(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】加工装置、加工装置の制御方法および加工装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4069 20060101AFI20220513BHJP
G05B 19/4093 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
G05B19/4069
G05B19/4093 E
(21)【出願番号】P 2018182702
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-04-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【氏名又は名称】加藤 卓士
(74)【代理人】
【識別番号】100133639
【氏名又は名称】矢野 卓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100198960
【氏名又は名称】奥住 忍
(72)【発明者】
【氏名】中村 海太
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-116754(JP,A)
【文献】再公表特許第2011/132221(JP,A1)
【文献】再公表特許第2014/097434(JP,A1)
【文献】特開平09-179620(JP,A)
【文献】特開2012-218111(JP,A)
【文献】特開2014-073546(JP,A)
【文献】特開2003-305625(JP,A)
【文献】特開2014-075000(JP,A)
【文献】寺本一成、尾曽由紀夫、藤田充洋、水野輸、桑野義正,NC加工シミュレータにおけるツーリングの自動決定,1998年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集,日本,社団法人精密工学会
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00-15/28
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の要素を含む加工装置であって、
加工対象物を所望の形状に加工するための加工シミュレーションを行うことにより、前記加工対象物の加工中に前記要素同士の干渉および前記要素と前記加工対象物との干渉の少なくとも一方を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記干渉が検出された場合、旋削、転削、研削または穿鑿により前記要素
における干渉部位を除去することを提案する提案手段と、
を備えた加工装置。
【請求項2】
前記要素は、刃具、工具ホルダ、チャック、治具、カバー、センサ、カメラ、内壁面、心押台、センタ、爪、刃物台、工具主軸のうち少なくとも1つを含む請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記干渉部位の除去により前記要素の剛性の低下が前記加工に影響を与えるか否かを判定する剛性判定手段をさらに備えた請求項1に記載の加工装置。
【請求項4】
複数の要素を含む加工装置の制御方法であって、
加工対象物を所望の形状に加工するための加工シミュレーションを行うことにより、前記加工対象物の加工中に前記要素同士の干渉および前記要素と前記加工対象物との干渉の少なくとも一方を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて前記干渉が検出された場合、旋削、転削、研削または穿鑿により前記要素
における干渉部位を除去することを提案する提案ステップと、
を含む加工装置の制御方法。
【請求項5】
複数の要素を含む加工装置の制御プログラムであって、
加工対象物を所望の形状に加工するための加工シミュレーションを行うことにより、前記加工対象物の加工中に前記要素同士の干渉および前記要素と前記加工対象物との干渉の少なくとも一方を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて前記干渉が検出された場合、旋削、転削、研削または穿鑿により前記要素
における干渉部位を除去することを提案する提案ステップと、
をコンピュータに実行させる加工装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置、加工装置の制御方法および加工装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、加工プログラミングが正しいことを確認するために、工作機械で実加工を行う前に、工具やワーク、その他機械要素の3Dモデルを用いて、加工シミュレーションを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、加工シミュレーションの結果、要素同士および要素と加工対象物との干渉の少なくとも一方が検出された場合、加工プログラムを変更していたので、手間がかかる上、加工プログラムの変更により加工経路が長くなるなどして、干渉を簡易に回避することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る加工装置は、
複数の要素を含む加工装置であって、
加工対象物を所望の形状に加工するための加工シミュレーションを行うことにより、前記加工対象物の加工中に前記要素同士の干渉および前記要素と前記加工対象物との干渉の少なくとも一方を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記干渉が検出された場合、旋削、転削、研削または穿鑿により前記要素における干渉部位を除去することを提案する提案手段と、
を備えた。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る加工装置の制御方法は、
複数の要素を含む加工装置の制御方法であって、
