(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】空間的、時間的に重複するX線から3次元画像を再構成する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/02 20060101AFI20220513BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20220513BHJP
G01N 23/044 20180101ALI20220513BHJP
【FI】
A61B6/02 300Z
A61B6/00 330Z
G01N23/044
(21)【出願番号】P 2019500537
(86)(22)【出願日】2017-07-19
(86)【国際出願番号】 GB2017052128
(87)【国際公開番号】W WO2018029439
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-06-16
(32)【優先日】2016-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517112007
【氏名又は名称】アダプティックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ハウザー,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】クロット,マリア
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィシュ,ギル
(72)【発明者】
【氏名】ベタリッジ,ポール
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-545395(JP,A)
【文献】特表2012-511988(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0282181(US,A1)
【文献】特開2002-052017(JP,A)
【文献】特開2005-199062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
G01N 23/00-23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線画像
の再構成
を反復する方法であって、
(a)関心領域(ROI)に送達され、検出器の
少なくとも1つのピクセルで空間的、時間的に重複するようなX線
ビームを放出するために2つ以上の発生源を作動することと;
(b)前記検出器の前記ピクセルに入射する前記X線
ビームの強度を検出することと;
(c)最適化及び線形化アルゴリズム又はフォワードバックワード分離アルゴリズムを含む圧縮センシングアルゴリズムを用い、前記ROIの3次元表示を再構成することと;
(d)前記ROIを複数の3次元非重複ボクセルにボクセル化し、前記圧縮センシングアルゴリズムを用いて各前記ボクセルに起因する減衰係数を推定することと;
(e)各前記ボクセルに起因する推定された減衰係数に基づいて、前記ROIを複数の3次元非重複ボクセルに再ボクセル化し、停止基準まで前記再ボクセル化をさらに繰り返すことと、を含み、
(f)前記圧縮センシングアルゴリズムは、前記検出器の前記
少なくとも1つのピクセル
における2つ以上のX線
ビームのそれぞれに起因する前記強度の推定値を生成す
る、X線画像
の再構成
を反復する方法。
【請求項2】
前記ROIの前記3次元表示の1つ又は複数の2次元図を表示することをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
一度に1回ずつX線
ビームを放出するために各発生源を作動する工程と、前記検出器の前記ピクセルで重複するようなX線
ビームを放出するために組の発生源を作動する工程とを含む、校正を実施することをさらに含む、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
画像取得速度、画質及びROI範囲の少なくとも1つを最適化するために、前記2つ以上の発生源を選択して作動させX線
ビームを放出することをさらに含む、請求項
1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
X線撮像システムであって、
入射するX線
ビームに応じて信号を生成するために配置される検出器であって、前記信号が前記検出器のピクセルに入射する前記X線
ビームの強度を示す検出器と;
複数のX線発生源であって、前記複数のX線発生源の少なくとも2つが、関心領域(ROI)
に送達され、前記検出器の
少なくとも1つのピクセルで空間的、時間的に重複するようなX線
ビームを放出するために配置される複数のX線発生源と;
前記検出器の前記
少なくとも1つのピクセル
における2つ以上のX線
ビームのそれぞれに起因する前記強度の推定値を生成するために
、請求項1~4のいずれかに記載の方法に従って動作するように構成された処理装置と、を含むX線撮像システム。
【請求項6】
前記処理装置に動作可能に結合されたディスプレイをさらに含み、前記ディスプレイが、前記ROI
の3次元表示の1つ又は複数の2次元図を表示するために配置される、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数のX線発生源が、分散型発生源アレイの2つ以上のエミッタ要素を含む、請求項
5又は6に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数のX線発生源及び前記検出器それぞれが、前記X線発生源及び前記検出器の相対位置を決定するために配置される1つ又は複数のセンサを含む、請求項
5~
7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記X線撮像システムを操作するための制御装置をさらに含み、前記制御装置が前記複数のX線発生源のサブセットを作動するために配置される、請求項
5~
8のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概してX線イメージングに関し、より詳細には空間的、時間的に重複するX線から3次元画像を再構成する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線放射から3次元画像を再構成することは、特に医用イメージング、工業検査及び空港警備における応用の重要な画像再構成問題である。伝統的なX線イメージングは平面ラジオグラフィに基づくものが最も一般的である。この手法は一組の真空管から作られた単一の点状X線発生源を利用しており、これは広範囲のエネルギー及び電流を超える単一のX線コーン又はファンビームを生成するために配置される。しかし、特に、確実にX線が十分な面積をカバーするためには、X線発生源は撮像される対象物(又は人)から相当な距離を置かなければならないため、このような点状X線発生源で可能な撮像幾何は限定される。
