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特許7072659リチウム-硫黄二次電池用バインダー及びこれを含むリチウム-硫黄二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】リチウム-硫黄二次電池用バインダー及びこれを含むリチウム-硫黄二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20220513BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220513BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220513BHJP
   C08F 220/04 20060101ALI20220513BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20220513BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20220513BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20220513BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220513BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M10/052
C08F220/04
C08F220/10
C08L33/02
C08L33/04
H01M4/139
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020536129
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 KR2019004385
(87)【国際公開番号】W WO2019212162
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】10-2018-0051171
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0051175
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】テク・ギョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】キョン・オ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・キョン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ス・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンエ・ユン
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特許第6150031(JP,B1)
【文献】国際公開第2017/122540(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/186363(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056782(WO,A1)
【文献】特開2010-140841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-62
H01M 10/052-0587
C08F 220/04
C08F 220/10
C08L 33/02
C08L 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1単量体に由来した第1重合単位と第2単量体に由来した第2重合単位から成る共重合体を含み、
前記第1単量体は一つ以上の官能基を有するアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートであり、
前記第2単量体はアクリル酸またはメタクリル酸であり、
前記官能基は、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、メトキシメトキシ基、2-エトキシエトキシ基、3-プロポキシプロポキシ基及び4-ブトキシブトキシ基からなる群から選択され、
前記共重合体は10ないし50重量%の第1重合単位を含む、リチウム-硫黄二次電池用バインダー。
【請求項2】
前記第2重合単位はリチウム化された形態を有するものである請求項1に記載のリチウム-硫黄二次電池用バインダー。
【請求項3】
前記アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートにおけるアルキルは1ないし6の炭素数を有することを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム-硫黄二次電池用バインダー。
【請求項4】
前記共重合体は30ないし120℃のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用バインダー。
【請求項5】
前記共重合体は、水に対する溶解度が10ないし70重量%で、エーテル系溶媒に対する溶解度が0.001ないし1重量%であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用バインダー。
【請求項6】
前記共重合体は50,000ないし5,000,000の重量平均分子量を有することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用バインダー。
【請求項7】
前記バインダーは0.1ないし10nmの粒径を有することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム-硫黄二次電池用バインダー。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載のバインダー、正極活物質及び導電材を含むリチウム-硫黄二次電池の正極活性層製造用組成物。
【請求項9】
前記組成物は、組成物内の固形分100重量部に対して、
0.001ないし10重量部のバインダー;
25ないし95重量部の正極活物質;及び
2ないし70重量部の導電材を含むことを特徴とする請求項に記載のリチウム-硫黄二次電池の正極活性層製造用組成物。
【請求項10】
前記組成物は、組成物内の固形分100重量部に対して、
0.1ないし20重量部の導電材分散材をさらに含むことを特徴とする請求項に記載のリチウム-硫黄二次電池の正極活性層製造用組成物。
【請求項11】