加工対象物を所望の形状に加工するための加工シミュレーションを行うことにより、前記加工対象物の加工中に前記要素同士の干渉および前記要素と前記加工対象物との干渉の少なくとも一方を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて前記干渉が検出された場合、旋削、転削、研削または穿鑿により前記要素における干渉部位を除去することを提案する提案ステップと、
を含む。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る加工装置の制御プログラムは、
複数の要素を含む加工装置の制御プログラムであって、
加工対象物を所望の形状に加工するための加工シミュレーションを行うことにより、前記加工対象物の加工中に前記要素同士の干渉および前記要素と前記加工対象物との干渉の少なくとも一方を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて前記干渉が検出された場合、旋削、転削、研削または穿鑿により前記要素における干渉部位を除去することを提案する提案ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、要素同士および要素と加工対象物との干渉の少なくとも一方が検出された場合、干渉を簡易に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る加工装置の構成を示すブロック図である。
【
図2A】本発明の第2実施形態に係る加工装置の要素同士の干渉の一例を説明する図である。
【
図2B】本発明の第2実施形態に係る加工装置の要素同士の干渉の他の例を説明する図である。
【
図2C】本発明の第2実施形態に係る加工装置の要素同士の干渉のさらに他の例を説明する図である。
【
図2D】本発明の第2実施形態に係る加工装置の要素同士の干渉のさらに他の例を説明する図である。
【
図3A】本発明の第2実施形態に係る加工装置の構成を示すブロック図である。
【
図3B】本発明の第2実施形態に係る加工装置による旋削を説明する図である。
【
図3C】本発明の第2実施形態に係る加工装置による転削を説明する図である。
【
図4A】本発明の第2実施形態に係る加工装置の有する加工装置テーブルの一例を示す図である。
【
図4B】本発明の第2実施形態に係る加工装置の有する回避案テーブルの一例を示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る加工装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る加工装置の処理手順を説明するフローチャートである。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る加工装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る加工装置の有する回避案テーブルの一例を示す図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る加工装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る加工装置の処理手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明記載する。ただし、以下の実施の形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0012】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての加工装置100について、
図1を用いて説明する。加工装置100は、加工対象物の加工を行う装置である。
【0013】
図1に示すように、複数の要素を含む加工装置100は、検出部101および提案部102を含む。検出部101は、加工対象物を所望の形状に加工するための加工シミュレーションを行うことにより、加工対象物の加工中に要素同士の干渉および要素と加工対象物との干渉の少なくとも一方を検出する。提案部102は、検出部101により干渉が検出された場合、検出された干渉を回避するため、要素と加工対象物との相対的な位置関係を変えないような回避案を生成し、提案する。要素同士の干渉が検出された場合、要素同士の干渉を簡易に回避することができる。
【0014】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る加工装置について、
図2A乃至
図6を用いて説明する。
図2Aは、本実施形態に係る加工装置の要素同士の干渉の一例を説明する図である。
【0015】
加工装置200は、刃具201およびチャック202などの複数の要素を含む装置である。刃具201は、工具ホルダ212に取り付けられている。チャック202には爪221が取り付けられており、爪221が加工対象物210(ワーク)をつかむことにより、加工対象物210がチャック202に固定されている。
【0016】
そして、加工装置200は、加工対象物210の加工を実行する前に、加工対象物210を所望の形状に加工するための加工シミュレーションを行う。そして、加工シミュレーションにおいて、加工対象物210の加工中に、要素同士の干渉、要素と加工対象物210との干渉の少なくとも一方を検出する。
【0017】
ここで干渉とは、
図2Aに示したように、加工シミュレーションにおいて、加工装置200がH字形の加工対象物210の加工を行う場合、刃具201が、干渉部位220で加工対象物210と接触して、刃具201の動きが制限されることをいう。そして、この干渉が発生すると、加工装置200内における刃具201の動きが制限されるので、加工対象物210に対して所望の加工を行うことができなくなる。
【0018】
このような場合、加工装置200は、検出された干渉を回避するため、刃具201と加工対象物210との相対的な位置関係を変えないような回避案(相対的な位置関係を維持できるような回避案)を生成し、提案する。つまり、干渉発生時の刃具201と加工対象物210との相対的な位置関係を変えないような回避案を生成し、提案する。
図2Aにおいては、加工装置200は、回避案として、刃具201を別の刃具に交換することを提案する。このように、刃具201を別の刃具に交換すれば、交換された別の刃具と加工対象物210とが接触することがなくなるので、干渉を回避できる。
