(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】抗PD-1抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220513BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220513BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220513BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220513BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220513BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220513BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220513BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220513BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220513BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220513BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220513BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220513BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220513BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220513BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220513BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20220513BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20220513BHJP
A61K 51/02 20060101ALI20220513BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220513BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
C07K16/46
C07K16/28
C12P21/08
A61K39/395 C
A61K39/395 E
A61K39/395 L
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/68
A61K51/10 200
A61K49/00
A61K51/02 100
G01N33/574 A
G01N33/574 D
G01N33/48 P
(21)【出願番号】P 2019536459
(86)(22)【出願日】2017-09-09
(86)【国際出願番号】 US2017050851
(87)【国際公開番号】W WO2018052818
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-08
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519093229
【氏名又は名称】シャンハイ・ヘンリウス・バイオテック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENLIUS BIOTECH, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ジアン・ウェイドン
(72)【発明者】
【氏名】リン・ペイ-ホア
(72)【発明者】
【氏名】ツェン・チー-リン
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/077397(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0159905(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)アミノ酸配列KASQDVTTAVA(配列番号9)を含むCDR-L1;(2)アミノ酸配列WASTRHT(配列番号10)を含むCDR-L2;及び(3)アミノ酸配列QQHYTIPWT(配列番号11)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(V
L)配列と、
(1)アミノ酸配列FTFSNYGMS(配列番号12)を含むCDR-H1;(2)アミノ酸配列TISGGGSNIY(配列番号13)を含むCDR-H2;及び(3)アミノ酸配列VSYYYGIDF(配列番号14)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(V
H)配列と
を含む、
抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号8に定めるアミノ酸配列、および配列番号6に定めるアミノ酸配列を含む軽鎖配列を含む、請求項1に記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
配列番号4に定めるアミノ酸配列を含む重鎖配列、および配列番号2に定めるアミノ酸配列を含む軽鎖配列を含む、請求項1に記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
抗体が、ヒトIgGのFc配列を含む、
請求項1-
3のいずれか一つに記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab)’
2、単鎖Fv(scFv)、Fv断片、ダイアボディ、及び直線状の抗体からなる群から選択される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
抗体が、多重特異性抗体である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
治療剤にコンジュゲートされている、請求項1~
6のいずれか一項に記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
標識にコンジュゲートされている、請求項1~
7のいずれか一項に記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
標識が、放射性同位体、蛍光色素、及び酵素からなる群から選択される、請求項
8に記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子。
【請求項11】
請求項1
0に記載の核酸分子をコードする発現ベクター。
【請求項12】
請求項1
1に記載の発現ベクターを含む細胞。
【請求項13】
請求項1
2に記載の細胞を培養することと、細胞培養物から抗体を回収することとを含む、抗PD-1抗体又はその抗原結合断片を製造する方法。
【請求項14】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片、及び薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項15】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片を、患者から得たサンプルと接触させること、及びPD-1タンパク質に結合した抗PD-1抗体を検出することにより、サンプル中のPD-1タンパク質を検出する方法。
【請求項16】
抗PD-1抗体又はその抗原結合断片が、免疫組織化学アッセイ(IHC)又はELISAアッセイで使用される、請求項1
5に記載の方法。
【請求項17】
対象内のがんの治療における使用のための、請求項1
4に記載の組成物。
【請求項18】
がんが、メラノーマ、NSCLC、頭頸部がん、尿路上皮がん、三重陰性乳がん(TNBC)、胃がん、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫である原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣がん、肺がん、食道がん、鼻咽頭癌(NPC)、胆道がん、結腸直腸がん、乳がん、子宮頸がん、甲状腺がん、及び唾液腺がんからなる群から選択される、請求項
17に記載の組成物。
【請求項19】
対象が、抗悪性腫瘍剤、化学療法剤、増殖阻害剤、及び細胞毒性剤からなる群から選択される治療剤を更に投与される、請求項
18に記載の組成物。
【請求項20】
対象が、放射線療法を更に投与される、請求項
19に記載の組成物。
【請求項21】
対象が、VEGF、VEGFR2、又はEGFRに対する治療用抗体を更に投与される、請求項
18に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
このPCT国際出願は、2016年9月16日出願の米国仮特許出願第62/395,832号の利益及び優先権を主張する。このPCT国際出願は、2017年6月14日出願の米国仮特許出願第62/519,590号の利益及び優先権についても主張する。これら出願の各記載内容は、本明細書により参照として組み込まれている。
【0003】
本発明は、抗PD-1抗体、及びヒトがんの治療におけるその使用方法と一般的に関連する。
【背景技術】
【0004】
プログラム死-1(PD-1)は、活性化T及びB細胞により発現される重要な免疫チェックポイント受容体であり、また免疫抑制を媒介する。PD-1は、CD28、CTLA-4、ICOS、PD-1、及びBTLAを含むCD28受容体ファミリーのメンバーである。PD-1に対する2つの細胞表面糖タンパク質リガンド、プログラム死リガンド-1(PD-L1)及びプログラム死リガンド-2(PD-L2)が同定されているが、これらは抗原提示細胞並びに多くのヒトがんにおいて発現しており、PD-1に結合するとT細胞の活性化及びサイトカイン分泌を下方制御することが明らかにされている(Freeman et al., 2000; Latchman et al., 2001)。CTLA-4とは異なり、PD-1は、活性化T細胞が、腫瘍及び/又は間質細胞により発現される免疫抑制的なPD-L1(B7-H1)及びPD-L2(B7-DC)リガンドに遭遇する可能性がある周辺組織において主に機能する(Flies et al., 2011; Topalian et al., 2012a)。PD-1/PD-L1相互作用を阻害すると、前臨床モデルにおいて強力な抗腫瘍活性を引き起こし(米国特許第8,008,449号及び同第7,943,743号)、そしてがん治療を目的としたPD-1/PD-L1相互作用に対するAb阻害剤の使用について臨床トライアルが開始された(Brahmer et al., 2010; Flies et al., 2011; Topalian et al., 2012b; Brahmer et al., 2012)。
【0005】
PD-1を標的とする抗がん治療薬の開発に対する必要性が存在する。本発明はこれ及びこれ以外の必要性を満たす。
【発明の概要】
【0006】
抗PD-1抗体及び/又はその抗原結合断片が本発明により提供される。特定の実施形態では、本発明の抗PD-1抗体は、(1)アミノ酸配列KASQDVTTAVA(配列番号9)を含むCDR-L1;(2)アミノ酸配列WASTRHT(配列番号10)を含むCDR-L2;及び(3)アミノ酸配列QQHYTIPWT(配列番号11)を含むCDR-L3を含む軽鎖(LC)可変ドメイン配列と、(1)アミノ酸配列FTFSNYGMS(配列番号12)を含むCDR-H1;(2)アミノ酸配列TISGGGSNIY(配列番号13)を含むCDR-H2;及び(3)アミノ酸配列VSYYYGIDF(配列番号14)を含むCDR-H3を含む重鎖(HC)可変ドメイン配列とを含むキメラ抗PD-1抗体であるc1G4及び/又はヒト化抗PD-1であるh1G4である。
【0007】
本発明は、ヒト化抗PD-1抗体であるh1G4に対する親和性成熟型抗体を更に提供する。特定の実施形態では、本発明の成熟型抗PD-1抗体(例えば、抗PD-1抗体、33B)は、(1)アミノ酸配列KASTDVTTAVA(配列番号15)を含むCDR-L1;(2)アミノ酸配列WASLRHT(配列番号16)を含むCDR-L2;及び(3)アミノ酸配列QQHYGIPWT(配列番号17)を含むCDR-L3を含む軽鎖(LC)可変ドメイン配列と、(1)アミノ酸配列FRFSNYGMS(配列番号18)を含むCDR-H1;(2)アミノ酸配列TISGGGSNAY(配列番号19)を含むCDR-H2;及び(3)アミノ酸配列TSYYYGIDF(配列番号20)を含むCDR-H3を含む重鎖(HC)可変ドメイン配列とを含む。
【0008】
その他の実施形態では、本発明の成熟型抗PD-1抗体(例えば、抗PD-1抗体、66E)は、(1)アミノ酸配列KAKQDVTTAVA(配列番号21)を含むCDR-L1;(2)アミノ酸配列WASTRHT(配列番号10)を含むCDR-L2;及び(3)アミノ酸配列QQHYWIPWT(配列番号22)を含むCDR-L3を含む軽鎖(LC)可変ドメイン配列と、(1)アミノ酸配列FTFSNYGMS(配列番号12)を含むCDR-H1;(2)アミノ酸配列TISGGGSNIY(配列番号13)を含むCDR-H2;及び(3)アミノ酸配列VSYYYGIDL(配列番号23)を含むCDR-H3を含む重鎖(HC)可変ドメイン配列とを含む。
【0009】
特定の実施形態では、本発明の成熟型抗PD-1抗体(例えば、抗PD-1抗体、711D)は、(1)アミノ酸配列KASQDVTNAVA(配列番号24)を含むCDR-L1;(2)アミノ酸配列WASTRHT(配列番号10)を含むCDR-L2;及び(3)アミノ酸配列QQHYTIPWT(配列番号11)を含むCDR-L3を含む軽鎖(LC)可変ドメイン配列と、(1)アミノ酸配列FTFSNYGMS(配列番号12)を含むCDR-H1;(2)アミノ酸配列TISGGGSNIY(配列番号13)を含むCDR-H2;及び(3)アミノ酸配列SSYYYGIDL(配列番号25)を含むCDR-H3を含む重鎖(HC)可変ドメイン配列とを含む。
【0010】
本明細書に記載するCDRの配列を、下記の表1に提示する。
【0011】
【0012】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、(1)配列番号9、21、及び24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-L1;(2)配列番号10又は16のアミノ酸配列を含むCDR-L2;(3)配列番号11、17、22からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖(LC)可変ドメイン配列と、(1)配列番号12又は18のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(2)配列番号13又は19のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(3)配列番号14、20、23、及び25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖(HC)可変ドメイン配列とを含む。
【0013】
(配列番号4)に定めるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン配列と、(配列番号2)に定めるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン配列とを含む抗PD-1抗体又はその抗原結合断片も本発明により提供される。
【0014】
(配列番号8)に定めるアミノ酸配列と、(配列番号6)に定めるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン配列とを含むヒト化抗PD-1抗体又はその抗原結合断片も本発明により提供される。
【0015】
上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgGのFc配列を含む。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)’2、単鎖Fv(scFv)、Fv断片、ダイアボディ、及び直線状の抗体からなる群から選択される。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、抗体は多重特異性抗体である。
【0016】
上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体又はその抗原結合断片は、治療剤にコンジュゲートされている。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体又はその抗原結合断片は、標識にコンジュゲートされている。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、標識は、放射性同位体、蛍光色素、及び酵素からなる群から選択される。
【0017】
本発明は、上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)抗PD-1抗体又はその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子を提供する。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)核酸分子をコードする発現ベクターも提供される。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)発現ベクターを含む細胞も提供される。本発明は、上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)細胞を培養することと、細胞培養物から抗体又はその抗原結合断片を回収することとを含む、抗体を製造する方法も提供する。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞はCHO細胞である。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、細胞は安定な哺乳動物細胞株である。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、安定な哺乳動物細胞株はCHO細胞株である。
【0018】
本発明は、上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)抗PD-1抗体又はその抗原結合断片を含む組成物及び薬学的に許容される担体を提供する。
【0019】
本発明は、上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)抗PD-1抗体又はその抗原結合断片を患者から得たサンプルと接触させること、及びPD-1タンパク質に結合した抗PD-1抗体を検出することにより、そのサンプル中のPD-1タンパク質を検出する方法を提供する。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体又はその抗原結合断片は、免疫組織化学アッセイ(IHC)又はELISAアッセイにおいて使用される。
【0020】
有効量の上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)組成物を対象に投与することを含む、対象におけるがんを治療する方法も提供される。がんの治療で使用される、上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)抗PD-1抗体又はその抗原結合断片を含む組成物も提供される。がんを治療するための医薬の製造における上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)抗PD-1抗体又はその抗原結合断片の使用が提供される。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、がんは、メラノーマ、頭頸部がん、尿路上皮がん、乳がん(例えば、三重陰性乳がん、TNBC)、胃がん、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫である原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣がん、肺がん(例えば、小細胞性肺がん及び非小細胞性肺がん(NSCLC)、食道がん、鼻咽頭癌(NPC)、胆道がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、甲状腺がん、及び唾液腺がんから選択される。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、対象は、抗悪性腫瘍剤、化学療法剤、増殖阻害剤、及び細胞毒性剤からなる群から選択される治療剤が更に投与される。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、対象は、放射線療法が更に投与される。上記実施形態のいずれかに基づく(又はそれに適用される)いくつかの実施形態では、対象は、VEGF、VEGFR2、又はEGFRに対する治療用抗体が更に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A~1B。c1G4のPD-1組換えタンパク質に対する結合。
図1Aは、抗PD-1抗体であるc1G4及び参照抗PD-1のPD-1-Hisに対する結合を比較するために実施したELISAの結果を示す。
図1Bは、抗PD-1抗体であるc1G4及び参照抗PD-1のPD-1-APに対する結合を比較するために実施した第2セットのELISAの結果を示す。c1G4及び参照抗PD-1はPD-1-His及びPD-1-APのいずれにも結合することができことをデータは示唆する。
【0022】
図2A~2B。PD-1リガンドに対する結合におけるc1G4のブロッキング及び競合。
図2Aは、抗PD-1抗体であるc1G4及び参照抗PD-1がPD-L1とPD-1との結合をブロックする能力を比較するために実施したELISAの結果を示す。c1G4及び参照抗PD-1のいずれも、PD-1に対するPD-L1の結合をブロックすることが見出された。
図2Bは、抗PD-1抗体であるc1G4が、PD-1-Hisとの結合において、参照抗PD-1と競合する能力を確認するために実施したELISAの結果を示す。c1G4及び参照抗PD-1のいずれも、PD-1に対するPD-L1の結合をブロックすることができること、及びc1G4はPD-1-Hisとの結合において、抗PD-1(参照)と競合することができることをデータは示唆する。
【0023】
図3A~3B。c1G4のPD-1発現CHO-S細胞に対する結合。c1G4抗体のCHO-S細胞(
図3A)、及びPD-1トランスフェクトCHO-S細胞(
図3B)に対する結合をフローサイトメトリーにより試験した。参照抗PD-1及び抗PD-L1抗体を陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。c1G4は、ヒトPD-1をトランスフェクトしたCHO細胞に結合したが、しかし非トランスフェクトCHO細胞には結合しなかったことをデータは示唆する。
【0024】
図4。リガンドのPD-1に対する結合の、選択されたc1G4抗体によるブロッキング。フローサイトメトリーアッセイを使用して、リガンドPD-L1がPD-1発現CHO-S細胞に結合するのをブロックする能力について、抗PD-1であるc1G4を試験した。参照抗PD-1及び抗PD-L1抗体を、陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。染色の平均蛍光強度(MFI)により測定されるように、抗PD-1モノクロナール抗体であるc1G4は、PD-L1のPD-1トランスフェクトCHO-S細胞に対する結合をブロックした。抗PD-1であるc1G4はPD-L1リガンドの細胞表面PD-1に対する結合をブロックすることをこのデータは実証する。
【0025】
図5A~5B。混合白血球反応(MLR)において、抗PD-1であるc1G4がサイトカイン産生に及ぼす効果。ヒトPD-1に対するモノクロナール抗体であるc1G4は、混合白血球反応アッセイにおいてIFN-γ分泌及びIL-2分泌を促進する。参照抗PD-1及びアバスチン(Avastin)(抗VEGF)を、陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。
図5Aは、濃度依存性IL-2分泌を示す棒グラフについて説明する;
図5Bは、濃度依存性IFN-γ分泌を示す棒グラフについて説明する。
【0026】
図6。混合白血球反応(MLR)において、抗PD-1であるc1G4がT細胞増殖に及ぼす効果。ヒトPD-1に対するモノクロナール抗体であるc1G4は、混合白血球反応アッセイにおいて、CD4
+及びCD8
+T細胞増殖を促進する。参照抗PD-1及びアバスチン(抗VEGF)を、陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。
図6Aは、様々な抗体濃度におけるCD4
+T細胞増殖を示す棒グラフについて説明する;
図6Bは、様々な抗体濃度におけるCD8
+T細胞増殖を示す棒グラフについて説明する。
【0027】
図7。c1G4抗体の腫瘍増殖阻害活性。ヒト結腸がん細胞株HT29と新鮮分離したヒトPBMCとの混合物(がん細胞:PBMC=2:1)を、マウス(n=4匹/群)の皮下に移植した。抗PD-1抗体を、1日目から1週間に2回、マウスの腹腔内に注射した。腫瘍増殖曲線を
図7Aに示した。28日目における個々の腫瘍容量を
図7Bに示した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。
【0028】
図8。c1G4及びh1G4に関する配列アラインメント。
図8Aは、c1G4、ヒト化h1G4の軽鎖、ヒト生殖細胞系列軽鎖可変領域IGKV1-39
*01、及びニボルマブ(NIV)の軽鎖のアミノ酸配列アライメントを示す。
図8Bは、c1G4、ヒト化h1G4の重鎖、ヒト生殖細胞系列重鎖可変領域IGHV3-11
*04、及びニボルマブ(NIV)の重鎖のアミノ酸配列アライメントを示す。ヒト化のためにc1G4からグラフティングしたCDR(相補性決定領域)を太字及び下線付きの文字で表わす。
【0029】
図9。ヒト化抗PD-1抗体のPD-1発現CHO-S細胞に対する結合。ヒト化h1G4及びオリジナルのc1G4抗体について、それらと細胞表面上のPD-1との結合をフローサイトメトリーにより試験した。参照抗PD-1及び抗PD-L1抗体を、陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。
【0030】
図10。ヒト化h1G4抗体による、リガンドのPD-1に対する結合のブロッキング。フローサイトメトリーアッセイを使用して、リガンドのPD-L1がPD-1発現CHO-S細胞に結合するのをブロックする能力について、ヒト化抗PD-1であるh1G4を試験した。参照抗PD-1及び抗PD-L1抗体を、陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。染色の平均蛍光強度(MFI)により測定されるように、c1G4及びh1G4のいずれも、PD-L1のPD-1トランスフェクトCHO-S細胞に対する結合をブロックした。
【0031】
図11A~11Dは、ヒト(
図11A)、カニクイザル(
図11B)、マウス(
図11C)、及びラット(
図11D)のPD-1タンパク質に対するh1G4の種交差反応性を示す。すべてのデータポイントは三重測定の平均値±SDである。
【0032】
図12。ヒト化抗PD-1抗体の活性化ヒトT細胞に対する結合。ヒト化h1G4のヒトT細胞に対する結合をフローサイトメトリーにより試験した。参照抗PD-1抗体及びアバスチン(抗VEGF)を、陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。
【0033】
図13。混合白血球反応(MLR)において、h1G4がサイトカイン産生に及ぼす効果。ヒトPD-1に対するヒト化抗体であるh1G4は、混合白血球反応アッセイにおいてIFN-γ分泌及びIL-2分泌を促進する。参照抗PD-1抗体及びアバスチン(抗VEGF)を、陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。
