(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】IL-23A及びTNF-アルファを標的とする化合物ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220513BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220513BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220513BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220513BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20220513BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220513BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20220513BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220513BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220513BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220513BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220513BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220513BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20220513BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/46
C07K16/24
A61K39/395 L
A61K39/395 U
A61K47/62
A61P37/02
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020073942
(22)【出願日】2020-04-17
(62)【分割の表示】P 2017512334の分割
【原出願日】2015-09-03
【審査請求日】2020-05-15
(32)【優先日】2014-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507229331
【氏名又は名称】ベーリンガー・インゲルハイム・インターナショナル・ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Binger Strasse 173,55216 Ingelheim Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】504438727
【氏名又は名称】マクロジェニクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】バレット,レイチェル・レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,レスリー・エス
(72)【発明者】
【氏名】シン,サンジャヤ
(72)【発明者】
【氏名】ラスト-バーニー,キャスリーン
(72)【発明者】
【氏名】シー,ダウ-ツン
(72)【発明者】
【氏名】ギブリン,パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】ブロジャー,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ナガラジャ,ネラマンガラ
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-520197(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0213772(US,A1)
【文献】特表2009-508466(JP,A)
【文献】国際公開第2013/165791(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/011076(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ポリペプチドおよび第二ポリペプチドを含む化合物であって:
(A)該第一ポリペプチドは、以下を含み:
(i)第一標的タンパク質に特異的な第一免疫グロブリンの軽鎖可変ドメイン(VL1);
(ii)第二標的タンパク質に特異的な第二免疫グロブリンの重鎖可変ドメイン(VH2);ならびに
(iii)重鎖定常領域1ドメイン(CH1)、ヒンジ領域、重鎖定常領域2(CH2)、および重鎖定常領域3(CH3);
(B)該第二ポリペプチドは、以下を含み:
(i)該第二標的タンパク質に特異的な該第二免疫グロブリンの軽鎖可変ドメイン(VL2);
(ii)該第一標的タンパク質に特異的な該第一免疫グロブリンの重鎖可変ドメイン(VH1);および
(iii)軽鎖定常領域ドメイン(CL);
(C)ここで、さらに:
(i)該VL1およびVH1は、会合して、該第一標的タンパク質と結合する結合部位を形成し;
(ii)該VL2およびVH2は、会合して、該第二標的タンパク質と結合する結合部位を形成し;
(iii)(iii-1)該第一標的タンパク質はTNF-アルファであり、および該第二標的タンパク質はIL-23Aである、または(iii-2)該第一標的タンパク質はIL-23Aであり、および該第二標的タンパク質はTNF-アルファであり;ならびに
(iv)該ヒンジ領域のアミノ酸配列は、IgG1に由来するか、またはIgG4に由来する;
(D)該VL1、該VH1、該VL2、および該VH2は:
(i)それぞれ配列番号2、配列番号1、配列番号8、および配列番号7;または
(ii)それぞれ配列番号8、配列番号7、配列番号2、および配列番号1;
のアミノ酸配列を含み;
ならびに
(E)該CH2は、KabatにあるとおりのEUインデックスに従い番号付けして、252位にチロシン、254位にトレオニン、および256位にグルタミン酸を含む;
前記化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、下記特徴の1以上を含む:
(i)該CLおよび該CH1は、ジスルフィド結合を介して会合して一緒になって、C1ドメインを形成する;
(ii)該ヒンジ領域は、アミノ酸配列EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号40)を含む;
(iii)該CH2は、KabatにあるとおりのEUインデックスに従い番号付けして、234位にアラニン、および235位にアラニンを含む;ならびに
(iv)該CH2、または該CH3のアミノ酸配列は、IgG1に由来するか、またはIgG4に由来する;
前記化合物。
【請求項3】
前記第一ポリペプチドはさらに、前記VL1と前記VH2の間に第一リンカーを含み、かつ前記第二ポリペプチドはさらに、前記VL2と前記VH1の間に第二リンカーを含む、請求項1または2に記載の化合物であって、
下記特徴の1以上を含む:
(i)前記第一リンカーは、アミノ酸配列GGGSGGG(配列番号9)を含む;
(ii)前記第二リンカーは、アミノ酸配列GGGSGGG(配列番号9)を含む;または
(iii)前記第一リンカーおよび前記第二リンカーは、アミノ酸配列GGGSGGG(配列番号9)を含む;
前記化合物。
【請求項4】
前記第一ポリペプチドはさらに、前記VH2と前記CH1の間に第三リンカーを含み、かつ前記第二ポリペプチドはさらに、前記VH1と前記CLの間に第四リンカーを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物であって、
下記特徴の1以上を含む:
(i)前記第三リンカーは、アミノ酸配列FNRGES(配列番号11)を含む;
(ii)前記第四リンカーは、アミノ酸配列VEPKSS(配列番号12)を含む;
(iii)前記第三リンカーは、アミノ酸配列FNRGES(配列番号11)を含み、および前記第四リンカーは、アミノ酸配列VEPKSS(配列番号12)を含む;
(iv)前記第三リンカーは、アミノ酸配列LGGGSG(配列番号10)を含む;
(v)前記第四リンカーは、アミノ酸配列LGGGSG(配列番号10)を含む;または
(vi)前記第三リンカーおよび前記第四リンカーは、アミノ酸配列LGGGSG(配列番号10)を含む;
前記化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物であって、前記化合物中:
(i)前記第一ポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列を含み、かつ前記第二ポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列を含む;
(ii)前記第一ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつ前記第二ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含む;
(iii)前記第一ポリペプチドは、配列番号17のアミノ酸配列を含み、かつ前記第二ポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列を含む;
(iv)前記第一ポリペプチドは、配列番号19のアミノ酸配列を含み、かつ前記第二ポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸配列を含む;
(v)前記第一ポリペプチドは、配列番号44のアミノ酸配列を含み、かつ前記第二ポリペプチドは、配列番号45のアミノ酸配列を含む;
(vi)前記第一ポリペプチドは、配列番号46のアミノ酸配列を含み、かつ前記第二ポリペプチドは、配列番号47のアミノ酸配列を含む;
(vii)前記第一ポリペプチドは、配列番号120のアミノ酸配列を含み、かつ前記第二ポリペプチドは、配列番号121のアミノ酸配列を含む;または
(viii)前記第一ポリペプチドは、配列番号128のアミノ酸配列を含み、かつ前記第二ポリペプチドは、配列番号129のアミノ酸配列を含む;
前記化合物。
【請求項6】
2つの第一ポリペプチドおよび2つの第二ポリペプチドを含む化合物であって、ここで、
(a)2つの前記第一ポリペプチドのそれぞれが、請求項1~4のいずれか1項に記載の第一ポリペプチドであり;
(b)2つの前記第二ポリペプチドのそれぞれが、請求項1~4のいずれか1項に記載の第二ポリペプチドであり;
下記特徴の1以上を含む:
(i)前記2つの第一ポリペプチドは、少なくとも1つのジスルフィド結合を介して会合して一緒になる;
(ii)前記第一ポリペプチドはそれぞれ、1つの前記第二ポリペプチドと少なくとも1つのジスルフィド結合を介して会合して一緒になる;または
(iii)前記2つの第一ポリペプチドのうち一方のCH2およびCH3は、前記2つの第一ポリペプチドの他方のCH2およびCH3と会合し、ならびに前記2つの第一ポリペプチドのそれぞれのCH1は、1つの前記第二ポリペプチドのCLと会合して、四価分子を形成する;
前記化合物。
【請求項7】
医療のための、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
自己免疫疾患または炎症性疾患の治療のための、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物を含む、医療のための、医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物を含む、自己免疫疾患または炎症性疾患の治療のための、医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載の
化合物をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸を含み、前記核酸と作動可能に連結したプロモーターをさらに含むベクター、または前記核酸もしくはベクターを含む細胞。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか1項に記載の
化合物を製造する方法であって、
(a)請求項12に記載の細胞を得ること、
(b)前記細胞で前記核酸を発現させること、ならびに
(c)前記
化合物を単離および精製すること、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条の下で、2014年9月3日出願の米国仮出願番号第62/045,498号、タイトル「Compound Targeting IL-23 A and TNF-ALPHA and Uses Thereof」の出願日の利益を主張し、その全内容は、本明細書中参照として援用される。
【背景技術】
【0002】
炎症は、感染と戦うために必要な自然免疫応答及び適応免疫応答に関与している。しかしながら、炎症が野放しの自己免疫疾患または自己炎症性疾患になると、神経変性疾患、さらには癌さえも発症する可能性がある。炎症性サイトカイン、例えばIL1、TNF-アルファ、IL6、IL12、IL17、IL18、またはIL23などの活性を阻害すると、炎症が低減すること、及び免疫細胞を活性化する特定経路が抑制されることは、十分に確立されている。
【0003】
インターロイキン23(IL23)は、2つのサブユニット、p40及びp19からなる、ヘテロ二量体サイトカインである。p19サブユニットは、IL-23Aとも称される。p19サブユニットは、IL23に特有のものであるが、p40サブユニットは、サイトカインIL12と共通のものである。IL23は、IL17、IL22、ならびに局所組織炎症及び損傷をもたらす他のサイトカインの産生を駆動する、病原性Th17、γδT、及び自然リンパ球(ILC)の重要なレギュレーターとして出現する。IL23は、マトリクスメタロプロテアーゼMMP9の上方制御を促進し、血管新生を増大させ、CD8+T細胞浸潤を減少させるので、癌性腫瘍の発生と関連づけられてきた。また、IL23は、IL6及びTGF-ベータ1と共同して、ナイーブCD4+T細胞を刺激して、Th17細胞へと分化させる。そうすると、Th17細胞は、IL17を産生するが、IL17は、T細胞プライミングを増強し、IL1、IL6、TNF-アルファ、NOS-2などの炎症性サイトカインの産生を刺激するとともに、炎症及び病因をもたらすケモカインの発現を誘導する炎症性サイトカインである。IL23は、その効果を、特有のIL23Rサブユニットとパートナーを組んだIL12受容体のIL12β1サブユニットで構成される細胞表面受容体を介して発揮する。IL23Rの発現は、特定の免疫細胞集団に限定されており、主に、T細胞サブセット(αβ及びγδTCR+)及びNK細胞で見出される。
【0004】
マウスでは、IL23p19遺伝子を遺伝子破壊すると、抗原特異的免疫グロブリンの産生低下及び遅延型過敏性反応不全をはじめとする、T依存性免疫応答の著しい低下を伴うIL23機能の選択的喪失をもたらす(Ghilardi N, et al. (2004) J. Immunol. 172(5): 2827-33)。IL23p40またはIL23p19どちらか、あるいはIL23受容体のどちらかのサブユニット(IL23R及びIL12-ベータ1)が欠損したノックアウトマウスは、多発性硬化症、関節炎、及び炎症性腸疾患の動物モデルで、重篤度の低下した症候を発症した。同様な結果は、EAEのIL23p19に特異的な抗体を使用することでも得られており、T細胞介在性大腸炎モデルは、これらの疾患状況でのIL23の役割を、さらに実証する(Chen Y. et al. (2006) J. Clin. Invet. 116(5): 1317-26;Elson CO. et al. (2007) Gastroenterology 132(7): 2359-70)。このことは、慢性炎におけるIL23の重要性を強調する(Langowski et al. (2006) Nature 442 (7101): 461-5; Kikly K, et al. (2006) Curr. Opin. Immunol. 18 (6):670-5)。また、IL23産生の増加は、炎症性関節炎及び炎症性自己免疫疾患における主要因子と意味づけられてきた(Adamopoulos et al. (2011) J. Immunol. 187: 593-594;及びLangris et al. (2005) J. Exp. Med. 201:233-240)。IL23、その下流にあるサイトカインIL22、及び骨形成の間の関係は、IL23を過剰発現するマウスモデル系で報告されている(Sherlock et al. (2012) Nat. Med. 18: 1069-76)。
【0005】
ホモ三量体TNF-αサイトカインは、主にマクロファージ、リンパ球、内皮細胞、及び線維芽細胞で発現し、2つの異なる受容体と結合する:ほぼ全ての細胞型で発現するTNFRI、及びそれより限定的に免疫細胞(CD4+T細胞、NK細胞)で発現するTNFRIIである。TNFスーパーファミリーの多くのメンバーと同様に、TNF-αは、膜型及び溶解型の両方で存在し、溶解型は、ADAM12メタロプロテアーゼ(TACE、TNFα変換酵素)による膜型の切断から生じる。サイトカインは、膜結合型及び溶解型の両方とも生物学的に活性である。
【0006】
腫瘍壊死因子(TNF-アルファ/TNF-α)は、炎症の急性期を刺激する炎症性サイトカインである。腫瘍壊死因子は、IL8の誘導を通じて血管透過性を上昇させ、それにより、マクロファージ及び好中球を感染部位へと動員する。そこに存在するようになると、活性化マクロファージは、TNF-アルファを産生し続け、それにより、炎症反応を維持及び増幅させる。TNF-アルファの一番の役割は、免疫細胞の制御である;しかしながら、TNF-アルファは、細胞増殖、分化、アポトーシス、脂質代謝、及び凝固をはじめとする幅広い範囲の生物学的過程の制御にも関与している。TNF-アルファは、炎症を誘導することができ、アポトーシス細胞死を誘導することができ、腫瘍形成を阻害することができ、ウイルス複製を阻害することができる。
【0007】
TNF-アルファ産生の調節不全は、様々なヒト疾患に関連づけられてきており、そのような疾患として、自己免疫疾患(例えば、リウマチ様関節炎(RA)、クローン病、多発性硬化症)、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、乾癬、毒素ショック、移植片対宿主病、インシュリン抵抗性、アルツハイマー病、癌、及び大うつ病が挙げられる(Swardfager W, et al. (2010) Biol Psychiatry 68 (10): 930-941;(Locksley RM, et al. (2001) Cell 104 (4): 487-501; Dowlati et
al., (2010) Biol Psychiatry 67 (5): 446-457; Brynskov J. et al. (2002) Gut 51 (1): 37-43)。
【0008】
様々な炎症性疾患を治療する目的で、抗体が、TNF-アルファ及びIL23を阻害するための生物療法として使用されてきている。米国特許第6,277,969号、同第6,284,471号、及び同第6,790,444号に記載されるインフリキシマブ(Centocor、Malvern、Pa.)は、ヒトIgG4定常領域及びマウス可変領域を有するキメラ抗TNF-アルファモノクローナルIgG抗体であり、リウマチ様関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び尋常性乾癬を治療するのに臨床使用されている。米国特許第6,090,382号に記載されるモノクローナル抗体アダリムマブ(クローンD2E7;Abbott Laboratories、Abbott Park、Illinois)は、リウマチ様関節炎、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、及び若年性特発性関節炎を治療するのに臨床使用される抗TNF-アルファ治療薬である。ゴリムマブは、リウマチ様関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、及び潰瘍性大腸炎を治療するのに使用されるTNF-アルファ遮断薬である。
また、米国特許第6,902,734号及び同第7,166,285号に記載されるヒトモノクローナル抗体ウステキヌマブ(Centocor,Inc、Malvern、Pa.)は、インターロイキン12及びインターロイキン23(具体的にはp40サブユニット)を標的とするものであり、重篤な尋常性乾癬を治療するのに臨床で使用されており、さらに乾癬性関節炎、多発性硬化症、及び類肉腫症の治療のために研究されているところである。しかしながら、抗TNF-α治療薬は、副作用が報告されている[例えば:Keane J et al. (2001)を参照]。結核には、腫瘍壊死因子α中和剤であるインフリキシマブが関係する。N Engl J Med 345 (15):1098-1104; Scheinfeld N. (2005) Adalimumab: a review of side effects. Expert Opin Drug Saf. 4(4):637-41; Chovel-Sella A et al. (2012) Clinical efficacy and adverse effects of golimumab in the treatment of rheumatoid arthritis. Isr Med Assoc J. 14(6):390-4]。より効果的な治療が同定されれば、投薬量を減少させて投与すること、ならびに治療に関わる費用の低減が可能になるはずである。
【0009】
自己免疫疾患または炎症性疾患を治療及び予防するための、より高い有効性の組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書中提供されるのは、TNF-アルファ及びIL23Aに対して特異的な化合物、そのような化合物を含む組成物、ならびにそれらの使用方法及び製造方法である。
【0011】
本開示の態様は、第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドを含む化合物に関連し、本化合物において:
(A)上記第一ポリペプチドは、以下を含み:
(i)第一標的タンパク質に対して特異的な第一免疫グロブリンの軽鎖可変ドメイン(VL1);
(ii)第二標的タンパク質に対して特異的な第二免疫グロブリンの重鎖可変ドメイン(VH2);ならびに
(iii)ヒンジ領域、重鎖定常領域2(CH2)、及び重鎖定常領域3(CH3);かつ
(B)上記第二ポリペプチドは、以下を含み:
