(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】量子ドット分散液、自発光感光性樹脂組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220513BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G02B5/20
G09F9/30 349B
(21)【出願番号】P 2019540631
(86)(22)【出願日】2018-01-29
(86)【国際出願番号】 KR2018001234
(87)【国際公開番号】W WO2018143628
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2019-07-26
(31)【優先権主張番号】10-2017-0015542
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514217912
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132,Yakchon-ro,Iksan-si Jeollabuk-do 570-977,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュホ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヒョンジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ソン ウック
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ス
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-275912(JP,A)
【文献】特開平09-015859(JP,A)
【文献】特表2020-512570(JP,A)
【文献】特表2019-532348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0261031(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106654068(CN,A)
【文献】特開2018-109761(JP,A)
【文献】特開2018-091924(JP,A)
【文献】特開2008-111985(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098570(WO,A1)
【文献】特開2015-121702(JP,A)
【文献】特開2010-009995(JP,A)
【文献】特開2014-077046(JP,A)
【文献】特開2016-098375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドット及び溶剤を含む量子ドット分散液であって、前記溶剤は、下記の化学式1で表される化合物を含む、量子ドット分散液。
[化学式1]
【化1】
前記式中、
Aは、C
1~C
10のアルキル基及びハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換若しくは非置換の、C
3~C
10のシクロアルキル基又はC
5~C
10の芳香族基であり、
Lは、C
1~C
6のアルキレン基であり、
Rは、C
1~C
10のアルキル基又はC
2~C
10のアルケニル基である。
【請求項2】
Aは、ハロゲンで置換若しくは非置換の、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル又はシクロペンタジエニルであり、Lは、C
1~C
6のアルキレン基であり、Rは、C
1~C
10のアルキル基又はC
2~C
10のアルケニル基である、請求項1に記載の量子ドット分散液。
【請求項3】
前記化学式1で表される化合物は、フェニル-酢酸エチルエステル、3-フェニル-プロピオン酸メチルエステル、3-フェニル-プロピオン酸エチルエステル、4-フェニル-酪酸エチルエステル、5-フェニル-ペンタン酸エチルエステル、6-フェニル-ヘキサン酸エチルエステル、4-フェニル-酪酸プロピルエステル、4-(4-クロロ-フェニル)-酪酸エチルエステル、4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-酪酸エチルエステル、3-シクロペンタ-1,3-ジエニル-プロピオン酸メチルエステル、4-シクロペンタ-1,3-ジエニル-酪酸エチルエステル、5-シクロペンタ-1,3-ジエニル-ペンタン酸エチルエステル、6-シクロペンタ-1,3-ジエニル-ヘキサン酸エチルエステル、4-シクロペンタ-1,3-ジエニル-酪酸プロピルエステル、3-シクロペンチル-プロピオン酸メチルエステル、4-シクロペンチル-酪酸エチルエステル、5-シクロペンチル-ペンタン酸エチルエステル、6-シクロペンチル-ヘキサン酸エチルエステル、4-シクロペンチル-酪酸プロピルエステル
、シクロヘキシル-酢酸エチルエステル、3-シクロヘキシル-プロピオン酸メチルエステル、4-シクロヘキシル-酪酸エチルエステル、5-シクロヘキシル-ペンタン酸エチルエステル、6-シクロヘキシル-ヘキサン酸エチルエステル、4-シクロヘキシル-酪酸プロピルエステ
ル及びシクロヘキシル-酢酸アリルエステルからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の量子ドット分散液。
【請求項4】
前記溶剤は、誘電率が20℃で12.0未満である、請求項1に記載の量子ドット分散液。
【請求項5】
分散剤をさらに含む、請求項1に記載の量子ドット分散液。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の量子ドット分散液、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、及び光重合開始剤を含む、自発光感光性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット分散液、自発光感光性樹脂組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置に係り、より詳しくは、人体に有害な溶剤を用いなくても分散性に優れる量子ドット分散液、自発光感光性樹脂組成物、カラーフィルタ、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタは、白色光から赤、緑、青の3種の色を抽出し微細な画素単位で機能させる薄膜フィルム型光学部品であって、一画素の大きさが数十から数百μm程度である。このようなカラーフィルタは、それぞれの画素同士の境界部分を遮光するために透明基板上に所定のパターンで形成されたブラックマトリックス層及びそれぞれの画素を形成するために複数の色(通常、赤(R)、緑(G)、青(B))の3原色を所定の順に配列してなる画素部が順に積層された構造を取っている。
【0003】
近年、カラーフィルタを具現する方法の一つとして、顔料分散型の感光性樹脂を用いた顔料分散法が適用されているが、光源から照射された光がカラーフィルタを透過する過程で光の一部がカラーフィルタに吸収されることで光効率が低下し、また、カラーフィルタに含まれている顔料の特性によって色再現が低下するという問題点が生じている。
【0004】
特に、カラーフィルタが各種の画像表示装置をはじめとした多様な分野において使用されることに伴い、優れたパターン特性だけでなく、高い色再現率とともに高輝度、高明暗比のような性能が求められているところ、こうした問題を解決するために、量子ドットを含む自発光感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルタの製造方法が提案された。
【0005】
大韓民国公開特許第2006-0084668号は量子ドット蛍光体に関するものであって、量子ドット及び前記量子ドットを固定させる固状の担持体を含むことで優れた発光効率を保持する発光ダイオードに関する内容を開示している。
【0006】
しかしながら、当該特許では、前記量子ドット蛍光体を分散させるための分散溶剤として分散性に優れるクロロホルム、トルエン、ヘキサンなどのような人体に有害な溶剤を用いている。前述した溶剤の場合、高揮発性化合物(Volatile Organic Compound)であるか又は発癌性、神経毒性を示し、また生殖機能異常を誘発し得る危険性があるため、作業者の取り扱い環境に対する厳格な管理が要される。
【0007】