図13Aは、濃度依存性IL-2分泌を示す棒グラフについて説明する;
図14Bは、濃度依存性IFN-γ分泌を示す棒グラフについて説明する。
【0034】
図14。混合白血球反応(MLR)において、h1G4がT細胞の増殖に及ぼす効果。ヒトPD-1に対するヒト化抗体であるh1G4は、混合白血球反応アッセイにおいてCD4
+及びCD8
+T細胞増殖を促進する。参照抗PD-1抗体及びアバスチン(抗VEGF)を、陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。
図14Aは、様々な抗体濃度におけるCD4
+T細胞増殖を示す棒グラフについて説明する;
図14Bは、様々な抗体濃度におけるCD8
+T細胞増殖を示す棒グラフについて説明する。
【0035】
図15。HT29/PBMC異種移植モデルにおけるh1G4抗体の腫瘍増殖阻害活性。ヒト結腸がん細胞株HT29と新鮮分離したヒトPBMCとの混合物(がん細胞:PBMC=3:1)を、マウス(n=4匹/群)の皮下に移植した。抗PD-1抗体を、1日目から1週間に2回、マウスの腹腔内に注射した。腫瘍増殖曲線を
図15Aに示した。21日目における個々の腫瘍容量を
図15Bに示した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。
【0036】
図16。NCI-H292/PBMC異種移植モデルにおけるh1G4抗体の腫瘍増殖阻害活性。ヒトNSCLC細胞株NCI-H292と新鮮分離したヒトPBMCとの混合物(がん細胞:PBMC=3:1)を、マウス(n=4匹/群)の皮下に移植した。抗PD-1抗体を、1日目から1週間に2回、マウスの腹腔内に注射した。腫瘍増殖曲線を
図16Aに示した。25日目における個々の腫瘍容量を
図16Bに示した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。
【0037】
図17。hPD1 KIマウスにおけるh1G4抗体の腫瘍増殖阻害活性。MC38-huPD-L1(ヒトPD-L1をトランスフェクトしたMC38)細胞を、ヒトPD-1ノックイン(hPD1 KI)マウス(n=4匹/群)の皮下に移植した。腫瘍容量が約75mm
3に達したときに、抗体治療を開始した。抗PD-1抗体を、1週間に2回、マウスの腹腔内に注射した。すべてのデータポイントは、平均値±SDである。
【0038】
図18。ヒト化NSGマウスを対象とする三重陰性乳がん(TNBC)細胞株異種移植モデルにおけるh1G4の有効性試験。MDA-MB-231細胞を、ヒト化NSGマウス(n=9匹/群)の皮下にイノキュレーションした。腫瘍容量が約60~150mm
3に達したときに、抗体治療を開始した。投与日を矢印で示す。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。
【0039】
図19。混合白血球反応(MLR)において、ヒト抗PD-1抗体がサイトカイン産生に及ぼす効果。ヒトPD-1に対するヒトモノクロナール抗体は、混合白血球反応アッセイにおいて、IFN-γ分泌及びIL-2分泌を促進する。参照抗PD-1抗体及びアバスチン(抗VEGF)を、陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。
図19Aは、濃度依存性IL-2分泌を示す棒グラフについて説明する;
図19Bは、濃度依存性IFN-γ分泌を示す棒グラフについて説明する。
【0040】
図20。HT29/PBMC異種移植モデルにおけるヒト抗PD-1抗体の腫瘍増殖阻害活性。ヒト結腸がん細胞株HT29と新鮮分離したヒトPBMCとの混合物(がん細胞:PBMC=3:1)を、マウス(n=4匹/群)の皮下に移植した。抗PD-1抗体を、1日目から1週間に2回、マウスの腹腔内に注射した。腫瘍容量を1週間に2回測定した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。
【0041】
図21。HT29/PBMC異種移植モデルにおける抗PD-1と抗VEGFモノクロナール抗体の併用。ヒト結腸がん細胞株HT29と新鮮分離したヒトPBMCとの混合物(がん細胞:PBMC=3:1)を、マウス(n=4匹/群)の皮下に移植した。抗PD-1mAb、抗VEGFmAb(HLX04)、又は抗PD-1mAb+抗VEGFmAbを、マウスの腹腔内に注射した。投与日を矢印で示す。腫瘍容量を1週間に2回測定した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。
【0042】
図22。NSCLC異種移植マウスモデルにおける抗PD-1mAb+抗VEGFmAbの腫瘍増殖阻害活性。ヒトNSCLC細胞NCI-H292と新鮮分離したヒトPBMCとの混合物(がん細胞:PBMC=3:1)を、マウス(n=4匹/群)の皮下に移植した。抗PD-1(h1G4)及び抗VEGF(HLX04)抗体を、1日目から1週間に2回、マウスの腹腔内に注射した。腫瘍増殖曲線を
図22Aに示した。21日目における個々の腫瘍容量を
図22Bに示した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。
【0043】
図23。NSCLC異種移植マウスモデルにおける抗PD-1mAb+抗VEGFR2mAbの腫瘍増殖阻害活性。ヒトNSCLC細胞NCI-H292と新鮮分離したヒトPBMCとの混合物(がん細胞:PBMC=3:1)を、マウス(n=4匹/群)の皮下に移植した。抗PD-1(h1G4)及び抗VEGFR2(HLX06)抗体を、第1日目から1週間に2回、マウスの腹腔内に注射した。腫瘍増殖曲線を
図23Aに示した。21日目における個々の腫瘍容量を
図23Bに示した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。
【0044】
図24。NSCLC異種移植マウスモデルにおける抗PD-1mAb+抗EGFRmAbの腫瘍増殖阻害活性。ヒトNSCLC細胞NCI-H292と新鮮分離したヒトPBMCとの混合物(がん細胞:PBMC=3:1)を、マウス(n=4匹/群)の皮下に移植した。抗PD-1(HLX10)及び抗EGFR(HLX07)抗体を、第1日目から1週間に2回、マウスの腹腔内に注射した。腫瘍増殖曲線を
図24Aに示した。21日目における個々の腫瘍容量を
図24Bに示した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。
【0045】
図25。HT-29(KRAS
WT、BRAF
V600E)異種移植マウスモデルにおける抗PD-1mAb+抗EGFRmAbの腫瘍増殖阻害活性。ヒト結腸がん細胞HT-29と新鮮分離したヒトPBMCとの混合物(がん細胞:PBMC=3:1)を、マウス(n=5匹/群)の皮下に移植した。抗PD-1(HLX10)及び抗EGFR(HLX07)抗体を、第1日目から1週間に2回、マウスの腹腔内に注射した。腫瘍増殖曲線を
図25Aに示した。21日目における個々の腫瘍容量を
図25Bに示した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、新規の抗PD-1抗体及び/又はその抗原結合断片を提供する。本発明者らは、抗PD-1抗体、例えば、本明細書に記載するキメラc1G4及びヒト化h1G4抗体の他、その親和性成熟型抗体、例えば、33B、66E、及び711Dは、T細胞によるIL-2及びIFNγ分泌、並びにCD4+及びCD8+T細胞増殖を増強することを驚くべきことに見出した。本明細書に記載する抗PD-1抗体は、がんを治療するのに使用され、FDAより認可済みのヒト化IgG4抗PD-1モノクロナール抗体であるOPDIVO(登録商標)(ニボルマブ)と比較して、それよりも強化された有効性及び/又は抗腫瘍活性も示す。
【0047】
イムノコンジュゲート、本明細書に記載する新規の抗PD-1抗体をコードする核酸、及び組成物(例えば、医薬組成物等)も提供される。本発明は、サンプル(例えば、インビボ(in vivo)又はエクスビボ(ex vivo)でのサンプル等)中のPD-1を検出するために、新規の抗PD-1抗体を使用する方法、がんの治療で使用されるそのような抗体を含む組成物、及びがんを治療するための医薬の製造におけるそのような抗体の使用も提供する。
【0048】
定義
本明細書で使用する場合、「治療」又は「治療すること」とは、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を取得するアプローチである。本発明の目的に照らせば、有益な又は所望の臨床結果として、下記事項のうちの1つ又は複数が挙げられるが、但しこれらに限定されない:疾患に起因する1つ又は複数の症状を緩和すること、疾患の範囲を縮減すること、疾患を安定化させること(例えば、疾患の悪化を予防又は遅延させること)、疾患の拡散(例えば、転移)を予防又は遅延させること、疾患の再発を予防又は遅延させること、疾患の進行を遅延又は低速化させること、疾患状態を改善すること、疾患の寛解(部分的又は完全)を実現すること、疾患を治療するのに必要とされる1つ又は複数のその他の薬物の投与量を減らすこと、疾患の進行を遅延させること、生活の質を高める又は改善すること、体重増加を増やすこと、及び/又は寿命を延ばすこと。がんの病理学的な結果(例えば、腫瘍容量等)の抑制もまた「治療」に含まれる。本明細書に提示する方法は、治療のこのような側面のうちの1つ又は複数のいずれかについて検討する。
【0049】
用語「再発(recurrence)」、「再発(relapse)」、又は「再発した(relapsed)」とは、疾患が消失したという臨床評価の後のがん又は疾患のぶり返しを意味する。遠隔転移又は局所的再発(local recurrence)の診断は、再発(relapse)と考えることができる。
【0050】
用語「難治性」又は「抵抗性」とは、治療に反応しなかったがん又は疾患を意味する。
【0051】
用語「補助療法」とは、一次治療、通常手術後に行われる治療を意味する。がん又は疾患に対する補助療法として、免疫療法、化学療法、放射線療法、又はホルモン療法を挙げることができる。
【0052】
用語「維持療法」とは、これまでの治療の効果を維持するのに役立つように行われるスケジュール化された再治療を意味する。維持療法は、寛解状態にあるがんを維持するのに役立つように、又は疾患進行を問わず、特定の療法に対する応答を引き延ばすために多くの場合行われる。
【0053】
用語「浸潤がん」とは、それが発現した組織の層を超えて正常な周辺組織に拡散するがんを意味する。浸潤がんは、転移性の場合もあれば、またそうでない場合もある。
【0054】
用語「非浸潤がん」とは、非常に初期のがん又は原発組織を超えて拡散していないがんを意味する。
【0055】
腫瘍学における用語「無増悪生存率」とは、がんが増殖しない治療中及び後の時間の長さを意味する。無増悪生存率には、患者が完全な応答又は部分的な応答を経験した時間の量、並びに患者が安定な疾患を経験した時間の量が含まれる。
【0056】
腫瘍学における用語「進行性疾患」とは、腫瘤の増加又は腫瘍の拡散に起因する、治療開始以降、20パーセントを超える腫瘍の増殖を意味し得る。
【0057】
「障害」は、抗体による治療から利益を得るあらゆる状態である。例えば、PD-1活性異常に罹患している、又はそれを予防する必要のある哺乳動物。これには、哺乳動物を問題とする障害に罹患させる病理学的状態を含む慢性及び急性の障害又は疾患が含まれる。本明細書において治療される障害の非限定的な例として、がん(例えば、頭頸部がん、咽頭がん、結腸直腸がん、肺がん等)が挙げられる。
【0058】
「腫瘍」とは、本明細書で使用する場合、悪性又は良性を問わず、あらゆる新生細胞の成長及び増殖並びにあらゆる前がん性及びがん性の細胞及び組織を意味する。
【0059】
用語「抗体」は広い意味で使用され、天然のポリペプチドに特異的に結合し、及び/又は本発明の生物学的活性若しくは免疫学的活性を示す限り、例えば、単一のモノクロナール抗体(作動薬、拮抗薬、及び中和抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、ポリクロナール抗体、単鎖抗-抗体、及び抗体の断片(下記参照)を特に包含する。1つの実施形態によれば、抗体は、標的タンパク質のオリゴマー形態、例えば、三量体の形態と結合する。別の実施形態によれば、抗体はタンパク質に特異的に結合し、その結合は、本発明のモノクロナール抗体により阻害され得る(例えば、本発明の預託抗体等)。抗体の「機能的断片又は類似体」という慣用句は、その参照先の抗体に共通する定性的な生物学的活性を有する化合物である。例えば、本発明の抗体の機能的断片又は類似体は、PD-1に特異的に結合することができるものであり得る。1つの実施形態では、抗体は、PD-1が細胞の増殖を誘発する能力を阻止する、又は実質的に低下させることができる。
【0060】
「単離された抗体」とは、その天然環境の成分から同定及び分離、及び/又は回収されたものである。その天然環境の汚染成分とは、診断上又は治療上の抗体使用を妨害し、また酵素、ホルモン、及びその他のタンパク質性又は非タンパク質性の溶質を含み得る物質である。好ましい実施形態では、抗体は、(1)ローリー法により決定した場合、抗体の95重量%を上回り、及び最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターの使用により、N末端又は内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を取得するのに十分な程度まで、又は(3)クマシーブルー、又は好ましくは銀染色を使用して、還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEによる均質度まで精製される。抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないであろうから、単離された抗体は、組換え細胞内にインサイチュでの抗体を含む。通常、しかし、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0061】
基本的な4本鎖抗体ユニットは、2本の同一の軽(L)鎖及び2本の同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である(IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドと共に5つの基本的なヘテロ四量体ユニットから構成され、したがって10個の抗原結合部位を備える一方、分泌型IgA抗体は重合して、J鎖と共に2~5個の基本的な4本鎖ユニットを含む多価集合体を形成することができる)。IgGの場合、4本鎖ユニットは、一般的に約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によりH鎖と連結しているが、一方、2本のH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて1つ又は複数のジスルフィド結合により相互に連結している。各H及びL鎖は、規則的間隔が置かれた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)、それに続くα鎖及びγ鎖のそれぞれに対応する3つの定常ドメイン(CH)、並びにμ及びεアイソタイプに対応する4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)、それに続きその他方の末端に定常ドメイン(CL)を有する。VLはVHと一致した位置に配列し、またCLは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と一致した位置に配列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメインの間の界面を形成すると考えられている。VHとVLが一対となって1つの抗原結合部位を共に形成する。抗体の異なるクラスの構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology, 8th edition, Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow (eds.), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, page 71 and Chapter 6を参照。
【0062】
任意の脊椎動物種に由来するL鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づきκ及びλと呼ばれる明確に異なる2タイプのうちの一方に割り振ることができる。その重鎖(CH)の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラス又はアイソタイプに割り振ることができる。α、δ、γ、ε、及びμとそれぞれ命名された重鎖を有する免疫グロブリンの5つのクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在する。γ及びαクラスは、CHの配列及び機能における比較的マイナーな相違に基づいてサブクラスに更に分割され、例えば、ヒトは下記のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2。
【0063】
用語「可変」とは、抗体間の配列において、可変ドメインの特定のセグメントが広範に異なるという事実を意味する。Vドメインは、抗原結合を媒介し、そして特定の抗体がその特定の抗原に対して有する特異性を定義する。但し、可変性は、可変ドメインのアミノ酸110個からなるスパンにおいて均等に分布しているわけではない。むしろ、V領域は、長さがそれぞれ9~12個のアミノ酸である「高度可変領域」と呼ばれる極めて可変性のより短い領域により分離した、15~30個のアミノ酸からなるフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変のストレッチから構成される。天然型の重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFRを含み、概ね3つの高度可変領域により結びつけられたβシート形状を採るが、該高度可変領域は、βシート構造を結びつけ、場合によってはその一部を形成するループを形成する。各鎖内の高度可変領域は、各FRにより接近した状態で共に保持され、そして他方の鎖に由来する高度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)を参照)。定常ドメインは、抗体が抗原に結合する際に直接関係しないが、しかし様々なエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞毒性(ADCC)における抗体の関与等を示す。
【0064】
本明細書で使用する場合、用語「CDR」又は「相補性決定領域」とは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される非連続的な抗原結合部位(antigen combining site)を意味するように意図されている。このような特別な領域は、Kabat et al., J. Biol. Chem. 252:6609-6616 (1977); Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, “Sequences of proteins of immunological interest” (1991); by Chothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987); 及びMacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996)により記載されているが、これらの定義には、相互に比較した場合、アミノ酸残基のオーバーラッピング又はサブセットが含まれる。それにもかかわらず、抗体又はグラフティングされた抗体又はその変異体のCDRを指すためにいずれかの定義を適用するにしても、その適用は本明細書で定義及び使用される用語の範囲内であるように意図されている。上記で引用した参考文献のそれぞれにより定義されるCDRを含むアミノ酸残基を、比較として下記の表2に記載する。
【0065】
【0066】
用語「モノクロナール抗体」とは、本明細書で使用する場合、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量で存在し得る自然発生的な突然変異の可能性を除き同一である。モノクロナール抗体は、特異性が高く、単一の抗原性部位を標的とする。更に、異なる決定要素(エピトープ)を標的とする異なる抗体を含むポリクロナール抗体調製物とは対照的に、各モノクロナール抗体は、抗原上の単一の決定要素を標的とする。その特異性に付加して、モノクロナール抗体は、その他の抗体により汚染されていない状態で合成可能であるという点において有利である。修飾語「モノクロナール」は、任意の特別な方法による抗体産生を必要とするとは解釈されない。例えば、本発明で有用なモノクロナール抗体は、Kohlerら(Nature. 256:495 (1975))により最初に記載されたハイブリドーマ方法により調製可能である、又は細菌細胞、真核動物細胞又は植物細胞において組換えDNA方法を使用して作製され得る(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)。「モノクロナール抗体」は、例えば、Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991), Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)、及び下記の実施例に記載されている技術を使用してファージ抗体ライブラリーからも単離可能である。
【0067】
本明細書のモノクロナール抗体には、それが本発明の生物学的活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来する、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一又は相同である一方、鎖(複数可)の残りの部分は、別の種に由来する、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列、並びにそのような抗体の断片と同一又は相同である「キメラ」抗体が含まれる(米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)を参照)。本明細書の目的とするキメラ抗体には、ヒト以外の霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿等)に由来する可変ドメインの抗原結合配列、及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体が含まれる。
【0068】
「インタクト」抗体は、抗原結合部位、並びにCL及び少なくとも重鎖定常ドメインのCH1、CH2、及びCH3を含む抗体である。定常ドメインは、天然の配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)、又はそのアミノ酸配列変異体であり得る。好ましくは、インタクト抗体は、1つ又は複数のエフェクター機能を有する。
【0069】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部分、好ましくはインタクト抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;直線状の抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]を参照);単鎖抗体分子;並びに複数の抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。表現「直線状の抗体」とは、Zapata et al., Protein Eng., 8(10):1057-1062 (1995)において記載されている抗体を一般的に意味する。手短に述べると、このような抗体は、一対のタンデムなFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含み、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に抗原結合領域の対を形成する。直線状の抗体は、二重特異性又は単一特異性であり得る。
【0070】
抗体をパパイン消化すると、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び容易に結晶化する能力を反映して命名された残りの「Fc」断片が生成する。Fab断片は、L鎖全体と共にH鎖の可変領域ドメイン(VH)、及び一方の重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)から構成される。各Fab断片は、抗原結合に関して一価である、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体をペプシン処理すると、概略的には、二価の抗原結合活性を有し、及び抗原を架橋する能力をなおも有する2つのジスルフィドで連結したFab断片に対応する単一の大型のF(ab’)2断片が得られる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域に由来する1つ又は複数のシステインを含め、CH1ドメインのカルボキシ末端に追加のいくつかの残基を有することから、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)がフリーのチオール基を担持しているFab’に対する本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は、その間にヒンジシステインを有する一対のFab’断片として当初生成した。抗体断片のその他の化学カップリングも公知である。
【0071】
Fc断片は、ジスルフィドにより共に保持されたH鎖の両方のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能はFc領域内の配列により決定され、同領域は、特定の種類の細胞上に見出されるFc受容体(FcR)によって認識される部分でもある。
【0072】
「Fc領域変異体」は、本明細書において定義される少なくとも1つの「アミノ酸修飾」により、天然配列のFc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、Fc領域変異体は、天然配列のFc領域、又は親ポリペプチドのFc領域と比較したとき、天然配列のFc領域内又は親ポリペプチドのFc領域において、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば約1~約10個のアミノ酸置換、及び好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。1つの実施形態では、本明細書におけるFc領域変異体は、天然配列のFc領域と、少なくとも約80%の相同性、少なくとも約85%の相同性、少なくとも約90%の相同性、少なくとも約95%の相同性、又は少なくとも約99%の相同性を有する。別の実施形態によれば、本明細書におけるFc領域変異体は、親ポリペプチドのFc領域と、少なくとも約80%の相同性、少なくとも約85%の相同性、少なくとも約90%の相同性、少なくとも約95%の相同性、又は少なくとも約99%の相同性を有する。
【0073】
用語「Fc領域を含むポリペプチド」とは、Fc領域を含むポリペプチド、例えば抗体又はイムノアドヘシン等(本明細書に別途記載する定義を参照)を意味する。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムに基づく残基447)は、例えば、ポリペプチドの精製期間中に、又はポリペプチドをコードする核酸の組換えエンジニアリングにより除去され得る。したがって、抗体も含め、本発明に基づきFc領域を有するポリペプチドを含む組成物は、すべてのK447残基が除去されたポリペプチド集団、K447残基のいずれも除去されていないポリペプチド集団、又はK447残基を有するポリペプチドと有さないポリペプチドとの混合物を有するポリペプチド集団を含み得る。
【0074】
