(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】心臓補助装置
(51)【国際特許分類】
A61M 60/824 20210101AFI20220513BHJP
A61M 60/174 20210101ALI20220513BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20220513BHJP
A61M 60/416 20210101ALI20220513BHJP
【FI】
A61M60/824
A61M60/174
A61M60/237
A61M60/416
(21)【出願番号】P 2018557314
(86)(22)【出願日】2016-05-02
(86)【国際出願番号】 US2016030445
(87)【国際公開番号】W WO2017192119
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2019-04-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517029392
【氏名又は名称】ヴァドヴェイションズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】スタンフィールド,ジェイ.ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴラドヴィッチ,マイケル
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-528797(JP,A)
【文献】特開2013-212218(JP,A)
【文献】特表2015-508678(JP,A)
【文献】米国特許第8409276(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0245404(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0275722(US,A1)
【文献】特表2012-523875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00-60/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングと、
前記ポンプハウジング内で保持されたロータと、
を備え、
前記ロータは、外面を有するシャフトと、前記ロータの近位端における前記外面上の第1の位置において前記シャフトから延びるインペラとを備え、
前記ロータの前記外面は、前記シャフト上の第2の位置にある外軸受面と、前記外軸受面にあるか、これに隣接する径方向ベアリングとを備え、
前記径方向ベアリングは前記外軸受面から径方向に突出する複数のランドを備え、前記複数のランドが前記ロータのシャフトの周にわたって離間し、
軸方向ベアリングは、前記ロータの遠位端において、前記ポンプハウジング内で、漏出流経路への漏出流入部に軸方向で隣接して配置された半球面又は円錐面を備え、
前記軸方向ベアリングは、径方向安定性も提供しつつ、前記ロータの軸方向スラスト荷重に抗し、前記1つ以上の円筒穴の嵌め合い面とともに流体力学的ベアリングを形成する複数の溝を備え、
前記複数の溝は前記軸方向ベアリングの流体力学的ベアリングを形成し、前記漏出流入部から前記漏出流経路内への血流を促進するようにも構成され、
前記ポンプハウジングは、ポンプ室を定めるように構成されている1つ以上の円筒穴と、前記ポンプハウジング内の内軸受面と、を備え、
動作構成では、血液の第1の流れを径方向ポート又はポンプ室への流入部から内部へ吸引する前記ロータの動作の際に前記インペラが前記ポンプ室内で回転するように、前記ロータは前記1つ以上の円筒穴内に位置し、
前記ポンプハウジングの前記内軸受面は前記シャフトの前記外軸受面に近接して嵌合されて、これらの間に環状クリアランスを形成し、これにより、前記ロータの動作中に前記内軸受面および外軸受面は流体力学的ジャーナルベアリングを形成し、
前記ポンプハウジングは、前記環状クリアランスと流体連通する漏出流入部を備え、
前記ロータの動作中、前記環状クリアランスは、前記漏出流入部への血液の第2の流れを可能にし、前記内軸受面および外軸受面間の前記環状クリアランスの長さに沿う漏出経路として動作し、
前記ロータの動作は前記環状クリアランス内で圧力プロファイルを生成し、
前記径方向ベアリングの前記ランドは、ほぼ、前記外軸受面の前記周にわたって対称的に前記圧力プロファイルを分布させる、
心臓補助装置。
【請求項2】
前記ロータは、主に、前記ポンプハウジング内の、前記ポンプハウジングに対する前記ロータの相対動作によって発生する流体力学的スラスト力によって前記ハウジング内で前記径方向に浮遊する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ロータは、前記シャフトの前記軸受面中に位置する1つ以上のロータ磁石を備え、
前記ポンプハウジングは、前記環状クリアランスに対して前記1つ以上のロータ磁石の反対側に位置するコイルを有するモータステータを備え、
前記ロータの動作は、前記漏出流経路を横切って延びる磁束場を生成して前記1つ以上のロータ磁石を変位させる前記モータステータを通る電流の作用を受ける、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記1つ以上の円筒穴は、前記ポンプハウジングの第1の端部に配置されている第1の穴であって、前記ロータの前記外軸受面を収容するために構成されている前記内軸受面を定める第1の穴と、前記ポンプハウジングの第2の端部にある第2の穴であって、前記インペラおよびポンプ室を収容するために構成されている第2の穴とを備え、前記ポンプハウジングは、
前記第1の穴と前記第2の穴との間に配置されている径方向ポートをさらに備え、
前記インペラの回転により、血液の前記第1の流れを、前記径方向ポートを通じ、前記第2の穴の長さに沿って前記ポンプ室内に吸引し、前記ポンプハウジングの前記第2の端部に配置されている流出部を通過させ、
血液の第2の流れが吸引される前記漏出流入部は、前記流出部に対して前記ポンプハウジングの反対側の端部に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記漏出経路に沿って流れる血液は前記径方向ポート内に放出される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記複数のランドの前記各々は前記ロータの基部直径部から周方向に徐々に小さくなり、前記基部直径部は前記外軸受面に等しい直径を持つ、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記軸方向ベアリング近傍に追加の径方向ベアリングをさらに備え、
前記ロータの外面は、前記シャフトの第3の位置における外軸受面と、前記外軸受面に又は前記外軸受面に隣接した径方向ベアリングと、を備え、
前記径方向ベアリングは前記外軸受面から径方向に突出する複数のランドを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記軸方向ベアリングの半球面の複数の溝は湾曲テーパ溝を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
複数の前記湾曲テーパ溝は、弧の中心近傍で最も深く、中心から外方に径方向で湾曲する浅・深・浅構成にあり、深さが浅から深に移行する箇所で低圧領域が生じる、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記径方向ベアリングは前記径方向ポートに隣接する前記外軸受面の前記第1の端部に配置され、前記装置は、
前記外軸受面から径方向に突出するランドの第2のセットを備える第2の径方向ベアリングをさらに備え、
ランドの前記第2のセットはロータシャフトの第2の周にわたって離間し、
前記第2の径方向ベアリングは、前記漏出流入部に隣接する前記軸受面の第2の端部に配置されている、請求項4に記載の装置。
【請求項11】
ポンプハウジングと、
前記ポンプハウジング内で保持されたロータと、
を備え、
前記ロータは、外面を有するシャフトと、前記ロータの近位端における前記外面上の第1の位置において前記シャフトから延びるインペラとを備え、
前記外面は、前記シャフト上の第2の位置にある外軸受面と、前記外軸受面にあるか、これに隣接する径方向ベアリングとを備え、
前記径方向ベアリングは前記外軸受面から径方向に突出する複数のランドを備え、ほぼ、前記外軸受面の周にわたって対称的に前記圧力プロファイルを分布させるよう、前記複数のランドが前記ロータのシャフトの周にわたって離間し、
軸方向ベアリングは、前記ポンプハウジングの前記漏出流入部に軸方向に隣接して配置されるように構成され、前記軸方向ベアリングは、前記ロータの遠位端において、前記ポンプハウジングの漏出流経路への漏出流入部に軸方向で隣接して配置された半球面を備え、
前記軸方向ベアリングは、弧の中心近傍で最も深く、中心から外方に径方向で湾曲する浅・深・浅構成にあり、深さが浅から深溝に移行する箇所で低圧領域が生じる、複数の湾曲テーパ溝を備え、前記軸方向ベアリングは、径方向安定性も提供しつつ、前記ロータの軸方向スラスト荷重に抗し、前記1つ以上の円筒穴の嵌め合い面とともに流体力学的ベアリングを形成し、
前記複数の溝は軸方向スラストベアリングの流体力学的ベアリングを形成し、前記漏出流入部から前記漏出流経路内への血流を促進するようにも構成され、
前記ポンプハウジングは、ポンプ室を定めるように構成されている1つ以上の円筒穴と、前記ポンプハウジング内の内軸受面とを備え、
動作構成では、血液の第1の流れを径方向ポート又はポンプ室への流入部から内部へ吸引する前記ロータの動作の際に前記インペラが前記ポンプ室内で回転するように、前記ロータは前記1つ以上の円筒穴内に位置し、
前記ポンプハウジングの前記内軸受面は前記シャフトの前記外軸受面に近接して嵌合されて、これらの間に環状クリアランスを形成し、これにより、前記ロータの動作中に前記内軸受面および外軸受面は流体力学的ジャーナルベアリングを形成し、
前記ポンプハウジングは、前記環状クリアランスと流体連通する漏出流入部を備え、
前記ロータの動作中、前記環状クリアランスは、前記漏出流入部への血液の第2の流れを可能にし、前記内軸受面および外軸受面間の前記環状クリアランスの長さに沿う漏出経路として動作する、
心臓補助装置。
【請求項12】
前記ロータは、主に、前記ポンプハウジング内の、前記ポンプハウジングに対する前記ロータの相対動作によって発生する流体力学的スラスト力によって前記ハウジング内で径方向に浮遊する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ロータは、前記シャフトの前記軸受面中に位置する1つ以上のロータ磁石を備え、
前記ポンプハウジングは、前記環状クリアランスに対して前記1つ以上のロータ磁石の反対側に位置するコイルを有するモータステータを備え、
前記ロータの動作は、前記漏出流経路を横切って延びる磁束場を生成して前記1つ以上のロータ磁石を変位させる前記モータステータを通る電流の作用を受ける、
請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記1つ以上の円筒穴は、前記ポンプハウジングの第1の端部に配置されている第1の穴であって、前記ロータの前記外軸受面を収容するために構成されている前記内軸受面を定める第1の穴と、前記ポンプハウジングの第2の端部にある第2の穴であって、前記インペラおよびポンプ室を収容するために構成されている第2の穴とを備え、前記ポンプハウジングは、