【0019】
そして、加工装置200は、提案された回避案に基づいて、加工対象物210の加工を制御する。すなわち、加工装置200は、交換された別の刃具を用いて、加工対象物210の加工を行う。
【0020】
図2Bは、本実施形態に係る加工装置の要素同士の干渉の他の例を説明する図である。
図2Bにおいても、刃具201と加工対象物210との干渉を示している。図示したように、斜めに傾いた刃具201と加工対象物210とが干渉部位220において干渉している。この場合、加工装置200は、回避案として、刃具201を別の刃具201に交換することを提案する。
【0021】
そして、加工装置200は、提案された回避案に基づいて、加工対象物210の加工を制御する。すなわち、加工装置200は、交換された別の刃具を用いて、加工対象物210の加工を行う。
【0022】
図2Cは、本実施形態に係る加工装置の要素同士の干渉のさらに他の例を説明する図である。
図2Cにおいては、工具主軸213と加工装置200のカバー204との干渉を示している。図示したように、刃具201を傾けて加工対象物210を加工しようとすると、干渉部位220において工具主軸213がカバー204と接触し、加工対象物210の加工が妨げられる。この場合、加工装置200は、回避案として、刃具201および工具ホルダ212を長さを短縮することを提案する。なお、加工装置200は、工具主軸213と加工装置200のチャンバの内壁面との干渉を検出することもできる。
【0023】
そして、加工装置200は、提案された回避案に基づいて、加工対象物210の加工を制御する。すなわち、加工装置200は、長さが短縮された刃具と長さが短縮された工具ホルダとを用いて、加工対象物210の加工を行う。
【0024】
図2Dは、本実施形態に係る加工装置の要素同士の干渉のさらに他の例を説明する図である。
図2Dにおいては、工具ホルダ212と爪221との干渉を示している。図示したように、刃具201を移動させながら加工対象物210を加工しようとすると、干渉部位220において、工具ホルダ212が爪221と接触し、加工対象物210の加工が妨げられる。この場合、加工装置200は、回避案として、爪221を異なる形状の爪222に交換することを提案する。つまり、爪222は、爪221と比べると、工具ホルダ212と干渉する部分が削り取られた形状をしており、加工装置200は、このような形状の爪221に交換することを提案する。
【0025】
そして、加工装置200は、提案された回避案に基づいて、加工対象物210の加工を制御する。すなわち、加工装置200は、爪221とは異なる形状の爪222を用いて、加工対象物210の加工を行う。
【0026】
図3Aは、本実施形態に係る加工装置の構成を示すブロック図である。加工装置200は、検出部301と提案部302と加工制御部303とを含む。また、加工装置200は、複数の要素を含む。要素は、刃具、工具ホルダ、チャック、治具、カバー、センサ、カメラ、内壁面、心押台、センタ、爪、刃物台、工具主軸のうち少なくとも1つを含むが、加工装置200を構成する部品などであれば、これらには限定されない。
【0027】
検出部301は、加工対象物210を所望の形状に加工するための加工シミュレーションを行うことにより、加工対象物210の加工中に、要素同士の干渉および要素と加工対象物210との干渉の少なくとも一方を検出する。例えば、検出部301は、加工対象物210の加工を行うための加工プログラムを受信し、受信した加工プログラムを実行して、加工対象物210の加工をシミュレートする。
【0028】
そして、検出部301は、要素同士の干渉、要素と加工対象物210との干渉を検出する。干渉が検出された場合、検出部301は、検出結果を提案部302へと送信する。なお、干渉が検出されない場合、加工装置200は、検出部301が受信した加工プログラムを実行し、実際に加工対象物210の加工を行う。
【0029】
提案部302は、検出部301により干渉が検出された場合、検出された干渉を回避するため、要素と加工対象物210との相対的位置関係を変えないような回避案を生成し、提案する。提案部302は、回避案として、干渉部位220の除去、治具の変更、加工装置の変更および加工に用いられる工具の変更のうち少なくとも1つを提案する。
【0030】
提案部302は、回避案としての干渉部位220の除去として、例えば、干渉部位220の旋削、転削、研削または穿鑿することを提案する。
図3Bは、円筒形のミーリング工具320の干渉部位220を外径バイト310で加工する様子を示しいる。また、
図3Cは、外径バイト310の一部(干渉部位220)をエンドミル330で加工する様子を示している。ここで、旋削とは、
図3Bに示したように、回転している品物に工具を当てて移動させることにより、望みの形状寸法に加工するこという。転削とは、
図3Cに示したように、回転する工具(フライスカッター、エンドミル330など)により品物の平面部、曲面部を加工するこという。研削とは、高速回転する砥石車(砥石ともいう)によって加工物の表面を除去し切削加工より平滑な面を得る機械加工の一種である。穿鑿とは、加工物に穴をあける(穴を掘る)加工をいう。
【0031】
加工制御部303は、提案部302により提案された回避案に基づいて、加工対象物210の加工を制御する。回避案が、加工に用いられる工具の変更であれば、加工制御部303は、変更された工具を用いて加工対象物210の加工を実行する。この場合、変更された工具(要素)と加工対象物210との干渉は生じないので、加工対象物210に対して所望の加工を行うことができる。
【0032】
図4Aは、本実施形態に係る加工装置の有する加工装置テーブルの一例を示す図である。加工装置テーブル401は、加工装置ID(Identifiier)411に関連付けて要素412を記憶する。加工装置ID411は、加工装置を識別するための識別子であり、各加工装置に対して一意の番号が割り振られている。要素412は、加工装置が有する要素を示す。
【0033】