抗体「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列のFc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因し、及び抗体アイソタイプによって変化する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例として、C1q結合及び補体依存性細胞毒性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介式の細胞毒性(ADCC);食作用;細胞表面受容体の下方制御;及びB細胞活性化が挙げられる。「天然配列のFc領域」は、天然において見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。Fc配列の例は、例えばKabat et al., Sequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))に記載されているが、但しこれらに限定されない。
【0075】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を備える最小の抗体断片である。この断片は、緊密に非共有結合的に会合した1つの重鎖及び1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体から構成される。これら2つのドメインが折り畳まれると、抗原に結合するためのアミノ酸残基に関係し、そして抗体に抗原結合特異性を付与する6つの高度可変ループ(H及びL鎖から各3ループ)が生み出される。
【0076】
但し、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても、全結合部位よりも親和性は低くなるものの、抗原を認識しそれと結合する能力を有する。
【0077】
「sFv」又は「scFv」としても省略される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に結びつけられたVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、VH及びVLドメインの間に、sFvが抗原に結合するための望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを更に含む。sFvのレビューについては、下記のPluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994); Borrebaeck 1995を参照。
【0078】
用語「ダイアボディ」とは、鎖内ではなく鎖間でVドメインの対形成を実現して、2価の断片、すなわち2つの抗原結合部位を有する断片をもたらすように、VHドメインとVLドメインの間に、短いリンカー(約5~10残基)を有するsFv断片(前段を参照)を構築することにより調製される小さい抗体断片を意味する。二重特異的なダイアボディは、2つの抗体のVHドメイン及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「クロスオーバー」sFv断片からなるヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば欧州特許第404,097号;国際公開第93/11161号;及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci.USA, 90:6444-6448 (1993)においてより十分に記載されている。
【0079】
ヒト以外(例えば、齧歯類)の抗体の「ヒト化」形態は、ヒト以外の抗体に由来する最低限の配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高度可変領域に由来する残基が、所望の抗体特異性、親和性、及び能力を有する、ヒト以外の種、例えばマウス、ラット、ウサギ、又はヒト以外の霊長類等の高度可変領域に由来する残基(ドナー抗体)と置き換わっているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応するヒト以外の残基と置き換わっている。
【0080】
更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体に見出されない残基を含み得る。このような改変は、抗体の性能を更に精緻化するために実施される。一般的に、ヒト化抗体は、高度可変ループのすべて又は実質的にすべてが、ヒト以外の免疫グロブリンの高度可変ループに対応し、またFRのすべて又は実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つ及び一般的には2つの可変ドメインを実質的にすべて含む。ヒト化抗体は、少なくとも免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部分、一般的にはヒト免疫グロブリンのFcも適宜含む。更なる詳細については、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照。
【0081】
本明細書において識別されたポリペプチド及び抗体配列における「アミノ酸配列同一性のパーセント(%)」又は「相同性」は、配列同一性の一部としてあらゆる保存的置換を考慮しながら配列をアライメントした後に、比較の対象となるポリペプチド内のアミノ酸残基と同一の候補配列内のアミノ酸残基の割合(%)として定義される。アミノ酸配列同一性の割合(%)を決定するためのアライメントは、当業者の手の内にある様々な方法で、例えば、公的に利用可能なコンピューターソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等を使用して達成され得る。比較の対象となる配列の全長にわたり、最大のアライメントを実現するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含め、当業者は、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。しかし、本明細書の目的に照らせば、%アミノ酸配列同一性の数値は、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を使用して生み出される。ALIGN-2配列比較コンピュータープログラムは、Genentech,Inc.社によって作成され、そしてソースコードは、ユーザー文書と共にワシントンD.C.、20559の米国著作権局にファイルされており、そこで米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムはGenentech,Inc.社、South San Francisco、Californiaを通じて公的に入手可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0D上で使用するためにコンパイルされるべきである。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、不変である。
【0082】
用語「Fc受容体」又は「FcR」が、抗体のFc領域に結合する受容体を記載するのに使用される。1つの実施形態では、本発明のFcRは、IgG抗体(γ受容体)に結合するFcRであり、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含むが、これには対立遺伝子変異体、及びこのような受容体のオルタナティブスプライシング型が含まれる。FcγRII受容体には、その細胞質ドメインにおいて主に異なる類似したアミノ酸配列を有するFcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害性受容体」)が含まれる。活性化受容体FcγRIIAは、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)をその細胞質ドメイン内に含有する。阻害性受容体FcγRIIBは、免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)をその細胞質ドメイン内に含有する(M. in Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)のレビューを参照)。該用語には、アロタイプ、例えばFcγRIIIAアロタイプ:FcγRIIIA-Phe158、FcγRIIIA-Val158、FcγRIIA-R131、及び/又はFcγRIIA-H131等が含まれる。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994);及び de Haas et al.,J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)においてレビューされている。その他のFcRも、将来的に同定されるものを含め、本明細書の用語「FcR」に包含される。該用語には、母体IgGの胎児への移行に関わっている新生児型受容体、FcRnも含まれる(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) 及びKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))。
【0083】
用語「FcRn」とは、新生児型Fc受容体(FcRn)を指す。FcRnは、主要組織適合複合体(MHC)と構造的に類似しており、またβ2-ミクログロブリンに非共有結合したα鎖から構成される。新生児型Fc受容体FcRnの複数の機能について、Ghetie and Ward (2000) Annu. Rev. Immunol. 18, 739-766においてレビューされている。FcRnは、免疫グロブリンIgGの母親から子供への受動的デリバリー及び血清IgGレベルの制御において役割を演じている。FcRnはサルベージ受容体として作用することができ、細胞内及び細胞間の両方において、天然の形態のピノサイトースされたIgGに結合し、それを輸送し、そしてそれをデフォルト分解経路から救済する。
【0084】
ヒトIgG Fc領域の「CH1ドメイン」(「H1」ドメインの「C1」とも呼ばれる)は、アミノ酸118当たりからアミノ酸215当たり(EUナンバリングシステム)まで通常延在する。
【0085】
「ヒンジ領域」は、ヒトIgG1のGlu216からPro230までのストレッチングとして一般的に定義される(Burton, Molec. Immunol.22:161-206 (1985))。その他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間S-S結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同一位置に配置することにより、IgG1配列とアライメントすることができる。
【0086】
Fc領域の「下部ヒンジ領域」は、ヒンジ領域に対してC末端側直近のストレッチ、すなわちFc領域の残基233~239として通常定義される。これまでの報告では、FcRの結合は、IgG Fc領域の下部ヒンジ領域内のアミノ酸残基に一般的に起因した。
【0087】
ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」(「H2」ドメインの「C2」とも呼ばれる)は、アミノ酸231当たりからアミノ酸340当たりまで通常延在する。CH2ドメインは、他方のドメインと緊密な対が形成されないという点で特有である。むしろ、インタクト天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に2本のN連結型分岐炭化水素鎖が挿入されている。炭化水素がドメイン間対形成に対する代替手段を提供し得ること、及びCH2ドメインの安定化に役立ち得ることが推測されている。Burton, Molec Immunol. 22:161-206 (1985)。
【0088】
「CH3ドメイン」(「C2」又は「H3」ドメインとも呼ばれる)は、Fc領域内のC末端からCH2ドメインにかけての一連の残基(すなわち、抗体配列の341アミノ酸残基当たりからC末端まで一般的にIgGのアミノ酸残基446又は447に)を含む。
【0089】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」として、C1q結合;補体依存性細胞毒性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御等が挙げられる。そのようなエフェクター機能は、結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と組み合わせるのにFc領域を一般的に必要とし、また例えば本明細書に開示する様々なアッセイを使用して評価可能である。
【0090】
「C1q」は、免疫グロブリンのFc領域に対する結合部位を含むポリペプチドである。C1qは、2つのセリンプロテアーゼ、C1r及びC1sと共に、補体依存性細胞毒性(CDC)経路の第1の成分である複合体C1を形成する。ヒトC1qは、例えば、Quidel社、San Diego、CAから商業的に購入可能である。
【0091】
用語「結合ドメイン」とは、別の分子と結合するポリペプチドの領域を意味する。FcRの場合、結合ドメインは、Fc領域との結合に関わるそのポリペプチド鎖(例えば、そのα鎖)の一部分を含み得る。1つの有用な結合ドメインは、FcRα鎖の細胞外ドメインである。
【0092】
FcR結合親和力又はADCC活性が「変化した」IgG Fc変異体を含む抗体は、親ポリペプチド又は天然配列Fc領域を含むポリペプチドと比較して、FcR結合活性(例えば、FcγR又はFcRn)及び/又はADCC活性が増強又は減少している抗体である。FcRに対する「結合の増強を示す」Fc変異体は、親ポリペプチド又は天然配列のIgG Fcよりも高い親和性を伴い(例えば、見かけのKd又はIC50値が低め)、少なくとも1つのFcRと結合する。いくつかの実施形態によれば、親ポリペプチドと比較したときの結合の改善は、約3倍、好ましくは約5~、10~、25~、50~、60~、100~、150~、200~、最大500倍、又は約25%~1000%の結合の改善である。FcRに対する「結合の低下を示す」ポリペプチド変異体は、親ポリペプチドよりも低い親和性を伴い(例えば、見かけのKdが高め又はIC50値が高め)、少なくとも1つのFcRと結合する。親ポリペプチドと比較したときの結合の低下は、約40%又はそれを超える結合の低下であり得る。
【0093】
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」又は「ADCC」とは、特定の細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌型のIgによって、この細胞毒性エフェクター細胞が抗原を担持する標的細胞と特異的に結合することが可能となり、そしてその後、細胞毒によって標的細胞が殺傷される細胞毒性の形態を意味する。抗体は「細胞毒性細胞を「武装させ」、またそのような殺傷にとって絶対的に必要とされる。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現が、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の464頁、表3に要約されている。目的とする分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号、若しくは同第5,821,337号、又は下記の実施例に記載されているようなインビトロ(in vitro)でのADCCアッセイが実施され得る。そのようなアッセイにとって有用なエフェクター細胞として、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。或いは又は加えて、目的とする分子のADCC活性が、Clynes et al. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデルにおいてインビボで評価され得る。
【0094】
ヒトエフェクター細胞の存在下で、野生型IgG Fcを有するポリペプチド又は親ポリペプチドよりも効果的に「ADCCの増加を示す」、又は抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を媒介するFc領域変異体を含むポリペプチドは、アッセイ内のFc領域変異体を含むポリペプチドと野生型Fc領域を含むポリペプチド(又は親ポリペプチド)の量が実質的に同一であるとき、ADCCの媒介においてインビトロ又はインビボで実質的により有効であるポリペプチドである。一般的に、そのような変異体は、例えば、動物モデル等において、ADCC活性を決定するアッセイ又は方法等の、当技術分野において公知の任意のインビトロADCCアッセイを使用して同定される。1つの実施形態では、好ましい変異体は、ADCCの媒介において、野生型Fc(又は親ポリペプチド)よりも約5倍~約100倍、例えば、約25~約50倍効果的である。
【0095】
「補体依存性細胞毒性」又は「CDC」とは、補体の存在下で標的細胞が溶解することを意味する。古典的補体経路の活性化は、補体系(C1q)の第1成分とその同種抗原に結合した抗体(該当するサブクラスの)の結合により開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイが、例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)の記載に従い実施され得る。Fc領域アミノ酸配列が変化し、及びC1q結合能力が増加又は減少したポリペプチド変異体が、米国特許第6,194,551B1号及び国際公開第99/51642号に記載されている。それら特許公開の記載内容は参照として本明細書に特に組み込まれている。Idusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)も参照。
【0096】
本明細書に開示する抗PD-1抗体(若しくはその断片)又は組成物の「有効量」とは、特に記載された目的を実現するのに十分な量である。「有効量」は、実験的に、及び記載された目的に関係する公知の方法により決定可能である。用語「治療有効量」とは、哺乳動物(aka患者)における疾患又は障害「を治療する」のに有効な、本明細書に開示する抗PD-1抗体(若しくはその断片)又は組成物の量を意味する。がんの場合は、本明細書に開示する抗PD-1抗体(若しくはその断片)又は組成物の治療有効量は、がん細胞の数を低下させる;腫瘍のサイズ若しくは重量を低下させる;がん細胞の末梢臓器への浸潤を阻害する(すなわち、ある程度低速化させ、好ましくは停止させる);腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度低速化させ、好ましくは停止させる);腫瘍増殖をある程度阻害する;及び/又はがんと関連した症状のうちの1つ又は複数をある程度緩和することができる。本明細書に開示する抗PD-1抗体(若しくはその断片)又は組成物は、それが増殖を阻止し、及び/又は既存のがん細胞を殺傷することが可能となる範囲で、細胞増殖抑制的及び/又は細胞毒性的であり得る。1つの実施形態では、治療有効量は、増殖阻害量である。別の実施形態では、治療有効量は、患者の生存を延ばす量である。別の実施形態では、治療有効量は、患者の無増悪生存率を改善する量である。
【0097】
本明細書に開示する本発明の抗PD-1抗体(若しくはその断片)又は組成物の「増殖阻害量」は、細胞、特に腫瘍、例えばがん細胞の増殖を、インビトロ又はインビボで阻害する能力を有する量である。新生細胞増殖の阻害を目的とする本発明のポリペプチド、抗体、拮抗薬、又は組成物の「増殖阻害量」は、実験的に、また公知の方法により、又は本明細書に提示する実施例により決定可能である。
【0098】
本発明の抗PD-1抗体(若しくはその断片)又は組成物の「細胞毒性量」は、インビトロ又はインビボで、細胞、特に腫瘍、例えばがん細胞の破壊を引き起こす能力を有する量である。新生細胞増殖の阻害を目的とする本発明の抗PD-1抗体(若しくはその断片)又は組成物の「細胞毒性量」は、実験的に、また当技術分野において公知の方法により決定可能である。
【0099】
本発明の抗PD-1抗体(若しくはその断片)又は組成物の「増殖阻害量」は、インビトロ又はインビボで、細胞、特に腫瘍、例えばがん細胞の増殖を阻害する能力を有する量である。新生細胞増殖の阻害を目的とする本発明の抗PD-1抗体(若しくはその断片)又は組成物の「増殖阻害量」は、実験的に、また公知の方法により、又は本明細書に提示する実施例により決定可能である。
【0100】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」又は「薬理学的に適合する」とは、生物学的に、又はそれ以外の形で忌避されない物質を意味し、例えば、該物質は、何らかの顕著な忌避すべき生物学的効果を引き起こさずに、又は該物質を含む組成物のその他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用を起こさないで患者に投与される医薬組成物に組み込まれ得る。薬学的に許容される担体又は賦形剤は、好ましくは毒性学試験及び製造試験の必要標準に適合し、並びに/又は米国食品医薬品局により作製された不活性成分指針に掲載されている。
【0101】
用語「検出すること」には、物質の有無を判断すること、又は物質(例えば、PD-1等)の量を定量することが含まれるように意図されている。該用語は、したがって、定性的及び定量的な決定を目的とする本発明の物質、組成物、及び方法の使用を意味する。一般的に、検出で使用される具体的な技術は、本発明の実践において重要でない。
【0102】
例えば、本発明に基づき「検出すること」には、PD-1遺伝子産物、mRNA分子、又はPD-1ポリペプチドの有無;PD-1ポリペプチドのレベル又は標的に結合した量の変化;PD-1ポリペプチドの生物学的機能/活性の変化を観察することが含まれ得る。いくつかの実施形態では、「検出すること」には、野生型PD-1レベル(例えば、mRNA又はポリペプチドレベル)を検出することが含まれ得る。検出することには、コントロールと比較したとき、10%~90%の間の任意の数値、又は30%~60%の間の任意の数値、又は100%超の変化(増加又は減少)を定量することが含まれ得る。検出することには、2倍と10倍を含むその間の任意の数値、又はそれを超える、例えば100倍の変化を定量することが含まれ得る。
【0103】
単語「標識」とは、本明細書で使用されるとき、抗体に直接又は間接的にコンジュゲートされている検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識そのものが、それ自体検出可能(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)となり得るが、酵素標識の場合、標識は検出可能である基質化合物又は組成物の化学的変化を触媒し得る。
【0104】
本明細書における数値又はパラメーターの「約」とは、この技術分野における当業者にとってよく知られている各数値に関する通常の誤差範囲を意味する。本明細書における数値又はパラメーターの「約」は、当該数値又はパラメーターとそれ自体関連する側面を含む(及び記載する)。例えば、「約X」という記載は、「X」の記載を含む。
【0105】
本明細書に記載する本発明の態様及び実施形態は、態様及び実施形態「を含む(comprising)」、「からなる(consisting)」、及び「から実質的になる(consisting essentially of)」ことを含むものと理解されよう。
【0106】
特許出願及び公開資料を含む、本明細書で引用されたすべての参考資料は、本明細書により参考としてそのまま援用されている。
【0107】
抗PD-1抗体
本発明は、PD-1受容体(PD-1)に結合する新規抗体の同定に基づく。抗PD-1抗体は、様々な治療及び診断方法で使用可能である。例えば、抗PD-1抗体は、例えば、メラノーマ、NSCLC、頭頸部がん、尿路上皮がん、乳がん(例えば、三重陰性乳がん、TNBC)、胃がん、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫である原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、食道がん、鼻咽頭癌(NPC)、胆道がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、甲状腺がんを含む、PD-1発現異常又はPD-1活性異常により特徴付けられる疾患を治療する際に、単独又はその他の薬剤と組み合わせて使用可能である。本明細書に提示する抗体は、抗PD-1抗体を患者に投与し、そして患者から得られたサンプル中のPD-1タンパク質に結合した抗PD-1抗体を検出する(例えば、インビボ又はエクスビボで)ことにより、或いは抗PD-1抗体を患者から得られたサンプルと接触させ、そしてPD-1タンパク質に結合した抗PD-1抗体を定性的又は定量的に検出することにより、患者又は患者サンプル内のPD-1タンパク質を検出するのにも使用可能である。
【0108】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1及びCD279(分化抗原群279)としても知られている)は、ヒトではPDCD1遺伝子によりコードされるタンパク質である。PD-1は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞表面受容体であり、またT細胞及びプロB細胞上で発現している。PD-1は、2つのリガンド、PD-L1及びPD-L2と結合する。PD-1は免疫チェックポイントとして機能し、T細胞の活性化を阻止することにより免疫系を下方制御し、次に自己免疫を低下させ、そして自己寛容を促進する際に重要な役割を演ずる。PD-1の阻害効果は、リンパ節内の抗原特異的T細胞においてアポトーシス(プログラム細胞死)を促進すると同時に、調節性T細胞(サプレッサーT細胞)におけるアポトーシスを低下させる二重機構を通じて達成される。
【0109】
抗PD-1抗体は、十分な親和性及び特異性を伴いPD-1と結合する抗体である。好ましくは、本明細書に提示する抗PD-1抗体(又はその抗原結合断片)は、PD-1活性が関係する疾患又は状態を標的とし、またそれを妨害する際の治療剤として使用可能である。抗PD-1抗体は、その他の免疫グロブリンスーパーファミリーに通常結合しない。好ましくは、抗PD-1抗体は組換えヒト化抗PD-1モノクロナール抗体である。
【0110】
1つの実施形態によれば、抗PD-1抗体は、本明細書に開示する抗体の任意の1つのCDR、可変性重鎖領域、及び/又は可変性軽鎖領域を含む。
【0111】
特定の実施形態では、本発明の抗PD-1抗体は、(1)アミノ酸配列KASQDVTTAVA(配列番号9)を含むCDR-L1;(2)アミノ酸配列WASTRHT(配列番号10)を含むCDR-L2;及び(3)アミノ酸配列QQHYTIPWT(配列番号11)を含むCDR-L3を含む軽鎖(LC)可変ドメイン配列と、(1)アミノ酸配列FTFSNYGMS(配列番号12)を含むCDR-H1;(2)アミノ酸配列TISGGGSNIY(配列番号13)を含むCDR-H2;及び(3)アミノ酸配列VSYYYGIDF(配列番号14)を含むCDR-H3を含む重鎖(HC)可変ドメイン配列とを含むキメラ抗PD-1抗体のc1G4、及び/又はヒト化抗PD-1のh1G4である。いくつかの実施形態では、変異体は、配列番号9~14のうちの1つ又は複数において、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、又は少なくとも10個のアミノ酸置換を含む。
【0112】
c1G4及びh1G4の軽鎖及び重鎖の完全長アミノ酸配列及びヌクレオチド配列、並びにそのCDR配列を下記の配列リストに提示する。
【0113】
(配列番号4)に定めるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン配列と、(配列番号2)に定めるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン配列とを含む抗PD-1抗体又はその抗原結合断片も、本発明により提供される。
【0114】
(配列番号8)に定めるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン配列と、(配列番号6)に定めるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン配列とを含むヒト化抗PD-1抗体又はその抗原結合断片も本発明により提供される。
【0115】