前記第1の穴と前記第2の穴との間に配置されている径方向ポートをさらに備え、
前記インペラの回転により、血液の流れを、前記径方向ポートを通じ、前記第2の穴の長さに沿って前記ポンプハウジング内に吸引し、前記ポンプハウジングの前記第2の端部に配置された流出部としての軸方向ポートを通過させ、
血液の第2の流れが吸引される前記漏出流入部は、前記ポンプハウジングの前記第2の端部の前記流出部の反対側の前記ポンプハウジングの前記第1の端部に配置され、
前記漏出経路に沿って流れる血液は前記径方向ポートに放出される、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記軸方向ベアリング近傍に追加の径方向ベアリングをさらに備え、
前記ロータの外面は、前記シャフトの第3の位置における外軸受面と、前記外軸受面に又は前記外軸受面に隣接した径方向ベアリングと、を備え、
前記径方向ベアリングは前記外軸受面から径方向に突出する複数のランドを備える、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記複数のランドの各々は前記ロータの基部直径部から周方向に徐々に小さくなり、前記基部直径部は前記外軸受面に等しい直径を持つ、請求項11に記載の装置。
【請求項17】
第1の端部及び第2の端部を有するポンプハウジングと、
前記ポンプハウジング内で保持されたロータと、
を備え、
前記ロータは、外面を有するシャフトと、
前記ポンプハウジングの前記第1の端部であって前記ロータの近位端における前記外面上の第1の位置において前記シャフトから延びるインペラとを備え、
前記外面は、前記シャフト上の第2の位置にある外軸受面を備え、前記外軸受面にあるか、これに隣接する径方向ベアリングを有し、
前記径方向ベアリングは平坦なスリーブの径方向ジャーナル軸受面を含み、
軸方向ベアリングは、
前記ポンプハウジングの前記第2の端部であって前記ロータの遠位端において、前記ポンプハウジングの漏出流入部に軸方向で隣接して配置された半球面又は円錐面を備え、
前記軸方向ベアリングは、
前記漏出流入部から漏出流経路内へと血流を促進するように構成されている複数の溝を備え、
前記ポンプハウジングは、ポンプ室と前記ポンプハウジング内の内軸受面を定めるように構成された
1つ以上の円筒穴を備え
、
前記ポンプハウジングは、
前記ポンプハウジングと前記内軸受面との間に配置されている径方向ポートをさらに備え、
動作構成では、
前記ロータの動作の際に前記インペラが前記ポンプ室内で回転し、血液の第1の流れを
前記径方向ポート
からポンプ室へと内部へ吸引
し、
前記インペラの回転により、前記
内軸受面と外面軸受との間の環状クリアランスを有する流体連通内の
漏出流経路を介して、第2の血液の流れを前記ポンプハウジングの前記第2の端部に
前記漏出流入部として配置されている軸方向ポートを通じ、前記
内軸受面の長さに沿って前記ポンプ室内に吸引
し、
前記ポンプハウジングの前記内軸受面は前記シャフトの前記外軸受面に近接して嵌合されて、これらの間に環状クリアランスを形成し、これにより、前記ロータの動作中に前記内軸受面および外軸受面は流体力学的ジャーナルベアリングを形成
する、
心臓補助装置。
【請求項18】
前記ロータは、主に、前記ポンプハウジング内の、前記ポンプハウジングに対する前記ロータの相対動作によって発生する流体力学的スラスト力によって前記ハウジング内で前記径方向に浮遊する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記ロータは、前記シャフトの前記軸受面中に位置する1つ以上のロータ磁石を備え、
前記ポンプハウジングは、前記環状クリアランスに対して前記1つ以上のロータ磁石の反対側に位置するコイルを有するモータステータを備え、
前記ロータの動作は、前記漏出流経路を横切って延びる磁束場を生成して前記1つ以上のロータ磁石を変位させる前記モータステータを通る電流の作用を受ける、
請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記径方向ベアリングは前記内軸受面から径方向に突出する複数のランドを備え、
前記複数のランドが円筒穴の周にわたって離間している、
請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記インペラの方向を逆にすることによって血液の流れを逆にし、血液が前記ポンプ室に流入され、前記径方向ポートを通って流出されるように構成される、請求項17に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
適用不可
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
適用不可
【0003】
コンパクトディスクで提出された材料の参照による援用
適用不可
【0004】
著作権保護の対象となる事項に関する注意
この特許文献中の事項の一部は米国およびその他の国の著作権法上の著作権保護の対象となる。特許文献または特許開示のいずれかによる複製に対して、米国特許商標庁において公衆に利用可能となったファイルまたは記録に掲載されれば、著作権者は一切の異議申立てを行なわないが、掲載なき場合には一切の複製を禁ずる。したがって、著作権者はこの特許文献を秘密状態に維持する自らの権利(米国特許規則第1.14条に係る自らの権利を制限なしに含む)のいずれも放棄しない。
【0005】
本開示の技術は、概して、心臓を通る血液の流れを補助する方法および装置に関し、特に循環補助装置に関する。
【背景技術】
【0006】
うっ血性心不全は、毎年、何十万もの死と、何百万人もの計り知れない人間の苦痛とをまねく世界的な公衆衛生の重大問題である。現在の処置は、最新の薬剤、自動体内除細動器(automatic internal defibrillator)およびシンクロナイザを含む高度ペーシングデバイスを含むことができるものである。これらのモダリティによっていくらかの対症的な改善がもらされ、生存性が改善される可能性があるが、すべて良くても緩和療法であり、治癒的ではない。
【0007】
既存の治療法では、うっ血性心不全の進行したステージにある患者に対する臨床的効果は限られている。実際には、既に確立されている処置では、年間で数十万の著しく進行したCHF患者に対して限られた臨床的効果しかなく、心臓移植が最も効果を示すことができると予測される。心臓移植により末期心不全患者の症状および生存性は著しく改善するが、ドナー心臓の数が限られるので、年間で数千の患者しか利用できない。
【0008】
完全人工心臓(total artificial heart)(TAH)または左心室補助装置(left ventricular assist device)(LVAD)の形態を持つ機械的循環補助(mechanical circulatory assistance)(MCA)が、ほとんど望みがない当該末期心不全患者のニーズを満たす可能性がある。残念なことに、機械的循環補助は心不全の処置において一般的に用いられる治療に発展しなかった。
【0009】
歴史的には、機械的循環補助の技術の大幅な進展と、MCAの効果に関するパラダイムの変化と、心不全の処置におけるその役割の変化とがあった。初期のパラダイムでは、他に移植するものがなければ心臓移植が有効であり得た何十万もの末期患者に規定の手順で移植することができる量産型の拍動TAHの開発が考えられた。しかし、技術的課題により、今日まで、当初の見通しを実現するのに必要な現実的なTAHの発展が妨げられていた。
【0010】
その後、LVADによってほとんどの末期患者のニーズを汲むことができることが提唱され、ここ30年で多数のLVADが開発された。確かに、効果のあるいくつかのLVADが臨床研究に有望であることが示されてきたが、限られた商業的成功しかなかった。このような装置は拍動およびロータリ定常流ポンプの両方を含む。
【0011】
LVADが強力な血行力学的効果を持ち、心臓移植までの間を埋めるものとして臨床的に有効であり、また、開心術後ショックを取り扱う際に臨床的に有効であることが臨床研究により示されてきた。有効である可能性があるが、心臓移植の候補でない患者が究極治療のためにLVADを使用した場合の最近の経過によれば、症状、クオリティオブライフおよび生存性の改善が示されてきた。ドナー心臓を待つ、一部の移植待機患者(bridge patient)に左心室機能の著しい自然回復が観察された。左心室機能の自然回復を経験した一部の患者では、補助装置を取り外すことができ、また、心臓移植を遅らせたり、心臓移植の必要をなくしたりすることができた。
【0012】
血管内弁口心室補助(Intravascular transvalvular ventricular assistance)が患者に限定的に用いられてきたが、急性心原性ショック、人工心肺離脱不良、補助手段を使用した高リスク血管形成術、および心停止を行なわない冠血行再建術の場合に著しい臨床的効果が示されてきた。特に、中心血管アクセスを実現する2つの非開胸方法を上述したが、これは限られた範囲で患者に用いられてきた。これらの方法は、左心房の経中隔カニューレ挿入、および左心室の弁口カニューレ挿入である。
【0013】
しかし、従来のシステムはきわめて限られた耐用期間を示し、外来的臨床用途(ambulatory clinical use)や慢性的臨床用途に実用的であるとはほぼ考えられない。
【0014】
機械的循環補助が重度のうっ血性心不全(congestive heart failure)(CHF)を患っている患者に対する効果的な処置であることが示されてきた。左心室補助装置(LVAD)と右心室補助装置とは両方とも、心臓移植までの患者の空白を埋めるのに適し、長期(究極)治療に適する。残念なことに、これらの装置を挿入する既存の方法には、患者に人工心肺を施す大手術が必要であり、人工血管を心室に接続して補助システムのポンプに血液流入を行なう間に心臓を停止させる場合がある。
【0015】
既存のLVADの埋め込みは過剰な危険をともなうので、最も極端な状況を除いてその常用は合理的であるとはいえない。現在のLVADでは埋め込みのために循環器専門医および人工心肺が必要である。多数の上述の装置および従前の取り組みでは、腹腔と胸腔との両方を開腹してポンプを埋め込むことが必要である。ポンプを横隔膜下に留置するには横隔膜穿通が必要であり、可能であれば避けることが好ましい。
【0016】
したがって、従来、左心室補助装置はCHFの処置に最終手段の処置としてまれにしか用いられていなかった。これはきわめて残念である。その理由は、LVADにはほぼすべての他の好適な処置よりも優れた血行力学的効果があり、さらに、うっ血性心不全の治療において、他の治療よりも非常に優れ、心臓移植に匹敵する臨床的有効性の可能性をもたらすからである。
【0017】
LVADおよびRVADを埋め込む現在の方法に関連するリスクが高いことで、末期患者へのその使用が制限されていた。現在では、循環補助装置を埋め込む高いリスクのために、きわめて大規模な軽度心臓病患者集団が機械的循環補助装置を用いた処置の候補とは考えられていない。
【0018】