【0003】
伝統的なX線システムにおいて、通常Source to Object Distance(「SOD」)又は隔離距離と呼ばれる発生源と対象物間の距離が離れると、多くのパワーを必要とする。このパワーを供給するため、伝統的なX線システムは大型で高価な重い(数十キログラム)電源装置を使用している。これは、頻繁に冷却する必要があり、さらにこのシステムの体積及び重量を増すことになる。
【0004】
また、その名の通り、平面ラジオグラフィは2次元画像を生成するためにのみ配置される。3次元画像を生成するために、X線断層撮影法、つまり断面によるイメージングを使用することができる。通常、X線断層撮影法は、様々な方向から静止した対象物又は人の多数の画像を撮影した後、これら多数の2次元画像を用いて3次元画像を再構成することを含む。通常、機械のガントリーは、一連の位置に沿って単一のX線発生源(真空管)を動かす必要があり、このためX線システムのサイズ及び費用が増す。また、画像を順次撮影するため、この機構は他の望ましい方法よりも総画像取込み時間が長く必要である。
【0005】
画像取込み時間を最小限にするため、各発生源が選択的に作動した状態で、対象物又は人の周囲の固定又は静止した位置に、多数の真空管発生源を置くことができる。この構造は全画像取込み時間を短くするが、発生源のコスト及びその相対体積のため、このシステムは実用的でない。また、比較的大型の各真空管発生源のため、このようなシステムは限られた数の視野角しか収納することができない。言い換えれば、発生源のサイズのため、対象物又は人を限られた数の方向からしか撮像することができず、高解像度の3次元画像の生成を妨げる。
【0006】
これらの手法の代替法は、エミッタアレイにおける単一の分散型発生源から多数のX線発生源を作製することである。Spindt型アレイなどの電界増加型エミッタ(「FEE」)アレイ(フィールドエミッタアレイと呼ぶこともある)は、X線管において使用され、高度な陰極として機能することができる。高電圧で、適度な電界増加型チップ(例えば、モリブデンチップ又はコーン)のFEEアレイは、X線を生成するエミッタとして作用することができる。X線を放出するために個別のチップ(又は組のチップ)を選択することができ、このようにX線発生源として作用する。同様に、カーボンナノチューブ(CNT)から作製される陰極は、低電圧で電子放出を制御することができるため、選択される個々のCNTにX線を放出させる。いずれの場合でも、このようなFEEアレイは、分散型発生源から多数のX線発生源を生成することができる。
【0007】
分散型発生源アレイ(エミッタアレイとしても知られる)は、様々な個別のエミッタ(例えば、モリブデンチップ、CNT等)を選択的に作動することにより、異なる視野角から対象物を撮像する。従って、分散型発生源アレイは、対象物又は人の周囲に重い真空管系発生源を動かす必要性、又はこのような多数の真空管系発生源を利用する必要性を排除する。例えば、平面エミッタアレイの場合、アレイのサイズを大きくすることができ、アレイの1つの角の1つの発生源(例えば、第1エミッタ要素)から、反対の角の第2の発生源(例えば、第2エミッタ要素)に重要な転位を行うことができる。発生源、より詳細にはアレイの至るところに位置するエミッタ要素を作動することにより、画像を異なる視野角から同時に得ることができる。これは、単一発生源システムと比較して、画像取込み時間を最小限にし、同時に、3次元画像を再構成するために十分な数の角度から対象物を撮像する。
【0008】
このようにして、分散型発生源アレイは断層撮影法及びトモシンセシス(高解像度制限角度断層撮影法)を可能にするが、このシステム設計上、厳しい幾何制約も強いられる。アレイの各発生源又はエミッタはそれ自身のX線コーンを作製して、対象物、つまり対象物内の関心領域(「ROI」)を確実に完全にカバーするため、ある程度のコーンの空間的重複が存在するはずである。しかし、このような空間的重複、特に検出器でのX線の重複があれば、多数の角度から対象物の特徴を照射するため、このようなアレイを用いて形成される画像は多数の画像又は陰を含む場合がある。
【0009】
従来の再構成方法は、時空的なX線重複を適切に分離することができない。従って、時空的なX線の重複が無い従来のシステムにおいて、必要とされた画像解像度を得るために、SODを狭い範囲に保持しなければならない。この相関関係を、数式1として表すことができ、ここで、Mは達成可能な画像解像度を調節する設計パラメータで、1~4の値を取り(例えば、M=2)、dmaxは与えられたシステム設計を用いて、特定の解像度に撮像することができる対象物の最大厚であり、δはSODである。Mの値が大きいほど、達成可能な画像解像度は高いが、SODはより制約される。与えられた発生源のピッチ間隔及びコリメーション角はdmax及びMの関数であるため、このような制限は発生源及び検出器の形状を厳しく制約する。特に、この制限により、異なる身体部分を撮像するために、異なるエミッタアレイパネル形状を作製する必要がある。
【0010】
【0011】
従って、従来の画像再構成手法を用いると、X線が同時に検出器で重複することがないように、X線撮像システムを設計しなければならない。この制約は、特に重複するX線からの測定値が線形ではないことに起因し、線形圧縮センシングなど従来の再構成方法はX線重複により作製されたものなど非線形制約を適当に扱うことができない。これらの制約のため、X線画像再構成に対する従来の手法は、時空的なX線重複を考慮して設計されたシステムに対する阻害要因を教示する。
【0012】
重複に対処する以前の方法は、散乱線除去グリッドを使用することを含む。これは検出器へのX線の取り込み角を限定するため、重複を防止する。しかし、散乱線除去グリッドは、X線によりカバーされる面積を限定することにより、所定の照射に利用できる情報も限定する。あるいは、エミッタを選択的に作動することにより、検出器でX線が重複することなく、対象物を完全にカバーすることができる。しかし、分散型発生源アレイを用いて空間的重複を避けることは、各発生源が関心のある全面積をカバーしなければならず、パワー要件を増加させるか、あるいは特定の非重複エミッタ要素のみを同時に作動することができるため、画像を取得する時間が長くなることを意味する。画像取得に時間がかかると、特に子供や負傷患者の場合、スキャン中に動く傾向があるため、特に懸念される。
【0013】