したがって、このような量子ドットを用いるためには、乾燥によって人体に有害な溶剤を除去したり、分散溶剤を除去した後、高揮発性化合物ではなく、発癌性、神経毒性を示さず、且つ生殖機能異常を誘発し得る危険性がないか又は極めて低い溶剤に置換したりする過程を経るようになり、このような過程で量子効率が低下する現象が生じ、その結果、製造されるカラーフィルタ又は画像表示装置の発光特性が低下するという問題が生じている。
【0008】
そのため、量子ドットに対する優れた分散性を示し、且つ、これを用いて製造されるカラーフィルタ又は画像表示装置の発光特性にも優れ、人体に有害な成分を含有していない量子ドット分散液の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一目的は、人体に有害な溶剤を用いなくても分散性に優れる量子ドット分散液を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、前記量子ドット分散液を含む自発光感光性樹脂組成物を提供することである。
【0011】
本発明のまた他の目的は、前記自発光感光性樹脂組成物を用いて形成されるカラーフィルタを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、前記カラーフィルタを備えた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一方、本発明は、量子ドット及び溶剤を含む量子ドット分散液であって、前記溶剤は、C3~C10のシクロアルキル基、C2~C10のヘテロシクロアルキル基、C5~C10の芳香族基、及びC4~C10のヘテロ芳香族基からなる群より選ばれる1種以上とエステル結合を有する化合物を含む量子ドット分散液を提供する。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記溶剤は、下記の化学式1で表される化合物及び下記の化学式2で表される化合物から選ばれる1種以上を含んでいてよい。
【0015】
[化学式1]
【0016】
【0017】
[化学式2]
【0018】
【0019】
前記式中、
Aは、C1~C10のアルキル基及びハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換若しくは非置換の、C3~C10のシクロアルキル基、C2~C10のヘテロシクロアルキル基、C5~C10の芳香族基又はC4~C10のヘテロ芳香族基であり、
Lは、C1~C6のアルキレン基であるか又は存在せず、
Rは、C1~C10のアルキル基又はC2~C10のアルケニル基である。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記溶剤は、誘電率が20℃で12.0未満であってよい。
【0021】
他の一方で、本発明は、前記量子ドット分散液、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、及び光重合開始剤を含む自発光感光性樹脂組成物を提供する。
【0022】
また他の一方で、本発明は、前記自発光感光性樹脂組成物を用いて形成されるカラーフィルタを提供する。
【0023】
また他の一方で、本発明は、前記カラーフィルタが備えられたことを特徴とする画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る量子ドット分散液は、人体に有害な溶剤を用いなくても分散性に優れ、これを含む自発光感光性樹脂組成物を用いて形成されるカラーフィルタが優れた発光特性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0026】
本発明の一実施形態は、量子ドット及び溶剤を含む量子ドット分散液であって、前記溶剤は、C3~C10のシクロアルキル基、C2~C10のヘテロシクロアルキル基、C5~C10の芳香族基、及びC4~C10のヘテロ芳香族基からなる群より選ばれる1種以上とエステル結合を有する化合物を含む量子ドット分散液に関する。
【0027】
本発明の一実施形態において、前記量子ドットとは、ナノ大きさの半導体物質を称するものである。原子が分子をなし、分子がクラスタという小さな分子の集合体を構成してナノ粒子をなすが、このようなナノ粒子が半導体特性を呈しているときにこれを量子ドットという。前記量子ドットは、外部からエネルギーを受けて励起状態になると、当該量子ドットの自ら該当するエネルギーバンドギャップに応じたエネルギーを放出するようになる。
【0028】
前記量子ドット分散液を含む自発光感光性樹脂組成物から製造されたカラーフィルタは、前記量子ドットを含むことで光の照射によって発光(光ルミネッセンス(luminescence))することができる。
【0029】
カラーフィルタを含む通常の画像表示装置では、白色光が前記カラーフィルタを透過してカラーが具現され、この過程で光の一部がカラーフィルタに吸収されるため光効率が低下する。しかし、本発明に係る自発光感光性樹脂組成物から製造されたカラーフィルタを含む場合には、カラーフィルタが光源の光によって自己発光するため、より優れた光効率を具現することができ、また色相を有する光が放出されることからより優れた色再現性を示し、且つ光ルミネッセンスにより全方向に光が放出されることから、視野角も改善することができるという利点がある。
【0030】
前記量子ドットは、光による刺激で発光することができる量子ドット粒子であれば特に限定されない。例えば、II-VI族半導体化合物;III-V族半導体化合物;IV-VI族半導体化合物;IV族元素又はこれを含む化合物;及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるものであってよく、これらは、単独で又は2種以上混合して用いていてよい。
【0031】
具体的に、前記II-VI族半導体化合物は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;及びCdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれるものであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0032】
前記III-V族半導体化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;及びGaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれるものであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0033】
前記IV-VI族半導体化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;及びSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれる1種以上であってよいが、同様にこれらに限定されるものではない。
【0034】
これらに限定されるものではないが、前記IV族元素又はこれを含む化合物は、Si、Ge、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる元素;及びSiC、SiGe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物からなる群より選ばれるものであってよい。
【0035】
前記量子ドットは、均質な(homogeneous)単一構造;コア-シェル(core-shell)、グラディエント(gradient)構造などのような二重結合;又はこれらの混合構造を有するものであってよい。
【0036】
具体的に、前記コア-シェルの二重結合において、それぞれのコア(core)とシェル(shell)をなす物質は、前述した互いに異なる半導体化合物からなるものであってよい。例えば、前記コアは、CdSe、CdS、ZnS、ZnSe、CdTe、CdSeTe、CdZnS、PbSe、AgInZnS、及びZnOからなる群より選ばれた1種以上の物質を含んでいてよいが、これらに限定されるものではない。前記シェルは、CdSe、ZnSe、ZnS、ZnTe、CdTe、PbS、TiO、SrSe、及びHgSeからなる群より選ばれた1種以上の物質を含んでいてよいが、同様にこれらに限定されるものではない。
【0037】
