(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 1/00 20060101AFI20220513BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20220513BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220513BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B60C1/00 A
B60C11/00 B
C08K3/36
C08L21/00
(21)【出願番号】P 2019051243
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2020-02-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國澤 鉄也
【合議体】
【審判長】藤井 昇
【審判官】出口 昌哉
【審判官】一ノ瀬 覚
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/135530(WO,A1)
【文献】特開2018-188566(JP,A)
【文献】国際公開第2019/017417(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
B60C 11/00
C08L 21/00
C08K 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを有するタイヤであって、
前記トレッドが、ゴム成分と、窒素吸着比表面積が200m
2/g以上のシリカと、軟化剤とを含み、
前記トレッドが下記式(A)を満たすタイヤ。
0.25≦シリカ総量(質量部)/(軟化剤総量(質量部)×主溝深さ(mm))≦0.55 (A)
【請求項2】
前記式(A)において、上限が0.50以下である請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記式(A)において、上限が0.48以下である請求項1記載のタイヤ。
【請求項4】
前記式(A)において、下限が0.30以上である請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記式(A)において、下限が0.35以上である請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記式(A)において、下限が0.43以上である請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
主溝深さが7.5mm以下であ
り、
前記ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンランダムゴムの含有量が50質量%以上である請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
主溝深さが6.5mm以下である請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
主溝深さが5.5mm以下である請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項10】
ゴム成分100質量部に対するシリカ総量が70質量部以上である請求項1~9のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項11】
ゴム成分100質量部に対するシリカ総量が80質量部以上である請求項1~9のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項12】
ゴム成分100質量部に対するシリカ総量が90質量部以上である請求項1~9のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題、経済性を考慮してタイヤの転がり抵抗低減、ライフ性能の向上が求められ、また、安全性の面でウェットグリップ性能や操縦安定性を向上させる必要がある。シリカやカーボンブラックなどの充填剤を減量すると転がり抵抗は低減するが、補強性、ライフ性能、ウェットグリップ性能が低下する問題がある(例えば、特許文献1)。このように、従来の技術では、転がり抵抗(低燃費性)、ライフ性能、ウェットグリップ性能、操縦安定性の総合性能を改善するという点では改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、ライフ性能、ウェットグリップ性能、操縦安定性の総合性能が改善されたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、トレッドを有するタイヤであって、
上記トレッドが、ゴム成分と、窒素吸着比表面積が200m2/g以上のシリカと、軟化剤とを含み、
上記トレッドが下記式(A)を満たすタイヤに関する。
0.25≦シリカ総量(質量部)/(軟化剤総量(質量部)×主溝深さ(mm))≦0.60 (A)
【0006】
上記式(A)において、上限が0.55以下であることが好ましく、0.50以下であることがより好ましく、0.48以下であることが更に好ましい。
【0007】
上記式(A)において、下限が0.30以上であることが好ましく、0.35以上であることがより好ましく、0.43以上であることが更に好ましい。
【0008】
主溝深さが7.5mm以下であることが好ましく、6.5mm以下であることがより好ましく、5.5mm以下であることが更に好ましい。
【0009】
ゴム成分100質量部に対するシリカ総量が70質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、90質量部以上であることが更に好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トレッドを有するタイヤであって、上記トレッドが、ゴム成分と、窒素吸着比表面積が200m2/g以上のシリカと、軟化剤とを含み、上記トレッドが上記式(A)を満たすタイヤであるので、低燃費性、ライフ性能、ウェットグリップ性能、操縦安定性の総合性能が改善されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のタイヤは、トレッドを有するタイヤであって、前記トレッドが、ゴム成分と、窒素吸着比表面積が200m2/g以上のシリカと、軟化剤とを含み、前記トレッドが下記式(A)を満たす。これにより、低燃費性、ライフ性能、ウェットグリップ性能、操縦安定性の総合性能が改善されている。
0.25≦シリカ総量(質量部)/(軟化剤総量(質量部)×主溝深さ(mm))≦0.60 (A)
【0013】
上記タイヤは前述の効果が得られるが、このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
本発明者は、鋭意検討した結果、上記総合性能の改善をトレッドのゴム配合だけではなく、主溝深さと併せて検討することとした。
