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特許7072521ポックスウイルス細胞外エンベロープビリオン上での膜内在性タンパク質の提示
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】ポックスウイルス細胞外エンベロープビリオン上での膜内在性タンパク質の提示
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220513BHJP
   C12N 15/39 20060101ALI20220513BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220513BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220513BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220513BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220513BHJP
   C07K 14/07 20060101ALI20220513BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/39
C12N15/12
C12N7/01
C07K19/00
C07K14/705
C07K14/07
C12Q1/70
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2018555114
(86)(22)【出願日】2017-04-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 US2017028787
(87)【国際公開番号】W WO2017184951
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-04-14
(31)【優先権主張番号】62/326,501
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504455148
【氏名又は名称】バクシネックス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】スミス アーネスト エス.
(72)【発明者】
【氏名】パリ マーク
(72)【発明者】
【氏名】スクリーベンズ マリア ジー. エム.
(72)【発明者】
【氏名】カーク レニー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】コーネリソン アンジェリカ エイ.
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-514811(JP,A)
【文献】特表2003-504014(JP,A)
【文献】国際公開第2015/193143(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/00
C07K 1/00~19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)膜内在性タンパク質(IMP)またはその断片をコードする第1の核酸断片であって、該IMPまたはその断片が、少なくとも1個の膜外領域、少なくとも1個の膜貫通ドメイン、および少なくとも1個の膜内領域を含み、該IMPが、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、または少なくとも7個の膜貫通ドメインを含む複数回貫通膜タンパク質であり、かつ少なくとも1個の膜内領域をコードする第1の核酸断片の一部分が、該第1の核酸断片の5'端または3'端に位置している、第1の核酸断片;ならびに
(b)ワクシニアウイルスF13Lタンパク質またはその機能的断片をコードする第2の核酸断片であって、IMPの膜内領域をコードする第1の核酸断片の一部分にインフレームで融合している、第2の核酸断片
を含む、単離されたポリヌクレオチドであって、
該ポリヌクレオチドを含むポックスウイルス感染細胞が、細胞外エンベロープビリオン(EEV)の外側エンベロープ膜の一部としてIMP-F13L融合タンパク質を発現することができる、前記単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
IMPが奇数個の膜貫通ドメインを有し、第1の核酸断片の5'端が膜外領域をコードし、第1の核酸断片の3'端が膜内領域をコードし、かつ第2の核酸断片の5'端が第1の核酸断片の3'端に融合している、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
IMPが、Gタンパク質共役受容体(GPCR)を含む、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
IMPが、ヒトfrizzled-4タンパク質(FZD4)またはその断片である、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
ポックスウイルスプロモーターに機能的に結合している、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
IMPがCXCケモカイン受容体CXCR4またはその断片である、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
IMPが偶数個の膜貫通ドメインを有し、かつ第1の核酸断片の5'端および3'端が両方とも、膜内領域をコードし、第2の核酸断片が、第1の核酸断片の3'端に融合している、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
IMPが、ヒトCD20タンパク質またはその断片である、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドによってコードされる、F13L融合タンパク質。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、ポックスウイルスゲノム。
【請求項11】
ワクシニアウイルスゲノムである、請求項10に記載のポックスウイルスゲノム。
【請求項12】
請求項11に記載のポックスウイルスゲノムを含む、組換えワクシニアウイルスEEV。
【請求項13】
(a)インビトロで、ワクシニアウイルス感染性に対して許容状態の宿主細胞に、請求項11に記載のポックスウイルスゲノムを含むワクシニアウイルスを感染させる工程、および
(b)宿主細胞から放出されるEEVを回収する工程
を含む、組換えワクシニアウイルスEEVを作製する方法。
【請求項14】
(a)インビトロで、ポックスウイルス感染性に対して許容状態の宿主細胞に、膜内在性タンパク質(IMP)またはその断片をワクシニアウイルスF13Lタンパク質またはその膜結合機能的断片との融合タンパク質として発現する組換えポックスウイルスを感染させる工程であって、感染宿主細胞によって産生されるEEVが、EEV外側エンベロープ膜の一部としてIMP融合タンパク質を含む、工程;
(b)宿主細胞から放出されるEEVを回収する工程
を含む、IMPまたはその断片を天然コンフォメーションで提示する方法であって、
該IMPが、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、または少なくとも7個の膜貫通ドメインを含む複数回貫通膜タンパク質であり、かつ該IMPまたはその断片が、EEVの表面上に天然コンフォメーションで提示される、前記方法。
【請求項15】
(a)少なくとも1個の膜外領域、少なくとも1個の膜貫通ドメイン、および少なくとも1個の膜内領域を含む、膜内在性タンパク質(IMP)またはその断片であって、該IMPが、少なくとも2個の膜貫通ドメインを含む複数回貫通膜タンパク質である、IMPまたはその断片;ならびに
(b)ワクシニアウイルスF13Lタンパク質またはその機能的断片
を含む、IMP-F13L融合タンパク質。
【請求項16】
(a)SEQ ID NO: 2の20~892位のアミノ酸;
(b)SEQ ID NO: 3;または
(c)SEQ ID NO: 4
を含む、請求項15に記載のIMP-F13L融合タンパク質。
【請求項17】
IMPまたはその断片が、そのC末端でF13Lタンパク質に融合している、請求項15に記載のIMP-F13L融合タンパク質。
【請求項18】
IMPまたはその断片が、そのN末端でF13Lタンパク質に融合している、請求項15に記載のIMP-F13L融合タンパク質。
【請求項19】
IMPが、2個の膜貫通ドメインを含む複数回貫通膜タンパク質である、請求項15に記載のIMP-F13L融合タンパク質。
【請求項20】
IMPが奇数個の膜貫通ドメインを含み、N末端が膜外領域であり、C末端が膜内領域である、請求項15に記載のIMP-F13L融合タンパク質。
【請求項21】
IMPがGタンパク質共役受容体(GPCR)である、請求項15に記載のIMP-F13L融合タンパク質。
【請求項22】
IMPが偶数個の膜貫通ドメインを含み、N末端およびC末端が両方とも膜内領域である、請求項15に記載のIMP-F13L融合タンパク質。
【請求項23】
請求項15~22のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む、組換えポックスウイルスEEV。
【請求項24】
請求項15~22のいずれか一項に記載のIMP-F13L融合タンパク質を含む、組換えポックスウイルスEEVであって、該IMPまたはその断片が、それに融合したF13Lタンパク質に対して異種であり、該IMP-F13L融合タンパク質が、外側エンベロープ膜に位置しており、該IMPまたはその断片が、該外側膜の表面上にその天然コンフォメーションで提示される、前記組換えポックスウイルスEEV。
【請求項25】
前記ポックスウイルスEEVがワクシニアウイルスEEVである、請求項23または24に記載の組換えポックスウイルスEEV。
【請求項26】
(a)請求項15~22のいずれか一項に記載のIMP-F13L融合タンパク質を発現しているワクシニアウイルスを、固体支持体に付着させる工程であって、IMPまたはその断片がその外側膜タンパク質の表面上に発現している、前記工程;
(b)多数の抗原結合ドメインを提示する提示パッケージを含む抗体提示ライブラリーを提供する工程;
(c)IMPに特異的に結合する抗原結合ドメインを提示する提示パッケージがそれに結合できるように、提示ライブラリーをワクシニアウイルスと接触させる工程;
(d)結合していない提示パッケージを除去する工程;および
(e)IMPまたはその断片に結合した抗原結合ドメインを有する提示パッケージを回収する工程
を含む、複数回貫通膜タンパク質に結合する抗体を選択する方法。
【請求項27】
ワクシニアウイルスが、固体支持体上のトシル基との反応を介して、固体支持体に付着される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
固体支持体が、トシル活性化磁気ビーズである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
ワクシニアウイルスが、ビオチン化されて、ストレプトアビジンコーティング固体支持体に付着される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
固体支持体が、ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズである、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
定義された特異性の抗体が、増大する数の多様な治療応用において使用されている。多数の方法が、ヒト治療用途に有用な抗体を取得するために用いられてきている。これらには、キメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに、ライブラリー、例えば、ファージ提示ライブラリーから、またはトランスジェニック動物から選択された完全ヒト抗体が含まれる。バクテリオファージにおいて構築された免疫グロブリンライブラリーは、ナイーブな個体または特異的に免疫化された個体の抗体産生細胞に由来することができ、原則として、ヒト免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の新たなかつ多様な対形成を含む可能性がある。この戦略は、内因性のレパートリーの限定はこうむらないが、発現した免疫グロブリン断片の相補性決定領域(CDR)が、細菌細胞において適正に合成されてフォールディングされることを必要とする。しかし、多くの抗原結合領域は、細菌細胞において融合タンパク質として正確にアセンブルすることが難しい。加えて、タンパク質は、正常な真核生物翻訳後修飾を受けないであろう。結果として、この方法は、取得することができる抗体特異性に対して様々な選択フィルターをかける。あるいは、完全ヒト抗体は、真核生物系におけるライブラリー、例えば、酵母提示、レトロウイルス提示、またはポックスウイルスなどのDNAウイルスにおける発現から単離することができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第7,858,559号(特許文献1)および米国特許出願公開第2013-028892号(特許文献2)を参照されたい。
【0002】
治療用抗体のための多くの重要な標的は、膜内在性タンパク質(IMP)、例えば、コンフォメーションが無傷の状態で発現させて精製することが難しい複数回貫通膜タンパク質(GPCR、イオンチャネルなど)である。単離された状態の適正にフォールディングされた標的タンパク質がないことにより、これらの標的に対する抗体の特定および選択の難易度が高くなる。ある特定のIMPは、細胞、例えば、哺乳動物細胞の表面上で発現させることができるが、細胞全体は複雑な抗原混合物であり、標的発現が低い可能性があるため、および、抗体ライブラリー(例えば、ワクシニアウイルス抗体ライブラリー)を構築するために用いられるある特定の提示パッケージは、細胞全体に非特異的に結合する可能性があるため、細胞全体は、抗体発見における使用について問題がある。提示ライブラリーからの治療用抗体および抗体様分子の特定および選択を可能にするための、関心対象の標的IMPをその天然コンフォメーションで、十分な濃度でかつ他の細胞タンパク質からの最小の競合で発現させて提示する新たな方法が、必要なままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7,858,559号
【文献】米国特許出願公開第2013-028892号
【発明の概要】
【0004】
概要
本開示は、単離された膜内在性タンパク質(IMP)またはその断片を、関心対象の標的IMPに結合する抗体または抗体様分子のスクリーニング、選択、および特定における使用のために、天然コンフォメーションで発現させて提示するための組成物および方法を提供する。
【0005】
ある特定の態様において、本開示は、膜内在性タンパク質(IMP)またはその断片をコードする第1の核酸断片であって、該IMPまたはその断片が、少なくとも1個の膜外領域、少なくとも1個の膜貫通ドメイン、および少なくとも1個の膜内領域を含み、かつ少なくとも1個の膜内領域をコードする該第1の核酸断片の一部分が、該第1の核酸断片の5'端または3'端に位置している、第1の核酸断片;ならびに、ワクシニアウイルスF13Lタンパク質またはその機能的断片をコードする第2の核酸断片であって、IMPの膜内領域をコードする該第1の核酸断片の一部分にインフレームで融合している、第2の核酸断片を含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。これらの態様にしたがって、ポリヌクレオチドを含有するポックスウイルス感染細胞は、細胞外エンベロープビリオン(EEV)の外側エンベロープ膜の一部としてIMP-F13L融合タンパク質を発現することができる。ある特定の局面において、F13Lタンパク質またはその機能的断片は、SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列またはその機能的断片を含むことができる。ある特定の局面において、IMPは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、または少なくとも7個の膜貫通ドメインを含む複数回貫通膜タンパク質である。ある特定の局面において、IMPは、表1に列挙される複数回貫通膜タンパク質である。
【0006】
ある特定の局面において、複数回貫通IMPは、奇数の膜貫通ドメインを有することができ、第1の核酸断片の5'端は、膜外領域をコードすることができ、かつ第1の核酸断片の3'端は、第2の核酸断片の5'端に融合した膜内領域をコードすることができる。ある特定の局面において、このタイプの第1の核酸断片は、例えば、Gタンパク質共役受容体(GPCR)をコードすることができる。ある特定の局面において、GPCRは、ヒトfrizzled-4タンパク質(FZD4)またはその断片であることができ、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO: 2の20~892位のアミノ酸を含むポリペプチドをコードすることができる。ある特定の局面において、ポリペプチドは、シグナルペプチド、例えば、SEQ ID NO: 2の1~19位のアミノ酸をさらに含むことができる。ある特定の局面において、GPCRは、CXCケモカイン受容体、例えば、CXCR4またはその断片であることができ、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードすることができる。
【0007】
ある特定の局面において、複数回貫通IMPは、偶数の膜貫通ドメインを有することができ、第1の核酸断片の5'端および3'端は両方とも、膜内領域をコードすることができる。ある特定の局面において、第2の核酸断片は、第1の核酸断片の3'端に融合していることができる。ある特定の局面において、IMPは、例えば、ヒトCD20またはその断片であることができ、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードすることができる。
【0008】
ある特定の局面において、本明細書において提供されるポリヌクレオチドの第1の核酸断片と第2の核酸断片とは、直接融合していることができる。ある特定の局面において、本明細書において提供されるポリヌクレオチドは、異種ペプチド、例えば、リンカー配列、アミノ酸タグもしくは標識、またはヒスチジンタグなどの精製を容易にするペプチドもしくはポリペプチド配列をコードする第3の核酸断片を含むことができる。ある特定の局面において、本明細書において提供されるポリヌクレオチドは、ポックスウイルスプロモーター、例えば、p7.5プロモーター、T7プロモーター、またはH5プロモーターに機能的に結合していることができる。
【0009】
本開示は、さらに、本明細書において提供されるポリヌクレオチドによってコードされるF13L融合タンパク質を提供する。本開示は、さらに、本明細書において提供されるポリヌクレオチドを含むポックスウイルスゲノム、例えば、ワクシニアウイルスゲノムを提供する。本開示は、さらに、本明細書において提供されるポックスウイルスゲノムを含む組換えワクシニアウイルスEEVを提供する。
【0010】
本開示は、さらに、ワクシニアウイルス感染性に対して許容状態の宿主細胞に、本明細書において提供されるポックスウイルスゲノムを含むワクシニアウイルスを感染させる工程、および、宿主細胞から放出されるEEVを回収する工程を含む、本明細書において提供される組換えワクシニアウイルスEEVを作製する方法を提供する。
【0011】
本開示は、さらに、ポックスウイルス感染性に対して許容状態の宿主細胞に、膜内在性タンパク質(IMP)またはその断片をポックスウイルスEEV特異的タンパク質またはその膜結合断片との融合タンパク質として発現する組換えポックスウイルスを感染させる工程であって、感染宿主細胞によって産生されるEEVが、EEV外側エンベロープ膜の一部としてIMP融合タンパク質を含む、工程、および、宿主細胞から放出されるEEVを回収する工程を含む、IMPまたはその断片を天然コンフォメーションで提示する方法を提供する。ある特定の局面において、IMPまたはその断片は、EEV表面上に天然コンフォメーションで提示される。ある特定の局面において、EEV特異的タンパク質は、ワクシニアウイルスA33Rタンパク質、A34Rタンパク質、A56Rタンパク質、B5Rタンパク質、A36Rタンパク質、F13Lタンパク質、その任意の膜結合断片、またはその任意の組み合わせであることができる。
【0012】
ある特定の局面において、EEV特異的タンパク質は、F13L(SEQ ID NO: 1)またはその機能的断片である。ある特定の局面において、IMPは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、または少なくとも7個の膜貫通ドメインを含む複数回貫通膜タンパク質である。ある特定の局面において、IMPは、7回膜貫通ドメインを含むGタンパク質共役受容体(GPCR)、例えば、上記のようなヒトFZD4またはCXCR4であることができ、かつF13Lタンパク質は、IMPのC末端に融合していることができる。ある特定の局面において、IMPまたはその断片は、偶数の膜貫通ドメイン、例えば、上記のようなヒトCD20を有することができ、IMPまたはその断片のN末端およびC末端は両方とも、膜内であり、かつF13Lは、IMPのN末端またはC末端に融合していることができる。
