(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】圧縮機およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
F04B 49/02 20060101AFI20220513BHJP
【FI】
F04B49/02 331B
(21)【出願番号】P 2018144130
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】521362885
【氏名又は名称】コベルコ・コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】濱田 克徳
(72)【発明者】
【氏名】弥久保 修人
(72)【発明者】
【氏名】星川 明
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-242843(JP,A)
【文献】特開2015-105648(JP,A)
【文献】特開平09-144664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/02
F04B 49/03
F04B 39/16
F04C 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって駆動され、ガスを圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体から供給された圧縮ガスを冷却するアフタークーラと、
前記アフタークーラから出た圧縮ガスを除湿するドライヤと、
前記ドライヤからドレンを排出するためのドレン排出弁と、
前記アフタークーラの下流のガス圧力を測定する第1圧力センサと、
前記モータの起動を開始すると、前記モータの加速度を前記モータの定格加速度である第1加速度に設定する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記モータの起動時において、前記第1圧力センサで測定した圧力値が所定の第1閾値未満の場合に前記第1加速度よりも小さな第2加速度にて前記モータを駆動する回転数調整部を有する、圧縮機。
【請求項2】
モータによって駆動され、ガスを圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体から供給された圧縮ガスから冷却液を分離して貯蔵するセパレータタンクと、
前記セパレータタンクに向かって圧縮ガスが逆流することを防止し、前記セパレータタンク内の圧力を所定の第2閾値以上に保つための保圧逆止弁と、
前記保圧逆止弁の下流に設けられ、供給された圧縮ガスを除湿するドライヤと、
前記ドライヤからドレンを排出するためのドレン排出弁と、
前記保圧逆止弁の下流のガス圧力を測定する第1圧力センサと、
前記モータの起動を開始すると、前記モータの加速度を前記モータの定格加速度である第1加速度に設定する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記モータの起動時において、前記第1圧力センサで測定した圧力値が所定の第1閾値未満の場合に前記第1加速度よりも小さな第2加速度にて前記モータを駆動する回転数調整部を有する、圧縮機。
【請求項3】
前記セパレータタンク内の圧力を測定する第2圧力センサを更に備え、
前記制御装置は、前記モータの起動時において、前記第2圧力センサで測定した圧力値が前記第2閾値以上である場合に前記ドレン排出弁を開くドレン排出弁制御部をさらに有する、請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
モータによって駆動され、ガスを圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体から供給された圧縮ガスを冷却するアフタークーラと、
前記アフタークーラから出た圧縮ガスを除湿するドライヤと、
前記ドライヤからドレンを排出するためのドレン排出弁と、
前記アフタークーラの下流のガス圧力を測定する第1圧力センサと、
前記圧縮機本体から前記アフタークーラに流れる圧縮ガスから冷却液を分離して貯蔵するセパレータタンクと、
前記セパレータタンク内の圧力を測定する第2圧力センサと、
前記セパレータタンクに向かって圧縮ガスが逆流することを防止し、前記セパレータタンク内の圧力を所定の第2閾値以上に保つための保圧逆止弁と、
