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特許7072580リチウム電池用ブロックコポリマー電解質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】リチウム電池用ブロックコポリマー電解質
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20220513BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220513BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220513BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
H01B1/06 A
C08F293/00
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2019548689
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 CA2018000050
(87)【国際公開番号】W WO2018161150
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】62/469,242
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/821,991
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518203836
【氏名又は名称】ブルー・ソリューションズ・カナダ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ヴァレ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ルブラン
(72)【発明者】
【氏名】ブリュー・ギェルム
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-529863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05- 10/39
H01B 1/00- 1/24
C08F 251/00- 297/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AB型のジブロックコポリマー又はBAB型のトリブロックコポリマーを含む電池用固体ポリマー電解質であって、
ブロックAが80,000g/mol未満の数平均分子量を有する、非置換のポリエチレンオキシド鎖であり、
ブロックBが、リチウム塩のアニオンがグラフト化される、ビニルモノマー及びそれらの誘導体から選択される1種以上のモノマーと、初期重合反応に関与しないペンダント化学官能基R1及び/又はR2を有する、架橋可能な多官能性モノマーである1種以上のモノマーとから調製されるアニオン性ポリマーであり、
ペンダント化学官能基R1及び/又はR2は、架橋コポリマーネットワークを形成する架橋のための後反応し、
前記架橋可能な多官能性モノマーが、前記初期重合反応の反応性基を含み、前記反応性基が、オルト位、メタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニル、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びビニルからなる群から選択される、電池用固体ポリマー電解質。
【請求項2】
前記ペンダント化学官能基R1及び/又はR2が、コポリマー鎖のブロックBの末端に位置する、又はコポリマー鎖のブロックB中に、統計的に若しくはブロックで若しくは交互に若しくは勾配で分配される、請求項1に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項3】
前記ペンダント化学官能基R1及び/又はR2が、直鎖又は環状のアルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)あるいはそれらの基の混合物により、前記多官能性モノマーの前記反応性基と結合する、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項4】
前記リチウム塩のアニオンが、LiCFSO、LiB(C、LiN(CFSO、LiN(FSO、LiC(CFSO、LiC(CH)(CFSO、LiCH(CFSO、LiCH(CFSO)、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)、LiB(CFSO、LiPF、LiSbF、LiClO、LiSCN、LiAsF及びLiBFからなる群から選択される、請求項1に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項5】
ブロックBに対するブロックAのポリマーの比率が40%から80%の間である、請求項1に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項6】
コポリマー鎖の前記ブロックBに沿ってランダムに分配されるペンダント化学官能基R1及びR2を有する、架橋可能な多官能性モノマーをそれぞれ有する同一のコポリマー鎖を含み、官能基R1及びR2が互いに反応して前記架橋コポリマーネットワークを形成する、請求項1に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項7】
架橋可能な多官能性モノマーを有する2種の異なるコポリマー鎖を含み、第一コポリマー鎖がペンダント化学官能基R1のみを有し、第二コポリマー鎖がペンダント化学官能基R2のみを有し、官能基R1及びR2が互いに反応して前記架橋コポリマーネットワークを形成する、請求項1に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項8】
自身では反応し得ないペンダント化学官能基R1のみを有する架橋可能な多官能性モノマーをそれぞれ有する同一のコポリマー鎖、及び化学官能基R1と反応し得る少なくとも二つの化学官能基R2を有する小分子を含み、前記同一のコポリマー鎖の前記ペンダント化学官能基R1が、前記小分子の前記少なくとも二つの化学官能基R2と反応して前記架橋コポリマーネットワークを形成する、請求項1に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項9】