したがって、大規模に切開する必要がなく、人工心肺を必要とせず、心臓を停止する必要がなく、観血性を抑えて心室にカニューレ挿入することができる改善された装置および方法が依然として必要である。これにより、多数の軽度CHF患者に対してより有用になることが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本開示により、特定の態様に係れば、観血性を最小にした機械的循環補助装置および観血性を抑えた機械的循環補助装置の埋め込みのための方法および装置を提供する。このようなデバイスは、観血性を最小にするか抑えた技術を用いて挿入することができ、外来的慢性的心室補助装置として用いることができるので、うっ血性心不全の処置における広範な用途が見出された。リスクが低く、観血性を最小にするか抑えた技術を用いることで、治療としての心室補助をクラスIIIおよびクラスIVうっ血性心不全患者に用いることができるようになる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従前の取り組みに係る困難および欠点を克服するために、本開示の様々な態様により、新規の改善されたLVADとこれを挿入する手段とが提供され、うっ血性心不全の処置にこれらを用いるリスクが低減される。ここで開示されるこのLVADにより、特に、観血性を最小にした挿入方法と、観血性を抑えた挿入方法とを用いて、患者に留置する安全性および容易性が改善される。いくつかの実施の形態に係れば、心臓外科的サポートを必要とせず、また、開胸を必要とせずに、インターベンショナル心臓専門医によってうっ血性心不全の処置に用いられるように構成されているLVADが開示される。ここで開示される実施の形態を適切に実施することは、多くの環境でケアの標準になると考えられる。さらなる実施の形態に係る装置は埋め込み型除細動器とほぼ同様に挿入することができるが、特定の状況では、場合によっては、血管外科専門医の助力を得て補う。
【0021】
本明細書に記載されている技術のさらに別の態様は本明細書の以下の部分で明らかにされる。詳細な説明は、本技術の好ましい実施の形態を、それに限界を持ち込むことなく、完全に開示することを目的とする。
【0022】
本明細書に記載されている技術は、例示目的に限る以下の図面を参照することでより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】観血性を最小にした血管内循環補助ポンプアセンブリの断面図である。
【
図2】
図1のポンプアセンブリのロータの斜視図であり、三つ葉状テーパランドベアリングと、溝付きの半球状スラストベアリングとを示す。
【
図4】
図4は、
図3のロータ断面図の概略的副表現であり、径方向ベアリングのテーパランドを強調して示す。
【
図5】
図2のロータの半球状スラストベアリングの斜視図である。
【
図6】滑り摺動径方向ジャーナルベアリングと半球状軸方向スラストベアリングとを有するロータを有する観血性を最小にした代替血管内心室補助ポンプアセンブリの断面図である。
【
図7】三つ葉状テーパランドベアリングと円錐軸方向スラストベアリングとを有するロータを有する観血性を最小にした代替血管内心室補助ポンプアセンブリの断面図である。
【
図8】三つ葉状テーパランドベアリングと平坦軸方向スラストベアリングとを有するロータを有する観血性を最小にした代替血管内心室補助ポンプアセンブリの断面図である。
【
図9】前方および後方の三つ葉状テーパランドベアリングと半球状軸方向スラストベアリングとを有するロータを有する観血性を最小にした代替血管内心室補助ポンプアセンブリの断面図である。
【
図10】ベアリングを通る流れを逆にした観血性を最小にした血管内心室補助ポンプアセンブリの側面図である。
【
図13】ベアリングを通る流れを逆にした観血性を最小にした代替血管内心室補助ポンプアセンブリの側面図である。
【
図16】
図3の径方向ベアリングの周囲の様々な箇所についての圧力分布プロファイルを示す。
【
図17】滑り摺動ベアリングについての圧力分布プロファイルを示す。
【
図18】
図5に示されているスラストベアリングの圧力分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特に図面を参照して、図示のために、本技術は、
図1~
図15に包括的に示されている装置で具体化されている。本明細書で開示されている基本的な概念を逸脱しない限りにおいて、装置を構成および部分の詳細に関して変更してもよく、方法を特定のステップおよび手順に関して変更してもよいことが分かる。
【0025】
図1~
図5は、本実施の形態の様々な態様、すなわち、それぞれ第1および第2の端部16,18を有するポンプハウジング12aと、ハウジング12a内に回転可能に配置されるように構成されているロータ14aとを特徴とする観血性を最小にした血管内循環補助ポンプアセンブリ10aを示す。これらの構成要素は、以下の通りに互いに対して特定の仕方で構成されている。
【0026】
ハウジング12aは第1の端部16にある漏出流入部22を含み、漏出流入部22は、第1の端部16の長手方向に沿って軸方向に配置されている円筒穴28に流れFIAを流入させることができる軸方向配置開口を備える。円筒穴28の寸法は、円筒穴28によって、ロータ14aの外軸受面40に対する嵌め合い内軸受面が、これら2つの面の間にフィットするジャーナルベアリングを介して形成されるように設定されている。この説明のために、用語「円筒穴28」と「内軸受面」とは相互に置換可能に用いられている。したがって、円筒穴28および軸受面40は流体力学的ジャーナルベアリング(場合によって「流体(fluid)」ベアリング、または「機械的(mechanical)」ベアリングまたはブッシュとも称する)を形成する。
【0027】
ポンプハウジング12aの第2の端部18は、ロータ14aのインペラ35を収容するために構成されている円筒穴26を備える。インペラ35は、大まかにいえば、複数の螺旋湾曲ブレード(helical sweeping blades)34を備える。ハウジング12aは、内部穴26に結合される螺旋ステータ(デフューザ)ブレード70も備えてもよい。この構成では、ロータシャフト14aはステータブレード間で回転するハブを備えるが、
図1~
図9に示されている特定の構成、および、このようなインペラ35と、対応するブレードとの相対配置は有効な使用例であると考えられる。当業者にとって明らかであるが、他の構成を用いてもよい。円筒穴26とインペラ35との組み合わせは、穴26に対して血液の吸引および放出を行なうように構成されているポンプ室として動作する。本説明のために、「ポンプ室(pumping chamber)」と「円筒穴(cylindrical bore)」とは相互に置換可能に用いられている。
【0028】
図1および
図6~
図9は異なる直径を持つ円筒穴26,28を示し、異なる直径は、主に、ロータ外面40と内軸受面28とによって定められる流体力学的ベアリングに対するインペラ35の寸法を設定する好ましい寸法設定例に基づいている。ただし、このようなジオメトリを処理して、異なる用途に対応するようにポンプを最適化してもよいと解する。さらに、単一の穴で両方のポンプ室に対応してもよく、内軸受面は製造容易性または他の検討事項に関して望ましいものであると考える。
【0029】
図1の動作構成で示されているポンプ10aの通常の動作中、ハウジング12a内のロータ14aの回転動作は、ロータ14aおよびハウジング12aの軸受面中にそれぞれ配置されているロータ磁石およびロータステータ(両方とも単純にするために示されていない)を備える磁気駆動アクチュエータ、すなわちモータを介してほぼ実現される。
このようなアクチュエータ/モータ構成要素のための代表的な構成は
図10~
図15を参照して見ることができ、その実施の形態はさらに詳細に後述されている。
【0030】
ポンプハウジング12a内のロータ14aが回転すると、インペラ35は径方向ポート、すなわち流入部20から内方に血流FIRを吸引して、円筒穴26によって定められるポンプ室内まで吸引する。ポート20はハウジングの外面からロータ14aのネックまで延びている。血液はロータ14aおよび穴26の長手方向軸に対して角度ΘT(たとえば45度)で径方向ポート20に導かれる。したがって、血液FIRの流れの方向は径方向および軸方向の成分を持つ。したがって、本説明については、「径方向ポート」は、本明細書では、流れの方向に関して少なくとも径方向成分を持つポートであるように定義されている。血流はロータ14aのネック38から円筒穴26に沿って進行し、ロータ14aの円錐先端36を通過して、流出流F0として軸方向流出部、すなわちポート24から流出する。流れFLPは軸方向ベアリング47の位置にあるポンプ溝48によって主に発生する。さらに、インペラ35によって生じる圧力も、ロータ面40と穴28内壁との間のクリアランスによって定められる環状漏出部、すなわち漏出経路30に沿って動力流FLPの一部を発生する。漏出流経路30は、漏出流入部22から半球状の下端50(および穴28の嵌め合い(カップ状)内面)に沿って延びた後、ポート20に向かって円筒穴28の長手方向に沿って延びる。
【0031】
軸方向ポート24は、ポンプ10aが循環系の第1の位置に位置する状態で、カニューレ(図示せず)の第1の端部に接続してもよい。この場合、循環系の第2の位置にあるカニューレの第2の端部に血液の流出流を分布させるために、流出流F
0をカニューレの第1の端部内に分散させる。同様に、開口24が流入部であり、径方向ポート20が流出部であるように、
図1に示されている血液の流れを(たとえば、インペラ35の方向またはインペラブレード34の向きを逆にすることによって)逆流させてもよいことが分かる。径方向フランジ25を組み込んで、いくつかの機能、すなわち、1)集電(collection)と、フィードスルーまたは端子接続を通じたポンプ本体外への引き出しとのためのモータ配線(図示せず)の収容、2)ポンプハウジング12aを対象の解剖学的構造の組織壁に付す軸方向深さ位置決め部、および3)カニューレ(図示せず)または他の管の接続の支持を提供してもよい。さらに、管(図示せず)の軸方向の固定(すなわち、ねじ付き孔)のために軸方向ボス27を設けてもよい。
【0032】
ロータ14aの径方向の支持は、ロータ14aの外軸受面40とポンプハウジング12aの円筒穴28の内軸受面との間の相対動作の作用によって実現される。これにより流体力学的径方向ベアリング、すなわちジャーナルベアリングが生成される。特に、内軸受面28に対するロータ14aの相対動作によって発生する流体力学的スラスト力は、円筒穴28内のロータの径方向の主な浮遊源または唯一の浮遊源である。ジャーナルベアリングの寸法は、ロータの外径d
rと穴の内径d
bとの関数である環状ギャップgを形成するように設定されている。好ましい実施の形態では、環状ギャップgの寸法は、0.002インチ~0.003インチにあるように設定される。
図1の表現では、主に、ポンプ10aの流動特性を示す図示の目的で、漏出経路30について(他の構成要素寸法に対して)はるかに大きいギャップgが示されていることが分かる。
図6~
図9に示されている漏出流経路30はより寸法的に正確に描写構成要素の寸法を設定したものである。
【0033】
ジャーナルベアリング構成により、剪断応力が有効に最小化され、軸方向漏出流入部22から径方向ポート20に向かう漏出流が促進される。好ましくは、嵌め合い面全体が連通漏出経路30に沿って継続的に相対動作するものである。したがって、このような狭いクリアランス全体、すなわち低い流動面全体が流動によって連続的に洗浄され、溶血現象および血栓現象を最小にすることができる。特に、FIR>>FIAであるので、溶血現象は最小になる。可動部品による動的(active)漏出流経路30により、穴28内の露出面の動的な洗浄が可能になる。これにより、封止(一般的に血栓形成を悪化させる)の要件が緩和され、したがって、本実施の形態によりインプラントとして寿命が長くなる。
【0034】
図1に見られるように、また、
