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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】レンジ判定装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20220513BHJP
   F16H 59/10 20060101ALI20220513BHJP
   B60K 20/02 20060101ALI20220513BHJP
   F16H 61/00 20060101ALI20220513BHJP
   F16H 63/42 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
F16H61/12
F16H59/10
B60K20/02 G
F16H61/00
F16H63/42
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018067385
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178713
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大介
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-096483(JP,A)
【文献】特開2017-167067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00
F16H 61/00
F16H 63/00
B60K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御レンジを備えた車両に搭載され、前記複数の制御レンジから乗員によって選択された選択レンジを判定するレンジ判定装置であって、
初期位置と前記複数の制御レンジに対応する複数のレンジ位置とに移動自在であり、乗員によって前記複数のレンジ位置の何れかに操作され、乗員の操作解除によって前記初期位置に戻される操作レバーと、
第1電源から電力が供給され、前記操作レバーの位置に応じて信号を出力する複数のセンサからなる第1センサ群と、
第2電源から電力が供給され、前記操作レバーの位置に応じて信号を出力する複数のセンサからなる第2センサ群と、
前記第1および第2センサ群からの出力信号に基づき、乗員に操作された前記操作レバーの位置を検出するレバー位置検出部と、
前記操作レバーが確定時間に渡って同じ前記レンジ位置に保持された場合に、保持された前記レンジ位置に基づき前記選択レンジを確定するレンジ確定部と、
前記第1および第2センサ群からの出力信号が正常である場合には、前記確定時間として第1時間を設定する一方、前記第1または第2センサ群からの出力信号が異常である場合には、前記確定時間として前記第1時間よりも長い第2時間を設定する確定時間設定部と、
を有し、
前記操作レバーが通過する位置として、互いに隣接する前記レンジ位置の間に設けられる中間位置が複数有り、
前記第1および第2センサ群からの出力信号の組み合わせは、前記レンジ位置および前記中間位置の全てにおいて互いに相違し、
前記第1センサ群からの出力信号の組み合わせは、前記レンジ位置の全てにおいて互いに相違する一方、前記中間位置と前記レンジ位置との何れかにおいて互いに一致し、
前記第2センサ群からの出力信号の組み合わせは、前記レンジ位置の全てにおいて互いに相違する一方、前記中間位置と前記レンジ位置との何れかにおいて互いに一致する、
レンジ判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレンジ判定装置において、
前記レバー位置検出部は、
前記第1および第2センサ群からの出力信号が正常である場合には、前記第1センサ群と前記第2センサ群との双方からの出力信号に基づき、前記操作レバーの位置を検出する一方、
前記第1または第2センサ群からの出力信号が異常である場合には、前記第1センサ群と前記第2センサ群との一方からの出力信号に基づき、前記操作レバーの位置を検出する、
レンジ判定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンジ判定装置において、
前記確定時間として前記第2時間が設定された場合に、前記操作レバーの操作方法を乗員に通知する操作通知部、を有する、
レンジ判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員に選択された選択レンジを判定するレンジ判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、前進レンジ(Dレンジ)や後退レンジ(Rレンジ)等の制御レンジが設定されている。これらの制御レンジを乗員が選択する際には、乗員によってシフトレバー等の操作レバーが操作される(特許文献1~4参照)。乗員に操作される操作レバーは、通信ネットワークを介して自動変速機等に接続されることが多い。このようなシステムは、所謂シフトバイワイヤシステムと呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-32155号公報
【文献】特開2005-104219号公報
【文献】特開2004-353828号公報
【文献】特開2003-287112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、シフトバイワイヤシステムに用いられる操作レバーとして、所謂モーメンタリ式の操作レバーが多く採用されている。このモーメンタリ式の操作レバーを用いて制御レンジを選択する際には、各制御レンジに対応するレンジ位置まで操作レバーが操作される。その後、操作レバーに対する乗員の操作力が解かれると、操作レバーはレンジ位置から初期位置まで自動的に戻される。このように、モーメンタリ式の操作レバーは、操作後に操作レバーが初期位置まで戻される構造、つまり操作レバーがレンジ位置に止まっていない構造を有している。