自身で反応し得る、ペンダント化学官能基R1のみを有する架橋可能な多官能性モノマーをそれぞれ有する同一のコポリマー鎖を含み、それぞれの同一のコポリマー鎖の前記ペンダント化学官能基R1が互いに反応して架橋コポリマーネットワークを形成する、請求項1に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項10】
前記コポリマー鎖がそれぞれ官能基R1としてアジド基、及び官能基R2としてシランにより保護される又は保護されないプロパルギル基を有する、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項11】
前記第一コポリマー鎖が、アルコール類又はその塩の官能基R1を含み、並びに前記第二コポリマー鎖が、カルボン酸又はその塩、イソシアネート、イソチオシアネート、オキシラン、スルホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、カーボネート及びハライド(X:Cl、I又はBr)からなる群から選択される官能基R2を含む、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項12】
前記第一コポリマー鎖が、アジド類の官能基R1を含み、前記第二コポリマー鎖が、シランにより保護される又は保護されないプロパルギル類の官能基R2を含む、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項13】
前記第一コポリマー鎖が、オキシラン類の官能基R1を含み、前記第二コポリマー鎖が、スルホン酸又はその塩、及びホスホン酸又はその塩からなる群から選択される官能基R2を含む、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項14】
前記第一コポリマー鎖が、一級又は二級アミン類(R:水素原子、アルキル又はアリール)の官能基R1を含み、前記第二コポリマー鎖が、オキシラン、カルボン酸又はその塩、アルデヒド、ケトン、スルホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、環状カーボネート、イソシアネート、イソチオシアネート及びハライド(X:Cl、I又はBr)からなる群から選択される官能基R2を含む、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項15】
前記同一のコポリマー鎖が、アルコール類又はその塩の官能基R1を含み;前記小分子の前記少なくとも二つの化学官能基R2が、カルボン酸又はその塩、イソシアネート、チオイソシアネート、オキシラン、エステル、スルホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、環状カーボネート、酸ハライド(X:Cl、I又はBr)及びハライド(X:Cl、I又はBr)からなる群から選択される、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項16】
前記小分子の前記官能基R2が、直鎖又は環状のアルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)及びその混合物からなる群から選択されるR基と共に結合される、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項17】
前記同一のコポリマー鎖が、一級又は二級アミン類(R:水素原子、アルキル鎖、ベンゼン環)の官能基R1を含み、前記小分子の前記少なくとも二つの化学反応基R2が、カルボン酸又はその塩、イソシアネート、チオイソシアネート、オキシラン、エステル、スルホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、環状カーボネート、酸ハライド(X:Cl、I又はBr)、アルデヒド及びケトンからなる群から選択される、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項18】
前記同一のコポリマー鎖が、カルボン酸類又はその塩の官能基R1を含み;前記小分子の前記少なくとも二つの化学官能基R2がアルコール又はその塩、一級アミン及び二級アミンからなる群から選択される、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項19】
前記同一のコポリマー鎖が、スルホン酸類又はその塩の官能基R1を含み;前記小分子の前記少なくとも二つの化学官能基R2が、アルコール又はその塩、一級アミン、二級アミン及びオキシランからなる群から選択される、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項20】
前記同一のコポリマー鎖が、ハライド類の官能基R1を含み;前記小分子の前記少なくとも二つの化学官能基R2が、アルコール又はその塩、及び一級アミンからなる群から選択される、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項21】
前記同一のコポリマー鎖が、オキシラン類の官能基R1を含み;前記小分子の前記少なくとも二つの化学官能基R2が、ホスホン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、アルコール又はその塩、一級アミン及び二級アミンからなる群から選択される、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項22】
前記同一のコポリマー鎖が、環状カーボネート類、イソシアネート類又はイソチオシアネート類の官能基R1を含み;前記小分子の前記少なくとも二つの化学官能基R2が、アルコール又はその塩、一級アミン及び二級アミンからなる群から選択される、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項23】
前記同一のコポリマー鎖が、アルデヒド類又はケトン類の官能基R1を含み;前記小分子の前記少なくとも二つの化学官能基R2が一級アミンである、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項24】
前記同一のコポリマー鎖が、アルコール類の官能基R1を含み;前記小分子の前記少なくとも二つの化学官能基R2が、トリクロロシラン、カルボン酸又はその塩、酸ハライド(X:Cl、I又はBr)及びハライド(X:Cl、I又はBr)からなる群から選択される、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項25】
前記同一のコポリマー鎖が、アジド類の官能基R1を含み;前記小分子の前記少なくとも二つの化学官能基R2が、プロパルギルである、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項26】