請求項に記載の組成物を集電体上に塗布して形成された正極活性層を含むリチウム-硫黄二次電池用正極。
【請求項12】
請求項11に記載の正極を含むリチウム-硫黄二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年5月3日付韓国特許出願第10-2018-0051171号及び韓国特許出願第10-2018-0051175号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、リチウム-硫黄二次電池用バインダー及びこれを含むリチウム-硫黄二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池の応用領域が電気自動車(EV)やエネルギー貯蔵装置(ESS)などに拡がることにつれ、重量対比相対的に低いエネルギー貯蔵密度(~250Wh/kg)を有するリチウム-イオン二次電池は、このような製品に対する適用に限界がある。これと違って、リチウム-硫黄二次電池は理論上、重量対比高いエネルギー貯蔵密度(~2,600Wh/kg)を具現することができるので、次世代二次電池技術として脚光を浴びている。
【0004】
リチウム-硫黄二次電池は、S-S結合(Sulfur-Sulfur Bond)を有する硫黄系物質を正極活物質で使用し、リチウム金属を負極活物質で使用した電池システムを意味する。前記正極活物質の主材料である硫黄は、世界中に資源量が豊かで、毒性がなく、原子当たり低い重量を有する長所がある。
【0005】
リチウム-硫黄二次電池は、放電時に負極活物質であるリチウムが電子を出してイオン化されながら酸化され、正極活物質である硫黄系物質が電子を受け入れて還元される。ここで、リチウムの酸化反応はリチウム金属が電子を出してリチウム陽イオン形態に変換される過程である。また、硫黄の還元反応は、S-S結合が2個の電子を受け入れて硫黄陰イオン形態に変換される過程である。リチウムの酸化反応によって生成されたリチウム陽イオンは電解質を通じて正極に伝達され、硫黄の還元反応によって生成された硫黄陰イオンと結合して塩を形成する。具体的に、放電前の硫黄は環形のS構造を持っているが、これは還元反応によってリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide、LiS)に変換される。リチウムポリスルフィドが完全に還元される場合は、リチウムスルフィド(LiS)が生成される。
【0006】
リチウム-硫黄二次電池は高いエネルギー貯蔵密度の長所を有しているにもかかわらず、実際適用するにあたり、幾つかの問題点が存在する。具体的に、負極で使われるリチウム金属の不安定性問題、正極の低い伝導性問題、電極製造の際に硫黄系物質の昇華問題、及び反復的な充放電時の硫黄系物質の損失問題などが存在することがある。特に、放電時に正極で生成されるリチウムポリスルフィドが充電時に負極のリチウム金属表面に移動して還元されて発生する正極での硫黄系物質の溶出問題は、リチウム-硫黄二次電池の商用化のために必ず克服しなければならない問題である。
【0007】
該当技術分野では、このような硫黄系物質の溶出を抑制するために様々な試みがあった。一例として、硫黄を吸着する性質を有する添加剤を正極合剤に添加する方法、硫黄表面をコーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネートまたはコーティング元素のヒドロキシカーボネートを含む物質で表面処理する方法、及び炭素材をナノ構造体で製造し、ここにリチウムポリスルフィドを拘束する方法を挙げることができる。
【0008】
しかし、添加剤を追加する方法の場合、伝導性の劣化問題及び副反応の危険性があり、表面処理技術の場合、処理工程中に活物質が流失して費用の側面で好ましくない短所があり、カーボンナノ構造体の場合は製造工程が複雑という短所がある。
【0009】
また、このような従来技術は、リチウム-硫黄二次電池の容量特性と寿命特性を大きく改善することができない問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国公開特許第10-2002-0011563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記問題点を解決するために、本発明はアクリル酸またはメタクリル酸単量体と水溶性を向上させることができる特定官能基を含む単量体を重合して形成された共重合体をバインダーで使用することにより、電極での接着力及び電池での性能を向上させることができるリチウム-硫黄二次電池用バインダーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1側面によれば、
第1単量体に由来した第1重合単位と第2単量体に由来した第2重合単位を有する共重合体を含み、
前記第1単量体は一つ以上の官能基を有するアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートであり、
前記第2単量体は、アクリル酸またはメタクリル酸であり、
前記第1単量体における前記官能基は、1ないし4の炭素数を有するアルキルに置換または非置換されたヒドロキシ基、チオール基またはアミノ基の単独または反復構造を有する官能基である、リチウム-硫黄二次電池用バインダーを提供する。
【0013】
本発明の一具体例において、前記第2重合単位はリチウム化された(lithiated)形態を有する。
【0014】
本発明の一具体例において、前記官能基は、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、メトキシメトキシ基、2-エトキシエトキシ基、3-プロポキシプロポキシ基及び4-ブトキシブトキシ基からなる群から選択される。
【0015】
本発明の一具体例において、前記アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートにおけるアルキルは1ないし6の炭素数を有する。
【0016】
本発明の一具体例において、前記共重合体は10ないし50重量%の第1重合単位を含む。
【0017】
本発明の一具体例において、前記共重合体は30ないし120℃のガラス転移温度を有する。
【0018】
本発明の一具体例において、前記共重合体は水に対する溶解度が10ないし70重量%で、エーテル系溶媒に対する溶解度が0.001ないし1重量%である。
【0019】
本発明の一具体例において、前記共重合体は50,000ないし5,000,000の重量平均分子量を有する。
【0020】
本発明の一具体例において、前記バインダーは0.1ないし10nmの粒径を有する。
【0021】
本発明の第2側面によれば、
上述したバインダー、正極活物質及び導電材を含むリチウム-硫黄二次電池の正極活性層製造用組成物を提供する。
【0022】