このため、ホール素子等のセンサによる操作レバーの位置検出状況によっては、操作レバーが操作されたレンジ位置を検出すること、つまり複数の制御レンジから乗員によって選択された選択レンジを判定することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、選択レンジを適切に判定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレンジ判定装置は、複数の制御レンジを備えた車両に搭載され、前記複数の制御レンジから乗員によって選択された選択レンジを判定するレンジ判定装置であって、初期位置と前記複数の制御レンジに対応する複数のレンジ位置とに移動自在であり、乗員によって前記複数のレンジ位置の何れかに操作され、乗員の操作解除によって前記初期位置に戻される操作レバーと、第1電源から電力が供給され、前記操作レバーの位置に応じて信号を出力する複数のセンサからなる第1センサ群と、第2電源から電力が供給され、前記操作レバーの位置に応じて信号を出力する複数のセンサからなる第2センサ群と、前記第1および第2センサ群からの出力信号に基づき、乗員に操作された前記操作レバーの位置を検出するレバー位置検出部と、前記操作レバーが確定時間に渡って同じ前記レンジ位置に保持された場合に、保持された前記レンジ位置に基づき前記選択レンジを確定するレンジ確定部と、前記第1および第2センサ群からの出力信号が正常である場合には、前記確定時間として第1時間を設定する一方、前記第1または第2センサ群からの出力信号が異常である場合には、前記確定時間として前記第1時間よりも長い第2時間を設定する確定時間設定部と、を有し、前記操作レバーが通過する位置として、互いに隣接する前記レンジ位置の間に設けられる中間位置が複数有り、前記第1および第2センサ群からの出力信号の組み合わせは、前記レンジ位置および前記中間位置の全てにおいて互いに相違し、前記第1センサ群からの出力信号の組み合わせは、前記レンジ位置の全てにおいて互いに相違する一方、前記中間位置と前記レンジ位置との何れかにおいて互いに一致し、前記第2センサ群からの出力信号の組み合わせは、前記レンジ位置の全てにおいて互いに相違する一方、前記中間位置と前記レンジ位置との何れかにおいて互いに一致する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1および第2センサ群からの出力信号が正常である場合には、確定時間として第1時間を設定する一方、第1または第2センサ群からの出力信号が異常である場合には、確定時間として第1時間よりも長い第2時間を設定する。これにより、選択レンジを適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態であるレンジ判定装置が搭載された車両の構成例を示す概略図である。
図2】(a)~(c)は、シフトレバーの操作状況を示す図である。
図3】レンジ判定装置が備える第1および第2センサ群の構造の一例を示す図である。
図4】(a)および(b)は、第1および第2センサ群によって検出されるシフトレバー位置の一例を示す図である。
図5】(a)~(e)は、シフトレバーがニュートラル位置に操作される際のマグネットとセンサとの位置関係を示す図である。
図6】(a)~(i)は、シフトレバーが前進位置に操作される際のマグネットとセンサとの位置関係を示す図である。
図7】(a)~(i)は、シフトレバーが後退位置PRに操作される際のマグネットとセンサとの位置関係を示す図である。
図8】各センサからの出力信号とシフトレバーの位置との関係を示す図である。
図9】コントローラによるレンジ確定制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図10】正常時レンジ確定処理の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図11】異常時レンジ確定処理における実際のレバー位置と検出されるレバー位置との関係を示す図である。
図12】異常時レンジ確定処理における実際のレバー位置と検出されるレバー位置との関係を示す図である。
図13】異常時レンジ確定処理の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図14】正常時レンジ確定処理における選択レンジの確定状況の一例を示すタイミングチャートである。
図15】異常時レンジ確定処理における選択レンジの確定状況の一例を示すタイミングチャートである。
図16】比較例として選択レンジの確定状況の一例を示すタイミングチャートである。
図17】異常時レンジ確定処理における選択レンジの確定状況の一例を示すタイミングチャートである。
図18】比較例として選択レンジの確定状況の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
[車両構成]
図1は本発明の一実施の形態であるレンジ判定装置10が搭載された車両11の構成例を示す概略図である。図1に示すように、車両11には、エンジン12および自動変速機13を備えたパワーユニット14が搭載されており、自動変速機13の変速出力軸15には、デファレンシャル機構16等を介して車輪17が連結されている。また、自動変速機13には前後進切替機構18や変速機構19が組み込まれており、自動変速機13には前後進切替機構18等に作動油を供給制御するバルブユニット20が設けられている。さらに、車両11には、バルブユニット20を介して自動変速機13の作動状態を制御するため、マイコンや駆動回路等からなるコントローラ21が設けられている。なお、前後進切替機構18は、変速機構19の入力軸である変速入力軸22の回転方向を切り替える機構であり、図示しない遊星歯車列、前進クラッチおよび後退ブレーキ等によって構成される。
【0011】
[制御レンジ]
車両11には、パワーユニット14の作動状態を制御する複数の制御レンジが設定されている。これらの制御レンジとして、例えば、前進走行用の前進レンジ(Dレンジ)、後退走行用の後退レンジ(Rレンジ)、動力切断用の中立レンジ(Nレンジ)がある。これら制御レンジのうち、何れの制御レンジを使用するかについては、後述する乗員のシフトレバー操作によって決定される。以下、前進レンジについてはDレンジと記載し、後退レンジについてはRレンジと記載し、中立レンジについてはNレンジと記載する。
【0012】
例えば、乗員によってDレンジが選択された場合には、コントローラ21によってバルブユニット20が制御され、前後進切替機構18の前進クラッチが締結されて後退ブレーキが解放される。また、乗員によってRレンジが選択された場合には、コントローラ21によってバルブユニット20が制御され、前後進切替機構18の前進クラッチが解放されて後退ブレーキが締結される。さらに、乗員によってNレンジが選択された場合には、コントローラ21によってバルブユニット20が制御され、前後進切替機構18の前進クラッチおよび後退ブレーキが共に解放される。
【0013】
[レバーユニット]