前記同一のコポリマー鎖が、シランにより保護される又は保護されないプロパルギル類の官能基R1を含み;前記小分子の前記少なくとも二つの化学官能基R2が、アジドである、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項27】
前記同一のコポリマー鎖がチミン類、シンナメート類、クマリン類、又は4-(3’-ブテン-1’-オキシ)類の官能基R1を含む、請求項に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項28】
DC型のジブロックコポリマー又はDCD型のトリブロックコポリマーを含む電池用固体ポリマー電解質であって、
ブロックCが80,000g/mol未満の数平均分子量を有する、非置換のポリエチレンオキシド鎖であり、
ブロックDが、リチウム塩のアニオンがグラフト化される、ビニルモノマー及びその誘導体から選択される、1種以上のモノマーから調製されるアニオン性ポリマーであり、
コポリマー鎖が、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート又はポリオキシエチレングリコールジメタクリレートである低分子量(<20,000g/mol)を有する架橋可能なポリマーと混合され、
前記架橋可能なポリマーが、架橋して、架橋コポリマーネットワークを形成する、電池用固体ポリマー電解質。
【請求項29】
前記リチウム塩のアニオンが、LiCFSO、LiB(C、LiN(CFSO、LiN(FSO、LiC(CFSO、LiC(CH)(CFSO、LiCH(CFSO、LiCH(CFSO)、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)、LiB(CFSO、LiPF、LiSbF、LiClO、LiSCN、LiAsF及びLiBFからなる群から選択される、請求項2に記載の固体ポリマー電解質。
【請求項30】
複数の電気化学セルを有する電池であって、それぞれの電気化学セルが、金属リチウムアノード、カソード及び固体ポリマー電解質層を含み、前記固体ポリマー電解質層が、AB型のジブロックコポリマー又はBAB型のトリブロックコポリマーを含み、
ブロックAが、80,000g/mol未満の数平均分子量を有する非置換のポリエチレンオキシド鎖であり、
ブロックBが、リチウム塩のアニオンがグラフト化されたビニルモノマー及びその誘導体から選択される1種以上のモノマーと、初期重合反応に関与しないペンダント化学官能基R1及び/又はR2を有する、架橋可能な多官能性モノマーである1種以上のモノマーとから調製されるアニオン性ポリマーであり
ペンダント化学官能基R1及び/又はR2は、架橋コポリマーネットワークを形成する架橋のための後反応し、
前記架橋可能な多官能性モノマーが、前記初期重合反応の反応性基を含み、前記反応性基が、オルト位、メタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニル、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びビニルからなる群から選択される、電池。
【請求項31】
固体ポリマー電解質層が金属リチウムアノードに対して圧縮される、請求項3に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池用固体ポリマー電解質に関し、より具体的には、機械耐性を上昇させ、イオン伝導率を向上させた、架橋ブロックコポリマー電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
負極としてリチウム金属を使用するリチウム電池は、優れたエネルギー密度を有する。しかしながら、サイクルを繰り返すことにより、電池を充電する際、リチウムイオンがリチウム金属電極の表面に不規則に再メッキされるため、そのような電池は、リチウム金属電極の表面に、樹状突起が成長し得る。樹状突起の成長を含む、リチウム金属アノードの表面の形態の変化の影響を最小限にするため、リチウム金属電池は、参照により本明細書に援用される米国特許第6,007,935号に記載されるように、加えられる圧力に耐えるよう適応させる、圧縮系及び固体ポリマー電解質を典型的に使用する。多数のサイクルを経て、リチウム金属アノードの表面の樹状突起は、電解質が固体であるにもかかわらず、まだ成長して固体ポリマー電解質に侵入し、最終的には、負極及び正極との間に、「柔らかい」ショートを引き起こし、減少した又は不十分な電池の性能をもたらす可能性がある。従って、樹状突起の成長は、まだ電池のサイクル特性を悪化させる可能性があり、金属リチウムアノードを有するリチウム電池の性能の最適化に関して、主要な制限を構成する。
【0003】
様々な種類のポリマーが、リチウム金属電極の使用に適用される固体電解質に提案されてきた。特に、エチレンオキシド(EO)の単位からなるポリマーの使用は、1970年代の終わりから広く知られているが、それは室温で十分な伝導率を有しないことが分かった。例えば、リチウム塩でドープされた高分子量のポリ(エチレンオキシド)(PEO)は、室温で非常に良好な機械特性を有するが、半結晶のポリマーである。結晶構造は、ポリマーの鎖の可動性を制限し、ポリマーのイオン伝導率を減少させる。PEOの融点(inciting point)(Tm 60~65℃)以上で、イオン伝導率が劇的に上昇するが、この温度ではPEOは粘稠液になり、寸法安定性を失う。
【0004】
ポリマー固体電解質の研究および開発は、PEOの機械特性を強化するため、硬いコロイド粒子を加えること、PEOの数平均分子量を増大させること、又は架橋させることにより連続的に行われてきたが、しかしイオン伝導率の減少を一般に引き起こす。取り組みが、可塑剤の添加により、PEOのイオン伝導率を向上させるために、行われてきたが、機械特性の劣化を招いた。
【0005】
より最近では、十分な機械特性を維持しながら、固体ポリマー電解質のイオン伝導率を上昇させることを目的として、PEOに基づくブロックコポリマーのシークエンスを生産するために、PEOマトリックスが、PEOマクロマーの共重合により開発された。最近、イオン伝導ブロックとそのイオン伝導ブロックと混和しない、アニオンが固定される第二ブロックとを含むミクロ相分離しているブロックコポリマーを含む固体ポリマー電解質が、十分なイオン伝導率を維持しながら、追加のリチウム塩の使用を制限又は減少させることを目的として、提案されてきた。
【0006】
