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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】モータおよびモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20220513BHJP
   H02K 5/08 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K5/08 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018067957
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019180137
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】勝呂 浩成
(72)【発明者】
【氏名】大川 高徳
(72)【発明者】
【氏名】小平 修
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-247826(JP,A)
【文献】特開2014-180191(JP,A)
【文献】特開平08-051744(JP,A)
【文献】特開2012-055123(JP,A)
【文献】特開2005-253138(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0140584(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
H02K 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を備えたロータと、
前記永久磁石に対向するステータと、
前記ロータおよび前記ステータを覆い、軸線方向の一方側の端部に端板部が設けられたモータケースと、
前記モータケースの前記軸線方向の他方側に配置された端子台と、
前記軸線方向に交差する方向に延在し、一方端であるコイル線接続用の第1端部、および他方端である外部接続用の第2端部が各々、前記端子台から突出した複数の端子ピンと、
前記第1端部を覆うように配置されて、前記軸線方向の他方側で開口する前記モータケースの開口部を前記端子台とともに塞ぐカバーと、
前記端子台および前記カバーを前記軸線方向の他方側から覆うように設けられて前記モータケースの側面を覆い、前記第2端部が突出する壁面を備えた封止樹脂体と、
前記複数の端子ピンの各々において前記第2端部の側で前記端子台から突出する部分のうち、前記端子台と前記壁面との間に位置する部分に装着されて前記複数の端子ピンと前記封止樹脂体との間をシールするシール部材と、
を有し、
前記シール部材は、全体が前記封止樹脂体の内部に埋まっていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記シール部材では、前記複数の端子ピンの各々に装着された複数のシール部が繋がっていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記シール部材は、弾性を有することを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記シール部材は、ゴム製であることを特徴とする請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記シール部材では、前記端子ピンから外したとき、前記端子ピンが嵌っていた穴のサイズが前記端子ピンの太さより小さいことを特徴とする請求項3または4に記載のモータ。
【請求項6】
前記端子台には、前記軸線方向の他方側の面に前記複数の端子ピンの各々を内側に保持する複数の溝が形成されており、
前記カバーは、前記端子ピンの前記溝内に位置する部分の一部を前記軸線方向の他方側から覆い、前記封止樹脂体は、前記端子ピンの前記溝内に位置する部分のうち、前記一部以外の残部を前記軸線方向の他方側から覆っていることを特徴とする請求項1からまでの何れか一項に記載のモータ。
【請求項7】
前記端子ピンの前記溝内に位置する部分には、潰し部が形成されていることを特徴とする請求項に記載のモータ。
【請求項8】
請求項1からまでの何れか一項に記載のモータの製造方法において、
前記端子台に対して、前記モータケース、前記端子ピンおよび前記カバーを設けた後、
