、空芯コイルと磁石を用いた1軸のリニアアクチュエータを2組用いる場合と比較して部品コストを低くすることができる。従って、直交する2方向の動きを発生させるアクチュエータを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を適用した実施形態1のアクチュエータの斜視図である。
【
図2】実施形態1のアクチュエータの分解斜視図である。
【
図3】実施形態1のアクチュエータの分解斜視図である。
【
図4】実施形態1のアクチュエータの分解斜視図である。
【
図5】本発明を適用した実施形態2のアクチュエータの斜視図である。
【
図6】実施形態2のアクチュエータの分解斜視図である。
【
図7】実施形態3のアクチュエータのブロック図である。
【
図8】本発明を適用した入力装置、および、入力装置を用いたコントロールシステムのブロック図である。
【
図9】本発明を適用した入力装置を用いて行われるコントロールユニットの操作の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、互いに交差する3つの方向を各々、X方向、Y方向およびZ方向として説明する。Z方向はX方向(第1方向)およびY方向(第2方向)に対して直交する方向である。また、X方向の一方側にX1を付し、X方向の他方側にX2を付し、Y方向の一方側にY1を付し、Y方向の他方側にY2を付し、Z方向の一方側にZ1を付し、Z方向の他方側にZ2を付して説明する。
【0019】
(アクチュエータ:実施形態1)
図1は、本発明を適用した実施形態1のアクチュエータ1の斜視図である。
図1(a)はZ方向の一方側Z1から見た斜視図であり、
図1(b)はZ方向の他方側Z2から見た斜視図である。また、
図2は実施形態1のアクチュエータ1の分解斜視図であり、ベース21からカバー22を取り外した状態を示す。アクチュエータ1は、支持体2と、支持体2に対してX方向(第1方向)およびY方向(第2方向)へ相対移動する操作体3と、操作体3をX方向へ移動させる第1移動機構4と、操作体3をY方向へ移動させる第2移動
機構5と、操作体3の現在位置を検出するセンサ部6を備える。
図1(a)、
図2に示すように、操作体3は、支持体2の内部においてX方向およびY方向に移動可能な状態で保持される円板状の本体部31と、支持体2に設けられた矩形の窓部20からZ方向の一方側Z1へ突出する出力部32を備える。出力部32は、窓部20の開口範囲内でXY面内の任意の方向へ移動可能である。
【0020】
支持体2は、Z方向から見て略正方形のベース21およびカバー22を備える。ベース21は所定の厚さを有する板状である。
図2に示すように、ベース21のZ方向の一方側Z1の面には、第1移動機構4の第1スライダ45、および、第2移動機構5の第2スライダ55を配置する凹部23が形成されている。第2スライダ55は凹部23の底部に配置され、第1スライダ45は、第2スライダ55に対してZ方向の一方側Z1から重なった状態で凹部23に配置される。操作体3は、第1スライダ45に対してZ方向の一方側Z1から重なった状態で配置される。カバー22は、ベース21に対してZ方向の一方側Z1から取り付けられる。カバー22は、窓部20が形成された上板部221と、上板部221の外周縁からZ方向の他方側Z2へ延びる側板部222を備える。側板部222は、ベース21の外周縁に当接する。
【0021】
図1(b)に示すように、ベース21のZ方向の他方側Z2には、第1モータ40および第2モータ50が配置される。第1モータ40および第2モータ50は、軸線方向をY方向に向けて略平行に配置される。本形態では、第1モータ40と第2モータ50は同一のモータである。第1モータ40の出力軸41と第2モータ50の出力軸51は逆方向を向いている。すなわち、第1モータ40の出力軸41はY方向の一方側Y1を向いており、第2モータ50の出力軸51はY方向の他方側Y2を向いている。第1モータ40は、第1フレーム42によってベース21に固定される。また、第2モータ50は、第2フレーム52によってベース21に固定される。
【0022】
図3、
図4は実施形態1のアクチュエータの分解斜視図である。
図3はZ方向の一方側Z1から見た図であり、カバー22の図示を省略し、操作体3、第1スライダ45、第2スライダ55をベース21から分離した状態を示す。また、