まず、本発明者は、トレッドゴムへの窒素吸着比表面積が200m2/g以上のシリカ(微粒子シリカ)の適用について検討したところ、微粒子シリカは比表面積が大きく、ポリマーとの反応点が多くなるため、低燃費性、ライフ性能の改善に有利である。その反面、微粒子シリカを使用すると、未加硫ゴムの粘度が高くなり、トレッドゴムを押し出す際に発熱が高くなりヤケが発生しやすいことが判明した。そこで、本発明者は、軟化剤総量を増やして粘度を下げることを試みたが、そうすると、加硫ゴムの硬度が下がり、トレッド剛性が低下して操縦安定性が低下することが判明した。そこで次に、トレッドの厚みを薄くすることを試みたが、ヤケの発生は低下するものの、ライフ性能に影響することが判明した。そこで、本発明者は、シリカ総量、軟化剤総量、トレッドの厚み(主溝深さ)をバランスさせることで、より具体的には、上記式(A)を満たすことにより、低燃費性、ライフ性能、ウェットグリップ性能、操縦安定性の総合性能を改善できることを見出した。
以上の通り、微粒子シリカを含有し、更に、上記式(A)を満たすことにより、シリカ総量、軟化剤総量、トレッドの厚み(主溝深さ)のバランスが優れたものとなり、低燃費性、ライフ性能、ウェットグリップ性能、操縦安定性の総合性能を改善できる。
【0014】
本明細書において、シリカ総量(質量部)とは、ゴム成分100質量部に対するシリカの合計含有量を意味する。
本明細書において、軟化剤総量(質量部)とは、ゴム成分100質量部に対する軟化剤の合計含有量を意味する。
ここで、本明細書において、軟化剤とは、ゴムを軟化させる作用を有する配合剤を意味し、例えば、オイル、液状ジエン系重合体、樹脂、エステル系可塑剤などが挙げられる。
【0015】
本明細書において、主溝とは、タイヤの周方向に沿って設けられた溝のうち、最も幅(タイヤ幅方向の幅)が大きい溝を意味する。なお、最も幅が大きい溝が2本以上ある場合は、そのうちの、タイヤ幅方向中央により近い溝を意味する。該当する主溝が2本ある場合、すなわち、主溝がタイヤ幅方向中央から同じ間隔で2本ある場合は、深い方の溝を主溝とする。
本明細書において、主溝深さとは、トレッドの幅方向で水平になる面(接地面)を基準として、接地面(接地面を延長した面)上の主溝の幅の1/2の位置から、タイヤ径方向に垂線を下したとき、接地面(接地面を延長した面)から最深の溝底までの距離を意味する。
図1では、主溝深さは、Dの長さを意味する。
【0016】
上記タイヤは、主溝深さが、好ましくは10mm以下、より好ましくは7.5mm以下、更に好ましくは6.5mm以下、特に好ましくは5.5mm以下であり、好ましくは3.5mm以上、より好ましくは4.0mm以上、更に好ましくは4.5mm以上、特に好ましくは5.0mm以上である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0017】
上記タイヤは、主溝の幅(タイヤ幅方向の幅)が、好ましくは16mm以下、より好ましくは14mm以下、更に好ましくは12mm以下であり、好ましくは6mm以上、より好ましくは7mm以上、更に好ましくは8mm以上である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0018】
上記式(A)の通り、シリカ総量(質量部)/(軟化剤総量(質量部)×主溝深さ(mm))は0.60以下であり、好ましくは0.55以下、より好ましくは0.50以下、更に好ましくは0.48以下であり、下限は0.25以上であり、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.35以上、更に好ましくは0.40以上、特に好ましくは0.43以上である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0019】
なお、上記式(A)は、シリカ総量(質量部)、軟化剤総量(質量部)、主溝深さ(mm)を適宜調整することにより達成できる。
【0020】
以下、トレッドゴムを作製するゴム組成物(ゴム組成物ともいう)に使用可能な薬品について説明する。
【0021】
ゴム成分としては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ジエン系ゴムが好ましく、イソプレン系ゴム、BR、SBRがより好ましく、BR、SBRが更に好ましい。
【0022】
ここで、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が15万以上が好ましく、より好ましくは35万以上のゴムである。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは300万以下である。
【0023】
ゴム成分100質量%中のジエン系ゴムの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0024】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
SBRのスチレン量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0026】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。なかでも、変性SBRが好ましい。変性SBRを使用することにより、より良好な低燃費性が得られる。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、アミド基が好ましい。
【0028】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用することができる。
【0029】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは65質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0030】
BRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
BRのシス量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは97質量%以上である。上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0032】
BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよい。変性BRとしては、前述の官能基が導入された変性BRが挙げられる。好ましい態様は変性SBRの場合と同様である。
【0033】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0034】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0035】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0036】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0037】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
また、シス量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)、ビニル量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定でき、スチレン量は、1H-NMR測定によって測定できる。
