IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アクアポリン アー/エスの特許一覧

特許7072509アクアポリン水チャネルを含む自己集合ナノ構造体および分離膜、ならびにそれらを使用する方法
<>
  • 特許-アクアポリン水チャネルを含む自己集合ナノ構造体および分離膜、ならびにそれらを使用する方法 図1
  • 特許-アクアポリン水チャネルを含む自己集合ナノ構造体および分離膜、ならびにそれらを使用する方法 図2
  • 特許-アクアポリン水チャネルを含む自己集合ナノ構造体および分離膜、ならびにそれらを使用する方法 図3
  • 特許-アクアポリン水チャネルを含む自己集合ナノ構造体および分離膜、ならびにそれらを使用する方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】アクアポリン水チャネルを含む自己集合ナノ構造体および分離膜、ならびにそれらを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/74 20060101AFI20220513BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20220513BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20220513BHJP
   B01D 71/60 20060101ALI20220513BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20220513BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20220513BHJP
   B01D 61/38 20060101ALI20220513BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20220513BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20220513BHJP
   B01D 61/24 20060101ALI20220513BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20220513BHJP
   C08L 79/02 20060101ALI20220513BHJP
   C08L 89/00 20060101ALI20220513BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220513BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20220513BHJP
【FI】
B01D71/74
B01D63/02
B01D69/12
B01D71/60
C02F1/44 J
B01D69/00 500
B01D61/38
B01D61/00 500
B01D61/02 500
B01D61/24
B01D69/02
C08L79/02
C08L89/00
B82Y40/00
B82Y30/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2018541348
(86)(22)【出願日】2017-02-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2017052567
(87)【国際公開番号】W WO2017137361
(87)【国際公開日】2017-08-17
【審査請求日】2020-01-07
(31)【優先権主張番号】PA201600079
(32)【優先日】2016-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201600249
(32)【優先日】2016-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】507382832
【氏名又は名称】アクアポリン アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】スパルバー,マリアナ
(72)【発明者】
【氏名】トラザスカス,クリストフ
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0273407(US,A1)
【文献】国際公開第2014/128293(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105013334(CN,A)
【文献】国際公開第2014/108827(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0136690(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0084026(US,A1)
【文献】特表2012-516776(JP,A)
【文献】国際公開第2013/043118(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/166038(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0046074(US,A1)
【文献】特表2006-512204(JP,A)
【文献】特表2012-529984(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0062982(US,A1)
【文献】特開平06-254158(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0112618(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C08L 79/02
C08L 89/00
B82Y 40/00
B82Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効層を備えた基材を含む分離膜であって、前記有効層は、ポリアルキレンイミン(PAI)、および界面活性剤可溶化した膜貫通タンパク質を含む、自己集合ナノ構造体を含み、
ここにおいて、前記有効層は薄膜複合材料(TFC)層であり、そして、前記薄膜複合材料層は架橋芳香族ポリアミド層である、そして、
ここにおいて、前記自己集合ナノ構造体は、ポリアルキレンイミン分子中に存在する正に荷電した窒素原子と、ナノ構造体を形成するために用いた条件下で負に荷電している膜貫通タンパク質中のアミノ酸残基との、静電相互作用により生成する、
前記分離膜。
【請求項2】
PAIがポリエチレンイミン(PEI)である、請求項1に記載の分離膜。
【請求項3】
PEIが、2,000Da~10,000Daの平均分子量を有する線状のポリマーである、請求項2に記載の分離膜。
【請求項4】
PEIが、3,000Da~5,000Daの平均分子量を有する線状のポリマーである、請求項2又は3に記載の分離膜。
【請求項5】
膜貫通タンパク質がアクアポリン水チャネルである、請求項1-4のいずれか1項に記載の分離膜。
【請求項6】
界面活性剤が、LDAO、OG、DDMまたはその組合わせからなる群から選択される、請求項1-5のいずれか1項に記載の分離膜。
【請求項7】
膜加工プロセス中に、ポリアルキレンイミン(PAI)、および界面活性剤可溶化した膜貫通タンパク質を含む、自己集合ナノ構造体を含む液体組成物を添加することを含む、請求項1-6のいずれか1項に記載の分離膜の作成方法。
【請求項8】
液体組成物がさらに緩衝剤を含む、請求項7の方法。
【請求項9】
膜貫通タンパク質がアクアポリン水チャネルである、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
薄膜複合材料層の製造中に前記液体組成物を添加することを含む、請求項7-9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1-6のいずれか1項に記載の分離膜により水溶液を濾過することを含む、純水濾液を調製する方法。
【請求項12】
請求項1-6のいずれか1項に記載の分離膜を使用して生成物溶液から水を抽出することを含む、生成物溶液を浸透作用により濃縮する方法。
【請求項13】
浸透圧発電を用いて塩分濃度差電力を産生する方法であって、請求項1-6のいずれか1項に記載の分離膜を用いて静水圧を増大させ、この静水圧の増大を塩分濃度差電力の供給源として用いることを含む方法。
【請求項14】
ポリアルキレンイミン(PAI)、および界面活性剤可溶化した膜貫通タンパク質を含む、自己集合ナノ構造体を含む選択層で改質した繊維を有する、中空繊維(HF)モジュールであって、
ここにおいて、前記自己集合ナノ構造体は、ポリアルキレンイミン分子中に存在する正に荷電した窒素原子と、ナノ構造体を形成するために用いた条件下で負に荷電している膜貫通タンパク質中のアミノ酸残基との、静電相互作用により生成し、
ここにおいて、前記選択層は繊維の内面に薄膜複合材料(TFC)層を構成し、そして、前記薄膜複合材料層は架橋芳香族ポリアミド層である、
前記HFモジュール。
【請求項15】
保護シェルにより囲まれた繊維の束を含む中空繊維(HF)モジュールを製造する方法であって、
繊維は、ポリアルキレンイミン(PAI)、および界面活性剤可溶化した膜貫通タンパク質を含む、自己集合ナノ構造体を含む選択層で改質され、
その方法は、ポリアルキレンイミン(PAI)、および界面活性剤可溶化した膜貫通タンパク質を含む、自己集合ナノ構造体を含む液体組成物を含む水性MPD相と、繊維とを接触させ、ここにおいて、前記自己集合ナノ構造体は、ポリアルキレンイミン分子中に存在する正に荷電した窒素原子と、ナノ構造体を形成するために用いた条件下で負に荷電している膜貫通タンパク質中のアミノ酸残基との、静電相互作用により生成する、
そして、
その水相を有機TMC相と界面重合反応で反応させて自己集合ナノ構造体を含む選択層を形成することを含む、ここにおいて、前記選択層は繊維の内面に薄膜複合材料(TFC)層を構成し、そして、前記薄膜複合材料層は架橋芳香族ポリアミド層である、
前記方法。
【請求項16】
繊維の内腔を水相と接触させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
保護シェルが細長い形状を有し、繊維の束が保護シェルの内側に縦軸方向に配置される、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
モジュールのシェル側に真空を適用して水相の均一な乾燥を促進することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
水相乾燥工程中に保護シェルを水平方向に保持することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
正浸透により純水を抽出するための、請求項14に記載のHFモジュールの使用。
【請求項21】
血液透析、血液透析濾過または血液濾過により失われた患者血漿から純水を再抽出するための、請求項14のHFモジュールの使用。
【請求項22】
水源の逆浸透精製のための、請求項14に記載のHFモジュールの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜貫通タンパク質、たとえばアクアポリン(aquaporin)(AQP)水チャネルと、ポリアルキレンイミン(PAI)との間で形成された、自己集合ナノ構造体、およびナノ構造体を含む濾過膜に関する。本発明はさらに、ナノ構造体および分離膜(たとえば、中空繊維および中空繊維モジュール)を作成する方法、ならびにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
二重層または二重層様の構造をもつ自己集合ベシクルを形成するために、特に両親媒性膜タンパク質、たとえばアクアポリン(AQP)水チャネルを固定化するために、両親媒性脂質およびブロックコポリマーを使用することは当技術分野で周知である。次いでAQPを含むベシクルを用いて、一般にそれらのベシクルを支持基材上に層としてまたはフィルム状に析出させることにより、AQPが固定化された水精製(WO2006/122566)または塩分濃度差電力(salinity power) (WO2007/033675)の産生などの用途のための膜を作成することができ、それにより水分子はナノ濾過、逆浸透、正浸透または浸透圧発電(pressure retarded osmosis)によって選択的に膜を通過できる。
【0003】
WO2013/043118には、アクアポリン(AQP)水チャネルが膜の有効層に組み込まれた薄膜複合材料(thin film composite)(TFC)膜が開示されている。さらに、それには、薄膜複合材料膜を製造する方法、および濾過プロセス、たとえばナノ濾過および浸透圧濾過プロセスにおけるそれらの使用が開示されている。TFC膜は、TFC有効層に組み込まれた脂質-AQP/コポリマー-AQPベシクルを含む。WO2010/146365には、固定化されたAQPを組み込むためのベシクル形成物質として両親媒性トリブロックコポリマーを用いるTFC-アクアポリン-Z(AqpZ)濾過膜の製造が記載されている。
【0004】
WO2014/108827には、アクアポリン水チャネルを含む薄膜複合材料(TFC)層で改質された繊維を有する中空繊維(hollow fiber)(HF)モジュールが開示され、その際、アクアポリン水チャネルは、TFC層に組み込まれる前にベシクルに組み込まれる。
【0005】