前述した制御レンジを乗員の手動操作によって切り替えるため、車両11には乗員によって操作されるレバーユニット29が設けられている。レバーユニット29は、所定の移動経路に沿って移動自在に設けられるシフトレバー(操作レバー)30と、シフトレバー30の位置を検出する複数のセンサS1~S3からなる第1センサ群31と、シフトレバー30の位置を検出する複数のセンサS4~S6からなる第2センサ群32と、を有している。なお、シフトレバー30の位置を検出するセンサS1~S6としては、ホール素子やMRセンサ等を用いることができる。また、乗員に操作されるシフトレバー30は、セレクトレバーやチェンジレバーとも呼ばれている。
【0014】
第1センサ群31には第1電源31aが接続されており、第1電源31aから供給される電力によってセンサS1~S3は作動している。また、第2センサ群32には第2電源32aが接続されており、第2電源32aから供給される電力によってセンサS4~S6は作動している。このように、第1センサ群31と第2センサ群32との電源31a,32aを分けることにより、レンジ判定装置10の信頼性を高めることが可能である。つまり、何れかの電源31a,32aに障害が発生した場合であっても、第1センサ群31と第2センサ群32との一方を機能させることができるため、レンジ判定装置10の判定機能を確保することができる。
【0015】
図2(a)~(c)は、シフトレバー30の操作状況を示す図である。図2(a)~(c)のそれぞれには、各制御レンジを選択する際のシフトレバー30の動きが、白抜きの矢印に沿って順に示されている。後述するように、レバーユニット29は、操作後にシフトレバー30がホーム位置PHに復帰する所謂モーメンタリ式のレバーユニットである。
【0016】
図2(a)に示すように、制御レンジとしてNレンジを選択する際には、乗員によってシフトレバー30がホーム位置PHからニュートラル位置PNに操作される(矢印a1)。そして、乗員によるシフトレバー30の操作が解かれると、シフトレバー30は自動的にニュートラル位置PNからホーム位置PHに戻される(矢印a2)。
【0017】
図2(b)に示すように、制御レンジとしてDレンジを選択する際には、乗員によってシフトレバー30がホーム位置PHから前進位置PDに操作される(矢印b1)。そして、乗員によるシフトレバー30の操作が解かれると、シフトレバー30は自動的に前進位置PDからホーム位置PHに戻される(矢印b2)。
【0018】
図2(c)に示すように、制御レンジとしてRレンジを選択する際には、乗員によってシフトレバー30がホーム位置PHから後退位置PRに操作される(矢印c1)。そして、乗員によるシフトレバー30の操作が解かれると、シフトレバー30は自動的に後退位置PRからホーム位置PHに戻される(矢印c2)。
【0019】
[レバー位置検出構造]
図3はレンジ判定装置10が備える第1および第2センサ群31,32の構造の一例を示す図である。図3に示すように、レバーユニット29には、シフトレバー30の位置を検出する第1および第2センサ群31,32が設けられている。第1センサ群31は、3つのセンサS1~S3によって構成されており、第2センサ群32は、3つのセンサS4~S6によって構成されている。また、レバーユニット29には、シフトレバー30に連動して移動するマグネット33が設けられている。このマグネット33がセンサS1~S6に近づくと、センサS1~S6はコントローラ21に向けてON信号を出力する。一方、マグネット33がセンサS1~S6から離れると、センサS1~S6はコントローラ21に向けてOFF信号を出力する。なお、ON信号とは所定電圧を上回る電圧信号であり、OFF信号とは所定電圧を下回る電圧信号である。
【0020】
図4(a)および(b)は、第1および第2センサ群31,32によって検出されるシフトレバー位置の一例を示す図である。図4(a)に示すように、図示するレバーユニット29においては、センサ群31,32およびコントローラ21によって7箇所のシフトレバー位置(以下、レバー位置と記載する。)を検出することが可能である。検出可能なレバー位置として、ホーム位置(初期位置)PHがあり、Nレンジに対応するニュートラル位置(レンジ位置)PNがあり、Dレンジに対応する前進位置(レンジ位置)PDがあり、Rレンジに対応する後退位置(レンジ位置)PRがある。また、図4(b)に示すように、ニュートラル位置PNは、シフトレバー30の移動経路Roの途中に位置する途中位置であり、前進位置PDおよび後退位置PRは、シフトレバー30の移動経路Roの末端に位置する末端位置である。さらに、図4(a)に示すように、検出可能なレバー位置として、ホーム位置PHとニュートラル位置PNとの間の中間位置Phnがあり、ニュートラル位置PNと前進位置PDとの間の中間位置Pndがあり、ニュートラル位置PNと後退位置PRとの間の中間位置Pnrがある。
【0021】
図5(a)~(e)は、シフトレバー30がニュートラル位置PNに操作される際のマグネット33とセンサS1~S6との位置関係を示す図である。制御レンジとしてNレンジを選択するため、シフトレバー30がニュートラル位置PNに操作される場合には、図4に示すように、シフトレバー30は、ホーム位置PH、中間位置Phn、ニュートラル位置PN、中間位置Phn、ホーム位置PHの順に移動する。このため、図5(a)~(e)の順に示すように、シフトレバー30に連動するマグネット33は、センサS1,S4に対向し、センサS4に対向し、センサS5,S6に対向し、センサS4に対向し、センサS1,S4に対向する。
【0022】
図6(a)~(i)は、シフトレバー30が前進位置PDに操作される際のマグネット33とセンサS1~S6との位置関係を示す図である。制御レンジとしてDレンジを選択するため、シフトレバー30が前進位置PDに操作される場合には、図4に示すように、シフトレバー30は、ホーム位置PH、中間位置Phn、ニュートラル位置PN、中間位置Pnd、前進位置PD、中間位置Pnd、ニュートラル位置PN、中間位置Phn、ホーム位置PHの順に移動する。このため、図6(a)~(i)の順に示すように、シフトレバー30に連動するマグネット33は、センサS1,S4に対向し、センサS4に対向し、センサS5,S6に対向し、センサS6に対向し、センサS3,S6に対向し、センサS6に対向し、センサS5,S6に対向し、センサS4に対向し、センサS1,S4に対向する。
【0023】
図7(a)~(i)は、シフトレバー30が後退位置PRに操作される際のマグネット33とセンサS1~S6との位置関係を示す図である。制御レンジとしてRレンジを選択するため、シフトレバー30が後退位置PRに操作される場合には、図4に示すように、シフトレバー30は、ホーム位置PH、中間位置Phn、ニュートラル位置PN、中間位置Pnr、後退位置PR、中間位置Pnr、ニュートラル位置PN、中間位置Phn、ホーム位置PHの順に移動する。このため、図7(a)~(i)の順に示すように、シフトレバー30に連動するマグネット33は、センサS1,S4に対向し、センサS4に対向し、センサS5,S6に対向し、センサS5に対向し、センサS2,S5に対向し、センサS5に対向し、センサS5,S6に対向し、センサS4に対向し、センサS1,S4に対向する。