本発明の一具体例において、前記組成物は組成物内の固形分100重量部に対して、0.001ないし10重量部のバインダー;25ないし95重量部の正極活物質;及び2ないし70重量部の導電材を含む。
【0023】
本発明の一具体例において、前記組成物は組成物内の固形分100重量部に対して、0.1ないし20重量部の導電材分散材をさらに含む。
【0024】
本発明の第3側面によれば、
上述した組成物を集電体上に塗布して形成された正極活性層を含むリチウム-硫黄二次電池用正極を提供する。
【0025】
本発明の第4側面によれば、
上述した正極を含むリチウム-硫黄二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるリチウム-硫黄二次電池用バインダーは、正極を製造する時に正極活物質及び導電材との強い相互作用を通じて優れた接着性能を有する。また、前記バインダーは、正極を製造する時に導電材で使用する炭素の均一な分散及び2次構造の形成を手伝って、これを使用して製造された正極で活物質に対する高い吸着力を維持することができる。
【0027】
前記バインダーはエーテル系混合物からなる電解液に対して低い溶解度を有するため、これを使用して製造された正極は高い安定性を有することができる。
【0028】
前記バインダーは、水溶性高分子として電極を製造する時に乾燥段階で低い乾燥温度及び短い乾燥時間でも効率的に乾燥が可能であるため、電極製造時に発生し得る硫黄系物質の昇華による電極容量低下の問題点を解消することができる。
【0029】
よって、本発明によるバインダーを使用して製造されたリチウム-硫黄二次電池はサイクル特性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明によって提供される具体例は、下記の説明によっていずれも達成されることができる。下記の説明は本発明の好ましい具体例を記述するものとして理解しなければならず、本発明が必ずこれに限定されないことを理解しなければならない。
【0031】
本明細書において、「(メタ)((meth))」を含む化合物の名称は、メトが選択的に記載されたことを意味する。例えば、(メタ)アクリル酸((meth)acrylic acid)は、メタクリル酸またはアクリル酸を意味し、(メタ)アクリレート((meth)acrylic acid)はメタクリレートまたはアクリレートを意味する。
【0032】
本明細書において、「溶解度」は下記の溶解度測定方法によって測定された溶解度を意味し、以下で温度に対して特に言及しないとしても溶解度は常温(25℃)で測定された溶解度である。
【0033】
バインダー
本発明は、バインダーと正極活物質及び集電体の間の接着力が向上して安定的な正極を形成することができ、正極から硫黄系物質の溶出が抑制され、電池の寿命特性を改善することができるリチウム-硫黄二次電池用バインダーを提供する。
【0034】
本発明によるバインダーは、第1単量体に由来した第1重合単位と第2単量体に由来した第2重合単位を有する共重合体を含む。共重合体の重合単位は共重合体を構成する一部分であって、その一部分が重合前にどんな単量体に由来のかによって仕分けられる。例えば、第1単量体に由来した第1重合単位は、共重合体の重合時、第1単量体を使用することで共重合体内に存在する部分を意味する。特に、エチレンまたはこれの重合体を単量体とする付加重合は、重合によってエチレンの二重結合が単一結合に変形されること以外は構造上の変形がないため、共重合体で重合単位は容易に仕分けられる。
【0035】
前記第1単量体は一つ以上の官能基を有するアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートであり、ここで前記官能基は、1ないし4の炭素数を有するアルキルに置換または非置換されたヒドロキシ基、チオール基またはアミノ基の単独または反復構造を有する官能基である。「アルキルに置換」は、ヒドロキシ基、チオール基及びアミノ基の一つまたはそれ以上の水素がアルキルに代替されることを意味し、例えば、2の炭素数を有するアルキルに置換されたヒドロキシ基はエトキシ基である。「単独構造」は1ないし4の炭素数を有するアルキルに置換または非置換されたヒドロキシ基、チオール基またはアミノ基そのものを意味し、「反復構造」は1ないし4の炭素数を有するアルキルに置換または非置換されたヒドロキシ基、チオール基またはアミノ基が2回以上繰り返されて形成された構造を意味する。例えば、2の炭素数を有するアルキルに置換されたヒドロキシ基の単独構造はエトキシ基で、2の炭素数を有するアルキルに置換されたヒドロキシ基が2回繰り返された構造は2-エトキシエトキシ基である。具体的に、前記官能基は、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、メトキシメトキシ基、2-エトキシエトキシ基、3-プロポキシプロポキシ基及び4-ブトキシブトキシ基からなる群から選択される。前記官能基は、共重合体の枝(branch)の末端に存在してもよく、前記官能基の存在によって水または電解液用溶媒に対する溶解度が調節されることができる。また、前記官能基は、バインダーにポリスルフィドの吸着などの機能性を与える。前記アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートにおけるアルキルの炭素数によって共重合体の枝の長さが決定され、これによって官能基の位置が変わることがある。本発明の具体例によると、前記アルキルは1ないし6、好ましくは2ないし4の炭素数を有する。前記アルキルの炭素数が6を超える場合、共重合体内で官能基が占める割合が減ってバインダーに官能基を追加することで得られる機能性が低下する。本発明の具体例によると、前記第1単量体は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(2-hydroxyethyl(meth)acrylate)、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(3-hydroxypropyl(meth)acrylate)、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(4-hydroxybutyl(meth)acrylate)、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート(2-methoxyethyl(meth)acrylate)、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート(3-methoxypropyl(meth)acrylate)、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート(4-methoxybutyl(meth)acrylate)、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート(2-ethoxyethyl(meth)acrylate)、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート(3-ethoxypropyl(meth)acrylate)、4-エトキシブチル(メタ)アクリレート(4-ethoxybutyl(meth)acrylate)、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート(2-(2-ethoxyethoxy