前記封止樹脂体を形成する工程では、前記複数の端子ピンの各々において前記第2端部の側で前記端子台から突出する部分に前記シール部材を装着した状態で樹脂モールドを行って前記封止樹脂体を形成することを特徴とするモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータおよびステータを覆うモータケースの開口部を封止したモータ、およびモータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロータおよびステータを覆うモータケースの気密性を高めたモータとして、端子ピンを溝内に保持する端子台と、端子ピンを覆うカバーとによってモータケースの開口部を塞いだ状態で樹脂モールドを行い、端子台、カバーおよびモータケースの側面を覆う封止樹脂体を設けた構造が提案されている(特許文献1参照)。ここで、端子ピンは、端子台から突出する一方の端部(第1端部)にコイル線が接続され、端子台から突出する他方の端部(第2端部)が外部との電気的な接続に用いられる。従って、第2端部は、封止樹脂体の壁面から突出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-113495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のモータでは、封止樹脂体によってモータケース内への水分の侵入が抑制されている。一方、密閉性をより厳密に評価する目的で、気体によってリークの有無をテストすると、特許文献1に記載のモータでは、封止樹脂体と端子ピンとの間を通って気体のリークが発生することがあるという結果が得られている。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、端子ピン周りの気密性を高めたモータ、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータは、永久磁石を備えたロータと、前記永久磁石に対向するステータと、前記ロータおよび前記ステータを覆い、軸線方向の一方側の端部に端板部が設けられたモータケースと、前記モータケースの前記軸線方向の他方側に配置された端子台と、前記軸線方向に交差する方向に延在し、一方端であるコイル線接続用の第1端部、および他方端である外部接続用の第2端部が各々、前記端子台から突出した複数の端子ピンと、前記第1端部を覆うように配置されて、前記軸線方向の他方側で開口する前記モータケースの開口部を前記端子台とともに塞ぐカバーと、前記端子台および前記カバーを前記軸線方向の他方側から覆うように設けられて前記モータケースの側面を覆い、前記第2端部が突出する壁面を備えた封止樹脂体と、前記複数の端子ピンの各々において前記第2端部の側で前記端子台から突出する部分のうち、前記端子台と前記壁面との間に位置する部分に装着されて前記複数の端子ピンと前記封止樹脂体との間をシールするシール部材と、を有し、前記シール部材は、全体が前記封止樹脂体の内部に埋まっていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、端子ピンを保持する端子台、および端子ピンの第1端部を覆うカバーによって、モータケースの開口部を塞ぎ、さらに、端子台、カバーおよびモータケースの側面を覆う封止樹脂体が設けられている。このため、モータケース内への水分の侵入を抑制することができる。また、複数の端子ピンの各々において第2端部の側で端子台から突出する部分のうち、端子台と封止樹脂体の壁面との間にはシール部材が装着されており、複数の端子ピンと封止樹脂体との間がシール部材によってシールされている。従って、端子ピンと封止樹脂体との間の気密性が高いので、端子ピンと封止樹脂体との間を通って、開口部からモータケース内等に水分が侵入することを確実に抑制することができる。また、か
かる態様によれば、シール部材は、全体が封止樹脂体を形成する際の圧力を受ける。このため、端子ピンとシール部材との密着性、およびシール部材と封止樹脂体との密着性が高いので、封止樹脂体と端子ピンとの間の気密性が高い。
【0008】
本発明において、前記シール部材では、前記複数の端子ピンの各々に装着された複数のシール部が繋がっている態様を採用することができる。かかる態様によれば、1つのシール部材によって複数の端子ピンと封止樹脂体との間をシールすることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0009】
本発明において、前記シール部材は、弾性を有する態様を採用することができる。本発明において、前記シール部材は、例えば、ゴム製である態様を採用することができる。かかる態様によれば、端子ピンとシール部材との密着性が高いので、封止樹脂体と端子ピンとの間の気密性が高い。