しかし、一般にこれらの先行技術においてベシクル製造に用いる両親媒性脂質およびブロックコポリマーは固体であり、テトラクロロメタン(CC1)またはクロロホルム(CHCl)などの過酷な溶媒に溶解してそれらの主に疎水性である部分を可溶化する必要がある。膜合成中に、この溶媒を蒸発させてフィルムを形成させ、それを次いで再水和して両親媒性物質を種々のエマルジョン形態(たとえば、ベシクル)にし、同時にAQP膜タンパク質を組み込ませる。しかし、実際には、最終ベシクルサイズを制御するのはしばしば困難であり、直径が約60~80nmから約1000nmまで、またはそれ以上の範囲のベシクルを含む分散エマルジョンが得られる。膜タンパク質は、それらの両親媒性構造に従って二重層構造中で整列しかつタンパク質およびベシクル膜の疎水性部分の厚さと調和する必要があるので、各ベシクルに組み込むことができるAQPの数が限られる可能性もある。
【0006】
ポリエチレンイミン(PEI)は高いカチオン密度をもち、それによって負に荷電したDNAと複合体を形成できるので、遺伝子を細胞内へ伝達するための多目的ベクターとして知られている。この用途において、PEI-DNA複合体は、たとえば、酵素に対する物理的バリヤーを提供して、またはPEIと酵素の間の静電相互作用により、酵素分解に対する安定な環境をDNAに提供する(Thomas & Venkiteswaran, Biophysical Journal, 106(2): 276-277, 2014)。PEIは共に線状、分枝状およびデンドリマー状の形態で存在する。直鎖は第二級アミン基をもち、一方、分枝鎖またはデンドリマーは第一級、第二級および第三級アミン基をもつ可能性がある。短いポリエチレンイミン(PEI,Mw 600)がカチオン性主鎖として選択され、それに脂質テイルが種々の飽和レベルでコンジュゲートすることも文献から知られている。溶液中で、これらのポリマー-脂質ハイブリッドは自己集合して、siRNAと複合体形成できるナノ粒子を形成する。それらの複合体は遺伝子を特異的にかつ低い細胞毒性でサイレンシングする(Schroeder A, et al., J. of Controlled Release, 160(2): 172-176, 2012)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2006/122566
【文献】WO2007/033675
【文献】WO2013/043118
【文献】WO2010/146365
【文献】WO2014/108827
【非特許文献】
【0008】
【文献】Thomas & Venkiteswaran, Biophysical Journal, 106(2): 276-277, 2014
【文献】Schroeder A, et al., J. of Controlled Release, 160(2): 172-176, 2012
【発明の概要】
【0009】
概括的に、本発明は、ポリアルキレンイミン(PAI)、たとえばポリエチレンイミン(PEI)を用いて、膜貫通タンパク質、または特定のタイプの内在性膜タンパク質(integral membrane protein)(ポアタンパク質)、たとえばアクアポリン水チャネルとの自己集合ナノ構造体を形成することに関する。次いでこのPAI-タンパク質ナノ構造体を用いて、膜貫通タンパク質が固定化された、たとえば水分子が膜を通過するのに有効な分離膜を製造できる。たとえば、膜貫通タンパク質を含む分離膜の製造のためには、水性液体組成物に自己集合ナノ構造体を懸濁し、それを半透性支持体上での界面重合反応に際し含有させて薄膜複合材料の有効膜層を形成するか、あるい有効選択層をもつ交互積層法(layer-by-layer technique)により形成された濾過膜または他のタイプの濾過膜に自己集合ナノ構造体を組み込むことができる。
【0010】
いずれか特定の理論により拘束されることを望まないが、自己集合ナノ構造体は、ポリアルキレンイミン分子中に存在する正に荷電した窒素原子と、ナノ構造体および/またはナノ構造体を含む膜を形成するために用いた条件(pH、pKなど)下で負に荷電している膜貫通タンパク質中のアミノ酸残基との、静電相互作用により生成すると考えられる。
【0011】
したがって、本発明の自己集合ナノ構造体は、膜貫通タンパク質を含む膜が脂質二重層または二重層様の構造体中に固定化された先行技術におけるベシクルとは異なる;それらにおいて、タンパク質は個々のベシクルまたはセルの二重層に組み込まれるか、あるいは液膜中の隣接セル間の境界層に組み込まれている。両方の場合とも、二重層はセル内の内部相をセルが懸濁されている周囲外部相から分離する機能をもつ。これと対照的に、本発明の自己集合ナノ構造体においては、膜貫通タンパク質分子とポリアルキレンイミン分子は、明確な内部相と外部相を生じる境界層を実質的に生じるのではなく、むしろナノ構造体の組成物を提供する様式で会合するかあるいは複合体形成し、それを分離膜の有効層および/または選択的構造体として析出させるかあるいは他の形で得ることができる。
【0012】
したがって、一側面において、本発明は、正に荷電したポリマー、たとえばポリアルキレンイミン(PAI)、たとえばポリエチレンイミン(PEI)と、1種類以上の膜貫通タンパク質、たとえばAQP、特に界面活性剤可溶化した(detergent solubilized)膜貫通タンパク質との間で形成された、自己集合ナノ構造体を提供する。膜貫通タンパク質は負に荷電したアミノ酸残基をもち、それはたとえば正に荷電したポリマーと複合体形成するかあるいはたとえば静電相互作用により電荷相互作用して凝集物を形成するために使われる。より具体的には、形成されたナノ構造体のサイズはPAI(またはPEI)ポリマーの分子構造および分子量ならびに使用するポリマーとタンパク質の比率に依存することが見出された。
【0013】
したがって、本発明は水輸送を促進するためにAQPが有効層に組み込まれた分離膜、たとえば濾過膜またはTFC膜を提供し、その際、AQPは自己集合PAIナノ構造体、たとえば自己集合PEIナノ構造体内に固定化されている。本発明はさらに、種々の分離膜(濾過膜を含む)、たとえばナノ濾過膜、正浸透膜および逆浸透膜の有効層に組み込むことができるPAI-タンパク質ナノ構造体を含む、液体組成物を提供する。
【0014】
さらなる側面において、本発明は、本発明の自己集合ナノ構造体を含む選択層で改質された繊維を有する中空繊維(HF)モジュールを提供する。選択層は繊維の内面に薄膜複合材料(TFC)層を含むのが好都合であるが、特定の態様において、TFC層を繊維の外側に形成することができる。
【0015】
関連する側面において、本発明は、保護シェルにより囲まれた繊維の束を含む中空繊維(HF)モジュールを製造する方法を提供し、その際、繊維は本発明の自己集合ナノ構造体を含む選択層で改質され、その方法は、自己集合ナノ構造体を含む液体組成物と繊維を接触させ、液体組成物を界面重合反応において反応させて、自己集合ナノ構造体を含む選択層を形成することを含む。この方法はさらに、交互積層析出法による有効層の形成中に液体組成物を添加することを含むことができる。この方法を用いて、種々の他の膜形態、たとえば平坦なシート状の膜および管状の膜の上に、選択層を形成することができる。
【0016】
HFモジュールにおいて、保護シェルは一般に細長い形状をもち、繊維の束が保護シェルの内側に縦軸方向に配置されている。実施例において設定した実験により、モジュールのシェル側に真空を適用することがTFCコーティング法において有利であることが立証された。さらに、水相乾燥に際して保護シェルを実質的に水平方向に保持することがさらに有利な可能性がある。そのような真空の適用の利点には、有機相の導入前に膜表面が水相からモジュール長さに沿って均一に乾燥すること、および/またはシェル内の繊維の外面上においてモジュールのシェル側の水相の重量流れ(gravimetrical flow)が低減もしくは阻止されることが含まれる。
【0017】
さらなる側面において、本発明は正浸透により純水を抽出するための、本発明のHFモジュールの使用を提供する。
さらなる側面において、本発明は、たとえばWO2015/124716に開示された様式で、血液透析、血液透析濾過または血液濾過により失われた患者血漿から純水を再抽出するための、本発明のHFモジュールの使用を提供する。
【0018】
さらなる側面において、本発明は、天然水源からの重水画分のアップコンセントレーション(up-concentration)のための、本発明のHFモジュールの使用を提供する。
本発明の種々の側面は、ポリアルキレンイミン(PAI)(たとえばPEI)および界面活性剤可溶化した膜貫通タンパク質の自己集合により形成された自己集合ナノ構造体を含む選択層で改質された中空繊維膜を有する、中空繊維(HF)モジュールを使用する。一般に、PEIは、約2,000Da~約10,000Da、たとえば約3,000Da~約5,000Daの平均分子量をもつ実質的に線状のポリマーである;膜貫通タンパク質は、アクアポリン水チャネルである;界面活性剤は、LDAO、OG、DDMまたはその組合わせからなる群から選択される;選択層は、繊維の内面に界面重合反応により形成された薄膜複合材料(TFC)層を含む;TFC層はPAIまたはPEIナノ構造体に機能性状態で封入されたアクアポリン水チャネルを含み、あるいはアクアポリン水チャネルは、両親媒性ベシクル、たとえば後記の実施例11に記載するジブロックもしくはトリブロックコポリマーベシクル、または脂質ベシクルに組み込まれている;HFモジュールは、本明細書に記載する方法を用いてコートされている。
【0019】
さらに、膜貫通タンパク質がイオンチャネルまたはアクアポリンなどを含み、その膜貫通タンパク質を含むナノ構造体が有効層または選択層に固定化され、または組み込まれている場合、それは広範な選択性および輸送特性をもつ分離膜または濾過膜、たとえば
膜貫通タンパク質がイオンチャネルである場合にはイオン交換膜、または膜貫通タンパク質がアクアポリンである場合には水濾過膜の製造に適したものになる。膜貫通タンパク質は、複合体形成して自己集合ナノ構造体になり、分解から遮蔽された際、生物活性であるそれのフォールドした構造を維持しているので、実験室規模および工業的規模の分離膜に組み込まれた場合、感受性の高い両親媒性タンパク質ですら十分に安定になり、よってそれらの機能性を保持することができる。
【0020】
さらに、本発明は、膜貫通タンパク質が前記のアクアポリン水チャネルである自己集合ナノ構造体を含み、場合により緩衝剤を含む、液体組成物、およびその液体組成物を調製する方法に関するものであり、その際、ポリアルキレンイミンの溶液を界面活性剤可溶化した膜貫通タンパク質と混合して、室温以上ですら安定である液体配合物を形成する。液体組成物の形態は中間体として特に有用であり、それを膜加工プロセス中に、たとえばTFC層を形成する界面重合中にMPD溶液に添加するか、あるいは他の方法で適用することができる。本発明の特別な特徴は、下記に述べるようにPAIナノ構造体をその界面重合に関与させ、こうして薄膜を強化し、アクアポリン水チャネルをそれに固定化できることである(Kah et al., pH stable thin film composite polyamine nanofiltration membranes by interfacial polymerisation; Journal of Membrane Science, 478: 75-84, 2015)。
【0021】
本発明の分離膜は、純水濾液を調製する方法、たとえばナノ濾過プロセス、正浸透プロセス、または逆浸透プロセスにおいて分離膜により水溶液を濾過するのに有用である。
さらに、本発明の分離膜は、生成物溶液の濃縮のための方法に有用であり、その方法は、生成物溶液からたとえば正浸透により水を抽出するためのフィルターハウジングまたはモジュールに取り付けた本発明の分離膜を使用し、こうしてそれに含まれる望ましい溶質のより高い最終濃度をもつ生成物溶液を調製することを含む。
【0022】
本発明の分離膜はさらに、浸透圧発電を用いて塩分濃度差電力を産生するための方法に使用でき、その方法は、その分離膜を用いて静水圧を増大させ、その静水圧の増大を電源として利用することを含む;参照:WO2007/033675およびWO2014128293(Al)。
【0023】
次いで本発明の態様を、限定ではなく例示のために、付随する例および図面を参照して記載する。ただし、本発明の開示内容を考慮して本発明の種々のさらなる側面および態様が当業者に明らかになるであろう。
【0024】
本明細書中で用いる“および/または”は、2つの特定した特徴または成分のそれぞれの、他方を含むかまたは含まない具体的開示と解釈すべきである。たとえば、“Aおよび/またはB”は、(i)A、(ii)B、および(iii)AとBのそれぞれの具体的開示であって、それぞれを個別に本明細書に述べたと同様であると解釈すべきである。
【0025】
状況からそうではないことが指示されない限り、前記に述べた特徴の記載および定義は本発明のいずれか特定の側面または態様に限定されず、記載したすべての側面および態様に等しく適用される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1.PEI自己集合ナノ構造体中におけるAQPZの円偏光二色性プロファイル。AQPZの二次構造。PEI自己集合ナノ構造体に再構成された図1は、208nmと比較して222nmに負の楕円率バンド(ellipticity band)を示し(222/208nm比=1.15)、これは大腸菌(E. coli)総脂質中で再構成されたホウレンソウアクアポリンについてレポートされたものと類似し、タンパク質がアンフォールドしていないことの指標となる(Hansen et al., Biochimica et Biophysica Acta, 1808: 2600-2607, 2011)。
図2図2.実施例11に記載する血液濾過(hemofiltration)(HF)モジュールに適用した本発明の自己集合ナノ構造体についてのコーティングプロトコルを示す模式図。I - MPD-水湿潤、IIA - 1側から乾燥するモジュール、IIB - 2側から乾燥するモジュール、III - TMC-アイソペア(isopare)との反応。FV - 流量計、RH - 湿度センサー。
図3図3.2.3mのモジュールの試験に用いた適用LPROセットアップの模式図。FV - 流量計、P - マノメーター、C - 導電率計。
