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特許7072604環状ジヌクレオチドを含むウイルス粒子を調製する方法及びがんを治療するための前記粒子の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】環状ジヌクレオチドを含むウイルス粒子を調製する方法及びがんを治療するための前記粒子の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7084 20060101AFI20220513BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220513BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220513BHJP
   A61K 39/09 20060101ALI20220513BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220513BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20220513BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20220513BHJP
【FI】
A61K31/7084
A61K47/42
A61K39/00 H
A61K39/09
A61P35/00 ZNA
C12N15/86 Z
C12N7/01
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020107835
(22)【出願日】2020-06-23
(62)【分割の表示】P 2018548683の分割
【原出願日】2016-03-16
(65)【公開番号】P2020169194
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】509181699
【氏名又は名称】アンスティテュ・クリー
(73)【特許権者】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・マネル
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ・ジェントリ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 毅史
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・レウィンケル
(72)【発明者】
【氏名】アン・ブリッジマン
(72)【発明者】
【氏名】タマラ・ダヴェンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・マエルファイト
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/108595(WO,A1)
【文献】特表2007-529532(JP,A)
【文献】特表2015-518901(JP,A)
【文献】特表2008-521430(JP,A)
【文献】特表2006-517582(JP,A)
【文献】特表2006-502979(JP,A)
【文献】Science, 2015, vol.349, no.6253, p.1232-1236
【文献】SCIENTIFIC REPORTS,2016年01月12日,6:19049,DOI:10.1038/srep19049
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/44
A61K 38/00-38/58
A61K 39/00-39/44
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象においてがんを治療するために使用するためのウイルス様粒子組成物であって、前記ウイルス様粒子が、ウイルス膜融合性糖タンパク質を含むリポタンパク質エンベロープを含み、及び、前記ウイルス様粒子が、前記ウイルス様粒子にパッケージングされた環状ジヌクレオチドを含有する、組成物。
【請求項2】
ウイルス様粒子が、レトロウイルス科由来のカプシドを更に含む、請求項1に記載の使用のためのウイルス様粒子組成物。
【請求項3】
ウイルス膜融合性糖タンパク質がレトロウイルス科(レンチウイルス及びレトロウイルスを含む)、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、ヘパドナウイルス科、フラビウイルス科、トガウイルス科、コロナウイルス科、D型肝炎ウイルス、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、ラブドウイルス科、ブニヤウイルス科又はオルソポックスウイルス科(例えば、痘瘡)由来の、好ましくはオルトミクソウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス由来の糖タンパク質である、請求項1又は2に記載の使用のためのウイルス様粒子組成物。
【請求項4】
ウイルス膜融合性糖タンパク質がHIV-1及びHIV-2を含むHIV(ヒト免疫不全ウイルス)、A型インフルエンザ(例えば、亜型H5N1及びH1N1)及びB型インフルエンザを含むインフルエンザ、ソゴトウイルス又はVSV(水疱性口内炎ウイルス)由来の糖タンパク質である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のためのウイルス様粒子組成物。
【請求項5】
レトロウイルスカプシドがレトロウイルス科、好ましくはレンチウイルス及びレトロウイルス由来である、請求項2から4のいずれか一項に記載の使用のためのウイルス様粒子組成物。
【請求項6】
レトロウイルスカプシドがHIV又はMLV(マウス白血病ウイルス)由来である、請求項2から4のいずれか一項に記載の使用のためのウイルス様粒子組成物。
【請求項7】
環状ジヌクレオチドが、環状ジアデノシン一リン酸(c-ジ-AMP) 、環状ジグアノシン一リン酸(c-ジ-GMP)、または、環状グアノシン一リン酸-アデノシン一リン酸(cGAMP)である、請求項1から6のいずれか一項に記載のウイルス様粒子組成物。
【請求項8】
ウイルス様粒子が、目的の抗原又は任意の他のタンパク質又は核酸、好ましくは腫瘍関連抗原又はその組合せを更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のためのウイルス様粒子組成物。
【請求項9】
ウイルス様粒子が、抗原又は治療活性剤と組み合わせて使用される、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のためのウイルス様粒子組成物。
【請求項10】
前記ウイルス様粒子組成物が、静脈内、皮下又は腫瘍内経路によって投与される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のためのウイルス様粒子組成物。
【請求項11】
前記ウイルス様粒子組成物が、腫瘍内経路によって投与される、請求項10に記載の使用のためのウイルス様粒子組成物。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載のウイルス様粒子組成物と、少なくとも1種の腫瘍関連抗原とを含む、医薬、ワクチン又は獣医用組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの腫瘍関連抗原を前記ウイルス様粒子内に含む、請求項12に記載の医薬、ワクチン又は獣医用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、特にワクチン及び腫瘍学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
環状ジヌクレオチドは、近年、免疫系の強力なサイトゾルアジュバントとして記載されている。これらは、例えばHIV(ヒト免疫不全ウイルス)及びHSV(単純ヘルペスウイルス)、並びにがんに対しても抗ウイルス自然免疫応答を誘導する(WO2005/08723号;WO2007/054279;WO2013/185052)。環状ジヌクレオチドは、細菌で以前同定され、免疫刺激性であることが知られていた。
【0003】
この分野は、近年、環状ジヌクレオチド、cGAMP(2'-3'-環状GMP-AMP)が脊椎動物にも存在し、サイトゾルDNAの認識で酵素cGASによって内因的に合成されることが特定された後、多くの注目を集めている。
【0004】
環状GMP-AMPシンターゼ(cGAS)は、二次メッセンジャー、cGAMPの合成を触媒することによってシグナル伝達するサイトゾルDNAセンサーである。cGASは、配列非特異的様式で二本鎖DNAに結合し、これが環状GMP-AMP(cGAMP)合成を許すその酵素部位のコンフォメーション変化を誘導する((Wu等、2012、Science、339、826~830ページ;Sun等、2012、Science、339、786~791ページ;WO2014/099824;Ablasser等、2013、Nature、498、380~384ページ)。後生動物cGAMPは、標準3'-5'ホスホジエステル結合と非標準2'-5'ホスホジエステル結合の両方を有する。cGAMPはインターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)に結合し、これを活性化する。STINGは、上流DNAセンサーからシグナルを中継してIRF3等の転写因子を活性化し、今度はこれがIFN遺伝子転写を駆動することによって、サイトゾルDNA感知において中心的役割を果たす。インターフェロン(IFN)はウイルス感染に対する免疫応答において中心的役割を果たす。IFN発現は、サイトゾルDNAセンサーを含むウイルス存在のセンサーによって活性化されるシグナル伝達経路によって誘導される。
【0005】
しかしながら、環状ジヌクレオチドは、細胞の形質膜を効率的には通過せず、ベクターを用いないで使用する場合には効力が限定される。現在のベクターは、リポフェクタミン等の脂質系複合体から主になるが、これらはその毒性のためにインビボでの使用が限定されている。
【0006】
そのため、環状ジヌクレオチド、特に有望なcGAMPのベクター化手段が強く必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2005/087238
【文献】WO2007/054279
【文献】WO2013/185052
【文献】WO2014/099824
【文献】WO2014/128568
【文献】WO2011/138251
【文献】WO14068001
【文献】米国特許第4,889,803号
【文献】米国特許第5,047,335号
【文献】米国特許第5,500,161号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Wu等、2012、Science、339、826~830ページ
【文献】Sun等、2012、Science、339、786~791ページ
【文献】Ablasser等、2013、Nature、498、380~384ページ
【文献】Wu等、2014、Nucleic Acids Research、42、8243~8257ページ
【文献】Corrigan及びGrundling、2013、Nature、11、513~524ページ
【文献】Massie等、2012、PNAS、109、12746~12751ページ
【文献】Needleman及びWunsch、1970、J. Mol. Biol 48:443ページ
【文献】Smith及びWaterman、1981、Adv. Appl. Math. 2:482ページ
【文献】Altschul等、1997、Nucleic Acids Res. 25:3389~3402ページ
【文献】Altschul等、2005、FEBS J. 272:5101~5109ページ
【文献】http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/
【文献】http://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/
【文献】Zeltins、2013、Mol Biotechnol、53、92~107ページ
【文献】Liu等、2013、Protein Exper Purif、90、104~116ページ
【文献】Sokolenko等、2012、Biotechnol Adv、30、766~81ページ
【文献】Vicente等、2011、J Invertebr Parhol、107 補遺、S42~48ページ
【文献】Scotti及びRybicki、2013、Expert Rev Vaccines、12、211~24ページ
【文献】Chen及びLai、2013、Hum Vaccine Immunother.、9、26~49ページ
【文献】Kushnir等、2012、Vaccine、31、58~83ページ
【文献】Grgacic及びAnderson、2006、Methods、40、60~65ページ
【文献】Remington's The Science and Practice of Pharmacy、第21版、A. R. Gennaro、(Lippincott、Williams and Wilkins社、Baltimore、MD、2006)
【文献】www.niaid.nih.gov/daids/vaccine/pdf/compendium.pdf
【文献】Allison、1998、Dev. Biol. Stand.、92:3~11ページ
【文献】Unkeless等、1998、Annu. Rev.Immunol.、6:251~281ページ
【文献】Phillips等、1992、Vaccine、10:151~158ページ
【文献】Sun等、2013、Science、339、786~791ページ
【文献】Li等、2013、Nat Immunol、14、793~803ページ
【文献】Burdette等、2011、Nature、478、515~518ページ
【文献】Rehwinkel等、2013、EMBO J、32、2454~2462ページ
【文献】Rehwinkel等、2010、Cell、140、397~408ページ
【文献】Jin等、2011、The Journal of Immunology、187、2595~2601ページ
【文献】Lahaye等、2013、Immunity、39、1132~1142ページ
【文献】Subach等、2011、PLoS One、6、e28674
【文献】Satoh等、2013、Methods Mol Biol、960、401~409ページ
【文献】Fukata等、2013、J Cell Biol、202、145~161ページ
【文献】Diner等、2013、Cell reports、3、355~1361ページ
【文献】Naviaux等、1996、J Virol、70、5701~5705ページ
【文献】Chesebro等、1983、Virology、127、134~148ページ
【文献】Zimmermann等、2001、Molecular Biology of the cell、12、339~350ページ
【文献】Woodward等、2010、Science、328、1703~1705ページ
【文献】Ablasser等、2013、Nature、497、380~384ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、環状ジヌクレオチドは、細胞の形質膜を効率的には通過せず、ベクターを用いないで使用する場合には効力が限定される。現在のベクターは、リポフェクタミン等の脂質系複合体から主になるが、これらはその毒性のためにインビボでの使用が限定されている。
【0010】
そのため、環状ジヌクレオチド、特に有望なcGAMPのベクター化手段が強く必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、エンベロープウイルス様粒子を用いた、環状ジヌクレオチド、特にcGAMPの新規なベクター化を提供する。実際、環状ジヌクレオチド、特にcGAMPを、エンベロープウイルス様粒子(VLP)又はビリオンにパッケージングすることができ、先天性免疫応答、特にインターフェロン応答を誘導することができる。より具体的には、環状ジヌクレオチド、特にcGAMPをベクター化することができるためには、VLPと標的細胞の融合によって、環状ジヌクレオチド、特にcGAMPの送達を最適化するようにVLPをエンベロープ化する必要がある。特に、VLPの投与が、驚くべきことに、cGAMPの効果、特に腫瘍に対するその効果を改善することが本発明者等によって示された。好ましい実施形態では、VLPの腫瘍内投与が、cGAMPの増加した効果と関連している。
【0012】
本発明は、がんを治療するために使用するための、ウイルス膜融合性糖タンパク質を含むリポタンパク質エンベロープを含むウイルス様粒子であって、がんの治療に使用される前記ウイルス様粒子にパッケージングされた環状ジヌクレオチドを含有するウイルス様粒子に関する。好ましくは、ウイルス様粒子がレトロウイルス科(retroviridae)由来のカプシドを更に含む。
【0013】
好ましくは、ウイルス膜融合性糖タンパク質が、レトロウイルス科(レンチウイルス及びレトロウイルスを含む)、ヘルペスウイルス科(herpesviridae)、ポックスウイルス科(poxviridae)、ヘパドナウイルス科(hepadnaviridae)、フラビウイルス科(flaviviridae)、トガウイルス科(togaviridae)、コロナウイルス科(coronaviridae)、D型肝炎ウイルス、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、パラミクソウイルス科(paramyxoviridae)、フィロウイルス科(filoviridae)、ラブドウイルス科(rhabdoviridae)、ブニヤウイルス科(bunyaviridae)又はオルソポックスウイルス科(orthopoxviridae)(例えば、痘瘡)由来の、好ましくはオルトミクソウイルス、レトロウイルス又はラブドウイルス由来の糖タンパク質である。特に、ウイルス膜融合性糖タンパク質は、HIV-1及びHIV-2を含むHIV(ヒト免疫不全ウイルス);A型インフルエンザ(例えば、亜型H5N1及びH1N1)及びB型インフルエンザを含むインフルエンザ;ソゴトウイルス;又はVSV(水疱性口内炎ウイルス)由来の糖タンパク質であり得る。
【0014】
好ましくは、レトロウイルスカプシドがレトロウイルス科、好ましくはレンチウイルス及びレトロウイルス由来である。より好ましくは、レトロウイルスカプシドがHIV又はMLV(マウス白血病ウイルス)由来である。
【0015】
好ましくは、環状ジヌクレオチドが、環状ジアデノシン一リン酸(c-ジ-AMP)、環状ジグアノシン一リン酸(c-ジ-GMP)及び環状グアノシン一リン酸-アデノシン一リン酸(cGAMP)からなる群から選択される。より好ましくは、環状ジヌクレオチドが、cGAMP(2'-3'-環状GMP-AMP)又はcGAMP(3'-3'-環状GMP-AMP)である。
【0016】
場合により、本発明のウイルス様粒子は、目的の抗原又は任意の他のタンパク質又は核酸、好ましくは腫瘍関連抗原又はその組合せを更に含み得る。
【0017】
本発明は、薬物、特にワクチン又はワクチンアジュバントとしての本明細書に開示されるウイルス様粒子に関する。本発明はまた、がんを治療するために使用するための、本明細書に開示されるウイルス様粒子と、薬学的に許容される担体と、場合により抗原又は治療活性剤とを含む、医薬、ワクチン又は獣医用組成物に関する。
【0018】
本発明は更に、対象のがんを治療する方法であって、本明細書に開示されるウイルス様粒子又は本明細書に開示される組成物を投与する工程を含む方法に関する。本発明は、対象のがんを治療するための医薬若しくはワクチンを製造するための、本明細書に開示されるウイルス様粒子又は組成物の使用に関する。
【0019】
本発明はまた、本明細書に開示されるウイルス様粒子と、薬学的に許容される担体と、少なくとも1種の腫瘍関連抗原とを含む、医薬、ワクチン又は獣医用組成物に関する。
【0020】