図4Bは、本実施形態に係る加工装置の有する回避案テーブルの一例を示す図である。回避案テーブル402は、加工装置ID411に関連付けて、加工プログラム421、干渉422および回避案423を記憶する。加工プログラム421は、加工対象物210を所望の形状に加工するために用いられるプログラムである。干渉422は、加工シミュレーションを行った結果、検出された干渉である。回避案423は、検出された干渉を回避するための回避案である。加工装置200は、例えば、加工装置テーブル401および回避案テーブル402を参照して、回避案を生成し、提案する。
【0034】
図5は、本実施形態に係る加工装置のハードウェア構成を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)510は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで
図3Aの加工装置200の機能構成部を実現する。CPU510は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)520は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース530は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU510は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース530は、CPU510とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)540の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM540とストレージ550との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU510は、RAM540にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU510は、処理結果をRAM540に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース530やDMACに任せる。
【0035】
RAM540は、CPU510が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM540には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する領域が確保されている。使用加工装置541は、加工を行う装置に関するデータであり、当該装置の要素などのデータも含む。加工対象物542は、加工の対象となる加工対象物についてのデータであり、形状や材質などのデータを含む。加工プログラム543は、加工対象物を所望の形状に加工するために用いられるプログラムに関する。回避案544は、検出された干渉を回避するための回避案である。これらのデータは、例えば、加工装置テーブル401および回避案テーブル402から展開される。
【0036】
送受信データ545は、ネットワークインタフェース530を介して送受信されるデータである。また、RAM540は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域546を有する。
【0037】
ストレージ550には、データベースや各種のパラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ550は、加工装置テーブル401および回避案テーブル402を格納する。加工装置テーブル401は、
図4Aに示した、加工装置ID411と要素412との関係を管理するテーブルである。また、回避案テーブル402は、
図4Bに示した、加工装置ID411と回避案423などとの関係を管理するテーブルである。
【0038】
ストレージ550は、さらに、検出モジュール551、提案モジュール552および加工制御モジュール553を格納する。検出モジュール551は、加工対象物210を所望の形状に加工するための加工シミュレーションを行うことにより、加工対象物210の加工中に、要素同士の干渉および要素と加工対象物210との干渉の少なくとも一方を検出するモジュールである。提案モジュール552は、干渉が検出された場合、検出された干渉を回避するため、要素と加工対象物210との相対的な位置関係を変えないような回避案を生成し、提案するモジュールである。加工制御モジュール553は、提案された回避案に基づいて、加工対象物210の加工を制御するモジュールである。これらのモジュール551~553は、CPU510によりRAM540のアプリケーション実行領域546に読み出され、実行される。制御プログラム554は、加工装置200の全体を制御するためのプログラムである。
【0039】
入出力インタフェース560は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース560には、表示部561、操作部562、が接続される。また、入出力インタフェース560には、さらに、記憶媒体564が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ563や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、
図5に示したRAM540やストレージ550には、加工装置200が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0040】
図6は、本実施形態に係る加工装置の処理手順を説明するフローチャートである。このフローチャートは、
図5のCPU510がRAM540を使用して実行し、
図3Aの加工装置200の機能構成部を実現する。
【0041】
ステップS601において、加工装置200は、加工プログラムを受信する。ステップS603において、加工装置200は、受信した加工プログラムに基づいて、加工対象物210を所望の形状に加工するための加工シミュレーションを実行する。ステップS605において、加工装置200は、加工シミュレーションの結果、干渉が検出されたか否かを判断する。干渉が検出されなかった場合(ステップS605のNO)、加工装置200は、ステップS609へ進み、受信した加工プログラムを実行して、加工対象物210の加工を行う。
【0042】