(i)上記第二標的タンパク質に対して特異的な第二免疫グロブリンの軽鎖可変ドメイン(VL2);
(ii)上記第一標的タンパク質に対して特異的な第一免疫グロブリンの重鎖可変ドメイン(VH1);
本化合物において:
(i)上記VL1及びVH1は、会合して、上記第一標的タンパク質と結合する結合部位を形成し;
(ii)上記VL2及びVH2は、会合して、上記第二標的タンパク質と結合する結合部位を形成し;
(iii)上記重鎖定常領域2(CH2)は、通常の抗体に関するKabatにあるとおりのEUインデックスに従い番号付けして、252位にチロシン、254位にトレオニン、及び256位にグルタミン酸を含み;かつ
(iv)上記第一標的タンパク質はTNF-アルファであり、かつ上記第二標的タンパク質はIL-23Aである、または上記第一標的タンパク質はIL-23Aであり、かつ上記第二標的タンパク質はTNF-アルファであり、
本化合物において:
(i)上記VL1は配列番号2を含み、上記VH1は配列番号1を含み、上記VL2は配列番号8を含み、かつ上記VH2は配列番号7を含む;または
(ii)上記VL1は配列番号4もしくは6を含み、上記VH1は配列番号3もしくは5を含み、上記VL2は配列番号8を含み、かつ上記VH2は配列番号7を含む;または
(iii)上記VL1は配列番号8を含み、上記VH1は配列番号7を含み、上記VL2は配列番号2を含み、かつ上記VH2は配列番号1を含む;または
(iv)上記VL1は配列番号8を含み、上記VH1は配列番号7を含み、上記VL2は配列番号4もしくは6を含み、かつ上記VH2は配列番号3もしくは5を含む。
【0012】
実施形態によっては、(ii)において、上記VL1は配列番号4を含み、上記VH1は配列番号3を含み、上記VL2は配列番号8を含み、かつ上記VH2は配列番号7を含む。実施形態によっては、(ii)において、上記VL1は配列番号6を含み、上記VH1は配列番号5を含み、上記VL2は配列番号8を含み、かつ上記VH2は配列番号7を含む。実施形態によっては、(iv)において、上記VL2は配列番号4を含み、上記VH2は配列番号3を含み、上記VL1は配列番号8を含み、かつ上記VH1は配列番号7を含む。実施形態によっては、(iv)において、上記VL2は配列番号6を含み、上記VH2は配列番号5を含み、上記VL1は配列番号8を含み、かつVH1は配列番号7を含む。
【0013】
実施形態によっては、上記第一ポリペプチドはさらに、上記VL1と上記VH2の間に第一リンカーを含み、かつ上記第二ポリペプチドはさらに、上記VL2と上記VH1の間に第二リンカーを含む。実施形態によっては、上記第一リンカーまたは上記第二リンカーは、アミノ酸配列GGGSGGG(配列番号9)を含む。実施形態によっては、上記第一リンカー及び上記第二リンカーは、アミノ酸配列GGGSGGG(配列番号9)を含む。
【0014】
実施形態によっては、上記第一ポリペプチドはさらに、重鎖定常領域1ドメイン(CH1)を含み、かつ上記第二ポリペプチドはさらに、軽鎖定常領域ドメイン(CL)を含み、上記CLと上記CH1は、ジスルフィド結合を介して会合して一緒になることで、C1ドメインを形成する。
【0015】
実施形態によっては、上記第一ポリペプチドはさらに、上記VH2と上記CH1の間に第三リンカーを含み、かつ上記第二ポリペプチドはさらに、上記VH1と上記CLの間に第四リンカーを含む。実施形態によっては、上記第三リンカーは、アミノ酸配列FNRGES(配列番号11)を含む。実施形態によっては、上記第四リンカーは、アミノ酸配列VEPKSS(配列番号12)を含む。実施形態によっては、上記第三リンカーは、アミノ酸配列FNRGES(配列番号11)を含み、かつ上記第四リンカーは、アミノ酸配列VEPKSS(配列番号12)を含む。実施形態によっては、第三リンカーまたは上記第四リンカーは、アミノ酸配列LGGGSG(配列番号10)を含む。実施形態によっては、上記第三リンカー及び上記第四リンカーは、アミノ酸配列LGGGSG(配列番号10)を含む。
【0016】
実施形態によっては、上記重鎖定常領域2(CH2)は、通常の抗体に関するKabatにあるとおりのEUインデックスに従い番号付けして、234位にアラニン及び235位にアラニンを含む。
【0017】
実施形態によっては、上記ヒンジ領域、上記重鎖定常領域2(CH2)、または上記重鎖定常領域3(CH3)のアミノ酸配列は、IgG1に由来するか、またはIgG4に由来する。実施形態によっては、上記ヒンジ領域は、アミノ酸配列EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号40)を含む。
【0018】
実施形態によっては、上記化合物は、上記第一ポリペプチドを2つ及び上記第二ポリペプチドを2つ含み、上記2つの第一ポリペプチドは少なくとも1つのジスルフィド結合を介して会合して一緒になる。実施形態によっては、上記化合物は、上記第一ポリペプチドを2つ及び上記第二ポリペプチドを2つ含み、上記2つの第一ポリペプチドは、少なくとも1つのジスルフィド結合を介して会合して一緒になり、かつ上記第一ポリペプチドはそれぞれ、1つの上記第二ポリペプチドと少なくとも1つのジスルフィド結合を介して会合して一緒になる。
【0019】
実施形態によっては、
(i)上記第一ポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列を含む;
(ii)上記第一ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含む;
(iii)上記第一ポリペプチドは、配列番号17のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列を含む;
(iv)上記第一ポリペプチドは、配列番号19のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸配列を含む;
(v)上記第一ポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列を含む;
(vi)上記第一ポリペプチドは、配列番号23のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸配列を含む;
(vii)上記第一ポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列を含む;
(viii)上記第一ポリペプチドは、配列番号27のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号28のアミノ酸配列を含む;
(ix)上記第一ポリペプチドは、配列番号29のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号30のアミノ酸配列を含む;
(x)上記第一ポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列を含む;
(xi)上記第一ポリペプチドは、配列番号33のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列を含む;または
(xi)上記第一ポリペプチドは、配列番号35のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号36のアミノ酸配列を含む。
【0020】
実施形態によっては、上記化合物は2つの上記第一ポリペプチド及び2つの上記第二ポリペプチドを含み、上記2つの第一ポリペプチドは少なくとも1つのジスルフィド結合を介して会合して一緒になる。
【0021】
実施形態によっては、上記化合物は、2つの上記第一ポリペプチド及び2つの上記第二ポリペプチドを含み、かつ第一ポリペプチドのうち一方のCH2及びCH3、ならびに存在する場合にはCH1は、第一ポリペプチドの他方のCH2及びCH3、ならびに存在する場合にはCH1と会合して、四価分子を形成する。実施形態によっては、上記化合物は、2つの上記第一ポリペプチド及び2つの上記第二ポリペプチドを含み、上記第一ポリペプチドのそれぞれは、CH1、CH2、及びCH3を含み、かつ上記第二ポリペプチドのそれぞれは、CLを含み、かつ第一ポリペプチドのうち一方のCH2及びCH3は、第一ポリペプチドの他方のCH2及びCH3と会合し、かつ上記第一ポリペプチドのそれぞれのCH1は、1つの上記第二ポリペプチドのCLと会合して、四価分子を形成する。
【0022】
本開示の他の態様は、IL-23Aとの結合及びTNF-アルファとの結合について、
第二化合物と競合する第一化合物に関し、上記第一化合物は、第三ポリペプチド及び第四ポリペプチドを含み、本化合物において:
(A)上記第三ポリペプチドは、以下を含み:
(i)第一標的タンパク質に対して特異的な第一免疫グロブリンの軽鎖可変ドメイン(VL1);
(ii)第二標的タンパク質に対して特異的な第二免疫グロブリンの重鎖可変ドメイン(VH2);ならびに
(iii)ヒンジ領域、重鎖定常領域2(CH2)、及び重鎖定常領域3(CH3);かつ
(B)上記第四ポリペプチドは、以下を含み:
(i)上記第二標的タンパク質に対して特異的な第二免疫グロブリンの軽鎖可変ドメイン(VL2);
(ii)上記第一標的タンパク質に対して特異的な第一免疫グロブリンの重鎖可変ドメイン(VH1);
かつ、本化合物において:
(i)上記VL1及びVH1は、会合して、上記第一標的タンパク質と結合する結合部位を形成し;
(ii)上記VL2及びVH2は、会合して、上記第二標的タンパク質と結合する結合部位を形成し;かつ
(iii)上記第一標的タンパク質はTNF-アルファであり、かつ上記第二標的タンパク質はIL-23Aであるか、または上記第一標的タンパク質はIL-23Aであり、かつ上記第二標的タンパク質はTNF-アルファであり、
かつ、本化合物において、上記第二化合物は、第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドを含み、本化合物において:
(i)上記第一ポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列を含む;
(ii)上記第一ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含む;
(iii)上記第一ポリペプチドは、配列番号17のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列を含む;
(iv)上記第一ポリペプチドは、配列番号19のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸配列を含む;
(v)上記第一ポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列を含む;
(vi)上記第一ポリペプチドは、配列番号23のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸配列を含む;
(vii)上記第一ポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列を含む;
(viii)上記第一ポリペプチドは、配列番号27のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号28のアミノ酸配列を含む;
(ix)上記第一ポリペプチドは、配列番号29のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号30のアミノ酸配列を含む;
(x)上記第一ポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列を含む;
(xi)上記第一ポリペプチドは、配列番号33のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列を含む;または
(xii)上記第一ポリペプチドは、配列番号35のアミノ酸配列を含み、かつ上記第二ポリペプチドは、配列番号36のアミノ酸配列を含む。
【0023】
本開示のさらに他の態様は、本明細書中に記載される化合物、例えば上記の化合物など
を含む医薬組成物に関する。
【0024】
本開示の他の態様は、自己免疫疾患または炎症性疾患を治療する方法に関し、本方法は、本明細書中に記載される化合物、例えば上記の化合物など、またはこの化合物を含む医薬組成物を、対象に投与することを含む。
【0025】
本開示のさらに他の態様は、医療用途の、本明細書中に記載される化合物、例えば上記の化合物などに関する。実施形態によっては、この用途は、自己免疫疾患または炎症性疾患の治療である。
【0026】
本開示の他の態様は、医療用途の、本明細書中に記載される化合物、例えば上記の化合物などを含む医薬組成物に関する。実施形態によっては、この使用は、自己免疫疾患または炎症性疾患の治療である。
【0027】
本開示のさらに他の態様は、医療用途の医薬の製造における、本明細書中に記載される化合物、例えば上記の化合物などの使用に関する。実施形態によっては、この用途は、自己免疫疾患または炎症性疾患の治療である。
【0028】
本開示の他の態様は、医療用途の医薬の製造における、本明細書中に記載される医薬組成物、例えば上記の医薬組成物の使用に関する。実施形態によっては、この用途は、自己免疫疾患または炎症性疾患の治療である。
【0029】
本開示のさらに他の態様は、本明細書中に記載されるポリペプチド、例えば上記のポリペプチドなどをコードするヌクレオチド配列を含む核酸に関する。本開示の他の態様は、この核酸を含むベクターに関する。実施形態によっては、ベクターは、この核酸と作動可能に連結したプロモーターを含む。本開示の他の態様は、この核酸またはこのベクターを含む細胞に関する。
【0030】
本開示の他の態様は、本明細書中に記載されるとおりの化合物またはポリペプチド、例えば上記のポリペプチドなどを製造する方法に関し、本方法は、本明細書中に記載される細胞、例えば上記の細胞などを得ること、及びこの細胞で本明細書中に記載されるとおりの核酸を発現させることを含む。実施形態によっては、本方法はさらに、このポリペプチドまたは化合物を単離及び精製することを含む。
【0031】
本開示の1つまたは複数の実施形態の詳細を、以下の説明で記載する。本開示の他の特長または利点は、以下の図面及び複数の実施形態の詳細な説明から、及び添付の請求項からも明らかとなるだろう。
【0032】
以下の図面は、本明細書の一部分を構成し、本開示のある特定の態様をさらに説明するために含まれている。本開示のある特定の態様は、本明細書中で提示される具体的な実施形態の詳細な説明と合わせて、これらの図面の1つまたは複数を参照することにより、より深く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】TNF-アルファ及びIL23Aに対して特異的な例示化合物の模式図である。第一ポリペプチド鎖は、CH3ドメイン、CH2ドメイン、VH
2(VH
II)ドメイン、及びVL
1(VL
I)ドメインを含有する。第二ポリペプチド鎖は、VH
1(VH
I)ドメイン及びVL
2(VL
II)ドメインを含有する。VL
1及びVH
1は、第一標的タンパク質(TNF-アルファまたはIL23Aどちらか)に対して特異的であり、VL
2及びVH
2は、第二標的タンパク質(IL23AまたはTNF-アルファどちらか)に対して特異的である。上段のパネルは、各ポリペプチド鎖を別々に示す。下段のパネルは、1つの第一ポリペプチドのCH2ドメイン及びCH3ドメインと、別の第一ポリペプチドのCH2ドメイン及びCH3ドメインとの会合を通じて形成された四価化合物を示す。第一標的タンパク質及び第二標的タンパク質に対する結合ドメインは、それぞれ、VH
1とVL
1の会合を通じて、及びVH
2とVL
2との会合を通じて、形成される。
【
図1B】TNF-アルファ及びIL23Aに対して特異的な別の例示化合物の模式図である。第一ポリペプチド鎖は、CH3ドメイン、CH2ドメイン、CH1ドメイン、VH
2(VH
II)ドメイン、及びVL
1(VL
I)ドメインを含有する。第二ポリペプチド鎖は、CL、VH
1(VH
I)ドメイン、及びVL
2(VL
II)ドメインを含有する。VL
1及びVH
1は、第一標的タンパク質(TNF-アルファまたはIL23Aどちらか)に対して特異的であり、VL
2及びVH
2は、第二標的タンパク質(IL23AまたはTNF-アルファどちらか)に対して特異的である。上段のパネルは、各ポリペプチド鎖を別々に示す。下段のパネルは、1つの第一ポリペプチドのCH2ドメイン及びCH3ドメインと、別の第一ポリペプチドのCH2ドメイン及びCH3ドメインとの会合を通じて形成された四価化合物を示す。第一標的タンパク質及び第二標的タンパク質に対する結合ドメインは、それぞれ、VH
1とVL
1の会合を通じて、及びVH
2とVL
2との会合を通じて、形成される。この化合物は、CLドメインとCH1ドメインの間の相互作用を通じてさらに会合する。
【
図2】オスカニクイザルにおける1mg/kgで10分間IV輸液後の化合物M及びそのYTE変異化合物Aの血漿中濃度(平均±SD;N=3)を示すグラフである。
【
図3】オスカニクイザルにおける1mg/kgで10分間IV輸液後の化合物O及びその対応するYTE変異化合物Eの血漿中濃度(平均±SD;N=3)を示すグラフである。
【
図4】化合物Eがin vivoでのIL23に対して機能的効力を維持したことを示す一連のグラフ及び表である。マウスに、対照抗体3(IL23Aモノクローナル抗体)または化合物Eどちらかを等モル濃度で投与し、ヒトIL23で負荷を2回与えて、耳の炎症を誘導した。最後の注射から24時間後、耳を収集し、IL23の機能遮断の尺度としてマウスIL17A及びマウスIL22について分析した。末端曝露及び有効性のレベルに基づき、化合物Eは、対照抗体3(IL23Aモノクローナル抗体)に対してin vivoで機能的効力を維持した。対照抗体3:白抜きの四角、三角、及びひし形。化合物E:塗りつぶした四角、三角、及びひし形。MW:分子量。
【
図5】化合物Eがin vivoでTNFに対して機能的効力を維持したことを示す一連のグラフ及び表である。マウスに、対照抗体2(TNFaモノクローナル抗体)または化合物Eどちらかを等モル濃度で投与し、ヒトTNFで負荷を与えた。負荷を与えてから2時間後、全血を収集し、TNFの機能遮断の尺度としてマウスKC及びマウスIL-6について血漿を分析した。末端曝露及び有効性のレベルに基づき、化合物Eは、in vivoで抗TNF抗体に対して機能的効力を維持した。対照抗体3:白抜きの四角、三角、及びひし形。化合物E:塗りつぶした四角、三角、及びひし形。MW:分子量。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書中で記載されるのは、TNF-アルファ(本明細書中TNF-αまたはTNFaとも称する)及びIL23A(IL23p19またはIL-23Aとも称する)の両方と結合する化合物である。これまで、TNF-アルファ及びIL23Aの両方を標的とする承認化合物は存在しなかった。バイオ医薬品アプローチを用いた2種以上の重要な炎症メディエーターの同時中和については、研究がわずかしかない。それらの研究は、リウマチ様関節炎(RA)について測定された臨床成績において改善を示すことができなかったものの、同じ組み合わせを標的とする二機能治療薬は、これまで報告されてこなかった。また、そのような組み合わせは、副作用、例えば感染の危険性などを増大させる可能性がある(例えば、Genovese, M.C., Cohen, S., Moreland, L., Lium, D., Robbins, S., et al. (2
004). Arth. Rheum. 50, 1412-9; Genovese,
M.C., Cohen, S., Moreland, L., Lium, D., Robbins, S., et al. (2004). Arth. Rheum. 50, 1412-9;及びWeinblatt, M., Schiff, M., Goldman, A. Kremer, J., Luggen, M., et al. (2007). Ann. Rheum. Dis. 66, 228-34を参照)。さらに、そのような二重特異性化合物は、溶解性(例えば、凝集)及び安定性(例えば、薬物動態の不良)に関する問題のせいで、設計が困難であった。
【0035】
驚いたことに、TNF-アルファ及びIL23Aの両方と結合する本明細書中に開示される化合物は、IL23AまたはTNF-アルファいずれかを標的とする個々の抗体と比較して、同様なまたは改善された性質を有することが見出された。これらの化合物はまた、適切な薬物動態を有することがわかり、投与目的に適切な範囲で可溶性であった。さらに、実施形態によっては、個々の治療の副作用という観点から個々の用量での複数投与に勝る単回投与及び投薬量の低下という利点が存在する。また、実施形態によっては、化合物のCMC性質は、化合物が集合性を低下させたことを示した。1つの態様において、例示化合物は、特に低い凝集性を示した。リンカーを最適化することで、安定性が改善され、開裂が予防されること、及びYTE変異がFcRn親和性を改善することも示された。本明細書中で記載される化合物は、1つまたは複数の有利な性質、例えば、標準の抗体分子、例えば、IgG分子または抗原結合断片(Fab)と比較して、低下した副作用、向上した投与のしやすさ及び安全性、延長された半減期、上昇した結合親和性、または上昇した阻害活性などを有すると思われる。
【0036】
したがって、本開示の態様は、TNF-アルファ及びIL23Aの両方に対して特異的な化合物、ならびにそのような化合物の使用方法及び製造方法に関する。
【0037】
化合物
本開示の態様は、TNF-アルファ及びIL23Aの両方に対して特異的な化合物に関する。TNF-アルファの模範的タンパク質配列及びIL23Aの模範的タンパク質配列を以下に示す。
>NP_000585.2-TNF-アルファ[ホモ・サピエンス(Homo sapiens)]
MSTESMIRDVELAEEALPKKTGGPQGSRRCLFLSLFSFLIVAGATTLFCLLHFGVIGPQREEFPRDLSLI
SPLAQAVRSSSRTPSDKPVAHVVANPQAEGQLQWLNRRANALLANGVELRDNQLVVPSEGLYLIYSQVLF
KGQGCPSTHVLLTHTISRIAVSYQTKVNLLSAIKSPCQRETPEGAEAKPWYEPIYLGGVFQLEKGDRLSA
EINRPDYLDFAESGQVYFGIIAL (配列番号144)
>NP_057668.1 -IL23A[ホモ・サピエンス(Homo sapiens)]
MLGSRAVMLLLLLPWTAQGRAVPGGSSPAWTQCQQLSQKLCTLAWSAHPLVGHMDLREEGDEETTNDVPH
IQCGDGCDPQGLRDNSQFCLQRIHQGLIFYEKLLGSDIFTGEPSLLPDSPVGQLHASLLGLSQLLQPEGH
HWETQQIPSLSPSQPWQRLLLRFKILRSLQAFVAVAARVFAHGAATLSP (1-19番のアミノ酸は、予測シグナル配列である)(配列番号145)