図4図4.2.3mのモジュールの試験に用いた適用シングルパス(single-pass)FO試験法の模式図。凡例:FV - 流量計、P - マノメーター、C - 導電率計。
【発明を実施するための形態】
【0027】
より具体的には、本発明は本明細書に開示する自己集合ナノ構造体に関するものであり、そのナノ構造体は負に荷電しているタンパク質の存在下で正に荷電したPEIの自己集合により形成される。
【0028】
膜貫通タンパク質の例は、アクアポリン水チャネル、すなわちアクアポリンおよびアクアグリセロポリン(aquaglyceroporin)、たとえば下記に挙げるものを含めた、内在性膜タンパク質である。pH7.5では、負の値のゼータ電位値を示すプロテオリポソーム内で再構成された際に証明されるように、タンパク質は負に荷電している(Wang S et al., Membranes, 5(3): 369-384, 2015)。これは負に荷電したアミノ酸残基(アスパラギン酸およびグルタミン酸)の存在によるものである;アスパラギン酸については3.9、グルタミン酸については4.2ののpKa(Kong S et al. RSC Adv., 4: 37592-37599, 2014)。さらに、これらのタンパク質は、適正にフォールドした際には外面に位置するシステイン残基をもち、そのシステインはpH7.5で負に荷電し、Aqpを含有するZl,2-ジフィタノイル(diphytanoyl)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPhPC)プロテオリポソームについて示されたように、同様に負の値のゼータ電位を誘導する (Li et al., Fusion behaviour of aquaporin Z incorporated proteoliposomes investigated by quartz crystal microbalance with dissipation (QCM-D); Colloids and Surfaces B-biointerfaces, 111 :. 446-452, 2013)。
【0029】
本発明はまた、本明細書に開示する自己集合ナノ構造体を含む液体組成物に関するものであり、その際、膜貫通タンパク質はたとえばLDAO、OG、DDMなど適切な界面活性剤を用いて界面活性剤可溶化されている;場合により、その膜貫通タンパク質の負に荷電したアミノ酸残基を維持するためにpH緩衝剤と組み合わせ、たとえば、pH4以上に緩衝化するアクアポリンについては負に荷電したアミノ酸残基のpKaに対応するリン酸緩衝液を使用する。液体組成物の他の任意成分は、生物学的緩衝液、たとえばHEPESナトリウム塩;参照:54466 HEPESナトリウム塩,Fluka(Industriestrasse 25, CH-9471 Buchs)から、Tris緩衝液、TES、MES、およびMOPS緩衝液である。
【0030】
さらに、本発明は、開示した液体組成物を調製する方法に関するものであり、その際、たとえば、PAI、たとえばポリエチレンイミン(PEI)の溶液を、負に荷電したアミノ酸残基をもつ負に荷電したタンパク質の懸濁液と混合する。この方法で、PEI溶液が荷電タンパク質と複合体形成すると、PEI DNAおよびPEI RNA複合体について示されたように構造体が形成される(Sun et al, Molecular Dynamics Simulations of DNA/PEI Complexes: Effect of PEI Branching and Protonation State, Biophysical Journal Volume 100 June 2011 2754-2763; Mansoor M Amiji Polymeric Gene Delivery: Principles and Applications)。PEIの例は、後記に概説する線状および分枝ポリマーである。
【0031】
さらに、本発明は、分離膜、たとえば本明細書に開示する自己集合ナノ構造体を含む半透膜または選択的透過膜の形態のものに関する。分離膜は、自己集合ナノ構造体が固定化された分離層または有効層を有する多孔質基材または支持膜(たとえば、ナノ多孔質またはマイクロ多孔質の膜)を含む、濾過膜の形態であってもよい。ある場合には、多孔質支持層は、たとえばポリエステル繊維から形成された成織シートまたは不織シート上にキャストすることによってさらに強化されてもよい。
【0032】
一例として、その有効層は、界面重合により形成されて薄膜またはTFC層(たとえば架橋芳香族ポリアミド層)を形成した水選択層であってもよく、あるいは有効層/選択層は交互に正と負に荷電したナノサイズの高分子電解質(polyelectrolyte)の層の析出により形成されたもの、すなわち交互積層(layer-by-layer)(LbL)フィルムであってもよい (参照:Wang et al., Membranes, 5(3): 369-384, 2015)。
【0033】
本発明による濾過膜は、膜加工プロセス中に、自己集合ナノ構造体を含む液体組成物、たとえば構造体を形成するために必要な膜貫通タンパク質としてアクアポリン水チャネルタンパク質を含むものを添加することにより、たとえばTFC層を形成する場合には液体組成物をMPD溶液に添加することにより、あるいはLbLスキン(skin)を形成する場合には正に荷電した高分子電解質を液体に添加することにより、製造できる。
【0034】
本発明方法の一側面において、膜貫通タンパク質はアニオンチャネルタンパク質、たとえば電位依存性アニオンチャネルであってもよく、それは逆電気透析のためのイオン交換膜の製造に有用である:参照:Dlugolecki et al. (Journal of Membrane Science, 319 214-222, 2008)。
【0035】
定義および用語
本明細書中で用いる用語“膜貫通タンパク質(trans membrane protein)”(TP)は、それが自然状態で永続的に結合している生体膜の全体を貫通しているタイプの膜タンパク質である。すなわち、自然状態で膜貫通タンパク質は膜の一方側から膜の他方側まで貫通している。膜貫通タンパク質の例は、アンモニアトランスポーター、尿素トランスポーター、塩素チャネル、およびアクアポリン水チャネルである。
【0036】
本明細書中で用いる用語 “アクアポリン水チャネル(aquaporin water channel)”には、機能性である天然または合成のアクアポリンまたはアクアグリセロポリン水チャネル、たとえばアクアポリンZ(AqpZ)、GIPf、SoPIP2;l、アクアポリン1および/またはアクアポリン2が含まれる。アクアポリン水チャネルには、細菌アクアポリン、および真核生物アクアポリン、たとえば酵母アクアポリン、植物アクアポリンおよび哺乳類アクアポリン、たとえばアクアポリン9および12、ならびに関連するチャネルタンパク質、たとえばアクアグリセロポリンが含まれる。アクアポリンおよびアクアグリセロポリンの例には、下記のものが含まれる:原核生物アクアポリン、たとえばAqpZ;哺乳類アクアポリン、たとえばAqplおよびAqp2;植物アクアポリン、たとえば原形質膜内在性タンパク質(plasma intrinsic protein)(PIP)、液胞膜内在性タンパク質(tonoplast intrinsic protein)(TIP)、ノデュリン内在性タンパク質(nodulin intrinsic protein)(NIP)および小胞体内在性タンパク質(small intrinsic protein)(SIP)、たとえばSoPIP2;l、PttPIP2;5およびPtPIP2;2;酵母アクアポリン、たとえばAQY1およびAQY2;ならびにアクアグリセロポリン、たとえばGlpFおよびYfl054。アクアポリン水チャネルタンパク質は、本明細書に記載する方法、またはKarlsson et al. (FEBS Letters 537: 68-72, 2003)に記載の方法、またはJensen et al. US 2012/0080377 Alに記載の方法(たとえば、例6を参照)に従って調製できる。
【0037】
本明細書中で用いる用語“分離膜(separation membrane)”には、水、ならびに場合によりアニオンおよびカチオンを含めたある種の小サイズの溶質を他の溶質、粒子、コロイドおよび高分子から分離するために有用である、フラットシート、管状または中空繊維構造の膜が含まれる。分離膜の例は、“濾過膜”、たとえばナノ濾過(nano filtration)(NF)膜、正浸透(forward osmosis)(FO)膜および逆浸透(reverse osmosis)(RO)膜である。あるタイプの濾過膜は、“薄膜複合材料”(またはTFC)膜、しばしばナノ濾過膜および逆浸透膜として分類されるものである。TFCフラットシート膜は一般に、不織布または織布支持体上にキャストされたポリエーテルスルホンまたはポリスルホン多孔層上に界面重合によりポリアミド層を形成することによって作成される。中空繊維の内面または外面にTFC層を作成する方法の例は、WO2014/108827に開示されており、それを本明細書に援用する。ポリアミド製の排除層(rejection layer)は、アミンの水溶液と有機溶媒中における酸塩化物の溶液との界面重合により形成される。TFC膜は、WO 2013/043118 (Nanyang Technological University & Aquaporin A/S)の記載に従って製造できる。他のタイプの濾過膜は、たとえばGribova et al. (Chem. Mater., 24: 854-869, 2012)およびWang et al. (Membranes, 5(3): 369-384, 2015)に記載される交互積層(LbL)析出法により形成されるものである。たとえば、下記に概説されるように、自己集合ナノ構造体を高分子電解質多層(polyelectrolyte multilaye)(PEM)フィルムに埋め込むか、または組み込むことができる:図4, Gribova et al. (2012). Polyelectrolyte Multilayer Assemblies on Materials Surfaces: From Cell Adhesion to Tissue Engineering. Chemistry of Materials : A Publication of the American Chemical Society, 24(5), 854-869. http://doi.org/10.1021/cm2032459。
【0038】
HFモジュールは当技術分野で知られており、一般にポリエーテルスルホン(PES)繊維、または他の適切な多孔質材料、たとえばポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルイミド、ポリビニルピロリドンおよびポリアクリロニトリル(そのブレンドおよび混合物を含む)の繊維を含有し、それらはたとえば界面重合により薄膜複合材料層を形成することによって改質されている。さらに、中空繊維支持材料を製造する場合には種々のドーピング剤を使用できる。そのようなHFモジュールは、食品および飲料用に、たとえばビールおよびワインの濾過に、排水再利用およびプール水再循環を含めたある種の水および排水用に、ならびに血液透析のために、一般に用いられている。たとえば、ドイツの企業Membranaは、数千本の繊維を収容した、モジュール当たりの全表面積75平方メートルをもつ中空繊維モジュールを提供している。一般的に1~2平方メートルおよびほぼ8,000~20,000本の繊維を備えた、より小型のモジュールが、医療透析用途に一般に用いられている(Fresenius Medical Care,Gambro)。本発明の方法に使用するためのHFモジュールは、一般に、20から50kDaまで、またはたとえば30から40kDaまでの分子量カットオフ範囲をもつ、精密濾過モジュールまたはナノ濾過モジュールである。原則として、これらの市販製品はすべて、界面重合により本発明の自己集合ナノ構造体または組成物でコートして、たとえばアクアポリン水チャネルが組み込まれた薄膜複合材料層にすることができる。本発明のHFモジュールのハウジング材料は、HFモジュールに慣用される適切ないかなる材料であってもよく、たとえばポリカーボネート、ポリスルホン、POM(それらはすべて透明である)、またはポリプロピレン、ポリエチレン、PVDF、およびステンレススチールを使用できる。一般的に知られているポリウレタンまたはエポキシ系の接着剤などを用いて、繊維をHFモジュールハウジング内に密閉することができる。管状モジュール、たとえば下記に記載のモジュールも同様な方法でコートすることができる:
http://synderfiltration.com/leaming-center/articles/module-configurations-process/tubular-membranes/
【0039】
本発明に従ってTFC改質できるHFモジュールのさらに他の例は、たとえば下記の膜製造業者のウェブサイトにある:
http://www.membranafiltration.com/filtration-modules/documentation.cfrn http://www.kochmembrane.com/PDFs/KMS_Puron_Hollow_Fiber_PSH300_PSH600_PSH1800_Modul.aspx
http://www.kochmembrane.com/Membrane-Products/Hollow-Fiber/Ultrafiltration/PURON-Series.aspx
http://www.daicen.co.jp/english/membrane/kogata.html
http://www.spectrumlabs.com/filtration/hfmods.html
http://www.microdyn-nadir.com/en/Products/。
【0040】