前記量子ドットは、湿式化学工程(wet chemical process)、有機金属化学蒸着工程(MOCVD、metal organic chemical vapor deposition)、又は分子線エピタキシ工程(MBE、molecular beam epitaxy)によって合成されていてよいが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記湿式化学工程とは、有機溶剤に前駆体物質を入れて粒子を成長させる方法である。結晶が成長するときに有機溶剤が自然に量子ドット結晶の表面に配位し、分散剤の役割をして結晶の成長を調節するようになるので、有機金属化学蒸着工程や分子線エピタキシのような気相蒸着法よりも容易且つ低廉な工程によってナノ粒子の成長を制御することができ、そのため、前記湿式化学工程を用いて前記量子ドットを製造することが好ましい。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記量子ドットは有機配位子をさらに含むものであってよい。前記有機配位子は、前記量子ドットの表面に結合されて当該量子ドットを安定化させる役割を遂行することができる。前記有機配位子は、本発明で限定するものではないが、例えば、C5~C20のアルキルカルボン酸、アルケニルカルボン酸、又はアルキニルカルボン酸;チオール(thiol)、リン酸、ピリジン、メルカプトアルコール、ホスフィン、ホスフィン酸化物などを含んでいてよく、量子ドットの表面を効果的に保護して安定性を向上するという面から、C5~C20のアルキルカルボン酸、アルケニルカルボン酸、又はアルキニルカルボン酸;チオール及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上を含むものが好ましい。
【0040】
前記有機配位子は、前記量子ドットの総面積に対し、5%以上の表面を覆っていてよい。
【0041】
前記有機配位子の含量は、量子ドット1モルに対し、0.1~10モルであってよい。
【0042】
前記量子ドットは、前記量子ドット分散液の全体100重量%に対し、5~70重量%、好ましくは、10~65重量%、より好ましくは、15~60重量%の量で含まれていてよい。前記量子ドットが前記範囲内で含まれる場合、感光特性に優れる自発光感光性樹脂組成物の提供が可能である。
【0043】
本発明の一実施形態において、前記溶剤は、C3~C10のシクロアルキル基、C2~C10のヘテロシクロアルキル基、C5~C10の芳香族基、及びC4~C10のヘテロ芳香族基からなる群より選ばれる1種以上とエステル結合を有する化合物を含む。
【0044】
具体的に、前記溶剤は、下記の化学式1で表される化合物、及び下記の化学式2で表される化合物から選ばれる1種以上を含んでいてよい。
【0045】
[化学式1]
【0046】
【0047】
[化学式2]
【0048】
【0049】
前記式中、
Aは、C1~C10のアルキル基及びハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換若しくは非置換の、C3~C10のシクロアルキル基、C2~C10のヘテロシクロアルキル基、C5~C10の芳香族基又はC4~C10のヘテロ芳香族基であり、
Lは、C1~C6のアルキレン基であるか又は存在せず、
Rは、C1~C10のアルキル基又はC2~C10のアルケニル基である。
【0050】
本明細書において用いられるC1~C10のアルキル基は、炭素数1~10個からなる直鎖状若しくは分岐状の1価炭化水素を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本明細書において用いられるC3~C10のシクロアルキル基は、炭素数3~10個からなる単環式又は融合環式の炭化水素を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本明細書において用いられるC2~C10のヘテロシクロアルキル基は、炭素数3~10個からなる単環式又は融合環式の炭化水素の環炭素のうちの1つ以上が酸素、硫黄又は窒素で置換された官能基を意味し、例えば、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、チアゾリジニル、オキシラニルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本明細書において用いられるC5~C10の芳香族基は、5員~10員の単環式又は融合環式の芳香族炭化水素を意味し、例えば、フェニル、ナフチル、シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)、テトラヒドロナフチルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
本明細書において用いられるC4~C10のヘテロ芳香族基は、5員~10員の単環式又は融合環式の芳香族炭化水素の環炭素のうちの1つ以上が酸素、硫黄又は窒素で置換された官能基を意味し、例えば、ピリジニル(pyridinyl)、フラニル(furanyl)、チオフェニル(thiophenyl)、インドリル(indolyl)、キノリニル(quinolinyl)、イミダゾリニル(imidazolinyl)、オキサゾリニル(oxazolyl)、チアゾリル(thiazolyl)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本明細書において用いられるC1~C6のアルキレン基は、炭素数1~6個からなる直鎖状若しくは分岐状の2価炭化水素を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本明細書において用いられるC2~C10のアルケニル基は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する炭素数2~10個からなる直鎖状若しくは分岐状の不飽和炭化水素を意味し、例えば、エチレニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、アリルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本発明の一実施形態において、Aは、ハロゲンで置換若しくは非置換の、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、フェニル、シクロペンタジエニル又はフラニルであり、Lは、C1~C6のアルキレン基であるか又は存在せず、Rは、C1~C10のアルキル基又はC2~C10のアルケニル基であってよい。
【0058】
前記化学式1で表される化合物としては、フェニル-酢酸エチルエステル、3-フェニル-プロピオン酸メチルエステル、3-フェニル-プロピオン酸エチルエステル、4-フェニル-酪酸エチルエステル、5-フェニル-ペンタン酸エチルエステル、6-フェニル-ヘキサン酸エチルエステル、4-フェニル-酪酸プロピルエステル、4-(4-クロロ-フェニル)-酪酸エチルエステル、4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-酪酸エチルエステル、3-シクロペンタ-1,3-ジエニル-プロピオン酸メチルエステル、4-シクロペンタ-1,3-ジエニル-酪酸エチルエステル、5-シクロペンタ-1,3-ジエニル-ペンタン酸エチルエステル、6-シクロペンタ-1,3-ジエニル-ヘキサン酸エチルエステル、4-シクロペンタ-1,3-ジエニル-酪酸プロピルエステル、3-フラン-2-イル-プロピオン酸メチルエステル、4-フラン-2-イル-酪酸エチルエステル、5-フラン-2-イル-ペンタン酸エチルエステル、6-フラン-2-イル-ヘキサン酸エチルエステル、4-フラン-2-イル-酪酸プロピルエステル、フラン-2-カルボン酸プロピルエステル、フラン-2-カルボン酸ブチルエステル、3-シクロペンチル-プロピオン酸メチルエステル、4-シクロペンチル-酪酸エチルエステル、5-シクロペンチル-ペンタン酸エチルエステル、6-シクロペンチル-ヘキサン酸エチルエステル、4-シクロペンチル-酪酸プロピルエステル、シクロペンタンカルボン酸イソブチルエステル、シクロペンタンカルボン酸ペンチルエステル、3-(テトラヒドロ-フラン-3-イル)-プロピオン酸メチルエステル、4-(テトラヒドロ-フラン-3-イル)-酪酸エチルエステル、5-(テトラヒドロ-フラン-3-イル)-ペンタン酸エチルエステル、6-(テトラヒドロ-フラン-3-イル)-ヘキサン酸エチルエステル、4-(テトラヒドロ-フラン-3-イル)-酪酸プロピルエステル、テトラヒドロ-フラン-3-カルボン酸プロピルエステル、テトラヒドロ-フラン-3-カルボン酸ブチルエステル、3-(テトラヒドロ-フラン-2-イル)-プロピオン酸メチルエステル、4-(テトラヒドロ-フラン-2-イル)-酪酸エチルエステル、5-(テトラヒドロ-フラン-2-イル)-ペンタン酸エチルエステル、6-(テトラヒドロ-フラン-2-イル)-ヘキサン酸エチルエステル、4-(テトラヒドロ-フラン-2-イル)-酪酸プロピルエステル、テトラヒドロ-フラン-2-カルボン酸 