従って、当技術分野には、より柔軟な撮像幾何が可能なX線撮像システム及び方法の必要性があり、これは発生源(又はエミッタ要素)及び検出器間の距離、並びにコリメーション角の大きさの選択がより柔軟であることを含む。また、従来のシステムと比較して画像取込みに必要な時間を最小限にすると同時に、正確な3次元画像を生成するために配置されるシステム及び方法の必要性がある。さらに、時空的に重複するX線を適切に扱うために配置されるシステム及び方法の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本開示の実施形態は空間的、時間的に重複するX線から3次元画像を再構成するシステム、方法及び技術を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様において、X線撮像システムを提供し、入射するX線に応じて信号を生成するために配置される検出器であって、この信号が検出器のあるピクセルに入射するX線の強度を示す検出器と;複数のX線発生源であって、少なくとも2つの複数のX線発生源が、関心領域(ROI)を通過し、検出器のこのピクセルで空間的、時間的に重複するようなX線を放出するために配置される複数のX線発生源と;検出器のこのピクセルに入射するX線の強度を示す信号を受信し、検出器のこのピクセルで重複する2つ又は複数のX線のそれぞれに起因する強度の推定値を生成するために配置される処理装置と、を含む。
【0016】
X線の時空的重複は、制御された方法で意図的に検出器で作製することができる。その後、重複するX線に起因する測定値を少なくとも部分的に用い、撮像された対象物、ヒト又はROIの正確な3次元画像を再構成するため、新規再構成技術を用いることができる。
【0017】
検出器のピクセルで重複する2つ又は複数のX線のそれぞれに起因する強度の1つ又は複数の推定値を用い、ROIの3次元表示を生成するため、処理装置をさらに配置してよい。
【0018】
このシステムは処理装置に動作可能に結合されたディスプレイをさらに含んでよく、このディスプレイはROIの3次元表示の1つ又は複数の2次元図を表示するために配置される。
【0019】
複数のX線発生源は、分散型発生源アレイの2つ又は複数のエミッタ要素を含んでよい。ROIを複数の3次元非重複ボクセルにボクセル化し;各該ボクセルに起因する減衰係数を推定し;各該ボクセルに起因する推定された減衰係数に基づき、ROIを複数の3次元非重複ボクセルに再ボクセル化するため、処理装置をさらに配置してよい。
【0020】
停止基準まで該再ボクセル化を繰り返すために、処理装置をさらに配置してよい。圧縮センシングアルゴリズムを用い、各ボクセルに起因する該減衰係数を推定するために、処理装置をさらに配置してよい。
【0021】
圧縮センシングアルゴリズムは、推定された減衰係数に適用される、最適化及び線形化アルゴリズム、フォワードバックワード分離アルゴリズム、又はその組合せの、少なくとも1つを含んでよい。
【0022】
複数のX線発生源及び検出器それぞれは、X線発生源及び検出器の相対位置を決定するために配置される、1つ又は複数のセンサを含んでよい。
【0023】
このシステムは、X線撮像システムを操作する制御装置をさらに含んでよく、この制御装置は複数のX線発生源のサブセットを作動するために配置される。
【0024】
X線に応じて電子信号を生成するために、検出器を配置してよい。信号は検出器でX線の強度により変わり、従って、対象物又は人による減衰(例えば、X線強度の吸収又は弱化)の大きさを提供する。X線撮像システムは、多数の発生源のX線放射を含んでもよい。これらの発生源の少なくとも2つは、対象物又は人を通過した後、検出器のあるピクセルで空間的、時間的に重複するようなX線を放出してよい。
【0025】
1つの実施例において、X線発生源は分散型発生源アレイにおける別々のエミッタ要素を含んでよい。重複するX線に起因する信号を含めた、検出器からの信号を受信する処理装置を、新規再構成技術を利用するために配置することができ、検出器で重複するそれぞれのX線に起因する強度を推定し、撮像された対象物又は人のROIの正確な3次元再構成を生成する。当業者に理解されるように、ピクセルは、検出器の他の要素と区別することができる信号を作製するために配置される検出器内の別々の要素又はセンサを表す。
【0026】
第2の態様において、関心領域(ROI)に送達され、検出器のあるピクセルで空間的、時間的に重複するようなX線を放出するために、2つ又は複数の発生源を作動することと;検出器のこのピクセルに入射する重複するX線の強度を検出することと;検出器のこのピクセルに入射する重複するX線の総強度を用い、検出器のこのピクセルで重複する2つ又は複数のX線のそれぞれに起因する強度の推定値を生成することと、を含むX線画像を再構成する方法を提供する。
【0027】
本開示の実施形態は、空間的、時間的に重複するX線から3次元画像を再構成する方法を含んでもよい。かかる方法に従って、対象物又は人、より具体的にはROIを通って送達され、検出器で時空的に重複するようなX線を放射するために、X線放射の2つ又は複数の発生源を作製してよい。その後、検出器に入射する重複するX線の強度を検出することができ、このように、対象物又は人による減衰の大きさを提供する。その後、検出器で重複するX線のそれぞれに起因する強度を推定することができ、撮像された対象物又は人のROIの3次元画像を生成することができる。新規再構成技術を利用して、各重複するX線の強度を推定することができる。
【0028】
本方法は、検出器のピクセルで重複する2つ又は複数のX線のそれぞれに起因する強度の1つ又は複数の推定値を利用し、ROIの3次元表示を生成することをさらに含んでよい。
【0029】
本方法は、ROIの3次元表示の1つ又は複数の2次元図を表示することをさらに含んでよい。
【0030】
本方法は、ROIを複数の3次元非重複ボクセルにボクセル化することと;各該ボクセルに起因する減衰係数を推定することと;各該ボクセルに起因する推定された減衰係数に基づき、ROIを複数の3次元非重複ボクセルに再ボクセル化することと、をさらに含んでよい。
【0031】
本方法は、停止基準まで、該再ボクセル化をさらに繰り返してよい。
【0032】
本方法は、各ボクセルに起因する該減衰係数を推定するために、圧縮センシングアルゴリズムを用いることをさらに含んでよい。
【0033】
圧縮センシングアルゴリズムは、最適化及び線形化アルゴリズム、フォワードバックワード分離アルゴリズム、又はその組合せの、少なくとも1つを含んでよい。
【0034】
本方法は、一度に1回ずつX線を放射するために各発生源を作動する工程と;検出器のピクセルで重複するようなX線を放出するために組の発生源を作動する工程と、を含む校正を実施することをさらに含んでよい。
【0035】
本方法は、画像取得速度、画質及びROI範囲の少なくとも1つを最適化するために、作動する2つ又は複数の発生源を選択してX線を放出することをさらに含んでよい。
【0036】
第1の態様のシステムを用いて、ここで記載された方法を行ってよい。
【0037】
「ために配置される」という表現は、「することができる」という意味として理解してよい。
【0038】