本明細書中で用いる“薄膜複合材料(thin film composite)”または“TFC”膜は、水溶液中のアミン反応体、好ましくは芳香族アミン、たとえばジアミンまたはトリアミン、たとえばl,3-ジアミノベンゼン(m-フェニレンジアミン,>99%,たとえばSigma-Aldrichから販売されているもの)、および有機溶媒に溶解したハロゲン化アシル(アミン反応性分子としても知られる)、たとえばジ酸-またはトリ酸塩化物、好ましくは芳香族ハロゲン化アシル、たとえばベンゼン-1,3,5-トリカルボニルクロリド(CAS No.84270-84-8,トリメソイルクロリド(trimesoyl chloride)(TMC),98%,たとえばSigma-Aldrichから販売されているもの)を用いて製造でき、その際、それらの反応体は界面重合反応で結合する;参照:US Patent No: 4,277,344;それには、ポリアミドが多孔膜支持体にその支持膜(たとえばポリエーテルスルホン膜)の表面において積層したものを含む複合材料膜の形成が詳細に記載されている。ベンゼン-1,3,5-トリカルボニルクロリドを下記の溶媒に溶解する;たとえば下記を含めたC-C12炭化水素:ヘキサン(>99.9%,Fisher Chemicals)、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなど(直鎖または分枝鎖炭化水素)、または他の低芳香族の炭化水素系溶媒、たとえばIsopar(商標)G Fluid:それは石油ベースの原料から触媒の存在下に水素で処理して低臭気の流体を製造することにより製造され、その主成分にはイソアルカンが含まれる。Isopar(商標)G Fluid:化学名:炭化水素,C10-C12,イソアルカン,<2%の芳香族;CAS No:64742-48-9,化学名:ナフサ(石油),水素処理した重油(ExxonMobil Chemicalから)。反応体l,3-ジアミノベンゼンの代替には、ジアミン、たとえばヘキサメチレンジアミンなどが含まれ、反応体ベンゼン-1,3,5-トリカルボニルクロリドの代替には、当技術分野で既知のジアシルクロリド、アジポイルクロリドなどが含まれる。興味深いことに、アミン反応性分子、たとえばTMCは、界面重合反応においてPAIポリマー中のアミン基と縮合生成物またはポリマーを形成することができる;たとえば、X. Feng et al. (Journal of Membrane Science, 472: 141-153, 2014)が記載しており、彼はPEIとTMCの界面重合反応で芳香族ポリアミドの連続層をPES支持体上に形成してナノ濾過膜を作成する方法を示した。
【0041】
“交互積層(layer-by-layer)”または“LbL”析出法:1966年に初めて言及された(Her,. Colloid Sci. 21 : 569-594, 1966)、反対電荷をもつ高分子電解質の連続的交互積層(LbL)吸着は、効率的な薄膜形成法であり、材料科学およびエンジニアリングにおける慣用手法のひとつである(Decher et al., Phys. Chem. 95: 1430-1434, 1991)。高分子電解質多層の形成のための推進力は静電引力であるので、LbL法は注文に合わせた組成および調整可能な特性を備えた広範囲の用途をもつ超薄型無欠陥層の加工に適している(Joseph et al., Polym. Chem. 5: 1817-1831, 2015.)。調整可能な特性の一例は層数の制御であり、よってnmからμmまでの範囲の全厚の制御でもある(Jian et al., Adv. Mater 18: 1068-1072, 2006)。LbL高分子電解質アセンブリーは、膜分離のために、種々のサイズおよび形態をもつ多くの多孔膜基材に用いられており、それらは最初の高分子電解質層、たとえばポリ(エーテルスルホン)(PES)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(4-メチル-l-ペンテン)、ポリアミド、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(ビニルピロリドン)、アノード性アルミナを、フラットシート、管状または中空繊維構造体に吸着できる(Duong et al., J. Memb. Sci. 427: 41 1-421, 2013.)。多種多様な高分子電解質を用いて膜になる多層を形成することができ、下記の表にまとめるように、二重層の数および支持膜も変更できる(Zhang, Y. (2013)中の表2.2、すなわちZhang, P. et al (2008)に基づく表から)。
【0042】
【表1】
【0043】
用語“ポリアルキルイミン(polyalkylimine)”(PAI)には、少なくとも1つの“イミン”基(-N(H)-)を含むアルキルイミンモノマーの重合により製造されたいずれかのオリゴマーもしくはポリマーまたはその混合物が含まれる。一態様において、ポリアルキルイミンは、主鎖中にアルキル-またはアルケニル-由来の単位(たとえば、C-Cアルキル-またはアルケニル-由来の単位)を含むアミン含有ポリマーである。好ましくはPAIはイミン-由来の単位(アミン基)およびアルキル-由来の単位を含み、最も好ましくはPAIはアミン基およびアルキル-由来の単位からなる。好ましくは、PAIはポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)、ポリ(プロピル-co-エチレンイミン)、ポリ(アリルアミン)、およびその混合物からなる群から選択される。いずれの場合も、PAIは好ましくは、約500または約1,000以上、たとえば約2,000または3,000または5,000または10,000または20,000または40,000Daの重量平均分子量(M)をもつ。
【0044】
本明細書に記載する縮合ポリマーは、一般に水溶液中でアミン反応性分子とPAIを結合させることにより製造される。アミン反応性分子は、アミン/イミンと反応して共有結合またはイオン化学結合、好ましくは共有結合を形成する部分を少なくとも1つ含む分子である。望ましくは、PAIと結合する0.1または0.2から0.6または0.8または1.0または1.1または1.2または2.0または2.5または3.0までのアミン反応当量(amine-reactive equivalent)(“ARE”)のアミン反応性分子がある。望ましくは、生成物を少なくとも8のpHの溶液または実質的な溶液中の水性希釈剤から単離することができる。PAIとアミン反応性分子の縮合反応の生成物は本明細書に記載する縮合ポリマーであるが、特定の態様においては必ずしも縮合ポリマーを反応媒体から特別に単離する必要はなく、よって、特定の態様において縮合ポリマーの有用性は混合物または縮合生成物の全体である。
【0045】
本明細書中で用いる用語“ポリエチレンイミン”(PEI)には、-NHCHCH-(1つのアミン基および2つのメチレン基)で構成される反復単位をもつポリマーが含まれる:
【0046】
【化1】
【0047】
線状ポリエチレンイミンは第二級アミンを含み、これに対し、分枝ポリエチレンイミンは第一級、第二級および第三級アミン基を含む可能性がある。1,000Daまたは1,500Daまたは2,000Daまたは2500Daから4,000Daまたは5000Daまたは8,000Daまたは10,000Daまでの範囲の分子量をもつ種々の線状PEI、および800Daから2,000Daまでの範囲の分子量をもつ分枝PEIを使用できる。一般に、PEIの分枝度および分子量が増大するのに伴なって、PEIとタンパク質の間で形成される構造体中の可能なタンパク質装填量が増大し、形成される構造体のサイズがそれに伴なって一般に増大するであろう。ある用途、たとえば濾過膜の製造のためには、形成される構造体の最終サイズが好ましくは最大200nmを超えるべきではないことを考慮して、入手できる種々の分子量をもつ線状および分枝状のPEI全ライブラリーを検討することができる。PEI-タンパク質複合体について、有効濾過層に組み込むには200nm付近(250~150nm)の狭いサイズ分布が最も有望であると現在は考えられる。LbL法による濾過膜の製造のために、形成された構造体は好ましくは200nm未満、たとえば100nm未満、たとえば50、20または10nm未満であってもよい - すべて、形成された層の数、膜貫通タンパク質のフォールドした構造体の寸法、および有効層中における形成された構造体の位置(単数または複数)に依存する。
【0048】
現在、4000、5000および10000の分枝鎖(側鎖基+より利用しやすい正電荷)が良好に機能する。文献および所見によればすべての機能性ポリマーが濃度に依存した正電荷をもつ。自己集合構造体が負であるほど、DLSにより測定したその構造体は大きくなる。LDAOはきわめて希薄であり、ゼータ電位により測定して負電荷をもつ。ゼータ電位が約マイナス30にまで降下する凝集タンパク質構造体はみられなかった。コロイド系では構造体が懸濁状態に維持されている。
【0049】
略号Mは数平均分子量を意味する。それはポリマーの総重量をポリマーの分子数で割ったものを意味する。よって、Mは数分画(number fraction)に従って秤量した分子量である。略号Mは重量平均分子量を意味する。この分子量は重量分画(weight fraction)に従って秤量された。分子質量は、テトラヒドロフラン中でのゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography)(GPC)により測定できる。Mn/Mwとして定義される多分散指数は、GPCで得られた溶出曲線から決定されるであろう。
【0050】
ナノ構造体のサイズ:好ましくは、本発明のナノ構造体はナノ構造体の厳密な成分およびそれらの形成に用いた条件に応じて直径約10nmから直径200nm~約250nmまでの粒子サイズをもつ。粒子サイズがあるサイズ範囲を表わすこと、および本明細書中で引用した数値がその範囲の粒子の平均直径、最も一般的には平均流体力学的直径を表わすことは当業者に明らかであろう。本発明のナノ構造体組成物は、約250nmから約200nmまでまたはそれ未満の平均直径、ある場合には200nm未満、たとえば約180nm未満または約150nm未満の平均直径をもつナノ粒子を含む。
【0051】
膜貫通タンパク質とPAI(たとえばPEI)のモル比の例は、用いる膜貫通タンパク質、用いるPAIのタイプ、線状PAIに対比した分枝PAIの程度または量、およびナノ構造体の希望サイズに依存する。一例として、PEIおよびアクアポリン水チャネルのナノ構造体について、膜貫通タンパク質とPEIのモル比は1:200~1:2000、たとえば1:400~1:1500、たとえば1:600~1:1000であってよい。
【0052】
本発明に従って使用できる線状ポリエチレンイミンの例には下記のものが含まれる:ポリエチレンイミン,線状,764582 ALDRICH(平均Mn 5,000、PDI<1.2);ポリエチレンイミン,線状,764604 ALDRICH(平均Mn 2,500、PDI<1.2);およびポリエチレンイミン,線状,765090 ALDRICH(平均Mn 10,000、PDI<1.2)。分枝ポリエチレンイミンの例は下記のものである:ポリエチレンイミン,分枝,407819 ALDRICH(LSによる平均Mw 800,GPCによる平均Mn 600),ポリエチレンイミン,分枝,408727 ALDRICH(LSによる平均Mw 約25,000,GPCによる平均Mn 約10,000)。Polysciences,Incも、ある線状ポリエチレンイミンの提供社である:ポリアリルアミン M 約17,000,479136 ALDRICH,CAS番号 30551-89-4,線状化学式[CHCH(CHNH)]。BASF Lupasol(登録商標),参照:http://product-finder.basf.com/group/corporate/product-finder/de/brand/LUPASOL(2016年2月8日にアクセス)。デンドリマー状PEIの例は下記のものである:ポリエチレンイミン デンドリマー状5000Daおよび25000Da(Nanopartica)およびポリエチレンイミン デンドリマー状5000Da アルカン官能化(Nanopartica)。
【0053】
本明細書中で用いる用語“自己集合した(self-assembled)”は、ポリアルキレンイミン(たとえばポリエチレンイミン)成分および膜貫通タンパク質成分から形成されたナノ構造体が、成分間のイオンまたは電荷の相互作用の結果として、外部からの指令なしに組織化された(organized)秩序(ordered)構造を形成するプロセスを表わす。本発明において、“自己集合した”は“分子自己集合(molecular self-assembly)”と同義語である。自己集合した系の一般的特性は、
https://en.wikipedia.org/wiki/Self-assembly#Interactionsに記載されている[2016年2月8日にアクセス]。本発明において、ポリエチレンイミン成分と(負に)荷電したタンパク質成分との間に形成された自己集合ナノ構造体は、カチオン性荷電したポリエチレンイミン分子とタンパク質成分のアニオン性荷電したアミノ酸残基との間のイオン性相互作用により誘導されると考えられる。
【0054】
本明細書中で用いる用語“ナノ構造体”は、ナノメートル規模の粒子を表わし、いずれか特定の形状制限を伝えることを意図したものではない。特に、“ナノ構造体”にはナノスフェア、ナノチューブ、ナノクラスター、ナノロッドなどが含まれる。特定の態様において、ナノ構造体は全般的に多面体または球状の幾何学的形状をもつナノ粒子および/またはナノ粒子コアであってもよい。
【0055】
本明細書中で用いる用語“サイズ”は、自己集合ナノ構造体の流体力学直径を表わす。
【実施例
【0056】
限定ではない下記の実施例を参照して本発明をさらに説明する。
実験のセクション
装置:
AKTA Start FPLC,ラップトップと接続,Unicornオペレーティングシステムを使用.