好ましくは、ウイルス様粒子が、静脈内、皮下又は腫瘍内経路によって投与される。最も好ましい実施形態では、ウイルス様粒子が、腫瘍内経路によって投与される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】cGAS-再構成293T細胞で産生されたHIV-1-GFPが、感染細胞でIFNを誘導することを示す図である。(A)実験設定の概略図。(B)HEK293細胞をIFNβプロモーターレポーター(p125-F-Luc)及び対照としてのpRL-TKでトランスフェクトした。6~8時間後、細胞を、示されるcGASを発現するプロデューサー細胞由来のHIV-1-GFPで感染させた(MOI=1)、又は非感染のままにした。F-Luc活性を24時間後に分析し、R-Lucに対して標準化した。m-cGAS-AAは触媒的に不活性な突然変異体である。(C)HIV-1-GFP感染細胞を24時間後及び更に48時間後に洗浄し、上清中のIFNをバイオアッセイによって分析し(左)、細胞をFACS分析のために回収した。GFP陽性細胞の割合を示す(右)。楔は10、5、2、1、0.5及び0.1のMOIを表す。(D)RNAを(C)のように感染細胞から抽出した(MOI=1)。示されるmRNAを、RT Q-PCRによって、18S rRNAに対して定量化した。(E)示される遺伝子型のBMDMを、HIV-1-GFP(MOI=5)又はセンダイウイルス(SeV、楔は1、0.5及び0.1のMOIを表す)で感染させた。上清をELISAによってmIFNαについて24時間後に試験した。n.d.、検出不能。(F)BMDMを、(E)のように感染させ、示されるmRNAをRT Q-PCRによってGAPDH mRNAに対して定量化した。黒色楔は5及び1のMOIを表し、灰色楔は1、0.5及び0.1のMOIを表す。バーは2(B、D、E)又は4(C、F)連の平均を示し、エラーバーは範囲(B、D、E)又は標準偏差(C、F)を表す。
図2】HEK293細胞がSTINGを発現し、cGAMPに応じてIFNを誘導することを示す図である。(A)THP1及びHEK293細胞由来の細胞抽出物を、STING発現についてウエスタンブロットによって試験した。無関係な介在レーンは、図の作成中に切り出した。(B)2×105個HEK293細胞を、IFNβプロモーターレポーター(p125-F-Luc)及び対照としてのpRL-TKで一過的にトランスフェクトした。24時間後、細胞を2μgの2'-3'-cGAMP又はリポフェクタミンのみ(対照)でトランスフェクトした。ルシフェラーゼ活性を更に24時間後に分析し、F-Luc活性をR-Lucに対して標準化して示す。バーは2連の平均を示し、エラーバーは範囲を表す。IFNバイオアッセイ。(C)HEK293細胞を、レンチウイルス送達を用いて、pGreenFire-ISREで形質導入した。系列希釈によってクローンを得て、IFNに対する応答に基づいて、クローン3C11を選択した。25,000個3C11細胞を96ウェルプレートに播種し、組換えヒトIFNα2を添加した。24時間後、細胞を溶解し、ホタルルシフェラーゼ活性を測定した。未処理細胞におけるバックグラウンド生物発光を1に設定した。バーは2連の平均を示し、エラーバーは範囲を表す。野生型及び突然変異型cGASをウイルスプロデューサー細胞で等しく発現させる。(D)293Tウイルスプロデューサー細胞をトランスフェクション72時間後に溶解し、FLAGタグを認識するモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロットによってcGASタンパク質レベルを決定した。cGAS-再構成細胞で産生されたアデノウイルス-GFP(Ad-GFP)は新たに感染した標的細胞においてIFNを誘因しない。(E)Ad-GFPをHEK293細胞で産生させた。いくつかのウイルスプロデューサー細胞を、cGAS発現構築物でコトランスフェクションした。次いで、ウイルスストックを使用して、新たなHEK293細胞を感染させた。楔は0.01及び0.001μlの接種物を表す。Ad-GFP感染細胞によるIFN産生をバイオアッセイによって試験した。示される用量の組換えIFNαを使用して、バイオアッセイの応答性を実証した。バーは2連の平均を示し、エラーバーは範囲を表す。(F)感染をFACSによってモニターした。
図3】cGAS発現細胞由来のHIV-1-GFPによって誘因されるIFN誘導が、ウイルス核酸と独立していることを示す図である。(A)ウイルスストックをDNアーゼで処理して又はしないで、次いで、図1のように細胞を感染させるために使用した(MOI=1)。対照として、培地及びm-cGASプラスミドをDNアーゼIとインキュベートし、次いで、それぞれ細胞に添加した又はトランスフェクトした。(B)HIV-1-GFPを示されるようにトランスフェクトしたプロデューサー細胞から回収した(上清、SUP)。HIV-1-GFPを遠心分離によってアリコートからペレット化し、新鮮な培地に再懸濁した(ペレット化、PEL)。次いで、細胞を感染させた(MOI=1)。(C)細胞を、ネビラピン(Nev)又はラルテグラビル(Ral)の存在下で感染させた(MOI=1)。感染細胞の割合をFACSによって決定した(右)。(D)細胞を、100、50又は5μl(楔)のHIV-1-GFP又はウイルス様粒子(VLP)を産生する細胞由来の上清で感染させた。(E)HIV-1-GFPをVSV-G又はTHOV-Gでシュードタイプ化(pseudotyped)し、プロデューサー細胞由来の上清(VSV-G:1及び0.1μl;THOV-G:100及び10μl)を使用して細胞を感染させた。(F)HIV-1-GFPを、20μM GW4869、60μM Ac-DEVD-CHOで処理した、又は未処理のままにした(対照)、m-cGASで再構成した細胞で産生させた。新たな細胞を10、1又は0.1μl(楔)の上清で感染させた。全てのパネルにおいて、細胞を24時間感染させ、洗浄し、更に48時間後、上清中のIFNをバイオアッセイによって分析した。バーは2(B、C、D、E)、3(F)又は4(A)連の平均を示し、エラーバーは範囲(B、C、D、E)又は標準偏差(A、F)を表す。
図4】cGAS-再構成プロデューサー細胞由来のHIV-1-GFP由来の低分子抽出物がIFNを誘導することを示す図である。(A)実験設定の概略図。(B)cGASの非存在下(第1のセットのバー)、又は野生型若しくは突然変異型cGASの存在下(第2及び第3のセットのバー)で産生されたウイルス由来の抽出物を、ジギトニン透過処理THP1細胞に添加した。THP1上清中のIFNをバイオアッセイによって評価した。灰色楔は、107感染単位由来の抽出物で開始した1:2希釈系列を表す。対照として、合成cGAMPをTHP1細胞に直接添加した(最後のセットのバー)、又は培地に添加し、次いで、抽出手順に含めた(第4のセットのバー)。黒色楔は、50ngのcGAMPで開始した1:3希釈系列を表す。(C)cGASの存在下で産生された107感染単位のHIV-1-GFP由来の抽出物を、SVPDEを用いて又は用いないで1時間インキュベートし、次いで、ジギトニン透過処理THP1細胞に添加した。THP1上清中のIFNをバイオアッセイによって評価した。楔は1:3希釈系列を表す。(D)cGASの非存在下若しくは存在下で、又はビオチン-cGAMPトランスフェクト細胞中で産生されたHIV-1-GFPをビオチンについてドットブロットによってプロービングした(左)。次いで、ストリップした膜をp24について再プロービングした(右)。楔は、2×106感染単位で開始した1:10希釈系列を表す。
図5】cGAS-再構成プロデューサー細胞由来のHIV-1-GFPによる樹状細胞の感染がCD86発現及びIFN分泌を誘導することを示す図である。2人のドナー由来の単球に由来するヒト樹状細胞を、示されるMOIのHIV-1-GFPで感染させた。48時間後、CD86発現をFACSによって分析した。(A)CD86+細胞の割合を示す。(B)CD86中央蛍光強度を示す。(C)上清をIFNバイオアッセイで試験した。(A~C)各ドナーについての2連感染からの平均データを示す;エラーバーは範囲を表す。これらの効果がVpxの非存在下で観察されたことに留意する。
図6】cGASレンチウイルスベクターが樹状細胞を活性化することを示す図である。(A)Vpxの存在下又は非存在下での、BFP-2A又はBFP-2A-cGASをコードするレンチウイルスによる単球の感染後のBFP及びCD86発現。(B)Vpxを用いない滴定ウイルスを用いた(a)のようなCD86発現及び最高用量での統計学的分析(対応のあるt検定;n=4;***p<0.001)。(C)Vpxを用いない滴定ウイルスを用いた(a)のようなIP-10産生及び最高用量での統計学的分析(対応のあるt検定;n=4;log変換データで**p<0.01)。(D)BFP-2A若しくはBFP-2A-cGASをコードするレンチウイルス、又はcGASをコードする非レンチウイルスプラスミド(PSTCD-cGAS)の存在下で産生されたVLPによる単球の感染後のBFP及びCD86発現。(E)(d)のようなCD86発現及びIP-10産生(n=5、CD86発現分析についての対応のあるt検定、IP-10についてのlog変換データでの対応のあるt検定;***p<0.001、**p<0.01、ns=有意でない)。
図7】cGASレンチウイルスベクターが単球及び完全に分化した樹状細胞を活性化することを示す図である。(A)Vpxの非存在下でのBFPコードベクター及びcGASコードベクターによる単球の形質導入、引き続いてGM-CSF及びIL-4によるDCへの分化の96時間後のCD14及びDC-SIGN発現(n=2)。(B)BFP-2Aレンチウイルス及びBFP-2A-cGASレンチウイルスによる確立された単球由来樹状細胞の感染48時間後のBFP及びCD86発現。(C)(B)のようなCD86発現(n=3)。(D)プロデューサー細胞及び図6Dで使用されるペレット化上清中のGag、cGAS及びアクチンの免疫ブロッティング。
図8】HIV粒子が、cGASによって開始される先天性シグナル(innate signal)を伝達することを示す図である。(A)BFP-2A-cGASベクター、Gag/Pol及びVSV-Gによって産生されたレンチウイルスによる単球の感染後のBFP及びCD86発現。細胞を完全な上清又は保持液(retentate)及び10kDaカットオフによる濾過後の濾液で感染させた。4つのうちの代表的な実験を示す。(B)野生型cGAS又はDNA結合ドメインを欠く不活性cGAS突然変異体(ΔDBD)を発現する293FTから産生されたVLPを含有する異なって分画された上清による単球の用量応答感染におけるCD86発現及びIP-10産生。初期上清と比較した、感染に使用される各分画の体積及び対応する濃縮係数を示す(n=3;平均及びSEMをプロット)。(C)(B)のように完全な上清の異なる遠心分離によって得られた分画中のGag及びcGASの免疫ブロット(3つの実験を表す)。(D)(B)のように完全な上清の異なる遠心分離によって得られた分画中のエキソソームマーカーシンテニン-1、CD63、CD81及びCD9の免疫ブロット。(3つの実験を表す)。(E)(A)における実験のCD86発現分析(n=4;対応のあるt検定;**p<0.01、ns=有意でない)。
図9】ウイルス粒子がcGAMPをパッケージング及び伝達することを示す図である。(A)STINGコードプラスミドを用いて又は用いないでIFNβプロモーターの制御下で、ルシフェラーゼレポータープラスミドでトランスフェクトした293FT細胞。細胞を、滴定量のマウスcGASの存在下(cGASウイルス粒子)若しくは非存在下(対照ウイルス粒子)でウイルス粒子を産生する細胞由来の上清、及びリポフェクタミンを用いて合成cGAMPで刺激した又はcGASをコードするプラスミドでトランスフェクトした(cGASトランスフェクション)マウスcGASを発現する細胞(cGAS Gag/Pol無し VSV-G無し)由来の上清で刺激した。3つの独立した実験のうちの1つの代表的な実験を示す。(B)透過処理PMA-分化THP-1細胞の合成2'-3'-cGAMP(左側パネル)又は293FTトランスフェクト細胞及びペレット化ウイルス粒子由来のベンゾナーゼ耐性抽出物に曝露した後に測定したI型IFN活性。293FT細胞を、cGAS又は触媒的に不活性な突然変異体E225A/D227Aの存在下、レンチウイルスパッケージングプラスミドでトランスフェクトした(右側パネル)。3つの独立した実験のうちの1つの代表的な実験を示す。(C)(A)で使用されたVLPプロデューサー細胞中のGag、cGAS及びアクチンの免疫ブロット。
図10】ウイルス粒子によるcGAMP伝達がレトロウイルスの保存された特性であることを示す図である。(A)cGAS、cGAS E225A/D227A又は対照をコードするプラスミドと合わせた、Gag/Pol及びVSV-Gを発現するプラスミドの組み合わせでトランスフェクトした細胞の無細胞上清に単球を曝露した後のDCにおけるBFP及びCD86発現。(B)(a)のようなCD86発現及びIP-10産生の分析(n=6;CD86発現についての対応のあるt検定、IP-10産生についてのlog変換データでの対応のあるt検定、****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*0.01<p<0.05)。(C)プロデューサー細胞及びペレット化無細胞上清中のGag、VSV-G、cGAS及びアクチンの免疫ブロット。(D)マウスcGASの存在下又は非存在下で、インフルエンザH1N1(左側パネル)又はH5N1(右側パネル)エンベロープタンパク質でシュードタイプ化され、産生されたレンチウイルス粒子による単球の感染後の、DCにおけるCD86発現及びIP-10産生(n=4;(B)のように分析)。(E)cGASの存在下又は非存在下で、MLV 10A1 Gag/Polにより産生され、VSV-Gでシュードタイプ化されたガンマレトロウイルス粒子による単球の感染後の、DCにおけるCD86発現及びIP-10産生(n=4;(B)のように分析)。(F)マウスcGASの存在下又は非存在下で産生されたCCR5向性(tropic)HIV-1ウイルス粒子による単球のAZTの存在下での感染後のDCにおけるCD86発現及びIP-10産生(n=4;(B)のように分析)。
図11】レンチウイルス媒介cGAMP伝達が種々の膜融合性エンベロープ糖タンパク質によって媒介されることを示す図である。(A)cGASの非存在下又は存在下で、インフルエンザ(左側パネル)又はH5Na(右側パネル)エンベロープタンパク質でシュードタイプ化され、産生された滴定用量のレンチウイルス粒子による単球の感染後の、DCにおけるCD86発現及びIP-10産生(n=4)。(B)cGASの存在下又は非存在下で、MLV 10A1 Gag/Polにより産生され、VSV-Gでシュードタイプ化された滴定用量のガンマレトロウイルス粒子による単球の感染後の、DCにおけるCD86発現及びIP-10産生(n=4)。(C)cGASの存在下又は非存在下で産生されたCCR5向性HIV-1ウイルス粒子によるAZTの存在下での単球の感染後の、DCにおけるCD86発現及びIP-10産生。(D)プロデューサー細胞及びペレット化上清中のMLV Gag、VSV-G、cGAS及びアクチンの免疫ブロット。(E)プロデューサー細胞及びペレット化上清中のHIV-1 Gag、VSV-G、cGAS及びアクチンの免疫ブロット。
図12】細胞間のcGAMPのウイルス媒介伝達のモデルを示す図である。ウイルス産生細胞では、cGASがcGAMPを産生する。cGAMPは細胞外小胞及びウイルス粒子にパッケージングされる。ウイルス粒子は効率的に細胞膜と融合し、cGAMPを標的細胞のサイトゾルに送達することができる。今度は、cGAMPがSTINGを活性化し、先天性免疫応答を誘導する。細胞外小胞もcGAMPをパッケージングすることができるが、標的細胞活性化の効率は膜融合性ウイルス粒子より低い。
図13】ウイルス粒子によるcGAMP伝達が生理学的に関連するレベルのcGAS発現で起こることを示す図である。(A)HeLaトランスフェクト細胞及びペレット化材料に由来する耐熱性、ベンゾナーゼ耐性抽出物への透過処理PMA処理THP-1細胞の曝露後に測定したI型IFN活性。HeLa細胞をトランスフェクトしなかった、空ベクターでトランスフェクトした、又はGal/Pol発現ベクター及びVSV-G発現ベクターでトランスフェクトした(n=3)。(B)(A)のようにトランスフェクトしたHeLa細胞から産生された超遠心分離濾過材料によるPMA処理THP-1細胞の刺激及び可溶性IP-10産生定量化(n=3)。(C)STINGコードプラスミドを用いて又は用いないで、IFN-βプロモーターの制御下で、ルシフェラーゼレポータープラスミドでトランスフェクトした293FT細胞。細胞を滴定量のトランスフェクトHeLa細胞由来の超遠心分離材料で刺激した、リポフェクタミンを用いて合成2'-3'cGMPで刺激した、又は構成的活性型タンパク質RIG-I N228をコードするプラスミドでトランスフェクトした(n=3)。
図14】cGAMP含量定量化及びVLPの送達の有効性を示す図である。(a)MLV Gag VLP(GagのC末端とのインフレーム融合としてOVAを発現)からの低分子抽出、並びにバイオアッセイによるHIV Gag VLP及びcGAMP定量化(内部添加対照を含めてウイルス調製物中のcGAMP含量を推定した)。各ドットは1:3希釈を表す。MLV Gag VLP cGAMP含量は最高用量の100ngのcGAMPより3倍少ないと推定された(濃縮調製物中の最終濃度:660ng/ml);HIV Gag VLP cGAMP含量は最高用量の100ngのcGAMPより9倍少ないと推定された(濃縮調製物中の最終濃度:220ng/ml)。(b)MLV Gag及びHIV Gagウイルス調製物による2人の独立したドナー由来の単球の感染。(a)のバイオアッセイに基づくウイルス調製物及びcGAMP刺激について推定されるcGAMP含量をx軸に示し、同時刺激分子CD86の上方制御によって測定される単球上の対応する活性をy軸に示す。MLV Gag及びHIV Gag VLPは、樹状細胞成熟を誘導することにおいて、リポフェクタミンと複合体化した2'3'-cGAMPよりも約1,000倍効率的であり、2'3'-cGAMPよりも約10,000倍効率的である。
図15A】特異的抗原を含有する(図A図F)又は含有しない(図F図H)cGAS-VLPのアジュバント活性を示す図である。マウスを、3倍連続希釈した3つの異なる用量でcGAMP及びOvaタンパク質を含有するVLPで皮下免疫化した。対照マウスに、抗原を含まないcGAMPを含有するVLP、又はアジュバントとしての合成cGAMP(10μg)(InVivogen社)若しくはCpG(40μg)(Trilink Technologies社)と共に投与されるOVAタンパク質(20μg)を受けさせた。
図15B】特異的抗原を含有する(図A図F)又は含有しない(図F図H)cGAS-VLPのアジュバント活性を示す図である。実験スケジュール。マウス(6匹/群)を最初に免疫化し、11日後、免疫応答を血液中で分析した。14日目、B16-OVA黒色腫腫瘍細胞を、皮下注射によって移植し、11日後、免疫応答をマウスの血液中で分析した。
図15C】特異的抗原を含有する(図A図F)又は含有しない(図F図H)cGAS-VLPのアジュバント活性を示す図である。CD8 T細胞応答を、IFN-g産生細胞測定及び四量体検出によってVLP免疫化後に分析した。結果を平均±SEMを用いて個々のマウスとして表す。
図15D】特異的抗原を含有する(図A図F)又は含有しない(図F図H)cGAS-VLPのアジュバント活性を示す図である。次いで、IFN-g産生細胞の測定によって、腫瘍移植後にCD8応答を分析した。
図15E】特異的抗原を含有する(図A図F)又は含有しない(図F図H)cGAS-VLPのアジュバント活性を示す図である。各群の腫瘍成長についての個々の曲線。
図15F】特異的抗原を含有する(図A図F)又は含有しない(図F図H)cGAS-VLPのアジュバント活性を示す図である。実験群に、3倍連続希釈した3つの異なる用量のcGAMP-VLPSを受けさせた。対照マウスにPBS生理食塩水溶液を受けさせた。
図15G】特異的抗原を含有する(図A図F)又は含有しない(図F図H)cGAS-VLPのアジュバント活性を示す図である。実験スケジュール。マウス(7又は8匹/群)に最初にB16-OVA黒色腫腫瘍を移植し、12日後、cGAMP-VLPを腫瘍内注射した。10日後、免疫応答を血液中で分析した。
図15H】特異的抗原を含有する(図A図F)又は含有しない(図F図H)cGAS-VLPのアジュバント活性を示す図である。CD8 T細胞応答を、IFN-g産生細胞の定量化及び四量体検出によって分析した。結果を、平均±SEMを用いて個々のマウスとして表す。
図16A】cGAMP-VLPが急速なIFN-β発現を誘導することを示す図である。PBS、Ova-cGAMP-VLP、cGAMP-VLP、Ovaタンパク質+cGAMP又はOvaタンパク質+CpGの皮下注射3時間後の血清中のIFN-βの濃度。図15Aを参照されたい。
図16B】cGAMP-VLPが急速なIFN-β発現を誘導することを示す図である。PBS又はcGAMP-VLPの腫瘍内注射3時間後の血清中のIFN-βの濃度。図15Fを参照されたい。
図17A】最適以下抗原用量で、インビボでワクチンアジュバント効果を誘導するためには、cGAMP-VLP中のcGAMPの存在が必要であることを示す図である。マウス群及び処理の説明。VLPの注射用量を、ELISAによって測定される、VLP中に含有されるp30タンパク質の量の定量化に基づいて標準化する。
図17B】最適以下抗原用量で、インビボでワクチンアジュバント効果を誘導するためには、cGAMP-VLP中のcGAMPの存在が必要であることを示す図である。実験の概要。