【0038】
実施形態によっては、化合物は、第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドを含む。実施形態によっては、第一ポリペプチドは、(i)第一標的タンパク質に対して特異的な第一免疫グロブリンの軽鎖可変ドメイン(VL1);(ii)第二標的タンパク質に対して特異的な第二免疫グロブリンの重鎖可変ドメイン(VH2);ならびに(iii)ヒンジ領域、重鎖定常領域2(CH2)、及び重鎖定常領域3(CH3)を含む。実施形態によっては、第一ポリペプチドはさらに、重鎖定常領域1(CH1)を含む。実施形態によっては、第二ポリペプチドは、(i)第二標的タンパク質に対して特異的な第二免疫グロブリンの軽鎖可変ドメイン(VL2);(ii)第一標的タンパク質に対して特異的な第一免疫グロブリンの重鎖可変ドメイン(VH1)を含む。実施形態によっては、第一ポリペプ
チドはさらに、軽鎖定常領域(CL)を含む。
【0039】
当然ながら、第一ポリペプチドの可変ドメイン及び定常ドメイン/領域は、どのような順序にあることも可能であり、第二ポリペプチドの可変ドメイン及び定常ドメイン/領域(もしあれば)は、どのような順序にあることも可能である。第一及び第二ポリペプチドのドメイン/領域についてのN末端からC末端に向かっての配置例を、複数、以下に示す。
第一ポリペプチド配置1:N-VL1-VH2-ヒンジ-CH2-CH3-C
第一ポリペプチド配置2:N-VH2-VL1-ヒンジ-CH2-CH3-C
第一ポリペプチド配置3:N-VL1-VH2-CH1-ヒンジ-CH2-CH3-C
第一ポリペプチド配置4:N-VH2-VL1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3-C
第二ポリペプチド配置1:N-VL2-VH1-C
第二ポリペプチド配置2:N-VH1-VL2-C
第二ポリペプチド配置3:N-VL2-VH1-CL-C
第二ポリペプチド配置4:N-VH1-VL2-CL-C
【0040】
化合物の配置例を
図1A及び
図1Bに示す。実施形態によっては、化合物は、配置1の第一ポリペプチド及び配置1の第二ポリペプチドを含む。実施形態によっては、化合物は、配置3の第一ポリペプチド及び配置3の第二ポリペプチドを含む。
【0041】
実施形態によっては、第一ポリペプチドの可変領域と第二ポリペプチドの可変領域が互いに会合して、第一標的タンパク質のための結合部位及び第二標的タンパク質のための結合部位を形成する。実施形態によっては、第一ポリペプチドのVL1と第二ポリペプチドのVH1が会合して、第一標的タンパク質と結合する結合部位を形成し、第二ポリペプチドのVL2と第一ポリペプチドのVH2が会合して、第二標的タンパク質と結合する結合部位を形成する。実施形態によっては、第一標的タンパク質は、TNF-アルファであり、第二標的タンパク質はIL23Aである。他の実施形態において、第一標的タンパク質はIL23Aであり、第二標的タンパク質はTNF-アルファである。当然のことながら、「第一」及び「第二」という用語は、どちらの標的タンパク質が重要かの階級を与えることを意味しない。
【0042】
VL1、VH1、VL2、及びVH2のそれぞれについて配列の組み合わせ例を、以下の表1に、ならびに実施例1の表2Aに提示する。
【表1】
【0043】
実施形態によっては、化合物は、第一軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むVL1配列ならびに第一重鎖CDRl、CDR2、及びCDR3を含むVH1配列と、第二軽鎖CDRl、CDR2、及びCDR3を含むVL2配列ならびに第二重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むVH2配列とを含む。実施形態によっては、CDRは、表1または表2Aに提示される1種または複数のVL1、VH1、VL2、及びVH2配列のCDRである。表1に提示されるVL1、VH1、VL2、及びVH2配列の軽鎖及び重鎖CDR配列の例を、以下に示す:
配列番号1のCDR:DYAMH(配列番号146)(CDR1)、AITWNSGHIDYADSVEG(配列番号147)(CDR2)、VSYLSTASSLDY(配列番号148)(CDR3)
配列番号2のCDR:RASQGIRNYLA(配列番号149)(CDR1)、AASTLQS(配列番号150)(CDR2)、QRYNRAPYT(配列番号151)(CDR3)
配列番号3及び配列番号5のCDR:SYAMH(配列番号152)(CDR1)、FMSYDGSNKKYADSVKG(配列番号153)(CDR2)、NYYYYGMDV(配列番号154)(CDR3)
配列番号4及び配列番号6のCDR:RASQSVYSYLA(配列番号155)(CDR1)、DASNRAT(配列番号156)(CDR2)、QQRSNWPPFT(配列番号157)(CDR3)
配列番号7のCDR:DQTIH(配列番号158)(CDR1)、YIYPRDDSPKYNENFKG(配列番号159)(CDR2)、PDRSGYAWFIY(配列番号160)(CDR3)
配列番号8のCDR:KASRDVAIAVA(配列番号161)(CDR1)、WASTRHT(配列番号162)(CDR2)、HQYSSYPFT(配列番号163)(CDR3)
【0044】
実施形態によっては、化合物は、表1に記載の配列と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%)同一である配列を含むVH1、VL1、VH2、及び/またはVL2を含む。2つのアミノ酸配列の「同一性パーセント」は、Karlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68, 1990のアルゴリズムを,Karlin and Altschul Proc.Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77, 1993のとおりに修飾して使用して、決定する。そのようなアルゴリズムは、Altschul, et al. J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990のNBLASTプログラム及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。XBLASTプログラムで、スコア=50、ワード長=3としてBLASTタンパク質サーチを行うことにより、注目対象のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。2つの配列間にギャップが存在する場合、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402, 1997に記載されるとおりにGapped
BLASTを利用することができる。BLASTプログラム及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)の初期設定パラメーターを使用することができる。
【0045】
実施形態によっては、化合物は、表1に記載の配列中に1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)の変異を有する配列を含むVH1、VL1、VH2、及び/またはVL2を含む。そのような変異は、保存的アミノ酸置換が可能である。本明細書中で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対電荷または大きさの特性を変更しないアミノ酸置換を示
す。アミノ酸の保存的置換として、例えば、以下のグループ内のアミノ酸間で行われる置換が挙げられる:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;及び(g)E、D。
【0046】
化合物のヒンジ領域、CH2、及びCH3(及び、化合物がCH1及びCLを含有する場合には、任意選択でそれらの領域)のアミノ酸配列は、適切であればどのような起源に由来してもよく、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4などの抗体の定常領域に由来してもよい。抗体の重鎖及び軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、当該分野で周知であり、例えば、IMGTデータベース(www.imgt.org)またはwww.vbase2.org/vbstat.php.に提供されるものなどがある。これらのサイトは両方とも、本明細書中に参照として援用される。実施形態によっては、CH2及びCH3のアミノ酸配列は、IgG1またはIgG4に由来する(例えば、配列番号39または37)。実施形態によっては、CLは、カッパCLまたはラムダCLのアミノ酸配列を含む。実施形態によっては、ヒンジ領域は、アミノ酸配列EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号40)を含む。
【0047】
実施形態によっては、化合物のCH2及び/またはCH3(及び、化合物がCH1及びCLを含有する場合には、任意選択でそれらの領域)は、野生型CH2またはCH3とは異なる1つまたは複数のアミノ酸置換、例えば、野生型IgG1のCH2またはCH3での1つまたは複数のアミノ酸置換あるいは野生型IgG4のCH2またはCH3での1つまたは複数のアミノ酸置換を含む場合がある(配列番号39は、模範的な野生型IgG1を提供する)。そのような置換は当該分野で既知である(例えば、US7704497、US7083784、US6821505、US8323962、US6737056、及びUS7416727を参照)。
【0048】
実施形態によっては、CH2は、通常の抗体に関するKabatにあるとおりのEUインデックスに従い番号付けして、234、235、252、254、及び/または256位にアミノ酸置換を有する(Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services,
1991, これはそのまま全体が本明細書中に参照として援用される)。当然のことながら、本明細書中に記載されるすべてのアミノ酸位置は、通常の抗体に関するKabatにあるとおりのEUインデックスの番号付けを示す。実施形態によっては、CH2は、252、254、及び/または256位にアミノ酸置換を有する。実施形態によっては、252位のアミノ酸は、チロシン、フェニルアラニン、セリン、トリプトファン、またはトレオニンである。実施形態によっては、254位のアミノ酸は、トレオニンである。実施形態によっては、254位のアミノ酸は、セリン、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸である。実施形態によっては、CH2は、252位にチロシン、254位にトレオニン、及び256位にグルタミン酸を含む(本明細書中、YTE変異体と称する)。実施形態によっては、CH2は、234及び/または235位にアミノ酸置換を有する。実施形態によっては、CH2は、234位にアラニン及び235位にアラニンを含み、本明細書中、KO変異体とも称する。実施形態によっては、CH2は、252位にチロシン、254位にトレオニン、256位にグルタミン酸、234位にアラニン、及び235位にアラニンを含み、本明細書中、KO-YTE変異体とも称する。
【0049】
実施形態によっては、1つまたは複数のリンカーを使用して、第一及び/または第二ポリペプチド上のドメイン/領域を1つに連結してもよい。例えば、第一ポリペプチドは、VL1とVH2の間にリンカーを含んでいてもよい。第一ポリペプチドがCH1を含む場合、第一ポリペプチドは、VL1またはVH2(上記に記載した配置に応じて)とCH1の間にリンカーを含んでいてもよい(例えば、VL1-リンカー-CH1またはVH2-
リンカー-CH1)。別の例では、第二ポリペプチドは、VL2とVH1の間にリンカーを含んでいてもよい。第二ポリペプチドがさらにCLを含む場合、第二ポリペプチドは、VL2またはVH1(上記に記載した配置に応じて)とCLの間にリンカーを含んでいてもよい(例えば、VL2-リンカー-CLまたはVH1-リンカー-CL)。当然のことながら、任意の個数のリンカーを使用して、第一ポリペプチド上で、任意のドメインまたは領域と任意の他のドメインまたは領域を連結してもよいし、及び/または任意の個数のリンカーを使用して、第二ポリペプチド上で、任意のドメインまたは領域と任意の他のドメインまたは領域を連結してもよい。
【0050】
当該分野で既知の適切なリンカーはどれでも本明細書中の使用が企図される。実施形態によっては、リンカーは、ペプチドリンカーである。実施形態によっては、ペプチドリンカーは、少なくとも2つのアミノ酸、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のアミノ酸を含む。実施形態によっては、ペプチドリンカーは、長さが50、40、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2アミノ酸以下である。実施形態によっては、ペプチドリンカーは、長さが、2~50、2~40、2~30、2~20、2~10、2~9、2~8、2~7、または2~6アミノ酸である。実施形態によっては、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列GGGSGGG(配列番号9)、LGGGSG(配列番号10)、FNRGES(配列番号11)、VEPKSS(配列番号12)、またはそれらの組み合わせを含む。実施形態によっては、ペプチドリンカーは、リンカー配列を複数コピー含んでもよく、例えば、配列GGGSGGG(配列番号9)、LGGGSG(配列番号10)、FNRGES(配列番号11)、VEPKSS(配列番号12)、またはそれらの組み合わせを複数コピー含んでもよい。
【0051】
実施形態によっては、化合物は、2つの第一ポリペプチド及び2つの第二ポリペプチドを含む。実施形態によっては、第一ポリペプチドのうち一方のCH2及びCH3が、第一ポリペプチドのうち他方のCH2及びCH3と会合して、四価分子を形成する(例えば、2つの第一ポリペプチドは、各自のCH2ドメイン及びCH3ドメインそれぞれの間の会合を通じた二量体化により、第一標的タンパク質に対して特異的な2つの結合部位及び第二標的タンパク質に対して特異的な2つの結合部位を含む四価分子を形成する)。第一ポリペプチドがさらにCH1ドメインを含む場合、CH1ドメインもまた、四価分子の形成に関与する場合がある(例えば、2つの第一ポリペプチドは、各自のCH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインそれぞれの間の会合を通じた二量体化により、第一標的タンパク質に対して特異的な2つの結合部位及び第二標的タンパク質に対して特異的な2つの結合部位を含む四価分子を形成する)。実施形態によっては、2つの第一ポリペプチドは、少なくとも1つのジスルフィド結合を介して会合して一緒になる。
【0052】
同じく本明細書中企図されるのは、本明細書中に記載されるとおりの化合物と、結合について競合する他の化合物、例えば、TNF-アルファ及びIL23Aとの結合について、本明細書中に記載されるとおりの化合物と競合する試験化合物である。実施形態によっては、試験化合物は、本明細書中に記載されるとおりの化合物と、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%配列同一性を有する場合がある。競合的結合は、当該分野で既知の任意のアッセイ、例えば、平衡結合法、ELISA、表面プラズモン共鳴法、または分光分析法を用いて求めることができる。
【0053】
実施形態によっては、本明細書中に記載される化合物は、TNF-アルファ及びIL23Aの両方と特異的に結合する。抗原またはエピトープと「特異的に結合する」化合物というのは、当該分野で十分に理解された用語であり、そのような特異的結合を決定する方法もまた、当該分野で周知である。ある分子が、特定の標的抗原に対して、代替抗原に対するよりも頻繁に、より迅速に、より長い期間、及び/またはより高い親和性で反応または会合する場合、その分子は「特異的結合」を示すと言われる。ある化合物が、標的抗原またはエピトープに対して、他の物質と結合するよりも高い親和性で、より高い結合力で、より迅速に、及び/またはより長い期間結合する場合、その化合物は標的抗原またはエピトープと「特異的に結合する」。例えば、ある抗原(例えば、TNF-アルファまたはIL23A)またはその抗原の抗原エピトープと特異的に(または優先的に)結合する化合物とは、この標的抗原に対して、他の抗原または標的抗原の他のエピトープと結合するよりも高い親和性で、より高い結合力で、より迅速に、及び/またはより長い期間結合する化合物である。この定義を読んで同じく当然のことながら、例えば、第一の標的抗原と特異的に結合する化合物は、第二の標的抗原と特異的にまたは優先的に結合してもよいし、しなくてもよい。そうであるので、「特異的に結合する」または「優先的に結合する」は、必ずしも排他的な結合を必要としない(そのような結合を含むことは可能ではあるが)。一般に、結合についての記述は、優先的な結合を意味するが、必ずしもそうではない。場合によっては、標的抗原またはそのエピトープと「特異的に結合する」化合物は、他の抗原またはこの標的抗原の他のエピトープと結合しない場合がある。
【0054】
実施形態によっては、本明細書中に記載されるとおりの化合物は、TNF-アルファ及びIL23またはそれらの抗原エピトープに対して適切な結合親和性を有する。本明細書中に使用される場合、「結合親和性」は、見かけ上の会合定数すなわちKAを示す。KAは、解離定数(KD)の逆数である。本明細書中に記載される化合物は、標的抗原の一方または両方あるいはそれらの抗原エピトープの一方または両方に対して、少なくとも10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12Mまたはそれ以下の結合親和性(KD)を有する場合がある。結合親和性の上昇は、KDの低下に相当する。実施形態によっては、本明細書中に記載される化合物は、標的抗原の一方または両方あるいはそれらの抗原エピトープの一方または両方に対して、少なくとも10-11Mまたはそれ以下の結合親和性(KD)を有する。化合物の親和性結合が、第三抗原よりも、第一抗原及び第二抗原に対してより高いことは、第三抗原との結合のKA(またはKDの数値)よりも第一抗原及び第二抗原との結合のKAの方が高い(またはKDの数値がより小さい)ことにより示すことができる。そのような場合、化合物は、第一抗原及び第二抗原(例えば、第一立体配座の第一タンパク質またはその模倣物及び第一立体配座の第二タンパク質またはその模倣物)に対して、第三抗原(例えば、同じ第一または第二タンパク質またはその模倣物だが第二立体配座にあるもの;あるいは第三タンパク質)に対するよりも特異性を有する。結合親和性(例えば、特異性または他の比較について)の差は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1000、10,000、または105倍が可能である。
【0055】
結合親和性(または結合特異性)は、様々な方法で求めることができ、そのような方法として、平衡結合法、ELISA、表面プラズモン共鳴法、または分光分析法(例えば、蛍光アッセイを使用する)が挙げられる。結合親和性を評価するための条件の例として、HBS-P緩衝液(10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、0.005%(v/v)の界面活性剤P20)中がある。こうした技法を用いて、標的タンパク質濃度の関数として、結合した結合タンパク質濃度を測定することができる。結合した結合タンパク質濃度([Bound])は、以下の式のとおり、遊離標的タンパク質濃度([Free])、及び標的上の結合タンパク質用の結合部位の濃度と関連し、式中(N)は、標的分子あたりの結合部位の個数である:
[Bound]=[N][Free]/(Kd+[Free])
【0056】
もっとも、KAを正確に求めることは必ずしも常に必要とはされない。なぜなら、親和性の定量的測定値を得る、例えば、ELISAまたはFACS分析などの方法を用いて求められた値を得ることでも十分な場合があるからである。親和性の定量的測定値は、KA
に比例し、したがって、親和性がより高いかどうか、例えば、2倍高くなっているかどうかを判定するなどの比較に用いることができ、例えば、機能アッセイでの活性、例えば、in vitroもしくはin vivoアッセイでの活性により、親和性の定量的測定値を得ること、または親和性の推定値を得ることでも十分な場合がある。
【0057】
実施形態によっては、化合物は、表2Aに定義されるとおりに第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドを含む。実施形態によっては、化合物は、以下を含む:
(i)第一ポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列を含む;
(ii)第一ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含む;
(iii)第一ポリペプチドは、配列番号17のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列を含む;
(iv)第一ポリペプチドは、配列番号19のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸配列を含む;
(v)第一ポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列を含む;
(vi)第一ポリペプチドは、配列番号23のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸配列を含む;
(vii)第一ポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列を含む;
(viii)第一ポリペプチドは、配列番号27のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号28のアミノ酸配列を含む;
(ix)第一ポリペプチドは、配列番号29のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号30のアミノ酸配列を含む;
(x)第一ポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列を含む;
(xi)第一ポリペプチドは、配列番号33のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列を含む;
(xii)第一ポリペプチドは、配列番号35のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号36のアミノ酸配列を含む;