本発明は、ヒト化h1G4抗PD-1抗体に対する親和性成熟型抗体を更に提供する。特定の実施形態では、本発明の成熟型抗PD-1抗体(例えば、抗PD-1抗体、33B)は、(1)アミノ酸配列KASTDVTTAVA(配列番号15)を含むCDR-L1;(2)アミノ酸配列WASLRHT(配列番号16)を含むCDR-L2;及び(3)アミノ酸配列QQHYGIPWT(配列番号17)を含むCDR-L3を含む軽鎖(LC)可変ドメイン配列と、(1)アミノ酸配列FRFSNYGMS(配列番号18)を含むCDR-H1;(2)アミノ酸配列TISGGGSNAY(配列番号19)を含むCDR-H2;及び(3)アミノ酸配列TSYYYGIDF(配列番号20)を含むCDR-H3を含む重鎖(HC)可変ドメイン配列とを含む。
【0116】
その他の実施形態では、本発明の成熟型抗PD-1抗体(例えば、抗PD-1抗体、66E)は、(1)アミノ酸配列KAKQDVTTAVA(配列番号21)を含むCDR-L1;(2)アミノ酸配列WASTRHT(配列番号10)を含むCDR-L2;及び(3)アミノ酸配列QQHYWIPWT(配列番号22)を含むCDR-L3を含む軽鎖(LC)可変ドメイン配列と、(1)アミノ酸配列FTFSNYGMS(配列番号12)を含むCDR-H1;(2)アミノ酸配列TISGGGSNIY(配列番号13)を含むCDR-H2;及び(3)アミノ酸配列VSYYYGIDL(配列番号23)を含むCDR-H3を含む重鎖(HC)可変ドメイン配列とを含む。
【0117】
特定の実施形態では、本発明の成熟型抗PD-1抗体(例えば、抗PD-1抗体、711D)は、(1)アミノ酸配列KASQDVTNAVA(配列番号24)を含むCDR-L1;(2)アミノ酸配列WASTRHT(配列番号10)を含むCDR-L2;及び(3)アミノ酸配列QQHYTIPWT(配列番号11)を含むCDR-L3を含む軽鎖(LC)可変ドメイン配列と、(1)アミノ酸配列FTFSNYGMS(配列番号12)を含むCDR-H1;(2)アミノ酸配列TISGGGSNIY(配列番号13)を含むCDR-H2;及び(3)アミノ酸配列SSYYYGIDL(配列番号25)を含むCDR-H3を含む重鎖(HC)可変ドメイン配列とを含む。
【0118】
重鎖及び軽鎖可変ドメイン、並びにCDRを、考え得るすべてのペアワイズコンビネーションで組み合わせると、いくつかの抗PD-1抗体が生成する。
【0119】
特定の実施形態では、アミノ酸置換(複数可)は、保存的なアミノ酸置換(複数可)である。特定の実施形態では、アミノ酸置換は、抗体が抗原と結合する能力を実質的に低下させない。例えば、PD-1結合親和力を実質的に低下させない保存的な変更(例えば、本明細書に提示する保存的置換)を加えることができる。抗PD-1抗体変異体の結合親和力は、下記の実施例に記載する方法を使用して評価可能である。
【0120】
保存的置換を、「保存的置換」と題して表3に示す。より実質的な変化は、「代表的な置換」と題して表3に提示し、そしてアミノ酸側鎖クラスと関連して以下に更に記載する。アミノ酸置換は目的とする抗体に導入され得るが、また生成物は所望の活性、例えばPD-1結合の保持/改善、免疫原性の減少、又はADCC若しくはCDCの改善についてスクリーニングされる。
【0121】
【0122】
非保存的置換は、このクラスのちの1つのメンバーを別のクラスと交換する必要がある。代表的な置換変異体は、親和性成熟型抗体であり、例えば、ファージディスプレイに基づく親和性成熟技法、例えば本明細書に記載する技法等を使用して好都合に生成され得る。手短に述べると、1つ又は複数のCDR残基が突然変異し、抗体の変異体がファージ上に提示され、そして特定の生物学的活性(例えば、結合親和力)についてスクリーニングされる。変更(例えば、置換)は、例えば抗体親和性を改善するために、HVR内になし得る。そのような改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち体細胞成熟プロセス期間中に高頻度で突然変異が生ずるコドンによりコードされる残基(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008)を参照)、及び/又はSDR(a-CDR)においてなし得るが、得られたVH又はVL変異体は結合親和力について試験される。二次ライブラリーからの構築及び再選択による親和性成熟が、例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001)に記載されている。
【0123】
親和性成熟のいくつかの実施形態では、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、チェインシャフリング(chain shuffling)、又はオリゴヌクレオチド指定突然変異)のいずれかにより、成熟を目的として選択された可変遺伝子に多様性が導入される。二次ライブラリーが次に構築される。ライブラリーは、次に所望の親和性を有するあらゆる抗体変異体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)がランダム化されるHVR指向性アプローチと関係する。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発又はモデリングを使用して特異的に識別され得る。特にCDR-H3及びCDR-L3が、多くの場合標的の対象とされる。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、(1)配列番号9、21、及び24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-L1;(2)配列番号10又は16のアミノ酸配列を含むCDR-L2;(3)配列番号11、17、22からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列と、(1)配列番号12又は18のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(2)配列番号13又は19のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(3)配列番号14、20、23、及び25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン配列(VH)とを含む。
【0125】
重鎖及び軽鎖可変ドメインを、考え得るすべてのペアワイズコンビネーションで組み合わせると、いくつかの抗PD-1抗体が生成する。
【0126】
特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、重鎖又は軽鎖可変領域内のN-グリコシル化モチーフを欠いている場合があり、それは抗体バッチにおいて相違をもたらす原因となり得、その結果、機能、免疫原性、又は安定性に変化を引き起こす。抗体のグリコシル化を分析する方法として、例えば、クロマトグラフィー(陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)又は液体クロマトグラフィー等)、マススペクトロメトリー(エレクトロスプレーイオン化質量分析等)、及びキャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウムが挙げられるが、但しこれらに限定されない。そのような方法は、例えば、Jung et al. (2011) Curr Op Biotechnol. 22(6):858-67; Cummings RD, Etzler ME. Antibodies and Lectins in Glycan Analysis. In: Varki A, Cummings RD, Esko JD, et al., editors. Essentials of Glycobiology. 2nd edition. Cold Spring Harbor (NY): Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2009. Chapter 45; Mulloy B, Hart GW, Stanley P. Structural Analysis of Glycans. In: Varki A, Cummings RD, Esko JD, et al., editors. Essentials of Glycobiology. 2nd edition. Cold Spring Harbor (NY): Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2009. Chapter 47; Leymarie, et al. (2012) Anal Chem. 84(7): 3040-3048; Fernandez (2005) European Biopharmaceutical Review. pp 106-110;及びRaju, T. (2013) Methods Mol Biol. 988: 169-180に記載されている。
【0127】
特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、PD-1に対して、当該PD-1の相同体に対して有する結合親和力よりも強い結合親和力を有する。通常、抗PD-1抗体は、PD-1と「特異的に結合する」(すなわち、約1×10-7M以下、好ましくは約1×10-8以下、及び最も好ましくは約1×10-9M以下の結合親和力(Kd)値を有する)が、しかしPD-1ファミリーメンバーに対しては、そのPD-1に対する結合親和力の少なくとも約50倍、又は少なくとも約500倍、又は少なくとも約1000倍弱い結合親和力を有する。PD-1と特異的に結合する抗PD-1抗体は、上記で定義したような様々な種類の抗体のうちのいずれかであり得るが、しかし好ましくはヒト化又はヒト抗体である。
【0128】
いくつかの実施形態では、非標的タンパク質に対する抗PD-1抗体の結合の程度は、当技術分野において公知の方法、例えばELISA、蛍光活性化セルソーティング(FACS)分析、又は放射性免疫沈降法(RIA)等により決定したとき、該抗体のPD-1に対する結合の約10%未満である。特異的結合は、例えば、コントロール分子の結合と比較して分子の結合を決定することにより測定可能であるが、該コントロール分子は、結合活性を有さない類似した構造の分子であるのが一般的である。例えば、標的と類似したコントロール分子、例えば、過剰の非標識標的との競合により、特異的結合は決定可能である。この場合、標識標的のプローブに対する結合が過剰の未標識標的により競合的に阻害される場合、特異的結合が示唆される。用語「特異的結合」、又は特定のポリペプチド若しくは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「に特異的に結合する」若しくは「それに対して特異的な」とは、本明細書で使用する場合、例えば、標的に対して少なくとも約10-4M、或いは少なくとも約10-5M、或いは少なくとも約10-6M、或いは少なくとも約10-7M、或いは少なくとも約10-8M、或いは少なくとも約10-9M、或いは少なくとも約10-10M、或いは少なくとも約10-11M、或いは少なくとも約10-12M又はそれを超えるKdを有する分子により示され得る。1つの実施形態では、用語「特異的結合」とは、分子が、任意のその他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープと実質的に結合しないで、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープと結合するような結合を意味する。
【0129】
抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)は、腫瘍細胞に対する治療抗体の作用機序である。ADCCは細胞媒介性免疫防御であり、それによって免疫系のエフェクター細胞が、膜表面抗原に特異抗体(例えば、本明細書に記載する抗PD-1抗体等)が結合した標的細胞(例えば、がん細胞)を活発に溶解する。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、例えば、実施例に記載するアッセイにより実証されるように、OPDIVO(登録商標)又はニボルマブに類似した抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)エフェクター機能を示す。
【0130】
例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載する抗PD-1抗体のADCCエフェクター機能活性は、OPDIVO(登録商標)(ニボルマブ)のADCCエフェクター機能活性の少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%、又は100%超(例えば、約105%、約106%、約107%、約108%、約109%、約110%、約111%、約112%、約113%、約114%、約115%、約116%、約117%、約118%、約119%、約120%、約121%、約122%、約123%、約124%、約125%、又は約130%)であるが、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含まれる。
【0131】
特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、PD-1に対してOPDIVO(登録商標)と類似した結合親和力を示す。特定の実施形態では、PD-1に対する結合は、実施例に記載されるように、ELISAにより実証される。例えば、PD-1に対する抗PD-1の結合親和力は、PD-1に対するOPDIVO(登録商標)(ニボルマブ)の結合親和力よりも約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%高い、又は100%より高い(例えば、約105%、約106%、約107%、約108%、約109%、約110%、約111%、約112%、約113%、約114%、約115%、約116%、約117%、約118%、約119%、約120%、約121%、約122%、約123%、約124%、約125%、又は約125%超)。
【0132】
特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、約0.1pM~200pM(0.2nM)の間、例えば、約0.1pM、約0.25pM、約0.5pM、約0.75pM、約1pM、約5pM、約10pM、約20pM、約30pM、約40pM、約50pM、約60pM、約70pM、約80pM、約90pM、約100pM、約110pM、約120pM、約130pM、約140pM、約150pM、約160pM、約170pM、約180pM、約190pMの、又は約190pMより大きいKd、但しこれらの数値の間の任意の範囲を含むKdでヒトPD-1と結合する。特定の実施形態では、PD-1に対する抗PD-1抗体の結合親和力は、PD-1に対するOPDIVO(登録商標)(ニボルマブ)の結合親和力よりも約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%高い、又は約100%よりも高い(例えば、約105%、約110%、約120%、又は約130%)。特定の実施形態では、PD-1に対する抗PD-1の結合親和力は、PD-1に対するOPDIVO(登録商標)(ニボルマブ)の結合親和力よりも約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3倍、約3.25倍、約3.5倍、約3.75倍、約4倍、約4.25倍、約4.5倍、約4.75倍高い、又は約4.75倍よりも高いが、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含まれる。
【0133】
特定の実施形態では、本明細書に提示する抗PD-1抗体は、OPDIVO(登録商標)と比較してそれより延長したインビボ半減期を有する。特定の実施形態では、抗本明細書に記載するPD-1抗体のインビボ半減期は、OPDIVO(登録商標)のインビボ半減期よりも短くない。
【0134】
特定の実施形態では、本明細書に提示する抗PD-1抗体は、OPDIVO(登録商標)(ニボルマブ)又はその後発生物製剤と類似した薬物動態特性を示す。特定の実施形態では、本明細書に提示する抗PD-1抗体は、OPDIVO(登録商標)(ニボルマブ)又はその後発生物製剤の血清濃度-時間プロファイルの約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%である、又は95%を上回る(例えば、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%超等)AUC(曲線下面積(AUC))を示すが、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含まれる。
【0135】
特定の実施形態では、抗体は、ヒトIgG、例えば、ヒトIgG1又はヒトIgG4のFc配列を含む。特定の実施形態では、Fc配列は、多くの場合そのFc受容体(FcR)との結合と関連する抗体依存性細胞毒性(ADCC)エフェクター機能を欠くように変更され、さもなければ変化している。エフェクター機能を変え得るような、Fc配列に対する変化又は突然変異の例が多く存在する。例えば、国際公開第00/42072号、及びShieldsら(J Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001))は、FcRとの結合が改善した又は減少した抗体変異体について記載する。これらの公開資料の記載内容は、参照として本明細書に特に組み込まれている。抗体は、Fab、Fab’、F(ab)’2、単鎖Fv(scFv)、Fv断片;ダイアボディ、及び直線状の抗体であり得る。また、抗体は、PD-1と結合するが、しかし1つ又は複数のその他の標的とも結合し、その機能を阻害する多重特異性抗体であり得る。抗体は、治療剤(例えば、細胞毒性剤、放射性同位体、及び化学療法剤)又は画像化法により患者サンプル中、若しくはインビボでPD-1を検出するための標識(例えば、放射性同位体、蛍光色素、及び酵素)にコンジュゲートし得る。その他の改変には、本明細書に提示する抗PD-1抗体に対する毒素のコンジュゲーションが含まれる。
【0136】
抗PD-1抗体をコードする核酸分子、CDR及び/又は本明細書に記載する重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする核酸分子を含む発現ベクター、並びに該核酸分子を含む細胞についても検討される。このような抗体は、本明細書に記載する療法において、患者サンプル中(例えば、FACS、免疫組織化学(IHC)、ELISAアッセイにより)、又は患者内のPD-1タンパク質を検出するのに使用可能である。
【0137】
モノクロナール抗体
モノクロナール抗体は、例えば、ハイブリドーマ方法、例えばKohler及びMilstein(Nature, 256:495 (1975))により記載される方法等を使用して調製可能である、又は組換えDNA方法(米国特許第4,816,567号)により作製可能、又は下記実施例内の本明細書に記載する方法により製造可能である。ハイブリドーマ方法では、ハムスター、マウス、又はその他のふさわしい宿主動物が免疫剤を用いて一般的に免疫化され、該免疫剤と特異的に結合する抗体を産生する又は産生する能力を有するリンパ球を誘発する。或いは、リンパ球がインビトロで免疫化され得る。
【0138】
免疫剤は、ポリペプチド、又は目的とするタンパク質の融合タンパク質、又はタンパク質を含む組成物を一般的に含む。一般的に、ヒト起源の細胞が望ましい場合には、末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、又はヒト以外の哺乳動物供給源が望ましい場合には、脾臓細胞若しくはリンパ節細胞が使用される。次にポリエチレングリコール等の適する融合剤を使用してリンパ球を不死化細胞株と融合させると、ハイブリドーマ細胞が形成される(Goding, MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLESAND PRACTICE, New York: Academic Press, 1986, pp. 59-103)。不死化細胞株は、通常、哺乳動物形質転換細胞、特に齧歯類、ウシ、及びヒト起源のミエローマ細胞である。通常、ラット又はマウスのミエローマ細胞株が採用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは非融合の不死化細胞が増殖又は生存するのを阻害する1つ又は複数の物質を含有する適する培養培地内で培養され得る。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(「HAT培地」)を一般的に含み、これらの物質はHGPRT欠乏細胞の増殖を阻止する。
【0139】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、そしてHAT培地等の培地に対して感受性を有する細胞株である。より好ましい不死化細胞株はマウスミエローマ系統であり、例えば、カリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Center、及びバージニア州、マナッサスのアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関から取得可能である。ヒトミエローマ及びマウスヒトヘテロミエローマ細胞株は、ヒトモノクロナール抗体の製造に関しても記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984); Brodeur et al. MONOCLONAL ANTIBODY PRODUCTION TECHNIQUES ANDAPPLICATIONS, Marcel Dekker, Inc.: New York, 1987, pp. 51-63)。
【0140】
ハイブリドーマ細胞を培養する培養培地は、次にポリペプチドを標的とするモノクロナール抗体の存在についてアッセイされ得る。ハイブリドーマ細胞により産生されたモノクロナール抗体の結合特異性は、免疫沈降法により、又はインビトロ結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)等、若しくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により決定可能である。そのような技術及びアッセイは当技術分野において公知である。モノクロナール抗体の結合親和力は、例えば、Scatchard analysis of Munson and Pollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)により決定可能である。
【0141】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは、限界希釈手順によりサブクローン化され、そして標準方法により増殖させ得る。Goding、前出。これを目的とする適する培養培地として、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地及びRPMI-1640培地が挙げられる。或いは、ハイブリドーマ細胞は、腹水のように哺乳動物においてインビボで増殖し得る。
【0142】
サブクローンにより分泌されたモノクロナール抗体は、従来式の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィー等により、培養培地又は腹水液から単離又は精製され得る。
【0143】
モノクロナール抗体は、組換えDNA方法、例えば米国特許第4,816,567号に記載されている方法等によっても作製可能である。本明細書に提示するモノクロナール抗体をコードするDNAは、従来手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合する能力を有するオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離及び配列決定され得る。本明細書に提示するハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として役に立つ。単離されたら、DNAは、発現ベクター中に配置され得るが、該発現ベクターは次に例えば、免疫グロブリンタンパク質を別途生成しないsimian COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はミエローマ細胞等の宿主細胞中にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞中でモノクロナール抗体の合成が取得される。DNAもまた、例えば、同種マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインに関するコーディング配列を置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrison et al.、前出)、又は免疫グロブリンコーディング配列を非免疫グロブリンポリペプチドに関するコーディング配列の全部又は一部と共有結合的に連結することにより改変され得る。そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、キメラ2価抗体を作製するために、本明細書に提示する抗体の定常ドメインに関して置換され得る、又は本明細書に提示する抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに関して置換され得る。
【0144】
特定の実施形態では、本発明により提供される抗PD-1抗体は、安定な哺乳動物細胞株により発現される。特定の実施形態では、本発明により提供される抗PD-1抗体は、約2.0グラム/リットル、約2.5グラム/リットル、約3.0グラム/リットル、約3.5グラム/リットル、約4.0グラム/リットル、約4.5グラム/リットル、約5.0グラム/リットル、約5.5グラム/リットル、約6グラム/リットル、約6.5グラム/リットル、約7.0グラム/リットルの、又は約7.0グラム/リットルより高い力価で安定な哺乳動物細胞株から発現されるが、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含まれる。特定の実施形態では、本発明により提供される抗PD-1抗体が発現している安定な哺乳動物細胞株はCHO細胞株である。
【0145】
特定の実施形態では、抗体は一価の抗体である。一価の抗体の調製方法は当技術分野において公知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリン軽鎖及び改変された重鎖の組換え発現と関係する。重鎖は、重鎖の架橋を防止するために、Fc領域内の任意のポイントにおいて一般的にトランケーションされている。或いは、関連するシステイン残基が、架橋を防止するために別のアミノ酸残基と置換される、又は削除される。
【0146】
インビトロ方法もまた、一価の抗体を調製するのに適する。抗体を消化してその断片、特にFab断片を生成させることは、当技術分野において公知の技術を使用して実現可能であるが、但しこれに限定されない。
【0147】
ヒト及びヒト化抗体
抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体であり得る。ヒト以外(例えば、マウス)の抗体のヒト化形態は、ヒト以外の免疫グロブリンに由来する最低限の配列を一般的に含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は抗体のその他の抗原結合サブシーケンス等)である。ヒト化抗体として、レシピエントのCDRに由来する残基が、ヒト以外の種(ドナー抗体)、例えば所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギ等のCDRに由来する残基に置き換わっているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が挙げられる。いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応するヒト以外の残基に置き換わっている。ヒト化抗体は、レシピエント抗体内にも、また移入されたCDR又はフレームワーク配列内にも見出されない残基も含み得る。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、一般的には2つの可変ドメインのすべてを実質的に含み得るが、この場合、CDR領域のすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、そしてFR領域のすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体は、好ましくは、免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般的にはヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部分も含む。Jones et al. Nature, 321: 522-525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332: 323-329 (1988); Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)。