【0013】
ある特定の局面において、膜結合EEV特異的タンパク質断片は、ワクシニアウイルスA56Rタンパク質のストーク(stalk)ドメイン、膜貫通ドメイン、および膜内ドメイン、例えば、SEQ ID NO: 5の108~314位のアミノ酸を含むか、またはそれからなることができる。ある特定の局面において、A56R融合タンパク質のIMP部分は、ヒトFZD4の細胞外ドメインを含むことができ、例えば、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 6の20~370位のアミノ酸、ヒトErbB2(Her2)の細胞外ドメインを含むことができ、例えば、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 7の20~855位のアミノ酸、またはヒトCD100(セマフォリン4D)の細胞外ドメインを含むことができ、例えば、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 8の20~935位のアミノ酸を含むことができる。
【0014】
ある特定の局面において、膜結合EEV特異的タンパク質断片は、ワクシニアウイルスB5Rタンパク質の膜貫通ドメインおよび膜内ドメイン、または、ストークドメイン、膜貫通ドメイン、および膜内ドメイン、例えば、それぞれ、SEQ ID NO: 9の276~317位のアミノ酸またはSEQ ID NO: 9の238~317位のアミノ酸を含むか、またはそれからなることができる。ある特定の局面において、B5R融合タンパク質のIMP部分は、ヒトFZD4の細胞外ドメインを含むことができ、例えば、融合タンパク質は、SEQ ID NO: 10の20~243位のアミノ酸またはSEQ ID NO: 11の20~281位のアミノ酸を含むことができる。
【0015】
本開示は、さらに、SEQ ID NO: 2の20~892位のアミノ酸;SEQ ID NO: 3;SEQ ID NO: 4;SEQ ID NO: 6の20~370位のアミノ酸;SEQ ID NO: 7の20~855位のアミノ酸;SEQ ID NO: 8の20~935位のアミノ酸;SEQ ID NO: 10の20~243位のアミノ酸;SEQ ID NO: 11の20~281位のアミノ酸、SEQ ID NO: 16の20~506位のアミノ酸、またはSEQ ID NO: 17の20~235位のアミノ酸を含む融合タンパク質を提供する。提供される融合タンパク質は、組換えポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスによって発現される場合に、ポックスウイルス細胞外エンベロープビリオン(EEV)の表面上に天然コンフォメーションで出現することができる。融合タンパク質を含む組換えポックスウイルスEEVもまた、提供される。本開示は、さらに、ポックスウイルスEEV特異的タンパク質またはその膜結合断片に融合した異種IMPまたはその断片を含む組換えポックスウイルスEEVであって、融合タンパク質が、EEV外側エンベロープ膜に位置しており、かつIMPまたはその断片が、EEVの表面上にその天然コンフォメーションで提示される、組換えポックスウイルスEEVを提供する。ある特定の局面において、組換えポックスウイルスEEVはワクシニアウイルスEEVである。
【0016】
本開示は、さらに、本明細書において提供される組換えEEVを、固体支持体に付着させる工程;多数の抗原結合ドメインを提示する提示パッケージを含む、抗体提示ライブラリーを提供する工程;EEV上に発現したIMPに特異的に結合する抗原結合ドメインを提示する提示パッケージが、それに結合できるように、提示ライブラリーをEEVと接触させる工程;結合していない提示パッケージを除去する工程;および、EEV上に発現したIMPに特異的な抗原結合ドメインを提示する提示パッケージを回収する工程を含む、複数回貫通膜タンパク質に結合する抗体を選択する方法を提供する。本方法のある特定の局面において、組換えEEVは、固体支持体への付着の前に、例えば、UV照射の存在下でのソラレン(トリオキサレン、4'-アミノメチル-、塩酸塩)とのインキュベーションによって不活性化される。本方法のある特定の局面において、組換えEEVは、表面に付着したトシル基との反応を介して、固体表面に付着される。ある特定の局面において、固体表面は、トシル活性化磁気ビーズであることができる。本方法のある特定の局面において、組換えEEVは、ビオチン化されて、ストレプトアビジンコーティング固体表面、例えば、ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズに付着される。
[本発明1001]
(a)膜内在性タンパク質(IMP)またはその断片をコードする第1の核酸断片であって、該IMPまたはその断片が、少なくとも1個の膜外領域、少なくとも1個の膜貫通ドメイン、および少なくとも1個の膜内領域を含み、かつ少なくとも1個の膜内領域をコードする第1の核酸断片の一部分が、該第1の核酸断片の5'端または3'端に位置している、第1の核酸断片;ならびに
(b)ワクシニアウイルスF13Lタンパク質またはその機能的断片をコードする第2の核酸断片であって、IMPの膜内領域をコードする第1の核酸断片の一部分にインフレームで融合している、第2の核酸断片
を含む、単離されたポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチドを含むポックスウイルス感染細胞が、細胞外エンベロープビリオン(EEV)の外側エンベロープ膜の一部としてIMP-F13L融合タンパク質を発現することができる、前記単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1002]
F13Lタンパク質またはその機能的断片が、SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列またはその機能的断片を含む、本発明1001のポリヌクレオチド。
[本発明1003]
IMPが、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、または少なくとも7個の膜貫通ドメインを含む複数回貫通膜タンパク質である、本発明1001または1002のポリヌクレオチド。
[本発明1004]
IMPが奇数の膜貫通ドメインを有し、第1の核酸断片の5'端が膜外領域をコードし、第1の核酸断片の3'端が膜内領域をコードし、かつ第2のポリヌクレオチドの5'端が第1の核酸断片の3'端に融合している、本発明1003のポリヌクレオチド。
[本発明1005]
IMPが、Gタンパク質共役受容体(GPCR)を含む、本発明1004のポリヌクレオチド。
[本発明1006]
IMPが、ヒトfrizzled-4タンパク質(FZD4)またはその断片である、本発明1005のポリヌクレオチド。
[本発明1007]
SEQ ID NO: 2の20~892位のアミノ酸を含むポリペプチドをコードする、本発明1006のポリヌクレオチド。
[本発明1008]
シグナルペプチドをさらに含む、本発明1007のポリヌクレオチド。
[本発明1009]
シグナルペプチドが、SEQ ID NO: 2の1~19位のアミノ酸を含む、本発明1008のポリヌクレオチド。
[本発明1010]
IMPがCXCケモカイン受容体である、本発明1005のポリヌクレオチド。
[本発明1011]
CXCケモカイン受容体が、CXCR4またはその断片である、本発明1010のポリヌクレオチド。
[本発明1012]
SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、本発明1011のポリヌクレオチド。
[本発明1013]
IMPが偶数の膜貫通ドメインを有し、かつ第1の核酸断片の5'端および3'端が両方とも、膜内領域をコードする、本発明1003のポリヌクレオチド。
[本発明1014]
第2の核酸断片が、第1の核酸断片の3'端に融合している、本発明1013のポリヌクレオチド。
[本発明1015]
IMPが、ヒトCD20タンパク質またはその断片である、本発明1014のポリヌクレオチド。
[本発明1016]
SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする、本発明1015のポリヌクレオチド。
[本発明1017]
第1の核酸断片と第2の核酸断片とが直接融合している、本発明1001~1016のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1018]
異種ペプチドをコードする第3の核酸断片をさらに含む、本発明1001~1017のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1019]
異種ペプチドが、リンカー配列、アミノ酸タグもしくは標識、または精製を容易にするペプチドもしくはポリペプチド配列を含む、本発明1018のポリヌクレオチド。
[本発明1020]
異種ペプチドがヒスチジンタグを含む、本発明1019のポリヌクレオチド。
[本発明1021]
ポックスウイルスプロモーターと機能的に結合している、本発明1001~1020のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1022]
ポックスウイルスプロモーターが、p7.5またはH5またはT7である、本発明1021のポリヌクレオチド。
[本発明1023]
本発明1001~1022のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされる、F13L融合タンパク質。
[本発明1024]
本発明1001~1022のいずれかのポリヌクレオチドを含む、ポックスウイルスゲノム。
[本発明1025]
ワクシニアウイルスゲノムである、本発明1024のポックスウイルスゲノム。
[本発明1026]
本発明1025のポックスウイルスゲノムを含む、組換えワクシニアウイルスEEV。
[本発明1027]
(a)ワクシニアウイルス感染性に対して許容状態の宿主細胞に、本発明1024のポックスウイルスゲノムを含むワクシニアウイルスを感染させる工程、および
(b)宿主細胞から放出されるEEVを回収する工程
を含む、本発明1026の組換えワクシニアウイルスEEVを作製する方法。
[本発明1028]
(a)ポックスウイルス感染性に対して許容状態の宿主細胞に、膜内在性タンパク質(IMP)またはその断片をポックスウイルスEEV特異的タンパク質またはその膜結合断片との融合タンパク質として発現する組換えポックスウイルスを感染させる工程であって、感染宿主細胞によって産生されるEEVが、EEV外側エンベロープ膜の一部としてIMP融合タンパク質を含む、工程;
(b)宿主細胞から放出されるEEVを回収する工程
を含む、IMPまたはその断片を天然コンフォメーションで提示する方法であって、
該IMPまたはその断片が、EEVの表面上に天然コンフォメーションで提示される、前記方法。
[本発明1029]
EEV特異的タンパク質が、ワクシニアウイルスA33Rタンパク質、A34Rタンパク質、A56Rタンパク質、B5Rタンパク質、A36Rタンパク質、F13Lタンパク質、その任意の膜結合断片、またはその任意の組み合わせである、本発明1028の方法。
[本発明1030]
EEV特異的タンパク質が、F13L(SEQ ID NO: 1)またはその機能的断片である、本発明1029の方法。
[本発明1031]
IMPが、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、または少なくとも7個の膜貫通ドメインを含む複数回貫通膜タンパク質である、本発明1030の方法。
[本発明1032]
IMPが、7回膜貫通ドメインを含むGタンパク質共役受容体(GPCR)を含み、かつF13Lが、該IMPのC末端に融合している、本発明1031の方法。
[本発明1033]
IMPが、ヒトfrizzled-4タンパク質(FZD4)またはその断片である、本発明1032の方法。
[本発明1034]
融合タンパク質が、SEQ ID NO: 2の20~892位のアミノ酸を含む、本発明1033の方法。
[本発明1035]
融合タンパク質が、シグナルペプチドをさらに含む、本発明1034の方法。
[本発明1036]
シグナルペプチドが、SEQ ID NO: 2の1~19位のアミノ酸を含む、本発明1035の方法。
[本発明1037]
IMPがCXCケモカイン受容体である、本発明1032の方法。
[本発明1038]
CXCケモカイン受容体が、CXCR4またはその断片である、本発明1037の方法。
[本発明1039]
融合タンパク質が、SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含む、本発明1038の方法。
[本発明1040]
IMPまたはその断片が、偶数の膜貫通ドメインを有し、かつIMPまたはその断片のN末端およびC末端が両方とも、膜内である、本発明1031の方法。
[本発明1041]
F13Lが、IMPのC末端に融合している、本発明1040の方法。
[本発明1042]
IMPが、ヒトCD20またはその断片である、本発明1041の方法。
[本発明1043]
融合タンパク質が、SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含む、本発明1042の方法。
[本発明1044]
膜結合EEV特異的タンパク質断片が、ワクシニアウイルスA56Rタンパク質のストーク(stalk)ドメイン、膜貫通ドメイン、および膜内ドメインを含む、本発明1029の方法。
[本発明1045]
膜結合EEV特異的タンパク質断片が、SEQ ID NO: 5の108~314位のアミノ酸から本質的になる、本発明1030の方法。
[本発明1046]
IMPが、ヒトFZD4の細胞外ドメインを含む、本発明1045の方法。
[本発明1047]
融合タンパク質が、SEQ ID NO: 6の20~370位のアミノ酸を含む、本発明1046の方法。
[本発明1048]
融合タンパク質が、シグナルペプチドをさらに含む、本発明1046の方法。
[本発明1049]
シグナルペプチドが、SEQ ID NO: 6の1~19位のアミノ酸を含む、本発明1048の方法。
[本発明1050]
IMPが、ヒトErbB2(Her2)の細胞外ドメインを含む、本発明1045の方法。
[本発明1051]
融合タンパク質が、SEQ ID NO: 7の20~855位のアミノ酸を含む、本発明1050の方法。
[本発明1052]
融合タンパク質が、シグナルペプチドをさらに含む、本発明1051の方法。
[本発明1053]
シグナルペプチドが、SEQ ID NO: 7の1~19位のアミノ酸を含む、本発明1052の方法。
[本発明1054]
IMPが、ヒトCD100(セマフォリン4D)の細胞外ドメインを含む、本発明1045の方法。
[本発明1055]
融合タンパク質が、SEQ ID NO: 8の20~935位のアミノ酸を含む、本発明1054の方法。
[本発明1056]
融合タンパク質が、シグナルペプチドをさらに含む、本発明1055の方法。
[本発明1057]
シグナルペプチドが、SEQ ID NO: 8の1~19位のアミノ酸を含む、本発明1056の方法。
[本発明1058]
膜結合EEV特異的タンパク質断片が、ワクシニアウイルスB5Rタンパク質の膜貫通ドメインおよび膜内ドメインを含む、本発明1029の方法。
[本発明1059]
膜結合EEV特異的タンパク質断片が、SEQ ID NO: 9の276~317位のアミノ酸から本質的になる、本発明1058の方法。
[本発明1060]
膜結合EEV特異的タンパク質断片が、ワクシニアウイルスB5Rタンパク質のストークドメイン、膜貫通ドメイン、および膜内ドメインを含む、本発明1058の方法。
[本発明1061]
膜結合EEV特異的タンパク質断片が、SEQ ID NO: 9の238~317位のアミノ酸から本質的になる、本発明1030の方法。
[本発明1062]
IMPが、ヒトFZD4の細胞外ドメインを含む、本発明1059または1061の方法。
[本発明1063]
融合タンパク質が、SEQ ID NO: 10の20~243位のアミノ酸またはSEQ ID NO: 11の20~281位のアミノ酸を含む、本発明1062の方法。
[本発明1064]
融合タンパク質が、シグナルペプチドをさらに含む、本発明1063の方法。
[本発明1065]
シグナルペプチドが、SEQ ID NO: 10の1~19位のアミノ酸を含む、本発明1064の方法。
[本発明1066]
(a)SEQ ID NO: 2の20~892位のアミノ酸;
(b)SEQ ID NO: 3;
(c)SEQ ID NO: 4;
(d)SEQ ID NO: 6の20~370位のアミノ酸;
(e)SEQ ID NO: 7の20~855位のアミノ酸;
(f)SEQ ID NO: 8の20~935位のアミノ酸;
(g)SEQ ID NO: 10の20~243位のアミノ酸;または
(h)SEQ ID NO: 11の20~281位のアミノ酸
を含む、融合タンパク質であって、
組換えポックスウイルスによって発現される場合に、ポックスウイルス細胞外エンベロープビリオン(EEV)の表面上に天然コンフォメーションで出現する、前記融合タンパク質。
[本発明1067]
本発明1066の融合タンパク質を含む、組換えポックスウイルスEEV。
[本発明1068]
ポックスウイルスEEV特異的タンパク質またはその膜結合断片に融合した異種IMPまたはその断片を含む、組換えポックスウイルスEEVであって、該融合タンパク質が、EEV外側エンベロープ膜に位置しており、該IMPまたはその断片が、EEVの表面上にその天然コンフォメーションで提示される、前記組換えポックスウイルスEEV。
[本発明1069]
前記ポックスウイルスEEVがワクシニアウイルスEEVである、本発明1067または1068の組換えポックスウイルスEEV。
[本発明1070]
(a)本発明1026および1067~1069のいずれかの組換えEEVを、固体支持体に付着させる工程;
(b)多数の抗原結合ドメインを提示する提示パッケージを含む、抗体提示ライブラリーを提供する工程;
(c)EEV上に発現したIMPに特異的に結合する抗原結合ドメインを提示する提示パッケージが、それに結合できるように、提示ライブラリーをEEVと接触させる工程;
(d)結合していない提示パッケージを除去する工程;および
(e)EEV上に発現したIMPに特異的な抗原結合ドメインを提示する提示パッケージを回収する工程
を含む、複数回貫通膜タンパク質に結合する抗体を選択する方法。
[本発明1071]
組換えEEVが、固体支持体への付着の前に不活性化される、本発明1070の方法。
[本発明1072]
EEVが、UV照射の存在下でのソラレン(トリオキサレン、4'-アミノメチル-、塩酸塩)とのインキュベーションによって不活性化される、本発明1071の方法。
[本発明1073]
EEVが、表面に付着したトシル基との反応を介して、固体表面に付着される、本発明1070~1072のいずれかの方法。
[本発明1074]
固体表面が、トシル活性化磁気ビーズである、本発明1073の方法。
[本発明1075]
EEVが、ビオチン化されて、ストレプトアビジンコーティング固体表面に付着される、本発明1070~1072のいずれかの方法。
[本発明1076]
固体表面が、ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズである、本発明1075の方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】ワクシニアウイルス細胞外エンベロープビリオン(EEV)特異的タンパク質またはその断片に融合した膜内在性タンパク質(IMP)またはその断片の概略図である。平行な水平線は、EEV外膜の図解である。図1Aは、膜貫通ドメインおよび膜内ドメインを含むワクシニアA56Rタンパク質の断片に融合したIMPの細胞外ドメイン(ECD)を図解する。
図1B】ワクシニアウイルス細胞外エンベロープビリオン(EEV)特異的タンパク質またはその断片に融合した膜内在性タンパク質(IMP)またはその断片の概略図である。平行な水平線は、EEV外膜の図解である。図1Bは、ワクシニアウイルスEEV特異的F13Lタンパク質に融合した典型的なGタンパク質共役受容体のトポロジーを図解する。F13Lは、パルミトイル化を介してEEV外膜の内側に結合している。
図1C】ワクシニアウイルス細胞外エンベロープビリオン(EEV)特異的タンパク質またはその断片に融合した膜内在性タンパク質(IMP)またはその断片の概略図である。平行な水平線は、EEV外膜の図解である。図1Cは、F13Lに融合した、偶数の膜貫通ドメインを有するIMP、例えば、CD20のトポロジーを図解する。
図2】CD20-F13LおよびCD20 ECD-A56R融合タンパク質のワクシニアウイルスEEV粒子中への組込みの表示である。
図3図3Aは、タグ付加されていないCD20を上回るCD20-F13L融合タンパク質のワクシニアウイルスEEV粒子中への優先的な組込みの表示である。図3Bは、タグ付加されていない(融合していない)FZD4を上回るFZD4-F13L融合タンパク質のワクシニアウイルスEEV粒子中への優先的な組込みの表示である。
図4】追加的なIMP-EEVタンパク質融合物のワクシニアウイルスEEV中への組込みを示す。「CD20」はCD20-F13L融合タンパク質であり、「CXCR4」はCXCR4-F13L融合タンパク質であり、「Her2」はHer2 ECD-A56R融合タンパク質であり;「CD100」はCD100 ECD-A56R融合タンパク質である。
図5】ワクシニアウイルスEEV上に発現した関心対象のIMPに結合する提示パッケージについて、抗体提示ライブラリーをスクリーニングするためのアッセイの概要を示す。