【0010】
本発明では、前記シール部材では、前記端子ピンから外したとき、前記端子ピンが嵌っていた穴のサイズが前記端子ピンの太さより小さい態様を採用することができる。かかる態様によれば、端子ピンとシール部材との密着性が高いので、封止樹脂体と端子ピンとの間の気密性が高い。
【0013】
本発明において、前記端子台には、前記軸線方向の他方側の面に前記複数の端子ピンの各々を内側に保持する複数の溝が形成されており、前記カバーは、前記端子ピンの前記溝内に位置する部分の一部を前記軸線方向の他方側から覆い、前記封止樹脂体は、前記端子ピンの前記溝内に位置する部分のうち、前記一部以外の残部を前記軸線方向の他方側から覆っている態様を採用することができる。かかる態様によれば、溝内の端子ピンが封止樹脂体で封止されるため、端子ピンの周りを通って開口部からモータケース内に水分が侵入することを確実に抑制することができる。
【0014】
本発明において、前記端子ピンの前記溝内に位置する部分には、潰し部が形成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、潰し加工を行った際に部分的に張り出した部分が溝の内面に食い込む。従って、端子ピンを溝内に仮固定することができる。
【0015】
本発明に係るモータの製造方法において、前記端子台に対して、前記モータケース、前記端子ピンおよび前記カバーを設けた後、前記封止樹脂体を形成する工程では、前記複数の端子ピンの各々において前記第2端部の側で前記端子台から突出する部分に前記シール部材を装着した状態で樹脂モールドを行って前記封止樹脂体を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、端子ピンを保持する端子台、および端子ピンの第1端部を覆うカバーによって、モータケースの開口部を塞ぎ、さらに、端子台、カバーおよびモータケースの側面
を覆う封止樹脂体が設けられている。このため、モータケース内への水分の侵入を抑制することができる。また、複数の端子ピンの各々において第2端部の側で端子台から突出する部分のうち、端子台と封止樹脂体の壁面との間にはシール部材が装着されており、複数の端子ピンと封止樹脂体との間がシール部材によってシールされている。このため、端子ピンと封止樹脂体との間の気密性が高いので、端子ピンと封止樹脂体との間を通って、開口部からモータケース内等に水分が侵入することを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用したモータの斜視図である。
図2図1に示すモータを端子ピンが突出する方向からみた正面図である。
図3図1に示すモータの分解斜視図である。
図4図1に示すモータの断面図である。
図5図4に示す端子台等を軸線L方向の他方側からみた説明図である。
図6図4に示す端子台等を端子ピンに沿って切断した断面図である。
図7図4に示す端子台等を端子ピンの第2端部の側からみた正面図である。
図8図1に示すモータに用いたシール部材の説明図である。
図9図1に示すモータにおいて、シール部材の位置を変更した場合の説明図である。
図10図1に示すモータに用いられる端子ピンの変形例1の説明図である。
図11図1に示すモータに用いられる端子ピンの変形例2の説明図である。
図12図1に示すモータに用いられる端子ピンの変形例3の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態を説明する。
【0019】
(モータの全体構成)
図1は、本発明を適用したモータ1の斜視図である。図2は、図1に示すモータ1を端子ピン80が突出する方向からみた正面図である。図3は、図1に示すモータ1の分解斜視図である。図4は、図1に示すモータ1の断面図である。図1に示すモータ1は、ステッピングモータであり、図2図3および図4等を参照して以下に説明するように、モータケース10、ステータ20、ロータ30、ボビン40、カバー60、および封止樹脂体70等からなる。モータ1は、例えば、ガソリンエンジンの混合気流量調整弁(取付対象部材)の駆動源等に使用されるもので、取付状態において高い気密性が要求されるものである。従って、モータ1は、密閉型モータとして構成されている。
【0020】
モータケース10は、鉄等の磁性金属によってカップ状に形成されており、軸線L方向に円筒状に延在する周壁11と、周壁11の軸線L方向の一方側Laの開口を閉塞するように形成された端板部12とを有している。モータケース10は、周壁11の軸線L方向の他方側Lbが開口部111になっており、開口縁には径方向外側に突出したフランジ部13が形成されている。