【0024】
[センサS1~S6からの出力信号]
図8は各センサS1~S6からの出力信号とシフトレバー30の位置との関係を示す図である。まず、図7(a)に示すように、シフトレバー30がホーム位置PHに移動すると、マグネット33はセンサS1,S4に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置がホーム位置PHである場合には、センサS1,S4からON信号が出力され、センサS2,S3,S5,S6からOFF信号が出力される。
【0025】
図7(b)に示すように、シフトレバー30が中間位置Phnに移動すると、マグネット33はセンサS4に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置が中間位置Phnである場合には、センサS4からON信号が出力され、センサS1~S3,S5,S6からOFF信号が出力される。
【0026】
図7(c)に示すように、シフトレバー30がニュートラル位置PNに移動すると、マグネット33はセンサS5,S6に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置がニュートラル位置PNである場合には、センサS5,S6からON信号が出力され、センサS1~S4からOFF信号が出力される。
【0027】
図7(d)に示すように、シフトレバー30が中間位置Pnrに移動すると、マグネット33はセンサS5に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置が中間位置Pnrである場合には、センサS5からON信号が出力され、センサS1~S4,S6からOFF信号が出力される。
【0028】
図7(e)に示すように、シフトレバー30が後退位置PRに移動すると、マグネット33はセンサS2,S5に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置が後退位置PRである場合には、センサS2,S5からON信号が出力され、センサS1,S3,S4,S6からOFF信号が出力される。
【0029】
図6(d)に示すように、シフトレバー30が中間位置Pndに移動すると、マグネット33はセンサS6に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置が中間位置Pndである場合には、センサS6からON信号が出力され、センサS1~S5からOFF信号が出力される。
【0030】
図6(e)に示すように、シフトレバー30が前進位置PDに移動すると、マグネット33はセンサS3,S6に対して対向する。このため、図8に示すように、レバー位置が前進位置PDである場合には、センサS3,S6からON信号が出力され、センサS1,S2,S4,S5からOFF信号が出力される。
【0031】
図8に示すように、各レバー位置PH,Phn,PN,Pnr,PR,Pnd,PDにおいて、センサS1~S6から出力されるON・OFF信号の組み合わせについては、少なくとも1箇所のON・OFF信号が相違している。これにより、コントローラ21は、第1および第2センサ群31,32からの出力信号、つまりセンサS1~S6からの出力信号を用いて、各レバー位置PH,Phn,PN,Pnr,PR,Pnd,PDを検出することが可能である。
【0032】
また、各レバー位置PH,PN,PR,PDにおいて、第1センサ群31のセンサS1~S3から出力されるON・OFF信号の組み合わせについては、少なくとも1箇所のON・OFF信号が相違している。これにより、コントローラ21は、第1センサ群31からの出力信号、つまりセンサS1~S3からの出力信号を用いて、各レバー位置PH,PN,PR,PDを検出することが可能である。つまり、第1センサ群31からの出力信号は、レンジ位置PN,PR,PD毎に相違している。
【0033】
また、各レバー位置PH,PN,PR,PDにおいて、第2センサ群32のセンサS4~S6から出力されるON・OFF信号の組み合わせについては、少なくとも1箇所のON・OFF信号が相違している。これにより、コントローラ21は、第2センサ群32からの出力信号、つまりセンサS4~S6からの出力信号を用いて、各レバー位置PH,PN,PR,PDを検出することが可能である。つまり、第2センサ群32からの出力信号は、レンジ位置PN,PR,PD毎に相違している。
【0034】
[レンジ確定制御]
続いて、複数の制御レンジ(Nレンジ,Dレンジ,Rレンジ)から乗員によって選択された選択レンジを確定するレンジ確定制御について説明する。まず、図1に示すように、コントローラ21には、レンジ確定制御を実行するため、センサ異常判定部40、レバー位置検出部41、レンジ確定部42、確定時間設定部43および操作通知部44が設けられている。後述するように、センサ異常判定部40は、センサS1~S6から取得した出力信号に基づき、センサS1~S6が異常であるか否かを判定する。また、レバー位置検出部41は、センサS1~S6からの出力信号に基づきレバー位置を検出し、レンジ確定部42は、検出されたレバー位置に基づき乗員が選択した選択レンジを確定する。また、確定時間設定部43は、選択レンジを確定する際に用いる所定の確定時間T1,T2を設定し、操作通知部44は、後述する異常時レンジ確定処理において乗員にシフトレバー30の操作方法を通知する。また、コントローラ21にはコンビネーションメータ45が接続されており、コンビネーションメータ45には各種情報を表示する表示パネル46が設けられている。
【0035】
図9はコントローラ21によるレンジ確定制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。図9に示したフローチャートは、コントローラ21によって所定周期毎に実行される。図9に示すように、ステップS10では、各センサS1~S6からの出力信号(以下、センサ信号と記載する。)を取得する。続くステップS11では、取得したセンサ信号が、正常なON・OFF信号の組み合わせであるか否かが判定される。つまり、ステップS11において、ステップS10で取得したセンサ信号が、図8に示されるON・OFF信号の組み合わせと一致する場合には、センサ信号が正常であると判定される。このように、ステップS11において、センサ信号が正常であると判定された場合には、ステップS12に進み、後述する正常時レンジ確定処理が実行される。