ethyl acrylate)、2-(メチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート(2-(methylamino)ethyl(meth)acrylate)、3-(メチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート(3-(methylamino)propyl(meth)acrylate)、4-(メチルアミノ)ブチル(メタ)アクリレート(4-(methylamino)butyl(meth)acrylate)、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート(2-(N,N-dimethylamino)ethyl(meth)acrylate)、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート(3-(N,N-dimethylamino)propyl(meth)acrylate)及び4-(N,N-ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリレート(4-(N,N-dimethylamino)butyl(meth)acrylate)からなる群から選択されてもよい。前記第1単量体は、好ましくは4-ヒドロキシブチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレートまたは2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレートであってもよく、より好ましくは4-ヒドロキシブチルアクリレートであってもよい。前記第2単量体は、アクリル酸またはメタクリル酸である。前記第2単量体でアクリル酸またはメタクリル酸ではなくアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートを使用する場合、バインダーの水溶性が顕著に落ちて本発明で目的する効果を達成することができない。
【0036】
前記共重合体は10ないし50重量%、好ましくは15ないし40重量%、より好ましくは20ないし30重量%の第1重合単位を含む。前記第1重合単位は、上述した内容のようにアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート構造内で一つ以上の官能基を有して官能基内に機能性を与える。前記共重合体が10重量%未満の第1重合単位を含む場合、バインダーに上述した機能性を与えにくい。また、前記共重合体が50重量%超の第1重合単位を含む場合、バインダーに上述した機能性を与えることができても、相対的に第2重合単位の含量が低くなって第2重合単位による基本的にバインダーに要求される機能性を確保しにくい。一具体例として、前記共重合体で第1重合単位の含量が10重量%未満であったり50重量%超の場合、下記の実施例水準で接着力を具現することができないし、特に50重量%超の場合、ヒドロキシ基が多くなって電解質の副反応が加速化し、充放電サイクルが短くなる限界がある。第2重合単位は、前記共重合体内で第1重合単位を除いた部分であり、前記共重合体は50重量%以上の第2重合単位を含む。前記共重合体が50重量%以上で第2重合単位を含む場合、バインダーが正極活物質及び導電材とも強い相互作用を有しながらも正極活物質及び導電材それぞれの機能性を低下させないので、リチウム-硫黄二次電池の性能を向上させることができる。
【0037】
前記共重合体は-50ないし150℃、好ましくは30ないし120℃、より好ましくは40ないし80℃のガラス転移温度を有する。前記ガラス転移温度を有する共重合体を使用する場合、集電体との適切な接着性、電極の優れた物理的吸着力、及び電解質に対する耐性を確保することができる。
【0038】
前記共重合体は、水に対する溶解度が10重量%以上、好ましくは10ないし70重量%である。ここで、水に対する溶解度が10重量%(または70重量%)ということは、水100gに対して共重合体が最大10g(または70g)で溶解されることができることを意味する。正極の製造時に上述した溶解度を有する共重合体を含むバインダーを水とともに使用して炭素の均一な分散を誘導し、乾燥段階で低い乾燥温度及び短い乾燥時間でも水分を効率的に取り除くことができるので、正極活物質の損失なしに電極の容量を維持することができる。また、前記共重合体はエーテル系溶媒に対する溶解度が5重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.001ないし1重量%である。ここで、エーテル系溶媒に対する溶解度が0.001重量%(または1重量%)ということは、エーテル系溶媒100gに対して共重合体が最大0.001g(または1g)が溶解されることができることを意味する。エーテル系溶媒は主に電池内の電解液で使用されるので、前記エーテル系溶媒に対する溶解度は電解液に対する溶解度に解釈されることができる。前記共重合体が電解液に対して前記範囲の低い溶解度を有する時、前記共重合体を含むバインダーを利用して製造された正極活物質層が電極の電解液に対する優れた耐性を有し、これによって電池は高いサイクル安定度を示すことができる。
【0039】
前記共重合体は50,000ないし5,000,000、好ましくは500,000ないし4,000,000の重量平均分子量を有する。前記重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatograph))で測定した標準ポリスチレンに対して換算した数値である。本明細書で別に定義しない限り、特定化合物に対する重量平均分子量は前記方法によって測定された数値を意味する。
【0040】
前記共重合体を含むバインダーは0.1ないし10nmの粒径を有する。
【0041】
本発明の具体例によると、前記共重合体はランダム共重合体であってもよい。前記共重合体をランダム共重合体で製造することで、相互異なる単量体に存在する官能基を共重合体内で効率的に分散させることができる。
【0042】