【0038】
トレッドゴムを作製するゴム組成物は、窒素吸着比表面積が200m2/g以上のシリカ(微粒子シリカ)を含有する。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0039】
微粒子シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、200m2/g以上、好ましくは205m2/g以上、より好ましくは210m2/g以上、更に好ましくは215m2/g以上、特に好ましくは220m2/g以上、最も好ましくは225m2/g以上、より最も好ましくは230m2/g以上である。また、上記N2SAは、好ましくは600m2/g以下、より好ましくは300m2/g以下、更に好ましくは250m2/g以下、特に好ましくは240m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、シリカのN2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0040】
上記微粒子シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは60質量部以上、特に好ましくは70質量部以上、最も好ましくは80質量部以上、より最も好ましくは90質量部以上であり、また、好ましくは120質量部以下、より好ましくは115質量部以下、更に好ましくは110質量部以下、特に好ましくは105質量部以下、最も好ましくは100質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0041】
上記ゴム組成物は上記微粒子シリカ以外のシリカを配合してもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。微粒子シリカ以外のシリカのN2SAは、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは120m2/g以上であり、好ましくは190m2/g以下、より好ましくは180m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0042】
シリカ(上記微粒子シリカ、上記微粒子シリカ以外のシリカ)としては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0043】
シリカ総量(質量部)、すなわち、ゴム成分100質量部に対するシリカの合計含有量は、好ましくは10質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは60質量部以上、特に好ましくは70質量部以上、最も好ましくは80質量部以上、より最も好ましくは90質量部以上であり、また、好ましくは120質量部以下、より好ましくは115質量部以下、更に好ましくは110質量部以下、特に好ましくは105質量部以下、最も好ましくは100質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0044】
上記ゴム組成物において、充填剤(補強性充填剤)100質量%中のシリカの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0045】
上記ゴム組成物がシリカを含有する場合、更にシランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販されているものとしては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られる傾向がある点から、スルフィド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤が好ましく、メルカプト系シランカップリング剤がより好ましい。
【0046】
特に好適なメルカプト系シランカップリング剤として、下記式(I)で示される結合単位Aと下記式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤が挙げられる。
【化1】
【化2】
(式中、xは0以上の整数、yは1以上の整数である。R
1は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R
2は分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基を示す。R
1とR
2とで環構造を形成してもよい。)
【0047】
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(I)、(II)と対応するユニットを形成していればよい。
【0048】
式(I)、(II)におけるR1について、ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基等があげられる。
【0049】
式(I)、(II)におけるR2について、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1-プロペニレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基等があげられる。
【0050】
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3~300の範囲が好ましい。
【0051】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0052】
上記ゴム組成物は、軟化剤を含有する。軟化剤としては特に限定されないが、オイル、液状ジエン系重合体、樹脂、エステル系可塑剤などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、オイル、樹脂が好ましい。
【0053】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果が良好に得られるという理由から、プロセスオイルが好ましく、アロマ系プロセスオイルがより好ましい。
【0054】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0055】
液状ジエン系重合体は、常温(25℃)で液体状態のジエン系重合体である。
液状ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3.0×103以上、より好ましくは4.0×103以上であり、好ましくは1.0×105以下、より好ましくは1.5×104以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0056】
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、液状SBRが好ましい。
【0057】
液状SBRのスチレン量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0058】
液状ジエン系重合体としては、例えば、サートマー社、(株)クラレ等の製品を使用できる。
【0059】