(xiii)第一ポリペプチドは、配列番号44のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号45のアミノ酸配列を含む;
(xiv)第一ポリペプチドは、配列番号46のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号47のアミノ酸配列を含む;
(xv)第一ポリペプチドは、配列番号48のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号49のアミノ酸配列を含む;
(xvi)第一ポリペプチドは、配列番号50のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号51のアミノ酸配列を含む;
(xvii)第一ポリペプチドは、配列番号52のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号53のアミノ酸配列を含む;
(xviii)第一ポリペプチドは、配列番号54のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号55のアミノ酸配列を含む;
(xix)第一ポリペプチドは、配列番号56のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号57のアミノ酸配列を含む;
(xx)第一ポリペプチドは、配列番号58のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号59のアミノ酸配列を含む;
(xxi)第一ポリペプチドは、配列番号60のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号61のアミノ酸配列を含む;
(xxii)第一ポリペプチドは、配列番号62のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペ
プチドは、配列番号63のアミノ酸配列を含む;
(xxiii)第一ポリペプチドは、配列番号64のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号65のアミノ酸配列を含む;
(xxiv)第一ポリペプチドは、配列番号66のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号67のアミノ酸配列を含む;
(xxv)第一ポリペプチドは、配列番号68のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号69のアミノ酸配列を含む;
(xxvi)第一ポリペプチドは、配列番号70のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号71のアミノ酸配列を含む;
(xxvii)第一ポリペプチドは、配列番号72のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号73のアミノ酸配列を含む;
(xxviii)第一ポリペプチドは、配列番号74のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号75のアミノ酸配列を含む;
(xxix)第一ポリペプチドは、配列番号76のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号77のアミノ酸配列を含む;
(xxx)第一ポリペプチドは、配列番号78のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号79のアミノ酸配列を含む;
(xxxi)第一ポリペプチドは、配列番号80のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号81のアミノ酸配列を含む;
(xxxii)第一ポリペプチドは、配列番号82のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号83のアミノ酸配列を含む;
(xxxiii)第一ポリペプチドは、配列番号84のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号85のアミノ酸配列を含む;
(xxxiv)第一ポリペプチドは、配列番号86のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号87のアミノ酸配列を含む;
(xxxv)第一ポリペプチドは、配列番号88のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号89のアミノ酸配列を含む;
(xxxvi)第一ポリペプチドは、配列番号90のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号91のアミノ酸配列を含む;
(xxxvii)第一ポリペプチドは、配列番号92のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号93のアミノ酸配列を含む;
(xxxviii)第一ポリペプチドは、配列番号94のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号95のアミノ酸配列を含む;
(xxxix)第一ポリペプチドは、配列番号96のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号97のアミノ酸配列を含む;
(xl)第一ポリペプチドは、配列番号98のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号99のアミノ酸配列を含む;
(xli)第一ポリペプチドは、配列番号100のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号101のアミノ酸配列を含む;
(xlii)第一ポリペプチドは、配列番号102のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号103のアミノ酸配列を含む;
(xliii)第一ポリペプチドは、配列番号104のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号105のアミノ酸配列を含む;
(xliv)第一ポリペプチドは、配列番号106のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号107のアミノ酸配列を含む;
(xlv)第一ポリペプチドは、配列番号108のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号109のアミノ酸配列を含む;
(xlvi)第一ポリペプチドは、配列番号110のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号111のアミノ酸配列を含む;
(xlvii)第一ポリペプチドは、配列番号112のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポ
リペプチドは、配列番号113のアミノ酸配列を含む;
(xlviii)第一ポリペプチドは、配列番号114のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号115のアミノ酸配列を含む;
(xlix)第一ポリペプチドは、配列番号116のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号117のアミノ酸配列を含む;
(l)第一ポリペプチドは、配列番号118のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号119のアミノ酸配列を含む;
(li)第一ポリペプチドは、配列番号120のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号121のアミノ酸配列を含む;
(lii)第一ポリペプチドは、配列番号122のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号123のアミノ酸配列を含む;
(liii)第一ポリペプチドは、配列番号124のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号125のアミノ酸配列を含む;
(liv)第一ポリペプチドは、配列番号126のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号127のアミノ酸配列を含む;
(lv)第一ポリペプチドは、配列番号128のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号129のアミノ酸配列を含む;
(lvi)第一ポリペプチドは、配列番号130のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号131のアミノ酸配列を含む;
(lvii)第一ポリペプチドは、配列番号132のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号133のアミノ酸配列を含む;
(lviii)第一ポリペプチドは、配列番号134のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号135のアミノ酸配列を含む;
(lix)第一ポリペプチドは、配列番号136のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号137のアミノ酸配列を含む;
(lx)第一ポリペプチドは、配列番号138のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号139のアミノ酸配列を含む;
(lxi)第一ポリペプチドは、配列番号140のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号141のアミノ酸配列を含む;または
(lxii)第一ポリペプチドは、配列番号142のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号143のアミノ酸配列を含む。
【0058】
実施形態によっては、化合物は、以下を含む:
(i)第一ポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列を含む;
(ii)第一ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含む;
(iii)第一ポリペプチドは、配列番号17のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列を含む;
(iv)第一ポリペプチドは、配列番号19のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸配列を含む;
(v)第一ポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列を含む;
(vi)第一ポリペプチドは、配列番号23のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸配列を含む;
(vii)第一ポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列を含む;
(viii)第一ポリペプチドは、配列番号27のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号28のアミノ酸配列を含む;
(ix)第一ポリペプチドは、配列番号29のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチ
ドは、配列番号30のアミノ酸配列を含む;
(x)第一ポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列を含む;
(xi)第一ポリペプチドは、配列番号33のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列を含む;または
(xii)第一ポリペプチドは、配列番号35のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号36のアミノ酸配列を含む。
【0059】
化合物、核酸、ベクター、及び細胞の製造方法
本開示の態様は、本明細書中に記載される化合物または本明細書中に記載されるポリペプチド(例えば、本明細書中に記載される第一または第二のポリペプチド)をコードする核酸も含み、化合物またはポリペプチドは一緒にコードされていても別々にコードされていてもよい。本明細書中に記載される化合物または本明細書中に記載されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、当該分野で既知のどのような方法で得られてもよいし、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列も当該分野で既知のどのような方法で決定されてもよい。
【0060】
実施形態によっては、核酸は、発現ベクターなどのベクター内に含まれている。実施形態によっては、ベクターは、核酸と作動可能に連結したプロモーターを含む。
【0061】
様々なプロモーターを、本明細書中に記載される化合物または本明細書中に記載されるポリペプチドの発現のために使用することができ、そのようなプロモーターとして、サイトメガロウイルス(CMV)中間初期プロモーター、ウイルスLTR、例えば、ラウス肉腫ウイルスLTR、HIV-LTR、HTLV-1 LTRなど、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、大腸菌lacUV5プロモーター、及び単純ヘルペスtkウイルスプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
制御型プロモーター(regulatable promoter)もまた使用できる。そのような制御型プロモーターとして、lacオペレーター担持哺乳類細胞プロモーターからの転写を調節するための転写モジュレーターとして大腸菌由来のlacリプレッサーを使用するもの[Brown, M. et al., Cell, 49:603-612(1987)]、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を使用するもの[Gossen, M., and Bujard, H., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5547-5551 (1992); Yao, F. et al., Human Gene Therapy, 9:1939-1950 (1998);Shockelt, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:6522-6526 (1995)]が挙げられる。他の系として、FK506二量体、アストラジオール(astradiol)を用いるVP16またはp65、RU486、ジフェノールムリスレロン(murislerone)、またはラパマイシンが挙げられる。誘導系は、In vitrogen、Clontech、及びAriadから入手可能である。
【0063】
オペロンを持つリプレッサーを含む制御型プロモーターが使用可能である。1つの実施形態において、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来のlacリプレッサーは、転写モジュレーターとして機能して、lacオペレーター担持哺乳類細胞プロモーターからの転写を調節することができ[M. Brown et al., Cell, 49:603-612 (1987)]; Gossen and Bujard (1992); [M. Gossen et al., Natl. Acad. Sci. USA, 89:5547-5551 (1992)]、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を転写アクチベーター(VP16)と組み合わせることで
tetR-哺乳類細胞転写アクチベーター融合タンパク質、tTa(tetR-VP16)を作ることができ、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)主要中間初期プロモーター由来のtetO担持ミニマルプロモーターと組み合わせることで哺乳類細胞での遺伝子発現を制御するtetR-tetオペレーター系を作ることができる。1つの実施形態において、テトラサイクリン誘導性スイッチが使用される(Yao et al, Human Gene Therapy; Gossen et al., Natl. Acad. Sci. USA, 89:5547-5551 (1992); Shockett et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:6522-6526 (1995))。
【0064】
さらに、ベクターは、例えば、以下のうちのあるものまたは全てを含有することができる:選択性マーカー遺伝子、例えば、哺乳類細胞で安定なまたは一過性形質移入体を選択するためのネオマイシン遺伝子;高レベル転写のための、ヒトCMVの中間初期遺伝子由来のエンハンサー/プロモーター配列;mRNA安定性のための、SV40由来転写終結及びRNAプロセシングシグナル;適正なエピソーム複製のための、SV40ポリオーマ複製起点及びColE1;配列内リボソーム結合部位(IRES)、万能マルチクローニングサイト;ならびに、センス及びアンチセンスRNAのin vitro転写のための、T7及びSP6RNAプロモーター。導入遺伝子を含有するベクターを製造するのに適切なベクター及び方法は、当該分野で周知であり入手可能である。
【0065】
核酸を含む発現ベクターは、従来技法(例えば、電気穿孔法、リポソーム形質移入法、及びリン酸カルシウム沈殿法)により宿主細胞に導入することができ、次いで、形質移入された遺伝子を従来技法により培養して、本明細書中に記載される化合物を産生させる。実施形態によっては、本明細書中に記載される化合物の発現を、恒常プロモーター、誘導性プロモーター、または組織特異的プロモーターにより調節する。
【0066】
本明細書中に記載される化合物または本明細書中に記載されるポリペプチドを発現させるのに使用される宿主細胞は、エシェリヒア・コリなどの細菌細胞でも、真核生物細胞でもよいが、真核生物細胞が好ましい特に、哺乳類細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)を、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと組み合わせたものが、免疫グロブリンに有効な発現系である(Foecking et al. (1986) ‘‘Powerful And Versatile Enhancer-Promoter Unit For Mammalian Expression Vectors,’’ Gene 45:101-106; Cockett et al. (1990) ‘‘High Level Expression Of Tissue Inhibitor Of Metalloproteinases In Chinese Hamster Ovary Cells Using Glutamine Synthetase Gene Amplification,’’ Biotechnology 8:662-667)。
【0067】
様々な宿主発現ベクター系を利用して、本明細書中に記載される化合物または本明細書中に記載されるポリペプチドを発現させてよい。そのような宿主発現系は、本明細書中に記載される化合物または本明細書中に記載されるポリペプチドのコード配列を産生し、続いてコード配列を精製することができるビヒクルの形をとるが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換または形質移入されると、in situで本明細書中に記載される化合物を発現する細胞の形をとることもできる。そのような細胞として、本明細書中に記載される化合物のコード配列を含有する、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌及び枯草菌)などの微生物;本明細書中に記載される化合物をコードする配列を含有する組換え酵母菌発現ベクターで形質転換された酵母菌(例えば、サッカロマイセス・ピキア(Sa
ccharomyces pichia));本明細書中に記載される化合物をコードする配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;本明細書中に記載される分子をコードする配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)及びタバコモザイクウイルス(TMV))に感染した、または本明細書中に記載される分子をコードする配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;あるいは哺乳類細胞のゲノム由来(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳類ウイルス由来(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)のプロモーターを含有する組換え発現構築物を抱える哺乳類細胞系(例えば、COS細胞、CHO細胞、BHK細胞、293細胞、293T細胞、3T3細胞、リンパ性細胞(米国特許第5,807,715号を参照)、PerC.6細胞(Crucellにより開発されたヒト網膜細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
細菌系では、複数の発現ベクターを、発現させる化合物の目的用途に応じて、都合よく選択してよい。例えば、本明細書中に記載される化合物の医薬組成物の製造のため、そのようなタンパク質を大量に産生させようとする場合、すぐに精製できる融合タンパク質産物を高レベルに発現するように導くベクターが望ましい場合がある。そのようなベクターとして、大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al. (1983)
‘‘Easy Identification Of cDNA Clones,’’