前記モータの起動を開始すると、前記モータの加速度を前記モータの定格加速度である第1加速度に設定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記モータの起動時において、前記第1圧力センサで測定した圧力値が所定の第1閾値未満であり、かつ、前記第2圧力センサで測定した圧力値が前記第2閾値以上である場合に前記第1加速度よりも小さな第2加速度にて前記モータを駆動する回転数調整部、および、同起動時において、前記第2圧力センサで測定した圧力値が前記第2閾値以上である場合に前記ドレン排出弁を開くドレン排出弁制御部を有する、圧縮機。
【請求項5】
前記回転数調整部は、前記第1圧力センサで測定した前記圧力値が前記第1閾値以上である場合、または、前記第1加速度から前記第2加速度に切り替えてから所定時間経過した場合、前記第2加速度から前記第1加速度に切り替え、
前記ドレン排出弁制御部は、前記第2加速度から前記第1加速度に切り替え後、あるいは、前記ドレン排出弁が開いてから所定時間経過したときの何れか早い段階で前記ドレン排出弁を閉じる、請求項3または請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記回転数調整部は、前記第1加速度に切り替え後に前記モータを定格回転数まで加速する、請求項5に記載の圧縮機。
【請求項7】
モータによって駆動され、ガスを圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体から供給された圧縮ガスを冷却するアフタークーラと、
前記アフタークーラから出た圧縮ガスを除湿するドライヤと、
前記ドライヤからドレンを排出するためのドレン排出弁と、
前記アフタークーラから前記ドライヤに供給されるガスの圧力を測定する第1圧力センサと
を備える圧縮機の運転方法であって、
前記
モータの起動を開始すると、前記モータの加速度を前記モータの定格加速度である第1加速度に設定して前記モータを駆動し、
前記
モータの起動時において、前記第1圧力センサで測定した圧力値が所定の第1閾値未満の場合に前記第1加速度よりも小さな第2加速度にて前記モータを駆動する、圧縮機の運転方法。
【請求項8】
モータによって駆動され、ガスを圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体から供給された圧縮ガスから冷却液を分離して貯蔵するセパレータタンクと、
前記セパレータタンクに向かって圧縮ガスが逆流することを防止し、前記セパレータタンク内の圧力を第2閾値以上に保つための保圧逆止弁と、
前記保圧逆止弁の下流に設けられ、供給された圧縮ガスを除湿するドライヤと、
前記ドライヤからドレンを排出するためのドレン排出弁と、
前記保圧逆止弁の下流のガス圧力を測定する第1圧力センサと、
前記セパレータタンク内の圧力を測定する第2圧力センサと
を備える圧縮機の運転方法であって、
前記モータの起動を開始すると、前記モータの加速度を前記モータの定格加速度である第1加速度に設定して前記モータを駆動し、
前記モータの起動時において、前記第1圧力センサで測定した圧力値が所定の第1閾値未満の場合に前記第1加速度よりも小さな第2加速度にて前記モータを駆動する、圧縮機の運転方法。
【請求項9】
前記第2圧力センサで測定した圧力値が前記第2閾値以上である場合に前記ドレン排出弁を開く、請求項8に記載の圧縮機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、一般に、圧縮熱により昇温した圧縮ガスを冷却するためにアフタークーラと称される冷却器と、圧縮ガスから水分を除去するためのドライヤとを備える。アフタークーラおよびドライヤは、機能上、内部に水分を溜めこむことがある。この水分はドレンと称され、ドレンは定期的に排出されるなどして圧縮ガスの供給先(工場等)には供給されないようになっている。例えば、このようなドレンを排出する機能を有する圧縮機が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧縮機は、ガス吐出路から排出される乾燥ガスの圧力が上限設定圧力になると電動モータおよび圧縮機本体を停止させると共に開閉弁を閉とする一方、下限設定圧力になると電動モータおよび圧縮機本体を駆動させると共に開閉弁を断続的に開にする。これにより、圧縮機本体の駆動停止後においても、ガス吐出路から供給先に供給するガスの圧力の低下速度を遅くしようとするものである。しかし、開閉弁を断続的に開にするだけでは、ドレンが圧縮ガスとともに供給先に誤って供給されるおそれがある。以降、このようにドレンが供給先に漏出することをキャリーオーバともいう。