図6図6Aは、トシル基によって磁気ビーズに結合した、HER2 ECDをワクシニアウイルスA56Rタンパク質との融合物として発現するワクシニアウイルスEEVに対する、抗Her2抗体を発現するワクシニアウイルスEEVの結合を示す。図6Bは、トシル基によって磁気ビーズに結合した、FZD4をワクシニアウイルスF13Lタンパク質との融合物として発現するワクシニアウイルスEEVに対する、抗FZD抗体を発現するワクシニアウイルスEEVの結合を示す。図6Cは、トシル基によって磁気ビーズに結合した、CXCR4をワクシニアウイルスF13Lタンパク質との融合物として発現するワクシニアウイルスEEVに対する、抗CXCR4抗体を発現するワクシニアウイルスEEVの結合を示す。図6Dは、トシル基によって磁気ビーズに結合した、CD100 ECDをワクシニアウイルスA56Rタンパク質との融合物として発現するワクシニアウイルスEEVに対する、抗CD100(「sema」)抗体を発現するワクシニアウイルスEEVの結合を示す。
図7】パンニングの3ラウンド(Rd3)後、4ラウンド(Rd4)後、および5ラウンド(Rd5)後の、トシル基によって磁気ビーズに結合した不活性化FZD-ECD-A45R発現EEV上でのパンニング後の抗FZD4抗体についての濃縮を示すFACSスキャンを示す。上の列は、10μg/ml FZD-Hisで染色し、その後、抗His-Dyelight650および抗Fab-FITCで染色した、抗体発現ウイルス感染細胞を示す。下の列は、10μg/ml CD100-His(陰性対照)で染色し、その後、抗His-Dyelight650および抗Fab-FITCで染色した、抗体発現ウイルス感染細胞を示す。
図8】2種類の異なるタンパク質融合物(HA-A56R融合物およびFZD4-F13L融合物)のワクシニアウイルスEEV中への組込みを示す。HA-A56R融合物単独を発現するEEV、FZD4-F13L融合物単独を発現するEEV、または両方の融合タンパク質を発現するEEVを、抗FZD4コーティングビーズまたは抗HAコーティングビーズのいずれかに対する結合について試験した。
図9】HA-A56R融合物およびCXCR4-F13L融合物の両方を発現するEEVでコーティングされた磁気ビーズによる、抗CXCR4発現EEVの特異的回収を示す。抗原-EEVを、抗HAコーティングビーズにカップリングさせた。
図10】ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズに対する、指定された融合タンパク質を発現するビオチン化ワクシニアウイルスEEVの結合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本開示は、膜内在性タンパク質(IMP)、例えば、複数回貫通(IMP)を、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスの細胞外エンベロープビリオン粒子(EEV)の表面上にコンフォメーションが無傷または天然の状態で、ポリペプチドセグメントであるEEV特異的膜結合タンパク質、例えばF13Lとの融合物として発現させて提示するための方法および組成物を提供する。
【0019】
定義
「1つの(a)」または「1つの(an)」実体という用語は、その実体の1つまたは複数を指し;例えば、「1つの結合分子(a binding molecule)」は、1つまたは複数の結合分子を表すように理解される。そのように、「1つの」(または「ある」)、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書において互換的に用いることができる。
【0020】
さらに、本明細書において用いられる場合の「および/または」は、互いを伴うかまたは伴わない、2つの特定された特徴または構成要素の各々の具体的な開示として取られるべきである。したがって、本明細書における「Aおよび/またはB」などの句において用いられる際の「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、ならびに「B」(単独)を含むように意図される。同様に、「A、B、および/またはC」などの句において用いられる際の「および/または」という用語は、以下の態様:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)の各々を包含するように意図される。
【0021】
別の方法で定義されない限り、本明細書において用いられる技術用語および科学用語は、本開示が関連している技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press;およびthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、当業者に、本開示において用いられる用語の多くの一般的な辞書を提供する。
【0022】
単位、接頭辞、および記号は、それらの国際単位系(Systeme International de Unites)(SI)に許容される形態で表される。数値範囲は、範囲を定義する数を含める。別の方法で示されない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシへの方向で左から右へ書く。本明細書において提供される表題は、本開示の種々の局面または局面の限定ではなく、それらは、全体として本明細書を参照することによって有することができる。したがって、すぐ下記で定義される用語は、その全体が本明細書を参照することによってより完全に定義される。
【0023】
本明細書において用いられる際、「天然に存在しない」物質、組成物、実体、および/または物質、組成物、もしくは実体の任意の組み合わせの用語、またはその任意の文法的バリアントは、当業者によって「天然に存在する」として十分に理解されているか、あるいは、判事または行政機関もしくは司法機関によって「天然に存在する」と判定もしくは解釈されるか、またはいずれかの場合に判定もしくは解釈される可能性がある、物質、組成物、実体、および/または物質、組成物、もしくは実体の任意の組み合わせのそれらの形態を明示的に除外するが、除外するだけである条件的な用語である。
【0024】
本明細書において用いられる際、「ポリペプチド」という用語は、単数の「ポリペプチド」および複数の「ポリペプチド」を包含するように意図され、アミド結合(ペプチド結合としても公知である)によって直鎖状に連結された単量体(アミノ酸)から構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2個以上のアミノ酸の任意の1本の鎖または複数本の鎖を指し、特定の長さの産物を指さない。したがって、2個以上のアミノ酸の1本の鎖または複数本の鎖を指すために用いられる、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または任意の他の用語は、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはそれらと互換的に用いることができる。「ポリペプチド」という用語はまた、非限定的にグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、および公知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解性切断、または天然に存在しないアミノ酸による修飾を含む、ポリペプチドの発現後修飾の産物を指すようにも意図される。ポリペプチドは、生物学的供給源に由来することができるか、または、組換え技術によって作製することができるが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳されない。ポリペプチドは、化学合成によることを含む、任意の様式において生成することができる。
【0025】
本明細書において開示されるポリペプチドは、約3個以上、5個以上、10個以上、20個以上、25個以上、50個以上、75個以上、100個以上、200個以上、500個以上、1,000個以上、または2,000個以上のアミノ酸のサイズであることができる。ポリペプチドは、定義された三次元構造を有することができるが、必ずしもそのような構造を有さない。定義された三次元構造を有するポリペプチドは、フォールディングされていると呼ばれ、定義された三次元構造を保有しないが、むしろ多数の異なるコンフォメーションを採ることができるポリペプチドは、フォールディングされていないと呼ばれる。本明細書において用いられる際、糖タンパク質という用語は、アミノ酸、例えば、セリンまたはアスパラギンの酸素含有側鎖または窒素含有側鎖を介してタンパク質に付着している少なくとも1つの炭水化物部分にカップリングしたタンパク質を指す。
【0026】
「単離された」ポリペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体によっては、その天然の境遇にないポリペプチドが意図される。いかなる特定のレベルの精製も必要とされない。例えば、単離されたポリペプチドは、その本来のまたは天然の環境から取り去ることができる。宿主細胞において発現される組換えで作製されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適している技法によって分離されているか、分画されているか、または部分的にもしくは実質的に精製されている天然ポリペプチドまたは組換えポリペプチドと同様に、本明細書において開示されるように単離されたと考えられる。
【0027】
本明細書において用いられる際、「天然に存在しない」ポリペプチドという用語、またはその任意の文法的バリアントは、当業者によって「天然に存在する」として十分に理解されているか、あるいは、判事または行政機関もしくは司法機関によって「天然に存在する」と判定もしくは解釈されるか、またはいずれかの場合に判定もしくは解釈される可能性がある、ポリペプチドのそれらの形態を明示的に除外するが、除外するだけである条件的な用語である。
【0028】
本明細書において開示される他のポリペプチドは、前述のポリペプチドの断片、誘導体、類似体、またはバリアンド、およびその任意の組み合わせである。本明細書において開示される「断片」、「バリアント」、「誘導体」、および「類似体」という用語は、例えば、抗原に特異的に結合する対応する天然の抗体またはポリペプチドの特性の少なくともいくつかを保持する、任意のポリペプチドを含む。ポリペプチドの断片は、本明細書において別の場所で議論される特異的な抗体断片に加えて、例えば、タンパク質分解断片、および欠失断片を含む。例えばポリペプチドのバリアントは、上記のような断片を含み、およびまた、アミノ酸の置換、欠失、または挿入のために変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。ある特定の局面において、バリアントは、天然に存在しないことができる。天然に存在しないバリアントは、技術分野で公知の変異誘発技法を用いて作製することができる。バリアントポリペプチドは、保存的または非保存的なアミノ酸の置換、欠失、または付加を含むことができる。誘導体は、元のポリペプチド上では見出されない追加的な特徴を呈するように変更されているポリペプチドである。例には、融合タンパク質が含まれる。バリアントポリペプチドはまた、本明細書において「ポリペプチド類似体」と呼ぶこともできる。本明細書において用いられる際、ポリペプチドの「誘導体」はまた、官能性側基の反応によって化学的に誘導体化された1個または複数個のアミノ酸を有する対象ポリペプチドを指すこともできる。また、20種類の標準的なアミノ酸の1種類または複数種類の誘導体を含有するそれらのペプチドも、「誘導体」として含まれる。例えば、4-ヒドロキシプロリンは、プロリンと置換されることができ;5-ヒドロキシリジンは、リジンと置換されることができ;3-メチルヒスチジンは、ヒスチジンと置換されることができ;ホモセリンは、セリンと置換されることができ;オルニチンは、リジンと置換されることができる。
【0029】
「保存的アミノ酸置換」とは、1個のアミノ酸が、類似した側鎖を有する別のアミノ酸で置き換えられているものである。類似した側鎖を有するアミノ酸のファミリーが、当技術分野において定義されており、塩基性側鎖を有するアミノ酸のファミリー(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸のファミリー(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸のファミリー(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖を有するアミノ酸のファミリー(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分岐型側鎖を有するアミノ酸のファミリー(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸のファミリー(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。例えば、チロシンからフェニルアラニンへの置換は、保存的置換である。ある特定の態様において、本開示のポリペプチドおよび抗体の配列における保存的置換は、そのアミノ酸配列を含有するポリペプチドまたは抗体の、結合分子が結合する抗原に対する結合を取り消さない。抗原結合を解消しないヌクレオチドおよびアミノ酸の保存的置換を特定する方法は、当技術分野において周知である(例えば、Brummell et al., Biochem. 32:1180-1 187 (1993);Kobayashi et al., Protein Eng. 12(10):879-884 (1999);およびBurks et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:.412-417 (1997)を参照されたい)。
【0030】
本明細書において用いられる際、「膜内在性タンパク質」または「IMP」という用語は、生体膜に付着しているタンパク質またはポリペプチドを指す。IMPの1つの例は、生体膜の脂質二重層に1回または複数回またがる膜貫通タンパク質である。1回貫通膜タンパク質は、膜を1回だけ横切り、他方、複数回貫通膜タンパク質は、出たり入ったりして縫うように進み、数回横切る。I型1回貫通タンパク質は、膜の外側すなわち「膜外」にそのアミノ末端が、膜の内側すなわち「膜内」にそのカルボキシル末端が位置づけられる。II型1回貫通タンパク質は、膜内側にそのアミノ末端を有する。複数回貫通膜貫通タンパク質は、膜を2回以上通過し、様々な異なるトポロジーを有することができる。偶数の膜貫通ドメインを有するそれらのタンパク質は、膜の同じ側にそのアミノ末端およびカルボキシ末端の両方を有することになる。そのようなタンパク質の1つの例は、B細胞上に発現しているCD20である。奇数の膜貫通ドメインを有するものは、膜の反対側にそのアミノ末端およびカルボキシ末端を有することになる。例には、Gタンパク質共役受容体が含まれ、それは典型的に、7回膜貫通ドメインを有し、膜外側にアミノ末端および膜内側にカルボキシ末端を有する。ある特定のIMPは、膜貫通ドメインを有さず、その代わりに、例えば、グリコシルホスファチジルイノシトールまたはパルミトイル基などの脂質を介して、膜に固定される。IMPは、トランスポーター、リンカー、チャネル、受容体、酵素、エネルギー変換、または細胞接着を含むがそれらに限定されない、無数の生物学的機能を有する。
【0031】
「ポリヌクレオチド」という用語は、単数の核酸および複数の核酸を包含するように意図され、単離された核酸分子または構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、従来的なホスホジエステル結合または非従来的な結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)において見出されるようなアミド結合)を含むことができる。「核酸」または「核酸配列」という用語は、任意の1つまたは複数の核酸セグメント、例えば、ポリヌクレオチド中に存在するDNA断片またはRNA断片を指す。
【0032】
「単離された」核酸またはポリヌクレオチドによっては、その天然の環境から分離されている核酸またはポリヌクレオチドの任意の形態が意図される。例えば、ゲル精製ポリヌクレオチド、またはベクターに含有されるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、「単離されて」いると考えられることになる。また、ポリヌクレオチドセグメント、例えば、クローニングのための制限部位を有するように操作されているPCR産物は、「単離されて」いると考えられる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞において維持される組換えポリヌクレオチド、または緩衝液もしくは食塩水などの非天然溶液中の(部分的にまたは実質的に)精製されたポリヌクレオチドが含まれる。単離されたRNA分子には、ポリヌクレオチドのインビボまたはインビトロのRNA転写物が含まれ、該転写物は、天然に見出されるものではない。単離されたポリヌクレオチドまたは核酸には、さらに、合成で作製されたそのような分子が含まれる。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、または転写ターミネーターなどの調節エレメントであることができるか、またはそれらを含むことができる。
【0033】
本明細書において用いられる際、「天然に存在しない」ポリヌクレオチド、またはその任意の文法的バリアントは、当業者によって「天然に存在する」として十分に理解されているか、あるいは、判事または行政機関もしくは司法機関によって「天然に存在する」と判定もしくは解釈されるか、またはいずれかの場合に判定もしくは解釈される可能性がある、ポリヌクレオチドのそれらの形態を明示的に除外するが、除外するだけである条件的な定義である。
【0034】
本明細書において用いられる際、「コード領域」とは、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部分である。「停止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)は、アミノ酸に翻訳されないが、コード領域の一部と考えることができる。しかし、いずれかの隣接配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどは、コード領域の一部ではない。2種類以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチド構築物中に、例えば、単一のベクター中に、または、別々のポリヌクレオチド中に、例えば、別々の(異なる)ベクター上に存在することができる。さらに、いずれかのベクターは、単一のコード領域を含有することができるか、または、2種類以上のコード領域を含むことができ、例えば、単一のベクターが、免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を別々にコードすることができる。加えて、ベクター、ポリヌクレオチド、または核酸は、別のコード領域に融合しているかまたは融合していないかいずれかの、異種コード領域を含むことができる。異種コード領域には、非限定的に、分泌シグナルペプチドまたは異種機能的ドメインなどの、特化されたエレメントまたはモチーフをコードするものが含まれる。
【0035】
ある特定の態様において、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。DNAの場合、ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、通常、1種類または複数種類のコード領域に機能的に結合したプロモーターおよび/または他の転写制御エレメントもしくは翻訳制御エレメントを含むことができる。機能的結合とは、遺伝子産物、例えば、ポリペプチドについてのコード領域が、遺伝子産物の発現を調節配列の影響下または制御下に置くような様式で、1種類または複数種類の調節配列に結合している場合である。2種類のDNA断片(ポリペプチドコード領域およびそれに結合したプロモーターなど)は、プロモーター機能の誘導が所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写を結果としてもたらす場合に、および、2種類のDNA断片の間の連結の性質が、遺伝子産物の発現を指示する発現調節配列の能力を干渉しないか、または転写されるべきDNA鋳型の能力を干渉しない場合に、「機能的に結合」している。したがって、プロモーター領域は、プロモーターがその核酸の転写をもたらすことができる場合に、ポリペプチドをコードする核酸に機能的に結合していることになる。プロモーターは、あらかじめ決められた細胞においてDNAの実質的な転写を指示する、細胞特異的プロモーターであることができる。プロモーターのほかにも、他の転写制御エレメント、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、および転写終結シグナルを、細胞特異的転写を指示するためにポリヌクレオチドに機能的に結合させることができる。
【0036】
