(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】受動物体操作装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220513BHJP
B41M 1/28 20060101ALI20220513BHJP
B41M 1/40 20060101ALI20220513BHJP
G01D 5/245 20060101ALN20220513BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41M1/28
B41M1/40 Z
B41J2/01 305
B41J2/01 121
B41J2/01 451
B41J2/01 401
G01D5/245 110W
(21)【出願番号】P 2019517955
(86)(22)【出願日】2017-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2017078039
(87)【国際公開番号】W WO2018083167
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-09-03
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518031790
【氏名又は名称】トーンジェット リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シャープ,ジョン ロートン
(72)【発明者】
【氏名】インガム,イアン フィリップ バトラー
(72)【発明者】
【氏名】ウッズ,ジェフリー マーク
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,サイモン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クリッピングデール,アンドルー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホールズ,ジョナサン ジェームス マイケル
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-200840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0059600(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41M 1/28
B41M 1/40
G01D 5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷システム内で物体を操作するための装置であって、
経路に沿って移動するように構成された運搬装置と、
物体を保持するように適合され、前記運搬装置に対して操作軸を軸として回転できるように前記運搬装置に取り付けられた操作装置と、
前記経路に沿った位置に配設され、関連付けられた駆動軸を有する駆動装置と、を備え、
前記運搬装置が、前記経路に沿って前記駆動軸に垂直な方向に駆動位置に出入りすることができ、
前記駆動位置において、前記操作装置の前記操作軸が前記駆動装置の前記駆動軸と実質的に一致したとき、前記駆動装置が前記操作装置を回転させるトルクを前記操作装置に生じさせることによって、前記操作装置によって保持された前記物体を回転させる、装置。
【請求項2】
前記操作装置が、少なくとも1つの磁気素子を備え、
前記駆動装置が、前記操作装置の前記少なくとも1つの磁気素子に作用して前記トルクを生じさせる回転磁場を生成する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記回転磁場を交流電流によって駆動される少なくとも1つの磁気コイルによって生じさせる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記駆動装置が、少なくとも1つの永久磁石を有する回転駆動素子を備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記駆動装置が、摩擦によってトルクを前記操作装置に結合する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記操作装置の回転が、前記運搬装置が前記駆動位置にあるときに前記駆動装置の回転と同期される、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記運搬装置が、移動するように構成された前記経路がトラックによって画定され、好ましくは、前記トラックが、前記運搬装置が移動することができる閉経路を形成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記駆動装置が、処理ステーションに隣接して配置され、