干渉が検出された場合(ステップS605のYES)、加工装置200は、ステップS607へ進む。ステップS607において、加工装置200は、検出された干渉を回避するため、要素と加工対象物210との相対的な位置関係を変えないような回避案を生成し、提案する。ステップS611において、加工装置200は、提案された回避案に基づいて、加工対象物210の加工を制御する。
【0043】
本実施形態によれば、要素同士の干渉が検出された場合、干渉を簡易、確実に回避することができる。また、要素同士および要素と加工対象物との干渉の少なくとも一方が検出された場合、加工プログラムの変更などをしなくても、干渉を回避するための回避案を提案するので、干渉を簡易、確実に回避することができる。
【0044】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係る加工装置について、
図7乃至
図10を用いて説明する。
図7は、本実施形態に係る加工装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る加工装置は、上記第2実施形態と比べると、剛性判定部を有する点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0045】
加工装置700は、剛性判定部701を有する。剛性判定部701は、回避案が干渉部位220の除去である場合、干渉部位220の除去により要素の剛性の低下が加工に影響を与えるか否かを判定する。
【0046】
提案部302により提案された回避案に従い干渉部位220を除去して干渉を回避できるとしても、干渉部位220の除去により、要素の剛性が低下すると、加工を確実に行うことができない。つまり、例えば、刃具201の干渉部位220を削るなどして除去した場合、干渉部位220が除去された刃具201の剛性は低下する。このように、剛性の低下した刃具201により、加工対象物210の加工を行えば、刃具201が曲がったり、破損したりして、所望の加工を行うことができなくなる。
【0047】
したがって、提案部302により提案された回避案が干渉部位220の除去である場合、要素の剛性の低下が加工に影響を与えるか否かを判定することにより、所望の加工が行える回避案か否かの判定を行える。
【0048】
提案部302により提案された回避案が、剛性判定部701により、加工に影響を与えると判定された場合、例えば、加工装置700の提案部302は、別の回避案を新たに生成する。そして、新たに生成された別の回避案について、剛性判定部701は、要素の剛性の低下が加工に影響を与えるか否かを判定する。判定の結果、要素の剛性の低下が加工に影響を与えないと判定されて場合、加工制御部303は、新たに生成された別の回避案に基づいて、加工対象物210の加工を制御する。なお、剛性の低下が加工に影響を与えないと判定されるまで、このような作業を複数回繰り返してもよい。
【0049】
図8は、本実施形態に係る加工装置の有する回避案テーブルの一例を示す図である。回避案テーブル801は、加工装置ID411に関連付けて影響811を記憶する。影響811は、提案された回避案が、干渉部位220の除去である場合、干渉部位220の除去により要素の剛性の低下が加工に影響を与えるか否かを示す。加工装置700は、例えば、加工装置テーブル401および回避案テーブル801を参照して、回避案を生成し、提案する。
【0050】
図9は、本実施形態に係る加工装置のハードウェア構成を示すブロック図である。RAM940は、CPU510が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM940には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する領域が確保されている。影響941は、干渉部位220の除去により要素の剛性の低下が加工に影響を与えるか否かを示すデータである。このデータは、例えば、回避案テーブル801から展開される。
【0051】
ストレージ950には、データベースや各種のパラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ950は、回避案テーブル801をさらに格納する。回避案テーブル801は、
図8に示した、加工装置ID411と影響811などとの関係を管理するテーブルである。
【0052】
ストレージ950は、さらに、剛性判定モジュール951を格納する。剛性判定モジュール951は、回避案が干渉部位220の除去である場合、干渉部位220の除去により要素の剛性の低下が加工に影響を与えるか否かを判定するモジュールである。このモジュール951は、CPU510によりRAM940のアプリケーション実行領域546に読み出され、実行される。制御プログラム952は、加工装置700の全体を制御するためのプログラムである。
【0053】
図10は、本実施形態に係る加工装置の処理手順を説明するフローチャートである。このフローチャートは、
図9のCPU510がRAM940を使用して実行し、
図7の加工装置700の機能構成部を実現する。
【0054】
ステップS1001において、加工装置700は、生成され、提案された回避案が干渉部位220の除去であるか否かを判定する。回避案が干渉部位220の除去でない場合(ステップS1001のNO)、加工装置700は、ステップS611へ進む。回避案が干渉部位220の除去である場合(ステップS1001のYES)、加工装置700は、ステップS1003へ進む。
【0055】
ステップS1003において、加工装置700は、干渉部位220の除去により要素の剛性の低下が加工に影響を与えるか否かを判定する。加工に影響を与える場合(ステップS1003のYES)、加工装置700は、ステップS607に戻り、他の回避案を再度生成し、提案する。加工に影響を与えない場合(ステップS1003のNO)、加工装置700は、ステップS611へ進む。
【0056】
本実施形態によれば、回避案が干渉部位の除去である場合に、干渉部位の除去により要素の剛性の低下が加工に影響を与えるか否かを判定するので、要素の破損や要素の破損による加工対象物の破壊などを確実に防止でき、さらに、干渉を簡易、確実に回避することができる。
【0057】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。