【0005】
キャリーオーバは、圧縮機の起動時に発生することが多い。即ちメインモータON(始動)の後、通常運転に移行するまでの間(メインモータの起動時)に発生することが多い。出願人の実験によれば、メインモータを始動した後、ドライヤに接続されている流路の圧力が低い場合にキャリーオーバが多く観察された。このようにドライヤに接続されている流路の圧力が低い場合は、圧縮機本体の出口圧力と供給先への配管内の圧力に相当するパッケージ吐出圧力(以下、単に吐出圧という。)との圧力差が大きく、ドライヤを通過する圧縮ガスの流速が速くなる。そのため、この速い流れに乗ってドレンが供給先に運ばれ、キャリーオーバが発生すると考えられる。キャリーオーバが発生すると、供給先への配管に錆を生じ、供給先において圧縮ガスを利用してタービンなどの動力機械を駆動する際にタービンへの負荷が増加するなど、様々な悪影響がある。従って、このようなキャリーオーバを防止することが求められている。
【0006】
本発明は、起動時のドレンのキャリーオーバを防止できる圧縮機およびその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、モータによって駆動され、ガスを圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体から供給された圧縮ガスを冷却するアフタークーラと、前記アフタークーラから出た圧縮ガスを除湿するドライヤと、前記ドライヤからドレンを排出するためのドレン排出弁と、前記アフタークーラの下流のガス圧力を測定する第1圧力センサと、前記モータの起動を開始すると、前記モータの加速度を前記モータの定格加速度である第1加速度に設定する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記モータの起動時において、前記第1圧力センサで測定した圧力値が所定の第1閾値未満の場合に前記第1加速度よりも小さな第2加速度にて前記モータを駆動する回転数調整部を有する、圧縮機を提供する。
【0008】
この構成によれば、回転数調整部によって第1圧力センサで測定した圧力値が所定の第1閾値未満の場合にモータを第2加速度で加速する。ここで、第1閾値は、キャリーオーバが発生するほど低い圧力値である。モータを第2加速度で加速することで、圧縮機本体から吐出する圧縮ガスの単位時間当たりの流量は、従来のようにモータの定格加速度に応じて吐出する場合の流量よりも低下する。そのため、吐出圧がキャリーオーバを発生させない圧力に昇圧するまで、ドライヤを通過するガスの流速をキャリーオーバを発生させない速度に抑えた状態とすることができる。これにより、圧縮機の起動時におけるドレンのキャリーオーバを防止できる。
【0009】
本発明の第2の態様は、モータによって駆動され、ガスを圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体から供給された圧縮ガスから冷却液を分離して貯蔵するセパレータタンクと、前記セパレータタンクに向かって圧縮ガスが逆流することを防止し、前記セパレータタンク内の圧力を所定の第2閾値以上に保つための保圧逆止弁と、前記保圧逆止弁の下流に設けられ、供給された圧縮ガスを除湿するドライヤと、前記ドライヤからドレンを排出するためのドレン排出弁と、前記保圧逆止弁の下流のガス圧力を測定する第1圧力センサと、前記モータの起動を開始すると、前記モータの加速度を前記モータの定格加速度である第1加速度に設定する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記モータの起動時において、前記第1圧力センサで測定した圧力値が所定の第1閾値未満の場合に前記第1加速度よりも小さな第2加速度にて前記モータを駆動する回転数調整部を有する、圧縮機を提供する。
【0010】
この構成によれば、上記第1の態様と同様に圧縮機の起動時におけるドレンのキャリーオーバを防止できる。
【0011】
前記セパレータタンク内の圧力を測定する第2圧力センサを更に備え、前記制御装置は、前記モータの起動時において、前記第2圧力センサで測定した圧力値が前記第2閾値以上である場合に前記ドレン排出弁を開くドレン排出弁制御部をさらに有してもよい。
【0012】