本発明の様々な目的、特徴、実施形態及び利点は、添付図と併せて、本開示の実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。本概要は様々な実施形態の導入を提供するが、請求された主題の範囲を限定することを意図しない。本発明のさらなる利点は、上述の開示を考慮して、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は本開示の態様に基づく、X線撮像システムの一例の模式断面表示である。
【
図2】
図2は本開示の態様に基づく、エミッタアレイの模式平面表示である。
【
図3】
図3は本開示の態様に基づく、X線画像を再構成する例示的な方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は特定の図面に関して記載されるが、本発明はこれらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載した図面は単なる概略であり、限定するものではない。各図面は本発明の特徴のすべてを含まず、従って必ずしも本発明の実施形態になると見なされるべきではない。図面において、一部の要素のサイズは誇張される場合があり、説明のため正確な縮尺ではない。寸法及び相対寸法は本発明の現実の縮写に相当しない。
【0041】
さらに、明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、類似の要素間を区別するために用いられ、時間的に、空間的に、ランク順に、又は任意の他の方法で順番を記載するために用いられるとは限らない。このように用いられる用語は適切な状況下で交換可能に用いられること、ここで記載又は説明されたもの以外の順番で操作を行うことができることが理解されるべきである。
【0042】
さらに、明細書及び特許請求の範囲における最上部、底部、上に、下になどの用語は、便宜的に用いられ、相対位置を記載するために用いられるとは限らない。このように用いられる用語は適切な状況下で交換可能に用いられること、操作はここで記載又は説明されたもの以外の方向で行うことができることが理解されるべきである。
【0043】
特許請求の範囲で用いられる「を含む」という用語は、その後列挙される手段に制限されると解釈されるべきではないことが留意され、他の要素又は工程を排除しない。このように、記載したような所定の特徴、整数、工程又は成分の存在を明記するとして解釈されるべきであるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、工程もしくは成分又はその群の存在もしくは添加を除外しない。このように、「手段A及びBを含む装置」という表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなる装置に限定されるべきではない。本発明に関し、ただ単にこの装置の関連構成要素にA及びBがあることを意味する。
【0044】
同様に、明細書で用いられる「結合される」という用語は、直接結合のみに制限されるものとして解釈されるべきではないことに留意する。従って、「装置Bに結合される装置A」という表現の範囲は、装置Aの出力が装置Bの入力に直接結合される装置又はシステムに限定されるべきではない。Aの出力及びBの入力間の経路が存在することを意味し、この経路は他の装置又は手段を含む経路でよい。「結合される」は、2つ又は複数の要素が直接物理的又は電気接触のどちらかにあること、あるいは2つ又は複数の要素が互いに直接接触しないが、やはり互いに協力するか相互作用することを意味することができる。例えば、無線接続が意図される。
【0045】
この明細書中の「実施形態」又は「態様」への言及は、実施形態又は態様に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態又は態様に含まれることを意味する。このように、この明細書中の様々な箇所における「一実施形態において」「ある実施形態において」又は「ある態様において」という表現の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態又は態様に言及するものではなく、異なる実施形態又は態様に言及してよい。さらに、本開示から当業者に明らかであるように、本発明の任意の実施形態又は態様の特定の特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実施形態又は態様において、任意の好適な方法で組み合わされてよい。
【0046】
同様に、本明細書において、本発明の様々な特徴が、開示を合理化し、1つ又は複数の様々な発明の態様の理解を助ける目的のため、その単一の実施形態、図又は記載において、共に分類される場合があることが理解されるであろう。しかし、本開示の方法は、請求された発明が各請求項で明確に記載されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきでない。さらに、任意の個別の図又は態様の記載は、必ずしも本発明の実施形態とみなされるべきではない。むしろ、以下のクレームが反映するように、発明の態様は上述の開示された単一の実施形態のすべての特徴よりも少ない。このように、詳細な説明に続く請求項は、これによりこの詳細な説明に明白に組み込まれ、各請求項は本発明の別々の実施形態として独立する。
【0047】
さらに、ここに記載されたいくつかの実施形態は他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが、異なる実施形態の特徴の組合せは、当業者に理解されるように、本発明の範囲内にあり、さらなる実施形態を形成することを意味する。例えば、以下の請求項において、請求された実施形態のいずれかは、任意の組合せで用いることができる。
【0048】
ここで提供される記載において、多数の特定の詳細が明記される。しかし、本発明の実施形態は、これらの特定の詳細が無くても実施することができることが理解される。他の例において、周知の方法、構造及び技術は、本記載の理解を妨げないよう、詳細には示されていない。
【0049】
本発明の論考において、反対に述べられない限り、パラメータの許容範囲の上限又は下限の代替値の開示は、該値の1つが他よりも非常に好ましいという指示に加えて、該代替値のより好ましい値及び好ましくない値間にある該パラメータの各中間値それ自体が、該好ましくない値よりも好ましく、また該好ましくない値及び該中間値間の各値よりも好ましいという暗黙の提示として理解されるべきである。
【0050】
「少なくとも1つ」という用語の使用は、ある特定の状況下における1つのみを意味することができる。「任意の」という用語の使用は、ある特定の状況下における「すべて」及び/又は「各」を意味することができる。
【0051】