【0021】
ステータ20は、モータケース10内に配置された筒状体であって、コイル21と、ボビン40と、ヨーク23(外ステータコア)と、ヨーク24(内ステータコア)とを備えている。ヨーク23、24は、金属製の円環状板材であって、内周縁には円周方向に等間隔をおいて軸線L方向に屈曲された複数の極歯25が形成されている。ヨーク23、24は、各々の極歯25が円周方向で交互に配列するように対向配置され、ヨーク23、24が対となって2組、軸線L方向に配置されている。
【0022】
ボビン40は、ヨーク23、24を合成樹脂41によってモールドした樹脂成形品であり、ヨーク23、24を金型内にインサートした状態で、金型内でインサート射出成形す
ることによって構成される。合成樹脂41は、ヨーク23、24の外周部232、242、および極歯25の内周面を除く部分を覆っており、ヨーク23、24の円環部233、243に重なる部分(フランジ部41)の各間には、コイル21が巻回されるスペースが構成されている。このように構成したステータ20は、ヨーク23、24の外周部232、242がモータケース10の周壁11に部分的に接するように配置されている。
【0023】
ボビン40の軸線L方向の他方側Lbの端部には、端子台45が一体に形成されており、端子台45には、モータケース10の軸線L方向の他方側Lbの端部(フランジ部13)が当接している。端子台45には、軸線L方向と直交する第1方向Xに延在する複数本の端子ピン80が、軸線L方向および第1方向Xに直交する第2方向Yに並列するように保持されている。端子ピン80の一方端であるコイル線接続用の第1端部81は、端子台45の第1方向Xの一方の側面451から突出し、コイル21を構成するコイル線の端部(図示せず)が溶接やハンダ等によって接続された状態で、ボビン40に固定されたカバー60によって覆われている。この状態で、モータケース10の開口部111は、端子台45およびカバー60によって塞がれている。端子ピン80の他方端である外部接続用の第2端部82は、端子台45の第1方向Xの他方の側面452から突出し、外部との電気的な接続に用いられる。
【0024】
端子台45において軸線L方向の一方側Laに位置する部分には、軸線L方向の他方側Lbに凹んだ軸受用穴部46が形成されている。軸受用穴部46の内側には筒状の軸受部材96が配置されており、軸受部材96は、回転軸31の外周面を支持している。軸受用穴部46の底部には、金属製の球体950からなるスラスト支持部95が配置されており、後述する回転軸31の軸線L方向の他方側Lbの端部310を軸線L方向の他方側Lbから支持している。本形態では、軸線L方向からみたときに、軸受用穴部46と重なる位置(軸線Lが通る位置)に、軸線L方向の他方側Lbに突出した凸部49が形成されており、凸部49によって、軸受用穴部46と重なる位置の肉厚が厚く確保されている。
【0025】
ロータ30は、軸線L方向に延在する回転軸31と、回転軸31の外周面にスリーブ34を介して固定された円筒状の永久磁石32とを備えており、永久磁石32の外周面には、周方向にN極とS極とが交互に着磁されている。ステータ20の極歯25は、永久磁石32に径方向外側で対向している。
【0026】
モータケース10の端板部12には、穴120が形成されており、回転軸31は、一部が穴120から軸線L方向の一方側Laに向けて突出している。本形態において、回転軸31のうち、モータケース10の端板部12から突出する部分には、螺旋溝(図示せず)が形成された出力軸39が形成されている。従って、出力軸39の回転によって、弁体等を直線駆動することができる。モータケース10の端板部12に形成された穴120には、軸受92が保持されている。軸受92は、回転軸31の外周面を回転可能に支持する筒部921と、筒部921の軸線L方向の他方側Lbの端部から径方向外側に向けて拡がった拡径部922とを有しており、拡径部922は、端板部12に対して軸線L方向の他方側Lbから当接した状態で固定されている。
【0027】
このように構成したモータ1では、モータケース10の軸線L方向の開口部111が、ボビン40に一体形成された端子台45、およびカバー60によって塞がれ、この状態で、端子台45、カバー60、およびモータケース10の軸線L方向の端部は、封止樹脂体70によって覆われている。封止樹脂体70は、端子台45およびカバー60を軸線L方向の他方側Lbを覆う底部73と、端子台45、カバー60およびモータケース10を側面から覆う胴部72とを有している。底部73には、軸線L方向からみたときに端子台45の凸部49と重なる肉厚部75が凸部49より広い領域にわたって軸線L方向の他方側Lbに突出するように形成されている。また、封止樹脂体70の壁面76からは端子ピン