真空流.
無菌0.45μΜ 真空フィルターカップ.
15mL PPチューブ.
略号:
CV:カラム体積.
AQP:アクアポリンZ,大腸菌に由来.
LDAO: Ν,Ν-ジメチルドデシルアミン N-オキシド(#40234,Sigma).
PAGE:ポリアクリルアミドゲル電気泳動。
【0057】
材料および化学薬品:
HisTrapゲル濾過材料(Ni Sepharose 6 Fast Flow #17-5318-03,GE Healthcare),XK16/20カラム(GE Healthcare)に既知体積で充填、またはプレパックlml、5ml HisTrapカラム.
AQP結合緩衝液:20mMリン酸ナトリウム,300mM NaCl,20mMイミダゾール,10% グリセロール,0.2% LDAO,pH8.0.
LDAO-不含 AQP結合緩衝液:20mMリン酸ナトリウム,300mM NaCl,20mMイミダゾール,10%グリセロール,pH8.0.
イミダゾール-不含 AQP結合緩衝液:20mMリン酸ナトリウム,300mM NaCl,10% グリセロール,0.2% LDAO pH8.0.
AQP溶離緩衝液:20mM リン酸ナトリウム,300mM NaCl,200mMイミダゾール,10%グリセロール,0.2% LDAO,pH8.0,ddHO。
【0058】
アクアポリンの一般的精製およびアクアポリン原液の調製
アクアポリンZの組換え産生
すべてのタイプおよびバリアントのアクアポリン水チャネルタンパク質(アクアグリセロポリンを含めて)を本発明による膜および組成物の製造に使用できる;WO2010/146365に記載された方法を参照。代表例には、ホウレンソウアクアポリンSoPIP2;lタンパク質および大腸菌由来の細菌アクアポリン-Zが含まれる。
【0059】
機能性アクアポリン-Zを、大腸菌株BL21(DE3)細菌培養において、タバコエッチウイルス開裂部位を備えたHisタグ付きタンパク質として過剰産生させた。この融合タンパク質は、264個のアミノ酸および27234DaのMwをもつ。大腸菌DH5由来のゲノムDNAを、AqpZ遺伝子の増幅源として用いた。タバコエッチウイルス(tobacco etch virus)(TEV)開裂部位を付加した遺伝子特異的プライマーを用いてAqpZ遺伝子を増幅した;AqpZのN-末端にENLYFQSN。増幅したAqpZを酵素NdeIおよびBamHIで消化し、次いで同様に消化した6-Hisタグ付き発現pET28bベクターDNAにライゲートした。陽性クローンをPCR-スクリーニングにより証明した。次いで構築体の信憑性をDNAシーケンシングにより確認した。
【0060】
大腸菌株BL21(DE3)をタンパク質の発現に用いた。50μg/mlのカナマイシンを含有するルリアブロス(Luria Broth)培地を37℃で13~16時間インキュベートし、新鮮なLBブロス中へ100倍希釈し、約1.2~1.5(600nmにおけるOD)の密度まで増殖させた。1mM IPTGの添加により35℃で3時間、組換えタンパク質の発現を誘導した後、遠心分離した。採集した細胞を、0.4mg/mlのリゾチーム、50単位のBensonaseおよび3%のn-オクチル β-D-グルコピラノシドの存在下で、氷冷した結合緩衝液(20mM Tris pH8.0,50mM NaCl,2mM β-メルカプトエタノール,10% グリセロール)に再懸濁した。試料に12,000 Paのマイクロフルイダイザー内で5サイクルの細胞溶解処理を施した。不溶性物質を40,000×gで30分間の遠心分離によりペレット化した。上清をQ-Sepharose fast flowカラム(Amersham Pharmacia)に通し、フロースルーを10採集した。フロースルー画分にNaClを300mMになるまで満たした後、予め平衡化したNi-NTAカラムに装填した。カラムを100カラム体積の洗浄緩衝液(20mM Tris pH8.0,300mM NaCl,25mMイミダゾール,2mM β-メルカプトエタノール,10% グリセロール)で洗浄して、非特異的に結合した物質を除去した。Ni-NTAアガロース結合した物質を5ベッド体積の溶離緩衝液(20mM Tris pH8.0,300mM NaCl,300mMイミダゾール,2mM β-メルカプトエタノール,10% 15 グリセロール;30mM n-オクチル β-D-グルコピラノシドを含有)で溶離した。AqpZをアニオン交換クロマトグラフィーでさらに精製した;monoQカラム(GE healthcare)。試料混合物を希釈し、Amicon濃縮装置によりメンブレンカットオフ10,000Daで濃縮して塩およびイミダゾール濃度をほぼ10mMにした後、MonoQカラムに装填した。アニオン交換クロマトグラフィーに際して用いた緩衝液は、(A)20mM Tris pH8.0,30mM OG,10%グリセロール、および(B)20mM 20 Tris pH8.0,1M NaCl,30mM OG,10%グリセロールであった。イオン交換カラムから溶出したAqpZ含有ピーク画分をプールした。精製したAqpZ抽出物を-80℃で凍結保存した。
【0061】
アクアポリンタンパク質の精製法
アクアポリンタンパク質、たとえばアクアポリンZ、たとえば大腸菌発酵からのAQPZの凍結抽出物のバッチを入手し、本発明のタンパク質-PAIナノ構造体を含む膜を製造および特性解明する実験に用いるために下記に従って処理した。
【0062】
精製実験の1日前に、AQP抽出物(-80℃のフリーザーに保存したもの)を氷上または4℃の冷蔵庫内で融解した。緩衝液およびddHOの部分を4℃で用意しておいた。氷浴上で冷却した適宜なビーカー内でマグネチックスティックによりAQP抽出物を撹拌して、沈殿をいずれも溶解した。1.5体積の予冷したLDAO-不含 AQP結合緩衝液を1体積の溶解抽出物に徐々に添加し(抽出管および濾過カップをリンスするためにさらに0.5体積の緩衝液を使用)、十分に混合し、無菌0.45μΜ真空フィルターカップにより濾過した。過度の起泡を避けるためにフィルターカップに真空を施し、濾液を氷上に置いて2時間以内に使用した。
【0063】
無菌水に続いてAQP結合緩衝液で室温においてHistrapカラムを平衡化した。流速を1ml/分(1mLプレパックカラムについて)または2.5ml/分(5mlプレパックカラムおよびセルフパックカラムについて)に設定した。3倍希釈した抽出物(氷水浴上で)をHistrapカラムにAKTAプログラムを用いて装填した。流速を1ml/分(1mLプレパックカラムについて)または2.5ml/分(5mLプレパックカラムおよびセルフパックカラムについて)に設定した。装填体積は30ml/ml(樹脂)未満であった。抽出物フロースルーを氷水浴で採集し、その後の使用のために4℃で保存した。カラムを10CV(カラム体積)の氷冷AQP結合緩衝液で洗浄した。流速を2.5ml/分(5mlプレパックカラムおよびセルフパックカラムについて)に設定し、あるいは1mlプレパックカラムについて1ml/分に設定した。AQPタンパク質を氷冷AQP溶離緩衝液(10カラム体積)で流速2.5ml/分においてAKTAプログラムを用いて溶離した。分画体積を10mlに設定し、0.5~1 CV後に15mLのPPチューブ内への採集を開始した。
【0064】
溶出画分に蓋をして氷上または4℃に保存した。AQPの純度およびコンホメーションを、それぞれ変性およびネイティブPAGE(native PAGE)分析により調べた。タンパク質濃度をNanodropにより測定した。抽出物フロースルーを必要に応じて2および3回処理して、適切な品質のAQP組成物を調製することができる。
【0065】
AQP品質分析に合格すると、2% LDAOを含有する氷冷したイミダゾール-不含AQP結合緩衝液を添加することにより、タンパク質濃度を5mg/mlに調整することができる。最後に、0.45μΜ滅菌カップで濾過することによりAQPを滅菌し、1カ月以内に使用するために4℃の冷蔵庫に保存するか、あるいは-80℃のフリーザー内で保存した。
【0066】
実施例1.PEI-アクアポリン-Zナノ粒子の製造およびストップトフロー(Stopped Flow)試験
4000DaのMWをもつポリ(エチレンイミン)(線状)(PEI)をSigma Aldrichから購入し、受け取ったまま何ら他の精製を行なわずに使用した。8gのNaCl、0.2gのKCl、1.44gのNaHPOおよび0.24gのKHPOを800mLのMilliQ精製HOに溶解し、HC1でpHを7.2に調整し、最終体積を1Lにすることにより、10mMリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.2,136mM NaCl,2.6mM KCl)を調製した。N,N-ジメチルドデシルアミン N-オキシドBioXtra(ラウリルジメチルアミン N-オキシド)(99%の純度)(LDAO)をSigma Aldrichから購入した。PEIベースの自己集合構造体を直接溶解法により製造した。そのためにまず、500mgのPEI粉末を100mLのPBS(pH7.2)に溶解することにより、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)中5mg/mLのPEIを100ml調製した。さらに、5mg/mLのPEI 100mLを、5mg/mLのアクアポリンZ(AQPZ)精製原液(2% LDAO中)からの0.3mLとしての1.5mgと直接混合した;2成分混合物のAQPZ/PEIモル比1/800に相当する。PEI-AQPZ混合物を170rpm(毎分回転数)で一夜、撹拌した;20時間を超えない(ただし、12時間未満ではない)。
【0067】
撹拌した後、翌日、混合物を100mLのガラスボトルに移し、室温に保持した。この混合物(PEI-AQPZベースの自己集合構造体の液体配合物 - または組成物)は2カ月以上保存できる。貯蔵用ガラスボトルへ移した後、PEI-AQPZ自己集合構造体のサイズおよび透過率を、ZetaSizer NanoZs(Malvernから)を用いる動的光散乱およびBio-Logic SFM 300を用いるストップトフローにより測定した。
【0068】
PEI-AQPZベースの自己集合構造体のサイズは、114±20nm(80%)の集団と測定され、一方、20%はほぼ147±15nmのサイズをもっていた。加えて、ゼータ電位はPEI-AQPZ自己集合構造体について18.4mVと測定され、これはこの構造体の正電荷の指標となる。
【0069】
オスモライト(osmolyte)としての0.3M NaCl中でのストップトフロー測定から得られた透過率データにより高速拡散係数(fast diffusion coefficient)Kiは1605 s-1になり、これは浸透圧透過率(osmotic permeability)Pf 22μm/secおよび透過率11 LMH/バール(L/m/h)/バール)に相当する。
【0070】
5mLを30から100℃までの範囲の種々の温度で10分間加温することによりPEIベースの自己集合構造体の温度安定性を測定し、さらにそれらのサイズおよび水透過率を動的光散乱およびストップトフロー測定により測定した。
【0071】
熱処理後の自己集合構造体のサイズを表1に示す。
表1. 熱処理後のPEI自己集合ポリマー構造体を含む水性組成物中におけるナノ粒子のサイズ分布
【0072】
【表2】
【0073】
表1から分かるように、60℃以上ではほぼ10nmのわずかな低下がみられるが、形成された構造体のサイズは温度曝露により影響されない。この低下は、有効層または濾過膜に組み込まれた場合、ナノ構造体の機能にも、それらにおいて複合体形成したアクアポリン水チャネルにも、影響を及ぼさない。
【0074】
AQPZの存在下で形成されたナノ粒子の熱処理後の透過率をストップトフロー測定から決定した。
表2. 0.3M NaCl中における組成物PEI-AQPZのストップトフロー結果
【0075】
【表3】
【0076】
この特定の実験の水透過率の観点からは、100℃まで有意の変化はみられず、透過率および水フラックスのわずかな変動は共にサイズ変化と相関する。
実施例2.AQP9およびAQP12を含むPEIナノ構造体の製造および試験