この構成によれば、第2圧力センサで測定した圧力値が第2閾値以上である場合、ドレン排出弁制御部によってドレン排出弁を開く。ここで、第2閾値は、保圧逆止弁の設定値であり、圧縮機の各構成要素の仕様等に応じて所定の範囲で設定され得る。仮に、第2圧力センサで測定した圧力値が第2閾値未満でドレン排出弁を開くと、ドレン排出に伴ってドライヤにおけるガス圧が低下するおそれがある。そのため、圧縮機の吐出圧が供給先から要求されるガス圧まで昇圧するのに時間を要する。そこで、第2圧力センサで測定した圧力値が第2閾値以上である場合にドレン排出弁を開くことで、吐出圧が要求圧力まで昇圧するのにかかる時間が長くなることを防止できる。また、この構成によれば、圧縮機の起動時におけるドレンのキャリーオーバを防止しながらドレン排出弁からドレンを排出できる。
【0013】
本発明の第3の態様は、モータによって駆動され、ガスを圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体から供給された圧縮ガスを冷却するアフタークーラと、前記アフタークーラから出た圧縮ガスを除湿するドライヤと、前記ドライヤからドレンを排出するためのドレン排出弁と、前記アフタークーラの下流のガス圧力を測定する第1圧力センサと、前記圧縮機本体から前記アフタークーラに流れるガスから冷却液を分離して貯蔵するセパレータタンクと、前記セパレータタンク内の圧力を測定する第2圧力センサと、前記セパレータタンクに向かって圧縮ガスが逆流することを防止し、前記セパレータタンク内の圧力を所定の第2閾値以上に保つための保圧逆止弁と、前記モータの起動を開始すると、前記モータの加速度を前記モータの定格加速度である第1加速度に設定する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記モータの起動時において、前記第1圧力センサで測定した圧力値が所定の第1閾値未満であり、かつ、前記第2圧力センサで測定した圧力値が前記第2閾値以上である場合に前記第1加速度よりも小さな第2加速度にて前記モータを駆動する回転数調整部、および、同起動時において、前記第2圧力センサで測定した圧力値が前記第2閾値以上である場合に前記ドレン排出弁を開くドレン排出弁制御部を有する、圧縮機を提供する。
【0014】
この構成によれば、第1圧力センサで測定した圧力値が所定の第1閾値未満の場合に回転数調整部によってモータを第2加速度で加速することに加えて、第2圧力センサで測定した圧力値が第2閾値以上である場合、ドレン排出弁制御部によってドレン排出弁を開く。ここで、第2閾値は、保圧逆止弁の設定値であり、圧縮機の各構成要素の仕様等に応じて所定の範囲で設定され得る。仮に、第2圧力センサで測定した圧力値が第2閾値未満でドレン排出弁を開くと、ドレン排出に伴ってドライヤにおけるガス圧が低下するおそれがある。そのため、圧縮機の吐出圧が供給先から要求されるガス圧まで昇圧するのに時間を要する。そこで、第2圧力センサで測定した圧力値が第2閾値以上である場合にドレン排出弁を開くことで、吐出圧が要求圧力まで昇圧するのにかかる時間が長くなることを防止できる。また、圧縮機の起動時におけるドレンのキャリーオーバを防止しながらドレン排出弁からドレンを排出できる。
【0015】
前記回転数調整部は、前記第1圧力センサで測定した前記圧力値が前記第1閾値以上である場合、または、第1加速度から前記第2加速度に切り替えてから所定時間経過した場合、前記第2加速度から前記第1加速度に切り替え、前記ドレン排出弁制御部は、前記第2加速度から前記第1加速度に切り替え後、または、前記ドレン排出弁が開いてから所定時間経過したときの何れか早い段階で前記ドレン排出弁を閉じてもよい。
【0016】
この構成によれば、ドレン排出弁の開放を継続することによって生じ得る圧縮ガスの過度な漏出を防止し、過度な圧力低下を防止できる。ここでの所定時間とは、第2加速度に切り替えて運転を行った際に排出弁からドレンを排出するのにかかる時間である。この所定時間は、予め実験的に求めることができる。また、モータの加速度を第1加速度に切り替えるときにはキャリーオーバが発生しない程度に圧力が昇圧しているかドレンが既に排出されているため、第1加速度で駆動してもキャリーオーバを防止できるとともに、第2加速度よりも短時間でモータの回転数を加速できる。ここで、第2加速度から第1加速度に切り替え後とは、第1加速度に切り替えられると同時をも含む。
【0017】
前記回転数調整部は、前記第1加速度に切り替えられた後に前記モータを定格回転数まで加速してもよい。
【0018】
この構成によれば、第1加速度にて迅速にモータを定格回転数まで加速することができ、起動時から通常運転時に移行できる。
【0019】