80の第2端部82が突出している。従って、封止樹脂体70に対して、端子ピン80が配置されている部分の周りを囲むようにコネクタハウジング(図示せず)を設け、端子ピン80にコネクタ(図示せず)を接続する。
【0028】
封止樹脂体70は、組立工程の最終段階において、端子台45、カバー60、およびモータケース10の軸線L方向の端部を覆うように形成した樹脂部分71であり、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなる。本形態において、樹脂部分71は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の熱可塑性樹脂からなる。封止樹脂体70は、モータケース10の開口部111等を完全に封止した状態でモータケース10と強固に固定されている。この状態で、モータケース10は、軸線L方向の他方側Lbに位置する部分を除く大部分が露出された状態にある。従って、コイル21で発生した熱を金属製のモータケース10を介して外部に効率よく逃がすことができる。それ故、コイル21の絶縁被膜が溶けることに起因する絶縁不良や、各部材の熱変形、永久磁石32の熱減磁等を抑制することができる。また、樹脂で覆う部分が少なくなることから、小径化、軽量化、および低コスト化を図ることができる。
【0029】
封止樹脂体70は、胴部72においてモータケース10の軸線L方向の一方側Laを向く面が、混合気流量調整弁に取り付けるためのフランジ面77となっている。フランジ面77は、モータケース10の軸方向に直交する平面によって形成されており、モータケース10を例えば混合気流量調整弁の開口部に挿入し、この開口部の周縁の平面状の取付面に密着させることで、Oリング等のシール部材を介して気密を保持するようになっている。
【0030】
(端子ピン80および端子台45等の構成)
図5は、図4に示す端子台45等を軸線L方向の他方側Lbからみた説明図であり、出力軸39の図示を省略してある。図6は、図4に示す端子台45等を端子ピン80に沿って切断した断面図である。図7は、図4に示す端子台45を端子ピン80の第2端部82の側からみた正面図であり、封止樹脂体70を形成する前の状態を示してある。
【0031】
図5および図6に示すように、端子ピン80は、金属製の角棒であり、本形態において、端子ピン80は断面四角形である。端子ピン80は、第1方向Xの途中部分から第2端部82まで直線的に延在する第1部分83と、第1部分83の第1端部81の側の端部で屈曲して軸線L方向の一方側Laに向けて延在する第2部分84と、第2部分84の軸線L方向の一方側Laの端部から第1端部81まで延在する第3部分85とを有している。従って、端子ピン80は、2か所に屈曲部834、845を有している。第1部分83には、端子ピン80を部分的に潰した潰し部830が形成されている。潰し部830は、例えば、プレスにより加工される。
【0032】
かかる端子ピン80の構成に対応して、端子台45において軸線Lが通る中央部分には、軸線L方向の他方側Lbに突出して、端子ピン80の第1部分83を保持する第1端子保持部455が形成されおり、端子台45の側面451は、第1端子保持部455の第1方向Xにおいて第1端部81が位置する側の側面によって構成されている。また、端子台45において、第1端子保持部455に対して第2端部82が位置する側に離間する位置には、軸線L方向の他方側Lbに突出して第1部分83を保持する第2端子保持部457が形成されており、端子台45の側面452は、第2端子保持部457の第1方向Xにおいて第2端部82が位置する側の側面によって構成されている。第1端子保持部455は、第1方向Xにおいて広い範囲にわたって形成されている一方、第2端子保持部457は、第2方向Yに延在する突条部である。第1端子保持部455と第2端子保持部457との間は、軸線L方向の一方側Laに凹んだ凹部459になっている。
【0033】
第1端子保持部455の軸線L方向の他方側Lbの面には、第1方向Xに延在して第1部分83を内側に保持する複数の溝456が第2方向Yに並列している。溝456は、側面451まで延在しており、端子ピン80の第2部分84も溝456に保持されている。本形態では、第1部分83に潰し部830が形成されており、潰し加工を行った際に部分的に張り出した部分が溝456の内面に食い込んでいる。従って、端子ピン80を溝456内に仮固定することができる。また、第2端子保持部457の軸線L方向の他方側Lbの面には、溝456の延長線上に、第1部分83を内側に保持する複数の溝458が第2方向Yに並列している。