図17C】最適以下抗原用量で、インビボでワクチンアジュバント効果を誘導するためには、cGAMP-VLP中のcGAMPの存在が必要であることを示す図である。ELISPLOTによってIFN-g産生細胞によって測定される、(B)に記載される皮下注射11日後のOva抗原特異的CD8 T細胞応答。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、対象のがんを治療するために使用するための、ウイルス膜融合性糖タンパク質を含むリポタンパク質エンベロープを含むウイルス様粒子(VLP)であって、前記ウイルス様粒子にパッケージングされた環状ジヌクレオチド、特にcGAMPを含有するウイルス様粒子に関する。
【0023】
本発明はまた、環状ジヌクレオチド、特にcGAMPをベクター化又はがん細胞に送達するための、ウイルス膜融合性糖タンパク質を含むリポタンパク質エンベロープを含むエンベロープVLPの使用に関する。
【0024】
本発明は更に、環状ジヌクレオチド、特にcGAMPを含有し、ウイルス膜融合性糖タンパク質を含むリポタンパク質エンベロープを含むエンベロープVLPを調製する方法に関する。
【0025】
本発明は最後に、がん細胞に対する免疫応答を誘導するための、ウイルス膜融合性糖タンパク質を含むリポタンパク質エンベロープを含むエンベロープVLPを含み、VLP中に環状ジヌクレオチド、特にcGAMPを含有するウイルス様粒子の使用に関する。本発明は、ワクチン又はワクチンアジュバントとしてのその使用に関する。したがって、本発明は、環状ジヌクレオチド、特にcGAMPを含有し、レトロウイルスカプシドタンパク質を含むエンベロープVLPを含む医薬組成物又はワクチン組成物に関する。本発明は、特にがんを治療するための薬物としての、環状ジヌクレオチド、特にcGAMPを含有し、レトロウイルスカプシドタンパク質を含むエンベロープVLPの使用に関する。
【0026】
本発明者等は、本発明のVLPが腫瘍特異的T細胞応答を誘導するのに適している一方、cGAMPの直接投与がはるかに高用量のcGAMPでこのような応答を有意に誘導することができないことを示した。cGAMP-VLPが、腫瘍抗原と組み合わせて使用すると、腫瘍成長を完全に阻害することができたことが示されている。
【0027】
定義
コード配列:「コード配列」という用語は、ポリペプチドのアミノ酸配列を直接指定するポリヌクレオチドを意味する。コード配列の境界は、一般的に、ATG、GTG又はTTG等の開始コドンで始まり、TAA、TAG又はTGA等の終止コドンで終わるオープンリーディングフレームによって決定される。コード配列はゲノムDNA、cDNA、合成DNA又はこれらの組み合わせであり得る。
【0028】
制御配列:「制御配列」という用語は、本発明の酵素をコードするポリヌクレオチドの発現に必要な核酸配列を意味する。制御配列は、酵素をコードするポリヌクレオチドに対してネイティブ(すなわち、同じ遺伝子由来)であっても、又は異種性(すなわち、異なる遺伝子及び/又は異なる種由来)であってもよい。好ましくは、制御配列が異種性である。周知であり、当業者によって現在使用されている制御配列が好ましいだろう。このような制御配列は、それだけに限らないが、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列及び転写ターミネーターを含む。最低限、制御配列はプロモーター、並びに転写及び翻訳終止シグナルを含む。制御配列は、制御配列と酵素をコードするポリヌクレオチドのコード領域のライゲーションを促進する特異的制限部位を導入する目的でリンカーを備えてもよい。制御配列とコード配列の機能的組合せを発現カセットと呼ぶことができる。
【0029】
発現:「発現」という用語は、それだけに限らないが、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾及び分泌を含むポリペプチドの産生に関与する任意の工程を含む。
【0030】
発現ベクター:「発現ベクター」という用語は、本発明の酵素をコードするポリヌクレオチドを含み、その発現を提供する制御配列と作動可能に連結した(operably linked to)直鎖状又は環状DNA分子を意味する。そのため、発現ベクターは、本発明の酵素を発現するのに適した発現カセットを含む。
【0031】
組換え体:組換え体は、遺伝子操作によって作製された核酸構築物、ベクター及びタンパク質を指す。
【0032】
異種性:宿主細胞、ベクター又は核酸構築物の文脈では、これは、遺伝子操作によって宿主細胞、ベクター又は核酸構築物に導入された環状ジヌクレオチドシンターゼのコード配列を指定する。宿主細胞の文脈では、これは、環状ジヌクレオチドシンターゼのコード配列が、それが導入される細胞とは異なる供給源に由来する(例えば、ヒト対マウス又はマウス対ヒト)ことを意味し得る。或いは、これはまた、環状ジヌクレオチドシンターゼのコード配列が、それが導入される細胞と同じ種に由来するが、自然ではない環境のために、例えば、自然のプロモーターではないプロモーターの制御下である又は自然の位置とは異なる位置で導入されるために異種性とみなされることを意味し得る。
【0033】
核酸構築物:「核酸構築物」という用語は、1つ又は複数の制御配列を含む、自然には存在しないであろう様式で核酸のセグメントを含有するよう修飾された、又は合成である一本鎖又は二本鎖の核酸分子を意味する。
【0034】
作動可能に連結した:「作動可能に連結した」という用語は、制御配列が、コード配列の発現を指示するように、コード配列に対して適切な位置に配置されている配置を意味する。
【0035】
アジュバント:活性抗原に対する液性及び/又は細胞媒介免疫応答を増強又は誘発又は調節するために、活性抗原に対する免疫に添加及び/又は共製剤化される物質。好ましくは、アジュバントは先天性免疫応答を増強又は誘発することができる。
【0036】
抗原:細胞性又は液性免疫応答を引き起こすことができる構造。
【0037】
治療又は療法:個体、例えば哺乳動物、特にヒトの状態における有益な変化をもたらすことを意図した過程。ヒト治療と獣医学的治療が共に企図される。有益な変化には以下の1つ又は複数が含まれ得る:機能の回復、症状の低減、疾患、障害若しくは状態の限定若しくは遅延、又は患者の状態、疾患若しくは障害の悪化の予防、限定若しくは遅延。特に、本明細書で使用される場合、「治療」(「治療する」又は「治療すること」も)という用語は、特定の疾患、障害及び/又は状態(例えば、ウイルス感染)の1つ若しくは複数の症状又は特徴或いは疾患の素因を、部分的又は完全に緩和する、改善する、軽減する、阻害する、その開始を遅延する、その重症度を低減する、及び/又はその発症を減少させる免疫原性組成物の任意の投与を指す。このような治療は、関連する疾患、障害及び/又は状態の徴候を示さない対象のものであっても、並びに/或いは疾患、障害及び/又は状態の初期の徴候のみを示す対象のものであってもよい。或いは又は更に、このような治療は、関連する疾患、障害及び/又は状態の1つ若しくは複数の確立された徴候を示す対象のものであってもよい。ある特定の実施形態では、「治療すること」という用語が患者のワクチン接種を指す。
【0038】
VLP又はウイルス様粒子:ウイルスに似ているが非感染性である。これは、いかなる野生型ウイルス遺伝物質も含有せず、より好ましくはいかなるウイルス感染性遺伝物質も含有しない。エンベロープ又はカプシド等のウイルス構造タンパク質の発現は、VLPの自己集合をもたらす。VLPはビロソーム(すなわち、カプシドを欠いたリポタンパク質エンベロープ)及びカプシドとリポタンパク質エンベロープの両方を含むVLPであり得る。
【0039】
融合タンパク質:少なくとも2つのセグメントを含むポリペプチドを指し、これらのセグメントは自然には単一ペプチドに含まれない。
【0040】
治療活性剤又は有効成分:対象に投与すると、治療活性を示す化学物質を指す。これらには、非限定的な例として、阻害剤、リガンド(例えば、受容体アゴニスト又はアンタゴニスト)、補助因子、抗炎症薬(ステロイド性及び非ステロイド性)、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗寄生虫薬、抗精神病薬、鎮痛薬、抗血栓薬、抗血小板薬、抗凝固薬、抗糖尿病薬、スタチン、毒素、抗微生物薬、抗ヒスタミン剤、代謝産物、代謝拮抗薬、血管作用薬、血管拡張薬、心血管薬、化学療法剤、抗酸化剤、リン脂質、抗増殖剤及びヘパリンが含まれる。
【0041】
ウイルス様粒子
本発明は、ウイルス膜融合性糖タンパク質を含むリポタンパク質エンベロープを含むウイルス様粒子(VLP)であって、前記ウイルス様粒子にパッケージングされた環状ジヌクレオチドを含有するウイルス様粒子に関する。
【0042】
ウイルス膜融合性糖タンパク質は、レトロウイルス科(レンチウイルス及びレトロウイルス、例えばアルファレトロウイルス、ベータレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、デルタレトロウイルス、イプシロンレトロウイルスを含む)、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、ヘパドナウイルス科、フラビウイルス科、トガウイルス科、コロナウイルス科、D型肝炎ウイルス、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、ラブドウイルス科、ブニヤウイルス科又はオルソポックスウイルス科(例えば、痘瘡)由来の糖タンパク質又はいくつかの糖タンパク質の組合せであり得る。好ましい態様では、ウイルス膜融合性糖タンパク質が、フラビウイルス科、レトロウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、ブニヤウイルス科又はヘパドナウイルス科由来である。具体的な態様では、ウイルス膜融合性糖タンパク質がオルトミクソウイルス、ラブドウイルス科又はレトロウイルス科由来である。
【0043】
より具体的には、ウイルス膜融合性糖タンパク質が、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(HIV-1及びHIV-2を含む)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ピューマレンチウイルス、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ジェンブラナ病ウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス、ビスナ/マエディウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV、例えばHTLV-1、-2、-3又は-4)、ラウス肉腫ウイルス、トリ肉腫・白血病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス(ND)、デングウイルス、ハンタンウイルス、インフルエンザウイルスA又はB(例えば、H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、H10N7、H7N9又はこれらの任意の組合せ)、B型肝炎ウイルス(HBV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、麻疹ウイルス(MV)、ソゴトウイルス、ヘルペスウイルス(HSV-1及びHSV-2を含む)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、エボラウイルス又はマールブルグウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、呼吸器合抱体ウイルス(RSV)、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス由来であり得る。極めて具体的な態様では、ウイルス膜融合性糖タンパク質が、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)(HIV-1及びHIV-2を含む)、ソゴトウイルス、チクングニアウイルス、ヒト重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS CoV)及びVSV(水疱性口内炎ウイルス)由来の糖タンパク質である。特定の実施形態では、ウイルス膜融合性糖タンパク質がヒトTリンパ球向性ウイルス、特にHTLV-1、-2又は-3である。
【0044】
特定の実施形態では、ウイルス膜融合性糖タンパク質が、HBVのHBsAg(例えば、M-、S-又はL-HBsAg)、HCVのE1及び/又はE2タンパク質(例えば、WO2014/128568)、インフルエンザのHA(ヘマグルチニン)及びNA(ノイラミニダーゼ)、VSVの糖タンパク質G、エボラ又はマールブルグウイルスの糖タンパク質GP、レンチウイルスの糖タンパク質Gp120(又はそのCD4結合ドメイン)及びGp41、デングウイルスのエンベロープタンパク質(DENVE)及びプレメンブレン(premembrane)タンパク質(prM DENV)、ハンタンウイルスの2つのエンベロープ糖タンパク質、チクングニアウイルスの糖タンパク質E2、ニューカッスルウイルスの糖タンパク質HN及びF、ラウス肉腫ウイルスのgp85及びgp37並びにマレー渓谷脳炎ウイルスのタンパク質E及びprMからなる群から非網羅的に選択され得る。ウイルス糖タンパク質は、例えば細胞質ドメインを除去する等のトランケーション又は突然変異の導入による野生型タンパク質の誘導体であり得る。
【0045】
場合により、ウイルス糖タンパク質を目的の抗原又は標的化部分に融合又は共有結合することができる。
【0046】
或いは、リポタンパク質エンベロープ又はVLPが、VLP免疫原性を増強するために、目的の他のタンパク質、例えば抗原、標的化部分又は免疫刺激接着分子及びサイトカイン、例えば膜結合CD40リガンド(CD40L)、膜アンカー型顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を更に含んでもよい。これはまた、特にインフルエンザと組み合わせた、フラゲリン、特に膜アンカー型フラゲリンを更に含むことができる。
【0047】
ウイルス糖タンパク質及びカプシドタンパク質に加えて、VLPに更に含めることができる抗原の非網羅的リスト。より具体的には、VLPはまた、腫瘍関連抗原由来の抗原、例えばHer2/neu、CEA(癌胎児性抗原)、HER2/neu、MAGE2及びMAGE3(黒色腫関連抗原)、RAS、メソテリン又はp53、HIV由来の抗原、例えばVpr、Vpx、Vpu、Vif及びEnv、細菌由来の抗原、例えばC.アルビカンス(C.albicans)SAP2(分泌アスパルチルプロテイナーゼ2)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、寄生虫由来の抗原、例えばP.ファルシフォルム(P.falciform)タンパク質、例えばCSP(スポロゾイト周囲タンパク質(circumsporozoite protein))、AMA-1(頂端膜抗原-1)、TRAP/SSP2(スポロゾイト表面タンパク質2)、LSA(肝臓期抗原)、Pf Exp1(Pf輸送タンパク質1)、SALSA(Pf抗原2スポロゾイト及び肝臓期抗原)、STARP(スポロゾイトスレオニン及びアスパラギン-リッチタンパク質)又はWO2011/138251に開示される任意のタンパク質も含むことができる。
【0048】
エンベロープVLPは、(a)同じウイルスの異なるウイルス株及び/又は(b)同じウイルスの異なる血清型及び/又は(c)異なる宿主に特異的な異なるウイルス株のいずれかから選択されるいくつかの、特に2つ以上の異なるエピトープ/抗原を含み得る。本発明の異なるウイルス株は、例えば、インフルエンザウイルスの異なる株、例えばインフルエンザウイルスA株H1N1、H5N1、H9N1、H1N2、H2N2、H3N2若しくはH9N2、或いはインフルエンザウイルスB又はインフルエンザウイルスCである。異なる血清型は、例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)の異なる血清型、例えば血清型6、11、16、18、31、33、35、39、45、48、52、58、62、66、68、70、73及び82であるが、癌原遺伝子型HPV5、8、14、17、20及び47、又はパピローマ関連型HPV6、11、13、26、28、32及び60でもある。
【0049】
例えば、WO14068001は、CMV表面タンパク質を有するVLPを開示している。表面タンパク質は、gpUL75(gH)、gpUL115(gL)、gpUL55(gB)、gpUL74(gO)、gpUL100(gM)、gpUL73(gN)、gpUL128、gpUL130及びgpUL131Aからなる群の中から選択され得るだろう。VLPは、pUL83及びpUL32等のCMVテグメントタンパク質を更に含んでもよい。CMVタンパク質は、Towne、Toledo、AD169、Merlin、TB20及びVR1814株の群から選択される異なる株由来であり得る。
【0050】
別の例では、VLPがHPVのL1タンパク質又はその抗原性断片を含む。特に、VLPは、少なくともHPV16及びHPV18、場合によりHPV6及びHPV11由来のL1タンパク質を含む。
【0051】
インフルエンザワクチンの文脈では、VLPがHA及びNA表面タンパク質を含む。これらは更に又は或いは、M1及び/又はM2タンパク質、特にM2の外部ドメインを含み得る。
【0052】
本明細書で開示されるウイルス様粒子は、好ましくはカプシドを更に含む。好ましくは、カプシドがレトロウイルス科由来である。レトロウイルス科にはレンチウイルス及びレトロウイルス、例えばアルファレトロウイルス、ベータレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、デルタレトロウイルス、イプシロンレトロウイルスが含まれる。例えば、カプシドは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(HIV-1及びHIV-2を含む)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ピューマレンチウイルス、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV、例えばHTLV-1、-2、-3又は-4)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、トリ肉腫・白血病ウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)由来である。より好ましくは、レトロウイルスカプシドがHIV又はMLV(マウス白血病ウイルス)由来である。
【0053】
前記ウイルス様粒子にパッケージングされる環状ジヌクレオチドは、小胞体保留受容体STING(インターフェロン遺伝子の刺激因子)に直接結合し、I型インターフェロン及び核因子κB(NFκB)依存性炎症性サイトカインの発現も誘導するシグナル伝達経路を活性化することができる遍在性低分子二次メッセンジャーである。これには、環状ジアデノシン一リン酸(c-ジ-AMP)、環状ジグアノシン一リン酸(c-ジ-GMP)、より具体的にはc[G(2',5')pG(3',5')p]及びc[G(3',5')pG(3',5')p]並びに環状グアノシン一リン酸-アデノシン一リン酸(cGAMP)、より具体的にはc[G(2',5')pA(3',5')p]及びc[G(3',5')pA(3',5')p]が含まれる。好ましい実施形態では、VLPが少なくとも0.015ng/mlのcGAMPを含有する。
【0054】
環状ジヌクレオチドを含有するウイルス様粒子を調製する方法。
本発明者等は、驚くべきことに、対応する環状ジヌクレオチドシンターゼ、例えばcGAS、ジグアニル酸シクラーゼ又はジアデニル酸シクラーゼをVLPの成分と共に細胞内で同時発現させると、環状ジヌクレオチド、特にcGAMPを含有するVLPを調製することができることを認めた。しかしながら、本発明者等は、VLPがエンベロープVLPである必要があると定義した。そのため、本発明は、環状ジヌクレオチド、特にc-ジ-GMP、c-ジ-AMP又はcGAMPを含有するエンベロープウイルス様粒子を調製する方法であって、環状ジヌクレオチドシンターゼ、例えばcGAS、ジグアニル酸シクラーゼ又はジアデニル酸シクラーゼとエンベロープウイルス様粒子のタンパク質の細胞内での同時発現を含む方法に関する。
【0055】
環状ジヌクレオチドシンターゼはジヌクレオチドシンターゼとも呼ばれ、ヌクレオチジルトランスフェラーゼスーパーファミリーに属する。これは、EC 2.7.7.86に属する環状GMP-AMPシンターゼ、EC 2.7.7.85に属するジアデニル酸シクラーゼ及びEC 2.7.7.65に属するジグアニル酸シクラーゼを含む。
【0056】
cGASは環状GMP-AMPシンターゼである。このファミリーのいくつかのメンバーが、特にマウスcGAS及びヒトcGASにおいて近年同定されており、特徴付けられている(Wu等、2012、Science、339、826~830ページ;Sun等、2012、Science、339、786~791ページ)。ヒトcGASはUniprotKB識別番号Q8N884で参照される。参照配列は、アミノ酸配列についてはNP_612450.2として、mRNA配列についてはNM_138441.2としてNCBI RefSeqに開示されている。