例えば、米国特許第9,431,677号は、BA型のジブロックコポリマー又はBAB型のトリブロックコポリマーからなる固体ポリマー電解質を開示し、ブロックAが100kDa以下の数平均分子量を有する非置換のポリオキシエチレン鎖であり;ブロックBがビニルモノマー及びそれらの誘導体から選択される1種以上のモノマーから調製されるアニオン性ポリマーであり、そのモノマーは、(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(TFSI)のアニオンで置換される。提案された固体ポリマー電解質は、良好なイオン伝導率を示すが、室温以上の温度での機械特性は、操作中の電気化学セル内の機械圧力に耐えるには不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第6,007,935号
【文献】米国特許第9,431,677号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、金属リチウムアノードの表面に樹状突起の成長の影響を減少又は抑制するために適応される、機械特性が上昇し、イオン伝導率が向上したブロックコポリマーを含む固体ポリマー電解質へのニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、電池用の固体ポリマー電解質を提供することであり、固体ポリマー電解質は、AB型のジブロックコポリマー又はBAB型のトリブロックコポリマーを含み、ブロックAは、80,000g/mol未満の数平均分子量を有する非置換のポリエチレンオキシド鎖であり、ブロックBは、リチウム塩のアニオンがグラフト化されるビニルモノマー及びその誘導体から選択される1種以上のモノマーと架橋可能な多官能モノマーである1種以上のモノマーから調製されるアニオン性ポリマーである。架橋可能な多官能モノマーは、初期重合反応に関与せず、架橋のための後反応する、化学官能基R1及び/又はR2を有する。リチウム塩のグラフトアニオンは、第二モノマーの架橋官能基が、固体ポリマー電解質の機械強度を向上させながら、Liイオンの輸率を増大させることにより電気化学性能を向上させる。
【0010】
架橋可能な多官能モノマーは、初期の重合反応に関する反応基を含み、反応基は、オルト位、メタ位、パラ位で置換されたビニルフェニル、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びビニルからなる群から選択される。
【0011】
ペンダント化学官能基R1及び/又はR2は、例えば、熱の手段又は紫外線又は電磁放射により、より効果的に及び容易に多次元の架橋を確保し、より強く及び薄い電解質フィルムの生産を可能にすることを目的として、コポリマー鎖のブロックBの末端に位置する、又はコポリマー鎖のブロックB中に統計的に若しくはブロックで若しくは交互に若しくは勾配で分配される。
【0012】
本発明の別の態様は、電池用固体ポリマー電解質を供給することであり、固体ポリマー電解質は、CD型のジブロックコポリマー又はDCD型のトリブロックコポリマーを含み、ブロックCは80,000g/mol未満の数平均分子量を有する非置換のポリエチレンオキシド鎖であり、ブロックDがリチウム塩のアニオンがグラフト化されたビニルモノマー及びその誘導体から選択される1種以上のモノマーから調製され、コポリマー鎖が、メタ位、オルト位又はパラ位で置換されたビニルフェニル、アクリレート及びメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリル、ビニル、並びに少なくとも一つの反応性二重結合を有する化合物から選択される、少なくとも1つのモノマーの低分子量(<20,000g/mol)を有する架橋可能なポリマーと混合され、架橋可能なポリマーが架橋し、架橋コポリマーネットワークを形成する。低分子量(<20,000g/mol)を有する架橋可能なポリマーは、好ましくはポリオキシエチレングリコールジアクリレート又はポリオキシエチレングリコールジメタクリレートである。
【0013】
本発明の別の態様は、複数の電気化学セルを供給することであり、それぞれの電気化学セルが、金属リチウムアノード、カソード、及びBA型のジブロックコポリマー又はBAB型のトリブロックコポリマーを含む固体ポリマー電解質を含み、ブロックAが80,000g/mol未満の数平均分子量を有する非置換のポリエチレンオキシド鎖であり、ブロックBが、リチウム塩のアニオンがグラフト化されたビニルモノマー及びそれらの誘導体から選択される1種以上のモノマーと架橋可能な多官能モノマーである1種以上のモノマーとから調製される。架橋可能な多官能モノマーは、初期重合反応に関与せず、架橋のための後反応する、化学官能基を有する。グラフトアニオンは、第二モノマーの架橋官能基が、固体ポリマー電解質の機械強度を向上させて、金属リチウムアノードの表面の樹状突起の成長を抑制しながら、Liイオンの輸率を増大させることにより、電気化学性能を向上させる。
【0014】
本発明の別の態様は、複数の電気化学セルを有する電池を供給することであり、それぞれの電気化学セルが、金属リチウムアノード、カソード、及びCD型のジブロックコポリマー、又はDCD型のトリブロックコポリマーを含む固体ポリマー電解質を含み、ブロックCが80,000g/mol未満の数平均分子量を有する、非置換のポリエチレンオキシド鎖であり、ブロックDがリチウム塩のアニオンがグラフト化したビニルモノマー及びその誘導体から選択される1種以上のモノマーから調製されるアニオン性ポリマーであり、コポリマー鎖が、メタ位、オルト位又はパラ位で置換されたビニルフェニル、アクリレート、及びメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリル、ビニル及び少なくとも一つの反応性二重結合を有する化合物から選択される、少なくとも1種のモノマーの低分子量(<20,000g/mol)を有する架橋可能なポリマーと混合され、架橋可能なポリマーは、架橋して、架橋コポリマーネットワークを形成して、固体ポリマー電解質の機械強度を向上させ、金属リチウムアノードの表面の樹状突起の成長を抑制する。
【0015】
本発明の実施態様はそれぞれ、すべてを有する必要はないが、上記目的及び/又は態様の少なくとも一つを有する。上記目的を達成する試みに起因する本発明のいくつかの態様は、これらの目的を満たさなくてもよく、及び/又は本明細書内に具体的に記載されない他の目的を満たしてもよいと理解される。
【0016】
本発明の実施態様の、追加の並びに/又は代替の特性、態様及び利点は、下記記載、添付の図及び特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明及びその他の態様及び更には特性のより良い理解のため、添付の図と併せて使用されるように、参照が下記記載に作られる。
【0018】
図1】リチウム金属ポリマー電池を形成する複数の電気化学セルの略図。
図2】本発明による、固体ポリマー電解質中に含まれるBAB型のトリブロックコポリマーの略図。