同様な方法で、ヒトアクアポリン、より具体的にはアクアポリン-9およびアクアポリン-12を含むPEIベースの自己集合構造体を直接溶解法により製造した。そのために、まず、500mgのPEI粉末を100mLのPBS(pH7.2)に溶解することにより、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)中5mg/mLのPEIを100ml調製した。さらに、5mg/mLのPEI 100mLを、10mg/mL アクアポリン-9からの0.15mL、および9mg/mL アクアポリン-12からの0.17mL(2% LDAO中の精製原液)としての1.5mgと直接混合した;これは2成分混合物のAQP/PEIモル比1/800に相当する。PEI-AQP混合物を170rpmで一夜、撹拌した;20時間を超えない(ただし、12時間未満ではない)。
【0077】
翌日撹拌した後、混合物を100mLのガラスボトルに移し、室温に保持し、その翌日に測定した。PEI-AQPZ自己集合構造体のサイズおよび透過率を、ZetaSizer NanoZs(Malvernから)を用いる動的光散乱およびBio-Logic SFM 300を用いるストップトフローにより測定した。
【0078】
PEI-AQP9ベースの自己集合構造体のサイズは、91±15nm(85%)の集団と測定され、一方、15%はほぼ325±32nmのサイズをもっていた。加えて、ゼータ電位はPEI-AQP自己集合構造体について17.9mVと測定され、これは構造体の正電荷の指標となる。
【0079】
オスモライトとしての0.3M NaCl中でのストップトフロー測定から得られた透過率データにより高速拡散係数Kiは1326 s-1になる。
PEI-AQP12ベースの自己集合構造体のサイズは、244±36nm(92%)の集団と測定され、一方、8%はほぼ3±2nmのサイズをもっていた。加えて、ゼータ電位はPEI-AQP自己集合構造体について17.3mVと測定され、これは構造体の正電荷の指標となる。
【0080】
オスモライトとしての0.3M NaCl中でのストップトフロー測定から得られた透過率データにより高速拡散係数Kiは1432 s-1になる。
実施例3.PEI 800 bおよび1000 bを含むPEIナノ構造体の製造および試験
PEI 4000Daの場合と同様な方法で、AQPZならびにPEI 800分枝鎖および10000分枝鎖を含む自己集合構造体を直接溶解法により製造した。そのために、まず、500mgのPEI 800分枝鎖または10000分枝鎖の粉末を100mLのPBS(pH7.2)に溶解することにより、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)中5mg/mLのPEI 800分枝鎖または10000分枝鎖を100ml調製した。さらに、5mg/mLのPEI 100mLを、5mg/mLのAqpZ精製原液(2% LDAO中)からの0.3mLとしての1.5mgと直接混合した;これは2成分混合物のAQP/PEIモル比1/800に相当する。PEI-AQP混合物を170rpmで一夜、撹拌した;20時間を超えない(ただし、12時間未満ではない)。翌日撹拌した後、混合物を100mLのガラスボトルに移し、室温に保持し、その翌日に測定した。PEI-AQPZ自己集合構造体のサイズおよび透過率を、ZetaSizer NanoZs(Malvernから)を用いる動的光散乱およびBio-Logic SFM 300を用いるストップトフローにより測定した。
【0081】
PEI 800 b-AQPZベースの自己集合構造体のサイズは、180±23nm(100%)の集団と測定された。加えて、ゼータ電位はPEI-AQP自己集合構造体について14mVと測定され、これは構造体の正電荷の指標となる。
【0082】
オスモライトとしての0.3M NaCl中でのストップトフロー測定から得られた透過率データにより高速拡散係数Kiは747 s-1になる。
PEI 1000 b-AQPZベースの自己集合構造体のサイズは、220±37nm(100%)の集団と測定された。加えて、ゼータ電位はPEI-AQP自己集合構造体について4mVと測定され、これは構造体の正電荷の指標となる。
【0083】
オスモライトとしての0.3M NaCl中でのストップトフロー測定から得られた透過率データにより高速拡散係数Kiは1516 s-1になる。
5mLを30から100℃までの範囲の種々の温度で10分間加温することによりPEIベースの自己集合構造体の温度安定性を測定し、さらにそれらのサイズおよび水透過率を動的光散乱およびストップトフロー測定により測定した。PEI 600 bベースのAQPZ自己集合ナノ構造体については、サイズは50℃まで変化せず、50℃からは200nm以上増大し、一方でKi値の変動は100 s-1未満である。PEI 10000 bベースのAQPZ自己集合ナノ構造体については、サイズは40℃まで変化せず、40℃からは150nm以上増大し、一方でKi値の変動は100 s-1未満である。
【0084】
実施例4.蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy)
タンパク質上の第一級アミンへのN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS-エステル)カップリング反応により、膜貫通タンパク質AQPZの蛍光標識を実施した。AQPZタンパク質のN末端は親水性アミノ酸残基のみを含む。したがって、それは水相での標識反応に利用でき、膜タンパク質の疎水性部分に埋没していない。この場合、蛍光色素Oregon Green 488(OG488)を用いた。
【0085】
標識化のために(参照:Itel et al., Nano. Lett., 15 (6): 3871-3878, 2015)、1mgのAQPZ原液を10倍モル過剰のOregon Green 488スクシンイミジルエステル(OG488,DMSO中10mg/ml)と混合し、氷上で撹拌しながら3時間、暗所でインキュベートした。反応しなかった色素を2000Daフィルターを通した遠心分離により除去した後、標識されたAQPZをさらに線状PEI 4000Da自己集合ナノ構造体における再構成に用いた。分子の明度から、PEIナノ構造体当たりのAQPZテトラマーの数は8±1と判定された。遊離タンパク質は検出されなかった。PEI 600 bおよび10000 bについて、PEIナノ構造体当たりのAQPZテトラマーの数は4±1(PEI 600 b)および5±2(PEI 1000 b)と判定された。
【0086】
実施例5.円偏光二色性による特性分析
形成された自己集合ナノ構造体のタンパク質コンホメーションは、円偏光二色性(circular dichroism)(CD)により特性分析することができる。CDは、タンパク質の機能性を決定するそれの二次構造(α-ヘリックスおよびβシート)およびフォールディング特性の迅速判定に適した方法である。CDは分光分析法であり、分子のCDスペクトルをある波長範囲にわたって測定する(Greenfield NJ, Nat Protoc. 2006; 1(6): 2876-2890)。そのために、実施例1に従って製造したPEI-AQPZベースの自己集合構造体の液体配合物を測定キュベットに入れ、CDスペクトルを記録し、組み込まれたAQPZの二次構造をそれの機能性に関して評価するために分析した。図1は、PEI自己集合ナノ構造体中におけるAQPZの円偏光二色性プロファイルを示す。AQPZの二次構造;PEI自己集合ナノ構造体に再構成された図1は、208nmと比較して222nmに負の楕円率バンドを示し(222/208nm比=1.15)、これは大腸菌総脂質中で再構成されたホウレンソウアクアポリンについてレポートされたものと類似し、タンパク質がアンフォールドしていないことの指標となる(Hansen et al., Biochimica et Biophysica Acta, 1808: 2600-2607, 2011)。
【0087】
実施例6.ハンドメイドTFC FO濾過膜の製造
これらの膜を下記に概説する工程に従って作成した:
a)MPDをMilliQ水に溶解して、2.5%(W/W)濃度にする;後記を参照:
b)TMCをIsoparに溶解して、0.15% W/Vの最終濃度にする;
c)長方形の膜、たとえば5.5cm×11cmのMembrana 1FPH PES膜を、約20mL/m(膜)のMPD溶液で覆い、30秒間、穏やかに撹拌しておく;
d)非有効側(裏側)を実験室用ドライイングペーパー(たとえば、Kim-Wipe)で5~10秒間、乾かす;
e)膜をガラスプレートに乗せ、表面が艶のある状態から艶のない状態になるまでNで穏やかに乾燥させる;
f)膜の縁の周りにテープを貼る(約1mm);
g)膜を貼りつけたガラスプレートをガラスまたは金属製の容器に入れ、約155mL/m(膜)のTMC-Isoparを一端に添加し、前後に30秒間、穏やかに搖動する;
h)ガラスプレートをリザバーから取り出し、Nで10~15秒間乾燥させる;
テープを取り除いた後、新たに形成された有効側を上にして膜をMilliQへ移し、必要ならば後続工程に際して湿潤状態に維持することができる。
【0088】
MPD溶液計算:
1.05gのMPDを秤り分け、35mLのMilliQに溶解する。前記で製造した7mLのPEI-AQPZ組成物(3mgのPEI/mL)を添加する。可能な限り溶液を不活性ガス(ArまたはN)で覆った状態に維持する。
【0089】
PEI-AQPZを含む5.5cm×11cmサイズのTFC膜を、次いでSterlitech CF042 FOセル(www.sterlitech.com)内に取り付け、60分間の試験(5枚の膜)および900分間の試験(4枚の膜)を行なう;FOモードで、フィード(feed)用としての脱イオン(MilliQ)水およびドロー(draw)用としての1M NaCl水溶液をフィードおよびドロー速度268mL/分で使用。結果を下記の表3に示す;再現性のある高い水フラックス,Jw(LMH L/m/h)、低い逆方向の塩排除(reverse salt rejection),Js(GMH=g/m/h)、およびきわめて高いフィードトレーサー5μΜカルセイン(calcein)の排除率,Rca %。
【0090】
表3
【0091】
【表4】
【0092】
min : 分
実施例7.パイロットマシーン製のFO濾過膜
パイロットコーティングマシーンを用いてTFC層をPES支持膜上に形成した:
a)MPDをMilliQ水に溶解して2.5%(W/W)濃度にすることにより、MPD/水溶液を調製した;
b)6.25gのMPD、10mLの組成物、240mLのDi水を溶解することにより、アクアポリン/MPD/水溶液を調製した;
c)TMCをIsoparに溶解して、最終濃度0.15% W/Vにした;
d)Membrana 1FPH支持膜のロールをマシーンの巻出しユニットに設置した;
e)膜をコーティングに通した;
f)洗浄浴にDi水を満たした;
g)コーティングプロセスを実行した(0.6m/分で):
- 膜を巻出し機から繰り出した;
- 次いでフーラード浴(foulard bath)内のMPD/水に浸漬した;
- 表面水をエアナイフ(0.5バールの空気)により除去した;
- アクアポリン/MPD/水溶液を、スロットダイを通して1.2mL/分の送出速度で適用した;
- 界面重合前に確実に液滴の無い表面になるように、表面水をエアナイフ(0.75バール)により除去した;
- TMC/Isoparを、スロットダイを通して4.2mL/分で適用して、界面重合を開始した;
- Isoparを膜の表面から周囲空気で乾燥除去した;
- 残留化学薬品を洗浄浴内で除去した;
- コートされた膜を、有効側がロールの方を向いた状態で巻き取った;
h)コートされた膜に最終乾燥工程5を施し、コートされた膜を5.5cm×11cmの形状に切断し、個別にSterlitech CF042 FOセル内に取り付け、DI水中の5μΜカルセインフィード溶液および1M NaClドロー溶液で200分間操作した。標準偏差付き平均結果を表4に示す。
【0093】
表4
【0094】
【表5】
【0095】
Rcalcein : カルセイン排除率
実施例8.パイロットマシーン製のFO高フラックス濾過膜および高排除濾過膜