MQPWHGKAMQRASEAGATAPKASARNARGAPMDPTESPAAPEAALPKAGKFGPARKSGSR
QKKSAPDTQERPPVRATGARAKKAPQRAQDTQPSDATSAPGAEGLEPPAAREPALSRAGS
CRQRGARCSTKPRPPPGPWDVPSPGLPVSAPILVRRDAAPGASKLRAVLEKLKLSRDDIS
TAAGMVKGVVDHLLLRLKCDSAFRGVGLLNTGSYYEHVKISAPNEFDVMFKLEVPRIQLE
EYSNTRAYYFVKFKRNPKENPLSQFLEGEILSASKMLSKFRKIIKEEINDIKDTDVIMKR
KRGGSPAVTLLISEKISVDITLALESKSSWPASTQEGLRIQNWLSAKVRKQLRLKPFYLV
PKHAKEGNGFQEETWRLSFSHIEKEILNNHGKSKTCCENKEEKCCRKDCLKLMKYLLEQL
KERFKDKKHLDKFSSYHVKTAFFHVCTQNPQDSQWDRKDLGLCFDNCVTYFLQCLRTEKL
ENYFIPEFNLFSSNLIDKRSKEFLTKQIEYERNNEFPVFDEF(配列番号1)
【0057】
マウスcGASはUniprotKB識別番号Q8C6L5で参照される。参照配列は、アミノ酸配列についてはNP_775562.2として、mRNA配列についてはNM_173386.4としてNCBI RefSeqに開示されている。
MEDPRRRTTAPRAKKPSAKRAPTQPSRTRAHAESCGPQRGARSRRAERDGDTTEKPRAPG
PRVHPARATELTKDAQPSAMDAAGATARPAVRVPQQQAILDPELPAVREPQPPADPEARK
VVRGPSHRRGARSTGQPRAPRGSRKEPDKLKKVLDKLRLKRKDISEAAETVNKVVERLLR
RMQKRESEFKGVEQLNTGSYYEHVKISAPNEFDVMFKLEVPRIELQEYYETGAFYLVKFK
RIPRGNPLSHFLEGEVLSATKMLSKFRKIIKEEVKEIKDIDVSVEKEKPGSPAVTLLIRN
PEEISVDIILALESKGSWPISTKEGLPIQGWLGTKVRTNLRREPFYLVPKNAKDGNSFQG
ETWRLSFSHTEKYILNNHGIEKTCCESSGAKCCRKECLKLMKYLLEQLKKEFQELDAFCS
YHVKTAIFHMWTQDPQDSQWDPRNLSSCFDKLLAFFLECLRTEKLDHYFIPKFNLFSQEL
IDRKSKEFLSKKIEYERNNGFPIFDKL(配列番号2)
【0058】
cGASはウシ、ブタ及びコレラ菌(Vibrio cholera)血清型O1(それぞれ、UniprotKB識別番号E1BGN7、I3LM39及びQ9KVG7参照)においてもよく特徴付けられており、ショウジョウバエ属(Drosophila)(例えば、キイロショウジョウバエ(D. melanogaster))、ゼブラフィッシュ(ゼブラフィッシュ(D. rerio))、グリーンアノール(A. carolinensis)、ジャイアントパンダ(A. melanoleuca)、セイヨウミツバチ(A. mellifera)、ナメクジウオ(B. floridae)、イヌ(C. lupus familiaris)、ウマ(E. caballus)、ネコ(F. catus)、セキショクヤケイ(G. gallus)、ゴリラ(G. gorilla gorilla)、チクビヒドラ(H magnipapillata)、クロアシマダニ(I. scapularis)、M.ブレビコリス(M. brevicollis)、セイヨウリンゴ(M. domestica)、シチメンチョウ(M. gallopavo)、アカゲザル(M. mulatta)、N.ベクテンシス(N. vectensis)、キョウソヤドリコバチ(N. vitrioennis)、カモノハシ(O. anatinus)、ヒツジ(O. aries)、アナウサギ(O. cuniculus)、ミナミメダカ(O. latipes)、スマトラオランウータン(P. abelii)、アヌビスヒヒ(P. anubis)、ボノボ(P. paniscus)、チンパンジー(P. troglodytes)、ドブネズミ(R. norvegicus)、タスマニアデビル(S. harrisii)、コクヌストモドキ(T. castaneum)、キンカチョウ(T. guttata)及びネッタイツメガエル(X. tropicalis)又はアフリカツメガエル(X. laevis)でも見出され得る(その開示が参照により組み込まれるWu等、2014、Nucleic Acids Research、42、8243~8257ページ)。好ましい実施形態では、ヒト又はマウスcGASをコードする核酸配列が使用される。
【0059】
環状ジヌクレオチドcGAMPはcGAMP(2'-3'-環状GMP-AMP)又はcGAMP(3'-3'-環状GMP-AMP)であり得る。第1の実施形態では、cGAMPがcGAMP(2'-3'-環状GMP-AMP)[環状[G(2',5')pA(3',5')p]とも呼ばれる;CAS番号:1441190-66-4)である。第2の実施形態では、cGAMPがcGAMP(3'-3'-環状GMP-AMP)[環状A-P(3'-5')G-P(3'-5')とも呼ばれる;CAS番号:849214-04-6]である。
【0060】
好ましい実施形態では、cGAMP(2'-3'-環状GMP-AMP)を調製するために、ヒト又はマウスcGASが使用される。別の好ましい実施形態では、cGAMP(3'-3'-環状GMP-AMP)を調製するために、コレラ菌血清型O1由来のcGASが使用される。
【0061】
ジアデニル酸シクラーゼは環状ジ-AMPシンターゼである。これはDisA(DNA完全性スキャンニングタンパク質)又はCdaAとも呼ばれ得る。このファミリーの多数のメンバーが同定されている(その開示が参照により組み込まれるCorrigan及びGrundling、2013、Nature、11、513~524ページ参照)。例えば、ジアデニル酸シクラーゼは、枯草菌(Bacillus subtilis)(UniProt番号P37573)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)(UniProt番号Q8Y5E4)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)(UniProt番号D5TK88)及びサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(UniProt番号Q9WY43)の酵素の中から選択され得る。
【0062】
ジグアニル酸シクラーゼは環状ジ-GMPシンターゼである。このファミリーのいくつかのメンバーが同定されている(その開示が参照により組み込まれるMassie等、2012、PNAS、109、12746~12751ページ参照)。例えば、ジグアニル酸シクラーゼは、サーモトガ・マリティマ(UniProt番号Q9X2A8)、デスルフォタレア・サイクロフィラ(Desulfotalea psychrophile)(UniProt番号Q6ARU5)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)(UniProt番号Q2GKF8)、大腸菌(E. coli)(UniProt番号P0AA89)、コレラ菌(UniProt番号Q9KPJ7)、カウロバクター・ビブリオイデス(Caulobacter vibrioides)(UniProt番号Q9A5I5)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)(UniProt番号Q3K751又はQ3KFC4)、マリノバクター・ハイドロカーボノクラスティカス(Marinobacter hydrocarbonoclasticus)(UniProt番号A1U3W3)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(Q9I4M8)の酵素の中から選択され得る。
【0063】
環状ジヌクレオチドシンターゼがその変異体に包含されることによっても、環状ジヌクレオチド合成のための活性が維持される。特に、これは、特に酵素の精製又は固定化に有用なタグ部分を有する環状ジヌクレオチドシンターゼを含む。このようなタグは当業者に周知であり、例えばHisタグ(His6)、FLAGタグ、HAタグ(インフルエンザタンパク質ヘマグルチニンに由来するエピトープ)、マルトース結合タンパク質(MPB)、MYCタグ(ヒト癌原タンパク質MYC由来のエピトープ)又はGSTタグ(小グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)がある。これはまた、突然変異、特に環状ジヌクレオチド合成のための活性を改善する突然変異を有する変異体も含む。このような変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10アミノ酸置換、欠失及び/又は付加によって異なり得る。好ましくは、変異体は、野生型環状ジヌクレオチドシンターゼと少なくとも75、80、85、90、95又は99%の同一性を有する。変異体は当技術分野で周知の種々の技術によって得ることができる。特に、野生型タンパク質をコードするDNA配列を変化させる技術の例としては、それだけに限らないが、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発及び合成オリゴヌクレオチド構築が挙げられる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」又は「同一性」という用語は、2つのポリペプチド配列のアラインメントからの位置における一致(同一アミノ酸残基)の数(%)を指す。配列同一性は、配列ギャップを最小化しながら重複及び同一性を最大化するよう整列させた場合の配列を比較することによって決定される。特に、配列同一性は、2つの配列の長さに応じて、いくつかの数学的な大域的又は局所的アラインメントアルゴリズムのいずれかを用いて決定することができる。同様の長さの配列は、好ましくは最適には全長にわたって配列を整列させる大域的アラインメントアルゴリズムを用いて整列され(例えば、Needleman及びWunschアルゴリズム;Needleman及びWunsch、1970、J. Mol. Biol 48:443ページ)、実質的に異なる長さの配列は、好ましくは、局所的アラインメントアルゴリズムを用いて整列される(例えば、Smith及びWatermanアルゴリズム(Smith及びWaterman、1981、Adv. Appl. Math. 2:482ページ)又はAltschulアルゴリズム(Altschul等、1997、Nucleic Acids Res. 25:3389~3402ページ;Altschul等、2005、FEBS J. 272:5101~5109ページ))。アミノ酸配列同一性%を決定する目的のアラインメントは、例えばhttp://blast.ncbi.nlm.nih.gov/又はhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/等のインターネットウェブサイト上で入手可能な公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いて、当技術分野の技能の範囲内にある種々の方法で達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するのに必要なあらゆるアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値とは、Needleman-Wunschアルゴリズム(ここでは、全ての検索パラメータをデフォルト値、すなわち、スコアリングマトリックス=BLOSUM62、ギャップオープン=10、ギャップ伸長=0.5、エンドギャップペナルティ=偽、エンドギャップオープン=10及びエンドギャップ伸長=0.5に設定する)を用いて、2つの配列の最適な大域的アラインメントを作り出すペアワイズ配列アラインメントプログラムEMBOSS Needleを用いて生成される値を指す。
【0065】
環状ジヌクレオチドシンターゼコード配列は、細胞内での発現に必要な全ての要素、特に宿主細胞内での転写及び翻訳に必要な要素を含む核酸構築物中にある。好ましくは、環状ジヌクレオチドシンターゼコード配列が、細胞内で過剰発現される。そのため、環状ジヌクレオチドシンターゼコード配列のコード配列は、プロモーターPGK、CMV、ユビキチン、MHC-II、ベータ2-ミクログロブリン、CAG、SV40、SFFV LTR、EF1a、レトロウイルスLTR等の強力なプロモーターの制御下にある。
【0066】
同様に、エンベロープウイルス様粒子のタンパク質、特にエンベロープの糖タンパク質及びカプシドタンパク質をコードする配列は、細胞内での発現に必要な全ての要素、特に宿主細胞内での転写及び翻訳に必要な要素を含む核酸構築物中に含まれる。
【0067】
細胞内の環状ジヌクレオチドシンターゼのコード配列はエピソーム性である、例えば発現ベクター中にあることができる、又は細胞の染色体に組み込むことができる。場合により、環状ジヌクレオチドシンターゼのコード配列は、エンベロープウイルス様粒子のタンパク質のコード配列を含むベクターとは異なる発現ベクター中にあり得る。或いは、環状ジヌクレオチドシンターゼのコード配列及びエンベロープウイルス様粒子のタンパク質のコード配列は同じ発現ベクターに含まれる。
【0068】
したがって、環状ジヌクレオチドシンターゼ及びエンベロープウイルス様粒子のタンパク質のコード配列が同じ発現ベクターにも構築物にも含まれない場合、本発明は、環状ジヌクレオチドシンターゼをコードする配列を含む少なくとも1つの核酸構築物又は発現ベクターと、エンベロープウイルス様粒子の少なくとも1つのタンパク質、特にエンベロープ糖タンパク質及び/若しくはカプシドをコードする配列を含む1つの核酸構築物又は発現ベクターとを含む核酸構築物又は発現ベクターの組合せ或いはキットに関する。
【0069】
本発明は、環状ジヌクレオチドシンターゼをコードする配列及びウイルス膜融合性糖タンパク質をコードする配列並びに/又はカプシド、特にレトロウイルス科由来のカプシドをコードする配列を含む核酸構築物又は発現ベクターに関する。好ましくは、核酸構築物又は発現ベクターが、カプシド、特にレトロウイルス科由来のカプシドをコードする配列と、ウイルス膜融合性糖タンパク質をコードする配列とを含む。膜融合性糖タンパク質、環状ジヌクレオチドシンターゼ及びカプシドは上記のいずれか1つであり得る。好ましい実施形態では、核酸構築物又は発現ベクターが、特に強力なプロモーターの制御下で、cGASをコードする配列を含む。場合により、核酸構築物又は発現ベクターが、目的の抗原若しくはタンパク質をコードする配列又は目的の核酸(siRNA、miRNA、アンチセンス等)を更に含み得る。
【0070】
本発明に使用することができる発現ベクターには、非網羅的に、真核生物発現ベクター、特に哺乳動物発現ベクター、ウイルス系発現ベクター、バキュロウイルス発現ベクター、植物発現ベクター及びプラスミド発現ベクターが含まれる。適切な発現ベクターは、ウイルス(バキュロウイルス、パポーバウイルス、例えばSV4、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、偽性狂犬病ウイルス及びレトロウイルス、特にレンチウイルス、又はこれらの組合せ等)に由来し得る。
【0071】
任意の真核細胞を方法に使用することができる。例えば、産生に使用される細胞は、哺乳動物細胞、例えばCOS-1細胞、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)(米国特許第4,889,803号; 米国特許第5,047,335号)、HEK(ヒト胎児腎臓)細胞株(例えば、293及び293T細胞株)、及びHL-116細胞株、Vero細胞株、BHK(ベビーハムスター腎臓)細胞株;植物細胞(例えば、ベンサミアナタバコ(N. bethamiana);昆虫細胞(例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf)由来細胞、例えばSf-9細胞)、SF21、Hi-5、Express Sf+、及び特にバキュロウイルス-昆虫細胞発現系を有するS2 Schneider細胞;鳥類細胞であり得る。
【0072】
本発明は、上記の核酸構築物又は発現ベクターを含む組換え宿主細胞に関する。
【0073】
本発明は、上記の前記ウイルス様粒子にパッケージングされた環状ジヌクレオチドを含むウイルス様粒子を産生する方法であって、
真核宿主細胞中での環状ジヌクレオチド及びウイルス膜融合性糖タンパク質の合成及び活性を可能にする条件下で、前記細胞内で環状ジヌクレオチドシンターゼ及びウイルス膜融合性糖タンパク質を同時発現させる工程と;
前記細胞によって産生されたウイルス様粒子を回収する工程と
を含む方法に関する。
【0074】
好ましくは、宿主細胞が更にレトロウイルス科由来のカプシドを同時発現する。膜融合性糖タンパク質、環状ジヌクレオチドシンターゼ及びカプシドは、上記のタンパク質のいずれか1つであり得る。
【0075】
特定の実施形態では、本方法が、ウイルス膜融合性糖タンパク質をコードする核酸構築物又は発現ベクターを宿主細胞に導入する予備的工程を更に含み得る。本方法はまた、環状ジヌクレオチドシンターゼをコードする核酸構築物又は発現ベクター並びに/或いはカプシドタンパク質をコードする核酸構築物又は発現ベクターを宿主細胞に導入する工程を含み得る。好ましい実施形態では、本方法が、トランスフェクションによって二本鎖DNAを、特にトランスフェクションによって核酸構築物又は発現ベクターを宿主細胞に導入する工程を含む。
【0076】
好ましい実施形態では、環状ジヌクレオチドシンターゼがcGAS、特にヒト又はマウスcGAS、より好ましくはマウスcGASである。別の実施形態では、環状ジヌクレオチドシンターゼがコレラ菌血清型O1由来のcGASである。
【0077】
VLPを産生する方法は、特にバキュロウイルス発現系(その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Liu等、2013、Protein Exper Purif、90、104~116ページ;Sokolenko等、2012、Biotechnol Adv、30、766~81ページ;Vicente等、2011、J Invertebr Parhol、107 補遺、S42~48ページ);植物(その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Scotti及びRybicki、2013、Expert Rev Vaccines、12、211~24ページ;Chen及びLai、2013、Hum Vaccine Immunother.、9、26~49ページ)、鳥類発現系において、当業者によって周知である(その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Zeltins、2013、Mol Biotechnol、53、92~107ページ)。実際、いくつかのVLP系ワクチンが既に市販されている。概説については、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Kushnir等(2012、Vaccine、31、58~83ページ)並びにGrgacic及びAnderson(2006、Methods、40、60~65ページ)を参照されたい。
【0078】
産生されたVLPは、遠心分離、クロマトグラフィー等の任意の公知の技術によって回収及び/又は精製することができる。
【0079】
本発明は、薬物又はワクチンアジュバントとしての上記のウイルス様粒子に関する。本発明は、特にがんに対する薬物又はワクチンを製造するための上記のウイルス様粒子の使用に関する。そのため、本発明は、本明細書に開示されるウイルス様粒子と、薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む医薬、ワクチン又は獣医用組成物に関する。組成物はアジュバントを更に含んでもよい。組成物は、1種又は複数の追加の治療活性物質を含んでもよいし、これと組み合わせて投与されてもよい。
【0080】
本発明は、薬物又はワクチンアジュバントとしての本明細書に開示される発現ベクター又はその組合せに関する。実際、発現ベクターを対象に投与することができ、レシピエント細胞内で発現されると、細胞がインビボで上記のウイルス様粒子を産生する。したがって、本発明は、発現ベクター又はその組わせと、薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む医薬、ワクチン又は獣医用組成物に関する。本発明は、特にがんに対する薬物若しくはワクチンを製造するための上記の発現ベクター又はその組合せの使用に関する。発現ベクター又はその組合せは、本明細書に開示されるVLPを産生するのに必要なタンパク質のコード配列を含む。