図2のロータ14aの斜視図にも見られるように、ポンプ10Aは、三つ葉状径方向ベアリング45および溝付き半球状スラストベアリング47も備え、さらなる安定性および流動特性をロータ14aにもたらす。径方向ベアリング45はネック38および径方向ポートに隣接する位置に
図1では示されている。
図3に示されているロータ10aの断面図に見られるように、径方向ベアリング45は、大まかにいえば、基部直径部42から外方に延びている3つのランド46を備える。ランド46および基部直径部42毎にテーパ44が移行する。異なる数のランドを有する構成を用いてもよいが、
図1~
図4に示されている径方向ベアリング45の好ましい構成は、ほぼ120°で等しく離間した3つのランド46を備える。テーパ部が周に沿って約80°の角度Θ
Tで延びる一方で、ランド部46の角度Θ
Lと基部直径部42の角度Θ
Βとは周の約20°に沿って延びる。
【0035】
図4は、ロータ14a断面図の概略的副表現を示し、径方向ベアリングのテーパランド46が強調/誇張されている。穴28内での圧力分布のために、ランドの高さh、すなわち基部直径42からの突出範囲を選択する。高さhに応じて、円筒穴の直径d
bとランドでのロータの直径とに応じた所望のギャップ(たとえば0.002~0.005インチ)を持つように基部でのロータの直径d
rを設定してもよい。ランドでのロータの直径の寸法は
図3に示されている半径r
Lの2倍を示し、これはロータ14aが回る際の径方向ベアリング45の「有効直径(effective diameter)」である点に留意するべきである。上記の寸法は図示目的に限り、上記の寸法をポンプ寸法および機能に基づいて変更してもよい点にも留意するべきである。
【0036】
以下、
図16を参照し、また、比較として
図17を参照して、
図1~
図4および
図7~
図9に示されている実施の形態において詳述されるように、径方向ベアリング45によりロータ14aの周にわたってバランスのとれた圧力分布が実現される。
図16が径方向ベアリングの周囲の様々な箇所について圧力分布プロファイルを示す一方で、
図17は、径方向ベアリング45がない場合の外軸受面40にわたって配置されている滑り摺動ベアリング(plain-sleeve bearing)について圧力分布プロファイルを示す。
【0037】
図16に見ることができるように、周を時計回りに回ると、圧力は、基部半径部42で最小になってゼロに至り、ランド46で高まり始め、ベアリングがテーパ部44に沿ってテーパが低くなるのに応じて高まり始める。テーパ部に沿ってピークに達した後、次の基部半径部42の前に、最小圧力、すなわちゼロ圧力まで減少する。その後、プロファイルは残りの2つのテーパランドについて繰り返される。このバランスのとれた圧力分布によりロータ14aが安定し、穴28内のほぼ中央の位置が保たれる。したがって、周の周囲のすべての箇所またはほぼすべての箇所で軸受面40の周囲で調和した漏出経路30が保たれる。したがって、漏出経路30の有効な流体流特性が、軸受面と、対応する嵌め合い穴28面との全体または少なくとも大部分に有効に適用される。
【0038】
図17を参照して、滑り摺動ベアリング40は、非対称であり、ベアリング周縁の一方側に荷重がかかる圧力分布を持つことで、穴28内のロータ14aが不安定になり、したがって、漏出経路30および対応する流体流特性が不安定になる。
【0039】
好ましくは径方向ベアリング45をロータ14aに配置するが、ロータをまっすぐなスリーブにして、このような突出部を穴28の内壁に配置することもできることが分かる。たとえば、穴28は、基部直径(db)部から延びるランドで形成される3つの突出部を、3つの挟まれるテーパ部とともに備えてもよい。しかし、作製が困難であるため、ロータベースの径方向ベアリングが好ましいことが分かる。
【0040】
図5に戻り、ロータ14aの末端50に配置されている半球状スラストベアリング47の斜視図が示されている。この構成では、軸方向スラストベアリング47は3つの湾曲テーパ溝(swept-tapered grooves)48を備える。スラストベアリング47は所定の圧力差および調和したポンプ機構を提供して漏出経路30を通過する流れを促進するように構成されている。溝48は弧の中心近傍で最も深く、中心から外方(径方向)に湾曲する浅・深・浅構成にあり、深さが浅から深に移行する箇所で低圧領域が生じる。
図18はスラストベアリング47の圧力分布を示す。
図18に見られるように、圧力は、深さが浅から深に移行する箇所の先端で最低であり、溝48出口で最高(白)であり、きわめて高い径方向安定性が実現される。溝が外方に向かって小さくなるのに応じて、白い領域は内方に延びて、半球または円錐構成の場合に軸方向スラスト荷重(axial thrust)に変換される。この圧力により、軸方向に分布したスラスト荷重(axial distributed thrust)が生じて漏出経路30内への流れが促進され、その一方で、さらに径方向安定性も実現される。
【0041】
以下、
図6を参照して、滑り摺動径方向ジャーナル軸受面40と半球状軸方向スラストベアリング49とを有するロータ14bを有する代替血管内心室補助ポンプアセンブリ10bの断面図が示されている。ポンプアセンブリ10bは、ロータ14bがハウジング12b内に回転可能に配置されるようにそれぞれ第1および第2の端部16,18を有するポンプハウジング12bを備える。
【0042】
ハウジング12bは第1の端部16にある漏出流入部22を含み、漏出流入部22は、第1の端部16の長手方向に沿って軸方向に配置されている円筒穴28に流入させることができる軸方向配置開口を備える。円筒穴28の寸法は、ロータ14bの軸受面40の外面にフィットするジャーナルベアリングが円筒穴28によって形成されるように設定されている。
【0043】
ポンプハウジング12bの第2の端部18は、ロータ14bのインペラ35を収容するために構成されている円筒穴26を備える。インペラ35は、大まかにいえば、複数の軸方向径方向湾曲ブレード(axially and radially sweeping blades)24を備える。ポンプハウジング12b内でロータ14bが回転すると、インペラ35は径方向ポート20から径方向内方に流れを吸引して、円筒穴26によって定められるポンプ室内まで吸引する。血流は円筒穴26に沿って進行し、ロータ14bの円錐先端36を通過して、軸方向流出部、すなわちポート24から流出する。流れFLPは軸方向ベアリング49の位置にあるポンプ溝52によって主に発生する。さらに、インペラ35によって生じる圧力も、軸受面40と穴28内壁との間のクリアランスによって定められる環状漏出経路30に沿って動力源流の一部を発生する。漏出流経路30は漏出流入部22から円筒穴28の長手方向に沿って延びる。
【0044】
ロータ14bの末端50には半球状スラストベアリング49が配置されている。この構成では、軸方向スラストベアリング49は、軸受面40からまたはその近傍から開口22に向かって横断する長手方向に向けられた3つの溝52を備える。スラストベアリング49は所定の圧力差および調和したポンプ機構を提供して漏出経路30を通過する流れを促進するように構成されている。溝52およびポンプアセンブリ12bは大規模の漏出流を起こすことができる場合があることが分かる。しかし、湾曲テーパ溝48の場合よりも強い再循環が深い長手方向溝52内に存在する場合がある。
【0045】
図7は、三つ葉状テーパランドベアリング45と円錐軸方向スラストベアリング51とを有するロータ14cを有する代替血管内心室補助ポンプアセンブリ10cの断面図を示す。ポンプアセンブリ10cは、それぞれ第1および第2の端部16,18を有するポンプハウジング12cを備え、ロータ14cはハウジング12c内に回転可能に配置されるように構成されている。
【0046】
ハウジング12cは第1の端部16にある漏出流入部を含み、漏出流入部は、第1の端部16の長手方向に沿って軸方向に配置されている円筒穴28に流入させることができる軸方向配置開口を備える。円筒穴28の寸法は、ロータ14cの軸受面40の外面にフィットするジャーナルベアリングが円筒穴28によって形成されるように設定されている。
【0047】
ポンプハウジング12cの第2の端部18は、ロータ14cのインペラ35を収容するために構成されている円筒穴26を備える。インペラ35は、大まかにいえば、複数の軸方向径方向湾曲ブレード34を備える。ポンプハウジング12c内でロータ14cが回転すると、インペラ35は径方向ポート20から径方向内方に流れを吸引して、円筒穴26によって定められるポンプ室内まで吸引する。血流は円筒穴26に沿って進行し、ロータ14cの円錐先端36を通過して、軸方向流出部、すなわちポート24から流出する。流れFLPは軸方向ベアリング51の位置にあるポンプ溝56によって主に発生する。さらに、インペラ35によって生じる圧力も、軸受面40と穴28内壁との間のクリアランスによって定められる環状漏出経路30に沿って流れの動力を発生する。漏出流経路30は漏出流入部22から円筒穴28の長手方向に沿って延びる。
【0048】
ポンプ10cは、三つ葉状径方向ベアリング45も備え、さらなる安定性および流動特性をロータ14cにもたらす。径方向ベアリング45はネック38および径方向ポートに隣接する位置に示されている。径方向ベアリング45は、大まかにいえば、基部直径部42から外方に延びている3つのランド46を備える。ランド46および基部直径部42毎にテーパ44が移行する。
【0049】
ロータ14cの円錐先端54には円錐スラストベアリング51が配置されている。この構成では、軸方向スラストベアリング51は、軸受面40からまたはその近傍から円錐先端54に向かって横断する長手方向に向けられた3つの溝56を備える。スラストベアリング51は所定の圧力差および調和したポンプ機構を提供して漏出経路30を通過する流れを促進するように構成されている。径方向の1セットのテーパランドと、軸方向の別のセットのテーパランドとを用いることができる平坦な軸方向ベアリング(
図8)とは対照的に、溝/特徴の単一のセットで径方向および軸方向の両方の力/圧力を発生させることができるという点で、円錐ベアリングは半球状ベアリングと同様である。いくつかの実施の形態では、円錐軸方向ベアリング設計は、長手方向溝56の代わりにまたはこれに加えてテーパランド溝を含んでもよい。
【0050】
半球状ベアリングは、よりピボット的な動作(たとえば玉継ぎ手(ball-in-socket joint))を可能にすることができ、ピボットは円錐ベアリングの場合にはあまり一般的ではないと考えられる。円錐ベアリングでは、軸方向から径方向への力分布の変動を円錐の角度によって可能にする。
【0051】
図8は、三つ葉状テーパランドベアリング45と平坦軸方向スラストベアリング53とを有するロータ14dを有する代替血管内心室補助ポンプアセンブリ10dの断面図を示す。ポンプアセンブリ10dは、それぞれ第1および第2の端部16,18を有するポンプハウジング12dを備え、ロータ14dはハウジング12d内に回転可能に配置されるように構成されている。
【0052】
ハウジング12dは第1の端部16にある漏出流入部22を含み、漏出流入部22は、第1の端部16の長手方向に沿って軸方向に配置されている円筒穴28に流入させることができる軸方向配置開口を備える。円筒穴28の寸法は、ロータ14dの軸受面40の外面にフィットするジャーナルベアリングが円筒穴28によって形成されるように設定されている。
【0053】