前記処理ステーションが、前記操作装置により保持された前記物体に対するプロセス、すなわち積載、検査、洗浄、表面処理、印刷、乾燥、コーティング、硬化、取り出しのうちの少なくとも1つを実行するように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記トラックに隣接して取り付けられたレール又はパッドを備え、
前記操作装置が、前記トラックに沿って移動するときに前記レール又はパッドに接触し、これによって前記トラックに沿って移動するときに前記操作装置を回転させるように構成されたホイールを備える、請求項
7に記載の装置。
【請求項10】
前記操作装置が、縦軸が前記操作軸に平行な円筒形物体を保持するように適合され、好ましくは、前記円筒形物体が缶又は管である、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記駆動装置が、プリントヘッドを有する印刷装置に隣接して配置され、
前記操作装置が前記円筒形物体を保持しているとき、前記駆動装置による前記操作装置の回転が、前記プリントヘッドが前記円筒形物体の全周囲にスワスを印刷できるように前記円筒形物体を回転させる、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記駆動装置が、前記経路に沿って配置された複数の駆動装置の1つであり、
前記運搬装置が、前記駆動装置のそれぞれに連続的に移動することができる、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記運搬装置が、複数の運搬装置の1つであり、それぞれが他の運搬装置に対して独立に移動可能である、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記操作装置が、前記操作装置の角度位置を特定する符号化された情報を表面に有するエンコーダリングを備え、
前記装置がさらに、前記エンコーダリングを読み取ることによって前記操作装置の前記角度位置を測定するように構成された、各駆動装置に近接した読取ヘッドを備える、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記経路に沿った前記運搬装置の直線変位と前記操作装置が保持する回転する円筒形物体の周方向変位の間の等価性を前記読取ヘッドからの出力に与えることにより、前記運搬装置の前記プリントヘッドに対する位置の誤差を補正するように、前記エンコーダリングが前記円筒形物体の直径と実質的に同じ直径を有する、請求項11に従属する場合の請求項14に記載の装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の装置を使用して物体に印刷する方法であって、
前記運搬装置を前記駆動位置に移動させることによって、前記操作装置により保持された物体をプリントヘッドの近くに移動させることと、
前記駆動位置にある前記操作装置と結合されたときに前記駆動装置を動作させることによって前記操作装置を回転させることと、
前記操作装置が回転する間に前記操作装置により保持された前記物体に印刷することと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記運搬装置を前記駆動位置に移動させることが、前記運搬装置を前記経路に沿って前記駆動軸に垂直な方向に移動させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記物体が印刷されている間、別の運搬装置が前記トラックに沿って移動する、請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から14のいずれか一項に記載の装置を備える、印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム内で物体を移動及び回転させるための装置に関する。具体的には、装置は可動運搬装置と、独立した駆動装置とを備える。駆動装置は、運搬装置の回転可能部に結合し、回転可能部にトルクを与える。
【背景技術】
【0002】
一連の工程で包装容器などの個別の物体への印刷を行う産業印刷プロセスでは、一連の物体を一連の運搬装置によって印刷ステーション間で運搬することが一般的である。印刷ステーションにある印刷装置が三次元物体の表面の大部分にアクセスするために、運搬装置は通常、例えば円筒形の物体をその縦軸を軸として回転させて外面全体をさらすことによって印刷ステーションにある物体を操作する。飲料用缶及びスプレー缶がこのようなシステムで印刷可能な円筒形物体の例である。
【0003】
そのような印刷プロセスを通じて個別の物体を操作するための装置の既存のタイプには、スピンドルディスクシステムとしても知られているマンドレルホイールシステムが含まれる。公開米国特許6,769,357号にはマンドレルホイールシステムの一例が示されている。