【0036】
一方、ステップS11において、ステップS10で取得したセンサ信号が、図8に示されるON・OFF信号の組み合わせと相違する場合には、センサ信号が異常であると判定される。このように、ステップS11において、センサ信号が異常であると判定された場合には、ステップS13に進み、センサ信号の異常内容が片側電源失陥時の異常であるか否かが判定される。ここで、片側電源失陥時とは、第1または第2電源31a,32aに異常が発生した状況であり、第1または第2センサ群31,32の検出機能が失われた状況である。この場合には、第1または第2センサ群31,32からのセンサ信号が、レバー位置に関係なく全てON信号やOFF信号として出力される。
【0037】
また、ステップS13において、センサ信号の異常内容が片側電源失陥時の異常ではないと判定された場合には、ステップS14に進み、センサ信号の異常内容が個々のセンサS1~S6の故障であるか否かが判定される。ここで、個々のセンサS1~S6の故障とは、第1センサ群31を構成するセンサS1~S3の何れかの故障、または第2センサ群32を構成するセンサS4~S6の何れかの故障である。この場合には、第1センサ群31を構成するセンサS1~S3の何れか、または第2センサ群32を構成するセンサS4~S6の何れかから、レバー位置に関係なくON信号やOFF信号が出力される。
【0038】
ステップS13において、センサ信号の異常内容が片側電源失陥時の異常であると判定された場合や、ステップS14において、センサ信号の異常内容が個々のセンサS1~S6の故障であると判定された場合、すなわち第1センサ群31と第2センサ群32との一方に異常が発生している場合には、ステップS15に進み、後述する異常時レンジ確定処理が実行される。また、ステップS14において、センサ信号の異常内容が個々のセンサS1~S6の故障ではないと判定された場合、すなわち第1センサ群31と第2センサ群32との双方に異常が発生している場合には、ステップS16に進み、車両停止等のフェイルセーフ処理が実行される。
【0039】
[正常時レンジ確定処理:フローチャート]
図9のステップS12に示した正常時レンジ確定処理の実行手順について説明する。前述したように、正常時レンジ確定処理は、第1および第2センサ群31,32の双方が正常に機能している場合、つまり第1および第2センサ群31,32からのセンサ信号が正常である場合に実行される。ここで、図10は正常時レンジ確定処理の実行手順の一例を示すフローチャートである。図10に示したフローチャートは、コントローラ21によって所定周期毎に実行される。
【0040】
図10に示すように、ステップS20では、第1および第2センサ群31,32からセンサ信号が取得される。ステップS21では、取得したセンサ信号に基づいて、現在のレバー位置がホーム位置PHであるか否かが判定される。ステップS21において、ホーム位置PHであると判定された場合には、シフトレバー30が操作されていないことから、選択レンジを更新することなくルーチンを抜ける。一方、ステップS21において、ホーム位置PH以外であると判定された場合には、シフトレバー30が操作されていることから、ステップS22に進み、選択レンジを更新するか否かの判定を開始する。
【0041】
ステップS22では、今回取得したセンサ信号が前回取得したセンサ信号から変化しているか否かが判定される。ステップS22において、センサ信号が変化していると判定された場合、つまりレバー位置が変化していると判定された場合には、ステップS23に進み、選択レンジを確定する際に用いられる確定時間(第1時間)T1が設定される。続いて、ステップS24に進み、選択レンジを確定する際に用いられる確定カウンタCaのクリア処理が実施される。
【0042】
一方、ステップS22において、センサ信号が変化していないと判定された場合、つまりレバー位置が変化していないと判定された場合には、ステップS25に進み、現在のレバー位置が、前進位置PD、ニュートラル位置PN、または後退位置PRであるか否かが判定される。ステップS25において、前進位置PD、ニュートラル位置PN、または後退位置PRであると判定された場合、つまり制御レンジに対応するレンジ位置であると判定された場合には、ステップS26に進み、確定カウンタCaのカウント処理が実施される。なお、図示する「Can-1」は、直近の確定カウンタCaである。
【0043】
続いて、ステップS27では、確定カウンタCaが確定時間T1以上であるか否かが判定される。ステップS27において、確定カウンタCaが確定時間T1に達していないと判定された場合には、一旦ルーチンを抜けて再びステップS20から、新たに取得したセンサ信号に基づき各種判定や各種処理が実施される。一方、ステップS27において、確定カウンタCaが確定時間T1に到達したと判定された場合、つまりシフトレバー30が確定時間T1に渡って同じレンジ位置(PD,PN,PR)に保持された場合には、ステップS28に進み、保持されたレンジ位置に基づき選択レンジ(Dレンジ,Nレンジ,Rレンジ)が確定される。
【0044】
[異常時レンジ確定処理:レバー位置の検出状況]
続いて、異常時レンジ確定処理におけるレバー位置の検出状況について説明する。前述したように、異常時レンジ確定処理は、第1および第2センサ群31,32の一方に異常が発生している場合、つまり第1または第2センサ群31,32からのセンサ信号が異常である場合に実行される。ここで、図11および図12は、異常時レンジ確定処理における実際のレバー位置と検出されるレバー位置との関係を示す図である。図11には第2センサ群32に異常が発生した状況が示され、図12には第1センサ群31に異常が発生した状況が示されている。
【0045】
図11に示すように、第2センサ群32に異常が発生した場合には、第1センサ群31のセンサ信号を用いてレバー位置が検出される。この場合には、ニュートラル位置PNでのセンサ信号や、中間位置Phn,Pnr,Pndでのセンサ信号が、全て共通の信号として出力される。したがって、実際のレバー位置が中間位置Phn,Pnr,pndであったとしても、レバー位置がニュートラル位置PNとして検出されるため、実際のレバー位置を適切に判定することが困難であった。
【0046】
また、図12に示すように、第1センサ群31に異常が発生した場合には、第2センサ群32のセンサ信号を用いてレバー位置が検出される。この場合には、ホーム位置PHおよび中間位置Phnにおけるセンサ信号が互いに共通になり、後退位置PRおよび中間位置Pnrにおけるセンサ信号が互いに共通になり、前進位置PDおよび中間位置Pndにおけるセンサ信号が互いに共通になる。したがって、実際のレバー位置が中間位置Phn,Pnr,Pndであったとしても、レバー位置がホーム位置PH,後退位置PR,前進位置PDとして検出されるため、実際のレバー位置を適切に判定することが困難であった。