EMBO J. 2:1791-1794)、このベクターでは、融合タンパク質が産生されるように、コード配列を、ベクターのフレーム中のlacZ翻訳領域と個別に連結することができる;pINベクター(Inouye et al. (1985) ‘‘Up-Promoter Mutations In The lpp Gene Of Escherichia Coli,’’ Nucleic Acids Res. 13:3101-3110; Van Heeke et al. (1989) ‘‘Expression Of Human Asparagine Synthetase In Escherichia coli,’’ J. Biol. Chem. 24:5503-5509);などが挙げられるが、これらに限定されない。pGEXベクターを使用して、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させることもできる。一般に、そのような融合タンパク質は、可溶性であり、吸着及びマトリクスグルタチオン-アガロースビーズとの結合、続いて遊離グルタチオン存在下での溶出により、溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローン化された標的遺伝子産物がGST部分から放出され得るようにするため、トロンビンまたは第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0069】
昆虫系では、アウトグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)が、外来遺伝子を発現させるベクターとして使用される。このウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera
frugiperda)細胞中で増殖する。コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個別にクローン導入することができ、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。
【0070】
哺乳類宿主細胞では、複数のウイルス系発現システムを利用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、注目対象のコード配列を、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーター及び三区分リーダー配列に連結してもよい。次いで、このキメラ遺伝子を、in vitroまたはin vivo組換え法により、アデノウイルスゲノムに挿入してもよい。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、E1領域またはE3領域)への挿入は、感染した宿主中で生存可能かつ免疫グロブリン分
子を発現可能な組換えウイルスをもたらすだろう(例えば、Logan et al. (1984) ‘‘Adenovirus Tripartite Leader Sequence Enhances Translation Of mRNAs Late After Infection,’’ Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659を参照)。挿入された抗体コード配列の効率的な翻訳のためには、特定の開始シグナルも必要となる場合がある。そのようなシグナルとして、ATG開始コドン及び隣接配列が挙げられる。そのうえさらに、開始コドンは、全挿入物の翻訳を確実にするために、所望のコード配列の読み枠と一致していなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成両方の様々な起源のものが可能である。発現の効率は、適切な転写エンハンサー配列、転写ターミネーターなどの含有により向上させてもよい。(Bitter et al. (1987)
‘‘Expression And Secretion Vectors For Yeast,’’ Methods in Enzymol. 153:516-544を参照)。
【0071】
また、挿入された配列の発現を調節する、または所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾及びプロセシングする宿主細胞株を選択してもよい。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能に重要な場合がある。例えば、ある特定の実施形態において、本明細書中に記載される化合物は、1つの遺伝子産物として(例えば、単独ポリペプチド鎖として、すなわち、ポリタンパク質前駆体として)発現する場合があり、その場合、本明細書中に記載される化合物の別々のポリペプチドを形成するために、天然または組換え細胞機構によるタンパク質分解切断を必要とする。したがって、本開示は、本明細書中に記載される化合物のポリペプチドを含むポリタンパク質前駆体分子をコードするように核酸配列を操作することを包含し、そのような配列として、ポリタンパク質前駆体の翻訳後切断を導くことができるコード配列が挙げられる。ポリタンパク質前駆体の翻訳後切断は、本明細書中に記載される化合物のポリペプチドをもたらす。本明細書中に記載される化合物のポリペプチドを含む前駆体分子の翻訳後切断は、in vivo(すなわち、宿主細胞内において、天然または組換え細胞システム/機構により、例えば、適切な部位でのフューリン切断)で起こる場合もあるし、in vitro(例えば、活性既知のプロテアーゼまたはペプチダーゼを含む組成物中及び/または所望のタンパク質分解作用を助長することが既知の条件または試薬を含む組成物中での、このポリペプチド鎖のインキュベーション)で起こる場合もある。ポリタンパク質前駆体の設計は、当業者に容易にわかる実施形態を複数含むことが可能であり、組換えタンパク質の精製及び修飾は、それぐらい当該分野で周知である。当該分野で既知のプロテアーゼまたはペプチダーゼならどれでも、前駆体分子について記載される修飾に使用することができ、例えば、トロンビンまたは第Xa因子(Nagai et al. (1985) ‘‘Oxygen Binding Properties Of Human Mutant Hemoglobins Synthesized In Escherichia Coli,’’ Proc. Nat. Acad. Sci. USA 82:7252-7255、及びJenny et al. (2003) ‘‘A Critical Review Of The Methods For Cleavage Of Fusion Proteins With Thrombin And Factor Xa,’’ Protein Expr. Purif. 31:1-11中の総説、これらはそれぞれ、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される))、エンテロキナーゼ(Collins-Racie et al. (1995) ‘‘Production Of Recombinant Bovine Enterokinase Catalytic Subunit In Escherichia coli Using The Novel Secretory Fusion Partner DsbA,’’ Biotechnology 13:982-987、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される))、フューリン、及びAcTEV(Parks et al. (1994) ‘‘Release Of Proteins And Peptides From Fusion Proteins Using A Recombinant Plant Virus Proteinase,’’ Anal. Biochem. 216:413-417、そのまま全体が本明細書中に参照として援用される))、及び口蹄疫ウイルスプロテアーゼC3がある。
【0072】
宿主細胞は、それぞれに、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾について特徴及び特定の機構を有する。発現した外来タンパク質の適正な修飾及びプロセシングを確実にするために、適切な細胞株または宿主系を選択することができる。この目的で、一次転写物の適正なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化、及びリン酸化のための細胞機構を所有する真核生物宿主細胞を使用してもよい。そのような哺乳類宿主細胞として、CHO、VERY、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、293T、3T3、WI38、BT483、Hs578T、HTB2、BT20及びT47D、CRL7030、ならびにHs578Bstが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
組換えタンパク質の長期間、高収率産生のためには、安定発現が好ましい。例えば、本明細書中に記載される化合物を安定発現する細胞株を操作することができる。ウイルスの複製起源を含有する発現ベクターを使用するのではなく、宿主細胞を、適切な発現制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)で制御されたDNA及び選択マーカーで形質転換することができる。外来DNAの導入に続いて、操作された細胞を、濃縮培地中で1~2日間増殖させてもよく、次いで、選択培地に切り替える。組換えプラスミド中の選択マーカーは、淘汰に対する抵抗性を与え、細胞がプラスミドを自身の染色体に安定統合し増殖して病巣を形成することを可能にし、病巣は次いでクローン化されて細胞株中に拡散することができる。この方法を都合よく用いて、本明細書中に記載される化合物を発現する細胞株を操作することができる。そのように操作された細胞株は、本明細書中に記載される化合物と直接または間接的に相互作用する化合物のスクリーニング及び評価に、特に有用となる場合がある。
【0074】
複数の系を使用することができ、そのような系として、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al. (1977) ‘‘Transfer Of Purified Herpes Virus Thymidine Kinase Gene To Cultured Mouse Cells,’’ Cell 11: 223-232)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska et al. (1992) ‘‘Use Of The HPRT Gene And The HAT Selection Technique In DNA-Mediated Transformation Of Mammalian Cells First Steps Toward Developing Hybridoma Techniques And Gene Therapy,’’ Bioessays 14: 495-500)、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al. (1980) ‘‘Isolation Of Transforming DNA: Cloning The Hamster aprt Gene,’’ Cell 22: 817-823)が挙げられるが、これらに限定されず、遺伝子はそれぞれtk-、hgprt-またはaprt-細胞で採用することができる。また、以下の遺伝子について、淘汰の基準として代謝拮抗剤耐性を利用することができる:dhfr、これは、メトトレキセート耐性を与える(Wigler et al. (1980) ‘‘Transformation Of Mammalian Cells With An Amplifiable Dominant-Acting Gene,’’ Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567-3570; O’Hare et al. (1981) ‘‘Transformation Of Mouse Fibroblasts To Methotrexate Resistance By A Recombinant Plasmid Expressing A Prokaryotic Dihydrofolate Reductase,’’ Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 1527-1531);gpt、これは、ミコフェノール酸耐性を与える(Mulligan et al. (1981) ‘‘Selection For Animal Cells That Express The Escherichia coli Gene Coding For Xanthine-Guanine Phosphoribosyl transferase,’’ Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 2072-2076);neo、これは、アミノグリコシドG-418耐性を与える(Tolstoshev (1993) ‘‘Gene Therapy, Concepts, Current Trials And Future Directions,’’ Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596; Mulligan (1993) ‘‘The Basic Science Of Gene Therapy,’’ Science 260:926-932;及びMorgan et al. (1993) ‘‘Human Gene Therapy,’’ Ann. Rev. Biochem. 62:191-217)、及びhygro、これは、ハイグロマイシン耐性を与える(Santerre et al. (1984) ‘‘Expression Of Prokaryotic Genes For Hygromycin B And G418 Resistance As Dominant-Seleciton Markers In Mouse L Cells,’’ Gene 30:147-156)。組換えDNA技術分野で一般に知られる方法で利用可能なものは、Ausubel et al. (eds.), 1993, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY; Kriegler, 1990, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY;及びChapters 12 and 13, Dracopoli et al. (eds), 1994, Current Protocols in Human Genetics, John Wiley & Sons, NY.; Colberre-Garapin et al.(1981) ‘‘A New Dominant Hybrid Selective Marker For Higher Eukaryotic Cells,’’ J. Mol. Biol. 150:1-14に記載される。
【0075】
本明細書中に記載される化合物または本明細書中に記載されるポリペプチドの発現レベルは、ベクター増幅により上昇させることができる(総説については、Bebbington and Hentschel, The use of vectos based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in
DNA cloning, Vol. 3 (Academic Press, New York, 1987)を参照)。本明細書中に記載される化合物を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能な場合、宿主細胞の培養物に存在する阻害剤のレベルを上昇させれば、マーカー遺伝子のコピー数の増加につながるだろう。増幅される領域は、本明細書中に記載される化合物または本明細書中に記載されるポリペプチドのヌクレオチド配列と関連するので、ポリペプチドの産生もまた、増加するだろう(Crouse et al. (1983) ‘‘Expression And Amplification Of Engineered Mouse Dihydrofolate Reductase Minigenes,’’ Mol. Cell. Biol. 3:257-266)。
【0076】
宿主細胞は、2つの発現ベクター、すなわち本明細書中に記載される化合物の第一ポリペプチドをコードする第一ベクター及び本明細書中に記載される化合物の第二ポリペプチドをコードする第二ベクターで同時形質転換してもよい。2つのベクターは、両方のポリペプチドを等しく発現することを可能にする同一の選択性マーカーを含有してもよい。あるいは、両方のポリペプチドをコードする1つのベクターを使用してもよい。本明細書中に記載される化合物のポリペプチドのコード配列は、cDNAを含んでもゲノムDNAを含んでもよい。
【0077】
本明細書中に記載される化合物または本明細書中に記載されるポリペプチドが組換え技法で発現されたら、これを、ポリペプチド、ポリタンパク質、または抗体を精製するための(例えば、抗原選択性に基づく抗体精製スキームと類似する)当該分野で既知の任意の技法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、詳細には特定抗原についての親和性によるもの(化合物がFcドメイン(またはその一部分)を含む場合には、任意選択でタンパク質A選別後)、及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、吸収率較差溶解度、あるいはポリペプチドまたは抗体を精製するための任意の他の標準技術により精製することができる。
【0078】
本開示の他の態様は、本明細書中に記載される核酸または本明細書中に記載されるベクターを含む細胞に関する。この細胞は、原核生物細胞であっても真核生物細胞であってもよい。実施形態によっては、この細胞は、哺乳類細胞である。細胞型の例を本明細書に記載する。
【0079】
本開示のさらに他の態様は、本明細書中に記載される化合物または本明細書中に記載されるポリペプチド(例えば、第一ポリペプチドまたは第二ポリペプチド)を製造する方法に関し、本方法は、本明細書中に記載される細胞を得ること、及びこの細胞で本明細書中に記載される核酸を発現させることを含む。実施形態によっては、本方法はさらに、本明細書中に記載される化合物または本明細書中に記載されるポリペプチドを単離すること及び精製することを含む。
【0080】
治療方法及び医療用途の組成物
本開示の他の態様は、治療方法及び医療用途の組成物に関する。そのような方法及び組成物で使用するための化合物の限定ではなく例として、以下を含むものがある:
(i)第一ポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列を含む;
(ii)第一ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含む;
(iii)第一ポリペプチドは、配列番号17のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列を含む;
(iv)第一ポリペプチドは、配列番号19のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸配列を含む;
(v)第一ポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列を含む;
(vi)第一ポリペプチドは、配列番号23のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸配列を含む;
(vii)第一ポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列を含む;
(viii)第一ポリペプチドは、配列番号27のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号28のアミノ酸配列を含む;
(ix)第一ポリペプチドは、配列番号29のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチ
ドは、配列番号30のアミノ酸配列を含む;
(x)第一ポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列を含む;
(xi)第一ポリペプチドは、配列番号33のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列を含む;または
(xii)第一ポリペプチドは、配列番号35のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号36のアミノ酸配列を含む。
【0081】
実施形態によっては、治療方法または用途は、自己免疫疾患または炎症生疾患を治療する方法またはそのような方法での用途である。実施形態によっては、この方法は、本明細書中に記載される化合物またはその化合物を含む医薬組成物を、対象に、例えば、自己免疫疾患または炎症生疾患を有するまたは有する危険性のある対象に、投与することを含む。
【0082】
本明細書中に記載される方法により治療されることになる対象は、哺乳類、より好ましくはヒトが可能である。哺乳類として、家畜動物、スポーツ用動物、愛玩動物、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、及びラットが挙げられるが、これらに限定されない。治療を必要とするヒト対象は、疾患を有する、有する危険がある、または有する疑いがあるヒト対象の場合がある。疾患を有する対象は、常用の医療検査、例えば、健康診断、検査室検査、臓器機能検査、CTスキャン、または超音波により同定することができる。そのような疾患のいずれかを有することが疑われる対象は、その疾患の症候を1つまたは複数示す可能性がある。疾患、例えば、自己免疫疾患及び炎症生疾患の兆候または症候は、当業者には周知である。疾患の危険性がある対象は、その疾患の危険因子のうち1つまたは複数を有する対象が可能である。
【0083】
自己免疫疾患の限定されない例として、リウマチ様関節炎、乾癬、1型糖尿病、全身性紅斑性狼瘡、移植片拒絶、自己免疫性甲状腺疾患(橋本病)、類肉腫症、強皮症、肉芽腫性血管炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、シェーグレン病、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、多発筋炎・皮膚筋炎、結節性多発動脈炎、免疫性水疱形成皮膚疾患、ベーチェット症候群、多発性硬化症、全身性硬化症、グッドパスチャー病、または免疫性糸球体腎炎が挙げられる。
【0084】