【0148】
一般的に、ヒト化抗体は、ヒト以外の供給源からそれに導入された1つ又は複数のアミノ酸残基を有する。このようなヒト以外のアミノ酸残基は、多くの場合「移入」残基と呼ばれ、「移入」可変ドメインから一般的に獲得される。1つの実施形態によれば、ヒト化は、Winterと共同研究者の方法(Jones et al. Nature, 321: 522-525 (1986); Riechmann et al. Nature, 332: 323-327 (1988); Verhoeyen et al. Science, 239: 1534-1536 (1988))に基づき、齧歯類CDR又はヒト抗体の対応する配列に相当するCDR配列に置換することにより実質的に実施され得る。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、インタクトヒト可変ドメインのうちの実質的にそれより少ない部分がヒト以外の種に由来する対応する配列により置換された抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、一般的に、いくつかのCDR残基、及びおそらくはいくつかのFR残基が、齧歯類抗体内の類似した部位に由来する残基により置換されているヒト抗体である。
【0149】
ヒト化に対する代替案として、ヒト抗体を生成することができる。例えば、免疫化した際に、内因性免疫グロブリンを産生することなくヒト抗体の完全なレパートリーを産生する能力を有する遺伝子導入動物(例えば、マウス)を製造することが今日可能である。例えば、生殖細胞系列突然変異体キメラマウスにおいて抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子がホモ接合的に欠損すると、内因性抗体産生が完全に阻害されることが記載されている。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子アレイをそのような生殖細胞系列突然変異体マウスに移すと、抗原チャレンジの際にヒト抗体の産生を引き起こす。例えば、Jakobovits et al. PNAS USA, 90:2551 (1993); Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993); Bruggemann et al.Year in Immunol., 7:33 (1993);米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,591,669号;同第5,545,807号;及び国際公開第97/17852号を参照。
【0150】
或いは、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化された遺伝子導入動物、例えばマウスに導入することにより作製可能である。チャレンジの際にヒト抗体産生が認められるが、それは、遺伝子再配列、アセンブリー、及び抗体レパートリーを含むすべての観点において、ヒトにおいて認められるものと密接に類似する。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;及び同第5,661,016号、及びMarks et al., Bio/Technology, 10: 779-783 (1992); Lonberg et al., Nature, 368: 856-859 (1994); Morrison, Nature, 368: 812-813 (1994); Fishwild et al. Nature Biotechnology, 14: 845-851 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology, 14: 826 (1996); Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol., 13: 65-93 (1995)に記載されている。
【0151】
或いは、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al., Nature 348:552-553, 1990)が、非免疫ドナーに由来する免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を製造するのに使用可能である。この技術の1つの実施形態によれば、抗体Vドメイン配列がM13又はfd等の糸状バクテリオファージのメジャー又はマイナーな外被タンパク質遺伝子にインフレームでクローン化され、そしてファージ粒子表面上に機能的抗体断片として提示される。ファージディスプレイは、例えば、下記の実施例のセクションにおいて記載するように、又は例えば、Johnson, Kevin S. and Chiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571 (1993)でレビューされているように、様々なフォーマットで実施可能である。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源が、ファージディスプレイ用として使用可能である。Clacksonら(Nature, 352:624-628 (1991))は、免疫マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さいランダムなコンビナトリアルライブラリーから多種多様な抗オキサゾロン抗体を単離した。非免疫ヒトドナーに由来するV遺伝子のレパートリーが構築可能であり、また多種多様な抗原(自己抗原を含む)に対する抗体が、Marksら(J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991))、又はGriffithら(EMBO J. 12:725-734 (1993))により記載される技術に従い、実質的に単離可能である。米国特許第5,565,332号、及び同第5,573,905号を参照。
【0152】
上記で議論したように、ヒト抗体は、インビトロで活性化したB細胞によっても生成され得る(米国特許第5,567,610号、及び同第5,229,275号を参照)。
【0153】
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野において公知の様々な技術を使用してやはり製造可能である。Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222: 581 (1991)。Coleら及びBoernerらの技術もヒトモノクロナール抗体の調製に利用可能である。Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985) 及びBoerner et al., J. Immunol., 147(1): 86-95 (1991)。
【0154】
多重特異性抗体
多重特異性抗体は、2つ又はそれよりも多くの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクロナール抗体、好ましくはヒト又はヒト化抗体である(例えば、二重特異性抗体は、少なくとも2つの抗原に対して結合特異性を有する)。例えば、結合特異性の一方は、a5~1タンパク質に対する特異性であり、他方は任意のその他の抗原に対する特異性であり得る。1つの好ましい実施形態によれば、その他の抗原は、細胞表面タンパク質、又は受容体、又は受容体サブユニットである。例えば、細胞表面タンパク質は、ナチュラルキラー(NK)細胞受容体であり得る。したがって、1つの実施形態によれば、本発明の二重特異性抗体は、PD-1、及び例えば第2の細胞の表面受容体の両方と結合することができる。
【0155】
二重特異性抗体を作製するための適する方法は、当技術分野において周知されている。例えば、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖の対の同時発現に基づき、その場合、2本の重鎖は、異なる特異性を有する。Milstein and Cuello, Nature, 305: 537-539 (1983)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな組合せであることから、このようなハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子からなる潜在的混合物を産生し、そのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により実現される。類似した手順は、国際公開第93/08829号及びTraunecker et al., EMBO, 10: 3655-3659 (1991) に開示されている。
【0156】
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合可能である。融合は、好ましくは免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合であり、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部分を含む。軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を、融合体の少なくとも一方に存在させることが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体、及び所望の場合には免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは別の発現ベクターに挿入され、そして適する宿主生物に同時トランスフェクトされる。二重特異性抗体の生成に関する更なる詳細については、Suresh et al., Methods in Enzymology, 121: 210 (1986)を参照。
【0157】
二重特異性抗体断片を、組換え細胞培養物から直接作製及び単離するための様々な技術についても記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して生成されてきた。Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質に由来するロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合により2つの異なる抗体のFab’部分と連結された。抗体ホモ二量体をヒンジ領域において還元してモノマーを形成し、次に再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法は、抗体ホモ二量体の製造にも利用可能である。Hollingerら(PNAS USA, 90:6444-6448 (1993))により記載される「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的機構を提供した。断片はリンカーによりVLと繋がったVHを含むが、該リンカーは、同一鎖上にある2つのドメイン間で対形成を可能とするには短すぎる。したがって、一方の断片のVH及びVLドメインは、別の断片の相補的なVL及びVHドメインと対を形成せざるを得ず、これにより2つの抗原結合部位が形成される。単鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性抗体断片を作製する別の戦略も報告されている。Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照。
【0158】
2つを超える結合価を有する抗体が考えられる。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)。
【0159】
ヘテロコンジュゲート抗体
ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合した抗体から構成される。そのような抗体は、例えば、免疫系細胞が望ましくない細胞を標的とするように(米国特許第4,676,980号)、及びHIV感染症の治療用として提案されている。国際公開第91/00360号;国際公開第92/200373号;欧州特許第03089号。抗体は、架橋剤と関係する方法を含む、合成タンパク質化学において公知の方法を使用してインビトロで調製され得るものと考えられる。例えば、免疫毒素複合体は、ジスルフィド交換反応を使用して、又はチオエーテル結合を形成することにより構築可能である。これを目的とする好適な試薬の例として、イミノチオレート(iminothiolate)及びメチル-4-メルカプトブチルイミデート、及び例えば米国特許第4,676,980号に開示される試薬が挙げられる。
【0160】
エフェクター機能エンジニアリング
例えば、がんを治療する際の抗体の有効性を増強するために、エフェクター機能に関して、本明細書に提示する抗体を改変することが望ましい場合もある。例えば、システイン残基(複数可)がFc領域に導入可能であり、これによりこの領域において鎖間ジスルフィド結合形成が可能となる。そのように生成されたホモ二量体の抗体は、内部移行能力を改善し、並びに/又は補体媒介式の細胞殺傷及び抗体依存性細胞毒性(ADCC)を高めることができる。Caron et al., J. Exp. Med., 176: 1191- 1195 (1992)及びShapes, J. Immunol., 148: 2918-2922 (1992)を参照。抗腫瘍活性が強化されたホモ二量体抗体は、Wolff eta!., Cancer Research, 53: 2560-2565 (1993) の記載に従い、ヘテロ二機能性架橋剤を使用して調製することも可能である。或いは、デュアルFc領域を有し、これにより補体溶解及びADCC能力が強化された抗体が工学的に作出され得る。Stevenson et al., Anti-Cancer Drug Design3: 219-230 (1989)を参照。
【0161】
Fc領域配列内の突然変異又は変更が、FcR結合(例えば、FcγR、FcRn)を改善するために実施され得る。1つの実施形態によれば、本発明の抗体は、ADCC、CDCからなる群から選択されるエフェクター機能について、その少なくとも1つが変化しており、また天然のIgG又は親抗体と比較してFcRn結合が改善している。いくつかの有用な特異的突然変異の例は、例えば、Shields, RL et al. (2001) JBC 276(6)6591-6604; Presta, L.G., (2002) Biochemical Society Transactions 30(4):487-490;及び国際公開第00/42072号に記載されている。
【0162】
1つの実施形態によれば、Fc受容体突然変異は、Fc領域の238、239、246、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、332、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438、又は439からなる群から選択される少なくとも1つの位置における置換であるが、この場合、Fc領域内の残基のナンバリングは、EUナンバリングシステムに基づく。いくつかの実施形態では、Fc受容体突然変異はD265A置換である。いくつかの実施形態では、Fc受容体突然変異はN297A置換である。追加の適する突然変異が、米国特許第7,332,581号に記載されている。
【0163】
イムノコンジュゲート
本発明は、細胞毒性剤、例えば化学療法剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素、若しくはその断片)、又は放射性同位体(すなわち、ラジオコンジュゲート(radioconjugate))等にコンジュゲートした抗体を含むイムノコンジュゲートとも関係する。
【0164】
使用可能である酵素的に活性な毒素及びその断片として、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリン(abrin)A鎖、モデシン(modeccin)A鎖、α-サルシン(sarcin)、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ダイアンシン(dianthin)タンパク質、フィトラッカ・アメリカナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・カランティア(momordica charantia)阻害剤、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サポナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、及びトリコセセンス(tricothecenes)が挙げられる。様々な放射性核種が、ラジオコンジュゲート抗体の製造用として利用可能である。例として、212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reが挙げられる。そのようなイムノコンジュゲートの生成において有用な代表的な化学療法剤として、本明細書に別途記載されている化学療法剤が挙げられる。
【0165】
特定の実施形態では、本明細書に提示する抗PD-1抗体は、マイタンシン、マイタンシノイド、又はカリケアマイシンにコンジュゲートされている。特定の実施形態では、本明細書に提示する抗PD-1抗体は、マイタンシノイドDM1にコンジュゲートされている。
【0166】
抗体と細胞毒性剤のコンジュゲートは、例えば、N-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオン酸塩(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性の誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCl等)、活性なエステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル等)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビスジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(例えば、トリエン(tolyene)2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)等の様々な二官能性のタンパク質カップリング剤を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素複合体は、Vitetta et al., Science, 238: 1098 (1987)の記載に従い調製可能である。炭素14標識化1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(triaminepentaacetic acid)(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドを抗体にコンジュゲートするための代表的なキレート剤である。国際公開第94/11026号を参照。
【0167】
別の実施形態では、腫瘍のプレターゲティングにおいて利用するために、抗体は「受容体」(例えば、ストレプトアビジン等)にコンジュゲートし得るが、その場合、抗体-受容体コンジュゲートが患者に投与され、その後、排除剤を使用して未結合のコンジュゲートが循環から除去され、次に細胞毒性剤(例えば、放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートした「リガンド」(例えば、アビジン)が投与される。
【0168】
共有結合による改変
共有結合による改変
抗PD-1抗体及びその断片の共有結合による改変は、本発明の範囲に含まれる。1つの種類の共有結合による改変には、ポリペプチドの標的対象となるアミノ酸残基を、ポリペプチドの選択された側鎖又はN若しくはC末端残基と反応する能力を有する有機の誘導化剤と反応させることが含まれる。二官能性薬剤による誘導体化は、例えばポリペプチドと抗体の精製方法で使用される水不溶性支持マトリックス又は表面との架橋において有用であり、またその逆も成り立つ。一般的に使用される架橋剤には、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば、4-アジドサリチル酸を有するエステル、ジスクシンイミジルエステル、例えば3,3’-ジチオビス(スクシニミジル-プロピオン酸塩)等を含むホモ二官能性イミドエステル、二官能性のマレイミド、例えばビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミデート(propioimidate)等の薬剤が含まれる。
【0169】
その他の改変には、対応するグルタミル及びアスパルチル残基のそれぞれに対するグルタミニル及びアスパラギニル残基の脱アミド化、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86 (1983))、N末端アミンのアセチル化、並びに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
【0170】
ポリペプチドの別の種類の共有結合による改変は、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号、又は同第4,179,337号に定める方式で、ポリペプチドを様々な非タンパク質性ポリマーの1つ、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンと連結することを含む。
【0171】
キメラ分子
本発明の抗PD-1抗体、及び/又はその断片は、好都合な場合には、別の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したポリペプチドを含むキメラ分子(例えば、イムノアドヘシン又はペプチボディ)を形成する方式でやはり改変可能である。
【0172】
1つの実施形態では、そのようなキメラ分子は、ポリペプチドとタンパク質形質導入ドメインとの融合体を含み、該ドメインは、デリバリー用の該ポリペプチドを様々な組織に仕向け、より具体的には、例えばヒト免疫不全ウイルスTATタンパク質のタンパク質形質導入ドメインを使用して、脳血液関門を通過させる(Schwarze et al., 1999, Science 285: 1569- 72)。
【0173】
別の実施形態では、そのようなキメラ分子は、ポリペプチドと抗タグ抗体が選択的に結合することができるエピトープを提供するタグポリペプチドとの融合体を含む。該エピトープタグは、ポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシル末端に一般的に配置される。ポリペプチドのそのようなエピトープタグ化された形態が存在すると、該タグポリペプチドに対する抗体を使用して検出可能となる。また、エピトープタグが提供されれば、抗タグ抗体又は該エピトープタグと結合する別の種類の親和性マトリックスを使用する親和性精製法により、ポリペプチドが容易に精製可能になる。様々なタグポリペプチド及びその各抗体は当技術分野において公知である。例として、ポリ-ヒスチジン(ポリ-His)又はポリ-ヒスチジン-グリシン(ポリ-His-gly)タグ;インフルエンザHAタグポリペプチド及びその抗体12CA5(Field et al., Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7、及び9E10抗体(Evan et al., Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];並びに単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体(Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]が挙げられる。その他のタグポリペプチドとして、Flag-ペプチド(Hopp et al., BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド(Martin et al.(Martinet al.), Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド(Skinner et al., J. Biol. Chem., 266:15163- 15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ(Lutz-Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990))が挙げられる。
【0174】
代替的実施形態では、キメラ分子は、ポリペプチドと免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定の領域との融合体を含み得る。キメラ分子の2価の形態(例えば、「イムノアドヘシン」)の場合、そのような融合体は、IgG分子のFc領域に対する融合体であり得る。本発明のIg融合体は、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の代わりに、ヒトの残基94~243、残基33~53、又は残基33~52の辺り又はそれのみを含むポリペプチドを含む。特に好ましい実施形態では、免疫グロブリン融合体は、IgG1分子のヒンジ、CH2、及びCH3、又はヒンジ、CH1、CH2、及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合体の製造については、1995年6月27日発行の米国特許第5,428,130号も参照。
【0175】
イムノリポソーム
本明細書に開示する抗体は、イムノリポソームとして製剤化することも可能である。抗体を含有するリポソームは、Epstein et al., PNAS USA, 82: 3688 (1985); Hwang et al., PNAS USA, 77: 4030 (1980);及び米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号等に記載されているような当技術分野において公知の方法により調製される。循環時間が増強されたリポソームが米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0176】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発方法により生成可能である。リポソームを、定義されたポアサイズのフィルターを通じて押し出すと、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab’断片は、Martinら(J. Biol. Chem., 257: 286- 288 (1982))の記載に従い、ジスルフィド交換反応によりリポソームにコンジュゲートし得る。抗悪性腫瘍剤、増殖阻害剤、又は化学療法剤(例えば、ドキソルビシン等)がリポソームに含まれていてもよい。Gabizon et al., J. National Cancer Inst., 81(19): 1484 (1989)を参照。
【0177】
抗PD-1抗体を使用する治療