様々な転写制御領域が、当業者に公知である。これらには、非限定的に、サイトメガロウイルス由来のプロモーターおよびエンハンサーセグメント(イントロンAと併用する、最初期プロモーター)、シミアンウイルス40由来のプロモーターおよびエンハンサーセグメント(初期プロモーター)、ならびにレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスなど)由来のプロモーターおよびエンハンサーセグメントなどであるがそれらに限定されない、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域が含まれる。他の転写制御領域には、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン、およびウサギβ-グロビンなどの脊椎動物遺伝子に由来するもの、ならびに、真核細胞において遺伝子発現を制御することができる他の配列が含まれる。追加的な適している転写調節領域には、組織特異的なプロモーターおよびエンハンサー、ならびにリンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が含まれる。
【0037】
ポックスウイルスプロモーター(例えば、p7.5もしくはH5)またはバクテリオファージT7プロモーターもまた、転写制御領域として用いることができる。T7プロモーターを使用する場合には、誘導性ワクシニア発現系を利用することができる。ワクシニア発現系は、T7 RNAポリメラーゼについてのバクテリオファージT7遺伝子1コード領域全体をコードする第1の組換えワクシニアウイルス、ならびに、T7プロモーターおよび終結調節エレメントが隣接した関心対象の遺伝子をコードする第2の組換えワクシニアウイルスを含むことができるが、それらに限定されない。両方の組換えワクシニアウイルスでの真核細胞の二重感染は、T7 RNAポリメラーゼの合成およびT7プロモーターによって制御される関心対象の遺伝子の発現を結果としてもたらす。
【0038】
同様に、様々な翻訳制御エレメントが、当業者に公知である。これらには、リボソーム結合部位、翻訳開始コドンおよび翻訳終結コドン、ならびに、ピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、CITE配列とも呼ばれる、内部リボソーム進入部位、すなわちIRES)が含まれるが、それらに限定されない。
【0039】
他の態様において、ポリヌクレオチドは、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、またはリボソームRNAの形態における、RNAであることができる。
【0040】
ポリヌクレオチドおよび核酸コード領域は、本明細書において開示されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指示する、分泌ペプチドまたはシグナルペプチドをコードする追加的なコード領域に結合させることができる。シグナル仮説にしたがうと、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質は、シグナルペプチドまたは分泌リーダー配列を有し、それは、ひとたび成長するタンパク質鎖の粗面小胞体を横切る輸出が開始されると、成熟タンパク質から切断される。脊椎動物細胞から分泌されるポリペプチドは、ポリペプチドのN末端に融合したシグナルペプチドを有することができ、それは、ポリペプチドの分泌型すなわち「成熟」型を産生するために完全なポリペプチドすなわち「完全長」ポリペプチドから切断されることを、当業者は承知している。ある特定の態様において、天然のシグナルペプチド、例えば、免疫グロブリン重鎖シグナルペプチドもしくは軽鎖シグナルペプチド、または、それに機能的に結合しているポリペプチドの分泌を指示する能力を保持する、その配列の機能的誘導体が用いられる。あるいは、異種哺乳動物シグナルペプチド、またはその機能的誘導体を用いることができる。例えば、野生型リーダー配列を、ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)またはマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列で置換することができる。
【0041】
本明細書において用いられる際、「ライブラリー」とは、ポリヌクレオチドの代表的な属、例えば、単一の動物種、組織タイプ、臓器、または細胞タイプ由来のそれらの起源を通して関連している、例えば、ポリヌクレオチドの群であり、ライブラリーは、集合的に、所定のポリヌクレオチドの属内の少なくとも2種類の異なる種を含む。ポリヌクレオチドのライブラリーは、所定のポリヌクレオチドの属内の、例えば、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、100、103、104、105、106、107、108、または109種類の異なる種を含むことができる。ある特定の局面において、本明細書において提供されるポリヌクレオチドのライブラリーは、関心対象のポリペプチドを含有する多数のポリペプチドをコードすることができる。ある特定の局面において、本明細書において提供されるポリヌクレオチドのライブラリーは、多数の免疫グロブリンサブユニットポリペプチド、例えば、重鎖サブユニットポリペプチドまたは軽鎖サブユニットポリペプチドをコードすることができる。この文脈において、本明細書において提供される「ライブラリー」は、共通の属のポリヌクレオチドを含み、該属は、ある特定のタイプおよびクラスの免疫グロブリンサブユニットポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり、例えば、ライブラリーは、ヒトμ、γ-1、γ-2、γ-3、γ-4、α-1、α-2、ε、もしくはδ重鎖、または、ヒトκもしくはラムダ軽鎖をコードし得る。本明細書において提供される方法にしたがって構築されたいずれか1つのライブラリーの各メンバーは、同じ重鎖もしくは軽鎖定常領域、および/または膜固定ドメインをコードすることができるが、ライブラリーは、集合的に、共通定常領域に結合した少なくとも2、少なくとも5、または少なくとも10、100、103、104、105、106、107、108、または109種類の異なる可変領域を含むことができる。
【0042】
他の態様において、ライブラリーは、軽鎖可変領域または重鎖可変領域、ならびに/または軽鎖可変領域および重鎖改変領域の両方などの、可変領域を含む多数の免疫グロブリン一本鎖断片、例えば、ScFv断片を含むことができる。
【0043】
本明細書において用いられる際、「提示ライブラリー」とは、ライブラリーポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドをその表面上に発現する「提示パッケージ」において各々が運ばれる、ポリヌクレオチドのライブラリーである。例えば、抗体提示ライブラリーは、各々が抗体の抗原結合ドメインをその表面上に提示する、多数の提示パッケージを含むことができる。提示ライブラリーを、例えば、固体表面上に固定化された関心対象の抗原と相互作用させた場合に、抗原に結合するそれらの提示パッケージを、ライブラリーの残りの部分から単離して回収することができる。提示パッケージの表面上に提示された抗原結合ドメインをコードするポリヌクレオチドを、次いで単離することができる。提示ライブラリーには、非限定的に、細菌におけるファージ提示ライブラリー、または真核生物系におけるライブラリー、例えば、酵母提示、レトロウイルス提示、またはポックスウイルスなどのDNAウイルスにおける発現が含まれる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第7,858,559号および米国特許出願公開第2013-028892号を参照されたい。ある特定の局面において、抗体提示ライブラリーは、「提示パッケージ」がEEV粒子であるように、EEV特異的タンパク質との融合タンパク質として、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスベクターにおいて調製することができる。米国特許出願公開第2013-028892号を参照されたい。
【0044】
そのような提示ライブラリーを、本明細書において提供されるEEVの表面上に提示されるIMP融合タンパク質に対してスクリーニングすることができる。
【0045】
「レシピエント細胞」または「宿主細胞」または「細胞」によっては、その中で組換えタンパク質を発現させることができる、ウイルスを増やすことができる、または、本明細書において提供されるポリヌクレオチドライブラリーを構築し、かつ/もしくは増やすことができる細胞または細胞集団が意味される。本明細書において提供される宿主細胞は、典型的に、真核生物の細胞または細胞株、例えば、脊椎動物、哺乳動物、げっ歯類、マウス、霊長類、またはヒトの細胞または細胞株である。「宿主細胞集団」によっては、本明細書において提供される「ライブラリー」を、構築し、増やし、かつ/または発現させることができる培養細胞の群が意味される。ワクシニアウイルス感染性に対して許容状態である任意の宿主細胞が、本開示によって提供される方法に適している。本明細書において提供される方法における使用のための宿主細胞は、接着性、例えば、固体基質に付着して成長する宿主細胞であることができ、あるいは、宿主細胞は浮遊状態であることができる。
【0046】
本明細書において提供される宿主細胞は、タンパク質、例えば、細胞またはライブラリーによって発現される関心対象のタンパク質が、細胞もしくはウイルスの膜表面上に発現されるか、または可溶性ポリペプチドとして完全に分泌されるかのいずれかのように、細胞の内部から分泌される、構成的分泌経路を含むことができる。ある特定の局面において、生体膜の上またはその中に発現される関心対象のタンパク質、例えば、IMPは、宿主細胞によって産生されるエンベロープウイルス、例えば、細胞外エンベロープワクシニアウイルス、すなわちEEVの表面上に発現される。IMPは、1つまたは複数の移行停止シグナル、または「膜貫通ドメイン」の存在によってER膜中に保持され得る以外は、ER内腔を通過して、完全分泌型または完全分泌タンパク質と同じ経路に従うことができる。膜貫通ドメインは、膜を横断する際にαヘリックスコンフォメーションを採る約20アミノ酸の疎水性ストレッチである。膜に埋め込まれたタンパク質は、形質膜のリン脂質二重層に固定される。関心対象のポリペプチドの膜貫通型、例えば、膜固定免疫グロブリン重鎖ポリペプチドは、典型的に、完全分泌型が利用するようなアミノ末端シグナルペプチドを利用する。
【0047】
シグナルペプチド、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインすなわち「膜内」ドメインは、多種多様な膜結合タンパク質および/または完全分泌タンパク質について公知である。
【0048】
適している膜貫通ドメインは、ワクシニアウイルスEEV特異的HAタンパク質A56R、またはEEV特異的ワクシニアウイルス膜貫通タンパク質A33R、A34R、A36R、またはB5RのTMドメインを含むことができるが、それらに限定されない。例えば、2013年10月31日に公開され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2013/0288927号を参照されたい。ある特定の局面において、EEV特異的タンパク質、例えば、本明細書において別の場所でより詳細に議論されるワクシニアウイルスタンパク質F13Lは、パルミトイル基を介してウイルスエンベロープの内表面に固定され得る。
【0049】
本明細書において用いられる際、「結合分子」という用語は、その最も広い意味において、受容体、例えば、エピトープまたは抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。本明細書においてさらに記載される際、結合分子は、本明細書に記載される1個または複数個の「抗原結合ドメイン」を含むことができる。結合分子の非限定的な例は、抗原特異的結合を保持する抗体またはその断片である。
【0050】
「結合ドメイン」および「抗原結合ドメイン」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、エピトープに特異的に結合するのに必要であり、かつ十分である結合分子の領域を指す。例えば、「Fv」、例えば、抗体の可変重鎖および可変軽鎖は、2本の別々のポリペプチドサブユニットとしてまたは一本鎖としてのいずれかで、「結合ドメイン」であると考えられる。
【0051】
他の抗原結合ドメインには、非限定的に、ラクダ科の種に由来する抗体の可変重鎖(VHH)、またはフィブロネクチンスキャフォールドにおいて発現させた6個の免疫グロブリン相補性決定領域(CDR)が含まれる。
【0052】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、本明細書において互換的に用いることができる。抗体(または本明細書において開示されるその断片、バリアント、もしくは誘導体)は、少なくとも重鎖の可変領域(例えば、ラクダ科の種について)、または少なくとも重鎖および軽鎖の可変領域を含む。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は、比較的十分に理解されている。例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988)を参照されたい。別の方法で述べられない限り、「抗体」という用語は、抗体の小さな抗原結合断片から完全サイズの抗体、例えば、2本の完全重鎖および2本の完全軽鎖を含むIgG抗体に及ぶ任意のものを包含する。
【0053】
「免疫グロブリン」という用語は、生化学的に識別することができる種々の広いクラスのポリペプチドを含む。当業者は、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、その中にいくつかのサブクラス(例えば、γ1~γ4またはα1~α2)を有することを認識しているであろう。抗体の「クラス」をそれぞれ、IgG、IgM、IgA IgG、またはIgEと決定することが、この鎖の性質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2などは、十分に特徴決定されており、機能的専門化を付与することが公知である。
【0054】
軽鎖は、カッパまたはラムダ(κ、λ)のいずれかとして分類される。各重鎖クラスは、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖のいずれかと結合することができる。概して、免疫グロブリンが、ハイブリドーマ、B細胞、または遺伝子操作された宿主細胞のいずれかによって生成される場合、軽鎖および重鎖は、互いに共有結合で結合しており、2本の重鎖の「尾」部分は、共有結合性ジスルフィド結合または非共有結合性結合によって互いに結合している。重鎖において、アミノ酸配列は、Y形状のフォーク状の端のN末端から、各鎖の底部のC末端まで続く。ある特定の抗体、例えば、IgG抗体の基本構造は、本明細書において「H2L2」構造とも呼ばれる「Y」構造を形成する、ジスルフィド結合を介して共有結合で接続された2本の重鎖サブユニットおよび2本の軽鎖サブユニットを含む。
【0055】
「エピトープ」という用語は、抗体に対する特異的結合が可能である任意の分子決定基を含む。ある特定の局面において、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、またはスルホニルなどの、分子の化学的活性表面のグループ分けを含むことができ、ある特定の局面において、三次元構造特性、および、または特異的な電荷特性を有することができる。エピトープは、抗体が結合する標的の領域である。
【0056】
「標的」という用語は、最も広い意味において、結合分子が結合することができる物質を含むように用いられる。標的は、例えば、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、または他の分子であることができる。さらに、「標的」は、例えば、結合分子が結合することができる、結合エピトープを含む細胞、臓器、または生物であることができる。
【0057】
軽鎖および重鎖は両方とも、構造的および機能的な相同性の領域に分けられる。「定常」および「可変」という用語は、機能的に用いられる。この点において、可変軽(VL)鎖部分および可変重(VH)鎖部分の両方の可変領域(本明細書において互換的に「可変ドメイン」と呼ぶことができる)は、抗原認識および特異性を決定することが認識されるであろう。逆に、軽鎖の定常ドメイン(CL)および重鎖の定常ドメイン(例えば、CH1、CH2、またはCH3)は、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、補体結合などのような生物学的特性を付与する。慣例により、定常領域ドメインのナンバリングは、それらが抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠くになるにつれて増大する。N末端部分が可変領域であり、C末端部分には定常領域があり;CH3(またはIgMの場合にはCH4)ドメインおよびCLドメインは、それぞれ、重鎖および軽鎖のカルボキシ末端にある。
【0058】
抗体抗原結合ドメイン中に存在する、6個の「相補性決定領域」すなわち「CDR」は、抗体が水性環境においてその三次元形状を呈する際に抗原結合ドメインを形成するように特異的に位置づけられる、アミノ酸の短い非連続性の配列である。「フレームワーク」領域と呼ばれる、抗原結合ドメイン中のアミノ酸の残りの部分は、より低い分子間変動性を示す。フレームワーク領域は、主として、βシートコンフォメーションを採り、CDRは、βシート構造を接続し、いくつかの場合にはその一部を形成する、ループを形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間非共有結合性相互作用によってCDRを正確な方向に位置づけることを提供するスキャフォールドを形成するように作用する。位置づけられたCDRによって形成された抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原上のエピトープに対して相補的な表面を画定する。この相補的な表面は、抗体のその同起源のエピトープに対する非共有結合性結合を促進する。それぞれ、CDRおよびフレームワーク領域を作り上げるアミノ酸は、種々の異なる様式において定義されているため、任意の所定の重鎖または軽鎖可変領域について当業者が容易に特定することができる(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、"Sequences of Proteins of Immunological Interest," Kabat, E., et al., U.S. Department of Health and Human Services, (1983);およびChothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 (1987)を参照されたい)。
【0059】
当技術分野内で用いられ、かつ/または許容される用語の2つ以上の定義がある場合には、本明細書において用いられる用語の定義は、それとは反対に明示的に述べられない限り、すべてのそのような意味を含むように意図される。具体例は、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される非連続性の抗原結合部位を説明するための、「相補性決定領域」(「CDR」)という用語の使用である。これらの特定の領域は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるKabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequences of Proteins of Immunological Interest" (1983)およびChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)によって記載されている。免疫グロブリン可変ドメインはまた、CDRを含む可変領域セグメントを特定するために、例えば、IMGT情報システム(www://imgt.cines.fr/)(IMGT(登録商標)/V-Quest)を用いて解析することもできる(例えば、Brochet et al., Nucl. Acids Res., 36:W503-508, 2008を参照されたい)。
【0060】
Kabat et al.はまた、任意の抗体に適用可能である可変ドメイン配列についてのナンバリングシステムも定義した。当業者は、「Kabatナンバリング」のこのシステムを任意の可変ドメイン配列に、配列自体のほかのいかなる実験データにも頼ることなく、明白に割り当てることができる。本明細書において用いられる際、「Kabatナンバリング」とは、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequence of Proteins of Immunological Interest" (1983)によって示されるナンバリングシステムを指す。しかし、Kabatナンバリングシステムの使用が明示的に記されていない限り、連続したナンバリングが、本開示におけるすべてのアミノ酸配列について用いられる。
【0061】
結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab'、およびF(ab')2、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、ラクダ科VHH抗体などの単一ドメイン抗体、VLドメインまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーによって産生される断片が含まれるが、それらに限定されない。scFv分子は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。本開示によって包含される免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスであることができる。また、二価であり、IgNAR可変ドメイン(VNAR)を含む一本鎖を含む、免疫グロブリン新抗原受容体(IgNAR)アイソタイプも企図される。(Walsh et al., Virology 411:132-141, 2011を参照されたい。)