炎症性疾患の限定ではなく例として、リウマチ様関節炎、全身性紅斑性狼瘡、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアック病・皮膚炎、慢性疲労症候群免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、デゴス病、皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、円板状皮疹、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症・線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、突発性肺線維症、突発性血小板減少症紫斑病(ITP)、Iga腎障害、インシュリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発筋炎・皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、類肉腫症、強皮症、シェーグレン症候群、スティフ・マン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症が挙げられる。実施形態によっては、自己免疫疾患または炎症性疾患は、クローン病、強直性脊椎炎、または乾癬性関節炎である。
【0085】
本明細書中に記載される方法を実施するために、本明細書中に記載される化合物または医薬組成物を有効量で、治療を必要としている対象(例えば、ヒト)に投与することができる。様々な送達系が既知であり、それらを使用して本発明の化合物を投与することができる。投与方法として、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻内経路、硬膜外経路、及び経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物は、例えば、輸液、ボーラス投与、または注射により投与することができ、他の生物学的活性作用剤、例えば抗炎症剤などと一緒に投与することができる。投与は、全身性でも局所的でも可能である。好適な実施形態において、投与は、皮下注射による。そのような注射用の配合物は、例えば、2週間に1度投与することが可能な、プレフィル型シリンジとして製造してもよい。
【0086】
「有効量」は、本明細書中で使用される場合、各化合物が、単独または1種もしくは複数の他の化合物との併用いずれかで、治療効果を与えるために必要とされる量を示す。有効量は、当業者が認識するとおり、治療される特定症状、症状の重篤度、対象個体の年齢、体調、体格、性別、及び体重などのパラメーター、治療期間、併用両方(もしあれば)の性質、特定の投与経路、ならびに医療関係者の知見及び専門知識内の同様な要因に応じて変化する。これらの要因は、当業者に周知であり、常用検査にすぎない検査で対処することができる。個別成分またはそれらの組み合わせを最大用量で使用する、すなわち、妥当な医学的判断に従った最大安全量が、一般に好適である。しかしながら、当業者には当然のことだろうが、対象によっては、医学的理由、心理学的理由により、または実質的にその他あらゆる理由により、より少ない用量または耐容量を必要とする場合がある。
【0087】
経験上の考慮、例えば半減期などは、一般に、投薬量を決定する一因となると思われる。例えば、ヒト免疫系と適合性のある化合物、例えばヒト化抗体または全ヒト抗体由来の領域を含む化合物などを使用して、化合物の半減期を延長させるとともに、化合物が宿主の免疫系から攻撃されるのを防ぐことができる。投与の頻度は、治療過程にわたって、決定及び調整される場合があり、一般に、疾患の治療及び/または抑制及び/または緩和及び/または遅延に基づくが、必ずしもそうである必要はない。あるいは、化合物の継続的徐放性配合物が適切な場合がある。徐放を達成する様々な配合及び装置が、当該分野で既知である。
【0088】
実施形態によっては、投薬は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、または6日毎である。実施形態によっては、投薬頻度は、週に1度、2週毎、4週毎、5週毎、6週毎、7週毎、8週毎、9週毎、または10週毎である;あるいは、月に1度、2ヶ月毎、3ヶ月毎、またはそれより長期に1度である。この治療の進行は、従来技法及びアッセイにより容易に監視することができる。投薬レジメン(使用する化合物を含めて)は、時間とともに変更することができる。
【0089】
実施形態によっては、正常体重の成人対象について、約0.01~1000mg/kgの範囲の用量が投与される場合がある。実施形態によっては、用量は、1~200mgである。特定の投薬レジメン、すなわち、用量、タイミング、及び頻度は、特定の対象、及びその対象の病歴、ならびに化合物の性質(化合物の半減期、及び当該分野で周知である他の考慮事項など)に依存すると思われる。
【0090】
本開示の目的に関しては、本明細書中に記載されるとおりの化合物の適切な投薬量は、採用した特定化合物(またはその組成物)、配合及び投与経路、疾患の種類及び重篤度、その化合物が予防目的で投与されるのか治療目的で投与されるのか、これまでの治療、対象の臨床歴及びアンタゴニストに対する反応、ならびに担当医師の慎重さに依存すると思われる。典型的には、投薬量が、所望の結果を達成するところに到達するまで、医師は化合物を投与すると思われる。1種または複数の化合物の投与は、例えば、レシピエントの
生理的状態、投与の目的が治療なのか予防なのか、及び当該分野の医師に既知の他の要因に応じて、連続投与でも断続投与でも可能である。化合物の投与は、あらかじめ選択した期間にわたり本質的に連続投与であってもよいし、間隔を開けた一連の投与、例えば、疾患の発症前、最中、または後の投与であってもよい。
【0091】
本明細書中で使用される場合、「治療する」という用語は、疾患、疾患の症候、または疾患に対する素因を手当、治癒、軽減、緩和、変化、修正、寛解、改善、またはそれに影響を及ぼす目的で、疾患、疾患の症候、または疾患に対する素因を有する対象に対して、化合物または化合物を含む組成物を使用または投与することを示す。
【0092】
疾患の軽減は、疾患の発症または進行を遅らせること、または疾患重篤度を低下させることを含む。疾患の軽減は、必ずしも、治癒的結果を必要としない。本明細書中で使用される場合、疾患の発症を「遅らせる」は、疾患の進行を、延期する、邪魔する、ゆっくりにする、遅延させる、安定させる、及び/または順延することを意味する。この遅れは、疾患の履歴及び/または治療される個体に応じて、時間の長さが様々であり得る。疾患の発症を「遅らせる」または軽減する、あるいは疾患の発病を遅らせる方法とは、その方法を用いない場合と比べて、所定の時間の枠内で疾患の1つまたは複数の症候の発生する可能性を低下させる、及び/または所定の時間の枠内で症候の程度を低下させる方法である。そのような比較は、典型的には、統計上有意な結果を得るのに十分な数の対象を用いた臨床検査に基づいて行われる。
【0093】
疾患の「発症」または「進行」は、疾患の最初の顕在化及び/またはその後の進行を意味する。疾患の発症は、検出可能であり、当該分野で周知であるとおりに標準的な臨床技法を用いて査定することができる。しかしながら、発症は、検出不可能な場合がある進行も示す。本開示の目的に関して、発症または進行は、症候の生物学的過程を示す。「発症」は、発生、再発、及び発病を含む。本明細書中で使用される場合、疾患の「発病」または「発生」は、最初の発病及び/または再発を含む。
【0094】
実施形態によっては、本明細書中に記載される化合物は、TNF-アルファまたはIL23Aの一方または両方の活性を、in vivoまたはin vitroで少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)阻害するのに十分な量で、治療を必要としている対象に投与される。化合物の阻害能力を求める方法は、当該分野で既知である。TNF-アルファ及びIL23A阻害アッセイの例を実施例に提示する。
【0095】
医薬分野の当業者に既知である従来方法を使用して、治療しようとする疾患の種類または疾患の部位に応じて、化合物または医薬組成物を対象に投与することができる。この組成物はまた、他の従来経路を介しても投与することができ、例えば、経口で、非経口で、吸入スプレーにより、外用で、直腸で、経鼻で、頬側で、経膣で、または移植リザーバーを介して投与することができる。「非経口」という用語は、本明細書中で使用される場合、皮下、経皮、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内、及び頭蓋内の注射または輸液技法を含む。また、化合物または医薬組成物は、注射デポ経路での投与を介して、例えば1ヶ月、3ヶ月、または6ヶ月デポ注射または生分解性材料及び方法を使用するなどして、対象に投与することができる。
【0096】
医薬組成物
本開示のさらに他の態様は、本明細書中に記載される化合物を含む医薬組成物に関する。本発明の化合物(例えば、TNF-アルファ及びIL23Aの両方に対して特異的な化合物)を含む組成物は、自己免疫疾患または炎症性疾患を有するまたは有する危険性のある対象に投与することができる。本発明はさらに、自己免疫疾患または炎症性疾患の治療
用医薬の製造における、本発明の化合物の使用を提供する。本化合物は、自己免疫疾患または炎症性疾患の予防または治療において、単独または他の組成物と併用してのいずれかで投与することができる。そのような医薬組成物に使用するための本発明の化合物の限定ではなく例として、以下を含むものがある:
(i)第一ポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列を含む;
(ii)第一ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含む;
(iii)第一ポリペプチドは、配列番号17のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列を含む;
(iv)第一ポリペプチドは、配列番号19のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸配列を含む;
(v)第一ポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列を含む;
(vi)第一ポリペプチドは、配列番号23のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸配列を含む;
(vii)第一ポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列を含む;
(viii)第一ポリペプチドは、配列番号27のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号28のアミノ酸配列を含む;
(ix)第一ポリペプチドは、配列番号29のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号30のアミノ酸配列を含む;
(x)第一ポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列を含む;
(xi)第一ポリペプチドは、配列番号33のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列を含む;または
(xii)第一ポリペプチドは、配列番号35のアミノ酸配列を含み、かつ第二ポリペプチドは、配列番号36のアミノ酸配列を含む。
【0097】
本明細書中で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、本明細書中に記載される化合物を、薬学上許容されるキャリアと合わせて含む配合物を示す。医薬組成物はさらに、追加作用剤(例えば、特異的送達用、半減期の向上、または他の治療化合物)を含むことができる。
【0098】
本明細書中で使用される場合、「薬学上許容されるキャリア」という用語は、薬学上許容される材料、組成物、またはビヒクル、例えば、液状もしくは固形の充填材、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、潤滑剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)、または化合物を身体の1つの部位(例えば、送達部位)から別の部位(例えば、器官、組織、または身体の一部分)へと運ぶまたは輸送するのに関与する溶媒封入材料を意味する。薬学上許容されるキャリアは、配合物の他の成分と適合性があり、かつ対象の組織に対して有害ではない(例えば、生理学的に適合性がある、滅菌された、生理的pHなど)という意味において「許容される」。薬学上許容されるキャリアとなり得る材料のいくつかの例として、以下が挙げられる:(1)糖類、例えば、ラクトース、グルコース、及びスクロースなど;(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなど;(3)セルロース及びその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、及び酢酸セルロースなど;(4)粉末トラガカント;(5)モルト;(6)ゼラチン;(7)潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びタルクなど;(8)賦形剤、例えば、カカオバター及び坐剤ワックスなど;(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油など;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコールなど;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール(PEG)など;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなど;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなど;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張生理食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート、及び/またはポリ酸無水物;(22)増量剤、例えば、ポリペプチド及びアミノ酸など(23)血清成分、例えば、血清アルブミン、HDL、及びLDLなど;(22)C2-C12アルコール、例えば、エタノールなど;ならびに(23)医薬配合物で使用される他の無毒適合性物質。湿潤剤、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、保存剤、及び抗酸化剤もまた、配合物に存在可能である。「賦形剤」、「キャリア」、「薬学上許容されるキャリア」などの用語は、本明細書中同義で使用される。
【0099】
実施形態によっては、組成物中の本発明の化合物は、注射により、カテーテルを用いて、坐剤を用いて、または移植片を用いて投与され、移植片は、多孔質、非多孔質、またはゼラチン材料のものであり、そのような移植片としてシラスティック膜などの膜、または線維がある。典型的には、組成物を投与する場合、本発明の化合物を吸収しない材料が使用される。
【0100】
他の実施形態において、本発明の化合物は、制御された放出系に入れられて送達される。1つの実施形態において、ポンプが使用される場合がある(例えば、Langer, 1990, Science 249:1527-1533; Sefton, 1989, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201; Buchwald et al., 1980, Surgery 88:507; Saudek et al., 1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照)。別の実施形態において、重合体材料を使用することができる。(例えば、Medical Applications of Controlled Release (Langer and Wise eds., CRC Press, Boca Raton, Fla., 1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance (Smolen and Ball eds., Wiley, New York, 1984); Ranger and Peppas, 1983, Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照。同じく、Levy et al., 1985, Science 228:190; During et al, 1989, Ann. Neurol. 25:351; Howard et al., 1989, J. Neurosurg. 71:105を参照。)他の制御放出系は、例えば、Langer(既出)に記載される。
【0101】
本発明の化合物は、治療上有効量の結合剤及び1種または複数の薬学的に適合性の成分を含む医薬組成物として投与することができる。
【0102】
典型的な実施形態において、医薬組成物は、対象、例えば、ヒトへの静脈内投与または皮下投与に適合した医薬組成物として、常用手順に従って配合される。典型的には、注射による投与用組成物は、滅菌等張性水性緩衝液の溶液である。必要な場合、医薬は、注射部位の疼痛を和らげるために、可溶化剤及びリグノカインなどの局所麻酔薬も含有することができる。一般に、成分は、別々に、あるいはひとまとめに混合された単位剤形で、例えば、活性剤の量を表示したアンプルもしくはサシェなどの密封された容器に入れられた凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、供給される。医薬が輸液により投与される予定の
場合、これは、滅菌された医薬純度の水または生理食塩水を含有する輸液ボトルで分配することが可能である。医薬が注射により投与される場合、成分を投与前に混合することができるように、注射用滅菌水または生理食塩水の入ったアンプルを用意することができる。
【0103】
全身投与用医薬組成物は、液体、例えば、滅菌生理食塩水、乳酸リンガーまたは乳酸ハンクス液の場合がある。また、医薬組成物は、固体であって、使用直前に再溶解または懸濁させることができる。凍結乾燥形状も企図されている。
【0104】
医薬組成物は、脂質粒子または小胞、例えば、リポソームまたは微結晶内に含有されていることが可能であり、これも非経口投与に適している。粒子は、組成物がその中に含有されている限り、単層または多重層(plurilamellar)など適切な構造のどのようなものでも可能である。化合物は、融合性脂質ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、低レベル(5~10mol%)のカチオン脂質を含有しポリエチレングリコール(PEG)コーティングで安定化された「安定化プラスミド脂質粒子」(SPLP)に封入することができる(Zhang Y. P. et al., Gene Ther. 1999, 6:1438-47)。N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチル-アンモニウムメチルスルファート、または「DOTAP」などの正電荷を帯びた脂質は、そのような粒子及び小胞に特に適している。そのような脂質粒子の製造は周知である。例えば、米国特許第4,880,635号;同第4,906,477号;同第4,911,928号;同第4,917,951号;同第4,920,016号;及び同第4,921,757号を参照。
【0105】
本開示の医薬組成物は、例えば、単位用量として投与またはパッケージ化してもよい。「単位用量」という用語は、本開示の医薬組成物に関して使用される場合、対象への単位投薬量として適切な物理的に分離した単位であって、各単位が、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性物質を、必要な希釈剤;すなわち、キャリアまたはビヒクルと合わせて含有するものを示す。
【0106】
実施形態によっては、本明細書中に記載される化合物は、治療部分、例えば、抗炎症剤と結合している場合がある。そのような治療部分とポリペプチド、例えば、Fcドメインが挙げられる、とを結合させる技法は、周知である;例えば、Amon et al.,
‘‘Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy’’, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), 1985, pp.243-56,
Alan R.Liss, Inc.); Hellstrom et al., ‘‘Antibodies For Drug Delivery’’, in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), 1987, pp.623-53, Marcel Dekker, Inc.); Thorpe, ‘‘Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review’’, in Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), 1985, pp.475-506);‘‘Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy’’, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), 1985, pp.303-16, Academic Press;及びThorpe et al. (1982) ‘‘The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates,’’ Immunol. Rev., 62:119-158を参照。
【0107】
さらに、医薬組成物は、医薬キットとして提供することができ、このキットは、(a)本発明の化合物を凍結乾燥形状で含有する容器、及び(b)注射用の薬学上許容される希釈剤(例えば、滅菌水)を含有する第二容器を含む。薬学上許容される希釈剤は、凍結乾燥された本発明の化合物を再構成するまたは希釈するために使用することができる。医薬製品または生物製品の製造、使用、及び販売を管理する行政機関により規定された様式の注意書きを、そのような容器(複数可)に任意選択で付随させることができ、この注意書きは、ヒトへの投与について、製造、使用、または販売の行政機関による認可を反映する。
【0108】