【0047】
このように、異常時レンジ確定処理においては、中間位置Phn,Pnr,Pndの一部または全部を検出することが困難であるため、慎重に選択レンジを確定させることが求められている。
【0048】
[異常時レンジ確定処理:フローチャート]
図9のステップS15に示した異常時レンジ確定処理の実行手順について説明する。前述したように、異常時レンジ確定処理は、第1および第2センサ群31,32の一方に異常が発生している場合、つまり第1または第2センサ群31,32からのセンサ信号が異常である場合に実行される。ここで、図13は異常時レンジ確定処理の実行手順の一例を示すフローチャートである。図13に示したフローチャートは、コントローラ21によって所定周期毎に実行される。
【0049】
図13に示すように、ステップS30では、第1または第2センサ群31,32からセンサ信号が取得される。つまり、第1センサ群31の異常時には第2センサ群32からセンサ信号が取得され、第2センサ群32の異常時には第1センサ群31からセンサ信号が取得される。続くステップS31では、取得したセンサ信号に基づいて、現在のレバー位置がホーム位置PHであるか否かが判定される。ステップS31において、ホーム位置PHであると判定された場合には、シフトレバー30が操作されていないことから、選択レンジを更新することなくルーチンを抜ける。一方、ステップS31において、ホーム位置PH以外であると判定された場合には、シフトレバー30が操作されていることから、ステップS32に進み、選択レンジを更新するか否かの判定を開始する。
【0050】
ステップS32では、今回取得したセンサ信号が前回取得したセンサ信号から変化しているか否かが判定される。ステップS32において、センサ信号が変化していると判定された場合、つまりレバー位置が変化していると判定された場合には、ステップS33に進み、選択レンジを確定する際に用いられる確定時間(第2時間)T2が設定される。この確定時間T2は、正常時レンジ確定処理で用いられる確定時間T1よりも長い時間である。このように、確定時間T1よりも長い確定時間T2が設定されると、ステップS34に進み、コンビネーションメータ45の表示パネル46に対してシフトレバー30の操作方法が表示される。表示パネル46に表示する操作方法の内容としては、例えば「シフトレバーを確実に操作してください。」が用いられる。また、続くステップS35では、選択レンジを確定する際に用いられる確定カウンタCaのクリア処理が実施される。
【0051】
一方、ステップS32において、センサ信号が変化していないと判定された場合、つまりレバー位置が変化していないと判定された場合には、ステップS36に進み、現在のレバー位置が、前進位置PD、ニュートラル位置PN、または後退位置PRであるか否かが判定される。ステップS36において、前進位置PD、ニュートラル位置PN、または後退位置PRであると判定された場合、つまり制御レンジに対応するレンジ位置であると判定された場合には、ステップS37に進み、確定カウンタCaのカウント処理が実施される。
【0052】
続いて、ステップS38では、確定カウンタCaが確定時間T2以上であるか否かが判定される。ステップS38において、確定カウンタCaが確定時間T2に達していないと判定された場合には、一旦ルーチンを抜けて再びステップS30から、新たに取得したセンサ信号に基づき各種判定や各種処理が実施される。一方、ステップS38において、確定カウンタCaが確定時間T2に到達したと判定された場合、つまりシフトレバー30が確定時間T2に渡って同じレンジ位置(PD,PN,PR)に保持された場合には、ステップS39に進み、保持されたレンジ位置に基づき選択レンジ(Dレンジ,Nレンジ,Rレンジ)が確定される。
【0053】
[選択レンジの確定状況:タイミングチャート]
続いて、乗員がシフトレバー30を前進位置PDに操作することにより、選択レンジとしてDレンジが確定される迄の過程をタイミングチャートに沿って説明する。図14は正常時レンジ確定処理における選択レンジの確定状況の一例を示すタイミングチャートであり、図15は異常時レンジ確定処理における選択レンジの確定状況の一例を示すタイミングチャートである。なお、図14および図15においては、乗員によってシフトレバー30が同様に操作され、選択レンジがRレンジからDレンジに切り替えられる過程が示されている。
【0054】
(実施例:正常時レンジ確定処理)
前述したように、第1センサ群31と第2センサ群32との双方が正常である場合には、確定時間T1を用いた正常時レンジ確定処理が実行される。図14に示すように、正常時レンジ確定処理において、シフトレバー30がホーム位置PHからニュートラル位置PNに移動すると(符号a1)、センサS1~S4からOFF信号が出力され、センサS5,S6からON信号が出力される。このとき、乗員に操作されるシフトレバー30はニュートラル位置PNを単に通過するため、シフトレバー30が確定時間T1に渡ってニュートラル位置PNに保持されることはなく、選択レンジは直近のRレンジのまま維持される。つまり、符号α1で示すように、確定時間T1が経過する前にセンサS5からOFF信号が出力されるため、選択レンジは直近のRレンジのまま維持される。
【0055】
次いで、シフトレバー30が前進位置PDに移動すると(符号a2)、センサS1,S2,S4,S5からOFF信号が出力され、センサS3,S6からON信号が出力される。ここで、乗員に操作されるシフトレバー30は確定時間T1に渡って前進位置PDに保持されるため、保持された前進位置PDに基づき選択レンジがDレンジに切り替えられる(符号b1)。つまり、符号α2で示すように、確定時間T1に渡って、センサS1,S2,S4,S5からOFF信号が出力され、センサS3,S6からON信号が出力されるため、選択レンジがDレンジに切り替えられる(符号b1)。
【0056】
なお、乗員によるシフトレバー30の操作が解除されると、シフトレバー30は再びニュートラル位置PNを通過するが(符号a3)、自動的に戻されるシフトレバー30が確定時間T1に渡ってニュートラル位置PNに保持されることはなく、選択レンジは直近のDレンジのまま維持される。つまり、符号α3で示すように、確定時間T1が経過する前にセンサS4からON信号が出力され、センサS5,S6からOFF信号が出力されるため、選択レンジは直近のDレンジのまま維持される。
【0057】