以下、本発明の原理は、本発明の例示的な特徴に関する少なくとも1つの図の詳細な記述により説明される。本発明の基本的概念又は技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識により、他の配置を構成することができることは明らかであり、本発明は添付の請求項の条件によってのみ限定される。
【0052】
詳細な説明
図1は本開示の態様に基づく、X線撮像システム100の一例を示す。図に示すように、X線撮像システム100は、分散型発生源アレイの2つ以上のエミッタ要素など、X線放射の2つ以上の発生源110を含んでよい。
【0053】
コリメータ(図示せず)は、各発生源110に隣接して位置し、各発生源110により放出される各X線放射ビーム130の大きさ及び形状を画定するために用いることができる。典型的な使用において、X線ビーム130は円錐形でよく、従って小円錐を形成する。あるいは、発生源110は様々な他の形状のX線ビーム130を放出してよい。「小円錐」は、単一のエミッタによるX線放射の一般的な包絡円錐を指すことができる。この用語は、単一のエミッタの放射をエミッタの全アレイのものと区別するために用いることができる。
【0054】
図2を参照し、本開示のある実施形態において、発生源110はFEEなどの分散型発生源アレイの一部を形成することができる。一例において、分散型発生源アレイ200は、複数の分離した個別のエミッタ要素を含んでよく、各エミッタ要素はX線放射の発生源110である。図に示すように、各発生源110をその中心が正三角形のグリッドのノード点にある状態で配置することができるため、各発生源110をエミッタアレイ200中に(垂直及び水平に)等しい間隔で置くことができる。あるいは、発生源110を様々な他の形状で配置してよい(例えば、正方形、長方形又は六角形などの様々なグリッドパターンから構成される、y軸よりもx軸で間隔を置いて配置される、あるいはランダム又は擬似ランダムに分配される)。
【0055】
X線撮像システム100は1つ又は複数の検出器140を含んでもよい。検出器140は、検出器140に衝突するX線ビーム130の強度を表す電気信号を作製する要素を含んでよく、従って対象物160に起因する減衰(例えば、X線強度の吸収又は弱化)の大きさを提供する。ここで論じられるように、これらの電気信号は対象物160のスキャンされた部位に起因する減衰の大きさを提供するため、電気信号を処理して、対象物160のROIの3次元再構成を生成することができる。本開示のある実施形態において、検出器140を複数の検出器ピクセル(又はセンシングダイオード)から形成することができ、それぞれの検出器ピクセルを、衝突するX線ビーム130の強度を表す電気信号を作製するために配置することができる。
【0056】
図1に示すように、使用時、ROIの少なくとも1つの照射又はスキャンが、検出器140で少なくとも2つの異なる発生源110から放出されるX線ビーム130の時空的な重複を含むように、X線撮像システム100を構成してよい。この構成は、様々な方法で達成することができる。例えば、制御装置180は発生源110に動作可能に結合され、従って発生源110のサブセットを選択的に作動するために用いることができる。一態様において、制御装置180は、各個別の発生源110に与えられるパワーを制御するために構成されてよい。このようにして、制御装置180は放出点を作動することができ、発生源110のサブセットを作動してX線ビーム130を放出することができ、重複する発生源110を選択することもできる。
【0057】
X線撮像システム100は処理装置150を含んでもよい。処理装置150は1つ又は複数のプロセッサ、コンピュータ、CPU又は類似のデバイスを含んでよく、検出器140に入射するX線ビーム130の強度など、画像情報を処理するために構成されてよい。例えば、検出器140に衝突するX線ビーム130の強度に相当する電子信号など、検出器140からのデータを受信するため、処理装置150は検出器140に動作可能に結合されてよい。
【0058】
検出器140で共に測定されたX線ビーム130の時空的重複に起因する減衰を解析するために、処理装置150を構成して(ここで述べたような)1つ又は複数のプロセスを実行してもよい。発生源110及び検出器140の相対位置、例えば所定の照射において作動される各発生源110、及びX線ビーム130の強度を表す電子信号を発する一部の検出器140(例えば検出器ピクセル)の位置、を認識することにより、処理装置150は、検出器140から受信した電子信号をROI中の様々な点の減衰を表す3次元データアレイに変換することができる。
【0059】
本開示のある態様において、処理装置150は対象物160、より詳細には対象物160のROIを3次元非重複体積要素、つまりボクセルに分割することができる。その後、対象物160の一部により占められるものとして、及び均質物質で構成されるものとして、処理装置150は各ボクセルをモデル化することができる。均質物質の減衰係数(どれだけ容易にX線がボクセル内の物質を通過するかの特性を示す)は単一のデータ点を表す。その後、処理装置150はベクトルと呼ばれるアレイにすべてのこのようなデータ点を集めることができる。
【0060】
処理装置150は、モデル化したベクトルを、検出器140に衝突するX線ビーム130の強度に相当する検出器140から受信した電子信号と比較することができる。このようにして、処理装置150は、各ボクセルのモデル化された減衰を、各ボクセルに起因する検出された減衰と比較することができる。その後、処理装置150は、実際の測定値に基づきモデル化されたベクトルを繰り返し洗練するために、圧縮センシング方法に基づく再構成アルゴリズムを利用することができる。次に、このような反復の結果を用いて、ROIの3次元モデルを再構成することができる。
【0061】
図1を参照し、X線撮像システム100はメモリ170を含んでもよい。メモリ170は処理装置150の一部でよく、あるいは処理装置150に動作可能に結合されてよい。メモリ170は、処理装置150によりその後処理するため、1回又は複数のX線スキャン中に取得されるデータを保存することができる。例えば、典型的な使用において、対象物又は患者に、短い一連のX線照射(1~50照射、例えば5~10照射)を行い、各照射中に測定される減衰など、これらの照射からのデータをメモリ170に保存した後、ここで論じられるような画像再構成を洗練するために処理するか又は用いることができる。
【0062】
記載の通り、対象物160のROIの一部に起因する減衰を決定するためには、各発生源110及び検出器140、つまり検出器ピクセルの相対位置(距離及び方向)がわかっていなければならない。固定設置の場合、必要とされる測定は設置時に行われ、日常保守中に確認される場合がある。あるいは、機械的測定によるものを含めた、いくつもの他の方法で相対位置を決定してよい。
【0063】