別の態様には、上記に記載される疾患の治療に有用な材料を含有する製品が含まれる。実施形態によっては、製品は、容器及びラベルを含む。適切な容器として、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなど様々な材料から形成されていてよい。実施形態によっては、容器は、本明細書中に記載される疾患を治療するのに有効な組成物を含有しており、滅菌の接触口を有する場合がある。例えば、容器は、静脈用溶液バッグまたはバイアルであり皮下注射針で穴を開けることができる栓を有する場合がある。組成物中の活性作用剤は、本発明の化合物である。実施形態によっては、容器上または容器に付随するラベルは、組成物が、選ばれた疾患の治療用であることを示す。製品はさらに、薬学上許容される緩衝液、例えばリン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、またはブドウ糖溶液の入った第二容器を含む場合がある。製品はさらに、商業及び使用者の観点から望ましい他の材料を含む場合があり、そのような材料として、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明の書かれたパッケージ同封物が挙げられる。
【0109】
さらに説明しなくとも、当業者なら、上記の説明に基づいて、本開示を最大限に利用することができると思われる。したがって、以下の具体的な実施形態は、例示にすぎず、なんであれ如何なる方法でも本開示のそれ以外の部分に対する限定ではないと見なされるはずである。本明細書中引用される文献は全て、本明細書中引用される目的または対象物について参照として援用される。
【実施例】
【0110】
実施例1.IL23A及びTNF-アルファを標的とする例示化合物の構築。
以下の表2Aに、以下の実施例で使用した、IL23A及びTNF-アルファの両方と結合する例示化合物を提示する。これらの化合物は、当該分野で既知の組換え方法により製造した(例えば、PCT公報の、WO2006/113665、WO2008/157379、及びWO2010/080538を参照、これらは全て、本明細書中参照として援用される)。手短に述べると、各化合物の第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドをコードするプラスミドを、FreeStyle MAX試薬(CHO)を使用して、一緒にCHO-S細胞に形質移入した。細胞を13~14日間培養し、細胞が産生した化合物を、タンパク質Aクロマトグラフィーで精製した。サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、化合物をさらに精製した。
【表2A-1】
【表2A-2】
【表2A-3】
【表2A-4】
【表2A-5】
【表2A-6】
【表2A-7】
【表2A-8】
【0111】
比較の目的で、以下の対照抗体もまた使用した。対照は、TNFaまたはIL23いずれかを標的とするモノクローナル抗体であった。
【表2B】
【0112】
実施例2.例示化合物の表面プラズモン共鳴(SPR)親和性
試験化合物をSPRにより分析して、TNF-アルファ及びIL23Aに対する親和性を求めた。
【0113】
材料及び方法
SPR実験は、ProteOn XPR36装置(Bio Rad)で行った。GLM
チップに、垂直方向及び水平方向両方で、流速30μl/分で0.5%SDS、50mMのNaOH、及び100mMのHClを、60秒ずつ順次注入して、GLMチップを予めコンディショニングした。ついで、コンディショニングしたGLMチップを、6つの水平チャンネル中、1:1の比のEDC(76.7mg/ml)とスルホ-NHS(21.7mg/ml)の混合物を注入することにより活性化した。ヤギ抗ヒトIgG(GAHA)Fcガンマ(Invitrogen)を、10mM、pH5.0の酢酸ナトリウム緩衝液中30μg/mlの濃度で、6つの水平チャンネル中の活性化GLMチップ上の8,000の共鳴単位に、固定した。最後にチップを、6つの水平チャンネル中、1MのエタノールアミンHClで不活化した。準備したGAHAチップを垂直方向に回転させて、5つの垂直チャンネルにわたって試験化合物を捕捉し、残りの1つのチャンネルはカラム参照として使用した。次いで、捕捉させたチップを再度水平方向に回転させて結合させた。連結したヒトIL-23(Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals,Inc)を、以下の実行緩衝液(BioRad):リン酸緩衝食塩水(pH7.4)、0.005%Tween20中、5種の濃度、10.0nM、5.00nM、2.50nM、1.25nM、及び0.625nMで、流速40μl/分で10分間、化合物表面にわたって水平に、注入した。2時間放置して解離させた。10分の会合及び2時間の解離の後、0.85%リン酸(Bio Rad)を、垂直方向及び水平方向両方
で流速100μl/分でショートパルス(18秒)にて注入することにより、GAHA表面を再生成させた。再生成したGAHAは、別の結合サイクルにすぐに使えた。化合物とヒトTNF-アルファまたはカニクイザルTNF-アルファとの結合も同様にして行った。
【0114】
結果
表3の結果は、試験した化合物が両方とも、ピコモル濃度範囲の解離定数(KD)でTNF-アルファ及びIL23と結合できたことを示す。
【表3】
【0115】
実施例3.膜結合型TNF-アルファとの結合のフローサイトメトリー評価
試験化合物を、膜結合型TNF-アルファを発現するように形質移入された細胞株と用量依存性で結合する能力について査定した。
【0116】
材料及び方法
全ての試薬を、フローサイトメトリー染色緩衝液(BioLegend)で調製した。膜発現型TNF-アルファを形質移入された細胞株(ジャーカット及びCHO)及び親細胞株を、組織培養容器から収穫し、洗い、計数し、フローサイトメトリー染色緩衝液に1×10^6細胞/mlで再懸濁させた。96ウェルマイクロタイタープレートに細胞懸濁液100マイクロリットルを加え、氷上に置いた。試験化合物の滴定液を調製し、50uLを細胞に加えた。氷上で60分間インキュベートした後、細胞+試験化合物を洗い、二次抗体(Jackson ImmunoResearch)50uLを加えた。試料を、暗中、4℃で60分間インキュベートし、続いて洗った。最後の洗浄後、細胞を固定液(BD Bioscience)60uLに再懸濁させた。各試料についてフローサイトメーターで蛍光中央値を求め、試験試料の濃度に対してプロットした。ExcelアドインであるXLfit(Activity Baseソフトウェア、ID BusinessSolutions,Ltd.)により可能になった4パラメーターロジスティックを用いて、EC50値を計算した。以下に示すEC50値は、各試験試料について複数の実験にまたがって計算された幾何平均であり、それらを表4に示す。
【0117】
結果
以下の表4に示す結果は、試験した化合物が、用量依存様式で、膜結合型TNF-アルファと結合したことを実証する。
【表4】
【0118】
実施例4.In vitroでのL929細胞障害性アッセイ
化合物を、TNF-アルファが誘導する細胞障害性を阻害する能力について、試験した。
【0119】
方法及び材料
このプロトコルでは、PrestoBlue(商標)0細胞生存度試薬を用いて、組換えヒトTNF-アルファの細胞障害性を求めた。PrestoBlue細胞生存度プロトコルに関するより詳細なプロトコルは、Invitorogenのウェブサイト(Invitrogen.com)からダウンロードすることができる。L929細胞を増殖させて、収穫した。96ウェルプレートの各ウェルに1.5×104個の細胞を移し、37℃で一晩インキュベートした。化合物の系列希釈液を、10μg/mlのアクチノマイシンD及び1000pg/mlのrhTNF-アルファを含有する完全アッセイ培地で5nMから開始して調製した。陽性対照は、20ng/mlのrhTNF-アルファ及び1μg/mlのアクチノマイシンDを含有していた。陰性対照は、TNF-アルファを含有していなかった。対応するウェルに系列希釈液10μLを加え、5%CO2中、37℃で一晩インキュベートした。ウェルにPrestoBlue(商標)試薬を加え、プレートを、5%CO2中、37℃で2時間インキュベートした。Victor(商標)×2プレートリーダー(励起:560nm、発光:590nm)を使用して各ウェルの相対蛍光単位を測定した。蛍光単位(Y軸)対試験化合物濃度(X軸)をプロットし、Graphpadソフトウェアを用いて試験化合物のIC50値及びIC90値を計算した。
【0120】
結果
表5の結果は、試験した化合物が、用量依存様式で、TNF-アルファが誘導する細胞障害性を阻害できたことを示す。
【表5】
【0121】
実施例5.HeLa細胞でのTNF-アルファ依存性IL-8放出の阻害。
抗TNF試験試料を、ヒト細胞株、HeLaからのIL8のTNF依存性放出を阻害する能力について査定した。試料を、高濃度及び低濃度の組換えヒトTNF-アルファ及び単独(高)濃度の組換えカニクイザルTNF-アルファに対して試験した。
【0122】
材料及び方法
手短に述べると、HeLa細胞(ATCC)を収穫し、洗い、計数し、(v/v)10%ウシ胎児血清に1%ペニシリン&ストレプトマイシン(CM)を加えた標準完全培地中4×10^5細胞/mlで再懸濁させた。96ウェルマイクロタイタープレートにHeLa細胞懸濁液100マイクロリットルを加えた。組換えヒトTNF-アルファ(R&D Systems)を2種類の濃度(147nMまたは4.4nM)で、ならびに生成させた組換えカニクイザルTNF-アルファ(Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals,Inc.)(147nM)を、CM単独でまたは試験試料の滴定液とともに、37℃で30分間プレインキュベートした。試験試料+TNF-アルファのプレインキュベーション後、細胞に混合物(複数可)100ulを加え、試験プレートを5%CO2加湿空気中37℃で20時間インキュベートした。対照試料には、CM(無刺激の対照)またはCMに希釈した組換えTNF-アルファ(刺激した対照)を加えた。インキュベーション後、上清を、ELISAキット(MesoScale Discovery)で、取扱説明書に従ってIL8についてアッセイした。各試料について内挿IL8pg/ml値を求め、対照に対するパーセント(POC)に変換した。POCを試験試料の濃度に対してプロットし、ExcelアドインであるXLfit(Activity Baseソフトウェア、ID Business Solutions,Ltd.)により可能になった4パラメーターロジスティックモデルを用いて、IC50値及びIC90値を計算した。試験化合物を、上記のとおりIC50/IC90に関して分析し、各試験試料について複数の実験にまたがって幾何平均を計算した。これを表6に示す。
【0123】
結果
表6の結果は、試験した化合物のIC
50幾何平均値及びIC
90幾何平均値が、対照抗体1及び対照抗体2ののIC
50幾何平均値及びIC
90幾何平均値と同様であったことを示す。データは、試験化合物が、ヒト(2種の濃度で試験)またはカニクイザル(cyno)組換えTNF-アルファいずれかを用いてTNF-アルファにより誘導したIL-8分泌を用量依存式に阻害したことを実証する。
【表6】
【0124】
実施例6.全血におけるTNF-アルファ依存性IL8の阻害
TNFは、ヒト細胞からのIL8放出の強力なインデューサーである。化合物を、全血試料におけるTNF-アルファ誘導型IL-8放出を阻害する能力について試験した。
【0125】
方法及び材料
手短に述べると、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルにヘパリン化ヒト全血120uLを加えた。標準T細胞培地(TCM)でアッセイ試薬を調製した。試験試料の滴定液を10倍濃度で調製し、10倍濃度のヒト組換えTNF(100ng/ml、R&D Systems)とともに37℃で1時間プレインキュベートした。このプレインキュベーション後、全血に、サイトカイン/試験化合物混合物30ulを、適切な対照を含むTCM30uLとともに加え、5%CO2加湿空気中、37℃で48時間インキュベートした。対照試料には、TCM(無刺激の対照)またはTCMに希釈した組換えヒトT
NF-アルファ(刺激した対照)を加えた。インキュベーション後、上清を、ELISAキット(MesoScale Discovery)で、取扱説明書に従ってIL8についてアッセイした。各試料について内挿IL8pg/ml値を求め、対照に対するパーセント(POC)に変換した。POCを試験試料の濃度に対してプロットし、ExcelアドインであるXLfit(Activity Baseソフトウェア、ID Business Solutions,Ltd.)により可能になった4パラメーターロジスティックモデルを用いて、IC50値及びIC90値を計算した。
【0126】
試験化合物を、上記のとおりIC50/IC90に関して分析し、各試験試料について複数の実験にまたがって幾何平均を計算した。これを表7に示す。
【0127】
結果
表7の結果は、試験した化合物のIC
50幾何平均値及びIC
90幾何平均値が、対照抗体1及び対照抗体2のIC
50幾何平均値及びIC
90幾何平均値と同様であったことを示す。データは、試験化合物が、ヒト全血においてTNF-アルファにより誘導されるIL-8分泌を用量依存式に阻害したことを実証する。
【表7】
【0128】
実施例7.NF-カッパB及びSTAT3リン酸化アッセイ
IL23がそのヘテロ二量体受容体複合体(IL12Rβ1-IL23R)と結合すると、下流で、シグナル伝達性転写因子3(STAT3)のリン酸化がもたらされる。TNFがその受容体(TNFR1/TNFR2)と結合すると、下流で、B細胞中のカッパ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの核内因子(NF-κB)のリン酸化がもたらされる。化合物を、ジャーカット細胞でのNF-κBのTNF依存性リン酸化、及びDB細胞でのSTAT3のIL23依存性リン酸化を阻害する能力について査定した。
【0129】
方法及び材料:
手短に述べると、増殖の対数期にあるジャーカット細胞(ATCC)及びDB細胞(ATCC)の培養物を収穫し、洗い、計数し、標準完全培地(CM;RPMI1640に(v/v)10%FCS及び1×ペニシリン-ストレプトマイシン(Invitrogen)を加えたもの)に2×10^7細胞/mLで再懸濁させた。試験試料の滴定液を4倍濃度で調製し、4倍のヒト組換えIL23(Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals,Inc.)と組換えヒトTNF(R&D Systems)の混合物とともに、37℃で1時間プレインキュベートした。試験試薬+サイトカイン混合物のプレインキュベーション後、細胞100μLの入ったウェルに2つ組で混合物100μLを加えた。対照は以下のとおり設定した:100μLの希釈したTNF/IL23+100μLの組み合わせた細胞(刺激した対照)、または100μLのCM+100μLの組み合わせた細胞(無刺激の対照)。アッセイプレートを、5%CO2加湿空気中、37℃で、正確に10分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞溶解液を調製し、p-NF-κΒ及びp-STAT3を取扱説明書(MesoScale Discovery)に従って査定し、各試料についてp-NF-κB及びp-STAT-3の生の値を得て、対照に対するパーセント(POC)に変換した。POCを、試験作用剤の濃度(X軸)に対してプロットした(Y軸)。ExcelアドインであるXLfit(Activity Baseソフトウェア、ID Business Solutions,Ltd.)により可能になった4パラメーターロジスティックモデルを用いて、IC50値及びIC90値を計算した。
【0130】
試験化合物を、上記のとおりIC50/IC90に関して分析し、各試験試料について複数の実験にまたがって幾何平均を計算した。これを表10に示す。注:このアッセイは、二重分子が両方の下流のシグナル伝達事象を中和できることの確実性を与えるものである。アッセイを行う時点は、p-NF-κBシグナルについてのみ最適であり、したがって、計算されたIC50/IC90は、定量的様式で全体の効力を反映するものではない。
【0131】
結果
表8の結果は、試験化合物が、TNF-アルファ誘導型NF-kBリン酸化ならびにDB細胞でのSTAT3のIL23誘導型リン酸化の両方を阻害できたことを示す。
【表8】
【0132】
実施例8.DB細胞でのIL23誘導型STAT3リン酸化の阻害
IL23がそのヘテロ二量体受容体複合体(IL12Rβ1-IL23R)と結合すると、下流で、シグナル伝達性転写因子3(STAT3)のリン酸化がもたらされる。抗IL23試験試料を、ヒトDB細胞株でのIL23依存性リン酸化を阻害する能力について査定した。
【0133】
材料及び方法:
手短に述べると、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに、増殖の対数期にあるヒトDB細胞株(ATCC)100μLを、1×10^7細胞/mlの濃度で加えた。アッセイ試薬を、完全培地(CM;RPMI1640に(v/v)10%ウシ胎仔血清
及び1×ペニシリン-ストレプトマイシン(Invitrogen)を加えたもの)で調製した。試験試料の滴定液を4倍濃度で調製し、4倍のヒト組換えIL23(Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals,Inc.)とともに、37℃で1時間プレインキュベートした。このプレインキュベーション後、DB細胞100μLにサイトカイン/試験試料混合物100μLを加え、5%CO2加湿空気中、37℃で、30分間インキュベートした。対照試料には、CM(無刺激の対照)またはCMに希釈した組換えヒトIL23(刺激した対照)を加えた。インキュベーション後、細胞溶解液を調製し、pSTAT3を取扱説明書(MesoScale Discovery)に従って査定した。各試料について生のpSTAT3の値を求めて、対照に対するパーセント(POC)に変換した。POCを、試験試料の濃度に対してプロットし、ExcelアドインであるXLfit(Activity Baseソフトウェア、ID Business Solutions,Ltd.)により可能になった4パラメーターロジスティックモデルを用いて、IC50値及びIC90値を計算した。試験化合物を、上記のとおりIC50/IC90に関して分析し、各試験試料について複数の実験にまたがって幾何平均を計算した。これを表9に示す。
【0134】
結果
表9の結果は、試験した化合物のIC
50幾何平均値及びIC
90幾何平均値が、抗IL23Ap19対照抗体のIC
50幾何平均値及びIC
90幾何平均値と同様であったことを示す。データは、試験化合物が、DB細胞でのSTAT3のIL23誘導型リン酸化を、用量依存式に阻害したことを実証する。
【表9】
【0135】
実施例9.ヒトIL-23依存性マウス脾細胞アッセイ(MSA)
マウス脾細胞を利用したアッセイを用いて、抗ヒトIL23試験試料を、マウス脾細胞培養物でヒト組換えIL23及び組換えカニクイザルIL23によるマウスIL17の誘導を阻害する能力について査定した。
【0136】
材料及び方法:
手短に述べると、マウス脾臓(13週齢未満のメスC57BL/6;JAX)由来の単核球を単離し、洗い、計数し、標準T細胞培地(TCM)に4×10^6細胞/mlで再懸濁させた。96ウェルマイクロタイタープレートに、mIL2/脾細胞懸濁液100マイクロリットルを加えた。組換えヒトIL23(Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals,Inc.)または組換えカニクイザルIL23(Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals,Inc.)を、TCMに希釈して、TCMのみとともにまたは試験試料の滴定液とともに、37℃で2時間プレインキュベートした。試験試料+IL23のプレインキュベーション後、細胞に混合物100ulを加え、試験プレートを5%CO2加湿空気中、37℃で、48時間インキュベートした。対照試料には、TCM(無刺激の対照)またはTCMに希釈した組換えヒトIL23(刺激した対照)を加えた。インキュベーション後、Quantikine(登録商標)マウスIL-17免疫アッセイを使用して取扱説明書(R&D Systems)に従って、上清でマウスIL17レベルを査定した。各試料について内挿mIL17pg/ml値を求め、対照に対するパーセント(POC)に変換した。POCを試験試料の濃度に対してプロットし、ExcelアドインであるXLfit(Activity Baseソフトウェア、ID Business Solutions,Ltd.)により可能になった4パラメーターロジスティックモデルを用いて、IC50値及びIC90値を計算した。抗IL23試験試料を、上記のとおりIC50/IC90に関して分析し、各試験試料について複数の実験にまたがって幾何平均を計算した。これを表10に示す。
【0137】
結果
表10の結果は、試験した化合物が、ヒトIL23誘導型及びカニクイザルIL23誘導型両方のマウス脾細胞でのIL17放出を阻害できたことを示す。
【表10】
【0138】
実施例10.STAT3のIL23誘導型リン酸化の阻害
IL23がそのヘテロ二量体受容体複合体(IL12Rβ1-IL23R)と結合すると、下流で、シグナル伝達性転写因子3(STAT3)のリン酸化がもたらされる。化合物を、DB安定形質移入細胞でのIL23誘導型STAT3活性化を阻害する能力について査定した。
【0139】
材料及び方法
細胞を、最終濃度15ng/mlのIL23タンパク質で刺激した。この用量は、先行実験に従ってEC60であるが、試験化合物での阻害を可能にするものと推定された。細胞を播種し、化合物を投与し、IL-23を加え(この順序で行った)、一晩インキュベートした。化合物が細胞刺激を阻害した場合には、STAT3は下方制御されて、ルシフェラーゼ活性の低下を導く。
【0140】
結果
表11の結果は、試験した化合物がSTAT3のIL23誘導型リン酸化を阻害することができたことを示す。
【表11】
【0141】
実施例11.さらなるIL23-A Stat3アッセイ
実施例8と同様にしてさらなる実験を行い、STAT3のIL23誘導型活性化の阻害について試験した。
【0142】
方法及び材料
DB-STAT3Luc10 Clone 10懸濁細胞を、RPMI1640+10%FBSで増殖させた。96ウェルプレートに1ウェルあたり20,000個の細胞を80ul/ウェルの細胞懸濁液で加えた。試験化合物を系列希釈したうちの1種を10ulで各ウェルに加えた。各ウェルに15ng/mLの組換えヒトIL-23を加え、比較のため、いくつかのウェルには試験化合物のみを入れてIL-23を入れなかった。プレートを37℃/5%CO2で一晩インキュベートした。Steady-Glo(Promega及びOne-Glo(Promegaを用いてルシフェラーゼ活性をアッセイし、結果をEnvisionリーダーで読んだ。
【0143】
結果
試験した化合物のIC
50及びIC
90を、表12に及び表13に示す。これらの表は、化合物が、用量依存様式で、IL-23依存性STAT3活性化を阻害したことを示す。
【表12】
【表13】
【0144】