本発明の第4の態様は、モータによって駆動され、ガスを圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体から供給された圧縮ガスを冷却するアフタークーラと、前記アフタークーラから出た圧縮ガスを除湿するドライヤと、前記ドライヤからドレンを排出するためのドレン排出弁と、前記アフタークーラから前記ドライヤに供給されるガスの圧力を測定する第1圧力センサとを備える圧縮機の運転方法であって、前記モータの起動を開始すると、前記モータの加速度を前記モータの定格加速度である第1加速度に設定して前記モータを駆動し、前記モータの起動時において、前記第1圧力センサで測定した圧力値が所定の第1閾値未満の場合に前記第1加速度よりも小さな第2加速度にて前記モータを駆動する、圧縮機の運転方法を提供する。
【0020】
本発明の第5の態様は、モータによって駆動され、ガスを圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体から供給された圧縮ガスから冷却液を分離して貯蔵するセパレータタンクと、前記セパレータタンクに向かって圧縮ガスが逆流することを防止し、前記セパレータタンク内の圧力を第2閾値以上に保つための保圧逆止弁と、前記保圧逆止弁の下流に設けられ、供給された圧縮ガスを除湿するドライヤと、前記ドライヤからドレンを排出するためのドレン排出弁と、前記保圧逆止弁の下流のガス圧力を測定する第1圧力センサと、前記セパレータタンク内の圧力を測定する第2圧力センサとを備える圧縮機の運転方法であって、前記モータの起動を開始すると、前記モータの加速度を前記モータの定格加速度である第1加速度に設定して前記モータを駆動し、前記モータの起動時において、前記第1圧力センサで測定した圧力値が所定の第1閾値未満の場合に前記第1加速度よりも小さな第2加速度にて前記モータを駆動する、圧縮機の運転方法を提供する。
【0021】
前記第2圧力センサで測定した圧力値が前記第2閾値以上である場合に前記ドレン排出弁を開いてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、圧縮機およびその運転方法において、モータの回転数の加速度とドレン排出弁の開閉を好適に制御することによって、起動時のドレンのキャリーオーバを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】起動時のモータの回転数と時間との関係を示すグラフ
【
図5】ドレン排出弁の開閉制御を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0026】
図1は、実施形態に係るパッケージ型の圧縮機1を示す概略構成図である。パッケージ型とは、後述する圧縮機本体3以外にドライヤ6などの様々な構成要素を含むことを示す。本実施形態では、圧縮するガスとして空気を、冷却液として油を例に説明するが、ガスの種類は空気以外であってもよく、冷却液の種類は水であってもよい。
【0027】
圧縮機1は、モータ2を有する圧縮機本体3と、圧縮空気から冷却液としての油を分離回収するセパレータタンク4と、圧縮空気を冷却するアフタークーラ5と、圧縮空気を除湿するドライヤ6と、制御装置7とを備える。
【0028】
圧縮機本体3は、スクリュ式であり、雌雄一対のスクリュロータを有している。スクリュロータはモータ2に機械的に接続され、モータ2は電源8に電気的に接続されている。雌雄一対のスクリュロータは、電源8から電力供給されたモータ2によって回転駆動されることで噛合し、空気を圧縮する。また、スクリュロータには、冷却、およびシール等の観点から油が供給される。ここで、給油された油の一部は、スクリュロータ等の冷却、およびシール等に供された後、圧縮機本体3の吐出口から圧縮空気とともに吐出される。圧縮機本体3はセパレータタンク4と流体的に接続されており、圧縮機本体3で圧縮された油分を含む圧縮空気はセパレータタンク4に圧送される。
【0029】
セパレータタンク4は、液セパレータ4aと、液タンク4bとを有している。液セパレータ4aは、圧縮空気から液体(油)を分離するフィルタである。液セパレータ4aで圧縮空気から分離された油は、液タンク4bに貯蔵される。セパレータタンク4は保圧逆止弁9を介してアフタークーラ5と流体的に接続されており、セパレータタンク4で油を分離された圧縮空気はアフタークーラ5に送られる。
【0030】