前記共重合体は様々な方式で製造されてもよい。上述した条件に合わせて必要な単量体を配合した後、単量体の混合物を溶液重合(solution polymerization)、塊状重合(bulk polymerization)、懸濁重合(suspension polymerization)または乳化重合(emulsion polymerization)の重合方式で共重合体を重合することができる。本発明の一具体例によると、前記重合方式は溶液重合が好ましい。前記溶液重合の具体的な条件は、該当技術分野で知られた条件であれば特に制限されないが、溶液重合の溶媒は溶液重合後、さらに精製工程なしに重合体溶液をそのまま使用するために、110℃以下の沸点を持つ溶媒が好ましい。前記溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、メチルエチルケトン及び水からなる群から選択されてもよい。本発明の一具体例によると、前記溶媒は上述した沸点及び環境的な影響を考慮して水が好ましい。
【0043】
前記共重合体は、重合後にリチウム供給物質を添加してリチウム化(lithiated)されてもよい。リチウム化された共重合体をバインダーで使用する場合、リチウム-硫黄二次電池内へのリチウムの追加供給源になることができて、リチウム-硫黄二次電池の性能を向上させることができる。前記共重合体のリチウム化は共重合体を構成する官能基の特性上、主に第2重合単位で起きる。リチウム化によって第2重合単位に含まれたカルボキシル基の水素がリチウムに置換される。カルボキシル基のような酸形態(acid form)の官能基を含むバインダーを使用する場合、前記官能基が電解質のリチウムと置換されて電解質内のリチウムイオン濃度を減少させるなど、電池の性能に否定的な役目をすることがあるので、前記官能基は可能であれば最大限にリチウム化されることが好ましい。また、リチウム化していないバインダーを使用した電極は、酸形態の官能基が存在して電解液及び残存している水分を分解することができ、これによって電池内部にガスが発生して電池が膨脹することがある。
【0044】
リチウム化反応時、リチウム供給物質は、例えば、LiOH(またはLiOH・HO)のような塩基性物質が使用されてもよく、塩基性物質が使用される場合、中和反応によってリチウム化反応が進められる。中和反応は反応性がとても大きいので、酸性官能基のモル数とリチウム供給物質(塩基性物質)を1:1の割合で投入しても、ほぼ全ての酸性官能基がリチウム化されることがある。もし、酸性官能基のモル数に比べて過量のリチウム供給物質を投入する場合、未反応リチウム供給物質が存在するようになるが、前記未反応リチウム供給物質は電池に否定的な影響を及ぼすことがあるので、これを取り除くための別途過程が要求される。未反応リチウム供給物質を取り除くことができなかった状態で電極を製造した後でセル性能を評価すると、Cレート(c-rate)を増加させる時に大きく抵抗がかかる結果が招かれる。
【0045】
正極活性層
本発明は、上述したバインダー、正極活物質及び導電材を含む組成物から形成された正極活性層を提供する。
【0046】
前記組成物でバインダーの割合は、目的とする電池の性能を考慮して選択することができる。本発明の一具体例によると、前記組成物は組成物内の固形分100重量部に対して0.001ないし10重量部のバインダーを含む。含量の基準となる組成物内の固形分は、組成物内で溶媒、及びバインダーに含まれることができる単量体などを除いた固体成分を意味する。
【0047】
前記組成物で正極活物質の割合は、目的とする電池の性能を考慮して選択することができる。本発明の一具体例によると、前記組成物は組成物内の固形分100重量部に対して25ないし95重量部の正極活物質を含む。前記正極活物質は硫黄元素(Elemental sulfur、S)、硫黄-炭素複合体、硫黄系化合物またはこれらの混合物から選択されてもよいが、必ずこれに限定されることではない。前記硫黄系化合物は具体的に、Li(n≧1)、有機硫黄化合物または炭素-硫黄ポリマー((C)n:x=2.5~50、n≧2)などであってもよい。これらは硫黄物質単独では電気伝導性がないため導電材と複合して適用する。
【0048】
また、前記硫黄-炭素複合体は、硫黄が電解質に流出されることを減少させ、硫黄が含まれた電極の電気伝導度を高めるために炭素と硫黄を混合した正極活物質の一様態である。
【0049】
前記硫黄-炭素複合体を構成する炭素物質は、結晶質または非晶質炭素であってもよく、導電性炭素であってもよい。具体的に、グラファイト(graphite)、グラフェン(graphene)、スーパーp(Super P)、カーボンブラック、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維、カーボンナノ繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤ、カーボンナノリング、炭素織物及びフラーレン(C60)からなる群から選択されるものであってもよい。
【0050】
このような硫黄-炭素複合体では硫黄-カーボンナノチューブ複合体などがある。具体的に、前記硫黄-カーボンナノチューブ複合体は、3次元構造のカーボンナノチューブ凝集体、及び前記カーボンナノチューブ凝集体の内部表面及び外部表面のうち、少なくとも一部に備えられた硫黄または硫黄化合物を備える。
【0051】
本発明の一具体例による硫黄-カーボンナノチューブ複合体は、カーボンナノチューブの3次元構造の内部に硫黄が存在するので、電気化学反応で溶解性があるポリスルフィドが生成されてもカーボンナノチューブの内部に位置できるようになれば、ポリスルフィドが溶出する時も3次元で絡まっている構造が維持され、正極構造が崩壊される現象を抑制することができる。その結果、前記硫黄-カーボンナノチューブ複合体を含むリチウム-硫黄二次電池は、高ローディング(high loading)でも高容量を具現することができる長所がある。また、前記硫黄または硫黄系化合物は、前記カーボンナノチューブ凝集体の内部気孔に備えられてもよい。
【0052】
前記カーボンナノチューブは線状導電性炭素を意味し、具体的にカーボンナノチューブ(CNT)、黒鉛性ナノ繊維(Graphitic nanofiber、GNF)、カーボンナノ繊維(CNF)または活性化炭素繊維(Activated carbon fiber、ACF)が使用されてもよく、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)または多層カーボンナノチューブ(MWCNT)のいずれも使用可能である。
【0053】
本発明の一具体例によると、前記硫黄-炭素複合体は硫黄または硫黄系化合物を炭素の外部表面及び内部に含浸させて製造し、選択的に、前記含浸させる段階以前、以後または前後で炭素の直径を調節する段階を経ることができる。前記含浸させる段階は、炭素と硫黄または硫黄系化合物粉末を混合した後、加熱して溶融された硫黄または硫黄系化合物を炭素に含浸させて行ってもよく、このような混合時に乾式ボールミル方法、乾式ゼットミル方法または乾式ダイノミル方法を利用することができる。
【0054】