ポンプハウジング12dの第2の端部18は、ロータ14dのインペラ35を収容するために構成されている円筒穴26を備える。インペラ35は、大まかにいえば、複数の軸方向径方向湾曲ブレード34を備える。ポンプハウジング12d内でロータ14dが回転すると、インペラ35は径方向ポート20から径方向内方に流れを吸引して、円筒穴26によって定められるポンプ室内まで吸引する。血流は円筒穴26に沿って進行し、ロータ14dの円錐先端36を通過して、径方向流出部、すなわちポート24から流出する。流れFLPは軸方向ベアリング53の位置にあるポンプ溝58によって主に発生する。さらに、インペラ35によって生じる圧力も、軸受面40と穴28内壁との間のクリアランスによって定められる環状漏出経路30に沿って流れの動力を発生する。漏出流経路30は漏出流入部22から円筒穴28の長手方向に沿って延びる。
【0054】
ポンプ10dは、三つ葉状径方向ベアリング45も備え、さらなる安定性および流動特性をロータ14dにもたらす。径方向ベアリング45はネック38および径方向ポートに隣接する位置に示されている。径方向ベアリング45は、大まかにいえば、基部直径部42から外方に延びている3つのランド46を備える。ランド46および基部直径部42毎にテーパ44が移行する。
【0055】
ロータ14dの平坦な端部59には平坦軸方向スラストベアリング53が配置されている。この構成では、軸方向スラストベアリング53は、円錐の平坦な端部59に向かって横断する長手方向に向けられた3つの湾曲テーパ溝58を備える。スラストベアリング53は所定の圧力差および調和したポンプ機構を提供して漏出経路30を通過する流れを促進するように構成されている。平坦なベアリングには、2つのベアリング特徴セット、すなわち径方向1つと軸方向1つとが有効である場合もある。
【0056】
図9は、第1の三つ葉状テーパランドベアリング45、第2の三つ葉状テーパランドベアリング55および半球状軸方向スラストベアリング47を有するロータ14dを有する代替血管内心室補助ポンプアセンブリ10eの断面図である。ポンプアセンブリ10eは、それぞれ第1および第2の端部16,18を有するポンプハウジング12eを備え、ロータ14eはハウジング12e内に回転可能に配置されるように構成されている。
【0057】
ハウジング12eは第1の端部16にある漏出流入部22を含み、漏出流入部22は、第1の端部16の長手方向に沿って軸方向に配置されている円筒穴28に流入させることができる軸方向配置開口を備える。円筒穴28の寸法は、ロータ14eの軸受面40の外面にフィットするジャーナルベアリングが円筒穴28によって形成されるように設定されている。
【0058】
ポンプハウジング12eの第2の端部18は、ロータ14eのインペラ35を収容するために構成されている円筒穴26を備える。インペラ35は、大まかにいえば、複数の軸方向径方向湾曲ブレード34を備える。
ポンプハウジング12e内でロータ14eが回転すると、インペラ35は径方向ポート20から径方向内方に流れを吸引して、円筒穴26によって定められるポンプ室内まで吸引する。血流は円筒穴26に沿って進行し、ロータ14eの円錐先端36を通過して、軸方向流出部、すなわちポート24から流出する。流れFLPは軸方向ベアリング47の位置にあるポンプ溝48によって主に発生する。さらに、インペラ35によって生じる圧力も、軸受面40と穴28内壁との間のクリアランスによって定められる環状漏出経路30に沿って流れの動力を発生する。漏出流経路30は漏出流入部22から円筒穴28の長手方向に沿って延びる。
【0059】
図1に示されている実施の形態10aのように、ポンプ10eは三つ葉状径方向ベアリング45を備え、さらなる安定性および流動特性をロータ14eにもたらす。径方向ベアリング45はネック38および径方向ポートに隣接する位置に示されている。径方向ベアリング45は、大まかにいえば、基部直径部42から外方に延びている3つのランド46を備える。ランド46および基部直径部42毎にテーパ44が移行する。
【0060】
ロータ14eのネック領域38にある径方向ベアリング45に加えて、半球状の端部50に隣接してまたはその近傍に第2の径方向ベアリング55が配置されている。径方向ベアリング55は、大まかにいえば、基部直径部60から外方に延びている3つのランド64を備える。ランド64および基部直径部60毎にテーパ62が移行する。第2の、すなわち、後方の径方向ベアリング55は第1の、すなわち、前方の径方向ベアリング45と同様または同一の手法で動作して回転安定性をロータ14eにもたらす。
【0061】
さらに、ロータ14eの半球状の端部50に半球状スラストベアリング47が配置されている。この構成では、軸方向スラストベアリング47は3つの湾曲テーパ溝(swept-tapered grooves)48を備える。スラストベアリング47は所定の圧力差および調和したポンプ機構を提供して漏出経路30を通過する流れを促進するように構成されている。この圧力により、軸方向に分布したスラスト荷重(axial distributed thrust)が生じて漏出経路30内への流れが促進され、その一方で、さらに径方向安定性も実現される。
【0062】
図10~
図12は、ベアリング流を逆にした、観血性を最小にした血管内心室補助ポンプアセンブリ100を示す。
図10がポンプアセンブリ100の側面図を示す一方で、
図11はポンプアセンブリ100の断面図である。
図12は
図11の断面図の拡大詳細図を示す。
【0063】
ポンプアセンブリ100では、中実ロータシャフトをインペラ140の螺旋ブレード124に一体的に取り付けた状態で(ステータブレード125をハウジング上に含めることもできる)ロータ114を用い、上記の実施の形態によって示され説明されているのと同様の流体力学的浮遊原理で動作する。中実ロータ114は、モータステータ144と相互作用するロータ磁石146を備える。モータステータ144は、リード線120を介して電源(図示せず)に接続されるように構成されている導電コイル(図示せず)を備え、磁束空隙モータ境界部(flux gap motor interface )を形成するようにロータ磁石146に対して位置決めされることで、電源による起動時の動作モードで、モータステータ144コイルを通る電流によって、ロータ114とハウジング112との間の磁束空隙クリアランス(すなわち漏出経路130)を横切って延び、ロータ114にトルクを与えて、ジャーナルベアリングクリアランス130内およびハウジング112の端部118の穴106内でロータ114を回転させるのに十分にロータ磁石146を変位させる磁束場が生成される。モータステータコイル144をロータ磁石146に対して軸方向にオフセットして、ハウジングの穴内に向かうロータの端部の軸方向の力またはプレロードを形成してもよいことも分かる。
【0064】
図1~
図9に示されているポンプの実施の形態10a~10eのいずれかにロータ動作を付与するために、
図11および
図12に示されているロータ磁石/ロータステータ構成を同様に実施してもよいことが分かる。径方向およびスラストベアリング構成と流動特性とを強調するために、モータの詳細を
図1~
図9に含めなかった。本説明の実施の形態に好適であれば、2013年4月2日に発行された米国特許第8,409,276号(参照によってその全体が本明細書に援用される)に詳述されているモータ構成を用いてもよいことも分かる。
【0065】
ロータ114の回転は、ロータ114の外面148と、穴132の内面と、2者を隔てる漏出経路130によって定められるジャーナルベアリングクリアランスとから形成される流体力学的ジャーナルベアリングを介してハウジング112の穴132内でサポートされる。漏出経路130の寸法は、
図1~
図9に示されているポンプ10a~10eの漏出経路30と同様のジャーナルベアリングクリアランスを形成するように設定されることが分かる。ここで説明されているすべての実施の形態では、ジャーナルベアリングクリアランスの機能として前記ポンプハウジング内の、前記ポンプハウジングに対する前記ロータの相対動作によって発生する流体力学的スラスト力を概ね用いて、またはこの流体力学的スラスト力のみによって前記ハウジング112内でロータ114(または
図1~
図9のロータ14a~14eのいずれか)が径方向に浮遊することが分かる。磁気構成要素(たとえばステータ144および磁石146)によりなんらかの浮遊状態(すなわち磁気浮遊状態)を付随的にもたらすことができるが、このような磁気浮遊状態は、ジャーナルベアリング構成の機能として発生する流体力学的スラスト力に対して無視できるのであり、ほとんど影響がないものである。
【0066】
ロータ114が回転すると、インペラ140は、ハウジング112の端部118にある開口、すなわちポート116を通じて、ロータ先端142を通して、穴106によって定められるポンプ室108内まで軸方向流入流FIAを吸引する。その後、押し進められた流体は径方向ポート122を通ってFORとして径方向外方に流れる。流出流FORがロータ114およびハウジング112の長手方向軸に対して径方向および軸方向成分(たとえば45度)を持つ状態で流出するようにポート122が向いていることが分かる。
【0067】
径方向流出流FORおよび軸方向流入流FIAとともに、径方向流入流FIRが、径方向流出ポート122に対してインペラ140およびポンプ室108の反対側にある径方向開口126から流入する。流入流FIRは軸方向流路136に供給され、ロータ114の後方の端部128(ロータ軸受面148と同様である、空所132の後方の壁とのクリアランスを共有する)に沿って分散する。流れFLPは128および/または134でのジオメトリ(すなわちポンプ溝)によって漏出経路130に沿って押し流される。128および134でのジオメトリと、122および142での相対圧力とに基づいて漏出経路流FLPの方向を(この実施の形態に示されているものに対して)逆にすることができる。その後、流入流FIRは、流出ポート122での流れとともに流出する前に、漏出経路130の長手方向に沿って移動してジャーナルベアリングを滑らかにする。
【0068】
図13~
図15は、ベアリング流を逆にした、観血性を最小にした血管内心室補助ポンプアセンブリ150を示す。
図13がポンプアセンブリ150の側面図を示す一方で、
図14はポンプアセンブリ150の断面図である。
図15は
図14の断面図の拡大詳細図を示す。
【0069】
ポンプアセンブリ150では、中実ロータシャフトをインペラ140の螺旋ブレード154に一体的に取り付けた状態で(ステータブレード155をハウジング上に含めることもできる)ロータ114を用い、上記の実施の形態によって示され説明されているのと同様の流体力学的浮遊原理で動作する。ロータ114は、中央流路156と、モータステータ144と相互作用するロータ磁石146とを備える。モータステータ144は、電源(図示せず)に接続されるように構成されている導電コイル(図示せず)を備え、磁束空隙モータ境界部を形成するようにロータ磁石146に対して位置決めされることで、電源による起動時の動作モードで、モータステータ144コイルを通る電流によって、ロータ114とハウジング112との間の磁束空隙クリアランス(すなわち漏出経路130)を横切って延び、ロータ114にトルクを与えて、ジャーナルベアリングクリアランス130内およびハウジング112の端部118の穴106内でロータ114を回転させるのに十分にロータ磁石146を変位させる磁束場が生成される。
【0070】
ロータ114の回転は、ロータ114の外面148と、穴132の内面と、2者を隔てる漏出経路130によって定められるジャーナルベアリングクリアランスとから形成される流体力学的ジャーナルベアリングを介してハウジング112の穴132内でサポートされる。
【0071】