2-エチル-ヘキシルエステル、シクロヘキシル-酢酸エチルエステル、3-シクロヘキシル-プロピオン酸メチルエステル、4-シクロヘキシル-酪酸エチルエステル、5-シクロヘキシル-ペンタン酸エチルエステル、6-シクロヘキシル-ヘキサン酸エチルエステル、4-シクロヘキシル-酪酸プロピルエステル、シクロヘキサンカルボン酸プロピルエステル、シクロヘキサンカルボン酸ヘキシルエステル、シクロヘキシル-酢酸アリルエステル、3-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-プロピオン酸メチルエステル、4-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-酪酸エチルエステル、5-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-ペンタン酸エチルエステル、6-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-ヘキサン酸エチルエステル、4-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-酪酸プロピルエステル、テトラヒドロ-ピラン-2-カルボン酸プロピルエステル、テトラヒドロ-ピラン-2-カルボン酸ブチルエステル、3-(テトラヒドロ-ピラン-3-イル)-プロピオン酸メチルエステル、4-(テトラヒドロ-ピラン-3-イル)-酪酸エチルエステル、5-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-ペンタン酸エチルエステル、6-(テトラヒドロ-ピラン-3-イル)-ヘキサン酸エチルエステル、4-(テトラヒドロ-ピラン-3-イル)-酪酸プロピルエステル、テトラヒドロ-ピラン-3-カルボン酸イソブチルエステル、テトラヒドロ-ピラン-3-カルボン酸ペンチルエステル、3-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-プロピオン酸メチルエステル、4-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-酪酸エチルエステル、5-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-ペンタン酸エチルエステル、6-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-ヘキサン酸エチルエステル、4-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-酪酸プロピルエステル、テトラヒドロ-ピラン-4-カルボン酸ブチルエステル、及びテトラヒドロ-ピラン-4-カルボン酸プロピルエステルなどを例に挙げられる。
【0059】
前記化学式2で表される化合物としては、酢酸ベンジルエステル、プロピオン酸フェネチルエステル、プロピオン酸 3-フェニル-プロピルエステル、プロピオン酸 4-フェニル-ブチルエステル、酪酸フェネチルエステル、プロピオン酸 2-(4-クロロ-フェニル)-エチルエステル、プロピオン酸 2-(3,4-ジクロロ-フェニル)-エチルエステル、酢酸シクロペンタ-1,3-ジエニルメチルエステル、プロピオン酸 2-シクロペンタ-1,3-ジエニル-エチルエステル、プロピオン酸 3-シクロペンタ-1,3-ジエニル-プロピルエステル、プロピオン酸 4-シクロペンタ-1,3-ジエニル-ブチルエステル、酪酸 2-シクロペンタ-1,3-ジエニル-エチルエステル、酢酸フラン-2-イルメチルエステル、プロピオン酸 2-フラン-2-イル-エチルエステル、プロピオン酸 3-フラン-2-イル-プロピルエステル、プロピオン酸 4-フラン-2-イル-ブチルエステル、酪酸 2-フラン-2-イル-エチルエステル、酢酸シクロペンチルメチルエステル、プロピオン酸 2-シクロペンチル-エチルエステル、プロピオン酸 3-シクロペンチル-プロピルエステル、プロピオン酸 4-シクロペンチル-ブチルエステル、酪酸 2-シクロペンチル-エチルエステル、酢酸テトラヒドロ-フラン-3-イルメチルエステル、プロピオン酸 2-(テトラヒドロ-フラン-3-イル)-エチルエステル、プロピオン酸 3-(テトラヒドロ-フラン-3-イル)-プロピルエステル、プロピオン酸 4-(テトラヒドロ-フラン-3-イル)-ブチルエステル、酪酸 2-(テトラヒドロ-フラン-3-イル)-エチルエステル、酢酸テトラヒドロ-フラン-2-イルメチルエステル、プロピオン酸 2-(テトラヒドロ-フラン-2-イル)-エチルエステル、プロピオン酸 3-(テトラヒドロ-フラン-2-イル)-プロピルエステル、プロピオン酸 4-(テトラヒドロ-フラン-2-イル)-ブチルエステル、酪酸 2-(テトラヒドロ-フラン-2-イル)-エチルエステル、酢酸シクロヘキシルメチルエステル、プロピオン酸 2-シクロヘキシル-エチルエステル、プロピオン酸 3-シクロヘキシル-プロピルエステル、プロピオン酸 4-シクロヘキシル-ブチルエステル、酪酸 2-シクロヘキシル-エチルエステル、ブト-3-エン酸シクロヘキシルメチルエステル、酢酸テトラヒドロ-ピラン-2-イルメチルエステル、プロピオン酸 2-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-エチルエステル、プロピオン酸 3-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-プロピルエステル、プロピオン酸 4-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-ブチルエステル、酪酸 2-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-エチルエステル、酢酸テトラヒドロ-ピラン-3-イルメチルエステル、プロピオン酸 2-(テトラヒドロ-ピラン-3-イル)-エチルエステル、プロピオン酸 3-(テトラヒドロ-ピラン-2-イル)-プロピルエステル、プロピオン酸 4-(テトラヒドロ-ピラン-3-イル)-ブチルエステル、酪酸 2-(テトラヒドロ-ピラン-3-イル)-エチルエステル、酢酸テトラヒドロ-ピラン-4-イルメチルエステル、プロピオン酸 2-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-エチルエステル、プロピオン酸 3-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-プロピルエステル、プロピオン酸 4-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-ブチルエステル、及び酪酸 2-(テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-エチルエステルなどを例に挙げられる。
【0060】
前記溶剤は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いていてよい。
【0061】
前記溶剤は、誘電率が20℃で12.0未満、好ましくは、10未満、より好ましくは、6未満であってよい。例えば、前記溶剤は、誘電率が20℃で2.0~5.5であってよい。前記溶剤の誘電率が12.0未満であると、量子ドットの分散の際に量子ドットの凝集が生じることなく均一な分散が可能となり、量子ドット分散液の光ルミネッセンス効率に優れ得る。
【0062】
前記溶剤の含量は、量子ドット分散液の全体100重量%に対し、5~95重量%、好ましくは、20~90重量%、より好ましくは、30~80重量%の範囲であってよい。前記溶剤が5重量%未満で含まれると、分散性が悪くなる問題が生じることがあり、95重量%を超えると、樹脂組成物の固形分を調節し難くなる問題が生じることがある。
【0063】
本発明の一実施形態において、前記量子ドット分散液は、分散剤をさらに含んでいてよい。
【0064】
前記分散剤は、量子ドットの脱凝集効果、及び自発光感光性樹脂組成物への使用時の極性の差による析出現象を抑制し、且つカラーフィルタの製造工程において量子ドットの保護層の役割を与えるために用いられ得る。
【0065】