本明細書に提示する抗PD-1抗体及び/又はその断片、及び/又は組成物は、例えば、がん(頭頸部がん、咽頭がん、結腸直腸がん、肺がん等)を含む、PD-1活性異常を伴う疾患及び障害を治療するために、対象(例えば、哺乳動物、例えばヒト等)に投与され得る。特定の実施形態では、本発明は、対象におけるがん(例えば、メラノーマ、NSCLC、頭頸部がん、尿路上皮がん、乳がん(例えば、三重陰性乳がん、TNBC)、胃がん、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫である原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、食道がん、鼻咽頭癌(NPC)、胆道がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、甲状腺がん等)を治療するための医薬の製造で使用されるように、本明細書に記載する抗PD-1抗体(又はその断片)を提供する。特定の実施形態では、本発明は、対象におけるがん(例えば、メラノーマ、NSCLC、頭頸部がん、尿路上皮がん、乳がん(例えば、三重陰性乳がん、TNBC)、胃がん、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫である原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、食道がん、鼻咽頭癌(NPC)、胆道がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、甲状腺がん等)の治療で使用されるように、本明細書に記載する抗PD-1抗体(又はその断片)を提供する。
【0178】
特定の実施形態では、本発明は、対象におけるがん(メラノーマ、NSCLC、頭頸部がん、尿路上皮がん、乳がん(例えば、三重陰性乳がん、TNBC)、胃がん、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫である原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、食道がん、鼻咽頭癌(NPC)、胆道がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、甲状腺がん)の治療で使用されるように、本明細書に提示する抗PD-1抗体(又はその断片)を含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、治療される対象は、哺乳動物(例えば、ヒト、ヒト以外の霊長類、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ等)である。特定の実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、対象は、臨床患者、臨床トライアル志願者、実験動物等である。特定の実施形態では、対象は、がん(例えば、メラノーマ、NSCLC、頭頸部がん、尿路上皮がん、乳がん(例えば、三重陰性乳がん、TNBC)、胃がん、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫である原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、食道がん、鼻咽頭癌(NPC)、胆道がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、甲状腺がん等)を有するリスクを有する、若しくは有するリスクに曝されていると疑われている、又はPD-1の発現又は活性が異常ながん若しくは任意のその他の疾患を有すると診断されている。
【0179】
がん(例えば、メラノーマ、NSCLC、頭頸部がん、尿路上皮がん、乳がん(例えば、三重陰性乳がん、TNBC)、胃がん、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫である原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、食道がん、鼻咽頭癌(NPC)、胆道がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、甲状腺がん等)、又はPD-1活性異常を示す任意のその他の疾患及びそのような疾患の臨床的概要に対する多くの診断方法が、当技術分野において公知である。そのような方法として、例えば、免疫組織化学、PCR、蛍光インサイチュでのハイブリダイゼーション(FISH)が挙げられるが、但しこれらに限定されない。PD-1の活性又は発現異常に対する診断方法に関する追加の詳細情報は、例えば、Gupta et al. (2009) Mod Pathol. 22(1): 128-133; Lopez-Rios et al. (2013) J Clin Pathol. 66(5): 381-385; Ellison et al. (2013) J Clin Pathol 66(2): 79-89;及びGuha et al. (2013) PLoS ONE 8(6): e67782に記載されている。
【0180】
投与は、例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下を含む任意の適する経路により実施可能である。いくつかの実施形態では、本明細書に提示する抗PD-1抗体(若しくはその断片)及び/又は組成物は、PD-1活性異常を伴う疾患又は障害を治療するために、第2、第3、又は第4の薬剤(例えば、抗腫瘍剤、増殖阻害剤、細胞毒性剤、又は化学療法剤を含む)と組み合わせて投与される。そのような薬剤として、例えば、ドセタキセル、ゲフィチニブ、FOLFIRI(イリノテカン、5-フルオロウラシル、及びロイコボリン)、イリノテカン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ベバシズマブ(抗VEGF抗体)、FOLFOX-4、輸液用のフルオロウラシル、ロイコボリン、及びオキサリプラチン、アファチニブ、ゲムシタビン、カペシタビン、ペメトレキセド、チバンチニブ、エベロリムス、CpG-ODN、ラパマイシン、レナリドマイド、ベムラフェニブ、エンドスタチン、ラパチニブ、PX-866、インプライム(Imprime)PGG、及びイルロチニブ(irlotinibm)が含まれる。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体(又はその断片)は、追加の薬剤にコンジュゲートされている。
【0181】
特定の実施形態では、本明細書に提示する抗PD-1抗体(若しくはその断片)、及び/又は組成物は、1つ又は複数の追加の療法、例えば放射線療法、手術、化学療法、及び/又は標的治療等と組み合わせて投与される。特定の実施形態では、本明細書に提示する抗PD-1抗体(若しくはその断片)、及び/又は組成物は、放射線療法と組み合わせて投与される。特定の実施形態では、本明細書に提示する抗PD-1抗体(若しくはその断片)及び/又は組成物と放射線療法との組合せが、メラノーマ、NSCLC、頭頸部がん、尿路上皮がん、乳がん(例えば、三重陰性乳がん、TNBC)、胃がん、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫である原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、食道がん、鼻咽頭癌(NPC)、胆道がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、及び甲状腺がんからなる群から選択されるがんを治療するのに用いられる。
【0182】
治療の対象となる兆候、及び当分野における熟練医師が精通する投与関連因子に応じて、本明細書に提示する抗PD-1抗体又はその断片は、毒性及び副作用を最低限に抑えつつ、当該兆候の治療に対して有効な用量で投与される。がん(例えば、メラノーマ、NSCLC、頭頸部がん、尿路上皮がん、乳がん(例えば、三重陰性乳がん、TNBC)、胃がん、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫である原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、食道がん、鼻咽頭癌(NPC)、胆道がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、甲状腺がん等)の治療の場合、典型的な用量は、例えば、0.001~1000μgの範囲であり得るが、しかしこの代表的な範囲よりも少ない、又は多い用量も本発明の範囲内にある。1日用量は、全体重1kg当たり約0.1μg~約100mg(例えば、約5μg/kg、約10μg/kg、約100μg/kg、約500μg/kg、約1mg/kg、約50mg/kg、又は上記数値のうちの任意の2つにより定義される範囲)、好ましくは全体重1kg当たり約0.3μg~約10mg(例えば、約0.5μg/kg、約1μg/kg、約50μg/kg、約150μg/kg、約300μg/kg、約750μg/kg、約1.5mg/kg、約5mg/kg、又は上記数値のうちの任意の2つにより定義される範囲)、より好ましくは、全体重1kg当たり約1μg~1mg(例えば、約3μg/kg、約15μg/kg、約75μg/kg、約300μg/kg、約900μg/kg、又は上記数値のうちの任意の2つにより定義される範囲)、及びなおもより好ましくは1日に体重1kg当たり約0.5~10mg(例えば、約2mg/kg、約4mg/kg、約7mg/kg、約9mg/kg、又は上記数値間の任意の範囲を含む、上記数値のうちの任意の2つにより定義される範囲)であり得る。上記のように、治療上又は予防上の有効性は、治療対象の患者の定期的評価によりモニタリング可能である。数日間又はそれより長い期間にわたり反復投与する場合、状態に応じて、疾患症状において所望の抑制が生ずるまで治療は反復される。しかし、その他の投与レジメンも有用であり得、また本発明の範囲内にある。所望の投与量が、組成物の単回ボーラス投与により、組成物の複数ボーラス投与により、又は組成物の連続輸液投与によりデリバリー可能である。
【0183】
抗PD-1抗体又はその断片を含む医薬組成物は、1日に1、2、3、又は4回投与可能である。組成物は、1日1回よりも低頻度で、例えば1週間に6回、1週間に5回、1週間に4回、1週間に3回、1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、1カ月に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回、又は6カ月毎に1回投与することも可能である。組成物は、徐放性製剤、例えばある期間にわたり使用に供されるように組成物を徐放し、また組成物がより低頻度で、例えば、1カ月に1回、2~6カ月毎に1回、1年毎に1回等、又は単回投与のような低頻度で投与されることを可能にするインプラント等の状態で投与される場合もある。持続放出型デバイス(例えば、ペレット、ナノ粒子、微粒子、ナノ球体、ミクロスフェア等)は注射により投与され得る。
【0184】
抗体(又はその断片)は1日1回の用量で投与され得る、又は1日の全用量は、1日に2、3、若しくは4回の分割用量で投与され得る。組成物は、1日1回より低頻度で、例えば1週間に6回、1週間に5回、1週間に4回、1週間に3回、1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、1カ月に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回、又は6カ月毎に1回投与することも可能である。抗体(又はその断片)は、徐放性製剤、例えばある期間にわたり使用に供されるように組成物を徐放し、また組成物がより低頻度で、例えば、1カ月に1回、2~6カ月毎に1回、1年毎に1回等、又は単回投与のような低頻度で投与されることを可能にするインプラント等の状態で投与される場合もある。持続放出型デバイス(例えば、ペレット、ナノ粒子、微粒子、ナノ球体、ミクロスフェア等)は注射により投与され得る、又は様々な場所に外科的に移植され得る。
【0185】
がん治療は、例えば、腫瘍退縮、腫瘍重量又はサイズの縮小、進行までの時間、生存期間、無増悪生存率、全体的な応答率、応答期間、生活の質、タンパク質の発現及び/又は活性により評価可能であるが、但しこれらに限定されない。例えば、放射線画像化法による応答測定を含む、療法の有効性を判断するアプローチが採用可能である。
【0186】
いくつかの実施形態では、治療の有効性は、腫瘍増殖阻害率(%TGI)として測定され、式100-(T/C×100)を使用して計算されるが、式中、Tは治療対象とされる腫瘍の相対的な平均腫瘍容量であり、またCは非治療腫瘍の相対的な平均腫瘍容量である。特定の実施形態では、%TGIは、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%である、又は95%よりも大きい。特定の実施形態では、抗PD-1の%TGIは、OPDIVO(登録商標)の%TGIと同一又はそれを上回り、例えば約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍等であり、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含まれ、又はOPDIVO(登録商標)の%TGIよりも約2.7倍を上回る。
【0187】
医薬製剤
抗PD-1抗体(又はその断片)は、その投与に適するように、適する担体又は賦形剤と共に製剤化され得る。抗体の適する製剤は、所望の純度を有する抗体(又はその断片)と、随意の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))とを、凍結乾燥された製剤又は水溶液の形態で混合することにより取得される。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、採用された用量及び濃度においてレシピエントに対して無毒性であり、またバッファー、例えばリン酸塩、クエン酸塩、及びその他の有機酸等;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン等;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン(olyvinylpyrrolidone)等;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含むその他の炭化水素;キレート剤、例えばEDTA等;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース、又はソルビトール等;造塩性の対イオン、例えばナトリウム等;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);並びに/或いは非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)等を含む。代表的な抗体製剤は、W098/56418に記載されており、参照として本明細書に明示的に組み込まれている。皮下投与用として考案された凍結乾燥製剤は、W097/04801に記載されている。そのような凍結乾燥製剤は、適する希釈剤を用いて高タンパク質濃度に復元され得るが、また復元された製剤は、本明細書において治療される哺乳動物の皮下に投与され得る。
【0188】
本明細書の製剤は、治療される特定の兆候について、必要に応じて、2つ以上の活性化合物も含み得るが、同活性化合物は相互に悪影響を及ぼさない相補的な活性を有することが好ましい。例えば、抗悪性腫瘍剤、増殖阻害剤、細胞毒性剤、又は化学療法剤を更に提供するのが望ましい場合もある。そのような分子は、併用物中に、意図した目的にとって有効な量で好適に存在する。そのようなその他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、疾患又は障害又は治療の種類、及び上記で議論したその他の因子に依存する。これらは、本明細書に記載する用量及び投与経路と同一の用量、投与経路で、又は上記で採用された用量の約1~99%で一般的に使用される。有効成分は、コロイド薬物デリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)において、又はマクロエマルジョンにおいて、例えば、コアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル、及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中にそれぞれ封入される場合もある。そのような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。持続放出型の調製物が調製され得る。適する持続放出型の調製物の例として、拮抗薬を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、該マトリックスは、成形品、例えば、フィルム、又はマイクロカプセルの形態である。持続放出型マトリックスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレンビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及びロイプロリドアセテートから構成される注射用ミクロスフェア)等、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0189】
リポフェクチン又はリポソームが、本発明のポリペプチド及び抗体(若しくはその断片)又は組成物を細胞にデリバリーするのに使用可能である。抗体断片が使用される場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づき、標的タンパク質配列と結合する能力を保持するペプチド分子が設計可能である。そのようなペプチドは、化学的に合成され得る、及び/又は組換えDNA技術により製造され得る。例えば、Marasco et al., PNAS USA, 90: 7889-7893 (1993)を参照。
【0190】
有効成分は、コロイド薬物デリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)において、又はマクロエマルジョンにおいて、例えば、コアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル、及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中にそれぞれ封入可能である。そのような技術は、Remington's PHARMACEUTICAL SCIENCES、前出、に開示されている。
【0191】
持続放出型の調製物が調製可能である。適する持続放出型の調製物の例として、抗体(又はその断片)を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、該マトリックスは、成形品、例えば、フィルム、又はマイクロカプセルの形態である。持続放出型マトリックスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-ビニルアセテート、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及びロイプロリドアセテートから構成される注射用ミクロスフェア)等、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン-酢酸ビニルや乳酸-グリコール酸等のポリマーは、100日間にわたり分子の放出を可能にする一方、特定のヒドロゲルはタンパク質をより短い期間放出する。カプセル化された抗体が長時間身体内に留まると、抗体は、37℃で湿気に曝露された結果として変性又は凝集するおそれがあり、生物学的活性の喪失及び免疫原性が変化する可能性を引き起こす。関係する機構に応じて安定化させるために、合理的な戦略を考案することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換(thio-disulfide interchange)が介在する分子間S-S結合形成であることが判明すれば、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、含水量を管理すること、適切な添加物を使用すること、及び特別なポリマーマトリックス組成物を開発することにより達成され得る。
【0192】
特定の実施形態では、製剤は、約0.5mg/mlを上回る、約1mg/mlを上回る、約2mg/mlを上回る、約3mg/mlを上回る、約4mg/mlを上回る、約5mg/mlを上回る、約6mg/mlを上回る、約7mg/mlを上回る、約8mg/mlを上回る、約9mg/mlを上回る、約10mg/mlを上回る、約11mg/mlを上回る、約12mg/mlを上回る、約13mg/mlを上回る、約14mg/mlを上回る、約15mg/mlを上回る、約16mg/mlを上回る、約17mg/mlを上回る、約18mg/mlを上回る、約19mg/mlを上回る、約20mg/mlを上回る、約21mg/mlを上回る、約22mg/mlを上回る、約23mg/mlを上回る、約24mg/mlを上回る、約25mg/mlを上回る、約26mg/mlを上回る、約27mg/mlを上回る、約28mg/mlを上回る、約29mg/mlを上回る、又は約30mg/mlを上回る濃度で、本明細書に記載の抗PD-1抗体を含むが、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含まれる。
【0193】
特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、クエン酸塩、NaCl、アセテート、コハク酸塩、グリシン、ポリソルベート80(Tween80)、又は上記任意の組合せを含むバッファー中において(例えば、約0.5mg/mlを上回る、約1mg/mlを上回る、約5mg/mlを上回る、約10mg/mlを上回る、約15mg/mlを上回る、約20mg/mlを上回る、又は約25mg/mlを上回る濃度で、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め)製剤化される。特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、約100mM~約150mMのグリシンを含むバッファー中において(例えば、約0.5mg/mlを上回る、約1mg/mlを上回る、約5mg/mlを上回る、約10mg/mlを上回る、約15mg/mlを上回る、約20mg/mlを上回る、又は約25mg/mlを上回る濃度で、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め)製剤化される。特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、約50mM~約100mMのNaClを含むバッファー中において製剤化される。特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、約10mM~約50mMのアセテートを含むバッファー中において(例えば、約mg/mlを上回る、約1mg/mlを上回る、約5mg/mlを上回る、約10mg/mlを上回る、約15mg/mlを上回る、約20mg/mlを上回る、又は約25mg/mlを上回る濃度で、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め)製剤化される。特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、約10mM~約50mMのコハク酸塩を含むバッファー中で製剤化される。特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、約0.005%~約0.02%のポリソルベート80を含むバッファー中において(例えば、約0.5mg/mlを上回る、約1mg/mlを上回る、約5mg/mlを上回る、約10mg/mlを上回る、約15mg/mlを上回る、約20mg/mlを上回る、又は約25mg/mlを上回る濃度で、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め)製剤化される。特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、約5.1~5.6の間のpHを有するバッファー中において製剤化される。特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、10mMのクエン酸塩、100mMのNaCl、100mMのグリシン、及び0.01%のポリソルベート80を含むバッファー中において製剤化され、その場合、製剤のpHは5.5である。
【0194】
特定の実施形態では、本明細書に記載するPD-1抗体を(例えば、約0.5mg/mlを上回る、約1mg/mlを上回る、約5mg/mlを上回る、約10mg/mlを上回る、約15mg/mlを上回る、約20mg/mlを上回る、又は約25mg/mlを上回る濃度で、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め)含む製剤(例えば、10mMのクエン酸塩、100mMのNaCl、100mMのグリシン、及び0.01%のポリソルベート80を含むバッファーを含む製剤等、但し製剤のpHは5.5である)は、室温(例えば、約20~25℃等)において、約0.5週間、1.0週間、1.5週間、2.0週間、2.5週間、3.5週間、4.0週間、4.5週間、又は5.0週間、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め安定である。特定の実施形態では、本明細書に記載するPD-1抗体を(例えば、約0.5mg/mlを上回る、約1mg/mlを上回る、約5mg/mlを上回る、約10mg/mlを上回る、約15mg/mlを上回る、約20mg/mlを上回る、又は約25mg/mlを上回る濃度で、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め)含む製剤(例えば、10mMのクエン酸塩、100mMのNaCl、100mMのグリシン、及び0.01%のポリソルベート80を含むバッファーを含む製剤等、但し製剤のpHは=5.5である)は、加速状態下(例えば、約37℃での保管等)において約0.5週間、1.0週間、1.5週間、2.0週間、2.5週間、3.5週間、4.0週間、4.5週間、又は5.0週間、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め安定である。
【0195】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は幅広く使用されている周知の方法であり、物理的及び化学的不安定性に対応する断片化及び凝集化の可能性を検出するために、タンパク質安定性試験で使用されている。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤は、SECを使用して測定したとき、37℃で1週間後、高分子量種の初期%と比較して、約1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%、又は0.1%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それらよりも小さい高分子量種(HMWS)の増加を示す。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤は、SECを使用して測定したとき、37℃で2週間後、高分子量種の初期%と比較して、約2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%、又は0.1%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それらよりも小さい高分子量種の増加を示す。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載する抗EFGR抗体を含む製剤は、SECを使用して測定したとき、37℃で4週間後、高分子量種の初期%と比較して、約3.3%、3.2%、3.1%、3.0%、2.9%、2.8%、2.7%、2.6%、2.5%、2.4%、2.2%、2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%、又は0.1%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それらよりも小さい高分子量種の増加を示す。
【0196】