【0034】
ここで、端子台45の中央(軸線Lが通る位置)には凸部49が形成されていることから、溝456および端子ピン80は、凸部49を避けるように配置されている。より具体的には、溝456、458および端子ピン80は、第2方向Yにおいて4列配置されているが、第2方向Yの2番目と3番目の溝456、458および端子ピン80の間隔は、第2方向Yの1番目と2番目の溝456、458および端子ピン80の間隔、および第2方向Yの3番目と4番目の溝456、458および端子ピン80の間隔より広く、凸部49は、第2方向Yの2番目と3番目の溝456、458および端子ピン80の間に形成されている。
【0035】
本形態では、図2および図7に示すように、端子ピン80のうち、第2方向Yの1番目の端子ピン801と2番目の端子ピン802のピッチ、および第2方向Yの3番目の端子ピン803と4番目の端子ピン804のピッチはPであるのに対して、第2方向Yの2番目の端子ピン802と3番目の端子ピン803とのピッチP×2である。すなわち、5本の端子ピン80を第2方向Yに等ピッチで配置した態様から、3番目の端子ピンを省略した構造になっている。従って、5端子用のコネクタ(図示せず)を第2端部82に接続し、コネクタの中央の端子をダミーとした態様を採用することができる。
【0036】
(カバー60の構成)
図3図4および図5に示すように、カバー60は、樹脂成形品であり、端子台45の側面451に対向する対向部61と、対向部61の軸線L方向の一方側Laの端部から軸線L方向の一方側Laに突出した突出部62と、対向部61の軸線L方向の他方側Lbの端部から端子台45に向けて突出した板部63とを有している。対向部61および突出部62はいずれも、モータケース10のフランジ部13に沿うように円弧に湾曲している。また、突出部62は、対向部61より径方向の内側に位置する。板部63の第2方向Yの両端部には、端子台45の第2方向Yの両側に向けて突出した肉厚部65が形成されている。
【0037】
従って、突出部62がモータケース10の開口部111の内側に入るようにカバー60を端子台45の側に押し込むと、端子台45の第1端子保持部455がカバー60の肉厚部65に挟まれた状態となる。また、モータケース10のフランジ部13がカバー60の段部67に当接するとともに、突出部62がモータケース10の周壁11の内面に沿うように配置される。このようにして、カバー60は、モータケース10に位置決めされる。
【0038】
対向部61において側面451と対向する壁面には、4本の端子ピン80の第1端部81が各々入り込む凹部611が形成されている。従って、図6に示すように、第1端部81が、凹部611において第1端部81と対向する内壁612と当接することが回避される。
【0039】
また、カバー60の板部63は、端子台45に軸線L方向の他方側Lbから重なり、端子ピン80の第1部分83の一部(潰し部830より第1端部81側の部分)に重なる。その際、板部63の切り欠き630が凸部49に嵌る。この状態で、端子ピン80の他の
部分(第1部分83の潰し部830等が位置する部分)は、カバー60から露出した状態にある。従って、封止樹脂体70を設けた際、端子ピン80においてカバー60から露出する部分のち、第2端部82付近を除く全体が封止樹脂体70で覆われる。その際、第1端子保持部455と第2端子保持部457との間に形成された凹部459では、端子ピン80の側面まで封止樹脂体70で覆われる。ここで、カバー60の板部63には、複数の板部631が形成されており、複数の板部631は各々、溝458に嵌って端子80に重なる。従って、板部631は、端子80を支持するとともに、封止樹脂体70を成形する際、樹脂が端子80の周りを伝ってカバー60の内側に流入することを抑制することができる。
【0040】
(シール部材50の構成)
図8は、図1に示すモータ1に用いたシール部材50の説明図である。図6に示すように、本形態のモータ1では、複数の端子ピン80の各々において第2端部82の側で端子台45から突出する部分のうち、端子台45と封止樹脂体70の壁面76との間に位置する部分にはシール部材50が装着されており、シール部材50は、複数の端子ピン80と封止樹脂体70との間をシールしている。図6に示すように、シール部材50は、シート状であり、封止樹脂体70に埋まっている。本形態において、シール部材50は、端子台45の第2端部82側の側面452に沿うように配置されていることから、シール部材50は、全体が封止樹脂体70に埋まっており、外部に露出していない。