【0081】
同様に、上記の宿主細胞をワクチンアジュバント又はワクチンとして使用することもできる。実際、このような宿主細胞を対象に投与すると、これらはインビボで上記のウイルス様粒子を産生する。本文脈では、宿主細胞は、投与前に遺伝子操作された受容対象由来の細胞であり得る、又は対象と適合性の宿主細胞である。したがって、本発明は、宿主細胞と、薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む医薬、ワクチン又は獣医用組成物に関する。本発明は、特にがんに対する薬物又はワクチンを製造するための、上記の宿主細胞の使用に関する。宿主細胞は本明細書に開示されるVLPを産生することができる。
【0082】
本発明の医薬組成物は、本明細書で使用される場合、所望の特定の剤形に適した、溶媒、分散媒、希釈剤又は他の液体ビヒクル、分散又は懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、固体バインダー、滑沢剤等であっても、これらを含んでもよい、薬学的に許容される賦形剤を更に含んでもよい。Remington's The Science and Practice of Pharmacy、第21版、A. R. Gennaro、(Lippincott、Williams and Wilkins社、Baltimore、MD、2006)は、医薬組成物を製剤化するのに使用される種々の賦形剤及びそれを調製するための公知の技術を開示している。例えば、任意の望ましくない生物学的効果をもたらす又はそうでなければ、有害な様式で医薬組成物の任意の他の成分と相互作用することにより、任意の従来の賦形剤媒体が物質又はその誘導体と不適合性である場合を除いて、その使用が本発明の範囲内にあることが企図される。薬学的に許容される賦形剤は、保存剤、不活性希釈剤、分散剤、表面活性剤及び/又は乳化剤、緩衝剤等であり得る。適切な賦形剤には、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、スクロース、トレハロース、グリセロール、エタノール等及びこれらの組合せが含まれる。更に、所望であれば、ワクチンが、ワクチンの有効性を増強する湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤又はアジュバント等の補助物質を含有してもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物が1種又は複数の保存剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物が保存剤を含まない。
【0083】
本明細書で開示される医薬組成物はアジュバントを含み得る。任意のアジュバントを本発明により使用することができる。多数のアジュバントが公知であり、多くのこのような化合物の有用な概要が米国国立衛生研究所によって準備されており、見出すことができる(www.niaid.nih.gov/daids/vaccine/pdf/compendium.pdf)。Allison(参照により本明細書に組み込まれる、1998、Dev. Biol. Stand.、92:3~11ページ)、Unkeless等(参照により本明細書に組み込まれる、1998、Annu. Rev. Immunol.、6:251~281ページ)及びPhillips等(参照により本明細書に組み込まれる、1992、Vaccine、10:151~158ページ)も参照されたい。数百の異なるアジュバントが当技術分野で公知であり、本発明の実施に用いられ得る。本発明により利用することができる例示的なアジュバントには、それだけに限らないが、サイトカイン、ゲル型アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム等);微生物アジュバント(例えば、CpGモチーフを含む免疫調節性DNA配列;モノホスホリル脂質A等のエンドトキシン;コレラ毒素等のエンドトキシン、大腸菌易熱性毒素及び百日咳毒素;ムラミルジペプチド等);油-エマルジョン及び乳化剤系アジュバント(例えば、フロイントアジュバント、MF59[Novartis社]、SAF等);粒子状アジュバント(例えば、リポソーム、生分解性ミクロスフェア、サポニン等);合成アジュバント(例えば、非イオン性ブロックコポリマー、ムラミルペプチド類似体、ポリホスファゼン、合成ポリヌクレオチド等);及び/又はこれらの組合せが含まれる。他の例示的なアジュバントには、いくつかのポリマー(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,500,161号に記載されるポリホスファゼン)、Q57、GS21、スクアレン、テトラクロロデカオキシド等が含まれる。薬学的に許容される賦形剤は、前に「医薬組成物」と題された上記セクションに更に詳細に記載されている。
【0084】
医薬組成物は、場合により1種又は複数の追加の治療活性物質、特に例えば上に開示される抗原を含み得る及び/又はこれと組み合わせて投与され得る。
【0085】
本明細書に開示される医薬組成物は、免疫応答を誘導又は増強するのに有用である。本発明は、それを必要とする対象の免疫応答を誘導又は増強する方法であって、治療上有効量の本明細書に開示される医薬組成物を投与する工程を含む方法に関する。
【0086】
免疫応答は、細胞性免疫、液性免疫を指し得る、又は両方を含み得る。免疫応答はまた、免疫系の一部に限定され得る。例えば、ある特定の実施形態では、免疫原性組成物が増加したIFNγ応答を誘導し得る。ある特定の実施形態では、免疫原性組成物が粘膜IgA応答(例えば、鼻及び/又は直腸洗液で測定される)を誘導し得る。ある特定の実施形態では、免疫原性組成物が、全身性IgG応答(例えば、血清で測定される)を誘導し得る。ある特定の実施形態では、免疫原性組成物が、ウイルス中和抗体又は中和抗体応答を誘導し得る。ある特定の実施形態では、免疫原性組成物がCTL応答を誘導し得る。
【0087】
したがって、医薬又は獣医用組成物はワクチン又はワクチンアジュバントとして有用である。これらはまた、がんの治療にも有用である。本発明は、それを必要とする対象のがんを治療する方法であって、治療有効量の本明細書に開示される医薬組成物を投与する工程を含む方法に関する。
【0088】
がんは、卵巣がん、子宮頸がん、乳がん、前立腺がん、悪性黒色腫、腎がん、膀胱がん、結腸直腸又は結腸がん、リンパ腫、膵がん、肺がん、神経膠芽腫、神経膠腫、甲状腺がん、頭頚部がん、肝臓がん、骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、胃がん及び肉腫を含む非網羅的なリストで選択され得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、「ワクチン接種」という用語は、例えば、疾患原因物質(例えば、ウイルス)に対する免疫応答を発生させることを意図した組成物の投与を指す。本発明の目的のために、ワクチン接種を疾患原因物質への曝露前、中及び/又は後に、ある特定の実施形態では、物質への曝露前、中及び/又は直後に投与することができる。いくつかの実施形態では、ワクチン接種が、ワクチン接種組成物の、適切に時間間隔をあけた複数回投与を含む。
【0090】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、任意の医学的治療に対して適用可能な合理的なベネフィット/リスク比で、治療される対象に対する治療効果を与えるのに十分な量を指す。治療効果は客観的(すなわち、ある試験又はマーカーによって測定可能)であっても、又は主観的(すなわち、対象が効果の指標を与える又は効果を感じる)であってもよい。特に、「治療有効量」とは、例えば疾患に関連する症状を改善する、疾患の発症を予防若しくは遅延する、及び/又は疾患の症状の重症度若しくは頻度を減らすことによって、望まれる疾患若しくは状態を治療する、改善する若しくは予防する、又は検出可能な治療若しくは予防効果を示すのに有効な治療用タンパク質又は組成物の量を指す。治療有効量は複数単位用量を含んでもよい投与レジメンで一般的に投与される。任意の特定の免疫原性組成物について、治療有効量(及び/又は有効な投与レジメン内の適切な単位用量)は、例えば、投与経路、他の医薬剤との組合せに応じて変化し得る。また、任意の特定の患者のための具体的な治療有効量(及び/又は単位用量)は、治療している障害及び障害の重症度;用いられる具体的な医薬剤の活性;用いられる具体的な組成物;患者の年齢、体重、健康全般、性別及び食事;投与時間、投与経路並びに/或いは用いられる具体的な免疫原性組成物の排泄又は代謝率;治療の持続時間;医学分野で周知の同様の因子を含む種々の因子に依存し得る。
【0091】
本明細書で使用される場合、「改善(amelioration)」又は「改善(improvement)」という用語は、対象の状態の予防、低減若しくは緩和、又は対象の状態の改善を意味する。改善は、疾患、障害又は状態の完全な回復又は完全な予防を含むが、これを要しない。「予防」という用語は、疾患、障害又は状態の発症の遅延を指す。予防は、疾患、障害又は状態の発症が予め定義された期間遅延された場合、完全とみなされ得る。
【0092】
本明細書で使用される場合、「剤形」及び「単位剤形」という用語は、治療される患者のための物理的に別々の単位の治療剤を指す。各単位は、所望の治療効果をもたらすと計算された所定量の活性物質を含有する。しかしながら、組成物の合計投与量は、賢明な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるだろう。
【0093】
「投与レジメン」(又は「治療レジメン」)は、この用語が本明細書で使用される場合、典型的には一定期間によって分けられた、対象に個別に投与される単位用量(典型的には、2以上)のセットである。いくつかの実施形態では、所与の治療剤が、1又は複数用量を含み得る推奨される投与レジメンを有する。いくつかの実施形態では、投与レジメンが、その各々が同じ長さの期間によって互いに分けられた複数の用量を含み;いくつかの実施形態では、投与レジメンが複数の用量及び個々の用量を分ける少なくとも2つの異なる期間を含む。
【0094】
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」又は「患者」という用語は、ヒト又はヒト以外の哺乳動物対象を指す。治療されている個体(「患者」又は「対象」とも呼ばれる)は、がんを患っている個体(胎児、乳児、小児、青年又は成人)である。いくつかの実施形態では、対象がヒトである。いくつかの他の実施形態では、対象が動物、特にペット(例えば、ネコ及びイヌ)、家畜(例えば、ウシ、ブタ(pig)、ヒツジ、ウサギ、ブタ(swine)、魚、家禽)、ウマである。
【0095】
医薬、獣医用又はワクチン組成物は、任意の簡便な投与経路によって投与することができる、又は投与に適し得る。例えば。企図される経路は、皮下、筋肉内、粘膜(例えば、舌下、鼻腔内、直腸内、膣内又は気管支内)、静脈内又は腫瘍内経路である。好ましい投与経路は腫瘍内及び全身、例えば静脈内である。しかしながら、好ましい実施形態では、企図される経路が腫瘍内である。
【0096】
例えば、ここで提供される医薬組成物は、滅菌注射形態(例えば、皮下注射又は静脈内注入に適した形態)で提供され得る。例えば、いくつかの実施形態では、医薬組成物が、注射に適した液体剤形で提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物が、場合により真空下で、注射前に水性希釈剤(例えば、水、緩衝液、塩溶液等)で再構成される粉末剤(例えば、凍結乾燥及び/又は滅菌)として提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物が、水、塩化ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、ベンジルアルコール溶液、リン酸緩衝生理食塩水等に希釈及び/又は再構成される。いくつかの実施形態では、粉末剤が水性希釈液と穏やかに混合されるべきである(例えば、振盪されない)。
【0097】
医薬組成物は、冷蔵及び/又は凍結することができる形態で提供され得る。或いは、これらは、冷蔵及び/又は凍結することができない形態で提供され得る。場合により、再構成溶液及び/又は液体剤形は、再構成後一定期間(例えば、2時間、12時間、24時間、2日間、5日間、7日間、10日間、2週間、1か月間、2か月間又はそれ以上)保管され得る。
【0098】
本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学の分野で公知の又は今後開発される任意の方法によって調製され得る。このような調製方法は、有効成分を1種若しくは複数の賦形剤及び/又は1種若しくは複数の他の副成分と会合させ、次いで、必要であれば及び/又は所望であれば、生成物を所望の単一又は複数用量単位に成形及び/若しくはパッケージングする工程を含む。
【0099】
本発明による医薬組成物は、大量に、単一単位用量として及び/若しくは複数の単一単位用量として、調製、パッケージング並びに/又は販売され得る。
【0100】
本発明による医薬組成物中の有効成分、薬学的に許容される賦形剤及び/又は任意の追加の成分の相対量は、治療される対象の素性、大きさ及び/又は状態に応じて、並びに/或いは組成物が投与される経路に応じて、変化し得る。例として、組成物は、0.1%~100%(w/w)の間の有効成分を含み得る。
【0101】
本明細書に記載される組成物は、一般的に、免疫応答を誘導するのに必要又は十分な量及び時間で投与される。投与レジメンは、単一用量又は一定期間にわたる複数用量からなり得る。投与される免疫原性組成物(例えば、VLP)の正確な量は、対象によって異なり、いくつかの因子に依存し得る。よって、一般に、使用される正確な用量は、処方する医師によって決定される通りであり、対象の体重及び投与経路だけでなく、対象の年齢及び症状の重症度並びに/又は感染のリスクにも依存する。第1の態様では、特定の量の医薬組成物が単一用量として投与される。或いは、特定の量の医薬組成物が、2以上の用量として投与される(例えば、1~12か月分けられた1~3用量)。その代わりに、特定の量の医薬組成物は、数回(例えば、1~12か月分けられた1~3用量)、単一用量として投与される。医薬組成物は、初期用量で及び少なくとも1回のブースター用量で投与され得る。
【0102】
本明細書に開示される方法は、獣医用途、例えばイヌ及びネコ用途に使用され得る。所望であれば、本明細書の方法は家畜、例えばヒツジ、鳥類、ウシ、ブタ及びウマ品種でも使用され得る。
【実施例
【0103】
(実施例1)
本発明者等は、cGAMPを、cGAS発現細胞内で産生する場合、レンチウイルス粒子に組み込むことができることを示した。cGAMPを感染細胞に移し、STING依存性I型インターフェロン(IFN)誘導を誘因する。
【0104】
この効果は、逆転写及び組込みとは独立であり、抗ウイルス応答を加速し、IFNが誘導される細胞の範囲を広げ得る。
【0105】
結果
感染細胞でcGAS依存性IFN応答を誘因するウイルスの中には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含むレトロウイルスがある。HIVに対する応答は、逆転写で生成されたウイルスcDNAのcGASによる検出を含み、cDNA検出が行われた同じ細胞内のIFN遺伝子転写をもたらすと考えられる。しかしながら、レトロウイルス感染でのIFN誘導はまた、感染ウイルスがその中にcGAMP二次メッセンジャーを有するとしたら、逆転写又はcGASと独立に起こり得ると考えられる。本発明者等は、cGAMPが、後者によりcGAS発現と独立に、HIV-1粒子にパッケージングされ、新たな感染細胞でIFN応答を誘発することができ、自然抗ウイルス免疫の増強を可能にし得ると仮定した。
【0106】
この考えを試験するために、本発明者等は、293T細胞、cGASを発現しないヒト細胞株でHIV-1系レンチベクターを作製した。ウイルス粒子を水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-G)でシュードタイプ化し、ウイルスゲノムはenvオープンリーディングフレームに増強した緑色蛍光タンパク質(EGFP)を含有していた。今後HIV-1-GFPと呼ばれるこれらのウイルスは、機能的envが欠如しているため複製能力がない。ウイルス産生に必要とされる2つのプラスミド(pNL4-3-デルタE-EGFP及びpVSV-G)に加えて、いくつかの293T細胞を、野生型m-cGAS又は触媒不活性m-cGAS-G198A/S199A(m-cGAS-AA)(Sun等、2013、Science、339、786~791ページ)の発現構築物でコトランスフェクトした。次いで、滴定したウイルスストックを使用して、新たなHEK293細胞を感染させ(図1A)、これらは内因性STINGを発現し(図2A)、cGAMPに応答してIFNを誘導する(図2B)。cGAS発現細胞から回収したHIV-1-GFPはIFNβプロモーターレポーターの誘導を誘因した一方、外因性cGASの非存在下又は突然変異型cGASの存在下で産生されたウイルスはしなかった(図1B)。次に、本発明者等は、感染細胞由来の上清を、インターフェロン刺激応答要素によってホタルルシフェラーゼ発現が駆動されるレポーター細胞株(HEK293-ISRE-luc)に移すことによって、IFN分泌を分析した(図2C)。cGAS発現細胞で産生されたウイルスストックはIFN分泌を誘因した一方、対照ウイルスはしなかった(図1C)。これらのウイルスストックの感染性は同等であり(図1C)、野生型及び突然変異体cGASがウイルスプロデューサー細胞において同様のレベルで発現した(図2D)。更に、cGASがウイルスプロデューサー細胞に存在する場合、感染細胞がIFNβ、IFI44及びIFIT1 mRNAを特異的に誘導し、IFN及びインターフェロン刺激遺伝子(ISG)の誘導を更に実証した(図1D)。本発明者等は、次に、初代マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)を感染させた。IFN及びISGの誘導は、cGAS再構成293T細胞で産生されたHIV-1-GFPで感染させたBMDMで増加した(図1E図1F)。STING欠損BMDMは、同じウイルス調製物に応答してIFN及びISGを誘導しなかったが、センダイウイルス感染によって誘因されるRIG-I依存性IFN産生は正常であった(図1E図1F)。
【0107】
プラスミドDNA又は可溶性因子の伝達が新たに感染した細胞によるIFN産生の原因となる可能性を排除するために、本発明者等は、ウイルス調製物をDNアーゼ又は遠心分離によるペレット化ビリオンで処理した。いずれの処理もcGAS発現細胞で産生されるHIV-1-GFPがIFNを誘導する能力に影響を及ぼさなかった(図3A図3B)。更に、標的細胞におけるIFN応答は、それぞれネビラピン及びラルテグラビルによる薬理学的阻害によって示されるように、逆転写及び組込みと独立であった(図3C)。更に、ウイルスRNAゲノムを欠くウイルス様粒子は、cGAS発現プロデューサー細胞から回収すると、標的細胞でIFNを誘導し(図3D)、ウイルスゲノムもその逆転写産物もこの設定におけるIFN誘導の原因とならないことを実証した。VSV-Gのソゴトウイルス糖タンパク質による置換は、cGAS発現細胞由来のウイルスストックのIFN誘導特性を減らさず、これらの効果がVSV-Gシュードタイプ化に関連しないことを実証した(図3E)。HIV-1-GFPストックがエキソソーム及び他のエンベロープ小胞、例えばアポトーシス小体を含有することが可能である。ウイルス調製中に、cGAS再構成プロデューサー細胞を、エキソソーム阻害剤GW4869(Li等、2013、Nat Immunol、14、793~803ページ)又はカスパーゼ阻害剤Ac-DEVD-CHOで処理しても、HIV-1-GFPによるIFN誘導を減らさず(図3F)、IFN誘導活性がビリオン内に存在するという考えと一致した。
【0108】
次に、本発明者等は、ウイルス調製物から低分子抽出物を調製した。このプロトコールの過程で、タンパク質及び核酸を分解及び除去する。ウイルス抽出物を、ジギトニンで穏やかに透過処理したPMA分化THP1細胞に添加し、本発明者等はIFN分泌を分析した(図4A)。野生型cGAS再構成プロデューサー細胞から回収したHIV-1-GFP由来の抽出物は、用量依存的様式でTHP1細胞によるIFN分泌を誘導した(図4B)。cGAMPを切断するヘビ毒ホスホジエステラーゼIとの抽出物のプレインキュベーションはこの効果を抑止した(図4C)。cGAMPがレンチウイルス粒子中に存在するかどうかを更に試験するために、本発明者等は、ウイルスプロデューサー細胞にビオチン標識cGAMPをトランスフェクトした。ペレット化ウイルスストックをナイロン膜にスポットし、次いで、これをストレプトアビジンでプローブした。ビオチン-cGAMPはウイルス調製物中で実際に検出可能であった(図4D)。cGAMPのウイルス粒子への組込みが選択的過程であるか、又は拡散に基づくかどうかは、なお決定すべきである。HIV-1の脂質エンベロープは、感染細胞からの出芽で、ウイルス粒子中にcGAMPを包含するようである。この考えに一致して、cGAS再構成細胞で産生された非エンベロープアデノウイルスは、新たに感染した細胞でIFNを誘導しなかった(図2E図2F)。