前記分散剤としては、樹脂型の分散剤であって、リン酸エステル系分散剤、ウレタン系分散剤、アクリル系分散剤などを用いることができる。具体的に、前記分散剤の市販品としては、ビックケミー社製の商品名:DISPER BYK-103、DISPER BYK-110、DISPER BYK-111、DISPER BYK-2000、DISPER BYK-2001、DISPER BYK-2070、DISPER BYK-2150、DISPER BYK-160、DISPER BYK-161、DISPER BYK-162、DISPER BYK-163、DISPER BYK-164、DISPER BYK-166などを用いることができる。
【0066】
前記分散剤は、前記量子ドット分散液の固形分全体100重量部に対し、1~300重量部の範囲で含まれていてよく、好ましくは、3~250重量部、より好ましくは、5~200重量部の範囲で含まれていてよい。前記分散剤が前記範囲内で含まれると、前記量子ドットの脱凝集効果に優れ、本発明に係る量子ドット分散液及びこれを含む自発光感光性樹脂組成物中における極性の差による析出現象の抑制が可能となり、且つカラーフィルタの製造工程において量子ドットの保護層の役割を遂行することができるため好ましい。
【0067】
前記分散剤が前記範囲未満で含まれると、前記量子ドットの脱凝集効果がやや低下することがあり、前記範囲を超えて含まれると、前記量子ドット分散液を含む自発光感光性樹脂組成物の現像特性がやや低下することがあるため、前記範囲内で含まれることが好ましい。
【0068】
本発明の一実施形態は、量子ドット分散液(A)、アルカリ可溶性樹脂(B)、光重合性化合物(C)、及び光重合開始剤(D)を含む自発光感光性樹脂組成物に関する。
【0069】
[量子ドット分散液(A)]
本発明の一実施形態において、前記量子ドット分散液(A)は、前述した量子ドット分散液を用いる。
【0070】
前記量子ドット分散液の含量は、自発光感光性樹脂組成物の全体100重量%に対し、3~80重量%、好ましくは、5~70重量%、より好ましくは、10~60重量%の範囲であってよい。前記量子ドット分散液が前記範囲でに含まれると、発光特性に優れたカラーフィルタの製造が可能となる。前記量子ドット分散液が前記範囲未満で含まれると、発光特性がやや低下することがあり、前記量子ドット分散液が前記範囲を超えて含まれると、相対的に他の構成成分の含量が減ることに伴いパターンが形成され難くなることがあり、且つ信頼性が低下することがあるため、前記範囲内で含まれることが好ましい。
【0071】
[アルカリ可溶性樹脂(B)]
本発明の一実施形態において、前記アルカリ可溶性樹脂(B)は、前記自発光感光性樹脂組成物で製造するカラーフィルタの非露光部をアルカリ可溶性にして除去可能にし、露光領域を残留させる役割を遂行することができる。また、前記自発光感光性樹脂組成物が前記アルカリ可溶性樹脂を含む場合、前記量子ドットを組成物中に一様に分散できようにし、且つ工程中に前記量子ドットを保護して輝度を保つようにする役割を遂行することができる。
【0072】
前記アルカリ可溶性樹脂は、10~200(KOHmg/g)の酸価を有するものを選定して用いていてよい。前記「酸価」とは、重合体1gを中和するのに要する水酸化カリウムの量(mg)として測定される値であって溶解性に関与する。前記アルカリ可溶性樹脂の酸価が前記範囲未満であると、十分な現像速度を確保し難くなることがあり、前記範囲を超えると、基板との密着性が減少してパターンの短絡が生じ易くなり、且つ組成物全体の保存安定性が低下して粘度が上昇するという問題が生じることがある。
【0073】
また、前記アルカリ可溶性樹脂は、カラーフィルタに使用するための表面硬度の向上のために分子量及び分子量分布度(Mw/Mn)の限定が考えられる。好ましくは、重量平均分子量が3,000~30,000、より好ましくは、5,000~20,000になるようにし、分子量分布度は1.5~6.0、好ましくは、1.8~4.0の範囲を有するように直接重合し又は購入して用いることができる。前記範囲の分子量及び分子量分布度を有するアルカリ可溶性樹脂は、硬度を向上することができ、且つ高い残膜率だけでなく現像液中の非露出部の溶解性に優れ解像度を向上することができる。
【0074】
前記アルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基含有不飽和単量体の重合体、又はこれと共重合可能な不飽和結合を有する単量体との共重合体、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0075】
前記カルボキシル基含有不飽和単量体としては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸などが挙げられる。具体的に、不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-クロロアクリル酸、桂皮酸などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸は酸無水物であってもよく、具体的には、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物などが挙げられる。また、不飽和ジカルボン酸は、そのモノ(2-(メタ)アクリロイルオキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸は、その両末端ジカルボキシ重合体のモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレートなどが挙げられる。これらのカルボキシル基含有単量体は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いていてよい。
【0076】
また、カルボキシル基含有不飽和単量体と共重合が可能な単量体は、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル化合物、不飽和カルボン酸グリシジルエステル化合物、カルボン酸ビニルエステル化合物、不飽和エーテル化合物、シアン化ビニル化合物、不飽和アミド化合物、不飽和イミド化合物、脂肪族共役ジエン化合物、分子鎖の末端にモノアクリロイル基又はモノメタクリロイル基を有する巨大単量体、バルキー性単量体、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた1種であってよい。
【0077】
より具体的に、前記共重合可能な単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエン、p-クロロスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-ビニルベンジルメチルエーテル、m-ビニルベンジルメチルエーテル、p-ビニルベンジルメチルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、インデンなどの芳香族ビニル化合物;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルアクリレート、n-プロピルメタクリレート、i-プロピルアクリレート、i-プロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルアクリレート、i-ブチルメタクリレート、sec-ブチルアクリレート、sec-ブチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールメタクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタジエニルアクリレート、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート、グリセロールモノアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの不飽和カルボン酸エステル;2-アミノエチルアクリレート、2-アミノエチルメタクリレート、2-ジメチルアミノエチルアクリレート、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-アミノプロピルアクリレート、2-アミノプロピルメタクリレート、2-ジメチルアミノプロピルアクリレート、2-ジメチルアミノプロピルメタクリレート、3-アミノプロピルアクリレート、3-アミノプロピルメタクリレート、3-ジメチルアミノプロピルアクリレート、3-ジメチルアミノプロピルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル化合物;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル化合物;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどの不飽和エーテル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどのシアン化ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、α-クロロアクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチルメタクリルアミドなどの不飽和アミド化合物;マレイミド、ベンジルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどの不飽和イミド化合物;1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの脂肪族共役ジエン化合物;及びポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ-n-ブチルアクリレート、ポリ-n-ブチルメタクリレート、ポリシロキサンの重合体分子鎖の末端にモノアクリロイル基又はモノメタクリロイル基を有する巨大単量体;比誘電率を下げられるノルボルニル骨格を有する単量体、アダマンタン骨格を有する単量体、ロジン骨格を有する単量体などのバルキー性単量体などが挙げられる。