【0062】
「特異的に結合する」によっては、結合分子、例えば、抗体、またはその断片、バリアント、もしくは誘導体が、その抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、および、結合は、抗原結合ドメインとエピトープとの間のいくらかの相補性を必然的に伴うことが、概して意味される。この定義にしたがって、結合分子は、ランダムな無関係のエピトープに結合するであろうよりも容易に、その抗原結合ドメインを介してエピトープに結合する場合に、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。「特異性」という用語は、ある特定の結合分子がある特定のエピトープに結合する相対親和性を認定するために、本明細書において用いられる。例えば、結合分子「A」は、所定のエピトープに対して結合分子「B」よりも高い特異性を有すると考えることができるか、または、結合分子「A」は、関連するエピトープ「D」に対して有するよりも高い特異性で、エピトープ「C」に結合すると言うことができる。
【0063】
本明細書において用いられる際、「親和性」という用語は、例えば、免疫グロブリン分子の、1個または複数個の抗原結合ドメインとの個々のエピトープの結合の強度の測定値を指す。例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988)のページ27~28を参照されたい。本明細書において用いられる際、「結合力」という用語は、抗原結合ドメインの集団と抗原との間の複合体の全体の安定性を指す。例えば、Harlowのページ29~34を参照されたい。結合力は、集団中の個々の抗原結合ドメインの特異的なエピトープとの親和性、ならびにまた、免疫グロブリンおよび抗原の結合価の両方に関連している。例えば、二価モノクローナル抗体と、ポリマーなどの高度に反復するエピトープ構造を有する抗原との間の相互作用は、高い結合力の1つであると考えられる。二価モノクローナル抗体と、細胞表面上に高密度で存在する受容体との間の相互作用もまた、高い結合力であると考えられる。
【0064】
本明細書において用いられる際、「重鎖サブユニット」または「重鎖ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖、結合分子に由来するアミノ酸配列を含み、例えば、重鎖サブユニットを含む抗体は、VHドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央、および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、またはそのバリアントもしくは断片のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0065】
本明細書において用いられる際、「軽鎖サブユニット」または「軽鎖ドメイン」という用語は、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。軽鎖サブユニットは、VLドメインまたはCL(例えば、CκまたはCλ)ドメインのうちの少なくとも1つを含む。
【0066】
結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、バリアント、もしくは誘導体は、それらが認識するかまたは特異的に結合する抗原のエピトープまたは一部分の観点から、記載するかまたは特定することができる。抗体の抗原結合ドメインと特異的に相互作用する標的抗原の一部分が、「エピトープ」または「抗原決定基」である。標的抗原は、単一のエピトープまたは少なくとも2つのエピトープを含むことができ、抗原のサイズ、コンフォメーション、およびタイプに応じて、任意の数のエピトープを含むことができる。
【0067】
本明細書において用いられる際、「連結した」、「融合した」、もしくは「融合物」という用語、または他の文法的同等物は、互換的に用いることができる。これらの用語は、化学的コンジュゲーションまたは組換え手段を含むいかなる手段によっても、2種類以上のエレメントまたは構成要素を合わせて連結することを指す。「インフレーム融合」とは、元のORFの翻訳リーディングフレームを維持する様式で、連続的なより長いオープンリーディングフレーム(ORF)を形成するための、2種類以上のポリヌクレオチドORFの連結を指す。したがって、組換え融合タンパク質は、元のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2種類以上のセグメントを含有する単一のタンパク質(そのセグメントは、通常、天然においてそのように連結されていない)である。リーディングフレームは、このように、融合したセグメントを通して連続的に作られるが、セグメントは、例えば、インフレームリンカー配列によって物理的にまたは空間的に分離され得る。例えば、IMPおよびワクシニアウイルスEEV特異的タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、インフレームで融合していることができるが、「融合した」オープンリーディングフレームが、連続的なポリペプチドの一部として同時翻訳される限り、リンカーまたはスペーサーをコードするポリヌクレオチドによって分離され得る。
【0068】
本明細書において用いられる際、「ヘマグルチニンタグ」または「HAタグ」という用語は、98~106位のアミノ酸に対応するヒトインフルエンザヘマグルチニン表面糖タンパク質(HA)に由来するタンパク質である。HAタグは、発現ベクターにおける一般的なエピトープタグとして広範に用いられる。組換えタンパク質を、組換えタンパク質の生物活性または生体内分布を干渉するとは見られないHAタグを発現するように、操作することができる。このタグは、関心対象のタンパク質の検出、単離、および精製を容易にする。
【0069】
ポリペプチドの文脈において、「直鎖状配列」または「配列」とは、配列中の互いに隣接するアミノ酸がポリペプチドの一次構造において連続性である、アミノ末端すなわちN末端からカルボキシル末端すなわちC末端までのポリペプチドにおけるアミノ酸の順序である。
【0070】
ポリペプチドの別の部分に対して「アミノ末端」すなわち「N末端」であるポリペプチドの部分は、一連のポリペプチド鎖においてより早く来る部分である。同様に、ポリペプチドの別の部分に対して「カルボキシ末端」すなわち「C末端」であるポリペプチドの部分は、一連のポリペプチド鎖においてより後に来る部分である。
【0071】
本明細書において用いられる「発現」という用語は、それによって遺伝子が生化学物質、例えば、ポリペプチドを産生するプロセスを指す。プロセスは、遺伝子ノックダウン、ならびに一過性発現および安定発現の両方を非限定的に含む、細胞内での遺伝子の機能的存在の任意の顕在化を含む。それは、非限定的に、遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)への転写、およびそのようなmRNAのポリペプチドへの翻訳を含む。最終的な望ましい産物が生化学物質である場合、発現は、その生化学物質および任意の前駆体の創出を含む。遺伝子の発現は、「遺伝子産物」を産生する。本明細書において用いられる際、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNA、または、転写物から翻訳されるポリペプチドのいずれかであることができる。本明細書に記載される遺伝子産物は、さらに、転写後修飾、例えば、ポリアデニル化を伴う核酸、または、翻訳後修飾、例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、タンパク質分解性切断などを伴うポリペプチドを含む。
【0072】
「真核生物」または「真核性生物」という用語は、原生動物、真菌、酵母、緑藻、単細胞植物、多細胞植物、ならびに、脊椎動物および無脊椎動物の両方のすべての動物を含む、動物界、植物界、および原生生物界におけるすべての生物を包含するように意図される。用語は、細菌またはウイルスを包含しない。「真核細胞」は、単数の「真核細胞」および複数の「真核細胞」を包含するように意図され、真核生物に由来する細胞を含む。
【0073】
「脊椎動物」という用語は、単数の「脊椎動物」および複数の「脊椎動物」を包含するように意図され、哺乳類および鳥類、ならびに、魚類、爬虫類、および両生類を含む。
【0074】
「哺乳動物」という用語は、単数の「哺乳動物」および複数の「哺乳動物」を包含するように意図され、ヒト;類人猿、サル、オランウータン、およびチンパンジーなどの霊長類;イヌおよびオオカミなどのイヌ科動物;ネコ、ライオン、およびトラなどのネコ科動物;ウマ、ロバ、およびシマウマなどのウマ科動物、ウシ、ブタ、およびヒツジなどの食用動物;シカおよびキリンなどの有蹄動物;マウス、ラット、ハムスター、およびモルモットなどのげっ歯類;ならびにクマを含むが、それらに限定されない。ある特定の局面において、哺乳動物はヒト対象である。
【0075】
「組織培養」または「細胞培養」または「培養」または「培養すること」という用語は、細胞構成の保存、細胞機能の保存、さらなる分化、またはこの3つすべてを可能にする条件下での、インビトロでの植物または動物の組織または細胞の維持または成長を指す。「初代組織細胞」とは、組織から直接採取されたものであり、すなわち、生物において同じ機能を果たす同じ種類の細胞集団である。例えば、そのような組織細胞のタンパク質分解酵素であるトリプシンでの処理は、それらを、培養プレート上に播種した場合に成長するかまたは細胞構成を維持する個々の初代組織細胞に解離する。組織培養において初代細胞の増倍から生じた細胞培養物は、「二次細胞培養物」と呼ばれる。大抵の二次細胞は、有限の回数分裂し、次いで死ぬ。しかし、少しの二次細胞は、この「危機時期」を通過することができ、その後、無期限に増倍して継続的な「細胞株」を形成することができる。その中で細胞を培養する液体培地を、本明細書において「培養培地」または「培養培地」と呼ぶ。所望の分子、例えば、ウイルスまたはタンパク質、例えば、免疫グロブリン分子が、その中での細胞の培養の最中にその中に分泌されている細胞培地を、「調整培地」と呼ぶことができる。
【0076】
本明細書において用いられる際、「特定する」という用語は、所望の分子、例えば、所望の特徴または機能を有する関心対象のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、そのような分子の多数またはライブラリーから差別化される方法を指す。特定法は、「選択」および「スクリーニング」または「パンニング」を含む。本明細書において用いられる際、「選択」法とは、所望の分子を、例えば、薬物耐性を介してライブラリーから直接分離することができるものである。本明細書において用いられる際、「スクリーニング」法または「パンニング」法とは、所望の分子を含むプールを、所望の分子を検出することができるアッセイに供するものである。分子が検出されるプールのアリコートを、次いで、所望の分子由来の高度に濃縮されているプールが達成されるまで、同様にアッセイされる逐次的により小さなプールに分ける。
【0077】
ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスEEVベクター
本明細書において提供されるIMP融合タンパク質は、ポックスウイルスベクター、例えば、ワクシニアウイルスベクターにおいて産生される。「ポックスウイルス」という用語は、ポックスウイルス科の任意のメンバーを含む。例えば、Virology, 2d Edition, B. N. Fields, D. M. Knipe et al., Eds., Raven Press, p. 2080 (1990)中のB. Mossを参照されたい。オルソポックスウイルス属には、例えば、ワクシニアウイルス、痘瘡ウイルス(天然痘を引き起こすウイルス)、およびアライグマポックスウイルスが含まれる。ワクシニアウイルスは、基本型のオルソポックスウイルスであり、異種タンパク質の発現用のベクターとして、開発されてきており、かつ十分に特徴決定されている。
【0078】
ポックスウイルスベクター、特にワクシニアウイルスベクターが、本明細書にて提供されるIMP融合タンパク質を発現するために用いられる態様において、任意の適しているポックスウイルスベクターを用いることができる。ある特定の局面において、IMP融合タンパク質をコードする遺伝子の位置は、感染性ウイルスが産生されるように、ウイルスの成長および複製にとっては非必須であるベクターの領域にあることができる。ワクシニアウイルスゲノムの様々な非必須領域が特徴決定されてきているが、外来遺伝子の挿入のために最も広く用いられる遺伝子座は、ゲノムのHindIII J断片中に位置するチミジンキナーゼ座である。ある特定のワクシニアウイルスベクターにおいて、tk座は、本明細書において別の場所で記載されるように、三分子組換え法組換えウイルス作製の好都合な使用を可能にする、1個または2個の特有の制限酵素部位を含有するように操作されている。
【0079】
本明細書において提供されるIMP融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、ポックスウイルス感染細胞の細胞質において機能する転写制御領域との機能的結合の下で、ポックスウイルスベクター、特にワクシニアウイルスベクター中に挿入することができる。
【0080】
ポックスウイルス転写制御領域は、プロモーターおよび転写終結シグナルを含む。ポックスウイルスにおける遺伝子発現は、時間的に調節されており、初期遺伝子、中間遺伝子、および後期遺伝子のためのプロモーターは、変動する構造を保有する。ある特定のポックスウイルス遺伝子は、構成性に発現しており、これらの「初期-後期」遺伝子のためのプロモーターは、ハイブリッド構造を持つ。合成初期-後期プロモーターもまた、開発されてきている。本明細書において提供されるIMP融合タンパク質を発現するのに適しているポックスウイルスプロモーターには、7.5-kDプロモーター、MILプロモーター、37-kDプロモーター、11-kDプロモーター、11Lプロモーター、12Lプロモーター、13Lプロモーター、15Lプロモーター、17Lプロモーター、28-kDプロモーター、H1Lプロモーター、H3Lプロモーター、H5Lプロモーター、H6Lプロモーター、H8Lプロモーター、D11Lプロモーター、D12Lプロモーター、D13Lプロモーター、A1Lプロモーター、A2Lプロモーター、A3Lプロモーター、およびP4bプロモーターなどの後期プロモーターが含まれるが、それらに限定されない。例えば、Virology, 2d Edition, B. N. Fields, D. M. Knipe et al., Eds., Raven Press, p. 2090 (1990)中のMoss, B., "Poxviridae and their Replication"を参照されたい。
【0081】
適しているポックスウイルスベクターには、野生型ワクシニアウイルス、例えば、ウェスタンリザーブ(Western Reserve)株もしくはWR株、または、弱毒化ワクシニアウイルス、例えば、改変ワクシニアアンカラ(Ankara)(MVA)(Mayr, A. et al., Infection 3:6-14 (1975))が含まれる。
【0082】
ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスは、その複製サイクルの最中に、その膜構造が異なる4種類の感染性形態:細胞内成熟ビリオン(IMV)、細胞内エンベロープビリオン(IEV)、細胞結合エンベロープビリオン(CEV)、および細胞外エンベロープビリオン(EEV)を産生する。一般的見解は、IMVは単一のリポタンパク質膜を有し、他方、CEVおよびEEVは両方とも、2つの膜層によって囲まれており、IEVは3つのエンベロープを有することである。EEVは、宿主細胞の形質膜から脱落し、EEV膜は、トランスゴルジに由来する。
【0083】
感染後、ウイルスはその膜を失い、DNA/タンパク質コアが、微小管に沿って細胞中に輸送される。初期ワクシニアmRNAによってコードされるタンパク質(「初期」はDNA複製前として定義される)は、ワクシニアコアの脱コートおよびその後のDNA複製をもたらす。この複製は、ERの本質的に上部に位置する「ウイルス工場」と称されるものにおいて起こる。ウイルス工場内で、未熟ビリオン(IV)がアセンブルし、プロセシングされてIMV(細胞内成熟ウイルス)を形成する。IMVは、ERに由来する膜を含有する。IMVの大多数は、細胞溶解によって細胞から放出される。いくつかのIMVは、トランスゴルジネットワークまたは初期エンドソームの膜によるラッピングの部位まで、微小管上を輸送される。二重膜によるIMV粒子のラッピングは、IEV(細胞内エンベロープウイルス)と呼ばれるワクシニアの形態を創出する。IEVは、次いで、細胞表面まで微小管上を輸送される。外側IEV膜が、形質膜と融合して、細胞表面でCEV(細胞結合エンベロープウイルス)を曝露する。宿主細胞由来のアクチン重合が、CEVを駆動して隣接細胞に感染させ得るか、またはウイルスが、EEVとして放出され得る。例えば、Kim L. Roberts and Geoffrey L. Smith. Trends in Microbiology 16(10):472-479 (2008);Geoffrey L. Smith, et al., Journal of General Virology 83:2915-2931 (2002)を参照されたい。
【0084】
少なくとも6種類のウイルスにコードされたタンパク質が、EEVエンベロープ膜の構成要素として報告されている。これらのうち、4種類のタンパク質(A33R、A34R、A56R、およびB5R)は、糖タンパク質であり、1種類(A36R)は、非グリコシル化膜貫通タンパク質であり、1種類(F13L)は、パルミトイル化末梢膜タンパク質である。例えば、Lorenzo et al., Journal of Virology 74(22):10535 (2000)を参照されたい。感染の最中に、これらのタンパク質は、ゴルジ複合体に局在化し、そこでそれらは感染性ウイルス中に組み入れられ、次いで、感染性ウイルスが輸送されて細胞外培地中に放出される。本明細書において提供される際、IMP融合タンパク質は、EEV特異的タンパク質、例えば、F13LまたはA56Rとの融合タンパク質としてEEV膜に方向づけられ、その上に発現する。
【0085】
F13Lタンパク質は、システイン185および186のパルミトイル化を通して、最も外側のEEV膜の内部表面に結合している。Smith Trends in Microbiol. 16:472-479 (2008)。F13Lをコードする遺伝子が欠失しているワクシニアウイルスは、小さなプラークを形成し、産生されるEEVの数は有意に低減している。
【0086】
ワクシニアウイルスWR株由来のF13Lタンパク質のアミノ酸配列を、SEQ ID NO: 1として示す。2個のパルミトイル化システイン残基(SEQ ID NO: 1の85および86位のアミノ酸)に下線を引いている。F13Lは、膜を横切らないため、膜貫通ドメインまたはシグナルペプチドを有さない。
【0087】
A56Rタンパク質は、ワクシニアウイルスヘマグルチニンであり、アミノ末端細胞外(「膜外」)ドメイン、1回膜貫通ドメイン、および細胞質(「膜内」)ドメインを含む、標準的なI型膜内在性タンパク質である。A56Rは、約33個のアミノ酸のN末端シグナルペプチド、約34位~約103位のアミノ酸にわたるIg様ドメイン、約121位~約275位のアミノ酸にわたるストーク領域、約276位~約303位のアミノ酸にわたる膜貫通ドメイン、および約304位~314位のアミノ酸にわたる細胞質(「膜内」)ドメインを含む。DeHaven et al., J. Gen Virol. 92:1971-1980 (2011)を参照されたい。A56Rを、SEQ ID NO: 5として示す。
【0088】
本明細書において提供されるIMP融合タンパク質は、任意の適しているワクシニアウイルスにおいて発現させることができる。ある特定の態様において、EEV融合タンパク質をコードするDNAを、感染性ウイルスが産生されるように、ベクターの成長および複製にとって非必須であるワクシニアウイルスゲノムの領域中に挿入することができる。ワクシニアウイルスゲノムの様々な非必須領域が特徴決定されてきているが、外来遺伝子の挿入のために最も広く用いられる遺伝子座は、ゲノムのHindIII J断片中に位置するチミジンキナーゼ座である。本明細書において提供されるIMP融合タンパク質は、ポックスウイルス感染細胞の細胞質において機能する転写制御領域との機能的結合の下で、ワクシニアウイルスベクター中に挿入することができる。
【0089】
本明細書に記載される方法における使用に適しているプロモーターには、非限定的に、初期/後期7.5-kDプロモーター、または初期/後期H5プロモーター(またはそのバリアント)が含まれる。
【0090】
三分子組換え法
ZaudererのPCT公開番号第WO 00/028016号および米国特許第7,858,559号において開示されている三分子組換えは、関心対象のタンパク質を発現させるため、および、またはワクシニアウイルスにおいてライブラリーを作製するための、高効率、高力価の作製法である。三分子組換え法により、少なくとも90%の効率、および、少なくとも、直接ライゲーションによって得られるものよりも少なくとも2桁高い力価での組換えウイルスの生成が可能になる。