本開示のある態様において、X線撮像システム100は、検出器140に対する発生源110及び/又はその反対の相対位置を決定するために配置される1つ又は複数のセンサ190を含んでよい。センサ190は近接センサの任意の種類でよく、各発生源110及び検出器140間の距離を決定するために使用することができる。この距離を用いて、対象物160を撮像する際に使用する発生源110の好適なサブセットを選択することができる。例えば、操作者又はX線技師は制御装置180を利用し、対象物160のROIを選択することができる。本開示のある態様において、その後、SODの範囲を(例えば処理装置150により)事前に計算し、製造された発生源110の固定ピッチ及びコリメーション角、並びに撮像されるROIに基づき、操作者に提供することができる。操作者又はX線技師は、SODの特定の範囲内に検出器140を位置させてよい。その後、センサ190は、発生源110及び検出器140間(あるいは発生源110及び対象物160間)の距離を測定することができる。検出器140の1つ又は複数のピクセルで時空的に重複する2つ以上の発生源110を含めた、発生源110のサブセットを(例えば処理装置150により)計算することができ、画像取得速度、画質及び/又はROI範囲を最適化する。本開示の目的のため、空間的、時間的重複(又は時空的重複)は、2つ又は複数のX線がサンプリング時間間隔内で検出器のあるピクセルに入射する場合を含んでよい。
【0064】
X線撮像システム100は、視覚化ワークステーション及びディスプレイ120を含んでもよい。視覚化ワークステーション及びディスプレイ120は処理装置150に動作可能に結合されてよく、対象物160のROIの再構成された3次元画像を観察するために用いることができる。例えば、視覚化ワークステーション120は、処理装置150により決定される3次元データアレイを、ROIの1つ又は複数の内部ビュー(例えば2次元スライス)に変換するために計算を行い、操作者又はX線技師に表示することができる。
【0065】
図3は本開示の態様に基づく、X線画像を再構成する例示的な方法を示すフローチャートである。この方法は工程501で開始し、エア校正(又はエアショット)などの校正手順は、空気減衰、各発生源110の空間的変動、検出器140の感度変化を相殺する手段、検出器140の不良ピクセルを補う手段などとして実施されてよい。検出器140の応答における非線形性を理解し、必要であれば補うため、校正データをさらに用いてよい。従来のデジタル検出器は線形である(例えば、入力フラックスが2倍であると2倍の信号出力を作製する)が、入射角が異なる場合、これは当てはまらない。
【0066】
本開示のある態様において、2段階校正を実施してよく、これにより一度に1つずつ各発生源110が作動され、続いて発生源110を群又は組で作動することができ、少なくとも2つのX線ビーム130は検出器140で時空的に重複する。このような2段階校正はすべての可能性のある電位変動を除去することはできないが、与えられた状況における主な応答の問題を相殺することができる。
【0067】
図3に示す方法の最初の工程(例えば工程502の前)として、この校正を行ってよい。あるいは、このような校正は、
図3に示す方法を実施する直前に行う必要はなく、代わりに定期的に(例えば、毎日又は毎週)行い、性能変動(例えば、温度による)又は腐食(例えば、経年劣化、X線照射又は物理的損傷による)を捉えることができる。ここに記載される再構成アルゴリズムを調節するために、この校正結果を用いることができ、このような校正によるデータをメモリ170に保存し、処理装置150により後で処理することができる。
【0068】
図3を参照し、校正結果が許容限界内であり、任意の構成変更又は修正された測定値が記録されていることを前提に、1つ又は複数のデータ取得手順を実施してよい(工程502~505)。最初の事項として、工程502で対象物(又は人)160の3次元ROIを選択する。本開示を考慮して当業者に理解されるように、操作者又はX線技師により制御装置180を用い、あるいは様々な方法で、この選択を実施することができる。選択されたROI、発生源110のピッチ及びコリメーション角、並びにSODに基づき、ROIを撮像するために用いられる発生源110の一群又はサブセットを、工程503で選択してよい。ROI幾何、ピッチ及びコリメーション角、並びにSODを考慮に入れる幾何学的計算を用いて、画像取得速度、画質及び/又はROI範囲の1つ又は複数を最適化することができる。
【0069】
図示していないが、本開示の一態様において、製造された発生源110の固定ピッチ及びコリメーション角に基づき、SODの範囲を計算することができ、操作者又はX線技師に提供される。その後、操作者は、発生源110及び検出器140間の計算されたSODの範囲内に、対象物160を位置させることができる。その後、発生源110及び検出器140間の距離を例えばセンサ190により、又は機械的に測定することができる。あるいは、発生源110及び検出器140を固定させてよく、又は可動性であれば、X線スキャンプロセスを通して常に相対位置がわかる方法で動くように設計してよい(例えば、発生源110及び/又は検出器140が既知のパターンで動く)。
【0070】
工程504で、工程503で選択された発生源110の群又はサブセットを作動し、選択されたROI(工程502)に、一連のX線照射を行うことができる。その後、(対象物160通過後)検出器140に衝突するX線ビーム130の強度の局所変動を工程505で測定することができ、このように対象物160に起因する減衰の大きさを提供する。工程505で測定された減衰を、例えばメモリ170に、あるいは処理装置150に保存してよい。これらの減衰測定値を以前のスキャンから(例えば、発生源110の一群又はサブセットの以前の作動から)得られた減衰測定値に加えることができる。このプロセスを十分な生データが取り込まれるまで繰り返し、このデータをROIの所望の画像に変換することができる。
【0071】
次に、ブロック506から507を参照し、対象物160のROIの3次元表示を再構成するために、反復再構成プロセスを実施することができる。その後、ROIをボクセルと呼ばれるn個の3次元非重複体積要素にさらに分割することができる(工程506)。このようなボクセルを定義(又は再定義)するプロセスを、ボクセル化(又は再ボクセル化)と呼ぶことができる。隅々まで均質の放射吸収特性(例えば同じ減衰係数)を有するものとして、各ボクセルをモデル化することができる。このように、各ボクセルは単一のサンプル又はデータ点(例えば単一の減衰係数)を表す。このようなすべてのデータ点をベクトルと呼ばれるアレイに集めることができる。このボクセル化プロセスを、本開示を考慮して当業者により理解されるように、処理装置150により、あるいはいくつもの他の手段により行うことができる。
【0072】