【0041】
図8に示すように、シール部材50は、複数の端子ピン80の各々に装着された複数のシール部51を備えており、隣り合うシール部51同士は、連結部53によって繋がっている。シール部51には、端子ピン80の断面形状に対応したサイズおよび形状の、穴52が形成されており、端子ピン80は、穴52を貫通した状態にある。本形態では、端子ピン80は、断面四角形であることから、穴52も四角形である。また、4つの穴52は各々、図2および7を参照して説明した端子ピッチに対応するピッチで設けられている。
【0042】
ここで、シール部材50は弾性を有している。本形態において、シール部材50はゴム製のシートである。従って、シール部材50では、端子ピン80から外したとき、端子ピン80が嵌っていた穴52のサイズが端子ピン80の太さより小さい。それ故、端子ピン80が穴52を貫通する際、穴52が拡張されるため、端子ピン80と穴52の内縁との密着性が高い。
【0043】
(モータ1の製造方法)
本形態のモータ1の製造方法では、図7に示すように、端子台45に対して、モータケース10、端子ピン80およびカバー60を設けた後、封止樹脂体70を形成する工程では、複数の端子ピン80の各々において第2端部82の側で端子台45から突出する部分にシール部材50を装着した状態で樹脂モールドを行って、封止樹脂体70を形成する。その際、シール部材50はゴム製であるため、封止樹脂体70をモールドする際の温度によって軟化するので、シール部材50と端子ピン80との密着性、およびシール部材50と封止樹脂体70との密着性が高い。また、封止樹脂体70が熱硬化性樹脂である場合、熱硬化性樹脂がシール部材50に密着した状態で硬化するので、シール部材50と封止樹脂体70との密着性が高い。
【0044】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のモータ1では、端子ピン80を保持する端子台45、および端子ピン80の第1端部81を覆うカバー60によって、モータケース10の開口部111を塞ぎ、さらに、端子台45、カバー60およびモータケース10の周壁11(側面)を覆う封止樹脂体70が設けられている。このため、モータケース10内への水分の侵入を抑制することができる。また、複数の端子ピン80の各々において第2端部82の
側で端子台45から突出する部分のうち、端子台45と封止樹脂体70の壁面76との間にはシール部材50が装着されており、複数の端子ピン80と封止樹脂体70との間がシール部材50によってシールされている。このため、端子ピン80と封止樹脂体70との間の気密性が高いので、端子ピン80と封止樹脂体70との間を通って、カバー60の内側に水分が侵入することを確実に抑制することができる。また、端子ピン80と封止樹脂体70との間を通って、開口部111からモータケース10内に水分が侵入することも確実に抑制することができる。それ故、防水コネクタを用いなくても、モータ1の信頼性を高めることができる。
【0045】
また、シール部材50では、複数の端子ピン80の各々に装着された複数のシール部51が繋がっているため、1つのシール部材50によって複数の端子ピン80と封止樹脂体70との間をシールすることができる。それ故、低コスト化を図ることができる。
【0046】
また、シール部材50は、ゴム製であり、弾性を有している。このため、端子ピン80とシール部材50との密着性が高いので、封止樹脂体70と端子ピン80との間の気密性が高い。また、シール部材50では、端子ピン80から外したとき、端子ピン80が嵌っていた穴52のサイズが端子ピン80の太さより小さい。このため、端子ピン80とシール部材50との密着性が高いので、封止樹脂体70と端子ピン80との間の気密性が高い。また、シール部材50は、封止樹脂体70の内部に埋まっているため、封止樹脂体70を形成する際の圧力を受ける。このため、端子ピン80とシール部材50との密着性、およびシール部材50と封止樹脂体70との密着性が高い。しかも、シール部材50は、全体が封止樹脂体70の内部に埋まっているため、シール部材50の全体が封止樹脂体70を形成する際の圧力を受ける。このため、端子ピン80とシール部材50との密着性、およびシール部材50と封止樹脂体70との密着性が高い。それ故、封止樹脂体70と端子ピン80との間の気密性が高い。
【0047】
また、本形態では、カバー60が端子ピン80の溝456内に位置する部分の一部を覆い、他の部分(残部)を封止樹脂体70が覆っている。このため、溝456内の端子ピン80が封止樹脂体70で封止されるため、端子ピン80の周りを通って開口部111からモータケース10内に水分が侵入することを確実に抑制することができる。