【0109】
まとめると、これらのデータは、cGAMPはエンベロープレンチウイルスビリオンにパッケージングすることができ、新たに感染した細胞でSTINGを介してIFNを誘導することを示している。典型的にはcGAS欠損293T細胞で産生されるレンチウイルスベクターへのcGAMPの組込みが、遺伝子療法では望ましくないが、ワクチン接種では有利となり得るので、これらの結果は遺伝子療法及びワクチン接種にとって意義を有する。実際、cGAMPを含有するウイルスストックは、Vpx送達無しに、ヒト樹状細胞において、IFN及び同時刺激分子CD86の発現を誘導した(図5)。
【0110】
cGAS経路は、小さな拡散性分子cGAMPを用いることによって独特に特徴付けられ、これは先天性免疫応答の誘導にとって興味深い意義を有する。例えば、cGAMPはギャップジャンクションを通してウイルス感染細胞から隣接する未感染細胞に拡散することができ、ここで抗ウイルス状態がSTINGを介して誘導される。ここで、本発明者等は、cGAMPをHIV-1粒子に更にパッケージングすることができること、及び標的細胞の感染がcGAMPのサイトゾルへの送達及びその後のSTINGの誘因をもたらすことを示している。このトロイの木馬機構は、増殖的に感染した細胞がそれらの感染の存在の認識を他の細胞に伝達することを可能にする。これは、いくつかの細胞ではSAMHD1によって阻害され、cGAMP伝達を介したウイルス感知に必要ではない、逆転写としてのIFN応答を開始する細胞の範囲を広げるよう作用し得る。更に、ウイルス粒子におけるcGAMPの伝達はIFN応答を加速し得る。最後に、これは、他のエンベロープウイルスがそれらのビリオン内にcGAMPを有すると推測するよう誘っている。要するに、本発明者等は、先天性免疫のシグナルが細胞間で伝達される新規な機構を同定した。
【0111】
材料及び方法
プラスミド
FLAG-m-cGAS、FLAG-m-cGAS-G198A/S199A及びm-Sting-HA pcDNA構築物は他で(Sun等、2013、Science、339、786~791ページ;Burdette等、2011、Nature、478、515~518ページ)記載されている。pNL4-3-デルタE-EGFPはNIH AIDS試薬プログラム製であった。pCAAGS-THOV-GはG. Kochs社製であった。pGreenFire-ISREはSystem Biosciences社から購入した。pSIV4+、pVSV-G、p125-F-Luc及びpRL-TKは以前記載されている(Rehwinkel等、2013、EMBO J、32、2454~2462ページ;Rehwinkel等、2010、Cell、140、397~408ページ)。
【0112】
細胞
BMDMは、記載されるように(Rehwinkel等、2013、EMBO J、32、2454~2462ページ)、20%L929上清を用いて新鮮な骨髄から得た。ヒト樹状細胞は、5日間、40ng/mlのGM-CSF及び40ng/mlのIL-4(Peprotech社)を用いてCD14+単球から誘導した。樹状細胞の純度は、DC-SIGN染色によると95%超であった。CD14+単球は、MACS分離カラム及びCD14マイクロビーズ(Miltenyi社)を用いてPBMCから単離した。PBMCは、lymphoprep(Alere社、英国)を用いて、CD白血球コーン(NHS Blood & Transplant社、Bristol、英国)から収穫した。HEK293細胞及び293T細胞はDMEM培地で増殖させた。THP1細胞、BMDM及びヒト樹状細胞はRPMI 1640培地で増殖させた。全ての培地が10%FCS及び2mMグルタミンを含有していた。100単位/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシン及び50μMの2-メルカプトエタノールを、BMDM及びヒト樹状細胞に使用されるRPMI培地に更に添加した。
【0113】
抗体、ウエスタンブロット及びFACS
α-hSTING抗体はCell Signaling社(カタログ番号3337s;1:1000)製であり、二次HRP結合抗体(GE Healthcare Life Science社;カタログ番号NA934;1:5000)を用いるウエスタンブロットに使用した。α-FLAG及びα-アクチンHRPコンジュゲート抗体はSigma社製(カタログ番号A8592、1:5000及びA3854、1:10,000)であった。α-CD86 PE(クローンIT2.2)及びα-CD209(DC-SIGN)APC(クローンeB-h209)はeBioscience社製であった。1μg/mlのDAPI(Sigma Aldrich社)を使用して死細胞を排除した。FACSデータはBeckmann Coulter CyAn又はBD Biosciences LSRFortessa細胞分析装置で取得した。
【0114】
マウス
STING欠損(Mpys-/-)動物は以前記載されており(Jin等、2011、The Journal of Immunology、187、2595~2601ページ)、C57BL/6バックグラウンドにある。大腿骨及び脛骨は、2~3月齢の人道的に殺された動物、並びに月齢及び性別が一致するC57BL/6野生型対照動物から得た。この研究はUK Animals(Scientific Procedures)Act 1986及び動物飼育についての施設ガイドラインに従って行った。この研究は、UK Home Officeによって付与されたプロジェクトライセンスによって承認され(PPL番号40/3583)、オックスフォード大学の施設内動物倫理委員会審査委員会によっても承認された。
【0115】
IFNバイオアッセイ
HEK293細胞をpGreenFire-ISRE由来レンチウイルスで形質導入することによって、ヒトIFNレポーター細胞を生成した。単一クローンを限界希釈によって確立し、クローン3C11をIFNに対するその応答性に基づいて選択した。バイオアッセイのために、細胞を細胞培養上清で覆い、24時間後、製造業者の指示に従って、One-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega社)を用いてルシフェラーゼ発現を定量化した。バイオアッセイの検出限界は、図2Cに示されるように1.6U/ml hIFNα2(R&D systems社)である。
【0116】
RT Q-PCR
細胞からのRNA抽出、逆転写及び定量的PCRは記載されている(Rehwinkel等、2013、EMBO J、32、2454~2462ページ)。プライマー及び蛍光プローブ、ヒトについては18S rRNA、IFNβ、IFI-44及びIFIT1、マウスについてはGAPDH、IFIT1及びIFI-44を含有する以前開発されたTaqmanアッセイ試薬はApplied Biosystems社製であった。
【0117】
HIV-1-GFP作製
FuGene HD(Promega社、カタログ番号E2311)を用いて、2:1:2の比のpNL4-3-デルタE-EGFP、pVSV-G及びm-cGAS(又はm-cGAS-AA)でトランスフェクトした293T細胞で、VSV-Gシュードタイプ化HIV-1-GFPを作製した。VSV-Gの代わりにpCAAGS-THOV-Gを用いて、1:1:1のプラスミド比を用いて、THOV-Gシュードタイプ化ウイルスを作製した。翌日、培地を交換した。いくつかの実験では、この時点で、DEVD(60μM;A0835、Sigma社)及びGW4869(20μM;D1692、Sigma社)を添加した。更に48時間後、上清を濾過し(0.22μm)、必要であれば、20%スクロースクッション上での遠心分離(64,000g、2.5時間、4℃)によって濃縮した。ウイルス力価を、ウイルスストックの希釈系列による293T細胞の感染によって感染単位/mlとして決定し、引き続いてGFP発現のFACS分析を行った。
【0118】
FuGene HDを用いて2:1:1.6の比のpNL4-3-デルタE-EGFP、pVSV-G及びビオチン-cGAMP(Biolog社、カタログ番号157-001)でトランスフェクトした293T細胞で、HIV-1-GFP含有ビオチン-cGAMPを上記のように作製した。
【0119】
2:1:2の比のpSIV4+(Vpx欠損)、pVSV-G及びm-cGAS又はm-cGAS-AAで293T細胞をトランスフェクトすることによって、VLPを産生した。翌日、培地を交換した。更に48時間後、VLPを回収し、HIV-1-GFPのように処理した(上記参照)。
【0120】
HIV-1-GFP感染
105個のHEK293を24ウェルに播種した。24時間後、ウイルスストックをポリブレン(8μg/ml)の存在下で添加した。18時間後、培地を交換した。更に48~72時間後、上清及び細胞を、それぞれIFNバイオアッセイ及びFACS分析又はRT Q-PCR分析のために収穫した。
【0121】
IFNβプロモーターレポーターアッセイのために、細胞を、リポフェクタミン2000を用いて、125ngのp125-F-Luc及び25ngのpRL-TKで更にトランスフェクトした。これを感染の6~8時間前に行った。ルシフェラーゼ活性を感染の24時間後に分析し、F-Luc活性をR-Lucに対して標準化した。
【0122】
いくつかの実験で、細胞を感染の1時間前にネビラピン(5μM;カタログ番号4666;NIH AIDS試薬プログラム)又はラルテグラビル(5μm;カタログ番号11680;NIH AIDS試薬プログラム)で処理した。或いは、ウイルスストック又はcGASプラスミドを、感染前に37℃で1時間、DNアーゼI(40μg/ml;Roche社、11284932001)で前処理した。
【0123】
4~8×105個のBMDMを12ウェルに播種し、O/Nインキュベーション後、スピン感染(1100g;90分;室温)によってポリブレン(8μg/ml)の存在下で感染させた。次いで、接種物を除去し、新鮮な培地を添加した。上清及び細胞を24時間後に収穫した。(Rehwinkel等、2013、EMBO J、32、2454~2462ページ)に記載されるように、ELISAによってmIFNαを検出した。
【0124】
0.5×105個のヒト樹状細胞を24ウェルに播種し、ポリブレン(8μg/ml)の存在下で2時間感染させた。接種物を洗い流し、細胞を新鮮な培地と共に48時間インキュベートした。細胞をFACS分析のために収穫し、上清をIFNバイオアッセイで試験した。
【0125】
アデノウイルス
Fugene HDを用いてm-cGAS若しくはm-cGAS-AAをトランスフェクトしたHEK293細胞又は非トランスフェクト細胞中でアデノウイルスを産生した。トランスフェクション2時間後、細胞を、MOI1でAdenoCreGfpウイルス(カタログ番号1700、Vector Biolabs社)で感染させた。ウイルスを3サイクルの凍結、解凍及び超音波処理によって、細胞から48時間後に収穫した。
【0126】
新鮮なHEK293細胞を18時間感染させた。次いで、細胞を洗浄し、新たな培地を提供した。更に48時間後、上清をIFNバイオアッセイによる分析のために収穫し、細胞をFACS分析のために回収した。
【0127】
センダイウイルス
センダイウイルスはLGC standards(カタログ番号VR-907)製であった。センダイウイルスを培養培地に添加することによって、細胞を感染させた。
【0128】
低分子抽出及びTHP1刺激
ビリオンから低分子抽出する方法は、(Ablasser等、2013、Nature、498、380~384ページ)から適合させた。ペレット化ビリオンを溶解緩衝液(1%Triton X-100、100mMトリスHcl pH7.4、1mM NaCl、1mM EDTA及び3mM MgCl2)に再懸濁し、氷上に20分間放置した。溶解物を、4℃で10分間、1000gの遠心分離によって清澄化した。核酸を除去するために、試料を氷上、50U/mlベンゾナーゼ(Sigma社)で45分間処理した。次に、タンパク質を2回の連続フェノール-クロロホルム抽出によって除去し、引き続いてクロロホルム洗浄して微量のフェノールを除去した。Amicon Ultra 3kDa遠心濾過器(Millipore社、カタログ番号UFC500396)を用いて抽出物を濾過し、濾液を真空下、遠心分離によって濃縮した。試料を水20μlに再懸濁し、更に使用するまで-80℃で保管した。
【0129】
これらの抽出物のcGAMP活性を、(31)から適合させたプロトコールを用いて測定した。30ng/mlのPMAで処理した100,000個のTHP-1細胞を96ウェルプレートに播種し、一晩放置した。次いで、細胞を培地で洗浄し、37℃で30分間、ビリオン抽出物又は2'3'-cGAMP標準(カタログ番号C161-005、Biolog社)を含有する25μl透過処理緩衝液(10μg/mlジギトニン、50mM Hepes pH7.4、100mM KCl、3mM MgCl2、0.1mM DTT、85mMスクロース、0.2%BSA、1mM ATP及び0.1mM GTP)で覆った。次に、細胞を培地で洗浄し、75μlの新鮮な培地を添加した。24時間後、上清をIFNバイオアッセイで試験した。
【0130】
いくつかの実験で、5μlの抽出物又は1μgのcGAMPを、37℃で1時間、0.002単位のSVPDE(カタログ番号P3243、Sigma社)を用いて又は用いないで、50mMトリスpH8.8、10mM MgCl2中でインキュベートした。次いで、処理した抽出物及びcGAMPを透過処理緩衝液に連続希釈し、上記のようにTHP1細胞に添加した。
【0131】
ドットブロット
ウイルス調製物を溶解緩衝液(1%Triton X-100、10mMトリスHCl pH7.4、1mM NaCl、1mM EDTA及び3mM MgCl2)に再懸濁し、ナイロン膜(ゼータプローブGT膜、カタログ番号162-0197、Biorad社)にブロットし、これを乾燥及びUV架橋させた(UV Stratalinker 2400;2×Autocross link、120,000μJ/cm2)。ビオチン-cGAMPをストレプトアビジン-HRP(カタログ番号3310-9、Mabtech社、1:1000)で検出した。HRPを0.2%アジ化ナトリウムで不活性化し、膜を1時間曝露することによって残留シグナルの非存在を検証した。次いで、膜をマウスαp24(カタログ番号4313、Advance Bioscience Laboratory社、1:5000)、引き続いてα-マウスHRP(カタログ番号NA931VS、GE Healthcare Life Sciences社、1:3000)で再プローブした。
【0132】
(実施例2)
結果
cGAS機能を試験するために、本発明者等は、ヒト単球由来DC(樹状細胞)におけるその発現を操作しようとした。本発明者等は、cGASを発現するレンチウイルスベクターを作製し、無細胞ウイルス上清を用いてレンチウイルス粒子及び感染単球を産生した後、これらをDCに分化させた。分化の4日目に、cGASウイルスに曝露した分化DCの大部分がCD86を発現し、そのためこれらが活性化されたが、レポーター蛍光タンパク質BFPの発現によって示される形質導入の効率は低かった(図6A)。対照的に、BFPのみをコードするレンチウイルスによる感染は、非ウイルス曝露細胞と比較して、単球を効率的に形質導入したが、活性化DCの割合を増加させなかった(図6A)。これにより、レンチウイルスベクター感染の一般的な過程が、単球及びDCによって感知されないこと、及びこれがcGASレンチウイルスベクターの場合に観察される活性化を誘導する原因になり得ないことが確認された。重要なことに、DCは、DC-SIGNの発現及びCD14の下方制御によって示されるように、完全に分化した(図7A)。cGASレンチウイルスベクターは、感染の前に完全に分化したDCも活性化した(図7B図7C)。このことは、活性化先天性免疫シグナルが存在し、cGAS発現レンチウイルスベクターによるDCの感染の明らかな過程に関連することを示している。
【0133】
DCにおけるレンチウイルスコード遺伝子の効率的な発現は、SAMHD1によって課せられるHIV感染に対する構成的制限を軽減し、よって、ベクターによる細胞の効率的な形質導入をもたらすレンチウイルスタンパク質Vpxを要する。標的細胞でのcGASの発現が細胞の活性化に必要とされるかどうかを確認するために、本発明者等は、形質導入手順からVpxタンパク質を省いた。この場合、SAMHD1制限が活性であり、対照ウイルスを用いたレポーター蛍光タンパク質BFPの検出の欠如によって示されるように、効率的な形質導入が妨げられる(図6A、下パネル)。予想外に、cGASレンチウイルスによるDCの活性化はVpx無しでも保存され(図6A図8B)、標的細胞におけるcGAS発現は要求されないことを示唆した。I型インターフェロン誘導性サイトカインIP-10(遺伝子CXCL10)もDCによって産生された(図6C)ので、活性化はCD86発現に制限されなかった。この見解を確認し、低レベルのcGASベクター形質導入が活性化の原因であったことを排除するために、本発明者等は、非レンチウイルスプラスミド由来のcGASを発現する細胞内にレンチウイルスゲノムを含有しないHIV-1ウイルス様粒子(VLP)を産生した(図7D)。CD86発現(図6D)及びIP-10産生(図6E)によって測定されるように、cGAS発現細胞由来のVLP含有上清は、形質導入コンピテントレンチウイルスベクターと同程度にDCを活性化した。よって、ウイルス粒子を産生し、cGASを発現する細胞由来の上清は、先天性シグナルを免疫細胞に伝達することができる。
【0134】
このシグナルの性質を決定するために、本発明者等は、最初に10kDaフィルタ上でウイルス上清を分画した。保持液は単球においてCD86発現及びIP-10産生を効率的に誘導したが、濾液から活性は枯渇し、活性が10kDaより大きな成分によって運ばれることを示した(図8A図8E)。次いで、本発明者等は、差示的超遠心分離を行って、可溶性因子から、細胞外小胞(EV)と総称される、その培地中に細胞によって放出される種々の種類の膜に囲まれた小胞を分離した。細胞片が最初にペレット化し(2,000g)、引き続いて大きな小胞、例えばアポトーシス性ブレブ(10,000g)、最後にエキソソーム及びウイルスを含む小EV(100,000g)がペレット化する。際立ったことに、これらの超遠心分離後に回収した培養上清は、単球を活性化する能力をほぼ完全に喪失していた(図8B)。対照的に、Gap並びにいくつかのエキソソーム関連タンパク質、テトラスパニンCD63、CD9及びCD81とサイトゾルシンテニン-1を含有する100,000gペレットではほとんどの活性が回復した(図8B図8C図8D)。Gagのみを含有し、エキソソームマーカーを含有しない10,000gペレットにもいくらかの活性が存在していたが、微量のGagのみを含有するより大きな細胞片(示さず)は極めて小さい活性を示した(図8B図8C図8D)。これらの結果は、cGAS発現細胞によってDCに伝達される先天性シグナルが、拡散性可溶性因子であるよりむしろGag含有ウイルス粒子を含む小EV内に含有されることを示している。
【0135】
EVによって伝達される先天性シグナルは、cGASタンパク質のパッケージング及び標的細胞への伝達によって媒介され得るだろう。本発明者等は、ペレット化上清中にcGASタンパク質を検出することができなかった(図7D)ので、この仮説を支持しなかった。代わりの可能性として、二次メッセンジャーcGAMPが先天性シグナルを伝達し得るだろう。cGAMPはサイトゾルで産生される675Daの低分子であり、よって、ウイルス粒子及びEVにパッケージングされ得るだろう、その理由は、これらの構造は産生細胞由来のサイトゾルを含有するからである。
【0136】
本発明者等は、cGAMPが細胞由来ウイルス粒子中に存在する場合、これがSTING依存性であるが、cGAS非依存性の様式で、I型インターフェロン応答を活性化するはずであると判断した。本発明者等は、検出可能なcGAS発現を欠く293T細胞中でSTINGプラスミドを用いて又は用いないでインターフェロンレポーター構築物をトランスフェクトした(データは示さず)。リポフェクタミンによる又はcGAS発現プラスミドのトランスフェクションによる合成cGAMPの送達は、STINGの存在下でのみレポーターを活性化し、アッセイを検証した(図9A図9C)。cGAS発現細胞から産生されたVLPはSTINGの存在下でレポーターを活性化したが、STINGを用いない場合、又は粒子がcGASの非存在下で産生された場合には活性化が検出されなかった(図9A)。VLPを産生しないcGAS発現細胞由来の上清は、レポーターの活性化においてはるかに有効でなかった(図9A)。そのため、ウイルス粒子は、産生細胞のcGASから標的細胞のSTINGに先天性シグナルを伝達することができる。cGAMPがウイルス粒子に存在したことを更に実証するために、本発明者等は、透過処理THP-1及びIFNレポーター細胞株に基づくバイオアッセイを使用した(図9B)。本発明者等は、ウイルス産生細胞及びペレット化VLPから低分子を抽出した。予想されるように、cGASをトランスフェクトした細胞からはcGAMP活性が検出されたが、対照細胞ではされなかった。際立ったことに、ペレット化VLPでもcGAMP活性が検出され、cGAS E225/D227Aの触媒突然変異体を使用した場合、この活性は喪失した(図9B)。