【0004】
マンドレルホイールシステムでは、複数のマンドレルが回転又は間欠回転ホイールの周りに等間隔に取り付けられる。一部の実施例では、各マンドレルは物体を回転させる関連内蔵サーボモータを有する。これらの実施例において、サーボモータは、マンドレルホイールの中心軸上の回転結合システムにより与えられる電力接続及び制御接続を必要とする。他の実施例では、各マンドレルは単一のモータからのベルト又はギアによって機械的に駆動される。マンドレルホイール上の全てのマンドレルが同時に間欠運動するように制約されているため、スループットは一連のプロセスの中の最も遅いプロセスの速度に制限される。結果として、速いプロセスを実行する処理ステーションは、他のステーションにおいてより遅いプロセスが完了するまでの間非活動期間を有することが要求される。ステーションにおける間欠運動距離及び滞在時間は、そのステーションの大きさ又は所要時間に合うように変えることはできない。
【0005】
1つ以上のマンドレル又は物体ホルダが線形トラックに沿ってステーション間をグループで移動する線形トラックシステムも知られている。マンドレルは印刷後、トラックに沿って開始位置に戻る。この往復運動は、接点を移動させることなく柔軟な配線を介してマンドレルモータに電力接続及び制御接続が行われることを可能にする。しかしながら、このような往復運動システムは、マンドレルがトラックに沿って逆方向に開始位置まで戻ることにサイクル時間が対応する必要があるためスループットが小さい。
【0006】
上記の問題に対処するために、印刷プロセスを通じて物体をどのように運搬できるかについての柔軟性を拡大できるより複雑な運搬システムが開発中である。上記の既知のシステムにより課された物体の移動に対する制約を取り除くことによって、例えば処理ステーションの非活動期間が最小限に抑えられたより効率的なプロセスを開発することができる。
【0007】
より複雑/柔軟な印刷システムを提供する際に解決すべき課題は、印刷プロセスを受けている間に、物体の回転を駆動、制御及び測定するために、運搬装置のそれぞれにいかにしてサービスを提供するかである。マンドレルホイールや線形トラックシステムで使用されるものなどの既知の接続構成は単純なシステムに適しており、これらの構成を、例えば運搬装置の相対位置が印刷サイクルを通して変化するより複雑なシステムに適応させることは困難であろう(接点、回転可能継ぎ手、スリップリングなどを移動させる複雑な構成が必要である)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
その結果、可動物体に制御された回転を与えるための改善されたシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、物体を操作するための装置であって、トラックに沿って移動するように構成された運搬装置と、物体を保持するように適合され、運搬装置に対して操作軸を軸として回転できるように運搬装置に取り付けられた操作装置と、トラックに沿った位置に配設され、駆動軸の周りにトルクを生じさせるように構成された駆動装置と、を備え、運搬装置がトラックに沿って駆動軸に垂直な方向に駆動位置に出入りすることができ、駆動位置において、操作装置の操作軸が駆動装置の駆動軸と実質的に一致したとき、駆動装置が操作装置を回転させるトルクを操作装置に生じさせることによって、操作装置により保持された物体を回転させる装置が提供される。
【0010】
回転可能な操作装置にトルクを生成する駆動装置が運搬装置の一部ではない装置を提供することは、運搬された物体を回転させるために独立に移動可能な運搬装置への電気的又は他の接続の必要性を取り除くため既知の装置より有利である。
【0011】
運搬装置が駆動軸に垂直な方向に駆動位置に出入りするシステムを提供することは、駆動装置が駆動装置及び操作装置間の軸分離の能動的制御を必要とせずに操作装置に結合できるシステムを提供するため有利である。
【0012】
好ましくは、操作装置は、少なくとも1つの磁気素子を備え、駆動装置は操作装置の少なくとも1つの磁気素子に作用してトルクを生じさせる回転磁場を生成する。
【0013】
好ましくは、回転磁場は交流電流によって駆動される少なくとも1つの磁気コイルによって生じさせる。
【0014】
好ましくは、駆動装置は少なくとも1つの永久磁石を有する回転駆動素子を備える。
【0015】
好ましくは、駆動装置は摩擦によってトルクを操作装置に結合する。
【0016】
好ましくは、操作装置の回転は、運搬装置が駆動位置にあるときに駆動装置の回転と同期される。
【0017】
好ましくは、運搬装置が移動するように構成された経路はトラックによって画定され、好ましくは、トラックは運搬装置が移動することができる閉経路を形成する。
【0018】