前記組成物で導電材の割合は、目的とする電池の性能を考慮して選択することができる。本発明の一具体例によると、前記組成物は組成物内の固形分100重量部に対して2ないし70重量部の導電材を含む。前記導電材は、天然黒鉛または人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラックまたはサーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウムまたはニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体から選択されてもよいが、必ずこれに限定されることではない。
【0055】
前記組成物は、上述したバインダー、正極活物質及び導電材以外に別の成分をさらに含むことができる。前記組成物に追加できる成分としては、架橋剤または導電材分散剤がある。前記架橋剤は、バインダーの高分子が架橋ネットワークを形成させるために高分子の架橋性官能基と反応することができる2以上が官能基を有する架橋剤が使用されてもよい。前記架橋剤は特に限定されることではないが、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤または金属キレート架橋剤から選択されてもよい。本発明の一具体例によると、前記架橋剤はイソシアネート架橋剤が好ましい。前記架橋剤は、組成物内の固形分100重量部を基準にして0.0001ないし1重量部が組成物にさらに含まれてもよい。
【0056】
前記導電材分散剤は、非極性の炭素系導電材を分散してペースト化するのに役立つ。前記導電材分散剤は特に限定されることではないが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系化合物から選択されてもよい。本発明の一具体例によると、前記導電材分散剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)が好ましい。前記導電材分散剤は、組成物内の固形分100重量部に対して0.1ないし20重量部が組成物にさらに含まれてもよい。
【0057】
前記組成物を形成するために溶媒が使用されてもよい。溶媒の種類は目的とする電池の性能などを考慮して適切に設定することができる。本発明の一具体例によると、前記溶媒はN-メチル-2-ピロリドン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、プロピオン酸メチルまたはプロピオン酸エチルなどの有機溶媒、及び水から選択することができる。本発明のバインダーは10重量%以上の水に対する溶解度を有するので、本発明では溶媒として水が好ましく使用されることができる。水を溶媒で使用する場合、乾燥温度や環境的な側面で有利である。
【0058】
前記組成物によって形成された活性層の厚さは、目的とする性能を考慮して適切に選択されてもよく、特に限定されることではない。本発明の一具体例によると、前記活性層の厚さは1ないし200μmであることが好ましい。
【0059】
リチウム-硫黄二次電池
本発明は、上述した活性層を集電体上に形成して正極を製造した後、負極、分離膜、電解液の構成を追加してサイクル性能が改善されたリチウム-硫黄二次電池を提供する。
【0060】
本発明によるリチウム-硫黄二次電池を構成する正極は、正極集電体、及び前記正極集電体上に形成された正極活性層を含む。前記正極活性層は上述した内容にしたがって製造される。前記正極集電体は、正極製造で一般的に使われるものであれば特に限定されない。本発明の一具体例によると、前記正極集電体の種類は、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素及びアルミニウムから選択された一つ以上の素材であってもよく、必要な場合、前記素材の表面にカーボン、ニッケル、チタンまたは銀を処理して使用することができる。本発明の一具体例によると、前記正極集電体の形態は、フィルム、シート、ホイル(foil)、ネット(net)、多孔質体、発泡体及び不織布体から選択されてもよい。正極集電体の厚さは特に限定されず、正極の機械的強度、生産性や電池の容量などを考慮して適切な範囲で設定することができる。
【0061】
前記集電体上に正極活性層を形成する方法は、公知された塗布方法によるし、特に限定されることではない。例えば、塗布方法としてバーコーティング法、スクリーンコーティング法、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法または押出法が適用されることができる。前記集電体上に正極活性層を塗布する量は特に限定されることではなく、最終的に目的とする正極活性層の厚さを考慮して調節する。また、前記正極活性層の形成工程前または後に正極を製造するために要求される公知の工程、例えば、圧延や乾燥工程が行われてもよい。
【0062】
本発明によるリチウム-硫黄二次電池を構成する電解液は、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役目をする非水性溶媒であれば、特に限定されない。本発明の一具体例によると、前記溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系または非プロトン性溶媒を使用することができる。前記カーボネート系溶媒では、具体的にジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、またはブチレンカーボネート(BC)などが使用されてもよい。前記エステル系溶媒では、具体的にメチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、1,1-ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネイト、エチルプロピオネイト、γ-ブチロラクトン、デカラクトン(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(carprolactone)などが使用されてもよい。前記エーテル系溶媒では、具体的にジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、またはポリエチレングリコールジメチルエーテルなどが使用されてもよい。前記ケトン系溶媒では、具体的にシクロヘキサノンなどが使用されてもよい。前記アルコール系溶媒では、具体的にエタノール、イソプロピルアルコールなどが使用されてもよい。前記非プロトン性溶媒では、具体的にアセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソラン(DOL)などのジオキソラン類、またはスルホラン(sulfolane)などが使用されてもよい。前記非水性有機溶媒は単独または一つ以上混合して使用されてもよく、一つ以上混合して使用される場合の混合の割合は目的とする電池性能によって適切に調節することができ、特に1,3-ジオキソランとジメトキシエタンの1:1体積比の混合液が好ましい。