実施例12.ヒト組換えIL23により誘導されるマウスIL17A及びIL22放出の阻害
試験化合物を、C57/B16マウス中でヒトIL23誘導型サイトカイン放出を阻害する能力について査定した。IL17A及びIL22の分泌を、IL23の皮内注射後に測定した。
【0145】
材料及び方法
手短に述べると、メスのC57BL/6マウス(7~10週齢、Charles River)を、無作為に8匹/群の8群に分け、マウスに、クエン酸緩衝液(20mMのクエン酸Na、115mMのNaCl、pH6.0)または試験化合物いずれかを、それぞれ、1.3、0.4、及び0.13mg/kg対1、3、及び0.1mg/kgの等モル濃度用量で、100μL腹腔内注射した。
【0146】
試験化合物投与の1時間後、マウスをイソフルラン(Butler Schein)で麻酔し、両耳に、0.1%BSA(Sigma)対照、または生理食塩水(Invitorogen)に希釈した15μg/ml(0.3μg)のrhIL23(その場で生成)いずれかを20μl皮内注射した。皮内曝露を2日間連続して毎日繰り返した。2回目の曝露から24時間後、マウスを頚椎脱臼により屠殺して、各耳を取り出した。MP Biomedicals Fast-Prep 24ホモジナイザーを使用して、耳の組織をホモジナイゼーション緩衝液(HBSS(Gibco);0.4%のTritonX-100(Sigma);1×SigmaFastプロテアーゼ阻害剤(Sigma))1mLにホモジナイズした。ホモジナイズした試料を、4℃で10分間遠心して上清を収集する。Quantikine(登録商標)マウスIL-17及びマウスIL-22免疫アッセイを使用し取扱説明書(R&D Systems)に従って、上清を、マウスIL17A及びIL22の存在についてアッセイした。各試料について、内挿サイトカインpg/ml値を求めた。各処置群について平均pg/mlレベルを求め、一元配置分散分析、続いてダネット多重比較検定を用いて計算することにより、対照に対する有意差を比較した。結果を
図4に示す。
【0147】
結果
図4の結果は、単回腹腔内用量の試験化合物を用いた処置が、組換えヒトIL23を2日間連続で毎日皮内注射することにより誘導した皮膚でのマウスIL17及びIL22放出を有意に阻害できたことを示す。
【0148】
実施例13.C57/B16マウスにおける外因性ヒトTNF-アルファ依存性サイトカイン放出の阻害
試験化合物を、外来のヒトTNFと接触させた後の、C57/B16マウス中でのヒトTNF誘導型サイトカイン放出を阻害する能力について査定した。ヒトTNFの腹腔内投与に続いて血清KC及びIL-6分泌を測定する。
【0149】
材料及び方法
手短に述べると、メスのC57BL/6マウス(8~9週齢、Jackson Labs)を、無作為に8匹/群の8群に分け、マウスに、リン酸緩衝食塩水(Sigma)または試験化合物いずれかを、それぞれ、13.3、4、及び1.3mg/kg対10、3、及び1mg/kgの等モル濃度用量で、200μL腹腔内注射した。
【0150】
試験化合物投与の2時間後、マウスをイソフルラン(Butler Schein)で麻酔し、0.1%BSA対照または生理食塩水(Sigma)に希釈した15μg/ml(0.3μg)rhTNF(R&D Systems)いずれかを200μl皮内注射した。TNF曝露から2時間後、マウスをイソフルランで麻酔し、全血を収集した。次いで、マウスを頚椎脱臼により屠殺した。全血を12,000rpmで10分間遠心し、血漿を収集した。マウスKC及びIL-6の存在について、Multiplex(登録商標)マウスKC及びマウスIL-6免疫アッセイを使用し取扱説明書(MSD)に従って血漿をアッセイした。各試料について、内挿サイトカインpg/ml値を求めた。各処置群について平均pg/mlレベルを求め、一元配置分散分析、続いてダネット多重比較検定を用いて計算することにより、対照に対する有意差を比較した。結果を
図Xに示す。
【0151】
結果
図5の結果は、単回腹腔内用量の試験化合物を用いた処置が、組換えヒトTNFの腹腔内注射によるマウスKC及びIL-6の血漿での放出を有意に阻害できたことを示す。
【0152】
実施例14.カニクイザルにおける化合物の薬物動態
材料及び方法
2組の化合物(化合物M及び化合物A;ならびに化合物O及び化合物E)についての単回静脈内(IV)用量PK試験を、生物学的に未処置のオスのカニクイザル(1群あたりN=3)で行った。試験は、動物実験委員会の指針に従って行った。IV用量を、10分のIV輸液として1mg/kgで投与した。血清試料を、投薬前、投薬日の1、4、8時間後、ならびに化合物M及び化合物Aについては投薬から1、2、3、4、5、7、10、14、21、28、35、及び42(1008hr)日後;ならびに化合物O及び化合物Eについては14日目までのみで、収集した。投与した分子の血清濃度を、リガンド結合アッセイ(ELISA)により測定した。
【0153】
較正標準曲線及び品質管理(QC)試料を、各分析物について100%血清で調製した。各標準曲線は、7つの非ゼロ点からなり、これらは10240ng/mLから始まって、3倍で系列希釈された。ブランク試料(分析物を含まないマトリクス)も含まれていた。低範囲、中範囲、及び高範囲で4つのQC試料を、2560ng/mLから開始して、4倍で系列希釈することで調製した。標準曲線及びQC試料は、試料を分析するまで凍結貯蔵しておき、分析の時点でそれらを20倍に希釈して検査試料を模倣した。標準曲線及びQC試料は、分析を行うごとに2つ組で含まれていた。定量の下限及び上限は、公称濃度の25パーセント(%)を超えない逆算濃度を再現可能に有するように、標準曲線の最低点及び最高点として定められた。標準曲線点及びQC試料の許容基準は、公称濃度の25パーセント(%)であった。
【0154】
NuncELISAプレートを、捕捉試薬としてサル吸着ヤギ抗ヒトIgG(Southern Biotech)1μLでコーティングし、2~8℃で一晩インキュベートした。洗浄緩衝液(0.05%(v/v)Tween20含有リン酸緩衝食塩水(PBS))及びブロッキング緩衝液(5%ウシ血清アルブミン(BSA)含有PBS)でプレートの洗浄及びブロッキングをした後、プレートのウェルに、5%サル血清(Innovative Researchから入手したサル血清)で1:20、1:400、及び1:8000に希釈した、標準試料、QC試料、及び未知試料を加え、室温で1時間インキュベートした。プレートのウェルを洗浄緩衝液で洗い、ウェルに、サル吸着ビオチン化ヤギ抗ヒトIgG(Southern Biotech)を二次試薬として加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを3回洗い、プレートに1μg/mLのペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン100μLを加えて、室温で15分間置いておき、続いてさらに3回洗い、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB、BioFX)気質100μLを加えて室温で3~4分置いた。停止溶液(BioFX)100μLを加えて反応を停止させ、Molecular DevicesプレートリーダーとSoftmaxProソフトウェア、バージョン5.4.1を併用して吸光度を測定した。
【0155】
結果
2組の試験化合物(化合物M及び化合物A;ならびに化合物O及び化合物E)についての単回IV用量PK試験を、生物学的に未処置のオスのカニクイザル(1群あたりN=3)で行った。試験化合物を、10分のIV輸液として1mg/kgで投与した。血清試料を、投薬前、投薬日の1、4、8時間後、ならびに化合物M及び化合物Aについては投薬から1、2、3、4、5、7、10、14、21、28、35、及び42(1008hr)日後;ならびに化合物O及び化合物Eについては14日目までのみで、収集した。投与した分子の血清濃度を、リガンド結合アッセイ(ELISA)により測定した。
【0156】
分子それぞれについての血清濃度(平均及びSD)を表14にまとめる。
【表14】
【0157】
これらの試験化合物の薬物動態(PK)パラメーターを、Phoenix WinNonlin6.1ソフトウェア(Certara、MD、USA)を使用して、IV輸液用量に対する非コンパートメントアプローチを利用して計算した。動物の特定個体において投薬後いずれかの時点で濃度の急激な低下を示した血清試料及びそれに続く全ての試料をPKパラメーター概算から排除した。さらなる分析から、最初の数日後のこの突然の濃度低下は、サル中でヒト化生物学的分子に対する抗化合物抗体が発生したことによるもので
あることがわかった。PK分析には、動物各個体から得られた最初の7日間のデータのみが含まれた。2組の試験化合物について濃度時間プロットを
図2及び
図3に示す。2組の試験化合物について重要なPKパラメーター(平均±SD)を表15にまとめる。
【表15】
【0158】
YTE変異を持つ試験化合物である化合物Aは、YTE変異を含まない対応する試験化合物(化合物M)と比べて、クリアランス(CL)に3.3倍の低下、及び終末半減期(T1/2)に3.9倍の上昇を示した。YTE変異を持つ試験化合物である化合物Eは、YTE変異を含まない対応する試験化合物(化合物O)と比べて、CLに2.4倍の低下を示した。
【0159】
実施例15.例示化合物のヒトPK及びヒト用量の予測
ヒトPKの予測:
化合物EのヒトPKの予測を、カニクイザルで得られたPKパラメーターから、サルと比較して同じ分布容積を維持しながら、ヒトでのクリアランスに2倍低下の係数を使用して、アロメトリックスケーリング法により行った。こうして、ヒトで予測されるクリアランスは、12.1mL/日/kgであり、終末半減期は7.4日である。
【0160】
ヒト用量の予測:
ヒト用量の予測を、様々な患者集団でのゴリムマブの臨床試験から得られる広範囲曝露-有効性データに基づいて行った。ゴリムマブ(Simponi(登録商標))は、月あたり50mgの皮下(SC)用量でリウマチ様関節炎(RA)、強直性脊椎炎(AS)、及び乾癬性関節炎(PsA)患者を治療するのに、ならびに月あたり100mgのSC用量で潰瘍性大腸炎(UC)患者を治療するのに認可されている。Simponi(登録商標)は、RA患者では約3.2nM(月あたり50mgのSC用量)及びUC患者では9.7nM((月あたり100mgのSC用量)のトラフ濃度を達成している(Simponi(登録商標)BLA、2009;Sandborn、2013)。これらを、それぞれ、AS及びCDの治療トラフ濃度のベンチマークとして使用する。Stelaraの臨床上認可された用量でのトラフ濃度レベルは、約6nMである。ウステキヌマブ(Stelara(登録商標))と比較して化合物Eの効力は3倍高いという観測に基づけば、化合物Eについては、IL23に対処するために約2nMというトラフ濃度値が必要である。TNFに対処するためのトラフ濃度は、IL23に対処するためのものより大きいので、Simponi(登録商標)の9.7nMというトラフ濃度を、用量予測に使用した。
【0161】
カニクイザルでのPKデータのコンパートメントモデリング(2コンパートメントモデ
ル)、続いて、CLの2倍低下スケーリング、73%生体利用度を用い、同時に公称30%CV及び公称分布の対数を用いてクリアランス及び分布速度定数を変更するモンテカルロシミュレーションは、2週ごとに54mg(90%信頼区間は31~90mg)のSC用量で投与するとトラフ濃度が9.7nMに維持されると思われることを示す。
【0162】
実施例16.化合物の精製
方法
親和性精製工程として、Mab Select SuReを使用して化合物を精製した。凝集を防ぐ目的で、高塩洗浄は回避した。酢酸ナトリウム緩衝液pH3.5を用いて溶出を行った。Mab Select SuRE精製に続いて、試料を中和し、ヒドロキシアパタイトI型樹脂に添加して、様々な濃度のリン酸緩衝液を用いて溶出させた。単量体のピークは、約140mMのリン酸Na、100mMのNaCl、pH7.0で溶出し、凝集体ピークは、200mMのリン酸Na、100mMのNaCl、pH7.0で溶出した。ヒドロキシアパタイト後、試料は、一貫して>95%単量体であった。
【0163】
分析用超遠心分離(AUC)による沈降速度(SV)実験を用いて、試料純度及び凝集状態についての情報を得た。試料を、optima XL-I(Beckman Coulter、Fullerton、CA)にて、An60Ti4つ穴ローターを用い40,000rpmで走らせて、20℃で遠心した。沈降過程を、280nmでの紫外吸光度で、参照緩衝液として対応する希釈緩衝液を用いて、観測した。超遠心セル中の濃度分布の経時的変化を、XL-Iオペレーティングソフトウェアを用いて収集し、SEDFITソフトウェア(バージョン14.1)の連続c(S)分布モデルを用いて分析することにより、沈降係数の分布を求めた。単量体パーセンテージを、統合したピーク面積に基づき計算した。
【0164】
結果
化合物の精製の結果を表16に示す。データは、化合物が高い純度及び均質性を有することを示し、このことは、良好な安定性を示す。
【表16】
【0165】
実施例17:化合物の質量分析特性
方法
未変性試料
この手順により、化合物またはタンパク質の未変化の質量を得た。試料2ulをAgilent PoroShell 300SB-C8カラム、5um、(75×1.0mm)に注入した。カラム温度は80℃であり、流速は50ul/分であった。化合物またはタンパク質は、0分の時点で20%Bから10分で85%Bになる勾配でカラムから溶出させた。移動相Aは、水/アセトニトリル/ギ酸(99/1/0.1)であり、移動相Bは、アセトニトリル/水/ギ酸(95/5/0.1)であった。溶出液を、Agilent 6210 TOF質量分析器へと導いて、質量600~質量3200で走査した。生データを、MassHunterプログラムで解析した。
【0166】
還元試料
この手順により、タンパク質または軽鎖の質量、及び重鎖の質量を得た。試料10ul及び8Mのグアニジン10ulに50mMのTCEPを2ul加え、37℃で15分間イ
ンキュベートした。この試料2ulを、上記のとおり注入したが、ただし以下の点が異なっていた:カラム温度は60℃であり、質量範囲は600~2000であった。
【0167】
脱グリコシル化試料
この手順により、タンパク質または軽鎖及び重鎖のグリコシル化質量を得た。試料10ul、200mMのNH4HCO3を10ul、50mMのTCEPを2ul、及びPNGase F(またはO結合型グリコシル化が存在する場合にはQA脱グリコシル化混合物1uL)1ul(1:10)を、37℃で3時間インキュベートした。試料を重度にグリコシル化させる場合には、インキュベーションを一晩に延ばした。次いで、8Mグアニジン25ul及び50mMのTCEPを4ul加えて、37℃で15分間インキュベートした。この試料を、上記の還元試料のとおり注入した。
【0168】
質量分析によるタンパク質ペプチドマッピング
8Mの尿素入り400mMの重炭酸アンモニウム25ulに、試料25ulを加えた。次いで、50mMのTCEPを5ul加え、試料を60℃で15分間インキュベートした。試料を室温に冷却した後、150mMのヨードアセトアミド5ulを加え、試料を室温で15分間インキュベートした。水40ulを加えた後、トリプシン入り1mMのHClを5ul加え、最終の酵素:基質比を1:50とした。試料を37℃で一晩インキュベートした。次いで、5ulをThermo Hypurity C18カラム、100×1.0mmに注入した。流速は80ul/分であった。タンパク質は、0分の時点で0%Bから33分で40%Bになる勾配でカラムから溶出させた。移動相Aは、水/アセトニトリル/ギ酸(99/1/0.1)であり、移動相Bは、アセトニトリル/水/ギ酸(95/5/0.1)であった。溶出液を、Thermo Orbitrap Velos質量分析器へと導いた。最初の走査事象は、FTで行われ、分解能30,000で、質量300~質量2000を走査した。2回目から7回目までの走査事象は、IT(イオントラップ)で行われ、最初の走査事象で最も強度の強かった6つのイオンを分解した。グリコシル化したペプチドを、手作業の抽出により特性決定し、ピークの高さに基づいてパーセンテージを計算した。
【0169】
結果
結果を表17に示す。データは、意図したアミノ酸配列及び構造が発現されており、予期せぬ不均一化を伴わずに回収されたことを示す。グリコシル化パターンは、CHO細胞で発現する従来の抗体に典型的なものであり、どのような非定型構造も示さない。
【表17】
【0170】
実施例18:化合物の温度安定性
方法
化合物をリン酸緩衝液に溶解させた2mg/ml溶液の、熱的アンフォールディング及び凝集を、自動キャピラリーDSC(MicroCal、LLC、Boston)を用いて、走査速度60℃/hrで、20℃から110℃まで観測した。対応する緩衝液で2回走査を行い、装置の熱履歴を確立するとともに、各試料について装置のベースラインを得て、これらの走査の平均をその後のタンパク質サーモグラムから差し引くことにより、見かけ上熱容量を得た。次いで規格化した走査をOrigin7.0で分析した。転移前ベースラインを、得られる各容量サーモグラムから差し引いて、温度の関数として結果的に超過熱容量(Cp、ex)を得た。転移温度(Tm)として報告される値は、実験のサーモグラムの目視検査により決定されたピーク最大値の位置を表す。
【0171】
結果
結果を表18に示す。データは、化合物が、安定であり、長期保存が可能であると予測されることを示す。
【表18】
【0172】
実施例19:化合物の溶解性
方法
カットオフ分子量が50,000ダルトンのアミコンウルトラ遠心フィルター(Millipore、Billerica)を用いて、化合物試料を徐々に濃縮して、沈殿が観測されない限界の最高濃度にした。次いで、濃縮したタンパク質溶液をAUCによりSV実験で分析し、試料純度及び凝集状態についての情報を得た(精製の方法の詳細については実施例16を参照)。
【0173】
結果
結果を表19に示す。データは、化合物が可溶性かつ安定であり、賦形剤の配合または添加がなくても単量体の割合を高く維持することを示す。
【表19】
【0174】
実施例20:化合物の価数
方法
化合物試料を50mMのKCl及び10mMの酢酸ナトリウム緩衝液pH5.0に溶解させて、価数測定を、紫外線(UV)吸光度検出器を装備したBeckman Coulter(Fullerton、California)ProteomeLab PA800(商標)装置にて、実行波長214nmを用いて行った。システムは、20℃に維持し、内径50μmのeCapアミンキャピラリー(Beckman Coulter、部品番号477431)を使用した。キャピラリーを100mMのNaOH、アミン再生溶液(Beckman Coulter、部品番号477433)、及び実行緩衝液ですすいでから、各試料を注入した。試料の移動時間を、10kV、14kV、及び18kVの電位で測定した。ジメチルホルムアミド(DMF)(0.005%)(Pierce)を、電気浸透流(EOF)マーカーとして使用した。32Karat(商標)ソフトウェア(v7.0)を使用して、データを獲得した。AUCを用いたSV実験から、拡散係数を求めた。
【0175】
結果
価数データ(表20参照)は、溶液中の化合物のコロイド安定性、すなわち溶液中のタンパク質とタンパク質のネット相互作用を示す。価数が15を超える化合物は、強力なネット反発相互作用を有し、高濃度で配合できる可能性が高い。
【表20】
【0176】
実施例21:In Silicoで予測される免疫原性
方法
タンパク質治療薬の免疫原性は、コンピューター計算ツールであるEpiMatrixを利用して、in silicoで予測した。EpiMatrixは、EpiVax,Inc.(Providence、RI)が開発したものである。EpiMatrixは、ヘルパーTエピトープならびにTレギトープ(T-regitope)の予測を統合するものであり、ヘルパーTエピトープが免疫応答を誘発しようとするものであるのに対してTレギトープは阻害性である。手短に述べると、最初にタンパク質配列を解析して重複する9量体ペプチドフレームへと分解した。このフレームは、クラスII HLAの結合の
核であることが証明されている。8つの共通クラスII HLAアレルのそれぞれに対す
る9量体ペプチドの結合潜在能力を、実験データまたはコンピューター計算予測に基づいて評価する。スコアを作成して、各HLAアレルに対する9量体ペプチドの結合潜在能力を反映させ、規格化して、複数のHLAアレルにまたがってどの9量体でも比較できるようにし、網羅的規模で免疫原性予測を可能にする。最後にプログラムは、総合「免疫原性スコア」である、tReg調節Epxスコアを作成し、このスコアを他の免疫原性判定と合わせて用いて、化合物がin vivoで免疫応答を誘発する可能性を情報に基づき判断する助けとする。
【0177】
結果
結果を表21に示す。これらの化合物の総合免疫原性スコアは低く、これらの化合物がin vivoで強力な免疫応答を引き起こす(illicit)可能性は低いと予測される。
【表21】
【0178】
実施例22:化合物の全血安定性
方法
全血干渉アッセイを、Octet RED96で展開して、全血(WB)の存在下での化合物に対する非特異的結合または標的外結合の効果を検出した。全血及び1倍動力学測定緩衝液(1×kb)に化合物を溶解させた溶液を、37℃の温度で48時間インキュベートした。インキュベートした化合物試料の動力学測定を、ストレプトアビジン(SA)生体センサーチップ(ForteBio、Menlo Park、CA)を装備したOctet RED96を用いて、27℃で行った。緩衝液及び全血でのオンレート/結合シグナルの比を記録した。比が<2であると、干渉を示さなかったとみなした。
【0179】
【0180】
実施例23:試験したパラメーターのまとめ
ある特定化合物についてのパラメーターデータのまとめを、以下の表23に示す。
【表23】
【0181】
【表24-1】
【表24-2】
【表24-3】
【表24-4】
【表24-5】
【表24-6】
【表24-7】
【表24-8】
【表24-9】
【表24-10】
【表24-11】
【表24-12】
【表24-13】
【表24-14】
【表24-15】
【表24-16】
【表24-17】
【表24-18】
【表24-19】
【表24-20】
【表24-21】
【表24-22】
【表24-23】
【表24-24】
【0182】
他の実施形態
本明細書中に開示される特長は全て、どのような組み合わせで組み合わせてもよい。本明細書中に開示される特長は、それぞれ、同一の、同等な、または同様な目的を果たす代替特長で置き換えてもよい。すなわち、特に明白に記載がない限り、開示される特長はそれぞれ、全般的な一連の等価なまたは同様な特長のうちの例にすぎない。
【0183】
上記の説明から、当業者なら本開示の本質的な特性を容易に確認することができ、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本開示に様々な変更及び修飾を行って、本開示を様々な用途及び条件に適合させることができる。すなわち、他の実施形態もまた、請求項の範囲内にある。
【配列表】