ロータ114が回転すると、インペラ140は、ハウジング112の端部118にあるポート、すなわち開口116を通じて、ロータ先端142を通して、穴106によって定められるポンプ室108内まで軸方向流入流FIAを吸引する。その後、押し進められた流体は径方向ポート122を通ってFORとして径方向外方に流れる。流出流FORがロータ114およびハウジング112の長手方向軸に対して径方向および軸方向成分(たとえば45度)を持つ状態で流出するようにポート122が向いていることが分かる。
【0072】
径方向流出流FORおよび軸方向流入流FIAとともに、漏出経路流入流FILが、径方向流出ポート22とジャーナルベアリングの前方の範囲とに位置する環状開口134から流入する。FILは134でのロータ上のジオメトリ(すなわちポンプ溝)によって押し流される。128および134でのジオメトリと、122および142での相対圧力とに基づいて漏出経路流FLPの方向を(この実施の形態に示されているものに対して)逆にすることができる。流入流FILは、ロータ114の後方の端部128(ロータ軸受面148と同様である、空所132の後方の壁とのクリアランスを共有する)に沿って分散する前に、漏出経路130に供給されて漏出経路130の長手方向に沿って移動してジャーナルベアリングを滑らかにする。その後、軸方向中央流路156に向かって径方向内方に流れとともに流れFIRを流入させ、その後、中央流路156を通じてロータ114の長手方向に沿って供給され、ロータ114の先端142で軸方向流FOAとして流出する。
【0073】
図示されていない可撓性カニューレを、ポンプ100またはポンプ150の端部118においてポンプ本体、すなわちハウジング112に取り付けてもよい。このような構成では、ポンプ100/150はカニューレの第1の端部内から血液の流入流FIAを吸引する(カニューレの第2の端部が循環系の異なる位置に配置されている)。さらに、代替の実施の形態に係れば、異なる液圧ポンプ要素を用いて、カニューレと、径方向にずらされた流動ポート122とに対して流れ方向を逆にする。したがって、端部118にある開口116と第1の端部カニューレとはポンプ流出部となり、径方向スロット、すなわちポート122はポンプ流入部として機能する。
【0074】
本明細書で説明されており、本開示の包括的な検討に基づいて当業者にとって明らかであるが、本開示の様々な装置/ポンプの実施の形態は観血性を最小にする目的にきわめて有効であり、観血性を抑えた方法を可能にすることが分かる。観血性を抑えた外科的留置のための2つの特に有効な方法(それにもかかわらず制限はない)を開示する。これらの方法は1)血管吻合なしの挿入および2)血管吻合ありの挿入を含む。
【0075】
観血性を最小にした挿入は、開胸または人工心肺なしでVAD(たとえばLV/LAまたはRV/RA)の実施を可能にする程度に特に有効であると考えられる。中心血管アクセスは、血管内ポンプまたは専用カニューレの留置のために、末梢血管アクセス(peripheral vascular access)によって、たとえば、透視(fluoroscopic guidance)を用いるなどして達成される程度に特に有効であると考えられる。
【0076】
観血性を抑えた挿入は、人工心肺を用いずに外科的切開を限定的に用いてLVADを留置することを含む程度に特に有効であると考えられる。さらに、血管吻合を必要としなくする方法はきわめて有効であると考えられ、本実施の形態のいくつかによって有効に実現される。
thorascopic技術によって向上した挿入方法に適合させれば、手順がさらに単純になり、また、本実施の形態のいくつかによって実現される。
【0077】
観血性を最小にしたLVADSの留置は、主に、インターベンショナル心臓専門医(interventional cardiologist)(ただし、明らかに十分に訓練し有能な他の医師が本開示を実施してもよい)の領域に含まれるものとほぼ考えられる。このようなインターベンショナル専門医による使用について、適合は本実施の形態のいくつかによって実現され、特に、1)開胸しない血管アクセスを実現する単純な手段、2)末梢動脈に挿入するのに好適な小型カニューレシステムおよび微小ポンプ、3)胸壁の皮下留置に好適な小型ポンプおよび4)外来環境で数ヶ月間から数年間、確実に動作可能なポンプの少なくとも1つ、好ましくはこれらの2つ以上またはすべてがこのような装置によってほぼ可能になるので、適合は実現される。長期にわたる通院で確実に動作可能なLVADを、観血性を最小にするか抑えて留置することができることは、本実施の形態のいくつかによって実現される特定の効果であり、従来開示または使用されていた装置および方法によって従前不可能である。
【0078】
様々な方法がいくつかの本実施の形態によって利用可能になり、これらはインターベンショナル心臓専門医によく知られた経血管的技術に基づく。このような方法では、典型的には、ポンプへの流入管として機能する可撓性カニューレを、大動脈弁を逆行方向に横断させて留置することを利用する。開胸しない流入カニューレの留置は、典型的には末梢動脈アクセスを通じて行なうものである。方法の一例では、経皮的配線を介して外部コントローラおよびバッテリから電力を受ける微小血管内ポンプを留置することを利用する。
【0079】
1つの特定の方法をさらに例示するために、動脈系の動脈内に留置される微小化したポンプ(たとえば、
図1~
図15に示されているポンプ10a~10e,100または150のいずれか)を含むポンプシステムを用いる。心臓の左心室内まで大動脈弁を逆行方向に横断させて流入カニューレを留置する。ポンプ流出部(たとえば、ポンプ10a~10e中の軸方向流出部、すなわちポート24または逆流モードのポンプ100もしくは150のポート116)は動脈系の上行大動脈に配置される。その後、血液は流入カニューレを介して左心室から取り除かれて、ポート24を介して上行大動脈内にポンピングされ、したがって、左心室が直接補助される。
【0080】
左心房(left atrium)(LA)にポンプ流入部を留置し、大動脈に血液を送ることによって拡張期心不全(diastolic heart failure)(DHF)も補助してもよい。
【0081】
すべての実施の形態では、外部着用モータコントローラおよび充電型バッテリシステム(図示せず)から経皮的配線(たとえば
図11に示されている配線120)を介してポンプ10a~10e,100または150に電力を供給してもよい。1つの特定の実施の形態では、配線は鎖骨下動脈を介して外部システムコンポネントからポンプまでを接続する。これの代わりに、経皮的電子移動(transcutaneous electron transfer)(TET)を通じて電力供給を行なう埋め込み型バッテリおよびコントローラを用いてもよい。
【0082】
別の実施の形態では、システムには、患者の胸筋部の皮下ポーチ(図示せず)に配置されるポンプの解剖学的留置物を組み入れてもよい。ポンプの流入部(たとえば
図11に示されているポート116)は、鎖骨下動脈に入り、左心室内まで大動脈弁を逆行方向に横断する可撓性流入カニューレ(図示せず)と連続する。第2の流出カニューレはポンプの流出部に接続され、動脈系に血液を戻す。この場合、反対側の鎖骨下動脈での吻合を通じて行なう。このように構成すると、血液は左心室から取り除かれて体循環に返される。したがって、左心室が直接補助される。前述されているシステムと同様に、外部着用モータコントローラおよび充電型バッテリシステムを介してポンプに電力および/または制御を提供するのに経皮的配線を用いてもよい。
【0083】
いくつかの実施の形態では、主要な血管壁に流入または流出カニューレを吻合することを必要とせずに、ポンプシステム、埋め込み構成および外科的方法を処理してもよい。吻合しないこれらの方法を、人工心肺または人工血管の吻合を必要とせずに、小規模の開胸またはthorascopicアプローチに適合させることができることも分かる。
【0084】
別の実施の形態では、ポンプシステムは、大動脈弁を順行方向に通過する流出カニューレ(たとえば、ポンプ10a~10eのポート24に接続される)とともに左心室内に配置されるポンプ(たとえば、
図1~
図15に示されているポンプ10a~10e,100または150のいずれか)を用いる。この外科的手順は小規模の開胸により実施することができる。このような方法に係れば、心膜を切開し、心尖部に牽引力をかける。穿刺技術および拡張器システムを使用した後、薄肉套管針を心室内腔内まで進行させる。その後、前方流ポンプなどのポンプが左心室内まで進行させられ、可撓性流出カニューレ(図示せず)が容易に大動脈弁を順行方向に横断して進行する。その後、固定アセンブリを用いてポンプを心尖部に固定する。当業者にとって明らかであるように説明されているシステムおよび方法を考慮して、適当な構成および動作の固定アセンブリを選択してもよい。
【0085】
このような構成では、ポンプにより、ハウジングのポート(たとえば、ポンプ10a~10eのいずれかの径方向流入部ポート20)を通じて血液を吸引し、流出カニューレを前方に通過させて大動脈弁上(supravalvular aorta)に血液をポンピングする。通常、大動脈弁尖(aortic leaflet)によって流出カニューレの周囲で十分な封止が実現されることになる。
【0086】
ここで説明されている特定の実施の形態に係るポンプシステムのさらなる態様に係れば、血管吻合を用いる観血性を抑えた外科的挿入が人工心肺を用いずに小規模な開胸で行なわれる。本明細書には図示されていないが、さらに例示するが、このような方法をたとえば以下のように進行させてもよい。
【0087】
心膜を切開し、心尖部に牽引力を印加する。穿刺技術および拡張器システムを用いて、薄肉流入カニューレを左心室内に挿入する。流出グラフトを下行胸部大動脈に吻合してもよい。これの代わりに、吻合のために鎖骨下動脈または大腿動脈まで流出グラフトに対してトンネル法を用いる(tunneled)ことができる。その後、ポンプを流入グラフトと流出グラフトとの間に留置することで、血液が左心室から取り除かれて、体循環に対してポンピングされる。特定のケースまたは技術に適切であるように、ポンプを胸腔または皮下または他の部位に挿入してもよい。経皮的配線により、外部コントローラおよびバッテリシステムを介して電力をポンプに提供する。
【0088】
現在の左心室補助装置では、ほとんどの場合、心尖部を介して左心室に外科的にカニューレ挿入することと、胸部大動脈に動脈グラフトを外科的に吻合することとが必要である。ほとんどの場合、心膜腔または胸腔に留置するには大き過ぎ、前腹部領域の横隔膜下に埋め込む。横隔膜下留置には一般的に、横隔膜を通るトンネル法を行なって人工血管を這わせることが必要である。これは大規模な手術であり、人工心肺が通常必要である。心膜腔にポンプを留置することで、横隔膜穿通の必要がなくなり、ポンプ流入部の長さが最小になる。ポンプ流入部が短いことで、ポンピングに必要な仕事量が低下することによってポンプ内の血栓形成の尤度が低下する場合がある。
【0089】
本開示の様々なLVADポンプの実施の形態をより完全に以下で説明する。各々は従来開示または使用されたシステムを超える特定の顕著な考え得る利点を提供するものであると考えられる。特定の実施の形態のこのような改善は、設計の単純化、コストの低減および既存のLVAD設計を超える電力消費の低減の1つ以上を含むが、これらに限定されない。各々は従来の外科的挿入術に容易に適合させることができる。さらに、特定の実施の形態は、外形を小さくして、観血性を最小にするか、観血性を抑えて到達させることと、長期通院インプラントの場合の長寿命とを組み合わせる非常に有益な利点を実現するものであると考えられる。
【0090】