【0091】
ある特定の局面において、本明細書に記載される、ワクシニアウイルスにおける発現およびEEV上での提示のためのIMP融合タンパク質は、三分子組換えによって、ポックスウイルスベクター、例えば、ワクシニアウイルスベクターにおいて構築することができる。
【0092】
ある特定の態様において、ワクシニアウイルスTk遺伝子中のポリヌクレオチド隣接領域、ワクシニアウイルスH5プロモーター、および、所望の融合タンパク質についてのコード領域を挿入するためのNcoI制限部位およびBsiWI制限部位を含む、EEVにおける発現のためのIMP融合タンパク質用の導入プラスミドが提供される。
【0093】
膜内在性タンパク質
本開示は、膜内在性タンパク質(IMP)を、タンパク質が天然に発現している細胞において出現するであろうような、タンパク質の天然コンフォメーションにほぼ等しい、コンフォメーションが無傷の状態で発現させるための方法を提供する。本開示にしたがって、IMPを、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスEEV上に発現しているポックスウイルスタンパク質との融合タンパク質として発現させる。本明細書において提供されるIMP融合タンパク質は、EEVの表面上で発現されて提示される場合に、結合分子のライブラリー、例えば、抗体提示ライブラリーをスクリーニングするための標的抗原として有用である。
【0094】
任意のIMPを、本明細書において提供される方法にしたがって、融合タンパク質として構築することができる。ある特定の局面において、IMPは、免疫療法の標的である。ある特定の局面において、IMPは、CD20またはGタンパク質共役受容体(GPCR)などの複数回貫通IMPである。本明細書において提供されるIMP融合タンパク質の構築における使用に適している複数回貫通ヒトIMPには、非限定的に、表1に列挙されるタンパク質が含まれる。
【0095】
(表1)例示的なヒト複数回貫通膜内在性タンパク質
【0096】
ある特定の局面において、複数回貫通IMPは、GPCR、例えば、FZD4またはCXCR4である。ある特定の局面において、複数回貫通IMPは、CD20である。
【0097】
ポックスウイルスEEV上での発現のための、IMP融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
本開示は、膜内在性タンパク質またはその断片の、ワクシニアウイルスEEVに特異的なタンパク質またはその断片との融合物としての、生体膜の文脈においてコンフォメーションが無傷の形態での発現のための、単離されたポリヌクレオチドを提供する。「コンフォメーションが無傷」によっては、タンパク質が、その天然の状態で出現するであろうと同じ程度に、生体脂質二重層膜の文脈において天然コンフォメーションまたは天然に近いコンフォメーションで出現するか、または提示されることが意味される。
【0098】
1つの局面において、本開示は、膜内在性タンパク質(IMP)またはその断片、例えば、複数回貫通IMPをコードする第1の核酸断片であって、該IMPまたはその断片が、少なくとも1個の膜外領域、少なくとも1個の膜貫通ドメイン、および少なくとも1個の膜内領域を含み、かつ少なくとも1個の膜内領域をコードする該第1の核酸断片の一部分が、該第1の核酸断片の5'端または3'端に位置している、第1の核酸断片;ならびに、ワクシニアウイルスF13Lタンパク質(SEQ ID NO: 1)またはその機能的断片をコードする第2の核酸断片であって、IMPの膜内領域をコードする該第1の核酸断片の一部分にインフレームで融合している、第2の核酸断片を含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。第1の核酸断片と第2の核酸断片とは、いくつかの場合、リンカーまたは他のスペーサーをコードする核酸によって分離され得る。ポリヌクレオチドは、さらに、ポックスウイルス感染細胞の細胞質におけるポリヌクレオチドの発現を可能にする、第1の核酸断片および第2の核酸断片に機能的に結合したポックスウイルスプロモーターを含むことができる。この局面にしたがって、ポリヌクレオチドを含有するポックスウイルス感染細胞は、細胞外エンベロープビリオン(EEV)の外側エンベロープ膜の一部としてIMP-F13L融合タンパク質を発現することができる。IMPのF13Lとの融合物としての発現を示す模式図を、図1Bおよび図1Cに示す。
【0099】
ある特定の局面において、IMPまたはその断片は、表1に列挙されているものなどの、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、またはさらにそれよりも多い膜貫通(TM)ドメインを含む、複数回貫通膜タンパク質であることができる。
【0100】
IMPが、奇数のTMドメインを有する場合には、N末端またはC末端のいずれかの、IMPの一方の端が、天然で、生体膜の膜外側に位置することになり、IMPの他方の端が、IMPの膜内側に位置することになる。F13Lタンパク質は、ポックスウイルスEEVの外膜に対して全体に内部にあるため、膜に対して内部に位置するN末端またはC末端のIMPの端が、F13Lに融合していることができる。このように、タンパク質のN末端が膜外であり、C末端が膜内である典型的な7-TMドメインGPCRなどのIMPについて、F13LのN末端は、図1Bに示すようにGPCRのC末端に融合していることができる。したがって、第1の核酸断片が、奇数の膜貫通ドメインを有するIMPをコードし、第1の核酸断片の5'端が、膜外領域をコードし、かつ第1の核酸断片の3'端が、IMPの膜内領域をコードしており、後者が、F13Lまたはその断片をコードする核酸断片の5'端に融合している、上記のようなポリヌクレオチドが提供される。
【0101】
このタイプの例示的なポリヌクレオチドにおいて、第1のポリヌクレオチドは、F13LのN末端に融合した、ある特定のヒトがんの免疫療法の標的である、ヒトfrizzled-4タンパク質(FZD4)またはその断片をコードすることができる。したがって、FZD4-F13L融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。本局面にしたがう例示的なポリヌクレオチドは、下記に示すような、成熟融合タンパク質であるSEQ ID NO: 2の20~892位のアミノ酸をコードする。ポリヌクレオチドは、さらに、シグナルペプチド、例えば、FZD4のシグナルペプチドであるSEQ ID NO: 2の1~19位のアミノ酸をコードすることができる。
一重下線‐リーダーペプチド(1~19位のアミノ酸)
太字‐ヒトFzd4(20~520位のアミノ酸)
斜体‐F13L(521~892位のアミノ酸)
【0102】
このタイプの別の例示的なポリヌクレオチドにおいて、第1のポリヌクレオチドは、F13LのN末端に融合した、CXCケモカイン受容体またはその断片をコードすることができる。CXCケモカイン受容体は、同様に、ある特定のヒトがんの免疫療法の標的である。例示的なCXCケモカイン受容体は、CXCR4またはその断片である。したがって、CXCケモカイン受容体-F13L融合タンパク質、例えば、CXCR4-F13L融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。この局面にしたがう例示的なポリヌクレオチドは、下記に示すようなSEQ ID NO: 3をコードする。
太字‐ヒトCXCR4(1~356位のアミノ酸)
斜体‐F13L(357~728位のアミノ酸)
【0103】
当業者に明白であるように、偶数の膜貫通ドメインを有する複数回貫通膜タンパク質は、そのN末端およびそのC末端が、膜の膜外側または膜の膜内側のいずれかの、膜の同じ側であるように、生体膜中に挿入されることになる。F13Lタンパク質は、全体的にポックスウイルスEEVの膜内側に位置しているため、膜に適正に埋め込まれたIMP-F13L融合タンパク質の形成は、IMPまたはその断片のN末端またはC末端の少なくとも1つが膜に対して内部である必要があることになる。IMPが偶数のTMドメインを有し、両方が内部に位置している場合に、F13Lタンパク質は、IMPのN末端またはIMPのC末端のいずれかに融合していることができる。完全長IMPが、N末端およびC末端が両方とも膜外であるように位置している場合に、奇数のTMドメインを有するIMPの断片は、F13Lに融合していることができる。
【0104】
したがって、本開示は、第1の核酸断片の5'端および3'端が両方とも膜内領域をコードする、偶数の膜貫通ドメインを有するIMPをコードする上記のようなポリヌクレオチドを提供する。ある特定の局面において、F13Lをコードする核酸断片の3'端は、IMPをコードする核酸断片の5'端に融合していることができ、ある特定の局面において、F13Lをコードする核酸断片の5'端は、IMPをコードする核酸断片の3'端に融合していることができる。
【0105】
このタイプの例示的なIMPは、B細胞白血病、リンパ腫、および骨髄腫の免疫療法の標的である、ヒトB細胞上に発現する4-TMドメインIMPのヒトCD20である。CD20のC末端がF13LのN末端に融合しているCD20-F13L融合タンパク質の図解を、図1Cに示す。したがって、CD20-F13L融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。この局面にしたがう例示的なポリヌクレオチドは、下記に示すようなSEQ ID NO: 4をコードする。
太字‐ヒトCD20(MS4A1)(1~298位のアミノ酸)
斜体‐F13L(299~669位のアミノ酸)
【0106】
上記で提供されるポリヌクレオチドにおいて、第1の核酸断片と第2の核酸断片とは、直接融合していることができるか、あるいは、リンカーまたはスペーサーまたは他のポリペプチド断片をコードする核酸断片によって分離され得る。ある特定の局面において、上記で提供されるポリヌクレオチドは、さらに、第1の核酸断片と第2の核酸断片との間、またはいずれかの側のいずれかに、異種ペプチドポリペプチドをコードする第3の核酸断片を含むことができる。異種ペプチドは、例えば、リンカー配列、アミノ酸タグもしくは標識、または精製を容易にするペプチドもしくはポリペプチド配列であることができる。ある特定の局面において、異種ペプチドは、例えば、融合タンパク質のC末端に融合した6ヒスチジンタグである。
【0107】
ある特定の局面において、本明細書において提供されるポリヌクレオチドは、ポックスウイルスプロモーターに機能的に結合している。適しているプロモーターは、本明細書において別の場所で記載される。ある特定の局面において、プロモーターは、ポックスウイルスp7.5プロモーターまたはポックスウイルスH5プロモーターである。
【0108】
本明細書において提供されるポリヌクレオチドは、ポックスウイルスゲノムであることができるか、またはその一部であることができ、該ポックスウイルスゲノムは、適している許容状態の宿主細胞中への導入時に、その表面上にIMP-F13L融合タンパク質を提示する感染性EEVを産生することができる。ある特定の局面において、ポックスウイルスゲノムは、ワクシニアウイルスゲノム、例えば、ワクシニアウイルスWRゲノムまたはMVAゲノムである。記載されるポリヌクレオチドを含むポックスウイルスゲノムは、標準的な分子生物学的技法およびウイルス学技法によって、例えば、本明細書に記載される三分子組換えを用いることによって作製することができる。本明細書において提供されるポックスウイルスゲノムは、組換えポックスウイルスの一部として、または、適しているヘルパーウイルス、例えば、鶏痘ウイルスを伴う裸のDNAとして、許容状態の細胞中に導入することができる。本開示は、さらに、組換えポックスウイルス、例えば、提供されるポックスウイルスゲノムを含む組換えワクシニアウイルスを提供する。
【0109】
IMP-EEV融合タンパク質、組換えポックスウイルスEEV、および作製法
本開示は、さらに、上記のポリヌクレオチドによってコードされるものなどの、IMP-F13L融合タンパク質を提供する。さらに、IMP-F13L融合タンパク質は、組換えポックスウイルスEEV、例えば、組換えワクシニアウイルスEEVの表面上に発現させることができる。組換えポックスウイルスEEV、例えば、提供される融合タンパク質を含む組換えワクシニアウイルスEEVが、本開示によって提供される。組換えポックスウイルスEEVは、ワクシニアウイルス感染性に対して許容状態の宿主細胞に、上記で提供されるポックスウイルスゲノムを含むワクシニアウイルスを感染させる工程、および、感染宿主細胞から放出されるEEVを回収する工程を含む方法によって、作製することができる。したがって、上記のようなポリヌクレオチドによってコードされるIMP-F13L融合タンパク質が提供される。
【0110】
さらに、本開示は、F13L、A56R、B5R、33R、A34R、またはA36RなどのEEVに特異的な、ポックスウイルスタンパク質、例えば、ワクシニアウイルスタンパク質に融合した、複数回貫通IMP、および1回貫通IMP、またはさらにちょうどIMPの細胞外ドメイン(ECD)であることができるIMPまたはその断片を含む融合タンパク質、「IMP-EEV融合タンパク質」を提供する。例示的なECD融合タンパク質を、以下に記載する。本明細書において提供されるIMP-EEV融合タンパク質は、IMP、例えば、複数回貫通IMP、1回貫通IMP、またはIMPのECDを、ポックスウイルスEEVの表面上にコンフォメーションが無傷の形態で提示することができる。標的IMPに特異的に結合する抗原結合ドメインについての抗体提示ライブラリーのスクリーニングにおける使用のために、ポックスウイルスEEVの表面上のIMPの提示は、典型的であるような、組換え細胞、例えば、CHO細胞の表面上にIMPを提示することを上回る、多くの利点をもたらす。例えば、IMPを、細胞上よりもEEV上で、より高密度で発現させることができる。さらに、EEVは、細胞の表面上で発現され得る数百とは対照的に、その表面上に約6種類の異なるポックスウイルスタンパク質(例えば、F13L、A56R、B5R、33R、A34R、およびA36R)のみを発現する。最後に、本明細書において提供されるIMP-F13L融合タンパク質を発現する不活性化EEVは、固体支持体に付着させることができ、ライブラリースクリーニングにおける利便性をもたらす。
【0111】
したがって、本開示は、膜内在性タンパク質(IMP)またはその断片を、例えば、IMPに特異的な抗原結合ドメインについての抗体提示ライブラリーのスクリーニングにおける使用のために、天然コンフォメーションで提示する方法を提供する。方法は、ポックスウイルス感染性に対して許容状態の宿主細胞に、IMPまたはその断片をポックスウイルスEEV特異的タンパク質またはその膜結合断片との融合タンパク質として発現する組換えポックスウイルスを感染させる工程であって、感染宿主細胞によって産生されるEEVが、EEV外側エンベロープ膜の一部としてIMPを含む、工程;および、宿主細胞から放出されるEEVを回収する工程を含む。IMP。ある特定の局面において、EEV特異的タンパク質またはその断片は、ワクシニアウイルスA33Rタンパク質、A34Rタンパク質、A56Rタンパク質、B5Rタンパク質、A36Rタンパク質、F13Lタンパク質、その任意の膜結合断片、またはその任意の組み合わせであることができる。
【0112】
ある特定の局面において、EEV特異的タンパク質は、F13L(SEQ ID NO: 1)またはその機能的断片であり、例えば、IMPが、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、または少なくとも7個の膜貫通ドメインを含む複数回貫通膜タンパク質である場合に、融合タンパク質は、上記で提供されるポリヌクレオチドによって発現されるものであることができる。
【0113】
ある特定の局面において、膜結合EEV特異的タンパク質断片は、SEQ ID NO: 5の108~314位のアミノ酸を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる断片である、ワクシニアウイルスA56Rタンパク質のストークドメイン、膜貫通ドメイン、および膜内ドメインを含む。いくつかの例示的な融合パートナーのうちの1つは、下記のSEQ ID NO: 6中に太字で示す、ヒトFZD4のECDを含む。この例示的局面にしたがって、本開示は、ポックスウイルス感染性に対して許容状態の宿主細胞に、SEQ ID NO: 6の20~370位のアミノ酸を含む融合タンパク質をコードする組換えポックスウイルスを感染させる工程を含む、ヒトFZD4のコンフォメーションが無傷の断片をポックスウイルスEEVの表面上に提示する方法を提供する。ある特定の局面において、融合タンパク質は、さらに、シグナルペプチド、例えば、SEQ ID NO: 6の1~19位のアミノ酸を含むことができる。
一重下線‐リーダーペプチド(1~19位のアミノ酸)
太字‐ヒトFZD4細胞外ドメイン(20~163位のアミノ酸)
斜体‐A56Rストーク、膜貫通、および膜内(164~370位のアミノ酸)
【0114】
別の例示的な融合パートナーは、下記のSEQ ID NO: 7中に太字で示す、ヒトErbB2(Her2)のECDを含む。この例示的局面にしたがって、本開示は、ポックスウイルス感染性に対して許容状態の宿主細胞に、SEQ ID NO: 7の20~855位のアミノ酸を含む融合タンパク質をコードする組換えポックスウイルスを感染させる工程を含む、ヒトHer2のコンフォメーションが無傷の断片をポックスウイルスEEVの表面上に提示する方法を提供する。ある特定の局面において、融合タンパク質は、さらに、シグナルペプチド、例えば、SEQ ID NO: 7の1~19位のアミノ酸を含むことができる。
一重下線‐リーダーペプチド(1~19位のアミノ酸)
太字‐ヒトERBB2(HER2)細胞外ドメイン(20~648位のアミノ酸)
斜体‐A56Rストーク、膜貫通、および膜内(649~855位のアミノ酸)
【0115】
別の例示的な融合パートナーは、下記のSEQ ID NO: 8中に太字で示す、ヒトCD100(セマフォリン4D)のECDを含む。この例示的局面にしたがって、本開示は、ポックスウイルス感染性に対して許容状態の宿主細胞に、SEQ ID NO: 8の20~935位のアミノ酸を含む融合タンパク質をコードする組換えポックスウイルスを感染させる工程を含む、ヒトCD100のコンフォメーションが無傷の断片をポックスウイルスEEVの表面上に提示する方法を提供する。ある特定の局面において、融合タンパク質は、さらに、シグナルペプチド、例えば、SEQ ID NO: 8の1~19位のアミノ酸を含むことができる。
一重下線‐リーダーペプチド(1~19位のアミノ酸)
太字‐ヒトCD100細胞外ドメイン(20~728位のアミノ酸)
斜体‐A56Rストーク、膜貫通、および膜内(729~935位のアミノ酸)
【0116】
ある特定の局面において、膜結合EEV特異的タンパク質断片は、SEQ ID NO: 9の276~317位のアミノ酸を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる断片である、ワクシニアウイルスB5Rタンパク質の膜貫通ドメインおよび膜内ドメインを含む。ある特定の局面において、膜結合EEV特異的タンパク質断片は、SEQ ID NO: 9の238~317位のアミノ酸を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる断片である、ワクシニアウイルスB5Rタンパク質のストークドメイン、膜貫通ドメイン、および膜内ドメインを含む。
【0117】
ある特定の例示的局面において、B5R断片のためのIMP融合パートナーは、下記のSEQ ID NO: 10およびSEQ ID NO: 11中に太字で示す、ヒトFZD4の細胞外ドメインを含む。この例示的局面にしたがって、本開示は、ポックスウイルス感染性に対して許容状態の宿主細胞に、SEQ ID NO: 10の20~243位のアミノ酸またはSEQ ID NO: 11の20~281位のアミノ酸を含む融合タンパク質をコードする組換えポックスウイルスを感染させる工程を含む、ヒトFZD4のコンフォメーションが無傷の断片をポックスウイルスEEVの表面上に提示する方法を提供する。ある特定の局面において、融合タンパク質は、さらに、シグナルペプチド、例えば、SEQ ID NO: 10の1~19位のアミノ酸を含むことができる。
一重下線‐リーダーペプチド(1~19位のアミノ酸)
太字‐ヒトFZD4細胞外ドメイン(20~200位のアミノ酸)
斜体‐B5R TMおよび細胞質尾部(201~243位のアミノ酸)
一重下線‐リーダーペプチド(1~19位のアミノ酸)
太字‐ヒトFZD4細胞外ドメイン(20~200位のアミノ酸)
斜体‐B5Rストーク、TM、および細胞質尾部(201~281位のアミノ酸)
【0118】
本開示は、さらに、SEQ ID NO: 2の20~892位のアミノ酸;SEQ ID NO: 3;SEQ ID NO: 4;SEQ ID NO: 6の20~370位のアミノ酸;SEQ ID NO: 7の20~855位のアミノ酸;SEQ ID NO: 8の20~935位のアミノ酸;SEQ ID NO: 10の20~243位のアミノ酸;またはSEQ ID NO: 11の20~281位のアミノ酸、その任意の組み合わせ、その任意の断片、またはその任意のバリアントを含む融合タンパク質を提供し、該融合タンパク質は、組換えポックスウイルスによって発現された場合に、ポックスウイルス細胞外エンベロープビリオン(EEV)の表面上に天然コンフォメーションで出現する。
【0119】