図4はZ方向の他方側Z2から見た図であり、第1モータ40、第1フレーム42、第1ピニオン43ならびに第2モータ50、第2フレーム52、および第1傘歯車58をベース21から分離した状態を示す。
【0023】
図3に示すように、操作体3は、本体部31からZ方向の他方側Z2へ突出する被駆動部33を備える。操作体3は、第1スライダ45に対してX方向へ相対移動不能且つY方向へ相対移動可能に係合すると共に、第2スライダ55に対してY方向へ相対移動不能且つX方向へ相対移動可能に係合する。本形態では、被駆動部33は本体部31からZ方向の他方側Z2へ突出する軸部であり、第1スライダ45に形成された第1の長孔451、および、第2スライダ55に形成された第2の長孔551に通される。第1の長孔451はY方向に延在し、第2の長孔551はX方向に延在する。従って、第1スライダ45がX方向に移動すると、操作体3は被駆動部33を介してX方向へ駆動される。また、第2スライダ55がY方向に移動すると、操作体3は被駆動部33を介してY方向へ駆動される。よって、第1スライダ45と第2スライダ55の動作を組み合わせることによって、操作体3をXY面内の任意の方向へ移動させることができる。
【0024】
(第1移動機構)
図3、
図4に示すように、第1移動機構4は、第1モータ40と、第1モータ40の出力軸41に固定される第1ピニオン43と、第1ピニオン43と噛み合う第1ラック部44を備えた第1スライダ45と、第1スライダ45をX方向へ移動可能に支持する第1ガイド軸46を備える。第1ガイド軸46はX方向に延在し、ベース21に形成された第1
溝部24に配置される。
図3に示すように、第1溝部24はベース21に形成された凹部23のY方向の一方側Y1の端部においてX方向に延在し、ベース21をZ方向に貫通する。第1スライダ45は、第1の長孔451が形成された略矩形の板状部452と、板状部452のY方向の一方側Y1の縁に形成されたスライド部453を備えており、板状部452は凹部23に配置され、スライド部453は第1溝部24に配置される。スライド部453には、X方向に離間した2箇所に凸部454が形成されており、各凸部454に形成された孔に第1ガイド軸46が通されている。また、スライド部453のZ方向の他方側Z2の端部には、X方向に延在する第1ラック部44が形成されている。
【0025】
図2、
図4に示すように、第1モータ40の端面から突出する軸受部47は、第1フレーム42に形成された切欠き421に嵌まっており、軸受部47から出力軸41が突出する。出力軸41に固定された第1ピニオン43は、ベース21に形成された第1溝部24からZ方向の他方側Z2へ突出する第1ラック部44と噛み合っている。従って、第1モータ40に駆動電流が供給され、出力軸41が回転すると、第1ピニオン43と第1ラック部44によって構成されるラック-ピニオン機構により、第1スライダ45がX方向に移動する。
【0026】
(第2移動機構)
第2移動機構5は、第2モータ50と、第2モータ50の出力軸51に固定される第1傘歯車58と、第1傘歯車58と噛み合う第2傘歯車59と、第2傘歯車59と一体に回転する第2ピニオン53と、第2ピニオン53と噛み合う第2ラック部54を備えた第2スライダ55と、第2スライダ55をY方向へ移動可能に支持する第2ガイド軸56を備える。第2ガイド軸56はY方向に延在し、ベース21に形成された第2溝部25に配置される。
図3に示すように、第2溝部25は、ベース21に形成された凹部23のX方向の略中央部においてY方向に延在し、ベース21をZ方向に貫通する。第2スライダ55は、第2の長孔551が形成された略矩形の板状部552と、板状部552からZ方向の他方側Z2へ突出する凸部554を備える。板状部552は凹部23に配置され、凸部554は第1溝部24に配置される。凸部554は、Y方向に離間した2箇所に形成されており、各凸部554に形成された孔に第2ガイド軸56が通されている。また、
図3に示すように、板状部552のX方向の他方側X2の端部には、Y方向に延在する第2ラック部54が形成されている。
【0027】
図2、
図4に示すように、第2モータ50の出力軸51には第1傘歯車58が固定されている。
図4に示すように、ベース21には、第1傘歯車58と噛み合う第2傘歯車59、および、第2傘歯車59と一体に回転する第2ピニオン53(