【0063】
本発明によるリチウム-硫黄二次電池の負極は、負極集電体、及び負極集電体上に形成された負極活物質層を含む。
【0064】
前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー及び導電材を含む。前記負極活物質では、リチウムイオン(Li)を可逆的に吸蔵(Intercalation)または放出(Deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成できる物質、リチウム金属またはリチウム合金を使用することができる。前記リチウムイオン(Li)を可逆的に吸蔵または放出することができる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。前記リチウムイオン(Li)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、チタンナイトレートまたはシリコンであってもよい。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群から選択される金属の合金であってもよい。
【0065】
前記バインダーは上述したバインダーに限定されず、該当技術分野でバインダーで使用されてもよいものであれば、いずれも可能である。
【0066】
前記負極活物質及び導電材を除いた集電体などの構成は、上述した正極で使用された物質及び方法などが使用されてもよい。
【0067】
本発明によるリチウム-硫黄二次電池の分離膜は、電極を物理的に分離する機能を有する物理的な分離膜であって、通常の分離膜で使われるものであれば特に制限されずに使用可能であり、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力に優れるものが好ましい。
【0068】
また、前記分離膜は正極と負極を互いに分離または絶縁させながら正極と負極の間にリチウムイオンが輸送できるようにする。このような分離膜は気孔度30~50%の多孔性で、非伝導性または絶縁性の物質からなってもよい。
【0069】
具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを使用してもよく、高融点のガラス繊維などからなった不織布を使用することができる。この中で、好ましくは多孔性高分子フィルムを使用する。
【0070】
もし、バッファー層及び分離膜として全て高分子フィルムを使用すれば、電解液の含浸量及びイオンの伝導特性が減少し、過電圧の減少及び容量特性改善効果が微々たるものである。逆に、全て不織布素材を使用する場合は、機械的剛性が確保されることができず、電池短絡の問題が発生する。しかし、フィルム型の分離膜と高分子不織布バッファー層を一緒に使えば、バッファー層の採用による電池性能改善効果とともに機械的強度も確保することができる。
【0071】
本発明の好ましい一具体例によると、エチレン単独重合体(ポリエチレン)高分子フィルムを分離膜で、ポリイミド不織布をバッファー層で使用する。この時、前記ポリエチレン高分子フィルムは厚さが10ないし25μm、気孔度が40ないし50%であることが好ましい。
【0072】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明がこれに限定されることではない。
【0073】
実施例
1.バインダーの製造
製造例1
100mLの丸底フラスコに2.89gのアクリル酸(Acrylic acid、AA)、0.72gの4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-Hydroxybutyl acrylate、HBA)及び32.50gの水を投入し、入口を封止(sealing)した。30分間窒素バブリング(bubbling)を通じて酸素を取り除いて、前記フラスコを60℃に加熱されたオイルバス(oil bath)に浸した後、4.00mgの過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate)と1.18mgの2-メルカプトエタノール(2-mercapto ethanol)を投与して反応を開始した。24時間後に反応を終了し、アクリル系共重合体を収得した(転換率:99%、重量平均分子量(Mw):3,140,000)。
【0074】
製造例2ないし5
重合時に使われた単量体の種類及び割合を下記表1のように調節したことを除いて、製造例1と同様の方法で共重合体を製造して収得した。
【0075】
【表1】
【0076】
比較製造例1
シグマ-アルドリッチ(Sigma-aldrich)社の分子量53万水準のポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene difluoride、PVDF)を購入して使用した。
【0077】
比較製造例2
シグマ-アルドリッチ(Sigma-aldrich)社の分子量125万水準のポリアクリル酸(Polyacrylic acid)を購入して使用した。
【0078】
2.バインダー性能評価
(1)実験方法
溶解度測定方法
1gの溶質(単量体または高分子)を5gの溶媒(水または電解液)に入れて、常温(25℃)で30分間撹拌した後、溶解されていない残留溶質を取り除く。取り除いた残留溶質の量を測定して溶媒に溶けている溶質の量を測定し、その測定された量を100gの溶媒に対する数値に換算して溶解度を測定する。
【0079】
重合体の転換率測定方法
反応物を20mg/mLの濃度で溶媒に希釈して5mg/mLのアセトンを標準物質(Standard material)で添加した後、ガスクロマトグラフィ(Gas chromatography、PerkinElmer)で測定する。アセトンピークの面積対比モノマーピークサイズの割合の変化で転換率を計算する。
【0080】
<分析条件>
-溶媒:水
-初期温度:50℃で3分、ランプ(Ramp):200℃まで30℃/分
-注入体積(Injection volume):0.5μL
【0081】
<転換率計算>
転換率(%)=(Aini-Afin)/Aini×100
ini:反応開始時のモノマーピークのアセトンピーク対比面積相手比
fin:反応終了時のモノマーピークのアセトンピーク対比面積相手比
【0082】
高分子の分子量測定方法
重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(PDI)はGPCを利用して以下の条件で測定し、検量線の製作にはアジレントシステム(Agilent system)の標準ポリスチレンを使用して測定結果を換算した。
【0083】
<測定条件>
測定機:Agilent GPC(Agilent 1200 series、U.S.)