本明細書において提供される任意のEEV融合タンパク質を含む組換えポックスウイルスEEVもまた、提供される。
【0120】
抗体を選択する方法
本開示は、さらに、関心対象の複数回貫通膜タンパク質に結合する結合分子、例えば、抗体、抗原結合抗体断片、または抗体様結合分子を選択する方法を提供する。方法は、本明細書において提供される組換えEEVを、固体支持体に付着させる工程であって、該組換えEEVが、その表面上に複数回貫通タンパク質を提示することができる工程;多数の抗原結合ドメインを提示する提示パッケージを含む提示ライブラリー、例えば、抗体提示ライブラリーを提供する工程;EEV上に発現したIMPに特異的に結合する抗原結合ドメインを提示する提示パッケージが、それに結合できるように、提示ライブラリーをEEVと接触させる工程;結合していない提示パッケージを除去する工程;および、EEV上に発現したIMPに特異的な抗原結合ドメインを提示する提示パッケージを回収する工程を含む。
【0121】
多数の結合ドメイン、例えば、抗体、抗体様分子、または他の結合分子を含む任意の提示ライブラリーが、本方法に適している。例えば、提示ライブラリーは、ファージ提示ライブラリー、酵母提示ライブラリー、または本明細書において別の場所で記載されるワクシニアウイルスベクターにおいて構築されたライブラリーであることができる。
【0122】
ある特定の局面において、組換えEEVは、固体支持体への付着の前に不活性化され得る。例えば、EEVは、UV照射の存在下でのソラレン(トリオキサレン、4'-アミノメチル-、塩酸塩)とのインキュベーションによって不活性化され得る。
【0123】
任意の適している固体支持体を、用いることができる。本明細書において用いられる際、「固体支持体」とは、当技術分野において公知であるような、種々の形態のうちの任意であることができる、EEVを結合できる任意の支持体である。周知の支持体には、組織培養プラスチック、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロースおよび改変セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩、および磁鉄鉱が含まれる。担体の性質は、本開示の目的で、ある程度まで可溶性、または不溶性のいずれかであることができる。支持体材料は、カップリングしたEEVが、抗体などの提示された結合分子に結合することができる限り、事実上任意の構造形状を有することができる。このように、支持体形状は、ビーズにおけるように球形であるか、または、試験管の内側表面もしくはロッドの外表面におけるように円柱形であることができる。あるいは、表面は、シート、試験ストリップなどのように平坦であることができる。典型的な支持体には、ビーズ、例えば、磁石によって懸濁液から取り出すことができるDYNABEADS(登録商標)などの磁気ポリスチレンビーズが含まれる。支持体形状には、チューブ、ビーズ、マイクロビーズ、ウェル、プレート、組織培養プレート、ペトリプレート、マイクロプレート、マイクロタイタープレート、フラスコ、スティック、ストリップ、バイアル、パドルなどが含まれ得る。固体支持体は、磁気性または非磁気性であることができる。当業者は、本明細書において提供されるEEVを結合するのに適している多くの他の担体を知っているか、または、同じものを容易に把握することができるであろう。ある特定の局面において、本明細書において提供されるEEVは、例えば、表面に付着したトシル基、エポキシ基、カルボン酸基、またはアミノ基との反応を介して、固体支持体に付着され得る。例えば、EEVは、トシル活性化磁気ビーズ、例えば、MYONE(商標)トシル活性化ビーズの表面に付着され得る。あるいは、EEVは、ビオチン化されて、ストレプトアビジン固体表面、例えば、ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズに付着され得る。
【0124】
本開示は、別の方法で示されない限り、当技術分野の技能内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来の技法を使用する。そのような技法は、文献において完全に説明されている。(例えば、Sambrook et al., ed. (1989) Molecular Cloning A Laboratory Manual (2nd ed.; Cold Spring Harbor Laboratory Press);Sambrook et al., ed. (1992) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (Cold Springs Harbor Laboratory, NY);D. N. Glover ed., (1985) DNA Cloning, Volumes I and II;Gait, ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis;Mullis et al. 米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins, eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins, eds. (1984) Transcription And Translation;Freshney (1987) Culture Of Animal Cells (Alan R. Liss, Inc.);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press) (1986);Perbal (1984) A Practical Guide To Molecular Cloning;学術論文、Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells, (Cold Spring Harbor Laboratory);Wu et al., eds., Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155;Mayer and Walker, eds. (1987) Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Academic Press, London);Weir and Blackwell, eds., (1986) Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV;Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1986);およびAusubel et al. (1989) Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, Baltimore, Md.)を参照されたい。)
【0125】
抗体工学の一般原理は、Borrebaeck, ed. (1995) Antibody Engineering (2nd ed.; Oxford Univ. Press)に示されている。タンパク質工学の一般原理は、Rickwood et al., eds. (1995) Protein Engineering, A Practical Approach (IRL Press at Oxford Univ. Press, Oxford, Eng.)に示されている。抗体および抗体-ハプテン結合の一般原理は、Nisonoff (1984) Molecular Immunology (2nd ed.; Sinauer Associates, Sunderland, Mass.);およびSteward (1984) Antibodies, Their Structure and Function (Chapman and Hall, New York, N.Y.)に示されている。追加的に、当技術分野において公知であり、具体的には記載されていない免疫学における標準的な方法は、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York;Stites et al., eds. (1994) Basic and Clinical Immunology (8th ed; Appleton & Lange, Norwalk, Conn.)およびMishell and Shiigi (eds) (1980) Selected Methods in Cellular Immunology (W.H. Freeman and Co., NY)にしたがうことができる。
【0126】
免疫学の一般原理を示す標準的な参照著作物には、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York;Klein (1982) J., Immunology: The Science of Self-Nonself Discrimination (John Wiley & Sons, NY);Kennett et al., eds. (1980) Monoclonal Antibodies, Hybridoma: A New Dimension in Biological Analyses (Plenum Press, NY);Campbell (1984) "Monoclonal Antibody Technology" in Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, ed. Burden et al., (Elsevier, Amsterdam);Goldsby et al., eds. (2000) Kuby Immunology (4th ed.; H. Freeman & Co.);Roitt et al. (2001) Immunology (6th ed.; London: Mosby);Abbas et al. (2005) Cellular and Molecular Immunology (5th ed.; Elsevier Health Sciences Division);Kontermann and Dubel (2001) Antibody Engineering (Springer Verlag);Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press);Lewin (2003) Genes VIII (Prentice Hall, 2003);Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press);Dieffenbach and Dveksler (2003) PCR Primer (Cold Spring Harbor Press)が含まれる。
【0127】
上記で引用される参照文献のすべて、および本明細書において引用されるすべての参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。以下の実施例は、例証を目的として与えられ、限定を目的としては与えられない。
【実施例
【0128】
実施例1:融合タンパク質構築
IMPを、以下の方法によって、EEV特異的タンパク質F13L、A56R、およびB5Rを用いてワクシニアウイルスEEV中に組み込んだ。概して、図1Aに図解するように、HER2、CD100(セマフォリン4D)、およびFZD4の細胞外ドメインを、1回貫通EEV特異的膜タンパク質A56RおよびB5Rとの融合物として組み込んだ。成熟FZD4-ECD-A56R融合タンパク質は、SEQ ID NO: 6の20~370位のアミノ酸を含み、成熟HER2-ECD-A56R融合タンパク質は、SEQ ID NO: 7の20~855位のアミノ酸を含み、成熟CD100-ECD-A56R融合タンパク質は、SEQ ID NO: 8の20~935位のアミノ酸を含む。図1Bおよび図1Cは、GPCRおよびCD20などの複数回貫通タンパク質をいかに、EEV膜結合タンパク質F13Lとの融合物としての複数回貫通膜タンパク質としてEEV中に組み込むことができるかを、図解的に示す。
【0129】
F13L融合タンパク質(FZD4-F13L、CD20-F13L、およびCXCR4-F13L)の調製
IMPをコードするcDNAを、パルミトイル化EEV膜糖タンパク質をコードするワクシニアウイルスF13L遺伝子(SEQ ID NO: 1)に対してインフレームで、ワクシニアウイルス中への導入の目的で以前に記載されているpJEM1プラスミド中にクローニングした。pJEM1は、米国特許出願公開第2013/0288927号に記載されているp7.5/tkの誘導体であり、NcoIまたはBssHIIおよびBsiWIで消化した場合に、ワクシニアウイルスTK遺伝子およびワクシニアウイルスH5プロモーターと相同組み換えができる隣接領域を含有する。
【0130】
ヒト膜タンパク質MS4A1遺伝子(CD20)(NM_021950.3)のオープンリーディングフレームを、SOE(オーバーラップ伸長によるスプライシング(Splicing by Overlap Extension))PCRを用いて、制限エンドヌクレアーゼ部位NcoIおよびBsiWIを、それらをそれぞれ5'および3'の最も隣接するプライマー中にコードすることによってPCR産物中に付加する標準的なプロトコールの通りに、ワクシニアウイルスF13Lとインフレームでクローニングした。この戦略は、リーダーペプチドの導入を回避する。最終的なPCR産物およびpJEM1を、NcoIおよびBsiWIで消化し、2つの種を、標準的なプロトコールにしたがってライゲーションを介して連結した。次いで、環状化プラスミドを、化学的形質転換を介してコンピテント大腸菌(E. coli)中に導入し、コロニーを、アンピシリン含有寒天プレート上で選択した。
【0131】
ポリヌクレオチドによってコードされる、結果として生じるCD20-F13L融合タンパク質は、SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含む。
【0132】
ヒト膜タンパク質FZD4(NM_012193.3)のオープンリーディングフレームを、SOE(オーバーラップ伸長によるスプライシング)PCRを用いて、制限エンドヌクレアーゼ部位BssHIIおよびBsiWIを、それらをそれぞれ5'および3'の最も隣接するプライマー中にコードすることによってPCR産物中に付加する標準的なプロトコールの通りに、ワクシニアウイルスF13Lとインフレームでクローニングした。この戦略は、pJEM1内に含有されるリーダーペプチドの使用を提供する。最終的なPCR産物およびpJEM1を、BssHIIおよびBsiWIで消化し、2つの種を、標準的なプロトコールにしたがってライゲーションを介して連結した。次いで、環状化プラスミドを、化学的形質転換を介してコンピテント大腸菌中に導入し、コロニーを、アンピシリン含有寒天プレート上で選択した。PCRプライマーは、FZD4およびF13Lに特異的であり、MS4A1について記載されたのと同じ一般的戦略に準拠する。ポリヌクレオチドによってコードされる、結果として生じる成熟FZD4-F13L融合タンパク質は、SEQ ID NO: 2の20~892位のアミノ酸を含む。
【0133】
ヒト膜タンパク質CXCR4(NM_001008540.1)のオープンリーディングフレームを、SOE(オーバーラップ伸長によるスプライシング)PCRを用いて、制限エンドヌクレアーゼ部位NcoIおよびBsiWIを、それらをそれぞれ5'および3'の最も隣接するプライマー中にコードすることによってPCR産物中に付加する標準的なプロトコールの通りに、ワクシニアウイルスF13Lとインフレームでクローニングした。この戦略は、リーダーペプチドの導入を回避する。最終的なPCR産物およびpJEM1を、NcoIおよびBsiWIで消化し、2つの種を、標準的なプロトコールにしたがってライゲーションを介して連結した。次いで、環状化プラスミドを、化学的形質転換を介してコンピテント大腸菌中に導入し、コロニーを、アンピシリン含有寒天プレート上で選択した。PCRプライマーは、CXCR4およびF13Lに特異的であり、MS4A1について記載されたのと同じ一般的戦略に準拠する。ポリヌクレオチドによってコードされる、結果として生じるCXCR4-F13L融合タンパク質は、SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含む。
【0134】
上記のように作製されたプラスミド、ならびに、CD20、FZD4、CXCR4、CD100、およびHER2の融合していない(「タグ付加されていない」)バージョンをコードする同様のプラスミドを、直線化して、三分子組換えを介してワクシニアウイルス中に導入した。
【0135】
実施例2:CD20-F13L融合タンパク質のEEV上での発現
BHK細胞に、CD20-F13L融合タンパク質(SEQ ID NO: 4)をコードするIMVまたは対照のウェスタンリザーブ(WR)ウイルスのいずれかを、1細胞あたり1ウイルスの感染多重度(MOI)で2日間感染させ、その後、EEVを含有する上清を収集して、破片を低速遠心分離によって除去した。プロテインG DYNABEADS(登録商標)(110μL)を磁石で取り出して、1 mLのPBS+20μgの精製抗CD20抗体をビーズに添加した。溶液を、室温で穏やかに回転しながら30~60分間インキュベートして、抗体をプロテインGビーズにカップリングさせた。10μgの精製mIgG1アイソタイプ対照を、完全なブロッキングを確実にするために溶液に添加し、溶液を、室温で穏やかに回転しながらさらに10~30分間インキュベートした。ビーズを磁石で取り出して、1 mLのPBSで1回洗浄し、110μLのPBSに再懸濁した。
【0136】
50μLの抗CD20-Pro G DYNABEADS(登録商標)を、1 mLのCD20-F13LまたはWR EEV上清に添加して、室温で穏やかに回転しながら1時間インキュベートした。ビーズを、磁石を用いて沈殿させ、結合していない上清を除去した。次いで、ビーズを、1 mLの、10% FBSおよび1 mM HEPESを補給したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)培地(10% DMEM)で5回洗浄した。すべての洗浄液を、結合していない上清とプールした(「非結合」)。ついで、ビーズ(「結合」)を、1 mLの10% DMEMに再懸濁した。「非結合」および「結合」を、BSC-1細胞上で力価測定し、メチルセルロースを含有する成長培地で覆った。2日間プラークを形成させ、次いで、細胞を固定して、0.1%クリスタルバイオレット溶液で染色した。プラークを計数して、「非結合」および「結合」におけるプラーク形成単位(pfu)の数を決定し、そこから、ビーズに結合したEEVの%を計算することができた。結果を、表2に示す。
【0137】
(表2)CD20-F13L EEV結合
【0138】
抗CD20コーティングビーズに結合したEEVの%は、CD20-F13L EEV融合タンパク質について、ウェスタンリザーブについてよりも有意に高く、CD20がEEV膜表面上に発現していることが示された。
【0139】
実施例3:F13Lに対するCD20の融合物は、EEV膜上でより効率的に発現する
BHK細胞に、CD20-F13L融合タンパク質(SEQ ID NO: 4)をコードするIMV、CD20-A56R融合タンパク質(SEQ ID NO: 16)をコードするIMV、タグ付加されていない(融合していない)CD20をコードするIMV、または対照のHER2-A56R細胞外ドメイン(ECD)(SEQ ID NO: 7)ウイルスのいずれかを、MOI=1で2日間感染させ、その後、EEVを含有する上清を収集して、破片を低速遠心分離によって除去した。ストレプトアビジンDYNABEADS(登録商標)(200μL)を磁石で取り出して、0.2 mLのPBS+20μgの精製ビオチン化抗CD20抗体またはビオチン化抗HER2をビーズに添加した。溶液を、室温で穏やかに回転しながら30分間インキュベートして、抗体をストレプトアビジンビーズにカップリングさせた。ビーズを磁石で取り出して、1 mLのPBSで1回洗浄し、200μLのPBSに再懸濁した。
一重下線‐シグナル配列(1~19位のアミノ酸)
斜体‐短縮A56R(20~190位のアミノ酸)
太字‐CD20配列(191~506位のアミノ酸)
【0140】
50μLの調製したストレプトアビジンビーズを、1 mLの各EEV上清に添加して、室温で45分間回転させた。ビーズを、磁石を用いて沈殿させ、結合していない上清を除去した。次いで、ビーズを、1 mLの、10% FBSおよび1 mM HEPESを補給したDMEM培地(10% DMEM)で5回洗浄した。すべての洗浄液を、結合していない上清とプールした(「非結合」)。ついで、ビーズ(「結合」)を、1 mLの10% DMEMに再懸濁した。「非結合」および「結合」を、BSC-1細胞上で力価測定し、メチルセルロースを含有する成長培地で覆った。2日間プラークを形成させ、次いで、細胞を固定して、0.1%クリスタルバイオレット溶液で染色した。プラークを計数して、「非結合」および「結合」におけるプラーク形成単位(pfu)の数を決定し、そこから、ビーズに結合したEEVの%を計算することができた。結果を、図2に示す。
【0141】
CD20-F13Lについて抗CD20コーティングビーズに結合したEEVの%は、タグ付加されていない(融合していない)CD20またはA56R融合CD20について結合したEEVの%よりも大きく、EEV膜上でのCD20-F13Lのより高い発現が示された。抗HER2コーティングビーズに対する結合の欠如により、アッセイの特異性が確認された。
【0142】