【0078】
前記アルカリ可溶性樹脂は、自発光感光性樹脂組成物の固形分全体100重量%に対し、5~80重量%、具体的に、10~70重量%、より具体的に、15~60重量%の範囲で含まれていてよい。前記アルカリ可溶性樹脂が前記範囲内で含まれると、現像液への溶解性が十分になってパターン形成が容易になり、現像時に露光部の画素部分の膜減少が抑制され、非画素部分の欠落性が良好になるため好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂が前記範囲未満で含まれると、非画素部分が欠落し易くなることがあり、また、前記アルカリ可溶性樹脂が前記範囲を超えて含まれると、現像液への溶解性がやや低下してパターンが形成され難くなることがある。
【0079】
[光重合性化合物(C)]
本発明の一実施形態において、前記光重合性化合物(C)は、光及び後述する光重合開始剤の作用で重合することができる化合物であって、単官能単量体、2官能単量体、その他の多官能単量体などが挙げられる。
【0080】
前記単官能単量体の種類は特に限定されず、例えば、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、N-ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0081】
前記2官能単量体の種類は特に限定されないが、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイルオキシエチル)エーテル、3-メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0082】
前記多官能単量体の種類は特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシレイテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシレイテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシレイテッドジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロポキシレイテッドジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうち2官能以上の多官能単量体が好ましく用いられる。
【0083】
前記光重合性化合物は、自発光感光性樹脂組成物の固形分全体100重量%に対し、5~70重量%、具体的に、10~60重量%、より具体的に、15~50重量%の範囲で含まれていてよい。前記光重合性化合物が前記範囲内で含まれると、画素部の強度や平滑性の面で好ましいという利点がある。前記光重合性化合物が前記範囲未満で含まれると、画素部の強度がやや低下することがあり、また、前記光重合性化合物が前記範囲を超えて含まれると、平滑性がやや低下することがあるため、前記範囲内で含まれることが好ましい。
【0084】
[光重合開始剤(D)]
本発明の一実施形態において、前記光重合開始剤(D)は、前記光重合性化合物を重合させ得るものであれば、その種類は特に制限されずに用いていてよい。特に、前記光重合開始剤は、重合特性、開始効率、吸収波長、入手性、価格などの観点から、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシム系化合物、及びチオキサントン系化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いることが好ましい。
【0085】
前記アセトフェノン系化合物の具体的な例としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オンなどが挙げられる。
【0086】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0087】
前記トリアジン系化合物の具体的な例としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0088】
前記ビイミダゾール系化合物の具体的な例としては、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(アルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール又は4,4’,5,5’位のフェニル基がカルボアルコキシ基によって置換されているビイミダゾール化合物などが挙げられる。これらのうち、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールが好ましく用いられる。
【0089】
前記オキシム系化合物の具体的な例としては、o-エトキシカルボニル-α-オキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられ、市販品として、BASF社製のIrgacure OXE 01、OXE 02が代表的なものである。
【0090】
前記チオキサントン系化合物としては、例えば、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0091】
前記光重合開始剤は、自発光感光性樹脂組成物の固形分全体100重量%に対し、0.1~20重量%、好ましくは、0.5~15重量%、より好ましくは、1~10重量%の範囲で含まれていてよい。前記光重合開始剤が前記範囲内で含まれると、自発光感光性樹脂組成物が高感度化して露光時間が短縮するため生産性が向上し、且つ高い解像度を保つことができるため好ましい。また、本発明に係る自発光感光性樹脂組成物を用いて形成した画素部の強度と前記画素部の表面での平滑性が良好になるという利点がある。
【0092】
前記光重合開始剤は、本発明の自発光感光性樹脂組成物の感度を向上させるために、光重合開始補助剤をさらに含んでいてよい。前記光重合開始補助剤が含まれると、感度が一層高められて生産性が向上するという利点がある。
【0093】
前記光重合開始補助剤は、例えば、アミン化合物、カルボン酸化合物、及びチオール基を有する有機硫黄化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましく用いられていてよいが、これらに限定されるものではない。
【0094】
前記アミン化合物としては、具体的に、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの脂肪族アミン化合物、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(通称:ミヒラーケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどの芳香族アミン化合物を用いていてよく、特に、芳香族アミン化合物を用いることが好ましい。
【0095】
前記カルボン酸化合物は、芳香族ヘテロ酢酸類であることが好ましく、具体的に、フェニルチオ酢酸、メチルフェニルチオ酢酸、エチルフェニルチオ酢酸、メチルエチルフェニルチオ酢酸、ジメチルフェニルチオ酢酸、メトキシフェニルチオ酢酸、ジメトキシフェニルチオ酢酸、クロロフェニルチオ酢酸、ジクロロフェニルチオ酢酸、N-フェニルグリシン、フェノキシ酢酸、ナフチルチオ酢酸、N-ナフチルグリシン、ナフトキシ酢酸などが挙げられる。