実施例4に記載したものと同様な方法を用いて、それぞれ高い水フラックスおよび高い塩排除に適合した不織ポリプロピレン裏層をもつ2タイプの微孔性PES膜上にTFC層を作成した。第1ロールの微孔性PES膜をパイロットマシーンの一端に取り付け、連続工程を通して移動させ、界面重合層を上に作成した。7mL/100mLのPEI-AQP組成物(実施例1に従って製造したもの)、3%のε-カプロラクタム、および0.1%のSDSを含む2% MPD水溶液を収容したタンクに、この膜を通した。この膜を次いで短時間、圧縮空気乾燥させ、Isopar溶液中の0.20%のTMCとの反応のために上部に取り付けたスロットダイを通過させて、有効トップ層を形成した。
【0096】
第2ロールの微孔性PES膜をパイロットマシーンの一端に取り付け、界面重合層を上に作成するためのタンクを通して移動させた。そのタンクには7mL/100mLのPEI-AQP組成物(実施例1に従って製造したもの)を含む2.75% MPD水溶液が収容されていた。この膜を次いで短時間、圧縮空気乾燥させ、Isopar溶液中の0.25%のTMCとの反応のために上部に取り付けたスロットダイを通過させて、有効トップ層を形成した。製造した2タイプの膜の断片を5.5cm×11cmの長方形に切断し、次いでSterlitech CF042チャンバー内に取り付け、PROモードで、フィードとしての脱イオン水およびドローとしての1M NaCl水溶液ならびに268mL/分のフィードおよびドロー速度を用いる60分間の試験を5回行なった。結果を下記の表5に示す;高フラックス膜については許容できるほど低い逆方向塩フラックスで一貫して高い水フラックスが測定され、高排除膜については許容できるほど高い水フラックスで一貫して低い逆方向塩フラックスが測定された。
【0097】
表5
【0098】
【表6】
【0099】
実施例9.低圧ROのためのハンドメイドTFC PEI-AQPZ濾過膜
膜を下記に概説する工程に従って作成した:
a)支持膜、たとえば指状(fingerlike)の構造をもつサイズ5.5cm×11cmの不織PESを用意する;
b)3wt%のMPDを3wt%のε-カプロラクタム、0.5wt%のNMP、および93.5wt%のDI水と混合して、溶液を得る;
c)0.1mg/mLのPEI-AQPZ自己集合ナノ構造体を添加して、懸濁液を得る;
d)c)からの懸濁液を2時間インキュベートする;
e)0.09wt%のTMC、0.9wt%のアセトン、および99.01wt%のIsoparからTMC溶液を調製する;
f)支持膜を懸濁液d)中で30秒間、ディップコートする;
g)エアナイフによる乾燥を適用する;
h)e)からのTMC溶液を界面重合のために添加する;
i)続いてドラフトチャンバー内で2分間乾燥させる;
場合により下記の工程に従ってTFC膜を後処理する:
4分間,65℃,10%クエン酸
2分間,DI水
1分間,5% IPA
2分間,DI水
1分間,0.1% NaOCl
2分間,DI水
1分間,0.2% NaHSO
4つの膜を作成し、Sterlitech CF042 ROセル(www.sterlitech.com)内に取り付け、5バールで500ppm NaClをフィードとして用いて60分間操作した。結果を表6に示す。RO性能は申し分なく良好でかつ再現性が高いことが分かる。
【0100】
表6
【0101】
【表7】
【0102】
実施例10.高排除濾過のためのハンドメイドLbL膜
LbL高分子電解質手法を用いて、PES膜(支持基材として)およびPEI/PAA(ポリエチレンイミン/ポリアクリル酸)高分子電解質層をベースとし、アクアポリンを含むPEIベースの自己集合ナノ構造体を組み込んだ濾過膜を製造することができる。
【0103】
工程1.不織支持体上の負に荷電したPESを大気圧プラズマ処理(atmospheric plasma treatment)により選択および製造する;
工程2.基材の負に荷電した表面に静電引力によりPEIを吸着させる;PEI溶液(実施例1に従って製造したPEI-AQPZベースの自己集合構造体のPEI配合物と同様な濃度 - または層の希望する最終厚に応じた異なる濃度)に荷電PESを浸漬することによる;
工程3.表面に強く結合していない過剰のPEI分子を除去するために、基材表面を脱イオン水で洗浄する;
工程4.PEIで被覆されたPESをPAA溶液(PEI濃度と同等なモル濃度)に浸漬する;その際、負電荷が表面に吸着されるであろう;
工程5.過剰のPAA分子を除去するために、PEIおよびPAAで被覆されたPES表面を脱イオン水で洗浄する;
工程6.目標数の多層-2に達するまで工程2~5を繰り返す;
工程7.PAA被覆されたPES多層構造体をPEI-AQPZ自己集合構造体の配合物(実施例1で製造したもの;そのまま使用)に浸漬する;
工程8.脱イオン水で洗浄する;
工程9.PEI/アクアポリンPAA被覆されたPES多層構造体をPAA溶液に浸漬する;
他の電解質対が好ましい場合も、膜を製造するために同様な方法が用いられるであろう。
【0104】
この例においては、電解質多層を組み立てるために用いたポリカチオンの代わりに、最終工程でPEI-AQPZ自己集合構造体の配合物を使用する。あるいは、LbL層のうちの幾つかを形成する際に、ポリカチオンの代わりにPEI-AQPZ自己集合構造体の配合物を使用できる。
【0105】
実施例11.中空繊維(HF)血液透析モジュールのコーティング
2.3mのHF血液透析モジュールのためのコーティングプロトコルには下記の3つの主工程を用いた:I - MPD-水湿潤、II - モジュール乾燥、およびIII - TMC-isoparとの反応。図2に示すように、モジュール乾燥工程(IIの工程)に際して、モジュールをここでは水平に配置し、それによってモジュール内での水の重力移動を制限することができ、それはより長いモジュールについてはより顕著であろう。しかし、モジュール#74および#75は工程IIに際して垂直配置を用いてコーティングされた。さらに、シェル接続部を閉じる代わりにシェル側部を真空ポンプ(または蠕動ポンプ)に接続し、それによってシェル側部にわずかな真空が形成され、蓄積した水を集める。いずれか特定の理論により拘束されることを望まないが、シェル側部に真空を適用することによって繊維の内腔がモジュールに沿ってより均一に乾燥することを本発明者らは見出した。モジュール内に形成された真空によって繊維の内腔から大部分の水が除去され(シェル側から)、乾燥のために適用された空気は表面に吸着された水のみを除去する。この原理は、モジュールシェルを垂直または水平の配置に保持するのとは無関係に利用できる;表7の性能結果を参照されたい。
【0106】
種々の濃度のMPD水溶液を試験した;参照:表7。MPD溶液に、アクアポリン-Zの水性配合物、たとえば7mL/100mLのPEI-AQP組成物(実施例1に従って製造したもの)を、任意選択的な添加剤と一緒に添加した;参照:実施例8。さらに、種々の濃度のTMC(有機相)を試験した。すべての組合わせが良好に作動した;参照:表7。
【0107】
本明細書に記載する方法によるHFモジュールの製造に用いたアクアポリン-Zのさらに他の水性配合物は、界面活性剤可溶化したアクアポリンを含むPMOXA24-PDMS65+PMOXA32-PDMS65 ジブロックコポリマーブレンドから形成されたベシクルを含む。そのベシクルは下記の方法に従って製造される:
主ベシクル形成材料:
ポリ(2-メチルオキサゾリン)-ブロック-ポリ(ジメチルシロキサン) ジブロックコポリマー PDMS65PMOXA24(DB1);粘稠な白色液体として購入し、受け取った状態のまま使用;
ポリ(2-メチルオキサゾリン)-ブロック-ポリ(ジメチルシロキサン) ジブロックコポリマー PDMS65PMOXA32(DB2);粘稠な白色液体として購入し、受け取った状態のまま使用;
添加剤として:
ポリ(2-メチルオキサゾリン)-ブロック-ポリ(ジメチルシロキサン)-ブロック-ポリ-(2-メチルオキサゾリン) トリブロックコポリマー PMOXA12PDMS65PMOXA12(TB);粘稠な白色液体として購入し、受け取った状態のまま疎水剤として使用;およびビス(3-アミノプロピル)末端基付きポリ(ジメチルシロキサン);2500Daの分子量をもち、液体としてSigma Aldrichから購入し、受け取った状態のまま架橋剤として使用;
リン酸緩衝液10mM(PBS)(pH7.2,136mM NaCl,2.6mM KCl)は、8gのNaCl、0.2gのKCl、1.44gのNaHPOおよび0.24gのKHPOを800mLのMiliQ精製HOに溶解し、HCLでpHを7.2に調整し、最後に体積を1Lにすることにより調製された。さらなる界面活性剤添加剤Ν,Ν-ジメチルドデシルアミン N-オキシドBioXtra(ラウリルジメチルアミン N-オキシド)(LDAO)はCarbosynthから購入され、Poloxamer P123はSigma Aldrichから水中30%溶液として購入された;
AqpZ 5mg/mL,0.2% LDAO中の原液(前記に従って精製)。
【0108】
製造方法
1. 15mLのP123を1LのPBSに溶解することにより、P123溶液を調製する;
2. 5gのLDAOを100mLのPBSに溶解することにより、PBS中の5% LDAO溶液を調製する;
3. 調製容器内にDB1を秤量して、0.5gのDB1/L(調製配合物)の濃度になるようにする;
4. 同じ調製容器内にDB1を秤量して、0.5gのDB2/L(調製配合物)の濃度になるようにする(DB1とDB2の重量比1:1);
5. 同じ調製容器内で、TB疎水性添加剤を添加して0.12gのTB/L(調製配合物)の濃度になるようにする;
6. 工程2で調製した5% LDAOを100mL/L(調製した配合物)の割合で添加する;
7. ビス(3-アミノプロピル)末端基付きポリ(ジメチルシロキサン)を添加して、0.1%の最終濃度にする;
8. AqpZ原液を添加して、5mg/L(調製配合物)の濃度および1/400のタンパク質:ポリマー比になるようにする;
9. 工程6および8で添加したLDAO、ビス(3-アミノプロピル)末端基付きポリ(ジメチルシロキサン)およびAQPZの体積を差し引いて、工程1で調製したポロキサマーP123溶液を添加して、調製配合物の目的体積になるようにする;
10. 工程10からの混合物を170rpmで一夜(20時間を超えない)、室温で撹拌して、配合物を得る;
11. 翌朝、工程1~9のシーケンスで得られる調製された実施例3の配合物を採取し、それを200nm細孔サイズのフィルターにより濾過してそれを滅菌し、密閉シールしたボトルに入れ、12か月を超えない期間、室温で保存する。
【0109】
このアクアポリン-Z配合物を用いてモジュール#72および#73を製造した。性能結果を表7に示す。試験した他のすべてのモジュールを、7mL/100mL(ベシクル)のAQP組成物を用いてコートした。
【0110】
さらに、膜間圧力差(transmembrane pressure)が比較的低いため毛管力が存在し、細孔を水で満たした状態に保持するであろうから、水を繊維細孔から除去することはできない。これらの毛管力の存在により支持体から水相を完全に除去するのが阻止され、よって工程IIIにおいて膜の表面で界面重合を起こさせることができる。TFC層をこの方法でコートすることにより、表7に挙げるようにFO試験は申し分なく良好な結果を伴なうことができた。
【0111】
形成されたHF TFC膜の正浸透作用性能を、界面重合プロセスで形成されたポリアミド層の特徴により判定した。そのような層の特性を調整するために、水相と有機相の組成を変動させた。目標は、逆方向塩フラックスJ<4g/m hおよび可能な限り低い相対的逆方向塩フラックスJ/Jを備えた安定なTFC/アクアポリンInside(商標)コーティングを得ることであった。0.6mのモジュールをコートするために用いた標準プロトコルにおいて、2.5%のMPDおよび0,15%のTMCを用いた。調べたMPDの濃度は2.5%および5%であった。TMCの濃度を0.1%から0.5%まで変動させた。その得られたTFC膜のFO性能を表7に挙げる。
【0112】