図3】架橋PEOコポリマー鎖の特定の合成ルートの略図。
図4】本発明の第二の実施態様による、固体ポリマー電解質中に含まれる、P(STFSILi)-b-PEO-b-P(STFSILi)型のトリブロックコポリマーの略図。
図5】本発明の一実施態様による、二重層の固体ポリマー電解質の略図。
図6】本発明の一実施態様による、三重層の固体ポリマー電解質の略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、金属リチウムのシートから作られる、アノード又は負極14、固体電解質16及び集電体20上に層状にされた、カソード又は正極フィルム18をそれぞれ含む複数の電気化学セル12を有するリチウム金属ポリマー電池10を図式的に示す。固体電解質16は、典型的にはリチウム塩を含み、アノード14及びカソード18間のイオン伝導を供給する。リチウム金属のシートは、典型的には20μmから100μmの範囲の厚さを有し;固体電解質16は5μmから50μmの範囲の厚さを有し、正極フィルム18は典型的には20μmから100μmの範囲の厚さを有する。
【0020】
リチウム塩は、LiCFSO、LiB(C、LiN(CFSO、LiN(FSO、LiC(CFSO、LiC(CH)(CFSO、LiCH(CFSO、LiCH(CFSO)、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)、LiB(CFSO、LiPF、LiSbF、LiClO、LiSCN、LiAsF及びLiBFからなる群から選択されてもよい。
【0021】
電気化学セル12中の電池10の内部操作温度は、典型的には40℃から100℃の間である。リチウムポリマー電池は、好ましくは内部加熱システムを含み、電気化学セル12を最適な操作温度まで上昇させる。電池10は、広い温度範囲(-40℃から+70℃)で屋内又は屋外で使用されてもよい。
【0022】
本発明による、固体ポリマー電解質16は、図2で示すように、BA型のジブロックコポリマー又はBAB型のトリブロックコポリマーから構成される。ブロックAは、好ましくは80,000未満の数平均分子量を有する非置換のポリエチレンオキシド鎖であり;ブロックBは、リチウム塩のアニオン(LiTFSi又はその他)がグラフト化されたビニルモノマー及びそれらの誘導体から選択される1種以上のモノマーと、初期の重合反応に関与せず、架橋のための後反応し得る官能基Rを有する架橋可能な多官能モノマーとから調製されるアニオン性ポリマーである。示されたトリブロックコポリマーは、反応性架橋官能基がRである、P(STFSILi-co-S(R))-b-PEO-b-P(STFSILi-co-S(R))型である。
【0023】
本発明によるジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーは、制御されたラジカル重合(ATRP(「原子移動ラジカル重合」)、RAFT(「可逆的付加開裂連鎖移動」)、NMP(「ニトロキシド-媒介ラジカル重合」))及びアニオン又はカチオンなどのイオン重合の任意の方法により、水素若しくはリチウム若しくはカリウム若しくはナトリウム基の塩が結合したビニルモノマーと直接的に、又はKTFSI基のグラフト化によるポリマーの機能化と間接的に両方で、調製される。この重合又は機能化は、その後LiイオンによるK、H若しくはNaのイオン交換の工程が続く又は(リチウムの場合)続かない。最後の架橋反応は、様々なポリマー鎖と架橋ネットワークを形成し、それ故固体ポリマー電解質16の機械強度を実質的に増大させる。
【0024】
混合物中のブロックA及びブロックBのポリマーの相対比は、電解質16のフィルムの機械的硬度及び接着性の望ましい性能を与えるように調製されてもよく、最も適した塗工工程を使用することができ、ブロックBの成分の分子量に依存する。それ故、ブロックBの化合物の比率が高いほど、フィルムの機械硬度が高いが、電極に対する接着力が弱くなり、かつより弱い粘稠混合物を提供し、グラビア、リバースロール、押し出し又はホットメルト工程により容易に塗工できる。一方、ブロックAのポリマーの比率が高いほど、押し出し又はホットメルト工程により得られ得る電極への接着性が良好なフィルムを供給し得る。好ましい実施態様において、ブロックBに対するブロックAのポリマーの比率は40%から80%の間である。
【0025】
図2に示したようなPEOに基づく架橋トリブロックコポリマー又はジブロックコポリマーの調製のため、いくつかの合成経路が可能である。図3に示すように架橋PEOコポリマー鎖間に関する4つの特定の経路がある。単純化する目的で、トリブロックコポリマーのみ示された。図3は、架橋官能基R1及び/又はR2として表されるペンダント化学官能基及びリチウム塩のグラフト化アニオン基(TFSILi又はその他)を有する架橋可能な多官能モノマーをすべて有するPEOコポリマー鎖を図式的に示し、リチウム塩のグラフト化アニオン基は図示の簡略化のため、割愛される。
【0026】
第一の経路(1)は、ペンダント化学官能基R1及びR2をそれぞれ有する、二つの同一のコポリマーに関する。これらの官能基R1及びR2は、コポリマー鎖に沿ってランダムに分配され、それ自身では反応し得ないが、官能基R1は官能基R2と反応し得る。この経路において、コポリマー鎖は互いに反応し、架橋コポリマーネットワークを形成する。
【0027】
第二の経路(2)は、一つがペンダント化学官能基R1のみを有し、もう一つがペンダント化学官能基R2のみを有する、二つの異なるコポリマー鎖に関する。これらの二つの官能基R1及びR2は互いに反応し、架橋コポリマーネットワークを形成する。
【0028】
第三の経路(3)は、経路(1)及び(2)と根本的に異なる。第三の経路は、それ自身では反応し得ないペンダント化学官能基R1のみをそれぞれ有する、二つの同一のコポリマー鎖に関する。架橋反応を起こすために、化学官能基R1と反応し得る、少なくとも二つの化学官能基R2を有する小分子が加えられる。同一のコポリマー鎖が少なくとも二つの化学官能基R2を有する小分子に接触するような状態になった場合、架橋コポリマーネットワークが得られる。
【0029】
第四の経路(4)は最も単純である。同一のコポリマー鎖が、それ自身で反応し得る同じペンダント化学官能基R1をそれぞれ有する。同一のコポリマー鎖が接触するような状態になった場合、それぞれの鎖のペンダント化学官能基R1が互いに反応して、それ故、架橋コポリマーネットワークを形成する。
【0030】
第一の合成経路に関して、アジド類の官能基R1及びシランにより保護される又はされないプロパルギル類の官能基R2を有する多くのコポリマーの例がある。
【化1】
【0031】