【0096】
前記チオール基を有する有機硫黄化合物の具体例としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)などが挙げられる。
【0097】
前記光重合開始補助剤は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜追加して用いていてよい。
【0098】
[溶剤(E)]
本発明の一実施形態に係る自発光感光性樹脂組成物は、追加溶剤をさらに含んでいてよい。
【0099】
前記追加溶剤は特に限定されず、当該分野において通常に用いられる有機溶剤を含んでいてよく、これは本発明の量子ドット分散液に含まれる溶剤と同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0100】
前記追加溶剤は、具体的に、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテルなどのアルキレングリコールアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエテル、ジエチレングリコールジエチルエテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類;メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテートなどのアルコキシアルキルアセテート類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類;3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類;γ-ブチロラクトンなどの環状エステル類などが挙げられる。
【0101】
前記追加溶剤は、塗布性や乾燥性の面から、好ましくは、沸点が100℃~200℃の有機溶剤を用いていてよく、より好ましくは、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、3-エトキシプロピオン酸エチルや、3-メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類を用いていてよく、さらに好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチルなどを用いていてよい。これらの追加溶剤は、それぞれ単独で又は2種以上混合して用いていてよい。
【0102】
本発明に係る自発光感光性樹脂組成物中に含まれる溶剤全体(量子ドット分散液中の溶剤及び追加溶剤)は、前記自発光感光性樹脂組成物の全体100重量%に対し、20~90重量%、好ましくは、25~85重量%、より好ましくは、30~80重量%の範囲で含まれていてよい。前記溶剤全体の含量が前記範囲内で含まれると、ロールコータ、スピンコータ、スリットアンドスピンコータ、スリットコータ(ダイコータとも称することがある)、インクジェットなどの塗布装置で塗布したときに良好な塗布性が得られるため好ましい。前記溶剤全体の含量が前記範囲未満で含まれると、塗布性がやや低下することにより工程が滑らかに進められ難くなることがあり、前記範囲を超えると、前記自発光感光性樹脂組成物から形成されたカラーフィルタの性能がやや低下することがあるという問題が生じ得る。
【0103】
[添加剤(F)]
本発明に係る自発光感光性樹脂組成物は、コーティング性や密着性を高めるために密着促進剤、界面活性剤などのような添加剤をさらに含んでいてよい。
【0104】
前記密着促進剤は、基板との密着性を高めるために添加されてよいものであって、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる反応性置換基を有するシランカップリング剤を含んでいてよいが、これらに限定されるものではない。例えば、前記シランカップリング剤としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いていてよい。
【0105】
本発明に係る自発光感光性樹脂組成物が前記界面活性剤を含む場合、コーティング性が向上し得るという利点がある。例えば、前記界面活性剤としては、BM-1000、BM-1100(BM Chemie社製)、フロラード FC-135/FC-170C/FC-430(住友スリーエム(社)製)、SH-28PA/-190/SZ-6032(東レシリコーン(株)製)などのフッ素系界面活性剤を用いていてよいが、これらに限定されるものではない。
【0106】
その他、本発明に係る自発光感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などのような添加剤をさらに含んでいてよく、当該添加剤も同様、本発明の効果を損なわない範囲で当業者が適宜追加して使用可能である。例えば、前記添加剤は、前記自発光感光性樹脂組成物の全体100重量%を基準に、0.05~10重量%、具体的に、0.1~10重量%、より具体的に、0.1~5重量%の範囲で用いていてよいが、これらに限定されるものではない。
【0107】
本発明の一実施形態は、上述した自発光感光性樹脂組成物を用いて形成されるカラーフィルタに関する。
【0108】
本発明に係るカラーフィルタは、本発明に係る量子ドット分散液を含む自発光感光性樹脂組成物の硬化物を含むため、量子ドット粒子が一様に分散され、発光特性に優れるという利点がある。
【0109】
前記カラーフィルタは、基板及び前記基板の上部に形成されたパターン層を含む。
【0110】
前記基板は、前記カラーフィルタそれ自体基板であってよく、又は、ディスプレイ装置などにカラーフィルタが位置する部位であってもよく、特に制限されない。前記基板は、ガラス、シリコン(Si)、シリコン酸化物(SiOx)又は高分子基板であってよく、前記高分子基板は、ポリエテルスルホン(polyethersulfone、PES)又はポリカーボネート(polycarbonate、PC)などであってよい。
【0111】
前記パターン層は、本発明に係る自発光感光性樹脂組成物を含む層であって、前記自発光感光性樹脂組成物を塗布し、所定のパターンで露光、現像、及び熱硬化してなる層であってよい。前記パターン層は、当業界において通常的に知られた方法にて形成すればよい。
【0112】
前記のような基板及びパターン層を含むカラーフィルタは、各パターン間に形成された隔壁又はブラックマトリックスをさらに含んでいてよいが、これに限定されない。
【0113】
また、前記カラーフィルタのパターン層の上部に形成された保護膜をさらに含んでいてよい。
【0114】
前記カラーフィルタは、赤色パターン層、緑色パターン層、及び青色パターン層からなる群より選ばれる1種以上を含んでいてよい。具体的に、前記カラーフィルタは、本発明に係る赤量子ドットを含む赤色パターン層、緑量子ドットを含む緑色パターン層、及び青量子ドットを含む青色パターン層からなる群より選ばれる1つ以上を含んでいてよい。前記赤色パターン層、緑色パターン層、及び青色パターン層は、それぞれ光照射の際に赤色光、緑色光、及び青色光を放出することができ、このとき、前記光源の放出光は特に限定されないが、より優れた色再現性の面から青色光を放出する光源を用いていてよい。
【0115】
前記カラーフィルタは、赤色パターン層、緑色パターン層、及び青色パターン層のうちの2種色相のパターン層のみを備えていてよいが、これに限定されない。なお、前記カラーフィルタが2種色相のパターン層のみを備える場合、前記パターン層は、前記量子ドット粒子を含有しない透明パターン層をさらに備えていてよい。
【0116】
前記カラーフィルタが前記2種色相のパターン層のみを備える場合は、前記2種色相以外の色相を呈する波長の光を放出する光源を用いていてよい。例えば、前記カラーフィルタが赤色パターン層及び緑色パターン層を含む場合は、青色光を放出する光源を用いていてよく、この場合、赤量子ドットは赤色光を、緑量子ドットは緑色光を放出し、前記透明パターン層は、前記光源による青色光が素通しすることによって青色を呈していてよい。
【0117】
本発明の一実施形態は、上述したカラーフィルタが備えられた画像表示装置に関する。
【0118】
本発明に係るカラーフィルタは、通常の液晶表示装置だけでなく、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種の画像表示装置に適用可能である。
【0119】
本発明に係る画像表示装置は、本発明に係る量子ドット分散液を含む自発光感光性樹脂組成物の硬化物で製造されたカラーフィルタを含むことで、発光特性に優れるという効果がある。
【0120】