好ましくは、駆動装置は処理ステーションに隣接して配置され、処理ステーションは、操作装置により保持された物体に対するプロセス、すなわち積載、検査、洗浄、表面処理、印刷、乾燥、コーティング、硬化、取り出しのうちの少なくとも1つを実行するように構成される。
【0019】
好ましくは、装置は、トラックに隣接して取り付けられたレール又はパッドを備え、操作装置は、トラックに沿って移動するときにレール又はパッドに接触し、これによってトラックに沿って移動するときに操作装置を回転させるように構成されたホイールを備える。
【0020】
好ましくは、操作装置は、縦軸が操作軸に平行な円筒形物体を保持するように適合され、好ましくは、円筒形物体は缶又は管である。
【0021】
好ましくは、駆動装置は、プリントヘッドを有する印刷装置に隣接して配置され、操作装置が円筒形物体を保持しているとき、駆動装置による操作装置の回転が、プリントヘッドが円筒形物体の全周囲にスワスを印刷できるように円筒形物体を回転させる。
【0022】
好ましくは、駆動装置は経路に沿って配置された複数の駆動装置の1つであり、運搬装置は駆動装置のそれぞれに連続的に移動することができる。
【0023】
好ましくは、運搬装置は複数の運搬装置の1つであり、それぞれが他の運搬装置に対して独立に移動可能である。
【0024】
好ましくは、操作装置は、操作装置の角度位置を特定する符号化された情報を表面に有するエンコーダリングを備え、装置はさらに、エンコーダリングを読み取ることによって操作装置の角度位置を測定するように構成された、各駆動装置に近接した読取ヘッドを備える。
【0025】
好ましくは、経路に沿った運搬装置の直線変位と操作装置が保持する回転する円筒形物体の周方向変位の間の等価性を読取ヘッドからの出力に与えることにより、運搬装置のプリントヘッドに対する位置の誤差を補正するように、エンコーダリングは円筒形物体の直径と実質的に同じ直径を有する。
【0026】
本開示の別の態様において、印刷装置を使用して物体に印刷する方法であって、運搬装置を駆動位置に移動させることによって、操作装置により保持された物体をプリントヘッドの近くに移動させること、駆動位置にある操作装置と結合されたときに駆動装置を動作させることによって操作装置を回転させること、操作装置が回転する間に操作装置により保持された物体に印刷することを含む方法が提供される。
【0027】
好ましくは、運搬装置を駆動位置に移動させることは、運搬装置を経路に沿って駆動軸に垂直な方向に移動させることを含む。
【0028】
好ましくは、物体が印刷されている間、別の運搬装置がトラックに沿って移動する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明での使用に適した印刷システムの一実施例の概略的なブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る運搬装置の概略的なブロック図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る3つの運搬装置と係合した3つの駆動装置を備えたシステムの概略図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る、電磁結合機構を備えた駆動装置と運搬装置の概略図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態に係る永久磁石素子を有する駆動装置の概略図である。
【
図6】本発明の第5の実施形態に係るエンコーダリングとエンコーダ読取ヘッドとを備えた装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、複数の一連の処理ステーションを有する印刷装置内で物体を操作するための装置であって、可動運搬装置が一連の処理ステーションを通過するときに物体を保持するように適合された回転可能な受動的操作装置を備えた装置を提供する。受動的操作装置を回転させるように構成された各駆動装置が、物体を回転させる必要がある各処理ステーションに配置される。運搬装置は、駆動装置が回転可能な受動的操作装置に結合して操作装置を回転させるように駆動装置の近くに移動することができる。これにより、操作装置によって保持された物体が処理ステーションで回転可能になる。このシステムは、能動的可動素子に電力信号及び/又は制御信号を供給する必要性を取り除くことによって、任意形状のトラックに沿って独立に移動可能な物体運搬装置を有する個別の物体のための印刷システムを実現するのに必要な設計条件が単純化されるために従来のシステムより有利である。
【0031】
印刷装置の処理ステーションは、これらに限定されないが、積載ステーション、検査ステーション、表面処理ステーション、洗浄ステーション、印刷ステーション、乾燥ステーション、固定ステーション、コーティングステーション、硬化ステーション、及び取り出しステーションを含んでよい。
【0032】