ここで論じられるような圧縮センシング方法は、2つ以上の時空的に重複するX線ビームのそれぞれに起因する強度を決定するために配置され、工程505で得られた有効データに最も適合する一連の減衰係数を決定するために用いることができる。このようにして、その後、所定の最適性条件(例えば所望の解像度)を達成するなど、停止基準が満たされるまで、ボクセル化を反復して洗練すること(工程506及び507を繰り返すこと)により、好適なボクセル化を決定することができる。特定のボクセル化に関する減衰係数を決定するために用いられる圧縮センシング方法は、通常1回又は複数の反復を含むため、言及しやすいように、各連続するボクセル化の洗練を外部反復と呼び、一方、(各特定のボクセル化内の)各連続する圧縮センシング方法の反復を内部反復と呼ぶ。
【0073】
ブロック507を参照し、ボクセル化(又は再ボクセル化)後、圧縮センシング方法を用い、時空的に重複するX線に起因する強度測定値を解析し、このようにして各ボクセルを占める物質に起因する減衰、より詳細には減衰係数を決定することができる。圧縮センシングは数学的技術であり、画像中のスパースを活用して、他の方法で必要とされるよりも少ない測定値から再構成することができる。この技術は基底追跡問題と呼ぶこともできる。従来の基底追跡問題は、解を無限に有する劣決定線形系に関し、このうち、非ゼロのエントリが最も少ない解を見出すことを目的とする。数学的に、この概念は、数式2として表すことができ、ここで|・|は集合の濃度、つまり元の数を示し、Aはmxn行列であり、bはサイズmのベクトルである。ここで、mは測定値数であり、nはボクセル数であり、χは減衰係数のベクトルであり、χiはi番目のボクセルの減衰係数である。
【0074】
【0075】
異なる発生源110からの2つ以上のX線ビーム130が検出器140で重複する場合、このような重複するX線からの測定値は(非重複X線であるように)線形にはならない。代わりに、2つのX線ビーム130が検出器140、より詳細には検出器140のあるピクセルで重複するなら、測定値jでの減衰は、数式3となり、ここで、右辺の2つの項のそれぞれは1つのX線ビーム140に起因する測定値に相当し、IEjkはエミッタ(又は発生源)kでの放射に相当し、IDjは検出器jでの放射に相当し、ξijkは、k番目の発生源110からi番目のボクセルまで発散するX線ビーム130により伝わる距離を示す。検出器140のj番目のピクセルで重複するpjX線について、より一般的な式は、数式4である。
【0076】
【0077】
【0078】
1つの手法においては、[0,1]区間で十分に近似する正の2数(数式5)及びλに関して、我々が数式6を有すると仮定し、測定値の非線形性を否定することにより、非線形制約(2)を線形化することができる。重複するX線ビーム130の観点から、制約(2)は、数式7に簡約され、ここで、係数
は凸結合の重み、つまり正であり合計1となる(数式8)。対数を右辺に適用すると、線形制約(数式9)、が得られ、又はAχ=bであり、ここで、bはb
jのベクトルであり、Aは距離
の負の凸結合からなる行列であり(数式10)、p
jは測定値jで重複するX線発生源の数を示す。Aは、連続する照射から生じる相当する線形観測行列Aの圧縮として解釈することができる(数式11、12)。上記は非線形観測の第1の線形近似を提供する。しかし、重複するX線ビーム130に沿った減衰の差に応じて、(4)の2項はこの簡約化を正当化するには違いすぎる場合がある。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
従って、各測定値jについて、線形化を決定するパラメータτ
jは繰り返し推定される場合がある。その後、これらのパラメータに基づき、対応するモデルを最適化することができる。
【0088】
数式13が数式14の比率として定義されるような2値ak>0(k=1,...,p)及び凸結合重みλk>0(k=1,...,p)について、対数関数の凹性のため、すべてak<1であるとき、τ(a,λ)<1が保持される。この概念を測定値(3)に適用することにより、測定値jで重複するpjX線コーンの比率τj(χ)は、数式15により与えられる。このように、以下の数式16は制約(2)のために得られ、以前の通り、bj=log(ψj)である(数式17、18)。ここで、行列Aのエントリである(数式19)。対角行列τ=diag(τ1,...,τm)(11)を導入すると、制約τAχ=b(12)を与える。上述に基づき、以下の再構成(最適化及び線形化)アルゴリズムを式で表すことができ、測定されたX線の集合を、該当するベクトル測定値bと共に、X線の交差長及びボクセルの疎行列Aで表すことができ、ここで、m(測定値数)はn(ボクセル数)よりも相当少なくてよい。疎行列及びベクトル測定値を組み立てると、以下が解かれ、ベクトルχが十分に収束するまで、t=1,2,...に対して、繰り返し洗練される。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
1.アップデートχ:
【0097】
【0098】
ここで、μ>0は正則化パラメータであり、スパース事前分布及びデータ忠実度項間の均衡をとる。スパース事前分布||χ||sはL1ノルム、全変動ノルム又はこの2つの凸結合である。
【0099】
2.アップデートτ:
【0100】
【0101】
【0102】
初期化を行い、以下をまず計算することができる。
0.χ=ATb,τ=I、ここで、Iはmxm単位行列である。
【0103】
下記は、重複を伴う再構成問題を解く代替法である。(2)を参照し、ベクトルχのスパース再構成の関心を再度仮定すると、L1の事前分布を用いる最小化は、数式23を与え、測定値は数式24である。係数-ξijkをスパースベクトルrjkで表すことができる(数式25)。
データ制約項でノイズを考慮すると、以下の数式26(13)の最小2乗式が誘導される。ここで正則化パラメータμ>0であり、これはスパース事前分布及びデータ忠実度項の均衡をとる。式(15)は、数式27の形の最適化問題に相当し、凸微分不可能(数式28)、凸偏微分可能(数式29)である。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
形(16)の最適化問題は、t=0,1,2...及びχ0=0に対して、一次フォワードバックワード分離アップデート列を用いて解することができ、数式30。ここで収束率O(1/t)及びステップサイズλ=1/Lである。fが下半連続凸関数であり、gは凸微分可能であれば、アップデート列(19)は(16)の最小値に収束し、リプシッツ連続勾配を有する。
【0112】
【0113】
(16)の例外として(15)を最適化するために、χの初期化は、最小点(数式31)よりも小さく保持され、これはgが、x(数式32)の凸偏であるためである。さらに、ステップサイズλは、数式33がすべての反復tに対して保証されるように、選択されるべきである。バックトラック直線探索アルゴリズムを用い、ステップサイズλを決定することができる(例えば、数式34)。測定値は、数式35で与えられ、ここで、数式36であり、従って、直線探索を数式37により制約することができる。これは、数式38に必要であるが、十分な条件ではない。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