反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はビニルにより置き換えられてもよい。官能基R1及びR2の二つの種類は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【0032】
第二合成経路(2)に関して、複数の例がある。第一の例は下記である:第一のコポリマーは、アルコール類又はその塩の官能基R1を含む。第二のコポリマーは、カルボン酸若しくはその塩、イソシアネート又はイソチオシアネート、又はオキシラン、又はスルホン酸若しくはその塩、又はホスホン酸若しくはその塩、又はカーボネート又はハライド(X:Cl、I又はBr)であり得る官能基R2を含む。
【化2】
【0033】
反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はビニルにより置き換えられてもよい。官能基R1及びR2の二つの種類は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【0034】
第二合成経路(2)の別の例は:第一のコポリマーが、アジド類の官能基R1を含み、第二のコポリマーが、シランで保護される又は保護されないプロパルギル類の官能基R2を含む。
【化3】
【0035】
反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はビニルにより置き換えられてもよい。二種類の官能基R1及びR2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【0036】
第二合成経路(2)の第三の例は、第一のコポリマーがオキシラン類のR1基を含み、第二のコポリマーがスルホン酸若しくはその塩又はホスホン酸若しくはその塩のR2基を含む。
【化4】
【0037】
反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はビニルにより置き換えられてもよい。二種類の官能基R1及びR2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【0038】
第二合成経路(2)の別の例は:第一のコポリマーが、1級アミン又は2級アミン(R:水素原子、アルキル又はアリール)の官能基R1を含み、第二のコポリマーが、オキシラン、カルボン酸若しくはその塩、アルデヒド、ケトン、スルホン酸若しくはその塩、ホスホン酸若しくはその塩、環状カーボネート、イソシアネート、イソチオシアネート、又はハライド(X:Cl、I又はBr)であってもよい、官能基R2を含む。
【化5】
【0039】
反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はビニルにより置き換えられてもよい。二種類の官能基R1及びR2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【0040】
第三合成経路(3)に関しても、複数の例がある。第一の例は、アルコール類又はその塩の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド又はビニルにより置き換えられてもよい。小分子は、カルボン酸若しくはその塩、イソシアネート、チオイソシアネート、オキシラン、エステル、スルホン酸若しくはその塩、ホスホン酸若しくはその塩、環状カーボネート、酸ハライド(X:Cl、I又はBr)又はハライド(X:Cl、I又はBr)であり得る複数の(少なくとも二つの)官能基R2を含む。官能基R2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物であり得るR基と結合してもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化6】
【0041】
第三合成経路(3)の第二の例は、1級アミン類又は2級アミン類(R:水素原子、アルキル鎖、ベンゼン環)の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はビニルにより置き換えられてもよい。小分子は、カルボン酸若しくはその塩、イソシアネート、チオイソシアネート、オキシラン、エステル、スルホン酸若しくはその塩、ホスホン酸若しくはその塩、環状カーボネート、酸ハライド(X:Cl、I又はBr)、アルデヒド又はケトンであり得る(少なくとも二つの)複数の官能基R2を含む。官能基R2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物であり得るR基と結合してもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化7】
【0042】
第三合成経路(3)の第三の例は、カルボン酸類又はその塩の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はビニルにより置き換えられてもよい。小分子は、アルコール若しくはその塩、一級アミン若しくは二級アミンであり得る(少なくとも二つの)複数の官能基R2を含む。官能基R2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物であり得るR基と結合してもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化8】
【0043】
第三合成経路(3)の第四の例は、スルホン酸類又はその塩の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド又はビニルにより置き換えられてもよい。小分子は、アルコール若しくはその塩、一級アミン、二級アミン又はオキシランであり得る(少なくとも二つの)複数の官能基R2を含む。官能基R2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物であり得るR基と結合してもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化9】
【0044】
第三の合成経路(3)の別の例は、ハライド類の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド又はビニルにより置き換えられてもよい。小分子はアルコール若しくはその塩、又は一級アミンであり得る(少なくとも二つの)複数の官能基R2を含む。官能基R2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物であり得るR基と結合してもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化10】
【0045】