印刷ステーションは、これらに限定されないが、従来の接触式手段(例えばオフセットリソグラフィ及びフレキソ印刷)、デジタル式接触式手段(例えば電子写真印刷、デジタルオフセット印刷及びベルト転写印刷)、及びデジタル式非接触式手段(例えばインクジェット印刷、静電インクジェット印刷及び圧電インクジェット印刷)を含む広範な印刷プロセスの1つ以上を提供してよい。
【0033】
印刷は通常、トラックに沿って配置された1つ以上の印刷ステーションで行われる。印刷ステーションは通常、トラックに沿って配置されたより多くの処理ステーションの一部を形成する。
【0034】
印刷方法は組み合わせてよい。例えば第1の印刷ステーションが、オフセット印刷を使用して白色の基層などの第1の印刷層を物体に塗布できる一方、後続の印刷ステーションは、インクジェットなどのデジタル印刷を使用して物体の表面にプロセスカラー画像を印刷することができる。
【0035】
図1は、複数の運搬装置104(すなわち「キャリッジ」)が制御装置110によって閉トラック102に沿って独立に移動可能な印刷システムの一実施例を示している。
【0036】
キャリッジ104は、この実施形態では、円筒形容器108を運搬するように適合された回転マンドレルを備えた操作装置を備える。各マンドレルは、マンドレルがその中心軸を軸として回転し、これによって取り付けられた円筒形容器108をマンドレルと同軸の中心軸を軸として回転させることが可能なベアリングを介して各キャリッジ104に取り付けられる。
【0037】
装置は、複数のキャリッジ104が配設され、これに沿ってキャリッジ104が移動可能なトラック102を備える。複数の処理ステーション106がトラック102に沿って配置され、複数のキャリッジ104のそれぞれは、容器108を処理ステーション106のそれぞれの近くに連続的に運搬するように構成される。
図1に示す実施形態では、処理ステーション106は、積載ステーション106Aと、検査ステーション106Bと、4つの単色印刷ステーション106Cと、乾燥ステーション106Dと、コーティングステーション106Eと、取り出しステーション106Fと、を含む。
【0038】
本発明で使用される適切なトラックシステムの例は、HepcoMotion社製のPrecision Track Systems及びRockwell Automation社製のiTRAKである。
【0039】
印刷ステーション106Cなどの1つ以上の処理ステーション106は、処理中(例えば印刷中)物体108が回転することを要求する。これらの処理ステーションには、マンドレル、ひいては容器108を回転させるためにキャリッジ104のマンドレルと係合するように構成された駆動装置(
図1に示さず)が設けられる。駆動装置は、キャリッジが移動する経路に沿った位置に配設される。キャリッジは、駆動装置に対して駆動装置が操作装置と係合して操作装置にトルクを与える駆動位置に移動することができる。
【0040】
制御装置110は、トラック102上で互いに対するキャリッジ104のそれぞれの位置及び速度を独立に制御するために、直接又はトラック102を介してキャリッジ104のそれぞれと通信する。
【0041】
各キャリッジ104は、第1に束縛力によって、第2に原動力によってトラック102に結合される。束縛力は、キャリッジがトラック102の経路に沿ってのみ移動することを要求し、キャリッジが高い精度で誘導されることを可能にする。一部の実施形態において、束縛力は、トラック102の溝付き経路に嵌合するキャリッジ104に取り付けられたリニアベアリングによって与えられ、キャリッジ104の動きを1つの自由度に制約する。
【0042】
キャリッジ104とトラック102の間の原動力は、磁気リニアモータシステムにより与えられてよい。この実施例では、キャリッジ104は、トラック102の周囲に隔置された電磁石のシステムに電磁結合する永久磁石素子を有する。位置検出システムがトラック102上の各キャリッジ104の位置を測定し、制御デバイス110は、トラック102に沿って隔置された電磁石の磁化を制御することによって、トラック102上の各キャリッジ104の位置、速度及び加速度を制御するのに使用される。制御デバイス110は通常、あらかじめ決められた順序に従ってキャリッジ104を処理ステーション106間で移動させるようにプログラムされ、各キャリッジ104が各ステーション106A~Fで費やす時間は事前に決められている。
【0043】
図2は、例示的な運搬装置104(「キャリッジ」)のより詳細な図を示している。キャリッジ104は、基部214と、上部215とを有する。
【0044】
キャリッジ104の基部214は、内部にリニアベアリング216が配設された2つの垂直側壁217を有する。基部214のリニアベアリング216は、トラック102と係合するように構成され、これによってキャリッジはトラック102により画定された経路に沿って移動することができる。
【0045】