保圧逆止弁9は、セパレータタンク4内の圧縮空気の圧力を所定の第2閾値以上に保つとともに、セパレータタンク4から出た圧縮空気のセパレータタンク4への逆流を防止する機能を有する。従って、アフタークーラ5からセパレータタンク4に空気が戻ることはない。ここで、第2閾値は、保圧逆止弁9の設定値であり、圧縮機1の各構成要素の仕様等に応じて所定の範囲で設定され得る。本実施形態では、第2閾値は、例えば0.45~0.5MPa程度に設定される。
【0031】
アフタークーラ5は、冷媒を利用して圧縮空気を冷却する熱交換器である。冷媒の種類は特に限定されず、アフタークーラ5は水冷式または空冷式等であり得る。代替的には、アフタークーラ5は電気的な冷却装置であってもよい。ここで、冷却された圧縮空気は部分的に凝縮し、凝縮した水分(ドレン)はアフタークーラ5内に溜まるようになっている。アフタークーラ5はドライヤ6と流体的に接続されており、アフタークーラ5で冷却された圧縮空気はドライヤ6に送られる。なお、冷却液として水を使用する場合はアフタークーラ5を省略することができる。この場合、セパレータタンク4とドライヤ6とが流体的に接続される。
【0032】
ドライヤ6は、いわゆる冷凍式のドライヤであり得る。即ち、冷媒を利用して圧縮空気内の水分を凝縮させ、圧縮空気から水分を除去する。ドライヤ6は、凝縮された水分(ドレン)をドライヤ6内に一時的に溜められるように貯留部を有している。なお、冷凍装置としてのドライヤ6の機構は公知のものと相違ないため、ここでの詳細な説明は省略する。ドライヤ6は工場などの圧縮空気の供給先(図示せず)と流体的に接続されており、ドライヤ6で除湿された圧縮空気は供給先に送られる。
【0033】
ドライヤ6には、ドレンを排出するためのドレン管10と、ドレン管10内のドレンの流動を許容または遮断するドレン排出弁11とが設けられている。ドレン排出弁11は電磁弁からなり、ドレン排出弁11の開閉は制御装置7によって制御されている。
【0034】
また、制御装置7による制御のために、第1圧力センサ12と、第2圧力センサ13とが設けられている。
【0035】
第1圧力センサ12は、圧縮空気の流れにおいてアフタークーラ5とドライヤ6との間に配置され、この部分の圧縮空気の圧力値Pdを測定する。ただし、第1圧力センサ12の圧力測定位置は、この位置に限らず、保圧逆止弁9の下流であればよく、例えばドライヤ6の下流の圧力値を検出してもよい。
【0036】
第2圧力センサ13は、液タンク4bに取り付けられ、液タンク4b内の圧力値Poを検出する。即ち、第2圧力センサ13は、圧縮機本体3の下流かつ保圧逆止弁9の上流の圧力値を検出する。
【0037】
制御装置7は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、PLC(Programmable Logic Controller)のような記憶装置を含むハードウェアと、それに実装されたソフトウェアにより構築されている。制御装置7は、第1圧力センサ12で測定した圧力値Pdおよび第2圧力センサ13で測定した圧力値Poを受け、当該圧力値Pd,Poに基づいて圧縮機1を制御する。
【0038】
図2は、制御装置7のブロック図である。制御装置7は、回転数調整部7aと、ドレン排出弁制御部7bとを有している。
【0039】
回転数調整部7aは、圧縮機本体3を駆動するモータ2の起動時において、第1圧力センサ12で測定した圧力値Pdが所定の第1閾値未満の場合にモータ2の定格加速度である第1加速度(a1)よりも小さな第2加速度(a2)にてモータ2を駆動する。換言すれば、モータの起動時において、回転数調整部7aによって少なくとも2段階でモータ2の回転数は加速される。ここで、第1閾値は、キャリーオーバが発生するほど低い圧力値である。本実施形態では、第1閾値は、例えば0.3MPa程度である。なお、第2加速度(a2)は、モータ2の起動時において、圧縮機本体3の出口圧力と供給先への配管内の圧力に相当するパッケージ吐出圧力(以下、単に吐出圧という。)との圧力差があってもキャリーオーバが発生しない加速度である。この第2加速度(a2)は、予め実験的に求めることができる。第2加速度(a2)を実験的に求める際には、ドライヤ6内乃至はアフタークーラ5内に最大量のドレンを予め貯蔵しておけばよく、第2圧力センサ13で測定した圧力値が第2閾値以上である場合にドレン排出弁11を開いてもよい。
【0040】
また、本実施形態の回転数調整部7aは、第2加速度でモータ2を駆動してから所定時間ΔT1経過後に第2加速度から第1加速度に切り替え、モータ2を定格回転数まで加速する。ここでの所定時間ΔT1とは、第2加速度でモータ2の運転を行った際に排出弁からドレンを排出するのにかかる時間である。この所定時間ΔT1は、予め実験的に求めることができる。例えば、この所定時間ΔT1は、ドライヤ6内及びアフタークーラ5