図3参照)を回転可能に配置する凹部26が形成されている。
図3に示すように、ベース21の凹部23には、第2ピニオン53の歯部を露出させる窓部27が形成されている。第2スライダ55を凹部23に配置すると、第2スライダ55に形成された第2ラック部54と第2ピニオン53とが噛み合って、ラック-ピニオン機構が構成される。従って、第2モータ50に駆動電流が供給され、出力軸51が回転すると、第1傘歯車58と第2傘歯車59によってY方向を向く軸線周りの回転がZ方向を向く軸線周りの回転に変換されて、第2ピニオン53に伝達される。そして、第2ピニオン53と第2ラック部54によって構成されるラック-ピニオン機構により、第2スライダ55がY方向に移動する。
【0028】
(センサ部)
センサ部6は、操作体3をX方向に移動させる第1スライダ45のX方向の現在位置を検出する第1センサ部6Xと、操作体3をY方向に移動させる第2スライダ55のY方向の位置を検出する第2センサ部6Yを備える。第1センサ部6Xは、ベース21の第1溝部24の内壁面に取り付けられた第1ホール素子61と、第1スライダ45に取り付けられた第1磁石62を備える。第1ホール素子61はX方向に離間した2箇所に配置され、
2箇所の第1ホール素子61の出力に基づき、第1スライダ45が移動したときの第1磁石62の磁界の変化を検出する。第2センサ部6Yは、ベース21の凹部23の内壁面に取り付けられた第2ホール素子63と、第2スライダ55に取り付けられた第2磁石64を備える。第2ホール素子63はY方向に離間した2箇所に配置されており、2箇所の第2ホール素子63の出力に基づき、第2スライダ55が移動したときの第2磁石64の磁界の変化を検出する。
【0029】
センサ部6は、第1スライダ45のX方向の現在位置、および、第2スライダ55のY方向の現在位置を検出するので、操作体3の現在位置を検出することができる。従って、センサ部6の出力を第1モータ40および第2モータ50の駆動制御を行う制御部にフィードバックすることにより、精度良く第1スライダ45および第2スライダ55の動きを制御することができ、精度良く操作体3の動きを制御することができる。従って、操作体3に意図した振動を正確に行わせることができ、操作者に意図した振動を感じさせることができる。
【0030】
(アクチュエータ:実施形態2)
図5は本発明を適用した実施形態2のアクチュエータ1の斜視図である。
図5(a)はZ方向の一方側Z1から見た斜視図であり、
図5(b)はZ方向の他方側Z2から見た斜視図である。また、
図6は実施形態2のアクチュエータ1の分解斜視図であり、カバー22の図示を省略し、操作体3、第1スライダ45、第2スライダ55をベース21から分離した状態を示す。実施形態2のアクチュエータ1は、支持体2と、支持体2に対してX方向(第1方向)およびY方向(第2方向)へ相対移動する操作体3と、操作体3をX方向へ移動させる第1移動機構4と、操作体3をY方向へ移動させる第2移動機構5と、操作体3の現在位置を検出するセンサ部6を備える。以下、実施形態1と異なる点のみ説明し、実施形態1と同一の点は説明を省略する。
【0031】
実施形態1では、第1モータ40と第2モータ50の出力軸41、51を互いに逆向きにしてY方向に平行配置しているが、実施形態2では、第1モータ40と第2モータ50の出力軸41、51をZ方向の一方側Z1に向けた姿勢としている。
図6に示すように、実施形態2では、ベース21に形成された凹部23内に第1ピニオン43と第2ピニオン53を回転可能な状態で露出させている。第1スライダ45には、X方向に延在する縁部に沿って第1ラック部44が形成されている。また、第2スライダ55には、Y方向に延在する縁部に沿って第2ラック部54が形成されている。
【0032】
実施形態2では、実施形態1のように傘歯車を用いて第2ピニオン53の回転軸線を第1ピニオン43の回転軸線と直交する方向に向ける必要がない。従って、第2移動機構5の部品点数を少なくすることができる。また、第1モータ40と第2モータ50の軸線方向がZ方向を向いているので、Z方向から見た第1モータ40と第2モータ50の平面サイズを小さくすることができる。従って、Z方向から見たアクチュエータ1の平面サイズを小さくすることができる。
【0033】