上部215は、その本体を貫通する経路を有し、この経路を操作装置224の中心シャフトが通過する。この実施例において操作装置224は、円筒形容器を保持するように適合された物体ホルダ210を備えたマンドレルである。シャフトと物体ホルダとは、軸226の周りを一体的に回転するように互いに接続される。
【0046】
マンドレル224のシャフトは、マンドレルがキャリッジのその他の部分に対して回転できるようにする別のベアリング222でキャリッジの上部215に取り付けられる。マンドレル224は、その回転軸226が、トラック102がキャリッジの基部214と係合する方向に垂直になるように配向される。したがって、キャリッジ104がトラック102に沿って移動するとき、マンドレル224の回転軸226は、常にキャリッジ104の移動方向に垂直である。
【0047】
マンドレル224のシャフトは、マンドレル224を回転させるために独立した駆動装置と係合するように設計された結合ディスク212を有する一端で終了する。駆動装置は、回転駆動ディスクを備えてよい、又は代替的に、回転磁場や摩擦クラッチなどの別の機構を用いて結合ディスクを駆動させてもよい。この実施例では、結合ディスク212は、マンドレル224の回転軸に垂直な面内にある実質的に平らな表面を有する。マンドレルの軸226、トラック102、及び結合ディスク212の配置は、結合ディスク212の実質的に平らな表面が駆動ディスク(以下で説明される)の実質的に平らな表面と平行に位置する場合に、トラックに沿ったキャリッジ104のどんな動きもディスクを軸に対して垂直に移動できるようにする。これによって、キャリッジ104をトラック102に沿って移動させることによって、結合ディスク212を駆動ディスクに極めて接近させることができる。
【0048】
マンドレル224は、マンドレル224の角度位置、ひいてはマンドレル224に保持された物体の角度位置を推測するのに使用可能な符号化された情報をその表面に有するエンコーダリング220を備える。固定読取ヘッド218が、トラック102に対する一定の位置に別個に取り付けられ、一般に駆動装置との結合によってマンドレルが回転する処理ステーションに位置する。読取ヘッド218は、エンコーダリング220が読取ヘッド218と整列するトラック102上の位置にキャリッジ104があるときに、エンコーダリング220で符号化された角度位置データを読み取り、情報を制御装置110に提供するように構成される。このプロセスは
図6を参照してより詳細に説明される。
【0049】
マンドレル224は、キャリッジ104の結合ディスクと反対側に印刷対象の物体108を保持するための保持装置210を備える。
【0050】
保持装置210は、支持インサート、内部若しくは外部固定クリップ、頸部保持チャック、又は印刷対象の物体108を保持するように適合されたその他の装置であってよい。好ましくは、保持装置210は、不都合な移動ケーブル配線、配管、接点、スリップリングなどが必要となる、キャリッジ104が移動している間に物体を保持するためのキャリッジ104との電気的若しくは空気圧による制御又は電力接続を必要としない。
【0051】
図2に示す物体108は円筒形の容器であるが、物体は、これらに限定されないが、首のある又は首のない一体構造容器、缶、瓶、管、ポット、カップ又は他の容器又は蓋(例えばワインの瓶のねじ蓋)を含む様々な物体でよいことを理解されたい。物体は、金属、被覆金属、あらかじめ印刷された材料、プラスチック、紙、カードなどの材料を含んでよい。印刷対象物体は円筒形であることが好ましいが、他の形状を有してもよい。
【0052】
図3は、3つの運搬装置104が3つの駆動装置310に結合されたシステムを示す。
【0053】
この実施例では、3つの駆動装置310は、1つのモータ312から2つのベルトを使用して駆動される。一般に、1つのモータ312は、ベルト、ギア、又はそのような他の連結機構を使用して任意の数の駆動装置を駆動することができる。一部の実施形態において、駆動装置310はそれぞれ独自の個別のモータ312によって独立に駆動されてよい。
【0054】
駆動装置310は、トラック102上のある点に隣接して配置された処理ステーションに位置する。各駆動装置310は別個の処理ステーション106に位置してよい、又は、駆動装置310は複数の物体を同時に処理することができる1つの処理ステーション106に位置してよい。
【0055】
運搬装置104の駆動装置310への結合は、運搬装置104がトラックに沿って駆動装置の近くに移動するときに行われる。操作装置224の軸が、駆動装置310がトルクを与える軸と同軸になる駆動位置に運搬装置104が到達するとき、回転可能な操作装置224は駆動装置により係合され、強制的に回転する。
【0056】
図3のシステムでは、各駆動装置310は、駆動シャフト316がその軸の周りを回転できるようにする駆動ベアリング318に取り付けられた駆動シャフト316を備える。駆動シャフト316は、駆動シャフト316を回転駆動させるトルクを与えるモータ312に結合される。
【0057】