以下、実施例、比較例及び実験例によって本発明をより具体的に説明することにする。なお、これらの実施例、比較例及び実験例は、単に本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されないことは当業者にとって自明である。
【0121】
[合成例1:InP/ZnSコア-シェル量子ドット粒子の合成]
[InPコア量子ドットの製造]
インジウムアセテート(Indium acetate)0.4mmol(0.058g)、パルミチン酸(palmitic acid)0.6mmol(0.15g)及び1-オクタデセン(octadecene)20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換した。280℃で加熱した後、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMS3P)0.2mmol(58μl)及びトリオクチルホスフィン1.0mLの混合溶液を素早く注入し、20分間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にアセトンを入れ、遠心分離して得た沈澱をトルエンに分散させた。得られたInP半導体ナノ結晶は、吸収最大波長560~590nmを示した。
【0122】
[InP/ZnSコア-シェル量子ドットの製造]
酢酸亜鉛2.4mmol(0.448g)、オレイン酸4.8mmol及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に置換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInPコア溶液2mlを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中の硫黄(S/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にエタノールを入れ、遠心分離して得た沈澱を減圧ろ過後に減圧乾燥して、InP/ZnSコア-シェル量子ドットを収得した。
【0123】
[製造例1~14:量子ドット分散液の製造]
下記の表1に表したように、それぞれの成分を混合して量子ドット分散液を製造した(単位:重量%)。
【0124】
【0125】
A-1:合成例1で得られたInP/ZnSコア-シェル量子ドット
B-1:フェニル-酢酸エチルエステル(20℃における誘電率(ε):5.11)
B-2:3-フェニル-プロピオン酸エチルエステル(20℃における誘電率(ε):4.28)
B-3:シクロヘキシル-酢酸エチルエステル(20℃における誘電率(ε):3.82)
B-4:シクロヘキシル-酢酸アリルエステル(20℃における誘電率(ε):3.16)
B-5:プロピオン酸フェネチルエステル(20℃における誘電率(ε):4.98)
B-6:酢酸シクロヘキシルメチルエステル(20℃における誘電率(ε):4.06)
B-7:ブト-3-エン酸シクロヘキシルメチルエステル(20℃における誘電率(ε):3.48)
B-8:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)(20℃における誘電率(ε):12.3)
C-1:DISPER BYK-111(ビックケミー社製、リン酸エステル系分散剤)
C-2:DISPER BYK-103(ビックケミー社製、リン酸エステル系分散剤)
C-3:DISPER BYK-161(ビックケミー社製、ウレタン系分散剤)
C-4:DISPER BYK-2001(ビックケミー社製、アクリル系分散剤)
[合成例2:アルカリ可溶性樹脂の合成]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート120重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル80重量部、AIBN 2重量部、アクリル酸5.0重量部、4-メチルスチレン55.0重量部、ベンジルメタクリレート20重量部、メチルメタクリレート20重量部、及びn-ドデシルメルカプタン3重量部を投入し、窒素置換した。次いで撹拌し、反応液の温度を80℃に上昇させ、8時間反応させた。こうして合成されたアルカリ可溶性樹脂の固形分の酸価は17.4mgKOH/gであり、GPCで測定した重量平均分子量Mwは約17,370であった。
【0126】
[実施例1~11及び比較例1~3:自発光感光性樹脂組成物の製造]
下記の表2に表したように、それぞれの成分を混合して自発光感光性樹脂組成物を製造した(単位:重量%)。
【0127】
【0128】
A:それぞれの製造例で得られた量子ドット分散液
B:合成例2で得られたアルカリ可溶性樹脂
C:ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製)
D:Irgacure-907(BASF社製)
E:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
[実験例1]
【0129】
[(1)分散粒度の測定]
前記製造例で製造された量子ドット分散液と前記実施例及び比較例で製造された自発光感光性樹脂組成物の分散粒度をELSZ-2000ZS(大塚電子社製)を用いて測定し、その結果を下記の表3に表した。通常、量子ドット粒子が凝集すると分散粒度は大きくなり、これにより発光特性が劣化するという問題を引き起こし得る。
【0130】
[(2)発光強度の測定]
前記実施例及び比較例で製造された自発光感光性樹脂組成物を用いて下記のようにカラーフィルタを製造し、このときの発光強度を下記のような方法にて測定し、その結果を下記の表3に表した。
【0131】
<カラーフィルタの製造>
それぞれの自発光感光性樹脂組成物をスピンコーティング法にてガラス基板上に塗布した後、加熱板上に載置し、100℃の温度で3分間維持して薄膜を形成させた。次いで、前記薄膜上に横×縦20mm×20mmの正方形の透過パターンと1μm~100μmのライン/スペースパターンを有する試験フォトマスクを載置し、試験フォトマスクとの間隔を100μmにして紫外線を照射した。
【0132】
このとき、紫外線光源としてはウシオ電機(株)製の超高圧水銀ランプ(商品名USH-250D)を利用し、大気雰囲気下、200mJ/cm2の光量(365nm)で光照射を行い、特別な光学フィルタは使用しなかった。前記紫外線が照射された薄膜を、pH10.5のKOH水溶液幻像溶液に80秒間浸漬して現像を行った。この薄膜が施されたガラス板を蒸留水を用いて洗浄した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥し、150℃の加熱オーブンで10分間加熱して、カラーフィルタパターンを製造した。このようにして製造された自発光カラーフィルタパターンのフィルムの厚さは3.0μmであった。
【0133】
<発光強度の測定>
前記自発光画素が形成されたカラーフィルタに対し、550nm領域における発光強度をスペクトルメーター(Spectrum meter)(Ocean Optics社製)を利用して測定した。測定された発光強度が高いほど優れた発光特性を示すと判断することができる。
【0134】
【0135】
前記表3に表したように、本発明に係る特定の溶剤を含む製造例1~11の量子ドット分散液及びこれを含む実施例1~11の自発光感光性樹脂組成物中における量子ドット分散粒度は、製造例12~14の量子ドット分散液及びこれを含む比較例1~3の自発光感光性樹脂組成物中における量子ドット分散粒度よりも小さいことを確認することができた。また、本発明に係る実施例1~11の自発光感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタが、比較例1~3の自発光感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタに比べて発光強度に優れることを確認することができた。
【0136】
以上、本発明の特定の部分について詳しく記述したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、このような具体的な記述は単に好適な具現例であるに過ぎず、これらによって本発明の範囲が制限されるものではないことは明らかである。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、前記内容を基に本発明の範疇内で種々の応用および変形を行うことが可能であろう。
【0137】
したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とその等価物によって定義されると言えよう。