第三の合成経路(3)の別の例は、オキシラン類の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド又はビニルにより置き換えられてもよい。小分子は、ホスホン酸若しくはその塩、スルホン酸若しくはその塩、アルコール若しくはその塩、一級アミン又は二級アミンであり得る(少なくとも二つの)複数の官能基R2を含む。官能基R2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物であり得るR基と結合してもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化11】
【0046】
第三の合成経路(3)の別の例は、環状カーボネート類の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド又はビニルにより置き換えられてもよい。小分子は、アルコール若しくはその塩、一級アミン又は二級アミンであり得る(少なくとも二つの)複数の官能基R2を含む。官能基R2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物であり得るR基と結合してもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化12】
【0047】
第三の合成経路(3)の別の例は、イソシアネート類の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド又はビニルにより置き換えられ得る。小分子は、アルコール若しくはその塩、一級アミン又は二級アミンであり得る(少なくとも二つの)複数の官能基R2を含む。官能基R2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物であり得るR基と結合してもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化13】
【0048】
第三の合成経路(3)の別の例は、イソチオシアネート類の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルはアクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はビニルにより置き換えられてもよい。小分子は、アルコール若しくはその塩、一級アミン又は二級アミンであり得る(少なくとも二つの)複数の官能基R2を含む。官能基R2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物であり得るR基と結合してもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化14】
【0049】
第三の合成経路(3)の別の例は、アルデヒド類又はケトン類の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド又はビニルにより置き換えられてもよい。小分子は、一級アミンであり得る(少なくとも二つの)複数の官能基R2を含む。官能基R2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物であり得るR基と結合してもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化15】
【0050】
第三の合成経路(3)の別の例は、アルコール類の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド又はビニルによって置き換えられてもよい。小分子は、トリクロロシラン、カルボン酸若しくはその塩、酸ハライド(X:Cl、I又はBr)又はハライド(X:Cl、I又はBr)であり得る(少なくとも二つの)複数の官能基R2を含む。官能基R2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物であり得るR基と結合してもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化16】
【0051】
第三の合成経路(3)の別の例は、アジド類の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はビニルによって置き換えられてもよい。小分子は、プロパルギル基であり得る(少なくとも二つの)複数の官能基R2を含む。官能基R2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物であり得るR基と結合してもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化17】
【0052】
第三の合成経路(3)の最後の例は、シランにより保護される又は保護されないプロパルギル類の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド又はビニルにより置き換えられてもよい。小分子はアジドであり得る(少なくとも二つの)複数の官能基R2を含む。官能基R2は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物であり得るR基と結合してもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化18】
【0053】
第四の最終経路(4)に関して、それ自身で反応し得る同じペンダント化学官能基R1をそれぞれ有する同一の能力のコポリマー鎖を提示する。第一の例は、チミン類の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド又はビニルにより置き換えられもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化19】
【0054】
第四の経路(4)の第二の例は、シンナメート類の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド又はビニルによって置き換えられてもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化20】
【0055】
第四の経路(4)の第三の例は、クマリン類の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化21】
【0056】