駆動シャフトの一端には操作装置の結合ディスク212と結合するように設計された駆動ディスク314が取り付けられる。駆動装置310の軸は、トラック102の方向に対して垂直に配向される。駆動装置310及び操作装置の正確な配向は、運搬装置104が駆動装置310の近くに移動したときに操作装置104の結合ディスク212と駆動装置310の駆動ディスク314とが向かい合う関係で互いに接近するように構成される。駆動ディスク314と結合ディスク212の間の結合トルクは、結合ディスク212の運動を駆動ディスク314の運動と同期させる。
【0058】
駆動ディスク314と結合ディスク212の間の回転運動の結合は、選ばれた処理/印刷速度で角速度を与える複数の機構によって行われてよい。
【0059】
一部の実施形態において、結合機構は機械的であり、ギア、クラッチ又は摩擦ホイールの形態をとってよい。結合機構のその他の例は、(
図4を参照して考察される)電磁結合装置及び(
図5を参照して考察される)永久磁石結合装置である。
【0060】
図4は、駆動装置310及び運搬装置104の一実施例を概略的に示しており、駆動装置310と結合ディスク212は互いに電磁的に係合するように構成される。この実施形態では、駆動装置310は回転せず、その代わりに回転磁場を生成する。結合ディスク212は、結合ディスク212が駆動装置310と整列したときに、結合ディスク212を磁場によって回転させる回転磁場による力を受ける磁気素子を有する。
【0061】
回転磁場は、適切な位相の交流電流で通電される適切に配置された1セットの電磁コイル410によって生成できることが知られている。コイル410間の位相差は、回転速度が交流電流の周波数によって決定され、方向が電流の相対的な位相順によって決定される回転磁場を生成する。そのような駆動装置を動作させることは、上記のようにコイルを電流で駆動することを必然的に伴う。
【0062】
図5は、駆動装置310及び運搬装置104の一実施例を示しており、駆動ディスク314と結合ディスク212は、各ディスクの接面に配設された磁気素子の相互作用によって互いに係合するように構成される。
【0063】
図5に示す実施例では、駆動ディスク314及び結合ディスク212は非磁性材料で作られる。ディスクのそれぞれは、ディスクの接面に相互補完的なパターンで挿入された永久磁石710A、710Bを有する。キャリッジが処理ステーションに到着して2つのディスクの軸が一致したとき、駆動ディスク314の永久磁石710Aと結合ディスク212の永久磁石710Bは互いに引かれ合う。これによって、回転可能なマンドレル224に配設された結合ディスク212が回転して駆動ディスク314と整合し、その結果、結合ディスク212の回転が駆動ディスク314の回転に同期される。
【0064】
図4に示した電磁結合による実施形態と同様に、この実施形態の回転結合は、結合ディスク212の永久磁石に作用する磁場によって生じた力から生じる。ただし、
図4の実施形態と異なり、この実施形態の駆動ディスク314はそれ自体が、結合ディスク212の回転に必要な速度と同じ角速度で回転する。駆動ディスク314の回転は、モータ312又は他のそのような駆動機構によってもたらされる。駆動機構は、各処理ステーションに取り付けられた個別のドライブ、又はベルトやギアなどによって複数の処理ステーションに結合された共通のドライブであってよい。この駆動装置を動作させることは、上記のように駆動ディスクを回転させることを必然的に伴う。
【0065】
上記の駆動装置は連続動作する、又は例えば操作装置と位置が合ったときなどに必要に応じて動作することができる。
【0066】
操作装置224は、駆動装置310と係合するより前に、駆動装置310に近づくときに必要な方向に回転しているように予回転されてよい。これにより結合ディスクの駆動装置310への結合プロセスが加速される。予回転は、キャリッジがトラックに沿って駆動装置310方向に移動するとき、結合ディスク212の周面を固定レール又はパッド(図示せず)と接線方向に係合させ、結合ディスク212をその軸を軸として回転させることによって行われてよい。
【0067】
さらに、操作装置224は、キャリッジ104がトラックに沿って移動するとき、結合ディスク212のトラックと並行に取り付けられたレールとの回転接触によって回転してよい。結合ディスク212は、キャリッジがトラックに沿って移動するとき、レールとの回転接触によって回転し、これにより操作装置224、ひいては操作装置224が保持する物体を回転させる。そのようなレールは、キャリッジがトラック102に沿って移動するときに、例えば
図1に示した印刷装置の乾燥ステーション106D内で物体を回転させることが望ましいトラック102上のどの位置に取り付けられてもよい。
【0068】
図6は、物体の回転と物体に対して行われているプロセスの同期を確実にするためのエンコーダリング220及びエンコーダ読取ヘッド218の使用を示している。