なお、本発明を適用したアクチュエータ1における第1モータ40と第2モータ50の配置は、実施形態1、2のような配置に限定されるものではない。例えば、第1モータ40の軸線方向をY方向に向けると共に、第2モータ50の軸線方向をX方向に向けて配置した場合においても、傘歯車を用いずに第2移動機構5を構成することができる。
【0034】
(アクチュエータ:実施形態3)
図7は実施形態3のアクチュエータ1Aのブロック図である。実施形態3のアクチュエータ1Aは、実施形態1、2のアクチュエータ1に、モータドライバ7と、制御部8と、通信部9を搭載したものである。実施形態1、2のアクチュエータ1は、上位装置からの
制御によって第1モータ40および第2モータ50に駆動電流が供給されるものであったが、実施形態3では、アクチュエータ1Aの内部にモータドライバ7および制御部8を組み込んでいる。制御部8は、モータドライバ7に制御信号を供給して、第1モータ40および第2モータ50の駆動電流を制御する。制御部8には、センサ部6の出力が入力される。制御部8は、センサ部6の出力に基づき、操作体3の目標位置と現在位置とのずれを解消するためのフィードバック制御を行う。これにより、精度良く操作体3の動きを制御することができる。
【0035】
制御部8は、通信部9を介して図示しない上位装置と通信を行う。上位装置は、操作体3に行わせる動きを指示する制御信号を制御部8に供給する。例えば、操作体3の振動パターン(振動方向や振動周波数など)、振動させるタイミングなどを指示する制御信号を制御部8に供給して、操作体3に意図した振動を行わせる。また、振動パターンには、操作体3の移動方向に応じて加速度を異ならせることによって方向性のある振動を行わせる振動パターンが含まれていても良い。このような構成では、上位装置は第1モータ40および第2モータ50に対応した制御を行う必要がなく、アクチュエータ1の制御部8は第1モータ40および第2モータ50の制御を行うだけでよい。従って、制御部8には汎用性を持たせる必要がないので、制御部8の構成を簡素化することができる。また、上位装置では第1モータ40および第2モータ50に対応した制御を行う必要がないので、汎用性のあるアクチュエータ1Aとして用いることができる。
【0036】
(入力装置)
図8は本発明を適用した入力装置100、および、入力装置100を用いたコントロールシステム300のブロック図である。本発明を適用したアクチュエータ1、1Aは、操作体3に手指で触れて操作を行う入力装置100に用いることができる。
図8の入力装置100は、実施形態3のアクチュエータ1Aと、操作体3に対する操作を検出する第1操作検出部10を備える。例えば、アクチュエータ1Aを操作用のボタンに搭載し、操作体3に触れてボタンを操作する場合に、第1操作検出部10は、このような操作が行われたことを検出する。あるいは、操作の態様や操作量を検出する。そして、検出内容に応じた検出信号を制御部8に入力する。
【0037】
アクチュエータ1Aの制御部8は、第1操作検出部10の検出信号に基づき、この検出信号に対応する振動パターンおよびタイミングで操作体3を振動させる制御を行うことができる。これにより、操作者が操作体3に触れて操作を行った場合に、操作を行ったことを振動で体感させることができる。つまり、操作者に、操作に応じた体感をフィードバックすることができる。また、操作の態様や操作量に応じて振動パターンを変えることもでき、操作の内容を振動パターンとして体感させて認識させることができる。
【0038】
また、
図8に示すように、入力装置100は、通信部9を介してコントロールユニット200と通信可能となっており、入力装置100とコントロールユニット200によってコントロールシステム300が構成されている。コントロールシステム300は、例えば、車両などに搭載される機器(コントロール対象)を制御するためのコントロールシステムとして用いることができる。コントロールユニット200は、液晶表示装置などの表示部210およびタッチパネル220と、制御部230を備えている。また、タッチパネル220以外の操作手段を備えていてもよい。制御部230は、表示部210に表示される画面構成や操作用のアイコンの座標情報などを制御する第1制御部231と、入力装置100との間で通信を行って操作体3に関連する制御を行う第2制御部232を備える。例えば、第2制御部232には、入力装置100から、操作体3に対して行われた操作に関する操作信号が供給される。また、第2制御部232から入力装置100に対して、操作体3において発生させる触覚の態様(すなわち、操作体3の振動パターン)を制御する制御信号を供給する。