上述に基づき、以下の第2の再構成(フォワードバックワード分離)アルゴリズムが式で表され、ROI(又はROIの一部)の3次元再構成を生成するために用いることができる。ブロック505で得られた測定値に基づき、以下を組み立てることができる。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
次に、初期化χ0=0を実施し、以下を解し、t=1,2,などに対して反復して洗練することができる。
1.探索方向を計算する(数式44)
2.バックトラック直線探索(数式45)
3.アップデートχ:(数式46)
4.停止基準(数式47)
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
シミュレーション及び実際の測定値の両方を用いた実験結果は、ここで開示された再構成アルゴリズムが線形制約から再構成の精度を著しく改善することを示している。このような実験は、本方法が平均重複~2までの連続する(非重複)照射とほぼ同じ画質を再現するために配置され、同時にSOD及びエミッタコリメーション角に関して、堅牢さを高度に増し、画像取込み時間が増すことを示している。言い換えれば、概して、検出器140のピクセル当たりの時空的なX線重複が2つ以下の発生源110に起因する場合、本方法は最適な結果を提供する。典型的な使用において、検出器140のピクセルのサブセットは1つ以下のX線ビーム130を検出するため、本方法は、ピクセルの第2のサブセットが、2個超の発生源110による時空的に重複するX線を検出することができる構造を可能にする。
【0134】
工程507を再度参照し、各内部反復(例えば、圧縮センシングアルゴリズムを解し、反復して洗練する)の終わりに、次の外部反復を実施してよい(工程506)。各次の外部反復において、工程507で決定される減衰係数に基づき、以前のボクセル化の各ボクセルを変更することができる。例えば、測定された減衰により合わせるため、ボクセルをより小さいボクセルにさらに分割するか、あるいは2つ以上の隣接するボクセルを単一のボクセルにまとめてよい。停止基準(例えば、所望の画像解像度)まで、ボクセル化を反復して改良することにより、最適なボクセル化を得ることができる。
【0135】
反復ループ(工程506及び507)の終わりに、ROI対象物160の3次元グラフィック表示を作製するため、各ボクセルから導かれた結果として得られるχ(減衰係数)値を用いることができる。3次元画像、より一般的には一連の2次元「スライス」(例えばz軸に沿った)として、このグラフィック表示を表示することができる(工程508)。このようにして、操作者又はX線技師により、ROIを検査することができる。
【0136】
特に、上述の方法は説明のために順序立てた工程で示されているが、単なる例である。記載される工程を列挙した順番で実施する必要はない。さらに、各列挙した工程をやはり本開示に合わせて実施する必要はない。
【0137】
本開示を考慮して当業者に理解されるように、ここで記載される実施形態は、非重複状態を排除することが堅牢なシステム構造を可能にするため、従来のシステムの設計制限を克服することができる。例えば、非重複状態の緩和は、厚い対象物のトモシンセシスの場合に特に有用となり得る。このような場合に、対象物の最上面でX線の適用を完全に行うために、通常、X線ビームのコーン又はファン形状により、対象物の底面でかなりの重複がある。従来のシステムはこのような重複に対処することができないため、このような対象物の最上面は、対象物の底面と比較して、通常アンダーサンプリングが行われる(従って不明瞭である)。本発明の実施形態はX線重複を認めているため、このような対象物の最上面でより高いサンプリングを行うことができ、このようにしてより鮮明な画像を作製することができる。
【0138】
また、医学的応用においては、患者の動作により連続照射の全持続時間が限定される(通常0.1秒まで)が、従来のシステムは、x-y平面(検出器の平面)及びz方向(x-y平面に直角方向)において達成可能な解像度を両立させなければならない。z方向の解像度を増すためには、鈍いコリメーション角を用いなければならない。これは重複を避けることを困難にし、許容される時間限界(例えば、0.1秒)で行われる照射はより少なくなる。x-y平面の解像度を高める鋭角、及びz方向の画像解像度を高める鈍角と時間的に重複する方法で、発生源110(又はエミッタ)が鋭、鈍コリメーション角と混合することができるようにすることで、本開示の実施形態はこの制約を克服する。
【0139】
さらに、医療機関又は臨床環境において、発生源110及び検出器140が適当に調整されず(例えば、発生源のピッチ及びヨーが検出器と同一平面上にない)、他の方法で許容されるSODでさえX線重複を引き起こす場合がある。本開示の実施形態の重複に耐える能力はこの懸念を排除し、患者にX線を照射するような方法においてより柔軟である。例えば仰臥位の患者をベッドの足部から撮像することができ、患者の上に重い発生源を吊り下げる必要がない。
【0140】
本開示の実施形態は、異なるROIを扱うことに関して、従来のシステムよりも著しい利点も有する。ROIの面積が検出器に類似する場合、X線重複は、追加の発生源110又はエミッタを必要とすることなく、ROIの端部をよくサンプリングし、操作速度も高める。従来のシステム(X線重複を許容することができない)において、端の発生源又はエミッタ(例えば、従来のエミッタパネルにおけるエミッタの外側の横列及び縦列)は、通常ROIの小さい部分をカバーする。エミッタ、より詳細には異なるエミッタからのX線は重複することができないため、これにより操作者又はX線技師は端のエミッタを別々に作動させ、従って本開示の実施形態下で必要であるよりも多くのスキャンを実施する必要がある。
【0141】
ROIが検出器と比べて小さい場合、本開示の実施形態は、異なるエミッタからのX線が重複して、ROI全体を効果的にカバーするため、取得時間を効果的に半減することができる。このようにして、操作者又はX線技師は迅速に一連の画像を取得することができ、従ってモーションアーチファクト数を軽減する。動作がより大きな懸念となることがあり、身体の厚みがより小さい子供又は痩せた患者の場合、この特徴は特に有益である。
【0142】
本開示の実施形態は上に記載されているが、本発明は上述の内容により限定されるべきでないことは理解されるべきである。反対に、上述の明細書、図面及び要約は説明のために記載されており、本発明を限定する意図はない。むしろ、本開示を考慮して当業者が認識するように、本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、上述の内容に様々な変更を加えることができる。