上記の実験を、CD20-F13L融合タンパク質(SEQ ID NO: 4)、タグ付加されていない(融合していない)CD20、FZD-F13L融合タンパク質(SEQ ID NO: 2)、およびタグ付加されていない(融合していない)FZDを用いて繰り返した。ウイルスを、上記のような抗CD20コーティングビーズまたは抗FZDコーティングビーズを用いて取り出した。図3A(抗CD20コーティングビーズ)および図3B(抗FZDコーティングビーズ)におけるデータは、F13L融合タンパク質が、それぞれの抗体によって特異的に取り出され、タグ付加されていない(融合していない)タンパク質よりも効率的にワクシニアウイルス中に組み込まれたことを示す。
【0143】
実施例4:ワクシニアウイルスを、種々の抗原-EEV構築物を発現するように操作することができる
BHK細胞に、以下の抗原構築物:CD20-F13L(SEQ ID NO: 4)、CXCR4-F13L(SEQ ID NO: 3)、HER2-ECD-A56R(SEQ ID NO: 7)、およびCD100-ECD-A56R(SEQ ID NO: 8)を発現するウイルスを、MOI=1で感染させた。2日後、EEVを含有する上清を収集して、破片を低速遠心分離によって除去した。ストレプトアビジンDYNABEADS(登録商標)を磁石で取り出して、各試料について、50μLのビーズを、0.1 mLのPBS+5μgの精製ビオチン化抗CD20抗体、ビオチン化抗CXCR4(12G5)、ビオチン化抗CD100(2503)、またはビオチン化抗HER2に再懸濁した。溶液を、室温で穏やかに回転しながら30分間インキュベートして、抗体をストレプトアビジンビーズにカップリングさせた。ビーズを磁石で取り出して、1 mLのPBSで1回洗浄し、1試料あたり100μLのPBSに再懸濁した。
【0144】
100μLの調製したストレプトアビジンビーズを、1 mLの各EEV上清に添加して、室温で45分間回転させた。ビーズを、磁石を用いて沈殿させ、結合していない上清を除去した。次いで、ビーズを、1 mLの、10% FBSおよび1 mM HEPESを補給したDMEM培地(10% DMEM)で5回洗浄した。すべての洗浄液を、結合していない上清とプールした(「非結合」)。ついで、ビーズ(「結合」)を、1 mLの10% DMEMに再懸濁した。「非結合」および「結合」を、BSC-1細胞上で力価測定し、メチルセルロースを含有する成長培地で覆った。2日間プラークを形成させ、次いで、細胞を固定して、0.1%クリスタルバイオレット溶液で染色した。プラークを計数して、「非結合」および「結合」におけるプラーク形成単位(pfu)の数を決定し、そこから、ビーズに結合したEEVの%を計算することができた。結果を、図4に示す。
【0145】
抗原-EEVのすべては、それらの対応する抗体カップリングビーズに特異的に結合し、EEV膜上での抗原の効率的な発現が示された。
【0146】
実施例5:抗原-EEVを、抗体選択のために磁気ビーズに直接カップリングさせることができる
BHK細胞(2×108細胞)に、HER2-ECD-A56R(SEQ ID NO: 7)、FZD-F13L(SEQ ID NO: 2)、CXCR4-F13L(SEQ ID NO: 3)、またはCD100(セマフォリン4D)-ECD-A56R(SEQ ID NO: 8)を発現するウイルスをMOI=1で、各々1個のcellSTACK細胞培養チャンバー(Corning)において感染させた。2日後、EEVを含有する上清を収集して、破片を低速遠心分離によって除去した。次いで、澄んだ上清を、13,000 rpm(28,000×g)で1時間スピンさせて、抗原-EEVを沈殿させた。上清を吸引し、沈殿を1.5 mLの1×PBSに再懸濁した。種々のウイルスを、新しいチューブに移して、ソラレン(トリオキサレン、4'-アミノメチル-、塩酸塩;Sigma)を20μg/mlの最終濃度になるように添加した。EEVおよびソラレンを、室温で10分間インキュベートし、その後、STRATALINKER(登録商標)UV Crosslinker(Stratagene)において99,999マイクロジュールにわたって照射した。ソラレン/UV手順は、抗原-EEVが不活性化され、そのために任意の下流の試験においてプラークを形成できないかまたは増倍できないことを確実にする。
【0147】
トシル活性化MyOne DYNABEADS(登録商標)(100μL)を、磁石で取り出して、1 mLのPBSで洗浄した。ビーズを磁石で取り出し、PBSを除去して、1 mLの各ソラレン/UV不活性化抗原-EEVを、ビーズの別々のアリコートに添加した。ビーズおよび抗原-EEVを、37℃で16~20時間回転させた。ビーズを沈殿させ、上清を除去した。ビーズを、1 mLの1×PBS、10% FBS、および0.5% BSAで、37℃で1時間ブロッキングした。ビーズを、沈殿させて1 mL 1×PBSで洗浄し、その後、200μLの1×PBSに再懸濁した。
【0148】
100μlの抗原-EEVカップリングビーズを、1 mLの、抗FZD4、抗CXCR4、抗CD100、または抗HER2を発現する各それぞれの抗体-EEV上清、および対照抗体-EEVに添加した。抗体EEVを、BHK細胞に、それぞれの抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードするワクシニアウイルスで、各々MOI=1で2日間感染させること、ならびに、上清を収集し、その後、低速スピンによっていかなる細胞も除去することによって作製した。ウイルスカップリングビーズおよび抗体EEVを、室温で2時間回転させた。ビーズを、磁石を用いて沈殿させ、結合していない上清を除去した。次いで、ビーズを、1 mLの、10% FBSおよび1 mM HEPESを補給したDMEM培地(10% DMEM)で5回洗浄した。すべての洗浄液を、結合していない上清とプールした(「非結合」)。ついで、ビーズ(「結合」)を、1 mLの10% DMEMに再懸濁した。「非結合」および「結合」を、BSC-1細胞上で力価測定し、メチルセルロースを含有する成長培地で覆った。2日間プラークを形成させ、次いで、細胞を固定して、0.1%クリスタルバイオレット溶液で染色した。プラークを計数して、「非結合」および「結合」におけるプラーク形成単位(pfu)の数を決定し、そこから、ビーズに結合したEEVの%を計算することができた。方法の図解を、図5に示し、結果を、図6A(HER2)、図6B(FZD4)、図6C(CXCR4)、および図6D(CD100(「Sema」))に示す。
【0149】
抗HER2を発現する抗体-EEVは、HER2-ECD-A56R抗原EEVとカップリングしたビーズによって特異的に取り出され、抗FZDを発現する抗体-EEVは、FZD-F13L抗原EEVとカップリングしたビーズによって特異的に取り出され、抗CXCR4を発現する抗体-EEVは、CXCR4-F13L抗原EEVとカップリングしたビーズによって特異的に取り出され、抗SEMAを発現する抗体-EEVは、Sema-ECD-A56R抗原EEVとカップリングしたビーズによって特異的に取り出された。
【0150】
実施例6:抗体ライブラリースクリーニング
BHK細胞に、抗体ライブラリー(H-IgG-A56R)およびL48(生殖系列VK1-39の誘導体)を、各々MOI=1で、4個のcellSTACK細胞培養チャンバー(Corning)(1スタッカーあたり2×108細胞)において感染させた。抗体ライブラリーは、A56Rにインフレームで融合した、完全長IgG型式における重鎖可変ドメインの多様な集団を含有していた(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2013-0288927号を参照されたい)。このライブラリーの多様性は、およそ4億の独立クローンであった。2日後、EEVを含有する上清を収集して、破片を低速遠心分離によって除去した。次いで、澄んだ上清を、13,000 rpm(28,000×g)で1時間スピンさせて、抗原-EEVを沈殿させた。抗体-EEVを、10% FBSを含む1 ml EMEMに再懸濁し、使用の準備ができるまで4℃で保存した。パンニング用の抗原ウイルスを作るために、BHK細胞(2×108細胞)に、FZD4-ECD-A56R(SEQ ID NO: 6)を発現するウイルスをMOI=1.5で、2個のcellSTACK細胞培養チャンバー(Corning)において感染させた。2日後、EEVを含有する上清を収集して、破片を低速遠心分離によって除去した。次いで、澄んだ上清を、13,000 rpm(28,000×g)で1時間スピンさせて、抗原-EEVを沈殿させた。上清を吸引し、沈殿を1.0 mLの1×PBSに再懸濁した。1 mLのFZD4-ECD-A56R EEVを、新しいチューブに移して、ソラレン(トリオキサレン、4'-アミノメチル-、塩酸塩;Sigma)を40μg/mlの最終濃度になるように添加した。EEVおよびソラレンを、室温で10分間インキュベートし、その後、STRATALINKER(登録商標)UV Crosslinker(Stratagene)において99,999マイクロジュールにわたって照射した。ソラレン/UV手順は、抗原-EEVが不活性化され、そのために任意の下流の試験においてプラークを形成できないかまたは増倍できないことを確実にする。
【0151】
トシル活性化MyOne DYNABEADS(登録商標)(150μL)を、磁石で取り出して、1 mLのPBSで2回洗浄した。ビーズを磁石で取り出し、PBSを除去して、1 mLのソラレン/UV不活性化FZD4-ECD-A56Rをビーズに添加した。ビーズおよび抗原-EEVを、37℃で18~20時間回転させた。ビーズを沈殿させ、上清を除去した。ビーズを、1 mLの1×PBS、10% FBS、および0.5% BSAで、37℃で2時間ブロッキングした。ビーズを、沈殿させて1 mL 1×PBSで洗浄し、その後、150μLの1×PBSに再懸濁した。
【0152】
50μlのFZD4-ECD-A56Rカップリングビーズを、1 mLの抗体-EEVライブラリーに添加した。FZD4-ECD-A56Rカップリングビーズおよび抗体EEVを、室温で2時間回転させた。ビーズを、磁石を用いて沈殿させ、結合していない上清を除去した。次いで、ビーズを、1 mLの、10% FBSおよび1 mM HEPESを補給したDMEM培地(10% DMEM)で5回洗浄した。すべての洗浄液を、結合していない上清とプールした(「非結合」)。ついで、ビーズ(「結合」)を、1 mLの10% DMEMに再懸濁した。「非結合」および「結合」を、BSC-1細胞上で力価測定し、メチルセルロースを含有する成長培地で覆った。2日間プラークを形成させ、次いで、細胞を固定して、0.1%クリスタルバイオレット溶液で染色した。残りの結合したウイルス(990μl)を、コンフルエントのBSC1細胞を含有する5個のT175フラスコの間で分けて、1 mg/ml G418を含有するDMEM2.5%において3日間増幅させた。次いで、細胞を収集し、ウイルスを3サイクルの凍結/融解によって放出させ、ウイルスを力価測定した。
【0153】
第2ラウンドの選択(Rd2)のために、ラウンド1から増幅された重鎖を、1個のcellSTACKのBHK中に、新鮮なL48とともに同時感染させた。抗体EEVを、上記のように収集した。パンニングの各ラウンドのために、新鮮なFZD-ECD-A56R抗原ウイルスを上記のように、作製し、濃縮し、不活性化し、ビーズにカップリングさせた。50μlのFZD4-ECD-A56Rカップリングビーズを、1 mL抗体-EEV Rd2に添加した。FZD4-ECD-A56Rカップリングビーズおよび抗体EEVを、室温で2時間回転させた。ビーズを、磁石を用いて沈殿させ、結合していない上清を除去した。次いで、ビーズを、1 mLの、10% FBSおよび1 mM HEPESを補給したDMEM培地(10% DMEM)で5回洗浄した。すべての洗浄液を、結合していない上清とプールした(「非結合」)。ついで、ビーズ(「結合」)を、1 mLの10% DMEMに再懸濁した。「非結合」および「結合」を、BSC-1細胞上で力価測定し、メチルセルロースを含有する成長培地で覆った。2日間プラークを形成させ、次いで、細胞を固定して、0.1%クリスタルバイオレット溶液で染色した。残りの結合したウイルス(990 ul)を、コンフルエントのBSC1細胞を含有する5個のT175フラスコの間で分けて、1 mg/ml G418を含有するDMEM2.5%において3日間増幅させた。次いで、細胞を収集し、ウイルスを3サイクルの凍結/融解によって放出させ、ウイルスを力価測定した。
【0154】
3回の追加的なパンニングのサイクル(Rd3、Rd4、およびRd5)を、上記のように行った。
【0155】
ラウンド3、4、および5を、6ウェルプレートにおいてmoi=1で各々の増幅されたVHラウンドおよびL48を感染させたA431細胞によって、濃縮について試験した。一晩の感染後、細胞を収集して、半分に分割した。一方の半分を、10μg/ml FZD-Hisで染色し、その後、抗His-Dyelight650および抗Fab-FITCで染色した。もう一方の半分を、10μg/ml CD100-His(陰性対照)で染色し、その後、抗His-Dyelight650および抗Fab-FITCで染色した。図7に示すデータは、選択の1ラウンドあたりの濃縮の増大を示す。ラウンド5由来の抗体を、完全長可溶性IgGとして発現される哺乳動物発現ベクター中にサブクローニングして、(哺乳動物発現ベクター中のL48とともに)トランスフェクトした。上清中に存在する結果として生じた抗体を、FZD4トランスフェクトCHO細胞に対する結合、およびCXCR4トランスフェクトCHO細胞に対する結合の欠如について、フローサイトメトリーによって試験した。FZDに特異的に結合した抗体の数を、特定した。
【0156】
実施例7:二重タグ/抗原EEVを、磁気ビーズにカップリングさせることができる
BHK細胞に、その表面上にHAタグおよびFZD4抗原の両方を発現するEEVを生じるために、1つのビリオンがヘマグルチニンタグ(HA)-A56R(SEQ ID NO: 17)であり、第2のビリオンがFZD4-F13L(SEQ ID NO: 2)である、1細胞あたり2ビリオンを感染させるか、または、各個々のウイルスを1細胞あたり1ビリオンで感染させた。2日後、EEVを含有する上清を収集し、破片を低速遠心分離によって除去した。プロテインG磁気ビーズ(150μL)を磁石で取り出し、1 mLのPBS+30μgの精製抗FZD4抗体(C6073)をビーズに添加した。溶液を、室温で穏やかに回転しながら25分間インキュベートして、抗体をプロテインGビーズにカップリングさせた。ビーズを磁石で取り出して、1 mLのPBSで1回洗浄し、300μLのDMEM+10% FBSに再懸濁した。抗HA-タグ磁気ビーズ(ThermoFisher、150μl)を磁石で取り出して、1 mLのPBSで1回洗浄し、その後、150μlのPBSに再懸濁した。
一重下線‐シグナル配列(1~19位のアミノ酸)
太字‐HAタグ(20~29位のアミノ酸)
斜体‐短縮A56R(30~235位のアミノ酸)
【0157】
50μLの調製した抗HA-タグビーズまたは100μlの調製した抗FZD4プロテインGを、1 mLの各EEV上清に添加して、室温で60分間回転させた。ビーズを、磁石を用いて沈殿させ、結合していない上清を除去した。次いで、ビーズを、1 mLの、10% FBSおよび1 mM HEPESを補給したDMEM培地(10% DMEM)で5回洗浄した。すべての洗浄液を、結合していない上清とプールした(「非結合」)。ついで、ビーズ(「結合」)を、1 mLの10% DMEMに再懸濁した。「非結合」および「結合」を、BSC-1細胞上で力価測定し、メチルセルロースを含有する成長培地で覆った。2日間プラークを形成させ、次いで、細胞を固定して、0.1%クリスタルバイオレット溶液で染色した。プラークを計数して、「非結合」および「結合」におけるプラーク形成単位(pfu)の数を決定し、そこから、ビーズに結合したEEVの%を計算することができた。結果を、図8に示す。両方の融合タンパク質を発現するEEVは、いずれの抗体によっても取り出された。
【0158】
実施例8:二重タグ/抗原EEVを、磁気ビーズにカップリングさせ、mAb EEVを捕捉するために用いることができる
BHK細胞(2×108細胞)に、その表面上にHAタグおよびCXCR4抗原の両方を発現するEEVを生じるために、1つのビリオンがHA-A56R(SEQ ID NO: 17)であり、第2のビリオンがCXCR4-F13L(SEQ ID NO: 3)である、1細胞あたり2ビリオンを感染させた。2日後、EEVを含有する上清を収集して、破片を低速遠心分離によって除去した。次いで、澄んだ上清を、13,000 rpm(28,000×g)で1時間スピンさせて、タグ/抗原-EEVを沈殿させた。上清を吸引し、沈殿を1 mLの1×PBSに再懸濁した。ソラレン(トリオキサレン、4'-アミノメチル-、塩酸塩;Sigma)を、40 ug/mlの最終濃度になるように添加した。EEVおよびソラレンを、室温で10分間インキュベートし、その後、Stratalinker UV Crosslinker(Stratagene)において99,999マイクロジュールにわたって2回照射した。ソラレン/UV手順は、抗原-EEVが不活性化され、そのために任意の下流の試験においてプラークを形成できないかまたは増倍できないことを確実にする。
【0159】
抗CXCR4 EEVおよび抗HER2 mAb EEVを、BHK細胞に、1つのビリオンが特異的重鎖であり、第2のビリオンが特異的軽鎖である、1細胞あたり2ビリオンを感染させることによって作製した。2日後に、抗CXCR4 EEVおよび抗HER2 EEVを含有する上清を収集し、破片を低速遠心分離によって除去した。
【0160】
300μlの抗HA磁気ビーズを、1 mLのPBSで洗浄し、次いで、1 mlのソラレン/UV不活性化HA/CXCR4 EEVに再懸濁した。ビーズおよびEEVを、室温で穏やかに回転しながら90分間インキュベートして、EEVを抗HAビーズとカップリングさせた。ビーズを磁石で取り出して、1 mLのPBSで1回洗浄し、300μLのPBSに再懸濁した。
【0161】
100μLの、抗HAビーズにカップリングしたHA/CXCR4 EEVを、1 mLの各mAb EEV上清に添加し、室温で穏やかに回転しながら1~1.5時間インキュベートした。ビーズを、磁石を用いて沈殿させ、結合していない上清を除去した。次いで、ビーズを、1 mLの、10% FBSおよび1 mM HEPESを補給したDMEM培地(10% DMEM)で5回洗浄した。すべての洗浄液を、結合していない上清とプールした(「非結合」)。ついで、ビーズ(「結合」)を、1 mLの10% DMEMに再懸濁した。「非結合」および「結合」を、BSC-1細胞上で力価測定し、メチルセルロースを含有する成長培地で覆った。2日間プラークを形成させ、次いで、細胞を固定して、0.1%クリスタルバイオレット溶液で染色した。プラークを計数して、「非結合」および「結合」におけるプラーク形成単位(pfu)の数を決定し、そこから、ビーズに結合したEEVの%を計算することができた。結果を、図9に示す。抗CXCR4 EEVは、HA-A45RおよびCXCR4-F13Lを同時発現するEEVでコーティングされたビーズによって特異的に捕捉された。
【0162】
実施例9:抗原-EEVを、磁気ビーズへのカップリングのためにビオチン化することができる
BHK細胞に、FZD4-F13L、FZD4-ECD-A56R、またはCD20-F13Lを発現するウイルスを、MOI=1で感染させた。2日後、EEVを含有する上清を収集して、破片を低速遠心分離によって除去した。次いで、澄んだ上清を、13,000 rpmで1時間スピンさせて、抗原-EEVを沈殿させた。上清を吸引し、沈殿を1~2 mLの1×PBSに再懸濁した。EEVをビオチン化するために、2.5μLの1×PBS中ビオチン-XX SSEストック溶液(FLUOREPORTER(登録商標) Cell Surface Biotinylation Kit, Molecular Probes)を、1 mLのPBS中の各EEVに添加して、氷上で30分間インキュベートした。各反応を消すために、50μLの1Mトリス、pH 8を添加した。
【0163】
ビオチン-EEVをビーズにカップリングさせるために、150μLのストレプトアビジンDYNABEADS(登録商標)を沈殿させ、1 mLの1×PBSで1回洗浄した。ビーズを150μLに再懸濁し、50μLを、1 mLの、10% FBSおよび1 mM HEPESを含有するイーグル最小必須培地(EMEM)培地(10% EMEM)に添加した。50μLのビオチン-EEVを、ビーズおよび培地に添加して、室温で1時間回転させた。ビーズを、磁石を用いて沈殿させ、結合していない上清を除去した。次いで、ビーズを、1 mLの、10% FBSおよび1 mM HEPESを補給したDMEM培地(10% DMEM)で5回洗浄した。すべての洗浄液を、結合していない上清とプールした(「非結合」)。ついで、ビーズ(「結合」)を、1 mLの10% DMEMに再懸濁した。「非結合」および「結合」を、BSC-1細胞上で力価測定し、メチルセルロースを含有する成長培地で覆った。2日間プラークを形成させ、次いで、細胞を固定して、0.1%クリスタルバイオレット溶液で染色した。プラークを計数して、「非結合」および「結合」におけるプラーク形成単位(pfu)の数を決定し、そこから、ビーズに結合したEEVの%を計算することができた。結果を、図10に示す。
【0164】
抗原-EEVを、ビオチン化して、磁気ストレプトアビジンビーズにカップリングさせることができた。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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