【0039】
図9は、本発明を適用した入力装置100を用いて行われるコントロールユニット200の操作の例を示す説明図である。
図9(a)は、表示部210に表示されるアイコンの選択操作を入力装置100によって行う例を示す。また、
図9(b)は、表示部210に表示されるアイコンを選択して風量の設定を行う例を示す。
図9(a)、
図9(b)に示す例では、いずれも、入力装置100では、第1操作検出部10が操作体3の操作量を検出して、操作量に対応する操作信号をコントロールユニット200に供給する。コントロールユニット200では、供給された操作信号に基づき、表示部210に表示されるポインタ211を移動させる。
【0040】
図9(a)、
図9(b)の下部のグラフは、ポインタ位置と操作体3に対するフィードバック量(操作体3の振動)を示している。コントロールユニット200では、入力装置100から供給された操作信号に基づき、表示部210に表示されるポインタ211を移動させてポインタ211による入力制御を行う。また、コントロールユニット200から入力装置100に対して、ポインタ211の位置(座標)に対応する触覚を発生させるための制御信号を供給する。例えば、
図9(a)の例では、ポインタ211がアイコンとアイコンの境界を通過する際に、操作者へのフィードバックとして、触覚を感じさせるための操作体3の振動を発生させる制御信号を入力装置100に供給する。これにより、ポインタが複数のアイコンに沿って移動したことを触覚によって認識することができる。また、
図9(b)の例では、風量が切り換わる際に、操作者へのフィードバックとして、風量に対応する触覚を発生させるための操作体3の振動を発生させる制御信号を入力装置100に供給する。これにより、風量の設定が切り換わったことを触覚によって認識することができる。
【0041】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のアクチュエータ1は、第1モータ40の回転を第1スライダ45の直進運動に変換し、第2モータ50の回転を第2スライダ55の直進運動に変換し、これら2つのスライダ45、55を直交する2方向に移動させることによって、操作体3を平面内で任意の方向へ移動させることができる。従って、操作体3に触れた操作者に対して、X方向の振動とY方向の振動を組み合わせた振動を体感させることができる。このように、モータを用いた2組の移動機構を用いて2軸のアクチュエータを構成する場合には、空芯コイルと磁石を用いた1軸のリニアアクチュエータを2組用いる場合と比較して部品コストを低くすることができる。従って、直交する2方向の動きを発生させるアクチュエータ1を低コストで提供することができる。
【0042】
本形態のアクチュエータ1では、Y方向に延在する第1の長孔451を備えた第1スライダ45、および、X方向に延在する第2の長孔551を備えた第2スライダ55によって操作体3を駆動するので、第1スライダ45と第2スライダ55を独立して移動させて、操作体3を平面内の任意の方向へ移動させることができる。なお、本形態では、操作体3の被駆動部33を凸部(軸部)とし、第1スライダ45と第2スライダ55に孔を形成しているが、操作体3に孔や凹部を形成し、第1スライダ45と第2スライダ55に凸部を形成することもできる。
【0043】
本形態では、第1モータ40の回転を第1スライダ45の直進運動に変換する機構、および、第2モータ50の回転を第2スライダ55の直進運動に変換する機構としてラック-ピニオン機構を用いている。そして、第2モータ50の出力軸51と第2ピニオン53との間の回転伝達経路には、第1傘歯車58と第2傘歯車59が設けられている。従って、第1モータ40と第2モータ50を平行に配置した状態で、第1スライダ45と第2スライダ55を直交する方向へ移動させることができる。従って、第1モータ40と第2モータ50を90°傾けて配置する必要がないので、第1モータ40と第2モータ50を配