【0137】
抽出物で測定される活性がcGAMPに対応していたことを確認するために、本発明者等は、合成cGAMPを用いて質量分析を行った。本発明者等は、ペレット化VLP中のcGAMPの存在を検出した。全体として、これらのデータは、ウイルス粒子が二次メッセンジャーcGAMPをパッケージング及び伝達するという強力な指標を提供する。
【0138】
次に、本発明者等は、どの成分がcGAMPを伝達するのに必要かを調べた。ウイルス粒子によるcGAMPの伝達は、cGAS E225A/D227Aを使用すると、抑止され、機能的cGASタンパク質が必要であることを示した(図10A)。ウイルスタンパク質Gag/Pol及び膜融合性ウイルスエンベロープタンパク質VSV-Gを発現させることによって、VLPを産生した。Gap/Pol若しくはVSV-Gのいずれか又は両方の発現を省くと、上清がDCでCD86及びIP-10を誘導する能力が低下した(図10A図10B)。VSV-Gの非存在によって、DC活性化が最も強力に低下し(図10A図10B)、膜融合性細胞外物質が主要なDC活性化因子であることを示した。本発明者等は、Gag含有VLPがVSV-Gの非存在下で上清中にまだ存在すること、及びVSV-G含有EVがGagの非存在下で分泌されることを確認した(図10C)。要するに、これは、cGAMPを伝達するためには、cGAS及びウイルス粒子を含む融合コンピテントEVが必要であることを示している。
【0139】
細胞によるVSV-Gの発現は、管状小胞(tubulovesicular)構造の生成をもたらす。cGAMPの伝達がVSV-Gの特異性であったことを除外するために、本発明者等は、VSV-Gの代わりにインフルエンザエンベロープタンパク質H1N1及びH5N1を有するVLPを産生した。cGASの存在下で産生されたこのような粒子は、全ての場合で単球を活性化した(図10D図11A図11E)。本発明者等は、次に、cGAMPのパッケージング及び標的細胞への伝達がHIV-1粒子に特異的であるかどうかを検討した。本発明者等は、別のレトロウイルス、ガンマレトロウイルスMLVからVLPを産生し、これらもcGAMPを伝達することができることを発見した(図10E図11B図11D)。最後に、本発明者等は、野生型CCR5向性エンベロープタンパク質BALを発現するHIV-1粒子がcGAMPを伝達することができるかどうかを調べた。実際、本発明者等は、cGASによって産生されたHIV-1粒子がcGAMPを伝達し、標的細胞において先天性免疫応答を活性化することができることを見出している(図10F図11C図11E)。よって、cGAMPのパッケージング及び標的細胞への伝達は、様々な起源のレトロウイルス粒子の一般的な特性である。
【0140】
まとめると、本結果は、ウイルス粒子又は融合コンピテントEV内のパッケージングによって、cGAMPが細胞間で伝達され得るという証拠を提供し、先天性免疫シグナル伝達の新たな機構を定義する(図12)。自然応答の広がりは、概して、インターフェロンを含むサイトカインの産生に起因する。後に続く先天性シグナルはエフェクター分子の産生を誘導する。興味深いことに、いくつかの抗ウイルスエフェクターはウイルス粒子及びEV、例えばAPOBEC3Gにパッケージングされ得るが、エフェクターは標的細胞において先天性免疫応答を直接的には誘導しない。cGAMPはギャップジャンクションによって物理的に接続された細胞間で拡散する能力を有する。cGAMPのウイルス伝達は、細胞間の直接接触を必要とせず、生物内又は宿主間の伝達中の先天性シグナル伝達分子の伝達を可能にし得る。この過程は標的細胞におけるエフェクター応答の急速な誘導を最大化し得るだろう。興味深いことに、細菌によって産生される免疫刺激環状ジヌクレオチドは、標的細胞に送達され、先天性免疫シグナルを誘導し、cGAMPのウイルス媒介伝達に匹敵する魅力を提供することができる。
【0141】
本結果は更に、エキソソームであり得る非ウイルス細胞由来EVもcGAMPをある程度伝達することができることを示している。この知見と一致して、EVは、細胞間で細胞RNAを伝達することができる。しかしながら、cGAMPの伝達は膜融合性ウイルスエンベロープタンパク質の非存在下では効率性が低い。本発明者等は、標的細胞膜との膜融合の工程が、非感染細胞由来のEVの場合には限定的であると推測している。それにもかかわらず、ウイルスセンサーとしてのその機能に加えて、cGASは、感染に対する後の感受性の決定において重要な役割を果たす、非感染マウスにおける持続性レベルのインターフェロン誘導遺伝子の設定に寄与するように見える。cGASのこの機能がcGAMP合成を要求するかどうかはまだ知られていないが、宿主EVによるcGAMPの伝達は持続性インターフェロン応答を設定するのに寄与し得るだろう。
【0142】
本発明者等は、本発明のVLPによるcGAMPのベクター化が、樹状細胞成熟の誘導において、リポフェクタミンと複合体化した2'3'-cGAMPよりも(すなわち、MLV Gag及びHIV Gag VLPは約1,000倍効率的である)、また2'3'-cGAMPよりも(すなわち、MLV Gag及びHIV Gag VLPは約10,000倍効率的である)はるかに効率的であることを実証している(図14)。
【0143】
本発明者等は、cGAMPのウイルス粒子内へのパッケージングを免疫タグ化過程として解釈することができることを提唱している。これにより、後の標的細胞に警告するために、感染細胞が、子ウイルスを非自己、又は危険として更に示すことが可能になり得る。他のシグナル伝達分子もウイルス粒子によってパッケージングされ、播種されると推測したくなる。
【0144】
最後に、ウイルス粒子を産生する細胞におけるその合成酵素の発現によるcGAMPパッケージングは、治療薬及びワクチンのための免疫原性環状ジヌクレオチドをベクター化するための魅力的な戦略を提供する。
【0145】
材料及び方法
細胞
293FT及びHL-116細胞を前に記載されたように(Lahaye等、2013、Immunity、39、1132~1142ページ)培養した。単球を前に記載されたように(Lahaye等、上記)末梢成人ヒト血液から単離した。単球を、10ng/mlの組換えヒトGM-CSF(Miltenyi社)及び50ng/mlのIL-4(Miltenyi社)の存在下で、Glutamax、10%FBS(Biowest社又はGIBCO社)、ペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCO社)、ゲンタマイシン(50mg/ml、GIBCO社)及びHEPES(GIBCO社)を含むRPMI培地中で培養し、樹状細胞に分化させた。THP-1をGlutamax、10%FBS(GIBCO社)、ペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCO社)を含むRPMI培地で培養した。
【0146】
構築物
ヒトcGAS WTオープンリーディングフレームを、単球由来樹状細胞から調製したcDNAからPCRによって増幅した。マウスcGAS WTオープンリーディングフレームを、C57BL6マウス骨髄由来樹状細胞から調製したcDNAからPCRによって増幅した。ヒトcGAS E225A/D227A突然変異体を、オーバーラップPCR突然変異誘発によって得た。以前記載された(Lahaya等、上記)shRNAによって標的不可能なcGAS変異体を作製するために、ntcGASをオーバーラップPCR突然変異誘発によって得た。mTagBFP2(Subach等、2011、PLoS One、6、e28674)配列を合成的に作製した(Invitrogen社)。プラスミドpSIV3+、psPAX2、pCMV-VSV-G及びpTRIP-CMVは以前記載された(Satoh等、2013、Methods Mol Biol、960、401~409ページ)。BFP-2A、BFP-2A-FLAG-ntcGAS、BFP2AFLAG-cGAS E225A/D227A、Puro-2AをpTRIP-CMVにクローニングした。非レンチウイルスベクターは哺乳動物発現プラスミドpcDNA3.1-Hygro(+)(Invitrogen社)に基づいていた。マウスWT、ヒトWT cGAS、ヒトcGAS E225A/D227A、PSTCD-cGAS及びPSTCD-cGAS ΔDBDをPCRによってpcDNA3.1-Hygro(+)にクローニングした。プロピオニバクテリウム・シェルマニ(Propionibacterium shermanii)トランスカルボキシラーゼドメイン(PSTCD)は、ストレプトアビジン結合タンパク質である(Fukata等、2013、J Cell Biol、202、145~161ページ)。PSTCD-cGAS ΔDBDを、オーバーラップRCRによってアミノ酸領域K173~I220及びH390~C405を欠失させることによって作製した。特に注記しない限り、cGASのヒトアイソフォームを全ての実験で使用した。ヒトSTINGオープンリーディングフレームを、IMAGEクローン5762441からPCRによってクローニングした。このクローンは、232位のヒスチジン残基をコードし、これをオーバーラップPCR突然変異誘発によってアルギニン残基に突然変異させた(Diner等、2013、Cell reports、3、355~1361ページ)。STING R232をPCRによってpMSCVhygro(Addgene社)にクローニングした。全ての最終構築物で、PCRに起因し、クローニングに使用される制限部位を包含するDNAフラグメント全体を配列決定によって完全に検証した。IFNβ-pGL3プラスミドをOliver Schwartz、パスツール研究所の実験室から得た。H1、H5及びN1をコードするインフルエンザエンベローププラスミドは、Adolfo Garcia-Sastre、Mount Sinai Medical Centerの実験室から得た。MLV Gag/PolはpCL-10A1から発現させた(Naviaux等、1996、J Virol、70、5701~5705ページ)。複製コンピテントCCR5向性R5GFP構築物は、以前記載された(Lahaye等、上記)、nefにおいてGFPをコードするNL4-3/BaL env、Δnefであった。
【0147】
ウイルス
ウイルス粒子は以前記載されたように293FT細胞から産生された(Lahaye等、上記)。6ウェルプレートの1ウェル当たり1.6μgの哺乳動物発現プラスミド又はレンチウイルスベクタープラスミドと一緒に、1μgのpsPAX2及び0.4μgのpCMV-VSV-Gをトランスフェクトすることによって、レンチウイルスウイルス粒子及びウイルス様粒子を産生した。
【0148】
CCR5向性NL4-3/BaL envウイルスについては、1.6μgのpcDNA3.1-Hygro(+)-ms cGASプラスミドを1.4μgのR5GFPプラスミドとコトランスフェクトした。インフルエンザシュードタイプ化VLPについては、1μgのpcDNA3.1-Hygro(+)-ms cGASプラスミドを1μgのpSPAX2及び0.5μgのH1又はH5及び0.5μgのN1コードプラスミドとコトランスフェクトした。MLVウイルス粒子については、1.6μgのpTRIP-CMV-BFP-2A又はpTRIP-CMV-BFP2A-FLAG-ntcGASを1μgのpCL-10A1及び0.4μgのpCMV-VSV-Gと混合した。psPAX2及び/又はpCMV-VSV-Gを省いた場合、同量のDNAをpcDNA3.1-Hygro(+)によって置換した。ウイルス含有細胞上清を、0.45μMフィルタ上で系統的に濾過した。
【0149】
図14で使用されるcGAMP OVA VLP及びcGAMP VLPについては、ウイルス粒子を以下の通り濃縮及び精製した。293T由来の粗上清34mlを、6mlのスクロース(Sigma社)クッション(PBS中20%溶解)の上部で、Ultra-Clear遠心管(Beckman Coulter社)にロードし、SW32ローター(Beckman Coulter社)中100,000gで超遠心分離した。回収したウイルスペレットを13mlのPBSに再懸濁し、新たなUltra-Clear遠心管に移し、SW41ローター(Beckman Coukter社)中100,000gで超遠心分離した。次いで、回収したペレットを、cGAMP OVA VLPについては750μlのPBS、又はcGAMP VLPについては1350μlのPBSに再懸濁した。各調製物の50μlの3つのアリコートをそれぞれcGAMP抽出、単球感染及びp24/p27 ELISAのために別個のチューブに移した。次いで、全てのアリコートを更に使用するまで-80℃で凍結した。
【0150】
感染
50,000個の新たに単離した単球又は4日目の分化DCを96ウェルU底プレートに播種し、10ng/mlのヒト組換えGM-CSF(Miltenyi社)及び50ng/mlのIL-4(Miltenyi社)の存在下、8μg/mlのプロタミン(Sigma社)を用いて最終体積200μlで感染させた。インフルエンザエンベロープシュートタイプ化VLP及びHIV1 NL4-3/Bal envウイルスによる感染を、1200g、25℃で2時間、追加のスピノキュレーション(spinoculation)工程によって行った。示される場合、以前記載されたように(Lahaye等、上記)、産生されたSIVmac VLP 50μlを添加することによって、Vpxを送達した。AZT(Sigma社)を25μMで添加した。ルシフェラーゼアッセイのために、pcDNA3.1-Hygro(+)-mc cGASの存在下又は非存在下で産生されたVLPを使用して、8μg/mlのプロタミンを用いて2.5mlの最終体積で293FTを感染させた。
【0151】
ウエスタンブロット法
293FT細胞をPBSでストリップし、細胞ペレットを試料緩衝液(2%SDS、10%グリセロール、0.05Mトリス-HCl pH6.8、0.025%ブロモフェノールブルー、0.05M DTT)に溶解した。ウイルス上清を0.45μmで濾過し、4℃で2時間、16,000gで遠心分離した。特に注記しない限り、ウイルスペレットを65μlの試料緩衝液に溶解した。細胞及びウイルスタンパク質溶解物を4%~20%SDS-PAGEゲル(Biorad社)上で分離し、ニトロセルロース膜(Biorad社)上に転写した。タンパク質を以下の通り抗体を用いてブロットした:マウスモノクローナル抗Gag(クローン183-H12-5C-インハウスで作製)、マウスモノクローナル抗VSVタグ(クローンP5D4-インハウスで作製)、ウサギポリクローナル抗MB21D1(Sigma社)、マウスモノクローナル抗アクチン(クローンC4-Millipore社)、MLV GagについてのR187ハイブリドーマ由来の上清(Chesebro等、1983、Virology、127、134~148ページ)(Marc Sitbon及びJean-Luc Battiniによって提供)、マウスモノクローナル抗CD9(クローンMM2/57-Millipore社)、マウスモノクローナル抗CD81(クローンB-11-Santa Cruz Biotechnology社)、マウスモノクローナル抗CD63(クローンH5C6-BD Bioscience社)、ウサギポリクローナル抗シンテニン-1(Pascale Zimmermanによって親切にも提供された)(Zimmermann等、2001、Molecular Biology of the cell、12、339~350ページ)及びPSTCD-cGASタンパク質の場合にはストレプトアビジン-HRP(Pierce社)。ECLシグナルをChemiDoc XRS Biorad Imagerで記録した。データをImage Lab(Biorad社)で分析した。
【0152】
ルシフェラーゼアッセイ
293FT細胞を24ウェルプレートに蒔いた。翌日、細胞を、300ngのIFNβ-pGL3を含む全DNA及び空ベクターpTRIP-CMV-Puro-2A又はTransIT-293(Mirus社)を含むpMSCVhygro-STING R232でトランスフェクトした。翌日、培地を除去し、2.5mlの293FTプロデューサー細胞由来の粗上清で置き換えた。3'3'cGAMP(InvivoGen社)を、最終体積500μlでリポフェクタミン2000(Invitrogen社)トランスフェクション(1μg 3'3'cGAMP:1μlリポフェクタミン2000)で送達した。24時間後、細胞をPBSで洗浄し、Passive Lysis Buffer(Promega社)で溶解し、10μlの溶解物を使用してルシフェラーゼアッセイを行った。ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega社)を使用してルシフェラーゼ活性を測定した。発光をFLUOstar OPTIMAマイクロプレートリーダー(BMG labtech社)で取得した。
【0153】
cGAMP抽出及びバイオアッセイ
アッセイを以前記載されたプロトコール(Woodward等、2010、Science、328、1703~1705ページ;Ablasser等、2013、Nature、497、380~384ページ;Wu等、2012、Science、339、826~830ページ)から適合させた。293FT細胞及び上清をウエスタンブロット法について記載されるように回収した。遠心分離後、細胞及びウイルスペレットを、4℃で20分間、溶解緩衝液(1mM NaCl、3mM MgCl2、1mM EDTA、10mMトリス-HCl pH7.4、1%Triton X-100)に溶解した。細胞及びウイルス溶解物を1000gで10分間遠心分離し、上清を、4℃で45分間、50U/mlのベンゾナーゼ(Sigma社)で処理した。次いで、懸濁液を、2ラウンド、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1、v/v-Sigma社)を用いて抽出し、次いで、回収した水相をクロロホルム(VWR Chemicals社)で洗浄した。残っている水相をAmicon 3KDaカットオフカラム(Millipore社)にロードし、14000gで30分間遠心分離した。次いで、溶出した溶液を、43℃で2時間、Savant DNA Speed Vac DNA 110でスピード真空に供した。図14で使用されるcGAMP OVA VLP及びcGAMP VLPについては、50μlのアリコートに、50μlのDNAse/RNase Free Water(GIBCO社)を添加した。次いで、得られた100μlを400μlのメタノール(VWR Chemicals社)で溶解して、MeOH/H2Oの80/20(v/v)ミックスを得た。溶解物を5サイクルの凍結及び解凍に供し、4℃で20分間、16,000gで遠心分離した。次いで、回収した上清を、43℃で2.5時間又は65℃で2.5時間、Savant DNA Speed Vac DNA 110でスピード真空に供した。抽出過程のための内部対照として、既知量の2'3'-cGAMPをMeOH/H2Oの80/20(v/v)ミックスに添加し、凍結及び解凍工程を省略して、ウイルス調製物として抽出した。ペレットを25μlの(フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール抽出)又は30μlの(メタノール/水抽出)のRNAse-DNase free water(GIBCO社)に再懸濁し、THP-1で使用した。アッセイの24時間前、100,000個のTHP-1細胞を30ng/mlでPMA(Sigma社)を含む新鮮な培地に再懸濁し、96ウェルプレート平底に播種した。次いで、PMAを洗浄し、THP-1細胞を、37℃、5%CO2雰囲気で30分間、50mM HEPES(GIBCO社)、100mM KCl、3mM MgCl2、0.1mM DTT、85mMスクロース(Sigma社)、1mM ATP(Sigma社)、1mM GTP(Sigma社)、0.2%BSA(Euromedex社)、0.001%ジギトニン(Calbiochem社)を含む緩衝液による透過処理中、再懸濁試料で処理した。同時に、透過処理THP-1細胞を合成2'3'cGAMP(InvivoGen社)で処理した。次いで、緩衝液を洗浄し、新鮮な培地を細胞に添加し、一晩インキュベートした。MeOH/H2Oで抽出した試料については、50U/mlのベンゾナーゼを初期刺激段階中に添加した。次いで、上清をHL-116細胞上に移して、記載されるように(Lahaye等、上記)インターフェロン活性を測定した。
【0154】
濾過
293FT細胞を1.6μgのpTRIP-CMV-BFP-2A-FLAG-ntcGAS、1μgのpsPAX2及び0.4μgのpCMV-VSV-Gでトランスフェクトし、ウイルス産生について以前記載されたように処理した。次いで、上清を回収し、4℃で30分間、4,000gでAmicon 10KDaカットオフチューブ(Millipore社)で遠心分離した。保持液を以前記載されたDC培地に再懸濁した。次いで、再懸濁した保持液及び濾過分画を使用して、以前記載されたように単球を処理した。