(実施例:異常時レンジ確定処理)
これに対し、第2センサ群32が異常である場合、つまり第1センサ群31を用いて選択レンジを確定させる場合には、確定時間T1よりも長い確定時間T2を用いた異常時レンジ確定処理が実行される。図15に示すように、異常時レンジ確定処理において、シフトレバー30がホーム位置PHから中間位置Phnに移動すると(符号a1)、センサS1~S3からOFF信号が出力される。このとき、センサS1~S3からOFF信号が出力される状況は、乗員に操作されるシフトレバー30が、ニュートラル位置PN、中間位置Pndを通過し(符号a2,a3)、前進位置PDに達するまで継続される(符号a4)。
【0058】
つまり、図11に示したように、第1センサ群31を用いてレバー位置を検出する場合には、ニュートラル位置PNおよび中間位置Phn,Pndのセンサ信号が互いに共通である。このため、コントローラ21は、シフトレバー30が中間位置Phn、ニュートラル位置PN、中間位置Pndを通過する過程では、レバー位置がニュートラル位置PNであると判定する。
【0059】
しかしながら、異常時レンジ確定処理においては、確定時間T2が確定時間T1よりも長く設定されるため、確定時間T2に渡ってニュートラル位置PNが保持されることはなく、選択レンジは直近のRレンジのまま保持される。つまり、符号β1で示すように、確定時間T2が経過する前にセンサS3からON信号が出力されるため、選択レンジは直近のRレンジのまま維持される。
【0060】
次いで、シフトレバー30が前進位置PDに移動すると(符号a4)、センサS1,S2からOFF信号が出力され、センサS3からON信号が出力される。ここで、シフトレバー30は確定時間T2に渡って前進位置PDに保持されるため、保持された前進位置PDに基づき選択レンジがDレンジに切り替えられる(符号b1)。つまり、符号β2で示すように、確定時間T2に渡って、センサS1,S2からOFF信号が出力され、センサS3からON信号が出力されるため、選択レンジがDレンジに切り替えられる(符号b1)。
【0061】
そして、乗員によるシフトレバー30の操作が解除されると、シフトレバー30は再び中間位置Pnd、ニュートラル位置PN、中間位置Phnを通過する(符号a5~a7)。しかしながら、自動的に戻されるシフトレバー30が、確定時間T2に渡ってニュートラル位置PN等に保持されることはなく、選択レンジは直近のDレンジのまま維持される。つまり、符号β3で示すように、確定時間T2が経過する前にセンサS1からON信号が出力されるため、選択レンジは直近のDレンジのまま維持される。
【0062】
なお、異常時レンジ確定処理において、選択レンジをDレンジに切り替えるためには、シフトレバー30を確定時間T2に渡って前進位置PDに保持することが必要である。つまり、シフトレバー30を操作する乗員に対して、シフトレバー30を通常時よりも長く前進位置PDに保持することが求められる。このため、異常時レンジ確定処理においては、表示パネル46等にシフトレバー30の操作方法を表示することにより、乗員にシフトレバー30の確実な操作を促すようにしている。これにより、延長された確定時間T2に渡って前進位置PD等のレンジ位置を保持させることができ、選択レンジを適切に確定させることが可能である。
【0063】
(比較例)
続いて、比較例として、第2センサ群32が異常である場合、つまり第1センサ群31を用いて選択レンジを確定させる場合に、短い確定時間T1を用いて選択レンジが確定されたときの状況について説明する。ここで、図16は比較例として選択レンジの確定状況の一例を示すタイミングチャートである。なお、図16に示したシフトレバー30の操作状況は、図14および図15に示したシフトレバー30の操作状況と同じである。
【0064】
図16に示すように、第2センサ群32が異常である場合、つまり第1センサ群31を用いて選択レンジを確定させる場合において、シフトレバー30がホーム位置PHから中間位置Phnに移動すると(符号a1)、センサS1~S3からOFF信号が出力される。このとき、センサS1~S3からOFF信号が出力される状況は、乗員に操作されるシフトレバー30が、ニュートラル位置PN、中間位置Pndを通過し(符号a2,a3)、前進位置PDに達するまで継続される(符号a4)。このため、符号γ1で示すように、確定時間T1に渡って、センサS1~S3からOFF信号が出力されるため、選択レンジがRレンジからNレンジに切り替えられる(符号b1)。
【0065】
次いで、シフトレバー30が前進位置PDに移動すると(符号a4)、センサS1,S2からOFF信号が出力され、センサS3からON信号が出力される。ここで、シフトレバー30は確定時間T1に渡って前進位置PDに保持されるため、保持された前進位置PDに基づき選択レンジがDレンジに切り替えられる(符号b2)。つまり、符号γ2で示すように、確定時間T1に渡って、センサS1,S2からOFF信号が出力され、センサS3からON信号が出力されるため、選択レンジがNレンジからDレンジに切り替えられる(符号b2)。
【0066】
そして、乗員によるシフトレバー30の操作が解除されると、シフトレバー30は前進位置PDから中間位置Pndに移動し(符号a5)、センサS1~S3からOFF信号が出力される。このとき、センサS1~S3からOFF信号が出力される状況は、自動的に戻されるシフトレバー30が、ニュートラル位置PN、中間位置Phnを通過し(符号a6,a7)、ホーム位置PHに達するまで継続される(符号a8)。このため、符号γ3で示すように、確定時間T1に渡って、センサS1~S3からOFF信号が出力されるため、選択レンジがDレンジからNレンジに切り替えられる(符号b3)。
【0067】
このように、図16に示す比較例においては、選択レンジを確定する際の確定時間T1が短いことから、選択レンジを適切に確定させることが困難である。つまり、一方のセンサ群に異常が発生していた場合には、乗員がシフトレバー30を前進位置PDに操作した場合であっても、選択レンジがDレンジではなくNレンジに切り替えられる虞がある。これに対し、図15に示すように、本発明の一実施の形態であるレンジ判定装置10においては、一方のセンサ群に異常が発生していた場合には、選択レンジを確定する際の確定時間T2を長く設定している。これにより、乗員によってシフトレバー30が前進位置PDに操作された場合には、長い確定時間T2によってNレンジ等への切り替えを回避することができ、適切に選択レンジをDレンジに切り替えることが可能である。
【0068】
(実施例および比較例:ノイズ発生)