【0048】
また、第1端子保持部455と第2端子保持部457との間の凹部459では、端子ピン80の周りに封止樹脂体70が届く。従って、端子ピン80の周りを適正に封止することができる。それ故、端子ピン80の周りを通って開口部111からモータケース10内に水分が侵入することを確実に抑制することができる。
【0049】
また、端子台45の中央(軸線Lが通る位置、軸線L方向からみたときに軸受用穴部46と重なる位置)には凸部49が形成されているが、溝456および端子ピン80は、凸部49を避けるように配置されている。従って、端子ピン80を溝456で保持する構造を採用した場合でも、端子台45全体を肉厚に形成して軸受用穴部46と重なる位置の肉厚を厚くする必要がないので、モータ1の軸線L方向の寸法を短くすることができる。
【0050】
また、端子ピン80において、コイル線が接続される第1端部81と溝456で保持される部分との間に屈曲部834、845が設けられており、屈曲部834と屈曲部845との間に位置する第2部分84が溝456内に位置する。このため、コイル線を第1端部81に接続する際に加わった応力が、溝456に保持されている第1部分83に届きにくい。それ故、コイル線を第1端部81に接続する際、第1部分83が溝456から外れにくい。
【0051】
(別の実施形態)
図9は、図1に示すモータ1において、シール部材50の位置を変更した場合の説明図であり、端子ピン80に沿って端子台45等を切断した断面図である。図1から図8を参照して説明した実施形態では、シール部材50の全体が封止樹脂体70に埋まっていた。これに対して、本形態では、図9に示すように、シール部材50が封止樹脂体70に埋まっているが、一部が壁面76で露出している。かかる態様でも、複数の端子ピン80と封止樹脂体70との間がシール部材50によってシールされている。このため、端子ピン80と封止樹脂体70との間の気密性が高いので、端子ピン80と封止樹脂体70との間を通って、カバー60の内側に水分が侵入することを確実に抑制することができる。また、端子ピン80と封止樹脂体70との間を通って、開口部111からモータケース10内に水分が侵入することも確実に抑制することができる。
【0052】
(さらに別の実施形態)
図10は、図1に示すモータ1に用いられる端子ピン80の変形例1の説明図である。図11は、図1に示すモータ1に用いられる端子ピン80の変形例2の説明図である。図12は、図1に示すモータ1に用いられる端子ピン80の変形例3の説明図である
【0053】
図1から図8を参照して説明した実施形態では、端子ピン80の第1端部81側に屈曲部834、845を設けたが、図10に示すように、第2端部82側にも屈曲部822を設け、第1部分83より軸線L方向の一方側Laに第1端部81および第2端部82が位置する場合に本発明を適用してもよい。また、図11に示すように、第1端部81側に屈曲部を設けず、第2端部82側のみに屈曲部822を設け、第1部分83より軸線L方向の一方側Laに第2端部82が位置する場合に本発明を適用してもよい。また、図12に示すように、第1端部81側および第2端部82側のいずれにも屈曲部を設けず、端子ピン80が直線的に延在している場合に本発明を適用してもよい。
【0054】
上記実施形態では、モータ1がステッピングモータであったが、他の種類のモータに対して本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…モータ、10…モータケース、11…周壁、12…端板部、13…フランジ部、20…ステータ、21…コイル、30…ロータ、31…回転軸、32…永久磁石、39…出力軸、40…ボビン、41…合成樹脂、45…端子台、46…軸受用穴部、49…凸部、50…シール部材、51…シール部、…穴、53…連結部、60…カバー、61…対向部、62…突出部、63…板部、65、75…肉厚部、67…段部、70…封止樹脂体、71…樹脂部分、72…胴部、73…底部、76…壁面、77…フランジ面、80…端子ピン、81…第1端部、82…第2端部、83…第1部分、84…第2部分、85…第3部分、92…軸受、95…スラスト支持部、96…軸受部材、111…開口部、310…端部、451、452…側面、455…第1端子保持部、456,458…溝、457…第2端子保持部、830…潰し部、834,845…屈曲部、L…軸線、X…第1方向、Y…第2方向、La…一方側,Lb…他方側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図12