置するスペースの平面サイズを小さくすることができる。従って、アクチュエータ1の平面サイズを小さくすることができる。
【0044】
本形態では、センサ部6として、第1スライダ45のX方向の位置を検出する第1センサ部6X、および、第2スライダ55のY方向の位置を検出する第2センサ部6Yを備えており、センサ部6の出力に基づいて第1モータ40および第2モータ50を制御する。従って、操作体3の現在位置を検出することができるので、操作体3の現在位置に基づいてフィードバック制御を行うことができる。従って、操作体3の動きを精度良く制御することができる。
【0045】
本形態のアクチュエータ1Aは、上記のアクチュエータ1に対して、モータドライバ7と、制御部8と、通信部9を搭載したものとすることができる。すなわち、アクチュエータ1Aは、内部にモータドライバ7および制御部8を組み込んでいる。制御部8は、モータドライバ7に制御信号を供給して、第1モータ40および第2モータ50の駆動電流を制御する。制御部8には、センサ部6の出力が入力される。制御部8は、センサ部6の出力に基づき、操作体3の目標位置と現在位置とのずれを解消するためのフィードバック制御を行う。これにより、精度良く操作体3の動きを制御することができる。また、制御部8は、通信部9を介して図示しない上位装置と通信を行い、上位装置は、操作体3の振動パターン(振動方向や振動周波数など)、振動させるタイミングなどを指示する制御信号を制御部8に供給して、操作体3に意図した振動を行わせることができる。このような構成では、上位装置は第1モータ40および第2モータ50に対応した制御を行う必要がなく、アクチュエータ1の制御部8は第1モータ40および第2モータ50の制御を行うだけでよい。従って、制御部8には汎用性を持たせる必要がないので、制御部8の構成を簡素化することができる。また、上位装置では第1モータ40および第2モータ50に対応した制御を行う必要がないので、汎用性のあるアクチュエータ1Aとして用いることができる。
【0046】
本形態のアクチュエータ1Aは、操作体3に対する操作を検出する第1操作検出部10を備えた入力装置100を構成することができる。このようにすると、入力装置100において、操作体3に対する操作の態様に応じた動きを操作体3に行わせることができる。従って、操作の態様に応じた振動を操作者に体感させることができる。
【0047】
本形態の入力装置100、および、入力装置100と通信を行うコントロールユニット200によってコントロールシステム300を構成することができる。例えば、コントロールユニット200は、入力装置100から供給された操作体3の操作に関する信号に基づいてコントロール対象の制御を行うと共に、入力装置100に対して操作体3の動きを制御する制御信号を供給する。このようにすると、コントロールユニット200とは異なる場所に設置した入力装置100で操作入力を行うことができ、その際、操作の態様に応じた振動を操作者に体感させることができる。従って、コントロールユニット200を見ずに、手指で感じた振動によって操作の内容を認識することができる。
【符号の説明】
【0048】
1、1A…アクチュエータ、2…支持体、3…操作体、4…第1移動機構、5…第2移動機構、6…センサ部、6X…第1センサ部、6Y…第2センサ部、7…モータドライバ、8…制御部、9…通信部、10…第1操作検出部、20…窓部、21…ベース、22…カバー、23…凹部、24…第1溝部、25…第2溝部、26…凹部、27…窓部、31…本体部、32…出力部、33…被駆動部、40…第1モータ、41…第1出力軸、42…第1フレーム、43…第1ピニオン、44…第1ラック部、45…第1スライダ、46…第1ガイド軸、47…軸受部、50…第2モータ、51…第2出力軸、52…第2フレーム、53…第2ピニオン、54…第2ラック部、55…第2スライダ、56…第2ガイド
軸、58…第1傘歯車、59…第2傘歯車、61…第1ホール素子、62…第1磁石、63…第2ホール素子、64…第2磁石、100…入力装置、200…コントロールシステム、210…表示部、211…ポインタ、220…タッチパネル、221…上板部、222…側板部、230…制御部、231…第1制御部、232…第2制御部、300…コントロールシステム、451…第1の長孔、452…板状部、453…スライド部、454…凸部、551…第2の長孔、552…板状部、554…凸部