カラム:PLGel-M、PLGel-L直列連結
カラム温度:40℃
溶離液:N,N-ジメチルホルムアルデヒド
流速:1.0mL/min
濃度:~1mg/mL(100μL注入)
【0084】
正極の製造
カーボンパウダー:硫黄の重量比が30:70の混合物を溶融拡散(melt diffusion)させてカーボン及び硫黄の複合体を得た。正極合剤(88.0重量%のカーボン及び硫黄の複合体、7.0重量%の気相成長炭素繊維(VGCF導電材)、5.0重量%のバインダー)を溶媒の水に添加して正極スラリーを製造した後、20μm厚さのアルミニウム集電体上にコーティングして50℃で最小2時間乾燥した後、80℃で12時間以内の間追加乾燥してローディング量が5.5mAh/cmである正極を製造した。溶媒がN-メチルピロリドンの場合、80℃で24時間乾燥してローディング量が5.0mAh/cmである正極を製造した。
【0085】
接着力測定方法
製造された正極を2cm×12cm大きさで打ち抜いて準備する。ガラススライドグラスの上に両面テープを貼って、その上に3Mテープの裏面を貼って接着面が上に上がるように準備する。接着面の上に準備しておいた正極活性層面を貼って測定サンプルを製造する。グラスの上に貼っている負極の一端を約0.5cm取り外した後、テクスチャ分析装置(Texture analyzer)の下側クランプで掴んで、正極の垂れた他方を上側クランプで掴んだ後、2gfの力で引っ張って集電体から負極スラリーが落ちる力を測定する。
【0086】
電池の製造
電池の構成として上述した正極、負極として45μm厚さのリチウムホイル、分離膜としてポリオレフィン膜(CelgardR 2400)を使用した。また、電解液としては0.38MのLiN(CFSO及び0.31MのLiNOが1,3-ジオキソラン及びジメトキシエタンの混合液に溶解された電解液を使用して電池の製造を完成した。
【0087】
サイクル特性評価方法
機器:100mA級充放電機
充電:0.3C、定電流/定電圧モード
放電:0.5C、定電流モード、1.8V
サイクル温度:25℃
【0088】
(2)バインダー評価
実施例1:製造例1によるバインダーの評価
前記製造例1によって製造されたバインダーを使用して正極を製造し、上述した内容にしたがって正極、負極、分離膜及び電解液を含む電池を製造した。電池の製造過程で接着力などを測定し、その結果を下記表2に示す。
【0089】
実施例2ないし5:製造例2ないし5によるバインダーの評価
前記製造例2ないし5によって製造されたバインダーを使用して正極を製造したことを除いて、実施例1と同様に接着力などを測定し、その結果を下記の表2に示す。
【0090】
比較例1及び2:比較製造例1及び2によるバインダーの評価
前記比較製造例1及び2によって製造されたバインダーを使用して正極を製造したことを除いて、実施例1と同様に接着力などを測定し、その結果を下記の表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
前記表2によると、本発明の実施例によるバインダーを使用すれば、比較例のバインダーを使用する場合に比べて集電体に対する接着力が向上されることが確認された。これは本発明の実施例によるバインダーに含まれた共重合体が物理的及び化学的に電極活性層内の成分と組み合わせて電解液に対して耐性が高い安定的な電極を形成できるためであると判断される。また、バインダー内で低いガラス転移温度を有する単量体を導入することで、電極の柔軟性が向上されて電極の接着力が高くなったし、これは工程性の改善及び電池性能の改善につながることができる。
【0093】
(3)バインダーを適用した電池性能評価
実施例1及び比較例1による電池を0.1C放電/充電2.5回、0.2C充電/放電3回、0.3C充電/0.5C放電の順に1.5Vと2.8Vの間で150サイクルを評価した後、初期容量に比べて7回目サイクルでの残存容量と125回目サイクルでの残存容量を計算して容量維持率を測定した。その結果を下記の表3に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
前記表3によると、本発明によるバインダー(製造例1)を使用した電池は、該当技術分野における公知のバインダー(比較製造例1)を使用した電池に比べて電池の寿命特性が改善されたことを確認することができる。これは本発明によるバインダーが接着力向上による電極の安定性改善の効果を有するだけでなく、ポリスルフィドと強く相互作用して正極活物質の溶出を化学的にもっと抑制できるためであると判断される。
【0096】
(4)リチウム化されたバインダーを適用した電池の性能評価
実施例1によるバインダーにおけるカルボン酸を100%リチウム化した後、電池に適用して電池の性能を評価した。電池の性能を評価するために、前記電池を0.1C放電/充電2.5回、0.2C充電/放電3回、0.3C充電/0.5C放電の順に1.5Vと2.8Vの間で150サイクルを評価した後、初期容量に比べて7回目サイクルでの残存容量と125回目サイクルでの残存容量を計算して容量維持率を測定した。
【0097】
その結果、7回目サイクルでの残存容量は775mAhg-1で、125回目サイクルでの残存容量は736mAhg-1と確認されて、これを通じて計算された容量維持率は95%と示された。実験結果によると、バインダーにおけるカルボン酸を100%リチウム化した場合、電池の寿命が有意義に向上されたことを確認することができる。これは、リチウム化によってカルボン酸官能基が有する電解液との反応などの副作用を最小化し、電池システム内にリチウムの供給が増加して発生する結果で判断される。
【0098】
本発明の単純な変形ないし変更は、全て本発明の領域に属することであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明確になる。