表7に示すように、TFC/アクアポリンInside(商標)コーティングは、列記したすべての膜、ならびに種々の濃度のMPDおよびTMC反応体について成功した。一般に、MPDの濃度が増大するのに伴なって、Jは増大し、Jはわずかに低減し、それは必ずしも層の塩保持性がより高いこととは関係なく、膜を通る水の対流フラックスがより大きいことと関係する。TMC濃度を0.1%から0.15%および0.2%にまで増大させることによってJは低減し、これは層がより大きな架橋度およびより大きな塩排除度を獲得することを意味する。さらに、より高いTMC濃度増大はJのさらなる低減をもたらした。しかし、Jと共にJも低減する。その挙動は、層厚増大が塩排除に向かう層選択性増大を伴わないことを示唆する。比較のために、真空を適用せずに2つのモジュール(#15および#16)をコートすると、漏出性の膜が得られた。乾燥工程IIに際して垂直配置を用いた場合も(参照:図2)、真空を適用する限りは許容できる性能が得られた;参照:表7に示すモジュール#73および74のデータ。
【0113】
表7
【0114】
【表8】
【0115】
horizontal : 水平; vertical : 垂直
with vacuum : 真空を付与する; without vacuum : 真空を付与しない
実施例12.自己集合PEI/アクアポリン-Zナノ構造体を含む選択層で改質された繊維を有する一組のHFモジュールの低圧逆浸透(Low Pressure Reverse Osmosis)(LPRO)性能試験
多数の2.3m xevonta低フラックス透析器(HFモジュール)をB. Braun Avitum AG(Schwarzenberger Weg 73-79, 34212 Melsungen, Germany)から購入し、その後、それらの内部繊維表面を本明細書の記載に従って改質する処理をした;参照:https://www.bbraun.com/content/dam/catalog/bbraun/bbraunProductCatalog/CW_01_NEW/en-01/b43/brochure-xevonta.pdf.bb-.25584796/brochure-xevonta.pdf、および前記の実施例11。
【0116】
フィードとして500ppm NaCl溶液を用いる4バールの印加圧力での低圧逆浸透(LPRO,水道水逆浸透(tap water reverse osmosis)TWROとも呼ばれる)操作に改質モジュールを用いた。
【0117】
膜試験を500ppm NaClで実施する。この濃度を得るために、10gのNaCl(99%)を20Lの水に溶解する。少なくとも15分間混合した後、良好に調整された溶液の導電率は1100±100μS/cmのはずである。図3は2.3mのモジュールの試験に用いた適用LPROセットアップの模式図を示す。FV - 流量計、P - マノメーター、C - 導電率計。
【0118】
用いたセットアップのの模式図を図3に示す。この試験構成を、その後、ラック内で同一フィード溶液に接続して試験した1ないし最大8までのモジュールに適用した。試験前に、すべてのモジュールをRO水(<10μS/cm)で少なくとも1時間フラッシした。この後、500ppmを含有するフィード溶液をモジュール当たり流速300~500mL/分でモジュールに導入した。濾過の圧力(1バール)はバルブ3を用いて調整された(参照:図3)。次いでフィード溶液の導入および少なくとも1時間の新たな圧力調整の後、システムは平衡化し、保持液および透過液をフィードリザバーへ戻し(参照:図3,バルブ1を閉じ、バルブ2を開く)、試料を採集しなかった。システムが平衡化した後、透過液をリザパーへ再循環せず、その後、バルブ2を閉じてバルブ1を開くことにより試料採集を開始した(参照:図3)。試料を採集している間、採集時間を測定し、通常は10から30秒までの範囲であった。それぞれの透過液試料の採集体積をメスシリンダーで測定し、それと共に透過液の導電率を測定した。透過液の試料を同一圧力で4回採集した。この後、圧力を2バールに高め、バルブ1を閉じてバルブ2を開くことにより透過液をフィードに再循環した(参照:図l)。再びシステムを少なくとも約1時間、平衡化した。1~4バールでの測定のためにこの操作を繰り返した。測定した試料の採集時間および体積により、水透過係数Aを方程式1に従って計算することができた:
【0119】
【数1】
【0120】
式中:
Aは、水透過係数(L/m-2-1bar-1)である;
△Vは、採集した透過液の体積(L)である;
△tは、透過液採集の時間(h)である;
△Pは、膜間圧力差(バール)である;
πは、フィードの浸透圧(バール)である。
【0121】
塩のプロセス排除率(process rejection)を方程式2に従って計算した:
【0122】
【数2】
【0123】
式中:
NaClは、塩のプロセス排除率(-)である;
κは、フィードの導電率(μS/cm)である;
κは、透過液の導電率(μS/cm)である。
【0124】
塩の透過係数Bを方程式3から計算する:
【0125】
【数3】
【0126】
式中:
Bは、塩透過係数(L/m-2-1)である;
NaClは、塩のプロセス排除率(-)である;
は、水フラックス(L/m-2-1)である;
kは、フィード側からの物質移動係数(mass transfer coefficient)(L/m-2-1)である。
【0127】
性能結果を下記の表8に示す。これらの結果は、飲用水のための一般的に受け入れられている基準と一致する良好な再現性および性能値を示す。
表8
【0128】
【表9】
【0129】
aver : 平均; std : 標準偏差
実施例13.自己集合PEI/アクアポリン-Zナノ構造体を含む選択層で改質された繊維を含む一組のHFモジュールのシングルパスモードのFO試験
前記の実施例に従って一連の4つのHFモジュールを製造した。1M NaClをドロー溶液として標準的な膜試験を実施し、そのように調製した溶液の導電率は使用前に約92.5±1.5mS/cmでなければならない。標準化導電率<10μS/cmをもつRO水をそれ以上処理することなくフィードとして使用する。図4は、2.3mのモジュールの試験に適用したシングルパス試験法の模式図である。凡例:FV - 流量計、P - マノメーター、C - 導電率計。
【0130】
フィード溶液を60L/hでモジュールに導入し、それに対しドロー溶液を25L/hで導入した。ドローとフィードを向流で連結した。すべての入口からのフィード溶液とドロー溶液の圧力をモニターした。試験をフィード側から0.2バールの平均TMPで実施した。試験を1時間実施した。フィード溶液(ここでは:RO水)およびドロー溶液(1M NaCl)を再循環しなかった。代わりに、フィード溶液の濃縮液を秤上に採集した。方程式4に従って膜を通るフラックスを計算するために、モジュールからのフィードアウト流量(feed out-flow)を計算し、モジュールへのフィードイン流量(feed in-flow)から差し引いた:
【0131】
【数4】
【0132】
式中:
は、水フラックス(L/mh)である
Feedは、フィードの流速(L/h)である
Concentrateは、濃縮液の流速(L/h)である
Aは、膜面積(m)である
方程式5に従って逆方向塩フラックスを計算するために、濃縮されたフィード溶液の導電率を測定した:
【0133】
【数5】
【0134】
式中:
は、逆方向塩フラックス(L/mh)である
Concentrateは、濃縮液の流速(L/h)である
Aは、膜面積(m)である
κは、導電率(μS/cm)である
Bは、比例係数(1mg/LのNaCl当たり0,5362μS/cm)である。
【0135】
モジュールに流入するドロー溶液はドローポンプにより制御された。各モジュールを3~5回連続試験し、結果を下記の表9に示す。これらの結果は、この方法の再現性が高く、モジュールが性能を維持することを示す。
【0136】
表9
【0137】
【表10】
【0138】
非限定的に、本出願は以下の発明を含む。
[1]
ポリアルキレンイミン(PAI)、および界面活性剤可溶化した膜貫通タンパク質を含む、自己集合ナノ構造体。
[2]
PAIがポリエチレンイミン(PEI)である、[1]に記載の自己集合ナノ構造体。
[3]
PEIが、約2,000Da~約10,000Da、たとえば約3,000Da~約5,000Daの平均分子量を有する実質的に線状のポリマーである、[2]に記載の自己集合ナノ構造体。
[4]
膜貫通タンパク質がアクアポリン水チャネルである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の自己集合ナノ構造体。
[5]
界面活性剤が、LDAO、OG、DDMまたはその組合わせからなる群から選択される、[1]~[4]のいずれか1項に記載の自己集合ナノ構造体。
[6]
[1]~[5]のいずれか1項に記載の自己集合ナノ構造体を含む液体組成物。
[7]
さらに緩衝剤を含む、[6]に記載の液体組成物。
[8]
膜貫通タンパク質がアクアポリン水チャネルである、[6]または[7]に記載の液体組成物。
[9]
[6]~[8]のいずれか1項に記載の液体組成物を調製する方法であって、ポリアルキレンイミンの溶液を、界面活性剤可溶化した膜貫通タンパク質と混合することを含む方法。
[10]
[1]~[5]のいずれか1項に記載の自己集合ナノ構造体を含む分離膜。
[11]
膜貫通タンパク質がアクアポリン水チャネルである、[10]に記載の分離膜。
[12]
有効層を備えた基材を含み、その有効層が[1]~[5]のいずれか1項に記載の自己集合ナノ構造体を含む、[10]または[11]に記載の分離膜。
[13]
有効層が薄膜複合材料層である、[12]に記載の分離膜。
[14]
有効層が交互積層析出法により形成される、[12]に記載の分離膜。
[15]
膜加工プロセス中に[6]~[8]のいずれか1項に記載の液体組成物を添加することを含む、分離膜の作成方法。
[16]
薄膜複合材料層の製造中に液体組成物を添加することを含む、[15]に記載の方法。
[17]
交互積層析出法による有効層の形成中に液体組成物を添加することを含む、[15]に記載の方法。
[18]
[10]~[14]のいずれか1項に記載の分離膜により水溶液を濾過することを含む、純水濾液を調製する方法。
[19]
[10]~[14]のいずれか1項に記載の分離膜を使用して生成物溶液から水を抽出することを含む、生成物溶液を浸透作用により濃縮する方法。
[20]
浸透圧発電を用いて塩分濃度差電力を産生する方法であって、[10]~[14]のいずれか1項に記載の分離膜を用いて静水圧を増大させ、この静水圧の増大を塩分濃度差電力の供給源として用いることを含む方法。
[21]
[1]~[5]のいずれか1項に記載の自己集合ナノ構造体を含む選択層で改質した繊維を有する、中空繊維(HF)モジュール。
[22]
選択層が繊維の内面に薄膜複合材料(TFC)層を構成する、[21]に記載のHFモジュール。
[23]
保護シェルにより囲まれた繊維の束を含む中空繊維(HF)モジュールを製造する方法であって、繊維は[1]~[5]のいずれか1項に記載の自己集合ナノ構造体を含む選択層で改質され、その方法は、繊維を[6]~[8]のいずれか1項に記載の液体組成物を含む水性MPD相と接触させ、その水相を有機TMC相と界面重合反応で反応させて自己集合ナノ構造体を含む選択層を形成することを含む、前記方法。
[24]
繊維の内腔を水相と接触させることを含む、[23]に記載の方法。
[25]
保護シェルが細長い形状を有し、繊維の束が保護シェルの内側に縦軸方向に配置される、[23]または[24]に記載の方法。
[26]
モジュールのシェル側に真空を適用して水相の均一な乾燥を促進することを含む、[25]に記載の方法。
[27]
水相乾燥工程中に保護シェルを実質的に水平方向に保持することを含む、[26]に記載の方法。
[28]
正浸透により純水を抽出するための、[21]または[22]に記載のHFモジュールの使用。
[29]
血液透析、血液透析濾過または血液濾過により失われた患者血漿から純水を再抽出するための、[21]または[22]に記載のHFモジュールの使用。
[30]
水源の逆浸透精製のための、[21]または[22]に記載のHFモジュールの使用。
参考文献:
本明細書に引用した参考文献の全体をあらゆる目的で特に本明細書に援用する。
【0139】
【表11】
図1
図2
図3
図4