【0155】
分画
10%FBS及びペニシリン-ストレプトマイシンを含有するGlutamax培地を含むRPMIを、100000gでの一晩の遠心分離によりウシEVから枯渇させ、次いで、0.22μmで濾過した。293FTをウイルスについて記載されるようにトランスフェクトした。トランスフェクション12時間後、培地を新鮮なEV枯渇培地で置き換えた。30時間後、上清を回収し、0.45μmで濾過した。連続超遠心分離工程:2,000gで20分間(ベンチトップ遠心分離);9,000rpmで25分間(SW55Tiローターによる超遠心分離XL-100K Beckman、k_因子=1,759.27、10,0000g分画);30,000rpmで1時間(SW55Tiローターによる超遠心分離XL-100K Beckman、k_因子=169.44、100,000g分画)によって、小胞を条件培地から単離した。各ペレットを50μlのPBS(ウエスタンブロット法)又は600μlのEV枯渇培地(単球の感染)に懸濁した。100,000g分画の残っている上清は単球の感染のためにのみ使用した。
【0156】
フローサイトメトリー
細胞表面染色をPBS、1%BSA(Euromedex社)、1mM EDTA(GIBCO社)で行った。使用した抗体は、抗ヒトCD86 PE(クローンIT2.2-eBioscience社)、抗ヒトCD14 FITC(クローン61D3-eBioscience社)及び抗ヒトDC SIGN PE(クローン120507-R&D Systems社)であった。細胞を4℃で15分間染色し、2回洗浄し、1%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences社)に固定した。データをFACSVerse(BD)又はAccuri C6(BD)で取得し、FlowJoで分析した。
【0157】
IP-10タンパク質定量化
純粋な又は10倍希釈(100,000g分画、インフルエンザシュードタイプ化ウイルス粒子、NL4-3/BaL envウイルス)の処理単球由来上清で、IP-10濃度を測定した。IP-10濃度を、製造業者のプロトコールに従って、ヒトIP-10サイトメトリックアッセイ(BD)で測定した。データをBD FACSVerse(BD)で取得し、FCAP Array(BD)で分析した。
【0158】
統計
統計解析はPrism(GraphPad)で行った。
【0159】
質量分析
cGAMP抽出手順後に得られた抽出物を溶液A(2%(v/v)アセトニトリル/水、0.1%(v/v)ギ酸)に希釈し(1/1000、1/100又は1/10)、QSTAR Elite四重極飛行時間型(Q-TOF)質量分析装置(Applied Biosystems社/MDS SCIEX)と接続した活性分割キャピラリーHPLCシステム(Ultimate 3000、Dionex、Germering、ドイツ)を用いて分析した(1μL)。試料分離を、200nL/分での30分間のイソクラティック溶出(5%(v/v)B、95%(v/v)A、移動相B使用、80%(v/v)アセトニトリル/水、0.085%(v/v)ギ酸)を用いて、分析用C18カラム(75μm内径×150mm長、100Å孔径の3μm粒子を充填、C18 PreMapTM、Dionex S.A.)で達成した。エレクトロスプレー(ESI)電圧2.2kVで、陽イオンモードに設定したAnalyst QS Software(2.0)を用いて、データ取得を行った。TOF-MSサーベイスキャンを300~800m/zの質量範囲にわたって1秒間取得した。次いで、生成物取得方法を使用して、50~680m/zの質量範囲にわたって2秒のサイクル当たり40eVの衝突エネルギー(CE)でイオンm/z675.1の生成物イオンスキャン、並びに質量範囲520~530m/zにわたって1秒のサイクル当たり30eV CE、質量範囲120~170m/zにわたって1秒のサイクル当たり60eV CE及び質量範囲460~490m/zにわたって1秒のサイクル当たり40eV CEで、イオンm/z675.1の偽選択反応モニタリング(偽-SRM)モードにおける3つの生成物イオンスキャンを取得した。
【0160】
(実施例3)
結果
本発明者等は、ウイルス粒子によるcGAMPの伝達が生理学的に関連するレベルのcGAS発現で起こるかどうかを決定しようとした。HeLa細胞はcGASタンパク質を発現する。HeLa細胞は定常状態では検出可能な量の細胞内cGAMPを含有しなかったが、DNA刺激後にはこれが検出された。HeLaにおけるCRISPR/Cas9によるcGAS遺伝子の破壊は、DNA刺激後にcGAMP産生を消滅させた。次に、本発明者等は、対照HeLa、DNA刺激HeLa又はVLPコードプラスミドでトランスフェクトしたHeLa(DNA刺激も提供する)のペレット化可能な細胞外物質を収穫した。cGAMPは全てのDNA刺激HeLaの物質で検出され、細胞外小胞(EV)及びウイルス粒子にパッケージングされていることと一致する(図13A)。しかしながら、HeLa由来VLPのみがPMA処理THP-1細胞でIP-10産生を誘導し、対照HeLa又はDNA刺激HeLa由来のEVではしなかった(図13B)。cGAMPが伝達されたことを確認するために、本発明者等は、STINGルシフェラーゼレポーターアッセイで物質を試験した。HeLa由来VLPはSTING依存性様式でインターフェロンプロモーターを活性化したが、DNA刺激HeLa由来のEVはしなかった(図13C)。全体的に、これらのデータは、ウイルス粒子及びEVが内因性cGASによって産生されたcGAMPをパッケージングするが、ウイルス物質のみが二次メッセンジャーcGAMPを効率的に伝達することができることを実証している。
【0161】
方法
HeLaトランスフェクション
1ウェル当たり80万個のHeLa細胞を6ウェルプレートに播種し、同日にトランスフェクトした。トランスフェクションは、7.5μlのリポフェクタミン2000(Invitrogen社)及び4μgのDNA合計を用いて行った。空ベクタートランスフェクションの場合、4μgのpcDNA3.1-Hygro(+)を送達した。VLPの場合、3.5μgのpsPAX2及び0.5μgのpCMV-VSV-Gをトランスフェクトした。HIVGFPの場合、3.5μgのHIVGFP env-nef-及び0.5μgのpCMV-VSV-Gをトランスフェクトした。14~16時間後に培地を交換した。次いで、上清を28~30時間後に収穫し、0.45μmで系統的に濾過した。cGAMP抽出及びTHP-1刺激については、上清を最初に4℃で20分間、2000gで遠心分離し、次いで、30mlをUltra-Clear遠心管(Beckman Coulter社)にロードし、SW32ローター(Beckman coulter社)で、100000gで超遠心分離した。IFN-βルシフェラーゼレポーターアッセイについては、2000g遠心分離をとばした。得られた超遠心分離ペレットをRPMI 10%FBS(GIBCO社)、Penstrapに再懸濁してTHP-1を処理し、IFN-βルシフェラーゼレポーターアッセイについてはDMEM10%FBS(GIBCO社)、Penstrepに再懸濁し、cGAMP抽出については500μlの溶解緩衝液(1mM NaCl、3mM MgCl2、1mM EDTA、10mMトリス-HCl pH7.4、1%Triton X-100)に再懸濁した。細胞をトリプシン処理によって回収し、ペレット化し、PBSで洗浄し、cGAMP抽出のために溶解緩衝液に再懸濁し、次いで、-80℃で凍結した。
【0162】
THP-1刺激
100,000個のTHP-1細胞を、刺激前日に、30ng/mlでPMA(SIGMA社)を含有する新鮮な培地中96ウェルプレート平底に播種した。刺激前、培地を新鮮な培地で置き換え、次いで、細胞を8μl/mlのプロタミン(SIGMA社)の存在下、再懸濁した超遠心分離物質で処理した。刺激48時間後、上清を回収し、IP-10定量化まで4℃で保管した。
【0163】
IP-10タンパク質定量化
純粋な又は10倍希釈の処理THP-1由来上清でIP-10濃度を測定した。IP-10濃度は、製造業者のプロトコールに従って、ヒトIP-10サイトメトリックアッセイ(BD)で測定した。データをBD FACSVerse(BD)で取得し、FCAP Array(BD)で分析した。
【0164】
ルシフェラーゼアッセイ
45,000個の293FT細胞を24ウェルプレートに蒔いた。翌日、細胞を、200ngのIFNβ-pGL3及び300ngの空ベクターpMSCV-hygro又はTransIT-293(Mirus社)を含むpMSCV-hygro-STING R232を含む500ngの全DNAでトランスフェクトした。RIG-I N228トランスフェクションについては、150ngのpCAGGS-FlagRIGIN228を150ngの空又はSTING発現ベクターとコトランスフェクトした。翌日、培地を除去し、8μg/mlのプロタミン(SIGMA社)の存在下380μlの再懸濁したペレット化物質で置き換えた。HIVGFP env-nef-(G)ペレットの場合、293T細胞を25μMのAZT(SIGMA社)及び10μMのネビラピン(SIGMA社)で処理した。2'3'cGAMP(InvivoGen社)を最終体積380μlでリポフェクタミン2000(Invitrogen社)トランスフェクション(1μg 2'3'cGAMP:1μlリポフェクタミン2000)を用いて送達した。24時間後、細胞をPBSで洗浄し、Passive Lysis Buffer(Promega社)に溶解した。10μlの溶解物を使用してルシフェラーゼアッセイを行った。ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega社)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。蛍光をFLUOstar OPTIMAマイクロプレートリーダー(BMG labtech)で取得した。
【0165】
cGAMP抽出及びバイオアッセイ
細胞及び上清を記載されるように回収した。溶解物を5サイクルの凍結及び解凍に供した。次いで、溶解物を95℃で沸騰させ、氷中で冷却させ、4℃で20分間、16000gで、ベンチトップ遠心分離機で遠心分離した。次いで、上清を回収し、4℃で45分間、50U/mlのベンゾナーゼ(Sigma社)で処理した。次いで、懸濁液を2ラウンド、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1、v/v-Sigma社)を用いて抽出し、次いで、回収した水相をクロロホルム(VWR Chemicals社)で洗浄した。残っている水相をAmicon 3kDaカットオフカラム(Millipore社)にロードし、14000gで30分間遠心分離した。次いで、溶出した溶液を、65℃で2時間、Savant DNA Speed Vac DNA 110でスピード真空に供した。ペレットをRNAse-DNAse free water(GIBCO社)に再懸濁し、THP-1で使用した。アッセイの24時間前に、100,000個のTHP-1細胞を、30ng/mlでPMA(Sigma社)を含む新鮮な培地に再懸濁し、96ウェルプレート平底に播種した。次いで、PMAを洗浄し、THP-1細胞を、37℃、5%CO2雰囲気で30分間、50mM HEPES(GIBCO社)、100mM KCl、3mM MgCl2、0.1mM DTT、85mMスクロース(Sigma社)、1mM ATP(Sigma社)、1mM GTP(Sigma社)、0.2%BSA(Euromedex社)、0.001%ジギトニン(Calbiochem社)を含有する緩衝液による透過処理中、再懸濁試料で処理した。同時に、透過処理THP-1細胞を合成2'3'cGAMP(InvivoGen社)で処理した。次いで、緩衝液を洗浄し、新鮮な培地を細胞に添加し、一晩インキュベートした。次いで、上清をHL-116細胞上に移して、記載されるようにインターフェロン活性を測定した。
【0166】
IFNについての定量的バイオアッセイ
THP-1刺激細胞由来の上清を、以前記載されたように(Uze'等、1994)、IFN誘導性6-16プロモーターによって制御されるルシフェラーゼレポーターを有するHL116細胞株を用いてIFN活性についてアッセイした。手短に言えば、レポーター細胞を細胞培養上清に5時間曝露し、ルシフェラーゼ活性についてアッセイし(Promega社)、次いで、ヒトIFNα-2a(ImmunoTools社)の系列希釈から作成された標準曲線を用いることによって、これをIFN活性に変換した。
【0167】
(実施例4)
結果
予防的ワクチン接種設定でcGAMP-VLPが腫瘍成長を制御する活性を試験するために、本発明者等は、マウスをOva-cGAMP-VLP、対照cGAMP-VLP、Ovaタンパク質+cGAMP又はOvaタンパク質+CpGで処理した(図15A図15B)。免疫化11日後、Ova特異的CD8+T細胞がOva-cGAMP-VLPで検出されたが、対照VLPでは検出されなかった(図15C)。Ova発現腫瘍を14日目に移植した。25日目、Ova特異的CD8+T細胞応答の存在が確認され、増加した(図15D)。未処理マウス及び対照cGAMP-VLP又はOvaタンパク質+cGAMPでワクチン接種されたマウスでは、腫瘍成長が観察された(図15E)。対照的に、Ova-cGAMP-VLP及びOvaタンパク質+CpG処理マウスは腫瘍成長から完全に保護された。よって、これは、Ova-cGAMP-VLPがCD8+T細胞応答を誘導し、腫瘍成長を予防するための予防的ワクチンとしてインビボで機能性であることを確立している。
【0168】
次に、腫瘍抗原の非存在下での治療的免疫調節剤としてのcGAMPの活性を試験するために、本発明者等は、Ova発現腫瘍をマウスに移植し、12日目に、cGAMP-VLP又は対照で腫瘍内処理した(図15F図15G)。cGAMP-VLP処理マウスでは、Ova特異的CD8+T細胞応答が検出されたが、対照処理マウスでは検出されなかった(図15H)。これは、cGAMP-VLPが、治療的免疫調節シグナルを提供して腫瘍特異的CD8+T細胞応答を誘導することができることを確立している。
【0169】
方法
マウス及びワクチン接種
5/6週齢の雌C57BL/6JマウスをCharles River社 フランスから購入した。ここで使用される動物の飼育及び使用は、有効な実験及び他の科学的目的のために使用される脊椎動物を保護するための欧州及び国内規制を厳格に適用していた(施設ライセンス番号C75-05-18)。これはまた、実験動物の飼育及び使用に関するガイド(NRC 2011)による代替、削減及び改善の国際的に確立された原則にも準拠する。マウスの足蹠に皮下(s.c.)又は腫瘍内(i.t.)のいずれかで注射した。
【0170】
CD8+T細胞応答の定量化
VLPの注射10日後、血液試料を後眼窩穿刺によって回収し、四量体分析及びELISPROTによるIFN-g産生細胞の定量化を用いて、CD8+Ova特異的T細胞応答を測定した。全血球をPEコンジュゲートH-2Kb/SIINFEKL四量体(Beckman Coulter社)、抗CD8及び抗TCR抗体(BD Biosciences社)で染色し、引き続いて赤血球溶解を行ってOVA特異的CD8+T細胞を定量化した。標準的LSR-IIフローサイトメーター(BD Biosciences社)を用いて細胞を分析し、FlowJoソフトウェアを用いてFACSデータを分析した。四量体+細胞をTCR+CD8+細胞にゲーティングした。同時に、IFNγ産生OVA特異的CD4+又はCD8+T細胞を、赤血球溶解後にPBMCでELISPOTによって測定した。手短に言えば、マイクロプレート(Multiscreen HTS IP、Millipore社)を抗マウスIFNγ抗体(Diaclone社)でコーティングした。PBMC(0.2×106個/ウェル)を、対照培地又は完全培地(RPMI-Glutamax、10%ウシ胎児血清、抗生物質、β-メルカプトエタノール)中257~264(SIINFEKL)クラスI制限OVAペプチド(10μM)(Polypeptide Goup社、Strasbourg、フランス)の存在下で一晩培養した。ビオチン化抗IFN?(一致ペア、Diacolone社)、引き続いてストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ(Mabtech社)によって検出を行い、適切な基質(Biorad)を用いて明らかにした。ELISPOTリーダーシステムELP02(AID、ドイツ)を用いてスポットを数え、結果を0.2×106個PBMC当たりのサイトカイン産生細胞の数として表した。
【0171】
OVA特異的抗体応答の定量化
免疫化12日後、血清を後眼窩穿刺によって回収し、OVA特異的免疫グロブリンを標準的ELISAによって測定した。手短に言えば、Maxisorp 96ウェルプレートを、4℃で、炭酸塩/重炭酸塩緩衝液中OVA(10μg/ml)でコーティングした。PBS-5%ミルクで2時間ブロッキングした後、系列希釈血清を室温で2時間添加した。大規模な洗浄後、アルカリホスファターゼコンジュゲート抗マウスIgG、IgG1又はIgG2b(Jackson ImmunoResearch社)を各ウェルに添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。大規模な洗浄後、CDP-star(登録商標)使用準備済基質(Applied Biosystems社)を添加して、アルカリホスファターゼ活性を測定した。Centro LB 960ルミノメーター(Berthold社)を用いてマイクロプレートを読み取り、試料血清を陽性標準曲線と比較して、結果を任意単位(AU)で表した。
【0172】
インビボ腫瘍アッセイ
0.5×106個のB16F10-OVA細胞をマウスの剪毛した側腹部に皮下投与した。キャリパーを用いて腫瘍成長を1週間に2回測定して、(長さ×幅2)/2)として計算される腫瘍サイズを決定した。腫瘍が2cm3に達したら、マウスを屠殺した。
【0173】
腫瘍予防実験のために、マウスにVLP(Ova-cGAMP-VLP:推定11ngのcGAMP及び10ngのMLV p30/注射)を注射し、腫瘍細胞を14日後に皮下注射した。腫瘍治療設定のために、腫瘍細胞を皮下注射し、腫瘍が30~100mm3に達したら、マウスにVLP(cGAMP-VLP:推定33ngのcGAMP及び43ngのHIV p24/注射)を腫瘍内注射した。
【0174】
(実施例5)
cGAMPはSTING受容体を通してシグナル伝達してIFN-β産生をもたらすことが知られている。cGAMP-VLPがインビボでIFN-β応答を活性化するかどうかを試験するために、本発明者等は、Ova-cGAMP-VLP、cGAMP-VLP、Ovaタンパク質+cGAMP、Ovaタンパク質+CpG又はPBSの皮下注射3時間後にマウスの血清中のIFN-β濃度を測定した。実際、本発明者等は、cGAMP含有VLP及び合成cGAMPがIFN-βの産生を誘導するが、CpG又はPBSはしないことを観察した(図16A)。同様に、本発明者等は、cGAMP-VLPの腫瘍内注射3時間後に血清中でIFN-βを検出したが、PBSではしなかった。よって、cGAMP-VLPはインビボでIFN-β誘導をもたらす。
【0175】
次に、本発明者等は、予防的ワクチン接種設定におけるOva-cGAMP-VLPの免疫原性がVLP中のcGAMPの存在を要するかどうかを決定することを望んだ。実際、cGAMPはアジュバントであることが以前示された。重要なことに、アジュバント特性は通常、最適以下の抗原用量で検出されるので、いくつかの用量のVLPを試験することが要求された。この考えを試験するために、本発明者等は、マウスに、ある用量のOva-cGAMP-VLP、cGAMPを含まないOVA-VLP、Ovaタンパク質+cGAMP及びOvaタンパク質+CpGを皮下注射した(図17A)。注射11日後、本発明者等は、ELISPOTによってOva特異的IFN-g応答を測定した(図17B)。最高用量のVLP(用量1)で、Ova-cGAMP-VLPとOVA-VLPの両方がCD8+T細胞によるOva特異的IFN-g応答を誘導するので、Ova-cGAMP-VLPに含有されるcGAMPのアジュバント効果は明らかにならなかった(図17C)。対照的に、より低用量のVLP(用量1/3)、Ova-cGAMP-VLPのみはOva特異的IFNg CD8+T細胞応答を誘導したが、OVA-VLPはしなかった。よって、VLP中のcGAMPの存在がワクチン接種設定におけるアジュバント効果を誘導するのに要求される。
【0176】
方法
血清中のIFN-β濃度のアッセイ
種々のワクチンによる免疫化の3時間後にマウスの血清を回収した。次いで、製造業者の指示に従って、VeriKine-HSキット(PBL laboratories社)を用いて、ELISAによってIFN-βを測定した。
(実施例4の方法を参照されたい)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
【配列表】
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