これに加えて、ここで説明されているポンプの外径および長さを特定の用途に対する適切なパラメータに適するように容易に調整して、回転アセンブリの径方向の制約に対してモータ性能および流体力学的ベアリング支持を最適化することができる。
【0091】
効果のうち、特に、本説明のポンプにより、小規模の開胸により左心尖部または左心房内に挿入するのに好適であり、ごくわずかな心臓外容積しか占めない寸法外形が可能になる。ポンプ流出部からの人工血管は典型的には大動脈または鎖骨下動脈に吻合されることになる。
【0092】
本説明に係るポンプは、前胸壁に配置することができ、経胸腔カニューレから左心に向かう血液を受けることができ、グラフトを介して鎖骨下動脈に流れを循環に戻すことができる程度に十分に小型に構成することもできる。薄肉カニューレを、鎖骨下動脈を介して大動脈弁を逆行方向に横断させて留置することで、左心室へのアクセスを実現することもできる。大動脈弁尖により、カニューレの壁の周囲が封止されることになる。ポンプ流出からの加圧流を、グラフトを介して鎖骨下部などの末梢血管に戻して循環に戻すことができる。このような手順はインターベンショナル心臓専門医の領域に属することになる。
【0093】
使用に関する1つの特定のさらなる実施の形態では、本説明で詳述されているポンプを小規模の開胸により左心尖部または左心房内に挿入することができ、このポンプはごくわずかな心臓外容積しか占めないことになる。ポンプ流出部からの人工血管を大動脈または鎖骨下動脈に吻合することができる。さらに、ポンプは、前胸壁に配置することができ、経胸腔カニューレから左心に向かう血液を受けることができ、流れを、グラフトを介して鎖骨下動脈に戻して循環に戻すことができる程度に十分に小型である。さらにまた、薄肉カニューレを、鎖骨下動脈を介して、大動脈弁から離脱させて逆行方向に横断させて留置し、流れを、グラフトを介して鎖骨下動脈に戻して循環に戻すことで、左心へのアクセスを実現することができる。
【0094】
本説明のポンプの特徴の組み合わせは、ほとんどの場合に、左心室または左心房に直接留置するのに適するが、径方向に大きい特徴部でも、適切に構成するか、到達させる間につぶれるように修正すれば、観血性を最小にするか抑えて到達させるためにより小さい外形が可能になる場合がある。
【0095】
別の典型的な実施の形態では、流出カニューレの近い側の端部(図示せず)をポンプの流出部(たとえば、ポンプ10a~10eのいずれかのポート24)に接続する。この場合、心尖部の小孔を通して遠い側の端部を挿入し、カニューレの先端が大動脈弁よりも上にあることになるように、順行方向に大動脈弁を横断させて流出カニューレを通過させる。大動脈弁尖により、カニューレ壁の周囲が封止されることになる。流出カニューレを強固にしたり、場合によっては、弁尖の剥離を最小にする膨張可能なパンタロン型設計にしたりすることができる。カニューレ直径はポンプ本体よりもはるかに小さくすることができる。大動脈弁を横断する際の流出カニューレの外径は、たとえば約7mmにすることができる。ポンプ流入部が存在するポンプの主本体は、左心室内に残ることになる。ポンプ動作中、血液は左心室から大動脈弁上にポンピングされることになる。
【0096】
本開示は上記で概説されている特定の実施の形態とともに説明されているが、多数の代替、修正および変形が当業者にとって明らかであることは明白である。たとえば、ポンプモータを外部電源に接続する導線に言及することで本実施の形態を説明することができるが、他の電源またはエネルギカップリング機構(energy coupling mechanism)、たとえば、一体型バッテリ、埋め込み型電源などを用いてもよい。これは、たとえば、ポンプアセンブリと一体化されるか、離れた部位に埋め込まれる埋め込み型バッテリをさらに含んでもよい。各部位で、好適なバッテリは、たとえば、安定した荷電寿命をさらに持ってもよいし、運動による作用や経皮的誘導結合によってなどして充電可能であってもよい。別の例に係れば、ロータ磁石とモータステータバックアイアンなどのいくつかの対になったり協働したりする部品は、特定の実施の形態に係る互いの特定の相対的位置で示されている。しかし、このような構成要素間の他の特定の相対配置も考えられ、さらに、これはいくつかの状況や用途で適切である場合があるし、特定の効果を持つものでさえある場合もある。たとえば、図示されているモータステータの実施の形態のバックアイアンはロータ磁石と並んだ状態で典型的に示されているが、これの代わりに、休止状態でロータ磁石から部分的に長手方向にずらされてもよい。この休止時のずれは、これらの構成要素間の磁気引力からずらす力を、磁束空隙モータが起動するときにハウジング内のロータが受ける逆長手方向ずらし力に対して反対方向に最大にするように構成してもよい。
【0097】
さらに、適切であれば、本明細書で説明されている実施の形態のいずれかの特徴または構成要素を交換して用いてもよいことが分かる。たとえば、ポンプ10a~10eについて詳述されている径方向または軸方向ベアリングのいずれかをポンプ100および150について示されているロータ構成に用いてもよい。さらに、ポンプ100および150について詳述されている磁気駆動/アクチュエータ構成要素のいずれかをポンプ10a~10eについて示されている構成に用いてもよい。
【0098】
本明細書の記載から、本開示が、以下の記載(ただしこれに限定されない)を含む複数の実施の形態を包含することが分かる。
【0099】
1 ロータであって、
前記ロータは、外面を有するシャフトと、前記シャフトの前記外面上の第1の位置から延びるインペラとを備え、
前記外面は、前記シャフト上の第2の位置にある外軸受面と、前記外軸受面にあるか、これに隣接する径方向ベアリングとを備え、
前記径方向ベアリングは前記外軸受面から径方向に突出する複数のランドを備え、
前記複数のランドはロータシャフトの周にわたって離間している、ロータと、
ポンプハウジングであって、
前記ポンプハウジングは、ポンプ室を定めるように構成されている1つ以上の円筒穴と、前記ポンプハウジング内の内軸受面と、を備え、
動作構成では、前記ロータの動作の際に前記インペラが前記ポンプ室内で回転するように、前記ロータは前記1つ以上の円筒穴内に位置し、
前記ポンプハウジングの前記内軸受面は前記シャフトの前記外軸受面に近接して嵌合されて、これらの間に環状クリアランスを形成し、これにより、前記ロータの動作中に前記内軸受面および外軸受面は流体力学的ジャーナルベアリングを形成し、
前記ポンプハウジングは、前記環状クリアランスと流体連通する漏出流入部を備え、
前記ロータの動作中、前記環状クリアランスは、前記漏出流入部への血液の前記流れを可能にし、前記内軸受面および外軸受面間の前記環状クリアランスの前記長手方向に沿う漏出経路として動作し、
前記ロータの動作は前記環状クリアランス内で圧力プロファイルを生成し、
前記径方向ベアリングの前記ランドは、ほぼ、前記外軸受面の前記周にわたって対称的に前記圧力プロファイルを分布させる、ポンプハウジングと
を備える心臓補助装置。
【0100】
2 前記ロータは、主に、前記ポンプハウジング内の、前記ポンプハウジングに対する前記ロータの相対動作によって発生する流体力学的スラスト力によって前記ハウジング内で前記径方向に浮遊する、前述したあらゆる態様の装置。
【0101】
3 前記ロータは、前記シャフトの前記軸受面中に位置する1つ以上のロータ磁石を備え、
前記ポンプハウジングは、前記環状クリアランスに対して前記1つ以上のロータ磁石の反対側に位置するコイルを有するモータステータを備え、
前記ロータの動作は、前記漏出流経路を横切って延びる磁束場を生成して前記1つ以上のロータ磁石を変位させる前記モータステータを通る電流の作用を受ける、
前述したあらゆる態様の装置。
【0102】
4 前記1つ以上の円筒穴は、前記ポンプハウジングの第1の端部に配置されている第1の穴であって、前記ロータの前記外軸受面を収容するために構成されている前記内軸受面を定める第1の穴と、前記ポンプハウジングの第2の端部にある第2の穴であって、前記インペラおよびポンプ室を収容するために構成されている第2の穴とを備え、前記ポンプハウジングは、
前記第1の穴と前記第2の穴との間に配置されている径方向ポートをさらに備え、
前記インペラの回転により、血液の前記流れを、前記径方向ポートを通じ、前記第2の穴の前記長手方向に沿って前記ポンプ室内に吸引し、前記ポンプハウジングの前記第2の端部に配置されている流出部を通過させ、
前記漏出流入部は、前記流出部に対して前記ポンプハウジングの反対側の端部に配置されている、前述したあらゆる態様の装置。
【0103】
5 前記漏出経路に沿って流れる血液は前記径方向ポート内に放出される、前述したあらゆる態様の装置。
【0104】
6 前記複数のランドの前記各々は前記ロータの基部直径部から周方向に徐々に小さくなり、前記基部直径部は前記外軸受面に等しい直径を持つ、前述したあらゆる態様の装置。
【0105】
7 前記ロータの第1の端部に配置されている軸方向ベアリング
をさらに備え、
前記軸方向ベアリングは、前記ハウジングの前記漏出流入部に軸方向に隣接して配置されるように構成され、
前記軸方向ベアリングは、前記ロータの軸方向スラスト荷重に抗するために前記1つ以上の円筒穴の嵌め合い面とともに流体力学的スラストベアリングを形成する複数の溝を備える、前述したあらゆる態様の装置。
【0106】
8 前記軸方向スラストベアリングは、前記漏出流入部から前記漏出流経路内への血流を促進するようにさらに構成されている、前述したあらゆる態様の装置。
【0107】
9 前記軸方向スラストベアリングは半球面を備える、前述したあらゆる態様の装置。
【0108】
10 前記複数の溝は前記半球面にある湾曲テーパ溝を備える、前述したあらゆる態様の装置。
【0109】
11 前記軸方向スラストベアリングは円錐面または平坦面を備える、前述したあらゆる態様の装置。
【0110】
12 前記径方向ベアリングは前記径方向ポートに隣接する前記外軸受面の前記第1の端部に配置され、前記装置は、
前記外軸受面から径方向に突出するランドの第2のセットを備える第2の径方向ベアリングをさらに備え、
ランドの前記第2のセットはロータシャフトの第2の周にわたって離間し、
前記第2の径方向ベアリングは、前記漏出流入部に隣接する前記軸受面の第2の端部に配置されている、前述したあらゆる態様の装置。
【0111】
13 ロータであって、
前記ロータは、外面を有するシャフトと、前記シャフトの前記外面上の第1の位置から延びるインペラとを備え、
前記外面は、前記シャフト上の第2の位置にある外軸受面と、前記外軸受面にあるか、これに隣接する軸方向ベアリングとを備え、
前記軸方向ベアリングは、前記ハウジングの前記漏出流入部に軸方向に隣接して配置されるように構成されている、ロータと、
ポンプハウジングであって、
前記ポンプハウジングは、ポンプ室を定めるように構成されている1つ以上の円筒穴と、前記ポンプハウジング内の内軸受面とを備え、
動作構成では、前記ロータの動作の際に前記インペラが前記ポンプ室内で回転するように、前記ロータは前記1つ以上の円筒穴内に位置し、
前記ポンプハウジングの前記内軸受面は前記シャフトの前記外軸受面に近接して嵌合されて、これらの間に環状クリアランスを形成し、これにより、前記ロータの動作中に前記内軸受面および外軸受面は流体力学的ジャーナルベアリングを形成し、
前記ポンプハウジングは、前記環状クリアランスと流体連通する漏出流入部を備え、
前記ロータの動作中、前記環状クリアランスは、前記漏出流入部への血液の前記流れを可能にし、前記内軸受面および外軸受面間の前記環状クリアランスの前記長手方向に沿う漏出経路として動作する、ポンプハウジングと
を備え、