前述したように、異常時レンジ確定処理においては、確定時間T1よりも長い確定時間T2を採用している。これにより、センサ信号がノイズの影響を受けた場合であっても、誤った選択レンジの確定を回避することが可能である。ここで、図17は異常時レンジ確定処理における選択レンジの確定状況の一例を示すタイミングチャートである。図17において、前述した図15に示す状況と同じ状況については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図18は比較例として選択レンジの確定状況の一例を示すタイミングチャートである。図18において、前述した図16に示す状況と同じ状況については、同一の符号を付してその説明を省略する。なお、図17および図18においては、第2センサ群32が異常である状態のもとで、シフトレバー30が前進位置PDからホーム位置PHに戻る際に、ノイズの影響を受けたセンサS2から誤ってON信号が出力される状況が示されている(符号x1)。
【0069】
図17および図18に示すように、シフトレバー30が前進位置PDに操作された後に、シフトレバー30の操作が解除されると、シフトレバー30は前進位置PDから中間位置Pndに移動し(符号a5)、センサS1~S3からOFF信号が出力される。このセンサS1~S3からOFF信号が出力される状況は、乗員に操作されるシフトレバー30が、ニュートラル位置PN、中間位置Phnを通過し(符号a6,a7)、ホーム位置PHに達するまで継続される(符号a8)。このように、センサS1~S3からOFF信号が出力され続ける過程において、例えば、ノイズの影響を受けたセンサS2からON信号が出力されると(符号x1)、コントローラ21は、レバー位置を誤って後退位置NRとして検出する。
【0070】
この場合において、図18に符号z1で示すように、短い確定時間T1が用いられていた場合には、確定時間T1に渡って、センサS1,S3からOFF信号が出力され、センサS2からON信号が出力されるため、誤って選択レンジをRレンジに切り替えてしまう虞がある。これに対し、本発明の一実施の形態であるレンジ判定装置10においては、一方のセンサ群に異常が発生していた場合には、選択レンジを確定する際の確定時間T2を長く設定している。これにより、ノイズの影響を受けたセンサS2からON信号が出力された場合であっても(符号x1)、符号y1で示すように、確定時間T2が経過する前に、正常に戻ったセンサS2からOFF信号が出力されるため、選択レンジの誤った切り替えを回避することができる。
【0071】
これまで説明したように、第1センサ群31と第2センサ群32との双方が正常である場合には、確定時間T1を用いた正常時レンジ確定処理が実行される。一方、第1センサ群31と第2センサ群32との一方が異常である場合には、確定時間T1よりも長い確定時間T2を用いた異常時レンジ確定処理が実行される。このように、レバー位置を特定することが困難な状況においては、確定時間T1よりも長い確定時間T2を用いることにより、選択レンジを適切に確定させることができる。なお、正常時レンジ確定処理においては、確定時間T1を短く設定することにより、応答良く選択レンジを切り替えることができる。
【0072】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。図示する例では、正常時レンジ確定処理において1種類の確定時間T1を用い、異常時レンジ確定処理において1種類の確定時間T2を用いているが、これに限られることはなく、レンジ位置毎に確定時間T1,T2の長さを変化させても良い。例えば、シフトレバー30の移動経路Roの途中に設けられるニュートラル位置PNにおいては、確定時間T1,T2を長く設定しても良い。また、シフトレバー30の移動経路Roの末端に設けられる前進位置PDや後退位置PRにおいては、確定時間T1,T2を短く設定しても良い。
【0073】
前述の説明では、第1センサ群31を3つのセンサS1~S3によって構成し、第2センサ群32を3つのセンサS4~S6によって構成しているが、これに限られることはない。例えば、第1センサ群31を2つのセンサによって構成しても良く、第1センサ群31を4つ以上のセンサによって構成しても良い。同様に、第2センサ群32を2つのセンサによって構成しても良く、第2センサ群32を4つ以上のセンサによって構成しても良い。また、前述の説明では、制御レンジの一例として、Dレンジ、Nレンジ、Rレンジを挙げているが、これに限られることはなく、他の制御レンジが用いられていても良い。
【0074】
前述の説明では、シフトレバー30の操作方法を乗員に通知する際に、操作方法を表示パネル46に表示しているが、これに限られることはなく、音声等を用いて操作方法を乗員に通知しても良い。また、図9に示した例では、ステップS13において、センサ信号の異常内容が片側電源失陥時の異常であると判定された場合や、ステップS14において、センサ信号の異常内容が個々のセンサS1~S6の故障であると判定された場合に、共通の異常時レンジ確定処理を実行しているが、これに限られることはなく、センサS1~S6の異常内容に応じて異常時レンジ確定処理の内容を変えても良い。
【0075】
また、レンジ判定装置10が搭載される車両11としては、自動変速機13を備えた車両11に限られることはなく、自動変速機13を備えていない車両11であっても良い。また、レンジ判定装置10が搭載される車両11としては、動力源としてエンジン12のみを備えた車両に限られることはなく、動力源として走行用モータのみを備えた電気自動車であっても良く、動力源として走行用モータおよびエンジンを備えたハイブリッド車両であっても良い。なお、電気自動車等においては、前後進切替機構18やバルブユニット20を備えていないことが一般的である。このため、制御レンジをDレンジやRレンジ等に切り替える際には、前述したようにバルブユニット20を制御するのではなく、インバータ等を制御することで走行用モータの回転方向が切り替えられる。また、図示する車両11においても、バルブユニット20を用いて制御レンジを切り替えているが、これに限られることはなく、電動アクチュエータ等を用いて制御レンジを切り替えても良い。
【符号の説明】
【0076】
10 レンジ判定装置
11 車両
30 シフトレバー(操作レバー)
31 第1センサ群
31a 第1電源
32 第2センサ群
32a 第2電源
41 レバー位置検出部
42 レンジ確定部
43 確定時間設定部
44 操作通知部
S1~S6 センサ
PH ホーム位置(初期位置)
PN ニュートラル位置(レンジ位置)
PD 前進位置(レンジ位置)
PR 後退位置(レンジ位置)
T1 確定時間(第1時間)
T2 確定時間(第2時間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18