第四の経路(4)の第四の例は、フェニル4-(3’-ブテン-1’-オキシ)-2,3,5,6-テトラフルオロ類の官能基R1を含む二つのコポリマーを提示する。反応性基は、オルト位又はメタ位又はパラ位で置換されたビニルフェニルであってもよい。ビニルフェニルは、アクリレート、メタクリレート、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はビニルにより置き換えられてもよい。官能基R1は、直鎖又は環状アルキル若しくはアリール若しくはアルキルフルオライド、エーテル、エステル、アミド、チオエーテル、三級アミン、四級アンモニウム、ウレタン、チオウレタン、シラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリ(エチレングリコール)、低分子量ポリ(プロピレングリコール)又はこれらの群の混合物によりモノマーの反応性官能基と結合され得る。
【化22】
【0057】
図2に示されるように、リチウム塩のグラフトアニオンは、トリブロックコポリマーの非伝導部であり、従って、すべてのリチウム塩のグラフトアニオンは、電池操作の間に、すべては利用され得ない。リチウム塩のこれらのグラフトアニオンの可触性を増大させるため、トリブロックコポリマーは、例えばSigma-Aldrichから市販で入手可能なPEG200などの、低分子量(<20,000g/mol)の架橋可能なポリオキシエチレングリコールジアクリレート又はポリオキシエチレングリコールジメタクリレートと混合されてもよい。イオン的に伝導するPEG200は、トリブロックコポリマーと混合され、固体ポリマー電解質16の最終構成内で架橋し、リチウム塩のグラフトアニオンへの接近を提供し、これらのグラフトアニオンが、固体ポリマー電解質16を通って移動するLiイオンへのイオンパスの一部になるようになる。
【0058】
図4に示される特定の実施態様において、例えばSigma-Aldrichから市販で入手可能なPEG200のような低分子量(<20,000g/mol)の架橋可能なポリオキシエチレングリコールジアクリレート又はポリオキシエチレングリコールジメタクリレートと混合される場合、架橋可能な残存官能基を有さない、P(STFSILi)-b-PEO-b-P(STFSILi)型のトリブロックコポリマーが使用されてもよい。架橋可能なPEG200は、架橋する場合、固体ポリマー電解質16に付与された機械強度を提供する。前述のように、PEG200は、イオン伝導性であり、トリブロックコポリマーと混合され、固体ポリマー電解質16の最終構成内で架橋された場合、リチウム塩のグラフトアニオンに良好な接近を提供し、これらのグラフト化アニオンがより接近しやすくなり、固体ポリマー電解質16を通って移動するLiイオンへのイオンパスの一部になるようになる。
【0059】
低分子量(<20,000g/mol)を有する他の架橋可能なモノマー、ホモポリマー又はコポリマーは、メタ位、オルト位又はパラ位で置換されたビニルフェニル、アクリレート及びメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリル、ビニル又は少なくとも一つの反応性二重結合を有する化合物から選択される少なくとも一つのモノマーのポリマーから生じる架橋可能な官能基を含み、使用もされ得る。
【0060】
最終の固体ポリマー電解質16に適正なイオン伝導性を与えるため、最終混合物にリチウム塩が、混合物又は割合が選択されて、加えられることは言うまでもない。前述した、固体ポリマー電解質16に付与されたイオン伝導性を提供する、リチウム塩はそれぞれ、LiCFSO、LiB(C、LiN(CFSO、LiN(FSO、LiC(CFSO、LiC(CH)(CFSO、LiCH(CFSO、LiCH(CFSO)、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)、LiB(CFSO、LiPF、LiSbF、LiSCN、LiAsF、LiBF、及びLiClOである。
【0061】
実施した試験は、リチウム金属電池中の固体ポリマー電解質中に含まれる本発明によるトリブロックポリマーを含んだ使用は、室温より高い温度で、優れた機械耐性及び優れたイオン伝導性を有するエネルギー貯蔵装置を導くことを示す。本発明による固体ポリマー電解質は、良好な機械強度及び耐久性並びに高い温度安定性を有し、それ故、放電中(又は充電中)に電解質中の濃度勾配の進行を制限する。リチウム金属電池中の固体ポリマー電解質の使用は、リチウムの樹状突起の成長を制限し、速くて安全な再充電を可能にする。本発明による固体ポリマー電解質は、再充電中に(樹状突起を含む)リチウムの不均一な電着物の形成を実質的に減少させる。
【0062】
固体ポリマー電解質16は、先行技術の固体ポリマー電解質より強いため、先行技術のポリマー電解質より薄く作成され得る。上記のように、固体ポリマー電解質16は5μmの薄さであってもよい。電池中の電解質が薄いほど、電池が軽くなり、それ故、より高いエネルギー密度を有する電池が得られる。固体ポリマー電解質16の強度を増大させると、製造過程においてより安定な状態になる。固体ポリマー電解質16はより引き裂き耐性があり、生産過程においてよりしわになりにくい。
【0063】
図5に示されるように、一つの特定の実施態様において、固体ポリマー電解質25は、参照により援用される米国特許第6,855,788号に記載されるポリエチレンオキシドの標準ホモポリマー若しくはコポリマー、又は参照により援用されるEP2235784に記載されるホモポリマー若しくはコポリマーの混合物からなる5μmから50μmのベース層26と、上述したBAB型のトリブロックコポリマーの一つからなる20μm未満の表面薄層27を含む二重層部品からなる。リチウム金属アノードに対して圧縮される表面薄層27は、樹状突起の成長に対して障壁を提供する。図6で示される別の実施態様は、固体ポリマー電解質30は、参照により援用される米国特許第6,855,788号に記載されるポリエチレンオキシドの標準ホモポリマー若しくはコポリマー、又は参照により援用されるEP2235784に記載されるホモポリマー若しくはコポリマーの混合物からなる5μmから50μmのベース層26と、上述したBAB型のトリブロックコポリマーの一つからなる20μm未満の薄層27と、リチウム金属アノードへの接着促進剤として作用する上述したポリエチレンオキシドの標準のホモポリマー又はコポリマーからなる表面薄層31を含む三重層部品からなる。
【0064】
本発明の上述の実施態様への変更及び改善は、当業者に明らかになってもよい。前述の記載は、限定というよりは例となる意図がある。更に、図に示される様々な構成要素の特徴の大きさは限定する意味はなく、それらの構成要素の寸法は、図中に示される寸法とは異なってもよい。本発明の範囲は、それ故、添付の特許請求の範囲にのみ限定されることを意味する。
【符号の説明】
【0065】
10 ・・・リチウム金属ポリマー電池
12 ・・・電気化学セル
14 ・・・アノード
16 ・・・固体ポリマー電解質
18 ・・・カソード
20 ・・・集電体
25 ・・・固体ポリマー電解質
26 ・・・ベース層
27 ・・・薄層
30 ・・・固体ポリマー電解質
31 ・・・表面薄層
図1
図2
図3
図4
図5
図6