前記軸方向ベアリングは、前記ロータの軸方向スラスト荷重に抗し、前記漏出流入部から前記漏出流経路内への血流を促進するために前記1つ以上の円筒穴の嵌め合い面とともに流体力学的スラストベアリングを形成する複数の溝を備える、心臓補助装置。
【0112】
14 前記ロータは、主に、前記ポンプハウジング内の、前記ポンプハウジングに対する前記ロータの相対動作によって発生する流体力学的スラスト力によって前記ハウジング内で前記径方向に浮遊する、前述したあらゆる態様の装置。
【0113】
15 前記ロータは、前記シャフトの前記軸受面中に位置する1つ以上のロータ磁石を備え、
前記ポンプハウジングは、前記環状クリアランスに対して前記1つ以上のロータ磁石の反対側に位置するコイルを有するモータステータを備え、
前記ロータの動作は、前記漏出流経路を横切って延びる磁束場を生成して前記1つ以上のロータ磁石を変位させる前記モータステータを通る電流の作用を受ける、
前述したあらゆる態様の装置。
【0114】
16 前記1つ以上の円筒穴は、前記ポンプハウジングの第1の端部に配置されている第1の穴であって、前記ロータの前記外軸受面を収容するために構成されている前記内軸受面を定める第1の穴と、前記ポンプハウジングの第2の端部にある第2の穴であって、前記インペラおよびポンプ室を収容するために構成されている第2の穴とを備え、前記ポンプハウジングは、
前記第1の穴と前記第2の穴との間に配置されている径方向ポートをさらに備え、
前記インペラの回転により、血液の前記流れを、前記径方向ポートを通じ、前記第2の穴の前記長手方向に沿って前記ポンプハウジング内に吸引し、前記ポンプハウジングの前記第2の端部に配置されている軸方向ポートを通過させ、
前記漏出流入部は、前記ポンプハウジングの前記第1の端部にある前記流出部に対向して配置され、
前記漏出経路に沿って流れる血液は前記径方向ポートに放出される、前述したあらゆる態様の装置。
【0115】
17 前記外軸受面にあるか、これに隣接する径方向ベアリング
をさらに備え、
前記径方向ベアリングは前記外軸受面から径方向に突出する複数のランドを備え、
前記複数のランドはロータシャフトの周にわたって離間し、
前記ロータの動作は前記環状クリアランス内で圧力プロファイルを生成し、
前記径方向ベアリングの前記ランドは、ほぼ、前記外軸受面の前記周にわたって対称的に前記圧力プロファイルを分布させる、前述したあらゆる態様の装置。
【0116】
18 前記複数のランドの前記各々は前記ロータの基部直径部から周方向に徐々に小さくなり、前記基部直径部は前記外軸受面に等しい直径を持つ、前述したあらゆる態様の装置。
【0117】
19 前記軸方向スラストベアリングは半球面を備える、前述したあらゆる態様の装置。
【0118】
20 前記複数の溝は前記半球面にある湾曲テーパ溝を備える、前述したあらゆる態様の装置。
【0119】
21 前記軸方向スラストベアリングは円錐面または平坦面を備える、前述したあらゆる態様の装置。
【0120】
22 ロータであって、
前記ロータは、外面を有するシャフトと、前記シャフトの前記外面上の第1の位置から延びるインペラとを備え、
前記外面は、前記シャフト上の第2の位置にある外軸受面を備える、ロータと、
ポンプハウジングであって、
前記ポンプハウジングは、前記ポンプハウジングの第1の端部に配置されている第1の円筒穴であって、前記ロータの前記外軸受面を収容するために構成されている内軸受面を定める第1の円筒穴と、前記ポンプハウジングの第2の端部にある第2の円筒穴であって、前記インペラを収容するために構成されている第2の円筒穴と、を備え、
前記ポンプハウジングは、前記第1の円筒穴と前記第2の円筒穴との間に配置されている径方向ポートをさらに備え、
動作構成では、前記ロータの動作の際に前記インペラが前記ポンプ室内で回転するように、前記ロータは前記第1および第2の円筒穴内に位置し、
前記インペラの回転により、血液の前記流れを、前記径方向ポートを通じ、前記第2の穴の前記長手方向に沿って前記ポンプ室内に吸引し、前記ポンプハウジングの前記第2の端部に配置されている流出部を通過させ、
前記ポンプハウジングの前記内軸受面は前記シャフトの前記外軸受面に近接して嵌合されて、これらの間に環状クリアランスを形成し、これにより、前記ロータの動作中に前記内軸受面および外軸受面は流体力学的ジャーナルベアリングを形成し、
前記ポンプハウジングは、前記環状クリアランスと流体連通する漏出流入部を備え、
前記漏出流入部は、前記ポンプハウジングの前記第1の端部にある前記流出部に対向して配置され、
前記ロータの動作中、前記環状クリアランスは、前記漏出流入部への血液の前記流れを可能にし、前記内軸受面および外軸受面間の前記環状クリアランスの前記長手方向に沿う漏出経路として動作し、その流れは前記径方向ポートに放出される、ポンプハウジングと
を備える心臓補助装置。
【0121】
23 前記ロータは、主に、前記ポンプハウジング内の、前記ポンプハウジングに対する前記ロータの相対動作によって発生する流体力学的スラスト力によって前記ハウジング内で前記径方向に浮遊する、前述したあらゆる態様の装置。
【0122】
24 前記ロータは、前記シャフトの前記軸受面中に位置する1つ以上のロータ磁石を備え、
前記ポンプハウジングは、前記環状クリアランスに対して前記1つ以上のロータ磁石の反対側に位置するコイルを有するモータステータを備え、
前記ロータの動作は、前記漏出流経路を横切って延びる磁束場を生成して前記1つ以上のロータ磁石を変位させる前記モータステータを通る電流の作用を受ける、
前述したあらゆる態様の装置。
【0123】
25 前記外軸受面にあるか、これに隣接する径方向ベアリングを
さらに備え、
前記径方向ベアリングは前記外軸受面から径方向に突出する複数のランドを備え、
前記複数のランドはロータシャフトの周にわたって離間し、
前記ロータの動作は前記環状クリアランス内で圧力プロファイルを生成し、
前記径方向ベアリングの前記ランドは、ほぼ、前記外軸受面の前記周にわたって対称的に前記圧力プロファイルを分布させる、前述したあらゆる態様の装置。
【0124】
26 前記複数のランドの前記各々は前記ロータの基部直径部から周方向に徐々に小さくなり、前記基部直径部は前記外軸受面に等しい直径を持つ、前述したあらゆる態様の装置。
【0125】
27 前記外軸受面にあるか、これに隣接する軸方向ベアリング
をさらに備え、
前記軸方向ベアリングは、前記ロータの軸方向スラスト荷重に抗し、前記漏出流入部から前記漏出流経路内への血流を促進するために前記1つ以上の円筒穴の嵌め合い面とともに流体力学的スラストベアリングを形成する複数の溝を備える、前述したあらゆる態様の装置。
【0126】
28 前記軸方向スラストベアリングは半球面を備える、前述したあらゆる態様の装置。
【0127】
29 前記複数の溝は前記半球面にある湾曲テーパ溝を備える、前述したあらゆる態様の装置。
【0128】
30 ロータであって、
前記ロータは、外面を有するシャフトと、前記シャフトの前記外面上の第1の位置から延びるインペラとを備え、
前記外面は、前記シャフト上の第2の位置にある外軸受面を備える、ロータと、
ポンプハウジングであって、
前記ポンプハウジングは、前記ポンプハウジングの第1の端部に配置されている第1の円筒穴であって、前記ロータの前記外軸受面を収容するために構成されている内軸受面を定める第1の円筒穴と、前記ポンプハウジングの第2の端部にある第2の円筒穴であって、前記インペラを収容するために構成されている第2の円筒穴と、を備え、
前記ポンプハウジングは、前記第1の円筒穴と前記第2の円筒穴との間に配置されている径方向ポートをさらに備え、
動作構成では、前記ロータの動作の際に前記インペラが前記ポンプ室内で回転するように、前記ロータは前記第1および第2の円筒穴内に位置し、
前記インペラの回転により、血液の前記流れを前記ポンプハウジングの前記第2の端部に配置されている軸方向ポートを通じ、前記第2の穴の前記長手方向に沿って前記ポンプ室内に吸引し、前記径方向ポートから放出し、
前記ポンプハウジングの前記内軸受面は前記シャフトの前記外軸受面に近接して嵌合されて、これらの間に環状クリアランスを形成し、これにより、前記ロータの動作中に前記内軸受面および外軸受面は流体力学的ジャーナルベアリングを形成し、
前記ポンプハウジングは、前記環状クリアランスと流体連通する漏出流入部を備え、
前記ロータの動作中、前記環状クリアランスは、前記漏出流入部への血液の前記流れを可能にし、前記内軸受面および外軸受面間の前記環状クリアランスの前記長手方向に沿う漏出経路として動作する、ポンプハウジングと
を備える心臓補助装置。
【0129】
31 前記ロータは、主に、前記ポンプハウジング内の、前記ポンプハウジングに対する前記ロータの相対動作によって発生する流体力学的スラスト力によって前記ハウジング内で前記径方向に浮遊する、前述したあらゆる態様の装置。
【0130】
32 前記ロータは、前記シャフトの前記軸受面中に位置する1つ以上のロータ磁石を備え、
前記ポンプハウジングは、前記環状クリアランスに対して前記1つ以上のロータ磁石の反対側に位置するコイルを有するモータステータを備え、
前記ロータの動作は、前記漏出流経路を横切って延びる磁束場を生成して前記1つ以上のロータ磁石を変位させる前記モータステータを通る電流の作用を受ける、
前述したあらゆる態様の装置。
【0131】
33 前記漏出流入部は、前記ポンプハウジングの前記第1の端部において、前記径方向ポートに対して前記第1の円筒穴の反対側の端部に配置され、
前記漏出経路内に流れる前記血液は前記径方向ポートに放出される、
前述したあらゆる態様の装置。
【0132】
34 前記漏出流入部は、前記第1の円筒穴の一方の端部で漏出流入部血流を分散させる径方向ポートを備える、前述したあらゆる態様の装置。
【0133】
35 前記漏出流入部は、前記径方向ポートにあるか、その近傍にある環状流入部を備え、
前記漏出経路内の前記血液は、前記環状クリアランスの前記長手方向に沿って、前記径方向ポートから離れて、前記径方向ポートに対して前記第1の円筒穴の反対側の端部に向かって流れ、前記第1の円筒穴の前記反対側の端部に配置されている前記ロータの第1の端部の周囲に流れて、前記ロータの前記長手方向に沿って軸方向に延びる中央流路に流れ込み、
前記中央流路内を流れる前記血液は前記ロータの第2の端部から前記第2の円筒穴に放出される、前述したあらゆる態様の装置。
【0134】
本明細書の記載には多くの詳細が含まれるが、これらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきものではなく、現時点で好ましい実施形態のいくつかの例を提供したものにすぎない。したがって、本開示の範囲は、当業者に明らかになりうる他の実施形態をすべて包含することを認識されたい。
【0135】
特許請求の範囲において、要素を単数の要素として参照しているものは、特段の記載がない限り「1つおよび1つのみ」を意味しているものではなく、「1つ以上」を意味することを意図している。当業者に知られている開示された実施形態の要素と構造的、化学的および機能的に等価のものはすべて、本明細書に参照により明確に援用されたものとされ、本特許請求の範囲に包含されるものとする。さらに、本開示にない要素、構成部品または方法ステップは、その要素、構成部品または方法ステップが特許請求の範囲に明確に記載されているか否かにかかわらず、公にされるためのものであることが意図される。本願の請求項の要素は、「~するための手段」という表現を用いて明確に要素を記載していない限り、「ミーンズ・プラス・ファンクション」として解釈されるべきではない。本願の請求項の要素は、「~するためのステップ」という表現を用いて明確に要素を記載していない限り、「ステップ・プラス・ファンクション」として解釈されるべきではない。