樹脂(レジン)としては、タイヤ工業で汎用されているものであれば特に限定されず、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、α-メチルスチレン系樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、C5樹脂、C9樹脂等が挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、東亞合成(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、α-メチルスチレン系樹脂が好ましい。α-メチルスチレン系樹脂としては、α-メチルスチレン単独重合体や、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等が挙げられ、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましい。
【0060】
上記樹脂の軟化点は、-45℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましく、60℃以上が特に好ましく、80℃以上が最も好ましい。また、軟化点の上限は特に限定されないが、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、140℃以下が更に好ましく、120℃以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0061】
上記樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0062】
エステル系可塑剤としては、前記植物油;グリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン脂肪酸ジエステル、グリセリン脂肪酸トリエステル等の合成品や植物油の加工品;リン酸エステル(ホスフェート系、これらの混合物等);が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
軟化剤総量(質量部)、すなわち、ゴム成分100質量部に対する軟化剤の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは70質量部以下、より好ましくは65質量部以下、更に好ましくは60質量部以下、特に好ましくは55質量部以下、最も好ましくは50質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0064】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含んでもよい。これにより、効果がより良好に得られる傾向がある。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは30m2/g以上、より好ましくは80m2/g以上、更に好ましくは100m2/g以上であり、また、好ましくは200m2/g以下、より好ましくは150m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、カーボンブラックのN2SAは、JIS K6217-2:2001に準拠して測定される値である。
【0066】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0067】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0068】
上記ゴム組成物は、水酸化アルミニウムを含んでもよい。これにより、より良好なウェットグリップ性能、低燃費性が得られる傾向がある。
【0069】
水酸化アルミニウムの窒素吸着比表面積(N2SA)は、3~60m2/gであることが好ましい。該N2SAの下限は、好ましくは6m2/g以上、より好ましくは12m2/g以上であり、また、上限は、好ましくは50m2/g以下、より好ましくは40m2/g以下、更に好ましくは20m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、水酸化アルミニウムのN2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0070】
水酸化アルミニウムの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0071】
上記ゴム組成物は、架橋剤(加硫剤)として硫黄を含有することが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0073】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0074】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有することが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤及びチウラム系加硫促進剤の併用がより好ましい。
【0075】
加硫促進剤としては、例えば、川口化学(株)、大内新興化学(株)、ラインケミー社製等の製品を使用できる。
【0076】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0077】
上記ゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0078】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0079】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0080】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましい。
【0081】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0082】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0083】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0084】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0085】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0086】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0087】
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、マイカなどの充填剤;等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0088】
上記ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0089】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常130~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~30分である。
【0090】