【0069】
この同期は、物体への歪みのない画像の再現、画像の1つの色分解の他のものに対する正確なレジストレーション、及び物体上の所望の位置への印刷画像の正確な配置を保証するために、印刷プロセスとの関連で特に重要である。
【0070】
印刷プロセスを物体の回転と同期させるために、物体のリアルタイムの角度位置データがプリントヘッドを動作させる制御システムにより求められる。
【0071】
図6の実施形態では、各操作装置はインクリメンタルエンコーダストリップ又はリング220を備える。ストリップ又はリング220は、電気的接続が不要な受動素子であり、物体運搬装置への電気的接続を必要とせずに操作装置の回転可能なシャフトに簡単に取り付けることができる。
【0072】
駆動装置上に又は駆動装置の近くに、運搬装置が処理ステーションの駆動位置にあるときにエンコーダリング220を読み取り、これによって運搬装置が保持している物体の角度位置を決定するように構成された光読取ヘッド218が設けられる。読取ヘッド218を静止した場所に設けることは、読取ヘッドが移動可能である場合に設けることがより複雑になるであろう電気的接続が読取ヘッド218には必要であるために有利である。
【0073】
図6に示す実施形態では、2つの処理ステーション106G及び106Hが設けられる。各処理ステーションは、独自の読取ヘッド218A及び218Bを備える。2つの操作装置はそれぞれエンコーダリング220A及び220Bを備える。
図6に示す位置では、第1の操作装置のエンコーダリング220Aは、第1の処理ステーション106Gの読取ヘッド218Aによって読み取られている。したがって、第1の処理ステーション106Gで行われるプロセスは、読取ヘッド218Aが測定した物体の位置と同期することができる。
【0074】
第2の構成(図示せず)において、第1の操作装置は第2の処理ステーション106Hに移動してよく、一方第2の操作装置は第1の処理ステーション106Gに移動する。この第2の構成では、第1の読取ヘッド218Aは第2のエンコーダリング220Bの位置を測定し、第2の読取ヘッド218Bは第1のエンコーダリング220Aの位置を測定する。
【0075】
それぞれが複数の可動物体の回転方向を測定することができる固定読取ヘッド218を使用することによって、角度位置エンコーダが一連のプロセスを通じて所定の物体と関連付けられる既知のシステムと比較して簡易な装置が提供される。
【0076】
固定読取ヘッドを使用することによって、所定の処理ステーションにあるプロセスコントローラに、装置内を進むときに処理ステーション間で特定の物体運搬装置と永久的に関連付けられたデータを交換する必要なく、現在そのステーションにおいて必要な物体の位置に関するリアルタイムデータが自動的に提供される。さらに、処理ステーションにおいて物体の角度位置を読み取るための、物体運搬装置との電力接続又はデータ接続の必要性がなくなる。
【0077】
印刷ステーションにあるキャリッジ上のエンコーダリングから読み取りを行う固定読取ヘッドの構成は、エンコーダリングが印刷の行われている物体と同じ直径である場合、印刷ステーションにあるキャリッジの線形位置誤差を自動的に補正する。これは、小さな並進誤差、すなわち物体の軸をプリントヘッドに対して移動させ、そうでなければ印刷レジストレーションエラーを引き起こすトラックに沿った移動が、エンコーダリングの回転と同じように同じ接線距離だけ読取ヘッドに現れるからである。したがって、印刷ステーションにおけるキャリッジ位置の小さな並進誤差から印刷レジストレーションエラーは生じない。
【0078】
適切なエンコーダシステムの一例は、共にRenishaw社製のTONiC(商標)光読取ヘッドとRESMロータリーエンコーダリングの組み合わせである。角度位置エンコーダのその他のタイプも本発明の範囲内で可能である。別の例は、同じくRenishaw社製のVIONiC(商標)読取ヘッドである。
【0079】
このタイプの読取ヘッドは一般に、信頼できる動作を提供するために維持されなければならない、読取ヘッドとエンコーダリングの間の作動距離に関する厳しい許容値(VIONiC読取ヘッドの場合、2.10±0.15mm)を有する。キャリッジ間の機械的変動がこの許容値を超える可能性がある装置では、このような読取ヘッドを機械的「フォロワ」機構に取り付けて各キャリッジ104上の読取ヘッド218からエンコーダリング220までの距離を一定に保つことが有利である。これは、例えばエンコーダリング220の表面に向かって軽く跳ね、この表面に垂直な方向に移動可能な小さなリニアスライドであって、キャリッジ104が処理ステーションに位置するときに結合ディスク212の周面に乗る小さなホイールをその先端に有するリニアスライドを備えてよい。結合ディスク212はエンコーダリング220と隣接し、同心であるため、読取ヘッド218のエンコーダリング220に対する高さを所要の許容値内に維持するためのフォロワが乗る基準面を提供する。