特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤は、SECを使用して測定したとき、37℃で1週間後、低分子量種の初期%と比較して、約1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%、又は0.1%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それらよりも小さい低分子量種(LMWS)の増加を示す。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤は、SECを使用して測定したとき、37℃で2週間後、低分子量種の初期%と比較して、約2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、%、0.4%、0.2%、又は0.1%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それらよりも小さい低分子量種の増加を示す。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤は、SECを使用して測定したとき、37℃で4週間後、低分子量種の初期%と比較して、約2.4%、2.2%、2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%、又は0.1%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それらよりも小さい低分子量種の増加を示す。
【0197】
特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤は、SECを使用して測定したとき、37℃で1週間後、モノマーの初期%と比較して、約0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、又は3.5%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それ以下のモノマーの減少を示す。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤は、SECを使用して測定したとき、37℃で2週間後、モノマーの初期%と比較して、約0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、又は3.5%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それ以下のモノマーの減少を示す。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗EFGR抗体を含む製剤は、SECを使用して測定したとき、37℃で2週間後、モノマーの初期%と比較して、約0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、又は3.5%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それ以下のモノマーの減少を示す。
【0198】
陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)は、タンパク質分解イベント、例えば脱アミド又は酸化等を検出するための幅広く使用されている周知のツールである(Moorhouse et al. (1997) J. Pharm. Biomed. Anal. 16, 593-603)。分解生成物は、より高い見かけのpIを有するgntsとの比較において酸性種又は塩基性種と一般的に呼ばれる。酸性種はメインピークよりも早くCEXから溶出する変異体であるが、一方、塩基性種はメインピークよりも後にCEXから溶出する変異体である。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤の酸性ピーク分画は、CEXを使用して測定したとき、37℃で1週間後、総タンパク質の約7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、又は15%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それ以下を占める。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤の酸性ピーク分画は、CEXを使用して測定したとき、37℃で2週間後、総タンパク質の約8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、又は18%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それ以下を占める。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗EFGR抗体を含む製剤の酸性ピーク分画は、CEXを使用して測定したとき、37℃で2週間後、総タンパク質の約8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、又は27%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それ以下を占める。
【0199】
特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤の塩基性ピーク分画は、CEXを使用して測定したとき、37℃で1週間後、総タンパク質の約39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、又は46%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それ以下を占める。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤の塩基性ピーク分画は、CEXを使用して測定したとき、37℃で2週間後、総タンパク質の約39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、又は46%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それ以下を占める。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤の塩基性ピーク分画は、CEXを使用して測定したとき、37℃で4週間後、総タンパク質の約39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、又は46%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それ以下を占める。
【0200】
特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤のメインピーク分画は、CEXを使用して測定したとき、37℃で1週間後、総タンパク質の約32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、又は46%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それ以上を占める。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤の塩基性ピーク分画は、CEXを使用して測定したとき、37℃で2週間後、総タンパク質の約32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、又は46%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それ以上を占める。特定の実施形態では、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、又は25mg/mlの本明細書に記載の抗PD-1抗体を含む製剤の塩基性ピーク分画は、CEXを使用して測定したとき、37℃で4週間後、総タンパク質の約32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、又は46%、但しこれらの数値の間の任意の範囲も含め、それ以上を占める。
【0201】
インビボでの投与で使用される製剤は無菌でなければならない。これは、例えば、滅菌濾過膜を通じた濾過により容易に実現される。
【0202】
抗PD-1抗体を使用する診断方法及び画像化方法
PD-1ポリペプチドに特異的に結合する標識抗PD-1抗体、その断片、並びにその誘導体及び類似体は、診断目的で使用して、PD-1の発現、発現及び/又は活性異常と関連した疾患及び/又は障害を検出、診断、又はモニタリングすることができる。例えば、本明細書に提示する抗PD-1抗体(又はその断片)は、インサイチュ、インビボ、エクスビボ、及びインビトロでの診断アッセイ又は画像アッセイで使用可能である。PD-1ポリペプチドの発現を検出する方法は、(a)本発明の1つ又は複数の抗体を使用して個体の細胞(例えば、組織)又は体液中のポリペプチドの発現をアッセイすること、及び(b)遺伝子発現レベルを標準的な遺伝子発現レベルと比較することを含み、それによって標準的な発現レベルと比較したとき、アッセイ対象遺伝子の発現レベルが増加又は減少していれば、それは異常な発現を示唆する。
【0203】
本明細書に提示する追加の実施形態は、動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)におけるPD-1の発現又は発現異常と関連した疾患又は障害を診断する方法を含む。方法は、哺乳動物内のPD-1分子を検出することを含む。特定の実施形態では、診断は、(a)有効量の標識抗PD-1抗体(又はその断片)を哺乳動物に投与することと、(b)標識抗PD-1抗体(又はその断片)が、PD-1分子が発現している対象内の部位において優先的に濃縮可能になる(及び未結合の標識分子がバックグラウンドレベルまで排出可能になる)まで、投与後のある期間待機することと、(c)バックグラウンドレベルを決定することと;(d)標識分子がバックグラウンドレベルより高く検出されると、それが対象はPD-1の発現又は発現異常と関連した特定の疾患又は障害を有することを示唆するように、対象内の標識分子を検出することとを含む。バックグラウンドレベルは、検出された標識分子の量を特定の系についてこれまでに決定された標準値と比較することを含む、様々な方法により決定可能である。
【0204】
本明細書に提示する抗PD-1抗体(又はその断片)は、当業者にとって公知の古典的な免疫組織学的方法を使用して生体サンプル中のタンパク質レベルをアッセイするのに使用可能である(例えば、Jalkanen, et al., J. Cell. Biol. 101:976-985 (1985); Jalkanen, et al., J. Cell. Biol. 105:3087-3096 (1987)を参照)。タンパク質遺伝子発現を検出するのに役立つその他の抗体に基づく方法として、イムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)等、及びラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。適する抗体アッセイ標識は当技術分野において公知であり、酵素標識、例えばグルコースオキシダーゼ等;放射性同位体、例えばヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)(sulfur 35S))、トリチウム(3H)、インジウム(115mIn、113mIn、112In、111In)、及びテクニチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Tl)(thallium 201Ti))、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru等;ルミノール;及び蛍光標識、例えばフルオレセインやローダミン等、及びビオチンが挙げられる。
【0205】
当技術分野において公知の技術は、本明細書に提示する標識化抗体(又はその断片)に適用され得る。そのような技術として、二官能性コンジュゲーティング剤の使用が挙げられるが、但しこれに限定されない(例えば、米国特許第5,756,065号;同第5,714,631号;同第5,696,239号;同第5,652,361号;同第5,505,931号;同第5,489,425;5,435,990号;同第5,428,139号;同第5,342,604号;同第5,274,119号;同第4,994,560号;及び同第5,808,003号を参照)。
【0206】
或いは又は更に、細胞内のPD-1ポリペプチドコーディング核酸又はmRNAのレベルを、例えば、PD-1コーディング核酸又はその相補体に対応する核酸ベースのプローブを使用する蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH;1998年10月公開のW098/454 79を参照)、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術、例えばリアルタイム定量的PCR(RT-PCR)等により測定することができる。例えば、抗体に基づくアッセイを使用して血清等の生体液中の脱落抗原(shed antigen)を測定することにより、PD-1の過剰発現について試験することも可能である(例えば、1990年6月12日発行の米国特許第4,933,294号、;1991年4月18日公開のW091/05264;1995年3月28日発行の米国特許第5,401,638号;及びSias et al., J. Immunol. Methods 132:73-80 (1990)も参照)。上記アッセイとは別に、様々なインビボ及びエクスビボでのアッセイが、熟練した開業医にとって利用可能である。例えば、哺乳動物の身体内の細胞を、検出可能な標識、例えば、放射性同位体で適宜標識された抗体に曝露させることができ、そして細胞に対する抗体の結合が、例えば、放射能の外部スキャニングにより、又は抗体にこれまでに曝露された哺乳動物から採取されたサンプル(例えば、生検若しくはその他の生体サンプル)を分析することにより評価され得る。
【0207】
製造用の物品及びキット
本明細書に提示する別の実施形態は、がん、例えばメラノーマ、NSCLC、頭頸部がん(head and neck)、尿路上皮がん、乳がん(例えば、三重陰性乳がん、TNBC)、胃がん、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫である原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、食道がん、鼻咽頭癌(NPC)、胆道がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、甲状腺がん、及び唾液腺がん等の治療に役立つ物質を含有する製造用の物品である。製造用の物品は、容器とラベル、又は容器上若しくは容器関連の添付文書を含み得る。適する容器として、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ等が挙げられる。容器は、様々な物質、例えばガラス又はプラスチック等から形成され得る。一般的に、容器は、状態を治療するのに有効な組成物を保持し、また無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静脈内輸液バッグ又はバイアルであり得る)。組成物内の少なくとも1つの活性な薬剤は、本明細書に提示する抗PD-1抗体(又はその断片)である。ラベル又は添付文書は、組成物は特定の状態を治療するのに使用されることを表示する。ラベル又は添付文書は、抗体組成物を患者に投与するための指示書を更に含む。本明細書に記載するコンビナトリアル療法を含む製造用の物品及びキットについても検討される。
【0208】
添付文書とは、治療用製品の市販のパッケージに慣習的に含まれる指示書を意味し、適応、用途、用量、投与、禁忌、及び/又はそのような治療用製品の使用における警告についての情報を含む。1つの実施形態では、添付文書は、組成物はがん(例えば、頭頸部がん、肺がん、又は結腸直腸がん等)を治療するのに使用されることを表示する。
【0209】
更に、製造用の物品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば抑菌性注射用水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液等を含む第2の容器を更に含み得る。製造用の物品は、その他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業上及びユーザー上の立場から望ましいその他の物質を更に含み得る。
【0210】
様々な目的において、例えば、製造用の物品と適宜組み合わせて、患者内のPD-1を単離又は検出するのに有用なキットも提供される。PD-1を単離及び精製する場合、キットは、ビーズ(例えば、SEPHAROSE(商標)ビーズ)と結びついた、本明細書に提示する抗PD-1抗体(又はその断片)を含み得る。PD-1をインビトロで、例えば、ELISA又はウェスタンブロットにおいて検出及び定量するための抗体(又はその断片)を含むキットが提供可能である。製造用の物品と同様に、キットは、容器とラベル、又は容器上若しくは容器関連の添付文書を含む。例えば、容器は、本明細書に提示する少なくとも1つの抗PD-1抗体を含む組成物を保持する。例えば、希釈剤、及びバッファー、コントロール抗体を含む追加の容器も含まれ得る。ラベル又は添付文書は、組成物の説明書、並びに意図したインビトロでの使用又は診断上の使用に関する指示書を提供し得る。
【0211】
実施例
実施例1
抗PD-1抗体の開発
抗PD-1抗体の開発を以下に要約する。ハイブリドーマをPD-1(精製済みの組換え6xHisタグ付化PD-1_ECD抗原)免疫化マウスから構築し、そのハイブリドーマから生成したFabファージライブラリーをスクリーニングすることにより、陽性抗PD-1抗体クローンを同定した。インビトロでの機能的アッセイは、以下で更に詳細に記載されるが、これをクローンの特徴づけのために実施した。
【0212】
手短に述べると、ハイブリドーマクローンの連続希釈物を、PD1-Hisタンパク質コーティングプレートと共に、室温で1時間インキュベートし、そしてPD1結合活性を450nmでモニタリングした。プレートを、5%のミルクを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて、室温で1時間ブロックし、そしてPBS-tween20(PBST)で洗浄した後、ハイブリドーマ希釈物を添加した。ハイブリドーマクローンと共にインキュベーとした後、プレートをPBSTで洗浄し、1:4000の抗マウスIGG-HRPと共に室温で1時間インキュベートし、PBSTで洗浄し、テトラメチルベンジジン(TMB)を用いて発色させ、最終的にH2SO4を使用して反応を停止させ、そして450nmにおける吸収を測定した。
【0213】
フローサイトメトリーにより、クローンID番号11、12、14、16、18、20、24、27、及び28が、PD-1に結合可能であったことが明らかとなった。PD-1結合を評価するためのフローサイトメトリー条件には以下の各工程が含まれる:1)4E+05個のPD-1発現CHO-S細胞をPBS(2%のFBS)で2回洗浄した;2)ハイブリドーマ上清を添加し、4℃で30分間インキュベートした;3)細胞を500×gで5分間遠心分離した;4)PBS(2%のFBS)で2回洗浄した;5)1:150に希釈したヤギ抗ヒトIgG-FITCを添加して4℃で30分間インキュベートした;6)細胞をPBS(2%のFBS)で2回洗浄した;及び7)細胞を50μlの1×PBS中で懸濁し、フローサイトメトリーにより分析した。
【0214】
フローサイトメトリーを、ハイブリドーマ上清がPD-L1とPD1の間の結合をブロックする能力を評価するのに使用した。結果より、クローン#11が、参照抗PD-1抗体、例えばニボルマブと同等に結合をブロックすることが判明した。実施したフローサイトメトリー結合アッセイには以下の各工程が含まれる:1)1サンプル当たり4E+05個の細胞をPBS(2%のFBS)で2回洗浄した;2)8μg/mLのビオチン-PDL1とハイブリドーマ上清を混合した、但し容量比は1:1であった;3)工程2からの混合物60μLを細胞に添加し、そして4℃で30分間インキュベートした;4)細胞をPBS(2%のFBS)で2回洗浄した;5)細胞をアビジン-FITC(1:65希釈)と共に4℃で30分間インキュベートした;及び6)細胞をPBS(2%のFBS)で2回洗浄した。
【0215】
1つの陽性PD-1コロニー(c1G4)がSS320コンピテント細胞において同定された。c1G4クローンの特徴及び配列を以下に提示する。
【0216】
実施例2
ヒト化抗PD-1抗体である1G4(h1G4)の生成
ヒト化抗PD-1抗体である1G4(h1G4)を、ヒト生殖細胞系列軽鎖可変領域IGKV1-39*01及びヒト生殖細胞系列重鎖可変領域IGHV3-11*04を使用して生成した。手短に述べると、ヒト化を、キメラc1G4の軽鎖及び重鎖に由来するCDR残基を、ヒト免疫グロブリンの類似した軽鎖及び重鎖フレームワークにグラフティングすることにより実施した。インビトロでのファージディスプレイに基づく親和性成熟を更に行って、該ヒト化抗体の抗原に対する親和性を増強するために、CDRがグラフティングされたヒト化抗体のライブラリーを生成することが可能である。
【0217】
c1G4及びh1G4に関する配列アラインメントを
図8A及び8B図に示す。
図8Aは、キメラc1G4、ヒト化h1G4の軽鎖、ヒト生殖細胞系列軽鎖可変領域IGKV1-39
*01、及びニボルマブ(NIV)の軽鎖のアミノ酸配列アライメントを示す。
図8Bは、キメラc1G4、ヒト化h1G4の重鎖、ヒト生殖細胞系列重鎖可変領域IGHV3-11
*04、及びニボルマブ(NIV)の重鎖のアミノ酸配列アライメントを示す。ヒト化のためにc1G4からグラフティングされたCDR(相補性決定領域)を、太字及び下線付きの文字で表わした。
【0218】
実施例3
c1G4及びh1G4の平衡解離定数(KD)の決定
結合親和力及び反応速度論を、表面プラズモン共鳴法(SPR)を使用して測定した。抗ヒトIgG Fcをセンサーチップ上に最初に固定し、次に参照抗PD-1抗体、c1G4、及びh1G4をRmax約150RUで捕捉した。実験を25℃で実施し、そしてPD-1-Hisを58.8nMから7.35nMまで連続希釈して、0.1%(w/v)のBSAが補充されたHBS-P+バッファー中において捕捉された抗体上を通過させることにより測定を行った。すべてのデータを、評価ソフトウェアを用いて分析し、そして曲線を1:1ラングミュア結合モデルに近似させた。
【0219】
会合解離の反応速度論を、計算後の親和性(KD)と共に、表面プラズモン共鳴法(SPR)により測定した。c1G4及びh1G4に関する親和性の改善について、抗PD-1(参照)と対比させて下記の表4に示す。データは、2回繰り返し実施した2つの独立した実験を代表する。
【0220】
【0221】
実施例4
キメラc1G4及びヒト化h1G4抗体の結合特性
c1G4のPD-1組換えタンパク質に対する結合
ELISAアッセイを実施して、キメラc1G4及び参照抗PD-1抗体のPD-1に対する結合を評価した。キメラc1G4及び参照抗PD-1の連続希釈物を、マイクロタイターディッシュのウェル内でPD-1-Hisを用いて捕捉した。各ウェル内の捕捉された抗体の量を、抗ヒトIgG Fc-HRP-コンジュゲート二次抗体を使用し数値化した。HRP-コンジュゲート二次抗体をウェルに添加し、そしてインキュベーション後、過剰の二次抗体を洗い流した。TMBをウェルに添加し、インキュベーション後、反応を中止し、そしてHRP活性を450nmにおける吸収の増加をモニタリングすることにより測定した。抗PD-1抗体であるキメラc1G4と参照抗PD-1抗体のPD-1-Hisに対する結合を比較するために実施したELISAの結果を
図1Aに示す。
【0222】
図1Bは、抗PD-1抗体であるキメラc1G4と参照抗PD-1抗体のPD-1-APに対する結合を比較するために実施した第2セットのELISAの結果を示す。キメラc1G4及び参照抗PD-1抗体の連続希釈物を、マイクロタイターディッシュのウェル内で、抗ヒトIgG Fc抗体を用いて捕捉した。各ウェル内の捕捉された抗体の量を、AP-コンジュゲートPD-1を使用して定量した。インキュベーション後、過剰のPD-1-APを洗い流した。アルカリホスファターゼ基質を、ウェルに添加し、インキュベーション後、反応を中止し、そしてAP活性を405nmにおける吸収の増加をモニタリングすることにより測定した。
【0223】
結果は、キメラc1G4及び参照抗PD-1抗体は、PD-1-His及びPD-1-APのいずれにも結合することができることを示唆する。
c1G4のPD-1リガンドに対する結合のブロッキング及び競合
【0224】
キメラc1G4及び参照抗PD-1抗体の連続希釈物を、RTで2時間、PD-L1-APと共にインキュベートした。各抗体:抗原の混合物を、マイクロタイターディッシュのPD-1-His-コーティングウェルに添加した。インキュベーション及び洗浄の後、pNPPをウェルに添加し、そして結合したPD-L1-APを検出するために1時間インキュベートした。AP活性を405nmにおける吸収の増加をモニタリングすることにより測定した。
図2Aは、抗PD-1抗体であるキメラc1G4及び参照抗PD-1抗体がPD-L1とPD-1との結合をブロックする能力を比較するために実施したELISAの結果を示す。キメラc1G4及び参照抗PD-1抗体は、いずれもPD-L1のPD-1に対する結合をブロックすることが見出された。
【0225】
図2Bは、PD-1-Hisとの結合について、抗PD-1抗体であるキメラc1G4が参照抗PD-1抗体と競合する能力を確認するために実施したELISAの結果を示す。キメラc1G4及び参照抗PD-1抗体の連続希釈物を一定濃度のPD-1-His(0.1μg/ml)と室温で2時間事前混合し、次に一定濃度の参照抗PD-1(4μg/ml)コーティングプレートに結合させた。各ウェル中の結合PD-1-Hisの量を、抗His-HRP-コンジュゲート二次抗体を使用して定量した。インキュベーション後、過剰の二次抗体を洗い流した。TMBをウェルに添加し、インキュベーション後、反応を停止させ、そしてHRP活性を450nmにおける吸収の増加をモニタリングすることにより測定した。一定濃度のPD-1-His(0.1μg/ml)を、一定濃度のNIV(4μg/ml)コーティングプレートに添加し、そして室温で1時間インキュベートし、次にキメラc1G4及び参照抗PD-1抗体の連続希釈物をウェルに添加した。インキュベーション及び洗浄後、各ウェル中の結合したPD-1-Hisの量を、抗His-HRP-コンジュゲート二次抗体を使用して定量した。
【0226】
これらのデータは、キメラc1G4及び参照抗PD-1抗体のいずれも、PD-L1のPD-1に対する結合をブロックすることができ、またキメラc1G4は、PD-1-Hisとの結合について抗PD-1(参照)と競合することができることを示唆する。
PD-1発現CHO-S細胞に対するc1G4及びh1G4の結合
【0227】
細胞表面において組換えヒトPD-1を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株を開発し、そしてフローサイトメトリーによりPD-1ヒトモノクロナール抗体の特異性を決定するのに使用した。CHO細胞に、膜貫通型PD-1をコードする完全長cDNAを含有する発現プラスミドをトランスフェクトした。c1G4及びh1G4抗PD-1モノクロナール抗体の結合を、トランスフェクト細胞を連続希釈した抗PD-1モノクロナール抗体と共に、FACSバッファー(1%FBSを含むPBS)中でインキュベートすることにより評価した。細胞をフローバッファーで洗い流し、そしてビオチン標識ウサギ抗ヒトIgG FcγAb及びストレプトアビジン-PEを用いて結合を検出した。フローサイトメトリー分析を、Cytomics FC500(Beckman Coulter Inc.社)を使用して実施した。
【0228】
図3A及び3Bは、フローサイトメトリーによるCHO-S細胞(
図3A)、及びPD-1トランスフェクトCHO-S細胞(
図3B)に対するc1G4抗体の結合について提示する。参照抗PD-1及び抗PD-L1抗体を陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。結果は、c1G4はPD-1をトランスフェクトしたCHO細胞に結合したが、しかしヒトPD-1をトランスフェクトしなかったCHO細胞には結合しなかったことを示唆する。
【0229】
細胞表面上のPD-1に対するヒト化h1G4及びオリジナルのc1G4抗体の結合特性を
図9に示す。
選択されたc1G4及びh1G4抗体による、PD-1に対するリガンド結合のブロッキング
【0230】