上記ゴム組成物は、トレッド(キャップトレッド)などのタイヤ部材に(タイヤ用ゴム組成物として)用いることができる。キャップトレッド及びベーストレッドで構成されるトレッドの場合、キャップトレッドに好適に使用可能である。
【0091】
本発明のタイヤ(空気入りタイヤ、ソリッドタイヤ、エアレスタイヤ等)は、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッド(キャップトレッド)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0092】
なお、上記タイヤのトレッドは、少なくとも一部が上記ゴム組成物で構成されていればよく、全部が上記ゴム組成物で構成されていてもよい。
【0093】
上記タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)、オールシーズンタイヤ、ランフラットタイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等として好適に用いられる。上記タイヤは、特に、乗用車用タイヤとして好適に使用できる。
【実施例】
【0094】
実施例、参考例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0095】
以下、実施例、参考例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:下記製造例で得られたSBR(非油展品、スチレン量:26質量%)
BR:宇部興産(株)製 ウベポールBR150B(シス量:98質量%)
シリカ1:デグッサ社製 9000Gr(N2SA:235m2/g)
シリカ2:デグッサ社製 VN3(N2SA:165m2/g)
カーボンブラック:三菱化学製 N220(N2SA:114m2/g)
シランカップリング剤:モメンティブ社製 NXT-Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
オイル:(株)ジャパンエナジー製 X-140(アロマ系プロセスオイル)
レジン:アリゾナケミカル社製 Sylvatraxx4401(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃、Tg:43℃)
ワックス:大内新興化学工業(株)製 サンノックN
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製 ノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD))
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製 ノクラック224(キノリン系老化防止剤、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物)
ステアリン酸:日油(株)製 椿
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製 亜鉛華2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製 粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製 ノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:三新化学工業(株)製 TBzTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)
【0096】
(製造例1)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点でブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシランを変性剤として加えて15分間反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥して変性スチレンブタジエンゴム(SBR)を得た。
【0097】
(実施例、参考例及び比較例)
表1に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、SBR 75質量部、BR 25質量部、シリカ 表1に示す量、カーボンブラック 5質量部、シランカップリング剤 シリカ100質量部に対して10質量部、オイル 表1に示す量、レジン 表1に示す量、ワックス 2質量部、老化防止剤1 2質量部、老化防止剤2 2質量部、ステアリン酸 1質量部、酸化亜鉛 1.5質量部を130℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄 1質量部、加硫促進剤1 2質量部、加硫促進剤2 2質量部を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に押出し成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、130℃の条件下で10分間プレス加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:205/55R16)を得た。なお、主溝深さは、表1の通りとし、主溝の幅(タイヤ幅方向の幅)は10mmとした。
【0098】
得られた試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
<操縦安定性>
試験用タイヤを車輌(国産FF2000cc)の全輪に装着してテストコースを実車走行し、蛇行運転をした際のドライバーの官能評価により操縦安定性を評価した。さらに、試験開始直後と開始30分後の操縦安定性を評価した。上記評価を総合的に、比較例1の操縦安定性を100点としてそれぞれ相対評価を行った。数値が大きいほど、操縦安定性に優れることを示す。
【0100】
<低燃費性>
転がり抵抗試験機を用い、試験タイヤを内圧(230kPa)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、基準比較例を100とした時の指数で表示した。数値が大きいほど、低燃費性に優れることを示す。
【0101】
<ウェットグリップ性能>
試験用タイヤを車輌(国産FF2000cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求めた。結果は基準比較例を100とした時の指数で表し、数字が大きいほどウェットグリップ性能が良好である。指数は次の式で求めた。
ウェットグリップ性能指数=(比較例1の制動距離)/(各実施例、各参考例または各比較例の制動距離)×100
【0102】
<ライフ性能>
試験用タイヤを車輌(国産FF2000cc)の全輪に装着して実車走行させ、35,000km走行後のパターン溝深さの変化を求めた。結果は基準比較例を100とした時の指数で表し、数字が大きいほどライフ性能が良好である。
【0103】
【0104】
表1より、トレッドを有するタイヤであって、上記トレッドが、ゴム成分と、窒素吸着比表面積が200m2/g以上のシリカと、軟化剤とを含み、上記トレッドが上記式(A)を満たす実施例、参考例のタイヤは、低燃費性、ライフ性能、ウェットグリップ性能、操縦安定性の総合性能が改善されていることが分かった。