内に貯蔵され得るドレンの最大量を十分に排出できる程度の時間としてもよい。代替的には、圧縮機1の運転状態から貯蔵されているドレン量を算出し、当該ドレン量を正確に排出できる程度の時間としてもよい。
【0041】
図3は、起動時におけるモータ2の回転数と時間tとの関係を示すグラフである。グラフの横軸は時間tを示し、縦軸はモータ2の回転数を示している。従って、グラフの傾きがモータ2の回転数の加速度を示している。
【0042】
本実施形態では、起動時において、モータ2が第1加速度(定格加速度)a1で駆動される。次いで、第1圧力センサ12で測定した圧力値Pdが所定の第1閾値未満であることを検知すると、回転数調整部7aによってモータ2の回転数の加速度を第1加速度a1から第2加速度a2に低下させる。即ち、グラフの傾きが時間t1にて緩やかとなる。それから所定時間ΔT1経過後に回転数調整部7aによってモータ2の回転数の加速度を第2加速度a2から第1加速度a1に上昇させる。即ち、グラフの傾きが時間t2にて急となる。そして、モータ2は、第1加速度a1で定格回転数まで加速される。
【0043】
ドレン排出弁制御部7bは、第2圧力センサ13で測定した圧力値Poが所定の第2閾値以上の場合にドレン排出弁11を開く。好ましくは、本実施形態のように、ドレン排出弁制御部7bは、第1圧力センサ12で測定した圧力値Pdが第1閾値未満であり、かつ、第2圧力センサ13で測定した圧力値Poが第2閾値以上であるとき、ドレン排出弁11を開く。また、ドレン排出弁制御部7bは、第1圧力センサ12で測定した圧力値Pdが所定の第1閾値以上の場合(即ち、第2加速度a2から第1加速度a1に切り替え後)、または、ドレン排出弁が開いてから所定時間ΔT2経過した場合にドレン排出弁11を閉じる。ここでの所定時間ΔT2とは、第2加速度でモータ2の運転を行った際に排出弁からドレンを排出するのにかかる時間である。ここで所定時間ΔT2は、前述の所定時間ΔT1と同様に予め実験的に求めることができる。所定時間ΔT2は、第2加速度a2から第1加速度a1に切り替えられた後にドレン排出弁11を閉じるように前述の所定時間ΔT1よりも長く設定してもよい。また、第2加速度a2から第1加速度a1に切り替え後とは、第1加速度に切り替えられると同時をも含む。
【0044】
図4,5は、本実施形態の制御装置7によるモータ2の加速度およびドレン排出弁11の開閉の制御を示すフローチャートである。
【0045】
まず、
図4を参照して、モータ2の加速度制御について説明する。圧縮機本体3の起動を開始(モータ2を始動してモータの起動を開始)すると(ステップS4-1)、モータ2の加速度を第1加速度(定格加速度)a1に設定する(ステップS4-2)。そして、圧力値Poが第2閾値P2以上であるか否かを判定する(ステップS4-3)。圧力値Poが第2閾値P2未満であるとき、圧力値Poが第2閾値P2以上となるまで待機する(ステップS4-3)。圧力値Poが第2閾値P2以上であると、さらに圧力値Pdが第1閾値P1以上であるか否かを判定する(ステップS4-4)。
【0046】
圧力値Pdが第1閾値P1以上であるとき、さらにモータ2の回転数が定格回転数に達しているか否かを判定する(ステップS4-5)。モータ2の回転数が定格回転数に達していなければ定格回転数に達するまで待機し、その後起動を終了し(ステップS4-6)、通常運転に移行する。
【0047】
ステップS4-4において、圧力値Pdが第1閾値P1未満であるとき、モータ2の加速度を第2加速度a2に設定する(ステップS4-7)。そして、タイマT1のカウントを開始する(ステップS4-8)。次いで、圧力値Pdが第1閾値P1以上であるか否かを再び判定する(ステップS4-9)。圧力値Pdが第1閾値P1以上となるか、または、タイマT1が所定時間ΔT1経過後(ステップS4-10)にモータ2の加速度を第1加速度a1に設定する(ステップS4-11)。そして、モータ2の回転数が定格回転数に達しているか否かを判定する(ステップS4-12)。モータ2の回転数が定格回転数に達していなければ定格回転数に達するまで待機し、その後起動を終了し(ステップS4-13)、通常運転(モータ2を定格回転数とした圧縮機の運転)に移行する。
【0048】
次に、