抗PD-1であるc1G4及びh1G4を、リガンドであるPD-L1がPD-1発現CHO-S細胞に結合するのをブロックする能力について、フローサイトメトリーアッセイを使用して試験した。抗PD-1及び抗PD-L1抗体を、陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。PD-1発現CHO-S細胞を、FACSバッファー(1%のFBSを含むPBS)に懸濁した。様々な濃度のc1G4及びh1G4抗PD-1抗体、参照抗PD-1、及び抗PD-L1抗体を細胞懸濁物に添加し、そして4℃で30分間インキュベートした。未結合の抗体を洗い流し、そしてビオチン標識PD-L1-Fc融合タンパク質を添加し、そして4℃で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、次にストレプトアビジン-PEにより4℃で30分間染色した。フローサイトメトリー分析を、Cytomics FC500(Beckman Coulter Inc.社)を使用して実施した。
【0231】
染色の平均蛍光強度(MFI)により測定されるように、抗PD-1モノクロナール抗体であるc1G4は、PD-L1のPD-1トランスフェクトCHO-S細胞に対する結合をブロックした。このデータは、染色の平均蛍光強度(MFI)により測定されるように、c1G4及びh1G4のいずれも、PD-L1のPD-1トランスフェクトCHO-S細胞に対する結合をブロックしたことを示唆する(
図4及び
図10)。
【0232】
ヒト化抗PD-1抗体の活性化ヒトT細胞に対する結合
ヒトT細胞を、MagniSort(商標)ヒトT細胞富化キット(eBioscience社)を使用してPBMCから単離した。単離したT細胞を、5μg/mlのフィトヘマグルチニン(PHA)により3日間活性化させて、PD-1発現を刺激した。活性化T細胞を収集し、そしてヒトFc遮断薬(eBioscience社)と共に、FACSバッファー(2%のFBSを含むPBS)中、4℃で20分間インキュベートした。
【0233】
抗PD-1モノクロナール抗体の結合を、FACSバッファー中で、活性化T細胞を連続希釈した抗PD-1モノクロナール抗体と共にインキュベートすることにより評価した。細胞をフローバッファーで洗浄し、そして結合をFITC標識ウサギ抗ヒトIgG FcγAbを用いて検出した。フローサイトメトリー分析を、Cytomics FC500(Beckman Coulter Inc.社)を使用して実施した。参照抗PD-1抗体及びアバスチン(抗VEGF)を陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。
【0234】
ヒト化抗PD-1抗体であるh1G4の活性化ヒトT細胞に対する結合の結果を
図12に示す。
【0235】
実施例5
混合白血球反応(MLR)において、抗PD-1であるc1G4及びh1G4がサイトカイン産生に及ぼす効果
リンパ球エフェクター細胞に至るPD-1経路をブロッキングしたときの効果を実証するのに、混合白血球反応を採用した。抗PD-1抗体が存在する又はしないときの増殖、IFN-γ分泌、及びIL-2分泌についてアッセイ内T細胞を試験した。
【0236】
ヒトT細胞を、Lympho-kwik T(One Lamda,Inc.社)を使用してPBMCから精製した。単離したT細胞をPBSに懸濁し、そして1μMのCFSEを用いて室温で10分間標識した。完全培地(10%のFBSを含むRPMI-1640)で細胞を洗浄した後、CFSE標識T細胞を1E6/細胞の濃度で完全培地中に懸濁した。
【0237】
同種異系樹状細胞をPBMCから生成した。単離したPBMCを、200U/mlの組換えヒトIL-3(eBioscience社)共に終夜インキュベートし、単球/マクロファージ集団をプレートに付着させた。非接着細胞を除去し、プレートを完全培地で2回洗浄した。プレート上の細胞を、次に200U/mlのヒトIL-4(eBioscience社)及び200U/mlのヒトGM-CSF(eBioscience社)を含有する完全培地中で6日間培養した。6日目に、TNF-α(100U/ml)を培養物に添加することにより、単球由来の樹状細胞を成熟させ、そして終夜インキュベートした。成熟したDCをトリプシン処理、採取し、そして1E5/細胞の濃度で完全培地中に懸濁した。
【0238】
各反応では、200μlの総容量中に、105個のCFSE標識T細胞、及び104個の同種異系樹状細胞が含まれた。抗PD-1モノクロナール抗体であるc1G4又はh1G4を、異なる抗体濃度で各培養物に添加した。抗体無し又は抗VEGF抗体(アバスチン)のいずれかを陰性コントロールとして使用した。参照抗PD-1抗体を陽性コントロールとして使用した。細胞を37℃で5日間培養した。5日目以降、100μlの培地をサイトカイン測定用として各培養物から採取した。サイトカインのレベルを、ヒトIFN-γ又はIL-2 ELISA MAX(商標)Deluxeキット(BioLegend)を使用して測定した。細胞を収集し、そしてT細胞増殖についてフローサイトメトリーにより分析した。
【0239】
図5Aは、ヒトPD-1に対するモノクロナール抗体であるc1G4により促進された濃度依存性IL-2分泌を説明し、また
図5Bは、ヒトPD-1に対するモノクロナール抗体であるc1G4による濃度依存性IFN-γ分泌を説明する。
【0240】
図13Aは、ヒトPD-1に対するモノクロナール抗体であるh1G4により促進された濃度依存性IL-2分泌を説明し、また
図13Bは、ヒトPD-1に対するモノクロナール抗体であるh1G4により促進される濃度依存性IFN-γ分泌を説明する。
【0241】
ヒトPD-1に対するモノクロナール抗体であるc1G4は、混合白血球反応アッセイにおいてCD4
+及びCD8
+T細胞増殖を促進する。
図6Aは、c1G4抗体が様々な濃度で存在するときのCD4
+T細胞増殖を説明し、また
図6Bは、c1G4抗体が様々な濃度で存在するときのCD8
+T細胞増殖を説明する。
図14Aは、h1G4抗体が様々な濃度で存在するときのCD4
+T細胞増殖を説明し、また
図14Bは、h1G4抗体が様々な濃度で存在するときのCD8
+T細胞増殖を説明する。
【0242】
まとめると、これらの結果は、抗PD-1モノクロナール抗体であるc1G4及びh1G4はT細胞増殖、IFN-γ分泌、及びIL-2分泌を促進することを示唆する。対照的に、陰性コントロール抗体を含有する培養物は、T細胞増殖、IFN-γ又はIL-2分泌の増加を示さなかった。
【0243】
実施例6
c1G4及びh1G4抗体の腫瘍増殖阻害活性
抗ヒトPD-1抗体のインビボでの活性を、免疫不全状態のNOD/SCID(非肥満性糖尿病/重度複合型免疫欠損)マウスを使用して、異種移植マウスモデルにおいて調査した。がん細胞及び単離したヒトPBMCを、表示のエフェクター対標的(E:T)の比で皮下投与直前に混合した。各マウスに、がん細胞とヒトPBMCの混合物を両側にイノキュレーションした。マウス4匹を各実験群に割り振った。第1用量の試験品を、がん/エフェクター細胞の移植から1日後に腹腔内投与した。マウスに、試験品の投与を1週間に2回、3~4週間施した。腫瘍の形成を、1週間に2回、各動物において観察した。腫瘍をカリパスにより測定し、そして腫瘍容量(V)を、式:V(mm3)=0.5×(長さ(mm)×幅(mm)×幅(mm)/2)を使用して計算した。
【0244】
HT29/PBMC異種移植モデルにおいてc1G4又はh1G4抗体を用いたときの腫瘍増殖曲線を、
図7A及び
図15Aにそれぞれ示す。HT29/PBMC異種移植モデルにおいて、c1G4又はh1G4抗体を用いたとき、その28日目又は21日目における個々の腫瘍容量を
図7B及び
図15Bにそれぞれ提示した。更に、NCI-H292/PBMCにおいてh1G4抗体を用いたときの腫瘍増殖曲線を
図16Aに示す。h1G4抗体を用いたときの25日目の個々の腫瘍容量を
図16Bに提示した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。
【0245】
更に、HT29/PBMC異種移植モデルにおける抗PD-1及び抗VEGFモノクロナール抗体の併用療法についても試験した。抗PD-1と抗VEGFを併用したときの腫瘍阻害の増強を示すデータを
図21に示す。
【0246】
実施例7
h1G4の種交差反応性
組換えヒト、ラット、マウス、及びカニクイザルのPD-1融合タンパク質は、Sino Biological Inc.社からを購入した。PD-1/Fc(1ウェル当たり9ng)を、4℃、終夜インキュベートすることにより、96ウェルアッセイプレート上に固定した。非特異的結合部位を、5%のスキムミルクを含むPBSを使用して、室温で1時間ブロックした。プレートをPBSTで3回洗浄後、表示の濃度のh1G4、参照抗PD-1(陽性コントロール)、及びHLX01(陰性コントロール)を、固定したタンパク質と共に室温で1時間インキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄し、次にPBS中で1/10,000に希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG F(ab)’2(Jackson ImmunoResearch Laboratories社)と共に、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、TMB(eBioscience社)を使用して発色させた。吸収を、Vmaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices社)により450nmの波長で読み取った。
【0247】
【0248】
実施例8
h1G4抗体の腫瘍増殖阻害活性
hPD1 KIマウスにおけるh1G4抗体の腫瘍増殖阻害活性
抗ヒトPD-1抗体のインビボでの活性を、ヒトPD-1ノックインC57BL/6マウス(hPD1 KIマウス)において調査した。ヒトPD-L1トランスフェクトマウス結腸がん細胞をマウスの皮下にイノキュレーションした(マウス1匹当たり細胞1E6個)。腫瘍容量がほぼ75mm
3に達したら(9日目)、抗体治療を開始した。動物4匹を、治療前に各実験群に割り振った。抗PD-1抗体の投与を、1週間に2回、3~4週間、動物に施した。腫瘍の形成を、1週間に2回、各動物において観察した。腫瘍をカリパスにより測定し、そして腫瘍容量(V)を、式:V(mm
3)=0.5×(長さ(mm)×幅(mm)×幅(mm)/2)を使用して計算した。hPD1 KIマウスにおけるh1G4抗体の腫瘍増殖阻害活性を
図17に示す。
ヒト化NSGマウスを対象とした三重陰性乳がん(TNBC)細胞株異種移植モデルにおけるh1G4の有効性試験
【0249】
ヒト化NSGマウス(NOD.Cg-Prkdcscid IL2rgtm1Wjl/SzJ)の皮下に、MDA-MB-231(ヒト三重陰性乳がん細胞株)をイノキュレーションした。腫瘍容量が約60~150mm
3に達したとき、表に基づく腫瘍容量を基準としてマウスを3群(n=9匹/群)にランダム化した。マウスの腹腔内にh1G4を7日に1回、試験0、7、14、21、及び28日目に投与した。キイトルーダ(Keytruda)(抗PD-1)を、5日に1回、試験0、5、10、15、及び20日目に腹腔内注射した。腫瘍の形成を、各動物において3~4日毎に観察した。腫瘍をカリパスにより測定し、そして腫瘍容量(V)を、式:V(mm
3)=0.5×(長さ(mm)×幅(mm)×幅(mm)/2)を使用して計算した。
図18は、ヒト化のNSGマウスを対象とした三重陰性乳がん(TNBC)細胞株異種移植モデルにおけるh1G4の有効性試験について説明する。
【0250】
実施例9
親和性成熟型抗PD-1抗体33B、66E、及び711Dの平衡解離定数(KD)の決定
ヒト化抗PD-1抗体であるh1G4を、インビトロでのファージディスプレイに基づく親和性成熟実験で使用して、結合性能が改善したクローンを生成した。h1G4のCDR-L1/CDR-L3/CDR-H3(3つのCDRに着目)及びCDR-L1/CDR-L2/CDR-L3/CDR-H1/CDR-H2/CDR-H3(6つのCDRに着目)核酸ライブラリーの両方をPCRにより生成し、ファージディスプレイベクターにクローン化し、そしてイーコリ(E.coli)TG1又はSS320細胞に形質転換してファージのライブラリーを生成した。両ライブラリーについて、ストレプトアビジンコーティングマグネットDynabeads(登録商標)M-280(Thermo Fisher Scientific社、#11205D)と結びついたビオチン化PD-1-Hisを用いて3ラウンドのパニングを行った後、3つのFabクローン、すなわち、33B、66E、及び711DをELISAによりスクリーニングした。更なる反応速度論的特徴を、表面プラズモン共鳴法(SPR)(
図9において上記した同一のSPR法を参照)により、33B、66E、及び711Dの完全長IgGを使用して測定し、そして参照抗PD-1抗体と同等又はそれより良好である結合性能を有することが見出された。
【0251】
表5は、ファージ-ディスプレイに基づく親和性成熟からスクリーニングした33B、66E、及び711DのCDRのアミノ酸配列を、h1G4と比較して示す。
【0252】
【0253】
表6は、会合解離の反応速度論を、表面プラズモン共鳴法(SPR)により測定した33B、66E、及び711Dの計算後の親和性(KD)と共に示す。参照抗PD-1抗体と対比した抗PD-1抗体の親和性の改善についても表6に示した。データは、2回繰り返し実施した2つの独立した実験を代表する。
【0254】
【0255】
実施例10
親和性成熟型抗体の機能
混合白血球反応(MLR)において、ヒト抗PD-1抗体(33B、66E、及び711D)がサイトカイン産生に及ぼす効果
上記方法と同じ方法に従い、この試験は、ヒトPD-1に対するヒトモノクロナール抗体、例えば66E及び711D等は、混合白血球反応アッセイにおいてIFN-γ分泌及びIL-2分泌を促進することを示す。参照抗PD-1抗体及びアバスチン(抗VEGF)を陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。
図19Aは、親和性成熟型抗体による濃度依存性IL-2分泌を説明し、また
図19Bは、親和性成熟型抗体による濃度依存性IFN-γ分泌を説明する。
HT29/PBMC異種移植モデルにおけるヒト抗PD-1抗体の腫瘍増殖阻害活性
【0256】
上記方法と同じ方法に従い、マウス(n=4匹/群)の皮下に、ヒト結腸がん細胞株HT29と新鮮分離したヒトPBMCの混合物(がん細胞:PBMC=3:1)を移植した。第1日目から1週間に2回、抗PD-1抗体をマウスの腹腔内に注射した。腫瘍容量を1週間に2回測定した。HT29/PBMC異種移植モデルにおけるヒト親和性成熟型抗PD-1抗体の腫瘍増殖阻害活性を
図20に示す。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。
【0257】
実施例11
PD-1併用療法
抗PD-1とその他の治療用抗体を用いた併用療法のインビボでの活性を、免疫不全状態のNOD/SCID(非肥満性糖尿病/重度複合型免疫欠損)マウスを使用して、異種移植マウスモデルにおいて調査した。がん細胞及び単離したヒトPBMCを、表示のエフェクター対標的(E:T)の比で、皮下投与直前に混合した。各マウスに、がん細胞とヒトPBMCの混合物を両側にイノキュレーションした。動物4匹又は5匹を各実験群に割り振った。第1用量の試験品を、がん/エフェクター細胞の移植から1日後に腹腔内投与した。マウスに、試験品の投与を1週間に2回、3~4週間施した。腫瘍の形成を、1週間に2回、各動物において観察した。腫瘍をカリパスにより測定し、そして腫瘍容量(V)を、式:V(mm3)=0.5×(長さ(mm)×幅(mm)×幅(mm)/2)を使用して計算した。
【0258】
NSCLC異種移植マウスモデルにおける抗PD-1mAb+抗VEGFmAbの腫瘍増殖阻害活性
この試験では、マウス(n=4匹/群)の皮下に、ヒトNSCLC細胞NCI-H292と新鮮分離したヒトPBMCの混合物(がん細胞:PBMC=3:1)を移植した。抗PD-1(h1G4)、及び抗VEGF(HLX04)抗体を、第1日目から1週間に2回、マウスの腹腔内に注射した。腫瘍増殖曲線を
図22Aに示す。21日目における個々の腫瘍容量を
図22Bに提示した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。これらのデータは、抗PD-1mAb、h1G4は、抗VEGFmAb(HLX04)と併用すると、いずれの薬剤においても、その単独使用よりも有効にNCI-H292異種移植片の腫瘍増殖を抑制することを説明する。
【0259】
その他の試験では、マウス(n=4匹/群)の皮下に、ヒトNSCLC細胞NCI-H292と新鮮分離したヒトPBMCの混合物(がん細胞:PBMC=3:1)を移植した。抗PD-1(h1G4)、及び抗VEGFR2(HLX06)抗体を、第1日目から1週間に2回、マウスの腹腔内に注射した。腫瘍増殖曲線を
図23Aに示した。21日目における個々の腫瘍容量を
図23Bに提示した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。これらのデータは、抗PD-1mAb(h1G4)は、抗VEGFR2mAb(HLX06)と併用すると、いずれの薬剤においても、その単独使用より有効にNCI-H292異種移植片の腫瘍増殖を抑制することを説明する。
NSCLC異種移植マウスモデルにおける抗PD-1mAb+抗EGFRmAbの腫瘍増殖阻害活性
【0260】
上記方法と同じ方法に従い、マウス(n=4匹/群)の皮下に、ヒトNSCLC細胞NCI-H292と新鮮分離したヒトPBMCの混合物(がん細胞:PBMC=3:1)を移植した。第1日目から1週間に2回、抗PD-1(HLX10)、及び抗EGFR(HLX07)抗体をマウスの腹腔内に注射した。腫瘍増殖曲線を
図24Aに示した。21日目における個々の腫瘍容量を
図24Bに提示した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。これらのデータは、抗PD-1mAb、HLX10(h1G4)は、抗EGFRmAb(HLX07)と併用すると、いずれの薬剤においても、その単独使用よりも有効にNCI-H292異種移植片の腫瘍増殖を抑制することを示唆する。
【0261】
更に、マウス(n=5匹/群)の皮下に、ヒト結腸がん細胞HT-29と新鮮分離したヒトPBMCの混合物(がん細胞:PBMC=3:1)を移植した。抗PD-1(HLX10)、及び抗EGFR(HLX07)抗体を、第1日目から1週間に2回、マウスの腹腔内に注射した。腫瘍増殖曲線を
図25Aに示した。21日目における個々の腫瘍容量を
図25Bに提示した。すべてのデータポイントは、平均値±SEMである。
【0262】
これらのデータは、抗PD-1mAb、HLX10(h1G4)は、抗EGFRmAb(HLX07)と併用すると、単独使用したHLX10よりも有効にBRAF突然変異体HT-29異種移植片の腫瘍増殖を抑制することを示唆する。HLX10+HLX07治療は、HLX07治療単独よりも若干大きな腫瘍増殖阻害を生成する。HLX10+HLX07治療及びHLX07治療単独の平均腫瘍増殖阻害率は、それぞれ47%及び28%であった。
【0263】
上記実施例は、説明目的に限定して提示され、またいかなる場合においても、本発明の範囲を限定するように意図されない。本明細書に示され、記載される改変に付加して、本発明の様々な改変が上記記載から当業者にとって明白となるが、それも添付の特許請求の範囲に含まれる。
【0264】
実施形態のリスト
本発明により提示される実施形態として、非限定的に下記事項が挙げられる:
【0265】
1.(1)アミノ酸配列KASQDVTTAVA(配列番号9)を含むCDR-L1;(2)アミノ酸配列WASTRHT(配列番号10)を含むCDR-L2;及び(3)アミノ酸配列QQHYTIPWT(配列番号11)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列と、(1)アミノ酸配列FTFSNYGMS(配列番号12)を含むCDR-H1;(2)アミノ酸配列TISGGGSNIY(配列番号13)を含むCDR-H2;及び(3)アミノ酸配列VSYYYGIDF(配列番号14)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列とを含む抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【0266】
2.(1)アミノ酸配列KASTDVTTAVA(配列番号15)を含むCDR-L1;(2)アミノ酸配列WASLRHT(配列番号16)を含むCDR-L2;及び(3)アミノ酸配列QQHYGIPWT(配列番号17)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列と、(1)アミノ酸配列FRFSNYGMS(配列番号18)を含むCDR-H1;(2)アミノ酸配列TISGGGSNAY(配列番号19)を含むCDR-H2;及び(3)アミノ酸配列TSYYYGIDF(配列番号20)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列とを含む成熟型抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【0267】
3.(1)アミノ酸配列KAKQDVTTAVA(配列番号21)を含むCDR-L1;(2)アミノ酸配列WASTRHT(配列番号10)を含むCDR-L2;及び(3)アミノ酸配列QQHYWIPWT(配列番号22)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列と、(1)アミノ酸配列FTFSNYGMS(配列番号12)を含むCDR-H1;(2)アミノ酸配列TISGGGSNIY(配列番号13)を含むCDR-H2;及び(3)アミノ酸配列VSYYYGIDL(配列番号23)を含むCDR-H3を含む重鎖可変(VH)ドメイン配列とを含む成熟型抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【0268】
4.(1)アミノ酸配列KASQDVTNAVA(配列番号24)を含むCDR-L1;(2)アミノ酸配列WASTRHT(配列番号10)を含むCDR-L2;及び(3)アミノ酸配列QQHYTIPWT(配列番号11)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列と、(1)アミノ酸配列FTFSNYGMS(配列番号12)を含むCDR-H1;(2)アミノ酸配列TISGGGSNIY(配列番号13)を含むCDR-H2;及び(3)アミノ酸配列SSYYYGIDL(配列番号25)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列とを含む成熟型抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。ヒトIgGのFc配列を含む、実施形態1~9のいずれかに記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【0269】
5.抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab)’2、単鎖Fv(scFv)、Fv断片、ダイアボディ、及び直線状の抗体からなる群から選択される、実施形態1~4のいずれかに記載の抗PD-1抗体の抗原結合断片。
【0270】
6.多重特異性抗体である、実施形態1~5のいずれかに記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【0271】
7.治療剤にコンジュゲートされている、実施形態1~6のいずれかに記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【0272】
8.標識にコンジュゲートされている、実施形態1~7のいずれかに記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【0273】
9.標識が、放射性同位体、蛍光色素、及び酵素からなる群から選択される、実施形態8に記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片。
【0274】
10.実施形態1~4のいずれかに記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子。
【0275】
11.実施形態10に記載の核酸分子をコードする発現ベクター。
【0276】
12.実施形態11に記載の発現ベクターを含む細胞。
【0277】
13.実施形態12に記載の細胞を培養することと、細胞培養物から抗体を回収することとを含む、抗PD-1抗体又はその抗原結合断片を製造する方法。
【0278】
14.実施形態1~9のいずれかに記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【0279】
15.実施形態1~9のいずれかに記載の抗PD-1抗体又はその抗原結合断片を、患者から得たサンプルと接触させること、及びPD-1タンパク質に結合した抗PD-1抗体を検出することにより、サンプル中のPD-1タンパク質を検出する方法。
【0280】
16.抗PD-1抗体又はその抗原結合断片が、免疫組織化学アッセイ(IHC)又はELISAアッセイで使用される、実施形態15に記載の方法。
【0281】
17.有効量の実施形態14に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象内のがんを治療する方法。
【0282】
18.がんが、メラノーマ、NSCLC、頭頸部がん、尿路上皮がん、三重陰性乳がん(TNBC)、胃がん、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫である原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣がん、肺がん、食道がん、鼻咽頭癌(NPC)、胆道がん、結腸直腸がん、乳がん、子宮頸がん、甲状腺がん、及び唾液腺がんからなる群から選択される、実施形態17に記載の方法。
【0283】
19.対象が、抗悪性腫瘍剤、化学療法剤、増殖阻害剤、及び細胞毒性剤からなる群から選択される治療剤を更に投与される、実施形態18に記載の方法。
【0284】
20.対象が、放射線療法を更に投与される、実施形態19に記載の方法。
【0285】
21.対象が、VEGF、VEGFR2、又はEGFRに対する治療用抗体を更に投与される、実施形態18に記載の方法。
【0286】
配列リスト
配列番号1(c1G4_LCヌクレオチド配列)
【表7】
配列番号2(c1G4_LCアミノ酸配列,Underscore:Kabatが定義したCDR,
図8Aを参照)
【表8】
配列番号3(c1G4_HCヌクレオチド配列)
【表9】
配列番号4(c1G4_HCアミノ酸配列,Underscore:Kabatが定義したCDR,
図8Bを参照)
【表10】
配列番号5(h1G4_LCヌクレオチド配列)
【表11】
配列番号6(h1G4_LCアミノ酸配列,Underscore:Kabatが定義したCDR,
図8Aを参照)
【表12】
配列番号7(h1G4_HCヌクレオチド配列)
【表13】
配列番号8(h1G4_HCアミノ酸配列,Underscore:Kabatが定義したCDR,
図8Bを参照)
【表14】
配列番号:9(c1G4およびh1G4 CDR-L1):KASQDVTTAVA
配列番号:10(c1G4およびh1G4 CDR-L2):WASTRHT
配列番号:11(c1G4およびh1G4 CDR-L3):QQHYTIPWT
配列番号:12(c1G4およびh1G4 CDR-H1):FTFSNYGMS
配列番号:13(c1G4およびh1G4 CDR-H2):TISGGGSNIY
配列番号:14(c1G4およびh1G4 CDR-H3):VSYYYGIDF
配列番号:15(33B CDR-L1):KASTDVTTAVA
配列番号:16(33B CDR-L2):WASLRHT:
配列番号:17(33B CDR-L3):QQHYGIPWT
配列番号:18(33B CDR-H1):FRFSNYGMS
配列番号:19(33B CDR-H2):TISGGGSNAY
配列番号:20(33B CDR-H3):TSYYYGIDF
配列番号:21(66E CDR-L1):KAKQDVTTAVA
配列番号:22(66E CDR-L3):QQHYWIPWT
配列番号:23(66E CDR-H3):VSYYYGIDL
配列番号:24(711D CDR-L1):KASQDVTNAVA
配列番号:25(711D CDR-H3):SSYYYGIDL
【配列表】