図5を参照して、ドレン排出弁11の制御について説明する。圧縮機本体3の起動を開始(モータ2を始動してモータの起動を開始)すると(ステップS5-1)、圧力値Poが第2閾値P2以上であるか否かを判定する(ステップS5-2)。圧力値Poが第2閾値P2未満であれば、圧力値Poが第2閾値P2となるまで待機し、圧力値Poが第2閾値P2であればドレン排出弁11を開く(ステップS5-3)。そして、タイマT2のカウントを開始する(ステップS5-4)。次いで、第1圧力センサ12で測定した圧力値Pdが所定の第1閾値P1以上であるか否かを判定する(ステップS5-5)。第1圧力センサ12で測定した圧力値Pdが所定の第1閾値P1未満であれば、タイマT2が所定時間ΔT2経過後(ステップS5-6)にドレン排出弁11を閉じる(ステップS5-7)。ステップS5-5にて初めから第1圧力センサ12で測定した圧力値Pdが所定の第1閾値P1以上である場合、または、タイマT2が所定時間ΔT2経過前に第1圧力センサ12で測定した圧力値Pdが所定の第1閾値P1以上となった場合もドレン排出弁11を閉じる(ステップS5-7)。詳細には、第1圧力センサ12で測定した圧力値Pdが所定の第1閾値P1以上であり(ステップS4-9およびステップS5-5)、モータ2の加速度が第2加速度a2から第1加速度a1に切り替え後(ステップS4-11)、あるいは、タイマT2が所定時間ΔT2経過したとき(ステップS5-6)のいずれか早い段階でドレン排出弁11を閉じる(ステップS5-7)。その後、起動を終了し(ステップS5-8)、通常運転に移行する。ここで、所定時間ΔT2は前述の所定時間ΔT1より長い時間である。これにより、前述のように第2加速度a2から第1加速度a1に切り替えられた後にドレン排出弁11が閉じられる。
【0049】
本実施形態の圧縮機1およびその運転方法によれば、以下の利点がある。
【0050】
本実施形態では、回転数調整部7aによって第1圧力センサ12で測定した圧力値Pdが所定の第1閾値P1未満の場合にモータ2を第2加速度a2で加速する。これにより、ドライヤ6から吐出する空気の昇圧速度を従来のように定格加速度a1で昇圧させる場合よりも低下させ、吐出圧がキャリーオーバを発生させない圧力に昇圧するまで(モータ2を定格回転数で通常運転してもドライヤ6を通過するガスの流速がキャリーオーバを発生させない状態となる圧力まで)ドライヤ6を通過するガスの流速を抑制することによりキャリーオーバを防止できる。
【0051】
本実施形態では、第2圧力センサ13で測定した圧力値Poが第2閾値P2以上である場合、ドレン排出弁11を開く。仮に、第2圧力センサ13で測定した圧力値Poが第2閾値P2未満でドレン排出弁11を開くと、ドレン排出に伴ってドライヤ6における空気圧が低下し、即ち吐出される空気圧が低下するおそれがある。そのため、供給先から要求される空気圧までの昇圧に時間を要する。そこで、第2圧力センサ13で測定した圧力値Poが第2閾値P2以上である場合にドレン排出弁11を開くことで、吐出圧が要求圧力まで昇圧するのにかかる時間が長くなることを防止できる。
【0052】
本実施形態では、ドレン排出弁11を開いてから所定時間ΔT2後にドレン排出弁11を閉じる。従って、ドレン排出弁11の開放を継続することによって生じ得る圧縮空気の過度な漏出を防止し、過度な圧力低下を防止できる。また、モータ2の加速度を第1加速度a1に切り替えるときにはキャリーオーバが発生しない程度にドレンが既に排出されているため、第1加速度a1で駆動してもキャリーオーバを防止できるとともに、第2加速度a2よりも短時間でモータ2の回転数を加速できる。
【0053】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記実施形態では、ドレン排出弁制御部7bは、第2加速度a2から第1加速度a1に切り替え後、あるいは、ドレン排出弁11が開いてから所定時間経過したときの何れか早い段階を選択的に判断してドレン排出弁11を閉じるものであるが、選択的に判断するものでなくてもよい。即ち、第2加速度a2から第1加速度a1に切り替え後、または、ドレン排出弁11が開いてから所定時間経過したときのどちらか一方のみを判断して、ドレン排出弁11を閉じるものであってもよい。例えば、本発明の制御装置および制御においては、
図5に示すステップS5-5を省略してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 圧縮機
2 モータ
3 圧縮機本体
4 セパレータタンク
4a 液セパレータ
4b 液タンク
5 アフタークーラ
6 ドライヤ
7 制御装置
7a 回転数調整部
7b ドレン排出弁制御部
8 電源
9 保圧逆止弁
10 ドレン管
11 ドレン排出弁
12 第1圧力センサ
13 第2圧力センサ